平成25(行ウ)2 求償権行使懈怠違法確認等請求事件,同共同訴訟参加申立事件

裁判年月日・裁判所
平成27年3月16日 大分地方裁判所
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判決文本文50,069 文字)

- 1 -平成27年3月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(行ウ)第2号求償権行使懈怠違法確認等請求事件平成26年(行ウ)第1号同共同訴訟参加申立事件口頭弁論終結日平成26年12月22日判決 主文 1 原告ら及び原告共同訴訟参加人らの本件訴えのうち,被告が,被告と大分県平成19年度公立学校教員採用選考試験及び大分県平成20年度公立学校教員採用選考試験で不正な得点操作のあおりを受けて不合格とされた53名の受験者との間の和解協議に係る損害賠償金として前記受験者らに支払った合計9045万円のうち,少なくとも8597万0512円について,地方自治法138条の4第3項に基づく条例の制定によって不正な得点操作の調査のための機関を設置し,又は同法174条に基づく専門委員を置き,前記機関又は専門委員の調査により前記受験者らの教員として採用される地位を侵害した者を特定した上で,特定した者らに対して求償権を行使することを怠る事実が違法であることの確認を求める訴えを却下する。 2 原告らの本件訴えのうち,次の訴えをいずれも却下する。 (1) 被告が,被告と大分県平成19年度公立学校教員採用選考試験及び大分県平成20年度公立学校教員採用選考試験で不正な得点操作のあおりを受けて不合格とされた53名の受験者との間の和解協議に係る損害賠償金として前記受験者らに支払った合計9045万円のうち,少なくとも8597万0512円について,A及びBに対して求償権を行使することを怠る事実が違法であることの確認を求める訴え(2) 被告に,A及びB各自に対し,8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求することを求 事実が違法であることの確認を求める訴え(2) 被告に,A及びB各自に対し,8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求することを求める訴え- 2 - 3 被告は,Cに対し,24万1352円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 4 被告は,Dに対し,5万5313円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 5 被告は,Eに対し,5万5313円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 6 被告は,Fに対し,2645万0297円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 7 原告ら及び原告共同訴訟参加人らのその余の請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用は,これを50分し,その49を原告ら及び原告共同訴訟参加人らの負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告ら及び原告共同訴訟参加人らの請求 1 原告らの請求(1) 追加的併合,訴えの追加的変更前の請求ア被告が,被告と大分県平成19年度公立学校教員採用選考試験及び大分県平成20年度公立学校教員採用選考試験で不正な得点操作のあおりを受けて不合格とされた53名の受験者との間の和解協議に係る損害賠償金として前記受験者らに支払った合計9045万円のうち,少なくとも8597万0512円について,地方自治法138条の4第3項に基づく条例の制定によって不正な得点操作の調査のための機関を設置し,又は同法174条に基づく専門委員を置き,前記機関又は専門委員の調査により前記 万0512円について,地方自治法138条の4第3項に基づく条例の制定によって不正な得点操作の調査のための機関を設置し,又は同法174条に基づく専門委員を置き,前記機関又は専門委員の調査により前記受験者らの教員として採用される地位を侵害した者を特定した上で,特定した者らに対して求償権を行使することを怠る事実が違法であることを確認する。 イ被告は,C,D,E及びF各自に対し,8597万0512円及びこ- 3 -れに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 (2) 追加的併合により追加的に併合した請求,訴えの追加的変更により追加した請求ア被告が,被告と大分県平成19年度公立学校教員採用選考試験及び大分県平成20年度公立学校教員採用選考試験で不正な得点操作のあおりを受けて不合格とされた53名の受験者との間の和解協議に係る損害賠償金として前記受験者らに支払った合計9045万円のうち,少なくとも8597万0512円について,A及びBに対して求償権を行使することを怠る事実が違法であることを確認する。 イ被告は,A及びB各自に対し,8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 2 原告共同訴訟参加人らの請求1(1)ア,イ,(2)ア,イ項と同旨第2 事案の概要 1 事案の大要大分県教育委員会(以下「県教委」という。)の職員は,平成19年度大分県公立学校教員採用選考試験(以下,大分県公立学校教員採用選考試験を「教員採用試験」といい,平成19年度教員採用試験を「平成19年度試験」という。)又は平成20年度教員採用試験(以下「平成20年度試験」という。)において,受験者の得点を改ざんするなどの不正を行い,これにより 試験」といい,平成19年度教員採用試験を「平成19年度試験」という。)又は平成20年度教員採用試験(以下「平成20年度試験」という。)において,受験者の得点を改ざんするなどの不正を行い,これにより,計54名の受験者が,本来合格していたにもかかわらず平成19年度試験又は平成20年度試験に不合格となったため,大分県は,このうち53名の受験者と和解し,これらの者に対して,損害賠償金合計8597万0512円を支払った。これにより,大分県は,前記不正に関与した者に対して,国家- 4 -賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権を取得した。 本件は,大分県の住民である原告ら及び原告共同訴訟参加人ら(以下「参加人ら」という。)が,被告が前記各求償権の行使を違法に怠っていると主張して,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,前記不正に関与した者に対して大分県が有する前記各求償権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求めるとともに,同項4号に基づき,前記不正に関与したとされる者に対して,前記各求償権に基づき,各自8597万0512円及びこれに対する損害賠償金支払後の本訴訟の提起日である平成25年4月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員(上記起算日等に照らし,民法704条前段所定の利息と解される。)の支払の請求をすることを求める住民訴訟である。 2 前提事実次の事実は,証拠(甲2,3,5,6,9,22,33,34,35,乙4から7〔枝番があるものは枝番を含む。〕,丙1から3)及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実又は当裁判所に顕著な事実である。なお,当裁判所に顕著な事実については,前提事実の末尾にその旨記載し,記載のなきものは,上記証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実である。 (1)ア れる事実又は当裁判所に顕著な事実である。なお,当裁判所に顕著な事実については,前提事実の末尾にその旨記載し,記載のなきものは,上記証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実である。 (1)ア原告特定非営利活動法人おおいた市民オンブズマンは,大分県内に主たる事務所を置く特定非営利活動法人,原告教員採用不正の真相を追究するGさん支援の会は,大分県内に事務所を置く権利能力なき社団,参加人らは,大分県内に住所を有する大分県の住民である。 イ被告は,大分県知事である。 (2) 大分県は,大分県公立学校の教員を採用するために,県教委による教員採用試験を実施している。 平成19年度試験は,平成18年7月に1次試験,同年9月に2次試験- 5 -がそれぞれ実施され,平成20年度試験は,平成19年7月に1次試験,同年9月に2次試験がそれぞれ実施された。 教員採用試験は,平成18年及び平成19年当時,小・中学校教諭,高等学校教諭,特別支援学校教諭,養護教諭に区分されて,実施されていたところ,このうち,小・中学校教諭及び養護教諭の教員採用試験の事務は,県教委義務教育課人事班が担当していた。また,小・中学校教諭及び養護教諭の教員採用試験における合否の決定は,教育長が行うが,当時,教育長の下には,教育長を補佐し義務教育部門を統括する教育審議監や,義務教育課長,義務教育課人事班総括及び同班員がおり,これらの者が教員採用試験の事務に携わっていた。 (3)ア Hは,平成18年当時,県教委義務教育課長として,同年に実施された小・中学校教諭及び養護教諭の平成19年度試験の事務を掌理し,また,平成19年当時には,県教委教育審議監として,同年に実施された小・中学校教諭及び養護教諭の平成20年度試験の事務を掌理していた。 なお,Hは,その後,大分地方 9年度試験の事務を掌理し,また,平成19年当時には,県教委教育審議監として,同年に実施された小・中学校教諭及び養護教諭の平成20年度試験の事務を掌理していた。 なお,Hは,その後,大分地方裁判所により破産手続開始決定を受け,平成22年2月23日には,免責許可決定を受けた。 イ Fは,平成18年当時,県教委教育審議監として,同年に実施された小・中学校教諭及び養護教諭の平成19年度試験の事務を掌理していた。 ただし,後記(7)アのとおり,同人は,平成18年11月頃,大分県を退職した。 ウ Iは,平成18年当時,県教委義務教育課人事班主幹として,また,平成19年当時には,県教委義務教育課人事班課長補佐(総括)として,小・中学校教諭及び養護教諭の平成19年度試験及び平成20年度試験の事務に従事し,各試験の得点集計事務及び試験成績一覧表の作成などを担当した。 なお,Iは,平成22年12月12日,死亡した。 - 6 -エ Dは,平成18年当時,佐伯市立J小学校教頭であった。 オ E(以下,Dと併せて「K夫妻」ともいう。)は,平成18年当時,佐伯市立L小学校教諭であった。 カ Mは,平成19年当時,県教委義務教育課人事班副主幹として,同年に実施された小・中学校教諭及び養護教諭の平成20年度試験の事務に従事し,同試験の得点集計事務及び試験成績一覧表の作成などを担当した。 キ Cは,平成19年当時,佐伯市立N小学校教頭であった。 ク Aは,平成19年当時,大分市教育委員会学校教育部長であった。 ケ Bは,平成19年当時,有限会社O新聞社の事業局事業部長であった。 (4) 平成19年度試験及び平成20年度試験においては,それぞれ,I等が取りまとめた試験成績一覧表(後記(5)の各不正が行われた後のもの)を資料として,教育長が合否の判 事業局事業部長であった。 (4) 平成19年度試験及び平成20年度試験においては,それぞれ,I等が取りまとめた試験成績一覧表(後記(5)の各不正が行われた後のもの)を資料として,教育長が合否の判定を行った。 (5)ア K夫妻は,平成18年9月頃及び同年10月頃,Fに対して,計100万円の賄賂を供与して,K夫妻の長女が小学校教諭の平成19年度試験に合格するよう便宜を図ってもらいたい旨の依頼をした。 F及びHは,K夫妻からの上記依頼のほかにも,それぞれ平成19年度試験の合否決定前に,特定の受験者が合格できるように便宜を図ってもらいたい旨の依頼を受け,その依頼を受けた受験者の中から本来不合格であるにもかかわらず合格させる受験者を自ら選定して,その受験者をメモや一覧表に記載し,これをIに渡すなどして,これらの受験者が合格に必要な点数を得ていなくても合格させるように指示した。Iは,上記のF及びHの指示を受けて,指示された受験生が合格に必要な点数を得ていなかった場合に,指示された受験生の得点を加算したり,本来合格していた者の得点を減ずるなどして改ざんし,これらの者を合格させた。Iが合格させた受験生の中には,K夫妻の長女も含まれていた。 - 7 -イ Cは,平成19年8月頃及び同年10月頃,Iに対して,計400万円の賄賂を供与して,Cの長男が平成20年度試験に合格するよう便宜を図ってもらいたい旨の依頼をした。 また,Hは,平成20年度試験の合否決定前に,特定の受験者が合格できるように便宜を図ってもらいたい旨の依頼を受け,便宜を図ってもらいたい旨の依頼を受けた受験者の中から本来不合格であるにもかかわらず合格させる受験者を自ら選定して,その受験生をメモや一覧表に記載し,これらをIに渡すなどして,これらの受験者が合格に必要な点数を得ていな 旨の依頼を受けた受験者の中から本来不合格であるにもかかわらず合格させる受験者を自ら選定して,その受験生をメモや一覧表に記載し,これらをIに渡すなどして,これらの受験者が合格に必要な点数を得ていなくても合格させるように指示した。Iは,Hの指示を受けて,また,自らに対する依頼を受けて,指示された受験生又は依頼を受けた受験生が合格に必要な点数を得ていなかった場合に,Mに指示して,それらの受験生の得点を加算したり,本来合格していた者の得点を減ずるなどして改ざんして,これらの者を合格させた。Iが合格させた受験生の中には,Cの長男も含まれていた。 (6) 前記(5)の不正により,平成19年度試験においては小学校教諭又は中学校教諭を志望した39人が,平成20年度試験においては小学校教諭,中学校教諭又は養護教諭を志望した22人が,本来合格していたにもかかわらずそれぞれの試験において不合格となった。なお,このうち7人は,平成19年度試験及び平成20年度試験の双方で,本来合格していたにもかかわらず,不合格となった。 (7)ア Fは,平成18年11月頃に大分県を退職し,この頃,大分県から,一般の退職手当等として3254万5896円の支給を受けたところ,平成20年7月4日,前記(5)アの不正に関する収賄の容疑で逮捕され,その後,有罪判決を受けた。 イこれを受け,県教委は,「退職した者が(中略)基礎在職期間中の行為に係る刑事事件に関し禁錮以上の刑に処せられたとき」に退職手当を- 8 -返納させることができるなどと定める,職員の退職手当に関する条例(昭和28年条例第105号〔平成19年条例第37号による改正後のもの〕。甲8)12条の3第1項に基づき,平成20年12月25日付けの退職手当返納命令書(乙5)をもって,Fに対し,大分県がFに対して既に支給 年条例第105号〔平成19年条例第37号による改正後のもの〕。甲8)12条の3第1項に基づき,平成20年12月25日付けの退職手当返納命令書(乙5)をもって,Fに対し,大分県がFに対して既に支給した一般の退職手当等3254万5896円の返納を命じた。Fは,平成21年1月20日,大分県に対し,一般の退職手当等3254万5896円を全額返納した。 なお,H,I,D,E及びCについては,いずれも懲戒免職処分を受けたため,退職手当が支給されなかった。 (8) 被告は,平成22年11月26日及び平成23年2月28日,大分県が,平成19年度試験及び平成20年度試験における前記(5)の不正により,本来平成19年度試験又は平成20年度試験に合格していたにもかかわらず不合格となった者との間で,これらの者が平成19年度試験又は平成20年度試験に不合格になったことによって生じた損害(将来発生することが予想される損害を含む。)について,これらの者に対して,損害賠償金を支払う旨の和解をすることについて,地方自治法96条1項12号により,大分県議会に対し,議決を求めたところ,大分県議会は,平成22年12月14日及び平成23年3月4日,それぞれこれを可決した。 これにより,大分県は,平成19年度試験における前記(5)アの不正により本来平成19年度試験に合格していたにもかかわらず不合格となった31名(平成19年度試験及び平成20年度試験の双方に合格していたにもかかわらず,いずれも不合格となった者を除く。)との間で,平均186万余円(総額7095万円,最低額50万円)を支払う旨の和解を,平成20年度試験における前記(5)イの不正により本来平成20年度試験に合格していたにもかかわらず不合格となった22名との間で,平均88万余円(総額1950万円,最低額4 万円)を支払う旨の和解を,平成20年度試験における前記(5)イの不正により本来平成20年度試験に合格していたにもかかわらず不合格となった22名との間で,平均88万余円(総額1950万円,最低額45万円)を支払う旨の和解を,それぞれ- 9 -成立させた。 大分県は,平成22年12月27日及び平成23年3月9日,前記の和解に従い,平成19年度試験に本来合格していたが不合格となった31人に対して合計7095万円,平成20年度試験において本来合格していたが不合格となった22人に対して合計1950万円の各損害賠償金(総計9045万円)を支払った。 (9) 大分県は,平成22年12月24日,平成19年度試験及び平成20年度試験における前記(5)の不正の結果不合格となった者に対する損害賠償に関し,国家賠償法1条2項に基づき大分県が不正に関与した者に対して取得した求償権の成否及びその行使の在り方について検討するため,「求償権に係る専門家委員会設置要綱」(甲3)に基づき,求償権に係る専門家委員会を設置した。 (10) 県教委,県立・市町村立学校の管理職員らは,平成22年6月28日までに,平成19年度試験及び平成20年度試験に係る不正により,本来合格していたが不合格となった者を救済するための事業として,県教委の幹部職員,県立・市町村立学校の校長,教頭等の幹部職員,教育委員及び県教委の元幹部職員から任意に募金を募り,これを賠償金の財源の一部として大分県に寄付することとした(以下,当該事業を「教員採用選考試験の救済者に対する特別支援事業」ともいう。)。 教員採用選考試験の救済者に対する特別支援事業に協力した者らは,平成23年2月8日,大分県に対して,4801万0955円の寄付を申し込み,大分県は,平成23年2月14日,これを受納した。また, 教員採用選考試験の救済者に対する特別支援事業に協力した者らは,平成23年2月8日,大分県に対して,4801万0955円の寄付を申し込み,大分県は,平成23年2月14日,これを受納した。また,教員採用選考試験の救済者に対する特別支援事業に協力した者らは,平成23年3月10日,大分県に対して,41万3661円の寄付を申し込み,大分県は,平成23年3月16日,これを受納した。(以下,これらの計4842万4616円の寄付を「第一寄付」という。)- 10 -(11) 県教委は,平成23年8月10日,前記(8)において大分県が平成19年度試験又は平成20年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して支払った損害賠償金について,次のとおり求償することを決定した。 ア求償額の算定求償権に係る専門家委員会による「求償権に係る検討結果報告書」(甲2)に述べられている求償権の基準となる額4202万5384円(損害賠償金9045万円から第一寄付の額を控除した額)から,前記「求償権に係る検討結果報告書」において考慮すべき事情とされているFから返納された退職手当3254万5896円を控除した947万9488円について,求償する。そして,これを平成19年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して大分県が支払った損害賠償金の実質的負担額(3279万8948円)及び平成20年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して大分県が支払った損害賠償金の実質的負担額(922万6436円)で按分して,平成19年度試験における不正に関与した者に対して求償すべき額及び平成20年度試験における不正に関与した者に対して求償すべき額を算出すると,それぞれ739万8320円及び208万 で按分して,平成19年度試験における不正に関与した者に対して求償すべき額及び平成20年度試験における不正に関与した者に対して求償すべき額を算出すると,それぞれ739万8320円及び208万1168円となる。 イ求償の相手方及び求償額次のとおり,H,I,F,M,C,D及びEに対し,求償する。 (ア) 平成19年度試験における不正に関与した者に対する求償F,H及びIに対して,連帯して739万8320円の支払を,D及びEに対して,連帯して44万4687円の支払を求める。 (イ) 平成20年度試験における不正に関与した者に対する求償H,I及びMに対して,連帯して208万1168円の支払を,C- 11 -に対して20万8648円の支払を求める。 (12)ア K夫妻は,平成23年11月29日,共同不法行為者に対する求償に応じ,大分県に対し,44万4687円を弁済した。 イ Cは,平成23年11月30日,共同不法行為者に対する求償に応じ,大分県に対し,20万8648円を弁済した。 ウ Mは,平成23年12月21日,国家賠償法1条2項による求償に応じ,大分県に対し,187万2520円を弁済した。 (13) 県教委教育委員有志及び教育長経験者有志代表Pは,平成24年2月1日,大分県に対して,500万円の寄付を申し込み,大分県は,平成24年2月2日,これを受納した(以下,この寄付を「第二寄付」という。)。 (14) Fは,平成24年2月7日,国家賠償法1条2項による求償に応じ,大分県に対し,195万3633円を弁済した。 (15)ア原告らは,平成25年1月18日,大分県監査委員に対し,大分県が平成19年度試験又は平成20年度試験における前記(5)の不正に関与した者らに対して有する求償権につき,8597万0512円の行使を怠る 告らは,平成25年1月18日,大分県監査委員に対し,大分県が平成19年度試験又は平成20年度試験における前記(5)の不正に関与した者らに対して有する求償権につき,8597万0512円の行使を怠る事実が違法,不当であることを確認するとともに,前記(5)の不正に関与した者に対して8597万0512円の求償権を行使することなどを求める監査請求を行ったところ,大分県監査委員は,平成25年3月18日,原告らの監査請求を棄却し,その頃,これが原告らに通知された。 そこで,原告らは,平成25年4月17日,当裁判所に対し,本訴を提起した。(顕著な事実)原告らは,平成25年12月2日の本訴第4回口頭弁論期日において,被告がA及びBに対して8597万0512円の求償権の行使を怠る事実が違法であることの確認請求,並びにA及びBに対して8597万0512円の支払を請求するよう求める請求を追加した。これに対し,被- 12 -告は,平成26年1月27日の本訴第5回口頭弁論期日において,異議を述べた。なお,原告らは,原告らの上記請求の追加について,当裁判所に対し,行政事件訴訟法に基づく訴えの追加的併合又は民事訴訟法に基づく訴えの追加的変更であると釈明した(原告らの平成26年7月18日付け第6準備書面)。(顕著な事実)イ参加人らは,平成25年12月27日,大分県監査委員に対し,前記アと同じ趣旨の監査請求及びA及びBに対して求償権8597万0512円の行使を怠る事実の確認などを求める監査請求を行った。大分県監査委員は,平成26年1月17日,参加人らの監査請求は,いずれも地方自治法242条2項所定の監査請求期間を正当な理由なく経過してされたものであるとともに,前記アでされた原告らの監査請求と同一の監査請求であるから不適法なものであるとして,これらを 求は,いずれも地方自治法242条2項所定の監査請求期間を正当な理由なく経過してされたものであるとともに,前記アでされた原告らの監査請求と同一の監査請求であるから不適法なものであるとして,これらをいずれも却下したところ,参加人らは,その頃その通知を受けた。 そこで,参加人らは,平成26年2月14日,当裁判所に対し,共同訴訟参加を申し出た。(顕著な事実) 3 本案前の争点(1) 怠る事実の違法確認の訴えは,財務会計上の行為を対象とするものではない,あるいは請求の特定を欠く等により不適法かア被告の主張地方自治法242条の2第1項3号の規定する怠る事実の違法確認請求の対象は,財務会計上の行為に限定されるところ,執行機関が地方自治法138条の4第3項に基づく条例の制定によって不正な得点操作の調査のため機関を設置し又は同法174条に基づく専門委員を置き,同機関又は専門委員の調査により受験者らの教員として採用される地位を侵害した者を特定することは,地方自治法242条の2第1項が予定している財務会計上の行為には当たらない。 - 13 -また,地方自治法242条の2第1項3号の規定する怠る事実の違法確認の対象となる財務会計行為は,個別的,具体的なものに限定されていなければならない。そして,債権の行使を怠る事実の違法確認を請求する場合には,行使を怠っていると主張する債権に係る債務者,発生原因事実,金額等によって,個々の債権を個別具体的に,かつ,客観的に特定することを要する。しかし,原告らは,行使を怠っていると主張する債権を,債務者,発生原因事実,金額等によって具体的に特定していない。なお,原告ら及び参加人らは,県教委幹部に対して合格の依頼をした者が記載されている「口利きリスト」が存在する,被告が「受験者らの教員として採用され 生原因事実,金額等によって具体的に特定していない。なお,原告ら及び参加人らは,県教委幹部に対して合格の依頼をした者が記載されている「口利きリスト」が存在する,被告が「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」を少なくとも2名把握していると主張するところ,被告は「口利きリスト」を所持しておらず,「口利きリスト」から「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」を特定することはできないし,また,被告が把握している「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」は,I,M,F,H,C,D及びEの7名であって,これら以外に,把握している者はいない。 このように,原告ら及び参加人らによる怠る事実の違法確認の訴えは,その対象とならないものを含んでいる上,特定を欠いているから,不適法である。 イ原告ら及び参加人らの主張原告ら及び参加人らは,被告が行使を怠っている債権の発生原因事実を,証拠(甲2)によって特定しており,それ以上の特定は,本案訴訟の審理によってされるべきである。実際に,被告は,M,F,C,D及びEら5名に対して求償権の行使を行っているところ,原告ら及び参加人らが主張する債権の発生原因事実は,債権の債務者が異なることを除いては,被告が実際に行使した5名に対する求償権の発生原因事実と全く同一である。したがって,請求の特定がないとはいえない。 - 14 -また,原告ら及び参加人らは,被告が行使を怠っている債権の金額について,「9045万円のうち少なくとも8597万0512円」と特定している。被告が行使を怠っている債権の金額が,債務者ごとに異なっていたとしても,各債務者に対して県が有している債権額は,本案の審理で明らかにされるべきであるから,各債務者について債権額が明らかになっていないことをもって,請求の特定が 金額が,債務者ごとに異なっていたとしても,各債務者に対して県が有している債権額は,本案の審理で明らかにされるべきであるから,各債務者について債権額が明らかになっていないことをもって,請求の特定がないとはいえない。 さらに,被告が行使を怠っている債権に係る債務者の氏名が明示されていなくても,債務者を他の怠る事実から区別して認識できていれば,特定に欠けることはないというべきであるところ,原告らは,債務者を「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」として,他の怠る事実から区別して認識できる程度に明らかにしている。そして,県教委幹部に対して合格の依頼をした者が記載されている「口利きリスト」が存在している。被告は,「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」の氏名を2名は把握していることからすると,氏名以外の方法により「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」が誰であるかは客観的に特定することができる上,被告が調査を行えば「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」の氏名を容易に明らかにすることができる。このような場合にまで,被告が行使を怠っている債権に係る債務者の氏名を原告ら及び参加人らが明らかにしないことによって,請求の特定を欠くということはできない。このように,被告が行使を怠っている債権に係る債務者の氏名が明らかになっていないことによって,請求の特定がないとはいえない。 (2) 原告らの訴えは,監査請求期間を遵守した適法な監査請求を経たものか,適法な監査請求を経たものではないとして不適法になるかア被告の主張原告らの監査請求は,第一寄付及び第二寄付(以下,「第一寄付」と- 15 -「第二寄付」を併せて,「本件寄付」という。)の受納決定,Fから返納された退職手当に相当する金額を求償額から控除す 張原告らの監査請求は,第一寄付及び第二寄付(以下,「第一寄付」と- 15 -「第二寄付」を併せて,「本件寄付」という。)の受納決定,Fから返納された退職手当に相当する金額を求償額から控除する旨の決定の各財務会計行為がされてから,地方自治法所定の監査請求期間が徒過した後になされたものというべきである。 原告らが求償権の行使を怠っていると主張する大分県の求償権の対象となる金員は,上記各財務会計行為が違法であることから導かれるものである。そうすると,原告らが怠る事実であると主張する大分県の求償権の行使を被告が怠る事実は,いわゆる不真正怠る事実であり,上記の各財務会計行為がされた時から地方自治法所定の監査請求期間に服するというべきである。そのため,原告らの訴えは,適法な監査請求を経ていない不適法なものである。 イ原告らの主張怠る事実の違法確認請求は,原則として,監査請求期間が存在しない。 そして,被告が行使を怠っている求償権は,被告が主張する各財務会計行為によって発生するものではないから,例外的に監査請求期間が存在する不真正怠る事実であるともいえない。したがって,原告らの訴えは,適法な監査請求を経てなされた適法なものである。 (3) 原告らの追加的併合,訴えの追加的変更は適法かア原告らの主張(ア) 原告らの地方自治法242条の2第1項3号請求に係る訴えの追加的変更は,当初の請求の「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」を具体化し,A及びBに対して求償権を行使しない怠る事実の違法確認の請求を追加したものである。そして,本件の主要な争点は,A及びBを含む「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」に対して求償権を行使しないことが違法であるかという点であり,これは,訴えの変更前後を通じて共通しており, して,本件の主要な争点は,A及びBを含む「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」に対して求償権を行使しないことが違法であるかという点であり,これは,訴えの変更前後を通じて共通しており,その訴訟資- 16 -料も共通である。そのため訴えの変更の前後で,請求の基礎の同一性がある。 したがって,民事訴訟法143条に基づく訴えの変更は許されるし,また,行政事件訴訟法19条1項,13条に基づく請求の追加的併合も許される。 (イ) 原告らの地方自治法242条の2第1項3号請求に係る訴えの変更は,「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」を具体化したものであるから,変更の前後で訴訟物は同一であり,出訴期間は遵守されている。 また,原告らの地方自治法242条の2第1項4号請求に係る追加された請求は,当初の同項3号請求に含まれていたA及びBに対する求償権の行使を求めるものを4号請求として追加したものであるから,変更後の請求と変更前の請求は密接に関連しており,変更後の請求に係る訴えが当初の訴え提起時にされていたとみるべき特段の事情があるといえ,出訴期間が遵守されているというべきである。 イ被告の主張(ア) 地方自治法242条の2第1項3号請求の訴えの変更について求償権の発生を基礎づける事実は,各債務者によっておのずと異なってくるところ,原告が変更前の請求の根拠としていた証拠(甲2)には,A及びBに関する記載はなく,また,原告らは,訴えの変更後にA及びBに対する求償権の行使を怠る事実に関する証拠を新たに提出した。そうすると,変更前の請求と変更後の請求には,訴訟資料の共通性が認められない上,社会生活上同一又は一連の紛争に関するものとも認められず,請求の基礎に変更が生じている。 また,訴えの追加的変更を行うに すると,変更前の請求と変更後の請求には,訴訟資料の共通性が認められない上,社会生活上同一又は一連の紛争に関するものとも認められず,請求の基礎に変更が生じている。 また,訴えの追加的変更を行うに当たっては,変更前の訴えが適法であることを要するところ,前記(1),(2)のとおり,原告らの変更前の- 17 -訴えは不適法であるから,原告らによる訴えの追加的変更は不適法である。 (イ) 地方自治法242条の2第1項4号請求の訴えの変更について変更後の請求は,変更前の請求と求償権の行使を求める相手方が異なるから,変更前の請求と変更後の請求には関連性がない。そのため,請求の基礎に変更が生じている。 また,A及びBに対して求償権の行使を求める請求は,行政事件訴訟法13条が規定する関連請求には当たらないから,同法43条3項,41条2項により準用される同法19条1項によっても許されない。 (ウ) 出訴期間について訴えの追加的変更は新訴の提起としての性格を有するところ,原告らによる訴えの変更は,出訴期間を徒過してされたものである。そして,当初の請求と追加された請求との間には,訴訟物の同一性が認められない上,出訴期間遵守の有無を当初の訴えが提起された時点を基準に判断すべき特段の事情も認められない。したがって,原告らによる訴えの変更は,出訴期間を徒過してされた違法なものである。 原告らは,変更後の請求は,当初の請求において,「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」を一部具体化したにすぎないから,訴訟物は同一であると主張する。しかし,当初の請求によって,A及びBに対する求償権の行使を怠る事実の違法確認請求や同人らに対する求償権の行使請求がされていたと解することはできないから,変更の前後で訴訟物の同一性も認められず,出訴期間 ,当初の請求によって,A及びBに対する求償権の行使を怠る事実の違法確認請求や同人らに対する求償権の行使請求がされていたと解することはできないから,変更の前後で訴訟物の同一性も認められず,出訴期間の遵守を当初の訴えが提起された時点で判断すべき特段の事情も認められないというべきである。 (4) 参加人らによる共同訴訟参加の申出の前提となる監査請求が,原告らと実質的に同一人物である参加人らによってなされたものであることによ- 18 -り,共同訴訟参加の申出が不適法であるかア被告の主張参加人らによる共同訴訟参加の申出は,原告らの不適法な訴えの変更を補うことを目的としてされたものである。また,参加人らは,原告らの代表者又は役員であり,原告らと連名で監査請求を行っている。これらのことからすると,原告らと参加人らは実質的に同一人物とみるべきであるから,参加人らの監査請求は,原告らの監査請求と重ねてされたものというべきであり,不適法である。したがって,これを前提としてされた参加人らによる共同訴訟参加の申出は不適法である。 イ参加人らの主張原告らは,定期的に役員会や総会を開催していることからすると,原告らの法人格や権利能力なき社団としての性質が形骸化しているとはいえない。また,原告らの役員には,参加人ら以外の者が存在する。これらのことからすれば,原告らと参加人らは別人格であると評価すべきである。 したがって,参加人らによる監査請求は,原告らの監査請求と重ねてされたものとはいえず,適法なものであるから,参加人らによる共同訴訟参加の申出は適法である。 (5) 参加人らの共同訴訟参加の申出につき,適法な監査請求前置があるかア被告の主張前記(2)アの主張に照らし,参加人らが怠る事実であると主張する大分県の有する求償権 申出は適法である。 (5) 参加人らの共同訴訟参加の申出につき,適法な監査請求前置があるかア被告の主張前記(2)アの主張に照らし,参加人らが怠る事実であると主張する大分県の有する求償権の行使を被告が怠る事実は,いわゆる不真正怠る事実であり,本件寄付の受納決定,Fから返納された退職手当に相当する金額を求償額から控除する旨の決定の各財務会計行為がされた時から地方自治法所定の監査請求期間に服するというべきである。そうすると,参加人らの監査請求は監査請求期間を徒過してされたものであるから,参- 19 -加人らによる共同訴訟参加の申出は,監査請求を遵守してされたものとはいえず,適法な監査請求を経ていないから,不適法である。 イ参加人らの主張前記(2)イの主張に照らし,参加人らによる共同訴訟参加の申出は,適法な監査請求を経てされた適法なものである。 4 本案の争点(1) 大分県のF,D,E,C,A及びBに対する国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の有無及びその額ア原告ら及び参加人らの主張F,D,E及びCは,共同して,平成19年度試験又は平成20年度試験において,本来合格していた者を不正な得点の改ざんによって不合格にする不法行為を行った。大分県は,平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して,合計9045万円を支払った後,Fら共同不法行為者から合計447万9488円の弁済を受けたにとどまるから,F,D,E及びC各自に対し,差額の8597万0512円の求償権を有する。 また,Bは,Aに対し,平成20年度試験を受験したBの長女の試験の得点を加点するように依頼したところ,Bの長女は,平成20年度試験において同人が獲得した得点に不正に60点 2円の求償権を有する。 また,Bは,Aに対し,平成20年度試験を受験したBの長女の試験の得点を加点するように依頼したところ,Bの長女は,平成20年度試験において同人が獲得した得点に不正に60点加算されて合格し,Aは,平成20年度試験の合格発表日の前日に,これをBに通知した。したがって,A及びBは,Fらと共同して不法行為を行ったことになるから,大分県は,B及びA各自に対しても,8597万0512円の求償権を有する。 イ被告の主張争う。 (2) 求償権に係る専門家委員会の設置等の違法性及びこれが被告による求- 20 -償権の行使の違法性に影響を及ぼすかア原告ら及び参加人らの主張求償権に係る専門家委員会は,地方自治法138条の4第3項の規定により法律又は条例の規定がなければ設置することができない附属機関であるにもかかわらず,大分県は,求償権に係る専門家委員会を,条例ではなく要綱により設置しており,地方自治法138条の4第3項に違反する違法がある。また,求償権に係る専門家委員会は,国家賠償法1条2項に基づく求償権の成否のみを検討の対象とし,民法上の共同不法行為者に対する求償権の成否については検討していない違法がある。 被告が求償権を行使するに当たっては求償権に係る専門家委員会の報告が不可欠であったから,求償権に係る専門家委員会の設置及びその報告と被告による求償権の行使は密接に関連しているというべきところ,被告は,違法に設置された求償権に係る専門家委員会の違法な報告に従って求償権の行使を行っているため,これと密接に関連する被告による求償権の行使もまた,違法となる。 イ被告の主張求償権に係る専門家委員会は,大分県が求償権について適切な判断を行うべく,複数の外部の法律専門家から客観的な意見を聴くために臨時 る被告による求償権の行使もまた,違法となる。 イ被告の主張求償権に係る専門家委員会は,大分県が求償権について適切な判断を行うべく,複数の外部の法律専門家から客観的な意見を聴くために臨時的,一時的に設置されたものであって,県教委の行政組織の一環をなすものではない。そして,求償権の行使は,本来被告の権限に属しており,議会による民主的統制は必要でない。これらのことからすると,求償権に係る専門家委員会は,附属機関に当たらない。また,県教委は,求償権の行使に当たり,求償権に係る専門家委員会の結論に拘束されてはおらず,求償権に係る専門家委員会の検討結果を参考として,主体的に求償権行使の在り方を判断しており,求償権に係る専門家委員会の存在及びその検討結果が,被告による求償権行使の違法性に影響を及ぼすこと- 21 -はない。 また,求償権に係る専門家委員会では,公務員以外の者の不法行為の成否についても検討した結果,客観的に求償権を行使し得る程度に不法行為の成立を認定するに足りる証拠資料が得られなかった。このように,求償権に係る専門家委員会は,民法上の共同不法行為者に対する求償権の成否についても検討している。 (3) 本件寄付によって大分県に寄付された金額を求償しないことが違法かア原告ら及び参加人らの主張本件寄付は,不正な得点操作に関与した者の大分県に対する求償義務を,第三者が弁済する趣旨でなされたものではない。したがって,大分県の求償義務者に対する求償権は,本件寄付によって消滅しないから,本件寄付によって大分県に寄付された金額を求償しないことは許されない。 被告は,寄付者が使途を指定した,財源の一部を寄付する趣旨で寄付したと主張するが,本件寄付は大分県に生じた損害を実質的に補てんする趣旨でされたものではないし,また 求償しないことは許されない。 被告は,寄付者が使途を指定した,財源の一部を寄付する趣旨で寄付したと主張するが,本件寄付は大分県に生じた損害を実質的に補てんする趣旨でされたものではないし,また,寄付金を寄付者が指定した使途に充てることや寄付の趣旨どおりに寄付金を用いることが法的に強制されることはない。 また,被告は,本件寄付は特定財源に充てられたと主張するが,寄付金は,一般財源に組み入れられており,大分県が寄付者の指定した使途や寄付の趣旨に拘束されるとはいえない。 被告は,損益相殺によって本件寄付に相当する金額の求償権は消滅したと主張する。しかし,本件寄付は,求償権の発生と同一の原因によって生じたものではないから,損益相殺の対象とはならない。 イ被告の主張第一寄付は,大分県が支払う賠償金の財源に充当するという使途を指- 22 -定して申し込まれたものであり,第二寄付は,求償額の財源の一部を寄付する趣旨でされたものであるから,本件寄付は,被害者らに対する損害賠償金を実質的に補てんする趣旨でされたものである。そして,大分県は,このような指定された使途及び寄付の趣旨を踏まえて寄付を受納し,県議会の議決を経て,第一寄付については賠償金の,第二寄付については求償金の財源に充当した。なお,この際,教員採用試験賠償金及び教員採用選考試験賠償求償金補てん分の財源という特定財源に充てた。このように,被害者らに対する損害賠償金の支払がなければ,本件寄付がされることはなかったことからすると,大分県が被害者らに対して損害賠償金を支払ったことと本件寄付がされたこととの間には,相当因果関係があり,本件寄付によって県が被った財産的損害は補てんされている。したがって,本件寄付に相当する金額の求償権は,本件寄付による損益相殺によって消滅したか 本件寄付がされたこととの間には,相当因果関係があり,本件寄付によって県が被った財産的損害は補てんされている。したがって,本件寄付に相当する金額の求償権は,本件寄付による損益相殺によって消滅したから,本件寄付によって大分県に寄付された金額を被告が求償しないことは違法と評価されない。 (4) Fが返納した退職手当相当額を求償しないことが違法かア原告ら及び参加人らの主張Fが退職手当を返納したのは,大分県の職員の退職手当に関する条例に基づき,県職員としての在職中の懲戒免職処分相当の違法行為を理由とした退職手当返納命令を受けたためである。このように,Fが退職手当を返納したのは,Fに対して本来退職手当が支払われるべきではなかったからにすぎず,Fが被告による求償権の行使に応じたものとは全く異なる。したがって,Fが返納した退職手当相当額を求償総額から控除することは許されない。 被告は,県教委の指導監督上の落ち度による過失相殺を考慮したと主張する。しかし,被告は大分県にどのような指導監督上の落ち度があったのかを明らかにしていない。また,教員採用試験における不正は,不- 23 -正に関与した者の故意による不法行為であった上,職務執行体制に起因する不正ではなく不正に関与した個人の犯罪によって生じたものであった。そのため,Fが返納した退職手当相当額を求償するか否かを判断するに当たっては,県教委の指導監督上の落ち度による過失相殺を考慮することができず,また,求償権の行使も制限されない。 イ被告の主張被告は,求償権に係る専門家委員会の報告を前提に,求償対象者の破産宣告や死亡による回収の困難性,F以外に懲戒免職となった者に対しては退職手当が支給されなかったこと,県教委の指導監督上の落ち度による過失相殺又は信義則上の求償制限がされるべき 提に,求償対象者の破産宣告や死亡による回収の困難性,F以外に懲戒免職となった者に対しては退職手当が支給されなかったこと,県教委の指導監督上の落ち度による過失相殺又は信義則上の求償制限がされるべきこと等について,全体的・総合的に考慮し,これらの総和として,現に大分県の歳入金となったFが返納した退職手当に相当する額を,求償総額から控除することが適切であると判断したものであり,この判断に違法はない。 原告ら及び参加人らは,過失相殺又は信義則上の求償制限は認められないと主張する。しかし,本件では2年間にわたって複数の受験者に対して損害を与えており,県教委に一定の指導監督上の責任が認められる。 また,故意による不法行為の場合であっても,過失相殺や信義則上の求償制限は認められるというべきである。そして,Fから返納された退職手当に相当する金額は,大分県が支払った損害賠償金の3割6分に相当するところ,事件の重大性に照らすと,この金額について求償しないことで,被告が裁量の範囲を逸脱した違法があるとはいえない。 また,原告ら及び参加人らは,退職手当の返納と求償権の行使に応じたことは全く異なると主張する。しかし,公務員の退職手当には賃金の後払いの要素が含まれていることや,職員の退職手当に関する条例の規定は,退職手当を返納させることが「できる」と定めていること,Fは,退職手当が支給されてから2年以上を経てその全額を返納していること- 24 -からすると,退職手当が返納されたことについては,一定の考慮が認められるべきである。 第3 本案前の争点に対する当裁判所の判断 1 本案前の争点(1)(怠る事実の違法確認の訴えは,財務会計上の行為を対象とするものではない,あるいは請求の特定を欠く等により不適法か)について(1) 地方自治法242条の2第1 判所の判断 1 本案前の争点(1)(怠る事実の違法確認の訴えは,財務会計上の行為を対象とするものではない,あるいは請求の特定を欠く等により不適法か)について(1) 地方自治法242条の2第1項3号所定の住民訴訟の対象は,地方自治法242条1項所定の地方公共団体の執行機関又は職員による同項所定の一定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実,すなわち,違法若しくは不当な公金の支出,財産の取得,管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担(当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合を含む。),又は違法若しくは不当に公金の賦課徴収,財産の管理を怠る事実に限られ,財務会計上の違法な行為又は怠る事実以外のものを対象とする訴えは不適法な訴えとなる(最高裁昭和51年3月30日第三小法廷判決・裁判集民事117号337頁,最高裁昭和60年9月12日第一小法廷判決・裁判集民事145号357頁,最高裁平成2年4月12日第一小法廷判決・民集44巻3号431頁)。 第1(1)ア項のの訴えは,「地方自治法138条の4第3項に基づく条例の制定によって不正な得点操作の調査のための機関を設置し,又は同法174条に基づく専門委員を置き,前記機関又は専門委員の調査により前記受験者らの教員として採用される地位を侵害した者を特定」することを求める部分が含まれているところ,この部分の訴えは,大分県が平成19年度試験又は平成20年度試験における不正に関与した者に対して取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権を被告が行使するために,国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の債務者が誰であるかを調査して,これを特定する- 25 -ための行為を財務会計上の違法な行為又は怠る事実と構 被告が行使するために,国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の債務者が誰であるかを調査して,これを特定する- 25 -ための行為を財務会計上の違法な行為又は怠る事実と構成するものと解される。しかし,かかる行為は,前記各求償権の行使そのものではなく,財務的処理を直接の目的とする地方自治法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実に該当するものとは認められない。 したがって,第1(1)ア項の訴えのうち,「地方自治法138条の4第3項に基づく条例の制定によって不正な得点操作の調査のための機関を設置し,又は同法174条に基づく専門委員を置き,前記機関又は専門委員の調査により前記受験者らの教員として採用される地位を侵害した者を特定」することを怠る事実が違法であることの確認を求める部分は不適法というべきである。 (2) 続いて,第1(1)ア項の請求が特定されているかについて検討する。 ア(ア) 地方自治法242条の2第1項3号に基づく請求は,判決の既判力をもって個別具体的な財務会計上の作為義務の懈怠の違法を確定し,執行機関又は職員に当該作為義務の履行を促すことを目的とするものであるから,同請求においては,既判力の客観的範囲を画し,審理の対象,範囲を明らかにするために,審判の対象である財務会計上の作為義務が個別具体的に特定される必要があり,金銭債権の不行使が財務会計上の作為義務のけ怠に当たるかどうかを審理,判断するためには,行使すべきであるとする個々の債権が発生原因事実等により具体的に特定されていなければならない。 そして,一定の指標をもって特定された多数の怠る事実についての違法確認を求める住民訴訟は,当該多数の怠る事実から区別して特定認識できる上,個々の怠る事実について,個別的,具体的な事情を考 い。 そして,一定の指標をもって特定された多数の怠る事実についての違法確認を求める住民訴訟は,当該多数の怠る事実から区別して特定認識できる上,個々の怠る事実について,個別的,具体的な事情を考慮しなくても一律にあるいは一体として違法かどうかを判断することができるときに許容されることがあり得るとしても,そうでないときには,怠る事実の違法確認の請求として特定がないものとして,不適- 26 -法な訴えとなるというべきである。 本件における原告らの請求及び参加人らの請求は,平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して損害賠償金を支払った大分県が,平成19年度試験又は平成20年度試験における不正に関与した複数の者に対して取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対して有する求償権8597万0512円の行使を違法に怠る事実の確認を求めるものと解され,「平成19年度試験又は平成20年度試験における不正に関与した者」という一定の指標をもって特定された者に対して,それぞれ大分県が有する多数の国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対して有する求償権の行使を怠る事実についての違法確認を求めるものである。しかし,平成19年度試験又は平成20年度試験において本来合格していた受験生が不合格となった過程で生じた「不正」(不法行為)には様々な態様のものが考えられ,「平成19年度試験又は平成20年度試験における不正に関与した者」の全員が同一の不法行為を行ったものではない。そうすると,被告が行使すべきであるとする個々の求償権は,債務者ごとに発生原因事実等が区々であるというべきであるから,原告ら及び参加人らが違法確認を求めている多数の怠る事実は,前記の「平成19年度試験又は平成 告が行使すべきであるとする個々の求償権は,債務者ごとに発生原因事実等が区々であるというべきであるから,原告ら及び参加人らが違法確認を求めている多数の怠る事実は,前記の「平成19年度試験又は平成20年度試験における不正に関与した者」といった指標をもってしては,それぞれを区別して認識することができないというべきである。したがって,原告ら及び参加人らが行使すべきであるとする個々の求償権は,その債務者が誰であるか,求償権の発生原因事実,求償権の金額等によって具体的に特定されていなければならない。 (イ) そこで検討すると,原告らの請求及び参加人らの請求は,平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず- 27 -不合格となった者に対して損害賠償金を支払った大分県が取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対して有する求償権の債務者が誰であるかについて,後述するA及びBを除き,氏名等をもって個別具体的に明らかにするものではない。そうすると,原告ら及び参加人らが行使すべきであるとする個々の求償権は,具体的に特定されていないから,結局,審判の対象である財務会計上の作為義務も個別具体的に特定されておらず,かかる原告ら及び参加人らの請求は,特定を欠くというほかない。 もっとも,大分県がA及びBに対して取得した求償権の行使を被告が怠る事実の確認請求(第1の1(2)ア項)については,前記求償権の債務者が個別具体的に明らかにされている。そして,被告がA及びBに対して行使を怠っているとされる求償権の額も,前記のとおり,それぞれ明示されている。このように,前記求償権の債務者が個別具体的に明らかにされていることからすると,請求の根拠となる不法行為も,A及びBが平成19年度試験及び平成20年度試験における不正な ,それぞれ明示されている。このように,前記求償権の債務者が個別具体的に明らかにされていることからすると,請求の根拠となる不法行為も,A及びBが平成19年度試験及び平成20年度試験における不正な得点操作に関与した不法行為であると,他の不法行為と区別して認識することが可能である。そうすると,原告らの変更後の請求及び参加人らの請求のうち,大分県がA及びBに対して取得した求償権の行使を被告が怠る事実の確認請求については,住民訴訟の対象とする怠る事実を他の怠る事実から区別して特定認識できるよう個別具体的に摘示されていると認められるため,請求の特定に欠けるところはないというべきである。 イ(ア) これに対し,原告ら及び参加人らは,A及びBを除く前記各求償権の債務者の氏名を明らかにしていないものの,これを「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」と他の怠る事実から区別して認識できる程度に明らかにしており,被告もこれによって「受験者- 28 -らの教員として採用される地位を侵害した者」の氏名を明らかにすることができるから,債務者の特定に欠けるところはないと主張する。 しかし,訴訟において請求の特定が求められるのは,裁判所に対して訴訟物たる審判対象を明示する必要があるためであるから,請求は,被告に対する関係のみならず,裁判所に対する関係でも,客観的に,他の請求と区別して識別できる程度に,特定されていなければならない。そして,前記各求償権に係る債務者を「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」とするだけでは,いかなる者がこれに包含されるのか必ずしも明らかでなく,裁判所に対して客観的に他の請求と区別して識別することができる程度に特定されたということはできないため,前記各求償権の債務者は特定されていないというべきである。この点 れるのか必ずしも明らかでなく,裁判所に対して客観的に他の請求と区別して識別することができる程度に特定されたということはできないため,前記各求償権の債務者は特定されていないというべきである。この点に関し,原告ら及び参加人らは,平成20年8月29日に大分県教育委員会教育行政改革プロジェクトチームが作成した「調査結果報告書~大分県教員採用選考試験等に係る贈収賄事件を受けて~」(甲39)の記載内容や,当庁平成21年(行ウ)第3号教員採用決定取消処分取消請求事件,平成23年(行ウ)第5号国家賠償請求事件における大分県の訴訟活動から,被告が前記各求償権に係る債務者が誰であるかを知っていたと主張するが,被告が前記各求償権に係る債務者が誰であるかを具体的に知っていたと認めるに足りる的確な証拠はない上,本件における全証拠によっても前記各求償権に係る債務者が誰であるか,具体的,客観的に認定することはできないことからすれば,前記各求償権に係る債務者として原告ら及び参加人らの主張する者が誰であるかについて,裁判所が覚知することはできないから,やはり,原告ら及び参加人らの主張する前記各求償権の債務者は特定されていないというべきである。 また,原告ら及び参加人らは,県教委の幹部に対して合格の依頼を- 29 -した者が記載されている「口利きリスト」が存在していることから,被告が「受験者らの教員として採用される地位を侵害した者」が誰であるかを客観的に特定することができるとも主張するが,「口利きリスト」が現存していることをうかがわせる的確な証拠はない。 したがって,原告ら及び参加人らの前記主張は,採用できない。 (イ) また,原告ら及び参加人らは,怠る事実に係る求償権の発生原因事実を証拠(甲2)によって特定しており,また,発生原因事実は,怠る事実に係る て,原告ら及び参加人らの前記主張は,採用できない。 (イ) また,原告ら及び参加人らは,怠る事実に係る求償権の発生原因事実を証拠(甲2)によって特定しており,また,発生原因事実は,怠る事実に係る求償権の債務者と共通しているから,怠る事実に係る求償権の内容も特定されていると主張する。 しかし,甲2には,C,D,E,F,H及びIの不法行為のみが記載されており,A,Bなど,それ以外の者の不法行為は記載されていない。そして,前記のとおり,平成19年度試験又は平成20年度試験において本来合格していた受験生が不合格となった過程で生じた不正(不法行為)には様々な態様のものが考えられるところ,現に甲2に記載されているC,D,E,F,H及びIの各不法行為の態様は異なっていることからすると,怠る事実に係る求償権の債務者すべてが同一の態様で不法行為を行ったとは考えられない。したがって,怠る事実に係る求償権の発生原因事実がすべての怠る事実に係る求償権の債務者に共通しこれが証拠(甲2)によって特定されているとは,認められない。 なお,原告ら及び参加人らは,怠る事実に係る求償権の特定は,本案の審理によってされるべきとも主張するが,訴訟物の特定に必要な怠る事実に係る求償権の特定は,裁判所に対して審判対象を明示するために要求されるものであるから,本案の審理によって行うべき性質のものではない。 このように,原告ら及び参加人らの前記主張は,採用できない。 - 30 - 2 本件案前の争点(2)(原告らの訴えは,監査請求期間を遵守した適法な監査請求を経たものか,適法な監査請求を経たものではないとして不適法になるか)について(1) 地方自治法242条1項所定の財産管理を怠る事実に係る監査請求については,同条2項の適用はなく,財産管理を怠る事実が存在する限 法な監査請求を経たものではないとして不適法になるか)について(1) 地方自治法242条1項所定の財産管理を怠る事実に係る監査請求については,同条2項の適用はなく,財産管理を怠る事実が存在する限り監査請求をすることができると解するのが相当であるから(最高裁昭和53年6月23日第三小法廷判決・裁判集民事124号145頁),原告らの請求に係る平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して損害賠償金を支払った大分県が,平成19年度試験又は平成20年度試験の受験者らの教員として採用される地位を侵害した者として特定した者に対して取得した求償権の行使を被告が怠る事実の違法確認請求については,地方自治法242条2項所定の監査請求期間の適用がない。 したがって,原告らは,上記の怠る事実が存在する限り,監査請求を行うことができるというべきである。 (2) これに対し,被告は,財産管理を怠る事実であっても,地方自治法242条2項所定の監査請求期間の適用がある場合を認めた最高裁判例を複数指摘し,本件においても,地方自治法242条2項所定の監査請求期間の適用があると解すべきであると主張する。 しかし,大分県が取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権は,大分県が平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に損害賠償金を支払った時点(前記第2の2(8)参照)で発生するものであり,被告が指摘する平成23年2月14日及び平成23年3月16日にされた第一寄付の受納決定(前記第2の2(10)),平成23年8月10日にされたFから返納された退職手当を求償額から控除する決定(前記第2の2(11)),平- 31 -成24年2月2日にされた第二 れた第一寄付の受納決定(前記第2の2(10)),平成23年8月10日にされたFから返納された退職手当を求償額から控除する決定(前記第2の2(11)),平- 31 -成24年2月2日にされた第二寄付の受納決定(前記第2の2(13))によって発生するものではない。また,平成23年2月14日及び平成23年3月16日にされた第一寄付の受納決定(前記第2の2(10)),平成24年2月2日にされた第二寄付の受納決定(前記第2の2(13))は,大分県が被った損害を実質的に回復又は補てんするものではあるが,大分県が取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権を消滅させるものではなく(後記第4の2(3)参照),また,平成23年8月10日にされたFから返納された退職手当を求償額から控除する決定(前記第2の2(11))は,大分県が内部的にFから返納された退職手当相当額については求償しない旨の意思決定をしたに過ぎず,これによって,大分県が取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権を消滅させるものでもない。そのため,被告が指摘するこれらの大分県の行為については,これらの行為それ自体の違法性について判断しなければ,大分県が取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権を行使しないことが違法であることを判断することができないという関係にはないのであるから,大分県が取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権を被告が行使しない財産管理を怠る事実の確認請求において,地方自治法242条2項本文の適用がないと解したとしても,同条の趣旨を没却するものではないというべきである。 被告が指摘する各最高裁判例の趣旨から,本件においても地方自治法242条2項本 いて,地方自治法242条2項本文の適用がないと解したとしても,同条の趣旨を没却するものではないというべきである。 被告が指摘する各最高裁判例の趣旨から,本件においても地方自治法242条2項本文の適用があると解することはできず,この点に係る被告の主張は採用できない。 3 本案前の争点(3)(原告らの追加的併合,訴えの追加的変更は適法か)について(1)ア原告らは,大分県がA及びBに対して有する求償権8597万051- 32 -2円の行使を被告が怠る事実の違法確認を求める訴え,並びに被告がA及びBに対して8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求を求める訴えを,行政事件訴訟法43条3項,41条2項,19条又は民事訴訟法143条に基づき,追加した(前記第2の2(15)ア)。 イ追加された前記各訴えに係る請求は,前記1(2)アのとおり,特定されているというべきであるが,住民訴訟を提起するためには,更に,住民訴訟を提起する住民が住民訴訟の対象とする執行機関又は職員の行為について監査請求を経なければならない(地方自治法242条の2第1項,242条1項)。 ところが,原告らが,平成25年1月18日付けで大分県監査委員に対してした監査請求において,A及びBに対する求償権の行使を怠る事実をその対象としたものとは認められない(甲5)。そうすると,原告らが追加した,前記アのA及びBに対する求償権の行使を怠る事実の違法確認請求に係る訴え,並びに被告がA及びBに対して8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求を求める訴えは,いずれも監査請求を経ていない不適法なものといわざるを得ない。 ウこの点に関して,原告 12円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求を求める訴えは,いずれも監査請求を経ていない不適法なものといわざるを得ない。 ウこの点に関して,原告らは,平成25年1月18日付けで大分県監査委員に対してした監査請求において,「85,970,512円に相当する求償権の行使を怠る事実の存在を確認」するとともに,被告及び県教委に対して,平成19年度試験又は平成20年度試験において「不正合格の依頼をした者および不正合格の仲介者らに対して,85,970,512円に相当する求償権を行使する」是正措置を講ずべきことを求めている(甲5)。 しかし,監査請求においては,対象とする財務会計上の行為又は怠る- 33 -事実を他の事項から区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要し,また,財務会計上の行為又は怠る事実が複数である場合には,財務会計上の行為又は怠る事実の性質,目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き,各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要するというべきであって,監査請求の対象がこの程度に具体的に摘示されているかどうかは,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して判断するべきである(最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号719頁,最高裁平成16年11月25日第一小法廷判決・民集58巻8号2297頁参照)。原告らの上記監査請求は,「不正合格の依頼をした者および不正合格の仲介者ら」に対して求償権を行使することを求めるものであるが,前記1(2)ア(ア)のとおり,平成19年度試験又は平成20年度試験において本来合格してい 求は,「不正合格の依頼をした者および不正合格の仲介者ら」に対して求償権を行使することを求めるものであるが,前記1(2)ア(ア)のとおり,平成19年度試験又は平成20年度試験において本来合格していた受験生が不合格となった過程で生じた不正(不法行為)には様々な態様のものが考えられるから,「不正合格の依頼をした者および不正合格の仲介者ら」に対して求償権の行使を求めるという監査請求によっては,これを一体とみて違法又は不当性の判断をすることができない。したがって,各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要するところ,原告らがした前記監査請求における事実の主張及び措置要求の内容においては,A及びBの平成20年度試験における不法行為には全く触れられていない(甲5)。また,原告特定非営利活動法人おおいた市民オンブズマンが大分市教育委員会に対してした平成25年9月12日付け公文書公開請求により,Aに対する懲戒処分及び分限処分に係る決裁文書,処分書及び処分理由書を取得してA及びBの不法行為の裏付けを得たと原告らは認識しており(原告らの平- 34 -成25年11月1日付け訴えの変更申立書3頁),原告らがこの認識を得たのは本訴訟を提起した後である平成25年9月20日であるから,監査請求の時点で原告らがA及びBの平成20年度試験における不法行為が存在したとする具体的な根拠を有していたとはいえない。確かに,原告らは,平成20年7月23日,同月24日及び同年8月12日の各新聞報道により,A及びBの平成20年度試験における不法行為が存在した可能性を知り得たものと推認されるが(甲11から13),原告らの平成25年1月18日付けの監査請求書においてA及びBの平成20年度試験における不法行為には全く触れられていないこと(甲 行為が存在した可能性を知り得たものと推認されるが(甲11から13),原告らの平成25年1月18日付けの監査請求書においてA及びBの平成20年度試験における不法行為には全く触れられていないこと(甲5)に加えて,原告らの訴状に,A及びBの平成20年度試験における不法行為に関する記載が全くないこと,その後陳述された原告らの平成25年7月19日付け第1準備書面においても,A及びBの不法行為は本件の背景事情として指摘されているにとどまることからすれば(当裁判所に顕著な事実),原告らは,上記監査請求の当時,A及びBに対して大分県が有する国家賠償法1条2項又は共同不法行為者に対する求償権の行使を怠る事実について監査請求の対象とする意思があったとは認められない。そうすると,原告らは,原告らの監査請求において,大分県がA及びBに対して有する国家賠償法1条2項又は共同不法行為者に対する求償権の行使を被告が怠る事実を,他の行為等と区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示していたとはいえないというべきである。 したがって,原告らは,大分県がA及びBに対して有する国家賠償法1条2項又は共同不法行為者に対する求償権の行使を被告が怠る事実について,監査請求を行ったとは認められない。 (2) これを前提に,行政事件訴訟法に基づく訴えの追加的併合の可否について検討する。 原告らが追加した請求に係る訴えが,行政事件訴訟法19条1項,13- 35 -条各号所定の関連請求に該当する訴えであったとしても,これが独立の訴えとしての訴訟要件を欠くときは,これを不適法なものとして却下すべきであるところ,前記(1)のとおり,原告らが追加した請求に係る訴えは,監査請求を前置したものではないから,独立の訴えとしての訴訟要件を欠く不適法な訴えであるので,却下すべき 法なものとして却下すべきであるところ,前記(1)のとおり,原告らが追加した請求に係る訴えは,監査請求を前置したものではないから,独立の訴えとしての訴訟要件を欠く不適法な訴えであるので,却下すべきである。 (3) 続いて,民事訴訟法に基づく訴えの変更の可否について検討する。 民事訴訟法143条所定の訴えの変更は,審理の重複を避けて紛争の一回的解決を図る制度であることから,変更後の訴えが不適法である場合には,紛争の一回的解決を図る実益がないので,これを許すことができないと解すべきである。 そうすると,原告らの訴えの追加的変更により追加した訴えは,前記(1)のとおり不適法な訴えであるから,民事訴訟法に基づく訴えの追加的変更は不適法であって,当裁判所はこれを許さない。 4 本案前の争点(4)(参加人らによる共同訴訟参加の申出の前提となる監査請求が,原告らと実質的に同一人物である参加人らによってなされたものであることにより,共同訴訟参加の申出が不適法であるか)について(1) 地方自治法242条の2第4項は,住民訴訟が係属しているときは,当該普通地方公共団体の他の住民は,別訴をもって同一の請求をすることができない旨規定しているが,この規定は,当該住民訴訟の対象と同一の財務会計上の行為又は怠る事実を対象とする適法な監査請求手続を経た他の住民が,同条2項所定の出訴期間内に民事訴訟法52条の規定に基づき共同訴訟人として前記住民訴訟の原告側に参加することを禁ずるものではない(最高裁昭和63年2月25日第一小法廷判決・民集42巻2号120頁参照)。 (2) 証拠(乙34,35,丙4から10)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 - 36 -ア原告特定非営利活動法人おおいた市民オンブズマンは,大分市内に主たる事務所を設置し, (2) 証拠(乙34,35,丙4から10)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 - 36 -ア原告特定非営利活動法人おおいた市民オンブズマンは,大分市内に主たる事務所を設置し,国及び地方公共団体等に市民の声を反映させ,行政の開かれた民主的な運営を実現し住民の主権を確立することにより,住民の基本的人権の擁護と住民本位の町づくりの実現を目指して活動することを目的とする特定非営利活動法人である。参加人らは,いずれも原告特定非営利活動法人おおいた市民オンブズマンの理事であり,参加人らのほか7名が理事を務めている。(乙34)原告特定非営利活動法人おおいた市民オンブズマンの定款(丙4)には,組織並びに資産及び会計についての規定がある。 原告特定非営利活動法人おおいた市民オンブズマンは,平成24年9月及び平成25年1月に拡大役員会を開催したほか,平成25年5月及び平成26年5月に定期総会などを開催した。(丙5から8)イ原告教員採用不正の真相を追究するGさん支援の会は,権利能力なき社団であり,参加人Qはその代表世話人,参加人Rはその世話人を務めている(乙35,弁論の全趣旨)。 原告教員採用不正の真相を追究するGさん支援の会は,平成25年3月及び平成26年4月に,自由討論会,定期総会等を開催し,そこでは,同原告の活動結果の報告や,収支計算に関する報告がされた。(丙9,10)(3) これらの事実によれば,参加人らは,原告特定非営利活動法人おおいた市民オンブズマンの理事及び原告教員採用不正の真相を追究するGさん支援の会の世話人を務めているものの,原告らは,特定非営利活動法人又は権利能力なき社団として独自の活動を行い,会計処理もそれぞれ個別にされているものと認められるのであり,参加人らが原告らを違法又は不当な目的で 話人を務めているものの,原告らは,特定非営利活動法人又は権利能力なき社団として独自の活動を行い,会計処理もそれぞれ個別にされているものと認められるのであり,参加人らが原告らを違法又は不当な目的で支配していると認めるに足る証拠もない。 したがって,参加人らが原告らと実質的に同一人物であるとは認められ- 37 -ず,参加人らは,原告らとは別の大分県の住民として共同訴訟参加の申出をしたものと認められる。 5 本案前の争点(5)(参加人らの共同訴訟参加の申出につき,適法な監査請求前置があるか)について(1) 地方自治法242条の2第4項は,住民訴訟が係属しているときは,当該普通地方公共団体の他の住民は,別訴をもって同一の請求をすることができないと規定しているが,同規定は,住民訴訟が係属している場合に,当該住民訴訟の対象と同一の財務会計上の行為又は怠る事実を対象とする適法な監査請求手続を経た他の住民が,同条第2項所定の出訴期間内に民事訴訟法52条の規定に基づき共同訴訟参加人として前記住民訴訟の原告側に参加することを禁ずるものではなく,出訴期間は,監査請求をした住民ごとに個別に定められているものと解するのが相当であるから,共同訴訟参加申出についての期間は,共同訴訟参加の申出をした住民がした監査請求及びこれに対する監査結果の通知があった日等を基準として計算すべきである(最高裁昭和63年2月25日第一小法廷判決・民集42巻2号120頁)。 (2) 前記第2の2(15)イのとおり,参加人らは,平成25年12月27日,大分県監査委員に対し,監査請求を行ったが,大分県監査委員は,平成26年1月17日,参加人らの監査請求は,いずれも地方自治法242条2項本文所定の監査請求期間を徒過してされたものであるとして,これらを却下した。しかしながら, 求を行ったが,大分県監査委員は,平成26年1月17日,参加人らの監査請求は,いずれも地方自治法242条2項本文所定の監査請求期間を徒過してされたものであるとして,これらを却下した。しかしながら,前記2項のとおり,平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず,不合格となった者に対して損害賠償金を支払った大分県が,平成19年度試験又は平成20年度試験の受験者らの教員として採用される地位を侵害した者として特定した者,A及びBに対して取得した求償権の行使を被告が怠る事実の違法確認請求については,地方自治法242条1項所定の監査請求期間の適用はな- 38 -いから,参加人らの監査請求は適法にされたものと認められる。 そして,監査委員が適法な監査請求を不適法であるとして却下した場合,当該請求をした住民は,適法な監査請求を経たものとして,直ちに住民訴訟を提起することができるものと解され,この場合の出訴期間は,監査請求を却下する通知を受けた日から起算される(最高裁平成10年12月18日第三小法廷判決・民集52巻9号2039頁)。参加人らは,平成26年1月17日頃,大分県監査委員から参加人らの監査請求を却下する通知を受け,平成26年2月14日に当裁判所に共同訴訟参加を申し出て住民訴訟を提起したのであるから,地方自治法242条の2第2項所定の出訴期間を遵守している。 したがって,参加人らの共同訴訟参加の申出が出訴期間を徒過してされたとはいえず,この点に係る被告の主張は採用できない。 (3) そして,原告らの,被告がA及びBに対して大分県が有する求償権8597万0512円の行使を怠る事実の違法確認を求める訴え,並びに被告がA及びBに対して8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割 して大分県が有する求償権8597万0512円の行使を怠る事実の違法確認を求める訴え,並びに被告がA及びBに対して8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求を求める訴えについては,前記3(2)のとおり,監査請求を前置していない不適法なものであるが,これと同旨の参加人らの訴えは,適法なものと認められる。 このような場合の共同訴訟参加の可否について検討すると,本件における共同訴訟の形態は,いわゆる類似必要的共同訴訟であって,本来当事者適格を有する者が各自で個別的に訴えを提起することができるものであるから,各共同訴訟人の訴えの適法性が区々になることは予定されている上,一方の共同訴訟人の訴えを不適法とし,他方の共同訴訟人の訴えについては本案判決をしたとしても,判決の既判力が抵触することはなく合一確定の要請に反しない。したがって,参加人らの共同訴訟参加の申出は,適法というべきである。 - 39 - 6 不適法な訴えについてのまとめ以上の検討によれば,原告ら及び参加人らの訴えのうち,地方自治法138条の4第3項に基づく条例の制定によって不正な得点操作の調査のための機関を設置し,又は同法174条に基づく専門委員を置き,前記機関又は専門委員の調査により前記受験者らの教員として採用される地位を侵害した者を特定した上で,その者に対して8597万0512円の求償権の行使を怠ることが違法であることの確認を求める訴えは,いずれも不適法である。 また,原告らの行政事件訴訟法に基づき追加的に併合する訴えである,被告がA及びBに対し,8597万0512円の求償権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める訴え,並びに被告にA及びBに対し8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17 訴えである,被告がA及びBに対し,8597万0512円の求償権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める訴え,並びに被告にA及びBに対し8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払の請求を求める訴えは,いずれも不適法である。 第4 本案の争点に対する当裁判所の判断 1 本案の争点(1)(大分県のF,D,E,C,A及びBに対する国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の有無及びその額)について(1) F及びK夫妻に対する求償権(平成19年度試験)前記第2の2の各事実によれば,Fは,平成18年当時,県教委教育審議監として,同年に実施された小・中学校教諭及び養護教諭の平成19年度試験の事務を掌理する公務員であったところ,H及びIと共同して,その職務を行うについて,平成19年度試験に本来不合格であった者の受験生の得点を加算したり,本来合格していた者の得点を減ずるなどして,本来不合格とされるべき者を合格させる一方で,本来合格していた39人の小学校教諭及び中学校教諭を志望した受験生を不合格とし,違法にこれらの者に合計7095万円の損害を加えたものと認められる。なお,上記の本来不合格とされるべき者の中には,K夫妻から賄賂の供与を受けて合格- 40 -させた,K夫妻の長女が含まれていた。 そうすると,国家賠償法1条1項に基づき前記39人に対して合計7095万円を支払った大分県は,Fに対し,国家賠償法1条2項に基づき,H及びIと連帯して7095万円の支払を求める求償権を取得したものと認められる。 そして,K夫妻は,Fに賄賂を供与してその長女を平成19年度試験に合格させたところ,かかる行為は,F,H及びIと共同して,平成19年度試験に本来合格して める求償権を取得したものと認められる。 そして,K夫妻は,Fに賄賂を供与してその長女を平成19年度試験に合格させたところ,かかる行為は,F,H及びIと共同して,平成19年度試験に本来合格していた受験生のうち1人を不合格にした不正に関与したものと評価し得るから,この限度で,F,H及びIとの共同不法行為が成立する。もっとも,K夫妻の不法行為により,平成19年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった39人のうちの誰が不合格となったのかは明らかでないから,国家賠償法1条1項に基づき,前記39人に対して合計7095万円を支払った大分県は,K夫妻に対し,前記39人に対して支払われた各損害賠償金の最低額である50万円の限度で,F,H及びIと連帯して支払を求める,共同不法行為者に対する求償権を取得したものと認めるのが相当である。 (2) Cに対する求償権(平成20年度試験)前記第2の2の各事実によれば,H,I及びMは,共同して,その職務を行うについて,平成20年度試験に本来不合格であった者の受験生の得点を加算したり,本来合格していた者の得点を減ずるなどして,本来不合格とされるべき者を合格させる一方で,本来合格していた22人の小学校教諭,中学校教諭及び養護教諭を志望した受験生を不合格とし,違法にこれらの者に合計1950万円の損害を加えた。なお,上記の本来不合格とされるべき者の中には,IがCから賄賂の供与を受けて合格させた,Cの長男が含まれていた。 そうすると,国家賠償法1条1項に基づき前記22人に対して合計19- 41 -50万円を支払った大分県は,H,I及びMに対して,連帯して1950万円の支払を求める求償権を取得したものと認められる。 そして,Cは,Iに賄賂を供与してその長男を平成20年度試験に合格させたところ, 円を支払った大分県は,H,I及びMに対して,連帯して1950万円の支払を求める求償権を取得したものと認められる。 そして,Cは,Iに賄賂を供与してその長男を平成20年度試験に合格させたところ,かかる行為は,H,I及びMと共同して,平成20年度試験に本来合格していた受験生のうち1人を不合格にした不正に関与したものと評価し得るから,この限度で,H,I及びMとの共同不法行為が成立する。もっとも,Cの不法行為により,平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった22人のうちの誰が不合格となったのかは明らかでないから,国家賠償法1条1項に基づき,前記22人に対して合計1950万円を支払った大分県は,Cに対し,前記22人に対して支払われた各損害賠償金の最低額である45万円の限度で,H,I及びMと連帯して支払を求める,共同不法行為者に対する求償権を取得したものと認めるのが相当である。 (3) A及びBに対する求償権(平成20年度試験)証拠(甲22)及び弁論の全趣旨によれば,大分市教育委員会学校教育部長であったAは,平成19年9月,有限会社O新聞社の事業部長であったBから,平成20年度試験におけるBの長女の合否の結果を事前に連絡してほしい旨の依頼を受け,平成20年度試験の合格発表の前日に,Bに対して,Bの長女の合格を通知した事実は認められるものの(甲22),原告ら及び参加人らが主張するように,BはAに平成20年度試験において,Bの長女の試験結果に手心を加えるように依頼したところ,Bの長女が試験の結果得た本来の得点に60点加算されて合格したとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると,A及びBについては,平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった22人に対する不法行為が成立すると認めることはでき 合格したとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると,A及びBについては,平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった22人に対する不法行為が成立すると認めることはできないから,大分県がA及びBに対して,国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対す- 42 -る求償権を取得したとは認められない。 2 次に,F,C,D及びEに対して大分県が有している国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の行使を,被告が違法に怠っているかについて検討する。 (1) 大分県がF,C,D及びEに対して有する国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権は,地方自治法237条1項及び240条1項所定の地方公共団体が有する「財産」又は「債権」に当たる。そして,地方公共団体が有する債権の管理について定める地方自治法240条,地方自治法施行令171条から171条の7までの規定によれば,客観的に存在する債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず,債権が客観的に存在する以上は,原則として,地方公共団体の長にその行使又は不行使についての裁量がない(最高裁平成16年4月23日第二小法廷判決・民集58巻4号892頁参照)というべきであるが,地方公共団体の長が債権の存在をおよそ認識し得ないような場合にまでその行使を義務付けることはできない上,国家賠償法1条2項に基づく求償権及び共同不法行為者に対する求償権は,債権の存否自体が必ずしも明らかではない場合が多いことからすると,その不行使が違法な怠る事実に当たるというためには,少なくとも,客観的に見て不法行為の成立を認定するに足りる証拠資料を地方公共団体の長が入手し,又は入手し得たことを要するというべきである(最高裁平成21年4月 違法な怠る事実に当たるというためには,少なくとも,客観的に見て不法行為の成立を認定するに足りる証拠資料を地方公共団体の長が入手し,又は入手し得たことを要するというべきである(最高裁平成21年4月28日第三小法廷判決・裁判集民事230号609頁参照)。 もっとも,証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,客観的に見て,F,C,D及びEの不法行為の成立を認定するに足りる証拠資料を入手していたものと認められ,現に,前記第2の2(11),同(12)ア,イ,同(14)のとおり,上記各人らに対して,一定額の求償を行っている。 本訴においては,上記一定額の求償を行った被告がなお求償権の行使を違法に怠っているか(法律上更なる求償を行うことが求められるか)が問題と- 43 -されており,以下,更に検討する。 (2) 本案の争点(2)(求償権に係る専門家委員会の設置等の違法性及びこれが被告による求償権の行使の違法性に影響を及ぼすか)についてア原告ら及び参加人らは,求償権に係る専門家委員会が,地方自治法138条の4第3項の規定により,法律又は条例の規定がなければ設置することができない附属機関であるにもかかわらず,法律又は条例の規定なく設置された違法があり,この違法は被告による求償権の行使の違法性に影響を及ぼすと主張する。 しかし,前記(1)のとおり,地方公共団体の長たる被告には,客観的に存在する債権の行使又は不行使について,原則として裁量がないことからすると,被告が,大分県のF,C,D及びEに対する国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権を行使していなければ原則として違法と評価される。また,被告自身も,求償権に係る専門家委員会の設置及び報告に基づき,被告が求償権を行使したことを,求償権の不行使が違法とならない事 為者に対する求償権を行使していなければ原則として違法と評価される。また,被告自身も,求償権に係る専門家委員会の設置及び報告に基づき,被告が求償権を行使したことを,求償権の不行使が違法とならない事由として主張している訳ではない。 したがって,求償権に係る専門家委員会の設置は,被告による大分県のF,C,D及びEに対する国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の不行使の違法性に影響を及ぼさない。 このように,原告ら及び参加人らの前記主張は,採用できない。 イ本件において,原告ら及び参加人らは,被告が,違法に設置された求償権に係る専門家委員会の違法な報告に従って求償権を行使したと主張する。 そこで検討すると,求償権に係る専門家委員会が,平成23年7月26日に作成した「求償権に係る検討結果報告書」(甲2)には,大分県はF,H,I,D,E及びCに対し,国家賠償法1条2項に基づく求償権を有していること,もっとも大分県が平成19年度試験又は平成20- 44 -年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格となった53名に対して支払った9045万円から第一寄付に係る4842万4616円を控除した4202万5384円について求償すべきことから,平成19年度試験における不正に関与したF,H及びIに対して3279万8948円,D及びEに対して197万1429円,平成20年度試験における不正に関与したH,I及びMに対して922万6436円,Cに対して92万5000円の求償をすべきこと,もっとも,求償権の行使に際しては,Fから退職手当の全額が返納されたこと,H,I,D,E及びCに対して退職手当が支給されなかったこと,Hは破産免責の許可を受けていること,Iが死亡したこと,Mは平成20年度試験における不正では補助的な立 ら退職手当の全額が返納されたこと,H,I,D,E及びCに対して退職手当が支給されなかったこと,Hは破産免責の許可を受けていること,Iが死亡したこと,Mは平成20年度試験における不正では補助的な立場にあったにとどまり,停職4か月の処分を受けていること,平成19年度試験及び平成20年度試験における不正を防止できなかった県教委の指導監督上の落ち度があったことから,求償権の行使は信義則上一定程度制限されるべきことなどを考慮して慎重に対応すべきであることが記載されている。そして,県教委は,求償権に係る専門家委員会による「求償権に係る検討結果報告書」において考慮すべき事情として挙げられていたFから退職手当が全額返納されたことを考慮し,Fから返納された退職手当相当額を求償額から更に控除した上で,平成19年度試験における不正に関与したF,H及びIに対して,連帯して739万8320円の支払を,K夫妻に対して,連帯して44万4687円の支払を,平成20年度試験における不正に関与したH,I及びMに対して,連帯して208万1168円の支払を,Cに対して20万8648円の支払を求めることを決定した(前記第2の2(11)の事実)。 このように,県教委は,具体的な求償額を決定するに当たり,求償権に係る専門家委員会が作成した「求償権に係る検討結果報告書」におい- 45 -て考慮すべきとされていた事情を考慮してはいるものの,Fから返納された退職手当相当額を求償額から控除した上で,「求償権に係る検討結果報告書」に記載されている金額と異なる金額を求償することを決定しており,県教委が求償権に係る専門家委員会の決定に従って求償権を行使したとは認められない。県教委は,求償権に係る専門家委員会が作成した「求償権に係る検討結果報告書」を踏まえた上で独自に求償権の行使の おり,県教委が求償権に係る専門家委員会の決定に従って求償権を行使したとは認められない。県教委は,求償権に係る専門家委員会が作成した「求償権に係る検討結果報告書」を踏まえた上で独自に求償権の行使の在り方について判断したものと認められるのであるから,仮に求償権に係る専門家委員会の設置又は報告に違法があったとしても,その違法性が被告による求償権の不行使に承継されることはないというべきである。 したがって,原告ら及び参加人らの前記主張は,採用できない。 ウまた,原告ら及び参加人らは,求償権に係る専門家委員会が,国家賠償法1条2項に基づく求償権の成否のみを検討の対象とし,共同不法行為者に対する求償権の成否については検討していない違法があると主張する。 しかし,求償権に係る専門家委員会が作成した「求償権に係る検討結果報告書」(甲2・8頁)には,「第三者の不法行為」との表題の下,「F及びHが受けた第三者からの依頼の方法や内容には,D,E,Cらの不正な利益を提供する方法による依頼とは異なり,前記のとおり種々のものが含まれていた。ところが,誰が誰にいつどのような依頼をしたのかその方法や内容を具体的に特定することは困難であり,第三者の行為が不法行為を構成するか否かは判断できない。」と記載されていることからすると,求償権に係る専門家委員会は,公務員以外の者に対する求償権の成否をも検討したものの,求償権に係る専門家委員会が検討の対象とした調査資料によっては,公務員以外の者に対する求償権の成否については判断することができなかったものと認められる。 - 46 -したがって,原告ら及び参加人らの前記主張も,採用できない。 (3) 本案の争点(3)(本件寄付によって大分県に寄付された金額を求償しないことが違法か)についてア住民訴訟は,普通地 46 -したがって,原告ら及び参加人らの前記主張も,採用できない。 (3) 本案の争点(3)(本件寄付によって大分県に寄付された金額を求償しないことが違法か)についてア住民訴訟は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による地方自治法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから,これを防止するため,地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として,住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものである(最高裁昭和53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号485号)。このような住民訴訟の目的に照らせば,地方公共団体が客観的に存在する債権を行使しない場合であっても,地方公共団体が被った損害の回復又は補てんがされたと認められるときは,地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害することはないから,このような債権の不行使は,地方公共団体の長に地方公共団体が有する債権の行使又は不行使について原則として裁量がないことを考慮しても,違法と評価されないものと解するのが相当である。 イ前記第2の2の事実,証拠(甲9,乙4,7,9,21,23から31〔枝番があるものは枝番を含む。〕)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 被告は,平成19年度試験又は平成20年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格となった者のうち,大分県との間で和解が成立した者に対する損害賠償金に充てるため,大分県議会に対し,平成22年11月26日に,8705万円の補償補填及び賠償金を追加する旨の平成22年度大分県一般会計補正予算(補正第4号)を,平成23年2月28日に,340万円の補償 充てるため,大分県議会に対し,平成22年11月26日に,8705万円の補償補填及び賠償金を追加する旨の平成22年度大分県一般会計補正予算(補正第4号)を,平成23年2月28日に,340万円の補償補填及び賠償金を追- 47 -加する旨の平成22年度大分県一般会計補正予算(補正第6号)をそれぞれ提出したところ,大分県議会は,平成22年12月14日及び平成23年3月4日に,上記各補正予算をそれぞれ可決した。(乙4の1から4)(イ) 教員採用選考試験の救済者に対する特別支援事業の協力者らは,大分県に対し,平成23年2月8日に4801万0955円,平成23年3月10日に41万3661円の寄付(第一寄付)を申し込んだ。 第一寄付の「寄付申込書」(甲9〔15,21頁〕)には,「平成18年度及び平成19年度に実施された大分県公立学校教員採用選考試験〔判決注・平成19年度試験及び平成20年度試験〕において不合格になった者に対し,県議会の議決を経て支払われた賠償金について,その財源に充当していただきたく寄付を申し込みます。」との記載がある。(甲9〔15,21頁〕)大分県は,平成23年2月14日及び平成23年3月16日,第一寄付を,「教員採用選考試験賠償金」の財源に充当することとして,それぞれ受納した。(甲9〔12から14,19,20頁〕)大分県は,平成19年度試験又は平成20年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格となった53名に対する損害賠償金合計9045万円を,平成22年度大分県一般会計予算歳出第10款教育費第1項教育総務費第3目教職員人事費のうち,小・中学校人事管理費から支出したところ,第一寄付に係る合計4842万4616円は,上記の小・中学校人事管理費の財源に充てられた(乙4の3の2,4の4,21,23,24,弁 3目教職員人事費のうち,小・中学校人事管理費から支出したところ,第一寄付に係る合計4842万4616円は,上記の小・中学校人事管理費の財源に充てられた(乙4の3の2,4の4,21,23,24,弁論の全趣旨)。 (ウ) 県教委教育委員有志及び教育長経験者有志代表Pは,平成24年2月1日,被告に対し,平成19年度試験及び平成20年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して大分- 48 -県が支払った損害賠償金について大分県が求償対象者に対する求償権を行使した結果,大分県が得る歳入の一部として,500万円の寄付(第二寄付)を行った。(乙7の1)第二寄付の「寄付申込書」(乙7の1)には,「平成18年度及び平成19年度実施の教員採用選考試験〔判決注・平成19年度試験及び平成20年度試験〕に係る賠償金について,大分県教育委員会が求償対象者7人に対して支払を求めている計9,479,488円につき,求償額の財源の一部を寄附するもの。」との記載がある。 大分県は,平成24年2月2日,第二寄付を受納した。この際,第二寄付は,平成19年度試験又は平成20年度試験の不正に関与した者らに対する大分県による求償額の財源の一部に寄付し,これに充当するものとされた。(乙31)大分県は,第二寄付を,平成23年度大分県一般会計予算歳入第11款寄附金第1項寄附金第5目教育費寄附金の教育総務費寄附の節において,「教員採用選考試験賠償求償金補てん分」に充てた。(乙25から30)ウ(ア) 第一寄付は,教員採用選考試験の救済者に対する特別支援事業の協力者らが,平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して大分県が支払った損害賠償金の財源に充当してほしいとの趣旨を明示して拠出されたもの 支援事業の協力者らが,平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して大分県が支払った損害賠償金の財源に充当してほしいとの趣旨を明示して拠出されたものであり,大分県も,これを前記損害賠償金の財源に充当することとして受納している。そして,大分県が平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対する損害賠償金を計上した平成22年度大分県一般会計予算においても,第一寄付は,前記損害賠償金の財源の一部に充てられている。 そうすると,大分県は,第一寄付により,平成19年度試験又は平- 49 -成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して支払うべき損害賠償金の財源の一部について,実質的にその補てんを受けたものと評価することができる。 (イ) また,第二寄付は,県教委教育委員有志及び教育長経験者が,平成22年度に平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して損害賠償金を支払った大分県に対して,平成19年度試験又は平成20年度試験における不正に関与した者に対して取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権を行使することにより大分県の歳入となるべき財源の一部に充当してほしいとの趣旨を明示して拠出されたものであり,大分県は,これを受納し,前記財源の一部に充当している。そして,平成23年度大分県一般会計予算において,第二寄付は,平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して支払われた損害賠償金が計上された教育総務費に対応する教育総務費寄附の節に計上されている。 そうすると,大分県は,第二寄付により,平成19年度試験 格していたにもかかわらず不合格となった者に対して支払われた損害賠償金が計上された教育総務費に対応する教育総務費寄附の節に計上されている。 そうすると,大分県は,第二寄付により,平成19年度試験又は平成20年度試験における不正に関与した者に対して取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の一部について,実質的にその補てんを受けたものと評価することができる。 (ウ) したがって,大分県が被った損害は本件寄付により回復又は補てんされたものと認められるから,大分県が平成19年度試験又は平成20年度試験における不正に関与した者に対して取得した国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の一部が本件寄付によって消滅しておらず,求償権が客観的に存在しているとしても,被告が,本件寄付に相当する金額について,F,D,E及びCに対する求償権を行使しないことを違法と評価することはできな- 50 -い。 (4) 争点(4)(Fが返納した退職手当相当額を求償しないことが違法か)についてア被告は,求償権に係る専門家委員会の報告により求償権の行使に当たって考慮すべきとされた,県教委の指導監督上の落ち度による過失相殺又は信義則上の求償制限がされるべきことなどを全体的・総合的に考慮し,これらの総和として,現に大分県の歳入金となったFが返納した退職手当に相当する額を,求償総額から控除することが適切であると判断したと主張する。 イ国家賠償法1条2項に基づく求償権及び共同不法行為者に対する求償権は,債権の存否自体が必ずしも明らかでない場合が多い上,求償の相手方である公務員等による加害行為の態様及びこれに至った経緯等には様々なものがあり得る。また,たとえ被害者に賠償を行った地方公共団体の長がその賠償額の 体が必ずしも明らかでない場合が多い上,求償の相手方である公務員等による加害行為の態様及びこれに至った経緯等には様々なものがあり得る。また,たとえ被害者に賠償を行った地方公共団体の長がその賠償額の全額を加害者たる公務員等に求償すべきと判断したとしても,当該求償訴訟を提起された裁判所は,必ずしも地方公共団体の長のかかる判断に拘束されるものではない。そのため,前記のとおり,地方公共団体の長に当該地方公共団体が有する債権の行使又は不行使について原則として裁量がないことを考慮しても,被害者に賠償を行った地方公共団体の長が,加害者たる公務員等に対して,国家賠償法1条2項に基づく求償権及び共同不法行為者に対する求償権を行使するに当たっては,常にその賠償額の全額を求償することを要すると解することは相当でなく,加害行為の態様やこれに至った経緯等,諸般の事情を総合的に考慮して過失相殺又は信義則上の制限を加えること自体は許されるというべきである。 しかし,前記第2の2の各事実によれば,F,H及びIらは,県教委の幹部職員であると認められる上,F,H及びIらが平成19年度試験- 51 -又は平成20年度試験において行った不正は,故意による犯罪行為でもある。また,前記のFの不正行為の内容によれば,当該不正の発覚時に同人が大分県に在職していれば,Hら同様,Fも懲戒免職処分を受け退職手当が支給されなかったものと推認されるから,たとえ同人が支給済みの退職手当を全額返納したとしても,本来支給されるべきでなかった金員が返納されたにすぎないものと評価されるにもかかわらず,被告は,結果として,Fの退職手当の全額に相当する金員を求償額から差し引いている。 地方公共団体が有する財産の適正な管理の観点からすると,このような事実関係の下において,被告が,Fの退職手当の 被告は,結果として,Fの退職手当の全額に相当する金員を求償額から差し引いている。 地方公共団体が有する財産の適正な管理の観点からすると,このような事実関係の下において,被告が,Fの退職手当の全額に相当する金員(全賠償額9045万円の約3割6分に相当する。)を差し引くに当たっては,県教委の指導監督上の落ち度が相当程度認められることを,入手した証拠資料から可能な限り具体的に明らかにし,求償権の行使に当該制限を加えること(当該金額を差し引くこと)が相当と認められる必要があるというべきである。ところが,被告は,本訴第9回口頭弁論期日において,当裁判所から,現にFが返納した退職手当に相当する金額を求償額から控除することが適切であると判断した具体的な理由について釈明を求められたにもかかわらず,県教委の指導監督上の落ち度を基礎付ける事実について,具体的な主張をしない。 また,前記のとおり,求償権に係る専門家委員会は,このほかに,H,I,D,E及びCに対して退職手当が支給されなかったこと,Hが免責許可決定を受けたこと,Iが死亡したこと,Mは平成20年度試験における不正では補助的な立場にあったにとどまり,停職4か月の処分を受けていることなどを考慮すべきとしているが,これらの事情のうち,Hらに退職手当が支給されなかったことについては,懲戒免職処分を受けた者らには本来退職手当は支給されないため,これをもって求償額の減- 52 -額根拠とするには,上記のF同様,入手した証拠資料から可能な限り具体的な説明をし求償権の行使の制限が相当と認められる必要があるというべきであるし,上記のその他の事情については,原告ら及び参加人らが被告に求償権の行使を求めるF,C,D及びEに対する関係においては,被告による国家賠償法1条2項又は共同不法行為者に対する求償 というべきであるし,上記のその他の事情については,原告ら及び参加人らが被告に求償権の行使を求めるF,C,D及びEに対する関係においては,被告による国家賠償法1条2項又は共同不法行為者に対する求償権の行使を制限する影響を及ぼす作用があるものとは認められない。 したがって,大分県がF,C,D及びEに対して有する国家賠償法1条2項に基づく求償権又は共同不法行為者に対する求償権の被告による行使が,過失相殺又は信義則により制限されるとは認められないというべきである。 被告の前記主張は,採用できない。 (5) まとめ以上を基に,大分県がF,C,D及びEに対して有する求償権のうち,被告が行使を違法に怠っている金額を検討すると,次のとおりとなる。 ア前記1項のとおり,大分県は,まず,次の各求償権を取得した。 (ア) 平成19年度試験の不正に関与した者に対する求償権aF,H及びIに対して連帯して(ただし,D及びEとは50万円の限度)7095万円bD及びEに対して,F,H及びIと連帯して50万円(イ) 平成20年度試験の不正に関与した者に対する求償権aH,I及びMに対して連帯して(ただし,Cとは45万円の限度)1950万円bCに対して,H,I及びMと連帯して45万円イ大分県は,平成23年2月14日及び平成23年3月16日,第一寄付合計4842万4616円を受納したところ,第一寄付によって,大分県は,平成19年度試験又は平成20年度試験に本来合格していたに- 53 -もかかわらず不合格となった者に対して支払うべき損害賠償金の財源の一部について,実質的にその補てんを受けたものと評価することができる。そして,第一寄付によって平成19年度試験及び平成20年度試験において支払われたそれぞれの財源の一部に充当さ き損害賠償金の財源の一部について,実質的にその補てんを受けたものと評価することができる。そして,第一寄付によって平成19年度試験及び平成20年度試験において支払われたそれぞれの財源の一部に充当された金額を,平成19年度試験及び平成20年度試験について大分県が支払った損害賠償金の額により比例按分すると,平成19年度試験については,3798万4815円(第一寄付4842万4616円×平成19年度試験の和解額7095万円÷総和解額9045万円≒3798万4815円),平成20年度試験については,1043万9801円(第一寄付4842万4616円×平成20年度試験の和解額1950万円÷総和解額9045万円≒1043万9801円)となり,これらの金額について,被告が求償権を行使しないことは違法と評価されない。 そうすると,第一寄付を受けた被告が求償すべき金額は,次のとおりとなる。 (ア) 平成19年度試験の不正に関与した者に対する求償権aF,H及びIに対して連帯して(ただし,D及びEとは50万円の限度)3296万5185円(計算式)7095万円-3798万4815円=3296万5185円bD及びEに対して,F,H及びIと連帯して50万円(イ) 平成20年度試験の不正に関与した者に対する求償権aH,I及びMに対して連帯して(ただし,Cとは45万円の限度)906万0199円(計算式)1950万円-1043万9801円=906万0199円bCに対して,H,I及びMと連帯して45万円- 54 -ウ前記のとおり,大分県に対して,K夫妻は平成23年11月29日に44万4687円,Cは平成23年11月30日に20万8648円,Mは平成23年12月21日に187万2520円を,それぞれ弁済している。したがって,大 県に対して,K夫妻は平成23年11月29日に44万4687円,Cは平成23年11月30日に20万8648円,Mは平成23年12月21日に187万2520円を,それぞれ弁済している。したがって,大分県が有する求償権は,これらの限度で消滅した(K夫妻による弁済額は平成19年度試験の不正に関与した者に対する求償額,C及びMによる各弁済額は平成20年度試験の不正に関与した者に対する求償額を,それぞれ減少させた)ものと認められる。 これにより,被告が求償すべき金額は,次のとおりとなる。 (ア) 平成19年度試験の不正に関与した者に対する求償権aF,H及びIに対して連帯して(ただし,D及びEとは5万5313円の限度)3252万0498円(計算式)3296万5185円-44万4687円=3252万0498円bD及びEに対して,F,H及びIと連帯して5万5313円(計算式)50万円-44万4687円=5万5313円(イ) 平成20年度試験の不正に関与した者に対する求償権aH,I及びMに対して連帯して(ただし,Cとは24万1352円の限度)697万9031円(計算式)906万0199円-20万8648円-187万2520円=697万9031円bCに対して,H,I及びMと連帯して24万1352円(計算式)45万円-20万8648円=24万1352円エ大分県は,平成24年2月2日,第二寄付500万円を受納した。第二寄付によって,大分県は,平成19年度試験及び平成20年度試験に本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して支払うべき損害賠償金の財源の一部について,実質的にその補てんを受けたものと- 55 -評価することができる。そして,第二寄付によって平成19年度試験及び平成20年度試験において支払われ に対して支払うべき損害賠償金の財源の一部について,実質的にその補てんを受けたものと- 55 -評価することができる。そして,第二寄付によって平成19年度試験及び平成20年度試験において支払われたそれぞれの財源の一部に充当された金額を,前記ウ項の平成19年度試験及び平成20年度試験の不正に関与した者に対して被告が行使すべき求償権の額により比例按分すると,平成19年度試験については,411万6568円(第二寄付500万円×平成19年度試験に係る求償額3252万0498円÷総求償額3949万9529円≒411万6568円),平成20年度試験については,88万3432円(第二寄付500万円×平成20年度試験に係る求償額697万9031円÷総求償額3949万9529円≒88万3432円)となり,これらの金額について,被告が求償権を行使しないことは違法と評価されない。 そうすると,第二寄付を受けた被告が求償すべき金額は,次のとおりとなる。 (ア) 平成19年度試験の不正に関与した者に対する求償権aF,H及びIに対して連帯して(ただし,D及びEとは5万5313円の限度)2840万3930円(計算式)3252万0498円-411万6568円=2840万3930円bD及びEに対して,F,H及びIと連帯して5万5313円(イ) 平成20年度試験の不正に関与した者に対する求償権aH,I及びMに対して連帯して(ただし,Cとは24万1352円の限度)609万5599円(計算式)697万9031円-88万3432円=609万5599円bCに対して,H,I及びMと連帯して24万1352円オ Fは,平成24年2月7日,国家賠償法1条2項による求償に応じ,- 56 -大分県に対し,195万3633円を弁済した。したがって, bCに対して,H,I及びMと連帯して24万1352円オ Fは,平成24年2月7日,国家賠償法1条2項による求償に応じ,- 56 -大分県に対し,195万3633円を弁済した。したがって,平成19年度試験の不正に関与したF,H及びIに対して大分県が有する求償権は,この限度で消滅したものと認められる。 これにより,被告が求償権を行使すべき金額は,次のとおりとなる。 (ア) 平成19年度試験の不正に関与した者に対する求償権aF,H及びIに対して連帯して(ただし,D及びEとは5万5313円の限度)2645万0297円(計算式)2840万3930円-195万3633円=2645万0297円bD及びEに対して,F,H及びIと連帯して5万5313円(イ) 平成20年度試験の不正に関与した者に対する求償権aH,I及びMに対して連帯して(ただし,Cとは24万1352円の限度)609万5599円bCに対して,H,I及びMと連帯して24万1352円カ小括以上によれば,大分県が有する求償権のうち,被告が行使を違法に怠っている金額は,それぞれ,Fに対し2645万0297円,Cに対し24万1352円,Dに対し5万5313円,Eに対し5万5313円となる。 第5 結論よって,原告らの訴え及び参加人らの訴えのうち,地方自治法138条の4第3項に基づく条例の制定によって不正な得点操作の調査のための機関を設置し,又は同法174条に基づく専門委員を置き,前記機関又は専門委員の調査により前記受験者らの教員として採用される地位を侵害した者を特定した上で,その者へ,被告と大分県平成19年度公立学校教員採用選考試験又は大分県平成20年度公立学校教員採用選考試験で不正な得点操作のあお- 57 -りを受け不合格とされた53名 侵害した者を特定した上で,その者へ,被告と大分県平成19年度公立学校教員採用選考試験又は大分県平成20年度公立学校教員採用選考試験で不正な得点操作のあお- 57 -りを受け不合格とされた53名の受験者らとの間の和解協議にかかる損害賠償金として前記受験生らに支払った合計9045万円のうち少なくとも8597万0512円につき,求償権を行使することを怠る事実が違法であることの確認を求める訴え,並びに原告らの行政事件訴訟法に基づく追加的併合により追加的に併合した訴えである,被告がA及びBに対し,8597万0512円の求償権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める訴え,及び被告にA及びB各自に対し8597万0512円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払の請求を求める訴えは不適法であるから,これらをいずれも却下し,その余の原告ら及び参加人らの請求のうち,被告に,Cに対し,共同不法行為者に対する求償権24万1352円及びこれに対する損害賠償金支払の日の後である平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による利息,K夫妻それぞれに対し,共同不法行為者に対する求償権5万5313円及びこれに対する損害賠償金支払の日の後である平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による利息,Fに対し国家賠償法1条2項に基づく求償権2645万0297円及びこれに対する損害賠償金支払の日の後である平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による利息の各支払の請求を求める限度で理由があるから,これらを認容し,その余の原告ら及び参加人らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官宮武康 その余の原告ら及び参加人らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 大分地方裁判所民事第2部 理由 裁判長裁判官宮武康 裁判官大島広規 裁判官五味亮一

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