平成30年3月22日判決言渡平成29年(行ウ)第126号建築確認処分取消等請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 大阪市建築主事が平成28年8月8日付けでF株式会社に対してした建築確認(確認番号阿倍野α号)を取り消す。 2 大阪市建築審査会が平成29年6月1日付けでした,原告らの審査請求を棄 却する旨の裁決を取り消す。 第2 事案の概要F株式会社(以下「本件建築主」という。)は,大阪市α区β(住所省略)の一部である別紙図面のA区画(以下「本件土地」という。)に地上5階建ての賃貸マンション(以下「本件建物」という。)の建築を計画し(以下,この計画を 「本件計画」という。),平成28年7月15日付けで建築確認申請をしたところ,大阪市建築主事は,同年8月8日付けで,本件計画につき建築確認(以下「本件建築確認」という。)をした。 本件は,本件土地の周辺に居住する原告らが,本件土地につき都市計画法29条1項の開発許可を経ていないから本件建築確認は違法であるなどと主張して, その取消しを求めるとともに,本件建築確認に係る原告らの審査請求を棄却した裁決(以下「本件裁決」という。)の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め(1) 建築基準法関係ア建築基準法6条1項前段は,建築主は,同項各号に掲げる建築物を建築 しようとする場合においては,当該工事に着手する前に,その計画が建築 基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の 計画が建築 基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて,確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならな い旨規定し,同条4項は,建築主事は,同条1項の申請書を受理した場合においては,所定の期間内に,申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し,審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは,当該申請者に確認済証を交付しなければならない旨規定する。 建築基準法施行令9条は,建築基準法6条1項の政令で定める規定は,同項各号に掲げる法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令及び条例の規定で建築物の敷地,構造又は建築設備に係るものとする旨規定し,同施行令9条12号は,都市計画法29条1項等を掲げている。 イ建築基準法42条1項は,同法第3章の規定において「道路」とは,同 章の規定が適用されるに至った際現に存在する道(3号)等に該当する幅員4m以上のものをいう旨規定し,同条2項本文は,同章の規定が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で,特定行政庁の指定したものは,同条1項の規定にかかわらず,同項の道路とみなし,その中心線からの水平距離2mの線をその道路の境界線とみなす旨規 定する。 (2) 都市計画法関係ア都市計画法4条12項は,同法において「開発行為」とは,主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう旨規定し,同条13項は,同 市計画法関係ア都市計画法4条12項は,同法において「開発行為」とは,主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう旨規定し,同条13項は,同法において「開発区域」と は,開発行為をする土地の区域をいう旨規定する。 イ都市計画法29条1項本文は,都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は,あらかじめ,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事(指定都市等の区域内にあっては,当該指定都市等の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない旨規定する。 ウ都市計画法33条1項柱書は,都道府県知事は,開発許可の申請があった場合において,当該申請に係る開発行為が,同項各号に掲げる基準に適合しており,かつ,その申請の手続が同法又は同法に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは,開発許可をしなければならない旨規定し,同項3号は,排水路その他の排水施設が,当該地域における降水量(同号 イ)等を勘案して,開発区域内の下水道法2条1号に規定する下水を有効に排出するとともに,その排出によって開発区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されるように設計が定められていることを掲げている。 エ都市計画法施行規則60条は,建築基準法6条1項の規定による確認済 証の交付を受けようとする者は,その計画が都市計画法29条1項等の規定に適合していることを証する書面の交付を都道府県知事等に求めることができる旨規定する。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は特に断らない限り枝番号 を都道府県知事等に求めることができる旨規定する。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は特に断らない限り枝番号 を含む。)(1) 原告らは,本件土地の周辺に居住する住民である(甲7)。 (2) 別紙図面のA区画からE区画までの各区画(以下,併せて「本件全体土地」という。)は,かつて,株式会社第一勧業銀行がこれを所有し,同社の社宅の敷地として利用されていたが,その後,本件建築主が,本件全体土地を取 得して所有している。 本件全体土地には,別紙図面のとおり,昭和55年頃に建築された複数の建物(以下,併せて「旧社宅建物」という。)が存在していた(甲8,24)。 (3) 本件土地は都市計画区域(第2種中高層住居地域)内にあるところ,本件建築主は,平成28年5月27日付けで,大阪市長に対し,「開発許可要否判定願書」を提出し,本件土地に係る開発許可の要否の判定を求めたところ, 大阪市長は,本件土地につき開発許可は不要である旨の判定(以下「本件不要判定」という。)をした(甲2,乙4)。 (4) 本件建築主は,平成28年7月15日付けで,本件計画につき建築確認申請をしたところ,大阪市建築主事は,同年8月8日付けで,同申請につき本件建築確認をした(甲1)。 (5) 原告らは,平成28年11月7日付けで,本件建築確認につき審査請求をしたが(甲19),大阪市建築審査会は,平成29年6月1日付けで,上記審査請求をいずれも棄却する旨の本件裁決をした(甲20)。 (6) 原告らは,平成29年7月13日,本件建築確認及び本件裁決の取消しを求めて本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 主たる争点 をいずれも棄却する旨の本件裁決をした(甲20)。 (6) 原告らは,平成29年7月13日,本件建築確認及び本件裁決の取消しを求めて本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 主たる争点(1) 本件建築確認取消請求の争点ア原告らは本件建築確認の取消しを求める法律上の利益(原告適格)を有するか(本案前の争点)イ建築確認の取消訴訟において,その敷地につき開発許可を経ないことが 違法である旨の主張をすることができるかウ本件全体土地に係る開発許可を経ていないことにより,本件建築確認は違法となるか(2) 本件裁決取消請求の争点大阪市建築審査会が開発許可の要否に関する審査権限を有しないと判断し たことにより,本件裁決は違法となるか 4 主たる争点に関する当事者の主張の要旨(1) 本件建築確認取消請求の争点ア原告らは本件建築確認の取消しを求める法律上の利益(原告適格)を有するか(本案前の争点)(原告らの主張) (ア) 溢水による被害を受けるおそれ建築基準法6条,19条3項,建築基準法施行令9条12号並びに都市計画法29条1項及び33条1項3号の趣旨及び目的,これらの規定が保護しようとしている利益の内容,性質等に鑑みれば,建築基準法6条1項の建築確認は,同法19条3項及び都市計画法33条1項3号に 適合することの確認を通じて,当該建築物の敷地の安全性の確保を図るとともに,溢水による被害が直接的に及ぶことが想定される一定範囲の地域に居住する者の生命,身体の安全等や財産である当該地域の不動産を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解される。したがって,建築計画に係 接的に及ぶことが想定される一定範囲の地域に居住する者の生命,身体の安全等や財産である当該地域の不動産を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解される。したがって,建築計画に係る土地からの排水が都市計画法33条 1項3号に規定する溢水のおそれがある場合における「その排出によって開発区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じる」地域に居住し又は不動産を所有している者は,当該建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解すべきである。 原告らは大阪市α区β(住所省略)(以下「β地域」という。)に居住しているところ(甲7),β地域は,平成23年及び平成24年の2度にわたり浸水被害が発生し(甲36,37),大阪市の作成したハザードマップにも浸水被害の可能性が示されている(甲35)など,浸水被害を被る可能性が高い地域である。そして,本件土地はβ地域の上流 に位置しているため,溢水対策の適否を審査する開発許可がされなけれ ば,本件土地から流出する雨水によりβ地域の大規模な溢水被害をもたらす可能性が高い。したがって,原告らは,本件建築確認の取消しを求める法律上の利益(原告適格)を有するというべきである。 (イ) 倒壊,炎上等による被害を受けるおそれ建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される 範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である(最高裁判所平成14年1月22日第三小法廷判決・民集56巻1号46頁参照)。 原告らは,本件土地から の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である(最高裁判所平成14年1月22日第三小法廷判決・民集56巻1号46頁参照)。 原告らは,本件土地から150m以内の建築物に居住する者であるか ら,本件建物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住する者として,本件建築確認の取消しを求める法律上の利益(原告適格)を有するというべきである。被告も,審査請求の段階において,原告らの審査請求人適格を争っていなかったものであり,本件裁決においても,原告ら全員につき,審査請求 人適格が認められている。 また,少なくとも,原告G,同H,同I,同J及び同Kの5名は,本件建物から28m(本件建物の高さの2倍)以内の範囲に居住する者であるから,本件建築確認の取消しを求める法律上の利益を有するというべきである。 (被告の主張)(ア) 溢水による被害を受けるおそれ原告らは,都市計画法33条1項3号や建築基準法19条3項の規定を指摘し,溢水による被害を受けるおそれを理由として,本件建築確認の取消しを求める法律上の利益を有する旨主張する。 しかし,本件建築確認は開発許可が不要であることを前提とする建築 確認であり,都市計画法33条1項3号の適用はないから,この規定から原告らの原告適格を基礎付けるのは無理がある。また,建築基準法19条3項は,周辺の土地を溢水から保護する趣旨の規定ではなく,適切な排水により敷地の衛生を確保する趣旨の規定であるから,この規定から原告らの原告適格を基礎付けることもできない。 (イ) 倒壊,炎上等による被害を受けるおそれ 趣旨の規定ではなく,適切な排水により敷地の衛生を確保する趣旨の規定であるから,この規定から原告らの原告適格を基礎付けることもできない。 (イ) 倒壊,炎上等による被害を受けるおそれ本件建物の高さは14.315mであって,前掲最高裁判所平成14年1月22日第三小法廷判決等の事案のような高層建築物ではないから,倒壊,炎上等により影響する範囲は,本件建物の高さと同程度とみるべきである。 原告らが居住又は所有する建築物と本件建物との距離は,本件建物に最も近い原告Hの所有する建築物からも目視で15m程度は離れており,原告らが居住又は所有する建築物は,いずれも本件建物の倒壊,炎上等により直接的に被害を受ける範囲内にはなく,したがって,原告らに本件建築確認の取消しを求める法律上の利益(原告適格)があるとは認め られない。 イ建築確認の取消訴訟において,その敷地につき開発許可を経ないことが違法である旨の主張をすることができるか(原告らの主張)建築主事は,開発許可を不要とする知事等の判断に拘束されることなく, 開発許可の要否について最終的に判断し,確認する権限(実質的審査権限)を有しているというべきである(これと同旨をいう裁判例として,東京高等裁判所平成12年4月13日判決・判例地方自治204号68頁,大阪地方裁判所平成21年9月9日判決・判例地方自治331号75頁がある。)。したがって,建築確認の取消訴訟において,その敷地につき開発 許可を経ないことが違法である旨の主張をすることは許される。 開発許可を不要とする判断やその証明書の発行には処分性がないとされているため,当該敷地の周辺の住民は,その時点において,当該判断 ないことが違法である旨の主張をすることは許される。 開発許可を不要とする判断やその証明書の発行には処分性がないとされているため,当該敷地の周辺の住民は,その時点において,当該判断の適否を争う機会がない。したがって,住民は,上記判断に基づいて行われる建築確認の取消訴訟において,上記判断の適否について争うしかないのであり,これを否定する被告の主張は不合理である。 (被告の主張)原告らは,建築主事には開発許可の要否に関する実質的審査権限があると主張し,これに沿う裁判例を指摘する。 しかし,建築主事は上記の実質的審査権限を有しないとする裁判例(東京高等裁判所平成4年9月24日・行政事件裁判例集43巻8-9号11 72頁,横浜地方裁判所平成17年2月23日・判例地方自治265号83頁等)もあり,これらの裁判例においては,建築主事に開発許可の要否に関する実質的審査権限を認めると,建築主事の判断が開発許可権者である都道府県知事等の判断に抵触する場合があることを認めることになるが,これは開発許可に関する権限を都道府県知事等の専権に委ねている都 市計画法の趣旨に反することなどが述べられている。また,学説においても,開発許可の要否に係る建築主事の実質的審査権限を否定する立場が多い。 また,行政実務上,建築確認の際に開発行為の要否に関する実質的な審査は行われていないし,これが必要であるとも解されない。さらに,開発 許可と建築確認とは趣旨及び目的が異なること,建築主事となるための建築基準適合判定資格者検定(建築基準法5条)の受験資格をみても,開発許可に関する審査能力は要求されていないこと,建築主事は,建築確認申請の審査に当たり,開発許可に関する書類を当然には入 なるための建築基準適合判定資格者検定(建築基準法5条)の受験資格をみても,開発許可に関する審査能力は要求されていないこと,建築主事は,建築確認申請の審査に当たり,開発許可に関する書類を当然には入手することができないことからすれば,建築基準法及び都市計画法は,建築主事が建築確認 を行う際,開発許可の要否に係る実質的な審査を要求していないというべ きである。 したがって,建築確認の取消訴訟において,その敷地につき開発許可を経ないことが違法である旨の主張をすることは許されない。 ウ本件全体土地に係る開発許可を経ていないことにより,本件建築確認は違法となるか (原告らの主張)(ア) 主張の骨子本件全体土地は,旧社宅建物の敷地として,一体として利用されていた。しかし,本件建築主は,本件全体土地を一括して取得し,その再開発事業を計画しながら,本件全体土地内に建築基準法42条1項1号の 道路(本件土地の東側の道路。以下「本件1号道路」という。),同項3号の道路(本件土地の西側の道路。以下「本件3号道路」という。)及び同条2項の道路(本件土地の南側の道路。以下「本件2項道路」という。)が存在するとして,本件全体土地から本件土地を分割した。その結果,本件土地については開発許可を受ける必要はないと判断され(本 件不要判定),これを前提に,本件建築確認が行われた。 しかし,本件全体土地は一体の土地であるから,全体として開発許可を受ける必要があり(後記(イ)参照),少なくとも,本件3号道路及び本件2項道路はいずれも建築基準法所定の要件を欠いており(後記(ウ)参照),A区画,B区画及びE区画(以下「ABE区画」という。)は一 体の区画で 記(イ)参照),少なくとも,本件3号道路及び本件2項道路はいずれも建築基準法所定の要件を欠いており(後記(ウ)参照),A区画,B区画及びE区画(以下「ABE区画」という。)は一 体の区画であるから,本件土地のみを対象として開発許可を不要と判断した本件不要判定は,意図的な分割による開発規制の潜脱を許した違法なものであり,違法な本件不要判定を前提とする本件建築確認も違法である。 (イ) 本件全体土地の一体性について 建築確認が機関委任事務であった時代に,建設省が示した質疑応答(甲 39)には,全体として一連のものとして行われていることにより,一体的な開発行為ととらえることができる場合には,その全体を開発許可の対象とすることが妥当であるとの見解が示されている。また,被告(大阪市)は,上記の一連一体性に係る判断の基準を定めてはいないが,全国の多くの地方公共団体がこれを定めており(甲40,41),その内 容に照らせば,本件全体土地は一連一体のものと判定される。 また,①本件全体土地は,もともと同一の所有者が所有していた土地であり,旧社宅建物の敷地として一体的に利用されていたこと,②本件建築主は,本件全体土地を一括して取得し,本件全体土地につき連続して再開発事業を進めていること,③本件全体土地内の道路の設置や改廃 等が,全体として同一の意図の下に,相互に関連して計画されて進められていることなどの事情に鑑みると,本件全体土地に係る再開発事業は一連性が極めて強く,本件全体土地は一体として開発許可を受けるべきものである。 したがって,本件全体土地が分割されていることを前提として,その 全体につき開発許可の規制を及ぼさなかった本件不要判定は,都市計画法 一体として開発許可を受けるべきものである。 したがって,本件全体土地が分割されていることを前提として,その 全体につき開発許可の規制を及ぼさなかった本件不要判定は,都市計画法の解釈を誤るものであって違法である。 (ウ) 本件3号道路及び本件2項道路の不存在について建築基準法42条1項3号の道路は,「この章の規定が適用されるに至った際現に存在する道」であり,同条2項の道路は,「この章の規定 が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で,特定行政庁の指定したもの」である。したがって,本件3号道路及び本件2項道路が同法所定の道路であるかどうかは,建築基準法が施行された昭和25年11月23日(以下「基準日」という。)を基準として判断されることになる。 しかし,本件全体土地に旧社宅建物が建築されたのは,株式会社第一 勧業銀行(当時は株式会社日本勧業銀行)が本件全体土地を取得した昭和26年以降であり,それ以前は個人の邸宅の敷地であったから,基準日において,本件3号道路及び本件2項道路の部分に道は存在しなかった。また,昭和26年以降に社宅が建築された後も,その敷地内への一般人の立入りは規制され,一般人が自由に通行することはできなかった から,上記部分は社宅の敷地内の通路であったにすぎない。大阪市建築主事も,基準日に上記部分に道が存在したことの明確な証拠がないことを認めており,かえって,基準日に上記部分に道が存在しなかったことを裏付ける多数の証拠が存在する。 したがって,本件3号道路部分は建築基準法42条1項3号の道路と はいえず,本件2項道路部分は同条2項の道路とはいえないから,これらが存在することを前提に,本件土地 が存在する。 したがって,本件3号道路部分は建築基準法42条1項3号の道路と はいえず,本件2項道路部分は同条2項の道路とはいえないから,これらが存在することを前提に,本件土地を独立の区画としてされた本件不要判定は,違法である。 (被告の主張)(ア) 原告らの主張には法的な根拠がないこと a 原告らの主張は,要するに,本件全体土地は一体の土地であるから,その全体を対象として開発許可を経る必要があるのに,これがされていないから違法であるというものと解されるところ,このような主張が認められるには,その前提として,本件建築主において,法律上,本件全体土地の全体を開発区域として開発許可を申請する義務がある ことが認められなければならない。 しかし,都市計画法は,開発区域の設定について,「開発行為をする土地の区域をいう。」(4条13項)という簡単な定義規定を置いているにすぎず,開発許可申請書の記載事項等を定める同法30条をみても,開発区域については,開発許可申請書の記載事項として位置, 区域及び規模を記載すれば足りるものとされており(同条1項1号), 開発区域の設定の方法については何ら規制はなく,その申請者が定めるところに委ねられている。また,同法33条1項は,都道府県知事等は,開発許可の申請に係る開発行為が,同項各号に定める基準に適合し,かつ,その申請の手続が同法又は同法に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは,開発許可をしなければならない旨規定 しており,都道府県知事等は,開発区域の設定が不当であったからといって,開発許可申請を不許可とすることはできない。このように,本件全体土地につき一体として開発許可を受ける義務 ばならない旨規定 しており,都道府県知事等は,開発区域の設定が不当であったからといって,開発許可申請を不許可とすることはできない。このように,本件全体土地につき一体として開発許可を受ける義務があるとする原告らの主張は,法的な根拠のない主張である。 b また,建築基準法6条によれば,建築確認の対象は飽くまでも申請 に係る建築計画であるから,建築主事は,建築確認の申請に係る建築計画の敷地について建築基準関係規定適合性を審査すれば足り,その周辺の土地など上記敷地以外の土地についてこれを審査する権限も義務もないことは条文上明白である。 したがって,大阪市建築主事には,本件全体土地の全体につき,開 発許可の要否について審査をする義務はない。 (イ) 本件全体土地の一体性について原告らは,本件全体土地が旧社宅建物の敷地として一体的に利用されていたと主張するが,本件全体土地は,9つの区画された建築敷地とそれらに接する道路からなっており(甲8),それぞれに別個の建築物が 建築され,地番等も複雑に分かれていたのであり,全体で一つの敷地のように一体的に利用されていたものとはいえない。 また,原告らは,本件建築主が本件全体土地を一括して取得し,一体的な計画の下に連続して再開発事業を進めているなどと主張するが,本件全体土地は4つの区画に分けて開発される計画とされており,A区画 (本件土地)は本件建築主が開発しているが,D区画は本件建築主と三 菱地所レジデンス株式会社が開発許可を受けて開発しており,B区画及びC区画については開発者や事業計画はまだ決定していないのであり,一体的な計画の下に開発が進められているとはいえない。 原告らは,神 ンス株式会社が開発許可を受けて開発しており,B区画及びC区画については開発者や事業計画はまだ決定していないのであり,一体的な計画の下に開発が進められているとはいえない。 原告らは,神奈川県及び山形県の取扱い(甲40,41)を指摘するが,これらの基準は,各地方公共団体が独自に定めた法的根拠のない内部 的な取扱基準にすぎず,法的効果を有するものではないし,被告はこのような基準を設けていないから,本件の参考にはなり得ない。また,神奈川県等の上記基準によっても,当初から一体的に開発許可の申請を行う義務は導かれないし,先行する開発許可申請を不適法なものとして取り扱うものともされていない。 (ウ) 本件3号道路及び本件2項道路の不存在について原告らは,本件3号道路及び本件2項道路は存在しないと主張するが,少なくとも社宅が廃止される時点で,これらの道路が車両通行可能な通路として存在しており,これにより旧社宅建物の敷地が区画されていたことは,当時の図面や写真(乙2)により明らかである。 原告らは,本件3号道路及び本件2項道路は建築基準法42条1項3号及び同条2項の要件(基準日において道であること等)を満たさない旨主張するが,少なくとも,旧社宅建物が建築された時点で,本件3号道路及び本件2項道路が敷地の区画として用いられたことは確かであるし,都市計画法は,開発行為を「区画形質の変更」と規定するのみであ り,その区画が建築基準法42条所定の道路により区画されていなければならない法的根拠はない。なお,基準日において本件3号道路及び本件2項道路が存在したことを裏付ける直接の証拠がないことは認めるが,直接の資料が存在しない場合に,事後の資料から判定するのは当然のことであ ない法的根拠はない。なお,基準日において本件3号道路及び本件2項道路が存在したことを裏付ける直接の証拠がないことは認めるが,直接の資料が存在しない場合に,事後の資料から判定するのは当然のことであり,大阪市長が本件3号道路及び本件2項道路を建築基準法42 条1項3号及び同条2項所定の道路と判定したことは違法ではない。 (2) 本件裁決取消請求の争点大阪市建築審査会が開発許可の要否に関する審査権限を有しないと判断したことにより,本件裁決は違法となるか(原告らの主張)ア大阪市建築審査会は,本件裁決において,「建築基準法施行規則第1条 の3第1項に基づき,建築確認申請書に都市計画法施行規則第60条の証明書が添付されているか否かを審査することができるという範囲にとどまる」として,本件全体土地に係る開発許可の要否につき実質的な審査を行わなかった。 しかし,上記(1)イ(原告らの主張)のとおり,建築主事は,建築確認申 請の審査に当たり,その敷地の開発許可の要否について実質的に審査する権限を有しているというべきである。そして,建築主事に上記の実質的審査権限がある以上,建築審査会にも同様に実質的審査権限があるというべきである。 イ仮に,建築主事には開発許可の要否に関する実質的審査権限がないとし ても,建築審査会においては,建築確認の前提として必要な開発許可がされていないという違法があるかどうかにつき,実質的に審査することができるというべきである。 ウしたがって,本件全体土地に係る開発許可の要否につき実質的な審査を行わなかった本件裁決は,違法である。 (被告の主張)建築審査会は,建築主事等の処分に対する不服申立 したがって,本件全体土地に係る開発許可の要否につき実質的な審査を行わなかった本件裁決は,違法である。 (被告の主張)建築審査会は,建築主事等の処分に対する不服申立てを審査する第三者機関であり,その審査権限は,建築主事等が建築確認申請の審査の際に行使した審査権限の範囲にとどまり,それ以外の事由には及ばないと解される。そして,上記(1)イ(被告の主張)のとおり,建築主事は,建築確認申請の審査 に当たり,その敷地の開発許可の要否について実質的に審査する権限を有し ていないというべきであるから,建築審査会の審査権限もその範囲にとどまるというべきである。また,このように解さないと,審査請求の審査に開発許可権者である都道府県知事等は参加することができないから,判断の適正が担保されない事態が生ずる。 したがって,本件全体土地に係る開発許可の要否につき審査権限が及ばな いとした本件裁決に違法な点はない。 第3 本件建築確認取消請求についての当裁判所の判断 1 原告らは本件建築確認の取消しを求める法律上の利益(原告適格)を有するか(本案前の争点・争点(1)ア)(1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1 項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべき ものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当 の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべき ものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。 そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有 無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに 当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害され ることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項・最高裁判所平成17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁)。 (2) 建築基準法6条1項は,建築主は,同項各号の建築物を建築しようとする場合においては,当該工事に着工する前に,当該計画が建築基準関係規定に 適合するものであることについて建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない旨規定するところ,同法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めることにより国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的としていること(同法1条)に鑑みれば,同法6条の規定する建築確認制度は,建築基準関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止 することにより,究極的には国民の生命,身体及び財 ることなどを目的としていること(同法1条)に鑑みれば,同法6条の規定する建築確認制度は,建築基準関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止 することにより,究極的には国民の生命,身体及び財産の安全を確保することを目的としているというべきである。 そして,建築基準法施行令9条12号によれば,建築基準関係規定には,開発許可に関する都市計画法29条1項等の規定が含まれる。これは,都市計画法が建築物の建築の用に供する目的で行う土地の開発行為を規制するも のであって建築基準法による建築物の敷地の規制と密接な関連性を有することから,建築確認に当たって,建築物の敷地の安全性等に関し,都市計画法の規定の適合性を確認することにより,開発許可制度によって保護しようとしている利益の確実な保護を図り,最終的にはそれを通じて建築基準法1条所定の目的の実現を確保しようとしたものと解される。 (3) 都市計画法33条1項3号は,排水路その他の排水施設について,同号イ及びロに掲げる事項を勘案して,開発区域内の下水を有効に排出するとともに,その排出によって開発区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されるように設計が定められていることを開発許可の基準としているところ,その趣旨は,降水量,開発区域の 規模,形状及び周辺の状況等によっては,必要な措置を講じないままに開発 行為を行うと,下水の排出によって開発区域内及びその周辺に溢水等による被害が生じ,人の生命,身体の安全等が脅かされるおそれがあることに鑑み,そのような事態を防止するために,開発行為の段階で排水施設等の構造及び能力に関する設計内容を審査することとしたものと解される。そして,溢水等が起きた場合の被害は,開発 されるおそれがあることに鑑み,そのような事態を防止するために,開発行為の段階で排水施設等の構造及び能力に関する設計内容を審査することとしたものと解される。そして,溢水等が起きた場合の被害は,開発区域内のみならず開発区域に近接する一定範 囲の地域に居住する住民に直接的に及ぶことが想定される。また,同号の基準を適用するについて必要な技術的細目を定めた都市計画法施行令26条及び29条並びに都市計画法施行規則22条1項及び26条の各規定をみると,同法33条1項3号は,開発許可に際し,溢水等による被害を防止するために設けるべき排水施設等について具体的かつ詳細に審査すべきこととしてい るものと解される。 以上のような同号の趣旨・目的,同号が開発許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等に鑑みれば,同号は,溢水等のおそれのない良好な都市環境の保持・形成を図るとともに,溢水等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全 等を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解すべきである。 (4) しかるところ,上記(2)のとおり,建築基準法6条1項に基づく建築確認は,建築基準関係規定である都市計画法29条1項等に適合することの確認を通じて,開発許可制度によって保護しようとしている利益の保護をも目的とす るものであると解されるから,建築基準法6条1項は,都市計画法33条1項3号が保護しようとしている,溢水等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全等を,当該住民の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。 そうすると,建築確認に係る建築物の敷地からの排 内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全等を,当該住民の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。 そうすると,建築確認に係る建築物の敷地からの排水を原因とする溢水等 が発生した場合に,これにより直接的な被害を受けることが想定される範囲の地域に居住する者は,当該建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。 (5) これを本件についてみるに,証拠(甲7,20,35~37)及び弁論の 全趣旨によれば,①β地域は,本件土地からの排水の流出経路に隣接する地域であること,②原告らは,いずれもβ地域内に居住しており,本件土地に隣接する建物か又は本件土地の150m以内に所在する建物に居住していること,③β地域は,大阪市の作成したハザードマップにおいて,内水氾濫による浸水の可能性が指摘されている地域であり,平成23年8月及び平成2 4年8月には集中豪雨による浸水被害が発生していることが認められる。このような本件土地と原告らの居住建物との位置関係等に照らすと,原告らは,本件土地からの排水を原因とする溢水等が発生した場合に,これにより直接的な被害を受けることが想定される範囲の地域に居住する者に該当するというべきであり,その余の点について判断するまでもなく,本件建築確認の取 消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると認められる。 2 建築確認の取消訴訟において,その敷地につき開発許可を経ないことが違法である旨の主張をすることができるか(本案の争点・争点(1)イ)(1) 建築基準法6条1項は,建築主は,同項各号の建築物を建築しようとする 場 の敷地につき開発許可を経ないことが違法である旨の主張をすることができるか(本案の争点・争点(1)イ)(1) 建築基準法6条1項は,建築主は,同項各号の建築物を建築しようとする 場合においては,当該工事に着工する前に,当該計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない旨規定し,同条4項は,建築主事は,同条1項の申請書を受理した場合においては,所定の期間内に,申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し,審査の結果に基づいて建築 基準関係規定に適合することを確認したときは,当該申請者に確認済証を交 付しなければならない旨規定するところ,建築基準法施行令9条12号によれば,建築基準関係規定には,開発許可に関する都市計画法29条1項等の規定が含まれている。 上記各規定によれば,建築確認申請に係る建築計画が同法29条1項に適合していることは,建築主事が確認すべき事項として,建築確認の要件の一 つとされているのであるから,当該計画が同項に適合していない場合には,当該建築確認は,処分要件を欠くものとして違法となるというべきである。 そして,建築確認申請に係る建築計画が,実体的には開発行為を伴うものであって開発許可を要するものであるのに,これがされていない場合には,当該計画が同法29条1項に適合しないものであることは明らかである。 そうすると,建築確認の取消訴訟において,その敷地につき開発許可を経ないことが違法である旨の主張をすることは,自己の法律上の利益に関係のない違法の主張(行政事件訴訟法10条1項)となる場合を除き,可能であると解するのが相当である。 (2) この点につき,被告は,建築主事 ある旨の主張をすることは,自己の法律上の利益に関係のない違法の主張(行政事件訴訟法10条1項)となる場合を除き,可能であると解するのが相当である。 (2) この点につき,被告は,建築主事は開発許可の要否に関する実質的審査権 限を有しないから,建築確認の取消訴訟において,その敷地につき開発許可を経ないことが違法である旨の主張をすることはできない旨主張する。 しかし,仮に,開発許可がされていない場合において,この点に係る建築主事の審査権限がいわゆる形式的審査権限(都道府県知事等による開発許可を要しない旨の判断がされているか否かのみを審査する権限)にとどまると しても,都道府県知事等による開発許可を不要とする旨の判定行為やその旨を記載した都市計画法施行規則60条所定の証明書の交付には処分性がないと解されているから,先行処分の違法性の承継の議論を経るまでもなく,都道府県知事等の上記判断が客観的に誤っていれば,これを前提としてされた建築確認も処分要件を欠くものとして違法となることは,建築基準法6条1 項及び4項並びに建築基準法施行令9条12号から明らかというべきである。 また,被告の主張によれば,当該計画に係る建築物の近隣に居住する住民は,違法な開発許可がされた場合にはその取消訴訟等を提起してこれを争うことができるにもかかわらず,誤って開発許可が不要とされた場合にはこれを争うことができないこととなり,明らかに不合理である。 したがって,建築主事の開発許可の要否に関する審査権限の内容は,上記 (1)の判断を左右するものではないというべきであるから,被告の上記主張は採用することができない。 (3) なお,念のため付言するに,建築基準法6条1項及び4項並びに建築基準法施行令9条1 (1)の判断を左右するものではないというべきであるから,被告の上記主張は採用することができない。 (3) なお,念のため付言するに,建築基準法6条1項及び4項並びに建築基準法施行令9条12号の各規定によれば,建築主事は,開発許可がされていない場合において,建築計画が都市計画法29条1項に適合しているかどうか につき独自に審査する権限(実質的審査権限)を有していると解するのが文言上自然であり,その他の関係規定を通覧しても,都道府県知事等による開発許可を要しない旨の判断がされているかのみを審査する権限(形式的審査権限)にとどまると解すべき十分な論拠は見出し難い。また,行政実務や建築主事の審査能力など被告が主張する点は,いずれも,開発許可を要しない とする都道府県知事等の判断を尊重すべき理由としてはともかく,この点に係る建築主事の審査権限が形式的審査権限にとどまることの十分な論拠となるものとは解し難い。 したがって,建築主事は,開発許可がされていない場合において,建築基準法6条4項等に基づき,建築計画が都市計画法29条1項に適合している かどうかにつき自ら審査する権限(実質的審査権限)を有するというべきであるから,これに反する被告の主張は採用することができない。 (4) 以上のとおり,建築確認の取消訴訟において,その敷地につき開発許可を経ないことが違法である旨の主張をすることは,自己の法律上の利益に関係のない違法の主張(行政事件訴訟法10条1項)となる場合を除き,可能で あると解される。そして,原告らが本件建築確認の取消しを求める法律上の 利益を有する根拠等(上記1)に照らせば,本件建築確認取消請求において原告らが主張する違法事由の主張は,自己の法律上の利益に関係のない違法の主張には が本件建築確認の取消しを求める法律上の 利益を有する根拠等(上記1)に照らせば,本件建築確認取消請求において原告らが主張する違法事由の主張は,自己の法律上の利益に関係のない違法の主張には該当しないから,原告らがこれを主張することは許されると解するのが相当である。 3 本件全体土地に係る開発許可を経ていないことにより,本件建築確認は違法 となるか(本案の争点・争点(1)ウ)(1) 原告らは,要旨,本件全体土地は一体の土地であり,少なくともABE区画は一体の区画であるから,全体として開発許可を受ける必要があるところ,本件土地のみを対象として開発許可を不要と判断した本件不要判定は,本件建築主による意図的な区画の分割による開発規制の潜脱を許した違法なもの であり,違法な本件不要判定を前提とする本件建築確認も違法であるなどと主張する。 そこで検討するに,都市計画法4条13項は,同法において「開発区域」とは,開発行為をする土地の区域をいう旨規定し,同条12項は,同法において「開発行為」とは,主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に 供する目的で行う土地の区画形質の変更をいう旨規定するところ,無秩序な開発を規制し良好な都市環境(良好な宅地水準及び立地の適正性)を確保するという開発許可制度の趣旨(甲38参照)や,同法33条が定める開発許可の基準の内容等に照らすと,同法にいう「土地の区画」とは,不動産登記上の土地の区画ではなく,実際の土地の利用形態としての区画をいい,どの 範囲の土地を一つの「区画」とみるかは,当該土地の周囲の道路,通路,塀,垣,柵等の物理的な境界の状況により,社会通念に即して判断するのが相当である。 これを本件についてみるに,本件建築主の開発許可要否判定願 「区画」とみるかは,当該土地の周囲の道路,通路,塀,垣,柵等の物理的な境界の状況により,社会通念に即して判断するのが相当である。 これを本件についてみるに,本件建築主の開発許可要否判定願書(甲2,乙2~4)の図面及び写真並びに平成25年当時の航空写真(甲24)によ れば,本件土地は,本件不要判定の時点において,その東側にある本件1号 道路によりD区画と物理的に区分され,西側にある本件3号道路及び南側にある本件2項道路によりB区画と物理的に区分されていたことが認められる(別紙図面参照)。また,旧社宅建物の建築計画概要書(甲8)によれば,上記のような区分は,遅くとも昭和55年に旧社宅建物が建設された当時から存在していたことが認められる。これらの点に照らせば,本件土地(A区 画)とその他の区画とは,数十年以上前から既に別個の区画であったと認められる。 したがって,本件全体土地又はABE区画が一つの区画であったとはいえないから,本件土地に係る本件計画の前提として,本件全体土地又はABE土地の全体を対象とする開発許可が必要であったとはいえないし,本件建築 主が意図的に区画を分割して開発規制を潜脱したとも認められない。原告らの上記主張は,その前提を誤るものであって採用することができない。 (2) 原告らは,本件全体土地は,もともと同一の所有者が所有していた土地であり,旧社宅建物の敷地として一体的に利用されていたこと,本件建築主は,本件全体土地を一括して取得し,本件全体土地につき連続して再開発事業を 進めていることなどから,本件全体土地は一体の土地であり,その再開発事業は一連一体性が極めて強く,その全体につき開発許可を受けるべきであるなどと主張する(前記第2の4(1)ウ(原告らの主張)(イ 進めていることなどから,本件全体土地は一体の土地であり,その再開発事業は一連一体性が極めて強く,その全体につき開発許可を受けるべきであるなどと主張する(前記第2の4(1)ウ(原告らの主張)(イ)参照)。 しかし,上記(1)で認定説示したとおり,本件建築主の開発許可要否判定願書(甲2,乙2~4),平成25年当時の航空写真(甲24),旧社宅建物 の建築計画概要書(甲8)等によれば,本件全体土地又はABE区画が一つの区画といえないことは客観的に明らかであり,原告らが指摘する事情は,いずれも上記認定判断を左右するものではない。また,本件計画は本件土地のみを対象とするものであるから,本件計画により,本件全体土地又はABE土地の全体について開発行為が行われるものとはいえないし,B区画やC 区画についてはまだ具体的な事業計画が決定しておらず(弁論の全趣旨), 同時並行的に開発行為が行われるものともいえない。 また,建設省が示した質疑応答(甲39)や,神奈川県や山形県の取扱い(甲40,41)は,従前から本件3号道路等により他の区画と物理的に区分されていた本件土地に当てはまるものではないから,これらに基づく原告らの主張も採用することができない。 なお,本件土地については,区画の分割はないものの,3つの区画が統合されており,その点において,形式的には「区画の変更」に該当するというべきであるが,本件不要判定に当たっては,開発許可制度運用指針(平成26年8月1日国都計第67号〔甲38の1,乙10〕)Ⅰ-1-2(1)⑤イ(再開発型開発行為における形式的な区画の統合)に該当するものとして開発許 可が不要と判断されたことが認められ(甲2,6,乙2~4),本件土地につき上記運用指針の基準 〕)Ⅰ-1-2(1)⑤イ(再開発型開発行為における形式的な区画の統合)に該当するものとして開発許 可が不要と判断されたことが認められ(甲2,6,乙2~4),本件土地につき上記運用指針の基準に反するような事情は見当たらないから(この点の適否については,原告らから具体的な主張はされていない。),上記判断は適正なものと認めるのが相当である。 (3) 原告らは,本件3号道路及び本件2項道路はいずれも建築基準法所定の要 件を欠いているから,これらが存在することを前提に,本件土地を独立の区画としてされた本件不要判定は違法であると主張する(前記第2の4(1)ウ(原告らの主張)(ウ)参照)。 しかし,上記(1)のとおり,どの範囲の土地を一つの「区画」とみるかは,当該土地の周囲の道路,通路,塀,垣,柵等の物理的な境界の状況により, 社会通念に即して判断すべきものと解され,土地の周囲の道路が建築基準法42条1項各号又は同条2項の要件を満たすかどうかは,「区画」の範囲とは関係がないというべきである。 したがって,仮に本件3号道路及び本件2項道路が建築基準法42条1項3号又は同条2項の要件を欠いているとしても,そのことにより,本件全体 土地やABE区画が一つの区画であると評価され,その全体につき開発許可 を経ることが必要となるものとは解されない。原告らの主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,本件土地につき開発許可は不要であるとした本件不要判定は適法であり,本件計画は都市計画法29条1項に違反しないというべきである。そして,他に本件建築確認を違法とすべき事由も見当たらないから, 本件建築確認は適法というべきである。 第4 本件裁決取消請求についての当裁判所の判断(大阪市 1項に違反しないというべきである。そして,他に本件建築確認を違法とすべき事由も見当たらないから, 本件建築確認は適法というべきである。 第4 本件裁決取消請求についての当裁判所の判断(大阪市建築審査会が開発許可の要否に関する審査権限を有しないと判断したことにより,本件裁決は違法となるか)原告らは,本件全体土地に係る開発許可の要否につき実質的な審査を行わなか った本件裁決は違法であると主張する。 しかし,原告らの審査請求は,本件建築確認の取消しを求める趣旨のものであるところ,上記第3の3のとおり,本件建築確認は適法というべきであるから,これを適法として原告らの審査請求を棄却した本件裁決はその結論において正当であり,本件裁決にこれを取り消すべき瑕疵があるとはいえない。原告らの主張 は採用することができない。 第5 結論以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山田明 裁判官徳地淳 裁判官小林真由美
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