平成11(行ウ)9 住民訴訟による損害賠償請求事件,住民訴訟による差止請求

裁判年月日・裁判所
平成14年3月25日 福岡地方裁判所
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判決文本文47,173 文字)

主文 1 (1) 平成11年(行ウ)第9号事件原告らの同事件被告A1に対する訴えを却下する。 (2) 平成11年(行ウ)第9号事件原告らの同事件被告A1に対する訴えのうち別紙「B市の本件会社に対する支出一覧表」中の番号32ないし43の各支出に関する財務会計行為の違法を理由として損害賠償を請求する部分を却下する。 2 平成11年(行ウ)第9号事件原告らのその余の請求を棄却する。 3 平成11年(行ウ)第22号事件原告らの請求を棄却する。 4 訴訟費用は,参加により生じた費用も含め平成11年(行ウ)第9号事件原告ら,平成11年(行ウ)第22号事件原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求及びこれに対する答弁 1 平成11年(行ウ)第9号事件(以下,単に「第9号事件」という。)(第9号事件原告らの請求)(1) 第9号事件被告A1(以下「被告A1」という。)は,B市に対し,4億6628万3288円及び平成11年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 第9号事件被告A2(以下「被告A2」という。)は,B市に対し,2億2769万1100円及び平成11年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (第9号事件被告らの答弁)(1) 本案前の答弁主文第1項と同旨(2) 本案の答弁主文第2項と同旨 2 平成11年(行ウ)第22号事件(以下,単に「第22号事件」という。)(第22号事件原告らの請求)第22号事件被告B市長は,別紙「本件会社に係る損失補償契約一覧表」記載の損失補償契約①ないし⑰及び損失補償変更契約①ないし⑦に基づく株式会社Dに係る損失補償として,① C1株式会社,C2株式会社,C3株式会社,C4株式会社及びC5株式会社に対して,合計して,14億7500万円を② 株式会社E銀 補償変更契約①ないし⑦に基づく株式会社Dに係る損失補償として,① C1株式会社,C2株式会社,C3株式会社,C4株式会社及びC5株式会社に対して,合計して,14億7500万円を② 株式会社E銀行に対して,7億0130万5000円を③ 株式会社F銀行に対して,5億8338万5000円を④ 株式会社G銀行に対して,3億5135万5000円を⑤ 株式会社H銀行に対して,3億5135万5000円を⑥ V銀行株式会社に対して,8200万円を⑦ 株式会社I銀行に対して,4100万円を⑧ 株式会社J銀行に対して,8420万円を⑨ 株式会社K銀行に対して,4310万円を⑩ B信用金庫に対して,1億2530万円をそれぞれ支出してはならない。 (第22号事件被告の答弁)(1) 本案前の答弁本件訴えを却下する。 (2) 本案の答弁主文第3項と同旨第2 事案の概要 1 第9号事件B市は,官民共同出資で設立されたいわゆる第三セクター(以下,単に「第三セクター」という。)であり,「M」という名称のテーマパーク(平成7年7月開園,以下「本件テーマパーク」という。)を経営していた株式会社D(以下「本件会社」という。)に対し,別紙「B市の本件会社に対する支出一覧表」番号1ないし49のとおり,出資金計2億5000万円,運営費補助等の補助金計3億8345万4288円及び産業構造転換円滑化臨時措置法に基づく特定出資法人事業促進助成金計6052万0100円をそれぞれ支出したが,本件会社は,本件テーマパークの経営上の累積赤字を原因とする経営破たんに陥り,平成10年12月,本件テーマパークを閉園した。 B市の住民である第9号事件原告らは,同市の前記各支出がいずれも地方自治法(以下「法」という。)232条の2にいう「公益上必要がある場合」の要件を満たしておらず,第9 本件テーマパークを閉園した。 B市の住民である第9号事件原告らは,同市の前記各支出がいずれも地方自治法(以下「法」という。)232条の2にいう「公益上必要がある場合」の要件を満たしておらず,第9号事件被告らの故意・過失に基づく違法な支出であるとして,法242条の2第1項4号の規定に基づき,同市に代位して,各補助金等の支出当時に同市の市長であった第9号事件被告らに対し,同各被告それぞれの市長在任時における各補助金等(被告A1につき前記別紙番号1ないし31の合計4億6628万3288円,被告A2につき同番号32ないし49の合計2億2769万1100円)の支出に係る損害賠償及びこれらに対するそれぞれの訴状送達日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金を同市に支払うよう求める住民訴訟を提起した(なお,同市長が行政事件訴訟法23条に基づき参加している)。 第9号事件被告らは,前記別紙番号1ないし43の各支出については,第9号事件に係る監査請求が法242条2項本文の監査請求期間である1年を経過しており,同項ただし書の「正当な理由」もないから不適法であるとし,また,前記各支出が違法であることを争っている。他方,第9号事件原告らは前記「正当な理由」が存在すると主張している。 2 第22号事件B市は,別紙「本件会社に係る損失補償契約一覧表」のとおり,①本件会社に対する公的資金融資に係る人的担保(債務保証)を提供した複数の会社及び②本件会社に対し融資をした複数の金融機関との間で,前記①の場合には当該債務保証による損失の額の2分の1を,前記②の場合には未返済元本及び利息(延滞利息を除く。)をそれぞれ補償する旨の損失補償契約①ないし⑰及び損失補償変更契約①ないし⑨をそれぞれ締結した(契約上の補償限度額の合計38億3900万円)。 B ②の場合には未返済元本及び利息(延滞利息を除く。)をそれぞれ補償する旨の損失補償契約①ないし⑰及び損失補償変更契約①ないし⑨をそれぞれ締結した(契約上の補償限度額の合計38億3900万円)。 B市の住民である第22号事件原告らは,同市は,前記各損失補償契約等に基づく支出を行おうとしているところ,各損失補償契約等は法(平成11年7月法律87号による改正前のもの)2条3項,13項,232条の2,憲法13条等の規定に反する違法,無効なものであるとして,法242条の2第1項1号の規定に基づき,同市長を被告として,前記各損失補償契約等に基づく支出の差止めを求める住民訴訟を提起した。 第22号事件被告は,前記別紙「本件会社に係る損失補償契約一覧表」の各損失補償契約等の各締結日から第22号事件に係る監査請求までに法242条2項本文の監査請求期間である1年を経過しており,同項ただし書の「正当な理由」もないから不適法であるとし,また,前記各損失補償契約等が違法,無効であることを争っている。他方,第22号事件原告らは,前記監査請求の監査請求期間の経過を争い,仮に監査請求期間が経過しているとしても,前記「正当な理由」は存在すると主張している。 3 争いのない事実又は証拠により容易に認められる事実(証拠により認定した事実については証拠を各項目ごとに記載した。)(1) 当事者ア第9号事件原告ら及び第22号事件原告らは,いずれもB市の住民であり,うち両事件原告N(以下「原告N」という。)は,昭和42年4月から平成2年1月4日までの間(昭和50年から54年までは除く。),B市市議会議員の職にあった者である。 イ被告A1は,昭和62年から平成7年11月1日までの間,B市長の職にあった者であり,また,平成元年9月21日から平成7年12月22日まで本件会社の取締 ),B市市議会議員の職にあった者である。 イ被告A1は,昭和62年から平成7年11月1日までの間,B市長の職にあった者であり,また,平成元年9月21日から平成7年12月22日まで本件会社の取締役会長の地位にあった。 ウ被告A2は,平成7年12月4日からB市長の職にある者であり,また,同月22日から本件会社の取締役会長の地位にある。 エ第22号事件被告B市長(以下「被告市長」という。)は,B市の予算の執行,支出命令(法149条2号,232条の4)等の財務会計上の行為を行う権限を有する者である。 (2) 本件訴訟において問題とされている財務会計行為ア第9号事件について第9号事件において違法性が問題とされている財務会計行為は,別紙「B市の本件会社に対する支出一覧表」記載の出資金①,②,運営費補助①ないし・,特定出資法人事業促進助成金①ないし④及びU海沿岸漁業総合振興事業費補助の各支出(なお,各支出を歳出の内容とするB市議会の予算議決は,対応する議決日を「市議会議決」欄に記載した。以下,まとめて「本件各支出」ということがあり,出資金①,②を「本件出資金」,その他の支出を「本件補助金」ということがある。)に関し第9号事件被告らがB市長として法令上本来的に権限を有した財務会計行為(支出負担行為及び支出命令)であり,番号1ないし31までの支出が被告A1のB市長在任中の支出であり,それ以降の支出が被告A2の同在任中の支出である。 イ第22号事件について第22号事件において違法性が問題とされている財務会計行為は,別紙「本件会社に係る損失補償契約一覧表」記載の損失補償契約①ないし⑰,損失補償変更契約①ないし⑦(なお,各契約を債務負担行為(法214条)を予算の内容とする市議会の議決は,その日及び内容を「市議会議決」欄に記載した。以下,まとめて 表」記載の損失補償契約①ないし⑰,損失補償変更契約①ないし⑦(なお,各契約を債務負担行為(法214条)を予算の内容とする市議会の議決は,その日及び内容を「市議会議決」欄に記載した。以下,まとめて「本件各損失補償契約」ということがある。)に基づく支出であり,これらは第22号事件被告であるB市長が法令上本来的に権限を有する財務会計行為である(甲ロ2)。 (3) 本件会社設立までの経緯ア B市の経済は,工業・商業ともにW株式会社X鉱業所(以下「X炭鉱」という。)を中心とする石炭産業と関連コンビナートを軸に構成されてきたが,昭和30年代後半以降石炭から石油へのエネルギー源,原料の転換が本格化するとともに,国が,昭和38年から石炭の生産構造を計画的に調整・再編する政策を順次実施し,特に昭和62年度から実施された第8次石炭政策においては,地域経済・雇用に及ぼす影響を回避しつつも国内炭を段階的に縮小することが志向され,X炭鉱においても出炭量及び従業者数は減少の一途をたどり,昭和40年には出炭量約500万トン,従業者数約1万人であったものが,昭和60年には出炭量約450万トン,従業者数4345人に,平成元年には前記第8次石炭政策による合理化のため出炭量251万トン,従業者数2696人まで減少した(乙イ54の2ないし4,6,9,10,同65)。 また,前記X炭鉱の縮小合理化の影響もあり,昭和62年5月末のB市内の完全失業率は,7.5パーセント(全国平均2.9パーセント)に達した(乙イ50の1)。 イ前記アのような社会経済状況の下,B市は,昭和62年9月,「B市第二次総合計画─基本構想・基本計画」(以下,単に「第二次総合計画」という。)を策定した。第二次総合計画においては,中部U地方の中核都市としての機能及び魅力を増大するため,第3次産業の展開を重要 市第二次総合計画─基本構想・基本計画」(以下,単に「第二次総合計画」という。)を策定した。第二次総合計画においては,中部U地方の中核都市としての機能及び魅力を増大するため,第3次産業の展開を重要視し,そのために観光・レクリエーションの活発化を志向することとされ,「地域の特色を最大限に生かす総合的な観光開発のビジョンを策定し,観光資源の開発整備に努め,市外客の誘致を図る」ことが観光・レクリエーションにおける基本方針とされた。(乙イ50の2,同54の6,同65)ウまた,昭和63年6月,B市議会において,石炭合理化地域活性化対策調査研究費(約200万円)の予算が可決され,同可決を受けて,B市企画開発調整部内において,炭鉱合理化の衝撃を緩和するための準備・研究が始められた(乙イ48の1,同50の5,6,同54の11)。 エ前記ウの準備・研究における具体的施策検討を行うなかで,B市の特性を生かした雇用吸収型の新産業興しを第三セクター方式を活用して事業化する方針が決定された。そして,同年9月より,事業計画の策定と第三セクターの設立準備が進められ,同企画開発調整部は,同年10月末から同年11月上旬にかけて,国(福岡通産局,通産省等),県(県企画振興部,県総務部地方課等),民間(C系地元企業本店等)に対し,第三セクター設立に対する協力の要請を行った(乙イ48の1,同54の11)。 オ同年12月16日,B市及び関係企業により第三セクター設立研究会が発足し,同設立のための実質的作業が進められ,ジオ(大地)及びバイオ(生命・生物)をテーマとした「バイオ,石炭坑道,SL等の体験学習を主体とした施設の建設及び管理・運営」を主な事業目的とした事業計画書(素案)が作成された後,平成元年2月16日には,国,県,民間企業から選出されたメンバーにより構成された 炭坑道,SL等の体験学習を主体とした施設の建設及び管理・運営」を主な事業目的とした事業計画書(素案)が作成された後,平成元年2月16日には,国,県,民間企業から選出されたメンバーにより構成された「株式会社D(仮称)設立準備委員会」及び同事務局が設置され,事業計画等の本格的検討が進められることとなった(乙イ48の1,同49の1,同54の11)。 カ平成元年2月22日開催のB市議会総務委員会において,前記オの事業計画書(素案)が配布されるとともに,前記ウないしオの経緯について企画調整部長より報告され,また,同月の定例市議会において,被告A1より株式会社D(仮称)構想の進捗状況(出資の見込み等)について説明がなされた(乙イ48の1,同50の7)。 キ同年3月7日開催のB市全員協議会においては,前記オの事業計画書(素案)に基づいて作成された「第三セクター設立について(案)」を配布資料として企画調整部長が事業概要等について説明した(乙イ49の1)。 ク同月29日,本件会社に対する出資金の支出に係る予算(2億円)が議決され,同年9月18日,同議決に基づく支払(出資金①)がなされた(乙イ1の1,2,同4の1,同51の1)。 ケ前記クの市からの出資金に加え,国の産業基盤整備基金から2億円,民間企業から9億円の出資をそれぞれ受けて,本件会社は同月21日に設立時資本金13億円にて設立され,同日開催された創立総会において,被告A1が本件会社会長に就任するとともに,B市助役1名が取締役に就任した(乙イ52の25,同53の10,15,同65,株式会社D代表清算人O作成に係る平成12年1月24日付け調査嘱託回答)。 コなお,本件会社設立後本件テーマパーク開園までに,平成2年2月に福岡県(2億円),B市(5000万円,出資金②)及び民間企業から出資を受けて O作成に係る平成12年1月24日付け調査嘱託回答)。 コなお,本件会社設立後本件テーマパーク開園までに,平成2年2月に福岡県(2億円),B市(5000万円,出資金②)及び民間企業から出資を受けて計3億円の増資,平成4年4月にC系企業を中心として27社12億6000万円の追加出資,同年7月には地場金融機関,中小企業を中心として34社4億4000万円の増資,平成6年度には出店企業等3社による7000万円の増資がそれぞれあり,平成7年7月22日の本件テーマパーク開園時の資本金額は33億9000万円となった(乙イ52の25,同53の10,同54の17,同63,株式会社D代表清算人O作成に係る平成12年1月24日付け調査嘱託回答)。 (4) 本件テーマパークの事業計画の作成経緯及び実施についてア本件テーマパーク用地は,平成元年2月当時,C石炭Y坑跡地12ヘクタールが予定されていた(乙イ48の1,同53の2)が,同年5月ころ,①道路アクセスの確保の必要性,②広い事業用地の確保の必要性,③集客施設としての環境条件の快適さを理由として,S町地区に変更された(乙イ48の4)。 イ本件会社は,本件テーマパークの基本構想,基本計画,実施計画及び基本設計策定の過程において,下記のとおり,複数のコンサルタント会社に業務委託を行った。 (ア) 株式会社P1(以下「P1」という。)への業務委託(乙イ44の1ないし3)a 委託された業務の趣旨(乙イ44の1,2)本件テーマパーク構想を実現するための第1段階として,事業の基本的枠組みを見出し,そのフィジビリティ(実現可能性)を評価する,具体的には,計画地の持つ敷地条件,立地環境を整理し,期待できる入込客を求め,入込客と投資枠から当該事業の財務構造を明確にし,事業化の可能性を評価する。 bP1の平成元年12月27 )を評価する,具体的には,計画地の持つ敷地条件,立地環境を整理し,期待できる入込客を求め,入込客と投資枠から当該事業の財務構造を明確にし,事業化の可能性を評価する。 bP1の平成元年12月27日付け中間報告の結論骨子(乙イ44の1)投資予定額,入込客見込み等に基づく事業計画では事業化は極めて困難で,事業計画の変更(用地変更を含む。)を要する旨の内容で,「テーマパークとして適正度に欠ける敷地で,今後競合が激化する九州の中にあって立地ハンディを負いながら,かつ,財務的にも極めて厳しいことが予測される状況で,あえて事業化を図る価値があるか甚だ疑問である。」との意見が記載された。 c その後,本件テーマパークの用地は,P1の前記bの中間報告をも踏まえ,平成2年9月ころ,前記アで変更された地点からのS町地区内の臨海部用地に計画変更された(乙イ48の9,同64の4頁,株式会社D代表清算人O作成に係る平成12年4月28日付け調査嘱託回答)。 dP1の平成2年4月16日付け最終報告及び同月26日付け追加作業シートの結論骨子(乙イ44の2,3)入込客60万人で,客単価4500円でシミュレーションするも,事業化の意思決定は到底できない内容である旨指摘し,事業成立のためには,事業費に占める自己資金比率を高め,入込客100万人,客単価4500円水準を保持することを最低条件として必要とする旨結論づけた。 (イ) 株式会社P2(以下「P2」という。)への業務委託(乙イ46)a 委託された業務の趣旨本件テーマパークに係る事業計画案を提示する。 bP2の平成2年4月付け報告書の結論骨子本件テーマパークの事業計画を遊園地型のテーマパークの路線で進めるべきではない旨指摘した上で,「Uイリュージョン・パーク」の構想を提案し,年間入場者数50万人の場合に客単価36 付け報告書の結論骨子本件テーマパークの事業計画を遊園地型のテーマパークの路線で進めるべきではない旨指摘した上で,「Uイリュージョン・パーク」の構想を提案し,年間入場者数50万人の場合に客単価3643円での事業収支計画を提示した。 (ウ) 株式会社P3(以下「P3」という。)への業務委託(乙イ45)a 委託された業務の趣旨本件テーマパークに係る基本計画を提示する。 bP3の平成3年2月7日付け報告書の結論骨子「ノームの国」構想を提示し,開発費見積案合計173億5600万円,初年度集客目標110万人,客消費単価5856円として開業10年で採算が採れる内容を提示した。 (エ) P4株式会社(以下「P4」という。)に対する業務委託(乙イ47)a 委託された業務の趣旨本件テーマパークの基本設計計画を報告する。 bP4の平成4年3月25日付け報告書の結論骨子「ティンクオルムの国」構想を提示し,年間100万人の客動員で一人当たり平均単価5000円を目標に据え,総資金需要額190億1500万円,入場者数初年度100万人(毎年5パーセント増),客消費単価5200円(消費税込み)として約10年で採算ベースに乗る旨報告した。 ウ本件会社は,平成6年2月,平成7年オープンを目標とした大要以下の内容の「M事業計画概要」(以下「本件事業計画概要」という。)を策定した(乙イ54の18)。 (ア) 名称 M(イ) 事業地 B市S町6番地1(ウ) 計画面積  7.9ヘクタール(園地5.0ヘクタール,駐車場2・9ヘクタール)(エ) 初期投資  61億円(自社分予定額)(オ) 入場者見込 50万人(年間)(カ) 雇用予定数 100名程度(キ) 基本理念人と自然の新しい関わり(ク) コンセプト大地(ジオ)と生命(バイオ)のすばらしさを知り,地 社分予定額)(オ) 入場者見込 50万人(年間)(カ) 雇用予定数 100名程度(キ) 基本理念人と自然の新しい関わり(ク) コンセプト大地(ジオ)と生命(バイオ)のすばらしさを知り,地球・自然への畏敬とそれを大切にする「ココロづくり」を提供する。 (ケ) ゾーニングジオゾーン,バイオゾーン及びアミューズメントゾーンとする。 ジオゾーンは,海や火山などさまざまなシーンを冒険するシュミレーションシアターやジオアトラクション,鉱山列車を彷彿させるジオトレイン,また,石炭の歴史やエネルギーの歴史など楽しく学ぶQ(公共施設)を隣接させテーマ性を強化する。 バイオゾーンは,水族館や映像等で海の生態を探る「Uアクアミュージアム」や熱帯・亜熱帯の珍しい植物などを展示や映像などで紹介し,バイオの技術や歴史を分かり易く学べるバイオ館等を設置する。 アミューズメントゾーンは,お祭りを感じさせるダウンタウンやファンハウス,音楽噴水,カラーデザインのメリーゴーラウンドやジェットコースターなど幅広い年齢層に楽しさを与え,賑わいのあるものとする。 エ本件会社は,同年5月20日,本件テーマパークの造成工事に着手し,同年12月21日,本件テーマパーク用地をW株式会社より買い受けた(甲イ21,乙イ51の6)。 オ本件テーマパークは,平成7年7月22日に開園した。 また,石炭をテーマに,人間とエネルギー,地球環境を考えるための体験学習施設であるQが,市の公共施設としながらも本件テーマパークと互いの相乗効果で地域活性化を図るため,本件テーマパークに隣接して同時にオープンした(乙イ53の47,50,同55の1ないし4)。 (5) 本件テーマパーク開園後閉園に至るまでの本件会社の運営状況等について(各項目ごとに挙げたもののほか,株式会社D代表清算人O作成に係 オープンした(乙イ53の47,50,同55の1ないし4)。 (5) 本件テーマパーク開園後閉園に至るまでの本件会社の運営状況等について(各項目ごとに挙げたもののほか,株式会社D代表清算人O作成に係る平成12年1月24日付け調査嘱託回答,弁論の全趣旨)ア平成7年度(ア) 入園者数 54万9092人(内有料入場者は約44万人)(イ) 設備投資事業費・資金調達及び従業員数等の状況設備投資ににつき,事業費総額は平成6年度(31億4400万円)に引き続き21億3600万円であり,その主なものは,園内の設備等への投資であり,土地購入及びその造成,水族館・植物園設備,遊具等が対象となっている。 資金調達につき,平成6年度の16億6000万円の長期借入れ(L銀行の社会資本整備促進融資7億円,Eその他金融機関9億6000万円)に引き続き16億5000万円(L銀行の社会資本整備促進融資及び特定地域対策融資計8億5000万円,Tの産炭地域特利融資8億円)の借入れを行った。 また,第三者割当て増資により2000万円の増資を行った。 また,従業員数は,当該年度末現在で,70名(男性社員42名,女性社員25名,男性嘱託員3名)であった。 (ウ) 収支概要開園日の平成7年7月22日から平成8年3月31日までの9か月間余りの収支は,営業収益13億5400万円,営業費用14億5100万円,営業外収入2億4700万円,営業外費用4億0100万円で,2億5100万円の損失であり,住民税200万円を控除すると当期損失は,2億5300万円となった。なお,開業費の償却負担を除けば損益は,5600万円の黒字であった。 (エ) なお,平成7年11月1日に被告A1がB市長を退任し,その後被告A2が同市長に就任したことに伴い,同年12月22日開催の取締役会により,同人が取締役会長 益は,5600万円の黒字であった。 (エ) なお,平成7年11月1日に被告A1がB市長を退任し,その後被告A2が同市長に就任したことに伴い,同年12月22日開催の取締役会により,同人が取締役会長に就任した。 イ平成8年度(ア) 入園者数 37万0194人(うち有料入場者数約31万人)(イ) 設備・資金調達及び従業員数の状況設備投資につき,事業費総額5億円の投資を実施し,「キディランド」の遊具,小動物園施設,大型遊具(名称「スカイザウルス」)及び園内植栽等が対象となっている。 資金調達につき,運転資金として7億円の銀行借入れを行った。 また,資本に関しては,平成8年7月新株式を400株を発行して2000万円の増資を図り,総資本額34億1000万円となった。 従業員数は,当該年度末現在で,53名(男性社員33名,女性社員18名,男性嘱託員2名)であった。 (ウ) 収支概要当該年度の収支は,営業収益9億0400万円(対前年度約33パーセント減),営業費用17億6800万円,営業外損益では,1億8200万円の収入に対し,開業費償却負担ほかの営業外費用が4億1000万円となったことにより,当期の経常損益は,10億9200万円の赤字となった。なお,住民税200万円控除後の当期損失は,10億9400万円であった。 (エ) 営業推進本部の設置本件会社は,平成8年9月1日,集客増対策として営業推進部を設置し,営業部員を10名から23名に増員し,地域別,職域別に班編成をして前売り券30万枚の販売を目標に営業活動を展開した。 ウ平成9年度(ア) 入園者数 32万5299人(うち有料入場者数約26万人)(イ) 設備・資金調達及び従業員数の状況設備投資,事業費総額1700万円の園地施設等に対する投資を行い,その対象は,植物園のサボテンハウス,水族館の熱 2万5299人(うち有料入場者数約26万人)(イ) 設備・資金調達及び従業員数の状況設備投資,事業費総額1700万円の園地施設等に対する投資を行い,その対象は,植物園のサボテンハウス,水族館の熱帯魚展示コーナー,くらげ水槽であった。 資金調達については,事業費に充当するため,12億円の銀行借入を行った。 従業員数は,当該年度末現在で47名(男性社員33名,女性社員12名,男性嘱託員2名)であった。なお,資本の変動は行っていない。 (ウ) 収支概要当該年度の収支は,営業収益7億0400万円(対前年度約22・2パーセント減),営業費用14億8900万円,営業外収支では,補助金収入他1億2800万円,費用は開業時の償却負担ほか4億2400万円であり当期は経常損失10億8100万円となり,住民税控除後は10億8200万円の赤字となった。 (エ) 経営再生計画の策定(乙イ61)a 平成7年7月22日に本件テーマパークが開園して以来,入場者数の減少傾向が進み,平成8年12月には運転資金の不足を来たし(約4億円),平成8年度決算で約11億円の損失を計上するとともに,平成9年度も約12億円の赤字となる見込みとなり,本件テーマパークの存続を危惧せざるを得ない状況となったことから,本件会社は,平成9年12月,経営体質の改善・強化と安定に努めるとともに集客対策を鋭意講ずべく,「D経営再生計画(要旨)」(以下「本件経営再生計画(要旨)」という。)を策定した。 b 本件経営再生計画(要旨)は,その基本方針として,①収支の健全化,事業の安定化を重視する経営の自立体制の確立,②徹底した経費削減による経営体質の改善・強化,③新規事業・投資に関する研究の継続,④市民に愛されるテーマパークの創造と地域振興への貢献の4点を掲げた。 c 本件経営再生計画(要旨)は,当 の確立,②徹底した経費削減による経営体質の改善・強化,③新規事業・投資に関する研究の継続,④市民に愛されるテーマパークの創造と地域振興への貢献の4点を掲げた。 c 本件経営再生計画(要旨)は,当面(平成9年度ないし平成11年度)の対策として,大要以下のことを提示していた。 (a) 経費削減対策営業経費を基礎に徹底した見直しを断行し,経費削減を努めるとともに,長期借入金元金の5年間の償還延期及び遊具機械リース賃借料の残期間4年間を8年間に償還延期といった外部関係機関の支援を得ることにより,年30万人集客を目標とすれば,経常収支は6億400万円の損失となるが,減価償却及び開業費償却前の収支としては資金面で300万円の余裕が出る。 (b) 増収対策①入園料の改定,②遊具の利用率及び客単価のアップ等の増収対策を実施する。 (c) 集客対策①PRの強化,②営業活動の強化,③イベントの開催による集客対策を実施する。 (d) 関係機関による支援特に平成9年度末までに発生する12億円の資金不足に対する関係機関による融資を中心とした支援が本件テーマパークの経営再生にとって必要不可欠である。 d 本件経営再生計画(要旨)は,平成12年度以降の中・長期対策として,大要以下のことを提示していた。 (a) 新規事業計画の研究・実施前記cの当面の対策として示した各対策を確実に実行し,経営体質の改善・強化が図られ,経営の自立体制が確立した時点で新規事業及びそれに伴う新規設備投資を実施することとする。その際には,事業内容や投資規模等を十分に検討し,園地拡張も含め中・長期的な視点に立った年次計画により段階的に実施することにより,将来の40万人,45万人,50万人へと集客増に結びつけ,地域振興の核として本件テーマパークを再生していく。経営体質の改善・強化を図っ 長期的な視点に立った年次計画により段階的に実施することにより,将来の40万人,45万人,50万人へと集客増に結びつけ,地域振興の核として本件テーマパークを再生していく。経営体質の改善・強化を図った後の新たな投資による園地魅力度の向上のために,「既存施設の改善」とともに「総合的な事業計画の策定・実施」により,園地の魅力度アップを図る。 本件会社内に設置した「経営改善プロジェクト」チームにて検討・研究しているものとしては,①既存施設の改善として,水族館の充実,植物園の充実,居心地の良い空間整備,イベントステージの充実,②将来計画を含む新たな施設整備計画として水族館関連施設を年次計画により増設しつつ,動物・水族・植物を集積したパノラマ的展示を計画することが挙げられる。 (b) 新規事業推進のための投資計画の研究・実施新規事業の実施に当たっては,投資効率,運営採算等を十分に研究し,それに必要な設備投資資金の確保及び返済計画等を具体的に事前評価した上で推進することが挙げられる。 エ平成10年度(ア) 閉園に至る経緯本件テーマパークは平成10年度の年間目標であった有料入場者数30万人を大きく下回る経過をたどり,本件会社は,資金状況からこれ以上の経営継続は不可能と判断して,本件テーマパークを平成10年12月25日までの営業をもって閉園した。 (イ) 有料入園者数 16万5099人(ウ) 設備・資金調達の状況当該年度については,新たな設備投資及び資金調達は行っていない。 (エ) 収支概要当該年度の収支は,売上高4億円に対し営業費用は9億3700万円,営業外損益では,1億4500万円の収入に対し開業費償却負担ほかの営業費用が5億1500万円となったことにより,当期の経常損益は,9億700万円となった。そして,当期は,閉園により営業活動を停止 ,営業外損益では,1億4500万円の収入に対し開業費償却負担ほかの営業費用が5億1500万円となったことにより,当期の経常損益は,9億700万円となった。そして,当期は,閉園により営業活動を停止したため,これによる処理の結果,特別損失として16億6000万円を計上したことにより,住民税控除後の当期損失は25億6800万円となった。 (6) 本件各支出の内容ア B市は,前記3(3)ク,コの出資金①,②のほか,別紙「B市の本件会社に対する支出一覧表」記載のとおり本件会社に対し補助金を支出した。その内容は以下のとおりである。 (ア) 株式会社D運営費補助(運営費補助①ないし■)これは,本件会社がB市からの派遣職員に対して支払っている人件費相当分の助成並びに本件会社が行ったイベント費及び広告宣伝費の一部の補助をしたものである。 (イ) U海沿岸漁業総合振興事業費補助これは,B市における漁業振興を図るため,本件会社が実施するU海沿岸地域高度利用施設整備事業に要する経費として,本件テーマパークの水族館内に設置されるU海紹介コーナー等に対する補助である。 (ウ) 特定出資法人事業促進助成金(同①ないし④)これは,産業構造転換円滑化臨時措置法に基づくB市特定出資法人事業促進助成金交付要綱3条により,事業の用に供する施設に対する固定資産税相当分(土地に係るものを除く。)を補助したものである。 (7) 本件各損失補償契約の内容ア平成7年締結分について本件会社は,前記(5)アのとおり,平成6,7年の事業資金として,公的資金融資(L銀行からの社会資本整備促進融資及び特定地域対策融資合計15億5000万円並びにTより産炭地域特利融資8億円)及び民間金融機関からの融資を受けた。 そして,融資先や本件会社の株主であるC系企業5社(C2株式会社,C1株式会社 資及び特定地域対策融資合計15億5000万円並びにTより産炭地域特利融資8億円)及び民間金融機関からの融資を受けた。 そして,融資先や本件会社の株主であるC系企業5社(C2株式会社,C1株式会社,C3株式会社,C4株式会社,C5株式会社,以下「C5社」という。)及び市中銀行との協議の結果,これらの債権保全策として,(ア)公的資金融資については,C5社の連帯債務保証及びC5社に対するB市の損失補償を,(イ)民間金融機関からの融資については,B市の損失補償を行うこととし,B市は,別紙「本件会社に係る損失補償契約一覧表」記載の損失補償契約①ないし⑩のとおり各損失補償契約(補償限度額は前記(ア)に係る分の合計が14億7500万円,前記(イ)に係る分の合計が6億7200万円の合計21億4700万円)を締結した(乙イ48の21,乙ロ1の1ないし10)。 イ平成9年,10年締結分について(ア) 本件会社は,前記(5)ウのとおり,本件経営再生計画(要旨)にのっとり,平成9年に民間金融機関から12億円の融資を受けた。 そして,融資先との協議の結果,この債権保全策として,B市の損失補償を行うこととし,B市は,別紙「本件会社に係る損失補償契約一覧表」記載の損失補償契約⑪ないし⑰のとおり各損失補償契約(補償限度額合計16億8600万円)を締結した(乙イ48の35,同49の6,甲ロ2,乙ロ2の1ないし7)。 (イ) 本件会社は,本件経営再生計画(要旨)にのっとり,前記(ア)の各損失補償契約の補償対象となっている融資の繰延べ償還措置を各融資先に依頼し,別紙「本件会社に係る損失補償契約一覧表」記載の損失補償変更契約①ないし⑨のとおり損失補償契約②ないし⑩をそれぞれ変更する契約(補償限度額が合計600万の増加)を締結した(甲ロ2,乙ロ3の1ないし7)。 (8) 住 係る損失補償契約一覧表」記載の損失補償変更契約①ないし⑨のとおり損失補償契約②ないし⑩をそれぞれ変更する契約(補償限度額が合計600万の増加)を締結した(甲ロ2,乙ロ3の1ないし7)。 (8) 住民監査請求ア第9号事件に係るもの第9号事件原告らは,平成11年3月31日付けでB市監査委員に対して法242条1項に基づき住民監査請求(以下「第9号事件監査請求」という。)をしたが,上記監査委員は,同年5月26日付で,上記監査請求は理由がないと判断し,そのころ,その監査結果を第9号事件原告らに通知した(甲イ1,弁論の全趣旨)。 上記事実関係からすると,第9号事件監査請求は,別紙「B市の本件会社に対する支出一覧表」の番号1ないし31の被告A1の支出行為に係る部分と,被告A2の支出行為のうち同番号32ないし43の支出行為に係る部分(いずれも平成10年3月31日以前の支出,以下,まとめて「本件監査請求期間外支出」ということがある。)とを監査請求の対象とする部分について,法242条2項本文の監査請求期間である1年を経過していることになる。 イ第22号事件に係るもの第22号事件原告らは,平成11年8月31日付けでB市監査委員に対して法242条1項に基づき住民監査請求(以下「第22号事件監査請求」という。)をしたが,上記監査委員は,同年10月28日付で,上記監査請求は理由がないと判断し,そのころ,その監査結果を第22号事件原告らに通知した(甲ロ1,2,弁論の全趣旨)。 4 争点(1) 第9号事件についてア本件監査請求期間外支出について監査請求期間徒過の「正当な理由」(法242条2項ただし書)の存否(争点1)イ本件各支出の違法性の有無(争点2)ウ第9号事件被告らの故意・過失の有無(争点3)(2) 第22号事件についてア第22号事件監査請 正当な理由」(法242条2項ただし書)の存否(争点1)イ本件各支出の違法性の有無(争点2)ウ第9号事件被告らの故意・過失の有無(争点3)(2) 第22号事件についてア第22号事件監査請求が監査請求期間を徒過した請求か否か(争点4)イ本件各損失補償契約に基づく支出行為の違法性の有無(争点5) 5 第9号事件に係る争点についての当事者の主張(1) 争点1(本件監査請求期間外支出について監査請求期間徒過の「正当な理由」(法242条2項ただし書)の存否)について(第9号事件原告らの主張)ア法242条2項ただし書の「正当な理由」とは,当該行為が極めて秘密裡に行われ,1年を経過した後初めて明るみに出てきたような場合のように,特に監査請求を認めるに足りるだけの相当の理由があることを指す。 イ本件においては,P1が「この計画はこのままでは失敗する。計画変更の必要ある。」旨指摘し,またP2も「本開発計画は遊園地型テーマパークの路線でいくべきではない。」と指摘していたにもかかわらず,第9号事件被告らは,これを無視し,本件テーマパークの実施を強行したものであるが,このような経緯は,市議会に対しても市民に対しても全く知らされていなかったのであり,このことが市民に知らされたのは,本件テーマパーク閉園が報道される直前のことであった。 よって,本件で監査請求の対象となる財務会計行為が行われたのは監査請求日より1年以上前のことではあるが,前記アの特に監査請求を認めるに足りるだけの相当の理由があり,監査請求期間徒過につき法242条2項ただし書の「正当な理由」がある。 ウこの点について第9号事件被告らは,「本件各支出(出資金及び補助金)については,B市の一般会計予算に計上され,議会の審議・議決を経て,適正かつ通常の支出手続でなされ,かつ,議会の適正な がある。 ウこの点について第9号事件被告らは,「本件各支出(出資金及び補助金)については,B市の一般会計予算に計上され,議会の審議・議決を経て,適正かつ通常の支出手続でなされ,かつ,議会の適正な決算承認手続きを経ている」と主張する。 しかし,議会の審議・議決の対象となった支出が適正であるかどうかという判断の前提となるコンサルタント各社の報告書が第9号事件被告らによって意図的に隠ぺいされ,さらに本件会社の財務諸表と貸借対照表すら出されていないというのであるから,議会による形式的な議決・承認手続は第9号事件被告らの違法行為を免責するものでありえないことは明らかである。 このような特別な事情の存する本件においては,実質的な意味において「当該行為(財務会計上の行為)が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡になされた」と解すべきである。本訴請求が認められないとしたら,ばく大な税金を浪費した第9号事件被告らの責任が問われることなく野放しとなり,一般市民はそのツケのみを支払わされることとなって,それは著しく正義に反するものと考えられる。 エまた,平成10年12月2日に各コンサルタント会社の報告書の内容のごく一部について新聞報道がなされたが,この時点でも報告書そのものの開示がなされたわけではなく,P1等の報告書の内容を第9号事件原告らが知ったのは,本訴を提起して以降のことである。 (第9号事件被告らの主張)ア法242条2項ただし書所定の「正当な理由」とは,当該行為が極めて秘密裡に行われ,1年を経過した後はじめて明るみに出たような場合1年を経過したものであっても,特にその監査請求を認めなければ著しく正義に反すると考えられる場合のみに限られるべきものであり,その場合においても,監査請求の期限は当該行為が判明した後合理的相当期間として最小限度に制限され っても,特にその監査請求を認めなければ著しく正義に反すると考えられる場合のみに限られるべきものであり,その場合においても,監査請求の期限は当該行為が判明した後合理的相当期間として最小限度に制限されるべきである。 イこれを本件監査請求期間外支出についてみると,いずれも,B市の一般会計予算案(当初予算案,補正予算案)に計上され,議会の審議・議決を経て,適正かつ通常の支出手続でなされ,かつ議会の適正な決算承認手続を経ているものであり,また,上記予算については各市民に広報紙等を通して周知されているところである。そうすると,この間には当該行為すなわち,前記各支出行為が秘密裡になされたものと疑うべき事情は全く存在しない。このように,本件において第9号事件被告らが訴えの却下を求めている前記各支出行為が公然となされている以上,これらに対する監査請求は,その期間徒過について「正当な理由」が問題とされる余地はなく,不適法といわなければならない。 ウこの点,第9号事件原告らは,民間コンサルタント,とりわけP1及びP2の「指摘」が市議会にも秘匿されていたとして,これが直ちに前記各支出行為の秘匿性を導くものであるかのようにいうが,そもそもそれらの「指摘」というのは,本件会社が,テーマパークの構想ないし計画の具体化のため複数のコンサルタント会社に企画案作成を委託したところ,そのうちの一部が提出した委託結果が,要するに,条件いかんによるとの趣旨のものであったことを指しているものにすぎず,このことが,B市の前記各支出行為の法的・事実的前提をなすものでないことは無論,直接的にも間接的にも関連がないことは明らかである。 エまた,仮に,第9号事件原告らの主張のようにコンサルタントの報告内容を知らなかったことにより所定の監査請求期間を徒過することになったとしても,そ 接的にも間接的にも関連がないことは明らかである。 エまた,仮に,第9号事件原告らの主張のようにコンサルタントの報告内容を知らなかったことにより所定の監査請求期間を徒過することになったとしても,その内容が新聞報道されたのは平成10年12月2日であるから,その時から第9号事件原告らの監査請求日までは約4か月を経過しており,「知ることができたと解される時から相当な期間内の監査請求ということはできないから,この点においても「正当な理由」を欠くことになる。 (2) 争点2(本件各支出の違法性の有無)について(第9号事件原告らの主張)ア出資金と補助金について本件出資金は,実質的には法232条の2にいう補助金に該当するものである。 すなわち,本件会社の目的,設立の経緯,事業内容,財政援助そして倒産したという事情を総合的に考慮すれば,本件出資金が法232条の2に定める「寄附又は補助」に該当することは明らかである。 一般に出資金は何らかの形で返還されることが期待できるものである。しかし,本件においては,既に本件会社は倒産し,出資金が返還される可能性は全くない。まさしく「寄附又は補助」金と同様の状況に置かれている。 イ本件各支出の公益性の有無(ア) 神戸地裁昭和62年9月28日判決・判タ665号66頁を始めとする関係裁判例や学説によれば,法232条の2の「公益上必要がある場合」にあたるというためには,①地方公共団体に財政上の余裕があること,②支出目的と趣旨が公益性を有すること,③補助対象となる事業活動が地方公共団体又はその住民の大部分の利益につながること,④支出の方法や支出額が相当であること,⑤補助対象者の性格が検討されるべきこと,⑥その支出により,公正さ,公平さ(平等原則)等,他の行政目的を阻害し,行政全体の均衡を損なうおそれがないこと,⑦支 ,④支出の方法や支出額が相当であること,⑤補助対象者の性格が検討されるべきこと,⑥その支出により,公正さ,公平さ(平等原則)等,他の行政目的を阻害し,行政全体の均衡を損なうおそれがないこと,⑦支出手続が適法になされ,事後的な検査体制が整備されていること,という7つの要件を具備する必要があるというべきである。 (イ) 財政上の余裕(前記(ア)①)について,B市の平成10年度の財政状況をみてみると,まず,一般会計は1億6731万1000円の赤字となっており,前年度に引き続いて2年連続の赤字となっている。 次に,一般会計の市債は同年度末で441億4095万9000円となっており,B市民一人当たり約31万円の借金を抱えていることになる。 また,B市の財源に余裕があるかどうかを示す財政力指数は0.505となっており,これは,1に近いか1を超えるほどに財源に余裕があるとされるものであるところ,その約半数しかないものである。 そして,人件費,扶助費,公債費等の義務的性格の経常的経費に地方税,普通交付税,地方譲与税等を中心とする経常的な収入である一般財源がどの程度充当されているかをみるための経常収支比率は96.2パーセントとなっており,これは,政策的経費への余裕が3.8パーセントしかないことを示しており,極めて厳しい財政状況にあることを意味している。 さらに,公債費の一般財源に占める割合を表す公債費比率は15.2パーセントになっており,前年度は15.3パーセントであった。通常財政構造の健全性が脅かされないためには同比率は10パーセントを超えないことが望ましいとされており,B市は,財政構造の健全性が脅かされている状態が続いていることになる。 B市監査委員は,以上の数値を踏まえ,「極めて厳しい財政状況にある。 財政健全化への取り組みが最重要課題。なお,一層の されており,B市は,財政構造の健全性が脅かされている状態が続いていることになる。 B市監査委員は,以上の数値を踏まえ,「極めて厳しい財政状況にある。 財政健全化への取り組みが最重要課題。なお,一層の努力を」と市当局に要望している。 この点,B市は現在445億円というばく大な市債残高を抱え,累積赤字は平成11年度に30億円,平成12年度には50億円に上ると見込まれていた状況である。 他方,本件テーマパークの構想が初めて市民に公表された当時の平成元年度の財政状況をみてみると,財政力指数は平成10年度より少し良くて0.552パーセント,経常収支比率は85.0パーセントであり,今よりはましであるものの,望ましいといえる状況ではなく,公債費比率は12.2パーセントで,やはり10パーセントを上回っている。 (ウ) 本件テーマパークは,要するに遊園地・レジャーランドであって,営利性の強い有料の遊園地であるとともに,設立前から採算が採れる見通しが立たず,開園からわずか3年余りで倒産・閉園したのも当然のことであった。 すなわち,本件テーマパーク事業はコンサルタント会社(P1及びP2)が事前に指摘したとおり,「テーマパークでいくべきではない」,「立地条件も悪く,とても隣接するRに対抗できないので事業化は断念すべき」ものであった,つまり,当初から失敗必至の計画であった。 このような遊園地(レジャーランド)にB市が補助金を支出するには,公共事務に匹敵するほどの必要性が,主観的にも客観的にも求められるところ,本件テーマパークは,いかなる点においても法(平成11年7月法律87号による改正前のもの)2条3項に例示されている公共性のある事業に該当しないものである。 (第9号事件被告らの主張)ア出資金と補助金について「株式の引受け及び払込みに関する支出負担行為及び支出 号による改正前のもの)2条3項に例示されている公共性のある事業に該当しないものである。 (第9号事件被告らの主張)ア出資金と補助金について「株式の引受け及び払込みに関する支出負担行為及び支出命令による公金支出」は,法232条の2の寄附又は補助に当たらない(東京地裁昭和63年3月22日判決・行裁集39巻3・4号162頁)。 イ本件出資金支出の適法性(ア) 法上の許容性まず,地方公共団体が株式会社等の民間の法人へ出資することについては,法2条(平成11年7月法律87号による改正前のもの)に規定する地方公共団体の目的及び本来的事務が住民福祉の向上にあるという制約はあるものの,法が認めているところである(法199条7項,221条3項,238条の5第1項)。 (イ) 次に,B市の本件会社に対する出資は,法232条1項の「地方公共団体の事務を処理するために必要な経費」に当たる。 a すなわち,本件テーマパーク事業は,B地域の基幹産業であった石炭産業が国の石炭政策により整理・縮小されていく中で,同地域の新たな可能性を開き,地域を再浮揚させることを最大の目的とした事業であり,国・県・市・C関連企業及び地元企業等さらには市民・議会が一体となってB市の再興を懸けて取り組み,産業構造の転換,地域経済の浮揚及び社会資本の整備等まさしく市民福祉の向上を目指した事業である。 したがって,B市が同事業について応分のかつ積極的な役割を果たすことは,まさしく地方自治体であるB市の事務を処理することにほかならない。 b そして,本件会社は,上記事業の運営,遂行主体として設立されたものであるから,その設立は,B市にとってみれば上記「事務を処理」するための行政手段と位置づけられるべきものである。したがって,その設立に当たり同市が行った出資は,「地方公共団体の事務を 設立されたものであるから,その設立は,B市にとってみれば上記「事務を処理」するための行政手段と位置づけられるべきものである。したがって,その設立に当たり同市が行った出資は,「地方公共団体の事務を処理するために必要な経費」に当たるといわねばならない。 ウ本件補助金支出の適法性(ア) 本件テーマパーク事業の公益性・公共性本件テーマパーク事業は,以下のとおり,公益性・公共性を有するものである。 a 本件テーマパーク事業は,素材型産業を中心とした鉱工業都市から多重構造,柔構造都市への産業構造転換を図らなければならない状況に置かれたB市が,その取組の一環として,観光産業という地域の雇用増大,活性化につながる大きな社会的,経済的波及効果が見込める事業として計画し実行したものである。 b 本件テーマパーク事業は,産業構造転換円滑化臨時措置法における特定地域であるB市に適切な経済的効果を及ぼすと認められる「特定出資法人事業」として認定されたことによる国(産業基盤整備基金)からの出資を始め,県・市,民間企業,金融機関等の出資による第三セクターがその運営主体となったものであって,B市において,行政,議会,市民が一体となって取り組んだ地域振興事業であった。 c 本件テーマパークは,「ジオ(大地)」と「バイオ(生命)」をコンセプトとする水族館,植物園を有したテーマパークで,公の施設であるQとも連携し,教育的機能とともに多様な「遊び」の空間を提供した施設であって,住民福祉の向上に貢献するものである。 d 本件テーマパーク事業に取り組むことにより,その直接的な社会経済的,公共的効果が得られるだけでなく,同事業に関連して,道路整備などによる周辺地区の開発,都市公園整備,大規模下水処理場建設,有力企業の立地や公の施設であるQの設置など多くの社会経済的,公共的 済的,公共的効果が得られるだけでなく,同事業に関連して,道路整備などによる周辺地区の開発,都市公園整備,大規模下水処理場建設,有力企業の立地や公の施設であるQの設置など多くの社会経済的,公共的波及効果を期することができた。 e また,本件テーマパークの開園は,広くB市の文化や歴史を紹介する機会を得るとともに「石炭のまち」からの脱却を目指す熱意を示して都市イメージを向上させ,B市の知名度を高めるものであった。 (イ) 本件テーマパーク事業の公益性と不採算性についてa 第三セクターにおける採算性という問題については,第三セクター固有の企業目的が,基本的に公共貢献ということであり利益追求は含まれないということを踏まえて検討すべきである。したがって,公共貢献と利益追求の両者が目的であり,ともに十全に満たさなければならないとすることは適切でない。第三セクターにおいては,事業継続のため一定の採算性を考慮した場合に,すべきことは収支の改良に向けての取組である。 この収支改良の立場からは,赤字資質の事業でも公共性がある以上これに取り組み,また,そのような部門も安易に削除するのでなく,その中で収支改良に取り組むことになる。その結果,赤字を黒字に転換できればベストであるが,赤字を減少することでも公共負担・補てんを軽減することができる,これが第三セクターの基本的な論理である。 本件テーマパークは,その事業計画において,累積赤字を解消し黒字経営となるには15年かかるという計画に基づいた,開園後しばらくの間は,いわば非収益事業といえるものであって,収支改良に努める一方で,事業遂行には公共負担・補てんが不可欠なものであった。 このような視点を持って具体的な事業形態と採算性の関係についてみてみると,本件テーマパークは,水族館,植物園といった収益性の低い施設と相対 で,事業遂行には公共負担・補てんが不可欠なものであった。 このような視点を持って具体的な事業形態と採算性の関係についてみてみると,本件テーマパークは,水族館,植物園といった収益性の低い施設と相対的に収益性の高い遊具等「遊び」の施設の両者を併せ有するものであるが,いずれも国や他の地方公共団体が設置,運営する動・植物園や観光レクリエーション施設と全く同じ性質を有し,機能を果たすものであって,その公益性・公共性は,いうまでもないところであり,「不採算性」をもって当該施設の公益性・公共性を否定することができないことは明らかである。 b もっとも,本件会社の事業経営においては,当初より採算性も重視され,その慎重な分析及び見通しのなかで運営されたものである。 (ウ) 補助金支出要件存否の判断の裁量性a 法232条の2は,「普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる。」と定め,普通地方公共団体が補助金を交付する場合に,公益上の必要性が存在することを要件としている。 b しかしながら,「公益上の必要」という文言は,極めて抽象的で外延の広い概念であるところ,公益上の必要性は本来地方公共団体の議会や首長が政策的に決定することである上,実質的に考えても,地方公共団体は憲法92条に規定された地方自治の本旨及びその内容を具体的に規定した地方自治法等の理念に基づき,その地域内の住民が行政権に対して要求する様々な政策要求に対し,その優先関係を政治的に決定してその行政目的を達成し,もって,住民の福祉を増進するところにその本質があるのであるから,公益上の必要性の有無の判断は,第一次的には,当該地方公共団体の議会や首長こそが,これを良く判断し得るものであって,しかもその裁量の範囲は広範なものというべきである。 したがって, あるのであるから,公益上の必要性の有無の判断は,第一次的には,当該地方公共団体の議会や首長こそが,これを良く判断し得るものであって,しかもその裁量の範囲は広範なものというべきである。 したがって,その判断が著しく不合理で裁量権を逸脱又は濫用していると認められる場合にのみ違法となると解すべきものである(熊本地裁昭和48年(行ウ)第4号・昭和51年3月29日判決,名古屋高裁昭和45年(行コ)第14号・昭和51年4月28日判決,神戸地裁昭和57年(行ウ)第24号・昭和59年3月7日判決,最高裁第一小法廷昭和55年(行ツ)第163号・昭和60年7月18日判決角田裁判官補足意見,山形地裁昭和58年(行ウ)第1号・第2号・昭和63年4月25日判決,福島地裁平成元年(行ウ)第9号・平成2年10月16日判決,秋田地裁昭和61年(行ウ)第2号・第6号・平成3年3月22日判決等参照)。 (エ) 本件補助金支出における公益上の必要性についてa 本件テーマパーク事業は,前記(ア)のとおり,B地域の基幹産業であった石炭産業が国の石炭政策により整理・縮小されていくなかで,新たな可能性を開く地域再浮揚に向けての最大の事業として,国・県・市・C関連企業及び地元企業等さらには市民・議会が一体となってB市の再興を懸けて取り組んだものであって,産業構造の転換,地域経済の浮揚及び社会資本の整備等まさしく市民福祉の向上を目指した事業であり,かつ,その直接的,間接的効果が得られたものであって,このような事業を推進する本件会社に対しての市としての補助金の交付は,明らかに公益目的に合致するものである。 b また,本件会社への補助金の支出は,もろもろの政策要求との優先関係の点においても他の行政目的を阻害し,また,行政全体の均衡を損なうなどのおそれはなく,補助金行政自体の公平性や公正 るものである。 b また,本件会社への補助金の支出は,もろもろの政策要求との優先関係の点においても他の行政目的を阻害し,また,行政全体の均衡を損なうなどのおそれはなく,補助金行政自体の公平性や公正さの観点からも問題はない。 c 補助金の支出額は,平成元年から平成10年までの10年間で合計4億4397万4388円(出資金を除く)であるが,平均すれば年間約4400万円程度であり,本件テーマパーク事業の規模(開園時投資額約96億円)を勘案すれば,相当額の範囲内である。また,支出に至る手続等については,当然ながら,議案として上程して議会の議決を得ており,個々の支出に当たっては財務会計上の手続を適正に経ているものである。 (オ) 補助金支出における「財政上の余裕」について本件においては「財政上の余裕」の有無という点が問題とされているが,寄附又は補助金は,当該地方公共団体の財政に余裕がある場合にはじめて支出できるといった性質のものではないから,同問題は,寄附又は補助金は,「公益上の必要性がある場合」に支出することができるということを前提に,もろもろの行政需要に対する支出の優先劣後という政策的,行政的判断における1つの相対的事項にとどまるものである。 この点について,裁判例(東京地裁平成10年7月16日判決)は,「(法)232条の2にいう「公益上の必要がある場合」に該当するかどうかの判断に当たっては,当該地方公共団体の財政の状況をも勘案すべきものと解されるが,しかし,寄附又は補助は当該地方公共団体の財政に余裕がある場合にはじめて支出できるというものではなく,補助金等の支出の必要性の程度との兼ね合いの問題であり,当該地方公共団体の財政状況がよくない状況にあっても,補助金等の支出の必要性が高い場合には「公益上の必要がある場合」に該当するものというべ く,補助金等の支出の必要性の程度との兼ね合いの問題であり,当該地方公共団体の財政状況がよくない状況にあっても,補助金等の支出の必要性が高い場合には「公益上の必要がある場合」に該当するものというべきである」としているものである。 (カ) 以上のとおりであるから,B市の本件会社への補助金の支出は,法232条の2にいう「公益上必要性がある場合」に当たるというべく,支出当時,その有無ないし該当性について第一次的裁量判断権を有していたB市議会及び第9号事件被告らの判断過程には,著しく不合理でその裁量権を逸脱又は濫用していると認められる事由は全く存在しない。 (3) 争点3(第9号事件被告らの故意・過失の有無)について(第9号事件原告らの主張)ア被告A1について(ア) 前記(2)(第9号事件原告らの主張)のとおり,本件テーマパークは,全く財政的に余裕のないB市においていささかの重要性も緊急性もなく,公益目的の実現に反し,市民にとって有効な効果を期待することができないものであって,かえって他の行政目的を阻害し,行政全体の均衡を損なうものであり,本件各支出はいかなる意味においても許されない違法な支出である。 にもかかわらず,被告A1は,あえて違法な公金の支出行為をなしたものであり,その点について,故意又は過失が存する。 (イ) また,P1及びP2の本件テーマパークに係る「テーマパークとして失敗必至」である旨の意見書を故意に隠匿してまで,本件テーマパークの計画を強引に進めていったことは,被告A1の市長としての行政裁量の範囲を逸脱しているものである。 イ被告A2について被告A2は,前市長をそのまま無批判に踏襲することなく,その主体的な判断によって税金の無駄遣いを回避すべき責務を負っている者であり,「議会への議案の提出や予算の調製及び執行等の権限を与 A2について被告A2は,前市長をそのまま無批判に踏襲することなく,その主体的な判断によって税金の無駄遣いを回避すべき責務を負っている者であり,「議会への議案の提出や予算の調製及び執行等の権限を与えられている普通地方公共団体の長(法149条1項1号,2号)に対しては,一方で,これらの権限を適正に行使せしめるため,たとい,自らが担任する事務のうちに前任者を引き継いだものがあったとしても,それをそのまま受容する必要はいささかもなく,とりわけ,当該事務が,住民の税金をもって充てられる事項については,(中略)公益性の有無につき十分に検討し,これのないことが判明したときは,直ちに,自らの判断で,その執行ないし推進を回避すべく,相当な措置を講ずべきことが義務づけられている」(山口地裁平成10年6月9日判決・判例時報1648号28頁所収参照)。 にもかかわらず,被告A2もまた,あえて違法な公金の支出をなしたものであり,その点について故意又は過失が存する(第9号事件被告らの主張)ア本件テーマパークの経営破たんの要因とその予見ないし認識可能性不存在(ア) 破たんの要因本件テーマパークの経営が破たんに至った要因は,開園直後の体力の弱い本件テーマパークが,以下に述べるような急激な変動に対し,懸命な経営再建への努力にもかかわらず,結果として耐えられなかったことにある。 本件テーマパーク事業構想時から開園及び閉園に至る間の我が国の経済状況の動向をみてみると,総務庁統計局発行の「日本統計年鑑」によれば,1980年代後半の日本経済は国内総支出(国内総生産)において実質年5パーセント前後の成長率を記録している。 しかし,90年代に入ると,いわゆるこのバブル景気も土地や株などの価格の下落とともに下降に転じ,1994年(平成6年)度までは0.5パーセント前後の成 質年5パーセント前後の成長率を記録している。 しかし,90年代に入ると,いわゆるこのバブル景気も土地や株などの価格の下落とともに下降に転じ,1994年(平成6年)度までは0.5パーセント前後の成長にとどまり,景気は足踏み状態で推移している。 平成7年度になると消費や企業の資本形成も上向きに転じ,平成8年度にかけて景気は持ち直し,実質成長率も3.0パーセントから4.4パーセントとバブル期にも匹敵するほどの勢いを示している。 なお,本件テーマパークの開園はこの景気回復期の平成7年であり,開園初年度の好調な集客も平成8年にかけての好景気に後押しされた影響が大きいものと考えられる。 ところが,統計資料も如実に示すように,我が国の経済状況は平成9年に入ると一転して大きく落ち込み,実質国内総支出が対前年度マイナス0. 1パーセントと少なくとも「日本統計年鑑」(平成13年総務庁統計局)に記録のあるだけでも過去20年来経験したことのない事態となった。さらに,平成10年度は,一層悪化し,対前年度マイナス1.9パーセント,暦年で対比すれば2.5パーセントのマイナスと異常な落ち込みを呈する状況となったことが明らかに読み取れる。 (イ) 経済状況急変についての予見ないし認識可能性不存在我が国の経済は,バブル期の後,累次の国の経済対策の実施,特別減税の実施,金融システムの安定化策の具体化などにより次第に立ち直りを見せ,前述したように平成8年度は実質国内総支出が対前年で4パーセント台の伸びを示すなど景気は回復したかに見えた。国においても,経済見通しについて平成9年度,平成10年度共に「国内総生産の実質成長率は1.9パーセント程度になる」とし,「回復軌道に復帰」するとしている。 このような状況の中で,現実の景気の推移は回復どころか前項で述べたとおり国内総支出指数で 成10年度共に「国内総生産の実質成長率は1.9パーセント程度になる」とし,「回復軌道に復帰」するとしている。 このような状況の中で,現実の景気の推移は回復どころか前項で述べたとおり国内総支出指数で平成9年度,平成10年度とも対前年度比マイナス成長という全くの予想外の結果となった。 このように国の経済見通しも大きく外れるような経済状況の急激な変動の中で,平成9年度さらに平成10年度に及ぶ景気動向を事前に予見することは一般市民はもちろん,企業人といえども不可能に近いものであった。 本件テーマパークの運営においても確かに平成8年に入ると集客に落ち込みがみられる状況となり,平成9年度に入っても集客は伸びず,経営改善を図る一方で,市の損失補償を得て金融機関から事業運転資金の借入れを行う状況ではあったが,同年度における景気の持ち直しや以後の景気回復についての国や経済界の明るい見通しもあるなかで,このように経営を前向きに進めることは当然のことであり,また,市においても議会の承認を経て損失補償,補助金等の支援で本件テーマパークの健全経営化を維持しようとすることは合理的なことであった。 我が国の経済動向が激しく推移する中で,第9号事件被告らにおいて,本件テーマパーク事業構想期から閉園に至る期間(1980年代後半から1998年の閉園に至る期間)において,とりわけ平成10年(1998年)閉園に至る前2,3年の経済情勢悪化の激しい推移を見通すことは,不可能なことであり,これによって,本件テーマパークの経営が行き詰まり,これに補助金等の支出が結局損害に帰することになると予見すべきであったとすることは到底できないというべきである。 イ以上のとおりであるから,第9号事件被告らには市に損害を与えるという故意はもちろん過失も認められず,同被告らがB市に対し損害賠償責任 予見すべきであったとすることは到底できないというべきである。 イ以上のとおりであるから,第9号事件被告らには市に損害を与えるという故意はもちろん過失も認められず,同被告らがB市に対し損害賠償責任を負う要件は存在しないものといわねばならない。 6 第22号事件に係る争点についての当事者の主張(1) 争点4(第22号事件監査請求が監査請求期間を徒過した請求か否か)について(第22号事件原告らの主張)ア第22号事件原告らは,本件各損失補償契約が違法であることを主張するほか,同契約に基づく支出それ自体も違法である旨主張するものである。 イ本件各損失補償契約には,①本件テーマパーク事業の具体的発足前にP1やP2等の各コンサルタント会社が作成・提出していた,本件テーマパークに係る計画は失敗必至であるとする意見が記された報告書がB市民にも市議会にも秘匿されていた上,本件会社の取締役会にも上程されていなかったものであり,契約の重要な前提事実が秘匿され契約の効力を疑わせる事情が存していること,②B市当局は,市議会において,本件各損失補償契約に基づいてB市の具体的支出はなく,本件テーマパークの計画の資金調達のための便法にすぎない旨説明するとともに,③仮に支出を要する場合でも市議会の審議を受けて別途予算審議がなされる旨説明していたが,現実には,B市長は,本件会社の資産の処分が完了しないうちに,本件各損失補償契約に基づいて支出をしようとしていること,以上の事実があり,これらのことから,本件各損失補償契約に基づく支出行為それ自体にも違法性があることは明らかである。 ウよって,第22号事件監査請求には,本件各損失補償契約に基づく支出を差し止める目的でなされたものであるから,同契約の締結の日より1年を過ぎていても,監査請求期間を経過したことにつき「正当 ある。 ウよって,第22号事件監査請求には,本件各損失補償契約に基づく支出を差し止める目的でなされたものであるから,同契約の締結の日より1年を過ぎていても,監査請求期間を経過したことにつき「正当な理由」(法242条2項ただし書)があると認められるべき特別の事情がある。 (第22号事件被告の主張)ア第22号事件監査請求の監査請求期間の徒過について第22号事件原告らの主張は,本件各損失補償契約が違法・無効であることを前提として,これらの契約に基づいて履行される公金の差止めを求めるものであるが,問題の核心は財務会計行為である本件各損失補償契約が無効かどうかにあるのであって,この件に関しての監査請求期間は「当該行為のあった日」すなわち当該損失補償契約の締結の日から起算すべきものである。 ところが,第22号事件原告らの当該監査請求は,平成11年8月31日に行われており,本件各損失補償契約締結後約4年5か月ないし1年7か月半経過してなされている。 よって,本件各損失補償契約締結の日から1年以上経過してなされた監査請求を前置した本件訴えは,適法な監査請求を前置しないで提起された不適法なものといわざる得ない。 イ第22号事件監査請求の期間徒過に係る「正当な理由」の有無について法242条2項ただし書の「正当な理由」の有無の判断基準については,最高裁昭和63年4月22日第二小法廷判決・判時1280号63頁において,①当該行為(財務会計上の行為)が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡になされたこと,②普通地方公共団体の住民が相当な注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,③当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求がなされたかどうか,という判断基準が示されている。 本件についてみるならば,本 に客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,③当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求がなされたかどうか,という判断基準が示されている。 本件についてみるならば,本件各損失補償契約の締結については,契約締結前後において,新聞記事や「B市議会報」により広く市民に周知されており,「住民に隠れて秘密裡になされた」事実は全くなく,仮に第22号事件原告らにおいて主観的には本件各損失補償契約に係る事実を知らなかったとしても,本件各損失補償契約について,当該契約がなされるであろうこと及びなされたことは,第22号事件原告らのみならず一般市民も特別の注意を払うことなく容易に了知できたことであった。 以上のことからすれば,第22号事件原告らは,本件各損失補償契約の締結がなされる前においてはその差止めを求めて,締結後においては締結日から1年以内に当該契約の違法・無効を理由に履行の差止めを求めてそれぞれ監査請求を行うことができたものであり,本件各損失補償契約締結後4年5か月ないし1年7か月半経過した平成12年8月31日になってなされた第22号事件監査請求については,その期間徒過についての「正当な理由」は存在しない。 (2) 争点5(本件各損失補償契約に基づく支出行為の違法性の有無)について(第22号事件原告らの主張)ア本件各損失補償契約に基づく支出の性格本件テーマパーク事業は,明らかにB市の事業そのものではなく,法232条の経費の支弁は,当該地方公共団体の事業に係る費用をいうものであるから,本件各損失補償契約に基づく支出は法232条の2にいう「補助」に該当するものである。 イ本件各損失補償契約に基づく支出の違法性(ア) 本件各損失補償契約は,法人に対して地方自治体が債務保証することを禁じた「法人に対する政府の財政援助の 条の2にいう「補助」に該当するものである。 イ本件各損失補償契約に基づく支出の違法性(ア) 本件各損失補償契約は,法人に対して地方自治体が債務保証することを禁じた「法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律」の脱法手段として締結されたものであり,その実体は,債務保証とほとんど異なるところはない。 そして,前記5(2)(第9号事件原告らの主張)のとおり,本件テーマパーク事業は,いかなる点においても法(平成11年7月法律87号による改正前のもの)2条3項に例示されている公共性のある事業に該当しないものであり,本件各損失補償契約は法に反し,その目的においても手段においても一見明白に違法であり,無効なものである。 以上のことに加え,前記(1)(第22号事件原告らの主張)イの各事実にかんがみれば,本件各損失補償契約に基づく支出は,法(平成11年7月法律87号による改正前のもの)2条3項,13項,232条の2,憲法13条,25条1項,31条等に違反する違法なものである。 (イ) 第22号事件被告の指摘する最高裁昭和62年5月19日判決・民集41巻4号687頁は本件と事案を異にするし,本件の参考にならないものである。 まず,右最高裁の判例の事案は随意契約の制限に違反する契約に基づく支出の差止の可否が問題となったものであり,この場合には確かに契約の締結方法が違法であるとしても当然に契約が無効となるものではないというのは十分に理解できるところである。 しかし,本件は契約の締結方法に問題があるというのではなく,その目的においても手段においても一見明白に公共性がないものとして違法であり,契約を無効とすべきものである。 また,右最高裁判例が随意契約を当然に無効としなかったのは,随意契約の制限が「専ら一般的抽象的な見地に立って普通地方公共団体の締結する契約 ないものとして違法であり,契約を無効とすべきものである。 また,右最高裁判例が随意契約を当然に無効としなかったのは,随意契約の制限が「専ら一般的抽象的な見地に立って普通地方公共団体の締結する契約の適正を図ることを目的とし」た規制であって,売買契約が部外の第三者との間で締結されたものであるから「契約の相手方において不測の損害をこうむることになりかねない」ことを配慮したことによるものである。 しかし,本件各損失補償契約は,本件テーマパーク事業の資金捻出のためのものであって,そのことを契約当事者はいずれも知悉し,その推進に加担していたものであるから「不測の損害」をこうむることを避けるべきような事情は考えられない。 すなわち,本件各損失補償契約の一方当事者である銀行等は,この契約の目的が本件会社の設立・運営のための資金調達のものであることを知悉し,むしろB市長と一体となって本件テーマパーク事業を推進していたものである。これらの銀行等はB市の財政状況が危機的状況にあることも十分に認識しており,本件テーマパーク事業に公共性が認められないことも認識していたか認識すべき立場にあったものである。コンサルタント各社の報告書は前記のとおり秘匿されていたので,これらの銀行等も本件テーマパーク事業が失敗必至という認識まではなかったものとは推認されるが,計画が失敗した場合であっても本件各損失補償契約によって損害をこうむることはないと見込んでいたものと思われる。このような思わくをもって本件テーマパーク事業へ融資した銀行等について,B市民の税金を投入してまで保護すべき事情は認められない。 (第22号事件被告の主張)ア本件各損失補償契約に基づく支出の法的根拠B市がC5社及び民間金融機関との間で締結した本件各損失補償契約に伴い当該契約の定めに従って損失補償を履行す は認められない。 (第22号事件被告の主張)ア本件各損失補償契約に基づく支出の法的根拠B市がC5社及び民間金融機関との間で締結した本件各損失補償契約に伴い当該契約の定めに従って損失補償を履行すべき状況に至った場合に支出することとなる公金の性格は,本件テーマパーク事業の公益性・公共性,すなわち,B市の産業構造の転換,地域経済の浮揚等の市勢及び市民福祉の向上を図る施策を推進するものであるから,法232条に定める「普通地方公共団体の事務を処理するために必要な経費」にほかならないというべきであり,第22号事件原告らの主張する法232条の2による補助金の支出ではない。 イ契約上の義務履行行為と差止請求の可否について(ア) 契約の締結が法令に違反して行われたという理由で違法と評価される場合に,その履行行為について住民訴訟の規定に基づく差止請求が認められるかという点について,判例及び下級審裁判例は,履行行為それ自体が違法である場合を除いて当該契約の私法上の効力が否定されない以上,地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行する義務を負うとしているところである(最高裁昭和62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁等)。 この点,第22号事件原告らは,同事件被告の引用した最高裁判決の事案は,契約締結方法が違法である場合を問題としたものであって,本件と異なり参考にならないと主張している。 しかしながら,当該最高裁判決の判旨は,第22号事件原告らのいうような契約締結方法に関してのみいうものではなく,およそ地方公共団体の締結する私法契約について契約としての有効性判断の基準を示すものであると解するべきであって,本件各損失補償契約についても,私法人の行為であれば無効とされるような事由,すなわち,「当該契約の締結が許されないこ 法契約について契約としての有効性判断の基準を示すものであると解するべきであって,本件各損失補償契約についても,私法人の行為であれば無効とされるような事由,すなわち,「当該契約の締結が許されないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手において当該契約の締結が許されないことを知り,又は知り得べかりし場合のように,当該契約の効力を無効にしなければ契約締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる「特段の事情」が認められる場合に限り,私法上無効となるものと解す」べきである。 (イ) また,第22号事件原告らは,他方において,本件各損失補償契約は,「目的,手段において一見明白に公共性がないものとして違法であり,契約を無効とすべきものである。」と主張している。 しかしながら,第22号事件原告らが本件テーマパーク事業には公共性がないとして主張している個々の事由は,いずれも契約の一方の当事者であるB市側の高度な政策的,行政的判断に係る事柄であって,相手方である金融機関等の関知するところではない。 のみならず,本件テーマパーク事業の公共性,公益性については,前記5(2)(第9号事件被告の主張)ウ(ア)のとおりであり,もちろん,第22号事件原告らの主張する個々の事由,及びその総体から本件テーマパーク事業に公益性,公共性が存在しないとの評価,判断が一義的に導かれるわけではなく,同原告らの主張にかかわらず,そのような評価,判断は到底一見明白なこととは言い得ない。 そうすると,本件においては,そもそも本件各損失補償契約の締結が許されないことが何人の目にも明らかであるとか,契約の相手方において,本件各損失補償契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合であって,その契約の効力を否定しなければ法令の趣旨を没却する結果となるといった「特段の 明らかであるとか,契約の相手方において,本件各損失補償契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合であって,その契約の効力を否定しなければ法令の趣旨を没却する結果となるといった「特段の事情」は認められないといわねばならない。 よって,第22号事件原告らの「本件各損失補償契約は法に違反し,一見明白に違法,無効である。」との主張に理由のないことは明らかである。 ウ本件各損失補償契約の適法性・有効性(ア) 本件テーマパーク事業は,前記5(2)(第9号事件被告らの主張)ウ(ア)のとおり公共性を有するものであり,B市にとってこれまで石炭産業に依存してきた地域の産業構造を脱するための新たな地域活性化施策の推進を図るリーディングプロジェクトであるから,B市が,C5社とともに当該事業を中核となって支えることは当然のことであって,本件各損失補償契約は,その具体的支援の1つとして締結されたものである。 本件各損失補償契約の締結は,本件テーマパーク事業の持つ公益性・公共性に照らし,B市及び市民にとって極めて公益性・公共性の高い施策推進のため必要不可欠の措置ないし方法であって,その適法性は明らかである。 (イ) 損失補償契約の許容性a 地方公共団体の法人に対する債務保証は,「法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律」(昭和21年法律第24号)で原則として禁止されているところであるが,損失補償については,同法の規制するところではない(行政実例昭和29年5月12日自丁行発第65号)とされ,会社その他の法人に対して地方公共団体が損失補償契約を締結することはできると解されており,また,法221条3項では,予算の執行に関して長の調査権等の及ぶ法人を規定する中で「…地方公共団体が…損失補償を行う等その者のために債務を負担している法人…」とし,地方公共 はできると解されており,また,法221条3項では,予算の執行に関して長の調査権等の及ぶ法人を規定する中で「…地方公共団体が…損失補償を行う等その者のために債務を負担している法人…」とし,地方公共団体の法人に対する損失補償を想定している。 b 損失補償と保証債務の相違損失補償契約は,債務保証契約と異なり主たる債務の存在を前提としない独立の契約であって,損害担保的な役割を果たすものである。このような私法上の損害担保の位置づけで地方公共団体が行う損失補償契約は,財政援助の一手段として例えば対象となる事業の持つ公益的面から採算上の問題がある場合や地方公共団体からの損失補償がなければ条件の良い融資を受けることが困難となるような特定の事業の安定又は発展を奨励・助成するために,その事業を進んで行う者に対しその事業遂行において損失が生じた場合,地方公共団体が補償するため締結する契約であるとされている。 また,損失補償は,主たる債務と同一性を有し債務者の債務不履行につき全責任を負う債務保証と違い,本質上損害が生じて初めて補てんすべきものであり,単に特定の債務が弁済期が到来したのに弁済されないということのみでは損失とはされず,債務者が破産したとか,そこまでに至らなくとも,客観的に債権の回収がほとんど見込めないとかいう事態となってはじめて損失が生じるといえるものであり,この段階に至ってから補てんするという契約が損失補償契約であるとされている。 本件各損失補償契約においても,C5社に対しては同社の損失額の一定割合を,金融機関に対しては本件会社からの債権回収不能額をそれぞれ前提とした額が基本的な補償対象額となるなど本件会社のC5社や金融機関に対する債務額とは直結しない市の独自の負担を内容としたものであり,法の規制する法人に対する債務保証とは性格を異にする をそれぞれ前提とした額が基本的な補償対象額となるなど本件会社のC5社や金融機関に対する債務額とは直結しない市の独自の負担を内容としたものであり,法の規制する法人に対する債務保証とは性格を異にするものである。 第3 争点に対する判断 1 第9号事件について(1) 争点1(本件監査請求期間外支出について監査請求期間徒過の「正当な理由」(法242条2項ただし書)の存否)についてア法242条2項本文は,普通地方公共団体の執行機関,職員の財務会計上の行為は,たとえそれが違法・不当なものであったとしても,いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象となり得るとしておくことが法的安定性を損ない好ましくないとして,監査請求期間を定めたものである。他方,同項ただし書は,「正当な理由」があるときは,例外として,当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過した後であっても,普通地方公共団体の住民が監査請求をすることができるとしているが,その「正当な理由」とは,前記242条2項本文の趣旨にかんがみ,特段の事情のない限り,①普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,②当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものと解される(最高裁昭和63年4月22日第二小法廷判決・裁集民154号57頁参照)。 また,前記「正当な理由」が本案前の監査請求期間の徒過が許されるか否かの場面で問題となることにかんがみれば,前記①の「当該行為を知ることができた」とは,普通地方公共団体の住民をして,当該行為について監査請求をすべきか否かを検討し得る程度に具体的な内容を知ることができたか否かを問題にすべきものと理解すべきである。 イかかる立場に立って本件監査請求期 通地方公共団体の住民をして,当該行為について監査請求をすべきか否かを検討し得る程度に具体的な内容を知ることができたか否かを問題にすべきものと理解すべきである。 イかかる立場に立って本件監査請求期間外支出に係る監査請求について検討する。 (ア) まず,甲イ第1号証,乙イ第1ないし第3号証の各1,2,第4号証の1ないし6,第5ないし第7号証の各1,2,第8号証,第9号証の1ないし9,第10ないし第12号証の各1,2,第13号証の1ないし7,第14ないし第17号証の各1,2,第18号証の1ないし10,第19ないし第21号証の各1,2,第22号証の1ないし8,第23ないし第26号証の各1,2,第27号証の1ないし12,第28ないし第30号証の各1,2,第31号証の1ないし8,第32ないし34号証の各1,2,第35号証の1ないし9,第36,第37号証の各1,2,第38号証の1ないし10,第39ないし第41号証の各1,2,第42号証の1ないし8,第43号証及び弁論の全趣旨によれば,本件各支出については,それぞれB市の一般会計予算案(当初予算案,補正予算案)に計上され,本件会社に対する出資金又は補助金である旨の説明を経た上で,別紙「B市の本件会社に対する支出一覧表」中の「市議会議決」欄の日に市議会の議決を経て,支出命令機関であるB市長の命令に基づき出納機関である収入役により支出されたものであり,予算内支出として必要な手続を経た上で支出されているとともに,その後同市議会において決算認定を経ているものと認められる。 他方,乙イ第51号証の1ないし16によれば,各年度の予算議決の概要が議決後約2か月後に市広報紙「広報B」により広報されるとともに,本件テーマパーク事業の概要も同広報紙にて広報されていることが認められる。 よって,本件各支出の事実及びその内 ,各年度の予算議決の概要が議決後約2か月後に市広報紙「広報B」により広報されるとともに,本件テーマパーク事業の概要も同広報紙にて広報されていることが認められる。 よって,本件各支出の事実及びその内容は,各支出行為後間もない時期において,B市民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたものというべきである。 (イ) 次に,甲イ第1号証及び弁論の全趣旨によれば,第9号事件原告らが第9号事件監査請求において主張した本件各支出についての違法事由は,本件各支出が法232条の2「公益上必要がある場合」に当たらないことであり,具体的には,B市の財政状況からみると,P1から本件会社に対し経営の失敗を予測した報告書が提出されて,当初から失敗必至であった本件テーマパーク事業へ支出することは,何らの公共性も公益性も認められないという点にあるものと認められる。 ここで,第9号事件原告らの主張する前記違法事由を前提として,客観的にみてどの時点において当該行為について監査請求をすべきか否かを検討し得る程度に具体的な内容を知ることができたか否かを検討するに,①乙イ第50の7ないし37によれば,本件テーマパーク事業については,前記(ア)の「広報B」のほか,企画当初の構想,本件会社に対するB市の出資・支援態勢,用地変更,基本構想の変更,事業計画概要(収支見込みを含む。),関連事業(アクセス道路等),経営状況,本件経営再生計画(要旨)などについてB市議会において議論された概要が「B市議会報」により広報されていることが認められるとともに,乙イ第52号証の1ないし63,第53号証の1ないし77によれば,地元新聞紙であるU新報やほかの新聞においても,本件テーマパーク事業に係るB市議会における議論の前記概要のほか,同市議会全員協議会における同事 号証の1ないし63,第53号証の1ないし77によれば,地元新聞紙であるU新報やほかの新聞においても,本件テーマパーク事業に係るB市議会における議論の前記概要のほか,同市議会全員協議会における同事業に関する協議内容,本件会社の設立から本件テーマパーク閉園に至るまでの事実経過(事業計画の進捗状況,開園時の状況,開園後の経営状況,本件各損失補償契約の概要等)がその都度報道されていると認められること,②後記(2)アのとおり,本件各支出の公益性の有無の判断は,当該補助金の交付の目的,趣旨及び経緯,補助の対象となる事業の目的,性質及び状況,当該地方公共団体の財政状況,議会の対応等諸般の事情を総合的に判断して決せられるべきものであるところ,第9号事件原告ら指摘に係るP1の報告書は,本件各支出の違法性を判断するための一判断要素ではあるが,その性質上本件各支出の違法性を直ちに基礎づける根拠資料とはいい難いこと,③乙イ第52号証の56によれば,平成9年12月16日開催のB市議会12月定例会の本会議において,B市長が本件テーマパーク事業について「当初計画の見通しに甘さがあったと言わざるを得ない」旨答弁した事実が同月17日のU新報において報道されたことが認められ,この時点において,当時の本件テーマパークの経営不振につき,計画段階での経営の見通しに要因があったことがB市民に対して表明されていたといえること,④甲イ第14号証によれば,平成10年12月2日のU新報において,P1作成に係る中間報告書の存在及びその内容が「財務的に非常に厳しく,あえて事業化を図る価値があるのか疑問…」というものであったこと並びに上記中間報告書を受けて本件会社の取締役総務部長が同社長に「P1が結論を出しました。テーマパーク事業を方向転換するか,あるいは会社を解散するか。いまなら出資 るのか疑問…」というものであったこと並びに上記中間報告書を受けて本件会社の取締役総務部長が同社長に「P1が結論を出しました。テーマパーク事業を方向転換するか,あるいは会社を解散するか。いまなら出資者に資金は全額返せる。これまでに使った分は資本金の定期預金金利で大半がまかなえます…」と迫ったことが明らかにされた報道がなされていたこと,⑤第9号事件原告らのうち原告Nは,昭和42年4月から平成2年1月4日までの間(昭和50年から54年までは除く。),B市市議会議員の職にあり,かつ乙イ第48号証の1ないし4によれば,本件テーマパーク事業が本格的に開始した平成元年当時には,B市議会内において本件テーマパーク事業に関し審議を行っていた総務委員会に同委員として継続的に参加していた者であると認められ,本件テーマパーク事業ないし本件各支出の問題点について一般住民よりは容易に知り得る立場にあったと認められること,以上の各事実からすれば,第9号事件原告ら主張に係る前記違法事由の根拠事実は遅くとも平成10年12月2日の時点においては第9号事件原告らに対して明らかになっており,客観的にみて,当該時点においては本件各支出について監査請求をすべきか否かを検討し得る程度に具体的な内容を知ることができたものというべきである。 この点,第9号事件原告らは,平成10年12月2日におけるU新報の前記報道においては,各コンサルタント会社の報告書の内容のごく一部が開示されたにすぎない旨主張する。 しかしながら,第9号事件原告N本人尋問の結果(115,116項)によれば,U新報の前記④の報道が,原告Nが本件各支出に違法性があると判断した直接の要因であったことが認められ,また,甲イ第1号証によれば,現に第9号事件原告らは前記④の報道に基づいて監査請求をなし得ているものと認められ の報道が,原告Nが本件各支出に違法性があると判断した直接の要因であったことが認められ,また,甲イ第1号証によれば,現に第9号事件原告らは前記④の報道に基づいて監査請求をなし得ているものと認められるから,前記程度の報道であっても第9号事件監査請求をすべきか否かを検討し得る資料になり得たものというべきであって,第9号事件原告らの前記主張には理由がない。 (ウ) そして,第9号事件監査請求は,平成10年12月2日から4か月弱を経た平成11年3月31日になされており,本件全証拠によっても前記(イ)の報道後監査請求をするまでに4か月間弱を要すべき事情は認められないから,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたものとはいえず,第9号事件監査請求が本件監査請求期間外支出から1年を経過した後にされたことについて法242条2項ただし書にいう「正当な理由」があるということはできない。 ウよって,第9号事件原告らの訴えのうち,本件監査請求期間外支出に係る財務会計行為が違法であるとして損害賠償を請求する部分は,適法な住民監査請求を経ていないから,法242条の2第1項の要件を欠く不適法なものである。 (2) 本件各支出のうち平成10年4月1日以降に支出行為がなされた運営費補助39ないし42及び特定出資法人事業促進助成金③,④の各支出(以下「本件平成10年4月以降支出」という。)の違法性の有無についてア補助金交付の適法性に関する判断基準法232条の2は,「普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる。」と規定しているところ,地方公共団体の長は,地方自治の本旨の理念に沿って,住民の福祉の増進を図るために地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う地方公共団体の執行機関(法14 できる。」と規定しているところ,地方公共団体の長は,地方自治の本旨の理念に沿って,住民の福祉の増進を図るために地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う地方公共団体の執行機関(法148条,149条参照)として,住民の多様な意見及び利益を勘案し,補助の要否についての決定を行うものであり,その決定は,事柄の性質上,当該地方公共団体の地理的・社会的・経済的事情及び他の行政政策との関連等諸般の事情を総合的に考慮した上での政策的判断を要するものであるから,公益上の必要性に関する判断に当たっては,補助の要否を決定する地方公共団体の長に一定の裁量権があるものと解されるとともに,その判断が裁量権の逸脱又は濫用があったと認められる場合には,当該補助金の支出は違法と評価すべきものと解するのが相当である。 そして,地方公共団体の長が特定の事業について補助金を交付する際に行った公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったか否かは,当該補助金の交付の目的,趣旨及び経緯,補助の対象となる事業の目的,性質及び状況,当該地方公共団体の財政状況,議会の対応等諸般の事情を総合的に考慮した上で検討することが必要であると解される。 イ本件平成10年4月以降支出の目的,趣旨及び経緯前記第2の3(6)ア(ア),(ウ)のとおり,運営費補助39ないし42は,本件会社がB市からの派遣職員に対して支払っている人件費相当分の助成並びに本件会社が行ったイベント費及び広告宣伝費の一部を補助したもので,平成元年10月16日からB市が継続的に行ってきたものの一部であり,特定出資法人事業促進助成金③,④は,産業構造転換円滑化臨時措置法に基づくB市特定出資法人事業促進助成金交付要綱3条により,事業の用に供する施設に対する固定資産税相当分(土地に係るものを除く。)を補助した 法人事業促進助成金③,④は,産業構造転換円滑化臨時措置法に基づくB市特定出資法人事業促進助成金交付要綱3条により,事業の用に供する施設に対する固定資産税相当分(土地に係るものを除く。)を補助したものであり,平成9年5月23日から半期に1度の頻度で継続的に行ってきたものの一部である。 ウ本件テーマパーク事業の目的,性質及び状況(ア) 本件テーマパーク事業の目的・性質前記第2の3の(3)(4)の本件会社設立までの経緯及び乙ロ第9号証の2によれば,本件テーマパーク事業は,X炭鉱の縮小合理化に伴い経済状況及び雇用状況の悪化の進んでいたB市の第3次産業の展開のための観光・レクリエーションの活発化の期待を担い,B市の主導によって,同市が筆頭株主となった株式会社方式で実施されたものであり,同事業実施によって,B市の特性を生かした雇用吸収型の新産業を興し,観光の中核施設として地域の活性化と雇用の創出及び都市イメージの向上に寄与することが期待されたものであると認められる。 (イ) 本件テーマパーク事業の状況乙イ第48号証の37ないし47,第50号証の35ないし37,第51号証の16によれば,本件平成10年4月以降支出の行われた平成10年4月1日ころから同年11月16日ころまでの本件テーマパーク事業の状況は,本件テーマパーク事業が経営悪化しその存続が危ぶまれていた状況の下,平成9年12月に策定された本件経営再生計画(要旨)に前記第2の3(5)ウ(エ)のとおり掲げられた当面(平成9年度ないし平成11年度)の対策が実施されるとともに,同計画(要旨)のとおり経営体質の改善・強化が実現し得るか否かを見極めていた期間であったと認められる。 エ平成10年度のB市の財政状況について甲イ第10号証の3,第11号証及び弁論の全趣旨(平成11年10月20日付け第 営体質の改善・強化が実現し得るか否かを見極めていた期間であったと認められる。 エ平成10年度のB市の財政状況について甲イ第10号証の3,第11号証及び弁論の全趣旨(平成11年10月20日付け第9号事件原告ら準備書面(四))によれば,B市の平成10年度の財政状況は,一般会計が1億6731万1000円の赤字,単年度収支も1億5673万6000円の赤字で,前年度に続き2年連続赤字となっており,また,財政力指数(通常標準的に収入できると考えられる地方税等(基準財政収入額)を妥当かつ合理的な平均的水準で行政が行った場合に要する費用(基準財政需要額)で除して得た数値の過去3年間の平均値をいい,「1」に近くあるいは「1」を超えるほど財源に余裕があるものとされている。)が0.505,経常収支比率(人件費,扶助費,公債費等の義務的性格の経常的経費に地方税,普通交付税,地方譲与税等を中心とする経常的な収入である一般財源がどの程度充当されているかをみるもので,財政構造の弾力性を判断するものとされており,80パーセントを超える場合は弾力性を失いつつあると考えられている。)96.2パーセント,公債費比率(公債費の一般財源に占める割合を表すもので,通常財政構造の健全性が脅かされないためには,比率が10パーセントを超えないことが望ましいとされている。)15.2パーセントと,いずれの比率も低迷しており,大変厳しい経済状況にあったことが認められる。 オ B市議会の対応について(ア) 乙ロ第8号証の1ないし12,第9号証の1ないし3によれば,以下の事実が認められる。 aB市は,平成9年12月5日開催のB市議会全員協議会で,本件会社の経営状況,本件経営再生計画(要旨)を提示した上で,本件各損失補償契約(平成9,10年締結分)を締結することを内容とする議案(平成9年1 市は,平成9年12月5日開催のB市議会全員協議会で,本件会社の経営状況,本件経営再生計画(要旨)を提示した上で,本件各損失補償契約(平成9,10年締結分)を締結することを内容とする議案(平成9年12月8日から開催されるB市議会定例会において一般会計補正予算案として提案するもの,以下「本件経営再生議案」という。)を説明したところ,B市議会議員からは,「この再生策では,3年後の好転は不可能」,「万一だめになった場合市民の負担がさらに大きくなるのではないか」等事業継続に疑問を投げかける意見があった反面,「もっと突っ込んだ戦略を」,「第三セクターの悪い点の1つの反省として専門知識を持った社員を導入すべきだ」,「Qもセット券に入れて,当初目標だった学べるテーマパークの特色を生かせ」等の前向きな発言も出された。 その席でB市長は,議員らに対し,本件テーマパーク事業を「市を元気づけ,長期安定した都市にするかなめの事業」と位置づけ,「危機が来たからといって,簡単に投げ出していいものではなく,街の誇りとしてもり立てていく」旨本件経営再生議案への理解を求めた。 b 平成9年12月8日から開催されたB市議会定例会においては,本件経営再生議案の是非が焦点とされ,同月12日の本会議においては,B市長が一般質問に対し,①本件経営再生計画(要旨)の見込みについて,平成9年度を乗り切ると平成10,11年度については新規設備投資の凍結,長期借入金の償還繰延べによる資金需要の抑制によりわずかながら繰越金計上見込みであり,平成12年度以降から施設拡張等の設備投資を実施して営業損益の改善を図り,長期的収支バランスを考慮する旨,②損失補償と債務保証の違いについて,債務保証は原則として法律で禁止されており,他方,損失補償は民法上の明文規定はなく,単に支払時期が到来したのに弁 益の改善を図り,長期的収支バランスを考慮する旨,②損失補償と債務保証の違いについて,債務保証は原則として法律で禁止されており,他方,損失補償は民法上の明文規定はなく,単に支払時期が到来したのに弁済されないということだけでは責任は負わず,例えば,債務者が破産したとか,客観的に債務の回収がほとんど見込めないという事態になってはじめて損失を補償する責任を負うもので,万一の場合は本件会社の資産の処分,債権の回収等を行った後の残余債務に関し,議決された債務負担行為の限度額の範囲内で補償するものである旨,③本件会社破たんの場合の影響について,破たんした場合,今日まで取り組み今後も取り組もうとしている地区開発,ひいては全市的な振興事業の効果が薄れるとともに,さらなる国・県等からの支援も懸念されることになるもので,今後の市政を推進していく上で禍根を残すものとなる旨等の答弁をした。 また,同月16日の本会議においては,B市長が一般質問に対し,④本件テーマパーク事業の意義及び本件会社の経営悪化の原因について,本件テーマパーク事業は,国・県を始めとする各方面からの支援を受け「あらかじめ対策」のリーディング・プロジェクトとして取り組んできた事業であり,また,X炭鉱閉山後の今日における地域振興の目玉として位置づけているもので,観光資源のなかったB市において,観光の中核施設として地域の活性化と雇用の創出及び都市イメージの向上に寄与してきたが,現在の本件会社の状況は,当初計画の見通しの甘さがあったといわざるを得ない旨などの答弁をした。 c 予算の審査を付託されたB市議会経済衛生常任委員会は,同月17日,審査の結果,入園料の低料金化や施設内容の魅力アップ等を盛り込む再生計画の見直し,経営状況の把握と市議会への適宜の報告等要望を付けた上で,賛成多数で本件経営再生 会経済衛生常任委員会は,同月17日,審査の結果,入園料の低料金化や施設内容の魅力アップ等を盛り込む再生計画の見直し,経営状況の把握と市議会への適宜の報告等要望を付けた上で,賛成多数で本件経営再生議案を可決すべきものと決めた。 d 同月19日,前記cの報告を受けたB市議会本会議で,本件経営再生議案は賛成多数で可決された。 (イ) 本件平成10年4月以降支出は,前記(ア)のとおりB市議会が本件経営再生計画(要旨)をさらに充実させること等を条件に本件会社の経営存続を認めた後になされた補助金支出であることに加え,前記(1)イ(ア)のとおり本件各支出それぞれにつきB市の一般会計予算案(当初予算案,補正予算案)に計上され,同市議会の議決を経て支出されているとともに,その後同市議会において決算認定を経ていることにかんがみれば,各支出について,同市議会は承認していたものということができる。 カ以上により,本件平成10年4月以降支出は,B市が前記ウ(ア)の目的の下に主導的立場となって実施し,B市議会の承認の下で本件経営再生計画(要旨)に基づき経営体質の改善・強化を図っていた本件テーマパーク事業に対して,運営の補助等を行ったものであり,一方において,前記エのとおり当時のB市の財政状況は厳しいものであったと認められるが,他方において,本件テーマパーク事業はその低迷するB市の財政状況等を改善させる意義をも有していたと認められるとともに,経営危機にひんした本件会社をB市が支援せずに破たんさせれば,それまで本件テーマパーク事業を支援してきた国・県等によるその後の同市の事業に対する支援が懸念される状況であったことも否定できないことにもかんがみれば,B市議会における議論の末得られた承認の下,当時の具体的状況の下でこれを公益上の必要性があると被告A2が判断したこと 事業に対する支援が懸念される状況であったことも否定できないことにもかんがみれば,B市議会における議論の末得られた承認の下,当時の具体的状況の下でこれを公益上の必要性があると被告A2が判断したことに裁量権の逸脱又は濫用があったとまでは認められないというべきである。 よって,本件平成10年4月以降支出に係る被告A2の財務会計行為に関しては,これを違法と評価することはできない。 2 第22号事件について(1) 争点4(第22号事件監査請求が監査請求期間を徒過した請求か否か)についてア監査請求期間の起算点について本件各損失補償契約締結に基づく支出に係る財務会計行為は,その原因行為である本件各損失補償契約の締結とは別個の財務会計行為である。 したがって,本件各損失補償契約締結を違法又は不当な財務会計行為とする監査請求に係る請求期間とは別個に進行するものであると解すべきである。 よって,第22号事件監査請求の監査請求期間は,本件各損失補償契約締結日から進行するとは解されず,本件各損失補償契約に基づく支出がなされていない本件においては,監査請求期間は未だ進行していないというべきである。 イ以上により,第22号事件監査請求は,法242条2項の監査請求期間を徒過したものではなく,適法なものと認められる。 (2) 争点5(本件各損失補償契約に基づく支出行為の違法性の有無)についてア本件各損失補償契約の締結が公共性ないし公益性を有しないなど法(平成11年7月法律87号による改正前のもの)(2条2項,3項,12項,13項)ないし地方財政法(3条,4条参照)に違反し,市長としての裁量の範囲を逸脱又は濫用するものであるような場合,本件各損失補償契約は違法というべきことは明らかである。 しかしながら,仮に本件各損失補償契約がかかる観点から違法であるとして 違反し,市長としての裁量の範囲を逸脱又は濫用するものであるような場合,本件各損失補償契約は違法というべきことは明らかである。 しかしながら,仮に本件各損失補償契約がかかる観点から違法であるとしても,それが私法上当然に無効とはいえない場合には,普通地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行すべき義務を負うのであるから,同債務の履行として行われる行為自体はこれを違法ということはできず,このような場合に住民が法242条の2第1項1号所定の住民訴訟の手段によって普通地方公共団体の執行機関に対し同債務の履行として行われる行為の差止めを請求することは,許されないというべきである(最高裁昭和62年5月19日第三小法廷判決・民集第41巻4号687頁参照)。 そして,本件各損失補償契約が私法上当然に無効となるか否かは,①違法事由の明白性,②契約の相手方による当該違法事由の認識ないし認識可能性の有無及び程度,③法令上当然に要求されている市議会の議決等契約締結に必要な手続の履践の有無,を主たる要素として判断すべきである。 イ以上を前提に,本件各損失補償契約が私法上当然に無効といえるか否かを検討する。 (ア) まず,損失補償契約と債務保証契約とはその内容及び効果の点において異なるものであり,また,会社その他の法人のために地方公共団体が損失補償契約を締結し債務を負担することは法の予定するところであるといえる(法221条3項参照)から,損失補償契約の締結自体をもって,法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律等の法令に違反するものとはいえない。 (イ) そして,①第22号事件原告ら主張に係る各コンサルタント会社の報告書の存在は,本件各損失補償契約締結の違法性を判断するための一判断要素ではあるが,その違法性を直ちに基礎づける根拠資料とはいい難 イ) そして,①第22号事件原告ら主張に係る各コンサルタント会社の報告書の存在は,本件各損失補償契約締結の違法性を判断するための一判断要素ではあるが,その違法性を直ちに基礎づける根拠資料とはいい難く,また,前記第2の3(7)の本件各損失補償契約の内容及び前記1(2)ウ(ア)の本件テーマパーク事業の目的・性質にかんがみると,本件各損失補償契約の締結が,その内容において公共性ないし公益性がなくB市長としての裁量を逸脱又は濫用するものとして一見して明白に違法であるとまでは認められないこと,②仮に第22号事件原告ら主張に係る,本件各損失補償契約の相手方が本件各損失補償契約の目的が本件会社の設立・運営のための資金調達のものであることを知悉し,B市長と一体となって本件テーマパーク事業を推進していたという事実があったとしても,これをもって直ちに同相手方が本件各損失補償契約の締結が法令上許されないものであるとの認識を有し又は有し得たものとは認めることはできず,また,前記①にかんがみ,その他本件全証拠をもってしても,本件各損失補償契約の相手方において,本件各損失補償契約の締結が法令上許されないものであるとの認識を有し又は有し得たことをうかがわせる事情は認められないこと,③本件各損失補償契約締結に先立ち,同各契約についていずれも債務負担行為(法214条)を予算の内容とする市議会の議決を別紙「本件会社に係る損失補償契約一覧表」の「市議会議決」欄のとおり経ており,乙ロ第4号証の4,第6号証及び第9号証の2によれば,それぞれの議決に先立ってB市長より債務保証と損失補償の違い等損失補償契約の内容及び補償を実行する場合の手続について正確な説明がなされているものと認められ,本件各損失補償契約は適正な手続を経て締結されていると認められること,以上の各事実に照らせ 補償の違い等損失補償契約の内容及び補償を実行する場合の手続について正確な説明がなされているものと認められ,本件各損失補償契約は適正な手続を経て締結されていると認められること,以上の各事実に照らせば,本件各損失補償契約に私法上無効とすべき事由があるとは認められない。 ウ以上より,本件各損失補償契約は私法上当然に無効であるはいえず,第22号事件原告らの主張には理由がない。 3 結論以上により,第9号事件原告らの被告A1に対する訴えと,被告A2に対する訴えのうちの別紙「B市の本件会社に対する支出一覧表」中の番号32ないし43の各支出に関する財務会計行為の違法を理由として損害賠償を請求する部分とは不適法であるからこれを却下し,同原告らのその余の請求は理由がないから棄却することとし,第22号事件原告らの請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文,66条を適用して,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第6民事部裁判長裁判官杉山正士裁判官大西忠重裁判官光岡弘志

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