令和7年9月30日宣告生命身体加害略取、監禁(変更後の訴因:生命身体加害略取、監禁、傷害致死)、死体遺棄、覚醒剤取締法違反被告事件(令和6年(わ)第35号、第45号、第74号、第76号) 主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中330日をその刑に算入する。 青森地方検察庁で保管中の覚醒剤2袋(同庁令和6年領第250号符号1、2)を没収する。 理由 (犯罪事実)被告人は第1 Aと共謀の上、B及びCとは生命身体加害略取、監禁の限度で共謀の上、D(当時54歳)の身体に対する加害の目的で、令和6年1月7日午後6時35分頃から同日午後6時50分頃までの間に、Bが宅配業者を装い、青森県上北郡a町(住所省略)所在のD方にいたDを同所先路上に誘き出し、同路上において、被告人が同路上に転倒したDに馬乗りになった上、げん骨でDの顔面を数回殴り、Cが両手でDの両足を押さえるなどの暴行を加え、Aが運転する自動車の後部座席にDを乗せ、同自動車を発進・疾走させてDを被告人らの支配下に置き、その頃から同日午後6時56分頃までの間、同所からa町(住所省略)に所在する土場にDを連行してDが同自動車内から脱出することを著しく困難にし、もって身体に対する加害の目的で人を略取するとともに、不法に人を監禁し、その頃から同日午後7時55分頃までの間に、前記土場に設置されたコンテナ内において、Dの身体を持ち上げて床に放り投げた上、床に横たわっていたDに対し、タイヤ(約30キログラム)をその身体に数本載せ、さらに、前記土場において、Dを樹脂製容器に入れるなどの暴行を加え、よって、 その頃、前記土場において、Dを多発肋骨骨折・腰椎肋骨突起骨折による出血性ショック及び呼吸不全等に 体に数本載せ、さらに、前記土場において、Dを樹脂製容器に入れるなどの暴行を加え、よって、 その頃、前記土場において、Dを多発肋骨骨折・腰椎肋骨突起骨折による出血性ショック及び呼吸不全等により死亡させた。 第2 A及びEと共謀の上、令和6年1月10日頃、Dの死体を入れた樹脂製容器を、青森県上北郡a町(住所省略)に所在する土場からa町(住所省略)に所在する土場まで自動車で運搬し、同土場において、重機を使用して同容器に入れた同死体を土中に埋め、もって死体を遺棄した。 第3 Aと共謀の上、令和6年2月2日頃、青森県上北郡a町(住所省略)に所在する土場において、重機を使用して樹脂製容器に入れたDの死体を土中から掘り出した上、同所からa町(住所省略)の造成地まで自動車で運搬し、同所において、重機を使用して同容器に入れた同死体を土中に埋め、もって死体を遺棄した。 第4 みだりに、令和6年3月6日、青森県上北郡a町(住所省略)の車庫内において、Eから、覚醒剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩1.976グラム(青森地方検察庁令和6年領第250号符号1、2はその鑑定残量)を代金12万円の約束で譲り受けた。 (量刑の理由) 1 量刑判断の中心となる判示第1の生命身体加害略取、監禁、傷害致死についてみると、運送会社を経営していた被告人は、以前に解雇した元従業員のDが被告人に対する逆恨みから嫌がらせを続けていると考え、暴行を加えてでもDの行動をやめさせる目的で、共犯者らと共謀の上、Dに暴行を加えてDを略取、監禁して土場に連行した上、逃がさないようにコンテナの中に入れ、その身体の上にタイヤを載せるなどし、さらに、目を離した隙に逃げ出したDを探して発見した後、Dを再びコンテナの中に連行し、樹脂製容器の中に入れるなどし、これら一連の暴行により にコンテナの中に入れ、その身体の上にタイヤを載せるなどし、さらに、目を離した隙に逃げ出したDを探して発見した後、Dを再びコンテナの中に連行し、樹脂製容器の中に入れるなどし、これら一連の暴行によりDを死亡させたというものである。 被告人は、約2か月前からDを拉致することを計画し、2回失敗したにもかかわらず、諦めることなく実行の機会をうかがい、共犯者間の役割分担を決め、鉄 パイプ、結束バンド、ガムテープといった凶器を準備するなどして、ついにDの拉致を遂げており、強固な犯意に基づく計画的な犯行である。暴行の態様は、①待ち伏せの上、外に誘き出したDの不意を突いて複数名でいきなり襲いかかり、馬乗りになってその顔面を拳で殴打したり結束バンドでその両手両足を緊縛したりするなどの暴行を加えて、Dを自動車に押し込み、被告人が管理する土場に連行し、さらに、②Dを逃がさないように結束バンドでDの両手両足及び口元等を緊縛し、ガムテープをその顔面に何重にも巻き付けるなどした上、コンテナ内に放り投げ、床に倒れているDの身体の上に約30キログラムのタイヤを数本乗せ、その後、③被告人らの隙を突いて逃げ出したDを捕まえ、手足等を拘束されて抵抗できない状態のDを狭い樹脂製容器(口径約48センチメートルないし約53センチメートル・高さ約98センチメートル)の中に頭から無理矢理入れ、蓋をして金属製のバンドを閉め、コンテナ内に放置するなどしたというもので、粗暴かつ残忍で悪質性が高い。本件犯行の過程でDが大きな恐怖や苦痛を感じたであろうことは察するに余りあり、もとよりDの生命を奪った結果は重大である。 被告人は、前記のとおり、Dが被告人に対する逆恨みから、行政機関に対し、被告人やその経営する会社が法律違反をしている旨の情報提供をするなどの嫌がらせをしていると考え、D を奪った結果は重大である。 被告人は、前記のとおり、Dが被告人に対する逆恨みから、行政機関に対し、被告人やその経営する会社が法律違反をしている旨の情報提供をするなどの嫌がらせをしていると考え、Dの行動をやめさせるためにDを拉致したというものであるが、被告人が述べる種々の嫌がらせのうち、Dが関与したという明確な証拠があるものは少なく、被告人の思い込みにすぎないものも相当数含まれていると認められる。仮に被告人が述べるとおりであるとしても、その内容に照らすと、Dに本件のような被害に遭わなければならない理由があるとは到底いえないし、他に取るべき手段を十分に検討することなく、Dを拉致することにより問題の解決を図ろうとしたことは、誠に安易かつ短絡的といわざるを得ない。また、被告人は、拉致したDが逃げ出したことに腹が立ったと述べる一方、Dを樹脂製容器に入れた理由について、Dがまだ生きているのであれば、逃がさないため、死んだときに触りたくないため、あるいは、Dが既に死んでいるのであれば、隠すた めなどと曖昧な供述をしているが、いずれにせよ非常に身勝手というほかなく、法益を軽視する態度は甚だしい。結局、全体としてみても、このような犯行に至る経緯及び動機に酌量すべき事情は乏しい。 そして、被告人は、本件犯行を立案し、共犯者らを引き入れ、計画段階から実行に至るまで、一貫して本件犯行を主導しており、被告人がいなければ本件犯行が計画・実行されることは決してなく、被告人はまさに首謀者であって、その責任は共犯者らと比べて格段に重い。 2 次に、判示第2及び第3の各死体遺棄についてみると、被告人は、犯跡を隠蔽するため、首謀者として各犯行を主導し、別々の機会に、重機を使って掘った土中にDの遺体を樹脂製容器ごと2回埋めており、死者の尊厳を著しく害する犯行で の各死体遺棄についてみると、被告人は、犯跡を隠蔽するため、首謀者として各犯行を主導し、別々の機会に、重機を使って掘った土中にDの遺体を樹脂製容器ごと2回埋めており、死者の尊厳を著しく害する犯行であって、犯情は悪質である。さらに、判示第4の覚醒剤取締法違反についてみても、被告人は、平成29年頃から断続的に覚醒剤を購入して使用を繰り返す中で本件犯行に至ったというもので、覚醒剤に対する親和性、依存性が認められる。 3 以上の事情からすれば、本件は、同種事案(傷害致死、実行共同正犯、凶器等:あり、処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件、被告人から見た被害者の立場:知人・友人・勤務先関係)の中で、重い部類に属する事案と評価すべきであり、被告人の刑事責任は重大であるといわざるを得ない。 そうすると、傷害致死に関し、Dを樹脂製容器の中に頭から入れ、蓋をして放置するなどした行為について、計画性は認められないこと、前科がないこと、各事実を認め、遺族に対する被害弁償の意思を示すなどして被告人なりに反省の態度を示していること、被告人の帰りを待つ母親がいることなど、被告人のために酌むべき事情を考慮しても、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑:懲役15年及び主文同旨の没収)令和7年9月30日青森地方裁判所刑事部 裁判長裁判官藏本匡成 裁判官三塚祐太郎 裁判官大井俊哉
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