【DRY-RUN】主 文 本件各控訴を棄却する。 当審における訴訟費用はこれを六分し、その一ずつを各被告人の負担と する。 理 由 本件各控訴の趣意は、被告人A、同B
主文 本件各控訴を棄却する。 当審における訴訟費用はこれを六分し、その一ずつを各被告人の負担とする。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人A、同B、同C及び同Dの弁護人永塚昇が提出した控訴趣意書、被告人E、同Fの弁護人小林蝶一、同川尻治雄が連名で提出した控訴趣意書(主任弁護人小林蝶一は、当公判廷において、控訴趣意第一点一、二は法令の解釈適用の誤りの主張、同三、四は法令の解釈適用を誤つて事実を誤認した旨の主張であると釈明した。)に記載されたとおりであり、これらに対する各答弁は、検察官伊藤幸吉が提出した各答弁書に記載されたとおりであるから、いずれもこれを引用する。 一、 弁護人永塚昇の控訴趣意二(原判示第一ないし第三の事実のうち、職業安定法違反の点に関する主張)について。 所論(一)は、要するに、原判決は、判示第一ないし第三において、被告人Aは有限会社Gの業務に関し、被告人BはH株式会社の業務に関し、被告人C、同DはI株式会社の業務に関し、いずれもJ株式会社に対し、労働者を継続して供給して右労働者を使用させ、労働者供給事業を行つたものであると認定し、これに職業安定法四四条を適用したが、右のG、H及びI(以下これらを本件各関係会社ともいう。)とJとの関係はいずれも請負契約ないしそれに準ずるもので、職業安定法施行規則四条一項の各要件をもみたしているのであるから、労働者の供給に当らないので、原判決にはこの点で判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認及び法令の解釈適用の誤りがある、というのであり、所論(二)は、要するに、原判示第一ないし第三の各事実が労働者の供給に当るとしても、右の労働者の供給契約は本件各関係会社とJとの間で締結され、右各関係会社の事業として労働者の供給行為が行われたもので、 (二)は、要するに、原判示第一ないし第三の各事実が労働者の供給に当るとしても、右の労働者の供給契約は本件各関係会社とJとの間で締結され、右各関係会社の事業として労働者の供給行為が行われたもので、事業の主体は右各関係会社であつて、被告人A、同B、同C及び同Dはこれに関与したにすぎず、労働者供給事業を行つた者ということはできないので、原判決にはこの点で判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の解釈適用の誤りがある、というのである。 そこで、まず、所論(一)の点について検討する。原判決が掲げる関係諸証拠によると、被告人Aは、自動車車体加工及び輸送用機械器具製造請負業を主たる営業目的とするGの代表取締役として、被告人Bは、各種機械器具及び装置の製造修理、船舶造修並びに自動車修理解体業を主たる営業目的とするHの代表取締役として、被告人Cは、自動車その他輸送機器用部品、産業機械の製造、販売を主たる営業目的とするIの代表取締役として、JのK工場における加工外注に関し、発注先の選定及び決定、購買契約の締結等の業務を統括し、併せて右の加工外注によつて賄えない社内作業の労働力の受入の業務を担当していた同会社購買部長(一時外注部長を兼任)Eらの要請に応じ、各関係会社がそれぞれ雇用する労働者について、一般工又は技能工の種別の下に一時間当りの賃金を取り決めたうえ、原判決末尾添付の別紙計算書一の(一)(ただし昭和四五年一一月の欄に一六とあるのは一五の誤記と認める。)、同二の(一)、同三の(一)の各当該労働者をJK工場に派遣したこと、右各労働者は同工場において、同会社の従業員である班長のもとで、同会社の従業員に混り、或いは右の各関係会社から派遣された労働者だけで数名ないし一〇名位の班を構成し、右班長らの指揮監督のもとに同工場の機械、設備、器材、資材を使用し、フレー 員である班長のもとで、同会社の従業員に混り、或いは右の各関係会社から派遣された労働者だけで数名ないし一〇名位の班を構成し、右班長らの指揮監督のもとに同工場の機械、設備、器材、資材を使用し、フレームの穴あけ、組立、熔接或いは雑役等の作業に従事したこと、Jは、毎月末日締切で本件各関係会社にK工場に派遣した労働者の勤務台帳を提出させ、一般工、技能工の種別による労働者の数、勤務時間をもとに取り決めた時間給の基準に従い各関係会社毎の賃金総額を算出し、これを翌月末日各関係会社宛に銀行振込等の方法で支払つていたこと、その際、Jでは右の賃金総額と各関係会社の労働者が従事した作業内容を参考にして註文書及び註文請書を作成し、これを右各関係会社に送付し、右各関係会社は註文書に従い見積書及び納品代請求書を作成して註文請書とともにこれらをJに送付していたこと、本件各関係会社は、それぞれの賃金基準に従い前記のJから支払を受けた賃金総額から各労働者に賃金を支払つていたことがそれぞれ認められ、右事実によると、Jと本件各関係会社との間には右各関係会社が仕事(製品)を完成することを約束する内容の契約もその実態もなく、前記の註文書及び註文請書等の授受は単に請負契約を仮装するためのものであり、本件各関係会社は労働者の労働力を提供することを内容とする黙示の供給契約に基きそれぞれ雇用する労働者をJの作業に従事させてこれを使用させたものであることが認められ、もとより職業安定法施行規則四条一項の一、二及び四号の要件に欠けることも明らかであり、これが請負に至る準備行為であるともいえない。したがつて、原判示第一ないし第三の各事実が労働者供給事業に当ることも明らかで、当審に蔚ける事実取調の結果を検討しても、原判決にはこの点で所論のような事実の誤認及び法令の解釈適用の誤りがあるとはいえな たがつて、原判示第一ないし第三の各事実が労働者供給事業に当ることも明らかで、当審に蔚ける事実取調の結果を検討しても、原判決にはこの点で所論のような事実の誤認及び法令の解釈適用の誤りがあるとはいえない。論旨はいずれも理由がない。 <要旨第一>次に、所論(二)の点について検討する。職業安定法四四条は「何人も」、第四五条に規定する場合を除く外、</要旨第一>労働者供給事業を行つてはならないと規定しており、これによれば自然人ばかりでなく、法人も労働者供給事業禁止の規制対象に含まれるものと解されるところ、本件においては、前記認定の事実より明らかなように、G、H及びIはいずれも労働者供給事業を目的とする会社ではないが、原判示第一ないし第三の各労働者の供給は右各関係会社とJとの間にそれぞれ成立した労働者供給契約に基いて事業として行われたものであるから、右各労働者供給事業の主体は、G、H、Iであるといわなければならない。しかし、右の各労働者の供給契約の締結及び右各労働者をJに派遣し、同会社の担当者を介して同会社に使用させた行為は被告人A、同B、同C(被告人Dについては後記四において判断する。)が行つたもので、右の各行為は各会社の代表者としての行為であるが、これが会社の機関の行為としてすべて会社自体の行為に転化するものではなく、なお会社代表者個人の行為としても存在するものというべきであるから、被告人A、同B、同Cは労働者供給事業の禁止規定に違反する行為をした直接の行為者であるといわなければならない。そして、同法六四条四号は「第四四条の規定に違反した者」を処罰する旨規定しており、右は自然人である直接の違反行為者を処罰するという趣旨であると解され、被告人A、同B及び同Cがいずれもこれに当ることは明らかである。なお、同法六七条一項は、法人に関してだけいえば する旨規定しており、右は自然人である直接の違反行為者を処罰するという趣旨であると解され、被告人A、同B及び同Cがいずれもこれに当ることは明らかである。なお、同法六七条一項は、法人に関してだけいえば、法人の代理人又は被用者が法人の事業又は業務について法人のために違反行為をした場合には法人の代表者をも処罰する旨の両罰規定であつて、法人の代表者が違反行為者である場合は含まれないし、法人そのものを処罰する規定でもなく、同法上法人が労働者供給事業を行つた場合法人を処罰する規定はないのである。したがつて、所論のように、法人の代表者が法人のために違反行為をして法人が労働者供給事業を行つたことになる場合に、法人の代表者を同法六四条四号によつて処罰することができないものとすれば、この場合全く処罰を免れることになり、法の趣旨を全うすることはできないことになるので、所論を採用することは到底できない。原判決が(弁護人の主張に対する判断)第一の三に説示したところも結局右と同一の趣旨であると解される。したがつて、原判決には所論のような法令の解釈適用の誤りがあるとはいえない。論旨はいずれも理由がない。 二、 同控訴趣意一(原判示第一ないし第三の各事実のうち、労働基準法違反の点に関する主張)の(一)、(二)、(三)について。 所論(一)、(二)は、要するに、原判決は、判示第一ないし第三において、被告人A、同B、同C及び同Dが他人の就業に介入したものであると認定判示しているが、被告人A、同B及び同Cは、それぞれ本件各関係会社の代表取締役、被告人Dは取締役であつて、右各被告人は、自己の会社の従業員が会社の業務に就くについて、各関係会社の機関として、各会社の事業遂行のための内部的指揮命令、或いは監督を行つたものであり、右の就業が「他人の就業」に当らない点で、原判決には は、自己の会社の従業員が会社の業務に就くについて、各関係会社の機関として、各会社の事業遂行のための内部的指揮命令、或いは監督を行つたものであり、右の就業が「他人の就業」に当らない点で、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認及び法令の解釈適用の誤りがあり、また、仮に、原判示第一ないし第三の各労働者とJとの関係が他人の就業にあたるとしても、会社の代表者である被告人らの行為は会社の行為であり、代表者である被告人ら個人が他人の就業に「介入」したとして、会社とは別に処罰されることはないのであつて、この点で、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の解釈適用の誤りがある、というのであり、所論(三)は、要するに、被告人A、同B、同C及び同Dは、個人として何ら利益を得ていないのであつて、原判決は、(弁護人の主張に対する判断)第一の一においてはこの事実を認めながら、原判示第一ないし第三において、右各被告人が他人の就業に介入して利益を得たものであると判示したのは法令の解釈適用を誤つたもので、右の誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。 <要旨第二>そこで、まず、所論(一)、(二)の点について検討する。労働基準法六条に「他人の就業に介入し」とは、同法</要旨第二>八条の労働関係の当事者間に第三者が介在して、その労働関係の開始、存続等について媒介又は周旋をするなどその労働関係について何らかの因果関係を有する関与をなす場合をいうものである(最高裁判所昭和三一年三月二九日第一小法廷決定・刑集一〇巻三号四一五頁)が、右の労働関係は当事者間に労働契約が成立した場合に限らず、その労働について事実上の使用従属関係が生じた場合をも含むものと解すべきである。これを本件についてみるに、原判決が掲げる関係諸証拠によると、原判示第一ないし第 事者間に労働契約が成立した場合に限らず、その労働について事実上の使用従属関係が生じた場合をも含むものと解すべきである。これを本件についてみるに、原判決が掲げる関係諸証拠によると、原判示第一ないし第三の各労働者(この労働者の中にはその就業に介入することにより利益を得たものといえない労働者が含まれていることは後記三のとおりである。)は、それぞれG、H、Iに雇用されているものであるが、その労働者であるという身分のまま、Jに派遣され、同会社の従業員の指揮監督のもとに同会社の作業に従事したものであつて、同会社と各労働者との間に、労働契約は成立していないが、右労働について事実上の使用従属関係が生じたものということができ、また、被告人A、同B及び同C(被告人Dについては後記四において判断する。)は、それぞれ前記各関係会社の代表取締役として、右各労働者をJに派遣したものであるから、右のJと各労働者との間の事実上の使用従属関係の開始に関与したものということができる。すなわち、原判示第一ないし第三は、所論のように、各労働者が本来の使用者である本件各関係会社の業務に就くことに対する関与の有無を問題にしているのではないのである。そして、労働基準法六条は、「何人も」、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならないと規定しており、これによれば自然人ばかりでなく法人も右の禁止の規制対象に含まれるものと解されるところ、前記認定の事実より明らかなように、被告人A、同B及び同Cが前記のJと各労働者との間の労働関係に関与した行為は本件各関係会社の機関として、同会社のためその名において行つたもので、この点では本件各関係会社自体がそれぞれ他人の就業に介入したものといわなければならないが、右の会社の機関の行為であるからといつて、すべて会社自体の 関として、同会社のためその名において行つたもので、この点では本件各関係会社自体がそれぞれ他人の就業に介入したものといわなければならないが、右の会社の機関の行為であるからといつて、すべて会社自体の行為に転化するものではなく、なお会社代表者個人の行為としても存在するものというべきであるから、被告人A、同B及び同Cは前記の止規定に違反する行為として他人の就業に介入する行為をした直接の行為者であるといわなければならない。そして、同法一一八条一項は、「第六条の規定に違反した者」を処罰する旨規定しており、右は自然人ある直接の違反行為者を処罰するという趣旨であると解され、業として利益を得たかどうかの点はしばらくおき、被告人A、同B及ひ同Cがいずれも右の違反行為者に当ることは明らかである。なお、同法二一条一項本文は、法人に関してだけいえば、法人の代理人、使用人その他の従業者が法人のために違反行為をした場合には法人をも処罰する旨の両罰規定であつて(この点では前記の職業安定法六七条一項とは異なる。)、右の「法人の代理人」というのには法人の代表者も含まれると解される(最高裁判所昭和三四年月二六日第一小法廷決定・刑集一三巻三号四〇一頁)が、右の条項は法人自体を故意の行為者として処罰する規定ではないのであつて、所論のように、法人の代表者が直接の違反行為者である場合、同条項によつて法人を処罰すれば足りるとする趣旨であると解することはできない。したがつて、原判決に所論のような実誤認及び法令適用の誤りがあるとはいえない。論旨はいずれも理由がない。 次に、所論(三)の点について検討する。労働基準法六条の規定において、他人の就業に介入することによる利益は必ずしも直接の行為者に帰属することを要せず、右行為者と特定の関係のある自然人又は法人に帰属する場合でも、右行為者は いて検討する。労働基準法六条の規定において、他人の就業に介入することによる利益は必ずしも直接の行為者に帰属することを要せず、右行為者と特定の関係のある自然人又は法人に帰属する場合でも、右行為者は同条の禁止規定に違反する行為をしたものということができると解される。したがつて、原判決が掲げる関係諸証拠によると、被告人A、同B及び同C(被告人Dについては後記四において判断する。)が本件各関係会社の代表者として原判示第一ないし第三の当該各労働者(この労働者の中にはその就業により利益を得たものといえない労働者が含まれていることは後記三のとおりである。)の就業に介入したことによる利益はすべて各関係会社に帰属しており、右各被告人は個人として利益を得ていないことが認められるが、この場合も、右各被告人は同法六条の規定に違反した者ということができる。原判決の判示第一ないし第三における右の点に関する判示部分及び(弁護人の主張に対する判断)第一の一の説示も結局以上と同趣旨であると解され、原判決に所論のような法令の解釈適用の誤りがあるとはいえない。論旨はいずれも理由がない。 三、 同控訴趣意一の(四)について。 所論は、要するに、G、H及びIは、原判示第一ないし第三の当該各労働者の就業について、原判決が認めた費用のほかに、右の就業に伴い当然必要な費用を支出しており、これらを差し引くと右各会社は全く利益を得ていないか又は原判決が判示第一ないし第三において認定した利益額より少額であつて、原判決にはこの点で判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある、というのである。 まず、原判示第二の事実のうち、「金八二、二七二、七八四円」とあるのは「金八二、二六六、〇五六円」の、「金七一、三一六、三〇六円」とあるのは「金七一、二七三、七八四円」の、原判決末尾添付計算書一 まず、原判示第二の事実のうち、「金八二、二七二、七八四円」とあるのは「金八二、二六六、〇五六円」の、「金七一、三一六、三〇六円」とあるのは「金七一、二七三、七八四円」の、原判決末尾添付計算書一の(一)のうち、昭和四五年四月の労働者に支払つた金額欄に「九九三、三九二」とあるのは「九九三、三九〇」の誤記であると認められる。 次に、所論に対する判断に先き立ち、職権をもつて調査するに、原判決は、被告人A、同B、同C及び同Dがその就業に介入して利益を得た労働者として、原判決末尾に添付した別紙計算書一の(一)、同二の(一)、同三の(一)に当該労働者の人数のみを職業安定法に違反して供給した労働者数と共通に記載して摘示しているところ、右は原審第一五回公判期日において、検察官が訴因変更を請求するに当り提出した別紙一覧表に記載された労働者を指すものと解されるが、右一覧表中、有限会社G分については別表(一)記載のとおり、H株式会社分については別表(二)記載のとおり、I株式会社分については別表(三)記載のとおり、右各会社が当該労働者に支払つた賃金額が当該労働者につきJから受領した賃金額を超過している労働者(ただし、H株式会社分にはこれが同額のものを含む。)が含まれており、原判決が掲げる証拠上も右のとおりであることが認められる。ところで、労働基準法六条は、他人の就業に介入して利益を得ることを業とすることを禁止するものであるが、これによつて実質的に個個の労働者を保護しようという趣旨であるから、右の就業する労働者が複数の場合、右の利益は、これを一括して取得するとしても、個個の労働者毎にその就業に介入する行為と関連しているものであることを要するものと解される。前記の別表(一)ないし(三)記載の各労働者については、被告人A、同B、同C(被告人Dについては後記四の も、個個の労働者毎にその就業に介入する行為と関連しているものであることを要するものと解される。前記の別表(一)ないし(三)記載の各労働者については、被告人A、同B、同C(被告人Dについては後記四のとおり。)が当該労働者をJに派遣してその就業に介入したことは原判決が掲げる証拠によつて認められるが、右証拠のほか原審記録及び証拠物を検討しても、右の各介入行為に関連して利益を得たということは明らかでない。すなわち、被告人Aは別表(一)記載の労働者について、被告人Bは別表(二)記載の労働者について、被告人Cは別表(三)の労働者について、それぞれその就業に介入して利益を得たものということはできない。したがつて、原判決にはこの点で事実の誤認があるといわなければならない。しかし、これらは、原判示第一ないし第三の各事実のうち、業として他人の就業に介入して利益を得るというその構成要件上同種行為の反覆を予定している営業犯として包括一罪と評価される罪の一部についての事実誤認であつて、これが判決に影響を及ぼすものであるとはいえない。 そこで、所論について検討する。原審記録によると、所論が費用であると主張するもののうち、原判決が費用として利益から控除することを認めたもの以外の費用は、いずれも当該各労働者の就業に介入すること自体に必要な実費として支出され、或いは各労働者に金銭の代替物として利益が還元されたものではないから、これを各労働者の就業に介入して得た利益から控除するのは相当でなく、この点に関する原判決の判断は結論において是認することができる。もつとも、前記のとおり、原判示第一ないし第三の事実のうち、各告人がその就業に介入して利益を得た労働者の認定には誤りがあるので、各被告人が得た利益も原判決末尾添付の別紙計算書一の(一)、二の(一)、三の(一)に記載された 、原判示第一ないし第三の事実のうち、各告人がその就業に介入して利益を得た労働者の認定には誤りがあるので、各被告人が得た利益も原判決末尾添付の別紙計算書一の(一)、二の(一)、三の(一)に記載された各金額のうち、別表(一)ないし(三)の各労働者に関する分を除外して算出すべきてあるが、原審記録によると、このようにして算出した各利益はいずれも原判決が判示第一ないし第三において認定した金額より多くなり、原判決にはこの点で事実の誤認があるといわなければならない。しかし右は、前記と同様、包括一罪の一部についての事実誤認であつて、これが判決に影響を及ぼすものであるとはいえない。論旨は結局いずれも理由がない。 四、 同控訴趣意三について。 所論は、要するに、原判決は、判示第三において、被告人Dは、被告人Cと共謀のうえ、労働者供給事業を行い、かつ業として他人の就業に介入して利益を得たものであると認定したが、被告人Dは本件と全く関係がないので、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある、というのである。 しかし、原判決が判示第三の事実につき掲げる諸証拠を総合すると、同判示事実のうち、被告人Dが被告人Cとの間で同判示の労働者供給事業を行うこと、及び業として他人の就業に介入して利益を得ることを共謀したことは十分これを肯認することができる。とくに右証拠によると、被告人Dは、Iの取締役であつて、同会社の労働者をJに派遣することを被告人Cに提案し、またJK工場に簡易な事務所を設け、Iから派遣した労働者の労務管理に当つていたもので、被告人Cと共謀のうえ、同判示の罪(その一部に事実の誤認があることは前記のとおり。)を実行したものであることは明らかである。その他原審記録及び証拠物を検討しても、原判決に所論のような事実の誤認があるとはいえない。論旨は理 同判示の罪(その一部に事実の誤認があることは前記のとおり。)を実行したものであることは明らかである。その他原審記録及び証拠物を検討しても、原判決に所論のような事実の誤認があるとはいえない。論旨は理由がない。 五、 弁護人小林蝶一、同川尻治雄の控訴趣意第一点の一ないし四について。 所論は、要するに、原判決は、判示第四において、被告人E、同Fは、労働者供給事業を行う者から供給される労働者を使用したものであると認定判示したが、職業安定法四四条の規定に違反し被用者が「労働者を使用」したというには、右の被用者が労働者を使用するについての決定権限を有していることが必要であつて、被告人E、同Fは、右のような権限を有せず、単にJの最高幹部会議の決定に基き、同会社が受け入れることになつた労働者に関する具体的な事務処理を担当したにすぎないものであつて、労働者を使用したものとはいえないから、原判決にはこの点で判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認及び法令の解釈適用の誤りがある、というのである。 法人又は人の被用者が職業安定法四四条の規定に違反し、法人又は人の事業につき労働者を使用した場合には、同法六四条四号によつて処罰されるのであるが、右の労働者を使用したというには、右被用者が事業主である法人又は人からその事業のために労働者を使用するについての権限を委任されていることが必要であることは所論のとおりである。これを本件についてみるに、原判決が判示第四の事実につき掲げる関係諸証拠及び当審において取り調べたJ株式会社職務分掌規程写、購買部書類決済及回覧範囲一覧表(規程)写、被告人Fの当審公判廷における供述によると、被告人Eは、昭和四〇年五月一日Jの購買部長になり、昭和四五年二月一日から同年六月末日ころまで同会社外注部長を兼任し、昭和四六年一一月一五日まで購買 )写、被告人Fの当審公判廷における供述によると、被告人Eは、昭和四〇年五月一日Jの購買部長になり、昭和四五年二月一日から同年六月末日ころまで同会社外注部長を兼任し、昭和四六年一一月一五日まで購買部長の職にあり、後記外注一課の業務を含め、購買部所属課及び外注部所属課の業務を統括し、被告人Fは、昭和四三年三月同会社外注部外注一課長になり、昭和四五年七月一日組織変更により購買部外注一課長となり、昭和四六年一一月ころまでその職にあつて、JK工場における加工外注に関し、発注先の選定及び決定、購買契約の締結等の業務を担当し、併せて、社内外注として右の加工外注により賄えない作業に従事させる労働者(社内外注工)の受入の業務を担当していたもので、被告人Eは、右の社内外注工の受入について外注部長(参与)、のちに購買部長(参与)として事業主であるJから決定権限を委任され、被告人Fは、右業務担当の外注一課長(主事)として同会社から右決定に関する権限を委任されていたことが認められ、右被告人両名は、右の権限に基き、意思相通じて、原判示第四の松葉工業株式会社ほか四社に対し社内外注工の派遣を要請し、その都度右各会社との間に黙示の労働者供給契約を締結し、昭和四五年二月一日から昭和四六年五月三一日までの間、原判決末尾添付の別紙労働者使用一覧表記載(ただし、同表中Gの合計欄に「二六五」とあるのは「二三五」の、全体の合計欄に「三〇九一」とあるのは「三〇六一」の誤記と認める。)のとおり供給された労働者に作業指図をして、Jの従業員の指揮監督のもとに作業に従事させたことが認められるので、これは同法四四条にいう労働者を使用したことにあたるものといわなければならない。したがつて、原判示第四の事実はすべて肯認することができ、原判決に所論のような事実誤認及び法令の解釈適用の誤りがあると これは同法四四条にいう労働者を使用したことにあたるものといわなければならない。したがつて、原判示第四の事実はすべて肯認することができ、原判決に所論のような事実誤認及び法令の解釈適用の誤りがあるとはいえない。論旨はいずれも理由がない。 六、 同控訴趣意第一点の五、六について。 所論は、要するに、原判決が(弁護人の主張に対する判断)第二の二において、被告人E、同Fが他に適法行為に出ることを期待することは不可能であつたという主張を排斥した点には審理不尽、理由不備の違法がある、というのである。 しかし、原判決が所論指摘の点について示した判断はすべて正当として是認することができ、被告人E、同FにおいてJの会社組織上一定の地位にあつたため、会社の事業活動の中で原判示第四の違反行為に出たもので、会社組織上或いは事業の運営上右の違反行為を是正することに勇気を要し又はこれが困難であつたとしても、直ちに右の違反行為をやめることが不可能であつたということができないことはいうまでもない。したがつて、原判決には所論のような審理不尽、理由不備の違法があるとはいえない。論旨はいずれも理由がない。 七、 同控訴趣意第二点について。 所論は、要するに、原判決が(弁護人の主張に対する判断)第二の三において、被告人E、同Fの原判示第四の行為には可罰的違法性がないという主張を排斥した点にはその判断の基礎となる事実に誤認があり、右の誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。 しかし、原判決が所論指摘の点について示した判断はすべて正当として是認することができ、労働者供給事業禁止の趣旨が職業の安定と労働関係の近代化を図ることを目的とし、実質的には労働者各人の就業の安定と搾取の危険からの解放にあることから考えると、所論のように、労働者の供給を受けた者におい 労働者供給事業禁止の趣旨が職業の安定と労働関係の近代化を図ることを目的とし、実質的には労働者各人の就業の安定と搾取の危険からの解放にあることから考えると、所論のように、労働者の供給を受けた者において、右労働者に対し一般同種労働者と実質的に差異のない賃金を支払つたとしても、これにより法の趣旨が全うされるものではなく、法秩序全体の見地からみて許された行為であるということはできない。その他原審記録及び証拠物を調査し、当審における事実取調の結果を併せて検討しても原判決に所論のような事実の誤認があるとはいえず、可罰的違法性がないという所論は採用することができない。論旨はいずれも理由がない。 よつて、刑訴法三九六条により本件各控訴を棄却し、当審における訴訟費用は同法一八一条一項本文を適して主文第二項のとおり各被告人に負担させることとする。 よつて、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官龍岡資久裁判官西村法裁判官福嶋登)別表 (一)<記載内容は末尾1添付>別表 (二)<記載内容は末尾2添付>別表 (三)<記載内容は末尾3添付>
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