平成30(行ウ)254 行政文書不開示決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年9月12日 東京地方裁判所
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判決文本文21,857 文字)

- 1 -令和元年9月12日判決言渡平成30年(行ウ)第254号行政文書不開示決定処分取消請求事件主文 1 文化庁長官が原告に対して平成28年11月25日付けで行った行政文書不開示決定(〇受庁文第〇号)のうち,A教団が所轄庁に提出 した役員名簿,財産目録,収支計算書,貸借対照表,境内建物に関する書類及び公益事業以外の事業に関する書類の存否を明らかにしないで不開示とした部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,処分行政庁に対し行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成28年法律第51号による改正前のもの。以下「情報公開法」とい う。)3条に基づき,A教団が所轄庁に提出した規則,役員名簿等に係る開示請求(以下「本件開示請求」という。)をしたところ,処分行政庁が,平成28年11月25日付けで,①規則については,取得しておらず保有していないとして不開示とし,②その他の請求文書(以下「本件対象文書」という。)については,情報公開法8条に基づき,これらの文書の存否を明らかにしないで不開示 とする旨の決定(〇受庁文第〇号。以下「本件不開示決定」といい,②の部分を「本件存否応答拒否部分」という。)をしたことから,処分行政庁の所属する被告に対し,本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め 関係法令等の定めは別紙2-1~2-4のとおりである(なお,同別紙中で - 2 -定義した略称等は,以下の本文においても同様に用いることとする。)。 2 前提事実(1) 原告による本件開示請求原告は,平成28年10月25日付けで,情報公開法 紙中で - 2 -定義した略称等は,以下の本文においても同様に用いることとする。)。 2 前提事実(1) 原告による本件開示請求原告は,平成28年10月25日付けで,情報公開法4条1項に基づき,処分行政庁に対し,A教団が現在に至るまで所轄庁に提出した規則,役員名 簿,財産目録,収支計算書,貸借対照表,境内建物に関する書類,公益事業以外の事業に関する書類,その他宗教法人法(改正前のものを含む。)に基づき提出義務が課されている一切の書類(ただし,本件開示請求に先立つ行政文書開示請求において開示されたものを除く。)の開示を請求した(本件開示請求。甲1の1,2,甲2,乙3)。 なお,A教団の所轄庁は文部科学大臣であるが(宗教法人法5条2項),文部科学省の所掌事務のうち「宗教法人法の規則,規則の変更,合併及び任意解散の認証並びに宗教に関する情報資料の収集及び宗教団体との連絡に関する事務」は文化庁宗務課の所掌事務とされているため(文部科学省設置法4条1項85号,19条,平成30年政令第266号による改正前の文部科学 省組織令106条1項),文化庁長官が処分行政庁である(国家行政組織法3条2項,情報公開法2条1項3号,3条)。 (2) 処分行政庁による本件不開示決定処分行政庁は,平成28年11月25日付けで,原告に対し,本件開示請求の請求文書のうち,①規則については,取得しておらず保有していないこ と,②その他の請求文書(本件対象文書)については,その存否を答えることにより,A教団から当該文書が提出されているか否かを明らかにすることになるところ,これは,国の機関が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの( 書が提出されているか否かを明らかにすることになるところ,これは,国の機関が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの(情報公開法5条6号柱書き)に該当するため,同法8条に より当該文書の存否を明らかにすることができないことを理由として,同法 - 3 -9条2項の規定に基づき,本件不開示決定をした(争いのない事実)。 (3) 原告の審査請求原告は,平成29年2月27日付けで,処分行政庁に対し,行政不服審査法2条の規定に基づき,本件不開示決定の取消しを求める審査請求をした(争いのない事実)。 (4) 情報公開・個人情報保護審査会への諮問及び同審査会の答申処分行政庁は,平成29年5月29日付けで,本件不開示決定は適法かつ妥当であり,上記(3)の審査請求には理由がないと判断し,行政不服審査法45条2項の規定に基づき,審査請求を棄却する旨の裁決をすべく,情報公開・個人情報保護審査会へ諮問した。 これに対し,情報公開・個人情報保護審査会は,同年12月8日付けで,本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分については取り消すべきである旨の答申をした(以上につき,甲5,弁論の全趣旨)。 (5) 処分行政庁による棄却裁決処分行政庁は,本件裁決を踏まえ,再度検討を行った上で,平成30年2 月6日付けで,原告に対し,前記(3)の審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲4,弁論の全趣旨)。 (6) 原告による本件訴訟提起原告は,平成30年6月25日,本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分の取消しを求めて,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張 原告は,平成30年6月25日,本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分の取消しを求めて,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は,本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分について,情報公開法5条6号柱書き又は2号イの不開示事由に該当することにより同法8条に基づき文書の存否を明らかにしないで不開示としたことの適否である。 (被告の主張) (1) 本件対象文書記載の情報が情報公開法5条6号柱書きに該当し,同法8条 - 4 -により文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができることア 「国の機関〔中略〕が行う事務〔中略〕に関する情報」該当性本件対象文書は,いずれも,宗教法人法25条4項に基づき所轄庁に提出されるべきものであるところ,これらの書類は,宗教法人が規則等に従ってその目的に沿った活動を行っていることを所轄庁が継続的に確認し, 宗教法人法の適正な運用を図るために提出されるべきものである。したがって,本件対象文書に記載された情報は,いずれも情報公開法5条6号柱書きの「国の機関〔中略〕が行う事務〔中略〕に関する情報」に当たる。 イ 「事務〔中略〕の性質上,当該事務〔中略〕の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があること (ア) 「おそれ」の判断における判断手法情報公開法5条6号柱書きに定める「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」か否かという将来の予測に係る事由の判断についてみると,問題の情報を公にすることによって,国の事務等の適正な遂行にどのような判断が及ぶかの判断は,それまでに蓄積された行政 運営上の経験の上に立って初めて的確にすることができる場合が多いものであり,ま の情報を公にすることによって,国の事務等の適正な遂行にどのような判断が及ぶかの判断は,それまでに蓄積された行政 運営上の経験の上に立って初めて的確にすることができる場合が多いものであり,また,それぞれに関連する行政事務等の実態や全容等を把握しないままでは,的確にその予測をすることができない場合もある。 そして,情報公開法は,行政文書の開示請求について,申請権としての開示請求権を付与し,行政庁に応答としての開示又は不開示の決定を させる,すなわち,開示の拒否に関する法制度において,行政庁の第一次的判断権を介在させるという仕組みを採用している。 そうすると,情報公開法5条6号柱書きに定める「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」という要件については,行政機関の長に要件裁量を付与したとまではいえないとしても,開示実施の任 に当たる行政機関の長に一定の幅のある判断をさせることを許容してい - 5 -るというべきである。 したがって,情報公開法5条6号柱書きに定める不開示情報に係る,将来の予測を内容とする要件である「おそれ」の要件該当性については,少なくとも,行政機関の長に一定の幅のある判断が許容されていると解し得るものであり,そのような幅を逸脱する判断がされた場合に限り, その要件該当性が否定され,当該不開示処分が違法性を帯びるとの判断手法を採用するのが相当である。 このことは,情報公開法8条に規定する存否応答拒否の要件である,開示請求に係る行政文書の存否を明らかにするだけで当該「おそれ」があるといえるか否かの判断についても同様であり,そのような幅を逸脱 する判断がされた場合に限り,当該「おそれ」の要件該当性が否定され,当該存否応答拒否処分が 明らかにするだけで当該「おそれ」があるといえるか否かの判断についても同様であり,そのような幅を逸脱 する判断がされた場合に限り,当該「おそれ」の要件該当性が否定され,当該存否応答拒否処分が違法性を帯びるとの判断手法を採用するのが相当である。 (イ) 宗教法人からの信頼を維持する必要性a 宗教法人法25条4項による備付け書類の所轄庁への提出制度(以 下「書類提出制度」という。)に基づき提出されるべき書類(同条2項2号~4号及び6号の書類(以下「役員名簿等」という。)の写し)は,制度の趣旨(前記ア)からも,公開が予定されているものではなく,宗教法人から所轄庁に役員名簿等の写しが提出されているかについても,同様に,その公開が予定されていないものであって,役員名簿等 の存否については,同条3項に基づき信者その他の利害関係人が宗教法人に直接確認することが予定されている。このことは,①公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」という。)22条2項が,宗教法人法25条4項と同趣旨の規定である認定法22条1項に基づき行政庁が公益法人から提出を受けた財産目録等につ いて閲覧又は謄写の請求があった場合には,閲覧及び謄写をさせなけ - 6 -ればならないと定めているところ,宗教法人法はこのような規定を設けていないこと,②同法25条3項と同趣旨の規定である認定法21条4項は,公益法人の備置書類の閲覧請求権の主体を「何人も」と規定し,宗教法人法25条3項のような主体の限定をしていないことからも明らかである。 そして,書類提出制度が,これに基づき提出される書類について,その提出の有無自体も含めて公開が予定されていないことを前提とした制度である以上,宗教法人としても公開され である。 そして,書類提出制度が,これに基づき提出される書類について,その提出の有無自体も含めて公開が予定されていないことを前提とした制度である以上,宗教法人としても公開されないことを信頼の上で書類の提出に応じているものであって,仮に,その書類の提出の有無自体が明らかとなった場合,今後,書類の提出に応じなくなる宗教法 人が生じることも予想される。例えば,報道機関が会計年度ごとの書類提供状況を宗教法人間で比較する目的で情報公開請求を行うことも考えられ,実際に同様の事例が発生しているところ,そのような場合に書類の提出の有無自体を明らかにすれば,このような比較を嫌う宗教法人が提出拒否に転じる可能性がある。 b 取り分け,役員名簿等のうち収支計算書については,当分の間,宗教法人法6条2項による公益事業以外の事業を行わない場合であって,その一会計年度の収入の額が8000万円以内にあるときは,当該会計年度に係る収支計算書を作成しないことができるものとされており(同法附則23項,平成8年6月3日文部省告示第116号〔宗教法 人法附則23項の規定に基づく文部科学大臣が定める額の範囲〕),また,貸借対照表については,そもそもその作成は任意であり,相応の体制,規模の宗教法人が作成するものと考えられ,さらに,同法6条2項による公益事業以外の事業に関する書類については,当該事業の実施の有無によって,当該事業に関する書類の備付けの有無が分かれ るものである。したがって,役員名簿等の写しの存否を明らかにした - 7 -場合,当該宗教法人の年間の収入規模(収入規模が8000万円以内であるか否か)や事務処理能力,収益事業の実施の有無等を推測される可能性がある。 そして,役員名簿等につ - 7 -場合,当該宗教法人の年間の収入規模(収入規模が8000万円以内であるか否か)や事務処理能力,収益事業の実施の有無等を推測される可能性がある。 そして,役員名簿等については,宗教法人法25条3項により信者等のみが所定の要件の下で閲覧をすることができることとされている ことを踏まえると,本来開示が予定されていない者に対して情報公開法の枠内で役員名簿等の写しの開示を認めることは,当該宗教法人が役員名簿等の写しに係る情報を秘匿する利益を侵害することとなる。 そして,役員名簿等の写しの存否を明らかにした場合にも,同様に宗教法人の上記利益を侵害し,宗教法人からの信頼を失うことにつなが り,以後,そのほかの文書も含めて宗教法人から所轄庁への書類の提出が行われなくなることによって,宗教法人法25条4項に基づく書類提出制度による行政目的の遂行・達成に支障を及ぼすおそれがあるといえる。 このようなおそれは,書類提出制度が導入された後,多くの宗教法 人から同制度への反対意見や懸念が報道されてきたことからも裏付けられるものである。そして,全ての宗教法人について提出が義務付けられている文書についても,一たび提出拒否の姿勢に転じた宗教法人が収支計算書や貸借対照表についてのみ提出を拒み,そのほかの文書について提出に応じるとは考え難いから,上記のおそれは,書類提出 制度の対象となる全ての文書について考慮すべきものである。 (ウ) 不活動宗教法人対策の実を挙げる必要性書類提出制度による書類提出率が高い状況の下で,特定の宗教法人について役員名簿等の写しが所轄庁に提出されていないことは,当該宗教法人が不活動であることを容易に推測させる情報であるところ,当該情 報を第三者に開示した 出率が高い状況の下で,特定の宗教法人について役員名簿等の写しが所轄庁に提出されていないことは,当該宗教法人が不活動であることを容易に推測させる情報であるところ,当該情 報を第三者に開示した場合,開示を受けた第三者が当該宗教法人の法人 - 8 -格を不正に取得し,脱税などの行為に悪用するなど,様々な問題を生じさせる契機を与えることになりかねず,宗教法人制度に対する国民の信頼を損ねることにもなりかねない。実際に,不活動宗教法人の法人格が悪用された事例が複数存在するし,公表されている不活動宗教法人数よりも多くの数の不活動宗教法人又は将来不活動宗教法人となる可能性の ある宗教法人が知られることにより,宗教法人格を悪用する契機を増加させ,不活動宗教法人対策に実害を与えることは明らかである。 ウ情報公開法8条の存否応答拒否の要件に該当すること情報公開法8条に基づく存否応答拒否が必要な類型の文書については,常に存否応答拒否をすべきところ,役員名簿等を作成している場合や不活 動宗教法人でない場合には当該文書の存否を明らかにし,これらを作成していない場合や不活動宗教法人の可能性がある場合には存否応答拒否をするというのでは,存否応答拒否をする意味がなく,宗教法人からの信頼の維持及び不活動宗教法人対策の実を挙げることができない。 本件対象文書は,その存否を含めて情報公開法による公開を予定してい ないものである一方,その存否を明らかにした場合,所轄庁が実施する不活動宗教法人対策に支障を及ぼすおそれがあるばかりか,宗教法人法25条4項に基づく書類提出制度による行政目的の遂行・達成にも支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条6号柱書きの「事務〔中略〕の性質上,当該事務〔中略〕の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ 宗教法人法25条4項に基づく書類提出制度による行政目的の遂行・達成にも支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条6号柱書きの「事務〔中略〕の性質上,当該事務〔中略〕の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」に該当する不開示 情報を開示することになる。 したがって,本件対象文書については,情報公開法8条により存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができる。 (2) 本件対象文書記載の情報が情報公開法5条2号イに該当し,同法8条により文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができること ア前記(1)イ(イ)aのとおり,役員名簿等の写しは,そもそも公開が予定さ - 9 -れていないものであるところ,宗教法人により所轄庁へ提出されているか否かについても,同様に,その公開が予定されていないものであり,役員名簿等の存否についても,宗教法人法25条3項が定める要件の下で信者等が宗教法人に直接確認することが予定されているものである。 そうすると,情報公開法の枠内で役員名簿等の写しの存否を明らかにす ることは,本来開示が予定されていない者に対して宗教法人法25条2項各号の書類の存否を明らかにする結果となってしまい,当該宗教法人がその存否に係る情報を秘匿する利益,ひいては当該宗教法人の信教の自由が害されることになる。そして,このように解することが,情報公開法制定の経緯や,提出書類の取扱いにつき宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊 重し信教の自由を妨げることのないよう特に留意を求めた同条5項の趣旨に沿う。 イまた,宗教法人が書類提出制度により提出が求められる書類の写しの提出を怠ったときは,当該宗教法人の代表役員等を10万円以下の過料に処するものとされているところ(宗教法人法88 に沿う。 イまた,宗教法人が書類提出制度により提出が求められる書類の写しの提出を怠ったときは,当該宗教法人の代表役員等を10万円以下の過料に処するものとされているところ(宗教法人法88条5号),役員名簿等の写し の存否を明らかにした場合,当該書類を提出していない宗教法人については,その代表役員等が過料に処せられた事実が明らかになる。このような事実は,それ自体,当該宗教法人やその代表役員等の名誉を毀損するものである上,当該宗教法人の宗教活動の態様に対する誹謗中傷や,宗教法人の自主的な運営に干渉するための材料に使われるおそれのあるものである。 取り分け,本件についていえば,原告は本件対象文書の提出者とされるA教団の関係者と推察されるところ,本件開示請求に対する回答内容によっては,A教団が被告に対して文書の存否を明らかにした決定について差止めの訴え等を提起するなど,被告がA教団の内紛に巻き込まれる結果にもなるから,このような観点からも,本件対象文書の存否を明らかにする ことは適切ではない。 - 10 -ウしたがって,本件対象文書の存否を明らかにした場合,情報公開法5条2号イの「公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当する不開示情報を開示することとなるから,本件対象文書は,情報公開法8条により存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができる。 (3) まとめ以上のとおり,本件対象文書については,情報公開法8条によりその存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができるから,本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分は適法である。 (原告の主張) (1) 本件対象文書記載の情報が情報 法8条によりその存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができるから,本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分は適法である。 (原告の主張) (1) 本件対象文書記載の情報が情報公開法5条6号柱書きに該当せず,同法8条に基づき存否応答拒否処分をすることが許されないことア 「おそれ」の判断につき行政機関の長に裁量がないこと情報公開法5条6号所定の不開示情報に当たるか否かは,同号の定める要件に該当する事情の有無・程度によって客観的に判断されるべきもので あり,行政機関の長の一定の幅のある判断(裁量判断)に委ねられていると解することはできない。 イ書類提出制度の運用に支障を及ぼすおそれがないこと役員名簿等の写しの存否が明らかにされたとしても,これにより判明するのは,事務所備付け書類の提出義務の履行状況であり,当該宗教法人の 秘匿すべき具体的な内情等は何ら明らかになるものではない。 被告は,役員名簿等の写しの存否を明らかにした場合,当該宗教法人の年間の収入規模や事務処理能力,収益事業の実施の有無等が推測される可能性がある,書類の提出拒否に転じる可能性があるなど,幾つかの可能性を指摘するが,いずれも抽象的な可能性であって,被告の事務又は事業の 適正な遂行に支障を及ぼすおそれを基礎づけるような支障が生じる具体的 - 11 -な蓋然性があるとはいえない。 したがって,役員名簿等の写しの存否が明らかにされることにより,宗教法人の信頼を失い,以後,宗教法人から所轄庁への書類の提出が行われなくなるという事態が発生するおそれがあるとは認められない。 ウ不活動宗教法人対策に支障を及ぼすおそれがないこと 上記イのとおり,役員名簿等の写しが存在しな の書類の提出が行われなくなるという事態が発生するおそれがあるとは認められない。 ウ不活動宗教法人対策に支障を及ぼすおそれがないこと 上記イのとおり,役員名簿等の写しが存在しないことが明らかにされることによって判明するのは,当該宗教法人が事務所備付け書類の提出義務を履行していないという事実であるところ,そこから当該宗教法人について現在不活動状態にあるということが直ちに推測されるものではない。 したがって,役員名簿等の写しの存否を答えることにより,不活動宗教 法人の法人格が悪用されるなどして所轄庁の不活動宗教法人対策に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。 エ情報公開法8条に該当する事由がないこと以上のとおり,本件対象文書の存否を回答することで情報公開法5条6号の不開示情報を開示することになるとはいえないから,同法8条に基づ き本件対象文書の存否応答拒否処分をすることは許されない。 (2) 本件対象文書記載の情報が情報公開法5条2号イに該当せず,同法8条に基づき存否応答拒否処分をすることが許されないことア宗教法人法25条には,書類提出制度に基づく書類の提出の有無自体の公開が予定されていないとは規定されていない。 また,そもそも書類の内容が明らかになることと書類の存否のみが明らかになることとでは知り得る情報に大きな違いがあるから,前者の公開が予定されていないからといって当然後者の公開が予定されていないと解釈し得るものではない。そして,書類提出制度で提出される書類は,宗教法人のいわゆる財務会計,法人組織の管理運営に関する事項を客観的に記載 したものであり,信仰内容や信仰対象それ自体が記載されているものでは - 12 -ないし,個々の具体 れる書類は,宗教法人のいわゆる財務会計,法人組織の管理運営に関する事項を客観的に記載 したものであり,信仰内容や信仰対象それ自体が記載されているものでは - 12 -ないし,個々の具体的な宗教活動の内容が記載されているものではない上,そのような書類の存否が明らかにされたとしても,それによって判明するのは作成の事実の有無又は書類提出制度に基づく義務の履行の有無にすぎず,宗教法人の信仰に関係する部分はもちろん,当該宗教法人の秘匿すべき具体的な内情等が明らかになるものでもない。 したがって,本件において本件対象文書の存否を明らかにしたとしても,A教団の権利,競争上の地位その他正当な利益が害される相当の蓋然性が客観的に認められるものではない。 イなお,被告は,本件対象文書の存否を明らかにした場合,当該書類の写しを提出していない宗教法人についてはその代表者役員等が過料に処せら れた事実が明らかになる旨主張する。しかしながら,実際に過料に処せられるか否かは裁判所の決定次第であって,被告の主張は当を得ないし,これにより当該宗教法人や代表役員等の名誉毀損,宗教活動の態様に対する誹謗中傷や自律的運営への干渉などの実害が発生する蓋然性を裏付ける事情もない。 また,被告は,本件開示請求を通じてA教団の内紛に巻き込まれる可能性があるため文書の存否を明らかにすることは適切ではない旨主張するが,当該主張自体が臆測にすぎないし,この事情が情報公開法5条各号該当性及び同法8条による不開示の可否の判断に関連するともいえない。 第3 当裁判所の判断 1 情報公開法8条に基づく存否応答拒否の可否に関する判断枠組み情報公開法は,開示請求に対する行政機関の長の対応について,行政文書の存否を明ら もいえない。 第3 当裁判所の判断 1 情報公開法8条に基づく存否応答拒否の可否に関する判断枠組み情報公開法は,開示請求に対する行政機関の長の対応について,行政文書の存否を明らかにした上で,これを開示又は不開示のいずれとするかを決定するのが原則であるとした上で,文書の存否自体が一つの情報であることもあり得ることから,同法8条において,開示請求がされた行政文書の存否自体を明ら かにするだけで不開示情報を開示することとなるときは,行政機関の長は,当 - 13 -該行政文書の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否できる旨定めたものと解される。 そして,上記のとおり,情報公開法8条が開示請求に対する行政機関の長の対応の例外として定められたものであり,その文言上,行政文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否できる場合を「当該開示請求に係る行政文書が存 在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるとき」に限定していること,文書の存否を明らかにした上で不開示事由に該当する場合に不開示とし,このような措置が是認されるか否かは司法の判断を含む情報公開手続上の判断に委ねることが情報公開法の趣旨に沿うものというべきであること等に照らすと,同条に基づいて行政文書の存否を明らかにしないことが許 されるのは,当該行政文書の存否を回答すること自体から不開示情報を開示したこととなる場合や,当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより当該行政文書の存否について回答するだけで上記の不開示情報を開示したことになる場合に限られると解するのが相当である。 2 本件対象文書につき,情報公開法5条6号柱書きに該当することにより同法 8条に基づき存否応答拒否をすることの可否 記の不開示情報を開示したことになる場合に限られると解するのが相当である。 2 本件対象文書につき,情報公開法5条6号柱書きに該当することにより同法 8条に基づき存否応答拒否をすることの可否について(1) 判断枠組みア情報公開法5条6号柱書きは,不開示情報として,「国の機関,独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,〔中略〕当該事務又は事業の性質上, 当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を掲げているところ,「当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす」とは,国の機関等が行う事務又は事業の目的及び内容に照らして,当該事務又は事業に関する情報を公にすることにより,当該情報を公にすることによる利益を踏まえても看過し得ないような実質的な 支障が当該事務又は事業に生じる場合をいい,また,「支障を及ぼすおそれ」 - 14 -があるというためには,事務又は事業の適正な遂行について支障が生じる抽象的な可能性があるというだけではなく,当該事務又は事業の適正な遂行について実質的な支障が生じる蓋然性が認められることを要すると解すべきである。 イ被告は,情報公開法5条6号柱書きの「事務又は事業の適正な遂行に支 障を及ぼすおそれがある」との要件は,開示実施の任に当たる行政機関の長に一定の幅のある判断をさせることを許容しているものであり,そのような幅を逸脱する判断がされた場合に限り,その要件該当性が否定されると解すべきであると主張する。 しかしながら,被告の上記主張は,実質的には,上記の「おそれ」の有 無の判断について行政機関の長の一定の裁量を認めるものと解されるところ,上記の れると解すべきであると主張する。 しかしながら,被告の上記主張は,実質的には,上記の「おそれ」の有 無の判断について行政機関の長の一定の裁量を認めるものと解されるところ,上記の「おそれ」の有無については,国の機関等が行う事務又は事業の性質に照らして客観的に判断するのが相当であり,同号の文言に照らしても,行政機関の長の裁量判断に委ねられているものと解することはできない。そして,このことは,同法8条所定の存否応答拒否の要件である, 開示請求に係る行政文書の存否を答えるだけで当該「おそれ」があるといえるか否かの判断についても,同様というべきである。 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 (2) 検討ア書類提出制度に係る事務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれの有無に ついて(ア) 被告は,宗教法人法上,役員名簿等の写しについてはその存否を含めて公開することが予定されていないとした上で,書類提出制度において宗教法人は役員名簿等の写しを公開されないことを信頼した上で書類の提出に応じているものであって,仮に役員名簿等の写しの提出の有無が 明らかにされることとなった場合には,今後書類の提出に応じなくなる - 15 -宗教法人が生じることが予想されるとして,書類提出制度に係る事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある旨主張する。 (イ) 宗教法人法25条4項は,同条2項により宗教法人が事務所に備えることとされた書類等のうち,同項2号から4号まで及び6号の書類(役員名簿等)の各写しを所轄庁に提出しなければならない旨を定めている ところ,同条3項は,信者その他の利害関係人であって同条2項により事務所に備えられた書類等を閲覧することについて正当な利益が 役員名簿等)の各写しを所轄庁に提出しなければならない旨を定めている ところ,同条3項は,信者その他の利害関係人であって同条2項により事務所に備えられた書類等を閲覧することについて正当な利益があり,かつ,その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者に対し,上記書類等の閲覧を認めている。そして,公益法人については,①宗教法人と異なり,宗教法人法25条4項と同趣旨の規定である認定 法22条1項に基づき行政庁が提出を受けた財産目録等について,請求があった場合に閲覧又は謄写をさせなければならない旨規定されていること(同条2項),②宗教法人法25条3項と同趣旨の規定である認定法21条4項は,同条1項及び2項により公益法人の主たる事務所に備え置かれた財産目録等について,何人も閲覧を請求することができる旨規 定することにも照らせば,宗教法人法は,役員名簿等及びその写しについて,公開することを予定していないものというべきである。 (ウ) もっとも,前記1の判断枠組みの下において,役員名簿等の写しの提出の有無につき,情報公開法5条6号柱書きに該当することにより同法8条により存否を明らかにすることができないか否かを判断するに当た っては,役員名簿等の写しの提出の有無を開示した場合に,宗教法人法上これらの書類の公開が予定されていないことに対する宗教法人の信頼を損なうことにより,宗教法人が書類の提出に応じなくなるなど,書類提出制度に係る事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす具体的なおそれがあるか否かについて検討するのが相当である。 (エ) そこで検討すると,役員名簿等の写しの全部又は一部が所轄庁に提出 - 16 -されていない事実が明らかになった場合には,これらを作成すべき前提となる事実が生 当である。 (エ) そこで検討すると,役員名簿等の写しの全部又は一部が所轄庁に提出 - 16 -されていない事実が明らかになった場合には,これらを作成すべき前提となる事実が生じていないこと,単なる懈怠,失念や誤解,あるいは何らかの事情や事故によって作成又は提出がされていないこと,そもそも不活動法人ゆえに必要な書類の作成又は提出がされていないこと等の理由によることが考えられるものの,そのような可能性が存在することを うかがわせるにとどまり,このことによって当該宗教法人の具体的な状況,活動内容等が明らかになるものとはいえない。 また,役員名簿等のうち収支計算書については,当分の間,宗教法人法6条2項による公益事業以外の事業を行わない場合であって,その一会計年度の収入の額が8000万円以内にあるときは,当該会計年度に 係る収支計算書を作成しないことができること(同法附則23項,平成8年6月3日文部省告示第116号)から,その写しの提出の有無が明らかになることにより,当該宗教法人が上記の事業を行うか否か,また収入の額が8000万円以内か否かを推測することが可能となるものの,具体的な事業の内容や収入の額を推測することが可能となるわけではな い。貸借対照表についても,その作成は任意とされているところ,写しの提出の有無が明らかになることにより作成の有無が明らかになっても,当該宗教法人の具体的な事務処理の状況等が明らかになるわけではない。 さらに,同法6条2項による公益事業以外の事業に関する書類についても,写しの提出の有無が明らかになることにより当該事業の実施の有無 を推測することが可能となるものの,具体的な事業の内容が明らかになるわけではない。 このように,役員名簿等の写しの提 写しの提出の有無が明らかになることにより当該事業の実施の有無 を推測することが可能となるものの,具体的な事業の内容が明らかになるわけではない。 このように,役員名簿等の写しの提出の有無を明らかにしても,当該宗教法人の具体的な状況,活動内容等が明らかになるとはいえないことに照らせば,役員名簿等の写しの提出の有無を明らかにすることによっ て,宗教法人が役員名簿等の写しに係る情報を秘匿する利益を侵害する - 17 -ものと評価することはできず,また,宗教法人の信頼を損なうことにより書類の提出に応じてもらえなくなるなど,書類提出制度に係る事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす具体的なおそれがあるということはできない。 (オ) これに対し,被告は,役員名簿等の写しの提出の有無が明らかとなっ た場合,書類の提出に応じなくなる宗教法人が生じるおそれは,多くの宗教法人からの書類提出制度への反対意見や懸念が報道されてきたことからも裏付けられる旨主張し,これに沿う証拠として新聞記事(乙8~10)を提出する。しかしながら,これらの証拠によれば,宗教団体から,書類提出制度について,情報開示の相手方である「信者その他の利 害関係人」の範囲が曖昧である,所轄庁が報告内容を一般に公開しなければ問題ないなどの意見が出されていたことが認められるものの,これらの意見は提出書類の内容が開示されることに対する懸念を示すものであって,書類提出の有無が開示されることについての懸念を示すものとはいえない。 また,被告は,会計年度ごとの書類提出状況を宗教法人間で比較した結果を報道する目的で役員名簿等の写しの情報公開請求をした場合にその提出の有無を明らかにすれば,比較されることを嫌う宗教法人が提出拒否に転じ, 告は,会計年度ごとの書類提出状況を宗教法人間で比較した結果を報道する目的で役員名簿等の写しの情報公開請求をした場合にその提出の有無を明らかにすれば,比較されることを嫌う宗教法人が提出拒否に転じ,書類提出制度の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張し,宗教法人の財務に関する雑誌報道をした記者が 実際にそのような情報公開請求をした旨主張する。しかしながら,比較されることを嫌った宗教法人が提出拒否に転じるとの主張自体,抽象的な懸念を述べるものにすぎないというべきであって,上記主張に係るおそれは具体的なものということはできない。 (カ) したがって,書類提出制度の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼ すおそれがある旨の被告の主張(前記(ア))は,採用することができない。 - 18 -イ不活動宗教法人対策に係る事務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれの有無について被告は,書類提出制度による書類提出率が高い状況の下で,特定の宗教法人について役員名簿等の写しが所轄庁に提出されていないことは,当該宗教法人が不活動であることを容易に推測させる情報であり,情報の開示 を受けた第三者が当該宗教法人の法人格を不正に取得し,脱税などの行為に悪用するなど,様々な問題を生じさせる契機を与えかねないとして,不活動宗教法人対策の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある旨主張する。 確かに,特定の宗教法人について書類提出制度による書類の提出がされ ていないことは,当該宗教法人が不活動であることをうかがわせる一つの徴憑ということができる。 しかしながら,前記ア(エ)のとおり,書類提出制度による書類提出が行われないことは,不活動法人であることによる場合だけでなく,役員名簿 ることをうかがわせる一つの徴憑ということができる。 しかしながら,前記ア(エ)のとおり,書類提出制度による書類提出が行われないことは,不活動法人であることによる場合だけでなく,役員名簿等の写しを作成すべき前提となる事実が生じていない場合や,単なる懈怠に より作成義務を怠ったあるいは提出を怠った状態などにおいても生じるものである。被告は,書類提出制度による書類の提出率が高い旨主張するが,そうであったとしても,提出されていない理由が不活動法人であることに限定されるとか,その可能性が高いなどということはできない。そうすると,特定の宗教法人について役員名簿等の写しの全部又は一部が提出され ていないことが明らかになったとしても,被告が主張するおそれが生ずる可能性は抽象的なものにとどまるといわざるを得ないから,被告の主張を採用することはできない。 また,本件において,開示請求に含まれる情報と本件役員名簿等の提出の有無に関する情報が結合することにより,A教団が不活動法人であるこ とを推測することが可能となる具体的な事情は見当たらない。 - 19 -(3) 小括以上によれば,本件役員名簿等の存否を回答すること自体から情報公開法5条6号柱書きの不開示情報を開示したことになるということはできないし,当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより上記不開示情報を開示したことになるということもできない。 3 本件対象文書につき,情報公開法5条2号イに該当することにより同法8条に基づき存否応答拒否をすることの可否について(1) 判断枠組み情報公開法5条2号イは,不開示情報として,「公にすることにより,当該法人〔中略〕の権利,競争上の地位その他正当な 法8条に基づき存否応答拒否をすることの可否について(1) 判断枠組み情報公開法5条2号イは,不開示情報として,「公にすることにより,当該法人〔中略〕の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある もの」を規定しているところ,ここにいう「おそれ」とは,単に行政機関の主観においてそのおそれがあると判断されるだけではなく,上記権利利益が害される蓋然性が客観的に認められることを要すると解すべきである(最高裁平成20年(行ヒ)第67号同23年10月14日第二小法廷判決・裁判集民事238号57頁参照)。 (2) 検討ア被告は,役員名簿等の写しはそもそも公開が予定されておらず,情報公開法の枠内でその存否を明らかにすることは,当該宗教法人が有する役員名簿等の写しの存否に係る情報を秘匿する利益,ひいては信教の自由が害されることになる旨主張する。 しかしながら,役員名簿等の写しの存否を明らかにすることによって,宗教法人が役員名簿の写しに係る情報を秘匿する利益を侵害するものといえないことは前記2(2)ア(エ)のとおりであり,信教の自由が害されることになるといえる具体的な主張及び証拠も見当たらない。 したがって,被告の主張は採用できない。 イまた,被告は,役員名簿等の写しの存否を明らかにした場合,これらを - 20 -提出していない宗教法人については代表社員等が過料に処せられた事実が明らかになると主張する。 しかしながら,宗教法人が書類提出制度により提出が求められる書類の写しの提出を怠ったときは,当該宗教法人の代表社員等は10万円以下の過料に処するものとされるものの(宗教法人法88条5号),そもそも前記 2(2)ア(エ)のとおり,書類の写し が求められる書類の写しの提出を怠ったときは,当該宗教法人の代表社員等は10万円以下の過料に処するものとされるものの(宗教法人法88条5号),そもそも前記 2(2)ア(エ)のとおり,書類の写しの提出を要さない場合がある上,過料の裁判を執行するためには過料についての裁判を行わなければならないこと(非訟事件手続法120条,122条)等に照らせば,役員名簿等の写しの提出がされていない場合に必ず代表役員等が過料に処されているということはできない。 したがって,被告の主張は採用できない。 ウ被告は,本件開示請求に対して本件対象文書の存否を明らかにした場合,被告国がA教団の内紛に巻き込まれる結果となり,適当でない旨主張する。 しかしながら,情報公開法5条2号イは「公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ があるもの」と規定するところ,本件において「当該法人等又は当該個人」に国が含まれるとはいえないし,内紛状態を前提として本件対象文書の存否が明らかにされた場合に,A教団の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることをうかがわせる事情も見当たらない。 したがって,被告の主張は採用できない。 (3) 小括以上のとおり,本件対象文書の存否が明らかにされたとしても,これにより当該宗教法人又はその代表役員等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認めるに足りる事情はない。したがって,本件対象文書の存否を回答すること自体から情報公開法5条2号イの不開示情報 を開示したことになるとはいえないし,当該行政文書の存否に関する情報と - 21 -開示請求に含まれる情報とが結合することにより,上 を回答すること自体から情報公開法5条2号イの不開示情報を開示したことになるとはいえないし、当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより、上記不開示情報を開示したことになるともいえない。 4 まとめ 以上によれば、本件対象文書の存否について回答すること自体が、情報公開法5条2号イ又は6号柱書きの不開示情報を開示することになるということはできないし、本件対象文書の存否に関する情報と本件開示請求に含まれる情報とが結合することにより、本件対象文書の存否について回答するだけで上記の不開示情報を開示することになるということもできない。したがって、本件対象文書について、情報公開法8条に基づいて行政文書の存否を明らかにしないで不開示とすることは許されないから、本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分は、不適法であるといわざるを得ない。 第4 結論 以上のとおり、本件不開示決定のうち本件存否応答拒否部分は不適法であるから、これを取り消すべきである。よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官 森英明 裁判官 三貫納有子 裁判官 鈴鹿祥吾 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成年法律第号による改正前のもの。情報公開法) (行政文書の開示義務) 第五条 行政機関 情報公開法 (行政文書の開示義務) 第五条 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。 一 〔略〕 二 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。 イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの ロ 〔略〕 三~五 〔略〕 六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又 おそれがあるもの ロ 〔略〕 三~五 〔略〕 六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの イ~ホ 〔略〕 (行政文書の存否に関する情報) 第八条 開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。 (別紙2-2) 宗教法人法 (公益事業その他の事業) 第六条 宗教法人は、公益事業を行うことができる。宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。 〔以下略〕 (財産目録等の作成、備付け、閲 的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。 〔以下略〕 (財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出) 第二十五条 宗教法人は、その設立(合併に因る設立を含む。)の時に財産目録を、毎会計年度終了後三月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない。 宗教法人の事務所には、常に次に掲げる書類及び帳簿を備えなければならない。 一 規則及び認証書 二 役員名簿 三 財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表 四 境内建物(財産目録に記載されているものを除く。)に関する書類 五 〔略〕 六 第六条の規定による事業を行う場合には、その事業に関する書類 宗教法人は、信者その他の利害関係人であって前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不 えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があつたときは、これを閲覧させなければならない。 宗教法人は、毎会計年度終了後四月以内に、第二項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項第二号から第四号まで及び第六号に掲げる書類の写しを所轄庁に提出しなければならない。 所轄庁は、前項の規定により提出された書類を取り扱う場合においては、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。 第八十八条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、宗教法人の代表役員、その代務者、仮代表役員又は清算人は、十万円以下の過料に処する。 一~四 〔略〕 五 第二十五条第四項の規定による書類の写しの提出を怠つたとき。 六~十一 〔略〕 ~四 〔略〕 五 第二十五条第四項の規定による書類の写しの提出を怠つたとき。 六~十一 〔略〕 附則 当分の間、宗教法人は、第六条第二項の規定による公益事業以外の事業を行わない場合であつて、その一会計年度の収入の額が寡少である額として文部科学大臣が定める額の範囲内にあるときは、第二十五条第一項の規定にかかわらず、当該会計年度に係る収支計算書を作成しないことができる。 (別紙2-3)- 25 -○ 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(公益法人法) (財産目録の備置き及び閲覧等) 第二十一条 公益法人は、毎事業年度開始の日の前日までに(公益認定を受けた日の属する事業年度にあっては、当該公益認定を受けた後遅滞なく)、内閣府令で定めるところにより、当該事業年度の事業計画書、収支予算書その他の内閣府令で定める書類を作成し、当該事業年度の末日までの間、当該書類をその主たる事務所に、 算書その他の内閣府令で定める書類を作成し、当該事業年度の末日までの間、当該書類をその主たる事務所に、その写しをその従たる事務所に備え置かなければならない。 公益法人は、毎事業年度経過後三箇月以内に(公益認定を受けた日の属する事業年度にあっては、当該公益認定を受けた後遅滞なく)、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる書類を作成し、当該書類を五年間その主たる事務所に、その写しを三年間その従たる事務所に備え置かなければならない。 一 財産目録 二 役員等名簿(理事、監事及び評議員の氏名及び住所を記載した名簿をいう。 以下同じ。 ) 三、四 〔略〕 〔略〕 何人も、公益法人の業務時間内は、いつでも、第一項に規定する書類、第二項各号に掲げる書類、定款、社員名簿及び一般社団・財団法人法第百二十九条第一項(一般社団・財団法人法第百九十九条において準用する場合を含む。 )に規定する計算書 法第百二十九条第一項(一般社団・財団法人法第百九十九条において準用する場合を含む。 )に規定する計算書類等(以下「財産目録等」という。 )について、次に掲げる請求をすることができる。 この場合においては、当該公益法人は、正当な理由がないのにこれを拒んではならない。 一 財産目録等が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求 二 財産目録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を内閣府令で定める方法により表示したものの閲覧の請求 前項の規定にかかわらず、公益法人は、役員等名簿又は社員名簿について当該公益法人の社員又は評議員以外の者から同項の請求があった場合には、これらに記載され又は記録された事項中、個人の住所に係る記載又は記録の部分を除外して、同項の閲覧をさせることができる。 〔略〕 (財産目録等の提出及び公開) 第二 の部分を除外して、同項の閲覧をさせることができる。 〔略〕 (財産目録等の提出及び公開) 第二十二条 公益法人は、毎事業年度の経過後三箇月以内(前条第一項に規定する書類については、毎事業年度開始の日の前日まで)に、内閣府令で定めるところにより、財産目録等(定款を除く。 )を行政庁に提出しなければならない。 行政庁は、公益法人から提出を受けた財産目録等について閲覧又は謄写の請求があった場合には、内閣府令で定めるところにより、その閲覧又は謄写をさせなければならない。 前項の規定にかかわらず、行政庁は、役員等名簿又は社員名簿について同項の請求があった場合には、これらに記載された事項中、個人の住所に係る記載の部分を除外して、その閲覧又は謄写をさせるものとする。 ○ 宗教法人法附則第二十三項の規定に基づく文部科学大臣が定める額の範囲〔平成八年六月三日文部省告示第百十六号〕 則第二十三項の規定に基づく文部科学大臣が定める額の範囲〔平成八年六月三日文部省告示第百十六号〕 宗教法人法〔括弧内略〕附則第二十三項の規定に基づき、文部科学大臣が定める額の範囲を八千万円以内と〔中略〕する。

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