令和6年10月21日宣告令和6年(わ)第525号判決上記の者に対する自殺幇助被告事件について、当裁判所は、検察官園麻美及び国選弁護人釜井裕介各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、SNSで自殺希望者として知り合ったA(当時20歳)及びB(当時17歳)と共に自殺しようと考え、令和6年3月6日、自殺に用いるための七輪及び練炭等を購入し、同月17日午後10時3分頃から同月18日午前6時57分頃までの間に、同人らと共に、前記七輪及び練炭等を積載した被告人名義の自動車に乗車して、北海道江別市(住所省略)C公園駐車場に向かい、同所において、前記練炭に着火して前記七輪に入れ、同七輪を同所に駐車中の同車内に置くなどした上、同車内に乗り込み、A及びBを同練炭を使用した一酸化炭素中毒によって自殺させようとしたが、同練炭の火が同車に燃え移って同車が燃え、よって、その頃、同所において、A及びBをそれぞれ焼死させ、もって同人らの自殺を幇助した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)被告人は、A及びBと集団自殺を企図する中で、練炭や七輪を含む練炭コンロセット等を購入し車両を提供するなど、犯行の際用いられた道具を準備し、A及びB と共に宿泊するホテルを予約するなどした。道具はAから提供を受けた自殺マニュアルをもとにAと分担して購入しており、3人で行動した際に支出した費用についてはAやBも負担するなど、被告人が特に集団自殺の実現に物理的に寄与したというわけでは 。道具はAから提供を受けた自殺マニュアルをもとにAと分担して購入しており、3人で行動した際に支出した費用についてはAやBも負担するなど、被告人が特に集団自殺の実現に物理的に寄与したというわけではないものの、これを促進した程度は大きい。 そして、2名の尊い命が失われたという結果は重大である。残された家族や友人にも深い喪失感をもたらした。 犯行に至る経緯をみると、被告人は、児童養護施設に入れられるなど家族と疎遠で、継母からは暴力を受けていたといった生い立ちや家庭環境を背景に、悲観的な思考にとらわれがちで、中学生頃から死にたいとの思いを抱くようになり、これまでも頻繁に友人に対して死をほのめかしたり、度々自傷行為にも至ってきた。そのような中で、事件の数か月前から自殺希望者が集まるSNS上のグループの投稿を見るようになり、死にたいとの気持ちを強めていき、死ぬときは寂しくないようにとの思いから、自身もSNS上に一緒に死ぬ人を募集するなどの投稿をするようになった。他方、AやBも従前からSNSに死をほのめかす投稿をしていたところ、被告人の投稿を見たAからメッセージが送られてきたことを契機に、被告人はAとの間で集団自殺に向けたやり取りをするようになり、さらにAから誘われたBも含めてやり取りをするようになった。被告人が集団自殺を企図したこと自体については安易な判断であったというべきであるが、上記経緯からして、希死念慮を強めていった背景には同情すべき点もある。また、基本的には3人がそれぞれ集団自殺の意思を強めていったもので、被告人がAやBの集団自殺の意思を殊更強める働きかけをしたとはいえないなど、被告人を強く非難しがたい事情もある(なお、検察官は、被告人のみ車外に出た行為を身勝手と指摘するが、この際同人が睡眠薬等の影響によってもうろうとした状態であ 更強める働きかけをしたとはいえないなど、被告人を強く非難しがたい事情もある(なお、検察官は、被告人のみ車外に出た行為を身勝手と指摘するが、この際同人が睡眠薬等の影響によってもうろうとした状態であったことは否定できず、上記行為が身勝手な判断とは評価できない。また、被告人が年長であることも責任を加重すべき事情として挙げるが、うかがわれる3人の関係性からしてそのようには評価できない。)。 さらに、一般情状についてみると、被告人は被害者等に対して謝罪し悔悟の念を 述べ、本件の重大性や命の大切さについて自覚する様子がみられる。また、今後近しい友人等による被告人の支援も期待される。 以上からすると、前科前歴のない被告人に対しては、主文程度の執行猶予とするのが相当である。その上で、犯行に至る経緯等からして再犯防止のために一定の専門的な支援が必要であると考えられること、近しい友人等はいるものの監督者というべき者がいないことも踏まえ、猶予の期間中は公的機関による支援を付すこととした。 (求刑懲役3年)令和6年10月21日札幌地方裁判所刑事第3部 裁判官加島一十
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