令和3年3月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第43360号謝罪広告掲載等請求事件口頭弁論終結日令和2年10月21日判決 主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して200万円及びこれに対する平成30年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを30分し,その29を原告の負担とし,その余は被告らの連帯負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告に対し,各自別紙謝罪広告目録記載1の謝罪広告を,同目録記載2の条件で,朝日新聞,読売新聞,毎日新聞,日本経済新聞,産経新聞及 び東京新聞の全国版朝刊に各1回掲載せよ。 2 被告らは,原告に対し,各自5000万円及びこれに対する平成30年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は,日刊新聞を発行している原告が,その報道を批判する書籍によって名誉を毀損されたと主張して,これを執筆した被告Y及びこれを出版した被告飛鳥新社に対し,民法723条に基づき,名誉を回復するのに適当な処分として謝罪広告の掲載を求めるとともに,民法709条に基づき,損害賠償として5000万円及びこれに対する不法行為後の日(訴状送達の日の翌日)から支 払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実次の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各 不法行為後の日(訴状送達の日の翌日)から支 払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実次の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠等によって容易に認められる。 当事者ア原告は,日刊新聞その他の新聞の制作,発行及び販売等を目的とする株 式会社であり,朝日新聞を発行している。(争いのない事実)イ被告Yは,文芸評論家である。(甲1)ウ被告飛鳥新社は,書籍及び雑誌の企画,編集,出版及び販売等を目的とする株式会社である。(争いのない事実) 国有地の売却に関する原告の報道 ア国は,平成28年6月20日,学校法人森友学園(以下「森友学園」という。)に対し,随意契約の方法により,国有財産であった大阪府豊中市所在の約8770平方メートルの土地(以下「本件土地」という。)を代金1億3400万円で売却した。(弁論の全趣旨)イ原告は,平成29年2月9日,朝日新聞の朝刊において,森友学園に対 する本件土地の売却について,近畿財務局が本件土地の売却価額を例外的に不開示としたこと,豊中市議会議員が同月8日大阪地方裁判所に近畿財務局長の不開示の処分の取消しを求める訴えを提起したこと,本件土地の売却価額が近隣の国有財産であった土地の売却価額の約1割にとどまるとみられること,これに先立ち,別の学校法人が校舎用地として本件土地を 代金7億円前後で購入することを希望したものの,近畿財務局から「価格が低い」との指摘を受けて取得を断念した経緯があること,森友学園が本件土地上に開校する予定の小学校の名誉校長が,内閣総理大臣安倍晋三(当時。以下「安倍首相」という。)の妻A(以下「A夫人」といい,安倍首相と併せて「 受けて取得を断念した経緯があること,森友学園が本件土地上に開校する予定の小学校の名誉校長が,内閣総理大臣安倍晋三(当時。以下「安倍首相」という。)の妻A(以下「A夫人」といい,安倍首相と併せて「安倍首相ら」という。)であること等を報じた。(甲2) これ以降,原告は,本件土地の売却の経緯について,代金が大幅に減額 されて森友学園に不当に有利な条件で本件土地が売却されたのではないか,安倍首相らからの政治的な影響(働きかけや忖度)があったのではないかという疑惑(以下「森友問題」という。)についての報道を断続的に行った。(甲3から6まで,48から63まで) 獣医学部新設の区域計画認可に関する原告の報道 ア内閣総理大臣(安倍首相)は,平成28年1月,愛媛県今治市を国家戦略特別区域に指定し(平成28年政令29号),平成29年1月,同市において,学校法人D学園(以下「D学園」という。)が事業者として獣医学部を新設する区域計画(以下「本件区域計画」という。)について,所定の基準に適合するとの認定をした。(弁論の全趣旨) イ原告は,平成29年3月23日,朝日新聞の朝刊において,本件区域計画の認定について,D学園の理事長が安倍首相の知人であったこと,事業者が1校限りとされ,国家戦略特別区域諮問会議が獣医学部の空白地域に限って新設を認めることとされたため,他の学校法人が獣医学部の新設を断念した経緯があること,政府がD学園に特別の便宜を図ろうとしたので はないかとの野党からの指摘があること等を報じた。(甲24の1)これ以降,原告は,本件区域計画の認定について,政治的な影響があったのではないかという疑惑(以下「D問題」という。)についての報道を断続的に行った。(甲7から9 を報じた。(甲24の1)これ以降,原告は,本件区域計画の認定について,政治的な影響があったのではないかという疑惑(以下「D問題」という。)についての報道を断続的に行った。(甲7から9まで,24から45まで,64,66)ウ原告は,文部科学省の記録文書(甲10から17まで。以下「本件文科 省文書」という。)を入手し,同年5月17日,その存在を報じた。(甲7)本件文科省文書には,本件区域計画について,文部科学省の担当者が国家戦略特別区域を所管する内閣府の担当者から言われた内容として,①「これは官邸の最高レベルが言っていること」との記載のある「獣医学部 新設に係る内閣府からの伝達事項」と題する記録文書(甲10)や,② 「これは総理のご意向だと聞いている」,「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば,総理が議長なので,総理からの指示に見えるのではないか。」との記載のある「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題する記録文書(甲14)が含まれる。 書籍の執筆及び出版 被告Yは,「徹底検証『森友・D事件』朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」との表題(以下「本件表題」という。)で,冒頭に「無双の情報ギャング朝日新聞に敬意を込めて捧ぐ」との献辞(以下「本件献辞」という。)を付し,森友問題及びD問題についての原告の一連の報道を批判的に検証する書籍(甲1。以下「本件書籍」という。)を執筆し,被告飛鳥新社は,平 成29年10月22日,本件書籍を出版した。(争いのない事実)本件書籍には,別紙「主張対照表1」の「記述」欄記載の各記述(以下,番号に応じて「本件記述1」などといい,本件表題及び本件献辞と併せて「本件各記述」という。)がある。(争いのない事実) 本件書籍には,別紙「主張対照表1」の「記述」欄記載の各記述(以下,番号に応じて「本件記述1」などといい,本件表題及び本件献辞と併せて「本件各記述」という。)がある。(争いのない事実)(なお,以下においては,森友問題及びD学園の関係者について,森友学園 のB理事長を「B理事長」,C豊中市議会議員を「C市議」,日本放送協会を「NHK」,D学園のD理事長を「D理事長」,E内閣官房副長官(当時)を「E副長官」,F元文部科学事務次官を「F元次官」という。) 3 争点 訴権の濫用(争点1) 本件訴えの提起が訴権の濫用に当たるか 社会的評価の低下(争点2)本件各記述が原告の社会的評価を低下させるものであるか 摘示事実又は前提事実の真実性及び相当性(争点3)本件各記述の摘示事実又は前提事実が真実か及び被告らにおいて真実と信 ずるにつき相当の理由があるか 謝罪広告の要否及び損害額(争点4)原告の名誉を回復するのに適当な処分及び本件各記述によって原告に生じた損害の額 4 争点に関する当事者の主張 訴権の濫用(争点1)について (被告らの主張)ア原告は,被告らに対して過大な請求をしているが,かかる請求は,被告らを不当に困惑させるものであるとともに,原告を批判しようとする者を無用に萎縮させる。 イまた,原告は,紙面に係争中の書籍の広告を掲載しないという不文律が 新聞業界内にあることを知りながら,敢えて本件訴えを提起した。実際に,原告以外の新聞各社は,本件訴えが提起されて以降,本件書籍の広告の掲載を拒絶した。このように,原告は,本件書籍の売上を減少させることで,被告Yの言論 を知りながら,敢えて本件訴えを提起した。実際に,原告以外の新聞各社は,本件訴えが提起されて以降,本件書籍の広告の掲載を拒絶した。このように,原告は,本件書籍の売上を減少させることで,被告Yの言論を経済的にも妨害した。 ウ原告は,国内発行部数2位の全国紙である朝日新聞を発行する報道機関 であって,社会的な影響力を有するのであるから,本件書籍の記載内容に誤りがあり,これによって原告の名誉や信用が毀損されたというのであれば,紙面上で根拠を示して反論することができたし,そうすれば,被告Yも,根拠を示して再反論することができた。それにもかかわらず,原告は,森友問題及びD問題並びにこれらに関する朝日新聞の報道について公的な 議論を深めるどころか,これを封殺するために本件訴えを提起した。このような原告の対応は,報道機関のあるべき姿からかけ離れた不当なものというほかない。 エしたがって,本件訴えは,いわゆるスラップ訴訟に該当するものというべきであるから,訴権を濫用するものとして却下されるべきである。 (原告の主張) ア本件書籍は,虚偽の事実を多数記載して原告を誹謗中傷するものであって,報道機関としての原告の名誉及び信用を著しく毀損するものである。 本件訴えは,かかる悪質な不法行為によって原告に生じた重大な被害を回復するために提起されたものである。 イ被告らが主張するような紙面に係争中の書籍の広告を掲載しないという 不文律は,新聞業界内に存在しない。 ウまた,紙面上又は訴訟外での議論が可能であったとしても,本件訴えの提起が妨げられるべき理由にはならない。 エしたがって,本件訴えは訴権を濫用するものではない。 社会的評価の低下(争点2)について での議論が可能であったとしても,本件訴えの提起が妨げられるべき理由にはならない。 エしたがって,本件訴えは訴権を濫用するものではない。 社会的評価の低下(争点2)について (原告の主張)ア本件各記述は,報道機関である原告の名誉及び信用を毀損して社会的評価を低下させた。 イ本件各記述に係る各論的主張は,別紙「主張対照表1」の「原告の主張」欄記載のとおり。 (被告Yの主張)ア本件各記述は,本件記述3及び本件記述9を除き,意見ないし論評の表明にとどまるものである。そして,正当な意見ないし論評の表明は不法行為を構成しないというべきである。 表現の自由を保障する憲法の下では,意見ないし論評の表明は原則とし て自由であり,これが名誉毀損による不法行為に該当するかは慎重に検討すべきである。特に,意見ないし論評が特定の事実を前提とするものではないとき,社会的評価の低下が容易に肯定されると,被告が抗弁として主張立証すべき対象が不明確となる。したがって,不法行為の成否の判断に当たっては諸般の事情が考慮されるべきであり,当該意見ないし論評の表 明による社会的評価の低下のみが考慮されるべきではない。 イ本件各記述に係る各論的主張は,別紙「主張対照表1」の「被告Yの主張」欄記載のとおり。 (被告飛鳥新社の主張)ア本件各記述は,本件記述3及び本件記述9を除き,意見ないし論評の表明にとどまるものである。 事実の摘示と意見ないし論評の表明の区別は,当該記述が文脈の中で有する意味を踏まえて判断すべきであり,文脈から切り離した表現を捉えて,証拠等をもってその存否を決することが可能な事項であるかによることはできな と意見ないし論評の表明の区別は,当該記述が文脈の中で有する意味を踏まえて判断すべきであり,文脈から切り離した表現を捉えて,証拠等をもってその存否を決することが可能な事項であるかによることはできない。 本件各記述における「ねつ造」,「虚報」は,朝日新聞の記事を踏まえ た総括的な評価である。朝日新聞は,本件土地の代金減額の交渉ないし過程への安倍首相の関与の事実を報道するのではなく,安倍首相と森友学園との関係を並べ立て,読者に安倍首相の関与があったかのような印象を与えていたのであり,このような報道は,ねつ造であり,虚報というべきである。 イ本件各記述に係る各論的主張は,別紙「主張対照表1」の「被告飛鳥新社の主張」欄記載のとおり。 摘示事実又は前提事実の真実性及び相当性(争点3)について(被告Yの主張)ア本件書籍は公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的は専ら公益 を図ることにあった。 原告は,国会等で取り上げられた多数の事実の中から,安倍首相の関与の疑惑に沿う方向性の事実を取り出して均衡を失する程度に重視し,他方,これと反対の方向性の事実を不当に軽視することで,安倍首相に対する疑惑が生じることを容認していた。原告は,自社の見立てに沿って事実を恣 意的に選択して報道しているのであり,国民の知る権利に応える報道機関 の責務に照らすならば,到底許されないものである。 イ本件各記述は,本件記述3及び本件記述9を除き,いずれも意見ないし論評の表明にとどまり,かつ,いずれも人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない。 本件書籍の対象は原告の報道そのものであり,本件書籍の主題は朝日新 聞の記事そのものを論評す とどまり,かつ,いずれも人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない。 本件書籍の対象は原告の報道そのものであり,本件書籍の主題は朝日新 聞の記事そのものを論評することである。本件書籍は,個別の事実を取り上げて,朝日新聞の記事の記述が真実でないから虚報であるとか,原告が事実をねつ造したと主張しているのではなく,本来は存在しない疑惑が記事の印象によって作られていると主張するものである。 意見ないし論評の表明については,事実の摘示よりも緩和された要件で 免責が認められ,その内容の合理性が要求されず,意見ないし論評の域を逸脱するものでない限り不法行為の成立が否定される。 ウ本件各記述に係る各論的主張は,別紙「主張対照表2」の「被告Yの主張」欄記載のとおり。 (被告飛鳥新社の主張) ア本件書籍の出版は,公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的は専ら公益を図ることにあった。 森友問題に関する国民の正当な関心は,国有財産処分の適否と,それが不正なものであるならばその原因であり,D問題に関する国民の正当な関心は,獣医学部新設認可の適否と,それが不正なものであるならばその原 因である。森友問題及びD問題についての原告の報道は,行政がどのように歪められたかを究明するのではなく,印象操作に終始して安倍首相らの関与の「疑惑を創作」するもので,国家権力を監視するという報道機関としての責務を放棄するものであった。本件書籍の目的は,これをただして国民の知る権利に資するというものであり,被告飛鳥新社は,かかる目的 が正当であると判断して本件書籍を出版した。 イ本件各記述の多くは,意見ないし論評の表明であり,本件書籍は上記目的を離れて原 るというものであり,被告飛鳥新社は,かかる目的 が正当であると判断して本件書籍を出版した。 イ本件各記述の多くは,意見ないし論評の表明であり,本件書籍は上記目的を離れて原告を攻撃するものではないから,いずれも人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱するものではない。 ウその前提とした事実又は摘示された事実は,いずれも真実であるし,被告飛鳥新社において真実と信ずるについて相当の理由がある。 一般に,出版社は,執筆者の思想を広く読者に伝える役割を果たし,事実の存否については著者による事実の確認,検証が充分か,資料の引用が正確か,取材対象の選択,取材方法が適正か,論旨に著しい飛躍がないか等を原稿の検討を通じて行う。したがって,執筆者が直接に事実の存否を問題とするのに対し,出版社は原稿を通じて執筆者が事実の存否を判断し た過程を問題とするのであり,出版社が執筆者と全く同じ作業を要求されるのは過大な負担というべきであって,表現の自由にとって望ましくないことは明らかである。したがって,名誉毀損の成否との関係で真実性・相当性を判断する基準は,執筆者と出版社で異なる。本件書籍は,朝日新聞の記事それ自体を批評の対象とするものであるから,その第一次的素材は 既に公表された朝日新聞の記事であり,原告に対して取材を行う必要はなかった。そして,被告飛鳥新社は,朝日新聞の記事が対象とした森友問題及びD問題に関する国会その他の議会の議事録,本件文科省文書等,出自に疑義のない資料のほぼ全てを検証し,原稿について疑義や意見があれば,被告Yに確認を取り,一つ一つ論拠と記載の相当性について検討した。被 告飛鳥新社は,このような過程を経て本件書籍に記載された事実が真実であり,あるいはその記載の前 について疑義や意見があれば,被告Yに確認を取り,一つ一つ論拠と記載の相当性について検討した。被 告飛鳥新社は,このような過程を経て本件書籍に記載された事実が真実であり,あるいはその記載の前提事実が真実であることを確認しながら,本件書籍の編集に当たっていたのであり,出版社に要求される事実確認の義務を履行していた。したがって,結果的に本件各記述の摘示事実又は前提事実が真実でないとしても,被告飛鳥新社において真実と信ずるについて 相当の理由があったというべきである。 本件各記述に係る各論的主張は,別紙「主張対照表2」の「被告飛鳥新社の主張」欄記載のとおり。事実の調査と表現については,基本的に被告Yの主張を援用する。 (原告の主張)ア本件各記載の多くは,証拠等をもってその存否を決することが可能な他 人に関する特定の事項であるから,事実の摘示である。 イ被告Yは,本件記述3及び本件記述9を除き,本件各記述によって原告の社会的評価が低下することを争っていないのであるから,名誉毀損を理由とする不法行為の成立を否定するのであれば,事実の摘示については摘示事実の,意見ないし論評の表明については前提事実の真実性又は相当性 を主張立証しなければならないにもかかわらず,法律上いかなる意味を有するのか明らかでない主張をするのみであって,これらの主張は抗弁にならない。 原告は,安倍首相らが森友問題に関与したとの報道も,関与したとの印象を与える報道もしていないし,森友問題を安倍首相の問題とするために 恣意的に事実を選択して報道しているなどということもない。 ウ本件各記述に係る各論的主張は,別紙「主張対照表2」の「原告の主張」欄記載のとおり。 謝罪広告の要 とするために 恣意的に事実を選択して報道しているなどということもない。 ウ本件各記述に係る各論的主張は,別紙「主張対照表2」の「原告の主張」欄記載のとおり。 謝罪広告の要否及び損害額(争点4)について(原告の主張) ア本件書籍は,国民の関心を集め,社会的に極めて重要な問題である森友問題及びD問題についての原告の報道について,「戦後最大級の報道犯罪」,「ねつ造」,「虚報」などとし,報道機関である原告の名誉及び信用を著しく毀損するものである。被告らは,読売新聞,毎日新聞,日本経済新聞,産経新聞,東京新聞等の媒体に本件書籍の広告を掲載し,本件書 籍の発行部数は9万5000部にも及ぶ。 これらの事情に鑑みれば,原告の名誉を回復するのに適当な処分として,謝罪広告目録記載1の謝罪広告を同目録記載2の条件で,朝日新聞,読売新聞,毎日新聞,日本経済新聞,産経新聞,東京新聞の全国版朝刊に各1回掲載する必要がある。 イまた,本件書籍の出版によって原告が被った損害は5000万円を下ら ない。 (被告らの主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断本件の事案に鑑み,本案の争点(争点2から同4まで)から検討することと する。 1 社会的評価の低下(争点2)について ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきものである(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20 日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。 ところで,被告らは,本件記述3及び本件記述9を除く本件各記述について,これらが事実の摘 和29年(オ)第634号同31年7月20 日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。 ところで,被告らは,本件記述3及び本件記述9を除く本件各記述について,これらが事実の摘示ではなく意見ないし論評の表明であり,不法行為を構成しない旨主張する。 しかしながら,名誉毀損の不法行為は,問題とされる表現が,人の品性, 徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば,これが事実を摘示するものであるか,又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず,成立し得るものである(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)から,記述が意見ないし論評の表明であるとしても,そのこと のみによって当該記述による事実の摘示,社会的評価の低下や名誉毀損の成 立を否定することはできない。また,記述の中に意見ないし論評の表明が含まれているとしても,そのことのみによって当該記述の中に事実の摘示があることは否定できない。 なお,名誉毀損の成否が問題となっている記述について,そこに用いられている語のみを通常の意味に従って理解した場合には,証拠等をもってその 存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張しているものと直ちに解せないときにも,当該部分の前後の文脈や,記事の公表当時に一般の読者が有していた知識ないし経験等を考慮し,同部分が,修辞上の誇張ないし強調を行うか,比喩的表現方法を用いるか,又は第三者からの伝聞内容の紹介や推論の形式を採用するなどによりつつ,間接的ないしえん曲に前記事 項を主張するものと理解されるならば,同部分は,事実を摘示するものと見るのが相当である。また,上記のような間接的な言及は欠け 介や推論の形式を採用するなどによりつつ,間接的ないしえん曲に前記事 項を主張するものと理解されるならば,同部分は,事実を摘示するものと見るのが相当である。また,上記のような間接的な言及は欠けるにせよ,当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると,当該部分の叙述の前提として前記事項を黙示的に主張するものと理解されるならば,同部分は,やはり,事実を摘示するものと見るのが相当である。(前掲最高裁平成9年9月 9日第三小法廷判決参照) 以上を前提に,本件各記述が原告の社会的評価を低下させるものであるかどうかを検討する。 ア本件記述1について本件記述1は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が, 森友問題及びD問題について,スクープをねつ造して虚偽の事実ないし疑惑を報道した」との事実(以下「本件摘示事実1」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,虚偽の事実ないし疑惑を報道する,信用のできない報道機関である」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 これに対し,被告Yは,本件記述1から虚偽であることを知りながら敢 えて報道したとの内容を読み取ることはできない旨主張する。 しかしながら,一般に,「ねつ造」とは「事実でないことを事実のようにこしらえること」等を,「虚報」とは「いつわり(事実でないこと,ありのままでないこと,だますこと)の知らせ」等を,それぞれ意味し,いずれも故意によるものであることを含意し得る。また,証拠(甲1)によ れば,本件記述1の前後の文脈には,「印象操作で・・・(中略)・・・個人攻撃を続けた」(4頁),「朝日新聞が仕掛け・・・(中略)・・・『安倍疑惑』に仕立てていった」(5頁 た,証拠(甲1)によ れば,本件記述1の前後の文脈には,「印象操作で・・・(中略)・・・個人攻撃を続けた」(4頁),「朝日新聞が仕掛け・・・(中略)・・・『安倍疑惑』に仕立てていった」(5頁),「D問題の時は全てを周到な計画の下に―」(5頁),「森友学園・D学園問題の驚くべき朝日主導の仕掛け」(7頁)等の原告の意図を示すものと理解し得る記述が多数存在 することが認められる。そして,本件記述1は,「安倍の関与などないことを知りながら」との原告の認識を示す記述を含む本件記述2に連なるものであり,こうした文脈からは,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,本件記述1の「ねつ造」及び「虚報」は,いずれも故意による行為を意味するものと理解できる。 ところで,被告らは,本件記述1が事実の摘示であることを争う。 そこで検討するに,本件摘示事実1については,原告の認識や目的等の主観的な事情を含め,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項ということができ,これが事実であることは否定し得ない。被告らは,これが意見ないし論評であると主張するが,これが本件 書籍の主張,主題であるということはできても,証拠等をもって当否を決することができない善悪,優劣等の評価とは性質を異にするものというべきであるから,上記被告らの主張は採用できない。 次に,本件書籍が,政治的スキャンダルとして広く報道された森友問題及びD問題について,朝日新聞その他の報道機関と異なる角度から光を当 てたものとしての側面を有し,このような政治的スキャンダルに係る事実 関係は,その性質上,多様な議論があってしかるべきで,ときとして容易には確定し難いものといえる。名誉毀損の成否が問題となっている記述に の側面を有し,このような政治的スキャンダルに係る事実 関係は,その性質上,多様な議論があってしかるべきで,ときとして容易には確定し難いものといえる。名誉毀損の成否が問題となっている記述について,そこに用いられている語のみを通常の意味に従って理解した場合には,断定の形式を採用して事実を主張しているものと理解されるときも,記述の位置付けや当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると, 政治的意見の表明等にとどまり,事実を摘示するものではないと見るべき場合もあり得るから,本件記述1が本件摘示事実1を摘示したといえるかについては慎重な検討を要する。 しかしながら,本件摘示事実1は,それ自体が森友問題及びD問題という政治的スキャンダルあるいは保守・革新等といった政治的立場を主要な 対象とするものではなく,原告の報道姿勢を主要な対象とするものである。 そして,本件記述1は,本件書籍の全体を貫く被告Yの主要な主張の一つであると理解されるところ,証拠(甲1)によれば,本件書籍は,朝日新聞が主導した「仕掛け」を「詳しくご紹介」し,「極力『事実』を積み重ねて,事の全貌をお見せしよう」とする(7頁),「マスコミの犯罪性を 暴く『ファクト』に基づく本」(278頁)であるというのであるし,実際にその根拠として,多数の資料を引用するとともに,関連する事実経過や取材結果を記載している。そうすると,本件記述1は,確定し難い事実を推論し,あるいは仮定するにとどまるものということはできず,本件摘示事実1を主張するものと理解せざるを得ない。 したがって,本件記述1は,本件摘示事実1を摘示するものと見るのが相当である。 イ本件記述2について本件記述2は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば 。 したがって,本件記述1は,本件摘示事実1を摘示するものと見るのが相当である。 イ本件記述2について本件記述2は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が,森友問題及びD問題に安倍首相らが関与していないことを知りながら,政 権を批判することのみを目的として,森友問題及びD問題について,根拠 のない疑惑を作り上げた」との事実(以下「本件摘示事実2」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,虚偽の事実ないし疑惑を報道する,信用のできない報道機関である」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 これに対し,被告Yは,本件記述2の「疑惑を『創作』」が虚偽である ことを知りながら敢えて報道したとの内容を読み取ることはできない旨主張するが,これに係る「知りながらひたすら『安倍叩き』のみを目的として」との記述は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,文字どおり「知りながら敢えて」の趣旨というべきで,これと異なる読み方をすべき特段の事情はうかがわれない。 また,被告らは,本件記述2が事実の摘示であることを争うが,本件摘示事実1と同様,本件摘示事実2は,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項ということができ,これが意見ないし論評ではなく事実であることは否定し難いし,本件記述2は,本件記述1に連なる本件書籍の主要な主張の一つであると考えられるから,本件記述 1と同様,本件摘示事実2を主張するものと理解せざるを得ない。 他方,原告は,本件記述2の「『安倍叩き』は今なお『朝日の社是』なのだ。」の部分(18頁)が,本件摘示事実2に加えて「『安倍叩き』が原告の社是である」と 張するものと理解せざるを得ない。 他方,原告は,本件記述2の「『安倍叩き』は今なお『朝日の社是』なのだ。」の部分(18頁)が,本件摘示事実2に加えて「『安倍叩き』が原告の社是である」との事実を摘示している旨主張する。 しかしながら,報道機関である原告の社是(会社・結社の経営上の方 針・主張)に「安倍叩き」なる特定個人に関する事柄が含まれていることは想定し難いし,証拠(甲1)によれば,本件記述2の前後の文脈においては,社是に係るくだりは,朝日新聞の元主筆が語ったとされる言葉を政治評論家から聞いた話として紹介されているにすぎないことが認められる(17頁)。そうすると,上記の部分は,一般の読者の普通の注意と読み 方によれば,長年にわたって安倍政権を批判していることを強調する比ゆ 的な表現と認めるのが相当である。したがって,上記原告の主張は採用できない。 したがって,本件記述2は,本件摘示事実2を摘示するものと見るのが相当である。 ウ本件記述3について 本件記述3は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が,森友問題を報道するため,C市議に訴えを提起するよう助言した」との事実(以下「本件摘示事実3」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,報道機関でありながら,事件を報道価値のあるものに仕立て上げるために,事件関係者に自ら働きかけている」との印象を与える。 被告Yは,本件記述3による社会的評価の低下を争うが,このような本件摘示事実3の内容は,それ自体,いわゆる「やらせ」の一種として受け止められる可能性があり,報道機関に対して期待されている報道姿勢と異なる面があることは否定し難い。また,証拠(甲1)によれば,本件記述3は,本件書籍の中 それ自体,いわゆる「やらせ」の一種として受け止められる可能性があり,報道機関に対して期待されている報道姿勢と異なる面があることは否定し難い。また,証拠(甲1)によれば,本件記述3は,本件書籍の中で本件記述1及び本件記述2を受けて,「ねつ造」等 を例示するものと位置付けられていることが理解できるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 エ本件記述4について本件記述4は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が,森友問題を報道するために,国会でのG議員及びH議員の質疑やB理事長 及びその代理人弁護士の会見を敢えて全く報道しなかった」との事実(以下「本件摘示事実4」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,報道機関でありながら,事件の報道価値を維持するために,報道する事実を恣意的に選択し,読者に誤った認識を植え付けている」との印象を与える。 何を報道し,あるいは報道しないかという報道内容について報道機関に裁 量があることを前提としても,このような本件摘示事実4は,それ自体, 報道機関に対して期待されている報道姿勢と異なる面があることは否定し難い。また,証拠(甲1)によれば,本件記述4は,本件書籍の中で本件記述1及び本件記述2等を受けて,「ねつ造」等を例示するものと位置付けられていることが理解できる。これらのことからすれば,本件記述4は,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 なお,被告らは,本件記述4の「全く」の部分が「ほとんど」の強意であると主張するが,証拠(甲1)によれば,本件記述4の前後の文脈には,「事柄がこんなに早く明らかになってしまっては,意味がない」などとして,原告が上記の質疑や会見を報道しなかった理由ない 」の強意であると主張するが,証拠(甲1)によれば,本件記述4の前後の文脈には,「事柄がこんなに早く明らかになってしまっては,意味がない」などとして,原告が上記の質疑や会見を報道しなかった理由ないし意図を説明する記述が存在することが認められるから,本件記述4は,文字どおり「全く」 報道しなかったとの事実を摘示するものというべきである。 また,被告らは,本件記述4が事実の摘示であることを争うが,本件摘示事実4は,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であること,本件記述4が本件摘示事実4を摘示することは否定できない。 オ本件記述5について本件記述5は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が,森友問題の疑惑を解消し得た国会でのI議員の質疑とJ理財局長の応答を,全く報道しなかった」との事実(以下「本件摘示事実5」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,報道機関でありながら,疑惑を解消し得る 有益な情報を報道せず,無用な疑惑を報道し続けている」との印象を与える。また,証拠(甲1)によれば,本件記述5もまた,本件書籍の中で本件記述1及び本件記述2等を受けて,「ねつ造」等を例示するものと位置付けられていることが理解できる。これらのことからすれば,本件記述5は,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 被告らは,本件記述5の「一行も」の部分が,文字どおり「全く」では なく「ほとんど」あるいは「実質的に」の強意であると主張するが,証拠(甲1)によれば,本件記述5の前後の文脈には,朝日新聞が質疑及び応答を「黙殺した。」(問題にせず無視した)との記述が存在することが認められる ど」あるいは「実質的に」の強意であると主張するが,証拠(甲1)によれば,本件記述5の前後の文脈には,朝日新聞が質疑及び応答を「黙殺した。」(問題にせず無視した)との記述が存在することが認められるから,文字どおり「全く」報道しなかったとの事実を摘示したものというべきである。 また,被告らは,本件記述5が事実の摘示であることを争うが,本件摘示事実5は,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であること,本件記述5が本件摘示事実5を摘示することは否定できない。 カ本件記述6について 本件記述6は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「国会でのB理事長の証言を引用する3つの各見出しがいずれも虚偽である」との事実(以下「本件摘示事実6」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,虚偽の事実ないし疑惑を報道する,信用のできない報道機関である」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと 認められる。 被告らは,本件記述6が事実の摘示であることを争うが,本件摘示事実6は,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であること,本件記述6が本件摘示事実6を摘示することは否定できない。 この点,被告らは,本件記述6が,朝日新聞の記事(甲6)は証人喚問の全体の印象と異なるもので適切に要約したものではないとの意見ないし論評を表明したものであると主張する。確かに,証拠(甲1)によれば,本件記述6の前後の文脈には,「証人喚問全体でAへの論及は10分の1に満たない。」(99頁),「朝日の見出しは喚問全体の印象とは全く照 応 ものであると主張する。確かに,証拠(甲1)によれば,本件記述6の前後の文脈には,「証人喚問全体でAへの論及は10分の1に満たない。」(99頁),「朝日の見出しは喚問全体の印象とは全く照 応していない。」(100頁)との記述があるから,本件書籍が印象操作 を意図した証人喚問の要約であるとして朝日新聞の報道を批判していることは理解し得る。 しかしながら,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「虚報三連発」との記述からは,証人喚問の要約の仕方に関する批判的論評にとどまらず,3つの各見出しがいずれも虚偽の内容であると理解するものという べきであるから,上記被告らの主張は採用できない。 キ本件記述7について本件記述7は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が,D問題の報道価値を維持するため,本件文科省文書のうち,本件区域計画の認定への安倍首相の関与を想像させる部分だけを紹介し,本件区域計画 の認定が安倍首相の意向によるものでないと理解できる部分を隠蔽して,D問題を報道し続けた」との事実(以下「本件摘示事実7」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,報道機関でありながら,事件の報道価値を維持するために,報道する事実を恣意的に選択し,読者に誤った認識を植え付けている」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評 価を低下させるものと認められる。 被告らは,本件記述7が事実の摘示であることを争うが,本件摘示事実7は,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であること,本件記述7が本件摘示事実7を摘示することは否定できない。 また,被告Yは,本件記述7が立場によって理解の異なり得る政 に関する特定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であること,本件記述7が本件摘示事実7を摘示することは否定できない。 また,被告Yは,本件記述7が立場によって理解の異なり得る政府文書の解釈について一方の立場に立って朝日新聞の記事を批判したものであり,裁判所がその当否を判断することはできず,名誉毀損による不法行為は成立しない旨主張するが,前記のとおり本件記述7が本件摘示事実7を摘示するものである以上,名誉毀損による不法行為の成否は,同事実の摘示が 原告の社会的評価を低下させるか等によって決せられるものであり,政府 文書の解釈の当否が判断の対象となるものではないから,被告Yの上記主張は採用できないク本件記述8について本件記述8は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告とNHKが,D問題について,本件文科省文書を分担して報道することを申し 合わせていた」との事実(以下「本件摘示事実8」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,報道機関でありながら,他の報道機関と共謀して報道内容を調整し,情報操作をしている」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 被告らは,本件記述8が推論を提示したものであるとして事実の摘示で あることを争うが,本件摘示事実8は,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であることは否定できない。また,証拠(甲1)によれば,本件記述8の前後の文脈においては,「偶然にも重なる―そんなことがあるはずがない。」(154頁)として他の可能性を否定した上で,「みる他な いのではあるまいか。」との表現を用いているのであるから,推論の形式 後の文脈においては,「偶然にも重なる―そんなことがあるはずがない。」(154頁)として他の可能性を否定した上で,「みる他な いのではあるまいか。」との表現を用いているのであるから,推論の形式を採用しつつ,本件摘示事実8を主張するものと理解すべきである。 したがって,本件記述8は,本件摘示事実8を摘示したものと認めるのが相当である。 ケ本件記述9について 本件記述9は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が,平成29年3月14日から同年5月17日までの間,D問題に関する56回もの国会での質疑について,小さな記事3点で報道したほか,これを報道しなかった」との事実(以下「本件摘示事実9」という。)を摘示したものと認められる。 被告らは,本件摘示事実9による社会的評価の低下を争うところ,確か に,特定の事項について掲載した記事の本数を摘示されたからといって,直ちに報道機関としての社会的評価が低下するとはいえない。証拠(甲1)によれば,本件記述9の前後の文脈にも,原告がD問題に係る国会での質疑をより多く報道すべきことを示す事情や,より多く報道しなかったことが不当であることを示す事情はうかがわれない。本件記述9及びその前後 の文脈には,原告がこの期間にD問題を報道しなかった理由ないし意図を推測する記述があることが認められるものの,同記述を踏まえても,本件摘示事実9は,原告がD問題に関する国会での質疑について報道した記事の本数に関する事実を摘示したものとどまることからすれば,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として,本件摘示事実9が報道機関である原 告の社会的評価を低下させるものであるとは認められない。 コ本件記述10について本 すれば,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として,本件摘示事実9が報道機関である原 告の社会的評価を低下させるものであるとは認められない。 コ本件記述10について本件記述10は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告及びNHKが,D問題をスキャンダル化できる特ダネを探して密議を繰り返し,組織的な情報操作を行った」との事実(以下「本件摘示事実10」と いう。)を摘示し,読者に対し,「原告は,報道機関でありながら,他の報道機関と共謀して報道内容を調整し,情報操作をしている」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 被告らは,本件記述10が推論を提示したものであるとして事実の摘示 であることを争うが,本件摘示事実10は,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であることは否定できない。確かに,本件記述10は,「以下は,私の推理である。」,「推定を含むことはお断りしておく」などと断って,推論の形式を採用しているが,他方で,「当たらずといえども遠 からずではないか」,「可能性が高い」とも述べている。また,前記のと おり,本件記述8において,本件摘示事実8を主張するものと理解すべきであるところ,本件記述10は,その内容に照らせば,本件摘示事実8と同旨を繰り返すものとして,本件摘示事実10を主張するものと理解すべきである。 したがって,本件記述10は,本件摘示事実10を摘示したものと認め るのが相当である。 サ本件記述11について本件記述11は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「①D問題は原告のねつ造した虚偽の事実ない 実10を摘示したものと認め るのが相当である。 サ本件記述11について本件記述11は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「①D問題は原告のねつ造した虚偽の事実ないし疑惑である,②原告が,確信をもって虚偽の事実ないし疑惑を報道し続けた,③原告が,D問題について, F元事務次官の供述のみに依拠して報道を続けた」との各事実(以下「本件摘示事実11」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,十分な取材もしないで虚偽の事実ないし疑惑を報道する,信用のできない報道機関である」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 この点,被告らは,本件記述11が事実の摘示であることを争い,本件記述11の「関係者に殆ど取材せず」の部分が意見ないし論評の表明であり,「F一人の証言だけで」の部分がこれを誇張する表現であると主張する。 しかしながら,本件摘示事実11は,証拠等をもってその存否を決する ことが可能な他人に関する特定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であることは否定できない。また,証拠(甲1)によれば,本件記述11の前後の文脈には,F元事務次官について「当事者能力ゼロだった人物」(165頁)などとして,その供述の信用性について格別の説明を加える記述があることが認められる。そうすると,本件記述11は,原 告がF元事務次官その人の供述のみに依拠して報道したことを重要な根拠 として,D問題が原告のねつ造した虚偽の事実ないし疑惑であることを摘示するものと理解でき,関係者にほとんど取材しなかったことについての意見ないし論評とその誇張表現にとどまるということはできない。したがって,上記被告らの主張は採用できない。 惑であることを摘示するものと理解でき,関係者にほとんど取材しなかったことについての意見ないし論評とその誇張表現にとどまるということはできない。したがって,上記被告らの主張は採用できない。 シ本件記述12について 本件記述12は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が,①E副長官の言い分を考慮せず,②虚偽の文書を使用して同人を批判していた」との事実(以下「本件摘示事実12」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,当事者の言い分を考慮しないばかりか,虚偽の証拠を使用してまで政治家を批判する,信用のできない報道機関である」との印象 を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 被告らは,本件記述12の「Eの言い分を全く度外視した」の部分が意見ないし論評の表明であると主張するが,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「度外視した」との点は,取材の有無,言い分の掲載の有無 等,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項といえるから,上記被告らの主張は採用できない。 ス本件記述13について本件記述13は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,「原告が本件文科省文書のうち『総理のご意向』との記載以外の部分を殊更に隠蔽 した」との事実(以下「本件摘示事実13」という。)を摘示し,読者に対し,「原告は,自己の報道内容と整合しない資料は隠蔽する,信用のできない報道機関である」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 被告らは,本件記述13が事実の摘示であることを争うが,本件摘示事 実13が,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特 社会的評価を低下させるものと認められる。 被告らは,本件記述13が事実の摘示であることを争うが,本件摘示事 実13が,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特 定の事項であり,これが意見ないし論評ではなく事実であることは否定できない。被告Yは,本件記述13を含む本件書籍の第5章が全体としてD問題の真相に迫る意見ないし論評の表明であるとも主張するが,これによって本件記述13が本件摘示事実13を摘示していることを否定することにはならないから,本件書籍の第5章の全体的な趣旨が被告Yの上記主張 のとおりのものであっても,上記判断を左右するものではない。 また,被告飛鳥新社は,本件記述13による社会的評価の低下を争うが,前記の説示に照らして採用できない。 セ本件表題について本件表題は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,前記アないし スで認定した本件書籍の本文における摘示事実等を前提として,「森友問題及びD問題についての原告の報道が,戦後最大級の『報道犯罪』である」との意見ないし論評を表明し,読者に対し,「原告が社会にとって有害な報道機関である」との印象を与えるから,報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 ソ本件献辞について本件献辞は,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,前記アないしスで認定した本件書籍の本文における摘示事実等を前提として,「原告が『無双の情報ギャング』である」との意見ないし論評を表明し,読者に対し,「原告が社会にとって有害な報道機関である」との印象を与えるから, 報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 2 摘示事実又は前提事実の真実性及び相当性(争点 者に対し,「原告が社会にとって有害な報道機関である」との印象を与えるから, 報道機関である原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 2 摘示事実又は前提事実の真実性及び相当性(争点3)について 事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには, 上記行為には違法性がなく,仮に上記証明がないときにも,行為者において 上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁,最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁参照)。 一方,ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,上記行為は 違法性を欠くものというべきであり(最高裁昭和55年(オ)第1188号同62年4月24日第二小法廷判決・民集41巻3号490頁,最高裁昭和60年(オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁参照),仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由があれば,その故 意又は過失は否定されると解するのが相当である。(前掲 巻12号2252頁参照),仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由があれば,その故 意又は過失は否定されると解するのが相当である。(前掲最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決) これを本件についてみるに,本件書籍は,政治的スキャンダルとして広く報道された森友問題及びD問題についての原告の一連の報道を批判的に検証するものであり,原告が全国紙を発行する国内有数の報道機関であることか らすると,本件各記述は,いずれも公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあったものと認められる。 そこで,本件各記述について,摘示された事実(摘示事実)又は意見ないし論評の前提としている事実(前提事実)がその重要な部分について真実であるか(真実性),行為者において当該事実を真実と信ずるについて相当の 理由があるか(相当性),以下において検討する。 ア本件記述1について前記のとおり,本件記述1は,本件摘示事実1を摘示したものと認められるところ,被告らは,本件記述1について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに, 被告Yは,本件記述1における「ねつ造」が本来 は存在しない疑惑を記事の印象によって作り出すことであると主張するが,本件記述1における「ねつ造」及び「虚報」が故意によるものと理解できることは前記のとおりであるから,被告らは,その真実性の主張に当たっては,原告の主観的事情として,森友問題及びD問題に係る疑惑に根拠がないとの認識を有していたことを主張立証する必要がある。しかしながら, 被告らはこれを具体的に主張立証しないし,本件書籍において指摘された事情等を踏まえても, 問題及びD問題に係る疑惑に根拠がないとの認識を有していたことを主張立証する必要がある。しかしながら, 被告らはこれを具体的に主張立証しないし,本件書籍において指摘された事情等を踏まえても,これを認めることはできない。 すなわち,森友問題については,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,3年間で36件あった近畿財務局管内での随意契約による国有地の売却案件のうち,代金額が開示されなかったのは本件土地の売却のみであったこ と,B理事長が認めた本件土地の売却代金が,路線価に基づく国有財産台帳の台帳価格や,豊中市に売却された隣地と比較すると顕著に低額であったこと等(甲2,乙7),森友学園に不当に有利な条件で本件土地が売却されたのではないかとの疑念を生じさせる原因となり得る事情に加え,森友学園が本件土地上に開校する予定の小学校の名誉校長がA夫人であった という,安倍首相らと森友学園との関係性をうかがわせる事情が認められる。また,J理財局長が予算委員会での質疑に政府参考人として答弁し,本件土地の売却の経緯が一定程度説明された後も,B理事長は証人として「A夫人から・・・(中略)・・・口止めとも取れるメールが届きました」(乙5),「財務省の方に多少の動きをかけていただいた」(乙6)等, A夫人の関与を疑わせる内容の証言をしたことが認められる。そして,原 告が森友問題への安倍首相らの関与を否定する事情を認識していたこともうかがわれない。そうすると,本件土地の代金額の相当性に関する事情や,B理事長の証言の信用性等,本件書籍において指摘された点を踏まえても,森友問題に関する原告の報道(前提事実)当時において疑惑に根拠がないことを原告が認識していたと認めることは困難というべきである。 D問題につ 書籍において指摘された点を踏まえても,森友問題に関する原告の報道(前提事実)当時において疑惑に根拠がないことを原告が認識していたと認めることは困難というべきである。 D問題についても,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件区域計画の認定について,事業者が1校限りとされ,地域も獣医学部の空白地域に限られたため,他の学校法人が獣医学部の新設を断念した経緯があることに加え,D理事長が安倍首相の知人であったという安倍首相とD学園との関係性をうかがわせる事情が認められ,現に野党議員からは,政府がD 学園に特別の便宜を図ろうとしたのではないかとの指摘があったことが認められるし(甲24の1),その後,「これは官邸の最高レベルが言っていること」(甲10),「総理のご意向だと聞いている」(甲14)等の記述のある本件文科省文書が発見されたことからすると,原告が入手した本件文科省文書の内容や,D問題に関する朝日新聞及びNHKによる報道 の経緯及び内容等,本件書籍において指摘される点を踏まえても,D問題に関する原告の報道(前提事実)当時において疑惑に根拠がないことを原告が認識していたと認めることは困難というべきである。 そうすると,本件摘示事実1について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述1による名誉毀損が成立する。 イ本件記述2について前記のとおり,本件記述2は,本件摘示事実2を摘示したものと認められるところ,被告らは,本件記述2について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,被告らは,原告が,森友問題及びD問題について, 疑惑がないのに疑惑があると報道した,あるいは,取材結果から 摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,被告らは,原告が,森友問題及びD問題について, 疑惑がないのに疑惑があると報道した,あるいは,取材結果から安倍首相らの関与を報道できない状態であったにもかかわらず,読者に対して安倍首相らの関与があったかのような印象を与える報道を継続したとの事実を主張している。 しかしながら,本件摘示事実2は,「原告が,森友問題及びD問題に安 倍首相らが関与していないことを知りながら,政権を批判することのみを目的として」いたとの事実を含むのであるから,本件記述1と同様,原告の主観的事情(原告が森友問題及びD問題に係る疑惑に根拠がないとの認識を有していたこと)についての真実性の主張立証が必要であるが,これを認めることができないことは,前記アで説示したとおりである。 なお,被告飛鳥新社は,安倍首相の関与がないことを知っていたことについて,原告の主観的な事情であることを理由に真実性の証明の対象ではないと主張し,本件記述2について,「知っていた」と評価し,目的を推測し,原告の執拗な姿勢を比ゆ的に「社是」と表現したものと主張する。 しかしながら,認識や目的等の主観的な事情であっても,証拠等をもっ てその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項に当たる。また,本件記述2の文脈においては,安倍首相らの関与の有無についての認識や政権批判の目的の有無は重要な意味を有するというべきであるから,この部分は摘示事実の重要部分に当たるのであって,上記被告飛鳥新社の主張は採用できない。 そうすると,本件摘示事実2について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述2による名 って,上記被告飛鳥新社の主張は採用できない。 そうすると,本件摘示事実2について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述2による名誉毀損が成立する。 ウ本件記述3について前記のとおり,本件記述3は,本件摘示事実3を摘示したものと認めら れるところ,被告らは,本件記述3について,摘示事実の真実性及び相当 性を主張する。 そこで検討するに,証拠(乙7)によれば,「徹底解剖安倍友学園のアッキード事件」と題する書籍に,C市議が執筆した部分が存在すること,この部分に,①C市議が報道機関各社に森友問題について情報提供をしたものの,②大手の報道機関にとって森友問題は具体的な動きや出来事がな ければ報道しづらいものであったこと,③そのため,C市議が2月8日に大阪地方裁判所に不開示処分の取消しを求める行政訴訟を提起し,その記者会見を行ったところ,④NHKが同日の夕方と夜にこれを報道し,朝日新聞が翌日の朝刊で大きくこれを報道したなどの経緯の記述があることが認められるが,上記執筆部分には,C市議が原告から助言を受けたとの記 述はない。 被告Yは,C市議が朝日新聞の記者から助言を得て訴えを提起したことを認めていた旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はないし,当のC市議が報道機関からの助言や働きかけを否定する陳述書(甲47)を作成している。被告Yが,他社の記者から,C市議に取材した際に「そういう 話だった」と聞いた旨の被告Y本人の供述(被告Y本人9頁)は,適確な裏付けを欠くものであって,直ちに採用できない。被告らは,森友問題についての朝日新聞の初報の記事(甲2)が詳細であったなどの事情から,原告が事前に森友問題の報 本人の供述(被告Y本人9頁)は,適確な裏付けを欠くものであって,直ちに採用できない。被告らは,森友問題についての朝日新聞の初報の記事(甲2)が詳細であったなどの事情から,原告が事前に森友問題の報道の準備をしていたことが明らかであると主張するが,かかる事情から原告がC市議に助言をしたとの事実が推認される ともいえない。そうすると,本件摘示事実3が真実であるとは認められない。 また,上記の説示に加え,証拠(甲47,被告Y本人25頁)によれば,被告YがC市議に本件摘示事実3について取材していなかったことに照らすと,被告Yにおいて本件摘示事実3が真実と信ずるについて相当の理由 があるとも認められない。そして,被告飛鳥新社は,本件書籍の取材態度 から,被告Yがしかるべき方法で事実を確認したと信じていた旨主張するが,これをもって,被告飛鳥新社において本件摘示事実3が真実と信ずるについて相当の理由があったとは認められない。 そうすると,本件摘示事実3について真実性又は相当性はいずれも認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述3による名誉毀損が成立する。 エ本件記述4について前記のとおり,本件記述4は,本件摘示事実4を摘示したものと認められるところ,被告らは,本件記述4について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 しかしながら,被告らは,真実性の対象事実として,原告が平成29年2月15日のG議員の質疑と同月17日のH議員の質疑の安倍首相に関係しない部分を報道しなかったとの事実を主張するが,B理事長及びその代理人弁護士の会見を報道しなかったとの事実を主張しない。かえって,後掲各証拠によれば,原告が同月18日の朝日新聞の の安倍首相に関係しない部分を報道しなかったとの事実を主張するが,B理事長及びその代理人弁護士の会見を報道しなかったとの事実を主張しない。かえって,後掲各証拠によれば,原告が同月18日の朝日新聞の朝刊記事(甲4)にお いて民進党のH議員の国会での質疑を報道したこと,同月14日の朝日新聞の朝刊記事(甲3)でB理事長及びその代理人弁護士の会見を報道したことが認められるから,原告が質疑や会見を敢えて全く報道しなかったとは認められない。 なお,被告らは,原告が森友問題の重要な点をほとんど報じていないと 主張する。 しかしながら,本件記述4は,本件書籍の中で本件記述1及び本件記述2を受けて,「ねつ造」を例示するものと位置付けられ,読者に対し,原告が報道する事実を恣意的に選択しているとの印象を与えるものである。 また,その前後の文脈において原告が質疑や会見を報道しなかった理由な いし意図が説明されているのであるから,B理事長らの会見を含め「全く 報道しなかった」ことは摘示事実の重要部分に当たるというべきである。 被告らはこの事実の主張立証責任を免れないのであるから,上記被告らの主張は失当である。 また,本件摘示事実4が前記のとおり「ねつ造」を例示するものと位置付けられることからすれば,本件記述1と同様,原告の主観的事情(原告 が森友問題に係る疑惑に根拠がないとの認識を有していたこと)についての真実性の主張立証が必要であるが,これを認めることができないことは,前記アで説示したとおりである。 そうすると,本件摘示事実4について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述4による名誉毀損が成立する。 オ本件記述5について そうすると,本件摘示事実4について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述4による名誉毀損が成立する。 オ本件記述5について前記のとおり,本件記述5は,本件摘示事実5を摘示したものと認められるところ,被告らは,本件記述5について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,原告が国会でのI議員の質疑とJ理財局長の応答を全く報道しなかったことを認めるに足りる証拠はない。かえって,後掲各証拠によれば,原告は,平成29年3月7日の朝日新聞の朝刊記事(甲5の1,2)において,ゴミの撤去費用として8億円を減額したなどの経緯に係る同月6日のI議員の質疑及びJ理財局長の応答を報道したことが認 められる。 なお,被告らは,I議員の質疑が重視されておらず,本件土地の売却先が森友学園となった経緯や代金が減額された理由に関する質疑の具体的な内容は報道されなかったとして,朝日新聞の記事の内容が国会での質疑の内容とかけ離れていた旨主張するが,本件摘示事実4と同様,「全く報道 しなかった」ことは摘示事実の重要部分に当たるというべきであって,被 告らはこの事実の主張立証責任を免れないのであるから,上記被告らの主張は失当である。 また,本件摘示事実5が前記のとおり「ねつ造」を例示するものと位置付けられることからすれば,本件記述1と同様,原告の主観的事情(原告が森友問題に係る疑惑に根拠がないとの認識を有していたこと)について の真実性の主張立証が必要であるが,これを認めることができないことは,前記アで説示したとおりである。 そうすると,本件摘示事実5について真実性は認められず,上記被告ら と)について の真実性の主張立証が必要であるが,これを認めることができないことは,前記アで説示したとおりである。 そうすると,本件摘示事実5について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述5による名誉毀損が成立する。 カ本件記述6について前記のとおり,本件記述6は,本件摘示事実6を摘示したものと認められるところ,被告らは,本件記述6について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,平成29年3月23日の朝日新聞の朝刊記事(甲6) の3つの各見出しについては,後掲各証拠によれば,B理事長が平成29年3月23日の参議院予算委員会及び衆議院予算委員会において,証人として,上記朝刊記事の3つの見出しと同旨の証言をしたこと(甲6,乙5,6)が認められる一方,これらの各見出しがいずれも虚偽のものであることを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件摘示事実6について真実性は認められず,これと異なる被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述6による名誉毀損が成立する。 キ本件記述7について前記のとおり,本件記述7は,本件摘示事実7を摘示したものと認めら れるところ,被告らは,本件記述7について,摘示事実又は前提事実の真 実性を主張する。 そこで検討するに,被告飛鳥新社は,本件文科省文書について,朝日新聞の記事においては常に影付きの写真で掲載され,あるいは一部を抜粋して論評を加えるという扱いしかされていなかったとして,「文書の内容をほとんど読者に紹介せず,未公開のまま,今日に至っている」と主張する が,この主張事実によっても,本件 れ,あるいは一部を抜粋して論評を加えるという扱いしかされていなかったとして,「文書の内容をほとんど読者に紹介せず,未公開のまま,今日に至っている」と主張する が,この主張事実によっても,本件摘示事実7の重要な部分である原告が「本件区域計画の認定が安倍首相の意向によるものでないと理解できる部分を隠蔽した」との事実が直ちに推認されるものではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。また,被告らは,本件文科省文書のうち「総理からの指示に見える」との記載のある文書(甲14)が安倍首相からの指 示によるものではないと理解できる部分であると主張するが,この部分は,最短の規制改革を前提としたプロセスを踏むという「総理のご意向」を実現する手段として「総理からの指示に見える」ようにするのがよいという趣旨と読むこともできる。少なくとも,被告らの主張する読み方とは異なる読み方が成り立ち得るのであって,本件文科省文書の上記記載から,原 告が安倍首相からの指示が存在しないことを認識しながらこれを隠蔽した(故意に隠した)との事実を推認することはできないというべきである。 そうすると,本件摘示事実7について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述7による名誉毀損が成立する。 ク本件記述8について前記のとおり,本件記述8は,本件摘示事実8を摘示したものと認められるところ,被告飛鳥新社は,本件記述8について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,原告とNHKとのD問題の報道に関する申合せの事 実を認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件摘示事実8について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用でき るに,原告とNHKとのD問題の報道に関する申合せの事 実を認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件摘示事実8について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述8による名誉毀損が成立する。 ケ本件記述9について前記のとおり,本件記述9は,本件摘示事実9を摘示したものと認めら れるところ,これによって原告の社会的評価が低下したとは認められない。 したがって,本件摘示事実9の真実性及び相当性を判断するまでもなく,本件記述9による名誉毀損は成立しない。 コ本件記述10について前記のとおり,本件記述10は,本件摘示事実10を摘示したものと認 められるところ,被告飛鳥新社は,本件記述10について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,原告とNHKとのD問題の報道に関する密議と組織的な情報操作の事実を認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件摘示事実10について真実性は認められず,上記被告 らの主張は採用できない。 したがって,本件記述10による名誉毀損が成立する。 サ本件記述11について前記のとおり,本件記述11は,本件摘示事実11を摘示したものと認められるところ,被告らは,本件記述11について,摘示事実又は前提事 実の真実性を主張する。 そこで検討するに,被告らは,本件摘示事実11のうち,「①D問題は原告のねつ造した虚偽の事実である」との事実及び②「原告が,確信をもって虚偽の事実を報道し続けた」との事実について,原告の主観的事情(原告がD問題に係る疑惑に根拠がないとの認識を有していたこと)につ いて た虚偽の事実である」との事実及び②「原告が,確信をもって虚偽の事実を報道し続けた」との事実について,原告の主観的事情(原告がD問題に係る疑惑に根拠がないとの認識を有していたこと)につ いての真実性の主張立証が必要であるが,これを認めることができないこ とは,前記アで説示したとおりである。 また,被告らは,本件摘示事実11のうち,「③原告が,D問題について,F元事務次官の供述のみに依拠して報道を続けた」との事実について,当事者ないし関係者に対する取材がほとんど行われていない,見出しにF元事務次官の発言が群を抜いて多い旨主張する。しかしながら,「F一人 の証言だけで」の部分を関係者にほとんど取材しなかったことを誇張する表現ということはできないことは前記のとおりである。また,F元事務次官については,その供述の信用性について格別の説明が加えられているから,本件記述11の文脈において,F元事務次官その人の供述のみに依拠していたことが重要な意味を持つのであって,この部分は摘示事実の重要 な部分に当たるものというべきである。結局,被告らの主張は,上記③の摘示事実の真実性を主張するものといえず,失当というべきである。 そうすると,本件摘示事実11について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述11による名誉毀損が成立する。 シ本件記述12について前記のとおり,本件記述12は,本件摘示事実12を摘示したものと認められるところ,被告らは,本件記述12について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,被告Yは,①原告がE副長官の言い分を考慮しなか ったとの事実について,原告が同人に対する取材をして 件記述12について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,被告Yは,①原告がE副長官の言い分を考慮しなか ったとの事実について,原告が同人に対する取材をしていなかったと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。かえって,後掲各証拠によれば,平成29年6月16日の朝日新聞の朝刊記事(甲41)に同人の言い分として「E氏は否定」との見出しと,同人が記者団に対して「指示を出したことはなく,文科省が公表したメールの内容は事実に反する」と述べ たことが,同日の朝日新聞の夕刊記事(甲42)に同人の発言骨子が,同 月17日の朝日新聞の朝刊記事(甲43)に「修正指示→E氏は否定」の見出しと同人が「指示したことはない」と述べたことが,それぞれ掲載された事実が認められるから,原告がE副長官の言い分を考慮せずに報道内容から殊更に除外したとは認め難い。なお,被告飛鳥新社は,上記各記事がE副長官の言い分が虚偽であるかのような構成になっていることをもっ て「度外視」に当たると主張するが,「度外視」という語の通常の意味(考慮の範囲外とみなすこと,問題にしないこと)に照らし,かかる主張は採用し難い。 また,②原告が虚偽の文書を使用してE副長官を批判していたとの事実については,これを認めるに足りる証拠がない。 被告らは,文部科学省がE副長官に対して10月21日付け文書について謝罪したこと,11月1日付けメールの記載内容の真偽については,文部科学省が何も述べておらず,内閣府がこれを虚偽としていることから,メールが虚偽の文書に当たると主張するが,かかる事情のみから直ちに当該メールの記載内容が虚偽であることを認めるに足りず,少なくとも原告 がこれを認識していたなどの事実は認め していることから,メールが虚偽の文書に当たると主張するが,かかる事情のみから直ちに当該メールの記載内容が虚偽であることを認めるに足りず,少なくとも原告 がこれを認識していたなどの事実は認められない。 そうすると,本件摘示事実12について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述12による名誉毀損が成立する。 ス本件記述13について 前記のとおり,本件記述13は,本件摘示事実13を摘示したものと認められるところ,被告らは,本件記述13について,摘示事実又は前提事実の真実性を主張する。 そこで検討するに,「原告が本件文科省文書のうち『総理のご意向』との記載以外の部分を殊更に隠蔽した」との事実を認めるに足りる証拠はな い。 そうすると,本件摘示事実13について真実性は認められず,これと異なる被告らの主張は採用できない。 したがって,本件記述13による名誉毀損が成立する。 セ本件表題について前記のとおり,本件表題は,前記1アないしスで認定した本件書籍の 本文における摘示事実等を前提として,「原告の森友問題及びD問題についての報道が,戦後最大級の『報道犯罪』である」との意見ないし論評を表明したものと認められる。 被告Yは,本件表題の前提事実の一端として,朝日新聞が,森友問題を安倍首相の問題として位置付ける事件の構図に合わないという理由で,森 友問題に係る国会での最初の質疑を報じず,H議員の質疑を報じた記事(甲4)を安倍首相の答弁を中心に構成するなど,自ら設定した事件の構図に従って報道し,読者を誘導するとの点を挙げる。 しかしながら,朝日新聞 の最初の質疑を報じず,H議員の質疑を報じた記事(甲4)を安倍首相の答弁を中心に構成するなど,自ら設定した事件の構図に従って報道し,読者を誘導するとの点を挙げる。 しかしながら,朝日新聞が質疑を報じなかった理由が「森友問題を安倍首相の問題として位置付ける事件の構図に合わない」からであったことに ついては,これを認めるに足りる証拠がない。このほか,本件表題の前提事実である前記1アないしスで認定した摘示事実について真実性の立証を欠くことは,前記アないしスで説示したとおりである。通常,表題は書籍の全体を表すことから,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,本件表題は本件書籍の全体を表すものと考えられる。本件摘示事実1及び本 件摘示事実2(ねつ造,虚報,政権批判を目的とした疑惑の創作)は,本件書籍の全体を貫く主要な主張であると理解でき,本件表題は,少なからず反社会的な意味を有する「報道犯罪」との語を用いている。そうすると,結果等の客観的な事情のみならず認識や目的等の主観的な事情を含む本件摘示事実1及び本件摘示事実2が,本件表題の意見ないし論評の前提事実 の重要な部分となっているものと認められる。 そうすると,本件表題の前提事実の重要な部分について真実性は認められず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件表題による名誉毀損が成立する。 ソ本件献辞について前記のとおり,本件献辞は,前記1アないしスで認定した本件書籍の 本文における摘示事実等を前提として,「原告が『無双の情報ギャング』である」との意見ないし論評を表明したものと認められるところ,本件表題の前提事実である前記1アないしスで認定した摘示事実について真実性の立証を欠くことは,前記アな ,「原告が『無双の情報ギャング』である」との意見ないし論評を表明したものと認められるところ,本件表題の前提事実である前記1アないしスで認定した摘示事実について真実性の立証を欠くことは,前記アないしスで説示したとおりである。 被告Yは,その前提事実として,朝日新聞が森友問題及びD問題を偏重 して報道したと主張するが,反社会的な意味を有する「ギャング」(組織的暴力団又はその一員)との語を用いていることからすると,単に報道内容の偏りを評したものにとどまるとは認め難い。「報道ギャング」との語については,本件書籍にその説明はみられないものの,前後の文脈をも踏まえ,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,本件表題における「報 道犯罪」を受けて,原告が「報道犯罪(ねつ造,虚報,政権批判を目的とした疑惑の創作)を行う組織ないし集団である」と評するものと理解できるから,本件表題と同様,本件摘示事実1及び本件摘示事実2が前提事実の重要な部分になるものと認められる。 そうすると,本件献辞の前提事実の重要な部分について真実性は認めら れず,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件献辞による名誉毀損が成立する。 3 謝罪広告の要否及び損害額(争点4)について本件書籍は,政治的スキャンダルとして広く報道された森友問題及びD問題が,原告のねつ造によるものであったというものであるところ,かかる批判は, 原告の報道姿勢を主要な対象としたものであって,原告の報道内容に対する疑 念を生じさせ得るものといえるから,原告の報道機関としての名誉及び信用を直接的に毀損する内容といえる。本件書籍の広告が他紙に掲載され,本件書籍の発行部数が約9万5000部に及ぶこと(弁論の全趣旨)に鑑みると させ得るものといえるから,原告の報道機関としての名誉及び信用を直接的に毀損する内容といえる。本件書籍の広告が他紙に掲載され,本件書籍の発行部数が約9万5000部に及ぶこと(弁論の全趣旨)に鑑みると,相当多数の読者が本件書籍ないしは本件各記述を目にしたものと認められる。そうすると,本件書籍の出版によって原告に生じた損害は小さくないといえる。 しかしながら,本件書籍が出版されたことによって,原告に苦情が多数寄せられた,あるいは取材が困難になったなどといった事情はうかがわれず,原告の報道機関としての信用に重大な影響があったとまでは認められない。加えて,本件書籍が朝日新聞と対照的な政治的立場を鮮明にしていることからすると,本件書籍と朝日新聞とでは,想定される読者層が異なるものと推認される。 その他,本件に顕われた一切の事情を考慮すると,名誉を回復するのに適当な処分として謝罪広告を命ずることが相当とまでは認められず,本件書籍の出版によって原告が被った損害は200万円と認めるのが相当である。 4 訴権の濫用(争点1)について被告らは,本件訴えが訴権を濫用するものとして却下されるべきであると主 張する。 そこで検討するに,原告は,全国紙を発行する国内有数の報道機関として社会的な影響力を有するものといえるし,朝日新聞の紙面上で本件書籍の主張に対する反論を掲載することもできるのに対し,被告らにとって応訴に負担が伴うことも否定できない。 しかしながら,原告が国内有数の報道機関であるからといって,直ちに名誉毀損を原因とする損害賠償の請求が妨げられるべきとはいえないし,紙面上で根拠を示して反論することができるからといって,直ちにそれを選択しなければならないことにはならない。 また, 直ちに名誉毀損を原因とする損害賠償の請求が妨げられるべきとはいえないし,紙面上で根拠を示して反論することができるからといって,直ちにそれを選択しなければならないことにはならない。 また,原告の請求を一部認容すべきことは前記1から3までにおいて説示し たとおりであり,原告が,本件書籍について,公共性,公益目的及び真実性又 は相当性の要件を充足し,請求が認容される余地のないものであることを認識しながら,批判的言論を抑圧するために敢えて本件訴えを提起したなど,本件訴えが裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く事情はうかがわれない。 被告らは,原告が本件書籍の売上を減少させることを目的として本件訴えを 提起したと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,上記被告らの主張は採用できない。 したがって,本件訴えの提起が訴権の濫用に当たるとは認められない。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,被告らに対し,連帯して200万円及びこれ に対する平成30年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余の部分は理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第24部 裁判長裁判官五十嵐章裕 裁判官中村英晴 裁判官中根佑一朗 (別紙)謝罪広告目録 1 謝罪広告 佑一朗 (別紙)謝罪広告目録 1 謝罪広告おわびY著・株式会社飛鳥新社発行の書籍「徹底検証『森友・D事件』朝日新聞に よる戦後最大級の報道犯罪」は,森友学園問題及びD学園問題に関する朝日新聞の報道について,「虚報」「ねつ造」などと記載し,記者が取材で入手したD学園に関する文部科学省の記録文書について「安倍の関与を想像させる部分以外は,文書内容をほとんど読者に紹介せず「『総理の意向』でないことが分かってしまう部分を全て隠蔽して報道し続けた」と記載し,また,D学園問題 報道について記者がNHK幹部と密議をし組織的な情報操作を行ったと記載するなどしました。しかし,いずれも事実に反するものでした。 訂正するとともに,貴社の名誉・信用を著しく傷つけたことにつき,深くお詫びいたします。 年月日 Y株式会社飛鳥新社代表取締役 K株式会社朝日新聞社代表取締役 L 様 2 掲載条件 年月日は,広告掲載日を記載する。 謝罪広告の位置及び大きさは,社会面記事下,横9cm,縦2段とする。 見出し及び本文が掲載できる範囲で最大の活字を用いる。 以上 以上
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