平成20(わ)4375 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
平成21年1月16日 大阪地方裁判所
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判決文本文4,870 文字)

主文 被告人を懲役16年に処する。 未決勾留日数中130日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,Aと共謀の上,内縁の夫B(当時36歳)を殺害しようと企て,Aにおいて,平成20年4月13日午前8時27分ころ,大阪府東大阪市ab丁目c番d号付近路上で,普通乗用自動車を運転し,対向車線上を同方向に歩行していたBに後方から接近し,自車を時速約60キロメートルに加速して,自車前部を同人の背後から衝突させ,同人を跳ね上げて自車のフロントガラスに激突させた後,路上に転倒させ,よって,そのころ,同所において,同人を頭蓋骨骨折等による外傷性くも膜下出血により死亡させて殺害した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示所為は刑法60条,199条に該当するところ,所定刑中有期懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役16年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中130日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 本件における事実経過(1)被告人は22歳のころ,前の夫と結婚し,二人の子供をもうけたが,夫との折り合いが悪くなり,平成15年5月別居した。平成16年5月ころ,子供たちと一緒に東大阪市のアパートに入居した。その際,電器店で電気製品を買ったが,店員として担当したのがBであり,被告人はBと交際を始めた。前の夫とは離婚した。 被告人は,Bと交際を続け,同年11月,上記の被告人方にBが入って一緒に住むようになった。Bとの間では結婚の話も出ていたが,同人のギャンブル好きのことなどもあって,入籍するには至らなかった。 Bは,収入が減ってきたことからコンビニ店をやることを考え,平成18年5月から大阪市e区でコンビニ店を始め,被告人も副 出ていたが,同人のギャンブル好きのことなどもあって,入籍するには至らなかった。 Bは,収入が減ってきたことからコンビニ店をやることを考え,平成18年5月から大阪市e区でコンビニ店を始め,被告人も副店長となり,アルバイト店員も雇って経営を始めた。Bは週末は電気店の仕事をしていた。 ,(2)平成18年9月,Aが,コンビニ店の夜勤アルバイトとして応募してきて同店で働くようになった。 Bと被告人は,Aを自宅に招くなど親しい間柄になったが,被告人がAにBについての愚痴をこぼし,Aに相談に乗ってもらっているうちに,Aに好意を持って交際するようになり,平成19年3月からは,男女の関係となった。 被告人は,Aから,Bと別れるように言われ,Aと一緒になり,Bと別れようと考えるに至り,コンビニ店をやめた4月末に,Bを自宅から閉め出した。Bは実家に戻った。Aが被告人方に入って半同居生活をするようになった。ところが,Aの怒りっぽさを知り,Bがやり直したいというのを受け入れ,6月にはBが被告人方に戻ることになった。Aは自分のマンションに戻っていった。それでもなお,被告人はAとの関係を続けており,このころ,Bが,被告人とAの関係を知るに至った。 被告人は,Bに対し,Aとは別れると話す一方,Aに対してはBと別れてAと一緒)。 になると話していた。7月,被告人は子供を出産した(Bはその子供を認知した9月,被告人はBから「Aを呼べ」と言われてAに連絡し,やってきたAがBから暴行を受けるということがあった。そのとき,Aから,自分のマンションへ来るように言われたが,被告人はBと別れるつもりはなく,Aのマンションへは行かなかった。 Aから,知り合いの暴力団組員に頼んで,Bを拉致して脅迫し,被告人と別れるようにし向ける話をされ,更には,殺し屋にBを殺してもらうことを頼む話をして るつもりはなく,Aのマンションへは行かなかった。 Aから,知り合いの暴力団組員に頼んで,Bを拉致して脅迫し,被告人と別れるようにし向ける話をされ,更には,殺し屋にBを殺してもらうことを頼む話をしてきた。被告人は,Aに対しては,Bと別れたいのに別れてくれないとしていたため, Aに話を合わせていたが,怖くなって中止を求め,結局,この話は,Aが先方にキャンセルしたということで終わった。 (3)平成20年1月,被告人は自分が妊娠していることに気付いた。Bとの間の子供であると考えたが,Aに対してはAとの間の子供であると話した。BとAはいずれも被告人が出産することを望んだが,被告人は,Bとの生活を続けようと考え,4人の子供を育てるのは大変だと判断して,中絶することとし,3月初め,中絶手術を受けた。 Bが中絶手術を受ける身を心配してくれず,手術後も「勝手に手術したのはお前だ」などと言われて,被告人は腹を立て,それまでの3人の関係を清算し,Aと一緒になろうと考えるに至った。そこで,被告人は,Aに「掃除屋さん(殺害を請け負う者のこと)を頼めないか」という話を持ちかけた。 ,,Aは「以前に殺し屋を怒らせたのでもう頼むことはできない」と答えていたが数日後,自分でBを殺害すると言ってきた。被告人はその話を受け入れて賛成し,Aとの間でBを殺害する方法について相談を始めた。 Aは,交通事故に見せかけて殺害するという話を始め,Bが使っている自動車のタイヤのねじを外すなどの工作をしたが,Bは事故を起こすには至らなかった。AがBの車に細工するために,被告人は,Bの車のカギをAに渡している。3月末には,Bは通勤に自動車を使わなくなった。 (4)4月に入り,Aから,道路を歩いているBを自動車で跳ねて殺害し,そのまま逃げるという方法を提案され,被告人も賛成した。 Aは をAに渡している。3月末には,Bは通勤に自動車を使わなくなった。 (4)4月に入り,Aから,道路を歩いているBを自動車で跳ねて殺害し,そのまま逃げるという方法を提案され,被告人も賛成した。 Aは,4月5日及び6日,Bを跳ねて殺すために被告人方の近くでBを待ち伏せたが,Bが帰ってこなかったり,待ち伏せている道を通らなかったりしたため,計画を実行することができなかった。 4月12日夜も,AがBを待ち伏せた。被告人もBから帰るとの連絡があったことをAにメールしたものの,結局,Bが他の者に車で送ってもらって帰ってきたため,計画を実行することができなかった。 Bが帰宅した後も,被告人は,Aと直接会ったり,メールで連絡を取り合うなどし,Aから,その晩は自動車内で寝て待機し,翌朝,Bが出掛けるのを待つとの連絡を受けた。 (5)被告人は,翌13日朝,Aとの間でメールを交換しており,午前8時26分,Bが家を出た後「今いったわ」とのメールを送った。 ,Aは,被告人方近くの路上で車に乗って待ち伏せていたが,被告人からのメールを受け,その直後に道路に出てきたBの姿を認め,その後をつけ,速度を上げて近付き,Bに衝突させて跳ねた。 (6)被告人は,Aからかかってきた電話で,計画を実行したと聞いた。Bは病院に運ばれたが,即死の状態であった。Bが跳ねられたのは交通事故として取り扱われ,被告人は,交通事故被害者の家族を装って行動していた。Bの遺体に対面した後,Aに「Bが死んだ」旨のメールを送っている。 Bの仮通夜の日に,Aが被告人方に来て,一緒に住むようになった。 7月14日に逮捕されて以降は,率直に事実関係を供述している。 なお,被告人は,Aとの間の子を妊娠していたが,本件で勾留中の10月,中絶手術を受けている。 (7)弁護人は,本件犯行に至る経緯において,終始 4日に逮捕されて以降は,率直に事実関係を供述している。 なお,被告人は,Aとの間の子を妊娠していたが,本件で勾留中の10月,中絶手術を受けている。 (7)弁護人は,本件犯行に至る経緯において,終始Aが主導しており,被告人は,Aの犯行計画は冗談半分であると考え,現実的なものとしてとらえていなかったという側面がある,と主張する。 上記の経緯を見ると,Bを殺害する話は,Aと被告人のそれぞれの心情の変化に伴って形を変えながら進んでいたのであるが,3月の妊娠中絶の後は被告人からAに働きかける形になった。AがBの自動車に細工をするために,被告人は,自動車のカギを渡したりしている。4月に入ってからは,Aが道路を歩いているBを自動車で跳ねるという方法として具体的なものになり,被告人は,待ち伏せをしているAに,Bの行動をメールで伝えることをした。4月12日の夜,計画が実行できなかった際に,Bが浮気している証拠をつかんでBと別れるとか,弁護士に入っても らうなどの話がメールのやりとりの中に出てきており,この時点でなお,殺害計画を回避できれば回避したいとの思いがあったことも事実であるが,結局,翌13日朝に殺害の機会をうかがうことにし,実際に13日朝,待ち伏せているAに対し,「Bが家を出た」旨のメールを送った。本件犯行において,被告人がBを殺害することに深くかかわり,重要な役割を果たしたことは否定しようがない。被告人が,Bの殺害を意欲し,そのための行動をしていたことは優に認められる。 被告人は,自動車に対する細工はいたずらにすぎないと思っていたなどと供述するが,被告人は,Aがタイヤのねじを緩めたり,ブレーキを利きにくくしたりすることを事前に知っていた。車にそのような細工を行えば,重大な事故を引き起こしかねないことは容易に想像できることである。 被告人は,Aが 人は,Aがタイヤのねじを緩めたり,ブレーキを利きにくくしたりすることを事前に知っていた。車にそのような細工を行えば,重大な事故を引き起こしかねないことは容易に想像できることである。 被告人は,Aが本当にBを自動車で跳ねて殺害すると思っていなかったとも供述しているが,それまでの経緯やAの言動を踏まえて考えれば,Aが被告人自身との相談の結果,Bを自動車で跳ねて殺害する計画を実行しようとしていることを現実的なものとして認識していたことは明らかである。 被告人に対する量刑被告人は,内縁の夫である被害者を殺害してAと一緒になろうと考えて,Aと共謀の上,被害者を殺害した。その動機に酌量の余地があるはずがない。自動車を加速させ,後方から衝突させるという態様は,非常に危険かつ悪質なものである。被告人らは,事前の打合せに基づき,被害者を待ち伏せた上で,本件犯行を実行したもので,計画的な犯行である。被害者は,被告人がAとの交際を続けることに苦しみ,ときにはけんかをしながらも,被告人との関係を修復しようと努力していたにもかかわらず,幼い娘を残して殺害されたのであって,その無念さは察するに余りある。被害者の遺族らの悲嘆も深く大きい。母親は,被害者を失った悲しみや被告人らに対する憎しみを強く訴え,厳重処罰を求めている。被告人は,遺族に対して謝罪の言葉を述べているが,特段の慰謝の措置は講じていない。殺害の犯行自体はAが実行したものであるにせよ,被害者の行動をメールで知らせるなどしたのは被 告人であり,被告人が担った役割も大きい。 以上によれば,被告人の刑事責任は重大である。 他方,被告人は一応の反省の弁を述べている。これまで道路交通法違反以外に前科はない。母親は公判廷に出廷して被告人のために証言した。 そこで,これら諸般の事情を考慮した上,被告人を主文の刑に処 である。 他方,被告人は一応の反省の弁を述べている。これまで道路交通法違反以外に前科はない。母親は公判廷に出廷して被告人のために証言した。 そこで,これら諸般の事情を考慮した上,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役18年)平成21年1月16日大阪地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官秋山敬裁判官栗原保裁判官荒井格

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