- 1 -主文本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告代理人斉藤驍ほかの上告受理申立て理由(原告適格に係る所論に関する部分を除く。)について第1事案の概要等 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)建設大臣は,昭和39年12月16日付けで,旧都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基づき,世田谷区喜多見町(喜多見駅付近)を起点とし,葛飾区上千葉町(綾瀬駅付近)を終点とする東京都市計画高速鉄道第9号線(昭和45年の都市計画の変更以降の名称は「東京都市計画都市高速鉄道第9号線」である。)に係る都市計画(以下「9号線都市計画」という。)を決定した。 (2)被上告参加人は,9号線都市計画について,都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)21条2項において準用する同法18条1項に基づく変更を行い,平成5年2月1日付けで告示した(以下,この都市計画の変更を「平成5年決定」という。)。平成5年決定は,小田急小田原線(以下「小田急線」という。)の喜多見駅付近から梅ヶ丘駅付近までの区間(以下「本件区間」という。)について,成城学園前駅付近を掘割式とするほかは高架式を採用し,鉄道と交差する道路とを連続的に立体交差化することを内容とするものであり,小田急線の複々線化とあいまって,鉄道の利便性の向上及び混雑の緩和,踏切における渋滞の解消,一体的な街づくりの実現を図ることを目的とするものである。 - 2 -(3)平成5年決定がされた経緯等は,次のとおりである。 ア東京都は,9号線都市計画に係る区間の一部である小田急線の喜多見駅から東北沢駅までの区間において,踏切の遮断による交通渋滞や市街地の分断により日常生活の快適性や安全性が阻害される一方,鉄道の車内混雑が深刻化しており,鉄道の輸 る区間の一部である小田急線の喜多見駅から東北沢駅までの区間において,踏切の遮断による交通渋滞や市街地の分断により日常生活の快適性や安全性が阻害される一方,鉄道の車内混雑が深刻化しており,鉄道の輸送力が限界に達しているとして,上記区間の複々線化及び連続立体交差化に係る事業の必要性及び緊急性について検討するため,昭和62年度及び同63年度にわたり,建設省の定めた連続立体交差事業調査要綱(以下「本件要綱」という。)に基づく調査(以下「本件調査」という。)を実施した。 本件要綱は,連続立体交差事業調査において,鉄道等の基本設計に当たって数案を作成して比較評価を行うものとし,その評価に当たっては,経済性,施工の難易度,関連事業との整合性,事業効果,環境への影響等について比較するものとしている。 本件調査の結果,成城学園前駅付近については掘割式とする案が適切であるとされるとともに,環状8号線と環状7号線の間については,高架式とする案が,一部を地下式とする案に比べて,工期・工費の点で優れており,環境面では劣るものの,当該高架橋の高さが一般的なものであり,既存の側道の有効活用などでその影響を最小限とすることができるので,適切な案であるとされた。 なお,本件調査の結果,本件区間の東側に当たる環状7号線と東北沢駅の間(以下「下北沢区間」という。)の構造については,地表式,高架式,地下式のいずれの案にも問題があり,その決定に当たっては新たに検討する必要があるとされたが,平成5年決定に係る9号線都市計画においては,従前どおり地表式とされた。 もっとも,その後,東京都の都市計画局長は,平成10年12月,都議会におい- 3 -て,下北沢区間の線路の増加部分を地下式で整備する案を関係者で構成する検討会に提案して協議を進めている旨答弁し,東京都は,同13年4月,下北沢 市計画局長は,平成10年12月,都議会におい- 3 -て,下北沢区間の線路の増加部分を地下式で整備する案を関係者で構成する検討会に提案して協議を進めている旨答弁し,東京都は,同13年4月,下北沢区間を地下式とする内容の計画素案を発表した。 イ被上告参加人は,本件調査の結果を踏まえた上で,本件区間の構造について,①嵩上式(高架式。ただし,成城学園前駅付近を一部掘割式とするもの。以下「本件高架式」という。),②嵩上式(一部掘割式)と地下式の併用(成城学園前駅付近から環状8号線付近までの間を嵩上式(一部掘割式)とし,環状8号線付近より東側を地下式とするもの),③地下式の三つの方式を想定した上で,計画的条件(踏切の除却の可否,駅の移動の有無等),地形的条件(自然の地形等と鉄道の線形の関係)及び事業的条件(事業費の額)の三つの条件を設定して比較検討を行った。その結果,上記③の地下式を採用した場合,当時の都市計画で地表式とされていた下北沢区間に近接した本件区間の一部で踏切を解消することができなくなるほか,河川の下部を通るため深度が大きくなること等の問題があり,上記②の方式にも同様の問題があること,本件高架式の事業費が約1900億円と算定されたのに対し,上記③の地下式の事業費は,地下を2層として各層に2線を設置する方式(以下「2線2層方式」という。)の場合に約3000億円,地下を1層として4線を並列させる方式の場合に約3600億円と算定されたこと等から,被上告参加人は,本件高架式が上記の3条件のすべてにおいて他の方式よりも優れていると評価し,環境への影響,鉄道敷地の空間利用等の要素を考慮しても特段問題がないと判断して,これを本件区間の構造の案として採用することとした。 なお,上記の事業費の算定に当たっては,昭和63年以前に取得済みの用地に係 への影響,鉄道敷地の空間利用等の要素を考慮しても特段問題がないと判断して,これを本件区間の構造の案として採用することとした。 なお,上記の事業費の算定に当たっては,昭和63年以前に取得済みの用地に係る取得費は算入されておらず,高架下の利用等による鉄道事業者の受益分も考慮さ- 4 -れていない。また,2線2層方式による地下式の事業費の算定に当たっては,シールド工法(トンネルの断面よりわずかに大きいシールドという強固な鋼製円筒状の外殻を推進させ,そのひ護の下で掘削等の作業を行いトンネルを築造する工法)による施工を本件区間全体にわたって行うことは前提とされていないが,被上告参加人は,途中の経堂駅において準急線と緩行線との乗換えを可能とするために,1層目にホーム2面及び線路数3線を有する駅部を設置することを想定しており,そのために必要なトンネルの幅は約30mであったところ,平成5年当時,このような幅のトンネルをシールド工法により施工することはできなかった。 ウ上記のように本件高架式が案として選定された本件区間の複々線化に係る事業及び連続立体交差化に係る事業について,それぞれの事業の事業者であるA株式会社及び東京都は,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年東京都条例第107号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)に基づく環境影響評価に関する調査を行い,平成3年11月5日,環境影響評価書案(以下「本件評価書案」という。)を被上告参加人に提出した。本件評価書案によれば,本件高架式を前提として工事完了後の鉄道騒音について予測を行ったところ,地上1.2mの高さでの予測値は,高架橋端からの距離により現況値を上回る箇所も見られるが,高架橋端から6.25mの地点で現況値が82から93ホンのところ予測値が75から77ホンとさ を行ったところ,地上1.2mの高さでの予測値は,高架橋端からの距離により現況値を上回る箇所も見られるが,高架橋端から6.25mの地点で現況値が82から93ホンのところ予測値が75から77ホンとされるなど,おおむね現況とほぼ同程度かこれを下回っているとされている。 本件評価書案に対し,被上告参加人は,鉄道騒音の予測位置を騒音に係る問題を最も生じやすい地点及び高さとすること,騒音防止対策の種類とその効果の程度を明らかにすること等の意見を述べ,これを受けて,東京都及びA株式会社は,予測- 5 -地点の1箇所につき高架橋端から1.5mの地点における高さ別の鉄道騒音の予測に関する記載を付加した環境影響評価書(以下「本件評価書」という。)を同4年12月18日付けで作成し,被上告参加人に提出した。本件評価書によれば,上記地点における鉄道騒音の予測値は,地上10mから30mの高さで88ホン以上,地上15mの高さでは93ホンであるが,事業実施段階での騒音防止対策として,構造物の重量化,バラストマットの敷設,60kg/mレールの使用,吸音効果のある防音壁の設置等の対策を講じるとともに,干渉型の防音装置の設置についても検討し,騒音の低減に努めることとされ,これらによる騒音低減効果は,バラストマットの敷設により軌道中心から6.25mの地点で7ホン,60㎏/mレールの使用により現在の50㎏/mレールと比べて軌道中心から23mの地点で5ホン,吸音効果のある防音壁により防音壁だけの場合に比べ1ホン程度,防音壁に干渉型防音装置を設置した場合3ないし4ホンであるとされている。 以上の環境影響評価は,東京都環境影響評価技術指針が定める環境影響評価の手法を基本とし,一般に確立された科学的な評価方法に基づいて行われた。 なお,高架橋より高い地点での現実の騒音値は,線路部分に 。 以上の環境影響評価は,東京都環境影響評価技術指針が定める環境影響評価の手法を基本とし,一般に確立された科学的な評価方法に基づいて行われた。 なお,高架橋より高い地点での現実の騒音値は,線路部分において生じる騒音が走行する列車の車体に遮られることから,上記予測値のような実験値よりも低くなるとされている。また,平成5年決定当時の鉄道騒音に関する唯一の公的基準であった「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」(昭和50年環境庁告示第46号)においては,騒音を測定する高さは地上1.2mとされていた。 一方,小田急線の沿線住民らは,小田急線による鉄道騒音等の被害について,平成4年5月7日,公害等調整委員会に対し,公害紛争処理法42条の12に基づく責任裁定を申請し,同委員会は,同10年7月24日,申請人の一部が受けた平成- 6 -5年決定以前の騒音被害が受忍限度を超えることを前提として,A株式会社の損害賠償責任を認める旨の裁定をした。 エ被上告参加人は,本件調査及び上記の環境影響評価を踏まえ,本件高架式を採用することが周辺地域の環境に与える影響の点でも特段問題がないと判断して,本件高架式を内容とする平成5年決定をした。 オ東京都は,公害対策基本法19条に基づき,東京地域公害防止計画を定めていたところ,平成5年決定は,その目的,内容において同計画の妨げとなるものではなく,同計画に適合している。 (4)建設大臣は,都市計画法(平成11年法律第160号による改正前のもの)59条2項に基づき,平成6年5月19日付けで,東京都に対し,平成5年決定により変更された9号線都市計画を基礎として,本件区間の連続立体交差化を内容とする別紙事業認可目録1記載の都市計画事業(以下「本件鉄道事業」という。)の認可(以下「本件鉄道事業認可」という。)をし,同6年6月3日 た9号線都市計画を基礎として,本件区間の連続立体交差化を内容とする別紙事業認可目録1記載の都市計画事業(以下「本件鉄道事業」という。)の認可(以下「本件鉄道事業認可」という。)をし,同6年6月3日付けでこれを告示した。 また,建設大臣は,世田谷区が同5年2月1日付けで告示した東京都市計画道路・区画街路都市高速鉄道第9号線付属街路第9号線及び第10号線に係る各都市計画を基礎として,同項に基づき,同6年5月19日付けで,東京都に対し,上記各付属街路の設置を内容とする別紙事業認可目録2及び3記載の各都市計画事業の認可(以下「本件各付属街路事業認可」という。)をし,同年6月3日付けでこれを告示した。上記各付属街路は,本件区間の連続立体交差化に当たり,環境に配慮して沿線の日照への影響を軽減すること等を目的として設置することとされたものである。 - 7 - 本件は,本件鉄道事業認可の前提となる都市計画に係る平成5年決定が,周辺地域の環境に与える影響,事業費の多寡等の面で優れた代替案である地下式を理由もなく不採用とし,いずれの面でも地下式に劣り,周辺住民に騒音等で多大の被害を与える本件高架式を採用した点で違法であるなどとして,建設大臣の事務承継者である被上告人に対し,上告人らが本件鉄道事業認可の,別紙上告人目録2記載の上告人らが別紙事業認可目録2記載の認可の,別紙上告人目録3記載の上告人らが別紙事業認可目録3記載の認可の,各取消しを求めている事案である。 第2本件鉄道事業認可の取消請求について 平成5年決定が本件高架式を採用したことによる本件鉄道事業認可の違法の有無について(1)都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)は,都市計画事業認可の基準の一つとして,事業の内容が都市計画に適合することを掲げているから(61 認可の違法の有無について(1)都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)は,都市計画事業認可の基準の一つとして,事業の内容が都市計画に適合することを掲げているから(61条),都市計画事業認可が適法であるためには,その前提となる都市計画が適法であることが必要である。 (2)都市計画法は,都市計画について,健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条),都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならず,当該都市について公害防止計画が定められているときは当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書き),都市施設について,土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市活動を確保し,良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項5号),このような- 8 -基準に従って都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきであって,裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては,当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性 こと等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。 (3)以上の見地に立って検討するに,前記事実関係の下においては,平成5年決定が本件高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとはいえないと解される。その理由は以下のとおりである。 ア被上告参加人は,本件調査の結果を踏まえ,計画的条件,地形的条件及び事業的条件を設定し,本件区間の構造について三つの方式を比較検討した結果,本件高架式がいずれの条件においても優れていると評価し,本件条例に基づく環境影響評価の結果等を踏まえ,周辺地域の環境に与える影響の点でも特段問題がないとして,本件高架式を内容とする平成5年決定をしたものである。 イそこで,上記の判断における環境への影響に対する考慮について検討する。 (ア)前記のとおり,都市計画法は,都市施設に関する都市計画について,健康で文化的な都市生活の確保という基本理念の下で,公害防止計画に適合するととも- 9 -に,適切な規模で必要な位置に配置することにより良好な都市環境を保持するように定めることとしている。公害防止計画は,環境基本法により廃止された公害対策基本法の19条に基づき作成されるものであるが,相当範囲にわたる騒音,振動等により人の健康又は生活環境に係る著しい被害が発生するおそれのある地域について,その発生を防止するために総合的な施策を講ずることを目的とするものであるということができる。また,本件条例は,環境に著しい影響を及ぼす 又は生活環境に係る著しい被害が発生するおそれのある地域について,その発生を防止するために総合的な施策を講ずることを目的とするものであるということができる。また,本件条例は,環境に著しい影響を及ぼすおそれのある一定の事業を実施しようとする事業者が,その実施に際し,公害の防止,自然環境及び歴史的環境の保全,景観の保持等(以下「環境の保全」という。)について適正な配慮をするため,当該事業に係る環境影響評価書を作成し,被上告参加人に提出しなければならないとし(7条,23条),被上告参加人は,都市計画の決定又は変更の権限を有する者にその写しを送付し(24条2項),当該事業に係る都市計画の決定又は変更を行うに際してその内容について十分配慮するよう要請しなければならないとしている(25条)。そうすると,本件鉄道事業認可の前提となる都市計画に係る平成5年決定を行うに当たっては,本件区間の連続立体交差化事業に伴う騒音,振動等によって,事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境に係る著しい被害が発生することのないよう,被害の防止を図り,東京都において定められていた公害防止計画である東京地域公害防止計画に適合させるとともに,本件評価書の内容について十分配慮し,環境の保全について適正な配慮をすることが要請されると解される。本件の具体的な事情としても,公害等調整委員会が,裁定自体は平成10年であるものの,同4年にされた裁定の申請に対して,小田急線の沿線住民の一部につき平成5年決定以前の騒音被害が受忍限度を超えるものと判定しているのであるから,平成5年決定において本件区間の構造を定めるに- 10 -当たっては,鉄道騒音に対して十分な考慮をすることが要請されていたというべきである。 (イ)この点に関し,前記事実関係によれば,①本件区間の複々線化及び連続 本件区間の構造を定めるに- 10 -当たっては,鉄道騒音に対して十分な考慮をすることが要請されていたというべきである。 (イ)この点に関し,前記事実関係によれば,①本件区間の複々線化及び連続立体交差化に係る事業について,本件調査において工期・工費の点とともに環境面も考慮に入れた上で環状8号線と環状7号線の間を高架式とする案が適切とされたこと,②本件高架式を採用することによる環境への影響について,本件条例に基づく環境影響評価が行われたこと,③上記の環境影響評価は,東京都環境影響評価技術指針が定める環境影響評価の手法を基本とし,一般に確立された科学的な評価方法に基づき行われたこと,④本件評価書においては,工事完了後における地上1.2mの高さの鉄道騒音の予測値が一部を除いておおむね現況とほぼ同程度かこれを下回り,高架橋端から1.5mの地点における地上10mないし30mの高さの鉄道騒音の予測値が88ホン以上などとされているものの,鉄道に極めて近接した地点での値にすぎず,また,上記の高さにおける現実の騒音は,走行する列車の車体に遮られ,その値は,上記予測値よりも低くなること,⑤本件評価書においても,騒音防止対策として,構造物の重量化,バラストマットの敷設,60kg/mレールの使用,吸音効果のある防音壁の設置等の対策を講じるとともに,干渉型防音装置の設置も検討することとされ,現実の鉄道騒音の値は,これらの騒音対策を講じること等により相当程度低減するものと見込まれるとされていること,⑥平成5年決定当時の鉄道騒音に関する公的基準は地上1.2mの高さで騒音を測定するものにとどまっていたこと,⑦被上告参加人は,本件調査及び上記の環境影響評価を踏まえ,本件高架式を採用することが周辺地域の環境に与える影響の点でも特段問題がないと判断して,平 高さで騒音を測定するものにとどまっていたこと,⑦被上告参加人は,本件調査及び上記の環境影響評価を踏まえ,本件高架式を採用することが周辺地域の環境に与える影響の点でも特段問題がないと判断して,平成5年決定をしたこと,⑧平成5年決定は,- 11 -東京地域公害防止計画に適合していること等の事実が認められる。 そうすると,平成5年決定は,本件区間の連続立体交差化事業に伴う騒音等によって事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境に係る著しい被害が発生することの防止を図るという観点から,本件評価書の内容にも十分配慮し,環境の保全について適切な配慮をしたものであり,公害防止計画にも適合するものであって,都市計画法等の要請に反するものではなく,鉄道騒音に対して十分な考慮を欠くものであったということもできない。したがって,この点について,平成5年決定が考慮すべき事情を考慮せずにされたものということはできず,また,その判断内容に明らかに合理性を欠く点があるということもできない。 (ウ)なお,被上告参加人は,平成5年決定に至る検討の段階で,本件区間の構造について三つの方式の比較検討をした際,計画的条件,地形的条件及び事業的条件の3条件を考慮要素としており,環境への影響を比較しないまま,本件高架式が優れていると評価している。しかしながら,この検討は,工期・工費,環境面等の総合的考慮の上に立って高架式を適切とした本件調査の結果を踏まえて行われたものである。加えて,その後,本件高架式を採用した場合の環境への影響について,本件条例に基づく環境影響評価が行われ,被上告参加人は,この環境影響評価の結果を踏まえた上で,本件高架式を内容とする平成5年決定を行っているから,平成5年決定が,その判断の過程において考慮すべき事情を考慮しなかったものということはで ,被上告参加人は,この環境影響評価の結果を踏まえた上で,本件高架式を内容とする平成5年決定を行っているから,平成5年決定が,その判断の過程において考慮すべき事情を考慮しなかったものということはできない。 ウ次に,計画的条件,地形的条件及び事業的条件に係る考慮について検討する。 被上告参加人は,本件区間の構造について三つの方式の比較検討をした際,既に- 12 -取得した用地の取得費や鉄道事業者の受益分を考慮せずに事業費を算定しているところ,このような算定方法は,当該都市計画の実現のために今後必要となる支出額を予測するものとして,合理性を有するというべきである。また,平成5年当時,本件区間の一部で想定される工事をシールド工法により施工することができなかったことに照らせば,被上告参加人が本件区間全体をシールド工法により施工した場合における2線2層方式の地下式の事業費について検討しなかったことが不相当であるとはいえない。 さらに,被上告参加人は,下北沢区間が地表式とされることを前提に,本件区間の構造につき本件高架式が優れていると判断したものと認められるところ,下北沢区間の構造については,本件調査の結果,その決定に当たって新たに検討する必要があるとされ,平成10年以降,東京都から地下式とする方針が表明されたが,一方において,平成5年決定に係る9号線都市計画においては地表式とされていたことや,本件区間の構造を地下式とした場合に河川の下部を通るため深度が大きくなるなどの問題があったこと等に照らせば,上記の前提を基に本件区間の構造につき本件高架式が優れていると判断したことのみをもって,合理性を欠くものであるということはできない。 エ以上のほか,所論にかんがみ検討しても,前記アの判断について,重要な事実の基礎を欠き又はその内容が社会通念に照らし著 いると判断したことのみをもって,合理性を欠くものであるということはできない。 エ以上のほか,所論にかんがみ検討しても,前記アの判断について,重要な事実の基礎を欠き又はその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことを認めるに足りる事情は見当たらない。 (4)以上のとおり,平成5年決定が本件高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるということはできないから,これを基礎としてされた本件鉄道事業認可が違法となるということもできな- 13 -い。 本件鉄道事業認可に係るその余の違法の有無について原審の適法に確定した事実関係の下においては,本件鉄道事業認可について,その余の所論に係る違法は認められない。 なお,原判決は,本件鉄道事業認可の取消請求に係る訴えを却下すべきものとしているが,本件各付属街路事業認可の取消請求に関して,前記第1の1の事実関係に基づき,平成5年決定の適否を判断している。原審の判示には,上記説示と異なる点もあるが,原審は,被上告参加人が,本件の環境影響評価の結果を踏まえ,本件高架式の採用が周辺地域の環境に与える影響の点でも特段問題がないと判断したことに不合理な点は認められず,最終的に本件高架式を内容とする平成5年決定を行ったことに裁量権の範囲の逸脱又は濫用はなく,平成5年決定を前提とする本件鉄道事業認可がその他の上告人ら指摘の点を考慮しても適法であると判断しており,この判断は是認することができるものである。 以上によれば,上告人らによる本件鉄道事業認可の取消請求は棄却すべきこととなるが,その結論は原判決よりも上告人らに不利益となり,民訴法313条,304条により,原判決を上告人らに不利益に変更することは許されないので,当裁判所は原判決の結論を維持して上告を棄却するにと ととなるが,その結論は原判決よりも上告人らに不利益となり,民訴法313条,304条により,原判決を上告人らに不利益に変更することは許されないので,当裁判所は原判決の結論を維持して上告を棄却するにとどめるほかはない。 第3本件各付属街路事業認可の取消請求について原審の適法に確定した事実関係の下において,本件各付属街路事業認可に違法はないとした原審の判断は,是認することができ,原判決に所論の違法はない。 第4 結論 以上によれば,論旨はいずれも採用することができない。 - 14 -よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官泉徳治裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官島田仁郎)- 15 -事業認可目録建設大臣がいずれも平成6年5月19日付けで東京都に対してした次の各事業の認可1(1)施行者の名称東京都(2)都市計画事業の種類及び名称東京都市計画都市高速鉄道事業第9号線(3)事業計画の概要第1審判決別紙事業目録1の「事業計画の概要」欄記載のとおり2(1)施行者の名称東京都(2)都市計画事業の種類及び名称東京都市計画道路事業都市高速鉄道事業第9号線付属街路第9号線(3)事業計画の概要第1審判決別紙事業目録6の「事業計画の概要」欄記載のとおり3(1)施行者の名称東京都(2)都市計画事業の種類及び名称東京都市計画道路事業都市高速鉄道事業第9号線付属街路第10号線(3)事業計画の概要第1審判決別紙事業目録7の「事業計画の概要」欄記載のとおり
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