平成14(ワ)3037 保険金請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年4月16日 名古屋地方裁判所
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判決文本文9,701 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,自らを被保険者として被告との間に締結した傷害保険契約に基づき,保険金受取人として自己の受傷による保険金の支払いを請求をしたところ,被告が,上記傷害保険は重複保険契約であり原告には告知義務違反の事実があることを理由に保険契約を解除し,原告に対する保険金の支払いを拒絶したことから,原告が,被告に対し,保険金90万円と弁護士費用金10万円の合計金100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成14年8月2日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを請求する事案である。 1 前提事実(後掲各証拠で認定するほかは,当事者間に争いがない。)(1) 被告は,損害保険業等を目的とする株式会社である。 (2) 原告と被告は,平成13年7月6日,次の内容の傷害保険契約を締結した(以下「本件保険契約」という。)。 ア保険期間平成13年7月6日午後1時より平成14年7月6日午後4時までイ被保険者原告ウ受取人原告エ保険金額傷害による通院の場合,通院1日当たり金1万円(但し,事故の日から180日以内の通院でかつ90日が限度)オ保険料月額金4470円(以下「本件傷害保険」という。)(3) 本件保険契約の普通保険約款(以下「本件約款」という。)には,「保険契約締結の際,保険契約者または被保険者(中略)が故意または重大な過失によって,保険契約申込書の記載事項について,当会社に知っている事実を告げなかったときまた 以下「本件約款」という。)には,「保険契約締結の際,保険契約者または被保険者(中略)が故意または重大な過失によって,保険契約申込書の記載事項について,当会社に知っている事実を告げなかったときまたは不実のことを告げたときは,当会社は,書面により保険証券記載の保険契約者の住所(中略)にあてた通知をもって,この保険契約を解除することができます。ただし,告げなかった事実または告げた不実のことが,身体の傷害に対して保険金を支払うべき他の保険契約または特約(以下「重複保険契約」といいます。)に関する事項である場合には,当会社は,保険契約者または被保険者に故意および重大な過失がなかったときにも,書面により保険証券記載の保険契約者の住所にあてた通知をもって,この保険契約を解除することができます。」(第11条1項),「第1項の規定による解除が傷害の生じた後になされた場合でも,第21条(保険契約解除の効力)の規定にかかわらず,当会社は,保険金を支払いません。(以下略)」(同条第5項)との規定が置かれている(乙3)。 (4) 原告は,平成13年7月2日から同月11日にかけて,本件保険契約を含めて,次の内容の傷害保険契約を締結した(原告本人)。 契約日保険会社通院日額ア同年7月2日  A保険株式会社金1万円イ同年7月5日  B保険会社金1万円ウ同年7月6日  C保険株式会社金1万円エ同年7月6日被告(本件傷害保険) 金1万円オ同年7月11日 D保険株式会社金6000円カ同年7月11日 D保険株式会社金6000円(5) 被告は,原告に対し,平成13年12月29日到達した同月28日付け内容証明郵便により,不実 式会社金6000円カ同年7月11日 D保険株式会社金6000円(5) 被告は,原告に対し,平成13年12月29日到達した同月28日付け内容証明郵便により,不実申告等を理由として本件保険契約を解除する旨の意思表示をした(以下「本件契約解除」という。)(乙4の1,2)。 2 争点(1) 不実申告を理由とする本件保険契約に関する本件契約解除の有効性(被告の主張)ア各保険会社では,ともすると傷害保険が本来の目的を外れて不正に利用されてきた経緯に鑑み,傷害保険の引受限度額を定め,限度額を越える契約の存在が判明したときには,事前に契約を引き受けなかったり,あるいは事後に契約を解消できるように契約約款で定めている。 イ被告の保険代理店を営んでいるE(以下「E」という。)は,平成13年7月6日,原告から本件保険契約の申し込みを受けた際,原告に対し,本件保険契約の保険金額は最高限度であることから他の保険会社に入っていれば被告とは契約できない旨を説明した上,原告から同種の他の保険には入っていないことを確認して本件保険契約の手続を行った。 したがって,原告が不実申告を行って重複契約に関する告知義務に違反した事実は明らかである。 ウ平成13年12月10日に原告からEに対して保険事故の報告があり,保険金の請求をしたいという申し出があった。しかしながら,原告の請求には不明な点があったことから,被告は保険約款に基づき調査を行うことにした。 同月22日に調査員F(以下「F」という。)が調査のために原告と面談したが(以下「本件調査」という。),その際,原告はFからの事情聴取に対し,警察や医療機関から事情聴取するために必要となる原告の同意書(以下「本件同意書」という。)の提出を拒んで被告の調査に対し協力を拒否し,さらに,F 査」という。),その際,原告はFからの事情聴取に対し,警察や医療機関から事情聴取するために必要となる原告の同意書(以下「本件同意書」という。)の提出を拒んで被告の調査に対し協力を拒否し,さらに,Fに対し,「私は,過去3年間の保険金請求,受け取りは一切ありません。他の保険会社との傷害保険契約はありません。保険金,給付金を請求したことは,この事件に関しては他にはありません」と虚偽の事実を述べて(以下「本件発言」という。),不実申告の隠蔽を図っている。 エ原告は,わずか10日間に保険会社5社との間で6本の傷害保険契約を締結しているところ,これら傷害保険の通院日額の合計は金5万2000円にもなるものである。 そして,原告の月額保険料の支払合計は金2万5800円であり,この金額は原告の月収約20万円の約13パーセントにもなる金額であるが,原告のこのような傷害保険の契約方法は,短期に集中し,高額の保険に多数入るというものである上,収入に比べて不釣り合いな保険料を支払うという点において明らかに異常といわなければならない。 原告は,このような多額の保険に入った目的につき,営業に使用していた会社の自動車に十分な保険が付いていなかったからであると述べているが,契約の翌月である平成13年8月3日からは十分な任意保険の付された自分の自動車を使用するようになったのであるから,必要性の薄らいだこのような多額の傷害保険に入り続けることは不合理である。 (原告の主張)ア原告は,本件保険契約を締結した平成13年7月当時,株式会社Gに勤務し,ソーラー温水器の訪問販売を行い,勤務先から営業車を借りて営業活動に回っていたが,ある時,自動車に掛けられている保険は,相手の怪我や車両に対する損害に関し支払われるものの,原告自身の受けた損害については支払われないという 売を行い,勤務先から営業車を借りて営業活動に回っていたが,ある時,自動車に掛けられている保険は,相手の怪我や車両に対する損害に関し支払われるものの,原告自身の受けた損害については支払われないという話を聞いた。このため,原告は,事故などが起きたときに全く補償が受けられないことに不安を抱き,本件保険契約への加入を決めた。 イ被告は,Eが原告に対して他保険に加入していないことを確認した旨主張するが,本件保険契約締結の際,Eと原告との間で他保険加入の話題が出たことはなく,また,原告がEより他保険に加入していないことの確認を受けた事実もない。 ウまた,本件調査の際,原告が本件同意書への署名を拒んだのは,後記記載の保険事故(以下「本件保険事故」という。)の現場において加害者から「元暴力団員で部下もいる。」,「殺人で刑務所にも入っていた。」等と脅されたことから,保険会社による調査が行われた場合に原告が加害者から報復を受けることを恐れたことによるものであって,意図的に調査に非協力的な態度を取ったものではない。 なお,本件調査時において乙第2号証の覚書(以下「本件第1覚書」という。)に記載された本件発言部分は,Fが一方的に記載したものに過ぎず,上記当日において原告が本件発言を行った事実は存在しない。 エ傷害保険契約に関し,重複保険の告知義務に違反した場合に保険契約を解除することができる旨の約款がある場合でも,保険者が上記保険契約を解除できるのは,保険契約者が不法な保険金取得の目的に出た等,解除が社会通念上公平かつ妥当と解される場合に限られるのであり,そのような事情のない本件において本件保険契約を解除することは許されない。 本件では,原告は,既述のとおり本件保険契約に加入する段階でも複数保険に加入していたか否かの確認も,それを怠ると保険契約が解除さ うな事情のない本件において本件保険契約を解除することは許されない。 本件では,原告は,既述のとおり本件保険契約に加入する段階でも複数保険に加入していたか否かの確認も,それを怠ると保険契約が解除されるとの説明も受けていないのであり,また,後日もそのようなことは聞かされていない。 原告は,仮に被告からそのような説明を本件保険契約締結時に受けていたならば,正直に話すつもりであったし,本件保険契約の締結により不当に儲けてやろうというような不正な目的は全くなかった。 傷害保険は,偶然の事故の発生によりその保険金が支払われるものであるから,不正の目的をもって保険金を受領しようとしたならば,自作自演の事故を起こして負傷するか,加害者と共謀して傷害を負うしかないが,本件保険事故は,全く見ず知らずの男による突発的な暴行事件であることは明らかであり,この点からも原告に不正な目的などなかったことは強く推察されるところである。 (2) 本件保険事故の発生の事実及び原告が請求し得る保険金額等(原告の主張)ア平成13年11月15日午後2時30分ころ,名古屋市H区IにあるJ郵便局前において,原告が当時の仕事であった生命保険商品の案内チラシを配布中,Kが突然背後より言い掛かりを付け,原告の髪を掴み,殴打し,また原告の首を絞めるなどしてきた。 このため,原告は,頸部挫傷の傷害を負い,同日から平成14年4月1日までの間,名古屋市L区M町4-6-1所在のN整形外科において延べ108日間にわたり通院治療を受けた。 イ原告は,被告に対し,本件保険契約に基づき保険金の請求を行ったが,被告は本件契約解除を理由に原告の請求に応じなかった。 このため,原告は,訴訟手続によらなければ保険金の支払請求ができなくなり,原告訴訟代理人に委任して本件訴訟を提起せざるを得なくなっ 行ったが,被告は本件契約解除を理由に原告の請求に応じなかった。 このため,原告は,訴訟手続によらなければ保険金の支払請求ができなくなり,原告訴訟代理人に委任して本件訴訟を提起せざるを得なくなったところ,その弁護士費用は日弁連報酬基準に照らすと金10万円を下らない。 (被告の主張)原告の主張は不知ないし争う。 第3 争点に対する判断 1 争点1について(1) 本件約款11条1項において,傷害保険契約の締結に際し,保険契約者又は被保険者(以下「保険契約者等」という。)に対し重複保険契約の事前の告知義務を定め,保険契約者等につき不実の告知が認められた場合には事後においても保険契約を解除できる旨の規定を置いた趣旨は,本件傷害保険が定額給付型の傷害保険であって,保険事故が生じたときにはその具体的な損害額とは無関係に約束された保険金を給付するという特徴により,重複保険契約の締結が一般に保険契約者による保険事故の招致や保険事故の発生の偽装等による不正請求の誘因となり,その危険を増大させる虞れがあることに鑑み,保険者がこのような道徳的危険の強いものかどうかを考慮して当該保険契約の諾否や解除を判断することができるようにすることにあるものと考えられる。 他方,約款が保険契約の当事者の知,不知を問わず,約款によらない旨の特段の合意がない限り,これが当然に契約内容となって当事者を拘束することなどに鑑みると,約款の規定があるからといってその契約上の効果を無条件に認めることは,一般の保険契約者に対して社会通念に照らして相当性を欠く不利益を与える可能性も生ずることから,相当とはいえない。 上記のような観点からすると,保険契約者等において,告知義務の存在を知りながら敢えてその義務を履行せず,あるいは,告知義務の存在を知らなかったことについて重大な過失 ることから,相当とはいえない。 上記のような観点からすると,保険契約者等において,告知義務の存在を知りながら敢えてその義務を履行せず,あるいは,告知義務の存在を知らなかったことについて重大な過失がある場合には,保険者において重複保険の存在を理由に保険契約を解除することができるが,例外的に,保険契約者等において,重複保険契約を締結するに至った経緯,目的等を立証するなどして,当該契約の締結が上記説示した告知義務が設けられた趣旨に抵触するものではないことが立証できた場合には,保険者は保険金の支払いを拒めないものと解するのが相当である。 (2) そこで,まず本件保険契約締結及び本件調査の際の状況について判断するに,証拠(甲6,乙1,2,5,乙6の1,2,乙7,証人E,同F,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められ,原告作成の陳述書(甲6。以下「原告陳述書」という。)の陳述記載及び原告本人の供述中,上記認定に反する部分は採用しない。 ア(ア) 本件保険契約が締結された平成13年7月6日,原告は,傷害保険に加入する目的で被告の名古屋支店を訪れたところ,その場に居合わせた被告の代理店を営むEから来訪の要件を尋ねられた。 これに対し,原告が傷害保険への加入手続を申し出たことから,Eが原告に加入を希望する保険内容を尋ねたところ,原告は,死亡や後遺障害の補償は要らないので,入通院の補償のみが補償対象となった傷害保険に加入したい旨を申し出るとともに,その補償額もできる限り高額のものを希望した。 (イ) 被告の社内手続上,傷害保険契約を締結する場合において入通院のみを補償対象とし死亡及び後遺障害を補償対象としない契約については被告の本部に申請を行いその決裁を得なければならない取り扱いとなっていたことから,Eは,被告名古屋支店の営業第一課長に おいて入通院のみを補償対象とし死亡及び後遺障害を補償対象としない契約については被告の本部に申請を行いその決裁を得なければならない取り扱いとなっていたことから,Eは,被告名古屋支店の営業第一課長に原告の希望内容を伝え,その指示を仰いだところ,同課長からEに対し,飛び込みの顧客であることから慎重に対応すること,そのためにも死亡及び後遺障害も補償対象とする契約にするように指示があった。 (ウ) このため,Eが原告に対し,傷害保険に加入するためには死亡及び後遺障害も補償対象とする必要があることを説明したところ,原告もこれを了解したことから,Eは,原告の希望内容も考慮して,死亡及び後遺障害の保険金を金1000万円,入院日額金1万5000円,通院日額金1万円とする傷害保険への加入を勧めたところ,原告も上記保険内容に同意したことから,同内容の保険契約の加入手続を行うことになった。 (エ) その後,Eは,原告に対し,パンフレットを用いて契約内容の説明を行うとともに,傷害保険契約申込書(乙1)の申込人欄の住所,氏名欄,生年月日等の記入を求めたところ,原告も同申込書の住所,氏名及び生年月日等を記入した上,氏名の末尾に捺印し,同申込書をEに交付した。 同申込書を原告から受け取ったEは,補償内容,掛金などの保険契約内容等を順次記入していったが,その際,原告に対し,上記入通院の保険金の日額が被告における最高限度額であることから,他の保険会社の同種の保険に加入している場合には被告の傷害保険に入ることができないことを告げるとともに,他の保険会社の同種の保険に加入している事実が無いか否かを確認したところ,原告は,そのような事実は無い旨を回答したことから,これを受けて,Eは,上記申込書の告知事項欄の「同種の危険を補償する他の保険契約がありますか」という質問事項に対する 実が無いか否かを確認したところ,原告は,そのような事実は無い旨を回答したことから,これを受けて,Eは,上記申込書の告知事項欄の「同種の危険を補償する他の保険契約がありますか」という質問事項に対する回答欄の「無」という欄に丸印を付した。 イ被告より本件保険事故に関する調査の依頼を受けた株式会社Oの調査員のFは,平成13年12月22日,本件調査のために原告と面談し,原告から本件保険事故の発生状況等について聞き取り調査を行ったが,その際,原告は,Fからの質問に対し,他の保険会社との傷害保険契約を締結した事実は無いこと及び本件保険事故が対象となるような他の保険契約を締結した事実は全く無いこと等を述べた。 以上のとおり認められるところ,上記認定事実に対し,原告は,本件保険契約締結の際にEと原告との間で他の保険会社の保険加入の話題が出た事実はなく,また,原告がEより他の保険会社の保険に加入していないか否かについて確認を受けた事実はない旨主張し,原告陳述書及び原告本人の供述中には,原告の上記主張に沿う陳述記載及び供述部分が存在する。 しかしながら,Eの陳述書(乙5)の記載内容及び同人の証言内容をみても,保険契約を締結する保険会社側の担当者の行動として特に不自然な点は認められず,また,証言内容によっては被告にとって有利となるような事情についても記憶が曖昧となっている旨を正直に証言するなど,その証言態度についても不自然な点は窺われない。これに対し,原告は,自己の加入した保険内容について補償額以外の内容についてEから説明を受けたことは一切無く,また,保険内容が記載されたパンフレットを受領したか否かも記憶にないこと,自己の申し込んだ保険契約が正式に被告に受け付けられたか否か不安に感じていたにもかかわらず,一般的に契約締結時に契約者に交付されている傷害保 記載されたパンフレットを受領したか否かも記憶にないこと,自己の申し込んだ保険契約が正式に被告に受け付けられたか否か不安に感じていたにもかかわらず,一般的に契約締結時に契約者に交付されている傷害保険契約申込書の控えも受領した事実はない旨供述しているが,このような供述内容は,本件保険契約の直前に少なくとも2件の同種の傷害保険に加入した経験があり,また,自ら傷害保険に加入するために積極的に被告の名古屋支店に出掛け,その補償内容等に関しても少なからず関心を抱いていた保険契約申込者の態度としては不自然といわざるを得ず,原告の供述内容は,上記認定に用いたEの陳述書及び同人の証言内容に照らしてそのまま採用できず,他に上記認定を左右するに足る証拠はない。 また,原告はその供述において,本件調査時に原告が本件発言を行った事実を否定すると共に,本件調査の際に一旦署名した本件第1覚書の原告の氏名を抹消した理由については,原告が本件発言を行っていないにもかかわらずFが原告により本件発言がなされた旨を本件第1覚書に記載したからと説明するが,そもそも,本件調査が行われた当時,原告はP生命に転職してから4か月以上が経過しており,その間に約1か月間の研修を受けていた事実(原告本人)からすると,保険会社により本件調査のような調査行為が保険事故の事案によっては実施する必要性があることについては原告も十分に理解していたものと推認されるところ,このような原告が,保険金を請求しておきながら保険会社による調査に対して非協力的な態度を取ることは不自然であるし,仮に本件発言を行った事実が無かったとすれば,本件第1覚書の記載につき抹消が行われた他の訂正部分と同様に,Fに対して本件発言の記載部分の抹消を求めたり原告自ら抹消することも十分に可能であったにもかかわらず,原告がこのよ 実が無かったとすれば,本件第1覚書の記載につき抹消が行われた他の訂正部分と同様に,Fに対して本件発言の記載部分の抹消を求めたり原告自ら抹消することも十分に可能であったにもかかわらず,原告がこのような行動を取ろうとした形跡がないこと,本件調査時において原告が本件第1覚書及び本件同意書について署名できない理由を原告自らが記載した乙第7号証の覚書には,原告が供述するような理由の記載がないことからすると,原告の上記説明内容は不自然といわざるを得ず,この点に関するFの証言内容に照らして原告の供述内容はそのまま採用できない(なお,本件調査時における上記のような原告の不自然ともいうべき言動に照らすと,原告が,本件調査時において警察に対する調査のみならず,通院先の病院に対する調査までも事実上拒否した本当の理由が,被告の依頼した調査員が警察及び病院を調査することにより原告が被告以外の保険会社の傷害保険に加入している事実が被告に判明することを避けるためであった可能性すら窺えるところである。)。 以上のとおり,本件において,原告は,本件保険契約締結時において,被告の担当者から確認を受けたにもかかわらず,敢えて重複保険契約の事実を告知しなかったものというべきであるから,原告には,本件約款11条1項所定の告知義務違反の事実が認められることになる。 (3) そこで,次に,原告が本件保険契約の締結により重複保険契約を締結した経緯,目的等により被告の解除権が制限されるか否かについて判断するに,上記認定事実に第2の1(4)記載の事実及び原告本人尋問の結果を総合すると,原告が短期間のうちに相前後して6件の同種の傷害保険に加入した目的が1回の保険事故の発生により出来る限り多くの保険金を取得する点にあり,このため,本件保険契約締結の当日,原告は,Eより本件保険契約の補償 短期間のうちに相前後して6件の同種の傷害保険に加入した目的が1回の保険事故の発生により出来る限り多くの保険金を取得する点にあり,このため,本件保険契約締結の当日,原告は,Eより本件保険契約の補償内容が入通院の最高限度額であり,他の同種の保険に加入している場合には被告の傷害保険には入れない旨の説明を受けた際にも,この意味を十分に理解しながら,被告との保険契約を拒否される事態を避けるために敢えて他社の傷害保険に既に加入している事実を秘匿して本件保険契約を締結するに至ったものと認められるところ,このような本件保険契約に関する事情は,本件約款が保険契約者等に告知義務を定めた趣旨に明らかに反するものというべきである。そして,本件については,本件全証拠によっても被告による本件保険契約の解除権の行使が制限されるような事情は認められない。 (4) 以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないことになる。 2 よって,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第10部裁判官鵜飼祐充

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