平成24年4月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官塙義和平成22年(ワ)第10176号職務発明対価請求事件口頭弁論終結日平成24年1月20日判決仙台市<以下略>原告 A同訴訟代理人弁護士森川清同大森孝参仙台市<以下略>被告 NECトーキン株式会社同訴訟代理人弁護士新保克芳同髙 﨑 仁同洞敬同井上彰同酒匂禎裕 主文 1 被告は,原告に対し,金213万5496円及びこれに対する平成22年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金3000万円及びこれに対する平成22年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に在職中に完成させた圧電振動ジャイロに関する発明について,被告に対し,平成16年法律第7 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に在職中に完成させた圧電振動ジャイロに関する発明について,被告に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)35条3項に基づく職務発明の対価請求として4697万5200円の一部である3000万円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成22年6月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は,昭和43年3月に東北大学工学部通信工学科を卒業し,同年4月に被告に入社した。原告は,主に圧電セラミックの研究開発業務に従事し,平成12年3月に被告を退職した。 被告は,昭和13年に磁気材料の製造販売を目的として設立された株式会社であり,設立当初の商号は「東北金属工業株式会社」であったが,その後,昭和63年に商号を「株式会社トーキン」に変更し,さらに,平成14年には,日本電気株式会社(以下「NEC」という。)の電子部品事業と統合して現在の商号に変更した。 (2) 原告の職務発明原告は,被告に在職中,次の各特許権(以下,「本件特許権1」などといい,併せて「本件各特許権」という。)に係る各発明(以下,「本件発明1」などといい,併せて「本件各発明」という。)をそれぞれ完成させ,本件各発明の特許を受ける権利は被告に承継された。 ア本件特許権1登録番号第2660940号出願日平成3年1月25日公開日平成5年3月30日 登録日平成9年6月13日発明者原告,B(以下「 2660940号出願日平成3年1月25日公開日平成5年3月30日 登録日平成9年6月13日発明者原告,B(以下「B教授」という。),C出願人被告,B教授発明の名称圧電振動ジャイロ【請求項1】 圧電セラミックス円柱の外周面に円周を等分する2n(nは3以上の整数とする)個の帯状電極を前記圧電セラミックス円柱の長さ方向と平行に形成し,これらの帯状電極のうち1個の帯状電極の中心線と前記圧電セラミックス円柱の中心軸とを含む面を対称面とする位置にあるm(mは自然数とする)個の帯状電極間隙部に前記圧電セラミックス円柱の屈曲振動モ-ドの共振周波数にほぼ等しい周波数の励振用の交流電圧を印加して前記圧電セラミックス円柱をほぼ前記対称面に沿う方向に屈曲振動させ,かつ,前記対称面を中心として対称の位置にある1または複数個の帯状電極間隙部に発生する電圧を検出するようにしたことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項2】 請求項1に記載の圧電振動ジャイロにおいて,前記帯状電極を互いに1個おきに接続して2端子として分極したことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項3】 請求項1に記載の圧電振動ジャイロにおいて,前記帯状電極のうち互いに1個おきの帯状電極を接続してアースしたことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3に記載の圧電振動ジャイロにおいて,前記対称面を中心として対称な位置にある前記帯状電極間隙部のそれぞれに印加する交流電圧の振幅の大きさを調整可能としたことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項5】 円柱体または中心部に長手方向へ貫通孔が形成された円柱 ある前記帯状電極間隙部のそれぞれに印加する交流電圧の振幅の大きさを調整可能としたことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項5】 円柱体または中心部に長手方向へ貫通孔が形成された円柱体からなる圧電セラミックス円柱の外周面上の円周を等分する位置に 長さ方向と平行に6個または8個の帯状電極を形成し,これらの帯状電極を互いに1個おきに接続して2端子として分極処理を施し,分極処理後1個の帯状電極の中心線と前記圧電セラミックス円柱の中心軸を含む面を対称面とする位置にある1個ずつまたは2個ずつの帯状電極間隙部それぞれに周波数が前記圧電セラミックス円柱の屈曲振動モ-ドの共振周波数にほぼ等しい,同一周波数かつ同一振幅の励振用の交流電圧を印加して前記圧電セラミックス円柱をほぼ前記対称面に沿う方向に屈曲振動させ,かつ,前記対称面に対して対称の位置にある前記励振用の帯状電極間隙部またはこれらとは別の1個ずつまたは2個ずつの帯状電極間隙部のそれぞれに発生する電圧の差を検出するように構成したことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項6】 円柱体または中心部に長手方向へ貫通孔が形成された円柱体からなる圧電セラミックス円柱の外周面上の円周を等分する位置に長さ方向と平行に6個または8個の帯状電極を形成し,これらの帯状電極を互いに1個おきに接続して2端子として分極処理を施し,分極処理後1個の帯状電極の中心線と前記圧電セラミックス円柱の中心軸を含む面を対称面とする位置にある1個ずつまたは2個ずつの帯状電極間隙部それぞれ周波数が前記圧電セラミックス円柱の屈曲振動モ-ドの共振周波数にほぼ等しい,同一周波数かつ異なる振幅の励振用の交流電圧を印加して前記圧電セラミックス円柱をほぼ前記対称面に沿う方向に屈曲振動させ,かつ,前記対称面に対して対 クス円柱の屈曲振動モ-ドの共振周波数にほぼ等しい,同一周波数かつ異なる振幅の励振用の交流電圧を印加して前記圧電セラミックス円柱をほぼ前記対称面に沿う方向に屈曲振動させ,かつ,前記対称面に対して対称の位置にある前記励振用の帯状電極間隙部とは別の1個ずつまたは2個ずつの帯状電極間隙部のそれぞれに発生する電圧の差を検出するように構成したことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 イ本件特許権2登録番号第2557286号 出願日平成3年2月27日公開日平成5年11月19日登録日平成8年9月5日発明者原告,B教授,C出願人被告,B教授発明の名称圧電振動ジャイロ【請求項1】 圧電セラミックス円柱の外周面に該圧電セラミックス円柱の周方向のほぼ3分の2の領域に,該圧電セラミックス円柱の長さ方向と平行な奇数個の帯状電極を等間隔に形成し,これらの帯状電極を互いに一つおきに電気的に接続して2端子として分極処理を施し,分極処理後,中央部の帯状電極を含む端子をアース電極とし,中央部の帯状電極を含まない帯状電極の組を中央部の帯状電極を中心にして2つの組に電気的に分離して2個の入出力端子とし,これら2個の入出力端子にそれぞれ位相および電圧振幅が等しく,前記圧電セラミックス円柱の屈曲振動モードの共振周波数にほぼ等しい周波数の励振用の交流電圧を印加すると同時に,これら2個の入出力端子の差動電圧を検出するように構成したことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 ウ本件特許権3登録番号第2557287号出願日平成3年4月4日公開日平成4年10月29日登録 とする圧電振動ジャイロ。 ウ本件特許権3登録番号第2557287号出願日平成3年4月4日公開日平成4年10月29日登録日平成8年9月5日発明者原告出願人被告発明の名称圧電振動ジャイロ【請求項1】 圧電セラミックス円柱の外周面に,前記圧電セラミック ス円柱の長さ方向と平行な3個の帯状電極を等間隔に形成し,両側の帯状電極を接続する接続電極を形成し,更に中央の帯状電極と両側の帯状電極の間で中央の帯状電極からの距離が等しい位置に2個の帯状電極を形成し,中央の帯状電極と前記両側の帯状電極との間で分極処理を施すとともに,前記中央の帯状電極をアース端子とし,前記両側の帯状電極をそれぞれ入力端子とし,前記2個の帯状電極を出力端子とし,前記入力端子に,前記圧電セラミックス円柱の屈曲振動モードの共振周波数にほぼ等しい周波数の励振用の交流電極を印加し,前記2個の出力端子の差動電圧を検出することを特徴とする圧電振動ジャイロ。 エ本件特許権4登録番号第3292934号出願日平成5年4月9日公開日平成6年2月18日登録日平成14年4月5日発明者原告出願人被告発明の名称圧電振動ジャイロ及び圧電振動ジャイロの共振周波数の調整方法【請求項1】 円柱状または円筒状の圧電セラミックス体と,該圧電セラミックス体の外周面上に軸方向と平行に設けられた複数個の帯状電極とからなり,該帯状電極を用いて分極及び駆動・検出を行う圧電振動ジャイロにおいて,前記帯状電極はその中 ス体と,該圧電セラミックス体の外周面上に軸方向と平行に設けられた複数個の帯状電極とからなり,該帯状電極を用いて分極及び駆動・検出を行う圧電振動ジャイロにおいて,前記帯状電極はその中央部に無電極部を有し,前記複数個の帯状電極中,少なくとも1つの帯状電極の無電極部に露出された前記圧電セラミックス体の表面に溝を形成することによって,前記帯状電極を傷つけることなく共振周波数調整を容易に行うことができ ることを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項2】 円柱状または円筒状の圧電セラミックス体と,該圧電セラミックス体の外周面上に軸方向と平行に設けられた複数個の帯状電極とからなり,該帯状電極を用いて分極及び駆動・検出を行う圧電振動ジャイロにおいて,前記帯状電極はその中央部に無電極部を有し,前記複数個の帯状電極の間隙に露出された前記圧電セラミックス体の表面に少なくとも1つの溝を形成することによって,前記帯状電極を傷つけることなく共振周波数調整を容易に行うことができることを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項3】 中央部にあらかじめ所定領域の貫通孔で規定される無電極部を有する帯状電極を複数個,円柱状または円筒状の圧電セラミックス体の外周面上に,軸方向と平行になるように設けて圧電振動子を形成し,前記複数個の帯状電極の間隙に露出された前記圧電セラミックス体の表面に少なくとも1つ以上の溝を形成し,該溝によって,該溝と前記圧電セラミックス体の断面の中心とを結ぶ方向と垂直な方向の帯状電極から見た共振周波数を一定に保ち,それ以外の帯状電極から見た共振周波数を減少させ,切削による共振周波数調整工程において前記帯状電極を傷つけることなく共振周波数調整を容易に行うことが 極から見た共振周波数を一定に保ち,それ以外の帯状電極から見た共振周波数を減少させ,切削による共振周波数調整工程において前記帯状電極を傷つけることなく共振周波数調整を容易に行うことができることを特徴とする圧電振動ジャイロの共振周波数の調整方法。 オ本件特許権5登録番号第3291664号出願日平成5年5月10日公開日平成7年1月10日登録日平成14年3月29日 発明者原告,D,E,F出願人被告発明の名称圧電振動ジャイロ【請求項1】 圧電セラミック円柱と,この円柱外周面にその長手方向と平行かつ周方向に間隔をおいて順に形成された第1乃至第7の帯状電極とを有し,前記第1の帯状電極の中心線と前記圧電セラミック円柱の中心軸を含む面に対して対称な位置にそれぞれ前記第2及び第7の帯状電極,前記第3及び第6の帯状電極,前記第4及び第5の帯状電極を形成し,前記第1,第3及び第6の帯状電極を共通接続するとともに,前記第2,第4,第5,第7の帯状電極を共通接続してこれらの2組の共通接続電極を2端子として前記圧電セラミック円柱に分極処理を施した後,前記第2,第4,第5,第7の帯状電極を共通アース電極,前記第1の帯状電極を駆動電極,前記第3及び第6の帯状電極をそれぞれ検出用電極としたことを特徴とする圧電振動ジャイロ。 【請求項2】 圧電セラミック円柱と,この円柱外周面にその長手方向と平行かつ周方向に間隔をおいて順に形成された第1乃至第6の帯状電極とを有し,これらの帯状電極を用いて分極処理した後,前記第1,第3及び第5の帯状電極を電気的に接続して共通アース電極とし,前記第4の帯状電極を 方向に間隔をおいて順に形成された第1乃至第6の帯状電極とを有し,これらの帯状電極を用いて分極処理した後,前記第1,第3及び第5の帯状電極を電気的に接続して共通アース電極とし,前記第4の帯状電極を駆動電極,前記第2及び第6の帯状電極を検出用電極とした圧電振動ジャイロにおいて,前記第4の帯状電極は前記圧電セラミック円柱の中心に関して前記第1の帯状電極と対称の位置に形成され,前記第1の帯状電極の中心線と前記圧電セラミック円柱の中心軸を含む第1の面に対して対称で,前記圧電セラミック円柱の中心軸を含み,前記第1の面に直交する第2の面に非対称な位置にそれぞれ前記第2,第6の帯状電極及び第3,第5の帯状電極が形成されていることを特徴とする圧電振動ジャイロ。 (3) 本件各発明の概要ア本件各発明の要素は,①圧電セラミックス円柱の外周面にこの円柱の長手方向と平行な複数個の帯状電極を形成し,②これらの帯状電極を分極と振動子の励振及び振動の検出に利用し,③円柱が軸の周りに回転したときに生ずる振動成分を検出する圧電振動ジャイロというものである。 イ本件発明1の圧電振動ジャイロは,圧電セラミック円柱に偶数個(当初の着想は6個)の帯状電極を形成し,互いに1個おきの帯状電極を接続して2端子として分極処理を行い,これらの帯状電極を駆動電極と検出電極に用いる方式であって,金属振動子に圧電セラミック板を接着する必要がないため,接着工程が省ける上に,接着に伴う特性のばらつきをなくすることができるというものであった。 その後,帯状電極の数は必ずしも6個,8個に限定されないことが分かり,本件発明2~5が発明された。そのうち,本件発明5は,帯状電極の数を7個とし,第1番目の電極と第7番目の電極をそれぞれ印刷開始電極と印刷終了電極 の数は必ずしも6個,8個に限定されないことが分かり,本件発明2~5が発明された。そのうち,本件発明5は,帯状電極の数を7個とし,第1番目の電極と第7番目の電極をそれぞれ印刷開始電極と印刷終了電極とすることにより,第1番目の電極と第7番目の電極との間を電極のない領域とし,第4番目の電極を入力電極,第2番目と第6番目の電極をそれぞれ出力電極とすることにより,従来不可欠であった周波数調整工程を簡略化することが可能な発明であった。 ウ本件各発明当時,正方形断面の金属角柱に4個の圧電セラミック板を貼り付けた構造の圧電振動ジャイロは,「GEタイプ」として広く知られていた。これに次いで開発された,正三角形断面の構造の圧電振動ジャイロは「村田タイプ」,円形断面の構造の圧電振動ジャイロは「トーキンタイプ」として知られることになり,現在では,多くの超音波,圧電関係の専門書の中でトーキンの圧電振動ジャイロ=円柱型の圧電振動ジャイロとして紹介されている。 (4) 圧電振動ジャイロの製品化 被告は,平成5年,圧電振動ジャイロを製品化し(以下,被告が製品化した圧電振動ジャイロを総称して「本件ジャイロ」という。),主にビデオカメラやデジタルカメラの手ぶれ補正に使用する部品として,ソニー株式会社(以下「ソニー」という。),キヤノン株式会社(以下「キヤノン」という。)に供給を開始した。 なお,被告は,本件各発明について,第三者に対して実施許諾をしたことはない。 (5) B教授の持分承継B教授は,平成3年12月13日死亡した。その後,被告は,本件特許権1及び2について,B教授の遺族から,その承継した持分の譲渡を受けた。 2 争点(1) 超過売上高の有無及び割合(争点1)(2) 想定実施料率( 死亡した。その後,被告は,本件特許権1及び2について,B教授の遺族から,その承継した持分の譲渡を受けた。 2 争点(1) 超過売上高の有無及び割合(争点1)(2) 想定実施料率(争点2)(3) 使用者貢献度(争点3)(4) 発明者間の寄与割合(争点4) 3 争点に関する当事者の主張(1) 超過売上高の有無及び割合(争点1)(原告の主張)ア相当の対価の算定方法(ア) 原告は,本件特許権1の出願日である平成3年1月25日よりも前に,本件各特許権に係る特許を受ける権利を被告に承継させ,当該承継時点で被告に対する相当の対価の請求権を取得したから,相当の対価の額を定めるに当たっては,改正前特許法35条4項が適用される。 (イ) 改正前特許法35条4項に規定する「発明により使用者等が受けるべき利益」は,使用者等が職務発明についての特許を受ける権利を承継した時に客観的に見込まれる利益をいうものと解されるところ,使用者 等は,特許を受ける権利を承継せずに,従業者等が特許を受けた場合であっても,その特許権について特許法35条1項に基づく無償の通常実施権を有することに照らすと,「発明により使用者等が受けるべき利益」には,このような法定通常実施権を行使し得ることにより受けられる利益は含まず,使用者等が従業者等から特許を受ける権利を承継し,当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けることが客観的に見込まれる利益(独占の利益)をいうものと解するのが相当である。 被告は,本件各発明を,第三者に実施許諾をしたことはなく,自らこれを実施していたものである。そこで,具体的には,本件ジャイロの総売上高のうち,その排他的,独占的な販売に基づく超過売 。 被告は,本件各発明を,第三者に実施許諾をしたことはなく,自らこれを実施していたものである。そこで,具体的には,本件ジャイロの総売上高のうち,その排他的,独占的な販売に基づく超過売上高に係る分はいくらであるか,その超過売上高に係る分を第三者に許諾した場合に得られる想定実施料(超過売上高に係る分に想定実施料率を乗じた額)はいくらであるかを認定し,本件ジャイロの販売による独占の利益を算定するのが相当である。そして,被告の独占の利益に想定実施料率を乗じたものから被告の貢献度割合を差し引いて,更に発明者の間で原告が寄与した割合を乗じたものを相当の対価とするのが相当である。 (計算式)本件ジャイロの総売上高×超過売上高の割合×想定実施料率×(1-被告の貢献度)×発明者間に占める原告の寄与割合=相当の対価(ウ) デジタルカメラ及びビデオカメラの手ぶれ補正用の圧電セラミックスを用いた振動ジャイロにつき,株式会社村田製作所(以下「村田製作所」という。)と被告とが市場を2分し,他社の追随を許さなかったのは,次の3つの要件を基本にして,本件各発明のバリエーションをそれぞれ権利化することができたからである。 ① 圧電セラミックス円柱の外周面にこの円柱の長さと平行な複数個の 帯状電極を形成すること。 ② これらの帯状電極を分極と振動子の励振及び振動の検出に利用すること。 ③ 円柱が軸の周りに回転したときに生ずる振動成分を検出すること。 したがって,原告が受けるべき相当の対価の対象となる発明は,本件各発明であり,これらを包括して相当の対価を算定するべきであると考える。 イ本件ジャイロの総売上高と超過売上高の割合(ア) 「振動ジャイロ」ケーススタデ の対象となる発明は,本件各発明であり,これらを包括して相当の対価を算定するべきであると考える。 イ本件ジャイロの総売上高と超過売上高の割合(ア) 「振動ジャイロ」ケーススタディ資料によると,被告の本件ジャイロの売上高は,平成5年度上期から平成11年度上期にかけて合計37億4380万円となっている。また,平成16年度の売上高は7億2400万円,平成17年度の売上高は8億0100万円,平成18年度の売上高は9億6000万円であるから,平成11年度下期から平成21年度上期までの1年度当たり売上高は,少なくとも8億円を下らないと推定できる。 平成5年度上期から平成11年度上期までの合計37億4380万円に同年度下期から平成21年度上期までの合計80億円を加算すると,平成5年度上期から平成21年度上期までの総売上高は117億4380万円となる。 (イ) 本件各特許権が出願された平成3年から平成5年当時,圧電セラミックス材料を応用した技術を使用したデバイスを製造していたメーカーは,京セラキンセキ株式会社,TDK株式会社,村田製作所,アルプス電気株式会社,FDK株式会社(元富士電気化学株式会社),住友電気工業株式会社等の企業であった。 また,振動ジャイロに係る特許・実用新案を出願していた企業は,上記以外に,三菱電機株式会社,ソニー,シチズンミヨタ株式会社(元ミ ヨタ株式会社),株式会社ニコン,株式会社デンソー,キヤノン,アイシン精機株式会社,松下電器産業株式会社,赤井電機株式会社等があった。 当時圧電セラミックスを用いた振動ジャイロには,音叉振動子を用いたものと柱状振動子を用いたものがあった。柱状振動子を用いた振動ジャイロについては,村田製作所が三角柱タイプのものを た。 当時圧電セラミックスを用いた振動ジャイロには,音叉振動子を用いたものと柱状振動子を用いたものがあった。柱状振動子を用いた振動ジャイロについては,村田製作所が三角柱タイプのものを特許とし,本件各発明により円柱タイプのものを被告が特許としたことから,圧電セラミックスを材料とした振動ジャイロの市場は,この2社が他社の追随を許さず独占するに至った。 本件ジャイロは,ビデオカメラやデジタルカメラの手ぶれ補正用に使用された。 (ウ) 以上のとおり,本件各発明により,圧電セラミックスを材料とする圧電振動ジャイロは,村田製作所と被告の2社のみが独占するに至り,ビデオカメラやデジタルカメラの手ぶれ補正用の圧電振動ジャイロの市場を2社で独占して,他社の参入を許さなかったことからすれば,超過売上高の割合は50%を下らないとするのが相当である。 (被告の主張)ア原告の主張に対する認否原告の主張ア(ア)及び(イ)は認める。同ア(ウ)は否認する。同イ(ア)はおおむね認める。同イ(イ)のうち,圧電セラミックスを材料とした振動ジャイロの市場は,この2社が他社の追随を許さず独占するに至ったことは否認し,その余は認める。同イ(ウ)は否認する。 イ本件各発明の実施品について被告は,本件各発明のうち,本件発明2~4を実施していない。本件ジャイロのうち,CG-16A,CG-16前期型,CG-L53が本件発明1の実施品であり,CG-16後期型,CG-L33,CG-L43, CG-32Aが本件発明5の実施品である。 本件発明2は,「周方向のほぼ3分の2の領域に」,「奇数個の帯状電極を等間隔に形成」していることを構成要件としているから,7本電極のCG-16後期型,CG- が本件発明5の実施品である。 本件発明2は,「周方向のほぼ3分の2の領域に」,「奇数個の帯状電極を等間隔に形成」していることを構成要件としているから,7本電極のCG-16後期型,CG-L33,CG-L43,CG-32Aが対象になり得る。しかし,これらは,周方向の294~330°の領域に7個の帯状電極が等間隔に形成されているので,「周方向のほぼ3分の2の領域に」(中心角にして約240°の領域に),帯状電極を形成するという本件発明2の構成要件を充足していない。 ウ独占の利益について(ア) 被告は,以下のとおり,本件各特許権によって市場を独占できていないから,無償の通常実施権に基づく実施によるものを超えた利益は存在していない。 ① 被告は,本件各特許権について第三者に実施権を与えたこともなく,実施許諾を求められたこともない。 ② 本件ジャイロは,圧電セラミックジャイロであって,主にビデオカメラ等の手ぶれ補正用の製品として使用される。その性能として,様々な特性が要求されるが,構成要素の1つにすぎない圧電素子がどのような構造であるかによって選択されることはなく,あくまでパッケージ全体が評価される。 ③ 最初から市場に村田製作所の製品が圧倒的なシェアをもって存在している中,本件ジャイロはそれと代替可能な製品として採用されるようになったものであり,しかも,それは安定供給の確保のため2社購買という顧客(セットメーカー)の希望によって実現したものであり,本件ジャイロは村田製作所の約半分程度のシェアを獲得したにすぎない。そして,2社購買体制が確立した顧客が,新しい供給先の製品をコストをかけてまで採用しようとしなかったおかげで,この2社体制 が一定期間維持されたにすぎない。 ェアを獲得したにすぎない。そして,2社購買体制が確立した顧客が,新しい供給先の製品をコストをかけてまで採用しようとしなかったおかげで,この2社体制 が一定期間維持されたにすぎない。 ④ 原告が本件各発明の骨格として強調する「円柱型振動ジャイロ」という構造は,既に本件各特許権の出願前に公知であって,誰もが自由に開発できる。したがって,本件各発明において具体的に意味があるのはその実施形態とでもいうべき部分であるが,他の事業者は別の実施形態を選択することが可能である。 ⑤ 実際に,本件各特許権の有効期間中に他社が別の技術によって市場に参入している。 ⑥ ジャイロ製品として完成させるには,加工されてできあがった振動子に対して電極を印刷することが不可欠であるが,円柱タイプの場合は,曲面への電極印刷という特有の工程が新たに必要となり,その工程では,印刷位置のずれや電極のニジミやカスレの問題があった。また,分極工程においても,曲面上の電極に電界印加用端子を完全に接触させることが困難となる特有の問題があったため,分極が不十分な不良品が発生し,歩留まり低下の一因となっていた。実際,電極印刷や分極の問題は深刻で,被告製品の歩留まりは80%程度に留まっている。トータルの生産性の点で,円柱タイプが優位であるという事実はない。 (イ) CG組込製品(本件ジャイロを組み込んだ3Dモーションセンサ)は3Dモーションセンサ市場用,CG-32Aはカーナビ市場用の製品で,原告が独占の利益を主張する「ビデオカメラやデジタルカメラの手ぶれ補正用に使用される圧電セラミックスを用いた振動ジャイロの市場」の対象製品ではない。これらの市場にはより多くのタイプのジャイロが参入しており,村田製作所との2社独占の時期すら認められな メラの手ぶれ補正用に使用される圧電セラミックスを用いた振動ジャイロの市場」の対象製品ではない。これらの市場にはより多くのタイプのジャイロが参入しており,村田製作所との2社独占の時期すら認められない。 (ウ) 被告ジャイロ事業は,以下のとおり,ほぼ毎年度赤字続きで,累積では売上高から売上原価を控除した売上総利益でみても赤字となってお り,本件各発明を実施したことにより被告が受けた利益は全く認められない。 本件ジャイロの売上高と損益(単位・百万円)年度売上高売上総利益営業損益1993183.2-103.4-112.61994186.722.813.51995593.850.120.41996757.2-92.5-166.719971039.787.4-1.31998408.2-72.1-124.719991071.8119.137.52000874.2-28.4-143.32001827.8-120.8-289.720021114.4-0.7-118.220031117.965.6-120.620041076.197.2-101.72005839.774.1-98.32006970.4-101.3-250.82007389.1-129.5-243.32008189.2-28.1-126.6200991.94.0-22.9201052.6-29.8-53.8合計11783.9-186.5-1903.2(エ) 仮に,本件各特許権にいくらかでも独占 91.94.0-22.9201052.6-29.8-53.8合計11783.9-186.5-1903.2(エ) 仮に,本件各特許権にいくらかでも独占力があったと仮定しても,特許権により他社の実施を禁止できるのは特許登録後であるから,登録 前に独占の利益は存在しない。 登録前の特許であっても,登録後の2分の1の独占力を認める考えもあり得るが,それは公開後に限られる。なぜなら,公開によって当該出願を知らしめることによって,はじめて第三者の市場参加を抑制できるからである。このことは,公開後の場合も,第三者が知り得る当該特許出願の審査状況によって,仮に2分の1と認める独占力が更に小さくなり得ることを意味する。そして,本件特許権5については,拒絶理由通知書が2回にわたって発送されており,登録の可能性は,一層不確かであったから,他社に対する抑止力も当然低く,その実施料率はさらに半分の4分の1程度と考えるべきである。 (原告の反論)ア本件各発明の実施品について(ア) 被告が本件発明3及び4を実施していないことは認める。 (イ) 仮に,本件発明2が実施されていなかったとしても,本件発明2~4(特に本件発明2及び3)は,円柱型振動ジャイロについて,他社の参入を防ぐという効果があり,超過売上高に寄与している。 (ウ) 本件発明2は,①帯状電極の数を奇数個としたこと,②帯状電極の領域をほぼ3分の2の領域に制限することで,2つの端子に入力される電圧の合成された振動振幅を高め感度を確保する効果があること,③本件発明1,3及び5ではカバーされていない2つの端子を入出力兼用端子とすることによって,帯状電極を3個としうち1つの帯状電極をアースにし残り 成された振動振幅を高め感度を確保する効果があること,③本件発明1,3及び5ではカバーされていない2つの端子を入出力兼用端子とすることによって,帯状電極を3個としうち1つの帯状電極をアースにし残り2つの帯状電極を入出力端子とする他社の特許,出願の権利化及び実施を阻止することができたのである。 本件発明3についても,本件発明1,2及び5でカバーされていない円柱状振動ジャイロの新規の構成であり,他社による実施を阻止した点で大きな意味を持っている。被告において,本件発明3が実施されなか ったのは,本件発明2と同様に,治工具の変更を伴う仕様変更よりも,経験のある方式を選んだためである。 イ独占の利益について(ア) 本件ジャイロは,デジタルカメラ及びビデオカメラ用途のもので,小型かつ安価で大量生産が可能な振動ジャイロであって,本件各特許権による独占の利益が生じていた期間は,特許出願した平成4年ころから振動ジャイロにMEMS技術が用いられて市場に普及するまでの間である。平成16年ころまでの間,手ぶれ補正用ジャイロの代替技術,特に圧電セラミックス材料を用いた振動ジャイロの代替技術は,市場に多くは存在していなかった。 被告と競合する他社は,村田製作所及び松下電子部品株式会社(以下「松下電子部品」という。)を除いて,市場が要求する性能,品質,価格等に応えられる代替技術を有しておらず,被告は,本件各発明を排他的に実施していたことによって,村田製作所及び松下電子部品以外の他社に対する禁止権の効果として,超過売上高を得ていたことは明らかである。 手ぶれ補正用ジャイロの市場においては,被告が村田製作所に次ぐシェアを占めていたこと,被告は,円柱状の圧電セラミックスを用いた振動ジャイロ以外に, 上高を得ていたことは明らかである。 手ぶれ補正用ジャイロの市場においては,被告が村田製作所に次ぐシェアを占めていたこと,被告は,円柱状の圧電セラミックスを用いた振動ジャイロ以外に,過去及び現在においても三角柱や四角柱のセラミックジャイロを製品化していないこと,被告は開放的なライセンスポリシーを採用していないこと,これらの事情を考慮すると,本件各特許権による被告の超過売上高の割合は50%を下らないとするのが相当である。 (イ) 職務発明の対価について,使用者等の損益を考慮するべきではない。 改正前特許法35条4項の「発明により使用者等が受けるべき利益」は,使用者等が「受けた利益」そのものではなく,「受けるべき利益」であるから,使用者等が職務発明についての特許を受ける権利を承継し た時に客観的に見込まれる利益をいうものと解され,当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けることが客観的に見込まれる利益,すなわち「独占の利益」をいうものと解されている。 そして,使用者等が,第三者に当該発明を実施許諾することなく,自ら実施(自己実施)している場合には,特許権が存在することにより,第三者に当該発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が得ることができた利益,すなわち,特許権に基づく第三者に対する禁止権の効果として,使用者等の自己実施による売上高のうち,当該特許権を使用者等に承継させずに,自ら特許を受けた従業者等が第三者に当該発明を実施許諾していたと想定した場合に予想される使用者等の売上高を超える分(超過売上高)について得ることができたものと見込まれる利益(超過利益)が「独占の利益」に該当するものというべきである。 (ウ) 特許登録前であっても,使用者が実施によ 等の売上高を超える分(超過売上高)について得ることができたものと見込まれる利益(超過利益)が「独占の利益」に該当するものというべきである。 (ウ) 特許登録前であっても,使用者が実施により得た利益が特許法35条1項の通常実施権によるものを超過した場合には発明者対価の算定の対象になる。 本件特許権1及び5については,登録前においても,登録後と同様に,村田製作所,松下電子部品以外の競業他社が振動ジャイロに係る市場の要求する性能,品質,価格等に応えられる技術を実施していたことはなく,登録後の期間と同等以上に排他力があったと評価すべきである。 (2) 想定実施料率(争点2)(原告の主張)本件各発明は,村田製作所の特許と市場を2分するものであって,他社の追随を許さないものとなっていたから,その基本特許性は揺るぎない。また,本件各特許がなく,「構造が,村田に追随したものであったなら,特許の面から,村田にトーキンのジャイロは息の根を止められていた可能性が大きい」ものであった。 そうであれば,実施料率は重要な基本特許として10%は下らない。 (被告の主張)ア原告の主張に対する認否原告の主張は否認する。 イ反論(ア) 原告の主張は,村田製作所の特許権の技術的範囲に属さない製品の開発ができたということにすぎない。その実施は特許権がなくても可能であるし,被告には通常実施権があるから,村田製作所との関係で単に事業が可能であったということは,職務発明による特許権移転の対価としては意味のないことである。したがって,仮に想定実施料率を仮定したとしても1%を上回ることはあり得ない。 (イ) 本件ジャイロは,圧電振動子以外にも,ガラエポ基盤,I る特許権移転の対価としては意味のないことである。したがって,仮に想定実施料率を仮定したとしても1%を上回ることはあり得ない。 (イ) 本件ジャイロは,圧電振動子以外にも,ガラエポ基盤,IC,金属ケース等様々な部材によって構成されており,これら部材1つひとつの特性や価格,さらには組合せや配置でパッケージ全体の価値が決まる。 例えば,ノイズ特性については,被告はノイズについて業界トップクラスの知見を有し,本件ジャイロにも,各部材の選定や配置,ICの仕様等に関する高度なノウハウを組み込み,優れたノイズ特性を実現している。したがって,本件ジャイロにおいて本件各発明の価値は極めて低い。 しかも,製造原価の一部である構成部材全体に対する振動子の価格比は2割にも満たない。本件ジャイロの製造費は,これら構成部材の費用の他に,労務費,営業経費,販売費等の費用が積算される。したがって,実際の本件ジャイロの単価に占める振動子の割合は1割程度にすぎない。 上記事情からすれば,仮に実施料を想定したときには,通常の実施料が製品価格の3%前後であることに照らすと,おそらく製品価格の0. 1%程度にすぎないものと思われる。なお,本件ジャイロには他の複数の特許発明が実施されている。実際に上記想定実施料率で計算したとし ても,これら他の特許発明の寄与度による減額を受けることとなる。 (原告の反論)被告は,ノイズについて業界トップクラスの知見を有し,優れたノイズ特性を実現していることを想定実施料率算定の根拠としているが,同時に使用者貢献の根拠ともしており二重に評価している。 本件ジャイロの構成部材単価と振動子の価格比等は,想定実施料率算定の考慮要素にはならない。 (3) 使用者貢献度(争点3) に使用者貢献の根拠ともしており二重に評価している。 本件ジャイロの構成部材単価と振動子の価格比等は,想定実施料率算定の考慮要素にはならない。 (3) 使用者貢献度(争点3)(原告の主張)村田製作所は,被告よりも早い段階で圧電セラミックスを材料とした圧電振動ジャイロの特許出願を行い製品化しており,被告は,原告の上申を無視したため,圧電振動ジャイロの開発は村田製作所に遅れをとることとなった。 しかし,原告による強い要望があったこと,原告による本件各発明があったため,被告は,本件ジャイロの開発を開始することとなった。 その後,村田製作所から同社の特許を侵害している旨の警告があったが,本件各発明は,村田製作所の特許と構造を異にすることから同社による侵害の警告をはねのけることができ,その結果,圧電振動ジャイロの事業を継続することができた。つまり,本件各発明なくして,被告は,圧電振動ジャイロの事業を行うことはできず,本件各発明があったことにより,村田製作所と被告の2社のみで市場を独占することができたことなどを考慮すると,被告の使用者貢献度は,多くても90%であるとするのが相当である。 (被告の主張)ア原告の主張に対する認否原告の主張のうち,村田製作所が被告よりも早い段階で圧電振動ジャイロを製品化していたこと,その後被告が開発を行ったことは認めるが,その余は否認する。 イ反論(ア) 本件各発明以前の被告での技術的蓄積の存在,製造困難な円柱型振動子の製造技術の確立と製造コストの負担,圧電素子以外に多数のパーツ類を組み合わせたモジュールとすることではじめて販売可能となること等の様々な要因があってはじめて製品として完成と売上があるのであって, の製造技術の確立と製造コストの負担,圧電素子以外に多数のパーツ類を組み合わせたモジュールとすることではじめて販売可能となること等の様々な要因があってはじめて製品として完成と売上があるのであって,被告の貢献は99%を下回ることはない。 (イ) 被告には,主な使用者の貢献として,①圧電セラミックス材料や設計についての技術的蓄積があったこと,②以前から電気ノイズの測定と対策を専業とする子会社や事業部を有しており,ノイズ対策に関する業界トップクラスの技術を蓄積し,本件ジャイロに応用したこと,③他のタイプと異なり円柱タイプでは電極印刷が困難であり,様々な工夫を重ね,印刷技術を改良することによって製造レベルを達成したこと,④実際に商品に搭載した場合のノイズ特性を改善するため,セットメーカーと共同で,周辺部材の選択・実装,信号処理の方法について検討を重ね高度なノウハウを取得したこと,⑤配線の問題や小型化の問題に対し,特許第3505686号や特許第4351346号を権利化,実施することによって問題を解決したことが認められる。 (ウ) 上記(イ)以外にも,⑥社内の知的財産部が,出願を弁理士に依頼するなどして,出願に関する助言や図面の作成,拒絶理由通知に対する意見書や手続補正書の作成等,権利化に至るまでの諸手続を行っていること,⑦開発環境の整備として,㋐原告の超音波研究会への参加や博士号の取得への協力,㋑B教授を特別顧問として迎え入れ,より具体的な圧電振動デバイス関連の技術指導を受けることのできる社内体制を築いていること,㋒本件ジャイロの製造開始の3年前,本格的な事業化に向けて,原告を含めた4人の従業員を圧電ジャイロ開発部門に配置し,実際に製造が始まると,開発部を約5人(原告を含む),事業部を約10人 に増強して,毎年圧電 造開始の3年前,本格的な事業化に向けて,原告を含めた4人の従業員を圧電ジャイロ開発部門に配置し,実際に製造が始まると,開発部を約5人(原告を含む),事業部を約10人 に増強して,毎年圧電ジャイロの開発・量産に専従させたこと,⑧円柱型振動ジャイロの量産設備投資として合計約6億8450万円の設備投資を行ったことが認められる。 (原告の反論)ア圧電セラミックス材料についての技術的蓄積が仮にあったとしても,本件各発明当時,被告には円柱型振動ジャイロの設計についての技術的蓄積はなかった。 被告がノイズ対策に関してトップクラスの技術を有していたとしても,その技術を有していたのは,振動ジャイロの製造部門とは別のEMC事業部門であるため,製品の市場分野が異なる。振動ジャイロに使用されたノイズ対策部品はなく,少なくとも原告が被告に在籍していた間に,振動ジャイロのノイズ対策に関して,ノイズ関連技術部門との情報交換を行ったこともない。また,例えば,ノイズ対策において電気回路に薄膜抵抗器を採用したことについては,金属皮膜抵抗が雑音特性に優れ,低雑音の増幅器用途に金属皮膜抵抗をノイズ対策として使用することは当業者にとっては常識的なことであった。 特許第3505686号及び特許第4351346号は,本件各発明の改良発明であり,被告がビデオカメラ,デジタルカメラの手ぶれ補正用途の圧電振動ジャイロの市場に参入し,売上に大きく貢献したのは,基本特許である本件特許権1及び5であり,それと比較すれば,貢献度は比較にならないほど小さい。 イ本件各特許の権利化のプロセスに,弁理士が関与したことは確かであるが,原告が特許出願明細書に近い形で原稿を書き上げ,中間処理も同様に原告が積極的に関与しており,権利化の点で被告が さい。 イ本件各特許の権利化のプロセスに,弁理士が関与したことは確かであるが,原告が特許出願明細書に近い形で原稿を書き上げ,中間処理も同様に原告が積極的に関与しており,権利化の点で被告が寄与した割合は小さい。 被告が振動ジャイロの開発に着手し製品化することになったのは,原告が振動ジャイロの開発を繰り返し提案し,B教授を招いて被告社内で講演を 開催したこと等が影響しており,むしろ,原告の上司は,原告の申入れに対し消極的であった。 人員配置についても,開発開始当初,被告の中では原告とわずか数名のみが圧電振動ジャイロの開発に携わっているだけであった。 設備投資については,営業損益の算定の際に設備投資に掛かった分の減価償却費を毎年一定額ずつ一般管理費として売上高から控除しているはずである。もし仮に,相当の対価の算定に,設備投資金額が控除された営業損益を考慮し,さらに,使用者貢献度においても設備投資金額を考慮するのであれば,設備投資を損益と使用者貢献度において二重に評価することになり妥当でない。 (4) 発明者間の寄与割合(争点4)(原告の主張)そもそもの始まりである円柱にするという着想は,原告が従前研究していた超音波モータの形状を圧電振動ジャイロに活用できないかと単独で発想したところにあった。そして,着想を現実化するための実験は,原告とCの両名で行っていたが,Cは入社まもない新人であり,原告の指示に基づいて原告の補助をしていたにすぎない。そして,本件発明5で共同発明者とされる者はいずれも製造現場の担当者であり,製造工程からのアドバイスを受けたにすぎず,実質的に原告が1人で発明を完成させたものである。 このように,被告が圧電振動ジャイロの開発をすることになったのは,原告に 製造現場の担当者であり,製造工程からのアドバイスを受けたにすぎず,実質的に原告が1人で発明を完成させたものである。 このように,被告が圧電振動ジャイロの開発をすることになったのは,原告による強い要望があったこと,当初被告の中では原告とわずか数名のみが圧電振動ジャイロの開発に携わっており,その後,原告は,一貫して圧電振動ジャイロの開発に携わり,しかも中心的役割を担っていたこと,本件各特許権のいずれも原告が発明者となっていること,本件各特許権以外にも圧電振動ジャイロの周辺特許,実用新案権に係る発明を多数行ってきたことを総合的に考慮すると原告の寄与割合は80%を下らない。 以上の方法により算定すると,原告が受ける相当の対価は下記のとおりとなる。 (計算式)117億4380万円×0.5×0.1×(1-0.9)×0. 8=4697万5200円(被告の主張)ア原告の主張に対する認否原告の主張のうち,Cが新人であったこと,圧電振動子の開発に携わったのは,当初原告と数名のみであったことは認め,その余は否認ないし争う。 イ本件発明1についてB教授は,圧電振動デバイスの専門家であり,原告の大学時代の恩師である以上に,被告との関係も深く,被告に対して様々な技術指導を行い,圧電セラミックス関連技術に関しては,原告に対して直接指導も行っていた。また,B教授は,平成元年4月から死去する平成3年12月まで,被告の特別顧問に就任し,より具体的に圧電振動デバイス関連の技術指導を行っていた。さらに,B教授が優先日の数年前に既に円柱タイプの着想について学会誌に発表していること,出願人が被告及びBであることも考えると,本件発明1におけるB教授の寄与度は圧倒的で,50%を下回ることは た。さらに,B教授が優先日の数年前に既に円柱タイプの着想について学会誌に発表していること,出願人が被告及びBであることも考えると,本件発明1におけるB教授の寄与度は圧倒的で,50%を下回ることはない。 本件特許権1の特許権者は,当初,被告とB教授で,それぞれの持分は特に合意がなく,2分の1ずつと理解されていた。ここで,被告とB教授が,あえて契約で持分割合を決めず,法(民法250条)によって2分の1と推定されるところに従うこととしていたのは,被告側の開発陣とB教授の寄与割合が2分の1と評価されていたからにほかならない。 次に,Cの寄与割合は,原告の4分の1は下回らない。なぜなら,本件発明1に係る実験は全てC1人で行ったのであり,Cは,曲面上への電極 印刷の困難を克服して円柱タイプのジャイロを作製し,実験を行い,確認作業を積み重ねて行ったからである。 以上から,Cの寄与割合は10%とみるべきである。その結果,原告が40%,B教授が50%の寄与割合となる。 ウ本件発明5について最初に被告が量産を開始したCG-16Aの帯状電極の数は6本であったが,量産間近の平成4年11月ころ,ジャイロ開発プロジェクトは,リード線半田付けの作業性を改善するために,帯状電極を曲げた電極形状の検討を行っていた。その検討において,振動子特性の測定を重ねたところ,円周断面若しくは検出軸fyに対して非対称な電極構成をとることによって,駆動軸fxと検出軸fyの周波数差Δfrと振動軸の位置を制御できるという新たな知見が得られた。しかし,当時は,Δfrをゼロにする(極力ゼロに近づける)ことが設計指針であったため,Δfrが発生してしまう曲がった電極構造は,CG-16Aには採用されなかった。しかし,6本電極構成は が得られた。しかし,当時は,Δfrをゼロにする(極力ゼロに近づける)ことが設計指針であったため,Δfrが発生してしまう曲がった電極構造は,CG-16Aには採用されなかった。しかし,6本電極構成は,電極印刷や円柱加工のばらつきなどが原因で,Δfrをゼロにすることは非常に困難で,fxとfyの軸の位置もばらついてしまうという弊害があった。その結果,CG-16Aの歩留まりは60~70%程度しかなかった。 そこで,ジャイロ開発プロジェクトでは,Δfrをゼロにするという発想を変え,むしろ曲がった電極などの非対称な電極構成を利用して,fxとfyの軸の位置を所望の位置に固定しつつ良好な感度を得ることができないか検討することとした。そこでは,原告(開発部所属),D(開発部所属),E(事業部所属),F(事業部所属)の4人が中心となって,非対称な電極構造を種々立案し,試作評価を行い,評価結果についての議論を行った。その結果,議論の中で,6本電極において,駆動電極に対向するアース電極を2分割し,7本電極とする発想にたどり着いたのである。 この7本電極の発想の具体化も,発明者4名が共同で行なった。すなわち,DとEが中心となって円柱状圧電セラミックに7本の帯状電極を印刷し,分極処理を行い,インピーダンス測定等の特性評価を行なった。Fは,7本電極の振動子を駆動,検出する処理回路の設計と実装,および振動ジャイロの組み立て,その特性評価を行なった。原告は,等価回路を用いた理論解析で評価結果の分析を行い,本件発明5の明細書原案を作成した。 特性評価結果や工業化・量産化技術については,発明者全員で検討・議論し,改善を行った。 以上の経緯から明らかなように,7本電極の発想は4名の発明者全員の議論の中で生まれたものである。また,各 評価結果や工業化・量産化技術については,発明者全員で検討・議論し,改善を行った。 以上の経緯から明らかなように,7本電極の発想は4名の発明者全員の議論の中で生まれたものである。また,各発明者はそれぞれの役割をこなして本件発明5を完成させたのであるから,寄与割合は均等で,それぞれ25%である。 (原告の反論)ア本件発明1について被告において,当時,特許出願時に共同開発者とするための基準や,共同出願人とするための基準が必ずしも明確ではなかったこと,B教授と被告上層部との人的関係が密接であったことから,被告がほとんど関係していない研究成果について,被告が共同出願人になったり,逆に,被告が発明した内容であっても,B教授が共同発明者や共同出願人になることが簡単に決められていた。つまり,B教授の寄与が少ない場合でも,B教授を発明者に加えたり,共同出願人とすることもあったのである。したがって,本件特許権1について,B教授が共同出願人であるから,B教授の発明の寄与率が50%であるということはできない。 イ本件発明5について本件発明5以前の6本の帯状電極を有する振動ジャイロ用圧電セラミック円柱振動子は,圧電セラミック円柱の外周面に6本の帯状電極を等間隔 に形成し,まず,1つおきの帯状電極を電気的に接続して2端子とし,この2端子間に約150℃に加熱したシリコンオイル中で直流高電圧を印加して分極処理を行った後,一方の端子を共通アース端子とし,他方の端子は,3つの帯状電極をバラバラにして,その内の1本を駆動端子①,残りの2本を検出端子②および③として構成されていた。 開発当初,振動ジャイロを構成するための良い特性の円柱振動子は,これら駆動端子①,検出端子②及び③それぞれの端 内の1本を駆動端子①,残りの2本を検出端子②および③として構成されていた。 開発当初,振動ジャイロを構成するための良い特性の円柱振動子は,これら駆動端子①,検出端子②及び③それぞれの端子と共通アース電極との間から見た共振周波数fr1,fr2及びfr3の内の最大値と最小値の差Δfrが所定の周波数(例えば3Hz)よりも小さい場合を合格とし,これを満たさない場合には,レーザービームにより帯状電極間隔部に,微小な溝を形成することにより,Δfrを所定の値以下に調整していた。 しかし,原告は,Δfrが10Hz以上の振動子のfr1,fr2及びfr3のデータを整理しているときに,前記①,②,③端子から見たインピーダンスの周波数特性が,一見ばらばらのように見えるが,インピーダンスが極小となる周波数が2つであることに気がついた。さらに,原告は,この2つの共振周波数は,この圧電セラミック円柱に固有の,互いに直交する2つの振動軸方向の振動の共振周波数であり,当初,均質で対称的と考えていた圧電セラミック円柱振動子が,ほんのわずかな形状や材質特性の非対称性,及び,帯状電極の寸法や配置の非対称性のために,互いに直交する固有の振動軸を持ち,この固有の振動軸に沿う共振周波数の差がΔfrとなり,各端子①,②,③の位置関係により,インピーダンス特性の形が決まることを理解した。 そこで,原告は,これまでのΔfrを小さくしようとする考え方を変えて,この直交する振動軸と各端子①,②,③の関係を積極的に制御することを考え,最初に,駆動端子①の中心と円柱の中心を結んだ方向と直角な方向の円柱外周面に,軸と平行な溝を形成する方法を考えつき,実験で予 想通りの結果が得られることを確認した。しかし,この方法では,圧電セラミック円柱に形成した帯状 の中心を結んだ方向と直角な方向の円柱外周面に,軸と平行な溝を形成する方法を考えつき,実験で予 想通りの結果が得られることを確認した。しかし,この方法では,圧電セラミック円柱に形成した帯状電極の位置に合わせて,特定の場所に溝を形成するための加工に手間が掛かるという欠点があった。 次に,原告は,帯状電極の形状を非対称とすることを考え,各帯状電極からの検出端子②,③を円柱の半周側に引き出す電極パターンを思いついた。これも,実験で予想どおり,振動軸を端子①の中心と円柱の中心を結んだ方向に合わせることができ,ある程度のΔfrが生ずることを確認したが,Δfrの大きさを自由に変えられないという問題が残った。 さらに,原告は,帯状電極の数を7本にすることを考えついた。つまり,帯状電極の数を7本(a,b,c,d,e,f,g)とし,まず,1つおきの帯状電極a,c,e,gとb,d,fをそれぞれ電気的に接続して2端子とし,この2端子間に約150℃に加熱したシリコンオイル中で直流高電圧を印加して分極処理を行った後,帯状電極dを駆動端子①,帯状電極bを検出端子②,帯状電極fを検出端子③とすれば,良好な振動ジャイロを構成するための条件を満たすことを思いついたのである。 以上のように,本件発明5は,帯状電極7本としたものであるが,その着想は原告によるものであった。 第3 当裁判所の判断 1 本件ジャイロの生産販売に関する経過について後掲の証拠等によれば,以下の各事実がそれぞれ認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (1) 圧電振動ジャイロの開発開始までの経過ア原告は,昭和62年9月,山形県蔵王温泉において開催された電子情報通信学会主催の超音波研究会に参加し,圧電振動ジャイロと超音波モータに関 (1) 圧電振動ジャイロの開発開始までの経過ア原告は,昭和62年9月,山形県蔵王温泉において開催された電子情報通信学会主催の超音波研究会に参加し,圧電振動ジャイロと超音波モータに関する数件の発表を聴講した。原告は,直ちに,上司に対し,圧電振動ジャイロの開発を提案したが,まだ市場が見えないとの理由で採用されな かった。 (甲7の2,甲40)イその後,原告は,昭和62年12月,B教授(原告の大学時代の恩師)に対し,被告社内における超音波モータ,圧電振動ジャイロ等についての特別講演を依頼し,昭和63年4月から,B教授の指導を受け,超音波モータの研究を開始した。また,原告は,同年11月,NECで開催された「モータ研究会」の終了後,NEC伝送通信事業部の技師長と話をする中で,圧電振動ジャイロの民生品への搭載が近いと感じ,上司に対し,圧電振動ジャイロの開発を提案したが,従前と同様の消極的な回答であった。 (甲7の1及び2,甲40,乙2)ウ村田製作所は,平成2年5月,正三角形断面の金属角柱の3つの面に圧電セラミック板を接着した構造の圧電振動ジャイロを発表した。この直後,被告のG会長(当時)とB教授との会談において,G会長が村田製作所の製品に関して質問したのに対し,B教授が既に被告社内において振動ジャイロの講演をしている旨を答えたことから,G会長は,原告の上司に対し,開発を指示し,被告において圧電振動ジャイロの開発が開始された。 (甲11,40,乙2)(2) 本件ジャイロの生産販売状況ア被告は,平成3年4月4日までに,本件発明1~3に係る特許出願を行った。その後,被告は,開発目標をカーナビ用からビデオカメラ用に変更し,平成4年5月,ビデオカメラ用プロトタイプ(試作機)を発表した。 そ は,平成3年4月4日までに,本件発明1~3に係る特許出願を行った。その後,被告は,開発目標をカーナビ用からビデオカメラ用に変更し,平成4年5月,ビデオカメラ用プロトタイプ(試作機)を発表した。 そして,CG-16A(本件発明1の実施品)がキヤノンのビデオカメラに採用され,被告は,平成5年度(年度は当該年4月から翌年3月までである。以下同じ。)から,CG-16Aの生産を開始した。しかし,CG-16Aは,検出信号の直流化回路等が内蔵されていなかったため,キヤノン以外のメーカーには採用されなかった。被告は,ノイズ対策や村田製 作所の製品との互換性を施すなどの改良を加え,平成6年度からCG-16前期型(本件発明1の実施品)の販売を開始し,CG-16前期型はキヤノン以外のメーカーにも採用された。この間,被告は,平成5年5月10日までに,本件発明4及び5に係る特許出願を行った。また,被告は,同年7月,カーナビ用圧電振動ジャイロの開発を再開した。 (甲1~5の各1,甲11,40,乙9,23,証人F,弁論の全趣旨)イ被告は,平成8年度からCG-16後期型(本件発明5の実施品)の販売を開始した。また,被告は,同年度において,カーナビ用圧電振動ジャイロとしてCG-32A(本件発明5の実施品)を販売したものの,CG-32Aの生産は同年度にとどまった。その後,被告は,平成9年度からCG-L33(本件発明5の実施品),平成13年度からCG-L43(本件発明5の実施品),平成15年度からCG-L53(本件発明1の実施品)の販売を開始した。また,被告は,平成14年度からCG組込製品(本件ジャイロを組み込んだ3Dモーションセンサ)の販売を開始した。 CG組込製品には,CG-L33,CG-L43,CG-L53が組み込まれた。 (甲11,乙23 告は,平成14年度からCG組込製品(本件ジャイロを組み込んだ3Dモーションセンサ)の販売を開始した。 CG組込製品には,CG-L33,CG-L43,CG-L53が組み込まれた。 (甲11,乙23,26~29,弁論の全趣旨)ウ本件ジャイロの販売数量及び金額は,別紙「CGシリーズ型式別売上金額」のとおりである。被告は,平成21年2月,振動ジャイロ事業からの撤退を表明し,平成22年10月,本件ジャイロの生産を終了した(なお,顧客の都合で,在庫販売により供給を継続している顧客が1社ある。)。 (乙9,23,証人F,弁論の全趣旨)(3) 振動ジャイロ市場における市場占有率と他社の動向ア株式会社富士経済・株式会社富士キメラ総研の調査によると,振動ジャイロ市場における市場占有率は,以下のとおりである。 平成6年(カーナビその他の用途を含む数字である。)(数量)村田製作所62.2%,被告26.7%,松下電子部品8. 9%,その他2.2%(金額)村田製作所60.3%,被告22.2%,松下電子部品7. 9%,その他9.5%平成7年(カーナビその他の用途を含む数字である。)(数量)村田製作所61.6%,被告24.7%,松下電子部品8. 2%,その他5.5%平成9年(カーナビその他の用途を含む数字である。)(数量)村田製作所66.7%,被告25.0%,松下電子部品7. 9%,その他0.4%(金額)村田製作所54.1%,松下電子部品22.2%,被告17. 0%,その他6.7%平成10年(カーナビその他の用途を含む数字である。)(数量)村田製作所69.9%,被告16.9%,松下電子部品10 下電子部品22.2%,被告17. 0%,その他6.7%平成10年(カーナビその他の用途を含む数字である。)(数量)村田製作所69.9%,被告16.9%,松下電子部品10. 3%,その他2.9%平成13年(カーナビその他の用途を含む数字である。)(数量)村田製作所39.5%,松下電子部品25.6%,被告16. 3%,その他18.6%平成17年(民生用〔主として手ぶれ補正用途〕)(数量)村田製作所80.0%,被告9.4%,セイコーエプソン7. 1%,その他3.5%平成18年(民生用〔主として手ぶれ補正用途〕)(数量)村田製作所75.0%,パナソニックエレクトロニックデバイス11.3%,エプソントヨコム8.8%,被告2.5%,その他2.5% 平成19年(民生用〔主として手ぶれ補正用途〕)(数量)村田製作所70.6%,パナソニックエレクトロニックデバイス10.3%,エプソントヨコム6.6%,被告0.4%,その他12.1%平成20年(民生用〔主として手ぶれ補正用途〕)(数量)パナソニックエレクトロニックデバイス37.9%,村田製作所29.0%,エプソントヨコム27.1%,その他(被告を含む。)5.9%(乙36~43)イ株式会社中日社の資料によると,振動ジャイロ市場における市場占有率は,以下のとおりである。 平成11年(カーナビその他の用途を含む数字である。)(数量)村田製作所55.0%,被告26.0%,松下電子部品18. 6%,その他0.4%(甲41の1)ウ村田製作所は,平成10年,バイモルフ圧電振動ジャイロ(2 である。)(数量)村田製作所55.0%,被告26.0%,松下電子部品18. 6%,その他0.4%(甲41の1)ウ村田製作所は,平成10年,バイモルフ圧電振動ジャイロ(2枚の圧電素子を貼り合わせた構造のもの)を商品化し,小型化・低価格化の要求に対応した。また,被告の供給先であったソニーは,平成13年,バイモルフ圧電振動ジャイロを発売し,平成17年,MEMS(MicroElectroMechanicalSystems)振動ジャイロを商品化した。さらに,同年以降,エプソントヨコム株式会社,インベンセンス社,パナソニックエレクトロニックデバイス株式会社(旧・松下電子部品),STマイクロエレクトロニクス社がMEMS振動ジャイロを商品化した。2007有望電子部品材料調査総覧上巻(株式会社富士キメラ総研・平成18年12月27日発行)には,今後の方向性として,「カメラ機器の手ブレ補正用には安価な圧電振動ジャイロが用いられており,MEMSジャイロは用いられていない。 しかし圧電振動ジャイロではサイズが大きくなってしまう為携帯電話への搭載ができない。一方MEMSでは価格が高くなってしまうため,現状では携帯電話への採用が難しくなっている。」と記載され,2008有望電子部品材料調査総覧上巻(株式会社富士キメラ総研・平成19年12月28日発行)には,今後の方向性として,「MEMS技術開発の進展によりMEMSジャイロがDSC,DVC等民生用途でも採用されている。今後も高性能で小型化が可能なMEMSジャイロのシェアが伸びると予測する。」と記載されていた。 (甲46,乙7~9,13~18,41,42,弁論の全趣旨) 2 超過売上高の有無及び割合(争点1)について(1) 後掲の証拠によれば,以下の各事実がそれぞれ する。」と記載されていた。 (甲46,乙7~9,13~18,41,42,弁論の全趣旨) 2 超過売上高の有無及び割合(争点1)について(1) 後掲の証拠によれば,以下の各事実がそれぞれ認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 ア振動ジャイロ(ア) 振動ジャイロは,振動子に対して回転を加えて振動の方向と直交する方向に発生する力(コリオリの力)の大きさを検出する方法によって,振動ジャイロが搭載された物体(例えばビデオカメラ)の角速度(単位時間当たりの回転速度)を検出するセンサである(圧電的に駆動及び検出を行って角速度を検出するものが圧電振動ジャイロである。)。回転角度は,検出された角速度を積分することで得ることができる。 (甲7の2,甲8)(イ) 振動ジャイロのうち,音叉型は,音叉形状の振動子に励振用及び検出用の圧電素子を貼り付けた振動ジャイロである。 柱状型(音片型ともいう。)は,柱状の振動子を使用する振動ジャイロであり,①圧電素子を振動子に貼り付ける方式と②圧電材料の振動子を使用して振動子表面に電極を形成する方式がある。①には,振動子が四角柱(GEタイプ),三角柱(村田タイプ)のものがあり,②には, 振動子が圧電セラミック円柱(トーキンタイプ)のもののほか,バイモルフ構造(2枚の圧電素子を貼り合わせた構造)のものがある(別紙参考図面1参照)。 (甲1及び5の各1,甲7の2,甲8,9,31,乙2,13)(ウ) MEMS振動ジャイロは,微細加工技術(MEMS技術)に基づく振動ジャイロであり,様々な形状のものがある。 (甲9,乙7,15,17)イ本件各発明以前の文献電子情報通信学会技術研究報告(社団法人電子情報通信学会・昭和62年9月2 く振動ジャイロであり,様々な形状のものがある。 (甲9,乙7,15,17)イ本件各発明以前の文献電子情報通信学会技術研究報告(社団法人電子情報通信学会・昭和62年9月21日発行)のうち,B教授ほか2名執筆の「交差指電極を用いた圧電磁器単体音片ジャイロ」は,振動ジャイロ用振動子には音片あるいは音叉振動子が用いられ,これらの振動子には金属に圧電磁器(圧電セラミックス)を接着した構造となっているが,この接着層の存在が振動損失を大きくし,接着の位置ずれや接着層の不均一による特性のバラツキを生じやすく,特に振動ジャイロに用いる場合には,この接着層の存在に起因する種々のアンバランスが無回転時出力電圧(ヌル電圧)の発生原因となることを指摘している。 そこで,正方形断面の圧電磁器角棒を振動子として用いる振動ジャイロを提案し,正方形断面の圧電磁器角棒の4面に交差指電極を設け,この電極を用いて対称的な分極分布となるように分極処理を行い,音片の上下・左右に2組の対向2面上の交差指電極をそれぞれ屈曲振動の駆動用及び検出用の電極として使用し,分極の向きとの関係から,駆動及び検出端子にそれぞれ差動トランス(又は差動増幅器)を使用するとしている(別紙参考図面2参照)。このような構成の振動ジャイロでは,接着層がないため構造上のアンバランスを小さくすることができ,容量比も小さくなるという特徴があるとし,「正方形断面の圧電磁器音片の代わりに,円形断面の 圧電磁器丸棒に4組の交差指電極を対称に設けた構造にすることもできる。 対称性に重点を置けば,この方がジャイロにはむしろ適しているとも言える。」と指摘している。 そして,ヌル電圧をゼロに調整する方法として,振動子の角部を切除する方法(コーナーカット調整法)が有効で 重点を置けば,この方がジャイロにはむしろ適しているとも言える。」と指摘している。 そして,ヌル電圧をゼロに調整する方法として,振動子の角部を切除する方法(コーナーカット調整法)が有効であり,それでもなお残るヌル電圧は補償電圧を印加する方法(補償電圧法)によりゼロにすることができるとしている。 (乙1)ウ本件各特許権に係る明細書の記載(ア) 本件特許権1に係る明細書には,従来技術として,「第13図は,従来の圧電振動ジャイロの一例を示す概略図である。この圧電振動ジャイロは,音叉振動子を構成する振動音片101,101´の先端に振動音片101,101´の振動方向と直角な方向に振動するように構成された振動音片102,102´が付加されている。振動音片101,101´および102,102´は,金属で構成され,各々には両面に電極が形成され,かつ,厚さ方向に分極された圧電セラミックス薄板103,104,105,106が接合されている。」(以下「本件特許権1に係る従来技術①」という。段落【0003】),「第14図は,従来の圧電振動ジャイロの他の例を示す概略図である。この圧電振動ジャイロは,断面が正方形である金属柱107の隣り合う面に,両面に電極が形成されるとともに厚さ方向に分極された圧電セラミックス薄板108,109が接合されている。」(以下「本件特許権1に係る従来技術②」という。段落【0004】),「第15図も,従来の圧電振動ジャイロの他の例を示す概略図である。この圧電振動ジャイロは,断面が正三角形である金属三角柱110の三つの面のほぼ中央部に,それぞれ両面に電極がされているとともに厚さ方向に分極された圧電セラミックス 薄板111,112,113が接合されている。」(以下「本件特許権1に係る従来技術③ 0の三つの面のほぼ中央部に,それぞれ両面に電極がされているとともに厚さ方向に分極された圧電セラミックス 薄板111,112,113が接合されている。」(以下「本件特許権1に係る従来技術③」という。段落【0004】)と記載されている(第13図~第15図につき別紙参考図面3参照)。 また,同明細書には,本件発明1が解決しようとする課題として,「従来の圧電振動ジャイロにおいては,いずれも振動音片と圧電セラミックス薄板を接着剤で接合しており,接着位置のばらつきまたは接着剤の層の厚さのばらつきなどにより,圧電振動ジャイロの特性が変化するという問題があった。」(以下「本件特許権1に係る課題①」という。 段落【0007】),「第13図に示した従来の圧電振動ジャイロにおいては,振動音片101,101´と102,102´を直角に接合する必要があるので,精度良く組み立てるのが難しいという問題があった。」(以下「本件特許権1に係る課題②」という。段落【0007】),「第13図および第14図示した(注:原文のまま)従来の圧電振動ジャイロにおいては,励振側の振動方向が検出側の振動方向とが精度良く直交していない場合には,圧電振動ジャイロを回転させないときにも出力電圧が発生し,零バランスを調整するために経験および勘により振動音片の一部を機械的に削って調整をする必要があった。」(以下「本件特許権1に係る課題③」という。段落【0007】),「本発明の課題は,構造が簡単であり,接着剤が不要であり,かつ,特性のばらつきが少ない圧電振動ジャイロを提供することにある。また,本発明の他の課題は,研削等の機械的手段によらず,簡単な電気回路により無回転時の零バランス調整が可能である圧電振動ジャイロを提供することにある。」(段落【0007】)と記載されている にある。また,本発明の他の課題は,研削等の機械的手段によらず,簡単な電気回路により無回転時の零バランス調整が可能である圧電振動ジャイロを提供することにある。」(段落【0007】)と記載されている。 さらに,同明細書には,発明の効果として,「本発明によれば,圧電振動子が圧電セラミックス円柱を用いているため,寸法精度の高い振動子が得られ,材質特性的に均質な材料を用いることにより直交する二つ の振動モ-ドの特性を精度よく合わせることができ,構造が簡単である上に,接着剤が不要で,接着位置や接着層のばらつきなどによる特性のばらつきの無い圧電振動ジャイロが得られる。」(以下「本件特許権1に係る効果①」という。段落【0023】),「本発明のよれば(注:原文のまま),研削等の機械的な手段によらず,可変抵抗器による調整や調整コア付きのトランスによる調整など電気回路により無回転時の零バランスの調整をすることができる圧電振動ジャイロが得られる。」(以下「本件特許権1に係る効果②」という。段落【0023】)と記載されている。 (甲1の1)(イ) 本件特許権2に係る明細書には,従来技術として本件特許権1に係る従来技術①~③と同じもの(段落【0004】,【0006】,【0007】),発明が解決しようとする課題として本件特許権1に係る課題①及び②と同じもの(段落【0011】,【0012】),発明の効果として本件特許権1に係る効果①と同じもの(段落【0024】)が記載されている。 (甲2の1)(ウ) 本件特許権3に係る明細書には,従来技術として本件特許権1に係る従来技術①~③と同じもの(段落【0004】,【0006】,【0007】),発明が解決しようとする課題として本件特許権1に係る課題①及び②と同じもの(段落【 書には,従来技術として本件特許権1に係る従来技術①~③と同じもの(段落【0004】,【0006】,【0007】),発明が解決しようとする課題として本件特許権1に係る課題①及び②と同じもの(段落【0011】,【0012】)が記載されている。同明細書には,発明の効果として,本件特許権1に係る効果①と同じもの(段落【0033】)が記載されているほか,「駆動用の帯状電極(入力端子)と検出用の帯状電極(出力端子)とが分離しているため,駆動用の帯状電極に同一位相で同一振幅の電圧を印加する際に抵抗分圧やバッファ用アンプを使用することなしに直接導体で接続するこ とが可能となる結果,その分自励発振回路を含めた回路構成が簡単になるという効果もある。」(段落【0034】)と記載されている。 (甲3の1)(エ) 本件特許権4に係る明細書には,従来技術として,特願平2-335987号出願(本件特許権1の優先権主張の基礎出願)に係る圧電振動ジャイロの実施例とそれに関する説明が記載され(段落【0003】~【0008】),発明が解決しようとする課題として,「従来の圧電振動ジャイロにおいては,駆動端子とした帯状電極の中心線と圧電セラミックス円柱の中心軸とを含む面の方向に屈曲振動するため,その方向の屈曲振動の共振周波数を調整するためには,駆動端子とした帯状電極あるいはこの帯状電極と圧電セラミックス円柱の中心軸に関して対称の位置にある帯状電極(アース電極となっている)の少なくともいずれか一方の帯状電極の中央部を機械的に削る必要がある。しかし,帯状電極そのものを削ると電極面積が変化して,静電容量の値が変化したジャイロ特性に悪い影響を与えてしまうため,帯状電極の中央部を機械的に削ることはできない。」(段落【0010】)と記載され,発明の効果として, ものを削ると電極面積が変化して,静電容量の値が変化したジャイロ特性に悪い影響を与えてしまうため,帯状電極の中央部を機械的に削ることはできない。」(段落【0010】)と記載され,発明の効果として,「あらかじめ適当な面積を有する帯状電極の中央部に無電極部を形成し,該無電極部に溝を形成することによって,圧電ジャイロの特性を変化させず,各共振周波数を容易に一致させることができ,高精度の圧電振動ジャイロを得ることができる。」(段落【0028】)と記載されている。 (甲1及び4の各1)(オ) 本件特許権5に係る明細書には,従来技術として,「図7は従来の圧電振動ジャイロに用いられている圧電振動子の構造概略図であり,圧電セラミック円柱10の外周面上の円周を6等分する位置に長さ方向と平行な6本の帯状電極1,2,3,4,5,6が形成されている。これ らの帯状電極を互いに一つおきに接続して2端子として分極処理を施し,分極処理後,一つおきの帯状電極2,4,6を接続して共通アース電極とし,残りの帯状電極の内,帯状電極1を駆動電極,帯状電極3及び5を検出用電極として圧電振動ジャイロを構成することが出来る。」(段落【0003】),「円柱の屈曲振動においては互いに直交する振動モードfxとfyが存在し,振動モードfxとfyが完全に一致(縮退)し,円柱が形状的にも,弾性的にも完全に対称である場合には,これらの振動方向は注目する任意の方向に固定することが可能である。しかし,現実には僅かの非対称性から振動モードfxとfyが異なると共にその振動方向も特定の方向に限定される。」(段落【0005】),「図9はこの二つの振動モードと駆動及び検出用の帯状電極との関係を示すモデルである。図9(a)は振動モードfxの振動方向と駆動用の帯状電極の中心とが一致して 向に限定される。」(段落【0005】),「図9はこの二つの振動モードと駆動及び検出用の帯状電極との関係を示すモデルである。図9(a)は振動モードfxの振動方向と駆動用の帯状電極の中心とが一致している場合であり,図9(b)は振動モードfxの振動方向が駆動用の帯状電極の中心から角度δだけずれている場合を示している。」(段落【0006】),「圧電振動ジャイロは前述したように振動モードfxの振動方向に励振している状態で,振動子が回転させられた場合に,振動モードfyの振動が励振され,このfyの振動の大きさを検出用の帯状電極で検出するものであり,以下のような基本条件が要求される。」(段落【0008】),「第1の基本条件は,振動モードfxの振動に対して二つの検出用の帯状電極が対称的に配置され,回転させない場合に発生する電圧の振幅及び位相が一致していることであり,第2の基本条件は,振動モードfyができるだけfxと一致していることである。」(段落【0009】),「この二つの基本条件の中で,第1の条件がより重要であり,回転しない場合の出力電圧(ヌル電圧)をできるだけゼロに近づける条件となっている。第2の条件は圧電振動ジャイロの感度に関する条件であり,振動モードfxとfyが一致 するほど感度が大きくなる。」(段落【0010】)と記載されている(図7及び図9につき別紙参考図面4参照)。 また,同明細書には,発明が解決しようとする課題として,「従来の圧電セラミック円柱を用いた圧電振動ジャイロにおいては,特に振動方向を制御することが難しく,各端子からみた共振周波数をできるだけ一致させる方法で実効的に振動方向を駆動用の電極に合わせている。このため,3つの端子からみた共振周波数の調整に時間がかかり作業性が悪かった。」(段落【0011】), 子からみた共振周波数をできるだけ一致させる方法で実効的に振動方向を駆動用の電極に合わせている。このため,3つの端子からみた共振周波数の調整に時間がかかり作業性が悪かった。」(段落【0011】),「本発明の主たる課題は,圧電セラミック円柱の外周面に形成する帯状電極の位置を適切に配置することにより意図的に圧電セラミック円柱の対称性をくずし,振動モードfxとfyの差を所定の範囲内に入れた状態で振動方向を一定の方向に固定することができるようにすることにある。」(段落【0012】),「本発明は,更に,圧電セラミック円柱の外周面に長手方向に平行な溝を形成して振動方向を固定する場合に,電気的な特性変化を少なくすることを課題とする。」(段落【0013】)と記載されている。 さらに,同明細書には,発明の効果として,「本発明によれば,振動方向と対称な位置に検出用の電極が形成されているため,検出用の電極に発生する電圧の振幅及び位相がほぼそろっており,最終的な共振周波数の調整が容易となると共に圧電振動ジャイロの特性のばらつきも小さくなる。」(段落【0037】),「本発明によれば,圧電セラミック円柱に溝を形成して共振周波数の微調整を行う場合に,二つのアース用の電極に挟まれた部分に溝を形成するため,溝形成による振動子の電気的特性の変化が少ない振動子が得られる。」(段落【0038】)と記載されている。 (甲5の1)(2) 以上に基づいて,まず,相当の対価の算定方法について検討する。 原告は,本件特許権1の出願日である平成3年1月25日よりも前に,本件各特許権に係る特許を受ける権利を被告に承継させた(当事者間に争いがない。)のであるから,当該承継時において,被告に対する相当の対価の請求権を取得したのであり,相当の対価の額 25日よりも前に,本件各特許権に係る特許を受ける権利を被告に承継させた(当事者間に争いがない。)のであるから,当該承継時において,被告に対する相当の対価の請求権を取得したのであり,相当の対価の額を定めるに当たっては,改正前特許法35条4項が適用される。 使用者等は職務発明に係る特許権について無償の通常実施権を有するのであるから(特許法35条1項),改正前特許法35条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,当該発明を実施することにより得るべき利益ではなく,これを超えて発明の実施を排他的に独占することによって得られる利益(独占の利益)をいうと解するのが相当である。 そうすると,本件のように使用者等が職務発明に係る特許権を自己実施していた場合には,超過売上高(全売上高-通常実施権による売上高)に,第三者に実施許諾した場合の想定実施料率を乗じることによって,独占の利益(超過利益)の額が算出できるから,これから使用者貢献度に相当する額を控除し,発明者間の寄与割合を乗じれば,相当の対価を算定することができる(当該算定方法については当事者間に争いがない。)。 もっとも,「使用者等が受けるべき利益」は,権利承継時において客観的に見込まれる利益をいい,具体的には,特許権の存続期間の終了までの独占の利益を指すから,当該利益の認定に当たっては,口頭弁論終結時までに生じた使用者等における実際の売上高等の一切の事情を考慮することができるというべきである。 (3) そこで,超過売上高の有無及び割合について検討する。 ア原告は,村田製作所と被告とが市場を2分し,他社の追随を許さなかったのは,①圧電セラミックス円柱の外周面にこの円柱の長さと平行な複数個の帯状電極を形成すること,②これらの帯状電極を分極 ア原告は,村田製作所と被告とが市場を2分し,他社の追随を許さなかったのは,①圧電セラミックス円柱の外周面にこの円柱の長さと平行な複数個の帯状電極を形成すること,②これらの帯状電極を分極と振動子の励振及び振動の検出に利用すること,③円柱が軸の周りに回転したときに生ず る振動成分を検出することを基本にして,本件各発明のバリエーションをそれぞれ権利化することができたからである旨主張する。 しかしながら,本件各発明以前の文献であるB教授ほか2名執筆の「交差指電極を用いた圧電磁器単体音片ジャイロ」には,正方形断面の圧電磁器角棒を振動子として用いる振動ジャイロが提案され,「正方形断面の圧電磁器音片の代わりに,円形断面の圧電磁器丸棒に4組の交差指電極を対称に設けた構造にすることもできる。」と記載されていたことが認められる(上記(1)イ)。 そして,上記文献の記載に照らすと,上記①~③については,本件各発明以前に公表されていたのであるから,本件各発明によって圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロを独占できたとはいえないのであって,本件各発明はその一態様をそれぞれ技術的範囲とするにすぎない。 具体的には,電極の数及び位置について,本件発明1は6以上の偶数個の電極を等間隔に設けたものに,本件発明2は240°の範囲に奇数個の電極を等間隔に設けたものに,本件発明3は120°ごとに設けた3個の電極に加えて2個の電極を有するものに,本件発明5は7個の電極を有するもの,又は1つの面に対してのみ対称となるような位置に配置される6個の電極を有するものに,それぞれ技術的範囲が限定され(前提事実(2)ア~ウ及びオ),本件発明4は,電極の数及び位置については,限定されないものの,電極の中央部に無電極部を有す な位置に配置される6個の電極を有するものに,それぞれ技術的範囲が限定され(前提事実(2)ア~ウ及びオ),本件発明4は,電極の数及び位置については,限定されないものの,電極の中央部に無電極部を有するものに技術的範囲が限定されている(前提事実(2)エ)。 このように,本件各発明は,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロの一態様をそれぞれ技術的範囲とするにすぎないのであるから,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロを独占するものではないし,本件各発明が技術的範囲とする各態様を併せても,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロを事実上独占するもので あるとも認められない。 イ以上を前提として,本件ジャイロが本件発明1及び5の実施品であること(前記1(2)ア及びイ)を踏まえ,更に検討する。 本件発明1は,その効果として,本件特許権1に係る明細書の記載のように圧電セラミック円柱を採用したことによって寸法精度の高い振動子が得られるかは疑問があるものの(実際の工程では圧電セラミックを正四角柱に切り出して円柱に研磨加工をしていた〔乙47,証人F〕。),圧電素子を振動子に貼り付ける方式と比較すると,接着剤が不要で,接着位置や接着層のばらつきなどによる特性のばらつきを回避することができる効果があったと認められ(前提事実(3)イ,上記(1)ウ(ア)),小型化でも有利であったと解される。また,本件発明5は,その効果として,共振周波数の調整を容易にする効果があったと認められ(前提事実(3)イ,上記(1)ウ(オ)),共振周波数の調整工程を簡略化できる効果があったと解される。 そして,本件ジャイロは,平成13年までは,カーナビその他の用途を含めても数量ベースで16.3~26.7% 記(1)ウ(オ)),共振周波数の調整工程を簡略化できる効果があったと解される。 そして,本件ジャイロは,平成13年までは,カーナビその他の用途を含めても数量ベースで16.3~26.7%の市場占有率があり(前記1(3)ア及びイ),証拠(証人F)によれば,同時期のビデオカメラ用途では,村田製作所に次いで20~30%程度の市場占有率があったと認められる。その後,本件ジャイロの市場占有率は低下したと推測されるものの,平成17年においても民生用の数量ベースで9.4%の市場占有率を維持していた(前記1(3)ア)のであるから,本件発明1及び5の代替技術の存在が否定できないとしても,本件発明1及び5の実施による超過売上高が存在すると認めるのが相当である。また,本件発明1及び5の技術的範囲及び効果に加え,本件ジャイロの市場占有率を考慮すると,超過売上高の割合は40%と認めるのが相当である(なお,CG組込製品とCG-32Aにつき後記(4)イにおいて,特許登録前につき後記(5)において,更に検討する。)。 ウところで,本件発明3及び4が実施されていないことについては当事者間に争いはなく,本件発明2が実施されたことを認めるに足りる証拠はない。この点について,原告は,本件発明2~4が円柱型振動ジャイロについて他社の参入を防ぐ効果があり,超過売上高に寄与している旨主張する。 しかしながら,上記アのとおり,本件各発明が技術的範囲とする各態様を併せても,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロを事実上独占するものであるとも認められないから,他社の参入を防ぐ効果があったとはいい難いし,具体的に他社の参入を防いだことを認めるに足りる証拠もないから,原告の主張は採用できない。 (4) これに対し,被告は,独占の利 も認められないから,他社の参入を防ぐ効果があったとはいい難いし,具体的に他社の参入を防いだことを認めるに足りる証拠もないから,原告の主張は採用できない。 (4) これに対し,被告は,独占の利益(超過利益)がない旨を主張するので検討する。 ア被告は,①第三者に実施許諾を求められたことがない,②圧電素子の構造ではなくパッケージ全体が評価される,③2社購買という顧客の希望によって村田製作所の約半分程度のシェアを獲得したにすぎない,④本件各発明において意味があるのは実施形態とでもいうべき部分であるが,他の事業者は別の実施形態を選択することが可能である,⑤本件各特許権の有効期間中に他社が別の技術によって市場に参入している,⑥被告製品の歩留まりは80%程度に留まっており,トータルの生産性の点で,円柱タイプが優位であるという事実はないとして,本件各特許権によって市場を独占できていないから,無償の通常実施権に基づく実施によるものを超えた利益は存在していない旨主張する。 しかしながら,超過利益は発明の実施を排他的に独占することによって得られる利益であって,市場の独占がある場合に限って超過利益の存在が認められるわけではないから,市場の独占ができていないからといって,超過利益の存在を否定することはできない。また,上記③については,認めるに足りる証拠はないし,上記①,②,④ないし⑥の事情を考慮しても, 上記(3)イにおいて検討した事情に照らすと,本件において超過利益の存在を否定することは困難である。 イまた,被告は,CG組込製品は3Dモーションセンサ市場用,CG-32Aはカーナビ市場用の製品で,ビデオカメラやデジタルカメラの手ぶれ補正用に使用される圧電セラミックスを用いた振動ジャイロの市場の対象製品ではない旨主 組込製品は3Dモーションセンサ市場用,CG-32Aはカーナビ市場用の製品で,ビデオカメラやデジタルカメラの手ぶれ補正用に使用される圧電セラミックスを用いた振動ジャイロの市場の対象製品ではない旨主張する。 確かに,CG組込製品は3Dモーションセンサ市場用,CG-32Aはカーナビ市場用の製品であって(前記1(2)イ),本件ジャイロの主要な市場であったビデオカメラの手ぶれ補正用の製品ではない。しかしながら,CG組込製品は,CG-L33,CG-L43,CG-L53を組み込んだ製品であって(前記1(2)ウ),CG-L33,CG-L43,CG-L53を応用した製品であるから,CG組込製品の売上高(ただし,組み込んだCG-L33,CG-L43,CG-L53の価格部分に限る。)を含めて独占の利益を認めるのが相当である。 他方で,証拠(乙23,証人F)によれば,カーナビ用途では,誤差の原因の抑制が重要で,高い出力と高い温度安定性が要求されていたのに対し,CG-32Aでは十分な対応ができずに歩留りが低く1万5900個を出荷したにとどまったこと,その後被告はカーナビ市場から撤退したことがそれぞれ認められるのであるから,CG-32Aについて独占の利益を肯定することは困難である。 ウさらに,被告は,被告ジャイロ事業は,ほぼ毎年度赤字続きで,累積では売上高から売上原価を控除した売上総利益でみても赤字となっており,本件各発明を実施したことにより被告が受けた利益は全く認められない旨主張する。 確かに,甲11,乙23,原告本人尋問の結果によると,被告ジャイロ事業が赤字であったことがうかがえる。しかしながら,改正前特許法35 条4項の「使用者等が受けるべき利益」とは,権利承継時において客観的に見込まれる利益をいうの の結果によると,被告ジャイロ事業が赤字であったことがうかがえる。しかしながら,改正前特許法35 条4項の「使用者等が受けるべき利益」とは,権利承継時において客観的に見込まれる利益をいうのである。被告の提出する損益計算表(乙23)をみても,損失のある年度ばかりではなく,利益の認められる年度も存在する。そのことからは,本件発明1及び5の実施による事業はおよそ利益の上がらない事業ではなく,市場環境,被告の事業方針等によっては利益を生み出すことのできる事業であることが認められる。そして,別紙「CGシリーズ型式別売上金額」のとおり,被告には,本件発明1及び5の実施品の製造・販売により1億円以上の売上が十数年にわたって継続して認められるのである(そのうちの5年は,30億円を超える売上高である。)。そうすると,当該職務発明の実施に係る事業において最終的に損失があったとしても,上記のとおり,超過売上高が存在する本件においては,独占の利益を否定することはできないというべきである。 (5) 最後に,特許登録前の独占の利益について検討するに,被告は,登録前に独占の利益は存在しない旨主張し,登録後の2分の1の独占力を認める考えがあり得てもそれは公開後に限られる旨主張する。 しかしながら,特許登録前であっても,出願公開後は一定の要件を満たせば補償金を請求することができるから(特許法65条),少なくとも出願公開後においては,事実上の独占力があると認められる。もっとも,差止請求権や損害賠償請求権は認められないから,その独占力が登録後と比較して小さいといえるのであって,本件発明1及び5の内容,効果等を考慮すると,その登録前の超過売上高の割合は登録後のものの2分の1と認めるのが相当である(なお,本件特許権1に係る出願公開は平成5年3月30日, いといえるのであって,本件発明1及び5の内容,効果等を考慮すると,その登録前の超過売上高の割合は登録後のものの2分の1と認めるのが相当である(なお,本件特許権1に係る出願公開は平成5年3月30日,本件特許権2に係る出願公開は平成7年1月10日であるから〔甲1及び5の各1〕,本件発明1及び5の実施品の販売はいずれも出願公開以降である〔前記1(2)〕。)。 この点について,被告は,本件特許権5については,拒絶理由通知書が2 回にわたって発送されており,登録の可能性は,一層不確かであったから,他社に対する抑止力も当然低く,その実施料率はさらに半分の4分の1程度である旨主張する。しかしながら,特許権のうち1度も拒絶理由通知を受けないで特許登録に至っているものは少数であることなどを考慮すると,被告の主張は採用できない。 (6) 以上のとおり,本件ジャイロ全体の売上高のうち,CG-32Aの売上高を除いて,本件発明1及び5の実施による超過売上高の割合は,特許登録後においては40%,特許登録前においては20%であると認められる。 3 想定実施料率(争点2)について(1) 原告は,本件各発明は,村田製作所の特許と市場を2分するものであって,他社の追随を許さないものとなっていたから,その基本特許性は揺るぎないなどとして,想定実施料率は10%を下らない旨主張する。 しかしながら,前記2(3)アのとおり,本件発明1及び5は,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロの一態様をそれぞれ技術的範囲とするにすぎないのであるから,基本特許であるということはできない。 (2) 他方で,被告は,村田製作所の特許権の技術的範囲に属さない製品の開発ができたにすぎないなどとして,仮に想定実施料率を仮定したとしても1%を上 から,基本特許であるということはできない。 (2) 他方で,被告は,村田製作所の特許権の技術的範囲に属さない製品の開発ができたにすぎないなどとして,仮に想定実施料率を仮定したとしても1%を上回ることはあり得ない旨主張する。しかしながら,本件においては,本件発明1及び5の実施による独占の利益(超過利益)が認められるのであるから,被告の主張は採用できない。 また,被告は,本件ジャイロは,圧電振動子以外にも,ガラエポ基盤,IC,金属ケース等様々な部材によって構成され,実際の本件ジャイロの単価に占める振動子の割合は1割程度にすぎないなどとして,製品価格の0. 1%程度にすぎない旨主張する。しかしながら,本件発明1及び5は,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロに関する発明であって,振動子自体の発明ではないから,本件ジャイロの価格を基準として想定実施 料率を定めることが不当とはいえない。 さらに,被告は,本件ジャイロには他の複数の特許発明が実施されているとして,これら他の特許発明の寄与度による減額を受ける旨主張する。確かに,証拠(乙4の3~4の10,4の13,4の14,乙21,22)及び弁論の全趣旨によれば,特許第3505686号は,各電極の半田部を円柱の外周面の片半分領域内に集合させて配置させることによって,上方に配置したすべての半田部から直接リード線を引くことを可能にしたものであり,CG-16前期型,CG-16後期型,CG-L33において実施されていること,特許第4351346号は,駆動部の電極パターンと検出部の電極パターンとの形状が,検出部の共通アース電極の一軸方向の中央部分が欠かれていることにより異なっており,それにより圧電振動子に機械的加工を加えることなく振動方向の軸ズレの発生を抑制したもの 出部の電極パターンとの形状が,検出部の共通アース電極の一軸方向の中央部分が欠かれていることにより異なっており,それにより圧電振動子に機械的加工を加えることなく振動方向の軸ズレの発生を抑制したものであり,CG-L53において実施されていることがそれぞれ認められる。しかしながら,これらの特許権は,いずれも本件発明1及び5を前提として,その実施の改善を図るものであるといえるから,使用者貢献度の問題として考慮するのが相当であるというべきである。 (3) そこで,更に検討するに,証拠(甲11,乙5の1~5の4,乙9,46,47,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,本件ジャイロの工程は,①正四角柱の圧電セラミックを切り出し,②円柱加工を行い(ただし,生産末期には,円柱型圧電セラミックが小型化され,プレス成形技術が改良されたことにより1本ずつプレス成形することが可能となった。),③スクリーン印刷で電極を印刷し,④分極をした後に,ジャイロを組み立てるものであったこと,1個ずつ円柱の振動子を回転させながら電極を印刷するので,にじみやかすれが発生する問題があったこと,分極では分極治具に1個ずつ振動子を挿入して電極に対して位置合わせ行う必要があったこと,このような工程のため,本件ジャイロの生産効率や歩留りが悪かったことがそれぞれ認め られる。 そして,上記の問題は本件発明1及び5が圧電セラミックス円柱を前提としていることに起因していると解され,この点を踏まえると,他社に実施許諾する場合にも,上記生産上の問題点が実施料率を設定するに当たって考慮されざるを得ないものと考えられるから,本件発明1及び5の想定実施料率としては2%と認めるのが相当である。 4 使用者貢献度(争点3)について(1) 原告は,原告による強い要望があった 慮されざるを得ないものと考えられるから,本件発明1及び5の想定実施料率としては2%と認めるのが相当である。 4 使用者貢献度(争点3)について(1) 原告は,原告による強い要望があったことに加え,本件各発明があったことにより,村田製作所と被告の2社のみで市場を独占することができたことなどを考慮すると,被告の使用者貢献度は,多くても90%であるとするのが相当である旨主張する。 これに対し,被告は,主な使用者の貢献として,①圧電セラミックス材料や設計についての技術的蓄積,②ノイズ対策に関する業界トップクラスの技術蓄積を本件ジャイロに応用したこと,③電極印刷が困難な円柱タイプに対して印刷技術を改良することによって製造レベルを達成したこと,④ノイズ特性を改善するため周辺部材の選択・実装,信号処理の方法について高度なノウハウを取得したこと,⑤配線の問題や小型化の問題に対して特許第3505686号や特許第4351346号によって問題を解決したことなどを指摘し,被告の貢献は99%を下回ることはない旨主張する。 (2) そこで,まず,原告の貢献について検討するに,原告は,昭和62年時点において,圧電振動ジャイロを提案し,その後もB教授の被告社内における特別講演を依頼し,この特別講演が圧電振動ジャイロ開発の契機となっていることが認められる(前記1(1))のであるから,このような圧電振動ジャイロ開発において原告が果たした役割は,原告の貢献と認めるのが相当である。 他方で,被告の貢献について検討するに,前記3(2)の認定事実に加え, 証拠(乙5の1~5の4,乙23,24の1~4,乙44)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,従前の圧電材料を利用したのみならず新規の圧電材料の開発を行ってCG-L33以降の機種に搭載し え, 証拠(乙5の1~5の4,乙23,24の1~4,乙44)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,従前の圧電材料を利用したのみならず新規の圧電材料の開発を行ってCG-L33以降の機種に搭載したこと,セットメーカーの協力を得て周辺部材の選択等のノウハウを確立してノイズ低減を実現したこと,電極印刷において工夫を重ねて印刷技術に改良を加え,圧電セラミックの支持体を金属とするなどの製造上の工夫を重ねたこと,各電極の半田部を円柱の外周面の片半分領域内に集合させて配置させることによって,上方に配置したすべての半田部から直接リード線を引くことを可能にしたこと(特許第3505686号),駆動部の電極パターンと検出部の電極パターンとの形状が,検出部の共通アース電極の一軸方向の中央部分が欠かれていることにより異なっており,それにより圧電振動子に機械的加工を加えることなく振動方向の軸ズレの発生を抑制することを可能にしたこと(特許第4351346号),B教授を特別顧問として採用して圧電振動デバイス関連の技術指導を受ける社内体制を整備したこと,平成2年には圧電振動ジャイロの開発部門に4名の人員を配置し,本件ジャイロの量産後も開発・量産の両部門を併せて10名以上の人員を配置したこと,本件ジャイロの量産設備投資として合計約6億8450万円の設備投資を行ったことがそれぞれ認められ,これらは被告の貢献と認めるのが相当である。 (3) そして,このような原告及び被告の貢献に加え,その他本件に現れた事情を考慮すると,本件発明1及び5について,被告の使用者貢献度は95%と認めるのが相当である。 5 発明者間の寄与割合(争点4)について(1) まず,本件発明1に係る発明者間の寄与割合について検討する。 原告は,円柱という着想は,従前研究していた と認めるのが相当である。 5 発明者間の寄与割合(争点4)について(1) まず,本件発明1に係る発明者間の寄与割合について検討する。 原告は,円柱という着想は,従前研究していた超音波モータの形状を圧電振動ジャイロに活用できないかと単独で発想したところにあり,着想を現実化するための実験は,原告とCの両名で行っていたが,Cは入社まもない新 人であり,原告の指示に基づいて原告の補助をしていたにすぎないなどとして,原告の寄与割合は80%を下らない旨主張する。 そこで検討するに,①証拠(乙24の1~24の4)及び弁論の全趣旨によれば,B教授は,原告の大学時代の恩師であるだけでなく,平成元年4月から死亡するまでの間,被告の特別顧問を務め,技術指導をしていたことが認められ,②電子情報通信学会技術研究報告(社団法人電子情報通信学会・昭和62年9月21日発行)のうち,B教授ほか2名執筆の「交差指電極を用いた圧電磁器単体音片ジャイロ」において,「正方形断面の圧電磁器音片の代わりに,円形断面の圧電磁器丸棒に4組の交差指電極を対称に設けた構造にすることもできる。対称性に重点を置けば,この方がジャイロにはむしろ適しているとも言える。」と指摘されていること(前記2(1)イ),③B教授は,原告,Cとともに発明者とされ,被告とともに共同出願をしていること(前提事実(2)ア)に加え,④原告は,本件発明1以前にB教授から円柱でジャイロができることを聞いており,その後に本件発明1の構成についてB教授に相談した旨述べていること(甲40,46,原告本人)に照らすと,被告関係者はB教授の本件発明1に対する貢献を考慮してB教授と被告との共同出願にしたものと認めるのが相当である。 そして,B教授と被告においては,本件特許権1に係る持分 告本人)に照らすと,被告関係者はB教授の本件発明1に対する貢献を考慮してB教授と被告との共同出願にしたものと認めるのが相当である。 そして,B教授と被告においては,本件特許権1に係る持分割合の定めがなかったのであるから,その持分割合は原則に従って均分と認めるのが相当であり,これを覆すに足りる証拠はない。 以上によれば,B教授の本件発明1への寄与割合は50%と認めるのが相当であり,他方,原告及びCの寄与割合は50%と認められる。 また,証拠(甲40,46,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,Cは,原告の指示に従って,本件発明1の実験を行ったこと,原告とC以外に実験に関与した者はいなかったことがそれぞれ認められるから,Cの発明者間の寄与割合は10%と認めるのが相当である。 そうすると,原告の本件発明1に係る発明者間の寄与割合は40%と認めるのが相当である。 (2) 続いて,本件発明5に係る発明者間の寄与割合について検討する。 原告は,本件発明5で共同発明者とされる者はいずれも製造現場の担当者であり,製造工程からのアドバイスを受けたにすぎず,実質的に原告が1人で発明を完成させたものであるなどとして,原告の寄与割合は80%を下らない旨主張し,被告は,7本電極の発想は4名の発明者全員の議論の中で生まれたものであり,また,各発明者はそれぞれの役割をこなして本件発明5を完成させたのであるから,寄与割合は均等で,それぞれ25%である旨主張する。 原告は,その陳述書(甲40)及び本人尋問において,6本の帯状電極を有する圧電セラミック円柱振動子では,駆動端子①,検出端子②及び③のそれぞれの端子と共通アース電極との間からみた共振周波数fr1,fr2及びfr3のうちの最大値と最小値の差Δ いて,6本の帯状電極を有する圧電セラミック円柱振動子では,駆動端子①,検出端子②及び③のそれぞれの端子と共通アース電極との間からみた共振周波数fr1,fr2及びfr3のうちの最大値と最小値の差Δfrが所定の周波数よりも小さい場合を合格とし,これを満たさない場合には,レーザービームにより帯状電極間隔部に,微小な溝を形成することにより,Δfrを所定の値以下に調整していたこと,原告は,Δfrが10Hz以上の振動子のfr1,fr2及びfr3のデータを整理しているときに,各端子①~③からみたインピーダンスの周波数特性について,インピーダンスが極小となる周波数が2つであることに気付いたこと,この2つの共振周波数は,圧電セラミック円柱に固有の,互いに直交する2つの振動軸方向の振動の共振周波数であり,圧電セラミック円柱振動子のほんのわずかな形状や材質特性の非対称性,帯状電極の寸法や配置の非対称性のために,互いに直交する固有の振動軸を持ち,この固有の振動軸に沿う共振周波数の差がΔfrとなり,各端子①~③の位置関係により,インピーダンス特性の形が決まることが分かったこと,そこで,原告は,これまでのΔfrを小さくする考え方を変えて,この直交する振動 軸と各端子①~③の関係を制御することを考え,最初に,駆動端子①の中心と円柱の中心を結んだ方向と直角な方向の円柱外周面に,軸と平行な溝を形成する方法を,次に,帯状電極の形状を非対称として,検出端子②,③を円柱の半周側に引き出す電極パターンとする方法を実験したものの,上記2つの方法はそれぞれ欠点があったため,帯状電極の数を7本とする考えに至ったことを述べる。 このように,原告は,6本電極の駆動端子①,検出端子②及び③からみたインピーダンスの周波数特性について,インピーダンスが極小となる周波数 状電極の数を7本とする考えに至ったことを述べる。 このように,原告は,6本電極の駆動端子①,検出端子②及び③からみたインピーダンスの周波数特性について,インピーダンスが極小となる周波数が2つであることに気付いたことを契機として,この2つの共振周波数の意味を理解し,Δfrを小さくする考え方から,直交する振動軸と各端子①~③の関係を制御する考え方に変更し,軸に平行な溝を形成する方法と帯状電極の形状を非対称とする方法を実験した上で,7本電極に至ったことを述べるのであり,原告の平成7年1月付け博士学位論文「交差指電極励振型圧電セラミック円柱振動子を用いた振動ジャイロの研究」(甲34の1及び2)の内容とも符合し,その供述内容に不自然な点はないのであるから,原告の供述を採用し,原告が本件発明5の主要な発明者であると認めるのが相当である。 これに対し,Fは,その陳述書(乙44)及び証人尋問において,非対称電極は,振動子上面から半導体レーザーなどを照射して半田付けが行えるようにリード線の引き回しを簡略化するために試みられたこと,非対称電極の振動子を試作評価すると,分極の異方性から振動軸の位置を制御できることが効果として確認できたため,非対称な電極構造が種々立案されて試作評価が行われ,その中の1つとして7本電極の構造があったことを述べる。 しかしながら,非対称な電極構造が種々立案されていたのであれば,上記の原告の論文にも記載されたと考えられるにもかかわらず(軸に平行な溝を形成する方法と帯状電極の形状を非対称とする方法については記載があ る。),そのような記載がないことに照らすと,上記の供述は容易に採用することができないし,これを客観的に裏付ける証拠もない。 そして,証拠(甲40,乙45,原告本人)によれば があ る。),そのような記載がないことに照らすと,上記の供述は容易に採用することができないし,これを客観的に裏付ける証拠もない。 そして,証拠(甲40,乙45,原告本人)によれば,本件発明5の実験において,DとEは,素子製作と特性評価を行い,Fは,圧電振動ジャイロの組立てと特性評価を行ったこと,本件発明5の理論については,原告に加え,DとFがまとめたことがそれぞれ認められるから,上記3名の発明者間の寄与割合は30%と認めるのが相当である。 そうすると,原告の本件発明5に係る発明者間の寄与割合は70%と認めるのが相当である。 (3) 以上のとおり,原告の発明者間の寄与割合は,本件発明1につき40%,本件発明5につき70%と認められる。 6 まとめ以上に従って,本件発明1及び5に係る相当の対価を算定するに,本件ジャイロの平成22年度までの売上高は別紙「CGシリーズ型式別売上金額」のとおりであり,CG-32Aを除いた特許登録前後の売上高は別紙算定表記載1のとおりである(別紙「CGシリーズ型式別売上金額」の注記とおり,CG組込製品については,CG-L33,CG-L43,CG-L53に価格部分に限った売上高である。)。 そこで,別紙算定表のとおり,特許登録前後の売上高にそれぞれの超過売上高の割合(登録前20%・登録後40%)を乗じ,これに想定実施料率(2%)を乗じて算定された額から,使用者貢献度(95%)に相当する額を控除し,本件発明1及び5のそれぞれの発明者間の寄与割合(本件発明1につき40%・本件発明5につき70%)を乗じると,本件発明1及び5の相当の対価は,合計213万5496円となる。 なお,本件特許権5の存続期間は終了していないが,被告は,平成22年10月,本件ジャイロの生 件発明5につき70%)を乗じると,本件発明1及び5の相当の対価は,合計213万5496円となる。 なお,本件特許権5の存続期間は終了していないが,被告は,平成22年10月,本件ジャイロの生産を終了し,平成23年度においては在庫販売に限ら れているから(前記1(2)ウ),同年度の売上高を計上しないで,平成22年度までの売上高をもって算定を行ったものである。 7 結論よって,原告の請求は,改正前特許法35条3項に基づく職務発明の対価請求として213万5496円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成22年6月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官菊池絵理は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官大須賀滋
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