令和1(行ウ)157 障害年金不支給裁定取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年4月21日 大阪地方裁判所
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判決文本文35,997 文字)

令和4年4月21日判決言渡令和元年(行ウ)第157号障害年金不支給裁定取消等請求事件 主文 1 本件訴えのうち,平成23年5月を受給権の発生日とする障害等級2級 の障害基礎年金を支給する旨の裁定をすることの義務付けを求める部分を却下する。 2 厚生労働大臣が平成29年6月7日付けで原告に対してした障害認定日を受給権発生日とする障害基礎年金及び障害厚生年金を支給しない旨の決定のうち,障害厚生年金に関する部分を取り消す。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 厚生労働大臣が平成29年6月7日付けで原告に対してした障害認定日を受給権発生日とする障害基礎年金及び障害厚生年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2 厚生労働大臣は,原告に対し,平成23年5月を受給権の発生日とする障害等級2級相当の障害基礎年金及び障害厚生年金を支給する旨の裁定をせよ。 第2 事案の概要原告は,平成29年1月25日,厚生労働大臣に対し,平成21年10月31日(以下「本件初診日」という。)を初診日とする慢性閉塞性肺疾患(ChronicObstructivePulmonaryDisease。以下「COPD」という。)により,国民年金法(平成29年法律第4号による改正前のもの。以下「国年法」という。)30条 2項及び国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表又は厚生年金保険法(平 成29年法律第45号による改正前のもの。以下「厚年法」という。)47条2項及び厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)別表第1の定める障害等級(国年法30条2項及び厚年法47条2項に 成29年法律第45号による改正前のもの。以下「厚年法」という。)47条2項及び厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)別表第1の定める障害等級(国年法30条2項及び厚年法47条2項に規定する障害等級をいう。以下同じ。)に該当する程度の障害の状態にあったとして,障害認定日(平成23年4月30日。以下「本件障害認定日」という。)を受給権の発生日とする障害基礎年金及び 障害厚生年金の支給の裁定請求(以下「本件裁定請求」という。)をしたところ,厚生労働大臣から,平成29年6月7日付けで,本件障害認定日における原告の障害の状態を認定することができないとして,本件裁定請求を却下する決定(以下「本件処分」という。)を受けた。 本件は,原告が,原告は,本件障害認定日において,気腫合併肺線維症(Combined PulmonaryFibrosisandEmphysema。肺気腫と肺線維症を合併している疾患。以下「CPFE」という。)にり患しており,本件障害認定日当時の原告の障害の状態は,障害等級2級又は3級に該当する程度にあったことから,本件処分は違法であるなどと主張して,被告を相手に,①本件処分の取消しを求めるとともに,②厚生労働大臣が本件裁定請求の翌月である平成23年5月を受給権の発生日と する障害等級2級相当の障害基礎年金及び障害厚生年金の支給裁定をすることの義務付けを求める(以下,この義務付けを求める部分を「本件義務付けの訴え」という。)事案である。 1 関係法令等の定め⑴ 障害基礎年金及び障害厚生年金の制度 ア障害基礎年金及び障害厚生年金の支給障害基礎年金(国年法30条1項)及び障害厚生年金(厚年法47条1項)は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する ア障害基礎年金及び障害厚生年金の支給障害基礎年金(国年法30条1項)及び障害厚生年金(厚年法47条1項)は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(傷病)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(初診日)において,被保険者であった者(国年法30条1項1号,厚 年法47条1項)につき,当該初診日から起算して1年6月を経過した日 (障害認定日)において,その傷病により国年法30条2項又は厚年法47条2項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるなどの要件を満たす場合には,その者の請求に基づく裁定を経て支給される(国年法16条,30条1項,厚年法33条,47条1項)。 イ障害基礎年金及び障害厚生年金における障害等級 障害基礎年金における障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし,障害厚生年金における障害等級は,同様に1級,2級及び3級とし,それぞれ,各級の障害の状態は,政令で定めるものとされている(国年法30条2項,厚年法47条2項)。これを受けて,障害基礎年金については国年令4条の6及び国年令別表において,障害厚生年金に ついては厚年令3条の8,国年令別表及び厚年令別表第1において,それぞれ定められている。 このうち,呼吸器疾患による障害に関しては,国年令別表は,2級である障害につき,「両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの」(1号)等を掲げた上で,「前各号に掲げるもののほか,身体の機能の障害又は 長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって,日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(15号)と定めている。 厚年令3条の8は 必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって,日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(15号)と定めている。 厚年令3条の8は,障害等級の各級の障害の状態は,1級及び2級についてはそれぞれ国年令別表に定める1級及び2級の障害の状態とし,3級 については厚年令別表第1に定めるとおりとし,厚年令別表第1は,「両眼の視力が0.1以下に減じたもの」(1号)等を掲げた上で,「前各号に掲げるもののほか,身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」(12号)と定めている。 ⑵ 障害等級の認定基準 厚生労働大臣による国年令別表及び厚年令別表第1及び第2所定の障害の程度(上記⑴イ)の認定は,「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(平成14年3月15日庁保発第12号。本件裁定請求当時は,平成28年3月29日年管発0329第2号による改正後のもの。以下「認定基準」という。)に従って行われている。認定基準のうち,本件に関係する部分の概要は,次 のとおりである。(乙5)ア障害の程度についての基本的事項国年令別表及び厚年令別表第1における障害の状態の基本は,次のとおりである。 2級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは,必ずしも他人の助けを借りる必要はないが,日常生活は極めて困難で,労働により 収入を得ることができない程度のものである。 3級労働が著しい制限を受ける を加えることを必要とする程度とは,必ずしも他人の助けを借りる必要はないが,日常生活は極めて困難で,労働により 収入を得ることができない程度のものである。 3級労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については,第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合で あっても3級に該当する。)イ認定の方法について障害の程度の認定は,診断書及びX線フィルム等添付資料により行う。 ただし,提出された診断書等のみでは認定が困難な場合等には,再診断を求め又は療養の経過,日常生活状況等の調査,検診,その他所要の調査等 を実施するなどして,具体的かつ客観的な情報を収集した上で,認定を行 う。また,原則として,本人の申立て等及び記憶に基づく受診証明のみでは判断せず,必ず,その裏付けの資料を収集する。 ウ呼吸器疾患による障害の程度の認定等呼吸器疾患による障害の程度の認定呼吸器疾患による障害の程度は,自覚症状,他覚所見,検査成績(胸 部X線所見,動脈血ガス分析値等),一般状態,治療及び病状の経過,年齢,合併症の有無及び程度,具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとし,当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に,労働 が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。 呼吸不全の認定の要領呼吸器疾患は,肺結核,じん肺及び呼吸不全に区分され,このうち,呼吸不全については,次のとおりである。 a 呼吸不全の意義等 級に該当するものと認定する。 呼吸不全の認定の要領呼吸器疾患は,肺結核,じん肺及び呼吸不全に区分され,このうち,呼吸不全については,次のとおりである。 a 呼吸不全の意義等呼吸不全とは,原因のいかんを問わず,動脈血ガス分析値,特に動脈血酸素分圧と動脈血二酸化炭素分圧が異常で,そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいう。認定の対象となる病態は,主に慢性呼吸不全である。 慢性呼吸不全を生ずる疾患は,閉塞性換気障害(肺気腫,気管支ぜん息,慢性気管支炎等),拘束性換気障害(間質性肺炎,肺結核後遺症,じん肺等),心血管系異常,神経・筋疾患,中枢神経系異常等多岐にわたり肺疾患のみが対象疾患ではない。 b 呼吸不全の主要症状 呼吸不全の主要症状としては,せき,たん,ぜん鳴,胸痛,労作時 の息切れ等の自覚症状,チアノーゼ,呼吸促迫,低酸素血症等の他覚所見がある。 c 呼吸不全の検査成績検査成績としては, 動脈血ガス分析値,予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う運動負荷肺機能検査等がある。 d 動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示したもの動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと,次のとおりである。なお,動脈血ガス分析値の測定は,安静時に行うものとする。 A表動脈血ガス分析値区分検査項目単位軽度異常中等度異常高度異常 動脈血O2分圧Torr70~6160~5655以下 動脈血CO2分圧Torr46~5051~5960以上(注)病状判定に際しては,動脈血O2分圧値を重視する。 B表予測肺活量1秒率検査項目単位軽度異常中等度異常高度 動脈血CO2分圧Torr46~5051~5960以上(注)病状判定に際しては,動脈血O2分圧値を重視する。 B表予測肺活量1秒率検査項目単位軽度異常中等度異常高度異常予測肺活量1秒率%40~3130~2120以下e 呼吸不全の障害の程度呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと,次のとおり である。 区分一般状態ア無症状で社会活動ができ,制限を受けることなく,発病前と同等にふるまえるものイ軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業 はできるもの。例えば,軽い家事,事務などウ歩行や身のまわりのことはできるが,時に少し介助が必要なこともあり,軽労働はできないが,日中の50%以上は起居しているものエ身のまわりのある程度のことはできるが,しばしば介助が必要で,日中の50%以上は就床しており,自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったものオ身のまわりのこともできず,常に解除を必要とし,終日就床を強いられ,活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものf 呼吸不全による各等級に相当すると認められるものの一部例示呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示すると,次のとおりである。 2級前記A表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので,かつ,一般状態区分表のエ又はウに該当するもの 3級前記A表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので,かつ,一般状態区分表のウ又はイに該当するものなお,呼吸不全の障害の程度の判定は,A表の動脈血ガス分析値を優先するが,その他の検査成績等も参考とし,認定時の具体的な日常生活状況等を把握して,総合的に認定する。 g 慢性肺疾患慢性肺 呼吸不全の障害の程度の判定は,A表の動脈血ガス分析値を優先するが,その他の検査成績等も参考とし,認定時の具体的な日常生活状況等を把握して,総合的に認定する。 g 慢性肺疾患慢性肺疾患では,それぞれ個人の順応や代償という現象があり,また他方では,多臓器不全の病状も呈してくることから,呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示すものとはいえない。 2 前提事実 当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は,次のとおりである。 ⑴ 原告 原告は,昭和▲年▲月生まれの男性(本件障害認定日当時の年齢は41歳,身長は約173㎝,体重は約72㎏)であり,国民年金及び厚生年金の被保険者であった(甲11,18の1~3,29,30)。 原告は,15歳頃(昭和60年頃)から喫煙するようになり,本件障害認定日(平成23年4月30日)当時,CPFEにり患していた。 原告は,学生時代にウエイトリフティングを行っていた(原告本人)。 原告は,平成28年8月,肺気腫の障害により,1級の身体障害者手帳の交付を受け,同月頃から,在宅酸素療法(自宅等で酸素を吸入する治療法)を受けている(甲29,原告本人)。 原告は,令和3年6月,要介護3(要介護状態区分は5段階になっており, 要介護5が最も重度のものである。)の認定を受け,通院介助,訪問介護(食事の準備,掃除,洗濯,入浴等)等の介護サービスを受けている(甲30,31,原告本人)。 原告は,現在,電動車椅子を利用して移動している(原告本人)。 ⑵ 原告の診療経過 ア A内科医院原告は,平成21年10月31日(本件初診日)以降,A内科医院を受診し,B医師(内科・呼吸器科)の診療を受けるようになった。 原告は,平成21年11月9 原告の診療経過 ア A内科医院原告は,平成21年10月31日(本件初診日)以降,A内科医院を受診し,B医師(内科・呼吸器科)の診療を受けるようになった。 原告は,平成21年11月9日,A内科医院を受診した。B医師は,同日,原告の胸部CT検査画像を読影するなどしたところ,原告の右肺上部 に大きなのう胞(分泌物が袋状に貯まる病態)の形成(気腫化)と既存肺の線維化(肺胞同士の間に存在する間質組織〔肺胞を支える結合組織〕が肥厚して固くなること)が認められたため,原告についてCOPDと診断した。(以上につき,甲1,2,3,19,28,原告本人)イ C病院 原告は,平成22年2月16日以降,C病院を受診し,D医師らの診療 を受けるようになった(甲1,28,乙13,原告本人)。 原告は,平成23年1月11日,C病院を受診した。原告は,同日,C病院において,胸部CT検査(以下「本件CT検査」という。)を受けた。 (甲5,16,20)⑶ 診断書等の記載 ア本件診断書(平成29年1月6日付け)C病院のE医師(呼吸器内科)が平成29年1月6日付けで作成した診断書(以下「本件診断書」という。)の記載の概要は,次のとおりである。 なお,同医師は,本件障害認定日当時,原告を直接診察した医師ではない。 (甲1) 障害の原因となった傷病名障害の原因となった傷病名は,「慢性閉塞性肺疾患」である。 一般状態区分表(平成23年5月17日)平成23年5月17日の一般状態区分表として,「軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業はできるもの例えば, 軽い家事,事務など」に丸がある。 臨床所見(平成23年5月17日)平成23年5月17日の臨床所見(自覚症状)として 体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業はできるもの例えば, 軽い家事,事務など」に丸がある。 臨床所見(平成23年5月17日)平成23年5月17日の臨床所見(自覚症状)として,せき,体動時の呼吸困難について「有」,安静時の呼吸困難,ぜん鳴について「無」に丸がある。 活動能力(呼吸不全)の程度活動能力(呼吸不全)の程度として,「階段を人並みの速さで登れないが,ゆっくりなら登れる。」に丸がある。 その他の所見その他の所見として,「当時の担当医が退職しているため詳細は不明。」 との記載がある。 現症時の日常生活活動能力及び労働能力現症時の日常生活活動能力及び労働能力として,「咳,労作時呼吸困難はあるが,仕事はなんとかしていた模様」との記載がある。 予後予後として,「Ⅲ度のCOPDであったので,予後は不良と推測される。」 との記載がある。 イ B医師作成の診断書(平成29年1月13日付け)B医師が平成29年1月13日付けで作成した診断書の記載の概要は,次のとおりである(甲2)。 障害の原因となった傷病名 障害の原因となった傷病名は,「肺線維症,両側肺のう胞症,低酸素血症」である。 初診時所見初診時(平成21年10月31日)所見として,「平成21年10月31日,激しい咳嗽を主訴に当院初診。胸部単純X線検査,胸部CT検査 にて左右両肺上部に大きなのう胞形成と既存肺の線維化を認めた。パルスオキシメーター検査ではSpO293%であった。」との記載がある。 現在までの治療の内容等現在までの治療の内容等として,「初診時より気管支拡張薬を中心に内科的治療開始。初診時は満年齢39才と若く,内科的治療の効果の評価 あった。」との記載がある。 現在までの治療の内容等現在までの治療の内容等として,「初診時より気管支拡張薬を中心に内科的治療開始。初診時は満年齢39才と若く,内科的治療の効果の評価 をSpO2値を中心に行ってきたが,平成28年4月21日にはSpO290%と増悪し,呼吸困難増悪も見られた為,内科療法強化するも改善を認めず,平成28年8月4日より在宅酸素療法を開始」との記載がある。 胸部X線所見 平成29年1月6日の胸部X線所見は,次のとおりである。 a 胸膜癒着なしb 気腫化なしc 線維化中d 不透明肺中e 胸部変形なし f 心縦隔の変形なしg 蜂巣肺高h 両肺上部の大きなのう胞。残存肺の線維化。いずれも平成21年8月31日より悪化。 一般状態区分表(平成29年1月13日) 平成29年1月13日の一般状態区分表として,「歩行や身のまわりのことはできるが,時に少し介助が必要なこともあり,軽労働はできないが,日中の50%以上は起居しているもの」に丸がある。 臨床所見(平成29年1月13日)平成29年1月13日の臨床所見のうち,自覚症状として,せき,た ん,安静時の呼吸困難は「有」,体動時の呼吸困難は「著」,胸痛,ぜん鳴は「無」,他覚所見として,肺性心所見,チアノーゼ,ばち状指は「有」,栄養状態は「良」,ラ音は「有」及び「一部」,脈拍数は「98」との記載がある。 活動能力(呼吸不全)の程度 活動能力(呼吸不全)の程度として,「ゆっくりでも少し歩くと息切れがする。」に丸がある。 換気機能(平成29年1月6日)平成29年1月6日の換気機能は,次のとおりである。 a 肺活量 活動能力(呼吸不全)の程度として,「ゆっくりでも少し歩くと息切れがする。」に丸がある。 換気機能(平成29年1月6日)平成29年1月6日の換気機能は,次のとおりである。 a 肺活量実測値(VC) 2890㎖ b 予測肺活量 3890㎖ c 努力性肺活量(FVC) 2680㎖d 1秒量(FEV1.0) 1250e 努力性肺活量1秒率(FEV1%) 46.79f 予測肺活量1秒率 32.13動脈血ガス分析(平成28年7月12日) 平成28年7月12日の動脈血ガス分析は,次のとおりである。 a 「酸素吸入を施行している」に丸がある。「平成28年8月2日開始施行時間20時間/日酸素吸入量1.5ℓ/分」b 動脈血ガス分析値①動脈血酸素分圧 61.8Torr ②動脈血炭酸ガス分圧 38.6Torr③動脈血ph 7.429その他の所見その他の所見として,「心電図にて肺性P波を認める。」と記載がある。 現症時の日常生活活動能力及び労働能力 現症時の日常生活活動能力及び労働能力として,「在宅酸素療法施行中。 外出時には携帯酸素を使用吸入。軽作業就業も困難である。」と記載がある。 予後予後として,「改善は困難。増悪予防が最重要である。」と記載がある。 備考備考として,「胸部X線所見の項に記した如く,両側肺のう胞は増大し,残存肺の線維化は増悪を認める。 (平成21年10月31日の胸部X線像に比し)」と記載がある。 ウ B医師が推定する原告の本件障害認定日頃の状態 B医師は,平成29年10月3日付けで,「障害認定日の頃の状態」と題 する書面を作成した。 B医師は,上記書面において,原告の本件障害認定日 師が推定する原告の本件障害認定日頃の状態 B医師は,平成29年10月3日付けで,「障害認定日の頃の状態」と題 する書面を作成した。 B医師は,上記書面において,原告の本件障害認定日頃の障害の状態は,「歩行や身のまわりのことはできるが,時に少し介助が必要なこともあり,軽労働はできないが,日中の50%以上は起居しているもの」(認定基準の一般状態区分表のウに相当するもの。上記関係法令等の定め⑵ウf参照) と評価できるものと医学的に推定する旨を記載した。 また,B医師は,上記書面において,その推定の根拠として,平成21年10月31日~平成22年5月1日,及び平成24年7月3日~平成29年10月3日の原告のカルテを精査し,症状の推移から考察して,肺機能の改善は極めて困難と判断した旨を記載した。(以上につき,甲6) ⑷ 本件処分等ア本件裁定請求原告は,平成29年1月25日,厚生労働大臣に対し,平成21年10月31日(本件初診日)を初診日とするCOPDにより,国年法30条2項及び国年令別表又は厚年法47条2項及び厚年令別表第1の定める障害 等級に該当する程度の障害の状態にあったとして,障害認定日である平成23年4月30日(本件障害認定日)を受給権の発生日とする障害基礎年金及び障害厚生年金の支給の請求(本件裁定請求)をした。 原告は,本件裁定請求の際,本件診断書等を併せて提出した。(以上につき,甲1,11,弁論の全趣旨) イ本件事後重症裁定請求原告は,平成29年6月5日,予備的に,国年法30条の2第1項及び厚年法47条の2第1項に基づき,厚生労働大臣に対し,事後重症による障害基礎年金及び障害厚生年金の支給の裁定請求(以下「本件事後重症裁定請求」という。)を追加した。 原告は,本 第1項及び厚年法47条の2第1項に基づき,厚生労働大臣に対し,事後重症による障害基礎年金及び障害厚生年金の支給の裁定請求(以下「本件事後重症裁定請求」という。)を追加した。 原告は,本件事後重症裁定請求の際,B医師が平成29年1月13日付 けで作成した診断書を併せて提出した。(以上につき,甲2,12,弁論の全趣旨)ウ本件処分等本件処分(平成29年6月)厚生労働大臣は,平成29年6月7日,原告に対し,提出された診断 書では,本件障害認定日(平成23年4月30日)における障害の状態を認定することができないとして,障害基礎年金及び障害厚生年金を支給しない旨の処分(本件処分)をした(甲7)。 本件事後重症裁定請求に係る裁定(平成29年6月)他方,厚生労働大臣は,平成29年6月8日,原告に対し,本件事後 重症裁定請求について,同年1月25日(本件裁定請求の日)当時の原告の障害の状態は障害等級3級の状態にあったとして,同日を受給権発生日として障害基礎年金及び障害厚生年金を支給する旨の裁定をした。 (甲8,乙3)エ審査請求に係る裁決(平成30年7月) 原告は,平成29年6月8日,社会保険審査官に対し,本件処分及び上記ウの裁定を不服として,審査請求をした。 これに対し,社会保険審査官は,平成30年7月24日,本件障害認定日における原告の障害の状態は2級又は3級に該当すると認めることはできないものの,本件裁定請求日における原告の障害の状態は障害等級2級 に該当すると認められるとして,上記ウの裁定を取り消し,上記審査請求のうちその余の請求を棄却する旨の裁決をした。 上記裁決を受けて,厚生労働大臣は,平成30年10月25日,平成29年1月25日(本件裁定請求の日)当時の原告の 上記ウの裁定を取り消し,上記審査請求のうちその余の請求を棄却する旨の裁決をした。 上記裁決を受けて,厚生労働大臣は,平成30年10月25日,平成29年1月25日(本件裁定請求の日)当時の原告の障害の状態は障害等級2級の状態にあったとして,同日を受給権発生日として障害基礎年金及び 障害厚生年金を支給する旨の裁定をした。(以上につき,甲9,乙1,3) オ再審査請求に係る裁決(平成31年4月)原告は,平成30年7月30日,社会保険審査会に対し,上記エの決定を不服として,再審査請求をした。 これに対し,社会保険審査会は,平成31年4月26日,原告に対し,上記再審査請求を棄却する裁決をした。(以上につき,甲10,乙2) ⑸ 本件訴訟の提起原告は,令和元年10月25日,本件訴訟を提起した。 ⑹ 本件に関する医学的知見の概要ア COPD(慢性閉塞性肺疾患)COPD(ChronicObstructivePulmonaryDisease)とは,たばこの煙 を主とする有害物質を長期に吸入,ばく露することで生じた肺の炎症性疾患であり,その影響によって起こる気流閉塞(機能的な呼気性障害)を基本病態とするものである。 この気流閉塞は,進行性かつ不可逆性ないし完全には可逆的でない(症例によっては,気管支拡張薬の吸入後に慢性閉塞性換気障害が改善する可 逆性がみられるが,ぜん息とは異なり正常値までには回復しない。)。 COPDによる気流閉塞は,末梢気道病変(末梢気道の気管支が炎症を起こし,気道壁が肥厚,狭窄して,粘液が貯留する。)と気腫性病変(肺胞壁が破壊されて肺胞同士の融合が起こり,気腔が拡大するとともに,肺の弾性収縮力が低下する。)が複合的に作用することで引き起こされる。 COPDの症状として 液が貯留する。)と気腫性病変(肺胞壁が破壊されて肺胞同士の融合が起こり,気腔が拡大するとともに,肺の弾性収縮力が低下する。)が複合的に作用することで引き起こされる。 COPDの症状として,慢性咳嗽(せき),喀痰(たん),労作時呼吸困難であり,労作時呼吸困難が最も多い主訴である。COPDの症状が進行すると,樽状胸郭(胸を取り巻く骨格が樽のように膨張すること),呼気延長,口すぼめ呼吸,肺過膨張といった特徴的な身体所見が出現する。 また,呼吸機能検査において,閉塞性喚気障害(予測肺活量1秒率の低 下)や拡散障害(酸素と炭酸ガスとを交換する能力の低下)がみられる。 動脈血ガス分析では,酸素分圧が低下し,二酸化炭素分圧は正常又は上昇がみられる。(以上につき,乙7,8,証人I医師)イ CPFE(気腫合併肺線維症)CPFE(CombinedPulmonaryFibrosisandEmphysema)は,肺気腫を合併した特発性肺線維症(IdiopathicPulmonaryFibrosis)であり,症候 群である。 CPFEは,主にCT画像の所見により診断がされるが,診断基準は定められていない。 CPFEは,①肺の線維化により通常は肺活量が減少するが,例えば上葉の肺気腫により肺の過膨張所見がみられる場合には,肺活量は増加する ことがあり,これらが影響し合って,肺活量が保たれることがある。また,②気道領域においても,線維化に伴う牽引性気管支拡張が閉塞所見を相殺し,1秒量,1秒率の低下も起こりにくい。上記①及び②のために,CPFEは,肺機能検査では異常を示さないことがある。そのため,CPFEは,肺機能検査で異常を示さない場合であっても,拡散障害(上記ア参照) を生じ,高度な呼吸困難が認められる び②のために,CPFEは,肺機能検査では異常を示さないことがある。そのため,CPFEは,肺機能検査で異常を示さない場合であっても,拡散障害(上記ア参照) を生じ,高度な呼吸困難が認められることもある。 CPFEには特徴的な症状はなく,主訴としては,呼吸困難が多く,そのほか,咳嗽(せき),喀痰(たん),胸痛等がある。 CPFEは,肺気腫及び肺線維症のそれぞれに由来する拡散障害(上記上記ア参照)により,労作時の呼吸困難が生ずる(労作時においては,S pO2の値は大きく低下する。)。(以上につき,甲13~15,20,21の1~7,証人I医師) 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,本件義務付けの訴えの適法性及び本件処分の適法性であり,具体的には,原告が,平成23年4月30日(本件障害認定日)において,C PFEにより障害等級2級又は3級に該当する程度の障害の状態にあったか 否かである。この点に関する当事者の主張は,次のとおりである。 (原告の主張)⑴ 本件障害認定日における原告の障害の状態が障害等級2級に該当することア呼吸疾患による障害の程度の判定の在り方 呼吸器疾患による障害の程度は,自覚症状,他覚症状,検査成績,一般状態,治療・病状の経過,年齢,合併症の有無・程度,具体的な日常生活状況等を総合的に判断して判定すべきであり,動脈血ガス分析の結果は必須のものとすべきではない。 呼吸器疾患による障害の判定に当たっては,機能障害の程度を重視する のではなく,日常生活における活動のレベルでの障害(能力障害,活動障害)及び社会との関係のレベルでの障害(社会的不利,参加障害)を適切に考慮しなければならない。また,呼吸器疾患等の疾患による症状は,重い時もあれば軽い時もあるところ,障害 での障害(能力障害,活動障害)及び社会との関係のレベルでの障害(社会的不利,参加障害)を適切に考慮しなければならない。また,呼吸器疾患等の疾患による症状は,重い時もあれば軽い時もあるところ,障害年金は,障害者施策の一環であるから,症状が軽い時や検査数値が良い時を基準として判定するのではなく, 症状が重い時や検査数値が悪い時を基準として判定すべきである。 そして,呼吸器疾患による障害の判定に当たっては,裁定請求書添付の診断書のみではなく,具体的な日常生活状況等に関する他の資料も併せて考慮し,障害の程度を認定すべきである。 イ本件障害認定日当時における原告の障害の程度について CT画像所見本件CT検査画像によれば,原告の肺上野は血管に乏しく,特に右肺はほとんどが気腫性のう胞で占められている。また,胸部の壁付近において血管でない間質の線維化が認められる。そうすると,平成23年4月30日(本件障害認定日)において,原告は,重度の肺気腫と軽度の 肺線維症を合併したCPFEであったと認められる。 肺機能検査CPFEの患者は,肺活量がほぼ基準範囲に保たれる。そのため,対標準1秒量を参照するべきであるところ,原告の対標準1秒量は46. 1%であり,これは,COPDと判定される値である。 日本人の肺活量予測式を用いて原告の予測肺活量1秒率を計算すると, 約39%であり,軽度異常が認められる。 SpO2原告のSpO2の測定結果は,平成21年12月2日において93%,平成22年2月9日において91%,同月18日において93%と低い値を記録していた。そうすると,原告は,当時,慢性的な呼吸不全状態 にあったと推測される。 なお,上記の各値は安静時に測定した際の値であるところ,CPFEは,少しの労 日において93%と低い値を記録していた。そうすると,原告は,当時,慢性的な呼吸不全状態 にあったと推測される。 なお,上記の各値は安静時に測定した際の値であるところ,CPFEは,少しの労作で低酸素血症を来すものであるから,原告の労作時の値はより低かったことが推測される。 SpO2の値が動脈血ガス分析値に比例して,動脈血ガス分析値と動 脈血酸素分圧との間にも相関関係が認められており,臨床的には,SpO2による酸素濃度測定で,血液ガス分析の代用ができるとされている。 原告のSpO2は91%であったところ,これをヒルの方程式(酸素飽和度と動脈血酸素分圧の関係に関する方程式)を用いて動脈血酸素分圧の値に換算すると,約63Torr に相当する。 なお,動脈血ガス分析のための検査設備を持たない病院も多いこと,検査実施には患者にとって痛みを伴うことから,COPDやCPFEの寛恕であっても動脈血ガス分析が実施されないケースが多い。このような事情から,原告も,動脈血ガス分析を実施しなかったものである。そのため,動脈血ガス分析の検査結果がないことを重視すべきではない。 原告の症状及び生活状況 平成23年4月30日(本件障害認定日)の頃の原告は,着替え,トイレ,食事,洗面,入浴といった日常生活動作をするにも,ほんの軽い動きをするだけでも息苦しくなってしまうため,妻らによる援助が必要で,援助がないと生活をすることができなかった。 まとめ 以上によれば,①原告は,本件障害認定日当時,重度の肺気腫と軽度の肺線維症を合併したCPFEであったと認められ,②原告のSpO2の値は,本件障害認定日に近い時期において,安静にしている状態でも91%と低い値を記録し,③本件障害認定日における原告の予測肺活量1秒率は,正 を合併したCPFEであったと認められ,②原告のSpO2の値は,本件障害認定日に近い時期において,安静にしている状態でも91%と低い値を記録し,③本件障害認定日における原告の予測肺活量1秒率は,正常予測式によれば約39%であり,軽度異常がある状態で あるところ,④CPFEは不可逆的に進行するものであり,⑤原告には本件障害認定日において労作時呼吸困難等の症状があり,ゆっくりでも少し歩くと息切れがする状態であった。これらの事情を踏まえれば,原告は本件障害認定日において,少なくとも障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあったといえる。 ⑵ 本件障害認定日における原告の障害の状態が障害等級3級に該当すること仮に,本件障害認定日における原告の障害の状態が障害等級2級に該当しないとしても,上記⑴の事情からすれば,障害等級3級に該当する程度の障害の状態にあったといえる。 (被告の主張)⑴ 本件障害認定日における原告の障害の状態が障害等級2級及び3級に該当するとは認められないこと原告が,平成23年4月30日(本件障害認定日)当時,CPFEであったことから,直ちに,本件障害認定日当時において,原告に,労作時呼吸困 難等の症状があり,障害の程度が障害等級2級又は3級に相当する状態であ ったと認められるものではない。そして,下記のとおり,各種検査成績等を考慮しても,原告の本件障害認定日における障害の程度は,障害等級2級又は3級に相当する状態であったと認めることはできない。 ア動脈血ガス分析値原告は,本件障害認定日当時,動脈血ガス分析を実施しておらず,動脈 血ガス分析値が不明である。動脈血ガス分析値は,障害の程度の判定に当たって,極めて重要な情報である。 イ予測肺活量1秒率原告の本件障害認定 定日当時,動脈血ガス分析を実施しておらず,動脈 血ガス分析値が不明である。動脈血ガス分析値は,障害の程度の判定に当たって,極めて重要な情報である。 イ予測肺活量1秒率原告の本件障害認定日頃における予測肺活量1秒率は,約39%であり,正常であると認められる。 ウ対標準1秒量対標準1秒量は,これによってCOPDの病気分類が判明するのみであり,病気分類は,必ずしもCOPDの重症度を反映するものではない。 エ SpO2SpO2の測定は,指に機器(パルスオキシメーター)をはめて光を用い てされるため,血中に何らかの吸光物質が存在したり,測定部位に色素沈着やマニキュアがあったりすると誤差が生ずることもあるため,正確に測定することは困難である。 また,本件障害認定日の約1か月後である平成23年5月17日における原告のSpO2の値は94%であり,これを動脈血酸素分圧に換算した 場合には70Torr を超え,正常な値である。 オ在宅酸素療法原告は,本件障害認定日当時,在宅酸素療法を受けておらず,内科的治療と経過観察を受けていた。そうすると,本件障害認定日当時における原告の障害の程度は,内科的治療を行いつつ経過観察をすることで足りる程 度のものであって,少なくとも在宅酸素療法が必要となる程度ではなかっ たといえる。 カ小括以上によれば,本件障害認定日ないし平成23年5月17日当時における,具体的な原告の障害の状態を認定することができない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ 平成21年10月31日(本件初診日)までの経緯ア原告等 原告(昭和▲年生まれの男性)は,15歳頃からたばこを吸 事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ 平成21年10月31日(本件初診日)までの経緯ア原告等 原告(昭和▲年生まれの男性)は,15歳頃からたばこを吸うようになり,40歳頃(平成21年11月頃)に禁煙するようになるまで,1日に40本程度のたばこを吸っていた。原告は,幼少期,学生の頃,健康上の問題は特になかった(甲1号証中に「小児期より労作時呼吸苦は自覚していた」とあるのは,不正確な記載であると認める。)。(甲28,証人F,原 告本人)。 原告は,平成3年に結婚し,その後,平成5年に長男,平成7年に二男,平成10年に三男をもうけた(甲12,28,原告本人)。 Fは,原告の母であり,原告の自宅の近くに住んでおり,孫に会うなどのために原告の自宅に行くことがあった。Fは,元看護師であったが,平 成21年頃まで,原告の体調に異変を感じることは特になかった。 (甲19,証人F)イ平成元年~平成6年原告は,高校卒業後短期大学に進学し,その後アルバイト勤務等を経て,平成6年に兵庫県(住所省略)において携帯電話の販売店の経営を開始し た。原告は,その後,順次,福岡市,兵庫県(住所省略),大阪府(住所省 略),高松市において携帯電話の販売店を開設していった。 Fは,携帯電話の販売店の仕事を手伝っていた。(以上につき,甲12,27,28,証人F,原告本人)ウ平成7年頃原告は,平成7年頃(26歳頃)から,階段を上がったときに心臓の鼓 動が聞こえる,慢性的にせきが出る,労作時の呼吸苦を感じるなどの自覚症状があった。原告は,これらの症状は喫煙が原因であると考え,禁煙をしたこともあったが,症状が改善したために3か月程度で再び喫煙をするようになり,結局,禁煙は長続きしな 時の呼吸苦を感じるなどの自覚症状があった。原告は,これらの症状は喫煙が原因であると考え,禁煙をしたこともあったが,症状が改善したために3か月程度で再び喫煙をするようになり,結局,禁煙は長続きしなかった。 原告は,平成7年頃から,携帯電話の販売店の経営が軌道に乗ってくる と,次第に,日常的な店の運営は店長以下の従業員らに任せるようになり,主に,電話,メール等で売上げ等の報告を受け,定期的に店に顔を出し,レジの金額と現金出納帳が合っているかを確認したり,問題なく店が運営されているかを確認したり,取引先等への営業活動や接客を行ったりするようになった。(以上につき,甲1,28,原告本人) エ平成18年原告は,平成18年頃,経営していた福岡市と高松市の携帯電話の販売店を売却し,関西の店舗の経営に集中するようになった。もっとも,原告は,関西の店舗の経営自体は店長に委ねて,自身は,取引先との接待,在庫の確保,従業員の慰労,財務等の代替性のない業務のみを行っていた。 (原告本人)オ平成21年原告は,平成21年頃,肺の症状が悪化し,激しくせき込む,ゆっくりでも少し歩くと息が上がるなど,体に負荷がかかると息切れをするような状態であった。また,原告は,同年頃から,店の運営を店長らに任せ,毎 日電話やメールで報告を聞き,必要な指示をするだけになり,営業活動や 接待もほとんど行わなくなった。(甲19,28)カ平成21年10月30日(交通事故)原告は,平成21年10月30日,自動車を運転中,せきが止まらなくなり,ブレーキをかけるのが遅れ,前方を走行していた車に追突する交通事故を起こした。(甲4,27,28,原告本人) ⑵ 平成21年10月31日(本件初診日)~平成23年頃の診療経過ア平成21 ,ブレーキをかけるのが遅れ,前方を走行していた車に追突する交通事故を起こした。(甲4,27,28,原告本人) ⑵ 平成21年10月31日(本件初診日)~平成23年頃の診療経過ア平成21年10月31日(A内科医院の初診日)等平成21年10月31日原告は,平成21年10月31日,激しいせきを訴えて,A内科医院を受診した。B医師は,胸部レントゲン検査の結果,CT検査が必要で あると判断し,原告に対し,CT検査のためにG病院を紹介した。また,B医師は,同日,原告に対し,すぐに禁煙するように指導した。(甲1~3,19,28,原告本人)平成21年11月2日原告は,平成21年11月2日,A内科医院を受診した。同日の原告 のSpO2の値は93%であった。(甲2,3,19)平成21年11月上旬頃原告は,平成21年11月上旬頃,G病院で胸部CT検査を受けた。 (甲1~3,19,28,原告本人)平成21年11月9日 原告は,平成21年11月9日,A内科医院を受診した。B医師は,上記の胸部CT検査画像を読影するなどしたところ,原告の右肺上部に大きなのう胞の形成(気腫化)と既存肺の線維化が認められたため,原告についてCOPDと診断した。同日の原告のSpO2の値は95%であった。また,B医師は,同日までに,原告に対し,肺の4分の3が 機能していない旨話した。B医師は,同日,原告に対し,気管支拡張剤 であるスピリーバを処方した。(前記前提事実⑵ア,甲1~3,19,28,原告本人)イ平成21年11月1日(徳島の葬式)原告は,平成21年11月1日,徳島県に住んでいた原告の叔父(同年▲月▲日死亡)の告別式に参列するため,両親と3人で,自動車で,兵庫 県(住所省略)か イ平成21年11月1日(徳島の葬式)原告は,平成21年11月1日,徳島県に住んでいた原告の叔父(同年▲月▲日死亡)の告別式に参列するため,両親と3人で,自動車で,兵庫 県(住所省略)から徳島県に向かった。原告は,行きも帰りも,父と交代しながら自動車を運転した。 原告は,告別式に参列中,せきが止まらず,壁につかまりながら歩くような状態であり,親戚からも体調を気遣われていた。元看護師であるFは,その際の原告の様子を見て,原告が肺気腫にり患しているのではないかと 思った。 原告は,平成21年11月初旬頃から,禁煙を始めた。また,Fは,同月頃から,週に1回程度,原告の当時の妻がパートに出ている間に,原告の自宅で家事を手伝うようになった。 原告は,本件障害認定日前においては,平成21年11月頃の症状が最 もつらく,禁煙を開始してからは,症状は緩和し,楽になったと感じた。 (以上につき,甲19,27,28,42,証人F,原告本人)ウ平成22年2月9日原告は,平成22年2月9日,A内科医院を受診した。原告は,禁煙を開始して順調であったと述べた。同日の原告のSpO2は91%であった。 (甲19,原告本人)エ平成22年2月16日(C病院の初診日)原告は,平成22年2月16日,呼吸苦の増強等を訴えて,C病院を初めて受診した。原告は,同年8月頃~平成23年9月頃,C病院において,シムビコートという薬剤(ぜん息・COPD治療剤〔吸入薬〕)の治験を受 けていた。(甲1,乙13,証人I医師) オ平成22年2月18日原告は,平成22年2月18日,A内科医院を受診した。同日の原告のSpO2の値は93%であった。(甲19)カ平成22年2月25日原告は,平成22年2月25日,A内科医院を受診し 2月18日原告は,平成22年2月18日,A内科医院を受診した。同日の原告のSpO2の値は93%であった。(甲19)カ平成22年2月25日原告は,平成22年2月25日,A内科医院を受診した。同日の原告の SpO2の値は94%であった。(甲19)キ平成22年3月15日原告は,平成22年3月15日,A内科医院を受診した。同日の原告のSpO2の値は95%であった。(甲19)ク平成22年4月15日 原告は,平成22年4月15日,A内科医院を受診した。原告は,同日,B医師に対し,商取引上のトラブルがあった旨述べた。 原告は,平成22年4月頃,自宅でパソコンや電話を使って仕事をしていた。(甲19,27,28,証人F,原告本人)ケ平成23年頃 原告は,平成23年頃,C病院を受診した。原告は,その際,担当医師に対し,シムビコートの治験の関係で,「仕事も多忙でほとんど記録できなかった」,「吸入はできている」と述べた。 原告は,平成23年頃,1人で入浴できず,当時の妻にシャワーで体を流してもらったり,着替え,洗面,トイレへの移動等を手伝ってもらった りしていた。(甲28,乙13,原告本人)コ平成23年1月11日原告は,平成23年1月11日,C病院を受診した。原告は,同日,本件CT検査を受けた。(甲5,16,20)サ平成23年3月8日 原告は,平成23年3月8日,C病院を受診した。原告は,同日,肺機 能検査を受けた。上記肺機能検査の結果を踏まえた原告の予測肺活量1秒率は,52.2%~55.8%であった。(甲18の1)シ平成23年5月17日原告は,平成23年5月17日,C病院を受診した。原告は,同日,SpO2の測定,肺機能検査を受けた。同日のSpO2の測定結果及 2%~55.8%であった。(甲18の1)シ平成23年5月17日原告は,平成23年5月17日,C病院を受診した。原告は,同日,SpO2の測定,肺機能検査を受けた。同日のSpO2の測定結果及び肺機能 検査の結果は,次のとおりであった。(甲1,18の2,乙13)SpO2 94%予測肺活量1秒率 56.1%~59.4%肺機能検査報告書の強制呼出曲線は,正常であれば,緩やかなカーブを描くが,原告の強制呼出曲線は,V.50(肺中の空気量を50%吐 き出した状態)から急激に下に下がっている(下に凸になっている)。すなわち,原告の排気量は,V.50以降,急激に流量が下がっていた。 (証人I医師)ス平成23年7月8日原告は,平成23年7月8日,C病院を受診した。原告は,同日,肺機 能検査を受けた。同日の肺機能検査の結果を踏まえた予測肺活量1秒率は,48%~52.1%であった。(甲18の3)⑶ 平成24年以降の原告の診療経過等ア平成24年~平成27年原告は,平成24年~平成27年,A内科医院及びC病院への受診を継 続した(甲19)。 原告は,平成27年10月,症状が悪化し,ひどい頭痛が生じたため,P病院に緊急搬送された(甲28,原告本人)。 イ平成28年4月21日原告は,平成28年4月21日,A内科医院を受診した。同日の原告の SpO2の値は90%であった。原告は,この頃,B医師から,在宅酸素療 法の実施を勧められた。(甲28,原告本人)ウ平成28年6月頃原告は,平成28年6月頃,仕事を行うことが困難となるなどの経済的な事情もあり,当時の妻と離婚した。(甲28,原告本人)エ平成28年8月頃 原告は,平成28年7月12日,A内科医院において,初めて動 8年6月頃,仕事を行うことが困難となるなどの経済的な事情もあり,当時の妻と離婚した。(甲28,原告本人)エ平成28年8月頃 原告は,平成28年7月12日,A内科医院において,初めて動脈血ガス分析値の検査を受けた。 原告は,平成28年8月2日,在宅酸素療法を開始した。これにより,原告は,呼吸困難が緩和したと感じた。(以上につき,甲2,28,原告本人) オ平成29年1月頃原告は,平成29年1月頃,現在の妻と再婚した(甲11,28,原告本人)。 カ平成29年2月頃原告は,平成29年2月頃,C病院のE医師から肺移植の提案を受け, 同医師から紹介を受けたH病院(呼吸器内科)に検査入院したが,最終的には,肺移植は受けなかった(甲9,証人F,原告本人)。 2 本件に関する医学的知見前記前提事実⑹及び掲記の証拠により認められる本件に関する医学的知見は,次のとおりである。 ⑴ 肺気腫ア肺気腫の病変肺気腫とは,終末細気管支より末梢の気腔(肺胞)がそれを構成する壁の破壊を伴いながら不可逆的に拡大した肺で,明らかな肺線維化病変はみられないものをいう。肺気腫は,気流閉塞の原因となる。(甲20,乙7, 8,証人I医師) イ肺気腫において気流閉塞が生ずる機序肺気腫により気流閉塞が生ずる機序は,肺胞の壁が破壊されることにより,気腫性のう胞(肺胞同士が融合して形成された空洞の袋状の組織)が形成され,肺胞の弾性収縮力が低下し,その結果,①肺胞の内圧が低下し,また,②気道牽引力が低下し,末梢気道の閉塞,虚脱(つぶれること)が 起こり,上記①及び②に起因して,呼気の排出が制限される。(乙7,8,証人I医師)ウ肺気腫の症状・検査所見肺気腫においては,気流閉塞により,酸 ,末梢気道の閉塞,虚脱(つぶれること)が 起こり,上記①及び②に起因して,呼気の排出が制限される。(乙7,8,証人I医師)ウ肺気腫の症状・検査所見肺気腫においては,気流閉塞により,酸素と炭酸ガスの交換の換気が困難になる(閉塞性換気障害)。 また,肺気腫は,肺胞同士の融合により,肺胞の容積が減少し,また,肺胞を取り巻く毛細血管が破壊されて減少することになるため,酸素と炭酸ガスの交換が困難になる(拡散障害)。その結果,低酸素血症(動脈血中の酸素が不足した状態)を来し,特に労作時における呼吸困難の症状が生ずることがある。 生体での肺気腫の有無を確定する最も信頼できる検査方法は,CT検査である。(以上につき,乙7,8,証人I医師)⑵ 肺線維症ア肺線維症の病変肺線維症とは,肺胞同士の間に存在する間質組織(肺胞を支える結合組 織)が肥厚して固くなる(線維化)病変である(甲20,証人I医師)。 イ肺線維症の症状肺線維症は,肺胞の収縮力が低下し,酸素と炭酸ガスの交換の換気が困難になる(拘束性換気障害)。また,肺胞を取り巻く毛細血管と肺胞細胞との間隔が広くなることにより,酸素と炭酸ガスの交換も困難になる(拡散 障害)。(甲20,証人I医師) ⑶ COPD(慢性閉塞性肺疾患)ア COPDの概要COPD(ChronicObstructivePulmonaryDisease)とは,たばこの煙を主とする有害物質を長期に吸入,ばく露することで生じた肺の炎症性疾患であり,その影響によって起こる気流閉塞(機能的な呼気性障害)を基 本病態とするものである。この気流閉塞は,進行性かつ不可逆性(ないし完全には可逆的でないもの)である(症例によっては,気管支拡張薬の吸入後に慢性閉塞性換 こる気流閉塞(機能的な呼気性障害)を基 本病態とするものである。この気流閉塞は,進行性かつ不可逆性(ないし完全には可逆的でないもの)である(症例によっては,気管支拡張薬の吸入後に慢性閉塞性換気障害が改善する可逆性がみられるが,ぜん息とは異なり正常値までには回復しない。)。 COPDによる気流閉塞は,末梢気道病変(末梢気道の気管支が炎症を 起こし,気道壁が肥厚,狭窄して,粘液が貯留する。)と気腫性病変(肺胞壁が破壊されて肺胞同士の融合が起こり,気腔が拡大するとともに,肺の弾性収縮力が低下する。)が複合的に作用することで引き起こされる。(以上につき,乙7,8,証人I医師)イ COPDの症状・検査所見 COPDの症状として,慢性咳嗽(せき),喀痰(たん),労作時呼吸困難であり,労作時呼吸困難が最も多い主訴である。COPDの症状が進行すると,樽状胸郭,呼気延長,口すぼめ呼吸,肺過膨張といった特徴的な身体所見が出現する。 呼吸機能検査において,閉塞性喚気障害(1秒率の低下)や拡散能力の 低下がみられる。気流閉塞がある場合には,フローボリューム曲線で下に凸のフローパターンがみられる。 動脈血ガス分析では,酸素分圧が低下し,二酸化炭素分圧は正常又は上昇がみられる。動脈血ガス分析,オキシメーター等により,安静時又は労作時の低酸素血症の存在が判明することがある。動脈血ガス分析で動脈血 二酸化炭素分圧等を測定することにより,肺胞換気と酸塩基平衡に関して 更なる情報が得られることがある。(以上につき,乙7,8,証人I医師)ウ COPDの病因COPDの病因は,有毒な粒子やガス(喫煙,大気汚染等)の外因性因子と,内因性因子とに分けられる。 COPDの外因性因子のうち,主な原因物質は,たばこの煙である。ま 師)ウ COPDの病因COPDの病因は,有毒な粒子やガス(喫煙,大気汚染等)の外因性因子と,内因性因子とに分けられる。 COPDの外因性因子のうち,主な原因物質は,たばこの煙である。ま た,喫煙開始年齢が若いほど,COPDにり患しやすい。(以上につき,乙7,8)エ COPDの病気分類COPDは,対標準1秒量を基準として測定する気流閉塞の程度により,Ⅰ期~Ⅳ期に分類される。もっとも,この病気分類は,必ずしもCOPD の重症度を示すものではない。(乙7,8)⑷ CPFE(気腫合併肺線維症)ア CPFEの概要CPFE(CombinedPulmonaryFibrosisandEmphysema)は,肺気腫を合併した特発性肺線維症(IdiopathicPulmonaryFibrosis)であり,一般 的には症候群であると理解されている。 肺気腫を合併する肺線維症は,平成2年にWigginsらにより初めて報告され,日本では平成4年に気腫合併間質性肺炎と命名された。そして,平成17年にCottinらによってCPFEとして報告され,日本においても,平成23年頃からCPFEに関する論文が発表されるなど,広く認識される ようになった。CPFEは,主にCT画像の所見により診断がされるが,診断基準は定められていない。 CPFEは,①肺の線維化により通常は肺活量が減少するが,例えば上葉の肺気腫により肺の過膨張所見がみられる場合には,肺活量は増加することがあり,これらが影響し合って,肺活量が保たれることがある。また, ②気道領域においても,線維化に伴う牽引性気管支拡張が閉塞所見を相殺 し,1秒量,1秒率の低下も生じにくい。上記①及び②のために,CPFEは,肺機能検査では異常を示さないことが また, ②気道領域においても,線維化に伴う牽引性気管支拡張が閉塞所見を相殺 し,1秒量,1秒率の低下も生じにくい。上記①及び②のために,CPFEは,肺機能検査では異常を示さないことがある。そのため,CPFEは,肺機能検査で異常を示さない場合であっても,拡散障害(酸素と炭酸ガスとを交換する能力の低下)を生じ,高度な呼吸困難が認められることもある。(以上につき,甲13~15,20,21の1~7) イ CPFEの症状CPFEには特徴的な症状はなく,主訴としては,呼吸困難が多く,そのほか,咳嗽(せき),喀痰(たん),胸痛などがある。 CPFEにおいては,肺気腫及び肺線維症のそれぞれに由来する拡散障害(上記ア参照)により,労作時の呼吸困難が生ずる(労作時においては, SpO2の値は大きく低下する。)。(以上につき,甲13~15,21の5の1・2,21の7,証人I医師)ウ CPFEの画像所見CPFEにおいては,高分解能CT(HRCT)画像の所見として,①上肺野優位の肺気腫及び②下肺野優位のびまん性の肺線維症を伴う間質性 病変の併存が認められるとされている(甲13,14,21の1)。 エ CPFEの進行CPFEは,不可逆的に進行し,その予後は不良である(甲13,20,証人I医師)。 ⑸ 気腫性病変の広がりの程度と拡散能力の障害の程度との間の相関関係 気腫性病変の広がりの程度と拡散能力の低下との間には有意な相関関係がみられる。すなわち,気腫性病変が広がるほど,拡散能力は低下し,低酸素血症による呼吸困難の症状が重くなる傾向がみられる。(甲23,24,25の12,証人I医師)⑹ 肺気腫の程度を評価する分類手法(Goddard分類) Goddard分類とは,気腫性病変が胸部CT画像に 困難の症状が重くなる傾向がみられる。(甲23,24,25の12,証人I医師)⑹ 肺気腫の程度を評価する分類手法(Goddard分類) Goddard分類とは,気腫性病変が胸部CT画像において低吸収域(CT画像 において黒く映る部分)として表示される性質を利用し,胸部CT画像を分析して肺気腫の程度を評価する分類手法である。Goddardらは,昭和57年,「肺気腫におけるCT検査」(日本語訳)という論文の中で上記の手法を用いた報告をした。 Goddard分類は,具体的には,胸部CT画像から気腫性病変の占有面積を評 価する手法であり,左右それぞれの上肺野(大動脈弓部付近),中肺野(気管分岐部の高さ),下肺野(横隔膜から1~3㎝の高さ)の合計6部位の気腫性病変の占有面積を,各部位ごとに,次のとおり点数化して,合計点(最大24点)が,16点以上で重症,8~15点で中等症,8点未満で軽傷と評価するものである(甲24,25の10~12,証人I医師)。 ア 0点肺気腫病変なしイ 1点肺気腫病変が肺野の25%未満ウ 2点肺気腫病変が肺野の25%以上50%未満エ 3点肺気腫病変が肺野の50%以上75%未満オ 4点肺気腫病変が肺野の75%以上 3 原告側の意見書等の概要⑴ 総論ア I意見書等本件では,J診療所所長のI医師(内科)が作成した意見書(3通。以下「I意見書」という。)が原告から提出された。また,I医師は,本件訴 訟において,証人として証言した。(甲20,22~24,26,証人I医師)イ I医師の経歴等I医師は,昭和48年に〇○大学医学部を卒業した医師であり,昭和49年からL病院で勤務し,その後,○○大学医学部リハビリテーション部 シニア医員として勤務する 医師)イ I医師の経歴等I医師は,昭和48年に〇○大学医学部を卒業した医師であり,昭和49年からL病院で勤務し,その後,○○大学医学部リハビリテーション部 シニア医員として勤務するなどした後,昭和63年にJ診療所の所長に就 任し,平成8年にはL病院の院長に就任し,平成15年から,再度,J診療所の所長を務めている。また,I医師は,これまでに多数の呼吸器疾患患者の診療を行っている。(甲22,26,証人I医師)ウ I意見書等の基礎資料等I医師は,I意見書の作成等に当たり,本件の書証,原告の診療録,レ ントゲン画像,CT画像を基礎資料とした。なお,I医師は,I意見書の作成までに,原告を直接診察したことはなかったが,本件の証人として証言するに当たり,原告を診察した。(証人I医師)⑵ I医師の意見書等の概要I医師の意見書等の概要は,次のとおりである(甲20,23,24,証 人I医師)。 ア胸部レントゲン画像所見平成21年10月31日に撮影された原告の胸部レントゲン画像からは,一見して明らかな異常所見は認められない。強いていえば,胸郭(胸を取り巻く骨格)の横幅が全体に広く,心陰影がやや小さい。また,肺上野は 血管が乏しいように思われ,肺下野は血管陰影等の増強を認める。 イ胸部CT画像所見(本件CT検査画像所見)気腫化と線維化原告の肺上野は血管に乏しく,特に右肺のう胞のほとんどが気腫化している。また,胸郭の壁付近において,間質組織の線維化が認められる。 右肺上野・右肺中野,左肺上野・左肺中野原告の右肺上野及び右肺中野ののう胞のほとんどが気腫化している。 原告の左肺上野及び左肺中野ののう胞は一部が気腫化している。 気管支気管支が肥厚し,線維化している。 上野・左肺中野原告の右肺上野及び右肺中野ののう胞のほとんどが気腫化している。 原告の左肺上野及び左肺中野ののう胞は一部が気腫化している。 気管支気管支が肥厚し,線維化している。 全体 全体として,重度の気腫化と軽度の線維化が認められる。 ウ Goddard分類による重症度判定本件CT検査画像について,画像面積測定ソフトを利用し,気腫化の重症度を評価すると,特に肺上野,肺中野の肺のう胞の面積が大きく,Goddard分類(上記2⑹)による点数評価は18点となり,重症と評価される。 右肺上野約99% 4点左肺上野約93% 4点右肺中野約87% 4点右肺中野約72% 3点右肺下野約36% 2点 右肺下野約4% 1点合計 18点エ SpO2値についてSpO2と動脈血ガス分析値との間の相関関係SpO2と動脈血ガス分析値との間には相関関係がある。 原告のSpO₂値の動脈血ガス分析値への換算原告のSpO2値は,平成22年2月9日において91%,同月18日において93%と低い値である。なお,これらの値は,診察時に安静にしている際の数値であり,原告の当時のCPFEの状態からすれば,労作時のSpO2値はより低かったと推定される。 原告のSpO2値である91%~93%は,ヒルの式に当てはめて動脈血ガス分析値に換算すると,63.6Torr~70.4Torr に相当する。 オ本件障害認定日当時の原告の呼吸不全の症状の程度原告は,本件障害認定日当時,慢性的な呼吸不全の状態であり,その程度は相当程度に重い状態にあったと考えられる。(なお,I医師は,この点 については,本件CT検査の画像等から合理的に推測 程度原告は,本件障害認定日当時,慢性的な呼吸不全の状態であり,その程度は相当程度に重い状態にあったと考えられる。(なお,I医師は,この点 については,本件CT検査の画像等から合理的に推測される状態を述べた ものである旨証言している。) 4 被告側の意見書の概要⑴ 総論ア M医師の意見書本件では,NのM医師(内科・神経内科)が作成した意見書が被告から 提出された(乙14)。 イ M医師の経歴M医師は,昭和47年に〇○大学を卒業した医師であり,昭和48年に同大学第2内科に入局し,その後,同大学内科学教室講師として勤務するなどした後,平成14年にOに就任し,平成22年からNを務めている(乙 14)。 ⑵ M医師の意見書の概要M医師の意見書の概要は,次のとおりである(乙14)。 ア CT画像の読影についてI意見書における本件CT検査画像の読影はおおむね正しく,また,本 件CT検査画像から気腫合併肺線維症(CPFE)との診断は可能であり,肺の気腫化が高度(重度)とまで読み取ることも可能である。 もっとも,CT画像所見により認められる肺気腫の程度と呼吸不全の症状の程度とは必ずしも関連するものではない。また,CT画像上から読み取れる気腫化の程度のみからは,患者の日常生活,労働能力等に与える影 響やCOPD・CPFEの重症度,呼吸不全の程度まで判定することは困難である。 イ CPFEに係る医学的知見についてI意見書におけるCPFEに係る医学的知見について述べる部分のうち,①CPFEの患者は少しの労作で低酸素血症となり動けなくなる,②安静 時においては低酸素血症を生じないこともある,などの医学的知見を述べ る部分は,一般論としては妥当である。 もっとも,CPFEであれば 少しの労作で低酸素血症となり動けなくなる,②安静 時においては低酸素血症を生じないこともある,などの医学的知見を述べ る部分は,一般論としては妥当である。 もっとも,CPFEであれば必ず労作時呼吸困難等が生ずるものではなく,飽くまで症状・病気が進行した場合には労作時の呼吸困難等が生じ得るものである。 5 本件処分の適法性の有無について ⑴ 障害等級の認定方法についてア障害の状態の具体的な認定証拠(甲25の4,乙5,弁論の全趣旨)によれば,厚生労働大臣は,国民年金及び厚生年金に係る障害の程度の認定について認定基準に従って障害等級の認定を行っていることが認められるところ,認定基準は,行政 機関の内部的な取扱指針であり,法的拘束力はないものの,障害認定審査事務を統一的に行い,裁定における客観性及び裁定申請者間における障害年金給付の公平を確保するために設けられたものであり,各種障害に関する医学的知見を総合して定められ,医学的知見を踏まえて順次改訂され,その内容も,障害の部位や機能ごと,あるいは疾患ごとに,日常生活にお ける支障の違いを考慮しつつ,障害の程度に応じた障害の状態を具体的に示しているものであり,合理的なものであるということができる。したがって,障害の状態の具体的な認定は,特段の事情がない限り,認定基準に従って行うことが妥当であるというべきである。 そして,認定基準によれば,呼吸器疾患による障害の程度は,自覚症状, 他覚所見,検査成績(胸部X線所見,動脈血ガス分析値等),一般状態,治療及び病状の経過,年齢,合併症の有無及び程度,具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとし,このうち,呼吸不全の障害の程度の判定は,A表の動脈血ガス分析値を優先するが,その他の検査成績等も参考と 状の経過,年齢,合併症の有無及び程度,具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとし,このうち,呼吸不全の障害の程度の判定は,A表の動脈血ガス分析値を優先するが,その他の検査成績等も参考とし,認定時の具体的な日常生活状況等を把握して,総合的に認定する ことになる(前記関係法令等の定め⑵ウ,f)。 イ原告の主張について原告は,前記第2の3の(原告の主張)欄の⑴アのとおり,呼吸器疾患による障害の程度の判定に当たっては,①機能障害の程度を重視するのではなく,日常生活における活動のレベルでの障害(能力障害,活動障害)及び社会との関係のレベルでの障害(社会的不利,参加障害)を適切に考 慮しなければならない,②呼吸器疾患等の疾患による症状は,重い時もあれば軽い時もあるところ,障害年金は,障害者施策の一環であるから,症状が軽い時や検査数値が良い時を基準として判定するのではなく,症状が重い時や検査数値が悪い時を基準として判定すべきである旨主張する。 しかし,上記①については,障害の程度の判定に当たっては,機能障害 の程度のみならず,機能障害に起因して生じている労働能力,生活能力の障害の内容・程度等についても適切に考慮されなければならないことは当然であるが,障害年金制度は国の社会保障政策の一環であって,画一的かつ公平に運営されることも要請され,また,医学的見地から裁定機関の認定判断の客観性を担保することが求められるところ,これらの要請を満た すためには,障害の程度の判定に当たって,動脈血ガス分析値の検査成績といった定量的な基準を優先せざるを得ないことはやむを得ないというべきである(もっとも,認定基準は,呼吸不全も含めた呼吸器疾患による障害の程度の判定は総合的に行う旨を定めているとおり,これらの定量的な った定量的な基準を優先せざるを得ないことはやむを得ないというべきである(もっとも,認定基準は,呼吸不全も含めた呼吸器疾患による障害の程度の判定は総合的に行う旨を定めているとおり,これらの定量的な基準のみに依拠して判定することを求めるものではないことは明らかであ る。)。そうすると,認定基準が,呼吸器疾患による障害の程度の判定に当たって,動脈血ガス分析値といった客観的な検査所見を優先するとしていることが,不合理であるということはできない。 また,上記②については,上記のとおり,障害年金制度は,画一的かつ公平に運営され,裁定における認定判断の客観性を担保することが要請さ れることからすれば,呼吸器疾患の障害の程度の判定に当たって,障害の 程度や症状の重い時を基準とすべきであるということはできず,障害認定日における障害の程度について,検査成績等を適切に考慮して総合的に判定するのが相当であるから,認定基準は不合理であるということはできない。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 ウ小括そこで,本件障害認定日(平成23年4月30日)における原告の障害の状態が,認定基準に照らして障害等級2級又は3級に該当するか否かを以下検討する。 ⑵ 検討 ア動脈血ガス分析値(A表)原告は,本件障害認定日当時,動脈血ガス分析値の検査を実施していなかった(上記認定事実⑶エ)。そのため,本件障害認定日当時の原告の動脈血ガス分析値は不明である。 もっとも,認定基準は,呼吸器疾患による障害の程度の判定に当たって, 動脈血ガス分析値を優先することとしている一方で,その他の検査成績等を総合的に考慮することとしている。また,SpO2値と動脈血ガス分析値との間には相関関係がある(上記3⑵エ。相 当たって, 動脈血ガス分析値を優先することとしている一方で,その他の検査成績等を総合的に考慮することとしている。また,SpO2値と動脈血ガス分析値との間には相関関係がある(上記3⑵エ。相関関係があること自体について,被告は特に争っていない。)。そうすると,原告が,本件障害認定日当時,動脈血ガス分析値の検査を実施しておらず,そのために当時の原告 の動脈血ガス分析値が不明であることが不合理であるということはできないから,このことをもって,原告の障害の程度が軽微であったと推認することはできない。 イ予測肺活量1秒率(B表)原告の予測肺活量1秒率は,本件障害認定日の約2か月前である平成2 3年3月8日において52.2%~55.8%,本件障害認定日の約2週 間後である同年5月17日において56.1~59.4%であり(上記認定事実⑵サ,シ),認定基準においては正常と判定されるものである。 もっとも,原告は,本件障害認定日当時,CPFEにり患していたところ,CPFEは,肺機能検査で異常を示さない場合であっても,拡散障害(酸素と炭酸ガスとを交換する能力の低下)を生じ,高度な呼吸困難が認 められることもある疾患である(上記2⑷。なお,上記認定事実⑵シのとおり,肺機能検査報告書の強制呼出曲線は,正常であれば,緩やかなカーブを描くが,原告の強制呼出曲線は,V.50〔肺中の空気量を50%吐き出した状態〕から急激に下に下がっているのであるから〔下に凸になっている。すなわち,原告の排気量は,V.50以降,急激に流量が下がっ ていた。〕,原告の肺機能検査の結果に異常がなかったなどとはいえない。)。 そうすると,本件障害認定日頃の原告の予測肺活量1秒率が認定基準において正常と判定される数値であったことをもって,原告の障害 ていた。〕,原告の肺機能検査の結果に異常がなかったなどとはいえない。)。 そうすると,本件障害認定日頃の原告の予測肺活量1秒率が認定基準において正常と判定される数値であったことをもって,原告の障害の程度が軽微であったと推認することはできない。 ウその他の検査成績等 本件CT検査画像所見から認められるCPFEの程度前記前提事実⑴,上記認定事実⑵,I意見書等(甲20,23,24,証人I医師),上記4のM医師の意見書(乙14〔上記4⑵のとおり,M医師は,I意見書における本件CT検査画像の読影はおおむね正しく,また,本件CT検査画像からCPFEとの診断は可能であり,肺の気腫 化が高度とまで読み取ることも可能である旨の意見を述べている。〕)によれば,本件CT検査画像所見(原告の右肺上野及び右肺中野ののう胞のほとんどが気腫化し,原告の左肺上野及び左肺中野ののう胞は一部が気腫化し,気管支が肥厚して線維化しており,全体として,重度の気腫化と軽度の線維化が認められる。)から,本件障害認定日の約3か月前で ある平成23年1月11日当時の原告のCPFEの程度は,肺気腫につ いては重度(特に,肺上野,肺中野の肺のう胞の面積が大きい。),肺線維症については軽度であったことを読み取ることができると認められる。 そして,CPFEにおける肺気腫病変は,不可逆的に進行するから(上記2⑷エ),本件障害認定日当時の原告のCPFEの程度は,上記の平成23年1月11日当時と少なくとも同程度であったと認められる。 また,上記2⑸のとおり,肺気腫等の気腫性病変の広がりの程度と肺の拡散機能の障害の程度との間には有意な相関関係がみられるから,本件障害認定日当時の原告の拡散能力は,相当程度低下していたと推測される。 SpO2値 等の気腫性病変の広がりの程度と肺の拡散機能の障害の程度との間には有意な相関関係がみられるから,本件障害認定日当時の原告の拡散能力は,相当程度低下していたと推測される。 SpO2値 上記3⑵エのとおり,SpO2値は,動脈血ガス分析値と相関関係があるところ,本件障害認定日前後の原告のSpO2値は,下記のとおり,91%~94%であり,これを動脈血ガス分析値に換算すると,約64Torr~約75Torr である。これは,認定基準において,軽度異常(70Torr~61Torr)又は正常と判定されるものである(なお,CPFE患 者のSpO2値は,労作時においては大きく低下するから,原告の労作時のSpO2の値はより低い値であったことがうかがわれる。)。 記a 平成21年11月2日 93%(約70Torr 相当)b 平成22年2月9日 91%(約64Torr 相当) c 平成23年5月17日 94%(約75Torr 相当)エ原告の生活状況,一般的状態等原告の生活状況上記認定事実のとおり,原告は,平成21年10月~同年11月頃においては,激しいせきにより交通事故を起こし,葬式への参列中にはせ きが止まらず,壁につかまりながら歩くなどの状態であったものの,禁 煙を開始してから症状は緩和し,原告自身も楽になったと感じるようになり(上記認定事実⑵イ),平成23年頃においては,自宅でパソコンや電話を使用して仕事ができる程度の状態であった(上記認定事実⑵ク,ケ)というのである。他方で,上記認定事実のとおり,原告は,平成23年頃においては,1人で入浴することができず,着替え,洗面,トイ レへの移動等を手伝ってもらうこともあったというのである(上記認定事実⑵ケ)。 これらの事実に照らせば,原告は 原告は,平成23年頃においては,1人で入浴することができず,着替え,洗面,トイ レへの移動等を手伝ってもらうこともあったというのである(上記認定事実⑵ケ)。 これらの事実に照らせば,原告は,本件障害認定日頃,日常生活に一定の支障が生ずる状態であったといえる。 原告の一般的状態 前記前提事実⑶ウのとおり,B医師は,平成29年10月3日付けの「障害認定日の頃の状態」と題する書面において,原告の診療録を精査した上で,原告の本件障害認定日頃の障害の状態は,「歩行や身のまわりのことはできるが,時に少し介助が必要なこともあり,軽労働はできないが,日中の50%以上は起居しているもの」(認定基準の一般状態区分 表のウに相当するもの。前記関係法令等の定め⑵ウe参照)と評価できるものと医学的に推定するとの意見を述べている(B医師は,上記書面を作成した時点で,本件初診日から約8年間にわたって原告の肺の疾患等について継続的に診療してきた医師であって,その意見を軽視することはできない。)。 オ総合判断障害等級3級該当性以上によれば,①本件障害認定日当時の原告のCPFEの程度は,重度の肺気腫と軽度の肺線維症を合併した状態であり,これに起因して,原告の拡散能力は,相当程度低下していたと推測されること(上記ウ), ②本件障害認定日当時の原告のSpO2値を動脈血ガス分析値に換算す ると,日によっては軽度異常に相当する数値となることもあったこと(上記ウ)が認められる。これらの事情に加え,③上記3のI意見書において,原告の本件障害認定日当時の呼吸不全の状態は相当程度に重い状態にあったとの意見が示されていること(I意見書のうち同意見は,本件に関する医学的知見と整合しており,本件CT検査画像所見から認め て,原告の本件障害認定日当時の呼吸不全の状態は相当程度に重い状態にあったとの意見が示されていること(I意見書のうち同意見は,本件に関する医学的知見と整合しており,本件CT検査画像所見から認め られるCPFEの程度,I医師の知識・経験等に照らせば,十分に信用することができる。),④本件障害認定日当時に原告を直接診察したB医師が,平成29年10月3日付けの書面において,原告の本件障害認定日頃の障害の状態は,「歩行や身のまわりのことはできるが,時に少し介助が必要なこともあり,軽労働はできないが,日中の50%以上は起居 しているもの」であったと推定されるとの意見を述べていること(前記前提事実⑶ウ),⑤本件障害認定日後の原告の症状の推移(前記前提事実⑴,⑶イ,上記認定事実⑶)等を総合すれば,原告は,本件障害認定日当時,CPFE(特に重度の肺気腫化)に起因して肺の拡散能力が相当程度低下しており,労作時に低酸素血症を来し,労作時に相当程度の呼 吸困難を生ずる状態であったことが推認される。 他方で,上記ア,イのとおり,原告が,本件障害認定日当時,動脈血ガス分析値の検査を実施しておらず,そのために当時の原告の動脈血ガス分析値が不明であること,及び,原告は,本件障害認定日当時,肺機能検査における予測肺活量1秒率は大きな異常を認める数値ではなかっ たことは,原告の障害の程度が軽微であったことを推認させる事情ではないから,上記推認を覆すに足りる事情とはいえない。そして,他に上記推認を覆すに足りる事情は見当たらない。 そうすると,原告は,本件障害認定日当時,労作時に相当程度の呼吸困難を生ずる状態にあったと認められるから,本件障害認定日当時の原 告の障害の状態は,身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は 労働に著し 件障害認定日当時,労作時に相当程度の呼吸困難を生ずる状態にあったと認められるから,本件障害認定日当時の原 告の障害の状態は,身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は 労働に著しい制限を加えることを必要とする程度に至っていたものというべきである。 したがって,本件障害認定日当時の原告の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであったといえる。 障害等級2級該当性 他方で,原告は,本件障害認定日頃,①平成21年11月頃に禁煙を開始したことによりせき込みの症状が改善し,楽になったと感じていたこと(上記認定事実⑵イ),②1人で入浴することは困難であったが,食事,洗面,トイレへの移動は基本的には1人で可能であり,また,自動車を運転することも可能であったこと(原告が,最も症状がつらかった という平成21年11月頃にも,兵庫県(住所省略)から徳島県まで父と交代しながらではあるが自動車を運転していた。)(上記認定事実⑵ア,イ,ケ),③自宅においてメール,電話を使って仕事をすることが可能であったこと(上記認定事実⑵ク)等の事情に照らせば,原告は,本件障害認定日当時,CPFEによる労作時呼吸困難の症状により,日常生活 に一定の制限が生じていたと認められるものの,その制限の程度が著しかったか,又は著しい制限を加えることが必要な状態に至っていたと認めることはできない。 したがって,本件障害認定日当時の原告の障害の程度は,日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要 とする程度に至っていたものとはいえないから,障害等級2級に該当する程度のものであったとは認められない。 ⑶ 原告の主張について原告は,本件障害認定日当時の原告の障害の程度は,障害等級2級に相当する状態 に至っていたものとはいえないから,障害等級2級に該当する程度のものであったとは認められない。 ⑶ 原告の主張について原告は,本件障害認定日当時の原告の障害の程度は,障害等級2級に相当する状態であった旨主張するが,以上の認定・説示のとおり,本件障害認定 日において,原告の障害の程度は障害等級2級に相当する状態に至っていた と認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる事情は見当たらない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 被告の主張について被告は,本件障害認定日当時の原告の障害の状態を認定することができない旨主張するが,以上の認定・説示のとおり,本件障害認定日当時の原告の 障害の状態は,障害等級3級に相当する状態であったと認定することができる。 また,被告は,原告は本件障害認定日当時において在宅酸素療法を受けていなかったことを指摘するが,認定基準においても,在宅酸素療法を受けていることを障害等級3級に相当する状態と判定するための必須の要件として いるものではない。 したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。 ⑸ 小括以上のとおり,本件障害認定日当時の原告の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであったといえる。したがって,本件処分のうち,障 害厚生年金に関する部分は違法である。他方で,障害等級2級以上に該当する程度の障害の状態になければ障害基礎年金の支給を受けることができないことからすれば(国年法30条2項),本件処分のうち,障害基礎年金に関する部分は適法である。 6 本件義務付けの訴えについて ⑴ 本件義務付けの訴えが訴訟要件を満たすか否かについて行政事件訴訟法3条6項2号所定の義務付けの訴え(いわゆる申請型義務付けの訴え)は, 適法である。 6 本件義務付けの訴えについて ⑴ 本件義務付けの訴えが訴訟要件を満たすか否かについて行政事件訴訟法3条6項2号所定の義務付けの訴え(いわゆる申請型義務付けの訴え)は,法令に基づく申請等を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在である場合に限り,提起することができる(行政事件訴訟法37条の3第1項2号)。 上記5のとおり,本件処分のうち障害基礎年金に関する部分は適法である から,当該部分は取り消されるべきものであるか,又は無効若しくは不存在であるということはできない。そうすると,本件義務付けの訴えのうち,平成23年5月を受給権の発生日とする障害基礎年金を支給する旨の裁定をすることの義務付けを求める部分は,同号が定める訴訟要件を欠くものといえるから,不適法である。 他方で,本件処分のうち障害厚生年金に関する部分は違法であって取り消されるべきものである以上,本件義務付けの訴えのうち,平成23年5月を受給権の発生日とする障害等級2級の障害厚生年金を支給する旨の裁定をすることの義務付けを求める部分は,同号が定める訴訟要件を満たすものといえる。そして,本件義務付けの訴えのうち上記部分は,他の訴訟要件に欠け るところもないから,適法である。 ⑵ 本件義務付けの訴えのうち平成23年5月を受給権の発生日とする障害等級2級の障害厚生年金を支給する旨の裁定をすることの義務付けを求める部分が,本案要件を満たすか否かそこで,本案要件について検討すると,上記2のとおり,本件障害認定日 当時における原告の障害の状態が障害等級2級に該当する程度のものであったとは認められないことからすれば,厚生労働大臣において障害等級2級の障害厚生年金を支給する旨の裁定 おり,本件障害認定日 当時における原告の障害の状態が障害等級2級に該当する程度のものであったとは認められないことからすれば,厚生労働大臣において障害等級2級の障害厚生年金を支給する旨の裁定をすべきであることが明らかであるとはいえない。したがって,本件義務付けの訴えのうち,平成23年5月を受給権の発生日とする障害等級2級の障害厚生年金を支給する旨の裁定をすること の義務付けを求める部分は,行政事件訴訟法37条の3第5項の本案要件を満たしておらず,理由がない。 7 まとめ⑴ 本件処分の取消請求についてア平成23年4月30日(本件障害認定日)当時の原告のCPFEの状態 は,障害等級3級に該当する程度のものであったと認められるから,本件 処分のうち障害厚生年金に関する部分は違法である。 イ他方,平成23年4月30日当時の原告のCPFEの状態は,障害等級2級に該当する程度のものであったとは認められないから,本件処分のうち障害基礎年金に関する部分は適法である。 ⑵ 本件義務付けの訴えについて ア本件義務付けの訴えのうち,平成23年5月を受給権の発生日とする障害等級2級の障害基礎年金を支給する旨の裁定をすることの義務付けを求める部分は,不適法である。 イ他方,平成23年5月を受給権の発生日とする障害等級2級の障害厚生年金を支給する旨の裁定をすることの義務付けを求める部分は,理由がな い。 第4 結論よって,①本件訴えのうち,平成23年5月を受給権の発生日とする障害等級2級の障害基礎年金を支給する旨の裁定をすることの義務付けを求める部分は不適法であるからこれを却下し,②原告の請求のうち,本件処分のうち障害厚生年 金に関する部分の取消しを求める部分は理由があるからこれを認容し を支給する旨の裁定をすることの義務付けを求める部分は不適法であるからこれを却下し,②原告の請求のうち,本件処分のうち障害厚生年 金に関する部分の取消しを求める部分は理由があるからこれを認容し,③その余の請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官太田章子 裁判官山田慎悟

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