平成26(ワ)191 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年4月21日 盛岡地方裁判所
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判決文本文46,905 文字)

平成26年(ワ)第191号損害賠償請求事件(以下「甲事件」という。)平成26年(ワ)第192号損害賠償請求事件(以下「乙事件」という。) 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件主位的請求ア甲事件被告兼乙事件被告(以下「被告」という。)は,甲事件原告Ⓐ(以下「原告Ⓐ」という。)に対し,5837万9638円及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ被告は,甲事件原告Ⓑ(以下「原告Ⓑ」という。)及び甲事件原告Ⓒ(以下「原告Ⓒ」という。)に対し,それぞれ1749万4909円及びこれらに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 予備的請求ア被告は,原告Ⓐに対し,5537万9638円及びこれに対する平成26年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ被告は,原告Ⓑ及び原告Ⓒに対し,それぞれ1449万4909円及びこれらに対する平成26年3月11日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 2 乙事件被告は,乙事件原告Ⓓ(以下「原告Ⓓ」という。)に対し,5417万2637円及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の 割合による金員を支払え。 被告は,乙事件原告Ⓔ(以下「原告Ⓔ」という。)及び乙事件原告Ⓕ(以下「原告Ⓕ」という。)に対し,それぞれ1843万6053円及びこれらに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 第2 事案の概要甲事件は,被告が設置する釜石市立ⓐ幼稚園(以下「本件幼 ,それぞれ1843万6053円及びこれらに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 第2 事案の概要甲事件は,被告が設置する釜石市立ⓐ幼稚園(以下「本件幼稚園」という。)の臨時職員として勤務していた亡Ⓖが,東北地方太平洋沖地震(以下「本件地震」という。)発生後,岩手県釜石市ⓐ町に存する釜石市ⓐ地区防災センター(以下「本件センター」という。)に避難し,本件地震に伴う津波(以下「本件津波」という。)に巻き込まれて死亡したのは,被告が,本件センターが津波発生時に避難すべき場所でないことを周知すべき義務や,本件幼稚園におけるⒼに対する安全配慮義務を怠ったためであるなどとして,Ⓖの相続人である甲事件原告らが,被告に対し,主位的に,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,Ⓖ及び甲事件原告らに生じた各損害の賠償金及びⒼの死亡日である平成23年3月11日以降の遅延損害金の各支払を,予備的に,安全配慮義務に違反したとして債務不履行に基づき,上記各損害の賠償金及び請求の後の日である平成26年3月11日以降の遅延損害金の各支払を求めた事案である。 乙事件は,原告Ⓓ及び亡Ⓗが,本件地震発生後に本件センターに避難して本件津波に巻き込まれ,うち原告Ⓓが後遺障害を負い,Ⓗが死亡したのは,被告が,本件センターが津波発生時に避難すべき場所でないことを周知すべき義務を怠ったためであるなどとして,Ⓗの相続人である乙事件原告らが,被告に対し,国賠法1条1項に基づき,Ⓗ及び乙事件原告らに生じた各損害の賠償金並びにⒽが死亡し,原告Ⓓが後遺障害を負った日である平成23年3月11日以降の遅延損害金の各支払を求めた事案である。 以下,引用する書証番号は,原則として枝番を含むものとする。 1 関係法令の定め本件 原告Ⓓが後遺障害を負った日である平成23年3月11日以降の遅延損害金の各支払を求めた事案である。 以下,引用する書証番号は,原則として枝番を含むものとする。 1 関係法令の定め本件に関連する関連法令の定めは,別紙「関係法令の定め」のとおりである。 2 前提事実(争いがないか後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)当事者等ア原告Ⓐは,Ⓖ(昭和●●年●月●●日生まれ)の夫,原告ⒷはⒼの父,原告ⒸはⒼの母であり,Ⓖの死亡により,原告Ⓐは3分の2,原告Ⓑ及び原告Ⓒは各6分の1の割合で,Ⓖの一切の権利義務を相続した(甲B1)。 イ Ⓖは,本件地震当時,臨時職員として本件幼稚園に勤務しており,岩手県釜石市ⓑ町の自宅から同園に通勤していた(甲B2,9,原告Ⓐ)。Ⓖは,この当時,妊娠9か月であった。 ウ原告Ⓓ(昭和●●年●月●日生まれ)は,Ⓗ(昭和●●年●月●●日生まれ)の長男,原告ⒺはⒽの長女,原告ⒻはⒽの二女であり,Ⓗの死亡により,乙事件原告らは,Ⓗの一切の権利義務を各3分の1の割合で相続した(甲C1)。 原告ⒹとⒽは,本件地震当時,ⓐ町の本件センター付近に存する自宅で同居していた(甲C4,5,原告Ⓓ)。 エ被告は,岩手県内の地方公共団体であり,本件地震発生当時,本件幼稚園及び本件センターを,いずれも設置・管理していた。 本件に関連する施設の概要及び位置関係等ア ⓐ町の沿岸部は,岩手県釜石市(以下「釜石市」又は「市」という。)中心部より東北約7キロメートルの,太平洋に面したⓒ湾に注ぐⓐ川の河口部に位置する。その海岸線は,緩やかな弧を描いて南北方向(ⓒ湾は東方に当たる。)に延びており,本件地震発生当時,昭和35年以降に整備された高さ約6.4メートルの防潮堤(以下「本件防潮堤」という。)が存在していた( の海岸線は,緩やかな弧を描いて南北方向(ⓒ湾は東方に当たる。)に延びており,本件地震発生当時,昭和35年以降に整備された高さ約6.4メートルの防潮堤(以下「本件防潮堤」という。)が存在していた(甲A1・11頁,乙B1・5頁)。 イ本件センターは,本件地震発生当時,ⓐ町の中心部,海抜約4.3メートルの地点(釜石市ⓐ町第ⓓ地割ⓔ番地ⓕ)に存する2階建て建物(以下「本件建物」という。)の2階に開設されていた。本件建物の1階は,市の施設であるⓐ地区ⓖセンターや消防署ⓐ出張所などとして使用されていた(甲A1・8~10頁,甲A21)。 ウ本件幼稚園は,本件地震発生当時,本件建物に隣接した場所(釜石市ⓐ町第ⓓ地割ⓗ番地ⓘ)に存した幼稚園であり,園舎に隣接して園庭が設けられていた(乙A12,乙B1・5頁)。本件地震発生当時,本件幼稚園の園長はⒾが務めていた。 エ被告は,本件地震発生当時,津波警報及び津波注意報(以下,併せて「津波警報等」という。)が発表されたときに避難する指定津波一次避難場所(以下,単に「一次避難場所」という。)として,ⓐ町の沿岸部(以下「ⓐ地区」と称することもある。)についてはⓙ神社境内,ⓚ寺裏山,ⓛセンター及びⓜ寺の4か所(以下,併せて「ⓙ神社境内ほか3か所」という。)を指定していた。また,本件センターは,本件地震発生当時,大規模な災害が発生し,被告がⓐ地区等に避難勧告や避難指示を発令したときに,災害内容に応じて開設する中・長期的にわたる避難生活を前提とした拠点避難所(以下「拠点避難所」という。)に指定されていたが,一次避難場所としては指定されていなかった。(乙A21・87頁,同91頁,同94頁) 本件地震の発生とその後の経過等ア本件地震は,平成23年3月11日午後2時46分に発生し,震源は三 一次避難場所としては指定されていなかった。(乙A21・87頁,同91頁,同94頁) 本件地震の発生とその後の経過等ア本件地震は,平成23年3月11日午後2時46分に発生し,震源は三陸沖深さ約24キロメートル,地震の規模を示すマグニチュードは9. 0であった(甲A1はじめに)。 イ Ⓖは,本件地震発生当時,本件幼稚園の他の職員や園児らと共に本件幼稚園の園舎内にいたが,その後,本件センターに避難した(甲B3)。 ウ原告Ⓓは,本件地震発生当時,自家用車で外出していたが,その後,自宅に戻り,自宅にいたⒽを連れて本件センターに避難した(甲C4,原告Ⓓ)。 エ本件地震によって発生した本件津波は,同日午後3時16分頃,本件防潮堤を越え,その後,本件建物2階にある本件センターに到達し,その水位は天井付近にまで達した。 Ⓖ,原告Ⓓ及びⒽは,いずれも本件センター内で本件津波に巻き込まれ,うちⒼ及びⒽが死亡した。(甲A1・10頁,同39頁,甲C4,原告Ⓓ) 3 争点釜石市長(以下「市長」という。)には,本件地震発生以前において,ⓐ地区の住民に対し,本件センターが一次避難場所でないことを周知しなかった過失があるか,甲乙事件共通)。 市長又は本件地震発生時に本件建物内に存したⓖセンターの職員(以下「被告職員」という。)には,本件地震発生後,住民を一次避難場所に避難させなかった過失があるか,甲乙事件共通)。 Ⓘ園長又は被告には,本件地震発生以前において,本件幼稚園の災害対策を怠った安全配慮義務違反があるか(,甲事件)。 Ⓘ園長又は被告には,Ⓘ園長の本件地震発生後のⒼへの避難指示に関する安全配慮義務違反があるか,甲事件)。 市長・被告職員の過失又はⒾ園長・被告の安全配慮義務違反と,Ⓖの死亡との間に相当因果 Ⓘ園長又は被告には,Ⓘ園長の本件地震発生後のⒼへの避難指示に関する安全配慮義務違反があるか,甲事件)。 市長・被告職員の過失又はⒾ園長・被告の安全配慮義務違反と,Ⓖの死亡との間に相当因果関係があるか(争点,甲事件)。 市長又は被告職員の過失と,Ⓗの死亡及び原告Ⓓの後遺障害との間に相当 甲事件原告らに生じた損害の有無及び額(,甲事件)乙事件原告らに生じた損害の有無及び額(,乙事件) 4 当事者の主張 市長には,本件地震発生以前において,ⓐ地区の住民に対し,本件センターが一次避難場所でないことを周知しなかった過失があるか)について(原告らの主張)市長は,本件地震発生以前において,住民に対し,以下のとおり,本件センターが一次避難場所でないことを積極的に周知すべき条理上の義務を負っていたのに,同義務に違反したから,国賠法1条1項にいう過失がある。 ア市長は,災害対策法(以下「災対法」という。)46条2項及び同条1項2号に基づき,法令又は災対法5条1項に基づき作成された釜石市地域防災計画(以下「本件防災計画」という。)の定める災害予防に関する事項(同法42条2項2号)を実施すべき義務を負っていた。そして,本件防災計画は,被告に,災害予防として,住民が災害時に的確な避難行動をとることができるよう,避難場所等の整備を進めるとともに,住民に対し,避難訓練の実施などあらゆる機会を利用して,平時から避難に関し周知を図ることを義務付けていた。以上からすれば,市長には,避難訓練や広報等を通じて,被告が指定した一次避難場所を住民に周知すべき職務上の注意義務があった。 イⓐ地区の住民に対し,本件センターが一次避難場所であると誤解させたのであるから,市長は,本件地震発生以前において,本件センターへの津波 避難場所を住民に周知すべき職務上の注意義務があった。 イⓐ地区の住民に対し,本件センターが一次避難場所であると誤解させたのであるから,市長は,本件地震発生以前において,本件センターへの津波到達を予見し得たか否かにかかわらず,前記職務上の注意義務として,条理上,住民の誤解を正すため,本件センターが一次避難場所でないことを積極的に周知しなければならなかった。 被告は,その主催する平成22年5月23日及び平成23年3月3日の各防災訓練(以下,順に「22年5月訓練」及び「23年3月訓練」という。)において,津波発生を想定した避難訓練を実施した際,一次 避難場所ではない本件センターを避難場所として使用した。また,被告は,平成22年8月8日,ⓐ地区内のⓐ町ⓝ町内会(以下「ⓝ町内会」という。)が組織する自主防災会(以下「ⓝ町内会自主防災会」という。)が本件センターを避難場所とする避難訓練(以下「22年8月訓練」という。)を実施した際,ⓝ町内会自主防災会に対し,本件センターが一次避難場所ではないことを伝えないまま,本件センターの使用を許可した。 被告は,平成22年2月のチリ地震(以下「22年チリ地震」という。)の際,本件センターに34名の住民が避難したことを認識しており,かつ,当時のⓖセンター所長が,一次避難場所でない本件センターで避難者を受け入れたことを問題視するメールを庁内メーリングリストに送信していたにもかかわらず,その後何らの措置も講じなかった。平成23年3月9日の三陸沖地震(以下「23年3月9日三陸沖地震」という。)の際も,本件センターに4名の住民が避難したが,やはり被告は何ら措置をとらなかった。 被告は,本件センターを「防災センター」と名付け,「避難室」という名称の部屋を備えるなど,あたかも本件センターが一 も,本件センターに4名の住民が避難したが,やはり被告は何ら措置をとらなかった。 被告は,本件センターを「防災センター」と名付け,「避難室」という名称の部屋を備えるなど,あたかも本件センターが一次避難場所であるかのような外観を作出した。 ウ仮に,市長が,本件センターが一次避難場所でないことを周知しなければならないことの前提として,本件センターへの津波到達を予見し得たことが必要になるとしても,おいて,本件センターへの津波到達を予見することは可能であった。 本件センターは,一次避難場所の指定を受けておらず,明治29年6月15日の明治三陸地震及び昭和8年3月3日の昭和三陸地震の際は,実際に津波による浸水被害を受けた。 岩手県作成の「岩手県地震・津波シミュレーション及び被害想定調査 に関する報告書」(乙A25,以下「本件シミュレーション調査報告書」という。)中の津波浸水予測図(以下「本件津波浸水予測図」という。)は,特定の条件下で津波が生じた際の浸水の範囲及び程度の目安にすぎないから,その予測を上回る被害が生じないことを意味するものではなく,現に被告の防災教育では,ハザードマップを鵜呑みにしてはならないことを教えていた。 前記のとおり,22年チリ地震の際,当時のⓖセンター所長が,本件センターで避難者を受け入れたことを問題視するメールを庁内メーリングリストに送信しており,市職員の多くが,本件センターに津波が到達する危険性を認識していた。 (被告の主張)以下のア~ウからすれば,市長には,本件地震発生以前において,本来の一次避難場所の周知義務に加えて,本件センターが一次避難場所でないことを積極的に周知する義務はなかった。 ア市長は,本件地震発生以前から,住民に対し,一次避難場所の名称及び所在地を記載した「かまい 次避難場所の周知義務に加えて,本件センターが一次避難場所でないことを積極的に周知する義務はなかった。 ア市長は,本件地震発生以前から,住民に対し,一次避難場所の名称及び所在地を記載した「かまいし生活べんり帳」を全戸配布し,「広報かまいし」でも「かまいし生活べんり帳」を確認するよう呼びかけるなどして,正しい一次避難場所を周知していた。また,本件センターは本件建物の2階部分にあり,周辺の建物に比べて特段高くなかったから,ⓐ地区の住民において,本件センターが一次避難場所でないことは,容易に判断可能であった。 イ記載の事実からすれば,被告が,本件センターが一次避難場所であるかのような外観を作出して,ⓐ地区の住民に誤解を与えたことはない。 22年8月訓練は,地震による家屋倒壊等を想定した避難場所の開設等を内容とする防災訓練であって,地震発生時に的確な避難行動をと ることを目的とした避難訓練ではなく,本件センターを使用したことに問題はなかった。 22年5月訓練及び23年3月訓練については,被告は,ⓝ町内会から,訓練への参加者を増やすために,ⓐ地区の中心部にある本件センターを仮の一次避難場所として避難訓練を実施したい旨の申入れを受けたことから,住民の避難意識を高めるためやむを得ず,実際の津波発生時には正しい一次避難場所に避難すべきことを条件に,使用を事実上了承したにすぎない。 地域防災にとって有用な施設である本件センターに「防災センター」の名称を付すことは合理的であるし,「避難室」も,避難者を中・短期的に受け入れるために必要な部屋として名付けたにすぎない。 22年チリ地震の際は予想される津波の高さを岩手県で3メートルとする津波警報(大津波)が,23年3月9日三陸沖地震の際は津波注意報が,それぞれ発令されたが,住民 な部屋として名付けたにすぎない。 22年チリ地震の際は予想される津波の高さを岩手県で3メートルとする津波警報(大津波)が,23年3月9日三陸沖地震の際は津波注意報が,それぞれ発令されたが,住民は,これらの地震の際は,念のためという趣旨で本件センターに避難したにすぎず,一次避難場所に避難しなければならないという切迫した意識を持っていたわけではなかった。 ウ本件津波浸水予測図によれば,本件センター周辺は津波による浸水が予想される区域から外れていたし,本件地震発生当時は,高さ6.4メートルの本件防潮堤が整備されていたこと,本件津波は,専門家や気象庁をしても予見し得なかった程に巨大な規模であったことにも照らせば,市長が,本件地震発生以前に,津波が本件センターに到達する事態を予見することは不可能であった。 市長又は被告職員には,本件地震発生後,住民を一次避難場所に避難させなかった過失があるか)について(原告らの主張)ア市長には,災対法50条2項及び同条1項1号により,避難の勧告及 び指示を含む災害応急対策を講じること,本件防災計画により,災害発生時には,住民等に対し,迅速かつ的確に,避難先や避難経路を明示することが義務付けられていた。したがって,市長は,本件地震発生後,被告職員に対し,住民が一次避難場所に避難するように指示・誘導させる職務上の義務を負っていた。 しかしながら,市長は,ⓖセンターのマニュアルに,災害発生時の業務内容として,本件センター内に避難者を受け入れることを明記し,被告職員に津波発生時に避難者を受け入れるよう誤った指示を出すなど,前記職務上の義務を怠った。その結果,後記イ記載のとおり,被告職員は,本件地震発生当日,住民を本件センター内に避難するよう誘導したのであるから,市長には,国賠法1条1 れるよう誤った指示を出すなど,前記職務上の義務を怠った。その結果,後記イ記載のとおり,被告職員は,本件地震発生当日,住民を本件センター内に避難するよう誘導したのであるから,市長には,国賠法1条1項にいう過失がある。 イ被告職員は,本件地震発生後において,住民に対し,ⓙ神社境内が一次避難場所である旨を伝え,そこへの避難を誘導すべき職務上の義務を負っていた。 津波の高さの予測精度は0.5~2倍であり,かつ,防潮堤に衝突した津波は高さが1.5倍になることからすれば,被告職員は,気象庁が,本件地震発生直後の平成23年3月11日(以下,特に断らない限り,時分は同日中なので省略することがある。)午後2時49分,岩手県沿岸に津波警報(大津波)を発令し,午後2時50分,岩手県において予想される津波の高さを3メートルと発表(以下,午後2時49分の警報及び午後2時50分の発表内容を併せて「本件大津波警報(3メートル)」という。)した時点で,本件地震に伴い発生した津波が,本件センターに到達することを予見し得た。そして,本件大津波警報(3メートル)発表時,釜石市への津波到達予想時刻は午後3時10分頃とされており,本件建物から,最寄りの一次避難場所であるⓙ神社境内へは,徒歩で約7分弱で移動することができるから,本件建物付近にいた住民 がⓙ神社境内へ避難する時間的余裕も十分にあった。 しかしながら,被告職員は,本件地震発生後,本件建物入口付近で,住民に対し,ⓙ神社境内等の一次避難場所の場所を伝えて誘導しなかったばかりか,本件センター内に避難するよう積極的に促し,前記職務上の義務に違反したから,被告職員には,国賠法1条1項にいう過失がある。 (被告の主張)ア市長及び被告職員が,本件地震発生以前に,本件センターへの津波到達を予見。 また 極的に促し,前記職務上の義務に違反したから,被告職員には,国賠法1条1項にいう過失がある。 (被告の主張)ア市長及び被告職員が,本件地震発生以前に,本件センターへの津波到達を予見。 また,本件地震発生後の午後3時14分に,岩手県において予想される津波の高さを6メートルに修正する津波警報(大津波)(以下「本件大津波警報(6メートル)」という。)が発表された時点においても,ⓐ地区の海岸には高さ6.4メートルの本件防潮堤があったこと,本件地震発生直後の混乱した状況下で,津波の規模や到達時刻についての正確な情報を把握することができなかったことから,市長及び被告職員が,本件センターへの津波到達を予見することは不可能であった。 以上のとおり,市長及び被告職員は,本件地震発生後,本件津波が本件センターに到達することを予見し得なかったから,原告らの主張する過失はない。 イ原告らが主張するマニュアルの記載は,本件センターが拠点避難所であることを示すにすぎず,市長が,被告職員に対し,津波発生時に住民を本件センター内に受け入れるようあらかじめ指示した事実はない。また,被告職員が,本件地震発生後,住民を本件センター内に積極的に誘導した事実はなく,本件地震発生後の被告職員の行動に何ら問題はなかった。 Ⓘ園長又は被告には,本件地震発生以前において,本件幼稚園の災害対策を怠った安全配慮義務違反があるか)について(甲事件原告らの主張) ア Ⓘ園長は,釜石市立幼稚園管理運営規則21条1項及び同規則24条1項並びに職員に対する指揮監督権に基づき,被告は,Ⓖを含む本件幼稚園の職員の使用者として,それぞれ職員の生命等が自然災害の危険から保護されるよう配慮すべき安全配慮義務を負っていた。 具体的には,①学校保健安全法29条1項及び本件防災 き,被告は,Ⓖを含む本件幼稚園の職員の使用者として,それぞれ職員の生命等が自然災害の危険から保護されるよう配慮すべき安全配慮義務を負っていた。 具体的には,①学校保健安全法29条1項及び本件防災計画の定めに基づき,本件幼稚園について,津波が予想される地震発生の際に園児を集団的に避難させる場合の避難場所,避難経路,誘導方法及び指示伝達方法等を定めた避難計画を作成すべき義務,②本件幼稚園について被告が作成した平成21年度「幼稚園経営」(以下「平成21年度幼稚園経営」という。)の定めに基づき,本件幼稚園の避難計画を実行するための避難誘導体制を確立すべき義務,③本件幼稚園の職員に対し,避難訓練を適切に実施するなどの方法で,正しい一次避難場所を周知すべき義務を負っていた。 イしかしながら,Ⓘ園長及び被告は,のとおり,それぞれの安全配慮義務に違反したから,Ⓘ園長には国賠法1条1項にいう過失があり,被告には債務不履行がある。 平成21年度幼稚園経営には,避難場所について「第1 園庭」,「第2 園長の指示による」とあるのみで,避難経路,誘導方法及び指示伝達方法等の記載はないし,避難場所等に関する記載も避難訓練に関する定めにすぎない。したがって,平成21年度幼稚園経営は,学校保健安全法29条1項及び本件防災計画に定められた避難計画とは評価できないから,Ⓘ園長及び被告は,法令等で定められた避難計画を作成していない。 Ⓘ園長及び被告は,避難誘導体制が具体的に記載された文書を作成しないなど,本件幼稚園の避難計画を実行するための避難誘導体制を確立しなかった。本件地震発生当日のⒾ園長ら職員の避難行動からも,同体制が確立していなかったことは明らかである。 Ⓘ園長及び被告は,本件幼稚園が実施した津波の発生を想定した避難訓練におい しなかった。本件地震発生当日のⒾ園長ら職員の避難行動からも,同体制が確立していなかったことは明らかである。 Ⓘ園長及び被告は,本件幼稚園が実施した津波の発生を想定した避難訓練において,一次避難場所ではない園庭や本件センターへ本件幼稚園職員を避難させるなど,同職員に対する一次避難場所の周知を一切行わなかった。 (被告の主張)以下のア~ウ記載のとおり,Ⓘ園長及び被告に安全配慮義務違反はない。 ア平成21年度幼稚園経営においては,学校保健安全法29条1項及び本件防災計画の定めに基づいて,避難順序や避難時の留意事項を記載した避難訓練計画が定められていた。 イ本件幼稚園では,毎年ⓙ神社に行った際,本件幼稚園から同神社境内までの避難経路を確認していたし,避難訓練を実施する度に誘導方法や指示伝達方法の確認をしており,避難誘導体制は適切に確立されていた。 ウ前記イのとおり,本件幼稚園では,ⓙ神社境内までの避難経路を毎年確認しており,本件幼稚園の職員は正しい一次避難場所を十分認識していた。 Ⓘ園長又は被告には,Ⓘ園長の本件地震発生後のⒼへの避難指示に関する安全配慮義務違反があるか)について(甲事件原告らの主張)ア記載のとおり,Ⓘ園長及び被告は,Ⓖに対する安全配慮義務を負っており,平成21年度幼稚園経営においても,災害発生時の避難場所については,園庭に避難した後は園長の指示に従うこととされていたから,本件地震発生後,Ⓖに対して,適切な避難場所を指示する必要があった。 イで述べた事情からすれば,Ⓘ園長は,遅くとも,本件大津波警報(3メートル)が発出され,かつ津波到達予想時刻が発表された午後2時50分の時点で,本件地震に伴う 津波が本件幼稚園に到達する事態を予見することができた。そして,本件幼稚園から 大津波警報(3メートル)が発出され,かつ津波到達予想時刻が発表された午後2時50分の時点で,本件地震に伴う 津波が本件幼稚園に到達する事態を予見することができた。そして,本件幼稚園から最寄りの一次避難場所であるⓙ神社境内へは,徒歩約8分で移動することができたから,本件幼稚園にいたⒼがⓙ神社境内へ避難する時間的余裕も十分にあった。 したがって,被告及びⒾ園長は,本件地震発生後,Ⓖに対し,ⓙ神社境内に避難するよう指示すべき安全配慮義務を負っていたにもかかわらず,Ⓘ園長は,本件地震発生後,前記義務に違反してⒼに対し何らの避難指示もしなかったから,Ⓘ園長には,国賠法1条1項にいう過失がある。また,Ⓘ園長は,被告の安全配慮義務の履行補助者に当たるから,被告には債務不履行がある。 (被告の主張)ア記載の事実からすれば,Ⓘ園長は,本件地震発生から本件津波が到達するまでの間に,本件幼稚園に津波が到達する事態を予見することはできなかった。したがって,Ⓘ園長及び被告には,本件地震発生後,Ⓖに対し,ⓙ神社境内に避難するよう指示すべき義務はなかった。 Ⓘ園長は,本件地震発生後,最良の避難指示をすべく,携帯電話を用いて指示の前提となる情報を収集しようとしていたのであり,避難指示の準備行為をしていた。 したがって,本件地震発生後のⒾ園長の対応について,Ⓘ園長及び被告には安全配慮義務違反はない。 争点 (市長・被告職員の過失又はⒾ園長・被告の安全配慮義務違反と,Ⓖの死亡との間に相当因果関係があるか)について(甲事件原告らの主張) により,Ⓖは,本件センターが一次避難場所であると誤解し,本件地震発生後に本件センターに避難した。 そうでないとしても,又は被告職員の過失 により,本件センターに避難したⒼは,正しい一次避難場 ,Ⓖは,本件センターが一次避難場所であると誤解し,本件地震発生後に本件センターに避難した。 そうでないとしても,又は被告職員の過失 により,本件センターに避難したⒼは,正しい一次避難場所に避難できなかった。 仮に,前記及びの市長及び被告職員の過失が認められないとしても,Ⓖは,Ⓘ園長若しくは被告の安全配慮義務違反により,本件センターに避難した。現に,被告が適切な防災教育を実施していた市内の小中学校では,本件地震による被害はほとんど生じなかった。 Ⓖは,本件センターに避難した結果,本件津波に巻き込まれて死亡した。 したがって,前記市長及び被告職員の過失又はⒾ園長及び被告の安全配慮義務違反とⒼの死亡との間には,相当因果関係がある。 (被告の主張)被告は,本件地震以前から,正しい一次避難場所を繰り返し周知してきたし,Ⓖが,本件幼稚園の七五三行事で他の職員とⓙ神社境内の場所を確認していたこと,本件幼稚園で防災を担当していたことからしても,Ⓖが一次避難場所を認識していたことは明らかである。Ⓖは,自身の判断で本件センターに避難したのであるから,甲事件原告らが主張する市長・被告職員の過失又はⒾ園長・被告の安全配慮義務違反とⒼの死亡との間には,相当因果関係がない。 Ⓗの死亡及び原告Ⓓの後遺障害との間に相当因果関係があるか)について(乙事件原告らの主張)により,Ⓗ及び原告Ⓓは,本件センターが一次避難場所であると誤解し,本件地震発生後に本件センターに避難した。そうでないとしても,又は被告職員の過失により,本件センターに避難したⒽ及び原告Ⓓは,正しい一次避難場所に避難できなかった。Ⓗ及び原告Ⓓは,本件センターに避難した結 果,Ⓗは,本件津波に巻き込まれて死亡し,原告Ⓓは,本件津波に巻き込まれて死の ーに避難したⒽ及び原告Ⓓは,正しい一次避難場所に避難できなかった。Ⓗ及び原告Ⓓは,本件センターに避難した結 果,Ⓗは,本件津波に巻き込まれて死亡し,原告Ⓓは,本件津波に巻き込まれて死の恐怖に直面し,全身の冷え,下痢,倦怠感及び疲労感等の後遺障害を負った。 したがって,前記市長の過失及び被告職員の過失と,Ⓗの死亡及び原告Ⓓの後遺障害との間には,相当因果関係がある。 (被告の主張)ⓐ地区の住民に対し,一次避難場所を繰り返し周知してきた。Ⓗ及び原告Ⓓは,正しい一次避難場所を認識した上で,自らの判断で本件センターに避難したにすぎない。 したがって,乙事件原告らが主張する市長又は被告職員の過失と,Ⓗの死亡及び原告Ⓓの後遺障害との間には,相当因果関係がない。 )について(甲事件原告らの主張)ア主位的主張記載の甲事件原告らに生じた損害額を加算すると,原告Ⓐが被った損害額は5837万9638円,原告Ⓑ及び原告Ⓒが被った損害額は各1749万4909円と算出される。 Ⓖに生じた損害a 逸失利益 4436万9457円Ⓖの基礎収入は,平成23年賃金センサスの女子,高専・短大卒計の全年齢平均賃金である383万0600円,就労可能年数は36年,生活費控除率は30%とすべきであるから,下記の計算式により,Ⓖの逸失利益は4436万9457円となる。 (計算式) 383万0600円×16.547(36年に対応するライプニッツ係数)×(1-0.3)=4436万9457円(円未満切捨て。以下同様)b 死亡慰謝料 3000万円c 小計 7436万9457円d 甲事件原告らによる相続上記cのⒼの損害賠償請求権を,原告Ⓐが3分の2(49577万9638円),原告Ⓑ及び原告Ⓒが各6分の1(各1 亡慰謝料 3000万円c 小計 7436万9457円d 甲事件原告らによる相続上記cのⒼの損害賠償請求権を,原告Ⓐが3分の2(49577万9638円),原告Ⓑ及び原告Ⓒが各6分の1(各1239万4909円)の割合で相続した。 甲事件原告らに生じた固有の損害a 葬儀関係費用各50万円b 固有の慰謝料各300万円c 弁護士費用原告Ⓐ 530万円原告Ⓑ及び原告Ⓒ 各160万円イ予備的主張記載の固有の損害額を加算すると,原告Ⓐが被った損害額は5537万9638円,原告Ⓑ及び原告Ⓒが被った損害額は各1449万4909円と算出される。 Ⓖに生じた損害 甲事件原告に生じた固有の損害a 葬儀関係費用各50万円b 弁護士費用原告Ⓐ 530万円原告Ⓑ及び原告Ⓒ 各160万円 (被告の主張)いずれも争う。 損害の有無及び額)について(乙事件原告らの主張)後記ア記載の乙事件原告らが相続した額に,後記イ記載の乙事件原告らに生じた損害額を加算すると,原告Ⓓの被った損害額は5417万2637円,原告Ⓔ及び原告Ⓕの被った損害額は各1843万6053円と算出される。 ア Ⓗに生じた損害逸失利益 1770万8160円Ⓗの基礎収入は,平成23年賃金センサスの女子,学歴計の全年齢平均賃金である355万9000円,就労可能年数はⒽ(死亡時71歳)の平均余命(23年)の2分の1に当たる9年,生活費控除率は30%とすべきであるから,下記の計算式により,Ⓗの逸失利益は1770万8160円となる。 (計算式)355万9000円×7.108(9年に対応するライプニッツ係数)×(1-0.3)=1770万8160円死亡慰謝料 2500 により,Ⓗの逸失利益は1770万8160円となる。 (計算式)355万9000円×7.108(9年に対応するライプニッツ係数)×(1-0.3)=1770万8160円死亡慰謝料 2500万円小計 4270万8160円乙事件原告らによる相続Ⓗの損害賠償請求権を,乙事件原告らが各3分の1(各1423万6053円)の割合で相続した。 イ乙事件原告らに生じた損害原告Ⓓに生じた損害原告Ⓓは,本件津波に巻き込まれた影響で,全身の冷え,下痢,倦怠感及び疲労感等の後遺障害等級第9級に相当する後遺障害を負い,下記 a及びbの損害を被った。 a 後遺障害慰謝料 690万円b 逸失利益 2263万6584円原告Ⓓの基礎収入は,平成23年賃金センサスの男子,高卒計の全年齢平均賃金である458万8900円,就労可能年数は25年,生活費控除率は30%,労働能力喪失率は35%とすべきであるから,下記の計算式により,原告Ⓓの逸失利益は2263万6584円となる。 (計算式)458万8900円×14.094(25年に対応するライプニッツ係数)×(1-0.3)=2263万6584円c 原告Ⓓ自らが被災したことによる慰謝料 300万円 Ⓗの死亡について乙事件原告らに生じた固有の損害a 葬儀関係費用各50万円b Ⓗの死亡による慰謝料各200万円c 弁護士費用原告Ⓓ 490万円原告Ⓔ及び原告Ⓕ 各170万円(被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 津波に関する一般的な知見等ア海底で大きな地震が発生すると,断層運動により海底が急激に隆起又は沈降するが,これに伴 前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 津波に関する一般的な知見等ア海底で大きな地震が発生すると,断層運動により海底が急激に隆起又は沈降するが,これに伴い海面が変動し,大きな波となって周囲に伝播する 現象が津波である。津波は,海域で吹いている風によって生じる通常の波(波浪)と異なり,数キロメートルから数百キロメートルもの波長を有し,海底から海面までの全ての海水が巨大な水の塊となって移動する,速度が非常に速いエネルギーの大きな波である。(甲A4の2)イ沖合で発生した津波が周囲に伝播する速度は,深い海ほど速く,水深10メートルの場合で,時速約36キロメートルとなる(乙A29・3頁)。 ウ海浜や護岸等の海岸地形よりも波高が高い津波が,海岸へ達して陸上へ駆け上がることを遡上といい,津波による浸水の最先端が達した地盤の最大の高さを遡上高という(乙A29・5頁,同8頁)。 津波が陸上に達すると,陸域の地形等の形状や津波の周期等によっても異なるが,一般的には津波は減衰し,氾濫した水の深さ(浸水深)は内陸に入るにつれて小さくなる。陸域における津波の被害の程度は,この浸水深の深さにより大きく異なり,一般的には,0.3メートル以上の浸水深で身動きが取れなくなり,1メートル以上の浸水深で,津波に巻き込まれた人のほとんどが死亡し,5メートル以上で,建物の2階部分までが水没する。(乙A29・3頁,同8頁,乙A32・20頁)エ津波が防潮堤にぶつかると,その瞬間,津波の運動エネルギーがゼロになり,これが瞬時に位置エネルギーに変換されて海面が盛り上がり,理論上は,その高さが1.5倍程度にまで達する(なお,八重山地方防災連絡会作成の「津波防災マニュアル」によれば,津波が防潮堤に衝突すると,高さは1. 時に位置エネルギーに変換されて海面が盛り上がり,理論上は,その高さが1.5倍程度にまで達する(なお,八重山地方防災連絡会作成の「津波防災マニュアル」によれば,津波が防潮堤に衝突すると,高さは1.7~1.8倍になるともされている。)(甲A22,23)。 本件地震発生当時のⓐ地区の状況や関連施設の概要等ア ⓐ地区は,地区の南西部に山があり,北東部は低地で,その東側の一部がⓒ湾に接しており,北部には東西方向にⓐ川が流れている。 ⓐ町の一次避難場所であるⓙ神社境内ほか3か所は,いずれもⓐ川の南側に存する。このうち,本件建物及び本件幼稚園(以下,併せて「本件建 物等」という。)の最寄りの一次避難場所であるⓙ神社境内は,本件建物等の南西に位置する山の急な坂を北西方向に階段で30メートル程度上った所に位置していた。本件建物からⓙ神社境内まで最短の経路を通行した場合の距離は約550メートルであり,本件幼稚園からの同距離は約630メートルであった。本件建物等からその他の3か所の一次避難場所までの距離は,いずれも本件建等からⓙ神社境内までの距離より更に数百メートル離れていた。(甲A15,乙A12,乙A21・91頁)イ本件建物は,ⓐ川の南,国道45号線の東のⓒ湾の海岸線の最も近い所から南西約1.2キロメートル,海抜約4.3メートルの場所に所在する鉄筋コンクリート造2階建て,1階の床面積は893.11平方メートル,2階の床面積は728.01平方メートルの建物であった。本件建物の屋外の壁には屋上へ通じる梯子が備え付けられていたが,屋上に人が出入りすることは想定されていなかった。(甲A1・8~10頁)ウ被告は,平成22年2月1日,市民の防災に関する知識の普及及び市民の防災意識の高揚を図るとともに,災害発生時における災害対策拠点とする することは想定されていなかった。(甲A1・8~10頁)ウ被告は,平成22年2月1日,市民の防災に関する知識の普及及び市民の防災意識の高揚を図るとともに,災害発生時における災害対策拠点とすることを目的に,本件建物2階部分に本件センターを開設した(甲A1・8~9頁)。 本件センターには,避難室(ホール),第一研修室(和室),第二研修室,調理室,活動支援室(小会議室)及び防災備蓄倉庫があり,避難室は,拠点避難所として使用される際に,避難者を収容することが想定されていた(甲A1・9頁,甲A9・15頁)。 廃止前の釜石市ⓐ地区防災センター条例(平成21年12月18日条例第25号)には,本件センターを使用しようとする者は,あらかじめ市長の許可を受けなければならないと定められていた(4条1項)(甲A1・資料29~31頁)。 エ本件建物1階には,釜石市役所の出先機関であるⓖセンターが置かれて おり,ⓖセンター所長のほか被告職員が勤務していた。 ⓖセンターの主たる業務内容は,保健福祉業務,公民館業務及び証明書等交付業務等であったが,被告職員は,上記各業務のほか,本件建物の運営・管理,災害時の職員の参集状況,本件センターへの避難者数,被災情報等の報告等を行っていた。(甲A1・33頁,乙A21・41頁)ⓖセンター所長は,ⓐ公民館長を兼務しており,避難室を含む2階の公民館的利用部分の使用について,公益性が認められれば使用許可証を発行するなどの業務を行っていたが,特に,利用内容を具体的に確認するなどして地域住民の防災活動の適否を直接監督・指導する立場にはなかった(甲A1・33頁)。 なお,本件センターとⓖセンターの玄関は共通であった。被告は,同玄関の鍵の管理をシルバー人材センターに委託していたため,被告職員は直接鍵を管理していな 導する立場にはなかった(甲A1・33頁)。 なお,本件センターとⓖセンターの玄関は共通であった。被告は,同玄関の鍵の管理をシルバー人材センターに委託していたため,被告職員は直接鍵を管理していなかった。(甲A1・9頁,甲A9・28頁)オ本件幼稚園は,ⓐ川の南,国道45号線の東の海抜約3.2メートルの場所に所在していた。本件幼稚園は,鉄筋コンクリート造平屋建て(一部2階建て)の園舎(595平方メートル)及び園庭(1066平方メートル)からなっており,園庭の東南側は本件建物に接していた。園舎の1階には保育室や遊戯室,2階には職員室や保健室等があった(甲B3,乙A12,乙B1・8頁)。 本件幼稚園は,3歳児から5歳児までを対象に,月曜日から金曜日の午前8時30分から午後2時頃まで保育を実施しており,降園時刻以後も午後6時までの間は預かり保育を実施していた(乙B1・10頁,同21頁)。 カ ⓐ地区には,災対法5条2項による自主防災組織として,ⓝ町内会によるⓐ町ⓝ町内会自主防災会(ⓝ町内会防災会。平成21年6月28日設置当時の構成世帯数194世帯,構成人数502名),ⓐ町ⓞ町内会による ⓐ町ⓞ町内会自主防災会平成7年5月1日施行),ⓐ町ⓟ町内会による自主防災会(平成21年10月26日設置当時の構成世帯数95世帯,構成人数250名),ⓠ町内会及びⓡ振興会によるⓢ自主防災会(平成21年7月23日施行)が設置されていた(以下,併せて「各自主防災会」ということがある。)(乙A13~19)。 本件地震発生当時における気象庁の津波警報等の概要ア気象庁は,地震が発生すると,地震の規模や位置をすぐに推定し,これらを基に沿岸で予想される津波の高さ(海岸線における高さ)を求め,地震発生後原則約3分を目標に,津波警報又は津波注意報を の概要ア気象庁は,地震が発生すると,地震の規模や位置をすぐに推定し,これらを基に沿岸で予想される津波の高さ(海岸線における高さ)を求め,地震発生後原則約3分を目標に,津波警報又は津波注意報を,全国を66区域に分けた予報区単位(岩手県沿岸は,その全てが「岩手県」という単一の予報区であった。)で発表することとしている(甲A4の3,乙A27・5~10頁,同36頁)。 イ本件地震発生当時,予想される津波の高さは,0.5メートル,1メートル,2メートル,3メートル,4メートル,6メートル,8メートル及び10メートル以上の8区分で発表され,予想される津波の高さが0.5メートルの場合は津波注意報として,1メートル又は2メートルの場合は津波警報(津波)として,3メートル以上の場合は津波警報(大津波)として発表されていた(乙A27・21頁)。 ウ津波情報の中で発表する予想される津波の高さは,津波予報区における平均的な値であり,場所によっては予想された高さよりも高い津波が押し寄せることがあり,予想される津波の高さの予想精度は,0.5~2倍程度とされている(甲A4の2)。 地震・津波災害に関するシミュレーション調査結果及び本件防災計画の概要等ア本件シミュレーション調査報告書(甲A15,乙A22,25)岩手県は,平成16年11月,近い将来岩手県下に甚大な被害をもたら すおそれのある地震・津波の災害像を明らかにし,県内市町村の津波避難計画策定を始めとする防災対策のための基礎資料とすることを目的として,各市町村や各種防災関係機関,大学教授等の協力を得て,シミュレーション調査に基づく想定される被害状況の検討等を内容とする本件シミュレーション調査報告書を作成・発表した。その主な内容は,以下のとおりであった。 シミュレー ,大学教授等の協力を得て,シミュレーション調査に基づく想定される被害状況の検討等を内容とする本件シミュレーション調査報告書を作成・発表した。その主な内容は,以下のとおりであった。 シミュレーション調査において想定された地震は,主に,明治三陸地震と同等の地震,昭和三陸地震と同等の地震,将来発生が予想される想定宮城県沖連動地震であった。 これらのうち,ⓐ地区において最も高い津波が発生することが想定された地震は,明治三陸地震と同等の地震であり,ⓒ湾沿岸部には少なくとも6メートル以上の高さ(海岸線における高さ)の津波が37分で到達すると予測された。 シミュレーション調査に基づき,県内の市町村ごとに,明治三陸地震津波,昭和三陸地震津波等及び想定宮城県沖連動地震を前提とした本件津波浸水予測図が作成された。 本件津波浸水予測図(釜石市のものを指す。以下同様とする。乙A22)では,ⓐ地区では,ⓒ湾沿岸部やⓐ川の河口付近には最大で6メートル(浸水深)以上の,沿岸部よりやや内陸に入ったⓐ川周辺には50センチメートル未満から6メートル未満(浸水深)の津波による浸水が予想されていた。本件建物等は,津波による浸水が予想された地域の外に存しており,浸水が予想された地域のうち最も近い地点から200~300メートル程度離れていた。なお,本件津波浸水予測図では,明治三陸地震又は昭和三陸地震の津波の浸水範囲(実績)が赤線で示されており,本件建物等は,いずれも当該赤線付近に存していた。 イ釜石市地域防災計画(本件防災計画,甲A2) 被告は,平成22年頃,災対法5条1項及び同法16条1項に基づき,釜石市防災会議を置き,災対法42条2項所定の事項を定めた市町村地域防災計画として本件防災計画を策定した。本件防災計画で定められた避難対策計画(第2章 頃,災対法5条1項及び同法16条1項に基づき,釜石市防災会議を置き,災対法42条2項所定の事項を定めた市町村地域防災計画として本件防災計画を策定した。本件防災計画で定められた避難対策計画(第2章第5節),避難・救出計画(第3章第14節)の主な内容は,以下のとおりであった。 なお,本件防災計画においては,ⓐ町における一次避難場所としてⓙ神社境内ほか3か所が,拠点避難所として本件センターほか2か所が,それぞれ指定されていた。 第2章第5節避難対策計画第1 基本方針 1 市は,火災,水害等の災害から住民の生命,財産を守るため,避難計画を作成し,避難場所,避難道路等の整備を進めるとともに,住民への周知徹底を図る。 2 学校,病院,社会福祉施設等の管理者は,施設内にいる者の避難を迅速,確実に行うため,避難計画を作成し,その周知徹底を図る。 第2 避難計画の作成 1 避難計画市は,避難場所及び避難所(以下「避難場所等」という。)として指定する施設の管理者その他関係機関等と調整し,避難準備情報,避難勧告,避難指示の基準及び伝達方法,避難場所等の名称,所在地,対象地区及び対象人口,避難場所等への経路及び誘導方法,住民に対する広報,避難訓練等を内容とした避難計画を作成する。 2 学校,病院,社会福祉施設等における避難計画学校,病院,社会福祉施設,事務所など多数の者が出入りし,勤務し,又は居住している施設の管理者は,施設内にいる者の避難を 迅速,確実に行うため,避難計画を作成し,関係職員等に周知徹底を図る。 管理者は,市,消防機関,警察機関等と密接な連携を図るとともに,避難訓練の実施等により避難体制の確立に万全を期する。 学校においては,児童・生徒を集団的に避難させる場合の避難場所,避難経路,誘導方法, 者は,市,消防機関,警察機関等と密接な連携を図るとともに,避難訓練の実施等により避難体制の確立に万全を期する。 学校においては,児童・生徒を集団的に避難させる場合の避難場所,避難経路,誘導方法,指示伝達方法等を定める。 第3 避難場所等の整備等 1 避難場所等の整備市は,次の事項(省略)に留意し,施設管理者の同意を得て,地域の実情に応じ,地区ごとに避難場所等を指定する。 第4 避難に関する広報市は,住民が的確な避難行動をとることができるよう,平常時から,避難場所,過去の浸水区域等を示した防災マップ,パンフレット等の活用,講習会,避難防災訓練の実施など,あらゆる機会を利用して,避難に関する広報活動を行い,住民に対する周知徹底を図る。 具体的には,避難場所等に関する事項として,避難場所等の名称,所在地及び避難場所等への経路,避難行動に関する事項として,平常時における避難の心得,避難勧告等の伝達方法,避難の方法及び避難後の心得,災害に関する事項として,災害に関する基礎知識及び過去の災害の状況について広報活動を行う。 第5 避難訓練の実施市は,住民の意識の高揚を図るとともに,災害時に的確な避難行動をとることができるよう,定期的に,防災訓練の一環として,又は単独で,避難訓練を実施する。 訓練の実施にあたっては,居住者及び滞在者を含めた避難対象 地区すべての住民が参加するよう配慮する。 第3章第14節避難・救出計画第1 基本方針災害発生時において,住民等の生命,身体の安全を確保するため,迅速かつ的確に避難勧告及び指示のほか,災害時要援護者等,特に避難行動に時間を要する者に対して,早めの段階で避難準備(災害時要援護者避難)情報(以下,本節中「避難勧告等」という。)を伝達するとともに,避難誘導を行う 勧告及び指示のほか,災害時要援護者等,特に避難行動に時間を要する者に対して,早めの段階で避難準備(災害時要援護者避難)情報(以下,本節中「避難勧告等」という。)を伝達するとともに,避難誘導を行う。 第2 実施機関(責任者)市本部長は,地域住民,滞在者その他の者に対する避難のための立退き勧告,指示を行う。なお,市本部長は市長を指す。 第3 実施要領 1 避難勧告等の基準及び報告避難勧告(災害の発生や拡大が予想されるとき,避難することを勧めること。),避難指示(災害の発生や拡大が確実に予想され,著しく危険が切迫したとき,強制的に避難させること。)を行う。 2 避難勧告等避難勧告等の内容実施責任者は,発令者,避難勧告等の日時と理由,避難対象地域,避難先,避難経路,その他必要な事項を明示して,避難勧告等を行う。 避難勧告等の周知実施責任者は,避難勧告等の内容を,直接の広報(防災行政無線,広報自動車等)又は広報媒体(ラジオ,テレビ)によって,直ちに地域住民等への周知徹底を図る。 避難の誘導市本部長は,あらかじめ,災害時要援護者,特に自力で非難することが困難な者の居住状況等に配慮して,避難計画を別に定める。 避難者の確認等市職員,消防団員等は,避難場場所等及び避難対象地域を巡回し,避難者の確認を行うとともに,避難が遅れた者の救出を行う。 ア避難場所(避難所)避難した住民等の確認,特に自力避難が困難な高齢者,障がい者等の安否の確認イ避難対象地域避難が遅れた者又は要救出者の有無の確認,避難が遅れた者等の避難誘導,救出本件地震発生前のⓐ地区における避難訓練の実施状況等ア 22年5月訓練の実施状況等被告は,平成22年5月23日(日曜日)午前6時から,市内沿岸部 の確認,避難が遅れた者等の避難誘導,救出本件地震発生前のⓐ地区における避難訓練の実施状況等ア 22年5月訓練の実施状況等被告は,平成22年5月23日(日曜日)午前6時から,市内沿岸部地域を津波浸水想定地域として,同時刻に宮城県沖を震源とするマグニチュード8.0,震度5強の地震が発生し,同日午前6時3分に仙台管区気象台から,津波到達予想時刻同日午前6時25分頃,予想される津波の高さを10メートルとする津波警報(大津波)が発表されたことを想定した避難訓練(22年5月訓練)を主催した。 22年5月避難訓練の実施要領では,実施場所は市内の一次避難場所69か所(津波避難ビル2か所を含む。)とされ,訓練項目には津波避難訓練として,市民,自主防災会及び町内会による避難場所への避難や誘導が行われることとされた。また,訓練対象地域には,津波浸水対象 地域として,ⓐ町第11地割,同第12地割,同第14地割,同第ⓓ地割,同第16地割,同第17地割,同第18地割,同第19地割,同第20地割,同第21地割及び同第22地割が含まれており,本件建物等は同第ⓓ地割に存していた。(乙A2)被告は,22年5月訓練に先立ち,訓練対象地域の各町内会会長及び各地区自主防災組織の長に対し,22年5月訓練の概要を伝えるとともに,区域内の住民に同訓練への参加と周知を依頼する文書を送付した。 同文書には,「訓練用緊急地震速報で訓練地震の発生と訓練大津波警報を防災行政無線により放送しますので,同時に住民の方は,最寄りの津波避難場所・津波避難ビル・高台等へ避難していただきますようお願いいたします。」,「各地区の津波避難場所については,「かまいし生活便利帳」に記載しております。」などと記載されていた。(乙A2)各自主防災会の役員らは,避難訓練の参加率を いただきますようお願いいたします。」,「各地区の津波避難場所については,「かまいし生活便利帳」に記載しております。」などと記載されていた。(乙A2)各自主防災会の役員らは,避難訓練の参加率を上げるため工夫を重ねていたところ,一次避難場所が屋外であるため寒さに関する苦情が出ていたことから,ⓝ町内会は,室内待機が可能である本件センターを利用しようと考え,被告の防災課長に,本件センターを避難訓練の場所として利用することを口頭で相談して,その了承を得た。(甲A1・28頁,甲A13,乙A33)被告は,22年5月訓練の参加者数を,一次避難場所とその他の場所とで分けて把握していたところ,一次避難場所であるⓚ寺裏山に97名,ⓙ神社境内に57名,ⓛセンターに51名,ⓜ寺に35名,その他の場所である本件センターに66名が避難したとの結果を把握した。なお,釜石市内沿岸部全域の避難率は,前年度から2.5パーセント増加しており,ⓐ地区の参加者が増加した原因として,その前年度に,ⓝ町内会自主防災会など複数の自主防災会が結成されたことが考えられた。(乙A3) イ 22年8月訓練の実施状況等ⓝ町内会自主防災会及びⓞ町内会自主防災会は,平成22年8月8日(日曜日)午前9時から,本件センター及び本件建物前駐車場を訓練会場とする合同自主防災訓練(22年8月訓練)を主催した。22年8月訓練の目的は,災害時の被害を軽減するためには,地域住民による自主的な防災活動がより重要であることから,「自らの身の安全は自ら守る」を基本とした地域に密着した防災訓練を実施することによって,ⓝ町内会及びⓞ町内会の防災力の向上及び防災意識の高揚を図ることとされ,ⓝ町内会,ⓞ町内会,ⓐ小学校及びⓣ中学校が参加団体とされた。訓練においては,地震による家屋倒壊等が発生 実施することによって,ⓝ町内会及びⓞ町内会の防災力の向上及び防災意識の高揚を図ることとされ,ⓝ町内会,ⓞ町内会,ⓐ小学校及びⓣ中学校が参加団体とされた。訓練においては,地震による家屋倒壊等が発生し,自主防災組織により避難誘導・搬送・救命・給食等の応急活動を行うことを想定して,避難所開設,給食及び消火器使用等の訓練を行うことが内容とされた。(乙A1)被告は,22年8月訓練の後援者となっており,前記各自主防災会は,22年8月訓練に先立ち,被告に対し,22年8月訓練の内容を伝えて本件センターの使用の許可を申請し,被告の許可を得た。また,ⓝ町内会自主防災会は,釜石ⓒ地区行政事務組合消防長に対し,22年8月訓練時に消火器使用講習などの受講を希望する旨を申請した。(乙A1,7)ウ 23年3月訓練の実施状況等被告は,平成23年3月3日(木曜日)午前6時から,市内沿岸部地域を津波浸水想定地域として,同時刻に宮城県沖を震源とするマグニチュード8.0,震度5強の地震が発生し,同日午前6時3分に仙台管区気象台から津波到達予想時刻同日午前6時25分頃,予想される津波の高さは10メートルとする津波警報(大津波)が発表されたことを想定した避難訓練(23年3月訓練)を主催した。 同訓練の実施要領は,22年5月訓練のそれとほぼ同一内容であった。 (乙A4)被告は,23年3月訓練に先立ち,訓練対象地域の各町内会会長及び各地区自主防災会の長に対し,23年3月訓練の概要を伝えるとともに,区域内の住民に同訓練への参加と周知を依頼する文書を送付しており,同文書の内容は,22年5月訓練の際の文書)と概ね同一であった。(乙A4)被告が平成23年2月15日に発行した「広報かまいし」には,23年3月訓練の実施と訓練内容等の概要が掲載されてお り,同文書の内容は,22年5月訓練の際の文書)と概ね同一であった。(乙A4)被告が平成23年2月15日に発行した「広報かまいし」には,23年3月訓練の実施と訓練内容等の概要が掲載されており,「地震や津波への備え,津波避難場所,非常持ち出し品などは,かまいし生活べんり帳(平成21年1月全戸配布)にも掲載していますので,ご確認ください。」との記載があった。(乙A6)被告は,23年3月訓練の参加者数を,一次避難場所とその他の場所とで分けて把握していたところ,一次避難場所であるⓚ寺裏山に83名,ⓙ神社境内に73名,ⓛセンターに48名,ⓜ寺に25名,その他の場所である本件センターには101名が避難したとの結果を把握した。なお,釜石市内沿岸部全域の避難率は,22年5月訓練から2パーセント増加した。(乙A5)エ現実の地震発生時の避難状況等(甲A1・28頁,甲A3)被告は,22年チリ地震が発生し,気象庁が,岩手県について津波警報(大津波)を発表した際に,本件センターに34名の住民が避難したこと,23年3月9日三陸沖地震が発生した際に,本件センターに4名の住民が避難したことを,それぞれ把握していた。(甲A1・28~29頁,甲A3)オ原告Ⓓは,平成10年頃から,本件センター近くの自宅でⒽと同居していたが,22年5月訓練,22年8月訓練,23年3月訓練を含む被告や各自主防災会主催の避難訓練に参加したことは一度もなかった。また,Ⓖ は,前記各訓練実施並びに22年チリ地震及び23年3月9日三陸沖地震が発生した当時,ⓐ地区に居住していなかった。(甲C4,5,原告Ⓓ)。 本件地震発生前の本件幼稚園の防災体制及びⒼの勤務状況等ア本件幼稚園では,学校教育法第3章,学校教育法施行規則第3章及び幼稚園教育 当時,ⓐ地区に居住していなかった。(甲C4,5,原告Ⓓ)。 本件地震発生前の本件幼稚園の防災体制及びⒼの勤務状況等ア本件幼稚園では,学校教育法第3章,学校教育法施行規則第3章及び幼稚園教育要領に基づき,「幼稚園経営」と題する文書において,幼稚園の教育課程編成の基本的構想,幼稚園の概要,経営計画,教育計画等を定めていた。本件幼稚園では,この「幼稚園経営」を災害発生時の行動指針として位置づけていた。 平成21年度の「幼稚園経営」(平成21年度幼稚園経営。乙B1)には,園行事計画として災害から身を守るための基本的な行動としての避難の仕方を分からせ,非常事態の際の心構えについて関心を持たせることを狙いとして避難訓練を実施する旨が定められていた。そして,①避難訓練は,近火,遠火,地震,防犯訓練を想定し,②避難順序として,まず,園内放送又は大声で災害を報知すること,次に先生の指示で行動すること,避難場所は「(第1⇒園庭)(第2⇒園長の指示による)」とすること,③人員の確認として,担任は異常の有無を園長に報告すること,④園長は保育室・火気の点検を行うこと,避難終了後,今日の訓練について話すことなどが記載されていた。 そして,避難訓練年間計画については,幼児の発達段階に合わせて,いかに安全に避難するかという避難の習熟を狙うこと,避難訓練は子供たちが常に真剣な気持ちで取り組めるように変化のある計画にすること,できるだけ臨場感に溢れた計画で実施し,具体的に着実にできるようにすることを方針とする旨が定められていた。また,年1回,地震・火災・津波の発生を想定した避難訓練を実施すること,その際の指導内容・方法等としては,ベルの合図,放送で地震であることを確認し,教師のところに集め地震の揺れが収まるまで待つ,揺れが収まった後,落下物に気を付けなが を想定した避難訓練を実施すること,その際の指導内容・方法等としては,ベルの合図,放送で地震であることを確認し,教師のところに集め地震の揺れが収まるまで待つ,揺れが収まった後,落下物に気を付けなが ら指示された場所に避難する,園長先生から地震や津波の時のお話を聞く旨が記載されていた。 そのほか,地震災害による避難訓練の実施について,園児,保護者,教職員による避難誘導体制の確立,避難場所,避難経路の確認(津波に対する安全区域の確認,津波ハザードマップ),保護者との連絡体制整備(引渡しカード,引渡しチェックカードの作成)が必要であること非常時に備えて,保育室に避難用リュック及び名簿・笛・簡単な医薬品などを用意し,避難訓練のときは避難用リュックを持って避難緊急の場合の連絡先を確認しておくこと年少組は誘導ロープを使っての避難の仕方が円滑にいくように保育の中でも誘導ロープを活用していくことが定められていた。 本件幼稚園の平成22年度の「幼稚園経営」(以下「本件幼稚園経営」という。)の内容は,平成21年度幼稚園経営から大きな変更はなかった。 (乙B1,5,証人Ⓙ)イ本件幼稚園では,本件地震発生以前に津波発生を想定した避難訓練を実施していたが,園舎から園庭に避難する訓練を実施し,本件幼稚園周辺の一次避難場所であるⓙ神社境内やⓚ寺裏山に避難する訓練を実施したことはなかった。 本件幼稚園の職員は,本件幼稚園周辺の一次避難場所がⓙ神社境内及びⓚ寺裏山であることを概ね認識しており,ⓙ神社境内までの道順は,園の行事を通じて把握していた。(甲A18,甲B3,乙B2,5)ウ Ⓖは,ⓤ保育園やⓥ幼稚園での勤務を経て,平成22年4月から本件幼稚園の臨時職員として勤務していたが,同年8月頃,妊娠していることが判明したため,本件地震発生日 甲A18,甲B3,乙B2,5)ウ Ⓖは,ⓤ保育園やⓥ幼稚園での勤務を経て,平成22年4月から本件幼稚園の臨時職員として勤務していたが,同年8月頃,妊娠していることが判明したため,本件地震発生日の翌日である平成23年3月12日には,育児に専念するために退職する予定であった。(甲B9)被告による津波避難場所の広報活動等 ア被告は,平成20年,市民に対し,地震や津波への備えを呼びかける「地震@なび釜石版」と題する小冊子(乙A20)を作成し,防災講演参加者や市内のⓖセンター窓口などで市民に配布したり,市内の小中学校における津波防災教育のために使用したりしていた。同小冊子には,地震を感じたり,津波注意報,津波警報が発表されたら,海岸にいる人は直ちに海岸から離れ,素早く高台か指定の避難場所へ避難することとされ,「津波災害時の避難場所」と題する対象地区ごとの避難場所が記載された一覧表が掲載されており,ⓐ町については,ⓙ神社境内ほか3か所の名称が記載されていた。(甲A14,乙A20,33)イ被告が作成し,市民に配布した平成21年2月15日付「広報かまいし」には,「釜石市津波避難場所」と題して,地区ごとの津波避難場所名が記載された一覧表が掲載され,ⓐ町については,ⓙ神社ほか3か所である旨が記載されていた。(甲A1・資料32頁)ウ釜石市立ⓐ公民館が作成し,ⓐ地区の住民全戸に配布された「ⓦ」の同年9月号号外には,災害に備えて避難場所を確認するよう呼びかけ,ⓐ地区の津波避難場所(津波注意報,津波警報が発表されたとき),拠点避難所(大規模な災害が発生し,帰宅不可能な被災者を収容するための避難施設)との記載があり,ⓐ町の津波避難場所はⓙ神社境内ほか3か所である旨が記載されていた。ⓧセンター(その後取り壊され,同じ場所に,その 大規模な災害が発生し,帰宅不可能な被災者を収容するための避難施設)との記載があり,ⓐ町の津波避難場所はⓙ神社境内ほか3か所である旨が記載されていた。ⓧセンター(その後取り壊され,同じ場所に,その機能を承継する施設として本件センターが建設された。)は拠点避難所として記載されており,対象となる災害種類として,地震火災・風水害・土砂災害には○がついていたが,津波については×と記載されていた。(甲A1・資料33頁,甲A3,9)エ被告は,市窓口での各種手続や施設等を紹介した「かまいし生活べんり帳」と題する冊子を作成し,同年12月頃,市内全戸に配布した。 このうち防災に関する項目中には,「地震や長い揺れを感じたら」, 「津波注意報,津波警報が発令されたら」,「海岸にいる人・津波危険地区の住民は,高台か高いビル,あるいは指定の避難場所に直ちに避難を」と記載されており,本件津波浸水予測図が掲載されていたほか,対象地域ごとの一次避難場所の名称とそれらの場所が本件津波浸水予測図中に図示されていた。ⓐ町の一次避難場所については,ⓙ神社境内ほか3か所である旨が記載され,一次避難場所の意味について,「津波注意報,津波警報が発表されたときに避難する一時的な避難場所です。」との記載がされていた。 さらに,本件センターを含む市内の拠点避難所の名称が記載され,拠点避難所の意味について「大規模な災害が発生し,中・短期にわたる避難生活を前提とした避難所です。」,「一次避難場所に危険が生じたとき,危険が予想されるときに拠点避難所に避難誘導します。」などと記載されていた。(乙A21)オ ⓐ地域振興協議会が平成22年11月10日付で作成し,ⓐ町の住民全戸に回覧されるなどした「ⓐ地域振興協議会ニュース源」には,「災害によって避難場所・避難所が異なることを ていた。(乙A21)オ ⓐ地域振興協議会が平成22年11月10日付で作成し,ⓐ町の住民全戸に回覧されるなどした「ⓐ地域振興協議会ニュース源」には,「災害によって避難場所・避難所が異なることを再確認するために,再録する。」と記載され,前記ウの「ⓦ」と同様の記載がされていた。(乙A23)本件地震発生直後に発表された津波情報等ア気象庁は,平成23年3月11日午後2時49分(以下,特に断らない限り,時刻のみの記載部分は同日の出来事である。),本件地震の規模についてマグニチュード7.9との速報値を発表するとともに,津波警報(大津波)を発令し,午後2時50分には,岩手県において予想される津波の高さを3メートル,釜石市への津波到達予想時刻を午後3時10分と発表した(甲A1・39頁,甲A17)。 イ被告は,市内各地に設置した防災行政無線により,前記アの警報の内容を,発令直後から繰り返し放送した。 本件建物の敷地内には,防災行政無線の放送を流すスピーカーが設置されており,本件地震発生当時,本件センター周辺では,このスピーカーを通じて放送内容を聴くことができた。(甲A1・資料19頁,同39頁,甲A13・21頁,証人Ⓚ)ウ気象庁は,午後3時14分,本件大津波警報(6メートル)を発表したが,被告の防災行政無線では,予想される津波の高さが3メートルから6メートルへ変更された旨の放送はなく,高い津波が来るから避難するようにとの放送が繰り返された(甲A1・39頁,甲A12・32頁,甲A17,証人Ⓚ)。 エ気象庁は,午後3時30分,岩手県について予想される津波の高さを10メートル以上とする津波警報(大津波)(以下「本件大津波警報(10メートル以上)」という。)を発表したが,被告の防災行政無線は,同発表時点には既に損壊し,放 岩手県について予想される津波の高さを10メートル以上とする津波警報(大津波)(以下「本件大津波警報(10メートル以上)」という。)を発表したが,被告の防災行政無線は,同発表時点には既に損壊し,放送ができる状態ではなかった(甲A1・39頁,甲A12・32頁,甲A17,証人Ⓚ)。 本件地震の発生とその後の状況等ア平成23年3月11日午後2時46分,本件地震が発生し,ⓐ地区においても大きな揺れが観測された。 イ本件幼稚園には,本件地震発生当時,Ⓘ園長,Ⓖ及びⓁ主任教諭(以下「Ⓛ教諭」という。)のほか2名の職員と,預かり保育の4名の園児が在園しており,Ⓘ園長,Ⓖ及びⓁ教諭は,園舎2階の職員室にいた。 Ⓘ園長は,本件地震発生後,1階に降り,園児全員を園庭の中央付近に避難させた。Ⓖ及びⓁ教諭は,揺れが収まってから,1階に降りて園庭に出て,Ⓘ園長の指示を待った。Ⓘ園長は,携帯電話で電話を掛けるも繋がらない様子であり,特に園庭から別の場所へ避難するようにとの指示を出さなかった。その頃,2名の園児の保護者が迎えに来たため,園児をそれぞれ引き渡した。 Ⓛ教諭は,最寄りの一次避難場所がⓙ神社境内であることを認識していたが,避難する時間がないため本件センターに避難しようと考え,Ⓘ園長に「行きます。」と告げた。 Ⓛ教諭,Ⓖ,Ⓜ主任教諭(以下「Ⓜ教諭」という。)ほか1名の職員は,いずれも自らの判断で,園児2名を連れて本件センター内に入った。Ⓖらが本件センター内に入ったのは,本件大津波警報(3メートル)が発表されて間もなくのことであった。本件センターに入ったⒼらは,まず第一研修室(和室)に避難したが,その後,Ⓜ教諭は,一人で本件建物の1階へ降りて行った。(甲A18,甲B3,乙B2)ウ本件地震発生当時,原告Ⓓは,自家用車で外出して センターに入ったⒼらは,まず第一研修室(和室)に避難したが,その後,Ⓜ教諭は,一人で本件建物の1階へ降りて行った。(甲A18,甲B3,乙B2)ウ本件地震発生当時,原告Ⓓは,自家用車で外出していたが,午後2時45分頃,携帯電話で緊急地震速報を受信した。原告Ⓓは,本件地震の規模はかなり大きいと感じ,自宅に一人でいるⒽが心配になり,午後2時55分頃,自宅に戻った。原告Ⓓは,ライフラインが止まり避難先での生活を強いられることを想定し,Ⓗを連れて,大きな避難施設があるⓨ地区に行くため自家用車で出発しようとしたところ,Ⓗの知人2名と遭遇し,本件センターへ向かう旨を告げられた。原告Ⓓは,避難生活が長くなることを考えると,Ⓗが知らない場所に行くより,顔見知りの多い近所の本件センターに避難する方がよいと考え,午後3時頃,自宅から徒歩約1分の距離にある本件センター内へ入った。 原告ⒹとⒽは,初めは第一研修室(和室)にいたが,その後,避難室(ホール)に移動した。(甲A19,甲C4,原告Ⓓ)エ本件地震により発生した高さ約11~13メートルの本件津波は,午後3時16分頃に本件防潮堤を超えてⓐ地区に押し寄せ,その後,本件建物等にも本件津波が到達した。(甲A1・39頁)オ本件センターには2回にわたって本件津波が押し寄せ,その水位は天井付近まで到達し,Ⓗ及びⒼは,本件センター内で本件津波に巻き込まれて 死亡した。 原告Ⓓは,棚の上によじ登るなどして死亡を免れ,Ⓛ教諭と園児2名も死亡を免れた。(甲A18,甲B3,甲C4,乙B6,原告Ⓓ)カ Ⓘ園長は,本件津波に巻き込まれ,後日,本件幼稚園園庭で死亡しているのが発見された。(甲B3)キ平成26年3月に釜石市ⓐ地区防災センターにおける東日本大震災津波被災調査委員会が作成した「釜石市ⓐ 園長は,本件津波に巻き込まれ,後日,本件幼稚園園庭で死亡しているのが発見された。(甲B3)キ平成26年3月に釜石市ⓐ地区防災センターにおける東日本大震災津波被災調査委員会が作成した「釜石市ⓐ地区防災センターにおける東日本大震災津波被災調査報告書」では,本件地震発生後,本件センターには241名が避難し,うち生存者は34名であったと推計されている(平成26年1月17日時点での推計値)(甲A1・17頁) 市長には,本件地震発生以前において,ⓐ地区の住民に対し,本件センターは一次避難場所でないことを周知しなかった過失があるか)について市長は,災対法46条2項及び同条1項2号により,同法5条1項に基づき作成された本件防災計画を実施すべき義務を負うところ,本件防災計画では,住民が災害時に的確な避難行動をとることができるよう,避難場所等の整備を進めるとともに,住民に対し,平時から,あらゆる方法を用いて,避難場所等の名称・所在地等の避難に関する事項について周知徹底を図ることが,被告に義務付けられていた)。 以上によれば,市長は,住民に対し,上記災対法及び本件防災計画の定めに則り,避難に関する事項について適切な周知をすべき職務上の義務を負っていたというべきである。そして,被告は,本件地震発生以前から,ⓐ地区における一次避難場所としてⓙ神社境内ほか3か所を指定し(前記,全戸配布の「かまいし生活べんり帳」において,これらの名称や所在地を本件津波浸水予測図上に示すなどしていたほか,各種広報誌や冊子を用いて,避難場所等に関する広報活動を実施していたのであり(前 ⓐ地区の住民に対し,避難に関する事項について周知をしていたものと認められる。 これに対し,原告らは,を自ら各主催・実施し,その際に本件センターを避難場所として使用 ていたのであり(前 ⓐ地区の住民に対し,避難に関する事項について周知をしていたものと認められる。 これに対し,原告らは,を自ら各主催・実施し,その際に本件センターを避難場所として使用したこと,ⓝ町内会自主防災会が実施した22年8月訓練に当たって,本件セ沖地震の際,本件センターに避難した住民がいたのに,何ら対応をしなか一次避難場所であるかのような紛らわしい名称等を付したことによって,ⓐ地区の住民に対し,本件センターがあたかも一次避難場所であるかのように誤解させたから,市長は,条理上,本件センターが一次避難場所でないことを積極的に周知すべきであり,これをしなければ,前述した避難に関する事項についての周知義務を果たしたことにはならない旨主張するので,以下検討する。 被告が,避難訓練の際に,本件センターを避難場所として使用し又は本件センターの使用を許可したことが,ⓐ地区の住民に対する誤解を招いたとの原告らの主張についてア甲事件原告らの主張について被告は,22年5月訓練の際,本件センターをⓐ地区の避難訓練の場所として利用することを了承したことが認められる。 しかしながら,Ⓖは,当時,岩手県釜石市ⓑ町にある自宅から本件幼稚園に通勤しており,ⓐ地区の住民ではなかったところ,),22年5月訓練は,日曜日の午前6時から実施されていることからして,Ⓖのように他の場所からⓐ地区に通勤する者が,本件センターを避難場所とする避難訓練の対象者に含まれていたと解することはできない。23年3月訓練については,現に,本件センターに避難した住民がいたことが認められるものの ,被告が,本件センターを避難場所として利用することを了承していたかは,証拠上明らかではない。 また,22年8月訓練は,ⓝ町内会防災会及びⓞ町内会防災会が 民がいたことが認められるものの ,被告が,本件センターを避難場所として利用することを了承していたかは,証拠上明らかではない。 また,22年8月訓練は,ⓝ町内会防災会及びⓞ町内会防災会が,ⓝ町内会,ⓞ町内会,ⓐ小学校及びⓣ中学校を参加団体として,地震で家屋が倒壊等した際の避難所開設等の訓練をするために日曜日の午前9時から実施したものであって,Ⓖのようにⓐ地区に居住せず,参加団体にも所属していない者が参加することを予定した訓練であったとは認め難い上,訓練の内容も津波の発生を想定したものであったとは認められない。 さらに,Ⓖにおいて,休日である日曜日や平日の早朝6時にⓐ地区を訪れて上記各防災訓練に参加し,本件センターに避難したという事情も見受けられない。 以上によれば,Ⓖが,甲事件原告ら主張の各避難訓練に関する被告の行為により,本件センターが一次避難場所であると誤解する事態は想定することができないから,甲事件原告らの主張には理由がない。 イ乙事件原告らの主張についてまず,22年8月訓練は,後援者である被告から本件センターの使用許可を受けて,本件センターを訓練会場として行われたが,前述したとおり,その訓練内容は,地震による家屋倒壊等の被害を想定したものであり,津波の発生を想定した訓練であったと認めることはできない。 次に,22年5月訓練及び23年3月訓練は,いずれも被告が主催し,津波を想定した避難訓練であったことが認められるところ及びウ。以下,前記両訓練で実施された各津波避難訓練を併せて「本件各津波避難訓練」という。),被告が,本件各津波避難訓練の実施に先立って各町内会会長及び各地区自主防災会の長に対し,本件各津波避難訓練の概要の告知及び住民への周知依頼のために送付した文書には,最 寄りの津波避難場 ,被告が,本件各津波避難訓練の実施に先立って各町内会会長及び各地区自主防災会の長に対し,本件各津波避難訓練の概要の告知及び住民への周知依頼のために送付した文書には,最 寄りの津波避難場所や高台へ避難すべきこと,各地区の避難場所は「かまいし生活べんり帳」に記載されていることなどが明記されていたのでありウ),本件全証拠によっても,被告において,本件センターが一次避難場所であるからここに避難するようにと周知したり,各町内会や各自主防災会にその旨の周知を依頼した事実は見受けられない。他方,被告の防災課長は,22年5月訓練の際,本件センターを避難場所として使用したい旨のⓝ町内会からの口頭による申入れを了承したこと(なお,23年3月訓練の際,被告が本件センターを避難場所として利用することを了承していたかが証拠上明らかではないことは,前記アのとおりである。),本件各津波避難訓練においては,一次避難場所に避難した者以外にも,一次避難場所でない本件センターに避難した者も相当数存在したこと そこで,被告が,本件センターを避難場所として利用することを了承したことをもって,ⓐ地区の住民に対し,本件センターを一次避難場所であると誤信させたと評価し得るかについて,以下検討する。 この点,ⓐ地区の町内会会長や各地区自主防災会の長が,住民に対し,本件センターを避難訓練の際の避難場所として利用することについて,どのような文言で周知をしたのかは全く明らかではなく,本件センターが,実際の津波発生時においても,一次避難場所であるかのような誤解を与えるような文言で周知されたと認めるに足る証拠もない。また,本件各津波避難訓練当日に本件センターでされた訓練の内容も不明であって,本件センターが避難訓練の実施場所とされた本来の一次避難場所と同様に扱われていたこ で周知されたと認めるに足る証拠もない。また,本件各津波避難訓練当日に本件センターでされた訓練の内容も不明であって,本件センターが避難訓練の実施場所とされた本来の一次避難場所と同様に扱われていたことを認める的確な証拠はない。そうすると,被告の防災課長とⓝ町内会との間で,本件各津波避難訓練において,本件センターを利用するに当たって,どのような合意がされたかは全く明らかではないといわざるを得ない。さらに,Ⓚが,陳述書(乙A33)にお いて,被告の防災課は,実際の津波災害が発生した場合は本来の一次避難場所に避難すべきことを確認した上で,避難訓練で本件センターを使用したいという自主防災会に協力した旨記載していることを併せ考えれば,被告の防災課長が,本件センターを22年5月訓練の際の避難場所として利用することを了承し,結果的に,本件各津波避難訓練の際に相当程度の住民が本件センターに参集した事実のみをもって,被告が,本件各津波避難訓練の実施に当たって,ⓐ地区の町内会長や各地区自主防災会の長に対し,本件センターを他の一次避難場所と同様,津波警報等が発表された際に直ちに避難すべき場所として取り扱うことを許容したとは認められない。 そして,被告の了承を受けた前記町内会長等が,ⓐ地区の住民に対して,本件センターを避難場所として利用することについてどのような文言で周知をしたのか全く明らかではないのは前記のとおりであり,本件各津波避難訓練の際に相当数の住民が本件センターに参集した事実のみでは,ⓐ地区の住民に本件センターが一次避難場所であるとの誤解を与えたと評価することはできない。 以上によれば,被告が,22年5月訓練の実施に当たって本件センターの利用を了承したことをもって,ⓐ地区の住民に対し,乙事件原告らが主張するような一次避難場所について えたと評価することはできない。 以上によれば,被告が,22年5月訓練の実施に当たって本件センターの利用を了承したことをもって,ⓐ地区の住民に対し,乙事件原告らが主張するような一次避難場所についての誤解を与えたと解することはできない。 よって,乙事件原告らの前記主張は採用することができない。 もっとも,被告が主催した本件各津波避難訓練において,本来の一次避難場所ではない本件センターを利用したこと自体は,非常時に備えて,平時において避難場所やそこまでの経路等を確認するという避難訓練の主な目的に照らすと,望ましいものであったとはいい難い。しかしながら,そのことをもって,本件センターが一次避難場所であると誤解させ たとは認められないことは,前記のとおりである。 22年チリ地震及び23年3月9日三陸沖地震の際,本件センターに避難した住民がいたのに,被告が何ら対応をしなかったとの原告らの主張について確かに,被告は,上記各地震の際,一次避難場所ではない本件センターへ避難した住民がいたことを把握していたエ)にもかかわらず,本件センターが一次避難場所でないことを改めて周知するなどの特段の措置を講じた形跡は窺えない。 しかしながら,前記のとおり,被告は,市民に対し,一次避難場所等に関する広報活動を実施していたのであって,前記各地震の後,被告が特段の措置を講じなかったことによって,ⓐ地区の住民が,本件センターが一次避難場所であると誤解したことを認める的確な証拠はない(原告Ⓓ自身,上記各地震の際の被告の対応により一次避難場所を誤解した旨は,供述していない。)。 以上によれば,この点に関する原告らの主張は,その前提を欠き,採用することができない。 本件センターに一次避難場所であるかのような紛らわしい名称等を付したとの原告ら は,供述していない。)。 以上によれば,この点に関する原告らの主張は,その前提を欠き,採用することができない。 本件センターに一次避難場所であるかのような紛らわしい名称等を付したとの原告らの主張について本件センターが,市民に対する防災知識の普及や市民の防災意識の高揚,災害発生時の災害対策拠点とすること等を目的として開設されたという経緯やウ),「防災」の対象となる災害は津波のみに限られず,本件センター開設後は,地震火災・風水害・土砂災害の際の拠点避難所に指定され(前記1ウ),22年8月訓練の際は訓練会場として使用されるなど,現にⓐ地区の地域防災のために活用されていた実態からすれば,被告が,本件建物2階の施設に「防災センター」と名付けたことが不合理であるとはいえない。また,本件センター の「避難室」は,本件センターが拠点避難所とされる際,避難者を収容するために使用されることが想定された部屋でありウ),そのような名称を付したとしても何ら不合理とはいえない。 そうすると,原告らが指摘する本件センターの名称等が,住民に対し,本件センターが一次避難場所であるとの誤解を与えるものとは認め難く,原告らの主張は採用することができない。 以上によれば,市長に,ⓐ地区の住民に対し,本件センターが一次避難場所でないことを積極的に周知すべき条理上の義務があったとの原告らの主張は,いずれもその前提を欠き採用することができない。 し関する原告らの主張には理由がない。 は,本件地震発生後,住民を一次避難場所に避難させなかった過失があるか)について原告らは,被告職員が,住民に対し,本件センター内に避難するよう積極的に促したこと,避難者に対し一次避難場所に避難するよう誘導しなかったことが,市長及び被告職員の職務上の義 失があるか)について原告らは,被告職員が,住民に対し,本件センター内に避難するよう積極的に促したこと,避難者に対し一次避難場所に避難するよう誘導しなかったことが,市長及び被告職員の職務上の義務違反に当たると主張するので,以下検討する。 被告職員が本件センターへの避難を積極的に促したとの主張について被告職員が,本件地震発生後,Ⓖ,原告Ⓓ及びⒽ(以下,併せて「Ⓖら3名」という。)に対し,本件センターへの避難を積極的に促したことを認める的確な証拠はない。また,及びウで認定した,本件地震発生後に,Ⓖら3名が本件センターに避難した経緯によれば,Ⓖら3名は,いずれも自己の判断で本件センターに避難することを決めた上で,本件センター内に避難したものと認められる。 したがって,被告職員が,Ⓖら3名に対し,本件センターへの避難を積極的に促し,それによりⒼら3名が本件センターに避難したと認めることはできず,原告らの前記主張は採用することができない。 被告職員が,本件センターに避難した住民を一次避難場所に避難するよう誘導しなかったとの主張について被告職員は,本件センターの建物の運営・管理,災害時の職員の参集状況,本件センターへの避難者数,被災情報等の報告などを行うことをその職務としていたが(前記1エ),災害発生時には,市長の指示のもと,市の職員として,住民等の生命,身体の安全を確保するため,迅速かつ的確な避難誘導等を行うべき職務上の義務を負っていたと解される。本件地震発生後,気象庁から,午後2時50分頃,大津波警報(3メートル)と共に,釜石市への津波到達予想時刻が午後3時10分である旨が発表されていたこと(前記からすれば,被告職員においても,防災行政無線の放送を通じて,その頃,同情報を知り又は知ることができたと推認できる 共に,釜石市への津波到達予想時刻が午後3時10分である旨が発表されていたこと(前記からすれば,被告職員においても,防災行政無線の放送を通じて,その頃,同情報を知り又は知ることができたと推認できる。 Ⓖは,早くとも午後2時50分頃より後に,原告Ⓓ及びⒽは午後3時頃,本件センター内に入ったことが認められるウ),Ⓖは当時妊娠9か月であり(前提事実),Ⓗは当時71歳であったことウ),本件センターから最寄りの一次避難場所であるⓙ神社境内までは約550メートル離れており,到着するまでには急な坂道をⒼら3名が本件センター内に避難した時点において,津波到達予想時刻の午後3時10分までにⓙ神社境内に避難することは,困難であったと推測される。現に,Ⓖと共に避難したⓁ教諭は,ⓙ神社境内が最寄りの一次避難場所であることを知っていたものの,避難する時間がないと判断して, 以上の事実を併せ考えれば,Ⓖら3名が,本件センター内に入った時点においては,津波到達予想時刻の午後3時10分までにⓙ神社境内に避難することは,既に困難であったと推認される。 したがって,被告職員が,上記の状況下において本件センターに避難し てきたⒼら3名に対し,ⓙ神社境内へ避難するよう誘導することが,Ⓖら3名の生命,身体の安全を確保するための的確な対応であったとはいい難い。 よって,被告職員が,Ⓖら3名に対し,ⓙ神社境内への避難誘導をしなかったことが,前記職務上の義務に違反するものと評価することはできない。 以上のとおり,被告職員の職務上の義務違反は認められないし,被告職員の義務違反を前提とする市長の職務上の義務違反もまた認めることができない。 なお,ⓖセンターのマニュアルには,災害発生時における業務内容として「避難者受け入れ(センター内)」と記載されている( 員の義務違反を前提とする市長の職務上の義務違反もまた認めることができない。 なお,ⓖセンターのマニュアルには,災害発生時における業務内容として「避難者受け入れ(センター内)」と記載されている(甲A1・資料41頁)が,同記載は,本件センターが拠点避難所として利用される場合を想定したものと解され,これをもって,市長が被告職員らに対し,津波発生時に避難者を直ちに受け入れるよう誤った指示をしていたと解することはできない。そのほか,市長において,津波発生時に本件センター内に避難者を受け入れるよう誤った指示をしていたことを認める的確な証拠はなく,この点についての原告らの主張は理由がない。 したがって, Ⓘ園長又は被告に,本件幼稚園の災害対策に関して安全配慮義務違反があるか)についてⒾ園長は,本件幼稚園の職員に対し,業務上の指揮命令権を行使してその労務を管理していたから,信義則上,当該職員がその生命及び身体等の安全を確保しつつ勤務できるように必要な配慮をすべきいわゆる安全配慮義務を負っていたと解される。 被告もまた,その設置運営する本件幼稚園で勤務する職員に対し,当該職員との間の法律関係に付随する信義則上の義務として,Ⓘ園長同様の安 全配慮義務を負っていたと解される。 したがって,Ⓘ園長及び被告は,本件幼稚園職員が,Ⓘ園長及び被告の指揮に従って労務を提供するに当たって,その生命及び身体等が地震や津波といった災害の危険から保護されるよう配慮すべき義務を負っていたというべきである。 まず,甲事件原告らは,Ⓘ園長及び被告は,本件幼稚園について,学校保健安全法29条1項及び本件防災計画の水準を満たす避難計画を作成しておらず,前記安全配慮義務に違反したと主張するので検討する。 ア学校保健安全法29条1項により本件 は,本件幼稚園について,学校保健安全法29条1項及び本件防災計画の水準を満たす避難計画を作成しておらず,前記安全配慮義務に違反したと主張するので検討する。 ア学校保健安全法29条1項により本件幼稚園について作成が求められる対処要領は,同条項の文言からも明らかなように,園児の安全を確保することを目的とするものである。また,本件防災計画により本件幼稚園について作成が求められる避難計画は,本件防災計画が定める学校における避難計画の基本方針や避難計画の内容)に照らせば,園児の避難を迅速,確実に行うことを目的とするものと解される。 したがって,Ⓘ園長及び被告が,学校保健安全法29条1項及び本件防災計画の水準を満たす避難計画を作成したか否かは,園児に対する安全配慮義務違反の問題とはなり得ても,本件幼稚園の職員に対する安全配慮義務の違反を問う直接の根拠にはなり得ない。 よって,甲事件原告らの前記主張は,同法29条1項及び本件防災計画に依拠する限りで失当というほかない。 イのとおり,Ⓘ園長及び被告は,本件幼稚園の職員に対する信義則上の安全配慮義務を負っており,その具体的内容として,本件幼稚園の災害リスクの実情や人的・物的体制の状況等,幼稚園を取り巻くあらゆる事情を総合的に考慮の上,職員の生命及び身体等を地震災害の危険から保護するために必要な行動指針を策定すべき義務を負っていたと解するのが相当である。 本件幼稚園では,本件地震発生以前から,本件幼稚園経営において,避難訓練の実施方法等に関し様々な定めをしており,これを,本件幼稚園における災害発生時の行動指針として位置づけていたことが認められる)。 この点,甲事件原告らは,平成21年度幼稚園経営の避難訓練に関する記載は,災害発生時の行動指針ではなく,避難訓練に関する定めに おける災害発生時の行動指針として位置づけていたことが認められる)。 この点,甲事件原告らは,平成21年度幼稚園経営の避難訓練に関する記載は,災害発生時の行動指針ではなく,避難訓練に関する定めにすぎないなどと主張する。しかしながら,そもそも,避難訓練は,実際の災害発生時の避難行動を想定して実施されるものであり,避難訓練の実施方法等に関する定めが,実際に災害が発生した時の行動指針と異なるものと解すべき事情は窺えない。甲事件原告らも,平成21年度幼稚園経営における避難訓練時の実施方法に関する定めについて,実際の災害発生時の行動と異なる部分を具体的に明らかにした主張立証をしていない。以上によれば,甲事件原告らの前記主張は採用することができず,本件地震発生当時施行されていた本件幼稚園経営は,本件幼稚園職員の災害発生時の行動指針を定めたものと解するのが相当である。 そうすると,本件幼稚園経営は,火災や地震等の災害発生時に,避難場所として,まず園庭に避難した上で,更に必要がある場合には,園長の指示により避難する旨を定めたものと解されるが,災害の種類等に応じた最寄りの避難場所の名称や道順等が記載されていない点で不十分なものであったかが,更に問題となり得る。 そこで検討するに,本件幼稚園は3歳児から5歳児までを対象とする施設であオ),その職員は,心身未発達で,自ら判断して合理的に行動することができない園児を,常時監督しなければならない立場にあると解される。本件幼稚園経営は,このような職員の立場を考慮し,時々刻々と変わる災害現場の状況に応じて,園児を集団的に避難させ,かつ,職員自らも適切に避難することができるよう,第二の避 難場所については,園長の裁量的判断に委ねることとしたものと解され,それ自体は合理的であったといえる。 以 を集団的に避難させ,かつ,職員自らも適切に避難することができるよう,第二の避 難場所については,園長の裁量的判断に委ねることとしたものと解され,それ自体は合理的であったといえる。 以上によれば,Ⓘ園長又は被告が,本件地震発生以前において,本件幼稚園の職員の生命及び身体等を地震災害の危険から保護するために必要な行動指針を策定すべき義務に違反したとは認められない。 甲事件原告らは,本件幼稚園における具体的な避難誘導体制を示す文書が存在せず,Ⓘ園長及び被告は,本件幼稚園の避難誘導体制を確立しなかったなどと主張する。 しかしながら,前記とおり,本件幼稚園経営には地震災害時の避難誘導についての記載があり,これは前記のとおり,本件幼稚園における災害発生時の行動指針であったと認められる。 したがって,本件幼稚園において避難誘導体制に関する文書が作成されていなかったとはいえず,Ⓘ園長及び被告は,本件幼稚園の職員において災害発生時の具体的な避難誘導体制を把握することが可能な程度に,避難誘導体制を確立していたというべきである。なお,後述する職員の本件地震当日の避難行動をもって,本件幼稚園の避難誘導体制が確立していなかったということもできない。 甲事件原告らは,Ⓘ園長及び被告は,本件幼稚園の職員に対し,一次避難場所を周知すべき義務を怠ったと主張する。 確かに,本件幼稚園では,津波を想定した避難訓練を年1回行っていたにもかかわらず,ⓙ神社境内等の一次避難場所へ実際に避難する訓練は行B2・2頁には,Ⓛ教諭の推測が記載されているにすぎず,津波避難訓練の際に本件センターへ避難したことを認める的確な証拠はない。)。一次避難場所の場所や経路等を周知する方法としては,津波を想定した避難訓練の際に,実際に一次避難場所に避難をする訓練を行うの 波避難訓練の際に本件センターへ避難したことを認める的確な証拠はない。)。一次避難場所の場所や経路等を周知する方法としては,津波を想定した避難訓練の際に,実際に一次避難場所に避難をする訓練を行うのが,確実かつ最善の方法であったことは言を俟た ない。 しかしながら,で認定したとおり,本件幼稚園の職員は,本件地震発生以前に,本件幼稚園の最寄りの一次避難場所がⓙ神社境内であることや,そこまでの道順を把握していたことが認められ,本件幼稚園の職員に対しては,一次避難場所の名称や所在についての一定の周知がされていたと推認される。したがって,一次避難場所に避難する訓練を実施していなかったことをもって,Ⓘ園長及び被告が,一次避難場所を周知すべき義務を怠ったとまで認めることはできない。 以上のとおり,本件地震発生以前における本件幼稚園の災害対策に関するⒾ園長及び被告の安全配慮義務違反は認められず,甲事件原告らの主張は採用することができない。 Ⓘ園長の本件地震発生後のⒼへの避難指示について,Ⓘ園長又は被告に安全配慮義務違反があるか)についてⒾ園長及び被告が,本件幼稚園の職員であるⒼに対し,本件地震発生後も地震災害の危険から生命及び身体等が保護されるよう配慮すべき信義則上の安全配慮義務を負っていたと認められることは,。 この点,甲事件原告らは,Ⓘ園長が,本件地震発生直後,Ⓖに対し,最寄りの一次避難場所であるⓙ神社境内に避難するよう指示しなかったことが,Ⓘ園長及び被告が負っていた前記安全配慮義務に違反すると主張するので,以下検討する。 Ⓘ園長又は被告に安全配慮義務違反(国賠法1条1項にいう過失又は債務不履行)があるというためには,過失責任を問われている主体かつ被告の補助機関であるⒾ園長において,本件津波が本件幼稚園に到達す Ⓘ園長又は被告に安全配慮義務違反(国賠法1条1項にいう過失又は債務不履行)があるというためには,過失責任を問われている主体かつ被告の補助機関であるⒾ園長において,本件津波が本件幼稚園に到達することを予見し,かつ,予見した結果を回避することができたことが前提となる。 そして,結果発生についての予見の程度は,予見される結果に基づいてその発生を回避するための措置を講じることを法的義務として負わせるに足 りる程度に具体的なものでなければならないから,抽象的な危惧感の程度では足りず,本件津波が本件幼稚園に到達するという結果の発生を具体的に予見し得ることが必要であり,その予見し得た時点において,予見された結果を具体的に回避し得たことも必要となる。 以上を前提に,本件地震発生当日におけるⒾ園長の予見可能性の有無について検討する。 本件幼稚園は,本件シミュレーション調査報告書において作成された本件津波浸水予測図上で,予想津波浸水域から相当程度離れた場所に位置していることに加えて,ⓐ地区に最も高い津波が到達すると想定されたのは,明治三陸地震と同等の地震であること)を併せ考慮すれば,Ⓘ園長が,本件津波がⓐ地区に存在する本件幼稚園に到達することを予見することができたというためには,少なくとも,Ⓘ園長が,本件津波が本件幼稚園に到達する以前に入手し得た情報に基づき,本件地震により発生する津波の規模が,明治三陸地震と同等の地震が発生した場合に想定される津波のそれを上回ると予見できたことが認められる必要がある。 本件幼稚園に隣接する本件建物敷地内に存在した防災行政無線では,午後2時50分頃,気象庁が発表した本件大津波警報(3メートル)を発表,Ⓘ園長は,その頃には,3メートルの高さの津波がⓐ地区に到達する可能性を知り又は知ることができたと認 存在した防災行政無線では,午後2時50分頃,気象庁が発表した本件大津波警報(3メートル)を発表,Ⓘ園長は,その頃には,3メートルの高さの津波がⓐ地区に到達する可能性を知り又は知ることができたと認められる。しかしながら,明治三陸地震と同等の地震が発生した場合にⓐ地区に到達すると想定されていた津波の高さは,少なくとも6メートル以上(海岸線における高さ)と予想されていたのであるから),本件大津波警報(3メートル)の発表があったとしても,Ⓘ園長において,本件津波浸水予測図の想定を上回る規模の津波が発生することを具体的に予見し得たとはいえない。 本件大津波警報(3メートル)は,午後3時14分には,本件大津波警 報(6メートル)に修正されたが,ⓐ地区における防災行政無線では同情報は発表されていないからウ),Ⓘ園長が,6メートルの高さの津波がⓐ地区に到達する可能性を知り又は知り得た可能性は極めて低いといえるものの,気象庁発表の情報であることに鑑みると,同情報を防災行政無線以外の媒体で知り得た可能性を全く否定することはできない。そして,明治三陸地震と同等の地震が発生した場合にⓐ地区に到達すると想定されていた津波の高さは,少なくとも6メートル以上(海岸線における高さ)と予想されていたことに照らすと,本件大津波警報(6メートル)の発表により,Ⓘ園長において,本件津波浸水予測図の想定を上回る規模の津波が発生することが予見し得た可能性が全くないとはいえない。 なお,気象庁発表の本件大津波警報(6メートル)以外に,Ⓘ園長が情報収集を尽くしていれば,午後3時14分より前に本件津波浸水予測図の事前の想定を上回る規模の津波が本件幼稚園に到達することを予見し得たと認める的確な証拠はない。 そこで,次に,Ⓘ園長が,午後3時14分に本件大津波 れば,午後3時14分より前に本件津波浸水予測図の事前の想定を上回る規模の津波が本件幼稚園に到達することを予見し得たと認める的確な証拠はない。 そこで,次に,Ⓘ園長が,午後3時14分に本件大津波警報(6メートル)が発表された時点で,本件幼稚園に到達が予想される津波によりⒼが被災するとの結果を具体的に回避できた可能性の有無について検討する。 本件津波は,午後3時16分頃に本件防潮堤を超えてⓐ地区に到達して本件幼稚園からⓙ神社境内までの距離は約630メートルであり,急な坂道を階段で30メートル上る必要があること,Ⓖが妊娠9か月であったこと(前提事実に照らすと,Ⓘ園長が,午後3時14分の時点で,Ⓖに対し,ⓙ神社境内への避難を指示したとしても,Ⓖが本件津波に巻き込まれる結果を回避し得たとは認め難い。 なお,Ⓖが本件センターに避難した正確な時刻は明らかではないものの, Ⓖと一緒に本件センターに避難したⓂ教諭は,一旦本件センターに避難した後に1階へ降りていること(),本件津波は午後3時16分頃には本件防潮堤を超えていることからすれば,遅くとも,本件津波が本件防潮堤を超える前頃までには,Ⓖは,本件センターへの避難を完了していたと推認される。そうすると,本件大津波警報(6メートル)が発表された午後3時14分の時点では,Ⓖは,既に本件幼稚園から移動し,Ⓘ園長の指揮監督下から離脱していた可能性が高いといわざるを得ない。したがって,この点からしても,Ⓘ園長に,午後3時14分の時点で,Ⓖに対し,ⓙ神社境内への避難を指示すべき義務があったとは認め難い。 これに対し,甲事件原告らは,Ⓘ園長は,本件大津波警報(3メートル)が発表された午後2時50分頃の時点で本件幼稚園に津波が到達する事態を予見することができ,その時点で,Ⓖに対しⓙ神社境 難い。 これに対し,甲事件原告らは,Ⓘ園長は,本件大津波警報(3メートル)が発表された午後2時50分頃の時点で本件幼稚園に津波が到達する事態を予見することができ,その時点で,Ⓖに対しⓙ神社境内への避難を指示していれば,Ⓖは,徒歩約8分でⓙ神社境内に移動することができ,津波によって被災するという結果を回避できた旨主張するので,以下検討する。 ア本件津波浸水予測図の基となったシミュレーション調査は,あくまで予想にすぎず,結果を上回る津波が来襲しないことを保証するものではないとの主張についてこの点につき,甲事件原告らは,津波シミュレーションは特定の条件下における予想にすぎないとか,被告の防災教育では,ハザードマップを鵜呑みにしてはならないことが教えられていたなどと,津波シミュレーション調査やこれに基づく津波浸水予測図の性質に起因する限界を抽象的に主張するものの,本件シミュレーション調査報告書や本件津波浸水予測図の内容に問題があったことについて,当時の知見等を踏まえた具体的な主張立証をしていない。 本件シミュレーション調査報告書が,岩手県により,県内市町村や防 災関係機関により津波防災マップの作成など防災行政に役立てられることを目的として,防災関係機関や大学教授等の専門家の関与のもと,その知見等を活用して作成されていること告や,被告の職員であるⒾ園長が,本件シミュレーション調査報告書の内容や,その成果物である本件津波浸水予測図を参考にすることが不合理であったとは認められない。 イ明治三陸地震及び昭和三陸地震の際,本件幼稚園付近にまで津波が到達したから,本件建物等に津波が到達する可能性を認識できたとの主張について確かに,明治三陸地震及び昭和三陸地震の際,本件幼稚園付近にまで津波が到達した可能性は否定できない 園付近にまで津波が到達したから,本件建物等に津波が到達する可能性を認識できたとの主張について確かに,明治三陸地震及び昭和三陸地震の際,本件幼稚園付近にまで津波が到達した可能性は否定できない。 しかしながら,本件地震発生当時には前記各地震が発生した時には存在しなかった高さ約6.4メートルの本件防潮堤が整備されていたこと(前提事実に加え,実際に,専門家の関与の下で作成された本件津波浸水予測図では,前記各地震と同等の地震が発生した場合であっても,本件幼稚園周辺は津波で浸水しない想定とされていたこと(前記1を併せ考えれば,本件大津波警報(3メートル)が発表された時点で,津波が本件幼稚園に到達する可能性を予見できたとは認め難い。 ウ本件地震以前に,当時のⓖセンター所長が,平成22年チリ地震の際,一次避難場所ではない本件センターで避難者を受け入れたことを問題視するメールを庁内メーリングリストに送信したことなどを挙げて,市職員の多くが,本件建物等に津波が到達する可能性を認識できたとする主張について証拠(甲A1・資料40頁)を見ても,ⓖセンター所長のメールが,本件幼稚園に津波が到達する可能性を具体的に指摘するものであったとは認められないから,これをもって,被告やⒾ園長において,本件地震 発生後,本件幼稚園に津波が到達する可能性を具体的に予見できたとはいえない。 エ本件建物が津波避難ビルの指定を受けられなかったことから,本件建物等に津波が到達する可能性を認識できたとの主張についてそもそも本件建物は,本件津波浸水予測図において予想浸水区域外とされた場所に建設される予定であったため,津波避難ビルとすることができなかった(甲A1・22頁)のであり,本件建物が津波避難ビルに指定されなかったという事実のみをもって,被告やⒾ園 予想浸水区域外とされた場所に建設される予定であったため,津波避難ビルとすることができなかった(甲A1・22頁)のであり,本件建物が津波避難ビルに指定されなかったという事実のみをもって,被告やⒾ園長において,本件幼稚園に津波が到達する可能性を具体的に予見できたとはいえない。 オ津波の高さの予測精度は0.5~2倍と幅があること,津波が防潮堤に衝突した場合には,その高さが最大で1.5倍になり得るとの知見が存することなどからすれば,本件大津波警報(3メートル)が発表された時点において,津波が高さ6.4メートルの本件防潮堤を超えて本件建物等に到達することは予見できたとの主張について確かに,甲事件原告らが主張する知見が存在することは認められる しかしながら,このような知見が存在したとしても,かかる知見が,本件地震発生当時,広く一般に周知されていたことを認める証拠はなく(かえって,本件地震後の平成24年に気象庁が発表した,本件地震による津波被害を踏まえた津波警報の改善策(乙A27)には,実際の津波の高さは予想値と比較して0.5~2倍程度になり得ることが,本件地震当時周知が不十分であったため今後周知・啓発を進めるべき事項として掲げられている(8頁,107頁,109頁等)。),Ⓘ園長に対し,かかる知見を有することを合理的に期待すべきであった事情は認められない。したがって,本件大津波警報(3メートル)が発表された時点で,Ⓘ園長において本件幼稚園に津波が到達する可能性を具体的に予 見できたとはいえない。 以上のとおり,Ⓘ園長が,午後3時14分以前に津波が本件幼稚園に到達する可能性を具体的に予見できたとは認められず,これを予見できた可能性が否定できない午後3時14分の時点では,既に,Ⓖが本件津波に巻き込まれて被災する結果を具体的に 4分以前に津波が本件幼稚園に到達する可能性を具体的に予見できたとは認められず,これを予見できた可能性が否定できない午後3時14分の時点では,既に,Ⓖが本件津波に巻き込まれて被災する結果を具体的に回避できたとは認められない。 したがって,Ⓘ園長が,本件地震発生後,Ⓖに対し,一次避難場所への避難を指示しなかったことが,安全配慮義務に違反するとは解されない。 そして,履行補助者であるⒾ園長の同義務違反が認められない以上,被告の安全配慮義務違反も認められない。 甲事件原告らの主張は,採用することができない。 6 結論以上によれば,甲事件原告らの主張は,被告及び被告職員の国賠法1条1項にいう過失並びにⒾ園長及び被告の信義則上の安全配慮義務違反が認められず,乙事件原告らの主張も,被告及び被告職員の国賠法1条1項にいう過失が認められない以上,その余の争点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 盛岡地方裁判所第2民事部 裁判官本多智子 裁判官川淵達也 裁判長裁判官小川理津子は,転任のため署名押印することができない。 裁判官本多智子 (別紙)関係法令の定め 第1 災害対策基本法(災対法) 1 5条(市町村の責務)1項市町村は,基本理念にのつとり,基礎的な地方公共団体として,当該市町村の地域並びに当該市町村の住民の生命,身体及び財産を災害から保護するため,関係機関及び他の地方公共団体の協力を得て,当該市町村の地域に係る防 本理念にのつとり,基礎的な地方公共団体として,当該市町村の地域並びに当該市町村の住民の生命,身体及び財産を災害から保護するため,関係機関及び他の地方公共団体の協力を得て,当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し,及び法令に基づきこれを実施する責務を有する。 2項市町村長は,前項の責務を遂行するため,消防機関,水防団その他の組織の整備並びに当該市町村の区域内の公共団体その他の防災に関する組織及び自主防災組織の充実を図るほか,住民の自発的な防災活動の促進を図り,市町村の有する全ての機能を十分に発揮するよう努めなければならない。 3項略 2 16条(市町村防災会議)1項市町村に,当該市町村の地域に係る地域防災計画を作成し,及びその実施を推進するほか,市町村長の諮問に応じて当該市町村の地域に係る防災に関する重要事項を審議するため,市町村防災会議を置く。 2項~6項略 3 42条(市町村地域防災計画)1項略2項市町村地域防災計画は,おおむね次に掲げる事項について定めるものとする。 ア 1号略 イ 2号当該市町村の地域に係る防災施設の新設又は改良,防災のための調査研究,教育及び訓練その他の災害予防,情報の収集及び伝達,災害に関する予報又は警報の発令及び伝達,避難,消火,水防,救難,救助,衛生その他の災害応急対策並びに災害復旧に関する事項別の計画ウ 3号略3項~7項略 4 46条(災害予防及びその実施責任)1項災害予防は,次に掲げる事項について,災害の発生又は拡大を未然に防止するために行うものとする。 ア 1号略イ 2号防災に関する教育及び訓練に関する事項ウ 3号~7号略2項指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長,地方公共団 大を未然に防止するために行うものとする。 ア 1号略イ 2号防災に関する教育及び訓練に関する事項ウ 3号~7号略2項指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長,地方公共団体の長その他の執行機関,指定公共機関及び指定地方公共機関その他法令の規定により災害予防の実施について責任を有する者は,法令又は防災計画の定めるところにより,災害予防を実施しなければならない。 5 50条(災害応急対策及びその実施責任)1項災害応急対策は,次に掲げる事項について,災害が発生し,又は発生するおそれがある場合に災害の発生を防御し,又は応急的救助を行う等災害の拡大を防止するために行うものとする。 ア 1号警報の発令及び伝達並びに避難の勧告又は指示に関する事項イ 2号~9号略2項指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長,地方公共団体の長その他の執行機関,指定公共機関及び指定地方公共機関その他法令の規定により災害応急対策の実施の責任を有する者は,法令又は防災計画 の定めるところにより,災害応急対策に従事する者の安全の確保に十分に配慮して,災害応急対策を実施しなければならない。 第2 学校保健安全法29条(危険等発生時対処要領の作成等) 1 1項学校においては,児童生徒等の安全の確保を図るため,当該学校の実情に応じて,危険等発生時において当該学校の職員がとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた対処要領(中略)を作成するものとする。 2 2項,3項略以上

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