平成17(わ)578 建造物侵入,窃盗

裁判年月日・裁判所
平成18年9月26日 神戸地方裁判所
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判決文本文10,784 文字)

-- 主文 被告人を懲役1年4か月に処する。 未決勾留日数中400日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,A及びBと共謀の上,金品を盗み取る目的で,平成16年10月27日午前零時ころ,大阪府岸和田市a町b番地のCが看守するD事務所北側腰高窓の施錠を外して同事務所内に侵入し,同所において,前記Cが所有するパスポート,預金通帳等15点在中の金庫1個(時価合計7万5000円相当)を盗み取った。 (補足説明) 弁護人及び被告人の主張弁護人及び被告人は,判示の事実については身に覚えがなく,また,判示の犯行の日時にはレストランで稼働していたというアリバイがあるから,被告人は無罪である旨主張するので,以下,判示の事実を認定した理由について補足して説明する。 共犯者供述の信用性について(1) 証人B(以下「B」という。)は,公判廷において,①平成16年10月26日の夜,B及びA(以下「A」という。)の2名は,以前両名らにおいて下見をしたことのある判示のD事務所(以下「本件事務所」という。)から盗みをするため,自動車で本件事務所を下見し,同日午後9時か9時30分ころ,Aが被告人に電話をして盗みに誘った,②同日午後10時30分ころ,E電鉄F駅で被告人が合流し,そこから3名は自動車で移動していったん本件事務所を下見したが,まだ交通量が多く時間が早いことから時間をつぶした,③同月27日午前零時ころ,3名は本件事務所の駐車場に自動車をとめ,B及び被告人が本件事務所に侵入して金庫を盗み出し,Aが見張りをすることとして,B及び被告人が本件事務所北側の窓の格子を外し,被告人がねじ回しでその窓の-- ガラスを壊してかぎを外し,両名が本件事務所に侵入して判示の金庫(以下「本件金庫」という。)を盗み出し,自動車のトランクに入れた,④その 所北側の窓の格子を外し,被告人がねじ回しでその窓の-- ガラスを壊してかぎを外し,両名が本件事務所に侵入して判示の金庫(以下「本件金庫」という。)を盗み出し,自動車のトランクに入れた,④その後3名は自動車で山(大阪府岸和田市c町d番地雑草地内)に行き,当初はB及び被告人が本件金庫の扉を開けようとし,その後自動車を駐車して戻ってきたAも手伝って3名で本件金庫の扉を開け,中身を調べ始めたが,自動車が通りかかったので歩いて逃げ出した旨供述する。 また,証人Aも,公判廷において,①同月26日の午後9時か9時半ころ,A及びBの2名は,以前両名らにおいて下見をしたことのある本件事務所から盗みをするため,自動車で本件事務所を下見し,被告人に電話をして本件事務所に金庫があることなどを伝えた,②同日午後10時30分ころ,E電鉄F駅で被告人が合流し,それから3名は自動車で本件事務所の前を通るなどして時間をつぶした,③同月27日午前零時ころ,本件事務所の駐車場に自動車を駐車し,Aが見張りをしている間に,B及び被告人が窓を壊して本件事務所に侵入して本件金庫を盗み出し,自動車のトランクに入れたが,このとき少なくともBが本件金庫を運んでいたのを見た,④その後3名は自動車で山に行き,3名で本件金庫を下ろし,Aが少し離れた場所に自動車を駐車して戻った後,Bか被告人のどちらかがバールで本件金庫の扉を開けたが,そのころ自動車が通りかかったので歩いて駅まで逃げた旨,証人Bの前記供述とほぼ一致した供述をする。 (2) そこで,両証人の前記各供述の信用性について検討するに,①両証人の供述は,本件犯行の日時,場所及び態様はもちろん,被告人ら3名のそれぞれの役割や行動に至るまで,その具体的な内容がほぼ完全に一致している上,②平成16年10月26日の午後9時から午後10時3 証人の供述は,本件犯行の日時,場所及び態様はもちろん,被告人ら3名のそれぞれの役割や行動に至るまで,その具体的な内容がほぼ完全に一致している上,②平成16年10月26日の午後9時から午後10時39分までの1時間半余りの間にAの携帯電話から被告人の携帯電話に4回も架電があるのに,その後は翌27日午前零時19分まで架電がないが,このことも両証人の供述と適合的なものといえる。 -- また,③Bは,被告人が稼働していた大阪市中央区e所在のレストランバー「G」で被告人と知り合い,その後何度か同店に行った際に被告人と顔を合わせたことがあるものの,被告人と個人的に話をしたことはなかったものであって,殊更に虚偽の供述をして被告人を罪に陥れるような動機があるとは認められない。また,Bは,本件以外にも盗みをしており,本件を含めた7件の窃盗又は窃盗未遂事件で起訴され,これらの事実をすべて認めている一方で,被告人とともに犯行に及んだのは本件のみである旨述べているが,仮にBが虚偽の供述をして被告人を共犯者に仕立てようとしているのであれば,本件のみについて被告人の関与を供述することは考え難いというべきである。そして,Bは,本件の翌日である平成16年10月28日に逮捕されており,本件が同人が逮捕される前の最後の犯行であることからすれば,Bが本件への被告人の関与について他の事件と混同するなどして誤解して供述しているとも考え難い。 ④Aの供述についても,Aは,平成14年12月ころ「G」で被告人と知り合い,その後平成16年夏ころ同店で何日間かアルバイトをしたことなどから被告人とは親密な関係にあり,殊更に虚偽の供述をして被告人を罪に陥れるような動機があるとは認められない。この点,被告人は,本件の前,Aの恋人が被告人にこびを売るような態度を取ったことがあり,それ以来 被告人とは親密な関係にあり,殊更に虚偽の供述をして被告人を罪に陥れるような動機があるとは認められない。この点,被告人は,本件の前,Aの恋人が被告人にこびを売るような態度を取ったことがあり,それ以来Aの被告人に対する態度が変わった旨供述するが,仮にそれが事実であったとしても,その程度のことだけでAが殊更に虚偽の供述をして被告人を罪に陥れようとするとは考え難いし,そもそも,Aと被告人は平成16年10月当時も頻繁に携帯電話で通話していたことからすれば,被告人とAが険悪な関係にあったとは認められない。また,Aは,Bと同様,本件以外にも37件の盗みをしていると述べる一方で,被告人とともに犯行に及んだのは本件のみである旨述べているが,仮にAが虚偽の供述をして被告人を共犯者に仕立てようとしているのであれば,本件のみについて被告人の関与を供述することは考え難いというべきである。 したがって,両証人の前記各供述は十分に信用することができる。 -- (3) これに対して,弁護人は,両証人は,被告人を本件犯行に誘った理由及び経緯について異なる供述をしており,両証人の前記各供述は信用できない旨主張する。この点,本件犯行に被告人が加わることになった経緯について,証人Bは,当初はB,A及びH(以下「H」という。)の3名で盗みをするつもりであったが,平成16年10月26日の午後9時か9時半ころに,Aから被告人を本件犯行に誘う話を聞いた後も,Hが来るのを待っていたが,結局Hが来なかったのでB,A及び被告人の3名で本件犯行に及んだ旨述べているのに対し,証人Aは,同日午後7時ころ,Bに被告人を本件犯行に誘うことを話し,この時点ではもはやHを連れていくつもりはなかった旨述べており,両証人の供述に相違する点があることは明らかである。 しかしながら,両証人の供述の相違点は 時ころ,Bに被告人を本件犯行に誘うことを話し,この時点ではもはやHを連れていくつもりはなかった旨述べており,両証人の供述に相違する点があることは明らかである。 しかしながら,両証人の供述の相違点は,要するに,AがBに被告人を本件犯行に誘う話をした時間の違いと,その後Hが本件犯行に加わるかどうかについての認識の違い,すなわちAはA,B及び被告人の3名で本件犯行に及ぶつもりであったのに対し,BはA,B,H及び被告人の4名で本件犯行に及ぶつもりであったという違いであるが,前者の相違点は両証人の供述の重要部分に関する食い違いであるとはいえないし,後者の相違点は主観的な認識の相違であって事実関係が食い違うものとはいえないから,これらの相違点は両証人の前記各供述の信用性を左右するものではないというべきである。 被告人のアリバイ主張について(1) 以上のとおり,証人B及び同Aの前記各供述は信用することができ,しかもその信用性は相当に強固なものというべきであるが,これに対して,被告人は,公判廷において,平成16年10月26日午後5時ころから翌27日午前5時ころまでは自らが共同経営していた「G」におり,両証人が供述する本件犯行の日時に本件事務所に行ったことはない旨,アリバイを供述する。 すなわち,被告人は,①同月26日午後2時か3時ころ,堺市内に「G」のための買い出しに行ったが,帰る際に同店の料理人Iから連絡があり,同店が-- 泥棒に入られたと聞かされ,同日午後5時ころ同店に戻ったところ,入口扉のかぎに代用していた自転車のチェーンが外されて持ち去られ,現金約30万円と客から預かってレジ内に入れていた指輪が盗まれていた,②そこで友人であり同店の賃貸借契約の保証人にもなっているJ(以下「J」という。)に電話をして仕事が終わったら同店に来てくれるよ 現金約30万円と客から預かってレジ内に入れていた指輪が盗まれていた,②そこで友人であり同店の賃貸借契約の保証人にもなっているJ(以下「J」という。)に電話をして仕事が終わったら同店に来てくれるように頼み,店内の片づけをした上で同日午後7時ころに同店を開店した,③その後間もなく,K(以下「K」という。)が客として来店したが,Kは前記指輪の持ち主の友人であったことから,Kに対し,持ち主に謝罪してほしいと頼み,その後来店した持ち主に謝罪した,④Kが同店を出たのは夜相当遅い時間であった,⑤同日午後10時30分か11時ころ,Jが同店に来店したので,Jに対して泥棒に入られたことを話し,不動産会社に連絡して同店の入口扉の修理を頼んでくれるように依頼した,⑥Jが同店を出たのは真夜中過ぎであった,⑦その後閉店時刻の翌27日午前5時まで同店にいた旨,アリバイを供述する。 (2) また,証人K及び同Jは,それぞれ,被告人の前記供述に符合するかのような供述をする。 すなわち,証人Kは,①平成16年10月末ころの火曜日の午後7時30分ころ,「G」に行き,待ち合わせた友人2名が来るのを待っていたところ,被告人から同店が泥棒に入られたと聞いたが,このとき被告人は泥棒が入ったのは今日であると言ったと思う,②被告人からは,盗まれたものはお金と指輪と聞き,またその指輪が前記友人のうち1名のものであることが分かった,③午後8時10分過ぎころ,前記指輪の持ち主を含む友人2名が同店にやってきて,被告人が指輪の持ち主に謝罪していた,④その後午後8時30分ころから別の店に行き,午後9時30分ころに同店に戻ったところ,被告人は同店におり,その後飲食し,ベビーシッターに預けていた子供を午前零時までに引き取る必要があったことから,午後11時ころに同店を出たが,この時も被告人は同店に 30分ころに同店に戻ったところ,被告人は同店におり,その後飲食し,ベビーシッターに預けていた子供を午前零時までに引き取る必要があったことから,午後11時ころに同店を出たが,この時も被告人は同店にいた旨供述する。 -- また,証人Jは,①平成16年10月の,「G」でハロウィーンパーティーが行われる少し前ころ,被告人から同店が泥棒に入られた旨の電話があり,その日の夜に同店に行った,②同店に行った時間は,当時稼働していた西宮市の現場を午後10時過ぎに出たので,それ以降である,③被告人からは,現金と指輪が盗まれたと聞き,また,同店の入口扉のかぎに代用していた自転車のチェーンが切れていたので,その日に同店が泥棒に入られたと思った,④その後翌日の午前2時ころまで同店にいたが,それまで被告人は同店にいたはずである旨供述する。 (3) そこで,以下,これらの供述の信用性について検討するが,その前提として,平成16年10月26日に「G」が泥棒に入られたことは,証人B及び同Aもこれに沿う供述をしているところであり,事実と認められる。 まず,証人Kの供述についてであるが,同証人の供述する「平成16年10月末ころの火曜日」は同月26日であるから,同証人の供述するとおりであれば,被告人が同日午後10時30分ころにE電鉄F駅でB及びAに合流し,本件犯行の日時に本件事務所に行くことは困難であることになる。また,盗まれた指輪やその持ち主の人物像に関する同証人の供述は,相当に具体的かつ詳細なものである上,細部に至るまで被告人の公判供述とほぼ一致していることからすれば,「G」から指輪が盗まれ,同証人が同店に行った日に被告人がその持ち主に対して謝罪したという点についての同証人の供述は,信用することができる。 しかし,同店で前記の泥棒や指輪に関するやり取りがあった日及 G」から指輪が盗まれ,同証人が同店に行った日に被告人がその持ち主に対して謝罪したという点についての同証人の供述は,信用することができる。 しかし,同店で前記の泥棒や指輪に関するやり取りがあった日及びこの日に同証人が同店にいた時間についての同証人の供述は,根拠が乏しく,信用性が低いというべきである。 すなわち,同証人は,この日やその前後の日の行動を日記やメモなどには記録していないのであって,前記の泥棒や指輪に関するやりとりのあった日が平成16年10月末ころの火曜日であった旨述べる根拠は,平成16年10月末-- ころであったとの点については同証人の記憶のみであり,火曜日であったとの点についても同様に同店の定休日である月曜日の翌日に行ったという同証人の記憶のみである。そして,この日被告人から同店が泥棒に入られたと聞いた際に,被告人が泥棒が入ったのは今日であると言ったと思うというのも,はっきりとは覚えていないというのであり,同証人においてその日かその前の日か,そう遠くない日に泥棒に入られたと理解したというにすぎない。また,同証人は,その前の週及び同月30日ころにも同店に行ったと述べているように,比較的頻繁に同店に行っていたことからすれば,他の機会に同店に行った際の出来事と混同している可能性もあると考えられるから,前記の泥棒や指輪に関するやり取りのあった日は,同月26日ではなかった可能性が相当に大きいというべきである。 また,前記の泥棒や指輪に関するやり取りのあった日に同証人が同店にいた時間についても,同証人は午後7時30分ころに同店に来店し,午後8時10分すぎころに友人が来店し,午後11時ころに同店を出た旨,具体的な時間を挙げて明確に供述しているが,その根拠はやはり同証人の記憶のみである。しかし,同証人が公判廷で供述をしたのは当時から 後8時10分すぎころに友人が来店し,午後11時ころに同店を出た旨,具体的な時間を挙げて明確に供述しているが,その根拠はやはり同証人の記憶のみである。しかし,同証人が公判廷で供述をしたのは当時から約1年2か月近くが経過した後であることからすると,記憶のみからこのような明確な時間を供述しているのは不自然というほかない。特に,同店を出た時間が午後11時ころであったという点については,ベビーシッターに預けていた子供を午前零時までに引き取る必要があったことが根拠になっているところ,他方で,同証人は子供を法人のベビーシッターに預けていたのか友人に預けていたのかを明確に供述できないのであって,この点の記憶があいまいであるのに同店を出た時間のみについては明確な供述をするのはそれ自体不自然である上,友人に預けていたとすれば午前零時までに引き取るために午後11時ころに同店を出たとの供述自体がその前提を失うことになることからすれば,同証人が同店にいた時間についての供述は正確でない可能性が相当に大きく,仮に同証人が同店に行ったのが-- 同月26日であるとしても(前記のとおり,この日でない可能性も相当に大きいが),同証人が同店にいた時間は,被告人が同日午後10時30分ころにE電鉄F駅でB及びAに合流したことと矛盾しない時間であった可能性が相当に大きいというべきである。 (4) 次に,証人Jの供述についてであるが,同証人の供述するとおり同人が被告人から電話連絡を受けて「G」に行ったのが同店が泥棒に入られた平成16年10月26日であれば,被告人が同日午後10時30分ころにE電鉄F駅でB及びAに合流し,本件犯行の日時に本件事務所に行くことは困難であることになる。 しかし,同証人も,この日やその前後の日の行動を日記やメモなどには記録していないし,被告人から同 分ころにE電鉄F駅でB及びAに合流し,本件犯行の日時に本件事務所に行くことは困難であることになる。 しかし,同証人も,この日やその前後の日の行動を日記やメモなどには記録していないし,被告人から同店が泥棒に入られた旨の電話があった際,泥棒に入られたのがその日であるという話があったかどうかは覚えていない旨述べるのであって,同証人が同店に行ったのが同店が泥棒に入られたその日であるとする根拠は,同店の入口扉のかぎとして代用していた自転車のチェーンが切れているのを見ており,そのままの状態で同店が二,三日も放っておくはずがないということのみである。しかし,他方で,被告人は,同店が泥棒に入られた際前記チェーンは何者かに持ち去られた旨供述しているのであって,同証人が前記チェーンが切れているのを見たというのはこれと明らかに矛盾するものである。弁護人は,同証人は切られたチェーンそのものを見たと明言しているわけではない旨主張する。しかし,同証人は「自転車のかぎが切れているのを見たんで,多分,その日が泥棒に入られた日だったんだと思います。」と供述しているのであって,かぎが持ち去られていたのであれば,かぎが切られていたのか,かぎの施錠部分が壊されるなどして外されていたのかなどは分からないはずであるから,かぎが切れているとの表現にはならないはずであって,この供述は現に切られているかぎを見たという趣旨に解するほかないというべきである。また,同証人が同店に行った時間が午後10時過ぎであることについて-- も,その根拠は,いつも仕事が終わるのが早くても午後10時くらいであることのみであるところ,これは,同証人の稼働先の会長である証人Lが,Jの当時の職務内容が居住者のいるマンションにおける外壁塗装等の工事の現場監督であったことなどの信頼できる具体的な根拠を挙げ であることのみであるところ,これは,同証人の稼働先の会長である証人Lが,Jの当時の職務内容が居住者のいるマンションにおける外壁塗装等の工事の現場監督であったことなどの信頼できる具体的な根拠を挙げて,Jの仕事が終わるのが早くて午後10時くらいということは考えられない旨供述していることと矛盾するものである。 これらのことからすれば,同店が泥棒に入られたその日に同店に行った旨の証人Jの供述は信用性に乏しく,同証人が同店に行ったのは,同店が泥棒に入られた日よりも後の日であった可能性が相当に大きいというべきである。 (5) そして,被告人の公判供述についてであるが,前記のとおり,これに符合するかにみえる証人K及び同Jの各供述はいずれも信用性が低いから,その供述には信用できる裏付けが存在しないというほかない。 また,被告人のアリバイ供述は,捜査段階の被告人の供述調書にはおよそ録取されておらず,かえって,平成17年5月24日付けの検察官調書には「私が盗みをしていないという証明をすることはできません。」との供述が録取されている。この点について,被告人は,同月16日の検察官の取調べの際に,自らの被疑事実における犯行日時が「G」に泥棒が入った日の夜であることに気付いて以降,検察官に対してアリバイを供述し,Iや同店の共同経営者であったM(以下「M」という。)がこれを証明できることを告げたはずであり,前記の検察官調書は,IやMが当時日本にいなかったため,被告人としてその証明ができないと考えたことから,そのような記載になったと思う旨供述する。 また,同月24日の検察官の取調べが終わって留置場に戻った後,Jが平成16年10月26日の夜同店に来ていたことを思い出したが,その当時は担当の警察官に対しては黙秘しており,またその後は検察官の取調べが行われなかったことから 取調べが終わって留置場に戻った後,Jが平成16年10月26日の夜同店に来ていたことを思い出したが,その当時は担当の警察官に対しては黙秘しており,またその後は検察官の取調べが行われなかったことから述べる機会がなかった旨供述する。しかし,アリバイの供述とこれを証明する手段がない旨の供述とは,後者は前者を前提とする別の事柄であっ-- て,被告人がアリバイを供述したにもかかわらず検察官がこれを調書に録取せず,アリバイを証明する手段がない旨の供述のみを,アリバイについてのものであることが不明確な形で録取し,被告人もこれに修正を申し立てることなく調書に署名押印したとは考え難いから,被告人は捜査段階においてはおよそアリバイを供述していなかったとみるのが自然であるし,Jが同日の夜同店に来店したことを思い出した経緯についても,Jは被告人の友人であり同店の賃貸借契約の保証人にもなっている者である上,被告人の公判供述によれば,被告人は,そのような関係にあるJに同店が泥棒に入られたことについて相談するため,自ら電話をかけて同店に来てもらったというのであるから,被告人が平成17年5月24日に至って突然Jが来店したことを思い出したというのも不自然であって,いずれにせよ,被告人が公判に至って初めてアリバイを供述するに至った経緯は不自然というほかない。 しかも,被告人は,Kが平成16年10月26日の夜同店に来ていたことについては,KがMを通じて弁護人に連絡を取るまでは自ら思い出すことがなかった上,捜査段階においては同店から指輪が盗まれたことについても何ら供述していなかったところ,その理由については,公判廷において,指輪を盗まれたことを覚えていなかったなどと述べるのみである。しかし,被告人の公判供述や証人Kの供述によれば,被告人はこの日指輪の持ち主に謝罪して なかったところ,その理由については,公判廷において,指輪を盗まれたことを覚えていなかったなどと述べるのみである。しかし,被告人の公判供述や証人Kの供述によれば,被告人はこの日指輪の持ち主に謝罪しているのであるから,指輪が盗まれたことやKが来店したことについては,この日の出来事としては比較的印象に残っていることと考えられるのに,被告人がその記憶を公判に至るまで喚起できなかったというのは不自然であるし,また,いったん記憶を喚起するや,指輪を盗まれた事実,Kが同店にいた時間,指輪の持ち主の人物像等について具体的かつ詳細な供述をするというのも不自然であって,被告人は別の日にあった事実をこの日の事実に置き換えて,あるいはこれと混同して供述している疑いが強いというべきである。 このように,被告人の公判供述は,不自然,不合理な点が多く,また信用で-- きる裏付けも存在しないから,信用性に乏しいというほかない。 以上のとおり,その信用性が相当に強固なものと認められる証人B及び同Aの各供述によれば,被告人が両名と共謀して本件犯行に及んだ事実を認めることができ,これに対して,アリバイを供述する被告人の公判供述並びにこれに符合するかのようにみえる証人K及び同Jの各供述はいずれも信用性が低く又は信用性に乏しいものであり,到底,前記認定に合理的な疑いを入れるものとはいえないから,判示の事実を優に認定することができる。 (量刑の理由)本件は,被告人が共犯者と共謀の上,深夜事務所に侵入して金庫を盗み出した,いわゆる事務所荒らしの事案である。 安易に金品を得ようとした動機に酌量の余地はない上,犯行態様をみても,共犯者間で役割分担を決め,移動手段としての自動車や侵入用具を準備し,下見をするなどした上で,深夜,事務所に自動車を乗り付けてその事務所の窓ガラスを壊 した動機に酌量の余地はない上,犯行態様をみても,共犯者間で役割分担を決め,移動手段としての自動車や侵入用具を準備し,下見をするなどした上で,深夜,事務所に自動車を乗り付けてその事務所の窓ガラスを壊してかぎを外して窓を開けて侵入し,金庫をそれごと盗み出しており,常習的,職業的手口による大胆で悪質な犯行であり,被害金額も小さくない。そして,被告人は,本件犯行において,事務所に侵入して金庫を運び出すという不可欠で重要な役割を果たしているが,本件犯行を全面的に否認し,公判に至って突如アリバイを主張するなど,不自然,不合理な供述を繰り返して自己の刑事責任を免れるためにきゅうきゅうとしており,反省の態度は全く認められない。加えて,被告人は,平成14年9月に本件と同様の態様の窃盗罪等により懲役2年6月,4年間執行猶予の刑に処せられながら,その猶予期間中にまたしても本件犯行に及んだものであって,被告人のこの種事犯へのつながりの根深さや規範意識の低下は明らかであり,このようにみると,被告人の刑事責任は相当に重いというべきである。 他方,本件犯行の被害品はすべて被害者に還付されており,被告人は本件犯行により金銭的利益を得ていないこと,母国に被告人の帰りを待つ内妻と子供がおり,被告人も帰国の意思を示していることなど,被告人のために酌むべき事情も認めら-- れるので,これらの事情も十分に考慮し,被告人を主文の刑に処することとした。 (求刑―懲役1年6月)平成18年9月26日神戸地方裁判所第2刑事部裁判官岩崎邦生

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