【DRY-RUN】主 文 浦和簡易裁判所が本件について略式命令により罰金三〇万円を科した手 続を破棄する。 理 由 本件非常上告申立の理由は、末尾添付書面記載のとおりである。
主文 浦和簡易裁判所が本件について略式命令により罰金三〇万円を科した手続を破棄する。 理由 本件非常上告申立の理由は、末尾添付書面記載のとおりである。 記録によると、浦和簡易裁判所は、被告人に対する猥せつ図画販売目的所持被告事件(同庁昭和五一年(い)第三七四〇号)について、昭和五一年一二月九日付の略式命令により、所論猥せつ図画販売目的所持の各事実を認定し、刑法一七五条、罰金等臨時措置法二条、三条、刑法一八条を適用して、被告人を罰金三〇万円(不完納の場合は金二〇〇〇円を一日に換算した期間労役場留置)に処し、右略式命令は同月二四日確定したことが認められる。 しかしながら、簡易裁判所が略式命令の請求があつた事件について二〇万円を超える罰金を科するのを相当と認めるときは、通常の規定に従つて審判することを要し、略式命令をすることができないことは、刑訴法四六一条、四六三条一項、罰金等臨時措置法七条三項によつて明らかである。それにもかかわらず、浦和簡易裁判所は、本件につき罰金三〇万円を科するのを相当と認めながら、通常の規定による手続に移行することなく、略式命令によつてこれを科したのであるから、その手続は法令に違反したものであるといわなければならない。 よつて、本件非常上告は理由があるから、刑訴法四五八条二号に従い、浦和簡易裁判所がした前示手続を破棄することとし、主文のとおり判決する。 この判決は、裁判官団藤重光の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。 裁判官団藤重光の反対意見は、次のとおりである。 浦和簡易裁判所が略式命令によつて罰金三〇万円を科したのは、略式命令による- 1 -科刑限度(刑訴法四六一条、罰金等臨時措置法七条三項)を逸脱したものであつて、その違法は不可分的に実体 である。 浦和簡易裁判所が略式命令によつて罰金三〇万円を科したのは、略式命令による- 1 -科刑限度(刑訴法四六一条、罰金等臨時措置法七条三項)を逸脱したものであつて、その違法は不可分的に実体と手続の両面にまたがる。したがつて、本件においては、刑訴法四五八条一号によつて、原略式命令を破棄するのが相当である。しかし、原略式命令の内容にも関するとはいえ、同号但書には該当しないから(最高裁昭和二六年一二月二一日第二小法廷判決・刑集五巻一三号二六〇七頁、団藤・新刑事訴訟法綱要・七訂版・六〇〇頁参照)、当裁判所において自判をするべきではなく、この破棄の判決が被告人に効力を及ぼすものでないことは、同法四五九条の規定するとおりである。 多数意見は、略式命令により罰金三〇万円を科した「手続」だけを破棄するにとどめようとするのであるが、これは法定の科刑限度を逸脱して罰金三〇万円を科した略式命令の内容の法令違反を不問に付するものである。非常上告の制度は、およそ原判決の審判に現われた法令の違反を指摘して正しい法令の適用をあきらかにすることを目的とするものであるから、本件において原略式命令の内容における法令違反をそのまま看過・放置する形になることは許されないというべきである。わたくしが、多数意見に同調することができないゆえんである。 ちなみに、多数意見は、当裁判所昭和四〇年四月二八日大法廷判決(刑集一九巻三号三四四頁)以来の判例にしたがつたものである。右大法廷判決以前は、簡易裁判所が科刑権の範囲(裁判所法三三条二項、三項)を逸脱して刑を言い渡した事案については、刑訴法四五八条一号但書を適用し、改めて科刑権の範囲内の刑を言い渡していたのであるが(最高裁昭和二四年九月二四日第二小法廷判決・刑集三巻一〇号一六一二頁等)、これは右大法廷事件における検事総長の非 、刑訴法四五八条一号但書を適用し、改めて科刑権の範囲内の刑を言い渡していたのであるが(最高裁昭和二四年九月二四日第二小法廷判決・刑集三巻一〇号一六一二頁等)、これは右大法廷事件における検事総長の非常上告申立理由も指摘するとおり、理論上も実務上も不当であつた。一号但書がこの種のばあいに適用されるべきでないことは、すでに前掲昭和二六年一二月二一日第二小法廷判決によつてあきらかにされていたところといえるのであつて、従前の実務はこの限度に- 2 -おいて早晩修正をまぬがれなかつたのである。ところが、右大法廷判決は、一号但書の適用を否定するにとどまらないで、一号から二号への切りかえにまで踏み切つてしまつたのであつて、これは、わたくしにいわせると行きすぎであつた。私見によれば、判決の法令違反には判決の内容の法令違反と判決の手続の法令違反の双方が不可分的に結合して現われるばあいがありうるので、双方をまとめて一号に規定し、判決前の訴訟手続の法令違反を二号に規定したものである。もともと「判決された内容の誤り」と「判決の手続および判決前の手続の誤り」とを対置するのが純理論的には正しい分析であることは、わたくし自身がつとに指摘していたところであるが(団藤・〔旧〕刑事訴訟法綱要・昭和一八年・六四七頁、七一六―七一七頁)、現行刑訴法四五八条のもとになつた旧刑訴法の規定(同法五二〇条)は、このような理論的分析をする学説が現われる以前に作られたものであるばかりか、前者が一号、後者が二号にあたるという考え方は、前述のとおり、実質的にみても相当でない。わたくしは、前記大法廷判決そのものが、この限度において、修正を要するものと考えるのである。 検察官中川一公判出席昭和五三年二月二三日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官藤 判決そのものが、この限度において、修正を要するものと考えるのである。 検察官中川一公判出席昭和五三年二月二三日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官藤崎萬里裁判官岸盛一裁判官岸上康夫裁判官団藤重光裁判官本山亨- 3 -
▼ クリックして全文を表示