平成28(ワ)11570 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成30年3月29日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-87742.txt

キーワード

判決文本文7,588 文字)

平成30年3月29日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成28年(ワ)第11570号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成30年3月9日判決原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士青山友和被告ソメヤ株式会社同訴訟代理人弁護士三山峻司同清原直己主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,700万円及びこれに対する平成28年12月14日から 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,フィリピン法人との取引で「UMBRO」の偽造品を購入させられ損害を被ったと主張する原告が,原告が当該取引をしたのは,被告代表者及び被告従業員に勧誘されたからであるとして,同代表者の関係で会社法350条,同従業員の 関係で民法715条1項に基づき損害賠償を請求した事案である。 1 判断の基礎となる事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告は,スポーツ用品を中心とした繊維製品や衣料品,服飾雑貨などの 輸入販売を手掛ける株式会社である。 イ被告は,衣料品製造販売や環境製品の輸入などを手掛ける資本金1000万円の株式会社である。 ウ AQUATIC&INDUSTRYINCORPORATED(以下「AII社」という。)は,被告との間で「UMBRO」製品の取引実績のあるフィリピン法人である。 エ被告代表者は,AII社の取締役でも IC&INDUSTRYINCORPORATED(以下「AII社」という。)は,被告との間で「UMBRO」製品の取引実績のあるフィリピン法人である。 エ被告代表者は,AII社の取締役でもあって,その2割の株式を保有している(乙1)。 オ P1は,被告代表者の子であり,被告の従業員であるとともに,AII社の取締役であって,その2割の株式を保有している(乙1)。 (2) 原告によるAII社取扱いに係る「UMBRO」製品の取引 ア原告は,AII社から,下記の取引日に,AII社取扱いに係る「UMBRO」ブランドの製品を各記載金額分購入した(以下「本件取引」という。甲1ないし甲5)。 (ア)平成26年12月22日 531万円(イ) 平成27年1月6日 189万円 (ウ) 平成27年6月8日 280万3950円イ原告は,上記取引の代金として,平成27年4月1日に金360万8200円を,同年同月17日に金359万4400円を,それぞれL/C代行会社である訴外株式会社ナックを通じてAII社に支払った。 また,同年6月18日には,原告が被告に対して280万3950円を支払 い,被告においてAII社に対する代金債務の決済をする処理がされた。 ウ原告は,上記アの取引の輸送費として,有限会社クラウンエクスプレスに対し,以下のとおり支払った(甲6ないし甲8)。 平成27年5月11日 139万4907円同年7月8日 49万9826円 (3) AII社取扱いに係る「UMBRO」製品の商標権侵害問題 原告は,本件取引により仕入れた「UMBRO」ブランドの製品(以下「本件製品」という。)を,主として原告のインターネット販売事業部であるセブンスポーツ名で,楽 O」製品の商標権侵害問題 原告は,本件取引により仕入れた「UMBRO」ブランドの製品(以下「本件製品」という。)を,主として原告のインターネット販売事業部であるセブンスポーツ名で,楽天株式会社が運営するサイト「楽天市場」で販売していた。 しかし,本件製品は,日本国内においては,株式会社デサントの有する「UMBRO」の商標権等を侵害する製品であったことから,原告は,平成28年9月 12日付けで,セブンスポーツ名で販売していた楽天株式会社が運営するインターネットモールへの出店契約を解除され,同社からは,上記問題の処理費用が確定するまでの間,原告の同社に対する売掛金約200万円の支払を停止されている(甲9,甲10)。 2 争点 (1) 被告の不法行為責任(原告の主張)ア被告代表者は,平成26年秋頃,原告の代表者であるP2に対し,フィリピン国マカティ市所在の,AII社が製造する英国ブランド「UMBRO」のTシャツ,ポロシャツ,バッグ等を国内へ輸入,販売する取引を持ち掛けた。 その際,被告代表者は,フィリピンにおいて,「UMBRO」の製造ライセンスを持っている会社があり,生産管理は被告が行っていること,ライセンスを持っている会社に被告がロイヤリティーを支払っており,通関に関しても,被告会社が行っているので,安心であることなど,被告が取り扱う「UMBRO」製品が正規品であり,品質も保証できる旨を説明した。また被告代表者は,原告代表者による取 引先の確認に対し,大西衣料株式会社,株式会社プロルート丸光にも,以前から「UMBRO」の製品を納入していることを強調した。 イ上記交渉の場に同席していた被告従業員であるP1は,後日,被告会社の担当者として,被告が取り扱っている「UMBRO」製品の資料や, ,以前から「UMBRO」の製品を納入していることを強調した。 イ上記交渉の場に同席していた被告従業員であるP1は,後日,被告会社の担当者として,被告が取り扱っている「UMBRO」製品の資料や,製品のサンプルを持参の上,原告を訪問し,被告が取り扱っている「UMBRO」製品の取引をす ることを勧めた。この段階で,P1が原告会社に持参した「UMBRO」の製品は, 子供服,Tシャツ,ポロシャツ,バッグ等であり,同人は,原告が本件取引を決断する前に,10回から20回は原告会社を訪問した。 ウ原告は,P1の熱心な営業活動により,原告は,本件取引の開始を決めたが,本件製品が真正品ではなく商標権を侵害する商品であったことから,後記損害を受けるに至った。 エ被告は,原告のほかにも「UMBRO」の商品を他の業者や卸売商社に販売していることから,AII社の製品が,正規品ではないことを知っていたか,そうでないとしても,容易に知り得たことは明らかである。また,P1は,原告に対し,被告の名刺と,AII社の名刺の双方を示すなど,被告の従業員であるとともにAII社の社員であったことから,被告とAII社は,形式的には別法人とはいえ, 実質的には同一であり,実態は,AII社は,被告が支配していた会社といえる。 そうすると,被告は,AII社が「UMBRO」の製品を製造する権限を有していないことを当然知っていたはずである。 オ被告代表者は,原告に対し,本件取引を勧め,その結果,原告に損害を加えたのであるから,被告は,会社法350条に基づき,その損害を賠償する責任を負 う。また仮に,被告代表者が,P1に対し,原告に対して本件取引を勧めるよう指示をしていなかったとしても,被告の従業員であるP1が被告の営業担当として,原告に対し,本件取 害を賠償する責任を負 う。また仮に,被告代表者が,P1に対し,原告に対して本件取引を勧めるよう指示をしていなかったとしても,被告の従業員であるP1が被告の営業担当として,原告に対し,本件取引を勧めて原告に損害を受けさせたのであるから,被告は,使用者として民法715条1項に基づき,原告に加えた損害を賠償する責任を負う。 (被告の主張) ア(ア) 原告代表者が,平成26年秋頃,原告代表者の知人と共に被告会社を訪れたこと,P1が「UMBRO」製品の在庫商品を原告に見せたことがあることは認めるが,その余の事実は否認し,争う。 被告はフィリピンにおいて生産管理など行っておらず,また,被告がロイヤリティーを支払ったこともなく,被告代表者及びP1は,原告代表者に対して,事実と 異なる説明をしていない。また被告代表者及びP1は,原告代表者に対して被告の 取引先に関する話はしていない。そもそも被告は,大西衣料株式会社と取引したことはなく,また被告は,原告と取引を要望する動機がなく,原告に対して営業活動をしたということはない。 (イ) 本件は,原告の「UMBRO」製品を販売したいとの要望に応じて,被告代表者及び被告従業員であるP1が原告にAII社を紹介したものにすぎない。 すなわち,平成26年秋頃,原告代表者は,「UMBRO」製品を扱いたいという要望をもって被告のもとを訪れたが,その際,被告は過去のAII社との取引の流れについて説明し,被告の会社にあった「UMBRO」製品の在庫品を原告代表者に見せるなどした。 そして,その後,原告が,被告に対し,「UMBRO」製品を販売することを決 断した旨の連絡をしてきたので,被告従業員であるP1が,AII社からもらった資料を見せに行ったことがある。その際,P1は,原告代 の後,原告が,被告に対し,「UMBRO」製品を販売することを決 断した旨の連絡をしてきたので,被告従業員であるP1が,AII社からもらった資料を見せに行ったことがある。その際,P1は,原告代表者に対し,AII社が,円建てのL/C取引を条件としている旨を伝え,当該取引条件を原告が了承し,原告とAII社との取引が開始したものである。 (ウ) 本件の経緯は以上のとおりであり,原告が,AII社と取引することを決め たのは,原告の自由な意思決定によるものであって,被告代表者及びP1の行為は,原告の意思決定に何らの不当な影響を与えておらず,原告の権利又は法律上保護される利益を侵害する行為ではない。 イまた,そもそも原告の主張によっても,以下のとおり,被告代表者の行為については会社法350条,P1の行為については民法715条1項の要件を満たさ ないものであるから,被告代表者又はP1の行為を理由として被告は損害賠償責任を負わない。 (ア) すなわち被告代表者が原告に対して行ったのは,AII社と被告が取引をしていたという情報の提供であって,当該情報提供によって,被告は何らの利益も受けないものであるから,被告代表者の行った行為は,被告代表者の職務とは無関係 の行為であり,会社法350条の「職務を行うについて」との要件を満たさない。 (イ) またP1が行った行為も,原告に対して,AII社の情報を提供したにすぎず,AII社と原告が取引を行うことによって,被告の利益につながるものではないから,P1の行った行為は,被告の事業とは無関係な行為であり,民法715条1項の「事業の執行について」との要件を満たさない。 (ウ) 加えて原告は,AII社と取引をすることになったのであるから,被告代表 者やP1が行った紹介行為が,被告 係な行為であり,民法715条1項の「事業の執行について」との要件を満たさない。 (ウ) 加えて原告は,AII社と取引をすることになったのであるから,被告代表 者やP1が行った紹介行為が,被告の事業と無関係であることについては,当然知っていたものである。仮に知らなかったとしても,原告は,被告代表者又はP1の行為が,被告の事業と無関係であることについて,容易に知れたにもかかわらず,重大な過失によって知らなかったものである。 (エ) また次のとおり被告代表者及びP1は,本件紹介行為に関して過失がない。 被告は,AII社と取引をしていた際に,取引する商品が,フィリピンにおける「UMBRO」の商標権の正規ライセンシーから販売されたものであることについて,過去に調査している。 したがって,被告が過去に正規ライセンシーの商品を販売していたAII社を紹介したとしても,被告は調査義務を尽くしており,何ら過失はない。 (2) 原告の受けた損害の額(原告の主張)原告は,被告の不法行為により,以下のとおり少なくとも2309万7333円の損害を受けたが,本件においては,そのうちの一部である700万円を請求する。 ア仕入れによる損害 本件取引で,原告の仕入れた商品はすべて違法なコピー商品であって,それ自体商標権を侵害し,国内での販売や所持が禁止されているものであるから,原告は,仕入れのために被告や株式会社ナックなどに支払った上記金額の合計909万7333円の損害を受けた。 イ未回収売掛金の発生 原告は,本件のトラブルが原因となって,セブンスポーツ名で販売していた楽天 株式会社が運営するインターネットモールへの出店契約が解除された。 そして,楽天株式会社は,本件トラブルの処理費用が確定するま 件のトラブルが原因となって,セブンスポーツ名で販売していた楽天 株式会社が運営するインターネットモールへの出店契約が解除された。 そして,楽天株式会社は,本件トラブルの処理費用が確定するまでの間,原告の楽天に対する現在の売掛金約200万円の支払を停止したため,原告は約200万円が回収できない事態となっている。 ウ営業損害 原告は,楽天のインターネットモールにおいて月間約200万円もの利益を稼ぎ出していたが,この販路を失ったことで少なくとも,その後,半年間は利益が減少し,約1200万円の損害を受けた。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件において原告は,本件取引が被告代表者及び被告従業員の勧誘によってなされたことを前提に,被告代表者の行為につき会社法350条,P1の行為につき民法715条1項を適用して損害賠償請求をしている。 2 しかしながら,会社法350条の責任が認められるためには,代表者の行為 が会社の「職務を行うについて」なされることが必要であり,民法715条の責任が認められるためには,従業員の行為が会社の「事業の執行について」なされたことが必要であるところ,この「職務」ないし「事業」の範囲は,本来の「職務」ないし「事業」そのものだけではなく,これと密接な関連を有する行為に及ぶものと解されるが,原告が本件において問題とする行為は,被告代表者についても被告の 従業員であるP1についても,いずれも原告がAII社とした本件取引への勧誘行為というものである。 そうすると,その行為自体,被告の事業とかかわらないものであることが明らかであるし,そのほか本件において,上記行為が被告代表者としての「職務」ないし被告の「事業」と密接な関連を有することを根拠づけるような事実,すな 行為自体,被告の事業とかかわらないものであることが明らかであるし,そのほか本件において,上記行為が被告代表者としての「職務」ないし被告の「事業」と密接な関連を有することを根拠づけるような事実,すなわち原告 とAII社との本件取引により被告が直接的のみならず反射的に何らかの利益を受 ける関係にあるような事実を認めるに足りる証拠もない。 3 なお,本件取引において,原告は,平成27年6月8日,その代金として280万3950円を被告に対して支払い,被告においてAII社に対する代金債務の決済をしたことは当事者間に争いがない。そして,証拠(乙3ないし乙5)及び弁論の全趣旨によれば,被告はこの機会にAII社に対する債権回収をな すという利益を受けていることが認められる。 しかし,上記支払は,原告とAII社間の取引が始まって半年経過し,代金支払いとしても3回目の機会になされたものであるが,3回目に限って原告から被告に対する支払がなされた経緯は,原告の主張によっても納品が遅れることにつき原告がP1に苦情をいって対応を求めたことからというのであって,少 なくとも偶発的な出来事の結果にすぎない。 そうすると,このことから,被告がAII社に対する債権回収を目論んで原告にAII社との取引を勧誘したと推認することはできず,いずれにせよ,上記事情をもってAII社との取引勧誘行為が,被告代表者の被告の「職務を行うについて」なされたとも,被告従業員P1の行為が被告の「事業の執行につい て」なされたとも見る余地はない(念のため付言すると,上記の被告による原告のAII社に対する弁済の受領行為は被告の事業の一環と見ることができるが,それ自体は原告に損害をもたらす不法行為でないから(原告の主張によれば,船便を航空便としたことにより生じる余分 被告による原告のAII社に対する弁済の受領行為は被告の事業の一環と見ることができるが,それ自体は原告に損害をもたらす不法行為でないから(原告の主張によれば,船便を航空便としたことにより生じる余分な経費は被告の負担にさえなっている。),原告の主張はいずれにせよ成り立つ余地はない。)。 4 そもそも原告の主張するところでは,被告代表者及びP1が,ともに原告が購入を希望している製品がAII社から入手できる旨説明し,AII社との取引をさせるに至っているというのであり,その際,少なくともP1においてはAII社の名刺を原告代表者に示していたというのであるから,両名のAII社における地位からすると,両名はAII社の取締役の立場で同社の利益を図って行為をしてい たものと理解するのが自然である。そうすると,本件における原告のその余の点に ついての主張事実が認められるなら,本件は,AII社の取締役である被告代表者及びP1の個人としての法的責任を検討すべき筋合いの問題であるというべきであって,これを会社法350条あるいは民法715条1項を適用して被告の不法行為責任を問うということは失当というほかない(なお,被告代表者及びP1とも,AII社の取締役であるほか,その株式を保有しているが,本件で明らかなように, AII社はフィリピンにおいて,現実に商品を調達して輸出するなどしているフィリピン法人であって,被告と実質的に同一の会社とみることもできない。)。 5 以上のとおりであって,原告の本件請求は,その余の点の判断に及ぶまでもなく理由がないことが明らかであるから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 主文 とが明らかであるから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。 理由 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 森崎英二 裁判官 野上誠一 裁判官 大川潤子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る