平成20(レ)16 郵便貯金債権返還請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成20年9月5日 名古屋地方裁判所 名古屋簡易裁判所 平成19(ハ)7383
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判決文本文10,722 文字)

平成20年(レ)第16号郵便貯金債権返還請求控訴事件(原審・名古屋簡易裁判所平成19年(ハ)7383号)判決主文 原判決を取り消す。 被控訴人は,控訴人に対し,選定者Aのために15万3620円,選定者Bのために15万3620円をそれぞれ支払え。 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 事実 第1当事者の求めた裁判 控訴人主文同旨。ただし,原審での「選定者それぞれについて利子を支払え」との請求は,当審で「選定者それぞれについて8万6954円を支払え」との請求に補正された。 被控訴人(1) 本件控訴(当審で補正された請求を含めて)を棄却する。 (2) 控訴費用は,控訴人の負担とする。 第2当事者の主張 請求原因(1) 当事者アCは,平成▲年▲月▲日に死亡したが,その相続人は,妻であるD,子である控訴人,選定者B(以下,選定者Bと控訴人をあわせて「控訴人ら」という)及びEである。 。 Dは,平成△年△月△日に死亡したが,その相続人は,子である控訴人,選定者B及びEである。 イ日本郵政公社(以下「公社」という)は,旧郵政事業庁の所掌事務に。 関して国が有する権利義務を承継していたが,郵政民営化法に基づき平成19年10月1日に解散した。株式会社F及び被控訴人が,同法163条3項の認可を受けた実施計画において定められた業務等を公社から承継することとなり(同法166条1項,被控訴人が,本件訴えにかかる権利)義務を承継した。 (2) Cは,郵便局に対し,昭和52年1月13日に10万円を定額郵便貯金として預け入れ(以下「第1貯金」という,同年2月22日に10万円を定。)額郵便貯金として預け入れた(以下「第2貯金」といい,第1貯金と第2貯金をあわせて「本件各貯金」という。 )第1貯金の定額郵便 預け入れ(以下「第1貯金」という,同年2月22日に10万円を定。)額郵便貯金として預け入れた(以下「第2貯金」といい,第1貯金と第2貯金をあわせて「本件各貯金」という。 )第1貯金の定額郵便貯金債権の元利合計額は,平成19年4月16日現在で23万0627円(元金が10万円で利息が13万0627円である)。 であり,第2貯金の定額郵便貯金債権の元利合計額は,平成19年5月16日現在で23万0237円(元金が10万円で利息が13万0627円である)であった。 。 (3) よって,控訴人は,被控訴人に対し,選定者Aのために15万3620円の支払を,選定者Bのために15万3620円の支払を求める。 請求原因に対する認否(1) 請求原因(1)アの事実は知らず,イの事実は認める。 (2) 同(2)の事実は認める。 抗弁(権利消滅)(1) 定額郵便貯金は,預入れの日から起算して10年経過後,通常郵便貯金となる(郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第102号)2条1号による廃止前の郵便貯金法(以下「郵便貯金法」という)57条1項。通常郵便貯金で10年間預入れ及び払戻しがな。 )く,かつ通帳の再交付に係る請求その他公社の定める取扱いがないものについては,貯金の預入れ又は一部払戻しの取扱いをしないこととなる(郵便貯金法40条の2第1項。郵便貯金法40条の2第1項により貯金の預入れ)又は一部払戻の取扱いをしないこととされた通常貯金について,その後10年間その貯金の全部の払戻しの請求がない場合において,公社がその預金者に対し貯金の処分をすべきことを催告し,その催告を発した日から2か月以内になお貯金の処分の請求がないときは,その貯金に関する預金者の権利は消滅する(郵便貯金法29条。 )また,公社の定める通常 者に対し貯金の処分をすべきことを催告し,その催告を発した日から2か月以内になお貯金の処分の請求がないときは,その貯金に関する預金者の権利は消滅する(郵便貯金法29条。 )また,公社の定める通常郵便貯金規定13条は,①この貯金について,10年間,預入れ又は払戻しがなく,かつ通帳の再交付に係る請求その他公社が別に定める取扱いがない場合は,公社は,預入れ又は一部の払戻しの取扱いをしない貯金(以下「睡眠貯金」という)として取り扱う,②睡眠貯金。 について,通帳の再交付に係る請求その他公社が別に定める請求又は届出があった場合は,全部払戻しの請求があったものとして払い戻す,③睡眠貯金になった後10年間全部払戻し(前項により全部払戻しの請求とみなされるものを含む)がない場合には,公社はその預金者に対し貯金の処分をすべ。 き旨を催告し,その催告を発した日から2か月以内に預金者からの処分の請求がないときは,郵便貯金法の規定に基づき,その貯金に関する預金者の権利は消滅する旨定めている。 睡眠貯金に係る請求等に関する規定1条は,睡眠貯金について全部払戻請求があったものとみなされる場合を次のとおり限定している。 ①印章の変更の届出②キャッシュカードの交付の請求③利子記入の請求④現在高の確認の請求⑤郵便貯金に関する権利が譲り渡され又は相続若しくは会社の合併若しくは分割により承継された場合における名義書換又は貯金の転記の請求⑥乙種団体貯金の団体を脱退した場合又は乙種団体貯金の取扱いを廃止した場合における通帳の切替え又は貯金の転記の請求⑦取扱局特定貯金規定に基づく取扱郵便局の特定又は特定郵便局の変更若しくは取消しの請求⑧積立郵便貯金の据置期間が経過した場合,定額郵便貯金についてその預入の日から起算して10年が経過した場合,定期郵便貯金の 貯金規定に基づく取扱郵便局の特定又は特定郵便局の変更若しくは取消しの請求⑧積立郵便貯金の据置期間が経過した場合,定額郵便貯金についてその預入の日から起算して10年が経過した場合,定期郵便貯金の預入期間が経過した場合,住宅積立郵便貯金の据置期間の経過後2年が経過した場合又は教育積立郵便貯金の据置期間の経過後4年が経過した場合における通常郵便貯金の通帳の引換交付又は通常郵便貯金の通帳への貯金の転記の請求⑨郵便貯金担保貸付規定8条(自動貸付けによる貯金担保貸付け)の自動貸付けの取扱いの請求⑩氏名の変更又は住所の移転の届出⑪団体取扱規定の適用がある場合における甲種団体貯金の団体の名称若しくは所在地の変更又は代表者の異動の届出⑫公社の求めによる通帳又は貯金証書の提出なお,現存照会請求,現在高の証明(残高証明)の請求は,現在の郵便貯金の存在や残高についての記録を提供するにとどまるものであるが,上記④の現在高の確認の請求は,請求者が必ず通帳・証書を郵便局に提示しなければならず,通帳・証書自体にも確認した旨の表示が記載されるものである。 現存照会請求,現在高の証明(残高証明)の請求では,当該貯金が睡眠貯金であった場合にも全部払戻の手続に入ることはないが,現在高の確認の請求では当該貯金が睡眠貯金であった場合はその手続に入ることとなる。 睡眠貯金になった後,10年間全部払戻請求(全部払戻請求とみなされるものを含む)がない場合,公社は預金者に対し貯金の処分をすべき旨を催。 告することとなるが,通常郵便貯金規定14条は,公社は,届出のあった氏名,住所に宛てて送付書類を発送すれば足り,延着し又は到達しなかったときでも通常到達すべき時に到達したものとみなす旨規定している。 (2) 本件各貯金は,預入れの日から10年が経過した時点において通常郵便貯 所に宛てて送付書類を発送すれば足り,延着し又は到達しなかったときでも通常到達すべき時に到達したものとみなす旨規定している。 (2) 本件各貯金は,預入れの日から10年が経過した時点において通常郵便貯金となり,さらに10年間預入れ又は払戻しがなかったため,睡眠貯金として扱われることとなり,睡眠貯金となった後,全部払戻し又は全部払戻とみなされる行為がないまま,さらに10年間が経過した。 (3) 公社は,第1貯金については平成19年2月16日に,第2貯金については同年3月16日に,それぞれ本件各貯金につき届出のあった名古屋市a区b町大字c字deC宛に催告書を郵送し,貯金を処分するよう催告した。 (4) 第1貯金については平成19年4月16日に,第2貯金については同年5月16日に,上記催告書郵送から2か月が経過した。 抗弁に対する認否(1) 抗弁(1)は知らない。 (2) 同(2)の事実は否認する。 (3) 同(3)の事実は否認する。 なお,本件各貯金の預金者が,相続により,E及び控訴人らとなった以上,郵便貯金法29条の催告も実際の預金者であるE及び控訴人らに対して行われるべきである。 (4) 同(4)は争う。 再抗弁(1) 時効中断公社は,控訴人らに対し,平成19年2月21日,同年1月31日時点での郵便貯金調査結果として,本件各貯金を記載し,債務を承認した。 (2) 権利濫用以下の事情からすれば,被控訴人が控訴人に対し,本件各貯金債権についての権利消滅を主張することは,権利濫用として許されない。 ア控訴人らは,平成15年11月10日,G郵便局職員から,本件各貯金の権利消滅について,現存照会をすれば,Eと控訴人らの間の相続問題が解決するまで消滅しない旨の誤った内容の説明を受けた。 また,控訴人らは,同日,同職員から,本件各貯金は昭和54年 員から,本件各貯金の権利消滅について,現存照会をすれば,Eと控訴人らの間の相続問題が解決するまで消滅しない旨の誤った内容の説明を受けた。 また,控訴人らは,同日,同職員から,本件各貯金は昭和54年から同59年にかけて,マル替という行為がなされているため,少なくともあと6年間は権利が消滅することはない旨の説明を受けた。 イ平成19年1月31日時点での郵便貯金調査結果には,名義人が死亡した場合には,財産保全のため,上記の貯金について支払停止の措置をとる旨の記載があり,このような記載がある以上,公社が貯金債権を保全するものと解され,控訴人らが権利消滅を防ぐために払戻請求を行うことは通常不可能である。 ウ上記郵便貯金調査結果には,本件各貯金が現存している旨記載されており,公社がその約2か月後に本件各貯金の権利消滅をさせる意思があったのにその旨の記載がなかった。 (3) 国債購入による権利不消滅控訴人らは,平成17年10月28日,H郵便局から,貯金総額が1000万円を超えているので,郵便貯金法11条の規定により,国債を購入させてもらう旨の通知を受けた。その際,郵便局職員から,貯金が複数ある場合,まず満期に至っているものから順に国債を購入する取扱いをなしているとの説明を受けた。本件各貯金については,公社に国債証券の購入保管義務があり,本件各貯金は権利消滅しない。 再抗弁に対する認否(1) 再抗弁(1)の事実は否認する。 債務承認にはあたらない。 郵便貯金法は,定額郵便貯金について,通算30年の権利性を認め,特別に保護しており,睡眠貯金の取扱いについても公社の規定において定めるものとしている以上,睡眠貯金の権利消滅を保全するには,公社の規定において定められた手続をとる必要がある。 (2) 再抗弁(2)の事実は否認する。 ア同アについて対 いても公社の規定において定めるものとしている以上,睡眠貯金の権利消滅を保全するには,公社の規定において定められた手続をとる必要がある。 (2) 再抗弁(2)の事実は否認する。 ア同アについて対応した職員は「現在高の確認」と「現存照会」を混同し,誤解を与える説明となっている部分はあるが,控訴人らは睡眠貯金における権利消滅制度の存在を認識し,また,Eは郵便局に勤務していたことがあるから,控訴人らは睡眠貯金について10年間の経過及び催告期間2か月の経過により権利消滅する可能性を認識していた。 イ同イ及びウについて控訴人の主張は,公社の定める睡眠貯金の権利消滅の制度又は同手続のための取扱方法を権利濫用とするものであるが,睡眠貯金制度は,そもそもサービスとして,郵便貯金について民法上の時効期間を超えて特別な権利保護を与えたものである。 (3) 再抗弁(3)の事実は否認する。 郵便貯金法11条による貯金の減額の定めは,公社に対し国債購入を義務づけるものではない。 また,本件各貯金については,名義人であるCが死亡して権利者が不明となっている以上,国債の購入を行うことは不可能である。 理由 請求原因(1)イ及び同(2)の事実は当事者間に争いがない。 請求原因(1)アについては,証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。 抗弁(1)ないし(4)については,証拠(乙1の1・2,3,6,8ないし11)及び弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。 この点,控訴人は,本件各貯金についてのC宛の催告書は預入時に届け出た住所地に届いていない旨主張し,それに沿うEの供述がある(甲10,乙15。 )しかし,証拠(乙1の1・2,6,10)及び弁論の全趣旨により,通常郵便貯金規定14条は「公社は,届出のあった氏名,住所に宛てて送付書類 ない旨主張し,それに沿うEの供述がある(甲10,乙15。 )しかし,証拠(乙1の1・2,6,10)及び弁論の全趣旨により,通常郵便貯金規定14条は「公社は,届出のあった氏名,住所に宛てて送付書類を,発送すれば足り,延着し又は到達しなかったときでも通常到達すべき時に到達したものとみなす」旨定めていること,公社においては,睡眠貯金となった。 後,全部払戻請求(全部払戻請求とみなされる手続を含む)がされず,10。 年間が経過すると,2か月以内に全部払戻しの手続を行うことを催告する「権利消滅のご案内(催告書(乙10)が貯金事務センターより自動出力され,)」預金者宛に発送されていたこと,定額定期原簿照会票(乙1の1・2)に本件各貯金について催告書が発送された記録が残されていることが認められるから,控訴人の同主張は採用できない。 再抗弁(2)について(1) 上記争いのない事実に,証拠(甲1ないし6,8ないし11,乙1の1・2,9,12)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 アCは,郵便局に対し,昭和52年1月13日に10万円を定額郵便貯金として預け入れ(第1貯金,同年2月22日に10万円を定額郵便貯金)として預け入れた(第2貯金。 )イ第1貯金及び第2貯金は,預入れの日から起算して10年が経過した昭和62年1月14日及び同年2月23日に,郵便貯金法57条により,それぞれ通常郵便貯金となった。 ウCが平成▲年▲月▲日に死亡し,D,E及び控訴人らが,通常郵便貯金となった本件各貯金を相続した。 エ第1貯金は,昭和62年1月14日から10年が経過する平成9年1月13日までの間に預入れや払戻しあるいは通帳の再交付に係る請求その他公社の定める取扱いがなかったため,平成9年1月14日,郵便貯金法40条の2により,睡眠貯金 14日から10年が経過する平成9年1月13日までの間に預入れや払戻しあるいは通帳の再交付に係る請求その他公社の定める取扱いがなかったため,平成9年1月14日,郵便貯金法40条の2により,睡眠貯金となった。第2貯金も同様に,昭和62年2月23日から10年が経過する平成9年2月22日までの間に預入れや払戻しあるいは通帳の再交付に係る請求その他公社の定める取扱いがなかったため,平成9年2月23日に郵便貯金法40条の2により睡眠貯金となった。 オCの死亡後,Cの財産に関する遺言はなく,D,E及び控訴人らの間での遺産相続についての話し合いはまとまらないままであった。当時,Cの郵便貯金の証書等は全てEが保管しており,控訴人らはCの郵便貯金の有無及びその額について一切教えられていなかった(甲6,乙12。 )控訴人らは,C名義の郵便貯金がどれだけ存在するのか把握できておらず,相続問題解決の前提として郵便貯金額の総額を確定する必要があったため,平成15年11月10日にG郵便局において,C名義の郵便貯金の現存照会を請求した(甲3,6,乙12。その際,控訴人らは,控訴人)の夫及び選定者Bの夫も同席の上,G郵便局職員から,現存照会の請求の手続について説明を受けた(甲6,乙12。 )なお,現存照会とは,郵便貯金の現存の有無についての照会であり,所定の請求書(郵便貯金照会書兼回答書)を郵便局に提出して請求を行うものである。郵便局の取扱者は,上記請求書を受領後,当該請求書の内容及び請求者が正当権利者であるかどうかを確認し,受付証及び受付証原符を作成し,請求者に受付証を交付する。その後,郵便貯金照会書を当該郵便局の管轄の貯金事務センターに送付し,これにより貯金事務センターが調査を開始する。そして,現存照会の調査結果が,貯金事務センターから当該郵便局へ送付 付証を交付する。その後,郵便貯金照会書を当該郵便局の管轄の貯金事務センターに送付し,これにより貯金事務センターが調査を開始する。そして,現存照会の調査結果が,貯金事務センターから当該郵便局へ送付され,当該郵便局が請求者に調査結果を交付するという取扱いとなっている。現存照会は,当該貯金が睡眠貯金であっても,現在の)。 預金の存在についての記録を提供するにとどまる(乙9,弁論の全趣旨G郵便局職員は,控訴人が,現存照会に関し「…話し中だから,もし,その際に消滅しちゃうといけないから,話し中ですよと郵便局に言っておくと,そこでその分だけは」と質問したのに対し「止めます。これを出。 ,せば止めますから。これを出せば止められます」と回答した(甲6,乙。 12,控訴人本人。 )また,同職員は,控訴人らに対し「いずれにしても,とにかく全部調,べたほうがいいですね。あるやつが全部出てくる。最初はそれでやりましょうか。調べて。それこそ待ってもらわんならんで,10年経ってるなら,。 ,もうちょっと待ってもらって」と述べて現存照会の手続をとるよう勧め同席していた控訴人の夫が「その手続をやると,その時点から話がまとまるまでの間,この人が聞いたように」と尋ねたのに対しても「あのー,。 ,止めます」と回答した。さらに,控訴人の夫が「じゃあまあ,調べれば。 止めることの有効性はあるよね。どのくらいの期間止めてもらえるんですかね」と尋ねたことに対しても,同職員は「相続が成立するまで」と。 ,。 回答し,現存照会の手続をすれば,相続の協議が整うまでの間,当該郵便貯金債権について権利消滅しないよう止めることができる旨説明した(甲6,乙12。 )しかし,実際には,上記のとおり現存照会の請求の手続に睡眠貯金の権利消滅を阻止する効果はなく,同職員による上記の 貯金債権について権利消滅しないよう止めることができる旨説明した(甲6,乙12。 )しかし,実際には,上記のとおり現存照会の請求の手続に睡眠貯金の権利消滅を阻止する効果はなく,同職員による上記の説明は事実と異なるものであった。 カH郵便局は,平成17年10月28日付けで,C宛に,C名義の郵便貯金の総額が,郵便貯金法10条に定められた貯金総額の制限を超過していることから,超過部分については払い戻すよう求める旨,また,超過部分の払戻しがない場合は同法11条により貯金総額の制限額以内となるよう国債の購入金額に相当する範囲内において,郵便貯金を払戻しの上,国債を購入する手続をとる旨の通知を送付した(甲5,11。 )キDは,平成△年△月△日,死亡した。当時,本件各貯金は睡眠貯金となっており,E及び控訴人らは,本件各貯金に対するDの相続分を相続した。 ク控訴人は,平成19年1月31日,公社に対し,本件各貯金につき現存照会請求をし(甲4,公社は,同年2月21日付けで本件各貯金が睡眠)貯金として存在すると回答した(甲1。同回答中には,名義人が死亡し)た場合には,財産保全のため,貯金について支払停止の措置をとる旨の記載があった。 ケ睡眠貯金となった本件各貯金について,睡眠貯金となった平成9年1月14日及び同年2月23日からそれぞれ10年が経過する平成19年1月13日及び同年2月22日までの間に全部払戻しの請求や郵便貯金法40条の2第2項により貯金の全部払戻しの請求とみなされるものがなかったため,第1貯金については平成19年2月16日,第2貯金については同年3月16日,それぞれ,本件各貯金につき届出のあった名古屋市a区b町大字c字deC宛に,貯金を処分するよう催告書が発送された(乙1の1・2。 )催告を発した日から2か月以内に貯金の処分 いては同年3月16日,それぞれ,本件各貯金につき届出のあった名古屋市a区b町大字c字deC宛に,貯金を処分するよう催告書が発送された(乙1の1・2。 )催告を発した日から2か月以内に貯金の処分の請求がないときはその貯金に関する預金者の権利は消滅する(郵便貯金法29条)ところ,本件各貯金について,この処分の請求はなかった(弁論の全趣旨。 )公社は,第1貯金及び第2貯金について,催告が発せられて2か月が経過した平成19年4月16日及び同年5月16日の各満了をもって,郵便貯金法等の上記法令等に定める方式に従い権利消滅の措置を講じた(乙1の1・2。 )コ控訴人は,平成19年5月17日,公社に対し,C名義の郵便貯金について,残高証明請求をし,公社は同年6月11日付け郵便貯金残高証明書を交付したが,その証明書には本件各貯金の記載はなかった(甲2。 )(2) 控訴人らが,平成15年11月10日に,G郵便局職員から,本件各貯金は昭和54年から同59年にかけて,マル替という行為がなされているため,少なくともあと6年間は権利が消滅することはない旨の説明を受けたことを認めるに足りる証拠はない。G郵便局職員は,控訴人らに対し,郵便貯金について,昭和49年に途中で利息が上がった時期があり「…今までの貯金,を全部書き換えた時点があり,同様の書き換えが55年の時点にあった。その時に預け替えた貯金についてはマル替と証書に印が付けられ,預け替えの時点から権利行使可能となる期間が更に伸びる」旨説明している(甲6,。 乙12)ものの,他方,同職員は,当時貯金の預け替えを預金者にお勧めして回ったが「100%じゃない」旨述べ,預け替えが100%行われたと。 は断言していない(乙12)ところである。 (3) ところで,郵便貯金が,特別の保護であるとはいえ民法上の時効 を預金者にお勧めして回ったが「100%じゃない」旨述べ,預け替えが100%行われたと。 は断言していない(乙12)ところである。 (3) ところで,郵便貯金が,特別の保護であるとはいえ民法上の時効の制度とは異なる制度を採用し,また,現存照会,現在高の証明及び現在高の確認等という一般の預金者には容易に判別がつかないおそれのある複数の手続を併置している以上,郵便貯金の権利保全につき説明を求められた公社の職員としては,その権利の保全の手続につき,質問に応じて正確に回答・説明すべき信義則上の義務があるというべきであり,公社の職員がこれを怠ったために郵便貯金の権利者が期限内での権利行使を妨げられた場合には,公社又はその承継人が当該郵便貯金につき権利消滅を主張することは権利濫用に当たると解するのが相当である。 これを本件についてみるに,上記認定の事実によれば,G郵便局職員は,平成15年11月10日,控訴人らに対し,現存照会請求の手続について説明する際,この手続さえとれば,相続問題が解決するまでの間,該当するC名義の郵便貯金債権の権利消滅を全て止めることができる旨述べて,実際の現存照会手続の効果とは異なる説明を行ったもので,控訴人らは,このG郵便局職員の説明を信じ,期限内での本件各貯金の権利行使を妨げられたものと認められる。 そうとすれば,公社の承継人である被控訴人が本件各貯金につき権利消滅を主張することは権利の濫用に当たるというべきである。 この点,被控訴人は,控訴人らが睡眠貯金における権利消滅制度の存在を認識しており,また,Eは郵便局に勤務していたことがあるから,控訴人らは睡眠貯金について10年間の経過及び催告期間2か月の経過により権利消滅する可能性を認識していたと主張し,確かに証拠(甲6,乙12,控訴人本人)によれば,控訴人らが,従前,Eか があるから,控訴人らは睡眠貯金について10年間の経過及び催告期間2か月の経過により権利消滅する可能性を認識していたと主張し,確かに証拠(甲6,乙12,控訴人本人)によれば,控訴人らが,従前,Eから,Cの郵便貯金が無効になる旨言われ「同意書」に押印するよう要求され続けていたこと,Eが郵便局に,勤務していたことは認められる。 しかし,弁論の全趣旨によれば,控訴人らは,従前,Eから,Cの郵便貯金が無効になる旨言われ「同意書」に押印するよう要求され続けていたた,めに,G郵便局職員に説明を求めたことが認められ,控訴人らが睡眠貯金における権利消滅の制度の具体的内容まで明確に認識していたとか,権利の消滅を阻止するための具体的な手続内容まで理解していたとは到底認められない。 (4) 睡眠貯金については当該貯金の全額の払戻請求のみが認められ,権利行使に制限が付されているが,上記のとおり,控訴人らが,G郵便局職員の説明により,期限内での本件各貯金の権利行使を妨げられたという事情がある以上,信義則上,控訴人らは被控訴人に対し各自の本件各貯金の相続分について支払を求めることができると解するのが相当である。 結論 以上によれば,控訴人の請求(当審で補正された部分を含む)は理由があ。 るからこれを認容すべきである。 よって,これと異なる原判決を取り消し,控訴人の請求(当審で補正された部分を含む)を認容することとし,主文のとおり判決する。 。 名古屋地方裁判所民事第6部裁判長裁判官内田計一裁判官清藤健一裁判官飯田理子

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