平成30年12月26日判決言渡 平成29年(ネ)第10049号損害賠償請求控訴事件 平成30年(ネ)第10076号同反訴事件(原審・東京地方裁判所平成28年(ワ)第19633号) 口頭弁論終結日平成30年10月17日中間判決 控訴人(一審原告)兼反訴被告(以下,「控訴人」という。)X 同訴訟代理人弁護士山内貴博 松下昂永 被控訴人(一審被告)兼反訴原告(以下,「被控訴人」という。)株式会社ツインズ 同訴訟代理人弁護士鮫島正洋 山本真祐子 森下梓 主文 1 本訴請求のうち,特許権(控訴人の共有持分権)侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は理由がある。 2 本訴請求のうち,債務不履行に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は理由がない。 3 本訴請求のうち,説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は理由がない。 4 反訴請求に係る訴えは不適法である。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほか,原判決に従う。また,人証は,すべて当審で行われたものである。 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨 (1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,2億2000万円及びこれに対する平成28年6月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人は,原判決別紙物件目録記載の被告各商品の製造及び販売をしてはならない。 し,2億2000万円及びこれに対する平成28年6月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人は,原判決別紙物件目録記載の被告各商品の製造及び販売をしてはならない。 (4) 被控訴人は,特許第5079926号の特許権の持分4分の1及び特許第5392519号の特許権の持分4分の1をいずれも有していないことを確認する。 (5) 被控訴人は,控訴人に対し,特許第5079926号の特許権及び特許第5392519号の特許権につき,それぞれ持分4分の1の移転登録手続をせよ。 (控訴人は,当審において,上記(3)~(5)の各請求を追加した。) 2 反訴(1) 控訴人は,被控訴人に対し,特許第5079926号の特許権及び特許第5392519号の特許権につき,それぞれ持分6分の1の移転登録手続をせよ。 (2) 控訴人は,特許第5079926号の特許権の持分2分の1及び特許第5392519号の特許権の持分2分の1をいずれも有していないことを確認する。 第2 事案の概要 1 事案の経緯等(1) 本件は,控訴人が,被控訴人には次のア~ウの債務不履行又は不法行為があると主張して(アとイは選択的な主張),被控訴人に対し,債務不履行又は不法行為に基づき,損害額合計2億2000万円及びこれに対する催告の後の日又は不 - 3 -法行為の後の日である平成28年6月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 ア名称を「チューブ状ひも本体を備えたひも」とする発明についての特許第5079926号の特許権(請求項の数5。以下,「本件特許権1」といい,その特許を「本件特許1」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明1-1」という。)を共有する控訴 発明についての特許第5079926号の特許権(請求項の数5。以下,「本件特許権1」といい,その特許を「本件特許1」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明1-1」という。)を共有する控訴人,被控訴人,A及びBの4者(以下,「本件4者」という。)は,本件発明1-1の実施について,①Bが中国国内の工場で実施品を製造し,②これをAが梱包し,③これを控訴人が仕入れ,④さらに被控訴人がこれを日本に輸入して販売することとし(本件販売形態),これを唯一の販売形態とする旨の合意(本件実施合意)をしていたのに,被控訴人はこれに反して控訴人からの仕入れを中止し,被告各商品を製造・販売した(本件実施合意の債務不履行)。 イ被控訴人は,本件発明1-1の技術的範囲に属する被告各商品を製造・販売し,もって本件特許権1(控訴人の共有持分権)を侵害した(特許権侵害による不法行為)。 ウ被控訴人は,本件4者間に成立した出願に関する合意により,香港への本件発明1-1の特許出願を平成26年5月22日までに行うよう,弁理士へ出願指示をすべきであったのに,これを怠った(出願に関する合意の債務不履行又は不法行為)。 (2) 原審は,①本件4者間において,本件販売形態を唯一の販売形態とする旨の合意は認められない,②本件特許権1について,特許法73条2項の「別段の定」は存在しないから,被控訴人は,他の共有者の同意を得ないで被告各商品を製造・販売することができる,③控訴人の主張するような出願に関する合意は認められないと判断して,控訴人の請求をいずれも棄却した。 (3) 控訴人は,原判決を不服として控訴し,当審において,次のとおり,訴えの変更をした。 すなわち,控訴人は,次のア~エのとおり主張して,被控訴人に対し,①特許法 - 4 - (3) 控訴人は,原判決を不服として控訴し,当審において,次のとおり,訴えの変更をした。 すなわち,控訴人は,次のア~エのとおり主張して,被控訴人に対し,①特許法 - 4 -100条1項に基づき,被告各商品の製造及び販売の差止め,②債務不履行又は不法行為に基づき,損害額合計2億2000万円及びこれに対する催告の後の日又は不法行為の後の日である平成28年6月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,③被控訴人が本件特許権1の持分4分の1及び特許第5392519号の特許権(以下,「本件特許権2」といい,その特許を「本件特許2」という。本件特許権1及び2を総称して「本件特許権」,本件特許1及び2を総称して「本件特許」といい,本件特許の対象である発明を「本件特許発明」という。)の持分4分の1をいずれも有していないことの確認,④後に定義する本件固定的役割分担合意,本件固定的役割分担合意の解除に伴う原状回復,後に定義する本件共同出願契約又は特許法74条1項に基づき,控訴人に対する本件特許権の持分各4分の1の移転登録手続を求めた。 ア被控訴人は,次の(ア)~(キ)の理由により,本件特許権の持分が剥奪され,無権利者であり,また,後に定義する本件固定的役割分担合意は,特許法73条2項の「別段の定」に当たるところ,平成28年4月1日以降,被控訴人が本件発明1-1の技術的範囲に属する被告各商品を製造・販売したことにより,控訴人,A及びB(以下,「控訴人ら3者」という。)は1億円の損害を受けた。控訴人は,A及びBの被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。 (ア) 本件4者は,①(a)Bが中華人民共和国内の工場で製造し,(b)Aがこれを梱包し,(c)控訴 は,A及びBの被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。 (ア) 本件4者は,①(a)Bが中華人民共和国内の工場で製造し,(b)Aがこれを梱包し,(c)控訴人がこれを仕入れ,香港で輸出の手配をした本件発明1-1の実施品を,(d)被控訴人が控訴人から購入し,日本に輸入して販売することとし(本件販売形態),いずれの当事者も各自の担当以外の役割を行わないこと,②控訴人,A及びBが共有する本件特許発明につき特許を受ける権利(各持分3分の1)の各一部を被控訴人に無償で譲渡すること,③上記①に違反したときは,共同出願人たる地位(特許権成立後は,本件特許権の持分)が剥奪されることを内容とする合意(以下,「本件固定的役割分担合意」という。)をした。それにもかかわら - 5 -ず,被控訴人は,控訴人からの仕入れを突如中止し,遅くとも平成28年4月1日以降,株式会社モリト及び株式会社スリーランナー(以下,「本件製造会社」と総称する。)に対し,被告各商品を製造させ,これを販売した。これは,本件固定的役割分担合意の上記①の違反に当たるから,上記③により,遅くとも平成28年4月1日時点において,被控訴人は本件特許権の持分が剥奪され,無権利者となった。 (イ) 前記(ア)の被控訴人による被告各商品の製造・販売は,本件固定的役割分担合意に違反し,債務不履行に当たるから,控訴人は,自ら並びにA及びBを代理して,平成29年6月1日付け控訴理由書兼訴えの変更申立書により,この債務不履行を理由として,被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡契約を解除した。これにより,被控訴人は本件特許権の持分が遡及的に剥奪され,無権利者となった。 (ウ) 本件4者は,他の当事者の同意を得なければ,第三者に本件 明につき特許を受ける権利の譲渡契約を解除した。これにより,被控訴人は本件特許権の持分が遡及的に剥奪され,無権利者となった。 (ウ) 本件4者は,他の当事者の同意を得なければ,第三者に本件特許発明の実施を許諾できない旨を合意した(共同出願契約書〔甲5〕8条。以下,本件特許発明に係る共同出願契約を「本件共同出願契約」という。)。それにもかかわらず,被控訴人は,遅くとも平成28年4月1日以降,本件製造会社に対し,実施許諾を行った。これは,上記合意違反に当たるから,これにより,遅くとも平成28年4月1日時点において,被控訴人は本件特許権の持分が剥奪され,無権利者となった。 (エ) 本件4者は,事前の相談・承諾なしに,本件特許権に関連する特許を新たに取得したり,それに関わる製品を販売したりした場合,本件特許権を剥奪できる旨合意した(共同出願契約書〔甲5〕13条)。それにもかかわらず,被控訴人は,①発明の名称を「こぶ部を有する紐」とし,主に「弾性変形可能なこぶ部」を「間隔を置いて複数個備える紐」を内容とする特願2016-28561号を出願して,その実施品を販売するとともに,②こぶ付紐用の先端固定具の発明について,特許第6157766号の設定登録を受けて,その実施品を販売し,③本件特 - 6 -許権の実施品を製造販売している。これらは,いずれも上記合意違反に当たるから,これにより,上記①の出願日である平成28年2月18日時点において,被控訴人は本件特許権の持分が剥奪され,無権利者となった。 (オ) 本件4者は,被控訴人が本件4者の代表者として香港での本件特許発明の特許出願手続を誠実に行う旨を合意した(共同出願契約書〔甲5〕4条,12条)。本件特許発明の発明者は,控訴人ら3者であり,被控訴人代表者は発明者ではないか 件4者の代表者として香港での本件特許発明の特許出願手続を誠実に行う旨を合意した(共同出願契約書〔甲5〕4条,12条)。本件特許発明の発明者は,控訴人ら3者であり,被控訴人代表者は発明者ではないから,上記合意は,本件固定的役割分担合意を前提とするものであり,本件固定的役割分担合意に含まれる。それにもかかわらず,被控訴人は,控訴人ら3者への連絡,弁理士への指示等を怠った結果,平成26年5月22日時点において,香港での特許取得が不可能となった。これは,本件固定的役割分担合意の違反に当たるから,平成26年5月22日時点において,被控訴人は本件特許権の持分が剥奪され,無権利者となった。 (カ) 本件固定的役割分担合意は,本件共同出願契約を締結する上で重要な前提であり,そのことは,控訴人から被控訴人に対し明示されていたし,被控訴人にとっては自明であった。仮に本件固定的役割分担合意が認められないのであれば,控訴人ら3者は,控訴人ら3者から被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利を譲渡するという取引の要素について誤信していた。したがって,控訴人ら3者から被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡は,錯誤により無効である。 (キ) 控訴人ら3者は,被控訴人代表者の挙動により,本件固定的役割分担合意の存在を誤信したから,控訴人ら3者から被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡は,詐欺によるものである。控訴人は,自ら並びにA及びBを代理して,平成29年6月1日付け控訴理由書兼訴えの変更申立書により,この詐欺を理由として,被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡を取り消した。これにより,被控訴人は本件特許権の持分が遡及的に剥奪され,無権利者となった。 - 7 -イ本 欺を理由として,被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡を取り消した。これにより,被控訴人は本件特許権の持分が遡及的に剥奪され,無権利者となった。 - 7 -イ本件4者は,被控訴人が本件4者の代表者として香港での本件特許発明の特許出願手続を誠実に行う旨を合意した(共同出願契約書〔甲5〕4条,12条)。それにもかかわらず,被控訴人は,控訴人ら3者への連絡,弁理士への指示等を怠った結果,香港での特許取得が不可能となった。香港で本件4者が対応特許を取得していれば,控訴人ら3者は,香港地域の市場において,特許の存続期間満了までの間に,少なくとも1億円の利益を得られたから,上記債務不履行による損害は1億円を下らない。控訴人は,A及びBの被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。控訴人は,上記1億円のうち5000万円を請求する。 ウ仮に本件固定的役割分担合意が認められない場合,被控訴人には,信義則上,そのような合意がないことを控訴人ら3者に説明する義務があった。それにもかかわらず,被控訴人は,控訴人ら3者の誤信を漫然と放置するばかりか,むしろその誤信を利用して,本件共同出願契約を締結させ,また,控訴人ら3者に月30万個の生産のための巨額の追加投資をさせながら,突然,控訴人ら3者からの本件特許発明の実施品の調達を停止し,控訴人ら3者の損害を拡大させた。この説明義務違反の不法行為による損害は,2億円を下らない。控訴人は,A及びBの被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。控訴人は,上記2億円のうち5000万円を請求する。 エ控訴人は,本件訴訟の追行のために弁護士費用の出捐を余儀なくされており,被控訴人の不法行為又は債務不履行と相当因果関係のある 1~3)。控訴人は,上記2億円のうち5000万円を請求する。 エ控訴人は,本件訴訟の追行のために弁護士費用の出捐を余儀なくされており,被控訴人の不法行為又は債務不履行と相当因果関係のある損害は,2000万円を下らない。 (4) 被控訴人は,反訴として,控訴人に対し,特許法73条2項及び本件共同出願契約13条後段に基づき,控訴人が本件特許権の持分各2分の1をいずれも有していないことの確認,被控訴人に対する本件特許権の持分各6分の1の移転登録手続を求めた。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により認 - 8 -められる事実)(1) 当事者ア控訴人は,香港に在住し,「結ばない靴ひも」と称される靴ひも等の雑貨類を被控訴人に対して業として輸出していた者である。 イ被控訴人は,「結ばない靴ひも」等のスポーツ用品の販売等を業とする株式会社である。 (2) 本件特許権本件4者は,次の本件特許権を有している。 ア本件特許権1(甲2)特許番号特許第5079926号発明の名称チューブ状ひも本体を備えたひも出願日平成24年7月4日登録日平成24年9月7日なお,特許公報(甲2)の発明者欄には,控訴人ら3者及び被控訴人代表者が記載されている。 イ本件特許権2(甲4)特許番号特許第5392519号発明の名称チューブ状ひも本体を備えた固定ひも出願日平成24年8月8日(特願2012-150880の分割)登録日平成25年10月25日なお,特許公報(甲4)の発明者欄には,控訴人ら3者及び被控訴人代表者が記載されている。 (3) 本件特許1の特許請求の範囲本件特許1の特 割)登録日平成25年10月25日なお,特許公報(甲4)の発明者欄には,控訴人ら3者及び被控訴人代表者が記載されている。 (3) 本件特許1の特許請求の範囲本件特許1の特許請求の範囲請求項1の記載(本件発明1-1)を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A」などという。)。 - 9 -A 間隔をあけて繰返し配置され,自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体と,B ひも本体のチューブ状構造によって構成される中心の管部分に非伸縮性素材からなり,C こぶのコアを構成し,こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようこぶ対応部分にて丸められた中心ひもと,D を備えたひも。 (4) 共同出願契約書の記載ア 2013年(平成25年)4月15日付け共同出願契約書(甲6)は,中国語で記載され,本件4者の署名があるが,同契約書には,次の記載がある(日本語訳である乙51による。以下,後記イの契約書と区別する必要があるときは,「甲6契約書」という。)。 (ア) 頭書Twinscorporation(以下甲という),X(以下乙という),A(以下丙という),及びB(以下丁という)は,以下第1条に記載の発明(以下「本件発明」という)に係る特許を受ける権利(以下本件特許を受ける権利という)に基づいて,本件特許を受ける権利に基づいて得た特許権(以下「本件特許権」,本件特許を受ける権利とあわせて「本件各権利」という)に関する共同出願について以下のとおり協議した。 (イ) 第1条(発明・発明者の確認)甲,乙,丙及び丁は,下記枠線内にて特定される前記発明について,その とあわせて「本件各権利」という)に関する共同出願について以下のとおり協議した。 (イ) 第1条(発明・発明者の確認)甲,乙,丙及び丁は,下記枠線内にて特定される前記発明について,その内容及び発明者を確認し,かつ本契約の各種権利を共有する。 (以下,枠線内の記載)発明の名称:チューブ状型組立基体の紐発明の内容:間隔をあけて繰返し配置され,自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなる - 10 -チューブ状型組立基体の紐(チューブ状内部に中心紐を備えた紐と備えていない紐の2種類を含む)発明者 :C(英語表記:C)X(英語表記:X)A(英語表記:A)B(英語表記:B)上記計4名(ウ) 第4条(代表者の選定,協力)1,本件発明に係る特許出願手続き及び本件特許権の管理手続について,甲,乙,丙及び丁は,甲を代表者として選定する。 2,甲は,代表者として前記手続を誠実に履行することを承諾し,乙,丙及び丁は,甲に協力し,前記手続を履行する。 (エ) 第5条(代理人の選任)甲は,前条に定める手続をD国際特許事務所弁理士D氏に委託し,かつ前記人を代表して本件各項権利内容を取得し連絡する。 (オ) 第7条(本件発明の実施)甲,乙,丙及び丁は,本件発明の実施に対する協議の後,別途に定める。 (カ) 第8条(権利の譲渡等制限)甲,乙,丙及び丁は,他の全ての当事者の同意を得なければ,本件特許権を乙,丙及び丁が自ら経営する法人以外の第三者に譲渡し,或いは本件発明の実施を許諾してはならない。 (キ) 第12条(外国出願,分割出願,国内 他の全ての当事者の同意を得なければ,本件特許権を乙,丙及び丁が自ら経営する法人以外の第三者に譲渡し,或いは本件発明の実施を許諾してはならない。 (キ) 第12条(外国出願,分割出願,国内優先権出願)1,本件発明は,日本国内出願のほか,PCT条約に基づく国際出願,パリ条約に基づく外国出願,及び台湾への出願を行う。 2,PCT条約に基づく国際出願の指定国,及びパリ条約に基づく外国出願の出願 - 11 -国,本件発明の特許出願の分割出願,或いは特許法第41条に定める規定,優先権主張する出願について,甲,乙,丙及び丁は協議の後,別途に定める。 (ク) 第13条(違反行為)事前の協議・許可なく,本件の各権利(本件特許権)を新たに取得し,又は生産・販売行為を行った場合,本件の各権利は剥奪される。 (甲,乙,丙及び丁の全員が対象である)(ケ) 第14条(海外販売)1,日本市場を重視する前提において,日本以外の国で本商品(チューブ状型組立基体のヒモ)を販売する場合,甲,乙,丙及び丁は協議を行った後に,推進することができる。この際の価格は日本市場販売価格の80%以上に設定する。 2,靴に装着された本商品が,OEM形式で提供される場合,甲をあらゆる事務の窓口とする。 (コ) 第16条(協議)本契約に定めのない事項及び本契約に定める事項に関する疑義は,甲,乙,丙及び丁が協議した後,別途に定める。 イ共同出願契約書(甲5)は,日本語で記載され,作成日付及び本件4者の署名はないが,同契約書には,次の記載がある(以下,前記アの甲6契約書と区別する必要があるときは,「甲5契約書」という。)。 (ア) 頭書株式会社ツインズ(以下「甲」という。),X(以下「乙」という。),A(英語表 記載がある(以下,前記アの甲6契約書と区別する必要があるときは,「甲5契約書」という。)。 (ア) 頭書株式会社ツインズ(以下「甲」という。),X(以下「乙」という。),A(英語表記:A,以下「丙」という。),およびB(英語表記:B,以下「丁」という。)とは,以下の第1条に記載の発明(以下「本件発明」という。)に係る特許を受ける権利(以下「本件特許を受ける権利」という。)に基づく共同出願及び本件特許を受ける権利に基づいて得た特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許を受ける権利とあわせて「本件各権利」という。)に関して以下のとおり合意した。 (イ) 第1条(発明・発明者の確認) - 12 -甲,乙,丙及び丁は,下記枠線内にて特定される本件発明につき,その内容及び,本件発明の発明者が,以下のとおりであることを確認し,本件各権利を共有するものとする。 (以下,枠線内の記載)発明の名称:チューブ状ひも本体を備えたひも発明の内容:間隔をあけて繰返し配置され,自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体を備えたひも(チューブ状内部に中心ひもを備えたひもと備えていないひもの双方を含む)発明者 :C(英語表記:C)X(英語表記:X)A(英語表記:A)B(英語表記:B)上記計4名(ウ) 第4条(代表者の選定,協力) 1 本件発明に係る特許出願に関する手続および本件特許権の管理に関する手続については,甲,乙,丙及び丁は,甲を代表者として選定する。 2 甲は,代表者として前記手続を誠実に行うことを約し,乙,丙及び丁は,甲による前記手続に協力す る手続および本件特許権の管理に関する手続については,甲,乙,丙及び丁は,甲を代表者として選定する。 2 甲は,代表者として前記手続を誠実に行うことを約し,乙,丙及び丁は,甲による前記手続に協力する。 (エ) 第5条(代理人の選任)甲は,前条に定める手続を,D国際特許事務所弁理士D氏に委任し,同氏との間で本件各権利に関しなされる全ての連絡を代表する。 (オ) 第7条(本件発明の実施)甲,乙,丙及び丁は,本件発明の実施について協議の上,別途定める。 (カ) 第8条(権利の譲渡等制限) - 13 -甲,乙,丙及び丁は,他の全ての当事者の同意を得なければ,乙,丙及び丁のいずれかが主体となって事業を営む法人以外の第三者に本件各権利を譲渡し,又は本件発明の実施の許諾をすることができない。 (キ) 第12条(外国出願,分割出願,国内優先権出願) 1 本件発明については,日本国内出願のほか,PCT条約に基づく国際出願,パリ条約に基づく外国出願,および台湾への出願を行う。 2 PCT条約に基づく国際出願における指定国及びパリ条約に基づく外国出願における出願国,本件発明の特許出願に基づく分割出願,又は特許法第41条に定める優先権を主張した出願については,甲,乙,丙及び丁協議の上,別途定める。 (ク) 第13条(違反行為) 1 事前に相談承諾無しに,本件各権利(本件特許権)に関連する特許を新たに取得したり,それに関わる製品販売したりした場合本件各権利を剥奪できる。 (甲,乙,丙及び丁全員対象)(ケ) 第14条(海外販売) 1 日本市場を重んじて日本以外の他国で本商品(チューブ状ヒモ本体を備えたヒモ)する場合甲,乙,丙及び丁の合意の元進める事ができる。 その場合日本での市場売 (ケ) 第14条(海外販売) 1 日本市場を重んじて日本以外の他国で本商品(チューブ状ヒモ本体を備えたヒモ)する場合甲,乙,丙及び丁の合意の元進める事ができる。 その場合日本での市場売価の80%以上とする。 2 靴に装着する本商品をOEM供給する場合の窓口は全て甲を窓口とする。 (コ) 第16条(協議)本契約に定めのない事項及び本契約に定める事項に関する疑義については,甲,乙,丙及び丁協議の上,別途定める。 (5) 被告各商品の販売被控訴人は,平成28年4月以降,日本において,本件製造会社(同年11月末頃までは株式会社スリーランナー,同年12月頃からは株式会社モリト)に被告各商品を製造させ,被告各商品を独自に販売している。 (6) 技術的範囲の属否 - 14 -被告各商品は本件発明1-1の技術的範囲に属する(当事者間に争いがない。)。 (7) 債権譲渡控訴人ら3者は,平成29年5月10日,B及びAが控訴人に対し,B及びAが被控訴人に対して有する本件特許権に基づく損害賠償請求権など,本件特許権に関連してB及びAが被控訴人に対して有する金銭債権の一切を譲渡する旨合意した(甲63)。 B及びAは,平成29年7月3日,被控訴人に対し,上記債権譲渡を通知した(甲64の1~3)。 3 争点(1) 特許権侵害の不法行為の成否についてア本件固定的役割分担合意の有無イ本件固定的役割分担合意の解除の成否ウ権利の譲渡等制限違反の成否エ新特許等を取得しない義務の内容オ新特許等を取得しない義務違反の成否カ特許出願に関する手続を誠実に行う義務違反の成否キ錯誤無効の成否ク詐欺取消の成否ケ特許権 しない義務の内容オ新特許等を取得しない義務違反の成否カ特許出願に関する手続を誠実に行う義務違反の成否キ錯誤無効の成否ク詐欺取消の成否ケ特許権の移転登録の要否及び「別段の定」の有無コ 「別段の定」の解除の成否サ 「別段の定」違反の主張の可否シ通常実施権の有無ス過失の有無セ無効の抗弁の成否ソ控訴人は特許権を有しない旨の主張の成否(2) 香港での特許出願手続に係る債務不履行の成否について - 15 -(3) 説明義務違反の不法行為の成否(説明義務違反の有無)について(4) 損害の有無及び額(5) 特許権持分移転登録手続請求の可否(6) 差止請求の可否(7) 確認の利益の有無(8) 反訴請求の可否 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)ア(本件固定的役割分担合意の有無)についてア控訴人の主張(ア) 平成24年11月22日,本件4者間で,以下のとおり,本件固定的役割分担合意が成立した。 被控訴人代表者は,本件特許発明の発明者ではないから,①平成24年3月24日の被控訴人代表者から控訴人への「2者連名で申請しませんか?」とのメール(甲36の1)は,控訴人ら3者から特許を受ける権利の持分を譲り受けることの申込みであり,②同年5月5日の控訴人から被控訴人代表者への「特許を連盟で申請することは問題ないのですが,最終的には御社からの発注がなければ意味がありません」とのメール(甲37の2)は,特許を受ける権利の持分の譲渡に当たり,被控訴人から控訴人ら3者への発注が確実にされることを条件として提示したものである。そして,③同年8月11日の控訴人から りません」とのメール(甲37の2)は,特許を受ける権利の持分の譲渡に当たり,被控訴人から控訴人ら3者への発注が確実にされることを条件として提示したものである。そして,③同年8月11日の控訴人から被控訴人代表者への「おおよそのフォーキャストをいただけませんでしょうか?それに基づいて機械の数の調整をいたします。」とのメール(甲43の1)に対し,④同月20日の被控訴人代表者から控訴人への「ORDERFORECAST」とのメール(甲44の1)で返信したことにより,本件4者が本件販売形態における役割分担を担うことが合意された。さらに,⑤同年11月22日の控訴人から被控訴人代表者への「独断で使用したと判明した場合のペナルティが必要になると思います。例えば特許権剥奪など。」とのメール(甲46の1)に対し,⑥同日の被控訴人代表者から控訴人への - 16 -「同感です」とのメール(甲46の2)で返信したことにより,上記役割分担を固定的なものとし,これに反する行動を取ったときは本件特許権が剥奪されることについて,明確に合意された。その後,平成25年4月15日付けで,本件共同出願契約が締結された。 (イ) 後記(ウ)のとおり,被控訴人代表者は,本件特許発明の発明者ではない。控訴人らが被控訴人に対して本件特許発明につき特許を受ける権利の各一部を無償で譲渡したのは,本件特許発明の実施品につき本件販売形態において本件4者が対等に利益を得ることが定められていたことを反映したものである。 B及びAも,一定の利益を得られるという確実な期待がなければ,本件特許発明につき特許を受ける権利の一部を被控訴人に譲渡し,かつ,大きな金額(Bは80万米ドルという大きな投資を行っている。甲17の1・2)を本件特許発明の実施品に投資することはあり得ない。これを踏ま 許発明につき特許を受ける権利の一部を被控訴人に譲渡し,かつ,大きな金額(Bは80万米ドルという大きな投資を行っている。甲17の1・2)を本件特許発明の実施品に投資することはあり得ない。これを踏まえて作成された確認書(甲7の1・2)は,客観的な事実と整合し,信用できる。 本件共同出願契約締結後から平成28年3月までの間,数年間にわたり,本件販売形態が続いていたことも,本件固定的役割分担合意が存在していたことの証左である。 本件共同出願契約に係る契約書(以下,「本件共同出願契約書」という。)の甲5契約書13条は,当事者が他の当事者に「事前に相談・承諾無し」に,「本件各権利(本件特許権)に関連する特許を新たに取得したり,それに関わる製品(を)販売したり」することを禁止するにとどまらず,そのような行為を行ったときには「本件各権利を剥奪できる」という,極めて強い効果を規定することにより,新たな技術の進歩・発展について関係者が歩調を合わせ,将来にわたって固定的な取引関係を維持することを合意している。現行の製品については独占的な取引関係を合意するが,将来の製品についてはそのような拘束をかけないということは,一般に行われることであるが,上記13条は,将来においても固定的な取引関係を維持することを合意しているのであるから,現行商品である本件特許発明の実施品につい - 17 -ても,固定的な取引関係を維持すること,すなわち,本件固定的役割分担合意を規定するものと解される。同条は,本件4者を区別することなく一律に生産・販売を禁止しているが,本件固定的役割分担合意は,同条冒頭の「事前に相談・承諾」に該当するから,矛盾はない。 平成27年9月頃,控訴人が被控訴人に送付した「総代理店契約」の案文(甲51,5条3項,6条)も,同年10月15日,被 役割分担合意は,同条冒頭の「事前に相談・承諾」に該当するから,矛盾はない。 平成27年9月頃,控訴人が被控訴人に送付した「総代理店契約」の案文(甲51,5条3項,6条)も,同年10月15日,被控訴人が控訴人に送付した契約書の対案(甲52,53,11条)も,本件固定的役割分担合意が存在することを前提としている。 控訴人が,「COOKKNOT」という商品名で,「結ばない靴紐」の販売を開始したのは確かであるが,これは,本件固定的役割分担合意の存在と矛盾するものではない。被控訴人が,本件固定的役割分担合意に反し,控訴人ら3者に無断で「結ばない靴紐」を日本で製造・販売することにより,本件特許権の持分を剥奪され,本件固定的役割分担合意の実行は当面不可能となったのであるから,控訴人が日本において本件特許発明の実施品を自ら販売することが許されるのは当然である。 (ウ) 本件特許発明の発明者は,本件特許発明における特徴的部分である「内側の中心ひもが非弾性(非伸縮性)材料,外側が弾性(伸縮性)材料という構造」を発案し,その完成に創作的に寄与した者であるか否かによって認定すべきところ,上記構造を発案し,その完成に創作的に寄与した者は控訴人ら3者であり,被控訴人代表者は,上記完成に何ら創作的に寄与していないから,本件特許発明の発明者ではない。被控訴人指摘のメール(甲29の1,甲30,甲32の1,甲35,甲36の1,乙45)によっても,被控訴人代表者が本件特許発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことは認められない。 本件特許の出願代理人である特許事務所の担当者(E弁護士)の供述(乙46,証人E)は,具体的にいかにして被控訴人代表者が本件特許発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したかという点についての供述はほとんどない。また,特許公報 特許事務所の担当者(E弁護士)の供述(乙46,証人E)は,具体的にいかにして被控訴人代表者が本件特許発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したかという点についての供述はほとんどない。また,特許公報 - 18 -(甲2,4)の発明者欄の記載は,同欄に記載された者が発明者であることを事実上推定するものにすぎず,被控訴人代表者については,その推定は十分に覆滅させられている。 被控訴人は,本件共同出願契約書(甲6,乙51)1条で被控訴人代表者が発明者であることが確認されているところ,他の条項と同様に法的拘束力が認められるべきであると主張するが,控訴審における尋問後に主張されたものであるから,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。なお,発明者性は,事実の問題として,本件共同出願契約書第1条にかかわらず,認定されるべきであり,被控訴人代表者が発明者でないことは,上記のとおりである。 イ被控訴人の主張(ア) 本件4者間で,本件販売形態を数ある商流のうちの一つとする旨の合意はあったが,本件販売形態で定められた各自の担当以外の役割を自ら行わないという合意はなかった。また,被控訴人代表者は,本件特許発明の発明者であり,被控訴人が,控訴人ら3者から本件特許発明につき特許を受ける権利の各一部の無償譲渡を受けた事実はないし,本件販売形態を唯一の商流とする合意に違反したときに共同出願人たる地位が剥奪される旨の合意もなかった。 (イ) 本件固定的役割分担合意が記載された書証はない。控訴人は,本件共同出願契約の締結前に,本件販売形態以外の商流において製造販売した場合の違約罰を契約書中に加筆したい旨申し出ているのであるから(甲46の1),本件固定的役割分担合意があったのであれば,その合意を本件共同出願 約の締結前に,本件販売形態以外の商流において製造販売した場合の違約罰を契約書中に加筆したい旨申し出ているのであるから(甲46の1),本件固定的役割分担合意があったのであれば,その合意を本件共同出願契約書に記載するか,別の書面により合意するのが自然であるが,そのような記載や書面はない。また,本件固定的役割分担合意は,被控訴人にとって,控訴人ら3者の言い分に従わなければ実施品を確保できない事態に陥るという事業活動を大幅に制約するものであるから,そのような制約を回避できる条件を付し,これを書面に残すことなく合意することはあり得ない。 控訴人は,平成29年6月頃から,実施品を「COOLKNOT」という商品 - 19 -名で販売しているが(乙47~50),このような本件固定的役割分担合意と矛盾する控訴人の行動からも,そのような合意が存在しないことが示されている。 本件共同出願契約書13条は,本件固定的役割分担合意を規定したものではない。同契約書7条には,本件発明の実施は,協議により本件共同出願契約とは別途定める旨の規定があるから,本件共同出願契約には,製造,販売等についての何らかの役割分担に関する合意は含まれないことが明らかである。また,同契約書8条からは,被控訴人だけでなく,控訴人ら3者のいずれも製造・販売することが可能であることが理解できるから,これもまた,本件共同出願契約には,製造,販売等についての何らかの役割分担に関する合意が含まれないことを裏付けている。さらに,本件共同出願契約書13条は,本件4者を区別することなく一律に生産・販売を禁止しており,被控訴人が日本に輸入して販売し,Bが靴紐を生産することを含む本件固定的役割分担合意と矛盾している。加えて,本件特許権が存在すること及び本件固定的役割分担合意によると,被控訴人は控 を禁止しており,被控訴人が日本に輸入して販売し,Bが靴紐を生産することを含む本件固定的役割分担合意と矛盾している。加えて,本件特許権が存在すること及び本件固定的役割分担合意によると,被控訴人は控訴人以外の第三者から靴紐を購入することができず,靴紐の供給量や供給価格については全て独占的製造権者でありB又はその流通過程にいるA及び控訴人の言い分に従うことになるから,少なくとも合意期間中の靴紐の販売単価又はその決定方法が契約の要素となるべきであるが,本件共同出願契約には,靴紐の購入単価又はその決定方法についての条項はないし,被控訴人が控訴人から靴紐を購入しなければならないことを規定する条項すら存在しない。 (ウ) 本件特許権の特許公報の発明者欄には,被控訴人代表者が控訴人ら3者とともに記載されており(甲2,4),控訴人は,出願前にこれを訂正する機会があったにもかかわらず異議を述べずにこれを承認したし(甲38の1),原審において被控訴人代表者が発明者であったことを争っていなかった。また,本件共同出願契約書(甲6,乙51)の第1条でも,被控訴人代表者が発明者であることが確認されているから,他の条項と同様に法的拘束力が認められるべきである。 結ばない靴紐の開発経緯においては,一貫して,被控訴人代表者が自ら開発主体 - 20 -として特許回避やその対策を検討したり,被控訴人代表者の指示の下,控訴人が試作を行う関係にあり(甲29の1,甲30,甲32の1,甲36の1,乙45),発明者たるべき着想をしていた蓋然性が高いのは,受託者である控訴人ではなく,委託者である被控訴人代表者である。現に,被控訴人代表者は,本件特許の出願前に,本件特許発明の本質(作用効果)を具体的に理解していた(甲35)。 本件特許の出願代理人である特許事務所の担 はなく,委託者である被控訴人代表者である。現に,被控訴人代表者は,本件特許の出願前に,本件特許発明の本質(作用効果)を具体的に理解していた(甲35)。 本件特許の出願代理人である特許事務所の担当者(E弁護士)も被控訴人代表者が発明者であると認識していた(甲36の1,乙46)。 (2) 争点(1)イ(本件固定的役割分担合意の解除の成否)についてア被控訴人の主張(ア) 仮に本件固定的役割分担合意が存在したとしても,被控訴人が実施品の製造を自社において行うに至ったのは,控訴人による不当な値上げがされたこと,従来より実施品の品質不良が多く見られたこと等に基づくものであり,被控訴人は,控訴人らに対し,不当な値上げ要求を受け入れることはできず,被控訴人自身において実施品を製造する旨を通告しているから,この通告時点又はこの通告から相当期間経過後において,本件固定的役割分担合意は解除された。 (イ) 控訴人は,平成27年1月23日付けメール(乙78)に添付したエクセルファイルにおいて,「希望としましては1月30日までに決定していただけますようお願いいたします。それ以前にご回答頂けない場合は2番目の各個人で販売していくことになります。」と記載したが,平成27年1月30日までに控訴人提案の四つの選択肢のいずれを選択するかについて,本件4者間で合意は成立しなかった。したがって,本件固定的役割分担合意は,平成27年1月30日に解除された。 (ウ) 控訴人は,平成27年9月7日付けメール(甲57の4)において,「現状は複雑ではなく,4者が団結して特許の優位性を損なうことなく世界に向けて販売していくか,もしくは4者で独立採算型,製造販売をして価格,販売力で競争するかの2つの選択肢だけではないでしょうか?皆さんが後 複雑ではなく,4者が団結して特許の優位性を損なうことなく世界に向けて販売していくか,もしくは4者で独立採算型,製造販売をして価格,販売力で競争するかの2つの選択肢だけではないでしょうか?皆さんが後者を選択される場合 - 21 -は大変遺憾ですが私に異論はございません。」と記載して,被控訴人の日本への生産移管について同意し,本件固定的役割分担合意を解除することに合意した。 (エ) 控訴人は,平成27年10月15日付けメール(乙89)において,「これでは商売の旨味はかなり減りますが,御社が利益厳しく日本で安く生産,販売されるというのであればこれは仕方がありません。」と記載して,被控訴人による日本での生産に最終的に同意し,本件固定的役割分担合意を解除することに合意した。 イ控訴人の主張(ア) 控訴人ら3者が一定の値上げ又は最低発注数量の確約を求めて被控訴人と交渉を行ったのは,被控訴人代表者が無謀な見通しを根拠として,控訴人ら3者に対し本件特許発明の実施品の生産量を月5万本からその10倍である月50万本にまで増産するように求め,控訴人の反対により月30万本までの増産にとどめることになったにもかかわらず,被控訴人による発注量は月30万本を大きく下回るものにしかならなかったという経緯によるものであり,被控訴人代表者の無謀な見通しの結果に対応するためにやむを得ずにされた控訴人ら三者による正当な要望を理由として,被控訴人から本件固定的役割分担合意を解除することはできない。 急激かつ大幅な値上げがあったときは本件固定的役割分担合意を解除できる旨の条項は,本件共同出願契約書には規定されていないし,本件共同出願契約の交渉過程においてもそのような議論がされたことはない。 (イ) 被控訴人が主張する平成27年1月2 担合意を解除できる旨の条項は,本件共同出願契約書には規定されていないし,本件共同出願契約の交渉過程においてもそのような議論がされたことはない。 (イ) 被控訴人が主張する平成27年1月23日付けメール(乙78)に添付したエクセルファイルは,日本国外の販売に関する資料であるから,本件固定的役割分担合意とは無関係である。控訴人は,被控訴人の日本生産に同意したことはないから,解除はされていない。なお,被控訴人の指摘部分は,B及びAによって作成された要望書を控訴人が日本語訳したものにすぎず,控訴人の意思を表明したものでもない。 (ウ) 被控訴人が主張する平成27年9月7日付けメール(甲57の4)に - 22 -は,「御社訪問時に詳しく社長のお考えをお聞かせください。それを元に私も決断させていただきます所存です。」と記載されているとおり,控訴人は協議の上で最終的な結論を出すつもりであったのであるから,本件固定的役割分担合意が合意解除された事実はない。 (エ) 被控訴人が主張する平成27年10月15日付けメール(乙89)の記載は,いずれも本件4者の合意によって最終的に分担協業関係を解体してそれぞれが独自に事業を行っていくことが確定した場合の見通しを述べたにすぎず,本件固定的役割分担合意の解除に合意したものではない。 (3) 争点(1)ウ(権利の譲渡等制限違反の成否)についてア控訴人の主張本件4者は,他の当事者の同意を得なければ,第三者に本件特許発明の実施を許諾できない旨を合意した(共同出願契約書〔甲5〕8条)。 それにもかかわらず,被控訴人は,本件製造会社に被告各商品の製造をさせており,これは,本件特許発明の実施許諾に当たるから,被控訴人は,上記合意に違反した。 イ被控訴人の主張 〕8条)。 それにもかかわらず,被控訴人は,本件製造会社に被告各商品の製造をさせており,これは,本件特許発明の実施許諾に当たるから,被控訴人は,上記合意に違反した。 イ被控訴人の主張本件製造会社は,被控訴人の指揮監督下において実施品を製造した上で,製造した実施品の全量を被控訴人に納入しており,製造に係る対価(工賃)を被控訴人から受けている(乙42,43)。 このように,被控訴人は,本件製造会社に対し,被控訴人の一機関として実施品の製造をさせているにすぎず,被控訴人は,本件製造会社に対し,本件発明1-1の実施許諾を行っていない。 (4) 争点(1)エ(新特許等を取得しない義務の内容)についてア控訴人の主張(ア) 本件4者は,事前の相談・承諾なしに,本件特許権に関連する特許を新たに取得したり,それに関わる製品を販売したりした場合,本件特許権を剥奪で - 23 -きる旨合意した(共同出願契約書〔甲5〕13条)。 その趣旨が,本件固定的役割分担合意を踏まえ,契約各当事者による身勝手な利益追及を禁じる点にあることからすると,特許の取得を目指して出願を行った時点で,上記合意違反を構成する。 (イ) 本件共同出願契約は,A及びBから全権委任を受けていた控訴人と,被控訴人との間で,日本語版をもって交渉が行われ,甲5契約書の内容が固まった後に,被控訴人側において甲6契約書が作成されたものであるから,優先されるのは甲5契約書である。 甲6契約書13条によると,取得が禁止されているのは本件特許発明と同一の発明にかかる特許権であることになるが,既に本件特許として特許が成立している発明と同一の発明について特許権の取得を禁止することに全く意味はなく,不合理極まりない規定となってしまう。 と同一の発明にかかる特許権であることになるが,既に本件特許として特許が成立している発明と同一の発明について特許権の取得を禁止することに全く意味はなく,不合理極まりない規定となってしまう。 (ウ) 仮に甲6契約書を前提とすると,13条は,事前に本件4者全員の協議・許可なしに,①「本件の各権力(本件特許権)を新たに取得」することと,②「生産・販売行為を行」うことが禁止されていることになる。 (エ) 被控訴人は,控訴人の主張によると,本件共同出願契約13条は,不公正な取引方法に該当し,独占禁止法に違反するものとして,公序良俗に反し無効となってしまうから,適切でないと主張するが,控訴審における尋問後に主張されたものであるから,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。本件共同出願契約13条は,被控訴人のみならず控訴人ら3者をも制約する双方向のものであり,むしろ本件特許発明を自ら創作する技術・能力を有する控訴人ら3者にとっても不利なものとなっているから,不公正な取引方法には該当しない。 (オ) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段は,同契約書14条違反の効果を定めたものと理解できるなどと主張するが,何らの合理的根拠を伴わない解釈である。 - 24 -イ被控訴人の主張(ア) 本件共同出願契約は,本件4者が署名した中国語による共同出願契約書(甲6契約書)により成立したものであり,本件4者の署名がない日本語による共同出願契約書(甲5契約書)は,本件4者の合意内容を示すものではない。 (イ) 甲6契約書13条により,取得が禁止されているのは,本件特許発明と同一の発明に係る特許権であり,本件特許発明の改良,関連等の特許権は対象となっていない。 仮に,甲6 ではない。 (イ) 甲6契約書13条により,取得が禁止されているのは,本件特許発明と同一の発明に係る特許権であり,本件特許発明の改良,関連等の特許権は対象となっていない。 仮に,甲6契約書13条の「本件各権利(本件特許権)を新たに取得」との文言を字義通りに解釈しないとしても,上記文言に加え,その違反の効果が特許権剥奪という極めて大きなものであることを勘案すると,その解釈は,共有特許権者のビジネスを不可能にする程度に,後続発明と本件特許発明が類似しており,本件各権利(本件特許権)と実質的に同一と言い得る場合に限定して解釈されるべきである。 (ウ) 控訴人主張のように,控訴人ら3者の本件特許権の持分の一部を被控訴人に譲渡し,本件特許権に関連する特許を新たに取得した場合には,本件特許権を剥奪できるという合意であるとすると,全体として,控訴人が被控訴人に対し,関連特許を取得しないとの解除条件付きで本件特許発明に関し日本国内でのライセンスを与えたケースと同視することができるが,公正取引委員会の公表する「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(乙76)によると,ライセンサーがライセンシーに対し,ライセンシーが開発した改良技術について,ライセンサー又はライセンサーの指定する事業者にその権利を帰属させる義務を負わせ,又は独占的にライセンスさせる義務を負わせることは,ライセンシーの研究開発意欲を損なうものであり,原則として不公正な取引方法(一般指定12項)に該当するものとされている。このように,控訴人主張では,本件共同出願契約13条は,不公正な取引方法に該当し,独占禁止法に違反するものとして,公序良俗に反し無効となってしまうから,契約は無効とならないように解釈すべきであることからしても適切で - 25 -ない。 ,不公正な取引方法に該当し,独占禁止法に違反するものとして,公序良俗に反し無効となってしまうから,契約は無効とならないように解釈すべきであることからしても適切で - 25 -ない。 (エ) 本件共同出願契約書13条の前段と後段を分離して読むと,何についての生産・販売行為が規定されているのか不明であるし,本件4者のうち一人でも協議・許可に応じない者が存在すると,それだけで本件4者が全て生産・販売することができないことになるから,同条後段は,前段と合わせて読むべきである。そして,同条前段は,本件特許権と「実質的同一」の範囲について特許権を新たに取得することを禁止しているから,同条後段は,実質的同一の範囲内で新たに取得された特許権について,その実施品の生産・販売を禁止しているものと理解できるのであり,既に取得されている本件特許権の実施品を販売することは同条後段に違反しない。 (オ) 本件共同出願契約は,本件発明を日本だけでなく海外でも出願することを前提にしているところ,本件共同出願契約書12条は,本件発明について,外国出願を行うことを規定しており,同契約書14条1項は,海外で結ばない靴紐を販売する場合の条件について規定しているから,同契約書13条も,海外の特許について規定したものと理解できる。そして,同条前段は,本件共同出願契約が締結された時点で未だ海外特許が出願されていない国において,本件4者のいずれかが単独で特許を出願し,取得することを禁じたものと理解できるから,同条後段についても,同様に,日本以外の国での販売行為を定めた同契約書14条に違反した場合の効果を規定した条項であると理解できる。同契約書13条後段を日本での生産・販売行為について規定したものであるとすると,本件共同出願契約締結当時,被控訴人は既に日本 めた同契約書14条に違反した場合の効果を規定した条項であると理解できる。同契約書13条後段を日本での生産・販売行為について規定したものであるとすると,本件共同出願契約締結当時,被控訴人は既に日本において販売していたのであるから,販売中の靴紐について日本での販売中止を前提に本件共同出願契約を締結したこととなり,著しく不合理である。 (5) 争点(1)オ(新特許等を取得しない義務違反の成否)についてア控訴人の主張(ア) 被控訴人は,特願2016-28561号を出願しており(甲56。 - 26 -以下,「別件特許出願①」という。),これは,発明の名称を「こぶ部を有する紐」とし,主に「弾性変形可能なこぶ部」を「間隔を置いて複数個備える紐」を内容とするものであるから,本件特許権のいずれにも関連する特許に該当する(甲88)。 また,被控訴人は,「キャタピーアスリート」を販売している(甲89)。これは,別件特許出願①の実施品であるから,「本件各権利(本件特許権)に関連する特許を・・・,それに関わる製品販売したりした場合」に該当する。 (イ) 被控訴人は,特願2017-10234号を出願し,平成29年6月16日付けで特許第6157766号として設定登録を受けた(甲67。以下,「別件特許②」といい,この特許に係る発明を「別件特許②発明」という。)。別件特許②発明は,「結ばない靴紐」の使用時の課題を解決することを目的として発明されたものであり,その課題解決をその効果とするものであるから,発明の用途,目的及び効果において,本件特許権と密接に関連している。 また,被控訴人は,「キャタピーアスリート」の付属品として「キャタピーフック」を販売している(甲89)。これは,別件特許②発明の実施品であるから,「本件各権 て,本件特許権と密接に関連している。 また,被控訴人は,「キャタピーアスリート」の付属品として「キャタピーフック」を販売している(甲89)。これは,別件特許②発明の実施品であるから,「本件各権利(本件特許権)に関連する特許を・・・,それに関わる製品販売したりした場合」に該当する。 (ウ)a 被控訴人は,控訴人ら3者の承諾を得ずに,日本において本件特許権の実施品を製造販売している。これは,甲6契約書13条に違反する。 b 被控訴人は,控訴人が,現在,日本において,被控訴人との協議・許可なしに,COOLKNOTという商品名又はブランド名により本件特許権の実施品を販売しているから,この控訴人の販売及び被控訴人の製造販売のいずれも,本件共同出願契約書13条には違反しないとするのが,契約当事者の合理的意思であると主張するが,被控訴人が本件共同出願契約書13条に違反して,本件特許権の持分を剥奪されたことにより,本件販売形態による本件特許発明の実施品の販売は当面不可能となったのであるから,控訴人が本件特許発明の実施品を自ら販売す - 27 -ることが許されるのは当然であり,被控訴人の主張は理由がない。 c 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段の内容は,同16条の協議を経なければ空文であり,これを法的請求の根拠とすることはできないなどと主張するが,同17条が「本契約に関する紛争」が生じた場合に備えて準拠法及び管轄合意について定めていることに照らしても,同16条は,適切な手続によって争いを解決するために努力するという程度のものにすぎず,本件共同出願契約に関する紛争の裁判手続による解決を排除するもの,換言すると,当事者が相互に訴権を放棄したものと解釈することはできない。 d 被控訴人は,控訴人が,購入 度のものにすぎず,本件共同出願契約に関する紛争の裁判手続による解決を排除するもの,換言すると,当事者が相互に訴権を放棄したものと解釈することはできない。 d 被控訴人は,控訴人が,購入数量保証要求や法外な値上げ要求,不良品の混入等の行為によって,被控訴人をして独自生産に切り替えざるを得ない事情を作出したなどと主張するが,控訴人が価格の改定を求めたのは,被控訴人による増産要求と控訴人ら3者における設備の増強,その後の発注量の下落に起因するものである(甲17の1・2,甲18,19,50,85,86)。また,商品に不良品が混じっていたことがあったとしても,特に過大なものではなく,控訴人ら3者に無断で独自生産を行ってよい理由にはならない。 (エ) 被控訴人は,キャタピーアスリート及びキャタピーフックの販売が本件共同出願契約書13条に該当する旨の主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきであると主張するが,控訴人は,平成30年5月に被控訴人によるキャタピーアスリート及びキャタピーフックの販売を覚知した後,速やかに上記主張を行っており,訴訟の進行を遅延させるものではないから,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 イ被控訴人の主張(ア) 別件特許出願①は,位置によってこぶの径を変更したことに技術的特徴のある結ばない靴ひもに係る発明であり,実施品の外観すら全く異なっているから,本件特許発明とは同一の発明ではないし,実質的に同一の発明ということもできない。このように,別件特許出願①は,コアを非伸縮性とし,外側をゴム製とす - 28 -るという控訴人主張に係る本件特許発明の技術的特徴とは無関係の構成要件からなる発明であるから,本件特許発明と関連があるということもできない。 さらに,別件特許出願①は ム製とす - 28 -るという控訴人主張に係る本件特許発明の技術的特徴とは無関係の構成要件からなる発明であるから,本件特許発明と関連があるということもできない。 さらに,別件特許出願①は,設定登録される前に取下処分となっているから(甲84),被控訴人は別件特許出願①に係る特許を取得していない。 したがって,別件特許出願①は,新特許等を取得しない義務に違反しない。 (イ) 別件特許②発明は,結ばない靴紐の先端固定具に係る発明であり,結ばない靴紐ですらないのであるから,本件特許発明とは同一の発明ではないし,実質的に同一の発明でないことは明らかである。このように,別件特許②発明は,コアを非伸縮性とし,外側をゴム製とするという控訴人主張に係る本件特許発明の技術的特徴とは無関係の構成要件からなる発明であるから,本件特許発明と関連があるということもできない。 したがって,別件特許②の設定登録を受けたことは,新特許等を取得しない義務に違反しない。 (ウ)a 控訴人は,現在,日本において,被控訴人との協議・許可なしに,COOLKNOTという商品名又はブランド名により本件特許権の実施品を販売しているから,この控訴人の販売及び被控訴人の製造販売のいずれも,本件共同出願契約書13条には違反しないとするのが,契約当事者の合理的意思である。 b 本件共同出願契約書13条が,これに違反した者のうち一当事者のみの本件特許権の持分を剥奪するという前提を含むとすると,被控訴人の製造販売は,控訴人との間で十分な協議を行ったことや控訴人による不当な値上げ,品質不良に起因すること等の利益衡量から,本件特許権の持分を剥奪されるのは控訴人であり,被控訴人ではない。 c 本件共同出願契約13条の「事前の協議・許可なく」は,「事 よる不当な値上げ,品質不良に起因すること等の利益衡量から,本件特許権の持分を剥奪されるのは控訴人であり,被控訴人ではない。 c 本件共同出願契約13条の「事前の協議・許可なく」は,「事前の協議又は許可なく」と解釈すべきである。なぜなら,そうでなければ,同条の「生産・販売行為を行った場合」を「生産及び販売行為を行った場合」と不合理な解釈をすることになってしまうからである。しかるところ,被控訴人は,控訴人とは価 - 29 -格交渉を通じて十分な協議を経た。 d 本件共同出願契約書13条の「事前の協議・許可なく」を「事前の協議及び許可なく」と解釈すると,同条の「生産・販売行為を行った場合」も「生産及び販売行為を行った場合」と解釈すべきところ,被控訴人は,本件製造会社に製造を委託しており,「生産」を行っていない。 e 本件共同出願契約書16条は,「本契約に定めのない事項及び本契約に定める事項に関する疑義は,甲,乙,丙及び丁が協議した後,別途に定める」と規定するところ,同契約書13条後段の解釈について控訴人と被控訴人との間で「疑義」が生じているのであるから,同契約書13条後段の内容は,同契約書16条の協議を経なければ空文であり,これを法的請求の根拠とすることはできない。 f 控訴人は,購入数量保証要求や法外な値上げ要求(乙15,21,乙22の1・2,乙23の1・2,乙60,被控訴人代表者),不良品の混入(乙15,32,60等)等の行為によって,被控訴人をして独自生産に切り替えざるを得ない事情を作出したのであり,被控訴人の債務不履行は,控訴人の行為によって誘導されたものである。このような状況において,控訴人が被控訴人の債務不履行や,その効果である権利剥奪効を主張することは,信義則に反し,許されない であり,被控訴人の債務不履行は,控訴人の行為によって誘導されたものである。このような状況において,控訴人が被控訴人の債務不履行や,その効果である権利剥奪効を主張することは,信義則に反し,許されない。 被告各商品は,被控訴人によって日本市場に導入され,被控訴人はこれを業として多くの顧客に販売している。このような現在も継続している事業が上記のような紛争の相手方の信義則違反絡みの行為によって差し止められ,又は損害賠償責任を被るという結論は,当事者間の利益衡量にも反する上,法的な正当性なく,顧客や市場(公益)をも害する結果となる。 また,控訴人の上記誘導行為は,被控訴人の債務不履行を許容する意思表示であったということができる。 なお,控訴人ら3者は,被控訴人の指示によることなく,日本以外の各国販売をも念頭に置いて自らの経営判断として設備の増強に踏み切ったものである。 g 控訴人は,前記(2)ア(ウ)のとおり,平成27年9月7日付けメール - 30 -(甲57の4)において,被控訴人の日本への生産移管について同意した。 (エ) 控訴人は,平成30年7月25日付け控訴人第12準備書面兼訴えの変更申立書において,キャタピーアスリート及びキャタピーフックの販売は,「本件各権利(本件特許権)に関連する特許を・・・,それに関わる製品販売したりした場合」に該当すると主張するに至ったが,キャタピーアスリートは平成29年10月,キャタピーフックは同年2月から被控訴人において販売していた製品であり,控訴人はこのことを十分に了解していたものであるから,上記主張は故意又は重大な過失により時機に後れて提出したものであり,次回期日に侵害論の心証開示を控えた段階での提出は訴訟の完結を遅延させることも明らかであるから,時機に後れた攻撃防御方法( るから,上記主張は故意又は重大な過失により時機に後れて提出したものであり,次回期日に侵害論の心証開示を控えた段階での提出は訴訟の完結を遅延させることも明らかであるから,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 また,キャタピーアスリートは,別件特許出願①の実施品と,キャタピーフックは,別件特許②発明の実施品と主張されているから,前記(ア),(イ)と同様に,本件共同出願契約書13条後段に該当しない。 さらに,前記(4)イ(オ)のとおり,本件共同出願契約書13条後段は,海外において同契約書14条に違反して生産・販売した場合の効果を定めたものであるから,キャタピーアスリート及びキャタピーフックの日本での販売は同契約書14条に違反せず,同契約書13条後段に該当しない。 (6) 争点(1)カ(特許出願に関する手続を誠実に行う義務違反の成否)についてア控訴人の主張(ア) 本件4者は,被控訴人が本件4者の代表者として香港での本件特許発明の特許出願手続を誠実に行う旨を合意した(共同出願契約書〔甲5〕4条,12条)。本件特許発明の発明者は,控訴人ら3者であり,被控訴人代表者は発明者ではないから,上記合意は,本件固定的役割分担合意を前提とするものであり,本件固定的役割分担合意に含まれる。 被控訴人は,D国際特許事務所(以下,「本件特許事務所」という。)から甲15 - 31 -書面を受領したにもかかわらず,控訴人ら3者に対し,香港での特許出願の要否を問い合わせ,その結果を本件特許事務所に対し指示することを怠った。その結果,香港での特許取得が不可能となった。 これは,本件固定的役割分担合意の違反に当たる。 (イ) 香港は,一国二制度のもと,香港特別行政区政府による高度な自治が 示することを怠った。その結果,香港での特許取得が不可能となった。 これは,本件固定的役割分担合意の違反に当たる。 (イ) 香港は,一国二制度のもと,香港特別行政区政府による高度な自治が保証されているものの,あくまで中華人民共和国の一部である。そして,中華人民共和国はPCT条約加盟国であり,香港への特許出願においては,PCT条約による国際出願を中国に国内移行させ,さらに香港特許庁に対し記録請求手続を行うというルートが認められている。このように,香港においても,「PCT条約に基づく国際出願」は可能であるから,本件共同出願契約書12条は,香港における特許出願を行うことも,本件4者の合意として規定している。 香港は,控訴人の営業拠点であり,香港を本件特許発明に関する出願対象国から外すことは考えられないし,香港を外すという議論が本件4者間でされたこともない。 本件特許の出願を担当した本件特許事務所は,被控訴人に対し,甲15書面で,香港への権利化手続を希望するか否かの問合せを行っているし,本件特許事務所が発行した見積書(甲87)において被控訴人のみが名宛人とされていることからも,本件4者の間では,香港における特許出願に係る手続は,全て被控訴人が窓口となって手続を行うこととされていた。 (ウ) 被控訴人は,本件特許発明につき,香港において,本件特許1と本件特許2の双方をカバーする特許出願が進行している(乙44の1・2)と主張するが,上記特許出願である「芯なし」(チューブ状ひも本体の内部に中心ひもを備えていない紐をいう。以下同じ。)の特許出願は,「芯あり」(チューブ状ひも本体の内部に中心ひもを備えた紐をいう。以下同じ。)の特許出願から分割されたものであるから,「芯なし」である上記特許出願のみが登録された場合に,これに「芯あ )の特許出願は,「芯あり」(チューブ状ひも本体の内部に中心ひもを備えた紐をいう。以下同じ。)の特許出願から分割されたものであるから,「芯なし」である上記特許出願のみが登録された場合に,これに「芯あり」を含むと解釈されるとは考えにくい。 - 32 -また,中国で登録された「芯あり」特許(甲72,73)に比べ,「芯なし」である上記特許出願(甲74の1)の権利範囲は,「伸縮性素材は,ゴム状素材と非伸縮性の通常素材との編み込みによって構成され」という限定があるなど,明らかに狭いから,「芯なし」である上記特許出願により,香港での登録に失敗した「芯あり」特許の全体がカバーされるものではない。 イ被控訴人の主張(ア) 前記のとおり,本件固定的役割分担合意が存在しないから,被控訴人が本件特許発明に関する手続を誠実に行うことが本件固定的役割分担合意に含まれることはあり得ない。 (イ) 被控訴人は,本件共同出願契約書により,香港での特許出願手続を4者の代表者として誠実に行う義務を負っていない。本件共同出願契約書12条の「PCT条約に基づく国際出願」とは,文字通り,PCT条約に基づく国際出願を指すものであり,その出願によってみなし全指定となった国についての取下げや,取下げを行わなかった国についての国内移行手続,更には中国についての国内移行手続後に行われ得る香港における記録請求手続は含まない。同条2項には,PCT条約に基づく国際出願の指定国については,協議により定めることが規定されており,本件共同出願契約書から,香港に出願する義務を導くことはできない。 (ウ) 被控訴人は,甲15書面を本件特許事務所から受け取っていない。 (エ) 本件特許発明につき,香港において,本件特許1と本件特許2の双方をカバーす 義務を導くことはできない。 (ウ) 被控訴人は,甲15書面を本件特許事務所から受け取っていない。 (エ) 本件特許発明につき,香港において,本件特許1と本件特許2の双方をカバーする特許出願が進行している(乙44の1・2)。 (7) 争点(1)キ(錯誤無効の成否)についてア控訴人の主張本件固定的役割分担合意は,本件共同出願契約を締結する上で重要な前提であり,そのことは,控訴人から被控訴人に対し明示されていたし,被控訴人にとって自明であった。仮に本件固定的役割分担合意が認められないのであれば,控訴人ら3者は,控訴人ら3者から被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利 - 33 -を譲渡するという取引の要素について誤信していた。 したがって,控訴人ら3者から被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡は,錯誤により無効である。 イ被控訴人の主張控訴人は,本件4者間において,本件販売形態を唯一の商流とすることの合意をしようと試みていたが(甲46の1),それがかなわずに本件共同出願契約が締結されたのであって(甲6,乙52),控訴人は,上記合意が成立しなかったことを十分に認識していたから,控訴人に錯誤は生じていない。 また,前記(1)イ(ウ)のとおり,被控訴人代表者は,本件特許発明の発明者であるから,控訴人の主張は前提において失当である。 本件固定的役割分担合意が取引の要素であることも立証されていない。 (8) 争点(1)ク(詐欺取消の成否)についてア控訴人の主張控訴人ら3者は,被控訴人代表者の言動により,本件固定的役割分担合意の存在を誤信したから,控訴人ら3者から被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡は,詐欺によるものであ 人の主張控訴人ら3者は,被控訴人代表者の言動により,本件固定的役割分担合意の存在を誤信したから,控訴人ら3者から被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡は,詐欺によるものである。 控訴人は,自ら並びにA及びBを代理して,平成29年6月1日付け控訴理由書兼訴えの変更申立書により,この詐欺を理由として,被控訴人に対する本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡を取り消すとの意思表示をした。 イ被控訴人の主張控訴人は,本件4者間において,本件販売形態を唯一の商流とすることの合意をしようと試みていたが(甲46の1),それがかなわずに本件共同出願契約が締結されたのであって(甲6,乙52),控訴人は,上記合意が成立しなかったことを十分に認識していたから,控訴人が,被控訴人の挙動により上記合意が存在すると誤信した事実はない。 また,前記(1)イ(ウ)のとおり,被控訴人代表者は,本件特許発明の発明者であ - 34 -るから,控訴人の主張は前提において失当である。 (9) 争点(1)ケ(特許権の移転登録の要否及び「別段の定」の有無)についてア被控訴人の主張(ア) 被控訴人は,本件特許の登録原簿に記載された特許権者であるが(甲3),特許権の移転は,登録しなければその効力を生じない(特許法98条1項1号)。そして,特許権の共有権者は,自由に特許発明をすることができるから(同法73条2項),本件特許権の侵害を理由とする請求は,いずれも理由がない。 (イ) 控訴人は,本件固定的役割分担合意の内容から「4当事者間の合意に違反したときは,共同出願人たる地位が剥奪される」という部分を除いた定めが「別段の定」として合意されたと主張するが,前記のとおり,本件固定的役割分担合意を含め,製品の の内容から「4当事者間の合意に違反したときは,共同出願人たる地位が剥奪される」という部分を除いた定めが「別段の定」として合意されたと主張するが,前記のとおり,本件固定的役割分担合意を含め,製品の製造や販売の役割分担に関する何らかの合意が,本件4者間で成立していたことはないから,「別段の定」は存在しない。 また,前記(1)イ(イ)のとおり,本件共同出願契約書7条には,本件発明の実施は,協議により別途定める旨の規定があるから,本件共同出願契約には,製造,販売等についての何らかの役割分担に関する合意は含まれないことが明らかである。 したがって,同契約書13条後段は,控訴人が主張する「別段の定」を規定したものではない。 イ控訴人の主張(ア) 被控訴人は,特許法98条1項1号を根拠として,本件特許権の侵害を理由とする請求は理由がないと主張するが,控訴審における尋問後に主張されたものであるから,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 (イ) 特許法98条1項1号は,通常の特許権の移転について登録を効力発生要件としたものであって,本件のように,移転が解除されたことにより特許権が譲受人から譲渡人に対し復帰的に物権変動するときにまで登録を効力発生要件とすることは背理であり,その必要もない。本件においては,現時点で登録されている - 35 -共有状態について,被控訴人の持分に係る部分が無効となるにすぎないのであって,同条による登録は不要である。 (ウ) 本件4者は,(a)Bが中華人民共和国内の工場で製造し,(b)Aがこれを梱包し,(c)控訴人がこれを仕入れ,香港で輸出の手配をした本件発明1-1の実施品を,(d)被控訴人が控訴人から購入し,日本に輸入して販売することとし(本件販 和国内の工場で製造し,(b)Aがこれを梱包し,(c)控訴人がこれを仕入れ,香港で輸出の手配をした本件発明1-1の実施品を,(d)被控訴人が控訴人から購入し,日本に輸入して販売することとし(本件販売形態),いずれの当事者も各自の担当以外の役割を行わないことを合意した。これは,共有者全員で本件発明1-1の実施を制約する旨を定めたものであり,特許法73条2項の「別段の定」に該当する。上記合意は,本件固定的役割分担合意の一部であるが,前記(1)ア(イ)のとおり,本件共同出願契約書13条は,本件固定的役割分担合意を規定するものである。 したがって,本件販売形態以外の本件発明1-1の実施は,本件特許権の共有者であっても許されない。被控訴人による日本国内での被告各商品の製造及び販売は,上記「別段の定」に反し,控訴人,B及びAが有する本件特許権の持分を侵害する。 (10) 争点(1)コ(「別段の定」の解除の成否)についてア被控訴人の主張(ア) 前記(2)アと同様に,「別段の定」は解除された。 (イ) 控訴人は,Bと結託して,ウェブサイトを通じてクールノットを1本1.11~1.24ドルで販売した(乙27,28,38)。この行為は,本件特許発明の実施品を海外で販売する場合,日本市場販売価格(980円)の80%以上の価格に設定することを約する本件共同出願契約書14条1項に違反し,この違反は重大であって治癒が不可能である。 そこで,被控訴人は,平成30年10月15日付け準備書面(12)をもって,控訴人の上記債務不履行に基づき,本件共同出願契約を直ちに又は相当期間の経過をもって解除するとの意思表示をした。 したがって,仮に,本件共同出願契約書13条後段が「別段の定」に該当する場 - 36 -合でも,同条後段の ,本件共同出願契約を直ちに又は相当期間の経過をもって解除するとの意思表示をした。 したがって,仮に,本件共同出願契約書13条後段が「別段の定」に該当する場 - 36 -合でも,同条後段の規定により被控訴人から剥奪された特許権持分は,解除に基づき,被控訴人に復することとなる。 (ウ) 前記(イ)の主張は,平成30年8月29日の第9回口頭弁論期日における裁判所の侵害論の心証開示後に主張したものであるが,以下のとおり,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 本件共同出願契約書13条後段が特許法73条2項の「別段の定」に当たるとの主張は,原審においては双方から主張も立証もされておらず,裁判所の判断もされていない。また,本件固定的役割分担合意の存否にかかわらず,被控訴人の被告各商品の日本への生産移管が本件共同出願契約書13条後段に違反するか否かという争点は,平成30年5月16日の第7回口頭弁論期日における裁判所の求釈明以降に発生したものである。したがって,被控訴人の裁判を受ける権利を保証するため,被控訴人には,控訴審での裁判所の心証開示を受けて,これに反論する機会が与えられるべきである。 さらに,現状の心証開示に鑑みると,結ばない靴紐の市場を日本で開拓し,長年にわたり結ばない靴紐を日本において供給してきた被控訴人の事業が停止を余儀なくされる可能性があるが,これは,被控訴人のみならず,その顧客・最終消費者の利害に大きくかかわる結論であり,そのような判断は三審制という手続保証の枠組みでされるべきである。この趣旨からも,心証開示がされた現時点でも侵害論の継続をすべき特段の事情がある。 加えて,平成30年8月29日の第9回口頭弁論期日において,控訴人による訴えの変更が控訴審の侵害論の最終期日直前に提出されたものであるにもかか た現時点でも侵害論の継続をすべき特段の事情がある。 加えて,平成30年8月29日の第9回口頭弁論期日において,控訴人による訴えの変更が控訴審の侵害論の最終期日直前に提出されたものであるにもかかわらず,損害論の審理に入ることを理由に時機に後れたものとは判断されなかった。このことに鑑みると,前記(イ)の主張についても,同様に損害論の審理の以前に提出したものである上,既に提出した証拠も踏まえての立証活動であるから,時機に後れたものではない。 イ控訴人の主張 - 37 -(ア) 前記(2)イと同様に,前記ア(ア)の主張は,理由がない。 (イ) 被控訴人は,前記ア(イ)の主張を含む平成30年10月15日付け準備書面(11)~(13)及び乙92~112を提出した。 しかし,本件訴訟は,控訴審に限っても,平成29年4月12日に控訴が提起されて以降,既に1年半以上の期間が経過し,双方が十分に主張・立証を尽くす機会が与えられており,平成30年8月29日に行われた第9回口頭弁論期日において,裁判所は,侵害論の審理を終結し,損害論の審理に移行する旨の心証を開示した。ここで,上記準備書面の審理を行えば,訴訟の完結を遅延させることが明らかである。 したがって,被控訴人の準備書面(11)~(13)に係る主張及び乙92~112に係る立証は,いずれも時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)に当たるものとして却下すべきである。 (11) 争点(1)サ(「別段の定」違反の主張の可否)ア被控訴人の主張前記(5)イ(ウ)fと同様に,被控訴人が「別段の定」に違反することを理由に,権利剥奪を主張し,損害賠償請求することは許されない。 また,控訴人は,Bと手を組み,被控訴人が被告各商品の生産を日本に切り替え )イ(ウ)fと同様に,被控訴人が「別段の定」に違反することを理由に,権利剥奪を主張し,損害賠償請求することは許されない。 また,控訴人は,Bと手を組み,被控訴人が被告各商品の生産を日本に切り替える以前から,世界中で被控訴人に断りなく結ばない靴紐を販売している。まず,Bは,平成26年9月には,被控訴人に通知することなく台湾で「FITSTAR」のブランド名で結ばない靴紐を販売していた(乙88)。その後,控訴人は,B及びAとともに,龍帯国際を設立し,平成27年8月~9月には,展示会への出展等,本格的な営業活動を開始した(乙86~88)。このように,控訴人は,日本市場においてのみ本件固定的役割分担合意などという前提を勝手に置いた上で,被控訴人による合意違反を身勝手に主張する一方,自ら販売を行う他国市場においては,そのような合意など全く存在しないものとして,我が物顔で靴紐を販売しており,更には本件固定的役割分担合意が存在すると自ら主張する日本市場において - 38 -も,自らの行為との関係ではこの合意を反故にして,クールノット社を設立し,販売を開始している。このような状況において,控訴人が,被控訴人が「別段の定」に違反することを主張することは許されない。 イ控訴人の主張前記(5)ア(ウ)dと同様に,控訴人が不当な値上げ等により,被控訴人において結ばない靴紐の生産を日本に切り替えざるを得ない状況に追い込んだという事実はないから,被控訴人の主張は理由がない。 また,本件4者間で,被控訴人は日本と韓国での販売を,Bは台湾での販売を担当するとの合意が成立しており,Bによる台湾での販売は,被控訴人も知っていたものである。 さらに,龍帯国際は,結ばない靴紐を世界市場で販売することを目的として設立されたものであるが,被控訴人は 当するとの合意が成立しており,Bによる台湾での販売は,被控訴人も知っていたものである。 さらに,龍帯国際は,結ばない靴紐を世界市場で販売することを目的として設立されたものであるが,被控訴人は,会社設立時には参画していたものの,被控訴人が海外販売を自分の意のままに管理したいと述べ始めて翻意し,自らの判断で龍帯国際の事業から脱退することを決定した(甲90,乙86)。龍帯国際による販売は,被控訴人も了承していたものである。 (12) 争点(1)シ(通常実施権の有無)についてア被控訴人の主張被控訴人は,真実自らが権利者であると信じて事業を行ってきたものであるから,特許法79条の2第1項の適用又は類推適用により,被控訴人には結ばない靴紐の実施について本件特許権の通常実施権が与えられる。 イ控訴人の主張特許法79条の2第1項が適用されるのは,「第74条第1項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録の際」であるが,控訴人は,特許法74条1項に基づく請求のみを行っているわけではない。 また,被控訴人は,何らの根拠を示すことなく類推適用されると主張するが,類推適用すべき基礎がない。 - 39 -さらに,被控訴人は,本件固定的役割分担合意及び前記「別段の定」に自ら違反した結果,本件特許権を剥奪され,本件特許発明の実施が許されないにすぎないから,通常実施権による保護を求められるような立場にはない。 (13) 争点(1)ス(過失の有無)についてア控訴人の主張(ア) 被控訴人は,弁護士に相談して日本生産に踏み切ったから,合意違反について過失がないなどと主張するが,およそ成り立つ余地はない。 (イ) 前記(10)イ(イ)と同様に,後記イ(イ)の主張は,時機に後れた攻撃防御 相談して日本生産に踏み切ったから,合意違反について過失がないなどと主張するが,およそ成り立つ余地はない。 (イ) 前記(10)イ(イ)と同様に,後記イ(イ)の主張は,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 イ被控訴人の主張(ア) 被控訴人は,日本生産を実施するに当たり,本件共同出願契約に違反しないことについて被控訴人代理人弁護士に確認した。仮に本件固定的役割分担合意が存在したとしても,この合意は契約書の形で存在するわけではなく,その内容も裁判所の判断を経なければ理解することができないようなものであるから,弁護士に相談して日本生産に踏み切った被控訴人には,合意違反について過失はない。 (イ) 被控訴人は,平成30年8月29日の心証開示当日まで,本件特許の特許権者であることを信じて販売を実施してきた。本件特許の登録原簿には,被控訴人が権利者として記載されている(甲1,3)。 また,被控訴人は,被告各商品の日本への生産移管に当たり,数多くの専門家に相談したが,被控訴人が相談した弁護士,弁理士,中国弁理士は,いずれも本件共同出願契約書13条後段の規定により特許が剥奪されるものであることを警告しなかった。 さらに,本件共同出願契約書13条は,その前段で改良発明の取得について禁止していることから,被控訴人において,後段だけを取り出して,本件特許権が日本への生産移管によって剥奪されると予見することは不可能だったし,控訴人も,被控訴人との交渉中はもとより,本件訴訟提起後も,平成30年5月2日付け控訴人 - 40 -第8準備書面に至るまで,被控訴人の行為が本件共同出願契約書13条後段に違反することを具体的に指摘しなかった。 以上のとおり,被控訴人は,心証開示を受けるまで 月2日付け控訴人 - 40 -第8準備書面に至るまで,被控訴人の行為が本件共同出願契約書13条後段に違反することを具体的に指摘しなかった。 以上のとおり,被控訴人は,心証開示を受けるまで自らが無権利者であることについて善意無過失であったものであるから,損害賠償請求には理由がない。 特許法103条の過失の推定は,本件のように,被控訴人が特許原簿に権利者として登録されている場合においては,適用がないというべきである。 なお,前記(10)ア(ウ)と同様に,上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 (14) 争点(1)セ(無効の抗弁の成否)についてア被控訴人の主張(ア) 本件発明1-1は,乙104(特許第3493002号公報)に記載された発明と同一であるか,同発明及び当業者の技術常識(乙105~110)に基づき,容易に想到できるものであるから,本件特許1の請求項1は,特許無効審判により無効にされるべきものである。 (イ) 被控訴人は,裁判所から平成30年8月29日付け口頭弁論期日において,被控訴人の行為が本件共同出願契約書13条後段に違反するとの心証開示を受けるまで,自らの事業に多大な貢献をしている本件特許1の無効を主張することは不可能であった。 また,被控訴人は,自らが共有特許権者として登録されているから,この意味でも,特許が無効とされることを前提とした特許法104条の3の抗弁を提出することのできない立場であった。 しかも,本件特許1の無効理由を予備的にでも主張した場合には,競合他社がその無効理由の内容を知ることとなり,特許無効審判により早晩特許が無効化されてしまうことが容易に予想された。 したがって,侵害論の心証開示を踏まえて,本件特許1の無効を主張することが許される がその無効理由の内容を知ることとなり,特許無効審判により早晩特許が無効化されてしまうことが容易に予想された。 したがって,侵害論の心証開示を踏まえて,本件特許1の無効を主張することが許されるべきである。 - 41 -イ控訴人の主張前記(10)イ(イ)と同様に,前記アの主張は,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 (15) 争点(1)ソ(控訴人は特許権を有しない旨の主張の成否)についてア被控訴人の主張控訴人は,遅くとも平成28年10月23日以降,日本で本件特許権1の実施品であるクールノットの販売を開始した(乙37)。これは,被控訴人に対して協議及び許可を求めることなく,控訴人の独断で行われたものである(乙36)。そこで,仮に,本件共同出願契約書13条後段が特許法73条2項の「別段の定」を規定したものであるとすると,控訴人も,クールノットの販売により,平成28年10月23日以降,本件特許権の持分が剥奪され,無権利者の状態にある。 また,B及びAは,控訴人と結託して,被控訴人の事前の協議・許可なく,クールノットを製造し,梱包して日本において販売しているものであるから,同様に,遅くとも平成28年10月23日をもって無権利者となった。 なお,前記(10)ア(ウ)と同様に,上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 イ控訴人の主張前記(10)イ(イ)と同様に,前記アの主張は,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 (16) 争点(2)(香港での特許出願手続に係る債務不履行の成否)についてア控訴人の主張前記(6)アのとおり,本件4者は,被控訴人が本件4者の代表者として香港での本件特許発明の (16) 争点(2)(香港での特許出願手続に係る債務不履行の成否)についてア控訴人の主張前記(6)アのとおり,本件4者は,被控訴人が本件4者の代表者として香港での本件特許発明の特許出願手続を誠実に行う旨を合意した(共同出願契約書〔甲5〕4条,12条)。 しかし,被控訴人は,本件特許事務所から甲15書面を受領したにもかかわらず,控訴人ら3者に対し,香港での特許出願の要否を問い合わせ,その結果を本件 - 42 -特許事務所に対し指示することを怠った。その結果,香港での特許取得が不可能となった。 イ被控訴人の主張前記(6)イ(イ)~(エ)のとおり。 (17) 争点(3)(説明義務違反の不法行為の成否〔説明義務違反の有無〕)についてア控訴人の主張仮に本件固定的役割分担合意が認められない場合,被控訴人には,信義則上,そのような合意がないことを控訴人ら3者に説明する義務があった。 それにもかかわらず,被控訴人は,控訴人ら3者の誤信を漫然と放置するばかりか,むしろその誤信を利用して,本件共同出願契約を締結させ,また,控訴人ら3者に月30万個の生産のための巨額の追加投資をさせながら,突然,控訴人ら3者からの本件特許発明の実施品の調達を停止し,控訴人ら3者の損害を拡大させた。 イ被控訴人の主張控訴人は,本件4者間において,本件販売形態を唯一の商流とすることの合意をしようと試みていたが(甲46の1),それがかなわずに本件共同出願契約が締結されたのであって(甲6,乙52),控訴人は,上記合意が成立しなかったことを十分に認識していたから,被控訴人に何らかの説明義務違反が生じることはない。 (18) 争点(4)(損害の有無及び額)についてア控訴人の主張( 記合意が成立しなかったことを十分に認識していたから,被控訴人に何らかの説明義務違反が生じることはない。 (18) 争点(4)(損害の有無及び額)についてア控訴人の主張(ア) 特許権侵害の不法行為に基づく損害額a 被控訴人の得た利益額(民法709条,特許法102条2項)被控訴人は,被告各商品を概ね市場価格1000円程度で販売している。 被控訴人は,平成28年4月1日から同年6月15日までの間に,被告各商品を25万個販売した。 控訴人は,従前,被控訴人に対し,被告各商品と同等の商品を,概ね市場価格の - 43 -60%の価格で卸売りしていたから,被控訴人の利益率は40%である。 したがって,被控訴人の得た利益の額は,1億円(=1000円×25万個×40%)であり,特許法102条2項により,これが控訴人ら3名が受けた損害の額と推定される。 そして,控訴人は,A及びBから,両名の被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。 b 実施料相当額(民法709条,特許法102条3項)被控訴人は,被告各商品を概ね市場価格1000円程度で販売している。 被控訴人は,平成28年4月1日から同年6月15日までの間に,被告各商品を25万個販売した。 控訴人ら3名が被告各商品の販売に対し受けるべき金銭の額は,被控訴人の背信性も考慮すると,市場価格の20%である。 したがって,控訴人ら3名が被告各商品の販売に対し受けるべき金銭の額は,5000万円(=1000円×25万個×20%)である。 そして,控訴人は,A及びBから,両名の被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。 (イ) 香港での特許出願手続に係る債務不履行に基 5万個×20%)である。 そして,控訴人は,A及びBから,両名の被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。 (イ) 香港での特許出願手続に係る債務不履行に基づく損害額被控訴人が香港での特許出願手続に係る債務を履行して,香港で本件4者が対応特許を取得していれば,控訴人ら3者は,香港地域の市場において,その特許の存続期間満了までの間に,少なくとも1億円の利益を得られたから,上記債務不履行による損害は1億円を下らない。 そして,控訴人は,A及びBから,両名の被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。 控訴人は,上記1億円のうち5000万円を請求する。 (ウ) 説明義務違反の不法行為に基づく損害額被控訴人は,控訴人ら3者が本件固定的役割分担合意があるものと誤信している - 44 -ことを利用して,本件共同出願契約を締結させ,控訴人ら3者に月30万個の生産のための巨額の追加投資をさせながら,突然,控訴人ら3者からの本件特許発明の実施品の調達を停止して,控訴人らの損害を拡大させた。上記説明義務違反による投資額分の損害は2億円を下らない。 そして,控訴人は,A及びBから,両名の被控訴人に対する損害賠償請求権を譲り受けた(甲63,甲64の1~3)。 控訴人は,上記2億円のうち5000万円を請求する。 (エ) 弁護士費用相当額控訴人は,本件訴訟の追行のために弁護士費用の出捐を余儀なくされており,被控訴人の不法行為又は債務不履行と相当因果関係のある損害は,2000万円を下らない。 (オ) 小括以上のとおり,控訴人は,被控訴人に対し,①特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として1億円,②香港での特許出願手続に係る債務不履行に基 損害は,2000万円を下らない。 (オ) 小括以上のとおり,控訴人は,被控訴人に対し,①特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として1億円,②香港での特許出願手続に係る債務不履行に基づく損害賠償として5000万円(1億円の内金請求),③説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償として5000万円(2億円の内金請求),④弁護士費用相当額として2000万円の合計2億2000万円の支払を求める。 イ被控訴人の主張(ア) いずれも否認する。 (イ) 控訴人は,少なくとも控訴理由書の提出日である平成29年6月1日に至るまで,実施品を日本において製造・販売する等しておらず,日本における実施がされていないため,特許法102条2項は適用できない。 (ウ) 控訴人が受けるべき金銭の額が市場価格の20%である旨の主張は,何らの根拠も伴わず,失当である。 (19) 争点(5)(特許権持分移転登録手続請求の可否)についてア控訴人の主張 - 45 -(ア) 前記のとおり,①被控訴人は,本件固定的役割分担合意に違反したことによる効果として,本件特許権の持分が剥奪されており,②本件固定的役割分担合意に違反したことが債務不履行に該当するので,控訴人らは債務不履行を理由として本件特許発明につき特許を受ける権利の譲渡を解除しており,③被控訴人は,本件共同出願契約8条違反により本件特許権の持分が剥奪されており,④被控訴人は,本件共同出願契約13条違反により本件特許権の持分が剥奪されており,⑤被控訴人は,特許出願に関する手続を誠実に行う義務に違反したために本件特許権の持分が剥奪されており,⑥本件特許を受ける権利の譲渡は,錯誤無効又は詐欺取消により効力を失っているために本件特許を受ける権利を取得し ,特許出願に関する手続を誠実に行う義務に違反したために本件特許権の持分が剥奪されており,⑥本件特許を受ける権利の譲渡は,錯誤無効又は詐欺取消により効力を失っているために本件特許を受ける権利を取得していなかったこととなり,被控訴人は無権利者となる。 前記①~⑥の結果,被控訴人が有していた本件特許権に係る持分各4分の1は,控訴人ら3者に等しい割合で移転させるべきこととなるので,控訴人ら3者は,本件特許権に係る持分各12分の1を取得することとなる。 登録原簿上は被控訴人が本件特許権の持分権者として登録されている(甲1,3)。 控訴人は,平成30年7月31日,B及びAから,両名の本件特許権に係る持分各12分の1の移転登録手続請求権を譲り受けた(甲91~95)。 よって,控訴人は,被控訴人に対し,本件固定的役割分担合意に基づく持分移転登録手続請求,本件固定的役割分担合意の解除に基づく原状回復としての持分移転登録手続請求,本件共同出願契約に基づく持分移転登録手続請求,特許法74条1項に基づく持分移転登録手続請求として,本件特許権の持分各4分の1の移転登録手続を請求することができる。 (イ) 被控訴人は,特許権持分移転登録手続請求について請求の基礎の同一性を欠くなどと主張するが,従前から控訴人が主張してきた請求原因に実質的な変更を加えるものではなく,請求の基礎の同一性に変更はなく,著しく訴訟手続を遅滞させることもない。 - 46 -また,平成30年6月18日付け控訴人第10準備書面兼訴えの変更申立書による特許権持分移転登録手続請求の追加は,被控訴人の同年5月1日付け準備書面(5)における主張に沿って行われたものであるし,同年7月25日付け控訴人第12準備書面兼訴えの変更申立書によるB及びAからの請求権譲渡を理由とする 続請求の追加は,被控訴人の同年5月1日付け準備書面(5)における主張に沿って行われたものであるし,同年7月25日付け控訴人第12準備書面兼訴えの変更申立書によるB及びAからの請求権譲渡を理由とする特許権持分移転登録手続請求の追加は,被控訴人の同年6月22日付け準備書面(8)における特許権持分移転登録手続請求訴訟は固有必要的共同訴訟である旨の主張を踏まえ,余計な争点を避け審理を促進するために行われたものである。 (ウ) 特許権の持分移転登録手続請求訴訟は,固有必要的共同訴訟ではない。 (エ) 被控訴人は,控訴人が,B及びAから本件特許権に係る持分各12分の1の移転登録手続請求権を譲り受けたとの主張について,時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきであると主張するが,上記譲渡が行われたのは平成30年7月31日であり,それを踏まえた上記主張もほぼ同時期に行われたし,訴訟の進行を遅延させるものでもないから,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 また,被控訴人は,特許権持分移転登録手続請求権は,特許権持分から離れて独立に譲渡の対象となるものではないなどと主張するが,特許権持分の移転は登録が効力発生要件であるから(特許法98条1項1号),特許権持分を取得しようとする者は,移転登録が完了するまでは,特許権持分移転登録手続請求権は有しているものの,特許権持分そのものは保有していない。したがって,特許権持分移転登録手続請求権を,特許権持分とは離れて独立に譲渡することができるかという問題を立てること自体が不合理かつ不必要であり,誤りである。 さらに,被控訴人は,B及びAの有する特許権持分のうち,控訴人が被控訴人から剥奪したと主張する持分12分の1の控訴人への移転には,被控訴人の同意が必要であるなどと主張するが,移転登録が完了する さらに,被控訴人は,B及びAの有する特許権持分のうち,控訴人が被控訴人から剥奪したと主張する持分12分の1の控訴人への移転には,被控訴人の同意が必要であるなどと主張するが,移転登録が完了するまでは,B及びAは,上記持分12分の1を保有しているわけではないから,それらの持分が控訴人に移転することも観念できず,被控訴人の同意が必要となる余地はない。仮に,通常の特許権譲渡 - 47 -契約等の場合であれば,被控訴人の同意が必要であるとしても,本件固定的役割分担合意においては,役割分担の定めに違反した場合には特許権が剥奪される効果が生じることを事前に合意しているのであって,実際に剥奪が実行される段階に至って改めて同意が必要であるわけがないから,本件4者は,本件固定的役割分担合意を合意した際に,剥奪された特許権が他の3者に移転する場合においては,あらかじめ同意していたか,同意しない権利を放棄していたというべきである。 加えて,被控訴人は,中間省略登録は認められないなどと主張するが,移転登録が完了するまでは,B及びAは,上記持分12分の1を保有しているわけではなく,同人らが特許権持分移転登録手続請求権を控訴人に譲渡し,控訴人がこの特許権持分移転登録手続請求権を行使すれば,上記持分12分の1は,被控訴人から,B及びAを経由することなく,控訴人に直接移転することになるから,被控訴人から控訴人に対し直接の特許権持分の移転登録を認めることこそ,特許権持分の変動を正しく特許原簿に反映させることになる。 (オ) 被控訴人は,B及びAから控訴人への特許権持分移転登録手続請求権の譲渡は,訴訟信託に該当し,無効であるなどと主張するが,B及びAは,被控訴人から取得する本件特許権の持分各12分の1を控訴人に譲渡する意思を真に有しており,B及びA の特許権持分移転登録手続請求権の譲渡は,訴訟信託に該当し,無効であるなどと主張するが,B及びAは,被控訴人から取得する本件特許権の持分各12分の1を控訴人に譲渡する意思を真に有しており,B及びAが本件特許権の持分各4分の1を保有し,控訴人が持分2分の1を保有することになることを,真に納得して,特許権持分移転登録請求権譲渡契約書(甲91,92)に署名したものであるから,訴訟行為をさせることを主たる目的として信託したものではない。 (カ) 前記(10)イ(イ)と同様に,後記イ(キ)の主張は,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 イ被控訴人の主張(ア) 控訴人は,平成30年6月18日付け控訴人第10準備書面兼訴えの変更申立書において,特許権持分移転登録手続請求を追加し,同年7月25日付け控訴人第12準備書面兼訴えの変更申立書において,B及びAからの請求権譲渡を - 48 -理由とする特許権持分移転登録手続請求を更に追加したが,控訴審の結審直前に至って,このような訴えの変更を行うことは許されない。また,原審において全く争われていなかった事実を請求の基礎とするものであり,被控訴人の審級の利益を保護するため,却下されるべきである。さらに,移転登録手続請求においては,確認請求とは異なり,同時履行の抗弁権の有無など,今まで審理されていなかった新たな争点が存在することは明らかであり,この意味でも請求の基礎を同一にするものといえない。加えて,これらの新たな争点について控訴人と被控訴人との間で主張立証を行う必要があるし,少なくとも特許権持分移転登録手続請求権の譲渡の是非について更に主張立証を行う必要があるから,著しく訴訟手続を遅滞させるものである。 (イ) 特許権の持分移転登録 立証を行う必要があるし,少なくとも特許権持分移転登録手続請求権の譲渡の是非について更に主張立証を行う必要があるから,著しく訴訟手続を遅滞させるものである。 (イ) 特許権の持分移転登録手続請求は,最高裁昭和46年10月7日判決・民集25巻7号885頁や特許法73条1項などに照らすと,固有必要的共同訴訟であるから,共有者全員を原告又は被告として訴訟を提起する必要がある。したがって,控訴人単独での特許権の持分移転登録手続請求は,不適法である。 (ウ) 控訴人の主張は,すべて否認する。 (エ) 控訴人は,特許権の持分移転登録手続請求について,B及びAの同意を得たことを立証していないから(特許法73条1項),理由がない。 (オ) 控訴人は,B及びAから,両名の本件特許権に係る持分各12分の1の移転登録手続請求権を譲り受けたと主張するが,平成29年6月1日付け控訴理由書兼訴えの変更申立書の提出時点において主張可能であったから,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものであり,次回期日に侵害論の心証開示を控えた段階での提出は訴訟の完結を遅延させることも明らかであるから,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 また,特許権持分移転登録手続請求権は,特許権持分を取得した者が,その持分に係る移転登録を受けるための権利であるから,その特許権持分から離れて独立に譲渡の対象となるものではない(特許法98条1項)。この理は,特許権持分移転 - 49 -登録手続請求権が,契約によって生じた場合も同様である。 さらに,B及びAから控訴人に特許権持分移転登録手続請求権が移転するためには,その前提として,B及びAの有する特許権持分のうち,控訴人が被控訴人から剥奪したと主張する持分1 た場合も同様である。 さらに,B及びAから控訴人に特許権持分移転登録手続請求権が移転するためには,その前提として,B及びAの有する特許権持分のうち,控訴人が被控訴人から剥奪したと主張する持分12分の1が控訴人に移転することを要するが,この持分の移転には,現時点において特許権者として原簿に登録されている被控訴人の同意が必要であり,同意のない持分の移転は効力を生じない(特許法73条1項,98条1項)。そもそも登録が効力発生要件である以上,登録されていない特許権持分の移転は観念できず,B及びAから控訴人への特許権持分の移転は,被控訴人からB及びAへの持分移転登録が完了した後にのみ可能である。 加えて,控訴人の主張は,本来であれば,被控訴人からB及びA,B及びAから控訴人へと順次持分移転登録手続をすべきであるにもかかわらず,被控訴人からB及びAへの移転登録手続がされていないことを奇貨として,被控訴人から控訴人へと中間省略登録手続を求めるものであるが,特許権の移転は登録が効力発生要件であることからすると(特許法98条1項),移転登録原因の内容と一致しない中間省略登録が認められる余地はない。 (カ) 本件において,控訴人が,B及びAから特許権持分移転登録手続請求権を譲り受けた理由は,控訴人のみが訴訟当事者であることに鑑み,控訴人に同請求権を一旦移転させ,被控訴人から特許権の移転登録を受けた後に,B及びAに移転登録して,特許権持分の実態と登録とを整合させようとするものであることは明らかである。 そうすると,B及びAにおいて,控訴人との間で,本件訴訟を主たる目的として本件特許権の持分の管理を内容とする契約を締結したものと評価できることになるから,上記譲渡は,訴訟信託に該当し,無効である(信託法10条)。 (キ) 前記(15 ,本件訴訟を主たる目的として本件特許権の持分の管理を内容とする契約を締結したものと評価できることになるから,上記譲渡は,訴訟信託に該当し,無効である(信託法10条)。 (キ) 前記(15)アのとおり,控訴人は無権利者である。 なお,前記(10)ア(ウ)と同様に,上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 - 50 -(20) 争点(6)(差止請求の可否)についてア控訴人の主張前記(10)イ(イ)と同様に,後記イの主張は,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 イ被控訴人の主張(ア) 仮に,被控訴人が特許法73条2項の「別段の定」に違反したとしても,同法98条1項1号に基づく登録がなければ,控訴人と被控訴人との間の債務不履行を構成するにすぎず,特許権侵害を構成するわけではない。 したがって,控訴人の差止請求は,認められない。 (イ) 前記(15)アのとおり,控訴人は,無権利者である。 (ウ) 被控訴人の被告各商品の日本への生産移管は,本件製造会社をして被告各商品を製造させる行為と,被告各商品を日本で販売する行為とに区別されるところ,後者は,被控訴人が日本に生産移管する以前から行ってきたものであるから,別段の定によっても禁じられていない行為である。 したがって,被控訴人による被告各商品の販売行為は,本件共同出願契約書13条後段に違反することはないから,差止請求の範囲は,被控訴人による被告各商品の販売には及ばない。 (エ) 前記(10)ア(ウ)と同様に,前記(ア)~(ウ)の主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 (21) 争点(7)(確認の利益)についてア控訴人の主張前記(10)イ エ) 前記(10)ア(ウ)と同様に,前記(ア)~(ウ)の主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 (21) 争点(7)(確認の利益)についてア控訴人の主張前記(10)イ(イ)と同様に,後記イの主張は,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下すべきである。 イ被控訴人の主張前記(15)アのとおり,控訴人は,無権利者であるから,現在の被控訴人の特許権持分について確認しても,紛争の直接かつ抜本的な解決のために適切ではない。 - 51 -なお,前記(10)ア(ウ)と同様に,上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。 (22) 争点(8)(反訴請求の可否)についてア被控訴人の主張控訴人は,遅くとも平成28年10月23日以降,日本で本件特許権1の実施品であるクールノットの販売を開始した(乙37)。これは,被控訴人に対して協議及び許可を求めることなく,控訴人の独断で行われたものである(乙36)。 そこで,仮に,本件共同出願契約書13条後段が特許法73条2項の「別段の定」を規定したものであるとすると,控訴人のクールノットの販売は,本件共同出願契約書13条後段に当たり,控訴人の本件特許権の持分は剥奪される。控訴人の本件特許権の持分は,本訴の結論によりクールノット販売時点で最大で2分の1であるから,剥奪される控訴人の持分も最大で2分の1である。 また,本件共同出願契約書13条後段が違反者以外の3者に対し特許権移転登録手続請求権を発生させる規定であるとすると,被控訴人は,控訴人に対し,控訴人の有する本件特許権の持分2分の1のうち,その3分の1である持分6分の1の移転登録手続請求をすることができる。 イ控訴人の主張控訴人は,被控訴人による控訴審 人は,控訴人に対し,控訴人の有する本件特許権の持分2分の1のうち,その3分の1である持分6分の1の移転登録手続請求をすることができる。 イ控訴人の主張控訴人は,被控訴人による控訴審での反訴の提起に同意しない(民訴法300条1項)。また,反訴の提起は,著しく訴訟手続を遅滞させる。したがって,反訴は却下されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)ケ(特許権の移転登録の要否及び「別段の定」の有無)について(1) 事案に鑑み,争点(1)ケから判断する。 特許権の移転は,相続その他の一般承継によるものを除き,登録しなければ,その効力を生じないから(特許法98条1項1号),被控訴人は,本件特許権1の特許権者(共有持分権者)である(甲1)。 - 52 -控訴人は,被控訴人の特許法98条1項1号を根拠とする主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきであると主張するが,被控訴人が本件特許権1に係る特許原簿に特許権者(共有持分権者)として登録されていた事実(甲1)は,既に訴状において控訴人が主張していたのであり,控訴人において被控訴人は無権利者である旨の主張をする際にあらかじめ検討しておくべき事項であるから,上記主張は採用できない。 また,控訴人は,特許法98条1項1号は,通常の特許権の移転について登録を効力発生要件としたものであって,本件のように,移転が解除されたことにより特許権が譲受人から譲渡人に対し復帰的に物権変動するときには登録は不要であるなどと主張するが,同号は,相続その他の一般承継による移転には適用されない旨を明示した上で,「特許権の移転」を対象としていること,同法74条2項は,特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(同法123条1項6号)で には適用されない旨を明示した上で,「特許権の移転」を対象としていること,同法74条2項は,特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(同法123条1項6号)であっても,その特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者の請求に基づく特許権の移転の登録があったことを要件として,その特許権が初めからその登録を受けた者に帰属していたものとみなすとしていることに照らすと,本件には同法98条1項1号の適用がない旨の主張は採用できない。 そうすると,特許法73条2項の「別段の定」をした場合を除き,被控訴人は,他の共有者の同意を得ないで,本件発明1-1の実施をすることができるから,続いて,本件4者間の「別段の定」の有無を検討する。 (2) 控訴人は,本件共同出願契約書13条は,本件固定的役割分担合意を規定するものであり,本件固定的役割分担合意の一部が特許法73条2項の「別段の定」に該当すると主張するところ,前記第2の2(4)のとおり,本件共同出願契約書には,中国語で記載され,作成日付及び本件4者の署名があるもの(甲6契約書)と,日本語で記載され,作成日付及び本件4者の署名がないもの(甲5契約書)とがあるが,甲6契約書には作成日付及び署名があることに加え,B及びAが - 53 -中国語を理解し日本語を理解しないこと,甲6契約書は被控訴人従業員が中国語に翻訳したものであり,控訴人も中国語を理解すること(以上の事実につき,証人E,弁論の全趣旨)を併せ考慮すると,本件4者は,作成日付及び署名がある甲6契約書をもって,本件共同出願契約を締結したと認めるのが相当である。 (3) 前記第2の2(4)ア(ク)のとおり,甲6契約書13条には,「事前の協議・許可なく,本件の各権利(本件特許権)を新たに取得し,又 って,本件共同出願契約を締結したと認めるのが相当である。 (3) 前記第2の2(4)ア(ク)のとおり,甲6契約書13条には,「事前の協議・許可なく,本件の各権利(本件特許権)を新たに取得し,又は生産・販売行為を行った場合,本件の各権利は剥奪される。(甲,乙,丙及び丁の全員が対象である)」と記載されている。 同条の「生産・販売行為」の対象は,その文理に照らし,「本件の各権利(本件特許権)」の実施品であると合理的に解釈できるから,同条は,契約当事者間において「本件の各権利(本件特許権)」の実施品の生産・販売行為を制限する趣旨の条項である。そうすると,契約当事者の合理的意思として,同条の「事前の協議・許可なく」とは,「事前の協議及び許可なく」の意味であると解釈でき,同条の「生産・販売行為」とは,「生産又は販売行為」の意味であると解釈できる。前者では「・」を「及び」と解釈し,後者では「・」を「又は」と解釈することになるが,いずれも契約当事者の合理的意思に沿うものであり,矛盾はない。また,前記第2の2(4)ア(ア),(イ)によると,本件特許権1は,甲6契約書にいう「本件特許権」に該当する。 以上によると,同条は,本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産又は販売をすることについて,事前の協議及び許可を要するものとして制限するものであるから,特許法73条2項の「別段の定」に該当する。 そして,前記第2の2(5),(6)のとおり,被控訴人は,平成28年4月以降,日本において,本件製造会社に本件発明1-1の実施品である被告各商品を製造させ,被告各商品を独自に販売しているが,これについて,事前の協議及び許可を経たことは,本件全証拠によっても認められない。 したがって,被控訴人が,平成28年4月以降,日本において,本件製造会社に せ,被告各商品を独自に販売しているが,これについて,事前の協議及び許可を経たことは,本件全証拠によっても認められない。 したがって,被控訴人が,平成28年4月以降,日本において,本件製造会社に - 54 -本件発明1-1の実施品である被告各商品を製造させ,被告各商品を独自に販売したことは,「別段の定」である甲6契約書13条に違反するものである。 (4) 被控訴人は,本件共同出願契約書7条には,本件発明の実施は,協議により別途定める旨の規定があるから,本件共同出願契約には,製造,販売等についての何らかの役割分担に関する合意は含まれないことが明らかであり,同契約書13条は「別段の定」を規定したものではない旨の主張をする。 しかし,前記第2の2(4)ア(オ)のとおり,甲6契約書7条は,「甲,乙,丙及び丁は,本件発明の実施に対する協議の後,別途に定める。」と規定するものであるから,同契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要するものとすることと矛盾するものではない。 そして,①Bが中国国内の工場で本件発明1-1の実施品を製造し,②これをAが梱包し,③これを控訴人が仕入れ,④さらに被控訴人がこれを日本に輸入して販売するという本件販売形態が本件共同出願契約締結後,長年にわたり続けられてきたことは,当事者間に争いがないから,本件販売形態は,同契約書13条の「事前の協議・許可」を経たものということができる。このように,製造,販売等についての役割分担を含む本件販売形態については,同契約書13条の「事前の協議・許可」を経たものであるから,同契約書13条と矛盾するものではない。 また,前記第2の2(4)ア(カ)のとおり,甲6契約書8条は,「甲,乙,丙及び丁は,他 ついては,同契約書13条の「事前の協議・許可」を経たものであるから,同契約書13条と矛盾するものではない。 また,前記第2の2(4)ア(カ)のとおり,甲6契約書8条は,「甲,乙,丙及び丁は,他の全ての当事者の同意を得なければ,本件特許権を乙,丙及び丁が自ら経営する法人以外の第三者に譲渡し,或いは本件発明の実施を許諾してはならない。」と規定するものであるから,同契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要するものとすることと矛盾するものということはできない。本件共同出願契約書を起案した弁護士が,甲6契約書8条と概ね同様の共同出願契約書案8条の「乙,丙及び丁のいずれかが主体となって事業を営む法人」という文言に添えたコメントには, - 55 -「X様やA様,B様が経営している会社については,同意がなくても製造販売等が可能です。」と記載されているが(甲49),本件4者が合意に達した甲6契約書ではなく,契約書作成過程の書面に付されたものにすぎないし,契約当事者のうち被控訴人を除く控訴人ら3者が自然人であったことから,控訴人ら3者が将来的に法人化して事業を営む際にも支障が生じない旨を説明したものと理解できるから,上記コメントにより,甲6契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要することを定めたものではないということはできない。 さらに,本件共同出願契約には,靴紐の購入単価又はその決定方法についての条項はなく,被控訴人が控訴人から靴紐を購入しなければならないことを規定する条項もないからといって,甲6契約書13条についての上記判断が左右されるものではない。 (5) 被控訴人は,控訴人が,被 項はなく,被控訴人が控訴人から靴紐を購入しなければならないことを規定する条項もないからといって,甲6契約書13条についての上記判断が左右されるものではない。 (5) 被控訴人は,控訴人が,被控訴人との協議・許可なしに,COOLKNOTという商品名又はブランド名により本件特許権の実施品を販売しているから,この控訴人の販売及び被控訴人の製造販売のいずれも,本件共同出願契約書13条には違反しないとするのが,契約当事者の合理的意思である,本件特許権の持分を剥奪されるのは控訴人であり,被控訴人ではないと主張するが,前記(3)のとおり,甲6契約書13条の文理等に照らし,採用できない。 (6) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段は,同条前段と合わせて読むべきところ,同条前段は,本件特許権と「実質的同一」の範囲について特許権を新たに取得することを禁止しているから,同条後段は,実質的同一の範囲内で新たに取得された特許権について,その実施品の生産・販売を禁止しているものと理解できると主張する。 しかし,甲6契約書13条前段は,その文理に照らすと,事前の協議及び許可なく,「本件の各権利(本件特許権)」を未取得の国において,「本件の各権利(本件特許権)」を新たに取得することを禁止するものと解すべきであるから,同条前段 - 56 -が本件特許権と「実質的同一」の範囲について特許権を新たに取得することを禁止しているとは認められない。また,同条前段は,「本件の各権利(本件特許権)」を新たに取得したことのみによって「本件の各権利」を剥奪すると定めていることからすると,同条後段が,その新たに取得された「本件の各権利(本件特許権)」の実施品を生産又は販売したことによって「本件の各権利」を剥奪することのみを定めたものと解釈するのは不合理である。同 ることからすると,同条後段が,その新たに取得された「本件の各権利(本件特許権)」の実施品を生産又は販売したことによって「本件の各権利」を剥奪することのみを定めたものと解釈するのは不合理である。同条後段は,既に取得されているか,新たに取得されたものであるかを問わず,「本件の各権利(本件特許権)」の実施品の生産又は販売行為を無断で行うことを禁止したものと解するのが相当である。 (7) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段は,日本以外の国での販売行為を定めた同契約書14条に違反した場合の効果を規定した条項であると理解でき,仮に日本での生産・販売行為について規定したものであるとすると,被控訴人は,既に販売中の靴紐について,日本での販売中止を前提に本件共同出願契約を締結したこととなり,著しく不合理であると主張する。 しかし,前記(3)のとおり,甲6契約書13条後段の文理に照らし,日本以外の国での行為に限定されたものとは解釈できないし,被控訴人が本件共同出願契約締結当時行っていた本件販売形態は,同条の「事前の協議・許可」を経たものとして禁止されないから,被控訴人が本件共同出願契約締結当時被告各商品を既に販売していたことは,同条後段が禁止する対象から日本での行為を除外して解釈すべき理由とはならない。 (8) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段の内容は,同契約書16条の協議を経なければ空文であり,これを法的請求の根拠とすることはできないと主張するが,同契約書16条は,裁判外における紛争解決の方法を定めたものと合理的に解釈できるのであって,同条の協議を経なければ疑義が生じた契約条項の内容が空文であり,法的請求の根拠とすることができないものとは認められない。 2 争点(1)コ(「別段の定」の解除の成否)について(1) 被 て,同条の協議を経なければ疑義が生じた契約条項の内容が空文であり,法的請求の根拠とすることができないものとは認められない。 2 争点(1)コ(「別段の定」の解除の成否)について(1) 被控訴人は,控訴人作成の平成27年1月23日付けメール(乙78)添 - 57 -付のエクセルファイルを根拠として,「別段の定」は,同月30日に解除されたと主張する。 しかし,上記エクセルファイルは,中国語によるB及びAからの今後の協力に関する方向性の要望書であり,これに控訴人が日本語訳を付したものにすぎず(乙78),これにより直ちに同月30日の経過をもって「別段の定」が解除されたものということはできないし,これに基づいて本件4者において「別段の定」を合意解除したことを認めるに足りる証拠もない。 (2) 被控訴人は,控訴人作成の平成27年9月7日付けメール(甲57の4)を根拠として,被控訴人の日本への生産移管に同意し,「別段の定」を解除することに合意したと主張する。 しかし,上記メール(甲57の4)は,「・・・/長文になりましたが現状は複雑ではなく/4者が団結して特許の優位性を損なうことなく/世界に向けて販売していくか,もしくは/4者で独立採算型,製造販売をして価格,販売力で競争するか/の2つの選択肢だけではないでしょうか?/皆さんが後者を選択される場合は大変遺憾ですが私に異論はございません。/・・・/御社訪問時に詳しく社長のお考えをお聞かせください。/それを元に私も決断させていただきます所存です。 /・・・」(判決注・「/」は改行を示す。以下,証拠の引用箇所において同じ。)というものであり,控訴人が,本件4者が独立採算で製造販売することを選択する旨の意思を確定的に表示したものとは認められない。また,証拠(甲51~53,乙89)及 以下,証拠の引用箇所において同じ。)というものであり,控訴人が,本件4者が独立採算で製造販売することを選択する旨の意思を確定的に表示したものとは認められない。また,証拠(甲51~53,乙89)及び弁論の全趣旨によると,控訴人と被控訴人は,上記メール後も平成27年10月15日にかけて,本件4者による協業を前提とした契約書の作成を協議していたことが認められるから,このことからも,控訴人が,上記メールをもって,本件4者が独立採算で製造販売することを選択する旨の意思を確定的に表示したものとはいえない。 したがって,控訴人が,上記メールにより,被控訴人の日本への生産移管に同意し,「別段の定」を解除することに合意したと認めることはできない。 - 58 -(3) 被控訴人は,控訴人作成の平成27年10月15日付けメール(乙89)を根拠として,被控訴人による日本での生産に最終的に同意し,「別段の定」を解除することに合意したと主張する。 しかし,証拠(甲52,53,乙68,89)によると,上記メールは,被控訴人が,本件共同出願契約書の見直しも含めて本件4者間で新たに締結する契約条件の交渉において,本件4者間の取引における特許料を1点当たり1者1元から0. 5元に変更することを相談したい旨の提案を行ったことに対し,控訴人が0.5元では交渉の余地がない旨の回答をするに当たり記載されたものであること,控訴人と被控訴人との間では,上記メール後も,上記特許料を年間販売数量に応じて値引きする提案も含めて,契約条件の交渉が継続して行われたこと,控訴人作成の同年11月23日付けメール(乙68)では,「1.生産権利/4者全員が他社にライセンスを設定して生産させることができるというもので/よろしいでしょうか?/開始当初に4者で合意した内容ですと8条に他者 年11月23日付けメール(乙68)では,「1.生産権利/4者全員が他社にライセンスを設定して生産させることができるというもので/よろしいでしょうか?/開始当初に4者で合意した内容ですと8条に他者全員の同意を得ることとあります。/4者全員が生産できるとすることは公平と思います。/御社がモリトに生産を依頼される場合はそのように合意書を変更することになります。」と記載されていることが認められる。 そうすると,控訴人作成の平成27年10月15日付けメール(乙89)により,控訴人が被控訴人による日本での生産に最終的に同意し,「別段の定」を解除することに合意したものとは認められず,むしろ控訴人は同年11月23日に至っても,被控訴人による日本への生産移管は,本件共同出願契約書が変更されない限り,控訴人ら3者の同意が必要であるものと認識していたものと認められる。 (4) 被控訴人は,被控訴人が被告各商品の製造を自社において行うに至ったのは,控訴人による不当な値上げがされたこと,従来より実施品の品質不良が多く見られたこと等に基づくものであり,被控訴人は,控訴人らに対し,不当な値上げ要求を受け入れることはできず,被控訴人自身において実施品を製造する旨を通告しているから,この通告時点又はこの通告から相当期間経過後において,「別段の - 59 -定」は解除されたと主張する。そこで,検討すると,以下のとおりである。 ア前記第2の2の前提事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (ア) 控訴人は,被控訴人に対し,平成24年5月5日付けメール(甲37の2)において,B及びAが機械の導入,人員の確保などに安心して投資できるように,被控訴人から年間の最低発注数量を価格変動なしで契約したい旨を述べた。 被控訴人は 24年5月5日付けメール(甲37の2)において,B及びAが機械の導入,人員の確保などに安心して投資できるように,被控訴人から年間の最低発注数量を価格変動なしで契約したい旨を述べた。 被控訴人は,控訴人に対し,同年6月27日付けメール(甲42,85)において,「まず絞った市場に早く出したいです。序所に生産キャパを上げて,導入店舗を増やしていきたい。設備増設必至です,Aさんと事前に相談して意向を聞きたいですね。」と記載し,同年7月2日付けメール(甲86)において,「今回は,主要の店舗に並べるのと,サンプル配り分です。発注量上げていきますので,増設の件も前もって検討しておいてください。」と記載して,生産設備の増設を求めた。 控訴人は,被控訴人に対し,同年8月11日付けメール(甲43の1)において,工場の機械の数の調整をするために,おおよその発注予想を提出することを求め,被控訴人は,控訴人に対し,同月20日付けメール(甲44の1,甲45)において,同年8月から平成25年7月にかけて,合計40万8000本を発注する旨のおおよその発注予想を提出した。これを踏まえて,控訴人は,被控訴人に対し,同年11月22日付けメール(甲46の1)において,日本市場について年間40万本を発注することを求め,被控訴人は,同日付けメール(甲46の2)により,これを了解した。 (イ) 被控訴人は,平成25年1月から,日本において被告各商品の販売を開始した。 平成26年1月の被告各商品の販売実績は,3万7763本であったが,同年2月2日に被告各商品がテレビ番組で取り上げられて以降,爆発的に増大し,同年2月の被告各商品の販売実績は,13万3036本であった。 しかし,当時の控訴人ら3者の被告各商品の生産能力は月間5万本程度であった - 60 -こ 取り上げられて以降,爆発的に増大し,同年2月の被告各商品の販売実績は,13万3036本であった。 しかし,当時の控訴人ら3者の被告各商品の生産能力は月間5万本程度であった - 60 -ことから,被控訴人は,同年3月~5月にかけて,大手靴販売店を含む多くの顧客から被告各商品について問い合わせを受けたものの,商品を供給することができない事態に陥った。 (争いがない)(ウ) 被控訴人は,平成26年6月頃,控訴人ら3者に対し,月間30万本以上の販売ができる見込みであるから,これに対応できるようにしてほしい旨を述べた。控訴人ら3者は,これを受け,月間30万本までは難しいとしても,月間15万本程度は販売できるものと考え,新たな設備を導入した。(甲16の1・2,甲17の1・2,甲18,22,甲57の2,甲65)被告各商品の販売実績は,平成26年3月~5月は,月間5万本を上回ったものの,同年6月~12月は,月間平均5万4657本(=38万2597本÷7か月)にとどまり,平成27年は,上向いたものの,月間平均8万4007本(=100万8088本÷12か月)にとどまった(甲50,乙19)。 被控訴人の控訴人に対する被告各商品の発注数量は,平成27年1月~8月の月間平均で約3万3000本であり,同年の旧正月明け~8月の月間平均で約4万4000本にとどまった(甲57の1)。 控訴人は,被控訴人に対し,同年9月頃から,月間10万本程度の最低購入数量を保証することを求め,前記(2),(3)のとおり,控訴人と被控訴人との間において,同年9月~11月末頃にかけて,本件共同出願契約書の見直しも含めて本件4者間で新たに締結する契約条件の交渉が行われた(甲51~53,甲57の1~4,乙60,68,73,89,被控訴人代表者)。 月~11月末頃にかけて,本件共同出願契約書の見直しも含めて本件4者間で新たに締結する契約条件の交渉が行われた(甲51~53,甲57の1~4,乙60,68,73,89,被控訴人代表者)。 (エ) 控訴人が被控訴人に販売した被告各商品には,次のとおり,品質不良が確認され,その改善の申入れ等が行われた。 a 平成25年3月25日,コブ変形が確認された(乙32)。 b 平成27年2月10日,異物混入及びコブサイズ変形が確認された(乙32)。 - 61 -c 平成27年7月28日,カッターの刃に持ち手用と思われるテープが巻かれた物が段ボール箱に混入していた(乙32)。 d 被控訴人は,平成27年8月5日,被告各商品の梱包工場において,控訴人,Aらに対し,梱包不良について,ライン内でのQCを確立して欲しい旨を依頼し,取り急ぎの対策として,ライン内に作業しているカラー・サイズ以外の余計な資材などは置かないように依頼・指示し,同月7日までに改善対策書の提出を求めた。また,入荷済みの被告各商品の不良について,検品が必要な数量及び費用を提出し,承諾を求めた。(乙61)e 被控訴人は,平成27年10月,「キャタピランABCシール」の貼付漏れがあったことから,出荷前に同シールの有無の全数検品を行い,控訴人にもその旨を連絡し,メーカーへの確認を求めた(乙62)。 f 平成28年1月7日,8日の出荷時に検査したところ,検査総数6912個のうち,43個に品質不良(サイズ・色ラベルなし15個,サイズ・色ラベル破れ1個,JANラベルなし8個,JANラベル誤り19個)が確認された。 このうち,キャタピラン50cmについては,検査数672個のうち36個に品質不良が確認され,不良率は5%を超え サイズ・色ラベル破れ1個,JANラベルなし8個,JANラベル誤り19個)が確認された。 このうち,キャタピラン50cmについては,検査数672個のうち36個に品質不良が確認され,不良率は5%を超えていた。 そこで,被控訴人は,同月14日,控訴人に対し,その旨を連絡するとともに,早急な改善を求めた。 (乙63,64)g 平成28年2月16日,カッターの刃に持ち手用と思われるテープが巻かれた物が段ボール箱に混入していた。 そこで,被控訴人は,同日,控訴人に対し,その旨を連絡するとともに,原因及び対策等を書面で回答することを求めた。 (乙32,65)h 平成28年2月19日,検査数300個のうち43個に台紙誤りが確認され,不良率は14.3%であった。 - 62 -そこで,被控訴人は,同日,控訴人に対し,その旨を連絡するとともに,原因及び対策等を書面で回答することを求めた。 (乙66)i 平成28年3月16日,靴紐の先端のチップが外れている品質不良が確認された(乙32)。 (オ) 控訴人は,被控訴人に対し,平成28年1月20日付けメール(乙22の1・2)において,「2012年からお取引させていただいております靴ひも及びその他製品ですが/ご存じの通り人件費,原材料の価格高騰,管理費の増加により/現状価格の維持が困難になってまいりました。/当社では価格維持のため,諸経費の削減,製造の合理化を図るなど/努力を重ねてまいりました。/しかしながら,もはやこうした自助努力では吸収できない状況となり/誠に不本意ながら,値上げを決定した次第です。/つきましては,2016年1月1日より新価格を適用させていただきたく/存じます。/新価格については,添付ファイルをご参照ください。」と記載し 況となり/誠に不本意ながら,値上げを決定した次第です。/つきましては,2016年1月1日より新価格を適用させていただきたく/存じます。/新価格については,添付ファイルをご参照ください。」と記載して,控訴人の被控訴人に対する被告各商品の販売価格の値上げを求めた。 (カ) 控訴人は,被控訴人に対し,平成28年2月2日付けメール(乙23の1・2)において,「お電話にてお話しいたしました/価格の再度修正の件及び新規ご発注いただきました物に/Pl を作成いたしましたのでご確認ください。」と記載して,控訴人の被控訴人に対する被告各商品の販売価格の再度の値上げを求めた。その値上げ幅は,平成27年の販売価格に対し5割を超えるものであった(値上げ後の価格は,パッケージ部分を除いた50cmの紐本体で1.78倍〔=12.3元÷6.91元〕,パッケージ部分を除いた75cmの紐本体で2.27倍〔=16.8元÷7.4元〕。乙21)。 (キ) 被控訴人は,平成28年4月以降,日本において,本件製造会社(同年11月末頃までは訴外株式会社スリーランナー,同年12月頃からは訴外株式会社モリト)に被告各商品を製造させ,被告各商品を独自に販売している(前記第2 - 63 -の2(5))。 (ク) Bは,平成28年4月13日,被控訴人に対し,「競争になると,私は必ずあなたの工場より安い価格で売れる。私は100円で売っても継続できる。 あなたはできる?」などと記載した同日付けメール(乙31)を送付した。 (ケ) 中国の上海(市内)における月額法定最低賃金は,平成25年が1620人民元,平成26年が1820人民元,平成27年が2020人民元,平成28年(4月26日現在)が2190人民元であった(乙26)。 (コ) 1ポンド当たりの 最低賃金は,平成25年が1620人民元,平成26年が1820人民元,平成27年が2020人民元,平成28年(4月26日現在)が2190人民元であった(乙26)。 (コ) 1ポンド当たりのゴムの月間平均価格(シンガポール商品取引所の先物価格)は,平成25年においては,149.85~112.93USセントであり,平成26年においては,105.52~72.72USセントであり,平成27年においては,同年5月に最高値として83.55USセントとなって以降,同年11月に最安値として55.44USセントとなるまで漸減し,同年12月は56.59USセントであった(乙24)。 (サ) 1キロリットル当たりのナフサの月次価格(財務省貿易統計)は,平成25年においては,6万8251円~5万8017円であり,平成26年においては,7万1100円~5万9905円であり,平成27年1月~8月においては,5万0077円~4万1357円であり,同年9月~12月においては,4万0783円~3万8357円であった(乙25)。 イ前記ア認定の事実によると,被控訴人の平成27年の被告各商品の販売実績は,月間平均8万4000本程度であったところ,控訴人が,同年9月頃から月間10万本程度の最低購入数量を保証することを求めたこと,控訴人は,平成28年1月及び2月に,被控訴人に販売する被告各商品について従来の1.5倍以上の値上げを求めたこと,控訴人が値上げの理由とした原材料の価格高騰に関し,ゴム及びナフサについては,平成27年後半の価格は平成25年以降で見ると相対的に安値の水準にあったこと,控訴人が被控訴人に販売した被告各商品には度重なる品質不良が見られ,被控訴人は控訴人に対し再三にわたりその改善を求めていたこ - 64 -とが認められる。 対的に安値の水準にあったこと,控訴人が被控訴人に販売した被告各商品には度重なる品質不良が見られ,被控訴人は控訴人に対し再三にわたりその改善を求めていたこ - 64 -とが認められる。 もっとも,平成26年2月に被告各商品がテレビ番組で取り上げられたことから,同月の被告各商品の販売実績は,前月の3.5倍以上の13万3036本となり,同年3月~5月には,被控訴人は,大手靴販売店を含む多くの顧客から被告各商品について問い合わせを受けたものの,当時の控訴人ら3者の被告各商品の生産能力が月間5万本程度であったことから,商品を供給できない状態に陥ったこと,そのため,被控訴人は,同年6月頃,控訴人ら3者に対し,月間30万本以上の販売ができる見込みであるから,これに対応できるようにして欲しい旨を述べたこと,これを受けて,控訴人ら3者は,月間30万本までは難しいとしても,月間15万本程度は販売できるものと考え,新たな設備を導入したこと,被告各商品の販売実績は,同年6月~12月は月間平均5万5000本弱,平成27年は月間平均8万5000本弱にとどまり,被控訴人から控訴人に対する被告各商品の発注数量は,平成27年1月~8月の月間平均で約3万3000本であり,同年の旧正月明け~8月の月間平均で約4万4000本にとどまったこと,中国の上海(市内)における平成27年の月額法定最低賃金は,平成25年の約1.25倍となっており,平成28年も増加傾向にあったことが認められる。 そうすると,控訴人が平成27年9月頃から最低購入数量の保証を求め,平成28年1月及び2月に値上げを求めた背景には,控訴人ら3者が最終決断したものであるとはいえ,平成26年6月頃被控訴人が月間30万本以上という販売見込みを示して,控訴人ら3者をして新たな設備を導入させたものの,その後 月に値上げを求めた背景には,控訴人ら3者が最終決断したものであるとはいえ,平成26年6月頃被控訴人が月間30万本以上という販売見込みを示して,控訴人ら3者をして新たな設備を導入させたものの,その後,被告各商品の販売実績が月間平均8万5000本を下回る水準にとどまり,平成27年1月~8月の発注数量が上記設備導入前に生産可能であった月間5万本さえも大きく下回る水準にとどまったことがあるものと認められる。また,控訴人が値上げの理由とした人件費の高騰については,中国の上海(市内)における月額法定最低賃金の動向によると,これを推認することができる。 以上を総合すると,被控訴人が主張する最低購入数量保証要求,従来の1.5倍 - 65 -以上の値上げ要求,度重なる品質不良の事実を考慮しても,被控訴人と控訴人との信頼関係が破壊されるなど,甲6契約書13条所定の「別段の定」の継続を期待しがたい重大な事由が存するものとまでは認めることはできないから,「別段の定」が解除されたものとは認められない。 (5) 被控訴人は,控訴人がクールノットを1本1.11~1.24ドルで販売したこと(乙27,28,38)が,本件共同出願契約14条1項に違反することから,平成30年10月15日付け準備書面(12)をもって,本件共同出願契約を直ちに又は相当期間の経過をもって解除したとの主張を同準備書面により行った。 しかし,本件においては,平成30年6月25日の第8回口頭弁論期日において,「次回口頭弁論期日で侵害論の審理を終える予定なので,当事者双方はそれまでに主張立証を尽くすこと」との訴訟指揮がされ,同年8月29日の第9回口頭弁論期日において,同日までの双方の主張立証を踏まえて,「原判決別紙物件目録1~6についての本件特許権侵害による損害賠償請求については,損 を尽くすこと」との訴訟指揮がされ,同年8月29日の第9回口頭弁論期日において,同日までの双方の主張立証を踏まえて,「原判決別紙物件目録1~6についての本件特許権侵害による損害賠償請求については,損害論の審理を行う。香港への出願に関する債務不履行及び説明義務違反による損害賠償請求については,損害論の審理を行わない。」との訴訟指揮がされたのであるから,原審で提出した乙号証に基づく上記解除の主張は,故意又は重大な過失により時機に後れて提出したものであり,これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認められる。前記第2の4(10)ア(ウ)の被控訴人の主張を踏まえても,上記判断は左右されない。 したがって,上記解除の主張は,控訴人の申立てにより,これを却下することとする(民訴法157条1項)。 3 争点(1)サ(「別段の定」違反の主張の可否)について(1) 被控訴人は,控訴人は購入数量保証要求や法外な値上げ要求,不良品の混入等の行為によって,被控訴人をして独自生産に切り替えざるを得ない事情を作出したのであるから,そのような控訴人において被控訴人が「別段の定」に違反した - 66 -ことを主張することは,信義則に反し,許されないと主張する。 しかし,前記2(4)と同様に,被控訴人が主張する事実を踏まえても,控訴人において,被控訴人が「別段の定」に違反したことを主張することが,信義則に反し許されないものとまでは認められない。また,控訴人の行為が被控訴人の債務不履行を許容する意思表示であったということもできない。 (2) 被控訴人は,控訴人は,被控訴人による本件固定的役割分担合意違反を主張する反面,他国市場においてはそのような合意など全く存在しないものとして靴紐を販売し,更には日本市場においても,自らは上記合意を反故にして販 ,控訴人は,被控訴人による本件固定的役割分担合意違反を主張する反面,他国市場においてはそのような合意など全く存在しないものとして靴紐を販売し,更には日本市場においても,自らは上記合意を反故にして販売を開始しているのであるから,被控訴人が「別段の定」に違反する旨を主張することは許されないと主張する。 しかし,仮に,控訴人による日本市場における本件特許発明の実施品の販売が「別段の定」に違反するのであれば,控訴人もまた「別段の定」に違反したことに基づく不利益を受けるべき立場にあるとはいえるが,これにより,控訴人において,被控訴人が「別段の定」に違反したことを主張することが許されないものとまでは認められない。また,控訴人が海外市場において結ばない靴紐の販売をしているとしても,我が国の特許権の行使に係る「別段の定」に違反することはなく,これを併せ考慮しても,上記判断は左右されない。 4 争点(1)シ(通常実施権の有無)について以上のとおり,特許法73条2項の「別段の定」が存するから,被控訴人は,本件発明1-1の技術的範囲に属する被告各商品を製造・販売し,もって本件特許権1を侵害したものと認められる。 特許法79条の2第1項は,同法74条1項による請求に基づく特許権の移転の登録の際に適用される規定であるから,本件に同法79条の2第1項が適用されることはない。 また,前記第2の2(4)アのとおり,被控訴人は,「別段の定」が記載された甲6契約書に署名したのであるから,特許法79条の2第1項を類推適用する基礎も認 - 67 -められない。したがって,同項が類推適用されることもない。 5 争点(1)ス(過失の有無)について被控訴人は,同人が特許権者であること,被告各商品の日本への生産移管に当たり,被控訴人が相談した弁護士, 。したがって,同項が類推適用されることもない。 5 争点(1)ス(過失の有無)について被控訴人は,同人が特許権者であること,被告各商品の日本への生産移管に当たり,被控訴人が相談した弁護士,弁理士,中国弁理士は,いずれも本件共同出願契約書13条後段の規定により特許が剥奪されるものであることを警告しなかったこと,同条前段では改良発明の取得について禁止しているから,同条後段が日本への生産移管を禁止することは予見できなかったこと,控訴人からも同条後段違反の指摘がなかったことなどを主張して,被控訴人には,特許権侵害に過失はない旨主張する。 しかし,被控訴人は,甲6契約書に自ら署名したのであるから,その13条の内容を知悉しているべき立場にあった上,同条は,事前の協議及び許可なく,「本件の各権利(本件特許権)」の実施品の生産又は販売行為を行った場合には,「本件の各権利」は剥奪されるという明解なものであって,これが特許法73条2項の「別段の定」に当たることは明らかであるから,被控訴人には,本件製造会社に本件発明1-1の実施品である被告各商品を製造させて被告各商品を独自に販売したことが,「別段の定」に違反し,本件特許権1を侵害することについて,少なくとも過失があると認められる。 上記判断は,被控訴人が相談した弁護士,弁理士,中国弁理士から警告がなかったことや,控訴人から指摘がなかったことにより,左右されるものではない。 なお,被控訴人の上記主張は,平成30年10月15日付け準備書面(12)でされたものであるが,被控訴人は,それより前から過失を争う旨の主張をしていたことに照らし,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下することはしない。 6 争点(1)セ(無効の抗弁の成否)について被控訴人は,本件発明1-1は,乙 う旨の主張をしていたことに照らし,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)として却下することはしない。 6 争点(1)セ(無効の抗弁の成否)について被控訴人は,本件発明1-1は,乙104に記載された発明と同一であるか,同発明及び当業者の技術常識に基づき,容易に想到できるから,本件特許1の請求項 - 68 -1は,特許無効審判により無効にされるべきものであるとの主張を平成30年10月15日付け準備書面(13)により行った。 しかし,前記2(5)と同様の理由により,上記無効の抗弁は,故意又は重大な過失により時機に後れて提出されたものであり,これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認められる。前記第2の4(14)ア(イ)の被控訴人の主張を踏まえても,上記判断は左右されない。 したがって,上記無効の抗弁は,控訴人の申立てにより,これを却下することとする(民訴法157条1項)。 7 争点(1)ソ(控訴人は特許権を有しない旨の主張の成否)について被控訴人は,控訴人は,クールノットの販売により,平成28年10月23日以降,本件特許権の持分が剥奪され,無権利者の状態にあり,また,B及びAも,遅くとも平成28年10月23日をもって無権利者となったとの主張を,平成30年10月15日付け準備書面(12)により行った。 しかし,前記2(5)と同様の理由により,上記の主張は,故意又は重大な過失により時機に後れて提出されたものであり,これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認められる。前記第2の4(10)ア(ウ)の被控訴人の主張を踏まえても,上記判断は左右されない。 したがって,上記主張は,控訴人の申立てにより,これを却下することとする(民訴法157条1項)。 8 特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求につい 張を踏まえても,上記判断は左右されない。 したがって,上記主張は,控訴人の申立てにより,これを却下することとする(民訴法157条1項)。 8 特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求についての小括以上によると,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)のうち,控訴人の共有持分権に係る部分は,理由がある。 他方,B及びAの共有持分権に係る部分については,前記第2の2(7)のとおり,控訴人ら3者が,平成29年5月10日,B及びAが控訴人に対し,B及びAが被控訴人に対して有する本件特許権1に基づく損害賠償請求権を譲渡する旨合意したことが認められるものの,上記債権譲渡の効力が及ぶ範囲(将来債権を含む - 69 -か。)という問題があるので,B及びAの共有持分権に係る部分については,中間判決では判断しないこととする。 9 争点(2)(香港での特許出願手続に係る債務不履行の成否)について被控訴人は,甲15書面を本件特許事務所から受領していない旨主張するが,証拠(甲20)によると,本件特許事務所は,平成26年2月12日,甲15書面と同内容の書面に捺印したものを,被控訴人宛てに普通郵便で発送したことが認められるから,上記書面は,同月13日頃,被控訴人に配達されたものと推認される。 しかし,甲6契約書12条1項は,「本件発明は,日本国内出願のほか,PCT条約に基づく国際出願,パリ条約に基づく外国出願,及び台湾への出願を行う。」と定め,同条2項は,「PCT条約に基づく国際出願の指定国,及びパリ条約に基づく外国出願の出願国,本件発明の特許出願の分割出願,或いは特許法第41条に定める規定,優先権主張する出願について,甲,乙,丙及び丁は協議の後,別途に定める。」と定めているにとどまるから,同条は,PCT条約 出願の出願国,本件発明の特許出願の分割出願,或いは特許法第41条に定める規定,優先権主張する出願について,甲,乙,丙及び丁は協議の後,別途に定める。」と定めているにとどまるから,同条は,PCT条約による国際出願を中国に国内移行させることを規定しておらず,更に香港特許庁に対し記録請求手続を行うことを規定しているものとはいえない。 そこで,本件4者間で香港への特許出願をすること(PCT条約による国際出願を中国に国内移行させ,更に香港特許庁に対し記録請求手続を行うこと)が別途合意されていたかどうかを検討すると,これを示す書証は提出されておらず,香港が控訴人の営業拠点であることに加え,本件特許事務所が被控訴人に対し平成24年9月10日付けで香港への記録請求手続の特許出願手数料等の見積書(甲87)を発行し,上記のとおり,平成26年2月12日には被控訴人に対し香港への権利化手続を希望するか否かを問い合わせる内容の甲15書面と同内容の書面に捺印したものを郵送したことを考慮しても,上記合意を認めるに足りない。 そうすると,香港での特許出願手続に係る債務不履行に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は,理由がない。 10 争点(3)(説明義務違反の不法行為の成否〔説明義務違反の有無〕)につい - 70 -て控訴人は,仮に本件固定的役割分担合意が認められない場合,被控訴人には,信義則上,そのような合意がないことを控訴人ら3者に説明する義務があったと主張するが,本件全証拠によっても,控訴人主張の説明義務を認めるに足りる根拠は見当たらない。 そうすると,説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は,理由がない。 11 争点(8)(反訴請求の可否)について被控訴人は,控訴審において平成30年10月 そうすると,説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は,理由がない。 11 争点(8)(反訴請求の可否)について被控訴人は,控訴審において平成30年10月15日に反訴を提起したが,相手方である控訴人は,反訴答弁書において,上記反訴の提起に同意しない(民訴法300条1項),反訴の提起は著しく訴訟手続を遅滞させると主張して,本案前の答弁として反訴請求に係る訴えの却下を求めた。 上記反訴請求の内容に照らすと,上記反訴の提起について相手方である控訴人の審級の利益を害さないものとは認められないから,相手方である控訴人の同意を不要とすることはできない。また,前記2(5)と同様に,反訴の提起は著しく訴訟手続を遅滞させるものである。 よって,被控訴人の上記反訴の提起は,不適法である。 第4 結論以上によると,本訴請求のうち,①特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)の控訴人の共有持分権に係る部分は,理由があり,②香港での特許出願手続に係る債務不履行に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は,理由がなく,③説明義務違反の不法行為に基づく損害賠償請求の原因(数額の点は除く。)は,理由がなく,他方,反訴請求に係る訴えは,不適法であるから,主文のとおり中間判決する。 知的財産高等裁判所第2部 - 71 - 裁判長裁判官森 義之 裁判官森岡礼子 裁判官 裁判官森岡礼子 裁判官古庄
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