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主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人山崎佐、同吉永多賀誠の上告理由第一点について。第一審判決理由を引用する原判決が、判示事実関係のもとに、現在本件建物の賃借人は上告会社単独であつて、上告会社と訴外D株式会社との共同賃借ではない旨認定したのは、これに対応する証拠関係に照らして首肯するに足りる。所論は、採証法則違背、理由不備を主張するけれども、結局原審が適法に行なつた証拠の取捨判断および事実認定を非難するに帰し、採用することができない。同第二、第三点について。論旨は、要するに、原判決が、上告人において本件賃料額決定につき参酌すべきものとして主張した事由を排斥したのは、審理不尽、理由不備、経験則違背および借家法七条の解釈適用を誤つた違法があるという趣意に解せらる。しかし、原判決は、(一)所論の修理費、改築費は、建物自体の修理にあたるもの、造作にあたるもの、店舗に置いてあるもの等であつて、各費目の詳細は不明であるから、賃料額決定についてある程度斟酌するに値するものであること(二)本件建物の賃料が従来比隣の建物に比較して特に低額であつたことの証明がないこと(三)昭和三一年一月当時におけるE商店ほか四軒の賃料については、それぞれ判示のような特殊事情があるので、これらの賃料をもつて昭和二九年四月当時の本件建物の賃料を定めるについて、比隣の賃料として、本件賃料額の決定についての参考にはならないこと(四)所論の権利金は、新賃借人が前賃借人に対し、賃借権のほか営業権およびこれに関する一切の権利並びに造作、電話加入権の対価として支払われたものであり、上告人主張の不動産をFに無償で譲渡したのは、同人が上告- 1 -会社との共同経営から脱退する代償であるか 営業権およびこれに関する一切の権利並びに造作、電話加入権の対価として支払われたものであり、上告人主張の不動産をFに無償で譲渡したのは、同人が上告- 1 -会社との共同経営から脱退する代償であるから、いずれも本件賃料額の決定に関係のないものであること(五)賃料額の算定にあたつては、目的物の価格が基準となるものであつて、賃料増額請求の場合に、借地権の附着する土地の価格から借家権の価格を控除した残額をもつて基準としたり、土地所有者の取得価格を基準とすべきではないこと(六)物価高騰の比率をそのまま賃料増額の比率とはなしえず、従来特に低額であつた賃料については、急激な増額を避くべきではあるが、本件においては、本件建物の賃料が特に低額であつた事実は認め難く、本件建物のように、既にほとんど発展しつくした土地およびその地主の建物の価額が主として極端なインフレーシヨンによつて高騰したような場合は、賃料もまた急激に増額せられるのは止むをえないものであること、を説示した上、挙示の証拠により、昭和二九年三月頃の本件建物の増額請求について定めらるべき相当賃料は、一箇月二〇万八〇五〇円を下らないものと認めるのが相当である旨判断しているのであつて、原審の右判断は首肯するに足りる。 うに、既にほとんど発展しつくした土地およびその地主の建物の価額が主として極端なインフレーシヨンによつて高騰したような場合は、賃料もまた急激に増額せられるのは止むをえないものであること、を説示した上、挙示の証拠により、昭和二九年三月頃の本件建物の増額請求について定めらるべき相当賃料は、一箇月二〇万八〇五〇円を下らないものと認めるのが相当である旨判断しているのであつて、原審の右判断は首肯するに足りる。所論は、右と異なる独自の見解に基づき、原審の認定にそわない事実を前提として原判決を非難するものであつて、論旨はいずれも採用することができない。よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官池田克裁判官河村大助裁判官奥野健一裁判官 池田克裁判官河村大助裁判官奥野健一裁判官山田作之助裁判官草鹿浅之介- 2 -
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