令和6特(わ)3846 金融商品取引法違反

裁判年月日・裁判所
令和7年3月26日 東京地方裁判所
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判決文本文4,974 文字)

令和7年3月26日宣告東京地方裁判所刑事第18部令和6年特(わ)第3846号金融商品取引法違反被告事件 主文 被告人を懲役2年及び罰金100万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 この裁判が確定した日から4年間その懲役刑の執行を猶予する。 被告人の株式会社Tに対するU株式会社の株券5700株に係る売買代金債権(金479万3700円相当)を没収する。 被告人から金1020万7900円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、金融庁企画市場局企業開示課課長補佐として、金融庁長官の命を受けて、同課が所掌する金融商品取引法の規定による公開買付届出書その他の書類の審査及び処分などの職務に従事していた者であるが、同職務上の権限の行使に関し、第1 令和6年4月17日頃、A株式会社の業務執行を決定する機関が、株式会社東京証券取引所(以下「東京証券取引所」という。)が開設する有価証券市場に株券を上場していたB株式会社(以下「B」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同日、C株式会社(以下「C」という。)を介し、東京都中央区(住所省略)所在の東京証券取引所において、被告人名義でBの株券合計100株を代金合計29万円で買い付け、第2 遅くとも同月25日頃までに、D合同会社の業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたE株式会社(以下「E」という。)の株券 金合計29万円で買い付け、第2 遅くとも同月25日頃までに、D合同会社の業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたE株式会社(以下「E」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公 開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同月30日、Cを介し、東京証券取引所において、被告人名義でEの株券合計300株を代金合計32万8500円で買い付け、第3 遅くとも同年5月28日頃までに、株式会社Fの業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたG株式会社(以下「G」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同日、Cを介し、東京証券取引所において、被告人名義でGの株券合計500株を代金合計24万7500円で買い付け、第4 遅くとも同年7月4日頃までに、H株式会社の業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していた株式会社I(以下「I」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同日及び同月9日、Cを介し、東京証券取引所において、被告人名義でIの株券合計700株を代金合計96万2600円で買い付け、第5 遅くとも同月23日頃までに、株式会社Jの業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたK株式会社(以下「K」という。)の株券の公開買付けを行う い付け、第5 遅くとも同月23日頃までに、株式会社Jの業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたK株式会社(以下「K」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同日、Cを介し、東京証券取引所等において、被告人名義でKの株券合計700株を代金合計35万6260円で買い付け、第6 同日頃、L株式会社の業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設す る有価証券市場に株券を上場していたM株式会社(以下「M」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同日、Cを介し、東京証券取引所において、被告人名義でMの株券合計200株を代金合計54万9200円で買い付け、第7 遅くとも同年8月14日頃までに、Nの業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していた株式会社O(以下「O」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同日、Cを介し、東京証券取引所において、被告人名義でOの株券合計300株を代金合計42万7500円で買い付け、第8 遅くとも同日頃までに、株式会社Pの業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたQ株式会社(以下「Q」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたQ株式会社(以下「Q」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同日、Cを介し、東京証券取引所において、被告人名義でQの株券合計400株を代金合計108万4000円で買い付け、第9 遅くとも同月19日頃までに、R株式会社の業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していた株式会社S(以下「S」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実が公表される前である同月20日から同月22日までの間、Cを介し、東京証券取引所等において、被告人名義でSの株券合計2900株を代金合計202万3500円で買い付け、 第10 遅くとも同月29日頃までに、株式会社Tの業務執行を決定する機関が、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたU株式会社(以下「U」という。)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事業が公表される前である同日から同年9月5日までの間、Cを介し、東京証券取引所等において、被告人名義でUの株券合計5700株を代金合計324万7920円で買い付けたものである。 (追徴に関する補足説明) 1 弁護人は、被告人は買い付けた株券の売付代金をその後の株券買付けの原資として株券の買付けと売付けを繰り返したのであるから、後行する株券の売付代金の没収又は売付額の追徴に加えて先行する株 説明) 1 弁護人は、被告人は買い付けた株券の売付代金をその後の株券買付けの原資として株券の買付けと売付けを繰り返したのであるから、後行する株券の売付代金の没収又は売付額の追徴に加えて先行する株券の売付額を追徴することは、経済的に同一の財産に対して二重評価をすることになるので、本件については、金融商品取引法198条の2第1項ただし書を適用し、判示第10の買付けによって得た財産の対価として得た財産(被告人の株式会社Tに対するU株式会社の株券5700株に係る売買代金債権479万3700円相当)を没収するほかは、判示第1から第9までの各利益(各売付額と各買付額との差額である売却益)の合計額である393万8840円程度に追徴額を減ずるのが相当である旨主張する。 2 金融商品取引法198条の2は、同法197条の2第13号、167条1項3号の犯罪行為により得た財産又はその財産の対価として得た財産を保持したり利用したりすることを許容せず、これらの財産を全て剥奪することとし、これらの財産が別の犯罪行為やその他の経済行為に再投資され新たな収益を得るための原資に用いられることのないようにしている。したがって、没収又は追徴の対象は、犯罪行為によって得た利益に限られず、犯罪行為により得た財産若しくはその財産の対価として得た財産又はこれらの価額の全てである。 3 関係各証拠によれば、判示第1から第9までの各犯罪行為により被告人が買 い付けた各株券の売付代金は合計1020万7900円であると認められ(なお、買付額は合計626万9060円)、売付額の合計1020万7900円が金融商品取引法198条の2第2項、1項2号により必要的追徴の対象となる。 4 他方で、金融商品取引法198条の2第1項ただし書は、「その取得の状況、損害賠償の履行の状況その他の事情に 7900円が金融商品取引法198条の2第2項、1項2号により必要的追徴の対象となる。 4 他方で、金融商品取引法198条の2第1項ただし書は、「その取得の状況、損害賠償の履行の状況その他の事情に照らし、当該財産の全部又は一部を没収することが相当でないときは、これを没収しないことができる」と規定するが、これは、犯罪行為により得た財産若しくはその財産の対価として得た財産を没収し、又はこれらの価額を追徴することが被告人にとって過酷な結果をもたらすなどの場合に没収又は追徴を裁量的に減免することを許容するものと解される。 5 弁護人は、前記1のとおり、売付額の合計額を追徴すれば経済的に同一の財産に対して二重評価をすることになるので追徴額を減ずるべきである旨主張するが、犯罪行為により得た財産又はその財産の対価として得た財産は、各犯罪行為ごと各別に没収又は追徴の対象とされるものである。買付けに当たり先行する売付代金を原資とすることは、前記2のとおり、むしろ抑止されなければならないことであり、それ自体追徴額を減ずる事情になるとはいえない。二重評価との主張は採用することができない。そして、本件について金融商品取引法198条の2第1項ただし書を適用しないことが、被告人に過酷な結果をもたらすことになるとまではいえない。 6 したがって、金融商品取引法198条の2第1項ただし書を適用せず、被告人から売付額合計1020万7900円を追徴する。 (量刑の理由)本件は、裁判官として金融庁に出向し金融商品取引法の規定による公開買付届出書その他の書類の審査及び処分などの職務に従事していた被告人が常習的に行った犯行であり、金融商品市場の公平性と健全性、金融商品市場に対する一般投資家の信頼を大きく損なうばかりか、金融庁による公開買付案件に対する監督制度の信頼を大 の職務に従事していた被告人が常習的に行った犯行であり、金融商品市場の公平性と健全性、金融商品市場に対する一般投資家の信頼を大きく損なうばかりか、金融庁による公開買付案件に対する監督制度の信頼を大きく失墜させるものである。本件各犯行に際し、被告人の規範意識の欠落は甚 だしい。これらによれば、被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 しかし、他方で、被告人が、犯行を認め、反省している旨述べていること、被告人の両親が監督を誓約していること、被告人に前科はないことなどの事情も認められるので、これらの事情も考慮し、主文掲記の懲役刑に処することとし、この種犯罪が経済的にも割に合わないことを知らしめるため罰金刑を併科するのを相当とする(求刑懲役2年及び罰金100万円、主文同旨の没収及び追徴)。 よって、主文のとおり判決する。 令和7年3月26日東京地方裁判所刑事第18部 裁判官野村賢

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