主文 1 甲事件原告らの請求をいずれも棄却する。 2 被告奈良県は,原告ニッセイ同和に対し,107万2400円及びこれに対する平成13年3月3日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 3 被告中和広域は,原告ニッセイ同和に対し,160万8600円及びこれに対する平成13年3月3日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 4 原告ニッセイ同和のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,甲事件原告らに生じた費用の全部と被告奈良県に生じた費用の45分の44を甲事件原告らの負担とし,原告ニッセイ同和に生じた費用の18分の13と被告奈良県に生じた費用の135分の2と被告中和広域に生じた費用の2分の1と被告富田林市に生じた費用の全部を原告ニッセイ同和の負担とし,原告ニッセイ同和に生じた費用の9分の1と被告奈良県に生じた費用の135分の1を被告奈良県の負担とし,原告ニッセイ同和に生じた費用の6分の1と被告中和広域に生じた費用の2分の1を被告中和広域の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件被告奈良県が甲事件原告らに対し平成13年3月30日付けでした各道路復旧工事費用負担命令をいずれも取り消す。 2 乙事件被告奈良県は,原告ニッセイ同和に対し,325万8775円及びこれに対する同月3日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 3 丙事件被告中和広域及び被告富田林市は,原告ニッセイ同和に対し,各自325万8775円及びこれに対する同日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 甲事件は,被告奈良県が,大阪府と奈良県の府県境に所在するαトンネル内で発生した車両火災 775円及びこれに対する同日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 甲事件は,被告奈良県が,大阪府と奈良県の府県境に所在するαトンネル内で発生した車両火災によって同トンネル内に損傷を生じたとして,道路法58条1項に基づき,上記車両の運転者である甲事件原告A及びその使用者で上記車両を所有する甲事件原告Bに対し,上記損傷の復旧工事費用として各自1億4320万1684円の負担を命じたため,甲事件原告らが,上記各負担命令はいずれも違法であるとして,それらの取消しを求めている事案である。 乙事件及び丙事件は,上記車両について,原告Bとの間で自動車総合保険契約を締結していた原告ニッセイ同和が,上記火災によって生じた上記トンネル内の他の車両及び運転者等の人的・物的被害に対し,保険金合計1086万2586円を支払ったが,上記被害の発生につき原告Aに過失があるとしてもそれは1割程度であり,残りの9割は,被告奈良県,被告中和広域及び被告富田林市(以下,単に「被告ら」という。)の責めに帰するものである旨主張して,保険代位により共同不法行為者間の求償権に基づき,被告らに対し,各自,上記支払済み保険金の3割相当額である325万8775円及びこれに対する上記保険金の最終の支払日の翌日である平成13年3月3日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 2 前提事実(争いのない事実)(1) 当事者ア原告Bは,「C化成工業所」の屋号でプラスチック加工業を営む者であり,原告Aは,C化成工業所の被用者である。 イ原告ニッセイ同和は,火災保険,賠償保険等の各種保険事業を目的とする株式会社である。 ウ被告奈良県は,平成11年法律第 む者であり,原告Aは,C化成工業所の被用者である。 イ原告ニッセイ同和は,火災保険,賠償保険等の各種保険事業を目的とする株式会社である。 ウ被告奈良県は,平成11年法律第87号による道路法13条1項の改正により,平成12年4月1日,奈良県の区域内に存する指定区間以外の国道を管理する者(道路管理者)としての権限を奈良県知事から承継した者である。なお,上記改正前において一般国道309号のうち奈良県及び大阪府の区域内に存する部分の道路管理者であった奈良県知事及び大阪府知事は,上記改正前の道路法19条1項の規定により,平成9年3月28日付けで,一般国道309号のうち奈良県御所市β所在のβトンネル東側坑口から大阪府南河内郡γ所在のαトンネル大阪府側坑口までの区間の道路の管理は奈良県知事が行い,上記区間のうち大阪府の区域内に存する部分については上記改正前の道路法27条2項の規定に基づき奈良県知事が大阪府知事の権限を代行する旨協定した。そのため,被告奈良県は,上記改正後において,上記区間のうち奈良県の区域内に存する部分についてはその道路管理者として(道路法13条1項),大阪府の区域内に存する部分についてはその道路管理者である大阪府に代わってその権限を行う者として(同法19条1項,27条2項,道路法施行令5条),道路法58条1項に基づき,「他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については,その必要を生じた限度において,他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担させる」権限を有している。 また,被告奈良県は,奈良県警察及び奈良県高田土木事務所の属する行政主体である。 エ被告中和広域は,大和高田市,橿原市,御所市,高取町及び明日香村により組織され,こ る。 また,被告奈良県は,奈良県警察及び奈良県高田土木事務所の属する行政主体である。 エ被告中和広域は,大和高田市,橿原市,御所市,高取町及び明日香村により組織され,これらの市町村の消防に関する事務を共同処理する一部事務組合である。 オ被告富田林市は,被告富田林市消防本部の属する行政主体である。 (2) 本件火災の概要ア αトンネルは,大阪府と奈良県の府県境を挟む全長2370メートル(府県境から大阪府南河内郡γ所在の大阪府側坑口まで1267メートル,奈良県御所市β所在の奈良県側坑口まで1103メートル)のトンネルであり,一般国道309号の一部に供されている。 イ平成12年3月9日(以下,時刻は同日のものを指す。)午前10時過ぎころ,原告Aは,荷台にプラスチック製品を積載した普通貨物自動車(車両番号奈良○○○○○○○,所有者原告B。以下「本件車両」という。)を運転し,αトンネル内を奈良県側坑口から大阪府側坑口に向かって進行中,自車の荷台から出火していることに気付いた。原告Aは,本件車両をαトンネル内の大阪府側坑口から約250メートルないし260メートルの地点に停車させた。本件車両は,同地点において炎上し,これによってαトンネル内に火災(以下「本件火災」という。)が発生した。 ウ本件火災は,被告中和広域消防本部,御所消防署,被告富田林市消防本部,千早赤阪村消防団及び御所市消防団等による消火活動の結果,同日午後零時ころ鎮火した。 エ本件火災により,αトンネル内に,①巻立コンクリートのひび割れ及びカーボン付着,②コンクリート舗装の路面表示へのカーボン付着及び数か所の剥離,③電気通信設備及びジェットファンの破損の各損傷(以下「本件損傷」という。)が生じた 内に,①巻立コンクリートのひび割れ及びカーボン付着,②コンクリート舗装の路面表示へのカーボン付着及び数か所の剥離,③電気通信設備及びジェットファンの破損の各損傷(以下「本件損傷」という。)が生じた。 その後,奈良県は,本件損傷について,道路管理上支障があるとして,αトンネルの復旧工事を施行したが,同工事には,合計1億4320万1684円を要した。 オ本件火災により,本件車両以外にαトンネル内へ進入していた車両及びその搭乗者ら(消火活動等に従事した公務員を除く。以下「本件被害者ら」という。)に,別紙2「支払金額」欄記載のとおりの損害が生じた。 (3) 本件各負担命令等ア被告奈良県は,甲事件原告らに対し,平成13年3月30日付けで,道路管理上支障があるので被告奈良県において本件損傷の復旧工事を施行したとして,道路法58条1項に基づき,各自,上記復旧工事に要した費用相当額1億4320万1684円を負担するよう命じる旨の各道路復旧工事費用負担命令(以下「本件各負担命令」という。)をした。 イ甲事件原告らは,国土交通大臣に対し,同年4月16日付けで,本件各負担命令の取消しを求める旨の審査請求をしたが,国土交通大臣は,平成14年3月20日,上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。 ウ甲事件原告らは,同年6月12日,甲事件の訴えを提起した。 (4) 本件保険契約及び保険金の支払ア原告ニッセイ同和は,平成11年3月17日,原告Bとの間で,本件車両について,次の内容の保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。 (ア) 保険の種類自家用自動車総合保険(イ) 保険始期同日(ウ) 保険終 約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。 (ア) 保険の種類自家用自動車総合保険(イ) 保険始期同日(ウ) 保険終期平成12年3月17日(エ) 担保種類・保険金額対人・無制限対物・無制限搭乗者障害・1000万円イ原告ニッセイ同和は,本件保険契約に基づき,別紙2ニッセイ同和支払金リスト記載のとおり,本件被害者らに対し,平成13年3月2日までに,保険金合計1086万2586円を支払った。 3 争点及び当事者の主張(1) 甲事件ア道路法58条1項の合憲性(甲事件原告らの主張)道路法58条1項の道路の損傷の回復という規制目的それ自体は一応正当であるが,原因者の過失の有無や他の原因者の競合等を問うことなく負担金を課すことを認めるのは,上記目的達成のための必要最小限度の規制とはいえない。同項の規定は,負担命令を受ける者の財産権(憲法29条1項)を侵害し,違憲無効であり,これに基づく本件各負担命令も違法である。 (被告奈良県の主張)道路法58条1項は,人的公用負担の規定であり,特定の財産に対する制約ではなく,負担命令の相手方に債務を課すものにすぎないから,その相手方の財産権侵害は問題とならない。また,仮に,財産権侵害が問題になるとしても,道路法58条1項の立法目的は公共の福祉に合致し,その手段として行政処分の形式を採っていることにも必要性・合理性が認められるから,立法府の合理的裁量を超えるものではな 財産権侵害が問題になるとしても,道路法58条1項の立法目的は公共の福祉に合致し,その手段として行政処分の形式を採っていることにも必要性・合理性が認められるから,立法府の合理的裁量を超えるものではなく,憲法29条1項に違反しない。 イ道路法58条1項該当性(過失の要否及び相当因果関係の有無)(被告奈良県の主張)道路法58条1項の「他の行為」とは,道路を損傷し,若しくは汚損した行為若しくは道路の補強,拡幅その他道路の構造の現状を変更する必要を生じさせた行為をいう(同法22条1項)ところ,本件では,原告Aが出火した本件車両を運転し,αトンネル内に停車させ,かつ,残置した行為がこれに該当する。 原告Aの上記行為と本件損傷との間には相当因果関係が存在する。 (甲事件原告らの主張)「他の行為」,すなわち道路を損傷し,若しくは汚損した行為若しくは道路の補強,拡幅その他道路の構造の現状を変更する必要を生じさせた行為とは,行為者に過失のある行為でなければならないところ,本件では,原告Aに過失はないから,その行為は「他の行為」に該当しない。 また,仮に過失を要しないとしても,当該行為が道路の損傷等に単なる条件関係を与えたにとどまらず,当該行為と道路の損傷等との間に相当因果関係が必要である。本件では,確かに,本件火災は本件車両から発火しており,原告Aは本件損傷に対して条件関係を与えているが,その後,消防及び警察の不適切な対応により(その詳細は,後記乙事件及び丙事件における原告ニッセイ同和の主張に同じ。),本件火災は2時間を超えても鎮火せず,2キロメートル以上に及ぶαトンネル全体に煙害が発生し,本件損傷が生じたのであり,このような事態は通常予想し得ない 丙事件における原告ニッセイ同和の主張に同じ。),本件火災は2時間を超えても鎮火せず,2キロメートル以上に及ぶαトンネル全体に煙害が発生し,本件損傷が生じたのであり,このような事態は通常予想し得ないものである。よって,原告Aの行為と本件損傷との間には相当因果関係がない。 ウ裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無(甲事件原告らの主張)後記乙事件及び丙事件における原告ニッセイ同和の主張のとおり,本件損傷には被告奈良県及び丙事件被告らが9割方寄与しているのに,甲事件原告らに全額の負担命令をすることは,著しく公正を欠き,理由なく差別的取扱いをするもので,平等原則違反・比例原則違反は明白であるから,本件各負担命令は,被告奈良県に与えられた裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものである。 (被告奈良県の主張)本件車両の火災と本件損傷との間に相当因果関係が存在する以上,本件各負担命令に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はない。 百歩譲って,本件損傷の拡大に原告A以外の他者の寄与があり得ると仮定しても,① 本件損傷のそもそもの原因が本件車両の火災であることは明白であること,② 他者はいずれも事後に関係したものであり,かつその本件損傷の拡大への寄与の有無・程度・割合が容易に判然としなかったこと等の事情があり,このような具体的状況にかんがみれば,原因者たる甲事件原告らに全額の負担命令を発することは,目的達成のための手段として権衡を失しているとは思われないので,比例原則に違反するものではない。また,原因者と事後に寄与したかもしれない者を区別することが不合理な差別とはいえないので,平等原則にも違反しない。甲事件原告らは,他に本件損傷の拡大に寄与した関係者が存在すると思料す るものではない。また,原因者と事後に寄与したかもしれない者を区別することが不合理な差別とはいえないので,平等原則にも違反しない。甲事件原告らは,他に本件損傷の拡大に寄与した関係者が存在すると思料するのであれば,同関係者に対して事後的に求償すべきである。 (2) 乙事件及び丙事件ア被告奈良県の責任の有無(原告ニッセイ同和の主張)(ア) 一般車両の進入防止措置を怠ったことトンネル火災において,トンネル坑口に到着した警察官は,坑口でバリケード等による閉鎖をするなどして,一般車両の進入を防止する措置を執る義務を負う。しかし,御所警察署警察官は,上記措置を怠り,また,御所警察署長は,上記措置を執るべく指示をすることを怠り,αトンネル内の状況を把握しないまま,本件火災覚知後,漫然と8台の一般車両を奈良県側坑口からαトンネル内に進入させた。 (イ) ジェットファンの操作を誤ったこと高田土木事務所担当者は,午前11時10分ころ,トンネル内の状況も確認しないまま漫然と奈良県側にジェットファンを作動させた。これにより本件火災の消火活動が妨げられ,本件損傷が拡大した。 (ウ) 相互応援協定の作成指導を怠ったこと消防組織法18条の2により,被告奈良県は,大阪府との府県境に存するαトンネルの消防に関し,奈良県側の市町村に対し,大阪府側の市町村との相互応援協定を作成するよう指導する義務を負っていた。しかるに,被告奈良県は,上記協定の作成指導を怠った。 (被告奈良県の主張)(ア) 一般車両の進入について御所警察署は,午前10時25分ころ,通報を受け,第1陣として,同署D交通課長が単独で現場 った。 (被告奈良県の主張)(ア) 一般車両の進入について御所警察署は,午前10時25分ころ,通報を受け,第1陣として,同署D交通課長が単独で現場に急行した。Dは,午前10時38分ころ,奈良県側坑口に到着し,消防署員への状況確認,同署員からの指示に従っての2度にわたる車両の移動,御所警察署への無線連絡と絶え間なく職務を遂行していたのであり,一般車両の運転手と接触するいとまもなかった。まして,αトンネル内に一般車両の進入を許可した事実はない。 Dは,奈良県側坑口に到着した後,消防署員が慌ただしく作業をし,一般車両が一列に並んで停車していたという現場の状況から,既に車両規制がされていると判断したものであり,この判断は十分に首肯できるものである。そして,上記状況下では,一般車両がαトンネル内に進入することなど予測できなかったし,その間,通行止め等の措置を執る時間も全くなかった。 (イ) ジェットファンの操作について高田土木事務所の職員2名が奈良県側坑口に到着した際には,既に同坑口全断面から黒煙が噴出している状況であった。同土木事務所職員Eは,現場の状況を高田土木事務所に報告中,現場にいた消防署職員から,排煙をしてほしいという要請を受け,被告奈良県がαトンネルの警備を委託していた総合警備保障株式会社の警備員に対して奈良県側への排煙を指示し(午前11時3分),奈良県側電気室において既に何者かの手によって停止されていたジェットファンの再起動の操作をさせ,奈良県側のジェットファン7台を起動して,奈良県側への排煙を行った。その後,午前11時15分,消防署職員から大阪府側への排煙を指示され,Eはその指示に従い大阪府側のジェットファン7台を起動させて大阪府側への排煙 ェットファン7台を起動して,奈良県側への排煙を行った。その後,午前11時15分,消防署職員から大阪府側への排煙を指示され,Eはその指示に従い大阪府側のジェットファン7台を起動させて大阪府側への排煙を行った。 Eらが奈良県側坑口に到着した際の状況では,既に煙害は奈良県側坑口にまで及び,αトンネル内には煙が充満していることは明白であったから,その煙を早く排出しようとした消防からの要請は是認できるものであって,Eがジェットファンによる排煙を試みたことは妥当であるし,奈良県側の7台を動かしたのであるから,新鮮な空気がαトンネル内に流入して発火車両の燃え上がりを加速させたとまではいえず,ジェットファンの再起動が煙害を拡大させたともいえない。 (ウ) 相互応援協定の作成指導等について消防組織法は消防の組織と権限の配分等について規定する組織法であるし,そもそも消防は市町村に責任があり,市町村の都道府県からの自主性が規定されており(同法6条,19条),また,同法の「市町村」は,当該都道府県区域内の市町村を指している。したがって,同法18条の2から原告が主張するような都道府県の具体的作為義務が導出されるものではない。 イ被告中和広域の責任の有無(原告ニッセイ同和の主張)(ア) 一般車両の進入防止措置を怠ったことトンネル火災において,トンネル坑口に到着した消防隊員は,警察官等が未到着であれば,坑口でバリケード等による閉鎖をするなどして,一般車両の進入を防止する措置を執る義務を負う。しかし,被告中和広域消防本部の消防隊員は,上記義務を怠り,αトンネル内に8台の一般車両を進入させた。 (イ) ジェットファンの操作の指示の誤りa る措置を執る義務を負う。しかし,被告中和広域消防本部の消防隊員は,上記義務を怠り,αトンネル内に8台の一般車両を進入させた。 (イ) ジェットファンの操作の指示の誤りa 被告中和広域消防本部職員は,本件火災の通報を受けた時(午前10時23分)には,新鮮な空気がαトンネル内に流入することにより火力が増強して燃毀が拡大することを防止するため,高田土木事務所に対し,ジェットファンを停止させるよう直ちに要請する義務を負っていたのに,その要請をせず,本件火災を覚知した午前10時23分から何者かによってジェットファンが停止された午前10時42分までの約20分間,ジェットファンを稼働させ続け,本件火災の火力を増強させた。 b また,被告中和広域消防本部職員は,αトンネル内の非常電話から本件火災の通報を受けたが,この非常電話の「大阪側第○,ナンバー○○○」という番号から,本件火災の発生場所が大阪側坑口付近であることを認識するべきであったので,ジェットファンを再作動する場合には,大阪府側に向けて作動させるべきであり,ジェットファンを奈良県側に向けて作動させてはならないという義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,午前11時10分ころ,奈良県側に向けてジェットファンを作動させるように指示し,午前11時15分ころまでの約5分間,奈良県側に向けてジェットファンを作動させた。 (ウ) 事前準備を怠ったことa 被告中和広域消防本部消防長は,本件火災後,御所消防署長が作成した「αトンネル内の火災対応策について」と題する文書記載の各事項について,本件火災の発生前に準備しておくべきであったのに,これを怠っていた。 b 被告中和広域消防本部消防長は,被告中和広域消防本部及び被告富田林市消防本 て」と題する文書記載の各事項について,本件火災の発生前に準備しておくべきであったのに,これを怠っていた。 b 被告中和広域消防本部消防長は,被告中和広域消防本部及び被告富田林市消防本部が平成12年6月20日付けで制定した「一般国道309号αトンネル警備計画」の各事項について,本件火災の発生前に準備し,同様の計画を作成しておくべきであったのに,これらを怠っていた。 (被告中和広域の主張)(ア) 一般車両の進入について原告ニッセイ同和の「一般車両を進入させた」との主張が,積極的な作為を意味するにせよ,停止措置等の対応を講じなかったとの不作為を意味するにせよ,被告中和広域消防本部の消防隊員が,一般車両に対し,αトンネル内に進入することを指示又は許可したことはない。 被告中和広域の消防隊員は,午前10時37分にαトンネル奈良県側坑口に到着した後,トンネル内の人命探索,人命安全確保を最優先に必要かつ適切な作業に従事していた。午前10時38分には警察官が同坑口に到着しており,その後の交通規制の責任と権限は警察にある。 (イ) ジェットファンの操作についてa 現場到着時には,既にジェットファンは止まっていた。αトンネル内の非常通報用押ボタンが押されると,自動的に全ジェットファンが停止する仕組みになっている。 b 被告中和広域消防本部通信指令課は,本件火災の通報に係る非常電話の位置から本件火災の発生場所を把握し,これに基づいた出動指令を発していた。また,被告中和広域の現場指揮者であった御所消防署F主幹は,トンネル内の避難者の人命確保のため,現場にいた高田土木事務所職員と思われる人物に対し,ジェットファンを大阪府側へ作動させ,排煙するよう た。また,被告中和広域の現場指揮者であった御所消防署F主幹は,トンネル内の避難者の人命確保のため,現場にいた高田土木事務所職員と思われる人物に対し,ジェットファンを大阪府側へ作動させ,排煙するように指示した。Fがジェットファンの作動を指示したのは大阪府側への1度だけである。 (ウ) 事前の協議,訓練について御所市,千早赤阪村及び被告中和広域は,府県境における消防活動について,平成9年3月10日付けで「αトンネルに関する消防相互応援協定」を制定していた上,翌11日には,被告中和広域消防本部,御所市消防本部,高田土木事務所,千早赤阪村消防団,被告富田林市消防本部等10団体の合同による訓練を行っており,事前協議及び訓練は十分であった。 また,御所消防署においては,平成10年8月に署員によるαトンネルの設備及び実態調査を実施し,平成11年4月8日には,高田土木事務所管理課及び警備会社から現地でαトンネルの設備の説明を受け,αトンネルの実態調査を行っている。なおかつ,平成10年7月23日には,αトンネル東側のβトンネル内で火災が発生した際,多数の消防署員が出動しており,トンネル火災に対する署員の知識及び経験も十分であった。 a 「αトンネル内の火災対応策について」と題する文書は,御所消防署長が,本件火災後,過去の訓練,関係機関との応援協定及び実態調査の成果と本件火災の経験とを踏まえ,これらを再確認する趣旨で職員教養のために配布した資料の一部にすぎず,法律上の注意義務を基礎付けるものではない。 b 平成12年6月20日付けの「一般国道309号αトンネル警備計画」は,平成12年4月1日付けで千早赤阪村が消防業務を被告富田林市に委託したことにより,前記平成9年3月10日付け「αトンネ b 平成12年6月20日付けの「一般国道309号αトンネル警備計画」は,平成12年4月1日付けで千早赤阪村が消防業務を被告富田林市に委託したことにより,前記平成9年3月10日付け「αトンネルに関する消防相互応援協定」が廃止され,新たに御所市,被告中和広域,千早赤阪村及び被告富田林市の4行政機関により,平成12年4月1日付けで「αトンネルに関する消防相互応援協定」が締結されたことに伴い,被告中和広域と被告富田林市消防本部が既存の「一般国道309号αトンネル警備計画」に修正変更を加えて制定したものにすぎない。 ウ被告富田林市の責任の有無(原告ニッセイ同和の主張)(ア) 被告中和広域消防本部との適切な連携を欠いたこと等αトンネルを管轄する消防は,奈良県側は被告中和広域消防本部であり,大阪府側は被告富田林市消防本部であったところ,被告富田林市消防長は,被告中和広域消防本部等と緊密かつ適切に情報交換をし,連携して人命救助及び消火活動をする義務があるのに,これを怠り,ジェットファンの停止,再作動の向き等に関する適切な指示をせず,消火活動を遅滞させた。 (イ) 事前準備を怠ったことa 被告富田林市消防長は,本件火災後,御所消防署長が作成した「αトンネル内の火災対応策について」と題する文書記載の各事項について,本件火災の発生前に準備しておくべきであったのに,これを怠っていた。 b 被告富田林市消防長は,被告中和広域消防本部及び被告富田林市消防本部が平成12年6月20日付けで制定した「一般国道309号αトンネル警備計画」の各事項について,本件火災の発生前に準備し,同様の計画を作成しておくべきであったのに,これらを怠っていた。 が平成12年6月20日付けで制定した「一般国道309号αトンネル警備計画」の各事項について,本件火災の発生前に準備し,同様の計画を作成しておくべきであったのに,これらを怠っていた。 (被告富田林市の主張)(ア) 被告中和広域消防本部との連携等について原告ニッセイ同和の主張のうち,被告富田林市消防本部に一般的な人命探索及び消火活動をする義務があることは認めるが,その余は否認又は争う。 αトンネルの大阪府側坑口については,被告中和広域消防本部次長,御所消防署長及び被告富田林市消防本部警備課長の三者により,αトンネルから噴出してくる煙の状況等を中止しながら対応について十分検討協議し活動した。なお,αトンネル内に設置されているジェットファンの操作や指示については,被告富田林市消防本部の消防隊は一切関与していない。 (イ) 事前準備について原告ニッセイ同和の主張は否認又は争う。 本件火災当時,αトンネルの災害時における消防活動の主管は,「αトンネルに関する消防相互応援協定書」により,被告中和広域,御所市及び千早赤阪村にあり,被告富田林市はαトンネルに関しその消防活動を主管する立場にはなかった。したがって,αトンネルに係る火災想定訓練等にあっても,主管地方公共団体の消防機関が立案実施しており,被告富田林市にはその実施権限はなかった。 エ原告A及び被告らの過失割合(原告ニッセイ同和の主張)前記の諸事情によれば,本件火災によって生じたαトンネル内の本件車両以外の車両及びその運転者等の人的・物的被害の発生につき,原告Aに過失があるとしてもそれは1割程度であり,残りの9割は,被告らの責めに帰す 諸事情によれば,本件火災によって生じたαトンネル内の本件車両以外の車両及びその運転者等の人的・物的被害の発生につき,原告Aに過失があるとしてもそれは1割程度であり,残りの9割は,被告らの責めに帰するものであるところ,被告らの過失割合は,それぞれ3割が相当である。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実当事者間に争いのない事実,証拠(別紙3「証拠等」欄記載のとおり。なお,書証番号はいずれも枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,本件火災の発生及び消火の経緯について,別紙3「認定事実」欄記載のとおりの事実が認められる。 2 乙事件及び丙事件の争点について(1) 被告奈良県の過失の有無(乙事件及び丙事件争点ア)についてア御所警察署警察官に一般車両の進入防止措置を怠った過失があるか否か(ア) 前記認定のとおり,本件火災が鎮火した際の本件火災の発生現場付近の車両の停車状況は,別紙4記載のとおりであったところ,これによれば,消防車(御所消防署のタンク車)よりも東側(奈良県側)に,奈良県側坑口から進入したものと考えられる8台の一般車両(本件被害者らのうちG,H,I,J,K,L,M,N及びOの搭乗車両)が停車していたものと認められる。そうすると,午前10時38分ころ,被告中和広域のタンク車隊及びポンプ車隊が奈良県側坑口に到着し,タンク車隊がαトンネル内へ進入して,ポンプ車隊が大阪側坑口へ向かった後,奈良県側坑口付近に停車していた上記一般車両がトンネル内に進入した上記タンク車の後方から相次いでαトンネル内に進入してしまったものと推認することができる。 そして,前記認定事実によれば,警察の第1陣として御所警察署のD交通課長が ル内に進入した上記タンク車の後方から相次いでαトンネル内に進入してしまったものと推認することができる。 そして,前記認定事実によれば,警察の第1陣として御所警察署のD交通課長が奈良県側坑口に到着したのは,上記消防車両の到着後,ポンプ車隊が大阪側坑口へ向かう前であり,Dの到着時には,数台の一般車両が奈良県側坑口前に停車していたというのであるから,上記一般車両がαトンネル内へ進入した際には,Dも奈良県側坑口付近にいた蓋然性が高いものと考えられる。 したがって,Dは,奈良県側坑口に到着後,一般車両の進入を阻止するため直ちに交通規制を行うべき職務上の義務を負っていたのに,これを怠った過失があるものと認められる。 (イ) 他方,上記認定事実によっても,上記一般車両がαトンネル内に進入した時点では,いまだ本件火災及び車両等の状況について何ら具体的情報を得ていなかった御所警察署長に,Dに対し,奈良県側坑口において交通規制を実施するよう指示すべき具体的な注意義務があったと解することはできず,同署長に過失があるものとは認められない。 イ高田土木事務所職員にジェットファンの操作を誤った過失があるか否か前記認定事実によれば,Eは,消防隊員らしい服装の人物から排煙してほしいとの要請を受け,警備員に指示して奈良県側へ排煙するようジェットファンを起動させたが,その後,Fから大阪府側への排煙を指示され,再度警備員に指示して大阪府側へ排煙するようジェットファンを起動させたことが認められる。そして,前記認定事実によれば,上記起動時点では,本件火災の発生現場よりも奈良県側の坑内に多数の一般車両搭乗者・消防隊員がいたものと推認されるから,結果的にみれば,上記のような奈良県側への排煙は,これらの ,前記認定事実によれば,上記起動時点では,本件火災の発生現場よりも奈良県側の坑内に多数の一般車両搭乗者・消防隊員がいたものと推認されるから,結果的にみれば,上記のような奈良県側への排煙は,これらの者の安全を確保する上では,不適切な点があったものといわざるを得ない。 しかし,前記認定事実及び証拠(乙8,証人E)によれば,<ア> Eが奈良県側坑口に到着した際には,黒煙が同坑口の全断面から噴出している状況であったこと,<イ> Eは,そのような状況で排煙を要請されたこと,<ウ> Eは,本件火災の発生現場よりも奈良県側の坑内に多数の一般車両搭乗者・消防隊員がいることを知らなかったこと,<エ> 奈良県側への排煙が始まったころ,大阪府側坑口では,同坑口から噴出する煙量が少なくなるのが目撃され,これをきっかけにαトンネル内へ進入しての消火活動がされたことが認められる。これらの事情に照らすと,奈良県側へ排煙しようとしたEの判断が,同人の置かれた状況において,一概に誤りであったとは断じ難いところであるし,奈良県側への排煙が,結果的には,大阪側坑口からαトンネル内への進入・消火活動を促すことになったということもできる。 したがって,Eが奈良県側へジェットファンを起動させたことについて,同人に過失があったということはできない。 なお,Eが,消防隊員の指示に反したジェットファンの操作をしたことを認めるに足りる証拠はない。 ウ奈良県知事に消防組織法18条の2に基づく相互応援協定の作成指導を怠った過失があるか否か市町村は,必要に応じ,消防に関し相互に応援するように努めなければならず,市町村長は,消防の相互応援に関して協定することができる(消防組織法21条)ところ,都道府県は,「市町村の消防の相互 市町村は,必要に応じ,消防に関し相互に応援するように努めなければならず,市町村長は,消防の相互応援に関して協定することができる(消防組織法21条)ところ,都道府県は,「市町村の消防の相互応援に関する計画の作成の指導に関する事項」に係る事務をつかさどるものとされている(同法18条の2第8号)。 しかし,証拠(丁1)によれば,御所市,千早赤阪村及び被告中和広域は,平成9年3月10日付けで,「αトンネルに関する消防相互応援協定書」を締結していたものと認められる。 したがって,奈良県知事に,同号の規定に基づく相互応援協定の作成指導義務違反による過失があったと解することはできない。 エ小括以上のとおり,被告奈良県は,本件被害者らのうちG,H,I,J,K,L,M,N及びO並びに同人らの搭乗車両の損害について,Dの前記過失に基づく責任を負っていたものと認められる。 (2) 被告中和広域の過失の有無(乙事件及び丙事件争点イ)についてア消防隊員に一般車両の進入防止措置を怠った過失があるか否か前判示のとおり,被告中和広域のタンク車隊及びポンプ車隊が奈良県側坑口に到着し,タンク車隊がαトンネル内へ進入して,ポンプ車隊が大阪側坑口へ向かった後,奈良県側坑口付近に停車していた数台の一般車両(本件被害者らのうちG,H,I,J,K,L,M,N及びOの搭乗車両)がαトンネル内に進入してしまったことが認められる。 そして,Fは,前記認定のとおり,タンク車隊がαトンネル内へ進入し,ポンプ車隊が大阪側坑口へ向かってからも,奈良県側坑口付近にとどまっており,しかも,いまだ警察官等による同所における交通規制も開始されていなかったのであるから,消防活動の一 隊がαトンネル内へ進入し,ポンプ車隊が大阪側坑口へ向かってからも,奈良県側坑口付近にとどまっており,しかも,いまだ警察官等による同所における交通規制も開始されていなかったのであるから,消防活動の一環として本件火災に伴う被害の拡大を避けるため,直ちに一般車両の進入を防止する措置を執る義務を負っていたというべきであり,Fには,その措置を怠った過失があるものと認められる。 なお,前判示のとおり,タンク車隊がαトンネル内へ進入し,ポンプ車隊が大阪側坑口へ向かった時点では,Dも奈良県側坑口に到着していたものと認められるが,Dは,第1陣として1人で同坑口に急行してきたものであること,Fや他の消防隊員からDに対し明確な引継がされた形跡が認められないことに照らすならば,Fに一般車両のトンネル内への進入を防止する措置を執るべき義務がなかったということはできない。 イ消防隊員にジェットファンの操作に関する高田土木事務所への指示を誤った過失があるか否か(ア) 前記認定事実及び証拠(乙5)によれば,ジェットファンの監視モニターの時計は,平成9年3月28日に供用が開始された後,修正されたことはなかったが,平成13年9月7日時点では,9分進んでいたこと,モニターデータ上,午前9時59分ころから午前10時42分ころまでの間,大阪府側へジェットファンが作動していたことを示す記録があることが認められる。 そうすると,前記認定のとおり,午前10時27分に本件火災発生の通報を受けた高田土木事務所職員のEらが奈良県側坑口に到着したのは午前11時ころであるから,仮に,本件火災の通報を受けた被告中和広域消防本部職員が高田土木事務所に対しジェットファンの停止を直ちに指示していたとしても,ジェットファンを停止させることができ 着したのは午前11時ころであるから,仮に,本件火災の通報を受けた被告中和広域消防本部職員が高田土木事務所に対しジェットファンの停止を直ちに指示していたとしても,ジェットファンを停止させることができたのは,午前11時以降となっていたものと認められる。 したがって,被告中和広域消防本部の職員が高田土木事務所に対しジェットファンの停止を指示しなかったことについて,過失があったということはできない。 (イ) 前記のとおり,Eは,消防隊員らしい服装の人物から排煙をしてほしいとの要請を受け,警備員に奈良県側へジェットファンを起動させたが,その後,Fから大阪府側への排煙を指示され,警備員に大阪府側へジェットファンを起動させたことが認められる。 上記認定事実及び証拠(証人E)によれば,Eに対し最初に排煙を依頼した人物は,消防隊員であった可能性が高いものと認められるが,その者は,Eに対し,単に「煙を何とかしてほしい」と要請したものであって,ジェットファンを奈良県側へ起動するよう要請したものとは認められない。 また,前記認定事実のとおり,上記当時,被告中和広域の消防隊員は,Fの指示により,奈良県側坑口と大阪府側坑口の双方から救助・消火活動を行おうとしていたこと,Eが奈良県側坑口に到着した際には,奈良県側坑口の全面から黒煙が噴出している状況であったことが認められるから,午前11時ころの時点において,奈良県側坑口付近にいた消防隊員に,高田土木事務所職員に対し,大阪府側への排煙を指示すべき職務上の義務があったと解することはできない。 したがって,仮に,Eに対し排煙をしてもらいたい旨の要請をした人物が消防隊員であったとしても,その者がEに対し大阪府側への排煙を指示しなかったこ があったと解することはできない。 したがって,仮に,Eに対し排煙をしてもらいたい旨の要請をした人物が消防隊員であったとしても,その者がEに対し大阪府側への排煙を指示しなかったことについて,過失があったということはできない。 ウ被告中和広域消防本部消防長に事前の準備を怠った過失があるか否か(ア) 証拠(甲3)によれば,御所消防署長は,本件火災の発生後,その消火活動に当たっての経験を踏まえて,αトンネル及びβトンネル内での火災対応策を定めたことが認められる。 しかしながら,上記事実のみをもって,本件火災の発生前の時点において,あらかじめ被告中和広域消防本部本部長に,上記火災対応策を定めておくべき職務上の義務があったということはできず,同本部長に過失があったとは認められない。 (イ) 証拠(甲8)によれば,被告中和広域と同富田林市は,平成12年6月30日付けで「一般国道309号αトンネル警備計画」を締結したことが認められる。 しかしながら,証拠(丁1,証人P)によれば,本件火災の発生当時,大阪府側の所轄消防組織は,被告富田林市消防本部ではなく,千早赤阪村消防団であったことが認められるから,被告中和広域消防本部本部長に,被告富田林市との間で,上記警備計画と同様の計画を本件火災前に締結しておくべき職務上の義務があったということはできず,同本部長に過失があったとは認められない。 エ小括以上のとおり,被告中和広域は,本件被害者らのうちG,H,I,J,K,L,M,N及びO並びに同人らの搭乗車両の損害について,Fの前記過失による責任を負っていたものと認められる。 (3) 被告富田林市の過失の有無(乙事件及び丙事件争点ウ) うちG,H,I,J,K,L,M,N及びO並びに同人らの搭乗車両の損害について,Fの前記過失による責任を負っていたものと認められる。 (3) 被告富田林市の過失の有無(乙事件及び丙事件争点ウ)についてア被告富田林市消防長に被告中和広域消防本部との適切な連携を欠いた過失があるか否かこの点について原告ニッセイ同和の主張するところは抽象的である上,本件全証拠によっても,本件火災に対する被告富田林市消防本部の消防活動に,被告中和広域消防本部との適切な連携を欠く点があったとは認められず,被告富田林市消防長に上記過失があったということはできない。 イ被告富田林市消防長に事前の準備を怠った過失があるか否か前判示のとおり,本件火災の発生当時,大阪府側の所轄消防組織は,被告富田林市消防本部ではなく,千早赤阪村消防団であったことが認められるから,そもそも被告富田林市消防長に火災対応策ないし前記「一般国道309号αトンネル警備計画」と同様の計画を定めておくべき職務上の義務があったと解する余地はなく,過失があったとは認められない。 ウ小括以上のとおり,本件被害者らに関する損害について,被告富田林市に責任があったとは認められない。 (4) 原告A及び被告らの過失割合(乙事件及び丙事件争点エ)についてア (1)ないし(3)において判示したところによれば,本件被害者らのうちQ,R,S及びT(F及びDが奈良県側坑口に到着するまでに同坑口からαトンネルへ進入した者)に関する損害合計550万0585円については,被告らに責任はなく,原告ニッセイ同和が被告らに対し求償権を行使する余地はない。 イ他方,本件被害者らのうちG,H,I,J,K,L,M,N及 に関する損害合計550万0585円については,被告らに責任はなく,原告ニッセイ同和が被告らに対し求償権を行使する余地はない。 イ他方,本件被害者らのうちG,H,I,J,K,L,M,N及びOに関する損害合計536万2001円については,前判示のとおり,被告奈良県及び同中和広域に責任があるものと認められる。 (ア) そこで,原告Aの本件被害者らに対する責任の有無について検討すると,前記認定のとおり,原告Aは,本件車両の発火に気付いた後,停車するかどうか迷いながら約200ないし300メートル走行したが,これくらいの火であればその場で消火することができると判断し,αトンネル内の大阪府側坑口から約250メートルの地点において本件車両を停車させて消火活動を行ったものの,結局これに失敗し,炎上する本件車両を放置して避難したものである。また,証拠(甲15,原告A)によれば,原告Aは,本件火災の発生当時,αトンネルを毎日通行しており,大阪府側出口近くがややカーブになっていることを認識していたところ,そのカーブに差しかかったところで本件車両の出火に気付いたことが認められるから,上記のとおり本件車両を停車させた際には,正確な距離まではともかく,大阪府側坑口が近いことを十分認識していたものと推認される。これらの事情に加え,一般に,トンネル内の車両火災においては,煙の発生等によって車両の通行や搭乗者の生命身体の安全に重大な危険が生じるおそれがあると考えられること,本件車両には多量のプラスティック製品が積み込まれており,これが炎上すれば更に煙害の危険が高まることは原告Aも容易に予見できたであろうことを考慮すると,原告Aとしては,αトンネル外まで本件車両を運転してから停車し,消火活動に入るべきであったのであり,かつ,そのような措置を執ることも十分 高まることは原告Aも容易に予見できたであろうことを考慮すると,原告Aとしては,αトンネル外まで本件車両を運転してから停車し,消火活動に入るべきであったのであり,かつ,そのような措置を執ることも十分に可能であったものと認められる。 したがって,原告Aには,本件車両をαトンネル外まで運転してから消火活動を行うべき義務があったというべきであり,その義務を怠り,本件車両をαトンネル内に停車させた点において,過失があったものといわざるを得ない。 (イ) 次に,原告A,被告奈良県及び同中和広域の過失割合について検討する。 確かに,本件被害者らのうち上記9名に関する損害発生の原因となったのは,原告Aの前記行為により引き起こされた本件火災である。 しかし,仮に,F及びDにより適切な進入防止措置ないし交通規制がされていたならば,上記9名に損害が生じることは避けられた可能性が高く,被告奈良県及び同中和広域の各過失割合を軽くみることもできない。 また,被告奈良県及び同中和広域の各過失割合については,FはDよりも先に奈良県側坑口へ到着していたこと,上記9名がαトンネル内へ進入したと考えられるのは,Dが警察の第1陣として1名で奈良県側坑口に到着してから間がなかった時点であることを考慮すると,被告中和広域の過失割合をやや重くみるのが相当である。 したがって,原告A,被告奈良県及び同中和広域の過失割合は,原告Aが5割,被告奈良県が2割,被告中和広域が3割と評価するのが相当である。 ウ以上によれば,原告ニッセイ同和は,被告奈良県に対しては107万2400円,被告中和広域に対しては160万8600円の各求償権を有するものと認められる。 3 甲 るのが相当である。 ウ以上によれば,原告ニッセイ同和は,被告奈良県に対しては107万2400円,被告中和広域に対しては160万8600円の各求償権を有するものと認められる。 3 甲事件の争点について(1) 道路法58条1項の合憲性(甲事件争点ア)について道路法58条1項は,「道路管理者は,他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については,その必要を生じた限度において,他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担させるものとする。」と規定している。 道路は,一般国民の日常生活に必要不可欠で重要な公共用物であることにかんがみ,道路の管理に要する費用は,道路管理者が負担するのが原則であるが,上記道路法58条1項の規定するいわゆる原因者負担金制度は,他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については,当該他の工事又は他の行為がなければその必要が生じなかったはずであり,その費用を道路管理者に負担させることは衡平に反し,当該他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にこれを負担させるのが衡平にかなう上,特に他の行為により道路に損傷・汚染等が生じた場合,前記のような重要性を有する道路につき迅速に本来の機能を回復させるための修理等を道路管理者において実施し,その費用を原因者である他の行為につき費用を負担する者に負担させるのが便宜であることから定められたものと解される。 そうすると,たとえ,上記規定に基づく負担命令が,それを受ける費用負担者の財産権(憲法29条1項)を制限するものであるとしても,その制限は,上記のとおり,公共用物である道路の管理に関する衡平な費用負担及び迅速な機能回復等の適切な管理の実現を目 が,それを受ける費用負担者の財産権(憲法29条1項)を制限するものであるとしても,その制限は,上記のとおり,公共用物である道路の管理に関する衡平な費用負担及び迅速な機能回復等の適切な管理の実現を目的とするものであり,その規制目的は公共の福祉に合致する正当なものというべきである。 また,道路法58条1項の規定は,費用負担を命ずる原因となった他の工事又は他の行為の適法・違法,過失の有無を問題としていないが,衡平の原則の観点から負担を命ずるものである以上,工事施行者又は行為者に過失があるか否か等を問わないとしても,それが不合理であるということはできない。さらに,仮に,工事施行者又は行為者に過失がなく,あるいは複数の工事施行者又は行為者の関与が認められるために,衡平の観点からみて,特定の費用負担者に費用の全部を負担させることが相当でない場合には,道路管理者は,その裁量により,負担命令の発令を差し控え,あるいは,費用の一部のみについて負担命令を発することもできるものと解される。また,道路法58条1項の規定による負担命令が発せられる範囲は,「その必要を生じた限度」に限られ,費用負担者に対し,それ以上の不利益を課すものではない。これらの事情を考慮すると,同項が,工事施行者又は行為者の過失を負担命令の発令要件としておらず,かつ,それらの者が競合する場合を想定した定めを置いていないことが,前記のような規制目的を達成するための手段として必要性又は合理性に欠けることが明らかであるということはできない。 したがって,同項の規定は,たとえ負担命令を受ける費用負担者の財産権(憲法29条1項)を制約するものであるとしても,公共の福祉に適合するものであり,目的達成の手段としての必要性・合理性に欠けるため立法府の合理的裁量の範囲を超えるとも認められな ける費用負担者の財産権(憲法29条1項)を制約するものであるとしても,公共の福祉に適合するものであり,目的達成の手段としての必要性・合理性に欠けるため立法府の合理的裁量の範囲を超えるとも認められないのであって,同条に違反するものということはできない。 (2) 道路法58条1項該当性(甲事件争点イ)についてア道路法58条1項に規定する「他の行為」とは,道路を損傷し,若しくは汚損した行為若しくは道路の補強,拡幅その他道路の構造の現状を変更する必要を生じさせた行為をいう(同法22条1項)。 前記前提事実及び認定事実によれば,原告Aが,出火した本件車両を本件トンネル内に停車させ,残置した結果,本件火災が発生し,本件損傷が生じたものと認められる。 したがって,原告Aの上記行為は,「他の行為」に該当する。 イ甲事件原告らは,「他の行為」に該当するためには行為者の過失が必要である旨主張する。 しかしながら,道路法58条1項,22条1項の規定上,「他の行為」に行為者の過失が必要とはされていない。また,前判示のとおり,同項に規定する原因者負担金制度は,他の工事又は他の行為によって生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用を,衡平の原則に基づき,当該他の工事又は他の行為の費用負担者に負担させるというものであり,そのような観点からは,工事施行者又は行為者に過失があるか否かを問う必要はないと考えられる。さらに,前判示のとおり,行為者に過失がなく,衡平の観点からみて,費用負担者に費用の全部を負担させることが相当でない場合には,道路管理者は,その裁量により,負担命令の発令を差し控え,あるいは,費用の一部のみについて負担命令を発することもできるものと解されるから,行為者の過失が「他の行為」 担させることが相当でない場合には,道路管理者は,その裁量により,負担命令の発令を差し控え,あるいは,費用の一部のみについて負担命令を発することもできるものと解されるから,行為者の過失が「他の行為」の要件でないと解したとしても,特段の不都合はないといえる。なお,前判示のとおり,道路法58条1項の規定が憲法29条1項に違反する疑いがあるということはできないから,「他の行為」に行為者の過失が必要である旨の合憲限定解釈をする必要があるとも解されない。 したがって,「他の行為」に行為者の過失が必要と解することはできず,甲事件原告らの上記主張を採用することはできない。 なお,2(4)イ(ア)において判示した諸事情に加え,上記停車位置において消火活動に失敗した場合には,火災そのものや煙害によりαトンネル内の設備に損傷が生じることは十分に予見可能であったものと認められることを考慮すると,本件損傷の発生との関係においても,原告Aには,本件車両をαトンネル外まで運転してから消火活動を行うべき義務があったというべきであり,その義務を怠り,本件車両をαトンネル内に停車させた点において,過失があるものと認められる。 ウ甲事件原告らは,原告Aの行為と本件損傷との間には相当因果関係がない旨主張する。 しかしながら,前記認定事実によれば,原告Aが出火した本件車両を本件トンネル内に停車させて残置した行為と本件損傷の発生との間には,社会通念上相当な因果関係があるものと認められる。 甲事件原告らは,本件火災の消火活動に関し,消防及び警察に不適切な対応があった旨主張し,原告ニッセイ同和の主張を援用するところ,確かに,前判示のとおり,F及びDが適切に進入防止措置ないし交通規制を行わなかったために,同人らの奈 火活動に関し,消防及び警察に不適切な対応があった旨主張し,原告ニッセイ同和の主張を援用するところ,確かに,前判示のとおり,F及びDが適切に進入防止措置ないし交通規制を行わなかったために,同人らの奈良県側坑口への到着後に本件被害者らのうち9名がαトンネル内に進入してしまったことが認められる。しかし,本件全証拠によっても,そのことによって本件火災の消火活動が遅れたとか,本件損傷の範囲が拡大したといった事実は認められない。また,その余の点において,被告らの公務員の消防・警察活動に,原告Aの前記行為と本件損傷との因果関係を失わせるような行為があったとも認められない。 したがって,甲事件原告らの上記主張を採用することはできない。 (3) 裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無(甲事件争点ウ)について確かに,本件火災のようなトンネル内における火災が発生した場合,損傷行為者の予期しない程度にまで復旧工事費用が拡大する例があり,無過失責任を課すことが社会的妥当性を欠くような場合には,「他の工事又は他の行為により」の解釈により相当因果関係を遮断し,あるいは,「必要を生じた限度」,「全部又は一部」の運用において,負担命令が妥当な範囲で発せられるようにすべきことが指摘されているところ,本件においても,本件損傷の修復工事には,1億4320万1684円もの多額の費用がかかっている。 しかしながら,前判示のとおり,原告Aは,本件車両をαトンネル外まで運転してから消火活動を行うべき義務があったのに,これを怠り,本件車両をαトンネル内に停車させた過失により,本件火災及び本件損傷を生じさせたものである。そうであれば,被告奈良県が,本件各負担命令により,原告A及びその行為についての費用負担者である原告Bに対し,上記修復工事費用全部 に停車させた過失により,本件火災及び本件損傷を生じさせたものである。そうであれば,被告奈良県が,本件各負担命令により,原告A及びその行為についての費用負担者である原告Bに対し,上記修復工事費用全部の負担を命じることが,社会通念上著しく妥当性を欠くとまでいうことはできない。 また,前判示のとおり,F及びDが適切に進入防止措置ないし交通規制を行わなかったことが認められるが,そのことによって本件火災の消火活動が遅れたとか,本件損傷の範囲が拡大したといった事実は認められず,その余の点についても,2(1)ないし(3)において判示したところによれば,原告A以外の者が本件損傷の発生・拡大に寄与したものとは認められない。 以上によれば,比例原則・平等原則の観点から,本件各負担命令が,被告奈良県に付与された裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用してされたものということはできない。 (4) 小括よって,本件各負担命令はいずれも適法である。 4 結論以上の次第で,甲事件原告らの本訴請求はいずれも理由がないからこれらを棄却し,原告ニッセイ同和の本訴請求は,被告奈良県に対し求償金107万2400円及びこれに対する保険金の最終の支払日の翌日である平成13年3月3日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求め,かつ,被告中和広域に対し求償金160万8600円及びこれに対する前同日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条1項本文,61条を適用し,仮執行の宣言については,相当でないからこれを付さないこととして,主文 容し,その余はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条1項本文,61条を適用し,仮執行の宣言については,相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官川神裕裁判官山田明裁判官一原友彦
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