平成22年(ワ)第25934号職務発明対価請求事件判決神奈川県厚木市<以下略>原告 X同訴訟代理人弁護士金子晃同島津守同梅津有紀同栗田祐太郎同福田恵太東京都大田区<以下略>被告株式会社リコー同訴訟代理人弁護士竹田稔同木村耕太郎同服部謙太朗 主文 1 被告は,原告に対し,746万7573円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを50分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,5億円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告の従業員であった原告が,被告に在籍中,被告の業務範囲に属し,かつ原告の職務に属する「選択信号方式の設定方式」に関する発明をし,これの特許を受ける権利を被告に承継させたとして,被告に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法(以下,単に「法」という。)35条3項に基づく相当の対価の一部として,5億円及びこれに対する催告の日の翌日である平成 被告に承継させたとして,被告に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法(以下,単に「法」という。)35条3項に基づく相当の対価の一部として,5億円及びこれに対する催告の日の翌日である平成22年5月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(証拠等〈略〉を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア被告被告は,光学機器,事務用機器,音響機器,電気機器,その他一般機械器具等の製造,販売,設置工事等を目的とする株式会社である。 イ原告原告は,昭和57年3月31日,被告に入社し,同年10月にファクシミリ事業部の設計部署に配属されて,プリンタの開発(ヒーターを制御する電気回路等の設計開発)に携わり,その後,昭和58年からビジネス用小型普通紙ファクシミリ装置の操作部の電気回路設計を担当するようになり,昭和59年頃には,ビジネス用ファクシミリ装置のNCU(ネットワークコントロールユニット:網制御装置)の電気回路設計を担当していた。 原告は,平成14年4月に設計部門から知財部門に異動して知財業務を担当した後,平成22年3月31日に被告を退職した。 (2) 原告の職務発明原告は,昭和60年,被告の事業範囲に属し,かつ原告の職務に属する「選択信号方式の設定方式」に関する発明(以下「本件発明」という。)をし,その頃被告の発明取扱規定に基づいて,これの特許を受ける権利を被告に承 継した。 (3) 本件発明に係る特許ア特許登録被告は,以下のとおり,本件発明に係る特許出願をし,その登録を得た(請求項の数1。以下「本件特許」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」といい,その内容は,別紙1特許公報〈 被告は,以下のとおり,本件発明に係る特許出願をし,その登録を得た(請求項の数1。以下「本件特許」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」といい,その内容は,別紙1特許公報〈略〉(特公平6-83300公報)及びこれを補正する別紙2手続補正書〈略〉記載のとおりである。)。 特許番号第2129298号発明の名称選択信号方式の設定方式出願日昭和60年11月12日公開日昭和62年5月23日公告日平成6年10月19日登録日平成9年5月9日イ本件発明の構成要件の分説本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載は,別紙2手続補正書の該当補正部分記載のとおりであり,これを構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A」などという。)A 電話回線を伝送回線として用いる通信装置の選択信号方式の設定方式において,B1 複数の異なる信号方式の選択信号を発生する選択信号発生手段と, 2 電話回線上のダイアルトーンを検出するダイアルトーン検出手段を備え,C1 装置設置時に,上記選択信号発生手段から異なる種類の信号方式の選択信号を順次発生させ, 2 その都度上記ダイアルトーン検出手段がダイアルトーンを検出して いるかどうかを判別し,D ダイアルトーンが検出されていないときに発生させた選択信号の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定するとともに,E いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合には,あらかじめ設定された所定の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定することを特徴とするF 選択信号方式の設定方式。 ウ本件特許の出 トーンが検出され続けた場合には,あらかじめ設定された所定の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定することを特徴とするF 選択信号方式の設定方式。 ウ本件特許の出願の経緯等本件特許は,昭和60年11月12日に出願されたが(以下「本件特許出願」という。),出願当時の明細書及び図面(以下「出願時明細書等」という。)の記載は別紙1特許公報のとおりであり,その特許請求の範囲請求項1は,同特許公報の該当項記載のとおり,「電話回線を伝送回線として用いる通信装置の選択信号方式の設定方式において,複数の異なる信号方式の選択信号を発生する選択信号発生手段と,電話回線上のダイアルトーンを検出するダイアルトーン検出手段を備え,装置設置時に,上記選択信号発生手段から異なる種類の信号方式の選択信号を順次発生させ,その都度上記ダイアルトーン検出手段がダイアルトーンを検出しているかどうかを判別し,ダイアルトーンが検出されていないときに発生させた選択信号の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定することを特徴とする選択信号方式の設定方式。」というものであった。 本件特許出願については,出願公告後の平成7年1月に,平成6年法律第116号による廃止前の特許付与前異議が申し立てられた(以下「本件異議申立て」という。)。被告は,同異議手続において,上記出願当時の請求項1に構成要件Eに係る構成を付加し,それに応じて明細書中の記載を一部修正する内容の補正(以下「本件補正」という。)をし,その結果, 本件特許は,平成9年5月9日登録されるに至った。 (4) 被告と各社とのライセンス契約被告は,A社,B社,C社,D社及びE社の各社との間でそれぞれライセンス契約(以下,それぞれ「A社ライセン 本件特許は,平成9年5月9日登録されるに至った。 (4) 被告と各社とのライセンス契約被告は,A社,B社,C社,D社及びE社の各社との間でそれぞれライセンス契約(以下,それぞれ「A社ライセンス契約」などといい,上記5社との各ライセンス契約を併せて「本件各ライセンス契約」という。)を締結した。このうちA社ライセンス契約,B社ライセンス契約及びE社ライセンス契約は,いずれも被告と相手方との包括クロスライセンス契約であり,C社ライセンス契約及びD社ライセンス契約は,いずれも被告から相手方に対する本件特許に係る有償ライセンス契約である。 本件各ライセンス契約に係る各契約書には,それぞれ以下の内容の記載があるほか,各契約当事者が契約の内容等を秘密に保持し,他者に開示しない旨の秘密保持に関する定めがある。(以下略)ア A社ライセンス契約(包括クロスラインセンス契約)締結日:***標題:***対象製品:***対象特許:***契約期間:***内容:***その他:***イ B社ライセンス契約(包括クロスラインセンス契約)(ア) ***付け契約締結日:***標題:***対象製品:***対象特許:*** 契約期間:***内容:***(イ) ***付け契約締結日:***標題:***契約期間:***ウ C社ライセンス契約(有償ライセンス契約)締結日:***標題:***許諾製品:***許諾特許:本件特許内容:***対価:***その他:C社は被告に対して,***について,無償で非独占的通常実施権を許諾する(以下,この通常実施 *許諾製品:***許諾特許:本件特許内容:***対価:***その他:C社は被告に対して,***について,無償で非独占的通常実施権を許諾する(以下,この通常実施権の許諾について,契約中で特定された特許又は実用新案を「グラントバック特許」といい,被告が指定する特許又は実用新案につき実施許諾を受けることのできる権利を「グラントバック権」といい,これらを総称して「グラントバック」という。)エ D社ライセンス契約(有償ライセンス契約)締結日:***標題:***許諾製品:***許諾特許:本件特許内容:***対価:*** その他:D社は被告に対して,***について,無償で非独占的通常実施権を許諾する。 オ E社ライセンス契約(包括クロスライセンス契約)締結日:***標題:***対象製品***:******:***対象特許(被告の有する特許):***(E社の有する特許):***契約期間:***内容:***対価:***(5) 本件発明に係る対価の支払被告は,原告に対し,被告の発明取扱規定に基づいて,本件発明に関する報償金として,以下のとおり,少なくとも合計555万7000円を支払った。 ア出願報償金 ***円イ登録報償金 ***円ウ特別報償金 ***円(***社ライセンス契約に関するもの)エ特別報償金 ***円(***社ライセンス契約に関するもの)オ特別報償金 ***円(***社ライセンス契約に関するもの)カ特別報償金 ***円(***社ライセンス契約に関するもの)(6) 職務発明対価の請求原告は,平成22年5月19日,被告に対し,本件発明に ***円(***社ライセンス契約に関するもの)カ特別報償金 ***円(***社ライセンス契約に関するもの)(6) 職務発明対価の請求原告は,平成22年5月19日,被告に対し,本件発明についての特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の支払を請求した。 3 争点 (1) 時機に後れた攻撃方法の却下の申立ての当否(2) 違法収集証拠排除の申立ての当否(3) 被許諾企業による本件発明の実施の有無ア構成要件Eのクレーム解釈イ構成要件充足性(4) 被告が受けるべき利益の額ア A社ライセンス契約における利益の額イ B社ライセンス契約における利益の額ウ C社ライセンス契約における利益の額エ D社ライセンス契約における利益の額オ E社ライセンス契約における利益の額(5) 使用者貢献度(6) 相当対価の額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(時機に後れた攻撃方法の却下の申立ての当否)について〔被告の主張〕原告は,本件訴訟の第2回弁論準備手続期日(平成22年12月15日)以降,裁判所から,本件各ライセンス契約の被許諾企業の各種製品が本件発明の実施品であることについての主張立証を何度も促されたが,その後第4回弁論準備手続期日(平成23年5月17日)において,原告第5準備書面及び甲9,10を提出したのみで主張立証を尽くさず,同期日で「対価請求の額の算定の根拠として主張する被許諾企業の各種製品が本件特許の実施品であることについての主張立証は,基本的にこれまでの主張立証で尽きている。」と述べ,これが同期日の手続調書に記載された。それにもかかわらず,原告は,上記手続調書の記載事項に反し,平成23年6月8日に至って,被許諾 いての主張立証は,基本的にこれまでの主張立証で尽きている。」と述べ,これが同期日の手続調書に記載された。それにもかかわらず,原告は,上記手続調書の記載事項に反し,平成23年6月8日に至って,被許諾企業の各種製品が本件発明の実施品であることについての新たな主張を含む原告第6準備書面 を提出し,第4回弁論準備手続期日以後に行った実験結果についての書証を提出し,それ以後も同様の主張立証を重ねている。 被許諾企業における本件発明の実施の有無に関するこれらの新たな主張及び立証は,上記経過に照らして,民訴法2条2項に規定された「信義に従い誠実に民事訴訟を追行すべき義務」に反するのみならず,同法157条1項に規定する「故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃方法」であり,訴訟の完結を遅延させるものであることが明白であるから,却下されるべきである。 〔原告の主張〕平成23年6月8日以降に原告が提出した主張立証は,いずれも進行中である争点整理手続において,原告の従前の主張立証を補足するものであり,また,被告が,本件各ライセンス契約の内容に関する認否を留保し,契約内容の開示を準備していると述べていたにもかかわらず,本来職務発明の対価額の算定には必ずしも直結しない発明の実施の有無を理由として,その開示を拒むようになったことから,原告において,上記のとおり主張立証を補足することになったものである。 よって,原告において,時機に後れて攻撃方法を提出したという事実はなく,また,原告に故意又は重大な過失は認められない。 2 争点(2)(違法収集証拠排除の申立ての当否)について〔被告の主張〕(1) 原告が提出した書証のうち,甲6の1ないし3(中略)は,いずれも違法収集証拠であるから,証拠の排除を求める。 (2) 上記各書証はい 集証拠排除の申立ての当否)について〔被告の主張〕(1) 原告が提出した書証のうち,甲6の1ないし3(中略)は,いずれも違法収集証拠であるから,証拠の排除を求める。 (2) 上記各書証はいずれも,被告が社内でその原本を秘密情報として管理している文書(以下「本件社内文書」という。)の写しであり,原告が被告在職中に入手したものである。原告は,被告の就業規則(31条:退職者の責任,33条:機密漏洩の禁止)及び企業秘密管理規定(22条:退職・退任時の 文書の取付け)などに基づき,被告が秘密裡に管理する文書についての社外への持出し,記載内容の開示,漏洩を禁じられていた。また,原告は,退職に当たり秘密保持誓約書に署名押印し,かつ,業務上作成した文書等を会社に返還した旨の退職者チェックリストを提出した。したがって,原告は,本件社内文書の記載内容について法律上秘密保持義務を負っており,かつ本件社内文書の写しを在職中社外に持ち出すことができず,退職時には被告に対し返還する法律上の義務を負担しているのである。 よって,上記各書証は,原告がそれを所持し提出することが適法であって,上記義務に反しないことを証明しない限り,違法に所持し又は収集された証拠に当たるから,証拠能力を有しないというべきである。 (3) また,被告は営業秘密を厳重に管理し,従業員に対して秘密保持義務を何重にもわたって課し,退職時にも書類を返還済みであるとの誓約書を提出させて,営業秘密管理の実効性を担保しているにもかかわらず,原告は,書類を全て返還済みであるとの誓約書を提出するという詐術により被告を錯誤に陥れてこれらの書類の返還を免れて社外に持ち出したのであり,このような行為は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号にいう不正競争に該当し,また,証拠 出するという詐術により被告を錯誤に陥れてこれらの書類の返還を免れて社外に持ち出したのであり,このような行為は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号にいう不正競争に該当し,また,証拠収集の方法として社会的に見て相当性を欠くことは明らかである。原告がこのような不当な行為により社外に持ち出した営業秘密に係る文書を,職務発明対価請求のためという大義名分の下,自己の利益を図るために使用する行為は違法であり,不競法において営業秘密の保護が規定されている趣旨を没却する。 〔原告の主張〕(1) 被告の主張はいずれも争う。被告の主張は事実に反するものが多く,また,民訴法上真実発見も一つの目的である以上,原告が提出した書証が排除されるべきではない。 原告は,本件訴訟において,被告が争う事柄について,自己の権利保護の ために必要な範囲で書証を提出しているにすぎないのであり,むしろ,その支払義務を免れるために自ら過去の行為を翻すことも厭わない被告の態度こそが強く非難されるべきである。 (2) 被告が違法収集証拠であると主張する甲6の1ないし3は,いずれも原告が知的財産部に異動する前に,自宅で業務を行うための参考資料として写しを取り保管していたものであるが,このように自宅で業務を行うために必要な書類を持ち帰ることは一般的に行われていたことであって,何ら違法ではない。 被告が掲げる就業規則,企業秘密管理規定及び秘密保持誓約書などの文言からは,原告が,不合理な被告の主張(自ら発明の実施を過去に認めながらこれを翻すこと)を正すために裁判所に証拠として提出することが,「漏洩」に当たらないことは明らかである。 また,不競法2条1項4号は窃取等の不正の手段により営業秘密を取得する行為を対象とするものであり,本件に該当しないことは 裁判所に証拠として提出することが,「漏洩」に当たらないことは明らかである。 また,不競法2条1項4号は窃取等の不正の手段により営業秘密を取得する行為を対象とするものであり,本件に該当しないことは明白であるし,原告の行為について,「不正の利益を得る目的」や「保有者に損害を加える目的」がないことも明白である。原告は,職務遂行に必要な文書を,その業務に使用するために,設計部門及び知財部門に在籍中に通常の入手方法により取得したのであるから,「不正取得行為」に該当することもない。そもそも,被告が事実に反する主張を繰り返し行ったことに対して,原告が反論の必要上やむを得ずこれらの文書を証拠として提出する行為が,違法あるいは契約違反との非難を受けることはない。 したがって,違法収集証拠の排除に関する被告の主張は失当である。 3 争点(3)ア(被許諾企業による本件発明の実施の有無・構成要件Eのクレーム解釈)について〔原告の主張〕(1) 「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」について ア 「いずれ」の通常の意味は,広辞苑によれば,「これとかそれとか,はっきり定めず,または分からないままに物事をさすのに使う語。どれ。どちら。」である。つまり,「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」は,「複数ある信号方式のうち,どれかの信号方式の選択信号を発生させても」を意味する。また,「選択信号を発生させても」の「も」は,広辞苑によれば,「接続助詞 ①動詞的活用の後の連体形に接続して譲歩の気持から,逆接を表す。」であり,動詞に付くことによって「逆接」を表す接続助詞として使われている。すなわち,「選択信号を発生させても」は,「選択信号を発生させたけれども」の意味である。 そうすると,「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」 によって「逆接」を表す接続助詞として使われている。すなわち,「選択信号を発生させても」は,「選択信号を発生させたけれども」の意味である。 そうすると,「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」の技術的意義は,「複数ある信号方式のうち,どれかの信号方式の選択信号を発生させたけれども」という内容を示すものである。 イこの点に関して被告は,本件明細書等の記載に基づくと「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」が「選択信号発生手段が発生する全ての信号方式の選択信号を発生させても」を意味すると主張する。 しかし,構成要件Eの技術的事項は,その特許請求の範囲の記載文言から客観的一義的に把握できるので,そもそも明細書の記載を参酌する必要はない。仮に本件明細書等の記載を参酌するとしても,当業者が自明の技術的事項を参酌した上で本件明細書等の【第2図】を見れば,ダイアルトーンが検出し続けた場合には,最後に必ず「信号方式を10pps のダイアルパルスに設定する」(処理112)を実行することになるため,「10pps で“1”を発信する」(処理109)及び「ダイアルトーン検出?」(処理110)が省略できることが一目で理解できる。つまり,処理109及び110を省略してもしなくとも,【第2図】の処理の結果が同じであること,すなわち,発明の効果も全く同じであることが一目で理解できる。そうすると,少なくともダイアルトーンが検出され続けた場合に設定 する信号方式については,その信号方式の選択信号を発生させる必要がないということ,すなわち,利用できる信号方式であってもその信号方式の選択信号を発生させる必要がない場合があるということを導ける。また,本件明細書等の実施例には,DTMF信号(以下,単に「DTMF」と表記することがある。), 10pps 方式であってもその信号方式の選択信号を発生させる必要がない場合があるということを導ける。また,本件明細書等の実施例には,DTMF信号(以下,単に「DTMF」と表記することがある。), 10ppsのダイアルパルス(以下,ダイアルパルスの種別については,そのパルス数のみを用いて,単に「10pps」などと表記することがある。), 20ppsのほかに,16ppsを追加することも記載されているところ,DTMF及び16ppsしか利用できない国では,10pps及び20ppsは利用しないことになるし,日本国内では,16ppsは利用できないから,DTMF, 10pps及び20ppsのみを利用することになる。日本国内のダイアルパルス式電話回線では10ppsと20ppsの両方を利用できることを考慮すると,いずれか一方のみを使用して他方は使用しないようにすることも考えられる。 このように,本件明細書等には,発生可能な信号方式,あるいは利用可能な信号方式であっても,製品の使用状況等によって,選択信号を発生する必要がない信号方式が存在し得ることが開示されている。 なお,被告は,過去にその「全ての信号方式の選択信号を発生させずに信号方式を設定する方式」を備えた機種のうち少なくとも4機種(***)に関して実機鑑定を行い,その全ての機種について「抵触」又は「抵触の可能性が高い」旨の鑑定結果を出していたのであるから,本件訴訟における被告の主張は,過去の行為と明らかに矛盾するものであり,到底是認できない。 (2) 「あらかじめ設定された所定の信号方式を・・・設定」についてア 「あらかじめ設定された」とは,例えば「あらかじめテストプログラムに設定(追加)された」の意味を指し,「所定の信号方式」とは,一つに固定されるものではなく,設定の状況によって変化することを許容し ア 「あらかじめ設定された」とは,例えば「あらかじめテストプログラムに設定(追加)された」の意味を指し,「所定の信号方式」とは,一つに固定されるものではなく,設定の状況によって変化することを許容してお り,設定する信号方式が変化しても本件発明の効果を奏することが可能となるものである。そして何よりも,本件明細書等には,「変化しない」,「固定」,「一つ」等の意味を示唆する記載は一切ない。 したがって,当業者にとって自明の技術的事項を参酌して,本件明細書等の記載を解釈すると,「あらかじめ設定された所定の信号方式」の技術的意義として,「設定される信号方式が変化してもよいこと」が開示されているといえる。 また,本件明細書等には,「自動設定方式でダイアルトーンが検出され続けた場合に,手動で再度信号方式を選択する構成」について直接の記載はないが,「手動で信号方式を選択する」構成が本件明細書等の従来技術に記載されていることを考慮すると,それを自動設定とともに使用することは自明の技術であり,本件明細書等に開示された技術であることも明白である。そして,CPUは,ユーザーが「手動」で選択した信号方式(これは,あらかじめ制御部のプログラムに設定されていた所定の信号方式である。)を受け取り,その受け取った信号方式をメモリ-に設定しているのであるから,このように手動で選択した後のいずれかの信号方式に設定する構成も構成要件Eを充足することになる。 この点,本件発明の目的は,(使用できる信号方式を自動検出することにより)「設置作業の手間を軽減する」ことであり,ユーザーの手間(操作等)が多少あっても,従来技術(通常の手動設定)よりも改善されていれば十分であるから,本件発明を,ユーザーの操作が一切ない,いわゆる「全自動」の発明として限定すべき合理的 あり,ユーザーの手間(操作等)が多少あっても,従来技術(通常の手動設定)よりも改善されていれば十分であるから,本件発明を,ユーザーの操作が一切ない,いわゆる「全自動」の発明として限定すべき合理的理由はない。実際,被告や被告から実施許諾を受けているメーカーは,手動で電話回線を選択する方法であっても,本件発明の実施であると認識していた。 なお,構成要件C1の「装置設置時」は「最初の設置(1回目の設定)」と「移動による設置(2回目の設定)」の両方を含むところ,仮に2回目 の設定時に設定される信号方式が変化するとしても,初回設定時には工場出荷時に設定された信号方式が設定されるのであるから,構成要件Eの充足性の判断のためには,その最初の設定のみを考慮すれば足りる。 イこれに対して被告は,直前の設定結果にかかわらず,ダイアルトーンを検出し続けた場合に特定の信号方式が設定されること,すなわち,設定される信号方式が変化しないことが必要であると主張するが,「設定」と「所定」は違う意味であること,仮に同じとしても「特定」を意味しないこと,仮に「特定」を意味するとしても「変化しない」(固定,一つ)の意味はないことから,被告の主張は失当である。 また,被告が「構成要件Eを充足しない」として主張する「信号方式が変化するような方式」について,被告が鑑定を依頼した***弁理士は,何ら問題とせずに「技術的範囲に属する」との結論に至っている。「信号方式が変化するような方式」であるD社***を鑑定した***弁理士も,この点が本件発明の実施の有無の判断に影響を与えるか否かを全く問題としていない。よって,設定される選択信号の信号方式が直前の操作によって変化するような方式が本件発明の構成要件Eを充足しないとの被告の主張は,過去の被告の行為と矛盾し,信義 を与えるか否かを全く問題としていない。よって,設定される選択信号の信号方式が直前の操作によって変化するような方式が本件発明の構成要件Eを充足しないとの被告の主張は,過去の被告の行為と矛盾し,信義則に反するものである。 〔被告の主張〕(1) 「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」につきア本件明細書等の実施例(第3欄49行ないし第4欄10行,同欄31行ないし第6欄3行,同欄15ないし21行,第2図)では,選択信号発生手段が発生する全ての信号方式について選択信号を発生させ,ダイアルトーンの検出の有無を確認する方法のみが開示されている。 また,本件発明の「選択信号が正常に送出されなかった場合には,あらかじめ設定された信号方式が選択信号の信号方式として設定されるので,選択信号の信号方式を誤設定するという事態を回避できる」との作用効果 を奏するには選択信号発生手段が発生する全ての選択信号を発生させる必要があり,「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」とは,選択信号発生手段が発生する全ての選択信号を発生させることを意味する。 さらに,本件異議申立てに対して,被告は,構成要件Eを付加することを内容とする補正を行うとともに,特許異議答弁書において「・・・何らかの原因で選択信号が正常に送出されず,全ての信号方式について正常な判定動作を行えなかった場合は,あらかじめ設定された信号方式が選択信号の信号方式として設定され,・・・」と主張した。 以上によれば,構成要件Eにいう「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」とは,「選択信号発生手段が発生する全ての信号方式の選択信号を発生させても」を意味することが明らかである。 イこれに対して原告は,「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」の技術的意義は,「複数ある信号方 信号発生手段が発生する全ての信号方式の選択信号を発生させても」を意味することが明らかである。 イこれに対して原告は,「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」の技術的意義は,「複数ある信号方式のうち,どれかの信号方式の選択信号を発生させたけれども」という内容を示すものと主張する。 しかし,そうだとすると,例えば,DTMF,10pps,20ppsの三つの信号方式で選択信号を発信可能な通信装置において,一つの信号方式で選択信号を発生させただけでも上記文言を充足することになってしまうが,これでは「選択信号が正常に送出されなかった」かどうかは明らかでなく,本件発明の作用効果を奏することができない。 (2) 「あらかじめ設定された所定の信号方式を・・・設定」につきア 「あらかじめ」,「設定」及び「所定」の通常の意義をみると,例えば,広辞苑には,「あらかじめ」とは「結果を見越して,そのことが起こる前から。まえもって。かねて。」とあり,「設定」とは「つくり定めること。」とあり,「所定」とは「定まっていること。定めてあること。」とある。 そして,「設定」及び「所定」というどちらも「定める」という意味を含む用語をあえて重ねて用いて規定していること,本件明細書等の実施例 ではダイアルトーンが検出され続けた場合に事前に定めた特定の選択信号の信号方式(10ppsのダイアルパルス方式)に設定する方法のみが開示されていること,及び,本件発明の「選択信号の信号方式を誤設定するという事態を回避」するという作用効果を奏するには装置設置時に端末メーカーの認識において正しい選択信号の信号方式である可能性が最も高い特定の信号方式に設定するようにする必要があることからすると,構成要件Eにいう「あらかじめ設定された所定の信号方式」とは「事前に設定され の認識において正しい選択信号の信号方式である可能性が最も高い特定の信号方式に設定するようにする必要があることからすると,構成要件Eにいう「あらかじめ設定された所定の信号方式」とは「事前に設定された特定の信号方式」を意味し,設定される信号方式が不特定な方式,例えば,設定される選択信号の信号方式がその直前の操作により変化するような方式は,本件発明の構成要件Eを充足しないことになる。 イこの点に関して原告は,ダイアルトーンが検出され続けた場合に手動で選択した信号方式でも「あらかじめ(制御部のプログラムに)設定されていた所定の信号方式」を充足すると主張するが,このような主張が失当であることは明らかである。 また,原告は,構成要件Eを充足するか否かは,最初(1回目)の信号方式の設定を考慮すれば足り,2回目以降の設定を考慮する必要がないと主張するが,本件発明は,通信装置が工場から出荷された後最初に設定を行うときだけでなく,通信装置の移動等のために信号方式を再度設定する際にも作用効果を果たすことを目的とするものであるから,原告の主張は失当である。 4 争点(3)イ(被許諾企業による本件発明の実施の有無・構成要件充足性)について〔原告の主張〕(1) 別紙訴訟物リスト〈略〉記載のA社ないしE社の各製品(465機種)は,以下のとおり,全て本件発明を実施しているといえる。 ア実機鑑定等の結果 過去に被告が実機鑑定をした,別紙訴訟物リストのD社***欄のNo. 60の***(以下,同リスト記載の各製品については,社名,製品種別及びその「No」を用いて「D社***60」などと表記する。),E社***7,C社***75,D社***42,A社***14,及び,本件訴訟で原告が実機鑑定をしたB社***19,B社***4 品種別及びその「No」を用いて「D社***60」などと表記する。),E社***7,C社***75,D社***42,A社***14,及び,本件訴訟で原告が実機鑑定をしたB社***19,B社***4,B社***5,A社***37,D社***13,A社***2,A社***2,A社***7は,いずれも構成要件Eを充足していると認められる。 そして,被告が本件訴訟において実機鑑定の結果を示したC社***32,C社***70,E社***7及びD社***60の4機種は,被告による不当な限定解釈を根拠として本件発明を実施してない製品とされているが,原告のクレーム解釈によれば,これら4機種は全て本件発明の構成要件Eを充足するものである。 よって,上記16機種は全て本件発明を実施していると認められる。 なお,被告は,以前,実機鑑定以外にも製品の取扱説明書の記載に基づく鑑定を行い,A社及びB社の***及び***等については,本件発明の実施に当たる可能性が高いという鑑定結果を出している。 イ回線自動設定機能電話回線の信号方式を自動設定する機能(回線自動設定機能)を現に搭載している製品又は仕様等に搭載の事実を記載している製品は,全て本件発明を実施している。なぜなら,回線自動設定機能を搭載している機種につき,実機鑑定(又は取扱説明書の記載に基づく鑑定)を行ったところ,その全てにおいて本件発明が実施されていることが確認されており,回線自動設定機能を搭載している製品で本件発明の代替技術を搭載した製品は,現在まで発見されていないからである。 そして,テレビ,DVD録再機及びCS放送受信端末については,「電話回線端子」又は「モデム端子」の記載が回線自動設定機能を備えている 事実を示し,「ITデコーダ」の記載も「電話回線端子」等の記載と同じ意 D録再機及びCS放送受信端末については,「電話回線端子」又は「モデム端子」の記載が回線自動設定機能を備えている 事実を示し,「ITデコーダ」の記載も「電話回線端子」等の記載と同じ意味を持つから,製品仕様にこれらの記載があれば,本件発明を実施しているという事実を示すことになる。 また,構成要件Eの技術的意義に鑑みても,本件明細書等の全体の記載を参酌すると,構成要件Eの技術的意義は「正しい信号方式が検出できないときに,設定する信号方式はいずれの信号方式でもよく,重要なことは確実に信号方式を設定する」ことであり,言い換えると,「使用できる信号方式を認識できない場合でも信号方式を設定する」ことであると認められるところ,もし「選択信号の信号方式が設定されない」場合には,必然的にダイアル発信しても正常に発信できず,ダイアル音が何も聞こえないため,ユーザーが製品故障を疑ってユーザークレームが多発する可能性を招き,また,本来設定されているべき情報が設定されていないと,その情報を使用するプログラムが正しく動作せず,最悪の場合は暴走(例えば,システム制御部のプログラムが正しく動作しないことによって,装置が制御できない状態,すなわち操作表示部からの操作を受け付けない状態に陥ること)して,製品の操作ができなくなるという事態を招く。そうすると,構成要件Eは,このような選択信号の信号方式が設定されない事態を回避して不具合の発生を未然に防ぐという,品質保証上重要な技術的意義を持つものであると認められるから,回線自動設定機能を搭載している製品は,必ず構成要件Eを実施しているのである。 ウその他(ア) 別紙訴訟物リスト記載の製品の一部は,前記アのとおり,実機鑑定によって本件発明の実施が確認されているところ,実機鑑定がされていない機種に 要件Eを実施しているのである。 ウその他(ア) 別紙訴訟物リスト記載の製品の一部は,前記アのとおり,実機鑑定によって本件発明の実施が確認されているところ,実機鑑定がされていない機種についても,①後継機種は旧機種と同じ実施形態を使用するのが通常であり,機種毎に実施形態を変える合理的理由がないこと,②取扱説明書上「回線自動設定機能」に関する記載内容が実機鑑定された機種 とほぼ同じ内容であり,実施形態が異なることを示唆する記載もないこと,③A社及びB社については,実機鑑定を行った***及び***の全てが同じ実施形態であったため,製品の種類を問わず,全ての機種で同じ実施形態を備えていると合理的に考えられることからすれば,実機鑑定された機種の結果に基づいて,それ以外の機種についてもその実施形態を推測でき,結局,別紙訴訟物リスト記載の全ての機種において構成要件Eを充足していることになる。 (イ) CS放送受信端末は,高機能仕様となっているため,CS放送の受信に関する主な機能(本件発明の実施が不可欠といえる双方向通信機能を含む。)を全て搭載する必要があることから,CS放送受信端末における本件発明の実施率は100%といえる。例えば,***社のホームページに掲載されている7機種のCS放送受信端末は,全てに回線自動設定機能が搭載されていることも,これを示すものである。 (ウ) セットトップボックスについては,その仕様を見ると明らかなように,その中身はDVD録再機と同じであるから,DVD録再機について本件発明の実施が立証されている以上,セットトップボックスも,本件発明を実施していることは間違いない。 (エ) 被告が相当対価の対象となる5社との間のライセンス契約の締結を認めており,その実施許諾契約によって実施料を実際 ている以上,セットトップボックスも,本件発明を実施していることは間違いない。 (エ) 被告が相当対価の対象となる5社との間のライセンス契約の締結を認めており,その実施許諾契約によって実施料を実際に受け取った事実がある以上,対象製品が本件発明を実施していることは立証されている。 特に,本件特許を対象にして締結されたC社及びD社との各ライセンス契約については,被告及び相手方がライセンス対象の全製品について実施を認めているといえることから,原告がこれに加えて本件発明の実施を立証する必要はない。 また,E社の製品が本件発明を実施していることについては,被告において,***弁理士が,E社***7の実機試験結果に基づいて,同 製品が技術的範囲に属すると鑑定していたことや,E社が本件発明の実施料を提示した上でE社ライセンス契約が締結されたことからも明らかである。 (2) 立証の程度についてア被告は,対象製品が本件発明を実施していることについては原告が立証責任を負い,別紙訴訟物リスト記載の全機種が本件発明を実施していることを立証する必要があると主張する。 しかし,被許諾企業の製品が本件特許を実施しているか否かについては,「間違いなく実施している」場合のみならず,「実施している可能性が高い」場合も含まれると解釈することができる。なぜなら,包括クロスライセンス契約は「相手方企業から特許訴訟を提起されないようにする」という目的を有するところ,その契約では,相手方企業の特許を間違いなく実施していると認められる実施形態は無論のこと,実施している疑いが強い(可能性が高い)と認められる実施形態までも実施許諾範囲に含まれるようにすることで,当事者間で広く平和的に解決しているからである。そして,この「実施している可能性が高いと認めるこ している疑いが強い(可能性が高い)と認められる実施形態までも実施許諾範囲に含まれるようにすることで,当事者間で広く平和的に解決しているからである。そして,この「実施している可能性が高いと認めることができる立証」としては,「実施許諾ライセンス契約を締結することができる」(相手方企業に当該発明の実施を認めさせることができる)程度の立証ができれば十分といえる。 イ本件では,別紙訴訟物リスト記載の465機種について,実機鑑定等によって本件発明を「間違いなく実施している」と認められる機種だけでなく,それ以外の機種についても,その実施形態は各社とも同じであると合理的に考えられること,本件発明が全く新しい構成要件AないしDによる高い有用性と構成要件Eによる高い品質保証とを併せ持った基本発明であって,特に構成要件Eが品質保証上不可欠であること,本件発明は構成要件Eについて限定解釈する必要がなく,その技術的範囲が非常に広い発明 であること,回線自動設定機能を搭載した製品で本件発明を実施していないといえる製品が一つも発見されていないことなどを考慮すれば,いずれも「本件発明を実施している可能性が高い」といえるのである。 そして,上記のとおり「本件発明を実施している可能性が高い」といえる製品は本件発明を実施しているということができるのであるから,結局,別紙訴訟物リスト記載の全製品が本件発明を実施しているといえることになる。 〔被告の主張〕(1) 発明の実施の立証責任及び立証の程度被許諾企業の対象製品が本件発明を実施していることについては原告が立証責任を負うから,原告は別紙訴訟物リスト記載の全機種が本件発明を実施していることを主張立証する必要がある。したがって,本件発明を実施していることについては,その取扱説明書に「回線自 いては原告が立証責任を負うから,原告は別紙訴訟物リスト記載の全機種が本件発明を実施していることを主張立証する必要がある。したがって,本件発明を実施していることについては,その取扱説明書に「回線自動設定機能」との記載があるかといった点や「プログラムの暴走」などといった主張では立証として不十分である。 この点に関して被告は,被許諾企業が本件発明を実施している可能性が高いといえる程度の立証で足りると主張するが,特に,包括クロスライセンス契約において相手方の対象製品が本件特許を実施しているかどうかは,本件発明の寄与率の認定にも影響するため,実施の有無については厳密に認定する必要があり,原告が主張する実施の可能性が高いというような立証の程度では不十分である。 (2) 実機鑑定について被告による実機鑑定の結果,C社***32及び70,E社***7,D社***60は,いずれも本件発明の構成要件Eを充足しないことが明らかになった。 原告は「技術的範囲に属する」との被告鑑定が存在すると主張するが,被 告は,他社とのライセンス契約の交渉に関連して必要な範囲で一部の他社製品の鑑定を行ったにすぎない。なお,上記D社***60の実際の動作は,***弁理士の鑑定書と異なり,いずれの選択信号を発生させてもダイアルトーンを検出し続けた場合,特定の選択信号の信号方式を設定するのではなく,直前の自動設定方式で設定された信号方式に設定していることが明らかになったため,同機種は「あらかじめ設定された所定の信号方式」を設定しておらず,本件発明の技術的範囲には属さない。加えて,同***の最初の信号方式の設定(工場出荷後一番最初の設定)がどのようなものであったかは不明であるから,この点でも原告の立証がなされているとはいえない。 (3) 回線自動 には属さない。加えて,同***の最初の信号方式の設定(工場出荷後一番最初の設定)がどのようなものであったかは不明であるから,この点でも原告の立証がなされているとはいえない。 (3) 回線自動設定機能について原告は,構成要件Eの技術的意義が「使用できる信号方式を認識できない場合でも信号方式を設定する」ことであって,選択信号の信号方式が設定されない場合にはユーザークレームが多発するし,最悪の場合はプログラムの暴走という事態を招くなどとして,回線自動設定機能を有する機種は全て本件発明を実施していると主張する。 しかし,ユーザーにとって重要なことは,ユーザーが加入している電話回線契約に対応する正しい選択信号の信号方式を設定することにより電話回線に接続可能とすることであるから,本件発明によりあらかじめ設定された信号方式が正しい信号方式であるとは限らず,誤った選択信号の信号方式が設定される可能性があることからすれば,本件発明によってもユーザークレームが生じる可能性があることに変わりはない。また,原告主張のプログラムの「暴走」は何らかの根拠に基づくものではなく,現に構成要件Eを充足しない代替技術を搭載した製品が市場で稼動しており,プログラムの「暴走」などという事態は生じていない。 実際,D社***26等及びC社***43等については,それらの取扱説明書では「回線自動設定機能」が謳われているが,代替技術を用いており, 本件発明の構成要件Eを充足しないことを示す記載がある。したがって,回線自動設定機能を有する旨の記載があるからといって本件発明を実施していることにならないことは明らかである。 (4) その他本件各ライセンス契約の被許諾企業が本件発明を実施していないと判断しているのであるから,被許諾企業の あるからといって本件発明を実施していることにならないことは明らかである。 (4) その他本件各ライセンス契約の被許諾企業が本件発明を実施していないと判断しているのであるから,被許諾企業の製品が本件発明を実施していないことは明らかである。特に,A社ライセンス契約においては,***になっているところ,A社が***ことはない。 5 争点(4)ア(A社ライセンス契約における利益の額)について〔原告の主張〕(1) 包括クロスライセンス契約における利益の算定方法ア A社ライセンス契約は,***包括クロスライセンス契約である。 包括クロスライセンス契約における「使用者が受けるべき利益」(以下「独占の利益」ということがある。)の額については,「相手方が当該発明の実施に対するものとして支払うべきであった実施料の額」として算定することが可能であるから,次の算式により求めることが可能である。 「独占の利益」=「当該発明の実施料相当額」=「当該発明の実施品の売上額×想定実施料率〔判決注:職務発明対価の額の算定過程で,ライセンス契約における相当な実施料率として仮想的に想定される実施料率について,当事者らは,「仮想実施料率」,「修正実施料率」,「標準包括ライセンス料率」など,種々の用語を用いているが,本判決では,これらを統一して「想定実施料率」と表記する。〕」イこれに対して被告は,上記算式において本件発明の寄与率を乗じることが必要であると主張するが,本件に関しては,後記のとおり,本件発明の寄与率が100%であるため,上記算式においてさらに寄与率を乗じることの意味はない。 (2) A社ライセンス契約の対象製品ア ***は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品である。 その理由は,以下のとおりである。 寄与率を乗じることの意味はない。 (2) A社ライセンス契約の対象製品ア ***は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品である。 その理由は,以下のとおりである。 まず,A社ライセンス契約では,「***」が対象製品となっているが,「***」,すなわち「***」とは,「***」を意味するところ,***は,法律事務所などの事務所等,放送その他のマスコミ,映像関係の会社又は飲食店等の店舗など,幅広い場所で「***」広く利用されていることから,「***」に該当するといえるし,同様に,***についても,家庭のみならず,一般のオフィスや店舗で「***」広く利用されていることから,やはり「***」に該当する。 また,被告の知財データベースに蓄積されているA社に係る契約情報では,***いるが,これらの製品分野はA社ライセンス契約が基になっていることは明らかであるところ,***は,いずれも***分野の製品に該当し(なお,***は***分野にも含まれる。),***は「***」分野の製品に該当するし,***は,***から「***」に含まれ,***ものであるため「***」にも当たる。 さらに,A社ライセンス契約の対象製品である「***」には***が含まれるから,***なく,***もこれに当たる。そして,***は,***あるから,これも***に含まれる。そうすると,***は,***である***に含まれるともいえる。 イ包括クロスライセンス契約の対象製品については,「相手方企業から特許訴訟を提起されないようにする」という包括クロスライセンス契約の目的に鑑み,当該製品を対象製品に含ませないという明示の意思表示がある等の特段の事情がない限りは対象製品に含まれるよう柔軟に解釈すべきである。すなわち,企業が互いに同じ目的で包括 スライセンス契約の目的に鑑み,当該製品を対象製品に含ませないという明示の意思表示がある等の特段の事情がない限りは対象製品に含まれるよう柔軟に解釈すべきである。すなわち,企業が互いに同じ目的で包括クロスライセンス契約を締結している以上,対象製品に含まれるように広く解釈することが,包括ク ロスライセンス契約の目的である「特許リスク回避」に適うものであり,実際の実務もそのように行われている。 ウこの点に関して被告は,***や***は「***」に含まれないと主張する。 しかし,仮に***がA社ライセンス契約の対象製品に含まれないのであれば,原告が被告社内でA社の***が本件発明を実施していることを報告した際に,被告はA社に対して権利行使を検討したはずである。しかし,実際には被告においてかかる検討が一切されなかった事実は,これらの製品が対象製品に含まれていることを被告が自認していたことを示すものである。 また,被告は***にも原告に対して報償金***円を支払っているところ,これはA社***及びE社***に対して支払われたものであるから,A社ライセンス契約に基づいて被告が報償金を支払ったこと及びその対象が***であったことは明らかであり,***が「***」に含まれないという被告の主張は失当である。 (3) A社における実施品の売上高A社ライセンス契約は***及び本件特許の有効期間(公告日平成6年10月19日から満了日平成17年11月12日)を考慮して,A社ライセンス契約により被告が受けるべき利益の額の算定においては,平成9年から平成17年までのA社製品の売上げを対象とする。 そして,前述のとおり,***は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品であり,別紙訴訟物リスト記載のA社の上記各製品は全て本件発明を実施し 9年から平成17年までのA社製品の売上げを対象とする。 そして,前述のとおり,***は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品であり,別紙訴訟物リスト記載のA社の上記各製品は全て本件発明を実施している。 そうすると,上記期間の各年のA社実施品の売上高は,***については,別紙「実施料計算表(原告)」〈略〉の「***」のA社「売上げ(億円)」欄記載の金額となり,その合計は***円であり,また,***については, 同別紙の「***」のA社「出荷額(億円)」欄記載の金額となり,その合計は***円である。 よって,これらを合算したA社実施品の売上高は,5932億2998万2130円となる。 (4) 想定実施料率「実施料率第5版」(発明協会研究センター編)において,「ラジオ,[製品H],その他の通信音響機器(電話,ファックスを含む)」分野のライセンス契約で使用される実施料率は1%が最も多く,それがこの分野の特徴であると記載されていること,被告知財データベースの契約情報によると,被告が実際にライセンス契約で使用している実施料率が***であることから,ライセンス契約における本件発明の実施料率は,この分野の相場である1%と考えることが合理的である。よって,A社ライセンス契約等の包括クロスライセンス契約における想定実施料率も同様に,1%とするのが相当であると考えられる。 もっとも,本件では,被告が想定実施料率を2.5%と主張するので,原告も,被告の主張を尊重して,想定実施料率を2.5%と主張する。 (5) 本件特許の寄与率ア A社ライセンス契約は,***包括クロスライセンス契約であるが,A社ライセンス契約における本件特許の寄与率は,100%である。 なぜなら,まず,C社及びD社との特定特許に関するライセンス契約において 社ライセンス契約は,***包括クロスライセンス契約であるが,A社ライセンス契約における本件特許の寄与率は,100%である。 なぜなら,まず,C社及びD社との特定特許に関するライセンス契約において,被告が相手方に提示した特許(代表特許)が本件発明1件のみであったという事実は,被告が保有する全ての特許のうち,***分野で相手方と特定特許に関するライセンス契約を締結することが可能な特許,すなわち代表特許になり得る特許が本件特許のみであったことを示している。 また,E社との交渉で使用された***の特許についても,相手方と特定特許に関するライセンス契約を締結することが可能な特許(代表特許)は 本件特許のみであった。そうすると,***において,被告にとって代表特許となり得る特許は本件特許のみであるといえる。 このようにC社,D社及びE社とのライセンス契約において,本件特許は代表特許(相手方から実施料相当額の提示があった特許)として扱われたことから,A社及びB社との包括クロスライセンス契約においても,本件特許には「代表特許としての価値」があることは明らかである。 よって,A社ライセンス契約における本件特許の寄与率は100%であるといえる。 イ被告の主張に対する反論(ア) 本件発明の意義について被告は,公知文献等に記載された先行技術と比較して本件発明の技術的意義が小さいから,本件発明の寄与率は低いと主張する。 しかし,本件発明は,全く新しい構成要件AないしDによる高い有用性と構成要件Eによる高い品質保証とを併せ持った基本発明であって,実際に多くの製品において広く長く実施されているデファクト・スタンダードであり,その技術的意義は極めて大きいものである。 この点,被告が指摘する 品質保証とを併せ持った基本発明であって,実際に多くの製品において広く長く実施されているデファクト・スタンダードであり,その技術的意義は極めて大きいものである。 この点,被告が指摘する特開昭59-228453号公報(昭和58年6月9日出願,昭和59年12月21日公開。)に記載された発明(以下「乙1発明」という。)は,回線を使用するたびに使用中に信号方式を判定することになるため,「使用中の回線に使用できる信号方式を認識」する発明であるが,判定した信号方式を次回使用するために「設定」するという思想はない。 また,被告が指摘する特開昭61-225952号公報(昭和60年3月29日出願,昭和61年10月7日公開。)に記載された発明(以下「乙2発明」という。)には構成要件AないしDが記載されているものの,同発明は,本件発明の出願前には公開されておらず,本件発明の 構成要件AないしDは,その先願によっては公知にはならず,新規性を失うことにはならない。そうすると,本件発明のうち構成要件AないしDからなる発明は,全くの新規な発明であり,公開されてない同一の発明をもってしても,その技術的意義は何ら失われることはない。 このほか,特開昭62-66766号公報(昭和60年9月18日出願,昭和62年3月26日公開。)及び特開昭61-224777号公報(昭和60年3月29日出願,昭和61年10月6日公開。)も,本件発明の出願前に公開されておらず,公知文献ではない。 このように,本件特許出願等時の公知文献が乙1発明に係る公報のわずか一つしか発見できないという事実は,本件発明の着想が秀逸であることを示すものである。 (イ) 代替技術の存在について被告は,回線自動設定方式において,いずれの選択信号方式を発生さ か発見できないという事実は,本件発明の着想が秀逸であることを示すものである。 (イ) 代替技術の存在について被告は,回線自動設定方式において,いずれの選択信号方式を発生させてもダイアルトーンが検出され続けるなどして自動設定ができなかった場合に手動で信号方式を設定する方法が,本件発明の代替技術であると主張する。 しかし,回線自動設定が有効に機能しなかった場合に,ユーザーが手動で信号方式を設定する方法は,ユーザーが実際に信号方式を手動で設定するかどうか分からないから,製品の品質保証を考慮すると,信号方式設定の確実性が低いのであって,確実性が高い構成要件Eの代わりには到底なり得ない。 被告は,手動選択は取扱説明書にも記載されていて容易であるとも主張するが,そもそも選択信号方式の存在を知らない人は,信号方式の設定が必要であることすら知らず,通話ができなくなると何が起こっているかも分からず,設定が必要であるかも分からないために,取扱説明書を見るという保証はない。運良く取扱説明書を見たとしても,どこを参 照すればよいかもわからない可能性も高く,このような人にとって手動設定は容易ではない。 よって,手動設定機能は本件発明の代替手段にはならない。 このように,本件特許のクレームを文言どおりに実施することなく「回線自動設定機能」を実現することはできない。また,手動設定方式も構成要件Eを充足するのであるから,そもそも本件発明のクレームを文言どおり実施しない方法は他に存在しないのである。 (6) A社ライセンス契約における利益の額前記(3)の売上高に,前記(4)の想定実施料率(2.5%)及び前記(5)の本件特許の寄与率(100%)を乗じて,A社ライセンス契約において本件発明により被告が受け ライセンス契約における利益の額前記(3)の売上高に,前記(4)の想定実施料率(2.5%)及び前記(5)の本件特許の寄与率(100%)を乗じて,A社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額を計算すると,別紙「実施料計算表(原告)」のとおり,***となるから,その合計額は148億3074万9554円である。 〔被告の主張〕(1) 受けるべき利益の額の算定方法エレクトロニクスの業界のように,数千件ないし1万件を超える特許が対象となる包括クロスライセンス契約においては,相手方に提示され代表特許として認められた特許以外の特許については,数千件ないし1万件を超える特許のうちの一つとして,その他の多数の特許と共に厳密な検討を経ることなく実施許諾に至ったものも相当数含まれるというべきであるから,このような特許については,当該包括クロスライセンス契約に含まれている特許の一つであるというだけでは,相手方が当該特許発明を実施していたと推定することはできず,したがって,独占の利益を認めることはできない。 もっとも,代表特許でなくともライセンス契約締結当時において相手方が実施していたことが立証された特許については,その特許発明の重要性,相手方の実施の割合を考慮して,ライセンス契約交渉やライセンス契約の内容 において明示された代表特許に準じるものとして,独占の利益の額を算定することができる。 すなわち,仮に相手方製品における本件特許の実施が認められた場合は,包括クロスライセンス契約における使用者の受けるべき利益(独占の利益)の額の算定方法として,「独占の利益」=「当該発明の実施品の譲渡金額×当該発明の実施料率(ライセンス契約における想定実施料率×当該発明の寄与率〔対象特許件数を分母として当該発明の寄与率を 占の利益)の額の算定方法として,「独占の利益」=「当該発明の実施品の譲渡金額×当該発明の実施料率(ライセンス契約における想定実施料率×当該発明の寄与率〔対象特許件数を分母として当該発明の寄与率を分子とする〕)」の式が用いられるべきである。 この点に関して原告は,「独占の利益」=「当該発明の実施料相当額」=「当該発明の実施品の売上額×想定実施料率」との算式を主張するが,この方法により算定する場合には,発明の寄与率を乗じる必要があり,さらに,不確実性を考慮して,算定される金額を事案に応じて減額調整すべきである。 (2) A社ライセンス契約の対象製品ア包括クロスライセンス契約であるA社ライセンス契約の対象製品は「***」であり,具体的には「***」をいい,***とされる。そして,原告が主張する***がこの「***」に該当しないことは明らかであり,また,***については,***の例示として挙げられていないこと及び「***」という対象製品の記載からすると***を含まないと考えられることからすれば,原告の主張する***が「***」に含まれないことは明らかである。 よって,原告が主張する製品は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品ではない。 イ原告の主張に対する反論(ア) この点に関し原告は,訴訟リスク回避という包括クロスライセンス契約の目的に鑑みて,対象製品に含ませないという明示の意思表示等の特段の事情がない限りは対象製品に含まれるよう解釈すべきと主張する。 しかし,一般に包括クロスライセンス契約においては,当事者は対象製品を特定し,対象製品における許諾対象特許の実施料の総額について対価的均衡を図っている。にもかかわらず,対象製品の範囲が契約締結後に解釈によって広くなるようでは,このような契約締結時の 事者は対象製品を特定し,対象製品における許諾対象特許の実施料の総額について対価的均衡を図っている。にもかかわらず,対象製品の範囲が契約締結後に解釈によって広くなるようでは,このような契約締結時の前提と異なる結果が生じかねず,対価的均衡が図られないことになる。また,包括クロスライセンス契約の対象製品を広く理解するということは,相手方が対象製品につきライセンサーから特許権侵害の主張をされることなく自由に市場に新規参入することが可能となってしまうことになる。したがって,対象製品の文言の解釈に際しては厳格な解釈が行われる必要がある。 仮に「***」について,原告が主張するような解釈をした場合,ほとんどの電化製品がライセンス契約の対象製品に含まれてしまうことになってしまい,A社が自由に市場に新規参入することが可能となる製品分野があまりに広くなってしまい,妥当でない。 (イ) また,原告が証拠とする被告のデータベースの契約情報は,ライセンス契約の内容を正確に反映したものとはいえないため,同資料に基づいて契約内容を判断することは妥当でない。なぜなら,被告のデータベースの契約情報は,***があるからである。 (ウ) このほか,原告は,被告が***に原告に対して支払った報償金が***に関するものであると主張するが,この報償金はA社やE社とは関係のないものであるから,この支払を根拠に,被告がA社ライセンス契約の対象製品に***が含まれることを認めていたことにはならない。 (3) A社における実施品の売上高ア本件特許は,A社ライセンス契約において***ため本件訴訟においては,包括クロスライセンス契約における利益の額の算定の際には,相手方の対象製品が本件発明を実施していたかどうかを判断して,本件特許が相 当の対価の検討対象と ***ため本件訴訟においては,包括クロスライセンス契約における利益の額の算定の際には,相手方の対象製品が本件発明を実施していたかどうかを判断して,本件特許が相 当の対価の検討対象となるかを検討しなければならない。 イこの点,前記(2)のとおり,原告が主張する***は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品ではない。また,それらのA社の製品が本件発明を実施している事実もない。 よって,A社における本件発明の実施品の売上高はゼロである。 ウ仮に原告の指摘するA社製品がA社ライセンス契約の対象製品であり,かつ,本件発明を実施していると認められると仮定しても,A社による本件発明の実施品の売上高は,***について,別紙「A社***独占の利益(被告)」〈略〉の「対象機種売り上げ」欄の合計額のとおり,***円であり,***について,別紙「A社***独占の利益(被告)」〈略〉の「出荷額」欄の合計額のとおり,***円である。 なお,ここでは,製品分類ごとの各年の実施率については,基本的に原告の主張を援用している(ただし,原告の主張が正しいと認めるものではない。)。もっとも,平成13年(2001年)の***に関しては,原告が実施機種を発見できていないもかかわらず,実施率を100%としているのは不当であるから,実施率を0%とした。 (4) 想定実施料率本件において被告の想定実施料率を算出することは困難であるが,被告とキヤノンは,我が国においてコピー機市場等でほぼ同等のシェアをもって競い合っているライバル企業であることを鑑みると,本件においても,キヤノンに係る職務発明対価請求事件の判決で示されたLBPについての2.40%,MFPについての2.91%との実施料率は,参考とされるべきであるといえる。 企業であることを鑑みると,本件においても,キヤノンに係る職務発明対価請求事件の判決で示されたLBPについての2.40%,MFPについての2.91%との実施料率は,参考とされるべきであるといえる。 そうすると,A社ライセンス契約における想定実施料率は,2.5%とするべきである。 (5) 本件特許の寄与率 アエレクトロニクスの分野においては,一つの製品に数千にも及ぶ技術が使用されていることもまれではないところ,このようなエレクトロニクス業界の実態を踏まえれば,前記のキヤノンに係る職務発明対価請求事件の判決と同様に,包括クロスライセンス契約に含まれる全特許に対して支払われるべき想定実施料率を決めた上で,そこに各特許の寄与率を掛けることにより,各特許の実施料率を算出する必要がある。 イ A社ライセンス契約における本件特許の位置付けA社包括クロスライセンス契約は***に締結され,***ところ,本件特許が登録されたのは平成10年であるから,***。 ウ本件発明の意義(ア) 選択信号の信号方式を自動認識する手段としては,本件発明のように,ダイアルトーンが検出されないことにより正しい信号方式であることを認識する方式と,ビジートーン(いわゆる「話中音」)が検出されることにより正しい信号方式であることを認識する方式とがある。これらの選択信号の信号方式を自動で認識する発明は,本件特許出願時において公知であり,また,他社により本件出願前に既に出願されていた。 例えば,公知文献では,いずれにおいても選択信号が送信されると交換機は発信音(ダイアルトーン)の送出を停止し,その後着信側への接続動作を実施することが記載されているところ,このような発信音の送出を停止した後の交換機の動作は,送信された選択信号の信号方式が正しかったから 音(ダイアルトーン)の送出を停止し,その後着信側への接続動作を実施することが記載されているところ,このような発信音の送出を停止した後の交換機の動作は,送信された選択信号の信号方式が正しかったからこそ行われることは自明であるから,両文献からは,「正しい信号方式の選択信号が送信されるとダイアルトーンが停止すること」が読み取れる。また,この点に着目した乙1発明が本件発明の出願前に公知であり,また,乙2発明の背景技術として,この点についての言及があること等を鑑みると,このような着想が本件特許出願当時に技術常識であったことは自明である。 実際,本件異議申立ての手続では,乙2発明と本件発明とは構成要件Eの構成においてのみ相違していると判断されたのであり,このことからも,本件発明は補正の際に付加された構成要件Eだけに新規な特徴があるといえる。 (イ) しかも,構成要件Eに対応する作用効果として本件明細書等に記載されているのは,「例えば,なんらかの原因で選択信号が正常に送出されなかった場合には,あらかじめ設定された信号方式が選択信号の信号方式として設定されるので,選択信号の信号方式を誤設定するという事態を回避できるという効果」(右欄25ないし末行)のみである。さらにいえば,あらかじめ設定された信号方式が正しい信号方式であるという保証はないので,「選択信号の信号方式を誤設定するという事態を回避できるという効果」すら,実際の作用効果ではない。本件発明の実際の作用効果は,せいぜい選択信号の信号方式が(正しい信号方式であるかは別として)何も設定されないという事態を回避できるというだけである。 エ代替技術の存在本件発明の構成によると,あらかじめ設定された所定の信号方式が当該電話回線において選択されている回線の種類に対応 も設定されないという事態を回避できるというだけである。 エ代替技術の存在本件発明の構成によると,あらかじめ設定された所定の信号方式が当該電話回線において選択されている回線の種類に対応した信号方式ではない場合,電話をかけることができないという問題が生ずる。これに対して,回線自動設定方式において,いずれの選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けるなどして自動設定ができなかった場合に手動で電話回線の種類を設定するという構成にすれば,正しい選択信号の信号方式を設定できる。このような選択信号の自動設定方式と手動での設定方式を組み合わせた選択信号の設定方式は,正しい信号方式を設定できるという点で,本件発明よりも優れた作用効果を有しており,本件発明の代替技術に当たる。しかも,この手動設定は,例えば,各信号方式で1回ずつ「11 7」をかけて,電話がかかったらその信号方式を設定すればよいだけであり,容易である。 このほか,構成要件Eに係る被告のクレーム解釈に基づけば,全ての信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが消えない場合に,選択信号の信号方式を設定しないものや,何らかの信号方式に設定するがそれが所定のものでないもの,あるいは,全ての信号方式の選択信号を発生させないものは,いずれも構成要件Eを充足せず,代替技術に当たる。 オ対象製品における本件発明の位置付け選択信号の信号方式の設定(本件発明は,このような選択信号の信号方式の設定に関する一発明にすぎない。)は,原告が本件の対象製品として挙げる***においては基本的な機能ではないし,また,***においては***を設置する際に一度設定すれば足りるものであるから,これらの製品における本件発明の技術的位置付けはごく小さい。 実際,平成17年の総務省によ ては基本的な機能ではないし,また,***においては***を設置する際に一度設定すれば足りるものであるから,これらの製品における本件発明の技術的位置付けはごく小さい。 実際,平成17年の総務省による調査によると,当時,***を電話回線と接続する主な用途である双方向サービスを利用しているのは1.3%にすぎず,さらに,双方向サービスを電話回線接続で利用すると思われるナローバンド利用者が,調査対象者の37.4%であることを考慮すると,本件発明を実施している割合はせいぜい0.5%(1.3%×37.4%)にすぎない。 カまとめ以上の事情に鑑みれば,A社ライセンス契約における本件特許の寄与率は,せいぜい同契約における対象特許件数分の1にすぎない。 そして,被告の調査によれば,A社ライセンス契約において被告がA社に許諾したことになり得る許諾対象特許(実用新案を含む。以下,ライセンス契約の許諾対象に特許及び実用新案が含まれる場合でも,便宜上,そこで許諾対象となった特許及び実用新案とを併せて,「許諾対象特許」と 表記することがある。)の件数は,20万5192件である。 したがって,本件特許の寄与率は,20万5192件分の1,すなわち0.00049%にすぎない。 この点に関して原告は,C社及びD社とのライセンス契約を前提に包括クロスライセンス契約であるA社ライセンス契約についても,***分野での本件特許の寄与度が100%であると主張するが,かかる原告の主張は暴論といわざるを得ない。 (6) A社ライセンス契約における利益の額ア主位的主張A社ライセンス契約において,本件特許は***,また,前記(2)のとおり,原告が主張する製品はいずれも同契約の対象製品に含まれておらず,しかも,A社は本件発明を実施していない ア主位的主張A社ライセンス契約において,本件特許は***,また,前記(2)のとおり,原告が主張する製品はいずれも同契約の対象製品に含まれておらず,しかも,A社は本件発明を実施していないから,A社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額はゼロである。 イ予備的主張A社ライセンス契約の想定実施料率は,前記(4)のとおり,2.5%であり,そのうちの本件特許の寄与率は,前記(5)カのとおり,0.00049%であるから,これらを乗じて,本件特許のみの実施料率を計算すると,0. 00001225%となる。 したがって,仮にA社ライセンス契約における被告の利益があるとしても,その額は,前記(3)の***の売上高***円及び***の売上高***円に,それぞれ上記本件特許の実施料率0.00001225%を乗じて計算すると,***につき***円,***につき***円である。 よって,A社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,最大でも5万7130円である。 6 争点(4)イ(B社ライセンス契約における利益の額)について〔原告の主張〕 (1) 包括クロスライセンス契約における利益の算定方法B社ライセンス契約は,A社ライセンス契約と同様に,***包括クロスライセンス契約である。 したがって,B社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額については,A社ライセンス契約と同様に,「当該発明の実施料相当額」=「当該発明の実施品の売上額×想定実施料率」として求めることができる。 (2) B社ライセンス契約の対象製品ア ***は,いずれもB社ライセンス契約の対象製品である。 すなわち,B社ライセンス契約の対象製 上額×想定実施料率」として求めることができる。 (2) B社ライセンス契約の対象製品ア ***は,いずれもB社ライセンス契約の対象製品である。 すなわち,B社ライセンス契約の対象製品には,***が含まれるが,B社ライセンス契約締結***によれば,***には,***が含まれることとされ,これらの変更は,***と合意されたのであるから,この変更によれば,***は「***」に含まれることになり,***は,いずれも***に該当することになる。 また,被告の知財データベースに蓄積され,知財担当者に公開されているB社に係る契約情報には,B社とのライセンス契約の対象製品として,上記の製品以外に,***等の幅広い製品が挙げられているところ,***はいずれも***に該当するから,B社ライセンス契約の対象製品に含まれる。さらに,B社ライセンス契約の対象は***であるともされているところ,***がこれに該当することは明らかである。 イこの点に関して被告は,B社ライセンス契約が***に関する契約であることを認めながら,***は,コンシューマ向け機器であるから,***とは異なるカテゴリーの製品であると主張する。 しかし,B社***によれば,被告とB社は,***と認められる。そして,その議事録の4項で,***と記載されていることからも,***もB社ライセンス契約の許諾対象に追加されていることが理解できる。 なお,包括クロスライセンス契約の「特許リスク回避」の目的に鑑みて,包括クロスライセンス契約の対象製品を柔軟に広く解釈すべきであることは,A社ライセンス契約についてと同様である。 (3) B社における実施品の売上高B社ライセンス契約の締結日は***からとされているが,被告の知財データベースによると,被告と べきであることは,A社ライセンス契約についてと同様である。 (3) B社における実施品の売上高B社ライセンス契約の締結日は***からとされているが,被告の知財データベースによると,被告とB社とのライセンス契約の実際の締結日は***である。 そこで,B社ライセンス契約が***こと及び本件特許の有効期間(公告日平成6年10月19日から満了日平成17年11月12日)を考慮し,B社ライセンス契約における利益の額の算定においては,平成8年から平成17年までのB社製品の売上げを対象とする。 そして,前述のとおり,***はいずれもB社ライセンス契約の対象製品であり,別紙訴訟物リスト記載のB社の上記各製品の全てが本件発明を実施している。 そうすると,***について,上記期間の各年のB社実施品の売上高は,別紙「実施料計算表(原告)」の***のB社「売上げ(億円)」欄記載の金額となり,その合計は***円である。 (4) B社ライセンス契約における利益の額B社ライセンス契約について,想定実施料率を2.5%とすべきことは,A社ライセンス契約と同様である。 また,B社ライセンス契約は,A社ライセンス契約と同様に,***包括クロスライセンス契約であるが,B社ライセンス契約における本件特許の寄与率が100%であることも,A社ライセンス契約についてと同様である。 したがって,B社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,B社実施品の売上高3046億7660万2400円に,想定実施料率(2.5%)及び本件特許の寄与率(100%)を乗じて,別紙 「実施料計算表(原告)」のとおり,76億1691万5061円となる。 〔被告の主張〕(1) 受けるべき利益の額の算定方法B社ライセンス契 0%)を乗じて,別紙 「実施料計算表(原告)」のとおり,76億1691万5061円となる。 〔被告の主張〕(1) 受けるべき利益の額の算定方法B社ライセンス契約は,A社ライセンス契約と同様に,包括クロスライセンス契約であるから,使用者の受けるべき利益の額の算定方法についても,A社ライセンス契約と同様に考えられる。 (2) B社ライセンス契約の対象製品ア包括クロスライセンス契約であるB社ライセンス契約の対象製品は,***であり,原告が対象製品として主張する***は,いずれも同契約の対象製品ではない。 したがって,被告はB社に対し,原告主張の製品について本件特許の実施許諾をしていない。 イこの点に関して原告は,***が***に含まれると主張する。 しかし,***とは,***であり,***とは機能的に全く異なるものである。なお,B社との協議に関する議事録の7条の記載は,あくまで***を規定したにすぎず,***を規定したものではない。 また,B社ライセンス契約は***に関する契約であるが,***等のコンシューマ向け機器は,***とは異なるカテゴリーの製品であって,これに含まれない。 (3) B社における実施品の売上高ア前記(2)のとおり,原告が主張する***は,いずれもB社ライセンス契約の対象製品ではなく,また,B社製品が本件発明を実施している事実もない。 よって,B社における本件発明の実施品の売上高はゼロである。 イ仮に原告の指摘するB社の製品がB社ライセンス契約の対象製品であり,かつ,本件発明を実施していると認められると仮定しても,B社の本件発 明の実施品の売上高は,別紙「B社独占の利益(被告)」〈略〉の「対象機種売り上げ」欄 イセンス契約の対象製品であり,かつ,本件発明を実施していると認められると仮定しても,B社の本件発 明の実施品の売上高は,別紙「B社独占の利益(被告)」〈略〉の「対象機種売り上げ」欄の合計額のとおり,2235億0612万2743円である。 なお,ここでは,製品分類ごとの各年の実施率については,基本的に原告の主張を援用する(ただし,原告の主張が正しいと認めるものではない。)(4) B社ライセンス契約における利益の額ア主位的主張B社ライセンス契約において,本件特許は代表特許になっておらず,また,前記(2)のとおり,原告が主張する***はいずれもB社ライセンス契約の対象製品ではなく,しかも,これらの製品が本件発明を実施している事実もないから,B社ライセンス契約における原告主張の製品についての本件特許に基づく被告の独占の利益はゼロである。 イ予備的主張B社ライセンス契約において,B社に実施許諾された特許権及び実用新案権についての想定実施料率は,A社ライセンス契約と同様に,2.5%とすべきである。 また,B社ライセンス契約における本件特許の寄与率は,A社ライセンス契約についてと同様に,B社ライセンス契約における許諾対象特許件数分の1として求められるところ,被告の調査によれば,B社ライセンス契約において被告がB社に許諾したことになり得る許諾対象特許の件数は,14万8529件であるから,本件特許の寄与率は,14万8529件分の1,すなわち0.00067%にすぎない。 そして上記想定実施料率(2.5%)にこのうちの本件特許の寄与率(0.00067%)を乗じて,本件特許のみの実施料率を計算すると,0. 00001675%となる。 よって,仮にB社ライセンス契約における被 施料率(2.5%)にこのうちの本件特許の寄与率(0.00067%)を乗じて,本件特許のみの実施料率を計算すると,0. 00001675%となる。 よって,仮にB社ライセンス契約における被告の利益があるとしても, その額は,前記(3)イの売上高2235億0612万2743円に,本件特許の実施料率0.00001675%を乗じた3万7437円となる。 したがって,B社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,最大でも3万7437円である。 7 争点(4)ウ(C社ライセンス契約における利益の額)について〔原告の主張〕(1) 有償ライセンス契約における利益の算定方法特定特許に係る実施許諾ライセンス契約により使用者が受けるべき利益(独占の利益)の額は当該契約の「実施料」に相当するものであるが,当該契約にいわゆるグラントバックが付与されている場合には,その権利も実施料の一部となり,その価値が独占の利益に算入される。すなわち,グラントバック付きの実施許諾ライセンス契約については,「独占の利益」=「受領した実施料+グラントバックの価値」という算式が成り立つ。 C社ライセンス契約はグラントバック付きの有償ライセンス契約であり,被告は,本件発明による独占の利益として,実施料だけでなく,グラントバックも得ている。そのため,本来であれば,C社ライセンス契約において被告が受けた利益の額は,上記のとおり,「受領した実施料+グラントバックの価値」により求めることが可能である。しかし,本件においては,被告は,受領した実施料しか開示せず ,グラントバックの価値については一切開示しないため,上記算式による計算ができない。 このようにライセンス契約における「対価の額」が不明である場合であっても,両当事者の合 領した実施料しか開示せず ,グラントバックの価値については一切開示しないため,上記算式による計算ができない。 このようにライセンス契約における「対価の額」が不明である場合であっても,両当事者の合意内容(契約条件)を参酌することにより,その額を推定することが可能である。すなわち,C社ライセンス契約における契約条件は,被告がC社に対して本件発明を権利満了日まで実施許諾し,これに対してC社から被告に対価として実施料の支払及びグラントバックの付与をするものであるから,そこで被告が要求した「対価の額」は,C社の過去の売上 額に将来の予想売上額を足した総売上額に本件特許の実施料率を乗じた額であることになり,「受領した実施料+グラントバックの価値」=「過去分と将来分のC社対象製品の総売上額×実施料率」によって算出した額となる。 (2) C社における実施品の売上高C社ライセンス契約の契約期間***,対象製品が***のみであること及び本件特許の有効期間(公告日平成6年10月19日から満了日平成17年11月12日)を考慮して,C社ライセンス契約における利益の額の算定においては,平成9年から平成17年までのC社***の売上げを対象とする。 なお,C社***(82機種)を含む別紙訴訟物リスト記載の全機種が本件発明を実施していることは,前記4〔原告の主張〕のとおりである。 そうすると,上記期間の各年の売上高は,別紙「実施料計算表(原告)」の「***」のC社「出荷額(億円)」欄記載の金額となり,その合計は617億8900万円である。 (3) 実施料率実施料率については,「実施料率第5版」(発明協会研究センター編)において,「ラジオ,テレビ,その他の通信音響機器(電話,ファックスを含む)」分野におけるライセンス契約で使用さ 実施料率実施料率については,「実施料率第5版」(発明協会研究センター編)において,「ラジオ,テレビ,その他の通信音響機器(電話,ファックスを含む)」分野におけるライセンス契約で使用される実施料率は1%が最も多く,それがこの分野の特徴であると記載されていること,被告知財データベースの契約情報によると,被告が実際にライセンス契約で使用している実施料率が***であることから,被告が本件発明のライセンス契約に使用した実施料率は,この分野の相場である1%と考えることが合理的である。 よって,C社ライセンス契約の実施料率も同様に,1%とするのが相当であると考えられる。 (4) C社ライセンス契約における利益の額前記(2)の売上高に,前記(3)の実施料率を乗じてC社ライセンス契約によ る被告の独占の利益の額を計算すると,別紙「実施料計算表(原告)」の「***系」のC社欄記載のとおり,6億1789万円となる。 (5) 被告の主張に対する反論アグラントバックの価値が考慮されるべきであること被告は,C社ライセンス契約におけるグラントバックが価値のないものであると主張する。 しかし,グラントバック付き有償ライセンス契約において,グラントバック特許は,相手方から提示された特許,いわゆるカウンター特許と呼ばれるものであるが,これは,相手方が支払う実施料を減額するための材料として提示する特許であるため,相手方にとってはとっておきの特許,すなわち被告にとっては価値が高い特許ということができる。一方,グラントバック権は,「被告が相手方の特許等を指定することにより通常実施権を得る権利を留保する権利」であるが,これは,危険な特許を新たに発見したときや,危険な特許が新たに登録されたときに,その特許を指定することに は,「被告が相手方の特許等を指定することにより通常実施権を得る権利を留保する権利」であるが,これは,危険な特許を新たに発見したときや,危険な特許が新たに登録されたときに,その特許を指定することによって特許リスクを回避できるという大きな保険的価値があり,さらに莫大な価値がある特許等,どのような特許でも無条件で指定できるため,通常のライセンス契約では取得することができない貴重でかつ強力な権利といえる。 C社ライセンス契約において,被告はC社からグラントバック特許***件及びグラントバック権***件を得ているところ,被告は,このグラントバックを受けるに当たり,C社に対して特定の特許の許諾を要求してC社が提示したカウンター特許を慎重に評価し,グラントバックを取得するために実施料を減額した事実があるから,被告がグラントバックを評価していないことはない。なお,仮に被告がグラントバック権に係る特許を指定していないとしても,指定の有無にかかわらず被告には指定できる利益を得ている以上,これが対価の一部に当たることは明らかである。 また,被告がグラントバック特許から得た利益は莫大なものになり,さらにグラントバック権という強力な保険的価値が加われば,グラントバックの価値の総額は,被告が当初要求した実施料の額をも上回るといえる。 そして,「***」との交渉経緯にも照らせば,C社ライセンス契約において,グラントバックこそが「主たる存在」であり,実際に受領した実施料が「調整原理(従たる存在)」の性質を持つものであるということも可能である。 したがって,C社ライセンス契約については,実施料だけでなくグラントバックも含めて,独占の利益を算出すべきである。 イ個々のグラントバック特許の価値についてC社ライセンス契約における***件のグ て,C社ライセンス契約については,実施料だけでなくグラントバックも含めて,独占の利益を算出すべきである。 イ個々のグラントバック特許の価値についてC社ライセンス契約における***件のグラントバック特許のうち1件(C1特許)は基本特許であり,ほとんどの光ディスクドライブはこの基本特許を直接侵害しているから,このような光ディスクドライブの専用品である被告の光ドライブは,この特許を間接侵害しているといえる。当該特許の権利期間も十分長いことから,グラントバック特許としてはこの1件のみでも十分価値があることが明らかである。もう1件の特許(C2特許)は優れた特許であり,被告は非侵害の理由を何ら説明していないから,被告の光ディスクドライブはこれを侵害しているといえる。また,もう1件の実用新案権(C3考案)は,当然の事項を記載した構成であるといえるため,非常に優秀な発明といえるところ,同考案の構成要件Hに係る被告の限定解釈は採用できず,他の構成要件の充足性は特に否認していないため,被告製品はこの考案を侵害している可能性が非常に高い。さらに,もう1件の実用新案権(C4考案)は,当然の事項を記載した簡素な構成となっているため,基本発明といえるところ,被告の限定解釈は失当であるから,被告製造の光ディスクドライブは当該考案を侵害している可能性が非常に高いといわざるを得ない。 この点に関して被告は,光ディスク及び光ディスクドライブは単なる記録媒体又は装置にすぎず,書き込み等を行うにはライタソフトがインストールされたパソコンが別途必要になると主張するが,被告は,光ディスクドライブにライタソフトを添付してセット販売していたから,セット販売については直接侵害が成立する。また,被告はパソコンとライタソフトを使用して光ディスクドライブの ると主張するが,被告は,光ディスクドライブにライタソフトを添付してセット販売していたから,セット販売については直接侵害が成立する。また,被告はパソコンとライタソフトを使用して光ディスクドライブの互換テストを行っているため,方法の発明であったとしても,互換テストを行う行為が直接侵害に該当する。さらに,被告は,WindowsとCD-ROMドライブを搭載したパソコンを販売しているため,このような行為及びパソコンをレンタル又はリースする行為も直接侵害に該当する。 よって,被告の行為がグラントバック特許を侵害することになるため,やはり被告にとって,グラントバックには大きな価値があるといえる。 ウ実施料について被告は,相手方の対象製品が本件特許を実施していない場合は,被告が受領した実施料の2分の1を独占の利益とすべきであると主張する。 しかし,C社ライセンス契約は,本件特許に係る有償ライセンス契約であるから,C社が本件発明を実施したか否かは,被告が実際に受けた独占の利益とは関係がない。 すなわち,相手方が実施を認めた場合でも認めない場合でも,いずれにせよ,被告が相手方から実施料及びグラントバックを得ていることに鑑みれば,実施が認められない場合について殊更異なる取扱いをする理由は見当たらないのであって,その場合でも実施料全額が独占の利益となると解すべきである。 エ将来分の売上高を考慮すべきであること被告は,C社ライセンス契約における許諾対象が***以前の製品に限られるから,***以降の製品はそもそも同契約の対象にならないと主張 する。 しかし,被告知財データベースにおけるC社に係る契約情報によれば,C社とのライセンス契約書には,契約満了確定日***及び本件発明の実施可能期限日***が記載されていることから, する。 しかし,被告知財データベースにおけるC社に係る契約情報によれば,C社とのライセンス契約書には,契約満了確定日***及び本件発明の実施可能期限日***が記載されていることから,C社が本件発明を契約締結後も実施することができること,すなわち本ライセンス契約が契約締結日後も有効に継続していることは明らかである。つまり,C社ライセンス契約における本件特許の許諾期間は本件特許の権利満了日までであり,したがって,その許諾の対価は,実施開始年(平成8年)から本件特許の権利満了日(平成17年)までを許諾対象期間として算出されたものと考えるのが合理的である。したがって,被告は,C社ライセンス契約の締結時に,独占の利益として,過去分だけでなく将来分についても実施料相当額の利益を得ているのである。 なお,被告は,C社ライセンス契約締結以後はC社が本件発明ではなく,代替技術を実施していると主張するが,被告が主張するC社の代替技術とは,C社***32の方式(ダイアルトーンが検出され続けた場合には手動で信号方式を選択する方式)を指すものと考えられるところ,その方式は本件発明を実施するものであるから,被告の主張は失当である。 〔被告の主張〕(1) 受けるべき利益の額の算定方法ア C社ライセンス契約は,本件特許を対象としたグラントバック付き有償ライセンス契約である。 被告は,C社ライセンス契約に基づいて,C社***に対して,これらの者が***につき非独占的通常実施権を許諾し,その対価として,C社から***円の支払を受けた。 イこのような特定の特許に係る有償ライセンス契約における使用者が受けるべき利益の額は,その実施料収入を基礎に算定される。 もっとも,その場合でも,必ずしも実施料収入全額が使用 イこのような特定の特許に係る有償ライセンス契約における使用者が受けるべき利益の額は,その実施料収入を基礎に算定される。 もっとも,その場合でも,必ずしも実施料収入全額が使用者の利益となるわけではない。すなわち,ライセンス交渉に際して,特許権者が主張する対象特許を自社の対象製品が実施していないと判断された場合であっても,ライセンス交渉が長期化することによる種々の人的負担や金銭的負担の増加を回避するために,相手方が実施料を支払って当該ライセンス交渉を終結させることがあるのであって,このように相手方の対象製品が対象特許を実施していないと判断しているにもかかわらず,交渉の長期化を避けるために実施料を被告に支払った場合に,現に相手方が対象特許を実施していたため実施料を被告に支払った場合と同様に実施料収入の全額を独占の利益とすることは,妥当とはいえない。 したがって,このように特定特許に関するライセンス契約において対象製品が本件特許を実施している場合と実施していない場合では独占の利益額が異なるところ,相手方製品が当該特許を実施している場合は実施料全額が独占の利益となり,実施していない場合はその2分の1が独占の利益となると解すべきである。 ウまた,被告は,C社ライセンス契約におけるグラントバックのうち,契約上で特定されているグラントバック特許***件については,***し,被告に指定権のあるグラントバック権***件については,***。 よって,C社ライセンス契約におけるグラントバックについては,何ら金銭的価値がない。 エこれに対して原告は,ライセンス契約における対価の額が不明である場合,両当事者の合意内容を参酌することによりその額を推定することが可能であると主張し,グラントバックの価値が不明である本件では,ライセ れに対して原告は,ライセンス契約における対価の額が不明である場合,両当事者の合意内容を参酌することによりその額を推定することが可能であると主張し,グラントバックの価値が不明である本件では,ライセンス契約の対価の額を「対象製品の総売上額×実施料率」の算式によって算出すべきと主張する。 しかし,C社ライセンス契約におけるグラントバックは,被告にとって 価値のないものである以上,原告の主張は失当である。 (2) C社ライセンス契約における利益の額ア実施料についてC社は,***,また,原告もC社の対象製品が本件発明を実施していることについて立証できていないことからすれば,C社が被告に対して本件特許に関して実施料を支払ったのは,あくまでも交渉が長期化するのを避けるためであり,本件特許自体を評価したというよりもむしろ本件特許の保有者が被告であることに着目したからである。よって,被告がC社から得た実施料に対する本件特許の寄与度はせいぜい2分の1にすぎないから,前記(1)イのとおり,C社ライセンス契約による独占の利益の算定に当たっては,C社からの実施料収入の2分の1のみを算入すべきである。 したがって,C社ライセンス契約における被告が受けるべき利益の額は,実施料***円の2分の1である***円となる。 イグラントバックについて(ア) 前記(1)ウのとおり,C社ライセンス契約におけるグラントバックには金銭的価値がないから,これによって被告が受けるべき利益の額はゼロである。 (イ) 仮にグラントバックについて何らかの金銭的評価をするとしても,それは,せいぜい被告がC社から得た実施料収入の10分の1程度の価値,すなわち***円程度の価値しかないといえる。 (3) 原告の主張に対する反論ア実施品の売上高に 的評価をするとしても,それは,せいぜい被告がC社から得た実施料収入の10分の1程度の価値,すなわち***円程度の価値しかないといえる。 (3) 原告の主張に対する反論ア実施品の売上高について原告は,平成9年から平成17年までのC社***の売上げを対象とすべきと主張する。 しかし,C社ライセンス契約における許諾対象は,***日以前にC社***が生産等を行った製品だけであるから,別紙訴訟物リスト記載のC社 ***うち,同日以前に発売された製品(No49~No82)がライセンス契約の対象製品に含まれることは認めるが,***以降に発売された製品(No1~No48)は,そもそも同契約の対象製品ではない。 C社ライセンス契約の交渉においては,***ライセンス契約の対象製品を上記期日前の製品に限定したのである。このように,C社は,***のであるから,少なくともそれ以降は,本件発明を実施していない。 また,そもそも,他の被許諾企業の製品と同様に,C社の製品が本件発明の実施品であることが何ら立証されていないことは,前記4〔被告の主張〕に記載のとおりである。 イグラントバックの価値について(ア) 原告は,C社ライセンス契約による被告の独占の利益を,C社の対象製品の売上高に本件特許の実施料率を乗じて計算すると主張しているが,これによれば,上記の計算方法により導き出された独占の利益から受領した実施料を引いた残額が,C社ライセンス契約におけるグラントバックの価値であるということになり,グラントバックについて実施料をはるかに上回る金銭的評価をしてしまっている。しかし,ライセンス契約におけるグラントバックの性質からして,このような原告の主張が誤りであることは明らかである。 すなわち,C社ライセンス契約の締結過程において 回る金銭的評価をしてしまっている。しかし,ライセンス契約におけるグラントバックの性質からして,このような原告の主張が誤りであることは明らかである。 すなわち,C社ライセンス契約の締結過程において,被告としても相手方としても交渉の長期化や交渉が決裂して訴訟に移行することは望ましくないため,最終的に相手方が実施料を被告に支払うことで合意することとしたが,被告も相手方も社内を説得する必要があるため,相手方保有の一定の件数の特許等について通常実施権を許諾する権利を留保するというグラントバック条項を追加した。これにより被告の社内においては,グラントバックを取得したので対価プラスαの価値をライセンス契約で取得できたと説明し,相手方の社内ではグラントバックによって 対価を減額できたと説明することが可能となる。C社ライセンス契約におけるグラントバックは,実施料収入を決定する場合の調整原理,つまり,従たる存在にすぎない。 実際,被告は,C社ライセンス契約におけるグラントバックについては金銭的に評価しておらず,あくまでも交渉の便法のために用いたものであり,金銭的価値はないか,又は実際に得た実施料と比較してごくわずかな価値しかないのであり,まして相手方から支払を受けた実施料の額以上の価値を有するなどということはあり得ない。 (イ) また,原告は,C社ライセンス契約における個々のグラントバック特許が優れた基本特許であり,被告の光ディスクや光ディスクドライブがそれを直接又は間接に侵害していると主張するが,原告は,被告の製品が各グラントバック特許の構成要件を備えていることやその技術的範囲に属する理由を何ら具体的に主張していないのであるから,その主張は失当である。 ちなみに,C1特許は,追記型光ディスクの追記に関する発明であるが, の構成要件を備えていることやその技術的範囲に属する理由を何ら具体的に主張していないのであるから,その主張は失当である。 ちなみに,C1特許は,追記型光ディスクの追記に関する発明であるが,光ディスクドライブは記憶装置にすぎず,これに書き込み(追記)等を行うためには,ライタソフトがインストールされたパソコンが別途必要である以上,光ディスクドライブについて直接侵害が成立する余地はないし,光ディスク及び光ディスクドライブは汎用品であるから間接侵害の適用はなく,仮に被告の光ディスクドライブが汎用品でないとしても,法101条5号の適用にはライタソフトがインストールされたパソコンと光ディスクドライブの双方が必要であり,光ディスクドライブだけでは「物の生産に用いられる物」にすぎないため,被告の光ディスクドライブにつき間接侵害が成立することはない。 C2特許は録音再生用の装置に関するものであるが,光ディスクドライブはパソコン等の指示を受けて情報を書き込み,又は読み出す装置で あるから,光ディスクドライブのみではC2特許を実施することは不可能であり,同特許の構成要件を充足することはなく,また,被告の光ディスクドライブは汎用品であるため間接侵害も成立しない。 同じく録音再生用の装置に関するC3考案についても,光ディスクドライブのみではC3考案を実施することは不可能であるし,その構成要件に照らしても,被告製品にはこのような構成を備えた製品は存在しない。 C4考案の対象となる製品は情報の受信機であるところ,光ディスクドライブはそもそも「受信機」には当たらないし,C4考案は信号の受信を目と耳の両方で確認することに関する考案であるが,光ディスクドライブについてはこのような確認をする必要がないから,被告の光ディスクドライブがC4考案を 信機」には当たらないし,C4考案は信号の受信を目と耳の両方で確認することに関する考案であるが,光ディスクドライブについてはこのような確認をする必要がないから,被告の光ディスクドライブがC4考案を実施することは考えられない。 8 争点(4)エ(D社ライセンス契約における利益の額)について〔原告の主張〕(1) 有償ライセンス契約における利益の算定方法D社ライセンス契約は,グラントバック付きの実施許諾ライセンス契約であるから,被告がD社ライセンス契約によって受けるべき利益(独占の利益)の額は,C社ライセンス契約と同様に,「独占の利益」=「受領した実施料+グラントバックの価値」=「過去分と将来分のD社の対象製品の総売上額×実施料率」により算出した額となる。 (2) D社における実施品の売上高D社ライセンス契約が***まで有効に継続すること及び本件特許の有効期間(公告日平成6年10月19日から満了日平成17年11月12日)を考慮して,D社ライセンス契約における利益の額の算定においては,平成9年から平成17年までのD社の***の売上げを対象とする。 なお,D社ライセンス契約の対象製品は「***」であるところ,別紙訴 訟物リスト記載のD社の***を含む被許諾企業の製品の全機種が本件発明を実施していることは,前記4〔原告の主張〕のとおりである。 そうすると,上記期間の各年の売上高は,別紙「実施料計算表(原告)」の「***系」のD社「出荷額(億円)」欄記載の金額となり,その合計は3506億8240万5100円である。 (3) D社ライセンス契約における利益の額D社ライセンス契約における実施料率については,C社ライセンス契約と同様,1%とするのが合理的である。 したがって,D社ライセンス契 る。 (3) D社ライセンス契約における利益の額D社ライセンス契約における実施料率については,C社ライセンス契約と同様,1%とするのが合理的である。 したがって,D社ライセンス契約により被告が受ける利益の額を前記売上高3506億8240万5100円に実施料率1%を乗じて計算すると,別紙「実施料計算表(原告)」のとおり,35億0682万4051円となる。 (4) 被告の主張に対する反論アグラントバックが考慮されるべきであることグラントバックが一般的に大きな価値のある,貴重かつ強力な権利であることは,前記7〔原告の主張〕(5)アのC社ライセンス契約についての主張と同様である。 そして,D社ライセンス契約では,実施許諾の対価の一部として,グラントバック特許***件及びグラントバック権***件が付与されている。 同契約の契約期間は,原告の記憶では***と定められていたため,少なくともグラントバック特許***件のうちの***まで有効である。つまり,被告は,実施料を受領するだけではなく,契約締結日以降も(さらに本件特許の権利満了日以降も),グラントバック特許をその権利満了日までの長期間実施できるという多大な利益を得ている。 イ個々のグラントバック特許の価値についてグラントバック特許のうちの1件(D1特許)は,当然の事項を内容とする構成であるため,基本特許の中の基本特許といえ,非常に優秀な特許 であるところ,パソコン用の追記型光ディスクドライブは音楽情報(オーディオ用CD)を再生できるため,被告の追記型光ディスクドライブは当該特許を侵害しているといえる。また,D1特許を実施することなく光ディスクドライブを製造することは不可能であるため,その専用品である被告の光ディスクは当該特許を間接侵 の追記型光ディスクドライブは当該特許を侵害しているといえる。また,D1特許を実施することなく光ディスクドライブを製造することは不可能であるため,その専用品である被告の光ディスクは当該特許を間接侵害していると判断できる。もう1件の特許(D2特許)も,その機能を実現するために当然の事項が記載された構成であるため,基本特許中の基本特許といえ,しかも米国で出願されていることから非常に重要な特許であることが明らかである。さらに当該米国特許のファミリー特許である日本特許も,同様にクレームが短く,当然の事項を記載した構成であることから基本特許といえ,加えて,早期審理,不服審判がされていることからも,非常に重要な特許であると指摘できる。 そして,被告の光ディスクドライブは「振動等の検出機能」を備えていないとは限らないため,D2特許を侵害しているといえる。 ウ実施料について被告は,相手方の対象製品が本件特許を実施していない場合は,被告が受領した実施料の2分の1を独占の利益とすべきであると主張する。 しかし,かかる主張が失当であることは,前記のC社ラインセンス契約についてと同様である。 エ将来分の売上高を考慮すべきであること被告は,D社ライセンス契約における本件特許の許諾期間は***までであると主張する。 しかし,平成16年2月に発売されたD社***13の実施形態からも明らかなように,被告が主張する期間以降もD社は本件発明を実施している。 また,D社ライセンス契約に関しては,被告から原告に対して***にも特別報償金***円が支払われているが,この支払について被告担当者 に問い合わせたところ,平成15年中にD社ライセンス契約に基づき再び入金があったこと及び権利が消滅するまで契約が有効であるため入金があれば継続的に報償 が,この支払について被告担当者 に問い合わせたところ,平成15年中にD社ライセンス契約に基づき再び入金があったこと及び権利が消滅するまで契約が有効であるため入金があれば継続的に報償金が支払われることの回答があった。 さらに,被告知財データベースの契約情報には,契約見直日が「***」と記載されている。よって,D社ライセンス契約が,同契約締結後も権利が消滅するまで有効に継続しており,D社が実際に本件発明を継続して実施しているために,さらにD社から被告に実施料が支払われたことが明らかである。 〔被告の主張〕(1) 受けるべき利益の額の算定方法ア D社ライセンス契約は,C社ライセンス契約と同様に,本件特許を対象としたグラントバック付き有償ライセンス契約である。 被告は,D社***に対して,これらの者が***に生産等を行った***につき非独占的通常実施権を許諾し,その対価として***万円の支払を受けた。 イこのような特定の特許に係る有償ライセンス契約における使用者が受けるべき利益の額はその実施料収入を基礎に算定されること,もっとも,相手方製品が当該特許を実施していない場合は,実施料の2分の1だけが独占の利益となると解すべきであることは,C社ライセンス契約における算定方法と同様である。 ウまた,D社ライセンス契約においては,D社からグラントバック特許***件及びグラントバック権***件が付与されたが,このうちグラントバック特許については,***し,グラントバック権については,***。 よって,D社ライセンス契約におけるグラントバックについては,C社ライセンス契約におけるグラントバックと同様に,何ら金銭的価値がない。 (2) D社ライセンス契約における利益の額 ア実施料について 約におけるグラントバックについては,C社ライセンス契約におけるグラントバックと同様に,何ら金銭的価値がない。 (2) D社ライセンス契約における利益の額 ア実施料についてD社は***,また,原告もD社の対象製品が本件発明の実施品であることについて立証できていないことからすれば,D社が被告に対して本件特許に関し実施料を支払ったのは,あくまでも交渉が長期化するのを避けるためであり,本件特許自体を評価したというよりもむしろ本件特許の保有者が被告であることに着目したからである。そうすると,被告がD社から得た実施料に対する本件特許の寄与度はせいぜい2分の1にすぎないから,前記(1)イのとおり,D社ライセンス契約による独占の利益の算定に当たっては,D社からの実施料の2分の1のみを算入すべきである。 したがって,D社ライセンス契約に基づく被告の受けるべき利益の額は,支払われた実施料***円の2分の1である***円となる。 イグラントバックについて(ア) 前記(1)ウのとおり,D社ライセンス契約におけるグラントバックには金銭的価値がないから,これによって被告が受けるべき利益の額はゼロである。 (イ) 仮にグラントバックについて何らかの金銭的評価をするとしても,それは,せいぜい被告がD社から得た実施料収入の10分の1程度の価値,すなわち***円程度の価値しかないといえる。 (3) 原告の主張に対する反論ア実施品の売上高について原告は,平成9年から平成17年までのD社の***の売上げを対象とすべきと主張する。 しかし,D社ライセンス契約の対象製品は,***にD社***が生産等を行った製品についてのみであるから,別紙訴訟物リスト記載のD社製品のうち,同日以前に生産等が行われた製品(***ではNo4 しかし,D社ライセンス契約の対象製品は,***にD社***が生産等を行った製品についてのみであるから,別紙訴訟物リスト記載のD社製品のうち,同日以前に生産等が行われた製品(***ではNo42~No74)がライセンス契約の対象製品に含まれていることは認めるが,同月 ***日以降に生産等が行われた製品(***ではNo1~No41)は,そもそも同契約の対象ではない。 また,他の被許諾企業の製品と同様に,D社の製品が本件発明の実施品であることが何ら立証されていないことは,前記4〔被告の主張〕に記載のとおりである。特に,別紙訴訟物リストのD社***60については,被告が実機試験で確認したように,本件発明を実施していない。 なお,被告による2度目の報償金(***の特別報償金***円)の支払は過誤払であるから,これはその当時のD社による本件発明の実施を示すものではない。 イグラントバックの価値について(ア) グラントバックの価値に関する原告の主張がグラントバックの性質に照らして誤りであること,及び,被告製品が各グラントバック特許の技術的範囲に属することが何ら具体的に主張されていないことは,C社ライセンス契約の場合と同様である。 (イ) 原告は,グラントバック特許であるD1特許について,パソコン用の追記型光ディスクドライブが音楽情報を再生できるから,被告の光ディスクドライブが同特許を侵害していると主張するが,光ディスクドライブは,汎用品の記録装置にすぎず,音楽を再生するためにはパソコンや音楽再生用ソフトが必要であるところ,被告の光ディスクドライブは,パソコン用の記憶装置を主な用途として開発されており,オーディオプレーヤー等に用いるために必要なプログラム等を有していないため,同特許の構成要件を充足することはない。 告の光ディスクドライブは,パソコン用の記憶装置を主な用途として開発されており,オーディオプレーヤー等に用いるために必要なプログラム等を有していないため,同特許の構成要件を充足することはない。 また,D2特許についても,被告の光ディスクドライブは,線速度の上昇に伴う振動の発生をあらかじめ抑制する構造となっているため,振動や衝撃を検出するための手段を備えていない。もし被告製品がこれを備えていると主張するのであれば,具体的な製品を挙げて主張立証を行 うべきである。 9 争点(4)オ(E社ライセンス契約における利益の額)について〔原告の主張〕(1) 包括クロスライセンス契約における利益の算定方法E社ライセンス契約は包括クロスライセンス契約であるが,その交渉過程では,E社が本件発明に対する実施料を被告に提示した上で契約締結に至っているため,本件発明は,いわゆる代表特許のうちの一つである。 このように包括クロスライセンス契約であるE社ライセンス契約における本件発明による被告の利益の額は,A社及びB社の場合と同様に,「当該発明の実施料相当額」=「当該発明製品の売上額×実施料率」により求めることができる。 (2) E社ライセンス契約の対象製品***は,いずれもE社ライセンス契約の対象製品である。 この点に関して被告は,***は,E社ライセンス契約の対象製品に含まれないと主張する。 しかし,E社ライセンス契約では,対象製品として***と記載されているから,***を搭載していない***も含まれることが示されている。また,***だけでは本件発明を実施できないから,***が対象製品に含まれているのであれば,それには当然***も含まれているものと解釈できる。 さらに,包括クロスライセンス契約における「特許関係を広 また,***だけでは本件発明を実施できないから,***が対象製品に含まれているのであれば,それには当然***も含まれているものと解釈できる。 さらに,包括クロスライセンス契約における「特許関係を広く平和的に解決する」という目的からしても,***は当然対象製品に含める必要がある製品ということがいえる。 よって,***もE社ライセンス契約の対象製品に含まれる。 (3) E社における実施品の売上高E社ライセンス契約の許諾対象特許の範囲は,***であることから,本件発明も許諾対象に含まれる。同契約の契約期間の終期は***であるから, この実施許諾期間と本件発明の権利有効期間(公告日平成6年10月19日から満了日平成17年11月12日)を考慮して,E社ライセンス契約において被告が受けるべき利益の額の算定においては,平成9年から平成17年までのE社の***の売上げを対象とする。 そして,前記(2)のとおり,***は,いずれもE社ライセンス契約の対象製品であり,また,別紙訴訟物リスト記載のE社の上記各製品を含む被許諾企業の製品の全機種が本件発明を実施している。 そうすると,***について,上記期間の各年のE社実施品の売上高は,別紙「実施料計算表(原告)」の「***」のE社「売上げ(億円)」欄記載の金額となり,その合計は1824億4320万8500円である。 (4) 想定実施料率E社ライセンス契約における想定実施料率を2.5%とすべきことは,A社ライセンス契約及びB社ライセンス契約と同様である。 (5) 本件特許の寄与率ア本件特許の寄与率が100%であることE社との交渉で使用された***の特許(代表特許)は,本件特許と***に実施可能な***に関する特許(以下「***特許」という。)の2件 の寄与率ア本件特許の寄与率が100%であることE社との交渉で使用された***の特許(代表特許)は,本件特許と***に実施可能な***に関する特許(以下「***特許」という。)の2件であったが,このうち***特許は***以降の期間(将来分)における実施料算定の交渉に使用されているため,平成8年から平成17年までの期間における実施料算定の根拠とされたのは本件特許のみである。そして,本件特許単独でE社から実施料***を提示されたことを考慮すると,被告が保有する全特許のうち,***で相手方と特定特許に関するライセンス契約を締結することが可能な特許(代表特許)は本件特許のみであったといえる。 したがって,平成8年から平成17年の***については,E社ライセンス契約に対する本件特許の寄与率は100%である。 なお,被告はその社内資料において,本件特許がE社との契約において貢献した特許であることを認めている。 イ ***以外の特許を考慮する必要がないことE社との包括クロスライセンス契約は多数の対象製品を含んでいるが,このうち本件発明を実施している***等の製品,すなわち***のみを抜き出して,本件特許の実施料を算出することが可能である。そこでは,本件特許の実施料は本件発明を実施している***の製品の売上額に基づいて算出されることになるところ,その製品で本件特許以外の特許も実施されているのであれば,そのうちの本件特許の寄与率を求めることが必要になるが,***の製品では,被告の***の特許が実施されていることはないため,寄与率の算定に当たって,***に関する特許を考慮する必要はない。***における本件特許の寄与率が100%であることを被告が否定するのであれば,被告の側において,本件特許以外の特許が貢献した ため,寄与率の算定に当たって,***に関する特許を考慮する必要はない。***における本件特許の寄与率が100%であることを被告が否定するのであれば,被告の側において,本件特許以外の特許が貢献した事実を立証すべきである。 ウ被告の主張に対する反論被告は,E社ライセンス契約における対象特許件数が3万9457件であるから,本件発明の寄与率は,ゼロ又はせいぜい3万9457分の1(約0.0025%)であり,これに想定実施料率2.5%を乗じた0.0000625%が本件特許単体の実施料率であると主張する。 しかし,まず,E社ライセンス契約の対象製品は,本件特許を実施している製品分野***と他の特許を実施している製品分野***とに明確に分けることできるため,各々の分野において本件発明の寄与率を求めることが可能である以上,わざわざ複数の分野の許諾対象特許をひとまとめにして寄与率を求める必要はない。もちろん,全製品をひとまとめにして当該特許の寄与率を求めて実施料を算出することも理論的に可能であるが,そのためには許諾対象特許の全ての実施製品(E社の場合では***) について全世界の売上額を算出する必要があり,また,実施している許諾対象特許を対象とした当該特許の寄与率を求める必要があるため,非常に困難で実質的に不可能といえる。そして,そのような方法で算出しても,原告が主張する方法で算出しても結果は同じになる。 また,被告は,IPC分類を用いてE社ライセンス契約の対象製品に適用される対象特許を検索したとして,対象特許数が3万9457件と主張するが,そのIPC分類が適切であるという保証はない。むしろIPC分類の技術分野は,***と一致するどころか全て異なる別の分野であるため,IPC分類による検索は全く意味のないものである。また,そ 張するが,そのIPC分類が適切であるという保証はない。むしろIPC分類の技術分野は,***と一致するどころか全て異なる別の分野であるため,IPC分類による検索は全く意味のないものである。また,それぞれの特許について契約対象製品に実施可能か否かを判断する必要があるが,被告はかかる作業を行っていない。 さらに,E社とのライセンス交渉においては,被告は,本件特許のみの実施料率として1.5%を使用し,E社***の***の実施料を***円と算出していたのであるから,本件訴訟で被告が,本件特許の実施料率が0.0000625%と主張することは,自己の行為と矛盾している。 (6) E社ライセンス契約における利益の額E社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,前記(3)の売上高(1824億4320万8500円)に前記(4)の想定実施料率(2.5%)及び前記(5)の本件特許の寄与率(100%)を乗じて計算すると,別紙「実施料計算表(原告)」のとおり,45億6108万0213円である。 (7) E社とのライセンス交渉の経緯ア被告作成のE社とのライセンス交渉に関する報告書記載のとおり,E社ライセンス契約の交渉の過程では,まず,E社が自社の***に基づいて,被告に対し,過去分の実施料として***円の支払を要求したが,当時被告の知財担当だった原告がE社の***が本件発明を実施していることを 発見し,さらに***弁理士から「技術的範囲に属する」との鑑定結果を得た上,E社に対して本件特許をカウンター特許として提示し,E社の***の売上額に基づいて本件特許の過去分の実施料を***円(年間売上げ***円,実施料率***%,***)と算出して要求したため,その結果,E社は,本件特許の実施料を差し引いて,要 提示し,E社の***の売上額に基づいて本件特許の過去分の実施料を***円(年間売上げ***円,実施料率***%,***)と算出して要求したため,その結果,E社は,本件特許の実施料を差し引いて,要求額を***円に減額した。このことから,E社が本件発明の実施を認め,本件特許単体の実施料として***円(***円-***円)を提示したことがわかる。 イこの点に関して被告は,E社が過去分についてライセンス料を減額したのは***特許を考慮したものであると主張する。 この点,本件特許及び***特許は,いずれも***の製品についての特許であるが,両者の権利存続期間はほとんど重ならず ,両者を同時に実施している製品がほとんどないために,期間を分けてそれぞれの寄与率を求めることが可能である。すなわち,原告が算出した実施料の基となる本件特許の実施品は,平成8年ないし平成17年の間に製造・販売された***であり,この実施品には,***特許の実施品はほぼ含まれていない。 したがって,本件における原告の請求に関して,***特許の寄与を考慮する必要がない。 また,被告は***特許の対応米国特許を考慮すべきと主張するが,E社との契約交渉において議論となっていた実施料は,海外分を含まない国内における対象製品の売上高を基に算出したものであったから,海外特許によりこれを減額するということはあり得ない。 しかも,仮に***特許の対応米国特許が最終的にライセンス契約に含まれたとしても,本件において原告が主張するE社の***の実施料は,国内売上額を基に算出している以上,***特許の対応米国特許の存在は何らの影響も及ぼさない。 〔被告の主張〕 (1) 本件特許に基づく独占の利益がないことE社ライセンス契約は,E社との包括クロスライセンス ***特許の対応米国特許の存在は何らの影響も及ぼさない。 〔被告の主張〕 (1) 本件特許に基づく独占の利益がないことE社ライセンス契約は,E社との包括クロスライセンス契約であり,同契約において被告はE社に対して,***を対象として,被告の特許権等を許諾している。 しかし,そこでは,***,また,被告がE社に許諾する対象特許件数は数千件を超えている。しかも,本件特許は,上記対象製品の主たる機能に関する特許ではない。 そして,E社とのライセンス交渉に際して,被告が本件特許をE社に提示した事実はあるものの,E社は,***。そもそも,E社ライセンス契約は,***になってようやく締結に至ったところ,交渉の間に本件特許は存続期間が満了したため,E社にとっては,仮に交渉が決裂しても,本件特許に基づき対象製品が差し止められるおそれがなくなっていたのであるから,E社ライセンス契約の締結には本件特許はほとんど寄与していないことは明らかである。 これらの事実からすると,被告がE社ライセンス契約において本件発明により得た利益は存在しないというべきであって,独占の利益もまた存在しない。 (2) E社とのライセンス交渉の経緯ア原告は,E社ライセンス契約の交渉経緯から,E社が本件発明の実施を認めて,その実施料として***円を提示したことがわかると主張する。 しかし,E社との交渉において,被告は,***について本件特許以外に***特許を提示し,それ以外のE社ライセンス契約の対象製品との関係では,***に関連する特許(以下「***関連特許」という。)***件も提示していたのであり,ライセンス交渉の中では,本件特許ではなく,***特許や***関連特許が議論の中心であった。特に***に関しては,E社が交渉の議題に 以下「***関連特許」という。)***件も提示していたのであり,ライセンス交渉の中では,本件特許ではなく,***特許や***関連特許が議論の中心であった。特に***に関しては,E社が交渉の議題にすることを拒んでいたにもかかわらず,最終 的に,***も対象製品として加わえられた。 ライセンス交渉に関する報告書の記載を見ても,E社は,被告から***特許及び本件特許を提示されたことを考慮して,過去分の実施料を減額したのであって,本件特許のみについて***円を提示したとはいえない。 この点に関して原告は,***特許と本件特許の存続期間が重複しないこと等からE社が本件特許のみを評価して,過去分の実施料として***円を提示したと主張するが,E社とのライセンス契約は全世界の特許を対象としており,***特許の対応米国特許(US***号)は***に登録されているから,***特許と本件特許の存続期間が重複しないとの原告の主張は誤りである。 したがって,E社が被告からの特許の提示をきっかけとして過去分の実施料を減額したとしても,それは米国***特許を考慮した結果であって,本件特許を評価したものではない。 イまた,原告は,被告がE社に対して本件特許につき***円の実施料を要求したと主張しているが,被告は,あくまで社内で,本件特許を基に***円の実施料を提示することの可否を検討したにすぎず,実際のE社との交渉では,本件特許を提示したものの,具体的な実施料は要求していない。 ウ原告は,E社が提示した実施料の減額を重視するが,そもそもライセンス交渉では,交渉の妥結に向けて,前回交渉時に提示した金額を減額することはままあることであり,E社が被告に要求する実施料を減額したからといって,それが必ずしも被告が提示した特許を評価したからだと ンス交渉では,交渉の妥結に向けて,前回交渉時に提示した金額を減額することはままあることであり,E社が被告に要求する実施料を減額したからといって,それが必ずしも被告が提示した特許を評価したからだとはいえない。また,相当の対価は最終的な契約内容を基に算定するべきであって,交渉途中の事情をもって相当の対価を算定するべきではない。 仮に原告が主張するように,E社がライセンス交渉途中に本件特許について***円と評価していたというのが事実であるとしても,それに基づ く被告の独占の利益は***円にとどまるはずであるから,原告がE社ライセンス契約による被告の独占の利益として主張する額(***円)は,いかにも不合理な額である。 (3) 原告の主張に対する反論ア対象製品について***がE社ライセンス契約におけるE社に対する許諾対象であることは認めるが,***は,許諾対象に含まれない。 この点に関して原告は,***(いわゆる***)が対象製品に含まれているのであれば***も含まれると解釈できると主張する。 しかし,E社ライセンス契約においては,対象製品として「***」と記載されているのであるから,***ない***がここに含まれないことは,同記載からも明らかであり,原告の主張は失当である。すなわち,E社ライセンス契約においては,E社が***のない***と***の***とをセットで使用することを前提として販売していたため,このように***と***をセットにした場合には対象製品に含まれることを明確にするために,***別体の***も対象製品に含まれることが明記されたのである。 したがって,そもそもE社とのライセンス契約では,***のない***単体や***単体は,いずれもライセンス契約の対象製品に該当しな ***別体の***も対象製品に含まれることが明記されたのである。 したがって,そもそもE社とのライセンス契約では,***のない***単体や***単体は,いずれもライセンス契約の対象製品に該当しない。 また,仮に***別体の***が対象製品に含まれるとしても,なぜ***が「***」に含まれることになるのか不明である。***は***を見たいと思う視聴者が特別に買うものであり,通常の***とも異なる製品であるから,仮に***が対象製品に含まれているとしても,***が対象製品に含まれることはない。 イ E社による本件発明の実施について他の被許諾企業の製品と同様に,E社の製品が本件発明の実施品である ことが何ら立証されていないことは,前記4〔被告の主張〕に記載のとおりである。特に,E社***7については,被告が実機試験で確認したように,本件発明を実施していない。 (4) 受けるべき利益の額についての予備的主張ア前記(1)のとおり,E社ライセンス契約において本件発明により被告が受けた利益は存在しない。また,E社の***は,被告の実験によって本件発明の技術的範囲に属さないことが明らかとなっており,その他の製品についても本件発明を実施していることが立証されていない以上,E社の製品の中に本件発明の実施品は存在しないといえ,仮に原告の主張する算定方法を採用したとしても,E社による実施品の売上高はゼロであり,したがって,被告の独占の利益はゼロとなる。 また,仮に原告が主張するように回線自動設定機能を有していれば本件発明を実施しており,したがってE社の***の一部が本件発明を実施していると仮定した場合でも,E社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,以下のとおり,せいぜい5万0714円にとどまる。 おり,したがってE社の***の一部が本件発明を実施していると仮定した場合でも,E社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,以下のとおり,せいぜい5万0714円にとどまる。 イ E社における実施品***について,取扱説明書で「回線自動設定」又は「モジュラー端子」に関する記載がある場合を「実施」とし,記載がない場合を「非実施」とした場合,その実施又は非実施をまとめると,別紙「E社実施・非実施対象機種リスト(被告)」〈略〉のとおりとなる。なお,***がE社ライセンス契約の対象製品に含まれないことは前記(3)アのとおりである。 上記リストのうち,備考欄に***とある機種(平成15年〔2003年〕及び平成16年〔2004年〕の***)は,***を内蔵していないため,E社が販売する***に接続して***を視聴する必要があるが,***は,機種ごとに接続可能な***の機種が決まっており,接続可能 な***又は***との組み合わせによりセット販売されているから,***と***の実施率を算定するに当たっては,各***が***又は***のいずれとセットで販売されたかを考慮する必要がある。そして,***と***のセットで販売される製品が本件発明を実施しているかどうかは,***の取扱説明書における「回線自動設定」又は「モジュラー端子」との記載の有無を調査し,かつ,***と***が接続されてはじめて実施・非実施の判断対象となる***となることからすると,実施率については,***をベースにし,さらに***に接続可能な***と***の機種数を考慮した上で,各***が接続可能な***と***の機種割合により換算対象機種数を求めるべきことになる。 そうすると,***の***については,換算実施 接続可能な***と***の機種数を考慮した上で,各***が接続可能な***と***の機種割合により換算対象機種数を求めるべきことになる。 そうすると,***の***については,換算実施機種が***,換算非実施機種が***,***の***については,換算実施機種が***,換算非実施機種が***となり,***の***については,換算実施機種が***,換算非実施機種が***,同年の***については,換算実施機種が***,換算非実施機種が***となる。 ウ想定実施料率及び本件特許の寄与率(ア) E社ライセンス契約における想定実施料率を2.5パーセントとすべきことは,A社ライセンス契約及びB社ライセンス契約と同様である。 (イ) E社ライセンス契約における本件特許の寄与率については,許諾対象特許の件数を分母とし,本件特許の寄与の程度を分子として求めるのが相当である。 そこで,被告が,E社ライセンス契約におけるE社に対する許諾対象特許の件数について,適切と思料する筆頭IPC分類を用いて調査したところ,その件数は3万9457件であった。 また,本件特許の寄与の程度について,①本件特許は,E社との契約交渉において被告から提示されたものの,***こと,②本件特許は, ライセンス契約締結前に存続期間が満了し,同特許に基づく差止めのおそれがなかったために,E社に与える訴訟リスクという面からの寄与率が低いこと,③E社ライセンス契約の対象製品における本件特許の位置付けが小さいこと,④本件発明には代替技術が少なくとも4件あり,他社はこのような代替技術を採用していることなどの事情を考慮すると,E社ライセンス契約における本件発明の寄与の程度は,ゼロ,又は,せいぜい許諾対象特許件数分の1の寄与しかないというべきである。 ,他社はこのような代替技術を採用していることなどの事情を考慮すると,E社ライセンス契約における本件発明の寄与の程度は,ゼロ,又は,せいぜい許諾対象特許件数分の1の寄与しかないというべきである。 そうすると,本件発明の寄与率は,せいぜい3万9457分の1,すなわち0.0025%にすぎない。 (ウ) 上記の想定実施料率(2.5%)に本件特許の寄与率(0.0025%)を乗じて,本件特許単体の実施料率を計算すると,0.0000625%となる。 エ受けるべき利益の額別紙「E社独占の利益(被告)」〈略〉のとおり,平成13年(2001年)から平成17年(2005年)までの間のE社の***に係る実施品の売上げをそれぞれ算出し,これに上記の本件特許の実施料率(0.0000625%)を乗じると,E社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の合計額は,5万0714円となる。 10 争点(5)(使用者貢献度)について〔原告の主張〕(1) 使用者等の貢献には特段の事情が必要であること法35条4項は,職務発明対価の算定において「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。」と規定しているが,その「貢献」と認められるには,特段の事情が必要である。なぜなら,高度な技術的思想の創作をするには,発明者の創作能力(独創性)及び発明意欲等の「特別な能力」が必要であり,しかも他の発明者では当該発明 を創作することができなかったことからすれば,発明者による高度な技術的思想の創作は,いわば「特段の貢献」であるといえ,したがって,このような発明者の「特段の貢献」と比較するためには,使用者の貢献についても同様に,「その貢献がなければ当該発明も生まれない」といえる特段の事情が必要であり, 特段の貢献」であるといえ,したがって,このような発明者の「特段の貢献」と比較するためには,使用者の貢献についても同様に,「その貢献がなければ当該発明も生まれない」といえる特段の事情が必要であり,この特段の事情を判断する上で,発明と貢献との間の因果関係の存在が必要である。 本件においては,以下に述べるように,被告側には,被告における一般業務の範囲を超えるような特段の事情が全く存在しないため,被告の貢献度は0%(原告の貢献度が100%)ということになる。 (2) 発明に至るまでの過程において被告の関与がないことア原告は,被告から本件発明を発明するよう指示・示唆されたことはなく,勤務時間外に本件発明を着想した。そこでは,原告は,被告の設備や研究開発費を利用しておらず,他の被告従業員の協力も得ていない。すなわち,原告は,被告の専門技術等を利用せず,被告の専門技術ではない新たな技術を独自に考案したのである。 また,本件発明に使用している技術要素は「ダイアルトーン」と「選択信号方式」の二つのみであり,原告は,被告に入社する以前に得ていたこれらの知識のみを利用して,本件発明の着想に至ったのである。それゆえ,被告の研究開発費及び情報の費用が本件発明のために使用されたという事実もない。 このように,本件発明は,職務発明ではあるものの,自由発明にも等しい性格を有するものといえる。 イこの点に関して被告は,本件発明がNCU(電話回線に選択信号を送り出したり,電話がかかってきたときにオフフックにしたりなど,電話回線との接続/切断の制御をする装置)と密接な関連を有しており,原告が被告においてNCUの開発に従事し,その知識を習得したからこそ,本件発 明をなし得たと主張する。 しかし,本 との接続/切断の制御をする装置)と密接な関連を有しており,原告が被告においてNCUの開発に従事し,その知識を習得したからこそ,本件発 明をなし得たと主張する。 しかし,本件発明と被告のNCU技術との間には「あれなければこれなし」のテストによる因果関係がなく,本件発明は原告が被告入社後に取得したNCU技術とは全く関係がない。 また,被告の報告書に記載されている「(選択信号を送出する前の)ダイアルトーンの検出」は,社会の共通財産である周知慣用技術であって,被告の技術ではない。しかも,本件発明は,選択信号を送出する前のダイアルトーンの検出ではなく,送出した後の検出であることから,用途を全く異にする別の技術である。よって,本件発明と被告の技術との間には何ら関係はなく,結局,本件発明は,被告の技術を全く使用していないものである。 ウ被告は,本件発明以前の技術文献に照らして,正しい選択信号の信号方式によりダイアルした場合にダイアルトーンが検出されなくなるという本件発明の着想が,当業者の技術常識であったと主張する。 しかし,二つの文献が開示しているのは,「選択信号を送出するとダイアルトーンを停止する」こと,すなわち「選択信号」に関することであり,選択信号の「信号方式」(DTMF方式やダイアルパルス方式)については何も開示していないから,本件発明の着想である「使用できる信号方式の選択信号を送出した場合にダイアルトーンを停止する」のうち「使用できる信号方式」は一切開示していない。 また,もう一つの文献に記載されているのは,選択信号を送出する前のダイアルトーンの検出(交換機が選択信号を受信できる準備ができたことを認識するため)であり,本件発明の,選択信号を送出した後のダイアルトーンの検出(回線 に記載されているのは,選択信号を送出する前のダイアルトーンの検出(交換機が選択信号を受信できる準備ができたことを認識するため)であり,本件発明の,選択信号を送出した後のダイアルトーンの検出(回線に使用できる信号方式を認識するため)とは全く異なる技術である。 このように,本件発明の「正しい選択信号の信号方式でダイアルした場 合にダイアルトーンが検出されなくなる」という着想がこれらの技術文献に開示されてないことは明らかであるから,本件発明の着想は技術常識ではない。 (3) 権利化に至るまでの過程においても被告の特段の関与がないことア法35条4項は,職務発明に係る相当の対価の額について「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定め」ると規定するように,本来,発明に至った「後」の使用者等の貢献は,相当対価の算定において考慮されるべきではない。 イ本件発明は,拒絶理由を受けずに公告され,その後本件異議申立てを受けて,同異議手続の中で補正を行った結果,登録されたものであるが,その異議手続において,原告は,引用例との相違点を検討して補正の内容を決定し,構成要件Eの補正を行った場合にも他社製品が技術的範囲に属することを実機で確認した上で,まず電話で,被告知財担当者に対して,補正の内容(構成要件E)を指示し,他社製品が構成要件Eを実施していることを実機で確認していることも併せて伝えた。その後,原告が最終確認のために実機試験を行い,その結果を被告知財担当者にメールで知らせ,被告は,この原告からの指示を受けて,本件補正を含む特許異議答弁書を提出した。 このように,本件発明が特許されるまでの間に,引用例との相違点を検討して補正の内容を指示したのは原告であったし,他社製品における実施態様が補正後も けて,本件補正を含む特許異議答弁書を提出した。 このように,本件発明が特許されるまでの間に,引用例との相違点を検討して補正の内容を指示したのは原告であったし,他社製品における実施態様が補正後も本件発明の技術的範囲に含まれることを確認したのも原告自身であった。 ウそもそも構成要件Eをクレームに追加する本件補正は実施例の記載に基づいて行うことができたのであるから,権利化に当たって最も評価すべき貢献は,原告が,本件発明に係る特許出願依頼書に,構成要件Eに係る構成も含めて本件発明の構成をもれなく記載したことであり,そのような原 告の「特段の貢献」があったからこそ,本件補正により本件発明が権利化できたのである。よって,この点でも,原告の貢献が大きいといえる。 エこの点に関して被告は,本件特許出願に当たって,ファクシミリ装置を電話回線を用いる通信装置に拡大したこと及び構成要件Eの記載をフローチャートに追加したことが,被告の知財部門及び特許事務所の貢献によるものと主張する。 しかし,これらはいずれも原告が特許事務所の担当者に指示したものである。 また,被告は,被告の特許出願に関する積極的な姿勢及び特許教育が行われていたからこそ,原告が本件発明を着想した際に特許として出願することが可能となったなどと主張するが,被告による出願の奨励や特許教育と本件特許出願が可能になったこととの因果関係はないというべきであり,むしろ,当時の被告の過度にノルマを課す出願奨励は,逆に質の高い発明の創作を阻害していたのであるから,「貢献」に値するものといえない。 また,これが仮に被告の貢献であるにしても,発明者の「特段の貢献」に比べて,貢献の質が全く異なるものであることから,あえて評価する必要はない。 (4) ライセンス契約締結におけ るものといえない。 また,これが仮に被告の貢献であるにしても,発明者の「特段の貢献」に比べて,貢献の質が全く異なるものであることから,あえて評価する必要はない。 (4) ライセンス契約締結における被告の特段の関与がないことア本件発明についての他社とのライセンス契約に当たり,他社製品における本件発明の実施の発見・確認を行ったのは原告であり,実施の有無を判断する製品分析方法についても,原告が考案した。その製品分析に使用した測定器は,トーン発生器,DC電源,負荷回路,音声モニタのみであり,これらを全て新品で購入したとしても数万円にしかすぎないし,これらの機器は被告の製品開発で既に準備されており,その費用は,既に減価償却されていたものであるため,ゼロである。 また,本件発明は,技術的範囲が広く,かつ無効資料が全くないいわゆ る「強い発明」であるため,本件発明1件のみで,被告は他社とのライセンス交渉をスムーズに行えた。本件発明のような強力な権利であれば,被告知財部門の力を借りることなしに,原告単独でも権利活用が可能であった。 このほか,C社とのライセンス交渉においては,C社の非侵害の主張に対して,原告は,被告知的財産部から意見を求められて,「少なくともダイアルトーンは検出しているので侵害している」旨の検討結果を伝えた。 これらの事情からすれば,本件発明に係るライセンス交渉は,通常の特許群のライセンスよりも容易だったといえるため,被告が本件発明のライセンス契約交渉において特段の尽力をしたという事実はない。 イこの点に関して被告は,C社及びD社が***にもかかわらず実施料を支払ったのは,本件特許を評価したのではなく,被告が強固なパテントポートフォリオを有する大企業であったからであると主張する。 しかし,* して被告は,C社及びD社が***にもかかわらず実施料を支払ったのは,本件特許を評価したのではなく,被告が強固なパテントポートフォリオを有する大企業であったからであると主張する。 しかし,***分野において被告が保有する主な発明は本件発明しかなく,被告が主張するような強固なパテントポートフォリオは存在しない。 本件発明が強力な発明だからこそ,本件発明単独で,他社へのライセンスが可能となったのである。 また,被告は,被告が行った他社製品についての鑑定にも言及するが,そのような鑑定作業は被告の通常の作業の一環として行われるものにすぎないものであり,むしろ鑑定の前提として必要となる,本件発明を実施している可能性のある製品の発見や実験方法の考案等は原告のみが行っていたことからすれば,被告が行った鑑定を殊更「特段の貢献」と認める必要はない。 (5) その他の考慮すべき事情ア本件発明により被告が受けた利益については,ライセンス契約の相手方から得た利益のほかに,本件発明の存在により他社から他社特許の侵害に 基づく請求を受けなかった利益が考えられるべきところ,仮に被告に何らかの貢献があるとしても,その被告の貢献度については,後者の範囲で十分評価されるから,少なくとも前者の利益については,全て原告が取得すべきである。 したがって,本件各ライセンス契約に基づいて被告が得た利益については,原告の貢献度を100%として計算すべきである。 イ被告は,C社ライセンス契約及びD社ライセンス契約に係る原告の特別報償金の支給に当たって,被告の発明取扱規定に基づき,「特別報償金」=***×(1-会社の貢献度)}の関数式で特別報償金の額を計算し,その際,この「会社の貢献度」を***%としていた。つまり,被告自らが,本 給に当たって,被告の発明取扱規定に基づき,「特別報償金」=***×(1-会社の貢献度)}の関数式で特別報償金の額を計算し,その際,この「会社の貢献度」を***%としていた。つまり,被告自らが,本件発明に係る報償金の支払の際に,原告の貢献度が***%であることを認定したのである。 したがって,本件発明における原告の貢献度が,仮に100%でないとしても,原告の貢献度が***%を下回ることは決してない。 〔被告の主張〕(1) 以下の事情を総合すれば,本件発明により被告が受けるべき利益についての被告の貢献度は97%を下回らない。 (2) 本件発明と被告の技術・業務との関係ア本件発明は,被告における本件発明に関連する技術的蓄積の下になされた発明である。 すなわち,被告は,昭和48年に事務用高速ファクシミリの1号機である「リファクス600S」を開発するなど,ファクシミリ事業における技術的蓄積を有しており,そのファクシミリに関する技術開発を行う際に電話回線に関連する技術についても技術的蓄積を有していた。このような電話回線に関連する被告の技術的蓄積の中でも,本件発明と最も密接な関連を有する技術としてNCUがある。そして,NCUは,ダイアルトーンの 検出及び発信者側端末から電話交換機へのダイアルの制御などの機能と関連しているため,選択信号の信号方式の設定に関する本件発明と密接な関係を有している。 被告では,本件特許出願より前の昭和60年初めには,海外向けファクシミリの開発に当たって,NCUが備えるべき機能としてダイアルトーンの検出が必要であることが認識されており,また,ダイアルトーンやビジートーンの検出の有無に応じて通信端末の動作を変更するという技術思想が認識されていた。そして,原告は,被告において遅くと アルトーンの検出が必要であることが認識されており,また,ダイアルトーンやビジートーンの検出の有無に応じて通信端末の動作を変更するという技術思想が認識されていた。そして,原告は,被告において遅くとも昭和59年1月頃にはビジネス用ファクシミリ装置のNCUの電気回路設計を担当し,本件発明を行うまでに上記のようなファクシミリ装置のNCUに関する被告の技術的蓄積を身に付けていた。 また,昭和47年ないし昭和51年当時の技術文献に照らせば,正しい選択信号の信号方式によりダイアルした場合にダイアルトーンが検出されなくなるという原告が主張する本件発明の着想は,本件特許の出願時に既に当業者にとって技術常識であったといえる。 このように,本件発明は,原告が被告に入社後NCUの開発を行う過程において学んだ技術常識や,NCUに関する知識を基になされた発明である。 イ原告は,本件発明の特許出願依頼書の「テーマ番号」欄に「FK065」と記載しているところ,「FK065」とは,海外向けの感熱方式のファクシミリを示すテーマコードであるから,原告が本件発明の特許出願依頼時に,本件発明が上記テーマに関連する発明であることを認識していたことがわかる。 (3) 特許出願及び特許査定手続における被告の貢献ア被告では,課ごとに特許出願目標を設定し,その達成率を報告させるなど,特許出願を非常に積極的に行っており,特に新人社員に対しては出願 明細書の書き方といった特許教育を行うなどの活動を行っていた。このような被告の特許出願に関する積極的な姿勢及び特許教育があったからこそ,原告が本件発明を着想した際に,特許として出願することが可能となったといえる。 イ原告が作成した本件発明の特許出願依頼書と本件特許に係る出願時明細書等を対比すると,特 許教育があったからこそ,原告が本件発明を着想した際に,特許として出願することが可能となったといえる。 イ原告が作成した本件発明の特許出願依頼書と本件特許に係る出願時明細書等を対比すると,特許請求の範囲が「ファクシミリ装置」から「通信装置」に拡張され,ハードウェアのブロック図について,大幅に記載内容の補充がされているほか,フローチャートには構成要件Eに係るフローが追加されている。これらの追加修正は,被告が従前からファクシミリを中心とする出願を集中的に依頼することで同技術分野の知識を習得していたZ特許事務所が,出願代理人として自発的に行ったものである。 また,本件特許は,先行技術に基づく本件異議申立てに対して,構成要件Eを追加する旨の本件補正を行うことにより成立したものであるが,この構成要件Eを追加することは,被告知的財産部員が考案し,同部員が主導して補正を行ったものである。また,このような補正が認められたのは,上記のとおり,出願時に構成要件Eに係るフローチャートを追加し,構成要件Eに関する記述を手厚くしていたからである。 このようなフローチャートの追加や構成要件Eを追加する旨の本件補正については,ひとえに当時の被告知財担当者及び被告の出願代理人の手腕によるものであり,この点に関して被告の貢献が認められるべきである。 ウこれに対して原告は,構成要件Eに係るフローチャートの追加や電話機も特許請求の範囲に含まれるようにすることについては,原告が特許事務所の担当者に対して指示したと主張するが,これを裏付ける資料は何ら存在せず,むしろ原告作成の特許出願依頼書にはこのような記載がなかったことからすると,被告知財担当者や出願代理人がこのような変更を行ったと考えるのが合理的である。 また,原告は,本件補正の ろ原告作成の特許出願依頼書にはこのような記載がなかったことからすると,被告知財担当者や出願代理人がこのような変更を行ったと考えるのが合理的である。 また,原告は,本件補正の内容を指示したのも原告であると主張するところ,本件補正に当たって,原告が,他社製品における実施態様が補正後の本件発明の技術的範囲に属するかの確認に関与したことは認めるが,そもそも他社製品における実施態様が本件発明の技術的範囲に属するかの確認は,被告の技術者又は知財担当者として,自社権利活用に関する被告の体制の下において被告従業員の義務として行われるものであるから,これに原告が関与したとしても,この点は,被告の貢献として評価されるべきものである。 (4) 権利活用場面における被告の貢献ア被告においては,研究開発部門又は知財部門の従業員に対し,他社製品などの分析の結果,被告が保有する特許の活用可能性があると判断した場合には権利活用依頼書を作成し,これを受けた被告知財部門が内部検討又は場合により外部鑑定を行うという権利活用に対する体制が構築されているとともに,他社製品の分析用の機材(例えば,疑似交換機等)を保有しており,被告として多大な人員と費用を投じているからこそ,権利活用が可能である。 イ C社及びD社が,***にもかかわらず,被告に対して本件特許に関しライセンス料を支払ったのは,あくまでも交渉が長期化するのを避けるためであり,本件特許自体を評価したというよりも,むしろ本件特許の保有者が被告という強固なパテントポートフォリオを有する大企業であったからこそ支払われたものである。 このように,特定特許のライセンス契約の相手方企業が,その対象製品が対象特許を実施していないと考えていたにもかかわらずライセンス契約を締結した場合は,より であったからこそ支払われたものである。 このように,特定特許のライセンス契約の相手方企業が,その対象製品が対象特許を実施していないと考えていたにもかかわらずライセンス契約を締結した場合は,より一層被告の知的財産の活用実績及びネームバリューに対する相手方の評価並びに被告知財部門の従業員の交渉能力が契約締結に寄与したものであり,被告貢献度をより高く認定する必要がある。 (5) その他の事情ア被告の発明取扱規定に基づき発明者に支払われる報償金には,発明者への報償という性質と,今後も発明者が優れた発明を行うようにとのインセンティブという性質があり,被告は,従業員へのインセンティブという性質を重視して,手厚く報償を行う方針をとっていた。C社ライセンス契約及びD社ライセンス契約に関して,被告が原告に対して実施料収入を基に特別報償金を支払った割合は,C社ライセンス契約につき***%(***円÷***円),D社ライセンス契約につき***%(***円÷***円)であるから,本件訴訟で被告が原告の貢献度を3%と主張することは妥当である。 イこの点に関して原告は,C社ライセンス契約及びD社ライセンス契約に係る原告の特別報償金の支給に当たって,被告が原告の貢献度を***%と認定したと主張する。 しかし,被告がC社ライセンス契約及びD社ライセンス契約についての特別報償金を算出する際に用いた「***」には,発明者貢献度や会社貢献度を評価する基準だけでなく,発明者又は会社のどちらが貢献しているかとは無関係に,***などの発明外の要素等,職務発明対価訴訟では考慮されない項目や重視されない項目が挙げられており,一方で,***といった職務発明対価訴訟で重要視される項目が検討項目から外れている。 したがって,被告がこのような算出基準を ,職務発明対価訴訟では考慮されない項目や重視されない項目が挙げられており,一方で,***といった職務発明対価訴訟で重要視される項目が検討項目から外れている。 したがって,被告がこのような算出基準を用いて算出した***の数字をもって,本件訴訟での被告貢献度を考えることは失当である。 11 争点(6)(相当対価の額)について〔原告の主張〕(1) 法35条4項は,「対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。」と定めており,この「使用者が受けるべき利益の額」 とは当該発明による使用者の「独占の利益」であるから,この規定によれば,従業者が支払を受けるべき相当の対価の額は,「相当の対価」=「独占の利益×(1-使用者の貢献度)」により求めることができる。 (2) 前記5ないし9の〔原告の主張〕記載のとおり,本件各ライセンス契約による被告の独占の利益は,A社ライセンス契約につき148億3074万9554円,B社ライセンス契約につき76億1691万5061円,C社ライセンス契約につき6億1789万円,D社ライセンス契約につき35億0682万4051円,E社ライセンス契約につき45億6108万0213円であり,その合計は,311億3345万8880円である。 そして,前記10〔原告の主張〕のとおり,被告の貢献度は0%(原告の貢献度が100%)であるから,原告が受けるべき相当対価の額は,上記被告の独占の利益の額に等しく,311億3345万8880円となる。 (3) したがって,被告は,本件発明の相当対価311億3345万8880円の一部である5億円及びこれに対する請求(催告)の日の翌日である平成22年5月20日から支払済みまで民法所定 0円となる。 (3) したがって,被告は,本件発明の相当対価311億3345万8880円の一部である5億円及びこれに対する請求(催告)の日の翌日である平成22年5月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 〔被告の主張〕相当の対価の算出方法について,「相当の対価」が「使用者が受けるべき利益の額×(1-使用者の貢献度)」,すなわち,「独占の利益×(1-使用者の貢献度)」により求めることが可能であるという点は認める。 その余の原告の主張は否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(時機に後れた攻撃方法の却下の申立ての当否)について(1) 被告は,原告が平成23年6月8日以降に提出した原告第6準備書面及び書証等の,被許諾企業の各種製品が本件発明の実施品であることについての新たな主張立証がいずれも時機に後れた攻撃方法であり,訴訟の完結を遅延 させるものであるから,民訴法157条1項により却下されるべきであると申し立てる。 (2) この点,本件訴訟において,原告は,被許諾企業の各種製品が本件発明の実施品であると主張しているところ,平成23年5月17日の第4回弁論準備手続期日において,「対価請求の額の算定の根拠として主張する被許諾企業の各種製品が本件特許の実施品であることについての主張立証は,基本的にこれまでの主張立証で尽きている。」と陳述し,同陳述が同期日の手続調書に記載されたにもかかわらず,その後,被許諾企業の製品の実機を用いた新たな試験を実施し,その結果を踏まえて,同年6月7日付け原告第6準備書面において,それらの製品が実際に本件発明の実施品であることが確認された旨の主張を追加した上,同年7月13日の第5回弁論準備手続期日において,上記新たな実機試 まえて,同年6月7日付け原告第6準備書面において,それらの製品が実際に本件発明の実施品であることが確認された旨の主張を追加した上,同年7月13日の第5回弁論準備手続期日において,上記新たな実機試験に関する書証を提出し,その後も被許諾企業の各種製品が本件発明の実施品であることの主張及び立証を行っている。 しかし,第4回弁論準備手続期日における原告の上記陳述は,あくまで「基本的に」との留保が付されたものであり,それ以上の主張立証を一切しないことを言明したものではなく,また,原告が上記の新たな実機試験結果に関する主張及び立証を提出したのは,本件訴訟の提起から約1年後である平成23年6月ないし7月であって,当時はいまだ弁論準備手続による争点整理段階にあり,しかも,その争点整理のための弁論準備手続はその後も平成25年10月8日まで続けられた。このような訴訟の経緯に加えて,本件においては,原告が本件発明の実施品であると主張する被許諾企業の製品は465機種に及び,原告がそれらの全機種について実機試験を行うことは容易ではないこと,職務発明対価の算定のために被許諾企業における当該発明の実施の有無や製品分類毎の実施率等の主張立証を要するか否かは,ライセンス契約の種類や内容によっても異なってくると考えられるところ,被告は,被許諾企業に対する秘密保持義務を理由として本件各ライセンス契約の詳細の 開示を拒んでいること(平成23年8月31日付け被告第5準備書面において,各契約の概要のみが開示された。),被許諾企業の製品が本件発明の実施品であるか否かは本件発明の技術的範囲の解釈によっても左右されるところ,その技術的範囲の解釈に関して原被告間に争いがあることなども併せ考慮すると,原告による平成23年6月8日以降の新たな実機試験の結果に基づ 否かは本件発明の技術的範囲の解釈によっても左右されるところ,その技術的範囲の解釈に関して原被告間に争いがあることなども併せ考慮すると,原告による平成23年6月8日以降の新たな実機試験の結果に基づく主張及び立証は,本件訴訟の手続全体の中においては,いまだ「時機に後れた」ものということはできないというべきであり,また,仮にそれが時機に後れたものであるとしても,上記の諸事情を考慮すれば,その点について原告に「故意又は重大な過失」があると認めることは相当でない。 よって,原告が追加した上記主張立証が民訴法157条1項により却下されるべきとの被告の申立ては理由がない。 2 争点(2)(違法収集証拠排除の申立ての当否)について(1) 被告は,原告が提出した書証の一部が,被告がその原本を秘密情報として管理している文書(本件社内文書)の写しであり,原告が被告在職中に入手したものであるから,原告がこれらの文書の記載内容について法律上の秘密保持義務を負っており,かつ,これらの文書の写しを在職中社外に持ち出すことができず,退職時には被告に対し返還する法律上の義務を負担しているなどとして,いずれも違法収集証拠に当たり,証拠能力を有しないと主張する。 (2) この点,被告の従業員は,就業規則によって,業務上の機密や自己の業務内容を洩らすことが禁止され,その退職時には,在職中に知り得た会社の企業秘密に関する情報を全て会社に返還し,退職後にそれらを洩らしたり,使用したりしないことが義務付けられているほか,被告の企業秘密管理規定においては,退職時に企業秘密の漏洩防止のために企業秘密の返還に関する条項を含む書面を提出するものとされている。そして,原告は,被告を退職するに際し,これらの規定に基づいて秘密保持誓約書及び退職者チェックリス 業秘密の漏洩防止のために企業秘密の返還に関する条項を含む書面を提出するものとされている。そして,原告は,被告を退職するに際し,これらの規定に基づいて秘密保持誓約書及び退職者チェックリス トにそれぞれ署名押印して,被告に提出しているところ,上記秘密保持誓約書には,原告が勤務中に従事した業務において知り得た被告の法務・知的財産管理上の情報等の一切の情報について,退職後も秘密を保持し,第三者に開示・漏洩せず,また,自ら又は第三者のために使用しないこと,及び,その業務上作成,入手した文書,資料,電子データ等の一切を被告に返還し,それらを一切保有していないことをそれぞれ誓約する旨が記載されており,また,上記退職者チェックリストには,原告が業務上作成した文書等(自宅に置いてあるもの及び複製物を含む。)の一切を被告に返還したことを確認する旨が記載されている。 一方,本件訴訟において,原告は,特許権の活用に関する被告の社内文書及びこれに関する従業員間のEメールをプリントアウトした文書,他社とのライセンス契約の内容を記載した文書,他社とのライセンス交渉経過に関する社内の報告書並びに他社とのライセンス契約に係る協議内容が記された議事録などの本件社内文書の写しを書証として提出している。そして,これらの文書は,いずれも原告が被告における自己の業務に関連して,被告社内で入手した被告の社内文書であって,いずれも原告が退職時に被告に対してその返還を確認し,その旨を誓約したはずの文書に当たると認められる。 そうすると,原告は,被告の社内規則等に反し,かつ原告自身の被告に対する誓約に背いて,本件社内文書又はその写しを退職後も返還することなく所持していることが認められる(なお,原告は,自宅で業務を行うために必要な書類を持ち帰ることは一般的に行 ,かつ原告自身の被告に対する誓約に背いて,本件社内文書又はその写しを退職後も返還することなく所持していることが認められる(なお,原告は,自宅で業務を行うために必要な書類を持ち帰ることは一般的に行われていたと主張するが,仮に在職中に業務の遂行のために書類を自宅に持ち帰ることが一般的に行われていたとしても,そのことが,それらの書類を退職後も返還せずに所持することを正当化する理由にならないことは明らかであるし,原告は自宅に保管された書類を含む一切の文書を被告に返還した旨を誓約しているのであるから,原告の上記主張は失当である。)。 このように原告が被告の社内規則や自らの被告に対する書面による明示的な誓約に反して,本件社内文書を被告から持ち出し,あるいは被告に返還せずに,退職後も所持していることは,原告が,被告の従業員として労働契約又は信義則によって負担する,被告に対する法律上及び契約上の義務に違反するものであることは明らかというべきである。 (3) しかしながら,民事訴訟においては,証拠能力の制限に関する一般的な規定は存在せず,訴訟手続を通じた実体的真実の発見及びそれに基づく私権の実現も民事訴訟の重要な目的というべきであるから,訴訟において当事者が提出する証拠が,当事者間の訴訟外の権利義務関係の下で法律上,契約上若しくは信義則上の義務に違反して入手されたものといい得るとしても,それゆえにその訴訟上の証拠能力が直ちに否定されるべきものであるとはいえず,当該証拠が著しく反社会的な手段を用いて採取されたものであるなど,それを民事訴訟において証拠として用いることが民事訴訟の目的や訴訟上の信義則(民訴法2条参照)に照らして許容し得ないような事情がある場合に限って,当該証拠の証拠能力が否定されると解するのが相当である。 を民事訴訟において証拠として用いることが民事訴訟の目的や訴訟上の信義則(民訴法2条参照)に照らして許容し得ないような事情がある場合に限って,当該証拠の証拠能力が否定されると解するのが相当である。 本件においては,上記のとおり,原告が本件社内文書を持ち出して,退職後も所持していることは,法律上及び契約上の義務に違反するものであって,被告に対する背信行為というべきものであるが,他方で,本件社内文書は,いずれも原告が被告における自己の業務に関連して接することができ,その業務の過程で入手し得たものと考えられること,それら本件社内文書が不競法2条6項に規定する「営業秘密」の成立要件を充たす文書であるか否かは必ずしも明らかでなく,また,原告は上記社内文書を法律上正当な権利の行使である職務発明対価請求訴訟の書証として利用しているにすぎないこと,本件社内文書のような使用者側の保有する特許権のライセンス契約等に関する社内文書は,職務発明対価請求訴訟において,一般的に請求の基礎となる事実関係の解明に重要な書類であり,職務発明対価請求訴訟は,本来企業と 従業員若しくは元従業員との間の訴訟であるから,上記のような社内文書においても,閲覧制限の申し立てをし,当事者間で秘密保持契約を締結したりするなどすれば,上記社内文書が不用意に外部に流出することはないにもかかわらず,本件において,被告は上記社内文書等を書証として提出することを拒んでいること,以上の事情をも考慮すると,原告が被告在職中に入手した本件社内文書を本件訴訟において自己の有利な証拠として用いることは,いまだ著しく反社会的なものであるとまで断じることはできず,民事訴訟の目的や訴訟上の信義則に照らしても全く許容し得ないものとまでいうことはできない。 よって,原告が提出した 用いることは,いまだ著しく反社会的なものであるとまで断じることはできず,民事訴訟の目的や訴訟上の信義則に照らしても全く許容し得ないものとまでいうことはできない。 よって,原告が提出した本件社内文書に係る書証につき証拠能力がないと断ずることはできず,したがって,被告の証拠排除の申立ては理由がない。 3 争点(3)ア(被許諾企業による本件発明の実施の有無・構成要件Eのクレーム解釈)について(1) 本件発明の意義ア本件発明に係る特許請求の範囲請求項1並びに本件明細書等の[技術分野],[従来技術],[目的],[構成]及び[効果]の各記載によれば,本件発明の意義について,以下のとおり認められる。 すなわち,公衆電話回線では交換機の形式が複数あり,その形式に応じて端末装置から当該電話回線に送出する選択信号の信号方式が決まるため,公衆電話回線網を伝送回線として利用するファクシミリ装置等の通信機器を設置する際には,接続する電話回線にいずれの信号方式が適用できるのかを調査する必要があるところ,従来は,通信装置の設置工事を行うサービスマンがその選択信号の信号方式を手動で設定するという手間がかかっており,また,通常,ユーザーが通信装置内部のスイッチ等を直接操作することは困難であり,通信装置を移動したときなどには再度サービスマンによる調整が必要となるという課題があったことから,本件発明は,この 従来技術の不都合を解消し,通信装置の設置作業の手間を軽減することができる選択信号方式の設定方式を提供することを目的として,交換機が特定の信号方式の選択信号を判別した場合にはダイアルトーンを停止することを利用し,複数の異なる信号方式の選択信号を発生する選択信号発生手段と電話回線上のダイアルトーンを検出するダイアルトーン検出 が特定の信号方式の選択信号を判別した場合にはダイアルトーンを停止することを利用し,複数の異なる信号方式の選択信号を発生する選択信号発生手段と電話回線上のダイアルトーンを検出するダイアルトーン検出手段を備えた通信装置において,装置設置時に,その選択信号発生手段から異なる種類の信号方式の選択信号を順次発生させ,その都度ダイアルトーン検出手段がダイアルトーンを検出しているかどうかを判別し,ダイアルトーンが停止し検出されなくなったときに,その発生させた選択信号の信号方式を当該電話回線における信号方式として設定するように構成することによって,通信装置の設置作業における選択信号の設定を省略することができ,設置作用の手間を軽減することができるという効果を得るとともに,仮にいずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合には,あらかじめ設定された所定の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定することによって,選択信号の信号方式を誤設定するという事態を回避できるという効果を得ようとした発明である。 イこの点に関して被告は,構成要件Eには明細書記載の「誤設定を回避する効果」すらないから本件発明は価値がないと主張する。 本件明細書等には,いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合に,あらかじめ設定された所定の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定するようにすること(構成要件E)の効果として,「選択信号の信号方式を誤設定するという事態を回避できる」ことが記載されているところ,確かに,当該通信装置が発生することができる複数の選択信号の信号方式のうちの「あらかじめ設定された所定の信号方式」が必ずしも当該通信装置の接続された電話 回線に適用で れているところ,確かに,当該通信装置が発生することができる複数の選択信号の信号方式のうちの「あらかじめ設定された所定の信号方式」が必ずしも当該通信装置の接続された電話 回線に適用できる信号方式であるとは限らない以上,結果として,当該電話回線に適用できない信号方式が当該通信装置の信号方式として設定される可能性は否定できず,構成要件Eの構成では,「信号方式の誤設定を回避する」という効果を確実に得ることはできないものといえる。 もっとも,本件明細書等には,本件発明の実施例として,10ppsと20ppsの2種類のダイアルパルス及びDTMF信号を発生するファクシミリ装置において,これら三つの信号方式の選択信号を順次発生させてもダイアルトーンが検出され続けたときに,「選択信号の信号方式を最も可能性のある10pps のダイアルパルス方式に設定する。」と記載されており,本件発明を実施する場合に,このように「あらかじめ設定された所定の信号方式」として,最も可能性のある信号方式などのより適切な信号方式を設定しておけば,構成要件Eの構成によって,「確実に」ではないが「可及的に」誤設定を回避するとの効果を奏することができないわけではないと認められる。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 「いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合」(構成要件E)の意義アクレーム解釈本件発明の構成要件Eは,「いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合には,あらかじめ設定された所定の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定することを特徴とする」である。 ここで,本件発明に係る特許請求の範囲請求項1の記載を検討すると,「複数の異なる信号方 定された所定の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定することを特徴とする」である。 ここで,本件発明に係る特許請求の範囲請求項1の記載を検討すると,「複数の異なる信号方式の選択信号を発生する選択信号発生手段」(構成要件B1)を備えた「通信装置」(同A)において,その装置設置時に「選択信号発生手段から異なる種類の信号方式の選択信号を順次発生させ」て (同C1),「その都度上記ダイアルトーン検出手段がダイアルトーンを検出しているかどうかを判別し」(同C2),「ダイアルトーンが検出されていないときに発生させた選択信号の信号方式を当該電話回線における選択信号の信号方式として設定する」(同D)ことが記載されており,そのような一連の動作を踏まえて構成要件Eの動作が規定されていることからすれば,構成要件Eの「いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合」とは,複数の異なる種類の信号方式の選択信号を発生する選択信号発生手段から,その複数の異なる種類の信号方式の選択信号が順次発生されたこと,すなわち,選択信号発生手段が発生し得る複数の種類の信号方式の選択信号が全て発生されたことを前提として,それでもなお「ダイアルトーンが検出され続けた場合」を意味するものと解するのが相当である。 また,前記(1)アのとおり,本件発明は,複数の信号方式の中から当該電話回線に適用できる信号方式を調査する技術であり,本件明細書等には,構成要件AないしDの効果として,通信装置の設置作業における選択信号の設定を省略することができることが記載されていることに照らしても,上記請求項1の構成要件AないしDの記載は,複数の異なる信号方式を全て発生させて,それぞれの信号方式の適用の可否を調査し,その中から適用 を省略することができることが記載されていることに照らしても,上記請求項1の構成要件AないしDの記載は,複数の異なる信号方式を全て発生させて,それぞれの信号方式の適用の可否を調査し,その中から適用できる信号方式を判別して,それを当該電話回線における信号方式として設定することを規定しているものと解される。 このほか,本件明細書等には,構成要件Eに関し,「いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合」の例として,「例えば,なんらかの原因で選択信号が正常に送出されなかった場合」,「選択信号が正常に出力されなかった場合であるので,・・・かかる異常を表示し」,と記載されているところ,複数の異なる信号方式のうちの一部を発生させただけでは,ダイアルトーンが検出され続けたとして も,それが通信装置から選択信号が正常に出力されなかった場合(異常な場合)に当たるのか,あるいは,単に発生させた信号方式が電話回線に適用できないものであったにすぎないのかを区別することはできないのであるから,上記記載は,通信装置が発生し得る全ての信号方式を発生させた上で,選択信号が正常に出力されないなどの異常な場合であるか否かを判定することを前提としているものと解される。 以上のとおり,本件発明に係る特許請求の範囲の記載及び本件明細書等の記載を参酌すれば,「いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合」とは,どの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合,すなわち,「通信装置が発生し得る全ての信号方式の選択信号を発生させたが,それにもかかわらずダイアルトーンが検出され続ける場合」を意味するものと解するのが相当である。 このような解釈は,本件明細書等の実施例の記載及 発生し得る全ての信号方式の選択信号を発生させたが,それにもかかわらずダイアルトーンが検出され続ける場合」を意味するものと解するのが相当である。 このような解釈は,本件明細書等の実施例の記載及び【第2図】(テストプログラムのフローチャート)において,ファクシミリ装置が発生させることのできる3種類の信号方式の選択信号を順次出力し,その全てが出力されてもなおダイアルトーンが検出され続けた場合に初めて,所定の信号方式が設定されるとされていることとも整合する。 イ原告の主張に対する判断(ア) この点に関して原告は,「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」の文言が「複数ある信号方式のうち,どれかの信号方式の選択信号を発生させたけれども」を意味することは特許請求の範囲の記載から客観的一義的に明らかであり,それゆえ本件明細書等の記載を参酌する必要がないと主張する。 この点,「広辞苑第六版」(新村出編,2008年)によれば,上記文言のうち「いずれ」の語は,「これとかそれとか,はっきり定めず, または分からないままに,物事をさすのに使う語。どれ。どちら。」との意味を有し,「も」の語は,接続助詞として,「①動詞的活用の語の連体形に接続して譲歩の気持から,逆接を表す。・・・でも。・・・のに。②仮定の逆接条件を表す。・・・ても。・・・であっても。」との意味を有すると認められるが,これらの「いずれ」及び「も」の国語的意味に照らしても,「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」の文言が原告のいうように「複数ある信号方式のうち,どれかの信号方式の選択信号を発生させたけれども」を意味することが客観的一義的に明らかであるとは認められない。 また,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定められるが(法70条1項 かの信号方式の選択信号を発生させたけれども」を意味することが客観的一義的に明らかであるとは認められない。 また,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定められるが(法70条1項),その特許請求の範囲に記載された用語の意義は,その文言が一義的に明確なものであるか否かにかかわらず,明細書の記載及び図面を考慮して解釈されるべきものと解するのが相当である(同条2項)ところ,本件発明に係る特許請求の範囲の記載及び本件明細書等の記載からは,むしろ「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」の文言が「通信装置が発生し得る全ての信号方式を発生させたが」を意味すると解されることは,前記アのとおりである。仮に原告の主張するように解釈した場合には,複数ある信号方式のうちのどれか一つを発生させたがダイアルトーンが検出され続けているということをもって,当該選択信号が正常に送出されなかったと判定されるべきことになるが,このような判定が技術的に誤りであることは明らかである。 (イ) 原告は,本件明細書等の【第2図】において,「10pps で“1”を発信する」(処理109)及び「ダイアルトーン検出?」(処理110)を省略してもしなくとも処理の結果は同じであるから,この記載から,利用できる信号方式であってもその信号方式の選択信号を発生させる必要がない場合があることを導けると主張する。 しかし,特許発明の技術的範囲が,明細書の記載及び図面を考慮して特許請求の範囲に記載された文言を解釈することで定められるべきことは上記のとおりであるところ,原告の指摘する【第2図】には,処理109及び110がいずれも明記されているのであるから,仮にこれらの処理を省略した場合に同様の結果が得られるとしても,そのことを根拠として,同処理を省略す ところ,原告の指摘する【第2図】には,処理109及び110がいずれも明記されているのであるから,仮にこれらの処理を省略した場合に同様の結果が得られるとしても,そのことを根拠として,同処理を省略する場合も本件発明の技術的範囲に含まれると解釈することは,妥当ではない。 (ウ) 原告は,本件明細書等の実施例に,DTMF, 10pps, 20ppsのほかに16ppsを追加することが記載されているから,DTMF及び16ppsしか利用できない国では10pps及び20ppsは利用しないことになり,日本国内では16ppsは利用できないから,DTMF, 10pps及び20ppsのみを利用することになるなどとして,本件明細書等に,発生可能な信号方式,あるいは利用可能な信号方式であっても,製品の使用状況等によって,選択信号を発生する必要がない信号方式が存在し得ることが開示されていると主張する。 しかし,本件明細書等には,DTMF,10pps及び20ppsの3種類の信号方式の選択信号を発生する選択信号発生手段を備えたファクシミリ装置において,それらの3種類の信号方式の選択信号を順次発信し,その全てを発信してもダイアルトーンが検出され続ける場合に,選択信号が正常に出力されなかった場合であるとして,異常を表示しつつ,10ppsに設定するとの実施例を説明した上で,「ところで,上述した実施例では,選択信号の信号方式が,DTMF,10pps,20pps の3種類であったが,16pps のダイアルパルスを用いている交換機を使用している国もあり,かかる国において同様の効果を得るためには,16pps のダイアルパルスを発生する手段を追加して,このダイアルパルスを試す処理をテストプログラムに追加すればよい。」と記載されているのである から,ここに の効果を得るためには,16pps のダイアルパルスを発生する手段を追加して,このダイアルパルスを試す処理をテストプログラムに追加すればよい。」と記載されているのである から,ここには,上記実施例の3種類の信号方式の選択信号を発生する選択信号発生手段に,さらに16ppsのダイアルパルスを発生する手段を「追加」し,この3種類の信号方式を発信して試す処理に,さらに16ppsのダイアルパルスを試す処理を「追加」することが記載されているにすぎないのであって,これらの4種類の信号方式のうちの一部の信号方式の発信を省略することは何ら記載されていないというべきである。 したがって,原告の指摘する記載を考慮しても,4種類の信号方式の選択信号を発生可能なファクシミリ装置において,そのうちの一部の信号方式の選択信号のみを発信する場合が本件発明の技術的範囲に含まれると解することはできない。 (エ) このほか,原告は,被告が過去に,本件発明のクレーム解釈について本件訴訟における主張と異なる見解を採っていたなどして,本件訴訟において被告が過去の行為と矛盾する主張をすることは信義則に反し,許されないと主張する。 しかし,被告が過去に本件発明のクレーム解釈について何らかの見解を有していたとしても,それは被告社内における見解にすぎないのであり,また,そのような被告の見解は,他社とのライセンス交渉等において相手方に示されたことがあり得るとしても,被告が本件特許の成立過程でそのような見解を明示して,それを前提に本件特許の登録査定を得たとか,以前の原告との訴訟においてそのような見解を主張して攻撃防御方法として用いたなどという事情は認められない。 そうすると,本件訴訟において被告が過去の見解と異なる主張をしているとしても,そのことが原告と との訴訟においてそのような見解を主張して攻撃防御方法として用いたなどという事情は認められない。 そうすると,本件訴訟において被告が過去の見解と異なる主張をしているとしても,そのことが原告との関係において信義則に反して許されないと解することはできない。 (3) 「あらかじめ設定された所定の信号方式を・・・設定」(構成要件E)の 意義ア 「あらかじめ設定された」について(ア) クレーム解釈「広辞苑第四版」(新村出編,1998年)によれば,「あらかじめ」,「設定」の各用語は,それぞれ「結果を見越して,その事がおこる前から。まえもって。かねて。」,「つくり定めること。」を意味するものと認められるが,「あらかじめ設定された所定の信号方式」が,いつの時点を基準にして,あらかじめ(前もって)定められていなければならないのかについては,本件発明に係る特許請求の範囲及び本件明細書等に明示的かつ一義的な記載はない。 しかし,特許請求の範囲請求項1の全体の構成に鑑みると,そこには,「通信装置」(構成要件A)の「設置時に,・・・異なる種類の信号方式の選択信号を順次発生させ」(同C1),その全ての信号方式の選択信号を発生させたが,それにもかかわらず「ダイアルトーンが検出され続けた場合」(同E)に,「あらかじめ設定された所定の信号方式を・・・設定する」(同E)という,「選択信号方式の設定方式」(同F)の一連の処理動作が規定されているところ,このような一連の処理の中の一つのステップとして,「あらかじめ設定された所定の信号方式を・・・設定すること」が置かれている以上,この「あらかじめ設定された所定の信号方式」とは,その一つ前のステップである,全ての信号方式の選択信号を発生させたにもかかわらずダイアルトーンが検出され続けるこ 設定すること」が置かれている以上,この「あらかじめ設定された所定の信号方式」とは,その一つ前のステップである,全ての信号方式の選択信号を発生させたにもかかわらずダイアルトーンが検出され続けることが判別された時点を基準として,同時点よりも前に所定の信号方式が定まっていることを意味すると解するのが相当である。 このような解釈は,本件明細書等では,本件発明の実施例として,3種類の信号方式のうち最後の信号方式の選択信号が出力されてもダイアルトーンが検出され続けた場合に,「選択信号の信号方式を最も可能性 のある10pps のダイアルパルス方式に設定する」ことが記載されており,この「最も可能性のある10pps のダイアルパルス方式」は,最後の信号方式の選択信号が出力されてもダイアルトーンが検出され続けることが判別された時点よりも前に「所定の信号方式」として設定されていたものであると解されることにも整合するといえる。 (イ) 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,本件発明の作用効果を奏するには端末メーカーの認識において正しい選択信号の信号方式である可能性が最も高い特定の信号方式に設定するようにする必要があるとして,所定の信号方式が端末メーカーからの出荷より前に設定されていなければならないと主張する。 しかし,誤設定を回避するとの効果を奏するために,正しい信号方式である可能性が最も高い信号方式が選択される必要があるとしても,それを出荷前に端末メーカーが定めておかなければならない必然性はないし,最も可能性が高い信号方式は,当該端末の使用者の属性,その設置場所,利用目的,その他の条件によっても異なってくると考えられるから,端末メーカーが出荷前に一律に設定することが最も望ましい設定方法であるともいい難い。 したがっ 該端末の使用者の属性,その設置場所,利用目的,その他の条件によっても異なってくると考えられるから,端末メーカーが出荷前に一律に設定することが最も望ましい設定方法であるともいい難い。 したがって,「あらかじめ設定された」との文言について,端末の出荷前に端末メーカーの認識において正しい選択信号の信号方式である可能性が最も高い特定の信号方式に設定することが必要であるとの被告の主張は採用できない。 (ウ) 原告の主張に対する判断一方,原告は,自動設定方式でダイアルトーンが検出され続けた場合に手動で再度信号方式を選択する構成であっても,ユーザーが手動で選択した信号方式が「あらかじめ制御部のプログラムに設定されていた所 定の信号方式」であるから,CPUがこれを受け取ってその受け取った信号方式をメモリ-に設定することは,「あらかじめ設定された所定の信号方式」を設定することに当たると主張する。 しかし,手動での信号方式の設定は,選択信号発生手段が全ての信号方式を順次発生させたにもかかわらずダイアルトーンが検出され続けた場合に,これを異常表示等によってユーザーに知らせることで行われるものであるから,そのユーザーによって選択される信号方式は,「全ての信号方式の選択信号が出力されてもダイアルトーンが検出され続けることが判別された時点」よりも前に設定されていたものではない。そうである以上,ユーザーが手動で選択した信号方式は,「あらかじめ設定された所定の信号方式」には当たらないというべきである。 原告は,「あらかじめ設定された所定の信号方式」が制御部のプログラムにあらかじめ設定されていれば足りると主張するようであるが,構成要件Eの「いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合」とは,前記(2) 信号方式」が制御部のプログラムにあらかじめ設定されていれば足りると主張するようであるが,構成要件Eの「いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが検出され続けた場合」とは,前記(2)アのとおり,「通信装置が発生し得る全ての信号方式の選択信号を発生させたが,それにもかかわらずダイアルトーンが検出され続ける場合」を意味し,構成要件Eは,この場合に「あらかじめ設定された所定の信号方式を・・・設定する」と規定しているところ,通信装置が発生し得る信号方式がいずれも制御部のプログラムにあらかじめ設定されていることは当然であるから,ここであえて「あらかじめ設定された所定の」と規定されていることからすれば,「あらかじめ設定された所定の信号方式」とは,単に通信装置が発生し得る信号方式として制御部のプログラムに設定されているものをいうのではなく,制御部のプログラムに設定された複数の信号方式の中からあらかじめ一つを所定のものとして選択された信号方式を意味すると解するのが相当である。 また,そもそも,手動による信号方式の設定は,本件発明に対する従来技術として挙げられており,本件発明は,そのような手動設定の不都合を解消するためになされたものであるから,手動による信号方式の設定が本件発明の技術的範囲に含まれるとの原告の主張は採用できない。 この点に関し原告は,本件発明の目的が,使用できる信号方式を自動検出することにより「設置作業の手間を軽減すること」であり,ユーザーの手間が多少あっても,従来技術である通常の手動設定よりも改善されていれば十分であるとも主張するが,本件明細書等の[従来技術]の記載及び[目的]の記載に照らせば,本件発明においては,従来の手動設定の手間やユーザーに手動設定が困難であることを従来技術の不都合と れていれば十分であるとも主張するが,本件明細書等の[従来技術]の記載及び[目的]の記載に照らせば,本件発明においては,従来の手動設定の手間やユーザーに手動設定が困難であることを従来技術の不都合と捉えて,本件発明がその不都合を「解消」するもの,すなわち手動設定を要しないこととするものとされていることは明らかである(「設置作業の手間を軽減する」とは,信号方式の手動設定の手間を省くことによって,設置作業全体の手間を軽減することを意味すると解される。)から,原告の上記主張は理由がない。 イ 「所定の信号方式」について(ア) クレーム解釈「広辞苑第四版」(新村出編,1998年)によれば,「所定」とは「定まっていること。定めてあること。」を意味する語と認められるから,「所定の信号方式」は,「定めてある信号方式」あるいは「定まった信号方式」程度の意味を有するものであると解されるが,その文言自体からは,「信号方式が変化しない一定のもの」に限定されるとまでは認められない。 また,本件明細書等の記載を見ても,「所定の信号方式」が恒常的に不変であることを示唆する記載はない。この点,本件明細書等には,「所定の信号方式」の例として,「選択信号の信号方式を最も可能性のある 10pps のダイアルパルス方式」が記載されているが,このような「最も可能性のある」信号方式が必ずしも普遍的でないことは技術常識であるから,かかる実施例の記載によっても,「所定の信号方式」又はその例である「最も可能性のある信号方式」が不変でなければならないと解すべきとはいえない。 そうすると,「所定の信号方式」とは,必ずしも一つのものに定まり,不変なものでなければならないわけではなく,何らかの方法で(あらかじめ)定められるものであれば足りると解するのが相当である。 ない。 そうすると,「所定の信号方式」とは,必ずしも一つのものに定まり,不変なものでなければならないわけではなく,何らかの方法で(あらかじめ)定められるものであれば足りると解するのが相当である。 したがって,例えば,端末の出荷後に回線自動設定機能が使用されたことにより信号方式の設定が行われ,そのようにして直近に定められた信号方式をもって「所定の信号方式」とするような方法も,「所定の信号方式を・・・設定する」に該当するといい得ることになる。 (イ) 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,「あらかじめ設定された所定の信号方式」との用語の中に,「設定」及び「所定」というどちらも「定める」という意味を含む用語があえて重ねて用いられていることから,「所定の信号方式」は特定のものでなければならず,信号方式が変化するような場合はこれに含まれないと主張する。 しかし,「設定」及び「所定」の二つの語がいずれも「定める」との意味を有するからといって,それを重ねて用いた場合に,「定める」との意味を超えて,「特定の」とか「変化しない」といった,別の意味を持つに至るとは解されない。 また,被告は,本件明細書等に特定の信号方式である10ppsのダイアルパルス方式に設定する方法のみが開示されていることや,信号方式の誤設定を回避するという作用効果を奏するためには端末メーカーが正しい信号方式である可能性が最も高い特定の信号方式を設定しておく 必要があることを指摘して,「所定の信号方式」が特定の信号方式でなければならないと主張する。 しかし,10ppsの信号方式に設定することは,単なる実施例の記載にすぎず,また,その10ppsの信号方式は「最も可能性のある」信号方式として挙げられているが,そのような「最も可能性のある」信号方式が必ずし 0ppsの信号方式に設定することは,単なる実施例の記載にすぎず,また,その10ppsの信号方式は「最も可能性のある」信号方式として挙げられているが,そのような「最も可能性のある」信号方式が必ずしも普遍的なものでないことは,上記のとおりである。 よって,このような実施例の記載や「最も可能性のある」との記載によっても,「所定の信号方式」が特定のものでなければならないということはできない。 4 争点(3)イ(被許諾企業による本件発明の実施の有無・構成要件充足性)について(1) 実機試験の結果についてア証拠及び弁論の全趣旨によれば,別紙訴訟物リストに記載された機種のうち以下の各機種について,回線自動設定機能を作動させた場合の動作等は,次のとおりであると認められる。 (ア) A社***37(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,初期化状態では信号方式が10ppsに設定されているが,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を3巡発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,その直前に設定されていた信号方式にかかわらず,10ppsを信号方式に設定する。 (イ) A社***14(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序 で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,手動設定を促すエラーが表示されるが,20ppsが信号方式に設定され 生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,手動設定を促すエラーが表示されるが,20ppsが信号方式に設定されている。 (ウ) A社***7(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,その直前に設定されていた信号方式にかかわらず,DTMFを信号方式に設定する。 (エ) A社***2(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,その直前に設定されていた信号方式にかかわらず,DTMFを信号方式に設定する。 (オ) A社***2(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,その直前に設定されていた信号方式にかかわらず,DTMFを信号方式に設定する。 (カ) B社***19(平成***年発売) DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,初期化状態では信号方 方式にかかわらず,DTMFを信号方式に設定する。 (カ) B社***19(平成***年発売) DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,初期化状態では信号方式がDTMFに設定されているが,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,エラーが表示され,その直前に設定されていた信号方式が設定されている。 (キ) B社***4(平成***年発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,初期化状態では信号方式がDTMFに設定されているが,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,エラーが表示され,その直前に設定されていた信号方式が設定されている。 (ク) B社***5(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,初期化状態では信号方式がDTMFに設定されているが,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,エラーが表示され,その直前に設定されていた信号方式が設定されている。 (ケ) C社***32(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,D 前に設定されていた信号方式が設定されている。 (ケ) C社***32(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信 号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,「回線設定ができませんでした。取扱説明書に従って操作してください。」とのエラーが表示され,何らの信号方式も設定されない(エラー表示に従って,手動で回線種別を選択して信号方式を設定することができる。)。 (コ) C社***70(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,20ppsを信号方式に設定する。 (サ) D社***60(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,エラーが表示され,その直前の自動設定により設定されていた信号方式に設定される。 (シ) D社***13(平成***年***月発売)DTMF及び20ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF信号を発生させ,そこでダイアルトーンが消えた場合は,DTMFを信号方式に設定し,ダイアルト **月発売)DTMF及び20ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF信号を発生させ,そこでダイアルトーンが消えた場合は,DTMFを信号方式に設定し,ダイアルトーンが消えなかった場合は,その直前に設定されていた信号方式にかかわらず,20ppsを信号方式に設定する。 (ス) D社***29(平成***年***月発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序 で信号を2巡発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,その直前に設定されていた信号方式にかかわらず,20ppsを信号方式に設定する。 (セ) E社***7(平成***年発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20ppsの順序で信号を発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,10ppsを信号方式に設定する。 (ソ) E社***7(平成***年発売)DTMF,20pps及び10ppsの信号方式を使用でき,初期化状態では信号方式がDTMFに設定されているが,回線自動設定機能を作動させると,DTMF,20pps,10ppsの順序で信号を2巡発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,手動設定を促すエラーが表示されるが,その直前に設定されていた信号方式(初期化直後はDTMF)が設定されている。 イ 生させた信号方式を設定し,いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合は,手動設定を促すエラーが表示されるが,その直前に設定されていた信号方式(初期化直後はDTMF)が設定されている。 イ充足の成否(ア) 前記3の構成要件Eのクレーム解釈を前提に,上記アの各機種の回線自動設定方式が本件発明の構成要件を充足するか否かを検討すると,A社の***14,***37,***7,***2及び***2,B社の***19,***4及び***5,D社の***60及び***29,E社の***7は,いずれも3種類の信号方式を発生することができる通信装置において,その全ての信号方式を順次発生させ,その途中でダイアルトーンが消えた場合は,その時発生させた信号方式を設定し, いずれでもダイアルトーンが消えなかった場合に,そのダイアルトーンが消えないことが判別されるより前に定められていた信号方式を設定するものであると認められるから,これらの機種は,いずれも本件発明を実施するものと認めることができる。 なお,上記の中には,3種類の信号方式の全てを発生させたがダイアルトーンが検出され続けた場合に,その直前に設定されていた信号方式を設定するものがあり,この場合,その信号方式は,出荷時に定められたものではなく,また,回線自動設定を行うたびに変化する可能性があるが,このような場合でも,その信号方式はダイアルトーンが検出され続けることが判別されるよりも前に定められたものであって,「あらかじめ設定された所定の信号方式」に当たると解されることは,前記3(3)のとおりである。 (イ) 他方,C社の***32及び70並びにE社の***7は,いずれもDTMF,20pps及び10ppsの3種類の信号方式を発生することができるにもかかわ ことは,前記3(3)のとおりである。 (イ) 他方,C社の***32及び70並びにE社の***7は,いずれもDTMF,20pps及び10ppsの3種類の信号方式を発生することができるにもかかわらず,回線自動設定においては,そのうちDTMF及び20ppsの2種類の信号方式しか発生させず,その2種類の信号方式でダイアルトーンが消えない場合には,信号方式を設定しないか(C社***32),あるいは20ppsを設定し(C社***70),又は10ppsを設定する(E社***7)のであるから,いずれも「通信装置が発生し得る全ての信号方式の選択信号を発生させ」るものとはいえないため,前記3(2)のとおり,構成要件Eの「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」を充足しない。なお,上記C社***32は,自動で信号方式が設定できなかった場合には信号方式を設定せず,「回線設定ができませんでした。取扱説明書に従って操作してください。」とのエラーを表示し,ユーザーが手動で回線種別を選択して信号方式を設定するものであるが,このように自動で信号方式が設定できなかった 場合にユーザーが手動で選択して設定する方式は,前記3(3)のとおり,構成要件Eの「あらかじめ設定された所定の信号方式」も充足しないことになる。 また,D社***13は,DTMF及び20ppsの2種類の信号方式を発生することができるにもかかわらず,回線自動設定においては,このうちDTMFの信号方式しか発生させず,それでもダイアルトーンが消えない場合に20ppsの信号方式を設定するのであるから,やはり「通信装置が発生し得る全ての信号方式の選択信号を発生させ」るものとはいえないため,構成要件Eの「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」を充足しない。 (2) 原告の主張に対 あるから,やはり「通信装置が発生し得る全ての信号方式の選択信号を発生させ」るものとはいえないため,構成要件Eの「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」を充足しない。 (2) 原告の主張に対する判断ア取扱説明書等の記載について原告は,C社***36,41,42ないし44及び46ないし48についても,別紙訴訟物リストに記載して本件発明の実施品であると主張する。 しかし,これらの機種の取扱説明書12,13頁の説明によれば,これらはいずれも,回線自動設定機能を有するが,自動で信号方式が設定できなかった場合は,回線種別が未設定の状態でエラーを表示し,ユーザーが手動で信号方式を選択して設定するものであると認められるところ,前記3(3)のとおり,このように自動で信号方式が設定できなかった場合にユーザーが手動で選択して設定する信号方式は,本件発明の構成要件Eの「あらかじめ設定された所定の信号方式」に当たらないから,上記各機種はいずれも本件発明の実施品ではないというべきである。 また,同じく本件発明の実施品であるとして別紙訴訟物リストに記載されているD社***26については,その取扱説明書15頁に,DTMF,10pps及び20ppsの選択信号を発生させることができ,回線自動 設定機能を有するが,契約回線が10ppsである場合は自動設定ができず,手動で設定する必要があることが記載されているから,同機種は,回線自動設定の過程では10ppsを発生させないものと認められ,したがって,構成要件Eの「いずれの信号方式の選択信号を発生させても」を充足しない。 イ回線自動設定機能について原告は,回線自動設定機能を有する製品は,全て本件発明を実施していると主張し,その根拠として,同機能を有する機種について実機鑑定や取扱説明書の も」を充足しない。 イ回線自動設定機能について原告は,回線自動設定機能を有する製品は,全て本件発明を実施していると主張し,その根拠として,同機能を有する機種について実機鑑定や取扱説明書の記載に基づく鑑定を行ったところ,その全てにおいて本件発明が実施されていることが確認されたこと,同機能を有している機種で本件発明の代替技術を搭載した機種が発見されていないこと,本件発明を実施していないとユーザーが製品故障を疑ってクレームが多発する可能性があり,最悪の場合はプログラムの暴走を招くことなどを挙げる。 しかし,原告が回線自動設定機能を有するとして別紙訴訟物リストに記載した製品の中に,実機鑑定の結果や取扱説明書の記載から,本件発明を実施しておらず,代替技術を用いていると認められる機種が少なからず存在することは,前記(1)及び(2)アのとおりである。そうすると,実機鑑定や取扱説明書の記載による鑑定を行った機種の全てが本件発明を実施しており,代替技術を搭載した機種が発見されないことを根拠とする原告の上記主張は,そもそもその前提を欠くものといわざるを得ない。 また,回線自動設定機能を有する製品の中でも,本件発明を実施せず,代替技術を用いているものが少なからず存在することは上記のとおりであるが,これらの製品について,ユーザーからのクレームが多発していることを認めるに足りる証拠はない。 さらに,これらの製品のプログラムが,原告のいうところの暴走(例えば,システム制御部のプログラムが正しく動作しないことによって,装置 が制御できない状態,すなわち操作表示部からの操作を受け付けない状態に陥ること)によって,当該製品の操作が不可能になる事態が生じていることを認めるに足りる証拠もない。 よって,回線自動設定機能を有する製品の全てが本件 すなわち操作表示部からの操作を受け付けない状態に陥ること)によって,当該製品の操作が不可能になる事態が生じていることを認めるに足りる証拠もない。 よって,回線自動設定機能を有する製品の全てが本件発明を実施しているとの原告の主張は採用できない。 ウ原告は,CS放送受信端末の全てが,本件発明の実施が不可欠といえる双方向通信機能を搭載しているから,CS放送受信端末における本件発明の実施率が100%といえると主張する。 しかし,証拠によれば,CS放送受信端末の中には回線自動設定機能を備えていないものがあると認められるから,原告の上記主張はその前提を欠き,採用できない。 エ原告は,セットトップボックスの仕様がDVD録再機と同じであるから,DVD録再機について本件発明の実施が立証されている以上,セットトップボックスについても本件発明の実施が認められると主張する。 しかし,そもそもDVD録再機の全てについて本件発明の実施が立証されているわけではない以上,それと同じ仕様を備えるとされるセットトップボックスについて,本件発明の実施が認められるということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 オ原告は,被告が被許諾企業5社との間でライセンス契約を締結しており,その契約によって実施料を受け取った事実がある以上,本件発明の実施が立証されていると主張する。 しかし,A社ライセンス契約及びB社ライセンス契約では,そもそもその交渉過程で本件特許が相手方に提示されなかったことは,当事者間に争いがないところ,そのようなライセンス契約の存在を根拠としてA社及びB社の製品が本件発明を実施しているということができないことは明らかである。また,C社ライセンス契約及びD社ライセンス契約は,いずれも 本 うなライセンス契約の存在を根拠としてA社及びB社の製品が本件発明を実施しているということができないことは明らかである。また,C社ライセンス契約及びD社ライセンス契約は,いずれも 本件特許に係る有償ライセンス契約であるが,だからといって,C社及びD社の製品の全てが本件発明の実施品であることが推認されるとはいえない(むしろ,前記(1)及び(2)アのとおり,C社及びD社の製品の一部は,本件発明の実施品でないと認められる。)。E社ライセンス契約についても,その契約の存在がE社の製品の全てにおける本件発明の実施を推認させる事情とはなり得ないことは,当然である(E社の製品の一部が本件発明の実施品でないと認められることは,前記(1)のとおりである。)。 (3) 被告の主張に対する判断被告は,本件各ライセンス契約の被許諾企業が本件発明を実施していないと判断していることや,特にA社ライセンス契約においては,***ことを挙げて,これらの被許諾企業の製品が本件発明を実施していないことが明らかであると主張する。 しかし,ライセンス交渉において,当事者が自社製品の相手方特許への抵触性を容易に認めるとは考えにくく,また,特許発明の技術的範囲についての見解が当事者間で一致するとは限らないのであるから,被許諾企業が***,また,***としても,そのような事情のみを理由として被許諾企業が本件発明を実施していないということはできない。 また,被告は,例えばD社***60について,同***の工場出荷後初回の信号方式の設定がどのようなものであったか不明であるから,構成要件Eの「あらかじめ設定された所定の信号方式」を充たすことの立証がないと主張する。 しかし,仮に工場出荷直後の「あらかじめ設定された所定の信号方式」が不明であるとしても 不明であるから,構成要件Eの「あらかじめ設定された所定の信号方式」を充たすことの立証がないと主張する。 しかし,仮に工場出荷直後の「あらかじめ設定された所定の信号方式」が不明であるとしても,その後の2回目以降の回線自動設定の際に,「あらかじめ設定された所定の信号方式」を設定し,本件発明の構成要件を満たすのであれば,その通信装置が本件特許の技術的範囲に属することを否定することはできないから,被告の上記主張は採用することができない。 (4) 小括以上によれば,原告が本件発明の実施品であると主張する別紙訴訟物リスト記載の各機種のうち,本件発明の実施が認められるのは,前記(1)イ(ア)に説示の範囲に限られ,その余の製品については,本件全証拠を精査しても,その具体的構成が必ずしも明らかではなく,本件発明の実施品であると認めることはできない。 5 争点(4)ア(A社ライセンス契約における利益の額)について(1) 包括クロスライセンス契約において使用者が受けるべき利益の額ア包括クロスライセンス契約は,当事者双方が多数の特許発明等の実施を相互に許諾し合う契約であるから,当該契約において,一方当事者が自己の保有する特許発明等の実施を相手方に許諾することによって得るべき利益とは,相手方が保有する複数の特許発明等を無償で実施することができること,すなわち,相手方に本来支払うべきであった実施料の支払義務を免れることであると解することができる。 しかし,営利企業が包括クロスライセンス契約を締結する場合,相互に支払うべき実施料の総額が均衡すると考えて契約条件を定めたものと解するのが合理的であるから(ただし,その実施料の総額が均衡しないことが明らかである場合は,その均衡を図るために,一方から他方にいわゆるバラン き実施料の総額が均衡すると考えて契約条件を定めたものと解するのが合理的であるから(ただし,その実施料の総額が均衡しないことが明らかである場合は,その均衡を図るために,一方から他方にいわゆるバランス調整金としての実施料が支払われることになる。),包括クロスライセンス契約における当事者の利益を,「相手方に本来支払うべきであった実施料の支払義務を免れることによる利益」に代えて,「相手方が自己の特許発明を実施することにより,本来相手方から支払を受けるべきであった実施料」を基準として算定することも合理的ということができる。 イこのような包括クロスライセンス契約においては,互いが保有する数千件又は1万件を超える多数の特許が許諾対象となり得るが,その契約締結過程において,それぞれが保有する多数の特許の全てについて,逐一,そ の技術的価値や相手方による実施の有無等を相互に評価し合うことは現実的に不可能であるから,相手方が実施している可能性が高いと推測している特許や技術的意義が高いと認識している基本特許を,自社の代表的な特許として相互に相手方に提示して交渉に臨み(以下,このように相手方に提示された特許を「提示特許」という。),それらの特許の技術的価値の程度や有効性,当該特許に相手方の製品が抵触するか否か,及び抵触していると認められた製品の売上高等について具体的に協議し,提示特許のうち有効性,技術的価値及び相手方の製品との抵触性等が確認された特定の特許(以下「代表特許」という。)と対象となる製品の売上高を重視した上で,互いに保有する特許の件数や出願中の特許の件数も比較考慮することにより,包括クロスライセンス契約の諸条件が決定されることが通常であると考えられる。 したがって,上記提示特許,特に代表特許に当たる特許は,原則として, や出願中の特許の件数も比較考慮することにより,包括クロスライセンス契約の諸条件が決定されることが通常であると考えられる。 したがって,上記提示特許,特に代表特許に当たる特許は,原則として,当該包括クロスライセンス契約の締結に大きく貢献したものとして,包括クロスライセンス契約において使用者が受けるべき利益の額に対する寄与度が大きいものと評価されるというべきである。 なお,当事者ら,殊に原告は,その主張において,上記提示特許と代表特許を特段区別することなく,「代表特許」の語を用いているが,厳密に言えば,上記のとおり区別し得るものである。 ウ他方で,代表特許でもなく,提示特許でもない,他の対象特許(以下「非提示特許」という。)については,多数の特許のうちの一つとして,その他の多数の特許とともに厳密な検討を経ることなく当該契約の対象に含まれたものというべきである。 また,例えば,既に締結された包括クロスライセンス契約の契約期間が満了するに際して,当該契約の契約期間を延長する趣旨で更新契約を締結するような場合には,改めて特定の特許を互いに提示してそれを評価し合 うというようなことをせずに,従前の主要な条件を維持したまま,更新契約の締結に至ることがあり得るが,このような場合にも,その対象に含まれる個々の特許については,多数の特許のうちの一つとして,他の多数の特許とともに厳密な検討を経ることなく,当該契約の許諾対象とされることになる。 そうすると,このような非提示特許については,それらが包括クロスライセンス契約の許諾対象特許に含まれる以上,その許諾対象特許の総体を構成するものとして,同契約締結に対する何らかの寄与度を観念することができるとはいい得るとしても,それは上記提示特許等による寄与度を除いた部分にすぎず 象特許に含まれる以上,その許諾対象特許の総体を構成するものとして,同契約締結に対する何らかの寄与度を観念することができるとはいい得るとしても,それは上記提示特許等による寄与度を除いた部分にすぎず,また,非提示特許の数が極めて多いことが通常であることからすると,個々の非提示特許の寄与度は極めて小さいというべきであり,しかも,相手方がこれを具体的に評価して契約締結に至ったわけでない以上,仮に一つの非提示特許が存在しなかったとしても結果的に同じ条件でライセンス契約が締結されたと考えられるのであるから,それらの個々の非提示特許については,当該ライセンス契約締結に対して直接的に有意な貢献をしたと評価することはできないのが原則である。 したがって,非提示特許については,多数の特許群を構成するものとしてその価値を観念することができるものではあっても,それは多数の特許群の総体であることによって初めて把握される価値であって,原則として,その総体の価値を個々の特許に還元することはできず,個々の特許については,包括クロスライセンス契約に対する特段の寄与度を認めるまでの必要はないものというべきである。 エもっとも,非提示特許であっても,包括クロスライセンス契約締結当時において相手方が実施していたこと又は実施せざるを得ないことが認められるような特許(以下「実施特許」ということがある。)については,それが相手方に提示されなかったとしても,当該契約締結時にその存在が相 手方に認識されており,相手方がこれを考慮に入れて当該契約を締結した可能性があり,また,特許権者が包括クロスライセンス契約の締結を通じて現に禁止権を行使しているものということができることから,このような実施特許は,当該契約の締結に対して何らかの直接的な貢献をした可能性を否定する た,特許権者が包括クロスライセンス契約の締結を通じて現に禁止権を行使しているものということができることから,このような実施特許は,当該契約の締結に対して何らかの直接的な貢献をした可能性を否定することはできず,したがって,代表特許・提示特許に準じるものとして,当該契約締結に対する一定の寄与度を認めることができると解される。 オさらに,非提示特許である特定の特許について,契約締結当時における相手方の実施が認められず,契約締結に対する直接的な貢献が認められない場合であっても,例えば,契約締結後,その契約期間中であって,かつ当該特許の存続期間中に,相手方が当該特許を実際に実施していることが認められるような場合には,相手方は,既にライセンス契約によって使用が許諾されている特許の一つであったからこれを使用したという事情があるにせよ,当該特許の技術的価値を認めて,これを実施することでその現実的な利益を得ているということができ,また,当該特許の特許登録及び当該ライセンス契約を通じてその禁止権が行使されているといい得ることから,当該特許が特許群を構成する多数の特許の一つにすぎないとしても,その特許群が有する価値の一部を当該特許に個別に還元して評価し得ないものではないと解される。 したがって,このような特許についても,包括クロスライセンス契約の許諾対象特許を構成する特許群の中の一つとして,一定の寄与度を認めることができると解するのが相当である。 ただし,この場合,当該特許は,ライセンス契約の締結過程において代表特許又は提示特許として相手方に提示されたことはなく,また,相手方が当時これを実施していたこともないから,その契約締結に際して相手方が当該特許の個別の価値を評価したわけではないのである以上,当該特許 の同契約に対する寄与の程 とはなく,また,相手方が当時これを実施していたこともないから,その契約締結に際して相手方が当該特許の個別の価値を評価したわけではないのである以上,当該特許 の同契約に対する寄与の程度を算定するに当たっても,原則として,当該特許の技術的意義等の個別の価値を考慮することは相当ではなく,単に多数の特許群を構成する特許の一つとしての価値,すなわち,その契約における相手方に対する許諾対象特許の件数分の1程度の割合をもって,同契約に対する当該特許の寄与率とすることが相当であるというべきである。 (2) A社ライセンス契約における本件特許の位置付けア前記第2,2(4)アのA社ライセンス契約に係る契約書の記載及び弁論の全趣旨によれば,A社ライセンス契約は,***に,対象製品を***とし,許諾対象特許を,***とし,契約期間を***までとして,被告とA社との間で締結されたものであると認められる。 ここで,本件特許は,少なくともA社ライセンス契約の対象製品の一つである***に実施可能なものであり,かつ,昭和60年11月12日に出願されたものであって,契約締結日時点で被告が所有していた出願に係る権利(出願公開後であるが,公告前の権利)に当たるから,A社ライセンス契約の許諾対象特許に含まれるものである。 イ弁論の全趣旨によれば,本件特許は,A社ライセンス契約の締結過程で,被告からA社に提示されてその有効性や技術的価値及びA社による実施の有無などが検討されたことはないことが認められる。 また,前記4のとおり,A社の***の少なくとも一部は本件発明を実施していることが認められるが,それらの実施が認められる製品はいずれも平成9年10月以降に発売されたものであり,これ以前にA社が本件発明を実施していたことを推認さ **の少なくとも一部は本件発明を実施していることが認められるが,それらの実施が認められる製品はいずれも平成9年10月以降に発売されたものであり,これ以前にA社が本件発明を実施していたことを推認させるような事情は認められないから,A社ライセンス契約の締結***当時において,A社が本件発明を実施していたとの事実を認めることはできない。 さらに,前記4のとおり,回線自動設定機能を有する製品の中には,本件発明ではなく代替技術を使用しているものがあると認められ,他方,A 社ライセンス契約締結当時に本件発明がその対象製品分野で幅広く実施されていたなどの事情もうかがわれないことからすれば,同契約締結当時,A社が将来的に本件発明を実施せざるを得ない事情があったとも認められない。 そうすると,A社ライセンス契約において,本件特許は,代表特許,提示特許又は実施特許として,その契約締結に直接的に有意な貢献をしたものとはいえない。しかし,少なくともA社ライセンス契約締結後に,その契約期間中であって,かつ本件特許の存続期間中に,A社が実際に本件発明を実施している事実が認められることから,本件特許については,A社ライセンス契約の許諾対象特許群を構成する特許の一つとして,前記(1)オで説示した基準に基づいて,本件発明により被告が受けるべき利益の存在を認めることが相当である。 そうすると,A社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,「A社における対象製品の総売上高×A社に対する許諾対象特許の想定実施料率×(1÷A社に対する許諾対象特許の件数)」として算定するのが相当である。 ウこの点に関し原告は,A社ライセンス契約における本件特許の寄与率が100%であると主張して,同契約による独占の利益が「当該発明の実施品の 象特許の件数)」として算定するのが相当である。 ウこの点に関し原告は,A社ライセンス契約における本件特許の寄与率が100%であると主張して,同契約による独占の利益が「当該発明の実施品の売上額×想定実施料率」によって求められると主張し,本件特許の寄与率が100%であることの理由の一つとして,C社,D社及びE社とのライセンス契約において,本件特許が代表特許として扱われたことから,A社及びB社との包括クロスライセンス契約においても,本件特許には「代表特許としての価値」があることが明らかであると主張する。 しかし,A社ライセンス契約は,C社,D社及びE社との各ライセンス契約とは相手方,契約内容,契約時期等が異なる契約であり,契約における本件特許の位置付けも全く異なるのであるから,これらの他のライセン ス契約における本件特許の寄与率をもって,A社ライセンス契約における本件特許の寄与率の根拠とすることができないというべきである。 また,原告は,本件特許がA社ライセンス契約における代表特許ではないが,そもそもA社ライセンス契約は***包括クロスライセンス契約であったとの事情を主張する。 しかし,証拠によれば,被告においては,包括クロスライセンス契約は,通常,当事者が互いの代表的な特許を提示して交渉を行い,契約の締結に至るものであり,そのような交渉を経ずに契約締結に至るのは,既に締結されていた包括クロスライセンス契約の期間を延長する趣旨で契約を更改するような場合に限られていたことが認められるから,A社ライセンス契約の交渉過程においても,被告及びA社が互いに特定の特許を提示せずに契約締結に至ったものとは考え難いところであり,また,仮に何らかの理由で,A社ライセンス契約の交渉過程では特定の特許が提示さ ンス契約の交渉過程においても,被告及びA社が互いに特定の特許を提示せずに契約締結に至ったものとは考え難いところであり,また,仮に何らかの理由で,A社ライセンス契約の交渉過程では特定の特許が提示されなかったとしても,そのことを理由として,他の特許と同様に契約締結時に提示されていない本件特許がその契約締結に直接の貢献をしたことになるわけではなく,また,特許群を構成する他の多数の特許に比べてその寄与率が高くなるということもできない。 したがって,本件特許は,前記(1)オの類型に属する特許として評価するのが相当であり,その寄与度が100%であると評価することは到底できないというべきである。 さらに,原告は,本件発明の技術的意義が高く,その代替手段がないとも主張するが,本件発明に代替技術が存在することは前記4のとおりであり,また,A社ライセンス契約の交渉過程において,本件発明の技術的意義等が評価されてその契約締結に直接の貢献をしたことがない以上,本件発明の技術的価値等を個別に評価して寄与率を算定することが相当でないことは,上記のとおりであるから,原告の上記主張は採用できない。 エ他方,被告は,仮にA社ライセンス契約における被告の利益が認められる場合の予備的主張として,本件発明の実施品の売上高のみを対象とした上で,そこに想定実施料率及び本件特許の寄与度を乗じて,被告の受けるべき利益の額を算定すべきと主張する。 しかし,上記のとおり,本件特許がA社ライセンス契約における代表特許又は提示特許ではなく,また,当該契約締結当時のA社による実施も認められない以上,本件特許については,当該契約締結に対する個別の直接的な寄与を観念することはできないから,あくまで当該契約の対象製品の全体と許諾対象特許の総体を基礎と 約締結当時のA社による実施も認められない以上,本件特許については,当該契約締結に対する個別の直接的な寄与を観念することはできないから,あくまで当該契約の対象製品の全体と許諾対象特許の総体を基礎とし,そこでの本件特許の寄与の程度を考慮して,A社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額を算定することが相当というべきである。 (3) A社ライセンス契約の対象製品及びその売上高ア対象製品(ア) A社ライセンス契約に係る契約書には,その許諾対象となる製品として,「***」と記載されている。 もっとも,証拠によれば,被告の社内データベースでは,A社とのライセンス契約の契約製品分野として,***などのほかにも,***などが記載されていること,ライセンス契約の対象製品については,ライセンス契約の締結後にも当事者間の協議によってその対象製品の範囲や解釈が広げられることがあること,及び,平成***年頃,被告は社内で,***がA社ライセンス契約の対象製品に含まれるか否かを検討した際,「***」と解釈していたことがそれぞれ認められる。 そうすると,A社ライセンス契約に係る契約書の許諾対象製品に関する記載は一義的に厳格な範囲を画することができるものとはいえないというべきところ,原告が主張する***については,いずれも「***」や「***」に明らかに含まれないものであるとはいえず,また, ***は,被告社内のデータベースに記載された「***」に,***は,同***に,***及び***は,同***や***との関係での「***」にそれぞれ該当するものといえ,さらに,***は,上記***に該当することが明らかである。 そうすると,原告が主張する上記各製品は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品に含まれると解するの ***」にそれぞれ該当するものといえ,さらに,***は,上記***に該当することが明らかである。 そうすると,原告が主張する上記各製品は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品に含まれると解するのが相当である。 (イ) この点に関して被告は,包括クロスライセンス契約においては当事者が対象製品を特定し,対象製品における許諾対象特許の実施料についての対価的均衡が図られていることや,仮に対象製品の範囲を広く解釈すると,相手方が自由に市場に新規参入することが可能になってしまうことから,対象製品の文言を厳格に解釈すべきと主張する。 しかし,包括クロスライセンス契約の交渉過程では,互いに代表的な特許を提示して,当該特許に関する有効性,技術的意義及び抵触性などを検討するが,最終的に包括クロスライセンス契約に含まれることとなる多数の許諾対象特許についても同様の検討がされるわけではないのであるから,そもそも厳密な対価的均衡が図られているとは解されないし,包括クロスライセンス契約であるA社ライセンス契約及びB社ライセンス契約の各契約書における対象製品の規定ぶりを見ても,前記第2,2(4)ア及びイのとおり,必ずしもその対象製品の範囲が一義的に明確にされているとはいい難いから,少なくとも,これらの包括クロスライセンス契約においては,対象製品の文言を厳格に解釈できない事情があるというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 また,被告は,***が「***」に含まれないことが明らかであると主張する。 しかし,***と***との間に明確な差異があるわけではなく,* **であっても,***は十分考えられるのであるから,***が***に当たらないということはできない る。 しかし,***と***との間に明確な差異があるわけではなく,* **であっても,***は十分考えられるのであるから,***が***に当たらないということはできない。 さらに,被告は,被告社内のデータベースの記載が必ずしもライセンス契約の内容を正確に反映したものではないとも主張する。 しかし,上記データベースは,被告の社内で作成され,社内で使用されるものであるから,その内容が真実と異なるものである蓋然性が高いとはいえないし,被告は,上記データベースの記載について,単に正確な内容を反映したものでないと主張するのみで,具体的にどの文言が事実と異なるのかを特定して反論することもせず,また,これに代わる正しい契約情報を開示してもいないことに照らせば,被告の主張をもって,上記データベースの信用性を排斥することはできない。 イ売上高(ア) 前記アのとおり,A社の***は,いずれもA社ライセンス契約の対象製品であると認められるところ,A社の上記各製品の平成9年(1997年)から平成17年(2005年)までの日本国内の売上高に関して,原告は別紙「実施料計算表(原告)」のとおり主張し,被告は別紙「A社***系独占の利益(被告)」及び別紙「A社***独占の利益(被告)」のとおり主張するので,以下,検討する。 (イ) ***系製品A社の***系製品(***)の販売台数に関して,原告の主張(別紙「実施料計算表(原告)」の***系・A社部分のうち,全社の販売台数を表す「台数(万台)」欄の台数にA社のシェアを表す「シェア」欄の割合を乗じたものがA社の販売台数となる。)と被告の主張(別紙「A社***系独占の利益(被告)」のうちA社の販売台数を表す「台数」欄の台数)とが一致する箇 欄の台数にA社のシェアを表す「シェア」欄の割合を乗じたものがA社の販売台数となる。)と被告の主張(別紙「A社***系独占の利益(被告)」のうちA社の販売台数を表す「台数」欄の台数)とが一致する箇所及び原告の主張する台数が被告の主張する台数を下回る箇所については,当事者間に争いのないものとして原 告主張のとおりの台数を認定し,それ以外の部分については,一応合理的と考えられる証拠による裏付けがある箇所は原告主張の台数を採用し,そうでないものは被告主張の台数を採用するのが相当である。 これによれば,A社***製品の各年の販売台数は,別紙「A社実施料計算表」〈略〉記載の「***製品」の表のうち,「A社販売台数(台)」欄記載のとおりとなる。 また,A社の***製品の平均単価については,原告主張(別紙「実施料計算表(原告)」の***・A社部分の「平均単価(万円)」欄)が一応合理的と考えられる証拠によって裏付けられている箇所は原告主張の価格を採用し,そうでないものは被告主張(別紙「A社***独占の利益(被告)」の「平均単価」欄)の価格を採用するのが相当である。 これによれば,A社***製品の各年の平均単価は,別紙「A社実施料計算表」記載の「***製品」の表のうち,「平均単価(円)」欄記載のとおりとなる。 そうすると,A社***製品の各年の売上高は,別紙「A社実施料計算表」記載の「***製品」の表のうち,「各年度売上げ(円)」欄記載の額となり,平成9年(1997年)から平成17年(2005年)までの合計額は,***円となる。 (ウ) ***A社***の売上高については,別紙「実施料計算表(原告)」及び別紙「A社***独占の利益(被告)」のとおり,当事者間に争いのない全社の総出荷額及びA社のシェアに基づい (ウ) ***A社***の売上高については,別紙「実施料計算表(原告)」及び別紙「A社***独占の利益(被告)」のとおり,当事者間に争いのない全社の総出荷額及びA社のシェアに基づいて計算すると,各年の売上高は,別紙「A社実施料計算表」記載の「***」の表のうち,「各年度売上げ(円)」欄記載の額となり,平成9年(1997年)から平成17年(2005年)までの合計額は,***円となる。 (エ) 合計 上記(イ)及び(ウ)によれば,A社の***の平成9年から平成17年までの国内売上高は,合計1兆4332億5583万8168円となる。 (4) 想定実施料率包括クロスライセンス契約であるA社ライセンス契約の想定実施料率を2. 5%とすべきことは,当事者間に争いがない。 (5) A社ライセンス契約の許諾対象特許の件数ア A社ライセンス契約においては,「***」が許諾対象となっているところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,***等のA社ライセンス契約における対象製品に実施可能な被告の特許(実用新案を含む。)について,***から***までの間に被告が出願した件数の合計は,全世界で20万5192件であると認められる。 なお,証拠によれば,上記出願件数は各出願の筆頭IPC分類を基準とする検索により抽出されたものであると認められるところ,このようにして抽出された特許出願が,厳密な意味で,A社ライセンス契約の対象製品に実施可能なものといい得るかが問題となるが,証拠によれば上記抽出に用いられたIPC分類は同契約の対象製品に関連する技術分野として選択されたものであると認められ,また,A社ライセンス契約の対象製品は「***」に当たる製品の全てである上,前述のとおり,A社ライセンス契約の たIPC分類は同契約の対象製品に関連する技術分野として選択されたものであると認められ,また,A社ライセンス契約の対象製品は「***」に当たる製品の全てである上,前述のとおり,A社ライセンス契約の対象製品の範囲はこれを一義的に厳格に解釈できない事情があること,本件発明のように電話回線を伝送回線として用いる通信装置に関する発明が,***や***にとどまらず,***等の幅広い分野で実施される例があることを考慮し,他方で,被告が用いたIPC分類による抽出方法のほかにより合理的な抽出方法があるとは認められず,原告もそのようなより合理的な抽出方法を何ら具体的に主張していないことにも鑑みれば,上記証拠に記載の方法によりIPC分類を用いて抽出された出願件数は,一応合理的なものと認めるのが相当である。 イもっとも,前記(3)イで認定したA社製品の売上高は,日本国内のみの売上高である。本来,A社ライセンス契約においては国内外の特許出願が許諾対象とされており,全世界で製造・販売されるA社製品が対象製品とされていると解されるから,A社ライセンス契約における本件発明による被告の利益は,全世界での対象製品の売上高と全世界の許諾対象特許の件数とを基礎として算定するのが相当であると思われる。 しかし,主張立証責任を負っている原告が,自ら対象製品の範囲を限定して主張立証することは許されるものと解されるところ,本件において,原告は,全世界の売上高ではなく,国内の売上高のみを算定の基礎として主張立証しているのであるから,このような場合に,許諾対象特許についてのみ全世界の件数を用いることは,必ずしも合理的とはいい難く,上記対象製品の限定が原告自身の選択によるものであることを考慮したとしても,これとの均衡からは,許諾対象特許についても国内の件 許についてのみ全世界の件数を用いることは,必ずしも合理的とはいい難く,上記対象製品の限定が原告自身の選択によるものであることを考慮したとしても,これとの均衡からは,許諾対象特許についても国内の件数のみを算定の基礎に用いるのが相当といえる。 証拠によれば,上記アの***から***までの間の全世界での被告の出願件数20万5192件のうち,日本国内での出願(PTC出願を含む。)件数は,16万6704件であると認められる。 ウまた,許諾対象となる権利は,***とされているところ,特許は一度出願された後,その権利期間満了まで出願又は登録の状態で維持されるわけではなく,出願後に審査請求がされることなく取下げられたり,審査請求がされても拒絶査定等によって登録に至らないことも少なくなく,また,一旦登録されても,無効審判によって取り消されたり,権利期間の途中で特許料不納付により権利が消滅したりすることもあるから,A社ライセンス契約の有効期間中のある時点において被告が保有する権利の件数が,この***から***までの間の出願の累計件数と一致しないことは明らかである。そうすると,本件特許の寄与率を,許諾対象として被告が保有す る権利の件数分の1として算出するに当たっては,その分母となるべき権利の保有件数として,上記の累計件数を用いるのは相当ではない。 この点,上記累計件数が***から***までの***年間の累計であること,本件においてA社ライセンス契約につき被告の受けるべき利益の算定対象期間とされているのが平成9年から平成17年までの9年間であること,特許権の存続期間が特許出願の日から20年であること,その他審査,査定,登録の実情等に鑑みれば,契約期間中の一時点における被告の権利の保有件数については,上記累計件数の3分の1と推計 間であること,特許権の存続期間が特許出願の日から20年であること,その他審査,査定,登録の実情等に鑑みれば,契約期間中の一時点における被告の権利の保有件数については,上記累計件数の3分の1と推計するのが相当であるといえる。 そして,上記累計件数16万6704件の3分の1は,5万5568件となる。 (6) A社ライセンス契約における利益の額前記のA社製品の平成9年から平成17年までの各年の売上高(その合計額は,1兆4332億5583万8168円。)に,想定実施料率(2.5%)及び本件特許の寄与率(5万5568分の1)を乗じて,A社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額を計算すると,その合計額は,64万4820円(小数点以下切り捨て。以下同様。)となる。 6 争点(4)イ(B社ライセンス契約における利益の額)について(1) B社ライセンス契約における本件特許の位置付けア前記第2,2(4)イのB社ライセンス契約に係る契約書の記載及び弁論の全趣旨によれば,B社ライセンス契約は,***に,許諾対象となる製品を,***とし,許諾対象特許を,***などとし,契約期間を***から***まで(ただし,***により,***)として,被告とB社との間で締結されたものと認められる。 もっとも,証拠によれば,被告とB社との間の包括クロスライセンス契約は,***に既に締結されており,***に締結されたB社ライセンス 契約は,これを更新した契約であると認められる。 ここで,本件特許は,少なくともB社ライセンス契約の対象製品に含まれる***に実施可能なものと認められ,かつ,昭和60年11月12日に出願されたものであって,契約締結日時点で被告が所有していた出願に係る権利(公告後であるが, もB社ライセンス契約の対象製品に含まれる***に実施可能なものと認められ,かつ,昭和60年11月12日に出願されたものであって,契約締結日時点で被告が所有していた出願に係る権利(公告後であるが,登録前の権利)に当たるから,B社ライセンス契約の許諾対象特許に含まれるものである。 イ B社ライセンス契約は,A社ライセンス契約と同様,包括クロスライセンス契約であるところ,弁論の全趣旨によれば,本件特許は,B社ライセンス契約の交渉過程で,被告からB社に提示されてその有効性や技術的価値及びB社による実施の有無などが検討されたものではないことが認められる。 また,前記4のとおり,B社の***の少なくとも一部は本件発明を実施していると認められるが,それらの実施が認められる製品はいずれも***以降に発売されたものであり,これ以前にB社が本件発明を実施していたことを推認させるような事情は認められないから,B社ライセンス契約締結(***。ただし,同契約による更新前の原契約は***。)当時において,B社が本件発明を実施していたとの事実を認めることはできない。 さらに,前記4のとおり,回線自動設定機能を有する製品の中には,本件発明ではなく代替技術を使用しているものがあると認められ,他方,B社ライセンス契約締結当時に本件発明がその対象製品分野で幅広く実施されていたなどの事情もうかがわれないことからすれば,同契約締結当時,B社が将来的に本件発明を実施せざるを得ない事情があったとも認められない。 そうすると,B社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,A社ライセンス契約と同様に,原則として,「B社にお ける対象製品の総売上高×B社に対する許諾対象特許の想定実施料率×(1÷B社に対する許諾対象特許の件数)」とし けるべき利益の額は,A社ライセンス契約と同様に,原則として,「B社にお ける対象製品の総売上高×B社に対する許諾対象特許の想定実施料率×(1÷B社に対する許諾対象特許の件数)」として算定するのが相当である。 (2) B社ライセンス契約の対象製品及びその売上高ア対象製品(ア) 前記第2,2(4)イのとおり,B社ライセンス契約の契約書には,対象製品が***であると記載されている。 しかし,証拠によれば,被告の社内データベースでは,B社とのライセンス契約の契約製品分野として,***のほかに,***が記載されており,B社ライセンス契約締結後の被告とB社との協議においては,同契約が***に関する契約であることを前提に,契約書中の***などの文言が***をいい,***こと,***との文言が***をいうこと,***には***こと,***には***ことなどが合意されたことが,それぞれ認められる。 そうすると,原告が対象製品であると主張する***は,***であるから,B社ライセンス契約の対象製品である***に当たるということができる。また,***の例として,***が挙げられていることに鑑みれば,***と併用されるように設計されている***や,***は,いずれもその***に当たると解するのが相当である。 したがって,原告が主張する***は,いずれもB社ライセンス契約の対象製品に含まれると解することができる。 (イ) この点に関して被告は,上記製品はいずれもB社ライセンス契約の対象製品ではないとして,例えば,***とは,***ではないと主張する。 しかし,一般的に,***が,被告のいうような***を指し,あるいは,このような装置が***に含まれるとしても,前記(ア)のとおり,被告とB社との *とは,***ではないと主張する。 しかし,一般的に,***が,被告のいうような***を指し,あるいは,このような装置が***に含まれるとしても,前記(ア)のとおり,被告とB社との間では,***が***に含まれると合意されているの であるから,***がこの***に当たると解される以上,***がB社ライセンス契約の対象製品でないということはできない。 また,被告は,B社ライセンス契約が***に関する契約であるから,***等のコンシューマ向け機器はこれに含まれないと主張する。 しかし,***は,コンシューマ向けに販売されることがあるものの,これらの機器が事業用に使用できないわけではなく,また,コンシューマ向けに販売されることもある***についても,前記(ア)のとおり,被告とB社との間では,***としてB社ライセンス契約の対象製品に含まれることが合意されていることに照らすと,同契約が***に関する契約であるからという理由で,***が,同契約の対象外であるということはできない。 このほか,前記第2,2(5)ウのとおり,被告は,***に原告に対して,B社ライセンス契約に関する特別報償金として***円を支払っていることからすれば,被告自身も,B社ライセンス契約の対象製品の中に本件発明の実施品が含まれると認識していたものというべきであり,この点に照らしても,原告が主張する製品がいずれもB社ライセンス契約の対象製品でないとの被告の上記主張は採用できない。 イ売上高前記アのとおり,B社の***はいずれもB社ライセンス契約の対象製品であると認められるところ,B社の上記各製品の平成8年(1996年)から平成17年(2005年)までの日本国内の売上高に関して,原告は別紙「実施 ,B社の***はいずれもB社ライセンス契約の対象製品であると認められるところ,B社の上記各製品の平成8年(1996年)から平成17年(2005年)までの日本国内の売上高に関して,原告は別紙「実施料計算表(原告)」のとおり主張し,被告は別紙「B社独占の利益(被告)」のとおり主張するので,以下,検討する。 ここで,B社の上記各製品の販売台数に関して,原告の主張(別紙「実施料計算表(原告)」の***・B社部分のうち,全社の販売台数を表す「台数(万台)」欄の台数にB社のシェアを表す「シェア」欄の割合を乗 じたものがB社の販売台数となる。)と被告の主張(別紙「B社独占の利益(被告)」のうちB社の販売台数を表す「台数」欄の台数)とが一致する箇所及び原告の主張する台数が被告の主張する台数を下回る箇所については,当事者間に争いがないものとして原告主張のとおりの台数を認定し,それ以外の部分については,一応合理的と考えられる証拠による裏付けがある箇所は原告主張の台数を採用し,そうでない箇所は被告主張の台数を採用するのが相当である。 これによれば,B社製品の各年の販売台数は,別紙「B社実施料計算表」〈略〉の「B社販売台数(台)」欄記載のとおりとなる。 また,B社の上記各製品の平均単価については,原告主張(別紙「実施料計算表(原告)」の***・B社部分の「平均単価(万円)」欄)が一応合理的と考えられる証拠によって裏付けられている箇所は原告主張の価格を採用し,そうでない箇所は被告主張(別紙「B社独占の利益(被告)」の「平均単価」欄)の価格を採用するのが相当である。 これによれば,B社製品の各年の平均単価は,別紙「B社実施料計算表」の「平均単価(円)」欄記載のとおりと認められる。 そうすると,B社製品の各年の売上高は,別紙「B社実施料計算表 のが相当である。 これによれば,B社製品の各年の平均単価は,別紙「B社実施料計算表」の「平均単価(円)」欄記載のとおりと認められる。 そうすると,B社製品の各年の売上高は,別紙「B社実施料計算表」の「各年度売上げ(円)」欄記載の額となり,平成8年(1996年)から平成17年(2005年)までの合計額は,8554億2953万4768円となる。 (3) 想定実施料率包括クロスライセンス契約であるB社ライセンス契約の想定実施料率を2. 5%とすべきことは,当事者間に争いがない。 (4) B社ライセンス契約の許諾対象特許の件数ア B社ライセンス契約においては,***が許諾対象となっているところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,***等のB社ライセンス契約における 対象製品に関連する被告の特許(実用新案を含む。)について,***から***までの間に被告が出願した件数の合計は,全世界で14万8529件であると認められる。 なお,証拠によれば,上記件数は各出願の筆頭IPC分類を基準とする検索により抽出されたものであると認められるところ,このようにして抽出された特許出願が,厳密な意味でB社ライセンス契約の対象製品に関連するものといい得るかが問題となるが,証拠によれば上記抽出に用いられたIPC分類はB社ライセンス契約の対象製品に関連する技術分野として選択されたものであると認められ,また,B社ライセンス契約は***に関する契約であり,契約書上で対象製品として明示的に掲げられている製品は限定的であるが,***や***の解釈次第では相当に広範囲の製品が対象製品に含まれ得る上,本件発明のように電話回線を伝送回線として用いる通信装置に関する発明が,***にとどまらず,***等の幅広い分野で実施される例があることを考慮し 次第では相当に広範囲の製品が対象製品に含まれ得る上,本件発明のように電話回線を伝送回線として用いる通信装置に関する発明が,***にとどまらず,***等の幅広い分野で実施される例があることを考慮し,他方,被告が用いたIPC分類による抽出方法のほかにより合理的な抽出方法があるとは認められず,原告もそのようなより合理的な抽出方法を何ら具体的に主張していないことにも鑑みれば,上記証拠に記載の方法によりIPC分類を用いて抽出された出願件数は,一応合理的なものと認めるのが相当である。 イもっとも,前記(2)イで認定したB社製品の売上高は,日本国内のみの売上高であるところ,A社ライセンス契約についてと同様に,売上高が日本国内に限定されていることとの均衡から,被告の受けるべき利益の額の算定においては,その許諾対象特許についても日本国内の出願のみを算定の基礎とするのが相当である。 証拠によれば,上記アの***から***までの間の全世界での被告の出願件数14万8529件のうち,日本国内での出願(PTC出願を含む。)件数は,12万3382件であると認められる。 ウまた,許諾対象となる権利は,***とされているところ,A社ライセンス契約についてと同様に,本件特許の寄与率を許諾対象として被告が保有する権利の件数分の1として算出するに当たっては,その分母となるべき権利の保有件数として,上記の累計件数を用いるのは相当ではない。 この点,上記累計件数が***から***までの***の累計であること,B社ライセンス契約につき被告の受けるべき利益の算定対象期間とされているのが平成8年から平成17年までの10年間であること,特許権の存続期間が特許出願の日から20年であること,その他審査,査定,登録の実情等に鑑みれば,契約期間中の一時点における被 対象期間とされているのが平成8年から平成17年までの10年間であること,特許権の存続期間が特許出願の日から20年であること,その他審査,査定,登録の実情等に鑑みれば,契約期間中の一時点における被告の権利の保有件数については,上記累計件数の2分の1と推計するのが相当であるといえる。 そして,上記累計件数12万3382件の2分の1は,6万1691件となる。 (5) B社ライセンス契約における利益の額前記のB社製品の平成8年から平成17年の各年の売上高(その合計額は,8554億2953万4768円。)に,想定実施料率(2.5%)及び本件特許の寄与率(6万1691分の1)を乗じて,B社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額を計算すると,その合計額は,34万6658円となる。 7 争点(4)ウ(C社ライセンス契約における利益の額)について(1) 有償ライセンス契約によって受けるべき利益の額法35条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,使用者等が被用者から特許を受ける権利を承継し,当該発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位を得,その結果,実施許諾を得ていない競業他社に対する禁止権を行使し得ることによって得られる利益の額をいうから,使用者が当該発明の実施を第三者に有償で許諾して,その対価として 実施料収入を得ている場合には,その対価として受けた利益の額は,当該発明により使用者が受けるべき利益の額に含まれるということができる。 この点,C社ライセンス契約は,本件特許に係る有償ライセンス契約であるから,C社ライセンス契約において本件特許の許諾の対価として,被告がC社から得た利益は,本件発明により被告が受けるべき利益に当たることになる。 (2) 実施料収入につい 償ライセンス契約であるから,C社ライセンス契約において本件特許の許諾の対価として,被告がC社から得た利益は,本件発明により被告が受けるべき利益に当たることになる。 (2) 実施料収入についてア前記第2,2(4)ウのとおり,C社ライセンス契約において,被告はC社から***円の実施料の支払を受けたことが認められる。 そうすると,この***円は,本件発明によって被告が受けるべき利益に当たる。 イこの点に関して被告は,C社は対象製品が本件発明の実施品でないにもかかわらず,本件特許の保有者が被告であることに着目し,ライセンス交渉の長期化を避けるために,被告に実施料を支払ったのであるから,その実施料に対する本件発明の寄与度は2分の1であり,したがって,実施料の2分の1が本件発明により被告が受けた利益となると主張する。 しかし,法35条4項の「発明により使用者等が受けるべき利益の額」は,使用者等が当該発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位を得たことによって客観的に受ける利益をいうものと解すべきである。そして,被告が本件特許を許諾することによって現実に実施料収入を得ている以上,その実施料の全額が被告の受けた客観的な利益であり,したがって,ライセンシーがライセンスの対象となった特許を現に実施していたか否かにかかわらず,その全額が「発明により使用者等が受けるべき利益の額」に当たるというべきである。 もっとも,同条項は,職務発明に対する相当対価の額の算定に当たっては,「使用者等が受けるべき利益の額」のほかに「使用者等が貢献した程 度」を考慮すべきとしているところ,被告が主張する上記事情等は,この使用者等の貢献として考慮されるのが相当である。 (3) グラントバックの価値についてア 貢献した程 度」を考慮すべきとしているところ,被告が主張する上記事情等は,この使用者等の貢献として考慮されるのが相当である。 (3) グラントバックの価値についてア第2,2(4)ウのとおり,C社ライセンス契約において,C社は被告に対して,上記実施料を支払うほか,グラントバック特許***件及びグラントバック権***件を付与しているところ,これらのグラントバックは,同契約において,被告が本件特許をC社に許諾することの対価として,C社が実施料とともに被告に付与したものであるから,上記グラントバックが有する価値は同契約によって被告が受けた利益に当たると認めるのが相当である。 イ証拠によれば,C社が被告に付与したグラントバック特許***件の内訳は特許***件及び実用新案***件と認められるが,本件において,被告がこれらに係る発明又は考案を実施していることを認めるに足りる的確な証拠はない。 この点に関し原告は,これらのグラントバック特許が基本特許又は優秀な特許であることや,被告が非侵害の理由を説明していないことなどを挙げて,被告がこれらの特許を実施している,又は実施している可能性が非常に高いなどと主張する。 しかし,原告は,これらのグラントバック特許が基本特許又は優秀な特許であると主張するのみで,それらが実施可能な製品の全て又は大多数において実際に実施されていることを具体的に主張立証しているわけではなく,また,具体的な被告の製品を挙げて,その製品の構成とグラントバック特許に係る発明の構成要件を比較して,当該被告製品が当該特許発明の技術的範囲に属することを何ら具体的に主張立証していないのであるから,原告の上記主張によっても,被告が上記グラントバック特許を実施しているものと認めること 件を比較して,当該被告製品が当該特許発明の技術的範囲に属することを何ら具体的に主張立証していないのであるから,原告の上記主張によっても,被告が上記グラントバック特許を実施しているものと認めることはできない。 また,被告が指定権を有するグラントバック権***件についても,***ことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,証拠によれば,***ことが認められる。 そうすると,C社ライセンス契約において付与されたグラントバック特許及びグラントバック権に基づいて,被告がC社の特許発明を実施して製品を製造販売しつつ,その実施料の支払を免れたとの事実関係を認めることができないから,被告が上記グラントバックによって現実に具体的な利益を得たものということはできない。 ウもっとも,被告が実際にC社の特許発明を実施したか否かにかかわらず,C社ライセンス契約において,被告がグラントバック特許***件を受けたことは事実である。また,グラントバック権***件は,それが***としても,抵触の可能性のある特許が発見されたような場合に侵害となるリスクを回避できるという点で,保険的な価値があることは否定できない。 また,弁論の全趣旨によれば,C社ライセンス契約の交渉過程において,グラントバックが実施料額の減額調整のために用いられ,被告及びC社はグラントバックの設定を前提として最終的な実施料額を決定したことが認められる。 そうすると,C社ライセンス契約におけるグラントバックが被告にとって無価値であったということはできず,グラントバックはそれが被告に付与された時点で,被告にとって一定の客観的な価値を有していたと認めるのが相当である。 そして,上記のとおりこのグラントバックによって被告が得た現実 はできず,グラントバックはそれが被告に付与された時点で,被告にとって一定の客観的な価値を有していたと認めるのが相当である。 そして,上記のとおりこのグラントバックによって被告が得た現実的な利益は認められないが,契約当事者間においてこのグラントバックが実施料の調整として用いられたことに照らせば,C社ライセンス契約により被告に付与されたグラントバックの価値は,同契約においてC社が被告に支払った実施料の額を基準として,その1割に相当する額と認めるのが相当 である。 エこの点に関し原告は,C社ライセンス契約におけるグラントバックには大きな価値があり,同契約においてはグラントバックこそが「主たる存在」であり,実施料が「調整原理(従たる存在)」であると主張する。 しかし,同契約におけるグラントバックによって被告が現実的な利益を得たと認めることができないことは前記イのとおりである。また,同契約は,あくまで本件特許を対象とした有償ライセンス契約であって,被告の本件特許とC社のグラントバック特許とを互いに相手方に許諾し合うことを目的としたクロスライセンス契約ではないのであるから,同契約においてグラントバックが主たる存在であるとの原告の主張は到底採用できない。 また,原告は,C社ライセンス契約におけるグラントバックの価値が不明であるために,被告が受けた対価の額を「実施料+グラントバックの価値」として求めることができないから,同契約の両当事者の合意内容を斟酌して,被告が受けた対価の額を「過去分と将来分のC社の対象製品の総売上額×実施料率」によって算出すべきと主張する。 しかし,同契約におけるグラントバックの価値を評価できることは前記ウのとおりであるから,原告のかかる主張を採用することは の対象製品の総売上額×実施料率」によって算出すべきと主張する。 しかし,同契約におけるグラントバックの価値を評価できることは前記ウのとおりであるから,原告のかかる主張を採用することはできない。 さらに,原告は,上記算式を用いて,本件発明の実施品であるC社の***の売上高が617億8900円であり,これに実施料率1%を乗じた6億1789万円が被告の利益であると主張するところ,この額は,C社が被告に支払った実施料***円に比して著しく高額であるから,ここで原告が想定するグラントバックの価値が有償ライセンス契約におけるグラントバックの性質に反することは明らかというべきである。 なお,前記4のとおり,原告が本件発明を実施していると主張するC社の***の中には,本件発明を実施していると認められるものは存在せず,むしろ10機種(C社***32,36,41ないし44,46ないし4 8及び70)についてはいずれも本件発明を実施していないと認められることからすれば,仮に原告が主張する算式を用いた場合には,C社による実施品の売上高を認定することはできないことになるのであって,かかる観点からも,原告の主張する算定方法を採用することはできない。 (4) 小括以上のとおり,C社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,実施料***円とグラントバックの価値である***円(実施料の1割相当額)とを合算した,合計***円であると認めるのが相当である。 8 争点(4)エ(D社ライセンス契約における利益の額)について(1) 有償ライセンス契約によって受けるべき利益の額D社ライセンス契約は,本件特許に係るグラントバック付き有償ライセンス契約であるから,これによって被告が受けるべき利 利益の額)について(1) 有償ライセンス契約によって受けるべき利益の額D社ライセンス契約は,本件特許に係るグラントバック付き有償ライセンス契約であるから,これによって被告が受けるべき利益の額は,前記7のC社ライセンス契約の場合と同様に,被告が相手方から得た実施料収入とグラントバックの価値とを合算して求めることができる。 (2) 実施料収入について前記第2,2(4)エのとおり,D社ライセンス契約において被告はD社から***円の実施料の支払を受けたことが認められるから,この***円は,同契約において本件発明により被告が受けた利益に当たる。 この点,実施料収入の2分の1をもって被告の利益とすべきとの被告の主張が採用できないことは,前記7(2)イの判示のとおりである。 (3) グラントバックの価値についてア第2,2(4)エのとおり,D社ライセンス契約においては,D社は被告に対して,上記実施料を支払うほか,グラントバック特許***件及びグラントバック権***件を付与しているところ,このグラントバックの価値が,D社ライセンス契約によって被告が受けた利益に当たるといえること は,前記7(3)のC社ライセンス契約の場合と同様である。 イ証拠によれば,D社ライセンス契約においてD社が被告に付与したグラントバック特許の内訳は***及び***と認められるが,本件において,被告がこれらに係る発明を実施していると認めるに足りる的確な証拠はない。 この点に関し原告は,これらのグラントバック特許が基本特許又は非常に優秀な特許であり,当該特許を実施することなく対象製品を製造することが不可能であるなどとして,被告がこれらの特許を実施しているなどと主張する。 しかし,原告は,これらのグラ 許又は非常に優秀な特許であり,当該特許を実施することなく対象製品を製造することが不可能であるなどとして,被告がこれらの特許を実施しているなどと主張する。 しかし,原告は,これらのグラントバック特許が基本特許又は優秀な特許であると主張するのみで,それらが実施可能な製品の全て又は大多数において実際に実施されていることを具体的に主張立証しているわけでもなく,また,具体的な被告の製品を挙げて,その製品の構成とグラントバック特許に係る発明の構成要件を比較して,当該被告製品が当該特許発明の技術的範囲に属することを何ら具体的に主張立証していないのであるから,原告の上記主張によっても,被告が上記グラントバック特許を実施しているものと認めることはできない。 また,被告が指定権を有するグラントバック権***件についても,***を認めるに足りる証拠はなく,かえって,証拠によれば,被告は***ことが認められる。 そうすると,D社ライセンス契約において付与された上記グラントバックによって,被告が現実に具体的な利益を得たものと認めることはできない。 ウもっとも,前記7(3)ウで説示したC社ライセンス契約におけるグラントバックと同様に,D社ライセンス契約におけるグラントバックが被告にとって無価値であったということはできず,グラントバックはそれが被告に 付与された時点で,被告にとって一定の客観的な価値を有していたと認めることができるというべきである。そして,D社ライセンス契約においても当事者間でグラントバックが実施料の調整として用いられたことに照らせば,同契約により被告に付与されたグラントバックの価値は,同契約においてD社が被告に支払った実施料の額を基準として,その1割に相当する額と認めるのが相当である 施料の調整として用いられたことに照らせば,同契約により被告に付与されたグラントバックの価値は,同契約においてD社が被告に支払った実施料の額を基準として,その1割に相当する額と認めるのが相当である。 エこの点に関して原告は,グラントバックの価値が不明である以上,被告の受けた対価の額を「過去分と将来分のD社対象製品の総売上額×実施料率」によって算定すべきと主張する。 しかし,D社ライセンス契約においてグラントバックの価値が算定できないとはいえないこと及び原告のかかる算定方式が有償ライセンス契約におけるグラントバックの性質に反すると解されることは,前記7(3)エで説示したC社ライセンス契約についての判示と同様であるから,被告の上記主張は採用できない。 なお,前記4のとおり,D社については,C社と異なって,その***及び***各1機種が本件発明の実施品であると認められるが,これは原告が実施品であると主張するD社製品122機種のうちのわずか2機種にすぎず,また,証拠によれば,D社ライセンス契約では,***が認められるところ,前記4のとおり,***発売のD社***26及び***発売のD社***13はいずれも本件発明を実施せず,代替技術を採用していると認められることからすれば,少なくとも同契約締結日以後のD社製品については本件発明の実施品でないと認めるのが相当である。 そうすると,仮に原告の主張する算式を用いたとしても,D社による実施品の売上高として認定され得る金額は,原告の主張する額に比してごく僅少にとどまることになるのであって,かかる観点からも原告主張の算定方法を採用することはできない。 (4) 小括以上のとおり,D社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,実施料***円 点からも原告主張の算定方法を採用することはできない。 (4) 小括以上のとおり,D社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,実施料***円とグラントバックの価値である***円(実施料の1割相当額)とを合算した,合計***円であると認めるのが相当である。 9 争点(4)オ(E社ライセンス契約における利益の額)について(1) E社ライセンス契約の締結に至る経緯について証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告とE社が包括クロスライセンス契約であるE社ライセンス契約の締結に至った経緯について,大要以下の事実が認められる。 ア平成***年***月,E社が被告の***等の製品がE社保有の特許を侵害している可能性があると警告したことを契機として,同年***月から平成***年***月までの間に,被告とE社との間で,E社保有特許についての技術論争が8回にわたり行われた。その後同年***月に,E社は被告に対して,E社保有特許の実施の対価につき,過去分を***円,将来分を***とすることを提案した。 イ被告は,E社との技術論争及び社内鑑定等の結果から,自社の***との認識を持つに至り,E社からこれらの特許のライセンスを取得することが必要であると判断した。 そこで,被告は,E社に対して,カウンター特許として,***に実施可能な***特許と,***の製品に実施可能な***特許及び本件特許をそれぞれ提示した。 ウ平成***年***月頃,被告は,社内において,***特許に基づく実施料を年***円(年間売上高***円×実施料率***%)と試算し,過去***年分の***円及び将来***年分の***円をE社に提示すること,また,***についての本件特許に基づく実施料を年***円( 年 売上高***円×実施料率***%)と試算し,過去***年分の***円及び将来***年分の***円をE社に提示すること,また,***についての本件特許に基づく実施料を年***円( 年間売上高***円×実施料率***%)と試算し,過去***年分の***円をE社に提示することをそれぞれ検討した。 エ平成***年***月,被告は,鑑定を依頼していた弁理士から,E社***7が本件発明の技術的範囲に属するとの意見を得た。 オ平成***年***月,被告は***特許につき特許登録を受けた(ただし,同特許の対応米国特許(US***)は,既に平成***年***月に特許登録されていた。)。他方,本件特許の存続期間は,平成17年11月11日に満了した。 カ被告のカウンター特許についての技術論争を経て,平成***年***月,E社は,***を含めて解決することはできないとの見解を示すと同時に,***特許及び本件特許を考慮した解決として,被告がE社に過去分の実施料として***円,将来分の実施料として***円を支払うことを提案した。 キこれに対して,被告は,社内の検討において,E社が***特許,本件特許及び***特許の全てを許諾対象に含めた上で被告に対し***円の支払を要求してくるものと予測しつつ,被告としては,あくまでこれらの全てを許諾対象とした上で***とすることを求めるとの方針を立てた。 クその後,被告がE社に対して,***を含めつつ***で解決することを主張し,両社間での交渉が続けられた結果,E社は,***のであれば***を含めて解決することも可能であると譲歩を示し,平成***年***月の交渉では,被告の***特許は評価できないとしつつも,***円程度での有償解決を示唆した。 ケ平成***年***月***日,被告とE社との することも可能であると譲歩を示し,平成***年***月の交渉では,被告の***特許は評価できないとしつつも,***円程度での有償解決を示唆した。 ケ平成***年***月***日,被告とE社との間でE社ライセンス契約が締結された。ここでは,相互の通常実施権の対価の差額として,被告がE社に対して***円(消費税別)を支払うこととされ,また,E社に対する許諾対象製品に,***等及び***が含まれた。 また,同日,被告とE社との間では,E社ライセンス契約とは許諾対象を異にする別の包括クロスライセンス契約が締結されたところ,同契約では,***がE社に対する許諾対象製品とされ,***こととされた。 (2) E社ライセンス契約において被告が受けた利益ア前記第2,2(4)オのとおり,E社ライセンス契約は包括クロスライセンス契約であり,そこでのE社に対する許諾対象特許は,***であり,対象製品***には***及び***等が含まれるところ,本件特許は***に関する特許といえ,***であるから,本件特許は,同契約の許諾対象特許の一つであると認められる。 また,前記(1)で認定した契約締結の経緯に示されるように,E社ライセンス契約の交渉過程では,本件特許は,被告からE社に提示されて,その実施の有無や実施料について検討されたことが認められる。 もっとも,E社ライセンス契約の締結日が***であるのに対し,本件特許は平成17年11月11日に存続期間が満了していたのであるから,本件特許は,同契約の締結交渉過程ではその交渉材料として用いられたものの,同契約締結時には既に消滅しており,E社に対して何らの排他的効力も独占的効力も及ぼしていなかったものといえる。そうすると,E社ライセンス契約において,本件特許は,同 交渉材料として用いられたものの,同契約締結時には既に消滅しており,E社に対して何らの排他的効力も独占的効力も及ぼしていなかったものといえる。そうすると,E社ライセンス契約において,本件特許は,同契約の許諾対象特許の一つであり,形式的には,同契約の有効期間前に製造・販売されたE社製品に対して本件特許の通常実施権が許諾されたこととされているが,実質的には,包括クロスライセンスに基づいて相手方に許諾されて禁止権が行使された特許ではなく,ライセンス契約の締結に伴って当事者間で精算されるべき過去の実施料の算定のために考慮されたにすぎないというべきである。 そうすると,E社ライセンス契約において本件発明により被告が受けた利益については,本件特許がE社ライセンス契約における過去の実施料に係る精算金に対して寄与した程度を考慮して算定するのが相当である。 イ前記(1)で認定した被告とE社との交渉の経緯によれば,当初E社は,自社特許の侵害について,実施料率を***%,過去分の実施料を***円と算定して被告に請求したこと,被告は***し,E社に対してカウンター特許として,***につき本件特許及び***特許を,***につき***特許をそれぞれ提示したこと,これに対して,E社が,***を含めず,***特許及び本件特許を考慮して過去分の実施料を***円に減額することを提案したこと,被告があくまで***も含めた解決を望んだため,E社が***としつつも,***程度の有償解決を示唆したこと,最終的に,被告とE社は,***も含めた包括クロスライセンス契約を締結し,そこで被告が過去の実施料の精算金として***円を支払うことになったことが認められるところ,このような経過に照らせば,被告がE社に対して本件特許及び***特許をカウンター特許として提示し を締結し,そこで被告が過去の実施料の精算金として***円を支払うことになったことが認められるところ,このような経過に照らせば,被告がE社に対して本件特許及び***特許をカウンター特許として提示し,E社がこれを検討する前後において,E社が要求する過去分の実施料額が***円から***円に減額されたこと,すなわち***円の減額がされたことが認められる。 もっとも,E社において上記二つの提示額がいかなる方法によって算定されたものであるかは明らかでなく,また,ライセンス交渉の過程において一方から他方に提示される金額は,両社間で客観的に評価されて合意された金額ではなく,あくまで一方的な要求額として提示されるものであり,さらに,ライセンス契約の諸条件についての交渉は,提示された特許の評価やその実施料額だけではなく,諸般の事情を総合的に考慮しつつ進められるものと考えられることからすれば,交渉過程におけるE社の一方的な提示額が上記のように***円減額されたからといって,その減額分が,そのまま本件特許及び***特許の実施料額として相当と認められるものであったということはできない。 この点,原告の主張によれば,被告はカウンター特許である本件特許の 過去の実施料として***円を要求したはずであるが,その額がそのままE社の提示額の減額に結びついていないことに照らしても,一方的な要求額が必ずしも両社間で相当と認められる実施料額と一致しないことは明らかというべきである。また,E社は,上記減額の提示後,***特許を***ことを明言しながらも,要求額をさらに***円減額して,最終的には精算金を***円とすることで被告と合意しており,このような減額の経緯に鑑みても,交渉過程で示される一方的な提示額や最終的に合意される精算金の額は,必ずしも実 額をさらに***円減額して,最終的には精算金を***円とすることで被告と合意しており,このような減額の経緯に鑑みても,交渉過程で示される一方的な提示額や最終的に合意される精算金の額は,必ずしも実施料額についての双方の認識をそのまま反映したものではなく,むしろ実施料額を含む諸般の事情を総合的に考慮した結果であることが認められる。 また,上記のE社提示額の減額は,本件特許だけでなく***特許を考慮したものであると認められるから,本件特許の寄与の程度を検討するに当たっては,少なくとも***特許の寄与の程度を控除して考える必要がある。 この点に関して原告は,***特許が国内で特許登録されたのは平成***年であり,また,交渉過程で議論となっていた実施料は海外分を含まないから,***特許は上記減額には寄与していないと主張する。 しかし,***特許は前記(1)オのとおり平成***年***月には米国で特許登録されており,E社ライセンス契約においては,***ことからして,E社ライセンス契約においては,米国内での***特許に関する過去の実施料についても併せて精算されたことが明らかである。そして,上記のとおり,E社がライセンス交渉において***特許を考慮していること,証拠によれば,被告社内では,本件特許及び国内の***特許とともに,その対応米国特許についても,E社ライセンス契約の締結に貢献した度合いが高い特許として評価されていたと認められることからすれば,E社及び被告が海外の売上高についての実施料を明示的に要求していたか否 かにかかわらず,精算金の減額において,***特許の対応米国特許が一定程度考慮されたことが推認されるというべきである。 よって,同特許がE社提示額の減額に寄与したことを否定することはできない。 さらに かわらず,精算金の減額において,***特許の対応米国特許が一定程度考慮されたことが推認されるというべきである。 よって,同特許がE社提示額の減額に寄与したことを否定することはできない。 さらに,***はE社ライセンス契約の対象製品と認められるところ(なお,同契約の文言に照らして,***が同契約の対象製品であるとは認められない。),証拠によれば,***においては,電話回線との接続が主としてデジタル放送の有料番組や視聴者参加番組のデータ送信のために用いられるものと認められるが,そのような機能は,***の中核的な機能に比して重要性が高いとはいえないこと,証拠によれば,平成17年当時においても,デジタル放送の視聴割合は高くなく,そこでの電話回線を用いたデータ送信の活用の程度はごく限定的であったと認められること,前記4(1)イのとおり,客観的には,原告が主張するE社製品のうち本件発明の実施品であると認められるのはE社***7のみであり,E社***]7については,むしろ代替技術を使用していて,本件発明の実施品でないと認められ,このほかにE社自身が本件発明の実施を認めていたなどの事情も認められないことに照らせば,ライセンス契約の交渉過程において,E社が本件特許を特別に高く評価していたとまでは認めることができない。 ウ以上の事情を総合考慮すると,E社ライセンス契約における過去の実施料の精算に当たって,被告のE社に対する精算金の減額分として本件特許が寄与した部分は,***円と認めるのが相当である。 したがって,E社ライセンス契約において,被告は本件発明により***円の利益を受けたものと認められる。 (3) 被告の主張に対する判断ア被告は,E社ライセンス契約の締結時点で本件特許はその存続期間が満了していたから,本件特許は同契約の締 本件発明により***円の利益を受けたものと認められる。 (3) 被告の主張に対する判断ア被告は,E社ライセンス契約の締結時点で本件特許はその存続期間が満了していたから,本件特許は同契約の締結にはほとんど貢献していないこ とや,同契約においては被告がE社に対して***円の精算金を支払っていることを挙げて,同契約において被告が本件発明により受けた利益は存在しないと主張する。 確かに,E社ライセンス契約の締結時点で本件特許は存続期間が満了していたものであるが,E社ライセンス契約では,契約締結日前の製品についても通常実施権を許諾するという形式を採ることで,互いの過去の実施行為に基づく実施料相当額の損害賠償請求権を精算することが予定されていたものと認められるから,本件特許が過去の実施料の精算において考慮されたのであれば,その点において本件特許の寄与を認めることができるというべきである。そして,同ライセンス契約においては,最終的に被告がE社に対して***円の精算金を支払うことになったとしても,その精算金の算定の過程で,本件特許が被告の支払うべき精算金の減額に寄与したのであれば,それをもって本件発明により被告が受けた利益ということができるというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イまた,被告は,E社とのライセンス交渉の中では,E社は***,むしろ***特許及び***特許が議論の中心であったとして,本件特許の寄与が低いことを主張する。 しかし,証拠によれば,E社は,当初被告から提示された***特許を評価しておらず,むしろ本件特許と***特許を考慮して提示額を減額したことが認められ,また,証拠によれば,被告自身も,本件特許がE社ライセンス契約の締結に貢献した度合いが高い特許の一つであ *特許を評価しておらず,むしろ本件特許と***特許を考慮して提示額を減額したことが認められ,また,証拠によれば,被告自身も,本件特許がE社ライセンス契約の締結に貢献した度合いが高い特許の一つであると評価していたことが認められるから,被告の上記主張は採用することができない。 ウさらに,被告は,仮にE社ライセンス契約において本件発明により被告が受けた利益があるとしても,その利益の額は,E社の本件特許の実施品の売上高に想定実施料率を乗じ,さらにそこでの本件特許の寄与率を乗じ て算出されるべきであり,その額はせいぜい5万0714円になると主張する。 しかし,E社ライセンス契約は,包括クロスライセンス契約ではあるものの,通常の場合と異なり,前記(2)アのとおり,その契約締結時に既に本件特許の存続期間が満了しており,本件特許は過去の精算金の設定においてのみ考慮されたにすぎないのであり,上記のとおり,そこにおける本件特許の寄与の程度,すなわち本件発明により被告が受けた利益を算定することができるのであるから,これとは別に,被告が受けた利益の額を,通常の包括クロスライセンス契約のように,契約全体を一体と見て,相手方の売上高に想定実施料率を乗じ,そこにさらに係争特許の寄与率を乗じて算出することが相当であるとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (4) 原告の主張に対する判断E社ライセンス契約において被告が得た利益の算定方法について,原告は,E社ライセンス契約が包括クロスライセンス契約であり,本件特許が同契約の締結過程において相手方に提示された特許であることを前提に,同契約における本件発明による被告の利益が,「当該発明の実施料相当額」=「当該発明製品の売上額×想定実施料率」により求め 本件特許が同契約の締結過程において相手方に提示された特許であることを前提に,同契約における本件発明による被告の利益が,「当該発明の実施料相当額」=「当該発明製品の売上額×想定実施料率」により求めることができると主張する。 この点,前記(2)アのとおり,同契約において本件発明により被告が受けた利益については,本件特許がE社ライセンス契約における過去の実施料に係る精算金に対して寄与した程度を考慮して算定するのが相当であるところ,この精算金の額を定める過程では,相手方の支払うべき過去の実施料相当額が試算されたり,相手方への要求額の提示に際してその試算結果が一定程度考慮されたりしたことはあったものと推認されるが,前記(2)ウのとおり,契約当事者間での最終的な精算金額の決定において,本件発明が寄与した額が***円であると認められる以上,同額が本件発明によって被告の受けた客 観的な利益の額であるということができるのであるから,これとは別に,本件発明の仮想的な実施料相当額を算定する必要があるとは解されない。 よって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) 小括以上のとおり,E社ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は***円であると認めることができる。 10 争点(5)(使用者貢献度)について(1) 前記第2,2(争いのない事実等)に後掲各証拠〈略〉及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件発明に至る過程からその権利化及び権利行使に至る過程について,以下の事実が認められる。 ア本件発明に至る過程について(ア) 被告は,光学機器,事務用機器,音響機器,電気機器,その他一般機械器具等の製造,販売,設置工事等を目的とする株式会社であり,昭和48年に事務用高速ファクシミリの1号機で 過程について(ア) 被告は,光学機器,事務用機器,音響機器,電気機器,その他一般機械器具等の製造,販売,設置工事等を目的とする株式会社であり,昭和48年に事務用高速ファクシミリの1号機である「リファクス600S」を開発するなど,長年にわたるファクシミリ関連の技術的蓄積を有していた。 被告は,ファクシミリ事業に関連して,電話回線に選択信号(ダイアル信号)を送り出したり,電話がかかってきたときにオフフック(受話器を外した状態)にしたりするなど,電話回線との接続/切断の制御をする装置であるNCUの技術を研究しており,昭和60年春までには,海外向けファクシミリの開発に当たって,NCUが備えるべき機能としてダイアルトーンの検出が必要であることが認識されており,また,ダイアルトーンやビジートーンの検出の有無に応じて通信端末の動作を変更するという技術思想が認識されていた。 (イ) 原告は,北海道大学工学部電気工学科を卒業した後,昭和57年3月31日に被告に入社し,そこで主にビジネス用ファクシミリ装置の電気 回路及びソフトウェアの設計業務に従事した。 原告は,遅くとも昭和59年1月頃には被告ファクシミリ事業部技術部設計一課でNCUの電気回路設計を担当しており,同年4月のファクシミリ事業部の組織再編に伴って同事業部設計部設計二課に配属され,以後は,同課でNCUの設計開発に携わった。 原告は,昭和60年,被告から本件発明について特段指示・命令を受けたことはなかったが,自ら本件発明を着想して,自らこれを具体化し,単独でこれを完成させて,同年7月25日,本件発明にかかる特許を受ける権利を被告に譲渡した。 この時原告が被告に提出した特許出願依頼書に添付の発明・考案説明書では,本件発明は「回線 れを具体化し,単独でこれを完成させて,同年7月25日,本件発明にかかる特許を受ける権利を被告に譲渡した。 この時原告が被告に提出した特許出願依頼書に添付の発明・考案説明書では,本件発明は「回線に適したダイヤル方式を決定することを特徴とするファクシミリ装置」に関するものとされており,本件発明の属する技術分野は「ファクシミリ装置」,その応用分野は「電話」と記載されていた。 (ウ) 本件発明がされた当時,公衆電話回線を利用する通信装置の信号方式としてDTMF,10pps及び20ppsの3種類の信号方式が存在し,当該電話回線に適合した正しい信号方式を用いる必要があること自体は技術常識であり,また,電話回線を用いた電話交換機と発信側端末との接続動作について,発信側端末がオフフック状態となり電話交換機とのループが閉じると,電話交換機が発信側からの選択信号の受信準備の完了を知らせる発信音(ダイアルトーン)を送出することやこの発信音を認識した発信側から選択信号が発信されると,電話交換機がその発信音の送出を停止すること自体も技術常識であった。 (エ) 松下電器産業株式会社が昭和58年6月9日に出願し,昭和59年12月21日に公開された発明(乙1発明)は,発明の名称を「自動ダイヤル装置」とし,通話をするたびに自動で信号方式を認識し,その認識 結果に基づいてダイヤルする方法を備えた自動ダイヤル装置に関する発明であり,その公開特許公報(特開昭59-228453号公報)には,本件発明の構成要件AないしDの構成(ただし,判別された信号方式を記憶することを意味する構成要件Dの「設定」の部分を除く。)が開示されており,正しい選択信号の信号方式でダイアルした場合にダイアルトーンが検出されなくなることを利用して正しい選択信号の信号方式を判別する ることを意味する構成要件Dの「設定」の部分を除く。)が開示されており,正しい選択信号の信号方式でダイアルした場合にダイアルトーンが検出されなくなることを利用して正しい選択信号の信号方式を判別することは,本件特許出願(昭和60年11月12日)前の公知技術であった。 また,株式会社東芝が昭和60年3月29日に出願し,昭和61年10月7日公開された発明(乙2発明)は,発明の名称を「電話機」とし,端末の設置時に信号方式を認識しておいて,認識した信号方式を端末に記憶させ,以降のダイアルの際には,記憶された信号方式によりダイアルを行う方式であって,かつダイアルトーンが検出されないことにより正しい信号方式であることを自動認識する方式を備えた電話機に関する発明であり,その公開特許公報(特開昭61-225952号公報)には,本件発明の構成要件AないしDの構成が全て開示されている。なお,同公報には,従来技術として,正しい選択信号の信号方式でダイアルした場合にダイアルトーンが停止することで,正しい選択信号の信号方式であることが認識されることが記載されていた(2頁左上欄2ないし13行)。 イ権利化に至る過程について(ア) 被告は,昭和60年11月12日,本件発明に係る特許出願を行った。 原告の発明・考案説明書では本件発明の技術分野は「ファクシミリ装置」,応用分野は「電話」とされていたが,出願時明細書等においては,本件発明は,ファクシミリ装置や電話機に限らず,「電話回線を伝送回線として用いる通信装置」に関する発明とされた。また,上記発明・考 案説明書では,3種類の信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが消えない場合について「すべてのダイヤル方式を失敗した場合は最も汎用性が高い(世の中に多い)10ppsに設 ・考 案説明書では,3種類の信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが消えない場合について「すべてのダイヤル方式を失敗した場合は最も汎用性が高い(世の中に多い)10ppsに設定し,オペポート上に異常表示を点灯させる」と記載されているものの,その図1のフローチャートには,いずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが消えない場合は,単に異常表示をしてプログラムを終了させることが示されていたにすぎなかったが,出願時明細書等においては,【構成】としていずれの信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが消えない場合は,「操作表示部6にかかる異常を表示し・・・選択信号の信号方式を最も可能性のある10ppsのダイアルパルス方式に設定する。」と記載された上,【第2図】のフローチャートにも,異常表示するとともに10ppsのダイアルパルスに設定することが示された。 (イ) 本件特許出願は,被告の知財部門から出願手続を依頼されたZ特許事務所のZ弁理士が代理人となって出願されたものであった。当時,被告は,ファクシミリを中心とする出願を同特許事務所に集中的に依頼していた。 (ウ) 本件特許出願は,昭和62年5月23日に公開され,平成6年10月19日に公告されたが,平成7年1月,株式会社ケンウッドから,本件発明が乙1発明に基づき容易に発明できたものであり(法29条2項),また,乙2発明と同一の発明である(法29条の2)から拒絶されるべきであるとして,本件異議申立てが行われた。 これに対して,当時被告の知的財産部に所属していたWは,本件異議申立ての内容を確認した上,平成7年8月26日付けで,原告に対して,異議申立て対する反論点についてコメントを求める依頼を出した。原告は,この依頼に関する書類を,同 財産部に所属していたWは,本件異議申立ての内容を確認した上,平成7年8月26日付けで,原告に対して,異議申立て対する反論点についてコメントを求める依頼を出した。原告は,この依頼に関する書類を,同年9月6日までに知的財産部に返送した(なお,この返送の際に原告がいかなる回答をしたのかは,証拠上明 らかでない。)。Wは,本件特許出願の内容を補正して引用例との差異化を図るために,①構成要件Eの構成を付加すること,②構成要件C1で発生する選択信号を出願時明細書等に実施例として記載されている「1」に限定すること,③電源を入れて電話回線を接続した時点でダイアルトーンを待機する構成について実施例の記載に基づく限定をすること,の3通りの補正案を検討していたところ,原告は,当時本件発明への抵触が疑われていた他社電話機について,これらの補正をした場合でも抵触性が維持されるか否かを確かめるための実験を行い,同月26日,その結果をWにメールで報告した。これによって構成要件Eの構成を付加しても他社電話機が本件発明の技術的範囲に属することが明確になったことから,Wは,同月29日,本件特許出願について構成要件Eを付加する旨の補正を行うことを指示する連絡書を作成して,Z特許事務所に送付した。 Z弁理士は,上記指示を受け,平成7年10月4日付け特許異議答弁書において,本件特許出願につき,請求項1に構成要件Eを付加し,それに応じて発明の詳細な説明の一部を修正する旨の本件補正を行った上で,本件異議申立てに対する反論をした。 特許庁は,本件補正後の本件発明について,乙1発明とは構成要件D(選択信号の信号方式を「設定」すること)及び構成要件Eの点で相違し,また,乙2発明とは構成要件Eの点で相違するとそれぞれ認定し,平成9年1月23日, 正後の本件発明について,乙1発明とは構成要件D(選択信号の信号方式を「設定」すること)及び構成要件Eの点で相違し,また,乙2発明とは構成要件Eの点で相違するとそれぞれ認定し,平成9年1月23日,本件異議申立てに理由がないとの決定をした。 本件発明は,同年5月9日,本件補正後の内容で特許登録された。 (エ) 被告は,原告の入社以前から,従業員が創作した発明,考案及び意匠に関し,その取扱いと報償金の支給を定め,かつその適正な運用を図ることにより従業員の創意,工夫を助長,奨励し,もって会社の発展に寄与することを目的として「発明取扱規定」を制定していた。また,被告 は,社内で課ごとに特許出願目標を設定し,その達成率を報告させるなど,特許出願を非常に積極的に行っており,特に新人社員に対しては出願明細書の書き方といった特許教育を行うなどの活動を行っていた。この結果,被告は,昭和60年(1985年)に全世界で4500件を超える特許出願又は実用新案登録出願をしており,その後も毎年これと同水準又はこれを大きく上回る水準の出願件数を維持していた。 また,被告の社内には,特許の出願から権利化までを担当する知的財産部と,権利化された特許を活用するために他社とのライセンス交渉等を行うライセンスグループがあり,両部署を合わせて少なくとも100名程度の従業員が在籍しており,ライセンス交渉の前提となる他社との技術論争においては両部署の従業員が協力し合って業務を遂行していた。 ウ権利行使の過程について被告においては,他社製品が自社特許に抵触するなどして特許の活用可能性がある場合,主に開発部門の従業員が他社製品を分析し,活用可能性を確認した上で,知財財産部に権利活用依頼を行い,これを受けた知財部門が内部検討や場合に 品が自社特許に抵触するなどして特許の活用可能性がある場合,主に開発部門の従業員が他社製品を分析し,活用可能性を確認した上で,知財財産部に権利活用依頼を行い,これを受けた知財部門が内部検討や場合によって外部鑑定を依頼するなどして,権利活用を進めることとされている。 本件特許についても,原告は,平成6年5月に***について,平成10年2月及び平成11年10月にD社の***及び***について,平成16年5月及び平成17年8月にA社の***及び***について,それぞれ被告が所有する測定器等の機器を用いて実験を行うなどし,その結果を踏まえてそれぞれ権利侵害の可能性がある旨の権利活用依頼書を作成した。また,原告は,C社とのライセンス交渉においては,知的財産部からの照会に対して意見を述べたり,D社とのライセンス交渉においては,知的財産部及び社外弁理士が行う鑑定に立ち会ったりして,ライセンス契約の締結過程に関与した。このほか,E社とのライセンス交渉においては, 当時知的財産部に所属していた原告は,E社製品の実機試験を行うなどして,その技術論争に協力した。 (2) 被告の貢献度ア以上のとおり,原告は,被告から特段の指示・命令を受けることなしに,自ら本件発明を着想し,自らこれを具体化し,単独でこれを完成させており,また,その発明・考案説明書において,構成要件Eの基礎となる「最も汎用性が高い(世の中に多い)10ppsに設定」することを記載したことによって,後に本件補正による引用例との差異化を可能にしたものと認められる。このほか,原告は,本件特許出願後の本件異議申立ての手続に際して,本件補正を行っても被疑侵害品が本件発明の技術的範囲に入ることを確認したり,本件特許の登録後には,開発部又は知的財産部の従業員として,他社製品の本 は,本件特許出願後の本件異議申立ての手続に際して,本件補正を行っても被疑侵害品が本件発明の技術的範囲に入ることを確認したり,本件特許の登録後には,開発部又は知的財産部の従業員として,他社製品の本件発明への抵触性を確認し,これに基づいて権利活用依頼書を作成するなど,本件特許の活用に積極的に貢献したことが認められる。 そのような結果,被告は,C社及びD社との間でそれぞれ本件特許に係る有償ライセンス契約を締結し,C社からは実施料として***円(グラントバックの価値を含めた評価は***円),D社からは実施料として***円(グラントバックの価値を含めた評価は***円)を受領し,また,E社ライセンス契約においても,本件特許をカウンター特許として提示することで,***円相当の精算金の減額を得たものと認めることができる。 イ他方,本件発明は,当時原告が被告社内で研究開発に従事していたファクシミリ,特にNCUの技術に関連するものであって,原告作成の発明・考案説明書にも本件発明の属する技術分野が「ファクシミリ」であると記載されていた。 また,本件特許出願は,被告の知財部門から,ファクシミリに関する特許手続を集中的に委任していたZ特許事務所に依頼して行われた。 さらに,本件特許出願当時,電話機から正しい信号方式の選択信号が送出されると交換機のダイアルトーンが停止することを利用して,当該電話回線における正しい信号方式を判定することは公知技術であり,先行技術(乙1発明,乙2発明)に照らして,出願時明細書等に記載された特許請求の範囲の内容には新規性を有する部分がなかったため,本件異議申立てに対しては,被告の知的財産部の従業員がZ弁理士とともに対応に当たり,構成要件Eを付加する本件補正及びこれに基づく反論を行うことによって,本件特許 は新規性を有する部分がなかったため,本件異議申立てに対しては,被告の知的財産部の従業員がZ弁理士とともに対応に当たり,構成要件Eを付加する本件補正及びこれに基づく反論を行うことによって,本件特許出願が特許登録に至ったことが認められる。 そして,被告においては,日頃から従業員に対して積極的に発明を奨励し,会社としても多数の出願活動を行っており,知的財産部及びライセンスグループの知財部門には少なくとも100名程度の従業員を在籍させて,知的財産の形成及び活用に努めている。他社製品に対しては,主に開発部門の社員からの報告に基づいて,知財部門が,社内での検討や外部鑑定を行い,他社との交渉を行って権利活用をしており,本件において原告が行った他社製品の実機試験等は,いずれも原告が被告の開発部門又は知財部門の従業員として行ったものであった。 本件各ライセンス契約はいずれもそのような被告の知財部門の業務活動を通じて締結されたものであるが,このうちA社ライセンス契約及びB社ライセンス契約については,前記5(2)イ及び6(1)イのとおり,本件特許は,その交渉過程で相手方に提示された特許ではなく,その契約締結当時に相手方が本件特許を実施していた事実も認められないから,その契約締結に直接的に有意な貢献をしたものとはいえず,また,C社ライセンス契約については,前記4のとおり,実際にはC社***のうち10機種は本件発明を実施していないと認められ,その余についても本件発明を実施していると認めることができないにもかかわらず,本件特許に係る有償ライセンス契約として締結されたものであることが認められる。 ウ本件における上記の諸事情に鑑みれば,本件発明によって被告が受けた利益についての被告の貢献度は,95%と認めるのが相当である。 (3) たものであることが認められる。 ウ本件における上記の諸事情に鑑みれば,本件発明によって被告が受けた利益についての被告の貢献度は,95%と認めるのが相当である。 (3) 原告の主張に対する判断ア原告は,法35条4項の「使用者等が貢献した程度」について,発明者による高度な技術的思想の創作はいわば「特段の貢献」であるから,これとの比較から,使用者等の貢献と認められるためには「その貢献がなければ当該発明も生まれない」との特段の事情が必要であり,本件においては被告にそのような特段の貢献がない以上,被告の貢献度はゼロであると主張する。 しかし,同条項は「使用者等が貢献した程度」を考慮すべきことを定めているのであって,使用者等の「特段の貢献」のみに限定して考慮すべきとは規定していない。また,「発明」が高度な技術的思想の創作であること(法2条1項)はそのとおりであるが,そのことを前提として,法35条4項が,使用者等の貢献の考慮について上記のように規定しているのであるから,発明が高度な技術的思想の創作であることは,同条項の使用者等の貢献を,原告がいうような「特段の貢献」に限定して解すべき根拠となるものとはいえないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,法35条4項は,職務発明に係る相当の対価の算定において「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮」すると規定しているから,本来,発明に至った「後」の使用者等の貢献は考慮されるべきでないと主張する。 しかし,同条項の趣旨は,職務発明から生ずる権利や利益を,資金や資材等の提供者である使用者と技術的思想の提供者である従業員との間で衡平に分配し,互いの利益を調整することであると解さ する。 しかし,同条項の趣旨は,職務発明から生ずる権利や利益を,資金や資材等の提供者である使用者と技術的思想の提供者である従業員との間で衡平に分配し,互いの利益を調整することであると解されるところ,職務発明による独占の利益は,発明がされた後に使用者等が特許の取得・維持及 びライセンス契約の締結のために費やした努力や費用によっても大きく影響されるのであるから,上記利益調整に当たっては,当該発明によって使用者等が利益を受けるに至るまでの全ての過程における使用者等の負担及び貢献を考慮するのが相当である。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,本件発明と被告のNCU技術との間には条件関係がなく,本件発明は原告が被告入社後に取得したNCU技術とは無関係であると主張する。 しかし,前記(1)ア(ア)のとおり,NCUとは電話回線に選択信号を送り出したり,電話がかかってきたときにオフフックにしたりするなど,電話回線との接続/切断の制御をする装置であり,ファクシミリ等の通信装置に用いられて,ダイアルトーンを検出したり,ダイアルトーンやビジートーンの検出の有無に応じて通信端末の動作を変更するなどの機能に関するものであるから,本件発明の技術思想,すなわち,ファクシミリ等の電話回線を伝送回線として用いる通信装置において,複数の信号方式の選択信号を送出し,その際のダイアルトーンの有無の検出結果に基づいて当該電話回線に適合した信号方式を設定するという技術思想と関連することは明らかであり,また,本件発明当時,被告はこのNCUの技術的蓄積を有しており,原告は,本件発明以前から被告社内でNCUの設計開発に携わっていたのであるから,原告は本件発明の過程で被告の蓄積したNCU技術に接し得たこと 本件発明当時,被告はこのNCUの技術的蓄積を有しており,原告は,本件発明以前から被告社内でNCUの設計開発に携わっていたのであるから,原告は本件発明の過程で被告の蓄積したNCU技術に接し得たことは明らかである。 そして,使用者の貢献については,それが「特段の貢献」である必要がないことは前記アのとおりであり,また,使用者の貢献と発明の完成との間に条件関係が必要であるとも解されないから,上記事情は,被告が貢献した程度を考慮する際の一事情として参酌されるべきものと解するのが相当である。 エ原告は,本件特許出願に当たって,本件発明に係る物件をファクシミリから電話回線を用いる通信装置に拡大し,構成要件Eに係る構成をフローチャートに追加したのは,原告が特許事務所の担当者に指示したことによると主張し,その陳述書でも,原告が特許事務所の担当者に直接電話で指示をしたときのやりとりの内容を鮮明に記憶していると陳述している。 この点,前記(1)イ(ア)のとおり,確かに,構成要件Eの基礎となる構成(3種類の信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが消えない場合の処理について,「最も汎用性が高い(世の中に多い)10ppsに設定し,オペポート上に異常表示を点灯させる」)は,いずれも原告が作成した発明・考案説明書に記載されていた事項であると認められる。 しかし,原告は,その本人尋問においては,特許事務所の担当者とのやりとりの内容を明確には供述できておらず,このほかに,原告が上記指示をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。また,当時原告は開発部門の一従業員にすぎず,他方で,被告の知財部門には知財業務専従の従業員が多数在籍していたことを考慮すると,特許事務所とのやりとりを,知財部門を介さずに直接原告が行っていたと 。また,当時原告は開発部門の一従業員にすぎず,他方で,被告の知財部門には知財業務専従の従業員が多数在籍していたことを考慮すると,特許事務所とのやりとりを,知財部門を介さずに直接原告が行っていたとは想定し難いというべきである。 そうすると,原告が特許事務所に上記指示をしたとの原告の主張は直ちに採用できない。 オ原告は,本件補正により追加された構成要件Eについて,その構成を特許出願依頼書にもれなく記載した点が原告の貢献であり,また,原告が引用例との相違点を検討し,補正後も他社製品が技術的範囲に含まれることを確認して補正を指示したことも原告の貢献であると主張する。 この点,前記(1)イ(ア)のとおり,原告作成の特許出願依頼書に添付された発明・考案説明書には,3種類の信号方式の選択信号を発生させてもダイアルトーンが消えない場合の処理について,「最も汎用性が高い(世の中に多い)10ppsに設定し,オペポート上に異常表示を点灯させる」 と記載されており,これを受けて,出願時明細書にも,その【構成】として「操作表示部6にかかる異常を表示し・・・選択信号の信号方式を最も可能性のある10ppsのダイアルパルス方式に設定する。」と記載され,この内容が【第2図】のフローチャートにも示されたのであるから,後に本件補正において構成要件Eの付加が可能となったのは,原告の当初の発明・考案説明書の記載によるものといえ,この点は原告の貢献というべきである。 他方,本件補正の経緯について,原告は,原告が引用例との相違点を検討して補正の内容を決定し,構成要件Eの補正を行った場合にも他社製品が技術的範囲に属することを実機で確認した上で,まず電話で被告知財担当者に対して補正の内容を指示し,他社製品が構成要件Eを実施している て補正の内容を決定し,構成要件Eの補正を行った場合にも他社製品が技術的範囲に属することを実機で確認した上で,まず電話で被告知財担当者に対して補正の内容を指示し,他社製品が構成要件Eを実施していることを実機で確認していることも併せて伝えた後,最終確認のために実機試験を行って,その結果を被告知財担当者にメールで知らせたと主張し,その陳述書においても,原告は,Wから引用例との相違点の検討を依頼された際に,構成要件Eが引用例との相違点であること及び構成要件Eの補正を行っても技術的範囲に属することを実機で確認したことを,Wに電話で伝えたが,その電話の内容は今でもはっきりと覚えていると陳述し,さらに,その本人尋問においても,原告は,本件異議申立てにおける引用例を見て相違点を見つけ,自宅で簡易な実機試験を行って他社製品の抵触性を確かめた上で,Wに電話でこの結果を伝え,その後,改めて実機試験を行ったと供述する。 しかし,原告は,同本人尋問において,自宅で行ったという実機試験の内容を明らかにできず,尋問後に提出した陳述書では,上記試験は自宅ではなく会社で行ったものであると供述を変遷させており,このような原告の供述内容に照らすと,原告が自ら引用例との相違点を見つけて,他社電話機の実機試験を行ってその抵触性を確かめ,これをWに電話で伝えたと の上記陳述及び供述は,にわかに信用できない。 また,原告は,平成7年9月26日に,構成要件Eを付加するとの案を含む三つの補正案に関し,実機試験の結果をWにメールで報告しているが,仮に原告が構成要件Eを付加する補正案を自ら見つけて実機試験で確認をし,その補正を指示していたというのであれば,その後に改めて三つの補正案を検討して実験を行う必要はなかったはずである。 さらに,証拠によれば,本件補正 を付加する補正案を自ら見つけて実機試験で確認をし,その補正を指示していたというのであれば,その後に改めて三つの補正案を検討して実験を行う必要はなかったはずである。 さらに,証拠によれば,本件補正に基づいて本件発明が特許登録された後,Wが,原告に対して報告書を送り,そこで,特許登録された本件補正後のクレーム(構成要件Eの部分に下線を引いたもの)を示して,「特にアンダーラインの箇所は特許性を主張するため止むを得ず限定した所です」と報告したことが認められるところ,仮に原告が本件補正の内容をWに指示したのであれば,Wが原告に対してこのような文言で補正内容を報告することは不自然というべきである。 したがって,本件補正について,原告が引用例との相違点を検討し,構成要件Eに係る補正を決定して指示したとの原告の上記主張は採用することができない。 カ原告は,ライセンス交渉における貢献に関して,本件発明そのものが技術的範囲の広い「強い発明」であることや,原告が他社製品における本件発明の実施の発見・確認などを行ったことを主張する。 しかし,本件発明が,乙1発明及び乙2発明の先行技術に照らして,新規といえる部分が構成要件Eに限られることは前記(1)ア(エ)及びイ(ウ)のとおりである。また,回線自動設定機能については,本件発明のほかに複数の代替技術が存在していること,C社については,本件特許に係るライセンス契約が締結されたものの,実際には同社製品は代替技術を用いており,本件発明を実施していたとは認められないこと,及び,D社については,本件発明の実施を前提に本件特許に係るライセンス契約が締結された ものの,同契約締結日以降は代替技術を用いていて,本件発明を実施していないと認められることは,それぞれ前記4,7及び8のとお 発明の実施を前提に本件特許に係るライセンス契約が締結された ものの,同契約締結日以降は代替技術を用いていて,本件発明を実施していないと認められることは,それぞれ前記4,7及び8のとおりである。 また,ライセンス交渉の過程で原告が他社製品の実機試験等を行って本件発明の実施を発見・確認したことは,被告の開発部門又は知財部門の従業員の業務として行ったものであり,技術的思想の提供者である発明者としての本来的な貢献であるとはいえないから,これを大きく評価することはできないというべきである。 よって,原告の上記主張は採用することができない。 キ原告は,本件発明によって,被告が,ライセンス契約の相手方から利益を得ているだけでなく,他社から他社特許の侵害に基づく請求を受けなかったという利益も得ているから,被告の貢献度については後者の範囲で十分評価されており,前者の利益については全て原告が取得すべきであると主張する。 しかし,本件において,被許諾企業以外の他社からの特許権侵害に基づく請求が,本件特許の存在によって阻止されたとの具体的事実を認めるに足りる主張立証はない。また,抽象的には,他社が,自社特許の被告による侵害を疑ったにもかかわらず,被告が保有するカウンター特許を懸念して,被告に対する権利行使を断念したことの蓋然性が想定できないわけではないが,そのような抽象的な効果は,被告が保有する多数の特許群に由来するものというべきであって,それを個々の特許,とりわけ本件特許による利益であるということはできない。 したがって,被告が,本件各ライセンス契約に基づく利益以外に,本件発明によって具体的な利益を得たものとは認められないから,原告の上記主張はその前提を欠くものであって,採用することができない。 クこ たがって,被告が,本件各ライセンス契約に基づく利益以外に,本件発明によって具体的な利益を得たものとは認められないから,原告の上記主張はその前提を欠くものであって,採用することができない。 クこのほか,原告は,C社ライセンス契約及びD社ライセンス契約に係る原告の特別報償金の支給に当たって,被告が,特別報償金の額を,「特別 報償金」=***×(1-会社の貢献度)}の関数式で計算し,その際「会社の貢献度」を***%とし,原告の貢献度が***%であることを認定したのであるから,本件発明における原告の貢献度が仮に100%でないとしても,***%を下回ることはないと主張する。 この点,確かに,被告の発明取扱規定第13条の特別報償金の支給基準において,上記関数式の「会社の貢献度」の部分に当たるものとして,「当該発明についての発明行為,権利化及び権利行使等に対する会社の貢献の程度」が規定されており,C社ライセンス契約の実施料収入***円に対する特別報償金の額***円(前記第2,2(5)エ)及びD社ライセンス契約の実施料収入***円に対する特別報償金の額***円(同オ)を,同条の支給基準に当てはめて計算すると,原告が主張する上記関数式の「会社の貢献度」の部分がいずれも***%に設定されていたことが認められる。 しかし,そもそも法35条4項の「使用者等の貢献の程度」と被告の特別報償金の支給基準における上記「会社の貢献度」が同一の指標であると解すべき理由はないから,原告の主張は失当である。 この点,被告がC社ライセンス契約及びD社ライセンス契約についての特別報償金を算出する際に「会社の貢献度」の検討のために用いた***には,発明者貢献度や会社貢献度を評価する基準だけでなく,発明者又は会社のどちらが貢献しているかとは無関係に, センス契約についての特別報償金を算出する際に「会社の貢献度」の検討のために用いた***には,発明者貢献度や会社貢献度を評価する基準だけでなく,発明者又は会社のどちらが貢献しているかとは無関係に,***などの発明外の要素等,職務発明対価訴訟では考慮されない項目や重視されない項目が挙げられており,一方で,***といった職務発明対価訴訟で重要視される項目が検討項目から外れている。 また,原告の上記主張は,有償ライセンス契約に基づく「相当の対価」を,法35条4項において「実施料×(1-使用者等の貢献の程度)」として計算できることを前提に,これと上記関数式とを比較して,法35条 4項の「使用者等の貢献の程度」が上記関数式の「会社の貢献度」に相当することをいうものと解されるが,原告自身が主張するとおり,上記関数式は,「***×(1-会社貢献度)」で求められる値をさらに関数に入れることによって特別報償金を算定しようとするもの(被告の支給基準においては,***,特別報償金を算定することとされている。)であるから,被告の支給基準においては,「会社の貢献の程度」(会社の貢献度)が法35条4項の「使用者等の貢献の程度」とは異なる基準で用いられていることは明らかである。 したがって,原告への特別報償金の支給基準と法35条4項の「使用者等の貢献の程度」の基準を同列に論じる原告の上記主張は採用することができない。 11 争点(6)(相当対価の額)について(1) 本件各ライセンス契約において本件発明により被告が受けるべき利益の額は,前記5(6),6(5),7(4),8(4)及び9(5)のとおり,A社ライセンス契約につき64万4820円,B社ライセンス契約につき34万6658円,C社ライセンス契約につき***円,D社ライセンス契約 5(6),6(5),7(4),8(4)及び9(5)のとおり,A社ライセンス契約につき64万4820円,B社ライセンス契約につき34万6658円,C社ライセンス契約につき***円,D社ライセンス契約につき***円及びE社ライセンス契約につき***円であるところ,これらの合計額は,2億6049万1478円となる。 そして,この被告が受けるべき利益の額に,前記10(2)ウの被告の貢献度(95%)を考慮すると,本件発明の特許を受ける権利の承継に基づいて原告が被告から受けるべき相当対価の額は,1302万4573円となる。 (2) この相当対価の額から,前記第2,2(5)の既払額555万7000円を控除すると,その残額は746万7573円となる。 12 結論以上によれば,原告の請求は,746万7573円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求め る限度で理由があるが,その余は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官東海林保 裁判官今井弘晃 裁判官足立拓人 ※ ***部分は,民訴法92条1項による閲覧等の制限部分
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