平成25(ワ)19768 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年9月11日 東京地方裁判所
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判決文本文15,701 文字)

平成26年9月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第19768号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論の終結の日平成26年7月18日判決仙台市<以下略>原告株式会社コンピュータ・システム研究所同訴訟代理人弁護士岩永利彦同訴訟代理人弁理士藤原英治岡山市<以下略>被告吉備システム株式会社岡山市<以下略>被告ケイ・エス・エス株式会社上記両名訴訟代理人弁護士平野和宏同訴訟代理人弁理士森 寿夫木村 厚 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,別紙被告製品目録1記載の製品及び別紙被告製品目録2ないし4記載の製品を組み合わせた製品を生産し,譲渡等(譲渡,貸渡し,電気通信回線を通じた提供)をし,又は譲渡等の申出をしてはならない。 2 被告らは,前項記載の製品を廃棄せよ。 3 被告らは,原告に対し,連帯して1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告らは,原告に対し,別紙謝罪広告目録記載の内容の謝罪広告を別紙謝罪広告掲載条件記載の要領で,同記載の新聞に各一回,掲載せよ。 第2 事案の概要本件は,発明の名称を「労働安全衛生マネージメントシステム,その方法及びプログラム」とする特許権を有する原告が,被告らによる別紙被告製品目録1記載の製品(以下「被告製品1」と 2 事案の概要本件は,発明の名称を「労働安全衛生マネージメントシステム,その方法及びプログラム」とする特許権を有する原告が,被告らによる別紙被告製品目録1記載の製品(以下「被告製品1」という。)及び別紙被告製品目録2ないし4記載の製品(以下,それぞれを「被告製品2」又は「被告統合プログラム」,「被告製品3」又は「被告土木積算プログラム」,「被告製品4」又は「被告安全管理プログラム」といい,被告製品1及び被告製品2ないし4の組合せを総称して「被告製品」という。)を組み合わせた製品の譲渡等は原告の特許権を侵害し,又は侵害するものとみなされると主張して,被告らに対し,特許法100条1項及び2項,民法709条並びに特許法106条に基づき,①被告製品の譲渡等の差止め及びその廃棄,②原告の損害3億9600万円(特許法102条2項により原告が受けた損害の額と推定される被告らが侵害の行為により受けた利益3億6000万円と弁護士等費用3600万円の合計)のうち1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,③これとともに信用回復措置をそれぞれ求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 本件特許権(甲1,2)原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」という。)を有している。 特許番号第4827120号発明の名称労働安全衛生マネージメントシステム,その方法及びプログラム 出願日平成17年7月14日登録日平成23年9月22日(2) 本件特許権に係る発明本件特許出願の願書に添付した特許請求 びプログラム 出願日平成17年7月14日登録日平成23年9月22日(2) 本件特許権に係る発明本件特許出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1,16,18の記載は,本判決添付の特許公報の該当項記載のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件システム発明」といい,請求項16に係る発明を「本件方法発明」といい,請求項18に係る発明を「本件プログラム発明」といい,これらを併せて「本件発明」という。)。 (3) 被告らによる被告製品の譲渡等被告吉備システム株式会社は,業として,被告製品2ないし4を生産,譲渡等し,被告ケイ・エス・エス株式会社は,業として,被告製品2ないし4を譲渡等している。 (4) 本件発明の構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件1-A」のようにいう。)。 ア本件プログラム発明1-A 労働安全衛生リスクマネージメント方法をコンピュータに実行させるための労働安全衛生リスクマネージメントプログラムであって,1-B 記憶手段に,複数の工事名称,および,前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと,前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを格納させる格納ステップと,1-C 入力手段に,少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力させる入力ステップと,1-D 前記記憶手段に格納されている前記歩掛マスターテーブルを参照 して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工事名称に基づき,前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳デー と,1-D 前記記憶手段に格納されている前記歩掛マスターテーブルを参照 して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工事名称に基づき,前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを生成させる内訳データ生成ステップと,1-E 前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前記内訳データ生成ステップにより生成された内訳データに含まれる各要素に基づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成させる危険源評価データ生成ステップと,1-F を含むことを特徴とする労働安全衛生リスクマネージメントプログラム。 イ本件システム発明2-A 労働安全衛生マネージメントシステムであって,2-B 複数の工事名称,および,前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと,前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と,2-C 少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と,2-D 演算手段を使用して,前記記憶手段に格納されている前記歩掛マスターテーブルを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工事名称に基づき,前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを生成する内訳データ生成手段と,2-E 前記演算手段を使用して,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基づき,当該各要素に関連する危険有害要因および 事故型分類を抽出し,該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成する危険源評価デ 成された内訳データに含まれる各要素に基づき,当該各要素に関連する危険有害要因および 事故型分類を抽出し,該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成する危険源評価データ生成手段と,2-F を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。 ウ本件方法発明3-A 労働安全衛生マネージメント方法であって,3-B 記憶手段が,複数の工事名称,および,前記複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルと,前記要素に関連付けられた危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを格納する格納ステップと,3-C 入力手段が,少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと,3-D 演算手段が,前記記憶手段に格納されている前記歩掛マスターテーブルを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工事名称に基づき,前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを生成する内訳データ生成ステップと,3-E 前記演算手段が,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前記内訳データ生成ステップにより生成された内訳データに含まれる各要素に基づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成する危険源評価データ生成ステップと,3-F を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメント方法。 2 争点(1) 被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せは1個のプログラムだと評価できるか(2) 被告製品の譲渡等は本件特許権を侵害し,又は侵害するものとみなされ るかア被告製品は本件プログラム発明の技術的範囲に属する ないし4の組合せは1個のプログラムだと評価できるか(2) 被告製品の譲渡等は本件特許権を侵害し,又は侵害するものとみなされ るかア被告製品は本件プログラム発明の技術的範囲に属するかイ被告製品の譲渡等が特許法101条1号及び4号,同条2号及び5号に該当するか(3) 本件発明に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せは1個のプログラムだと評価できるか)について(原告の主張)被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せは,規範的に見れば1個のプログラムであり,1個の物である。被告安全管理プログラムは,被告積算プログラムで生成したSKF600からテキスト出力した「工事内容.txt」などにより積算連動するのであるから,もともと連動が予定されている機能的一体性の高い製品である。また,被告製品2ないし4の組合せは,被告製品1として,1つのパッケージに入れて販売されている。さらに,被告製品のセットアップ手順書の記載からは,被告積算プログラムと被告安全管理プログラムについては顧客のセット購入を前提としていることが伺われる。 (被告らの主張)原告が本件発明に対応すると主張する被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せは,1個のプログラムではない。すなわち,被告土木積算プログラム及び被告安全管理プログラムは,それぞれ独立して稼働,機能するプログラムであり,独立したプログラムとして販売されている。被告製品は店頭販売をしておらず,被告製品2ないし4を併せて購入した顧客に対してこれらを1つのパッケージに入れて直送することがあるに過ぎない。被告統合プログラムは,被告土木積算プログラム れている。被告製品は店頭販売をしておらず,被告製品2ないし4を併せて購入した顧客に対してこれらを1つのパッケージに入れて直送することがあるに過ぎない。被告統合プログラムは,被告土木積算プログラムや被告安全管理プログラムを稼働させる ために各プログラムの起動制御やバージョン管理等を行う必須の基本プログラムであって,被告土木積算プログラムと被告安全管理プログラムとを1個のプログラムとして統合して利用するものではない。そうであるから,これらを組み合わせたもの全体をもって労働安全衛生リスクマネージメントに関するプログラムと主張する原告の主張は失当である。 (2) 争点(2)(被告製品の譲渡等は本件特許権を侵害し,又は侵害するものとみなされるか)についてア被告製品は本件プログラム発明の技術的範囲に属するか(原告の主張)本件プログラム発明に対応する被告製品の構成は,別紙「被告製品の構成」の「1 本件プログラム発明に対応する被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せの内容」記載のとおりであり,以下に主張するほか,本件プログラム発明の構成要件を充足することが明らかであるから,本件プログラム発明の技術的範囲に属する。 (ア) 構成要件1-B「歩掛マスターテーブル」は,被告土木積算システム中の歩掛データベース,すなわち「2012_K.mdf」ファイルに当たり,「危険源評価マスターテーブル」は,被告安全管理システム中の「AKD2011.mdf」ファイルに含まれるリスクテーブルに当たることなどからして,被告製品は,構成要件1-Bを充足する。 (イ) 構成要件1-D「内訳データ」に相当するのは,被告土木積算システムの工事内訳画面中,直接工事費の表題で表された画面を裏付けるデー 告製品は,構成要件1-Bを充足する。 (イ) 構成要件1-D「内訳データ」に相当するのは,被告土木積算システムの工事内訳画面中,直接工事費の表題で表された画面を裏付けるデータベースであり,具体的には,積算システム中のSKF600というファイルである。「内訳データ」は,少なくとも,各要素,例えば,掘削,押土,整地作業などの下位概念の作業に関するデータを含むものであり, 様々な工種や工程が混在したいわば工程の集合体のデータを含むから,SKF600は内訳データに相当する。 仮に「内訳データ」がある特定の工種や工程に関連する要素のみのデータからなるものであると限定的に解釈するしかないとしても,「内訳データ」であるSKF600は,その中に,特定の工種や工程に関連する要素のみのデータを現に含んでおり,被告安全管理システムは要素のみのデータを利用している。そうであるから,その場合には,SKF600の特定の一部分が「内訳データ」に相当する。 したがって,被告製品は構成要件1-Dを充足する。 (ウ) 構成要件1-E「危険源評価マスターテーブル」は,被告安全管理システム中の「AKD2011.mdf」ファイルに含まれるリスクテーブルに当たり,被告安全管理システムにおいては,これを参照して「内訳データ」に当たるSKF600に含まれる各要素に基づき各要素に関連する危険有害要因等を抽出し,それを含む「危険源評価データ」を生成している。被告安全管理システムにおいて業務ツリーが介在するとしても,内訳データの各要素に基づいて危険源評価データを生成することに変わりはない。したがって,被告製品は構成要件1-Eを充足する。 (被告らの主張)本件プログラム発明と被告土木積算プログラムで作成した積 基づいて危険源評価データを生成することに変わりはない。したがって,被告製品は構成要件1-Eを充足する。 (被告らの主張)本件プログラム発明と被告土木積算プログラムで作成した積算データを活用する場合の被告安全管理プログラムとでは,対象作業の選択対象や内訳データ等において技術思想を異にするから,被告製品が本件プログラム発明の技術的範囲に属することはない。 仮に本件プログラム発明と被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せを対比するとしても,以下のとおり,被告製品は,本件プログラム発明の 技術的範囲に属しない。 (ア) 構成要件1-B本件プログラム発明の「歩掛マスターテーブル」は,「内訳データ」を作成するために参照され,「危険源評価マスターテーブル」は,「内訳データ」に含まれる各要素に基づき,「危険源評価データ」を生成するために参照されるものであり,「内訳データ」との関連が必須の要素となっているところ,被告安全管理プログラム及び被告土木積算プログラムでは「内訳データ」が生成されることはない。したがって,被告製品は,構成要件1-Bを充足しない。 (イ) 構成要件1-D被告安全管理プログラム及び被告土木積算プログラムでは「内訳データ」が生成されることはないから,被告製品は,構成要件1-Dを充足しない。 原告は,積算データすなわちSKF600なるファイルが「内訳データ」に相当する旨主張するが,SKF600は,被告土木積算プログラムで積算の対象となっている工事全体から抽出したデータであり,特定の工種のみのデータではなく,全ての工種におけるデータであって,各工種における作業が混在した工程の集合体たる作業データである。すなわち,被告土木積算プログラムは,対象 から抽出したデータであり,特定の工種のみのデータではなく,全ての工種におけるデータであって,各工種における作業が混在した工程の集合体たる作業データである。すなわち,被告土木積算プログラムは,対象工事に含まれる作業を歩掛データベースで規定された作業に置き換えて積算データを作成するものであり,操作者は,設計書に基づいて,工事全体のデータを入力する必要があり,工程・種別・細別をそれぞれ入力して初めて一つの工程が対応し,これを繰り返して工事全体の工程の集合体である積算データ,すなわちSKF600が生成される。被告土木積算プログラムには,被告安全管理プログラムで使用するために,対象範囲を限定した「内訳データ」を生成するという技術思想は全くなく,被告 安全管理プログラムには積算データから対象範囲を限定して取り込むという技術思想は全くない。 (ウ) 構成要件1-E被告安全管理プログラム及び被告土木積算プログラムでは「内訳データ」が生成されることはないから,「危険源評価マスターテーブル」も存在しない。被告安全管理プログラムに格納されているリスクテーブルは,被告安全管理プログラムで設定された業務ツリーから作業を選択するものであり,本件プログラム発明の「危険源評価マスターテーブル」とは異なる。したがって,被告製品は構成要件1-Eを充足しない。 イ被告製品の譲渡等が特許法101条1号及び4号,同条2号及び5号に該当するか(原告の主張)本件システム発明及び本件方法発明に対応する被告製品の構成は,別紙「被告製品の構成」の「2 本件システム発明に対応する被告システムの内容」及び「3 本件方法発明に対応する被告方法の内容」記載のとおりであり,上記アと同様に,本件発明の技術的範囲に属する。 ,別紙「被告製品の構成」の「2 本件システム発明に対応する被告システムの内容」及び「3 本件方法発明に対応する被告方法の内容」記載のとおりであり,上記アと同様に,本件発明の技術的範囲に属する。 被告製品は,OS的に用いられる被告統合プログラム(被告製品2),土木工事の見積もり等を算出する被告土木積算プログラム(被告製品3)及び本件発明の作用効果を直接に発揮する被告安全管理プログラム(被告製品4)の3つのソフトを必須とするから,本件システム発明に係る物(システム)の生産ないし被告方法の使用「にのみ」用いる物である。 また,被告製品は,本件システム発明ないし本件方法発明による課題の解決に不可欠である。被告らは,本件訴状の送達により,本件システム発明ないし本件方法発明を知り,また被告製品をインストールした被告らのユーザーが所有等するパソコンないしその使用が本件システム発明ないし 本件方法発明の実施に用いられることを知った。 (被告らの主張)上記アと同様に,被告システム及び被告方法は,本件発明の技術的範囲に属さないから,そもそも間接侵害が成立する余地はない。 被告土木積算プログラム及び被告安全管理プログラムは,独立した製品として販売され,使用されているものであり,経済的,商業的,実用的な観点から積算プログラムとしての用途があるから,「のみ」要件を満たさない。また,方法の発明については,被告らは,被告安全管理プログラム及び被告土木積算プログラムをインストールしたパソコンの生産,譲渡等又は譲渡の申出を行っている訳ではないから,特許法101条4号に該当しない。 被告土木積算プログラム及び被告安全管理プログラムは,本件発明において課題解決のために新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものではない ないから,特許法101条4号に該当しない。 被告土木積算プログラム及び被告安全管理プログラムは,本件発明において課題解決のために新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものではないから,「発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たらず,特許法101条2号及び5号に該当しない。被告土木積算プログラムと被告安全管理プログラムを組み合わせたものを1つのプログラムとする解釈は確立された見解ではないから,「その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら」という主観的要件も満たさない。 (3) 争点(3)(本件発明に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)についてア実施可能要件違反,サポート要件違反,明確性要件違反について(被告らの主張)本件発明は,構成要件1-D,2-D,3-Dで規定されているとおり,「内訳データを生成」することを構成要件とするが,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明や 特許請求の範囲にはこれを具現する記載が全くなく,出願時の技術常識に基づいても,当業者はどのように「内訳データを生成」するのかを理解することができないから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件違反を満たさず,特許請求の範囲の記載はサポート要件及び明確性要件を満たさない。 (原告の主張)「内訳データ」の生成処理は,ごく基本的なデータベースの処理である。 すなわち,工事名称及び要素という2つの項目が関連付けられたシンプルなデータベースに対して,工事名称やそれに準ずる検索用コードを検索キーとしてそれに関連する要素を生成するといっただけのものである。そうであるから,当業者であ という2つの項目が関連付けられたシンプルなデータベースに対して,工事名称やそれに準ずる検索用コードを検索キーとしてそれに関連する要素を生成するといっただけのものである。そうであるから,当業者であれば,本件明細書の発明の詳細な説明や特許請求の範囲の記載から,どのように「内訳データを生成」するのかを理解することができるのであって,実施可能要件,サポート要件及び明確性要件を満たしている。 イ進歩性の欠如について(被告らの主張)本件特許出願前に頒布された刊行物(乙5)には,本件発明の発明特定事項のほとんどが記載されており,「危険源評価データ」が生成される点等についても,公知技術等(乙3,6,7,10ないし13)により当業者が容易に想到することができるから,本件特許は進歩性を欠く。 (原告の主張)被告らの主張する刊行物(乙5)の構成は誤っており,本件発明と刊行物(乙5)に記載された発明との相違点は多数存在し,これらについて,被告らの主張する公知技術等を組み合わせる動機付けがないし,当業者であっても,本件発明の構成に容易に想到することができるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 本件の事案に鑑み,争点(2)ア(被告製品は本件プログラム発明の技術的範囲に属するか)のうち,本件プログラム発明と被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せを対比したときに,被告製品が本件プログラム発明の構成要件1-Dを充足するかという点について,まず検討する。 (1) 本件プログラム発明において,「内訳データ」は,構成要件1-Dの文言によれば,複数の工事名称,および,複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルを参照して,評価対象工事の情報に含まれる工事名称に 訳データ」は,構成要件1-Dの文言によれば,複数の工事名称,および,複数の工事名称の各々にそれぞれ関連付けられた各要素を含む歩掛マスターテーブルを参照して,評価対象工事の情報に含まれる工事名称に基づき生成されるものであり,評価対象工事に含まれる各要素を含むものである。 そして,証拠(甲2)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,「本発明は,建設関連の会社を対象とした労働安全衛生マネージメントシステムであって,より詳細には,既に存在し,定量化されている建設工事積算システムにおける歩掛データや積算データを効率的に利用して,人手やコストをかけずに簡易かつ簡便に危険源評価データを自動生成し,このデータを編集した危険源評価書(表)を出力する労働安全衛生マネージメントシステムを提供することを目的とする。」(段落【0005】),「建設会社では,多数の工事に関する詳細なデータを含む建設積算(建設情報管理)システムを導入して,通常の積み上げ方式であってもユニットプライス形式であっても,工事に含まれる詳細な工程(要素),その各工程の詳細な単価などの蓄積情報を持つデータデース(さらに,標準統計情報を含む歩掛マスターテーブル,当該会社にカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルも含まれている。)を保持している場合が多い。本発明は,建設業界ではこのような建設積算システムが導入されている場合があることに着目し,この建設積算システム(本システムから見て外部にあるシステムであるため便宜上「外部システム」と呼ぶ。)に蓄積されているデータを利用することによって,当該建設会社の工事関連の危険源評価データを自動的に生成するこ とを可能にする。従って,建設会社に建設積算システムが導入されており必要な工事関連データが存在すればこのデータをそのまま って,当該建設会社の工事関連の危険源評価データを自動的に生成するこ とを可能にする。従って,建設会社に建設積算システムが導入されており必要な工事関連データが存在すればこのデータをそのまま利用することによって,人手をかけずに危険源評価データ(危険源評価表など)を自動的に作成することが可能となる。」(段落【0014】),「本システム100は,入力手段の代わりに,受信手段140を使って,外部システム250から,評価対象工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む「評価対象工事データ」をネットワーク200を介して受信することもできる。」(段落【0027】),「評価対象工事の情報は,別途,工事の名称及びその数量を直接的に入力したり,外部システムから評価対象工事の情報を受信したりすることもできる。この評価対象工事の情報に基づき,選択した省庁用の歩掛マスターテーブルを参照して,前記評価対象工事に含まれる各要素および望ましくはそれらの数量を含む内訳データを演算手段を使用して生成する(S16a)」(段落【0028】)と記載されていることが認められる。 そうすると,本件明細書中の発明の詳細な説明の記載を考慮すれば,本件プログラム発明の「内訳データ」は,評価対象工事の全範囲における積算データではなく,当該積算データ等に基づいて,工事名称を入力することにより,工事名称と歩掛マスターテーブルを対応付けて,工事に含まれる要素を抽出するというステップで生成されるものであると解することができる。 (2) 証拠(甲6,8,11,13,乙4)及び弁論の全趣旨によれば,被告土木積算プログラムは,対象工事に含まれる作業を歩掛データベースで規定された作業に置き換えて積算データを作成することが認められる。これによれば,被告土木積算プログラムにおいて の全趣旨によれば,被告土木積算プログラムは,対象工事に含まれる作業を歩掛データベースで規定された作業に置き換えて積算データを作成することが認められる。これによれば,被告土木積算プログラムにおいては,操作者が,工程・種別・細別をそれぞれ入力して初めて一つの工程が対応し,これを繰り返して工事全体の工程の集合体である積算データ,すなわちSKF600が生成されるというものである。換言すれば,操作者は,設計書に基づき,工事全体のデータを 入力する必要があるのであって,このようにして生成されるSKF600は,工事名称を入力することにより,工事名称と歩掛マスターテーブルを対応付けて,工事に含まれる要素を抽出するというステップで生成されるものではない。 そうであるから,被告製品のSKF600は,対象工事の全範囲における積算データであって,本件プログラム発明における「内訳データ」とは生成過程が異なり,その全体ないし一部をもって「内訳データ」に相当すると見ることはできない(被告製品のSKF600は,これを本件プログラム発明に対応させるとするならば,本件明細書記載の外部システムなどから得られる評価対象工事の情報に対応するものと解される。)。 (3) したがって,被告製品においては「内訳データ」が生成されないから,本件プログラム発明の構成要件1-Dを充足しない。 2 以上のとおりであって,被告製品は,本件プログラム発明の技術的範囲に属すると認められない。そして,被告製品において「内訳データ」が生成されない以上,その譲渡等は,特許法101条1号及び4号や同条2号及び5号に該当することもない。原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 4号や同条2号及び5号に該当することもない。原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官藤田 壮 裁判官宇野遥子 添付の特許公報は省略する。 (別紙)被告製品目録1 1 商品名「積算システムメビウスZERO」(被告製品1) 2 被告製品1の説明被告製品1は,被告製品目録2ないし4記載の,被告製品2(統合システム),被告製品3(土木積算システム),被告製品4(安全管理システム)の各ソフトを必須の一部とする土木積算及び安全管理マネージメントためのパーソナルコンピュータ用パッケージソフトである。 (別紙)被告製品目録2 1 商品名「積算システムメビウスZERO 統合システム」(被告製品2) 2 被告製品2の説明被告製品2は被告製品1を構成するパッケージソフトの一つでもあり,「積算システムメビウスZERO」の各機能(積算機能,安全管理マネージメント機能など)を制御するものである。 簡単に,「統合システム」ともいう。 (別紙)被告製品目録3 1 商品名「積算システムメビウスZERO 土木積算システム」(被告製品3) 2 被告製品3の説明被告製品3は被告製品1を構成するパッケージソフトの一つでもあり,「積算システムメビウスZERO」 「積算システムメビウスZERO 土木積算システム」(被告製品3) 2 被告製品3の説明被告製品3は被告製品1を構成するパッケージソフトの一つでもあり,「積算システムメビウスZERO」の積算ソフト機能を発揮するものである。 簡単に,「積算システム」ともいう。 (別紙)被告製品目録4 1 商品名「積算システムメビウスZERO 安全管理システム」(被告製品4) 2 被告製品4の説明被告製品4は被告製品1を構成するパッケージソフトの一つでもあり,「積算システムメビウスZERO」の安全管理マネージメント機能を発揮するものである。 簡単に,「安全管理システム」ともいう。 (別紙)謝罪広告目録 当社ら,吉備システム株式会社及びケイ・エス・エス株式会社は,当社らの販売するソフト「積算システムメビウスZERO」が,株式会社コンピュータ・システム研究所様の特許権を侵害することを知りながら,今まで販売しておりました。 その結果,当社らの販売するソフト「積算システムメビウスZERO」が市場でシェアを伸ばし,ユーザー各位を混乱させ,株式会社コンピュータ・システム研究所様に多大なご迷惑をおかけしました。 ここに,当社の販売するソフト「積算システムメビウスZERO」が株式会社コンピュータ・システム研究所様の特許権を侵害することを明言するとともに,速やかに販売を中止し,ご迷惑をおかけした株式会社コンピュータ・システム研究所様に心よりお詫び申し上げます。 (別紙) るとともに,速やかに販売を中止し,ご迷惑をおかけした株式会社コンピュータ・システム研究所様に心よりお詫び申し上げます。 (別紙)謝罪広告掲載条件 1 使用する活字(1)「株式会社コンピュータ・システム研究所様に対する謝罪文」という見出10.5ポイントのゴシック体(2)本文10.5ポイントの明朝体 2 掲載場所記事下広告部とする。 3 謝罪広告を掲載する新聞は以下のとおりとする。 (1)朝日新聞全国版(2)読売新聞全国版(3)毎日新聞全国版 (別紙)被告製品の構成 1 本件プログラム発明に対応する被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せの内容1-a 労働安全衛生リスクマネージメント方法をコンピュータに実行させるための労働安全衛生リスクマネージメントプログラムであって,1-b HDD(ハードディスクドライブ)に,複数の工種・種別など,および,前記複数の工種・種別などの各々にそれぞれ関連付けられた各種別・細別などを含む「歩掛選択」画面のデータベースと,前記種別・細別などに関連付けられたリスクの内容・原因および事故型を含む危険情報が規定されている「業務に付随するリスク」の画面のデータベースとを記憶し,1-c ディスプレイ上の「歩掛選択」画面の「工種」→「種別」→「細別」の選択インターフェースにおいて,少なくとも工種・種別などを含む評価対象工事の情報をマウスで入力し,1-d 前記HDD に記憶されている前記「歩掛選択」画面のデータベースを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工種・種別に基づき,前記評価対象工事に含まれる各種別・細別を含む「工事内訳」画面中 記HDD に記憶されている前記「歩掛選択」画面のデータベースを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工種・種別に基づき,前記評価対象工事に含まれる各種別・細別を含む「工事内訳」画面中「直接工事費」の表題で表されたデータなどを生じ,1-e 前記「業務に付随するリスク」の画面のデータベースを参照して,前記「工事内訳」画面中「直接工事費」の表題で表されたデータなどに含まれる各種別・細別に基づき,当該各種別・細別に関連するリスクの内容・原因および事故型を抽出し,該抽出したリスクの内容・原因および事故型を含む「リスク確認」画面中「リスク一覧」のデータを生じる,1-f 労働安全衛生リスクマネージメントプログラム。 2 本件システム発明に対応する被告システムの内容被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せをインストールしたシステム(パソコン),すなわち被告システムの内容は,以下のとおりである。 2-a 労働安全衛生マネージメントプログラムをインストールしたパソコンであって,2-b 複数の工種・種別など,および,前記複数の工種・種別などの各々にそれぞれ関連付けられた各種別・細別を含む「歩掛選択」画面のデータベースと,前記種別・細別に関連付けられたリスクの内容・原因および事故型を含む危険情報が規定されている「業務に付随するリスク」の画面のデータベースとが記憶されているHDD と,2-c 少なくとも工種・種別などを含む評価対象工事の情報を入力するディスプレイ上のインターフェース及びマウスと,2-d CPU(中央演算処理装置)を使用して,前記HDD に格納されている前記「歩掛選択」画面のデータベースを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工種・種別などに基づき,前記評価対象工事に含まれる各 央演算処理装置)を使用して,前記HDD に格納されている前記「歩掛選択」画面のデータベースを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工種・種別などに基づき,前記評価対象工事に含まれる各種別・細別を含む「工事内訳」画面中「直接工事費」の表題で表されたデータを生じさせる手段と,2-e 前記CPU を使用して,前記「業務に付随するリスク」の画面のデータベースを参照して,「工事内訳」画面中「直接工事費」の表題で表されたデータに含まれる各種別・細別に基づき,当該各種別・細別に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該抽出したリスクの内容・原因および事故型を含む「リスク確認」画面中「リスク一覧」のデータを生じさせる手段と,2-f を含む労働安全衛生マネージメントプログラムをインストールしたパソコン。 3 本件方法発明に対応する被告方法の内容被告製品1又は被告製品2ないし4の組合せをインストールしたシステム(パソコン)による方法,すなわち被告方法の内容は,以下のとおりである。 3-a 労働安全衛生マネージメントプログラムをインストールしたパソコンによる労働安全衛生マネージメントの方法であって,3-b HDD が,複数の工種・種別など,および,前記複数の工種・種別などの各々にそれぞれ関連付けられた各種別・細別を含む「歩掛選択」画面のデータベースと,前記種別・細別に関連付けられたリスクの内容・原因および事故型を含む危険情報が規定されている「業務に付随するリスク」の画面のデータベースとを記憶し,3-c ディスプレイ上のインターフェース及びマウスが,少なくとも工種・種別などを含む評価対象工事の情報を入力し,3-d CPU が,前記HDD に格納されている前記「歩掛選択」画面のデータベースを参 ディスプレイ上のインターフェース及びマウスが,少なくとも工種・種別などを含む評価対象工事の情報を入力し,3-d CPU が,前記HDD に格納されている前記「歩掛選択」画面のデータベースを参照して,前記入力された評価対象工事の情報に含まれる工種・種別などに基づき,前記評価対象工事に含まれる各種別・細別を含む「工事内訳」画面中「直接工事費」の表題で表されたデータを生じ,3-e 前記CPU が,前記「業務に付随するリスク」の画面のデータベースを参照して,前記「工事内訳」画面中「直接工事費」の表題で表されたデータに含まれる各種別・細別に基づき,当該各種別・細別に関連するリスクの内容・原因および事故型を抽出し,該抽出したリスクの内容・原因および事故型を含む「リスク確認」画面中「リスク一覧」のデータを生じる,3-f 労働安全衛生マネージメントプログラムをインストールしたパソコンによる労働安全衛生マネージメントの方法。

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