平成24(ワ)1879等 残業代等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年4月9日 東京地方裁判所
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判決文本文15,644 文字)

平成25年4月9日判決言渡平成24年(ワ)第1879号残業代等請求事件(以下「A事件」という。)平成24年(ワ)第3653号残業代等請求事件(以下「B事件」という。) 主文 1 A事件被告は,原告に対し,184万9480円及びうち180万5400円に対する平成22年7月24日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 2 A事件被告は,原告に対し,180万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 3 B事件被告は,原告に対し,133万8542円及びうち129万3630円に対する平成23年8月11日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 4 B事件被告は,原告に対し,129万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 5 原告の,A事件被告及びB事件被告に対するその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の2とA事件被告に生じた費用の5分の4をA事件被告の負担とし,原告に生じた費用の5分の2とB事件被告に生じた費用の5分の4をB事件被告の負担とし,その余の費用を原告の負担とする。 7 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求(A事件) 1 A事件被告は,原告に対し,284万0238円及びうち277万0190円に対する平成22年7月24日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。  2 A事件被告は,原告に対し,277万0190円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 トの割合による金員を支払え。  2 A事件被告は,原告に対し,277万0190円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (B事件) 1 B事件被告は,原告に対し,179万1727円及びうち173万1754円に対する平成23年8月11日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 2 B事件被告は,原告に対し,173万1754円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 第2 当事者の主張等 1 事案の概要本件は,平成19年11月から平成22年7月10日までA事件被告で,同月11日から平成23年8月10日までB事件被告でそれぞれ稼働していた原告が,①平成21年8月11日から同年12月10日まで,②平成22年1月11日から平成23年2月10日まで,及び③同年4月25日から同年7月10日までの時間外労働等に対する割増賃金等が未払であるとして,その支払及びこれらに対する賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金(各請求の趣旨第1項),並びに付加金及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金(各請求の趣旨第2項)の各支払を求めている事案である。 なお,B事件訴状の別紙2の「損害金計算書」「平成23年2月11日から3月10日」「既払金」欄に「¥-2,000」と記載され,B事件の請求額に上記2000円が含まれている趣旨にかんがみれば,原告は,B事件被告に対し,時間外勤務等に対する割増賃金の未払のほか,平成23年3月25日支払分の給与から控除された2000円についても,基本給の一部未払として支払を求めているものと解される。 2 前提事実(末尾に証拠の ,時間外勤務等に対する割増賃金の未払のほか,平成23年3月25日支払分の給与から控除された2000円についても,基本給の一部未払として支払を求めているものと解される。 2 前提事実(末尾に証拠の摘示がないものは,当事者間に争いがないか,また は当裁判所に顕著な事実である。なお,特に掲記しない限り,証拠には枝番を含む。)(1) 当事者等ア被告らは,一般乗合旅客自動車運送事業,一般貸切旅客自動車運送事業等を業とする株式会社であり,A事件被告は,平成18年1月23日に設立され,B事件被告は,平成22年1月21日,A事件被告のa営業所が独立する形で設立された(以下,A事件被告のa営業所またはB事件被告の本店所在地たる営業所を指して,「a事業所」ということがある。)。 A事件被告は,平成24年1月17日,商号をb株式会社からWILLEREXPRESS西日本株式会社に変更し,B事件被告は,平成23年8月1日,商号をc株式会社からWILLEREXPRESS東日本株式会社に変更した。 イ原告は,平成19年11月,A事件被告に運行管理者及び運行課長として入社した者であり,a事業所で勤務していた。原告は,平成20年7月9日,A事件被告における統括運行管理者に選任され,平成22年7月11日,統括運行管理者兼運行課長としてB事件被告に転籍した。 原告は,平成23年3月,B事件被告における運行課長の職を解かれ,同年7月,d株式会社に助役(係長)として転籍するよう命ぜられたが,体調不良を理由にこれを拒み,同年8月10日,B事件被告を退職した。 (2) 原告の就労条件ア A事件被告・B事件被告共通勤務の内容営業所事務員勤務形態及び勤務時間宿直午前10時から翌午前10時まで(ただし, 事件被告を退職した。 (2) 原告の就労条件ア A事件被告・B事件被告共通勤務の内容営業所事務員勤務形態及び勤務時間宿直午前10時から翌午前10時まで(ただし,①平成21年11月11日ないし平成22年2月10日,及び②同年3月11日ないし同年5月10日の合計5か月間は, 午後10時から翌午前10時まで,③同年2月11日ないし同年3月10日の1か月間は,午後5時から翌午前10時まで。〔A事件甲5の5ないし10〕)日勤A(早番) 午前8時から午後5時まで日勤B(遅番) 午前10時から午後7時まで日勤C 午後1時から午後10時まで日勤D 午後3時から午後12時まで賃金支払条件毎月10日締め,当月25日支払(ただし,25日が休日の場合は直前の営業日〔平日〕)年間所定休日 105日所定労働時間 1日8時間月平均労働時間 173.3時間(8時間×260÷12)イ賃金額及び基礎時給(ア) A事件被告平成21年8月10日まで(平成21年8月支給分まで)基本給月額33万円同月11日から平成22年7月10日まで(平成21年9月支給分から平成22年7月支給分まで)基本給月額33万4000円基礎時給 1927円(イ) B事件被告平成22年7月11日から同年9月10日まで(平成22年8月支給分から同年9月支給分まで)基本給月額33万4000円基礎時給 1927円同月11日から平成23年7月10日まで(平成22年10月支給分から平成23年7月支給分まで) 基本給月額33万6000円基礎時給 1939円(なお,証拠〔B事件甲6の8ないし12〕によれば,平成23 平成22年10月支給分から平成23年7月支給分まで) 基本給月額33万6000円基礎時給 1939円(なお,証拠〔B事件甲6の8ないし12〕によれば,平成23年3月支給分以降の原告の賃金額は,基本給29万7000円,役職手当4万円〔合計33万7000円〕と認められるが,平成22年10月支給分以降,基本給を33万6000円,基礎時給を1939円とすることにつき当事者間に争いがないので,それによった。)。 (ウ) その他手当A事件被告,B事件被告ともに,宿直勤務に対応する手当を支給しており,給与支払明細書上は「その他手当」として金額が明示されていた(以下,上記手当を単に「宿直手当」ということがある。)。 宿直手当は,A事件被告,B事件被告ともに1日4000円とされていたが,原告は,例外的に1日6000円の支給を受けていた。 (3) 就業規則A事件被告の就業規則には,残業を行う場合には,予め上司の許可を得た上で申請用紙を提出して行う旨の規定(第89条3項)があり(A事件甲4),B事件被告の就業規則にも同様の規定がある。 なお,原告は,A事件被告,B事件被告在勤中に,上司に対して残業の届出書を提出したことはない。 (4) 労働審判の申立て原告は,A事件被告に対し,平成23年11月8日,平成21年8月11日から平成23年7月10日までの時間外労働に対する割増賃金等の支払を求めて,労働審判を申し立てた(当庁平成○年(労)○号)。 労働審判委員会は,平成24年1月13日,A事件被告に対し,原告に297万円を支払うよう命ずる審判を言い渡したが,同月25日,A事件被告が異議を申し立て,本件訴訟に移行した。 3 本件の争点 (1) 原告が労働基準法(以下「労基法」とい 万円を支払うよう命ずる審判を言い渡したが,同月25日,A事件被告が異議を申し立て,本件訴訟に移行した。 3 本件の争点 (1) 原告が労働基準法(以下「労基法」という。)41条2号にいう「管理監督者」に該当するか否か(争点1)(2) 原告の労働時間(争点2) 4 当事者の主張(1) 争点1(原告が労基法41条2号にいう「管理監督者」に該当するか否か)について(被告らの主張)被告らにおける原告の勤務実態にかんがみれば,原告は,労基法41条2号にいう「管理監督者」に該当するから,被告らは,原告に対し,割増賃金支払義務を負わない。 ア業務が通常の就業時間に拘束される時間管理になじまない性質のものであったこと原告は,職務上,勤務時間の制約がなく,出勤時刻もばらばらであった。 出勤しているにもかかわらずタイムカードの打刻がない日があるのは,そのためである。 イ名実ともに,経営者と一体となって会社の経営を左右する仕事に携わるものであったこと原告は,A事件被告,B事件被告のいずれにあっても,a事業所の事実上のトップであり,以下のとおり,①バス運転手を含むa事業所全従業員の募集,運行管理,労務管理,②a事業所全従業員の給与査定,賃金,昇格の確定,③a事業所の経営にかかわる事項の決定参画等,使用者としての業務全般を担い,対外的にも営業所長として認識されていた。 (ア) バス会社における運行管理者は,バスの運行,運転士の管理指導等,現場における事業主の業務を代行する立場にあるところ,原告は,統括運行管理者として他に数名いる運行管理者を統括していた。原告は,週1回の割合で開かれる運行管理者ミーティングにおいて,被告らの収支,  乗務員募集,乗務員の昇格,乗務員別賃金の作 理者として他に数名いる運行管理者を統括していた。原告は,週1回の割合で開かれる運行管理者ミーティングにおいて,被告らの収支,  乗務員募集,乗務員の昇格,乗務員別賃金の作成,運輸安全のマネジメント,新人研修等々,およそ被告らの経営にかかわる事項全般について予め議題を設定してこれを議論し,方針を決定していた。 (イ) A事件被告,B事件被告及びd株式会社(平成23年8月1日に商号をe株式会社に変更した。以下,これら3社を総称して「グループ3社」という。)は,具体的な経営方針を決定するため,年4回,合同でダイヤ会議と呼ばれる会議を開き,各社で所持すべきバスの台数,運転士等人員の人数,売上額の目標設定等,会社の基本方針にかかわる事項を協議し,決定しているところ,同会議には,グループ3社の代表取締役であるf(以下「f社長」という。)のほか,グループ3社の運輸部長,統括運行管理者及び営業所長が出席しており,被告らにおける統括運行管理者である原告もその一員であった。 (ウ) 原告は,旅行会社との間の業務委託に関する交渉業務一切を引き受け,監督官庁との交渉業務一切も統括していた。 (エ) 原告は,職責上の上司にあたる所長や部長を含む事務所交番表(勤務シフトの一覧表。以下,「事務所交番表」という。A事件甲5,B事件甲5)を作成し,自らの裁量で地方出張を組んでいた。 ウ地位にふさわしい手当支給等が保障されていること原告は,a事業所内では最高級の給与を支給される立場にあり,宿直手当(給与支払明細書上は「その他手当」)も,おしなべて1日4000円であるところ,管理・監督者である地位を利用し,自分だけ1日6000円の支給を受けていた。 原告は,管理監督者として優遇されていなかったと主張するが,そもそもバス業界における賃 べて1日4000円であるところ,管理・監督者である地位を利用し,自分だけ1日6000円の支給を受けていた。 原告は,管理監督者として優遇されていなかったと主張するが,そもそもバス業界における賃金は一般的にさほど高いものではない。また,被告らにおける管理監督者の俸給は,毎年,年度初めにf社長との個別交渉によってその額を決定することになっており,原告自身が,管理監督者とし て自分にふさわしいと思う給与額があればそれをf社長に要求し,交渉すべきである。原告が比較の対象とするg運輸部部長(以下「g部長」という。)は,現場の責任者である原告とは異なるし,自らの努力によって現在の俸給を勝ち取っているのであるから,単純にg部長との比較だけで原告の俸給が管理監督者として低すぎるなどとはいえない。 エその他管理監督者か否かの判断に当たっては,本人が負っている具体的任務を客観的に判断すべきであるが,本人がどのような認識を持って任務を担っているかという主観面でも判断されるべきである。 原告は,a事業所の従業員の大半を占める約70名のバス乗務員を,バスの運行管理という側面から全面的に管理していたものであり,およそバス乗務員に対するあらゆる労務管理,教育を任務とし,統括運行管理者として,複数の運行管理者,整備士,一般事務員を自分の部下たる補助者として支配していた。原告は,A事件被告,B事件被告のいずれにあっても,一度として残業代の請求をせず,上司(役員)に対し,残業の届け出をしたり,届出書を提出したりすることもなかったのであり,自らが管理監督者であることを十分認識していたことは明らかである。 (原告の主張)以下の実態にかんがみれば,原告は,管理監督者に当たらないというべきである。 ア原告は,他の従業員と同様にタ 自らが管理監督者であることを十分認識していたことは明らかである。 (原告の主張)以下の実態にかんがみれば,原告は,管理監督者に当たらないというべきである。 ア原告は,他の従業員と同様にタイムカードを打刻しており,被告らは,原告に対し,タイムカードの記載に基づいて宿直手当を支払っていた。 イ(ア) 原告が統括運行管理者及び運行課長であったこと,運行管理者として運転士,整備士の教育及び健康管理を行っていたことは事実であるが,統括運行管理者は,複数の運行管理者が存在する場合に,運行管理者の業務を統括する立場であって(旅客自動車運送事業運輸規則第47の9  第2項),経営を統括する立場ではない。 原告は,一般事務員に対する教育に携わったことはない。また,従業員の採用に関して実質的な権限はなく,原告の判断だけで従業員を解雇する権限もなかった。乗務員に対する評価は行っていたが,給料の査定をする権限はなく,乗務員以外の従業員について給与の査定や評価を行う権限もなかった。 運行管理者ミーティングにおいて,原告は,前週の業務内容を報告・確認し,当該週の業務内容を周知してミーティングのレジュメを作成していたに過ぎない。B事件被告における同ミーティングには,原告の上司であるg部長も出席していた。 (イ) 原告がダイヤ会議に出席していたことは事実であるが,すべての会議に出席したわけではなく,出席した場合も,運行管理者として現場の意見を述べるにとどまり,被告らの経営方針を決定することはなかった。 (ウ) 原告が旅行会社との交渉業務一切を引き受けたり,監督官庁との交渉業務一切を統括したりしていたという事実はない。原告は,監督官庁への書類提出を行っていたのみである。 (エ) 原告が事務所交番表を作成していたことは事実であ 業務一切を引き受けたり,監督官庁との交渉業務一切を統括したりしていたという事実はない。原告は,監督官庁への書類提出を行っていたのみである。 (エ) 原告が事務所交番表を作成していたことは事実であるが,事務職員の希望を聞いた上でシフトを組んだに過ぎない。内容についてはg部長が確認しており,原告に決定権限はなかった。 ウ原告の賃金は,管理監督者であるという年俸720万円(月額60万円)のg部長に比べて低額であり,むしろ他の社員の賃金と比べて特に高額というわけではない。 (2) 争点2(原告の労働時間)について(原告の主張)原告は,A事件被告,B事件被告のいずれにおいても,タイムカードによって勤怠を管理されていた。上記タイムカードの記載によれば,A事件被告  における原告の労働時間は別表1の,B事件被告における原告の労働時間は別表2のとおりである。 (被告らの主張)原告は,タイムカードを利用する必要もなく,残業の有無を問題にする立場でもないのに,勝手にタイムカードを利用していたもので,その記入は正確性を全く欠く。原告のタイムカードは,手書きの部分が多く,全く恣意的に作成されたものというほかはない。原告が主張するような残業の実態は存在しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告が労基法41条2号にいう「管理監督者」に該当するか否か)について(1) 管理監督者について労基法の41条2号は,いわゆる管理監督者について労基法上の労働時間・休憩・休日の規制を適用されない者と定めるが,これは,事業主に代わって労務管理を行う地位にあって,労働者の労働時間を決定し,労働時間に従った労働者の作業を監督する者(管理監督者)は,自らの労働時間を自らの裁量で律することができ,かつ管理監督者の地位に応じた 代わって労務管理を行う地位にあって,労働者の労働時間を決定し,労働時間に従った労働者の作業を監督する者(管理監督者)は,自らの労働時間を自らの裁量で律することができ,かつ管理監督者の地位に応じた高い待遇を受けることから,労働時間の規制を適用するのが不適当とされたことによる。 したがって,管理監督者に該当するといえるためには,実態として,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者であることが必要であり,具体的には,①事業主の経営に関する決定に参画し,労務管理に関する指揮監督権限を認められていること,②自己の出退勤を始めとする労働時間について裁量権を有していること,及び③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることを要するというべきである。 (2) 認定事実 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができ,これを左右するに足りる証拠はない。 ア a事業所における原告の職制上の地位(ア) 原告は,本件請求に係る期間中,一貫してa事業所における統括運行管理者兼運行課長の地位にあった。 (イ) A事件被告にg部長が入社するまでは,a事業所では,職制上,原告の上司として所長が置かれていたが,平成21年8月にg部長が運輸部次長(ただし,3か月後に運輸部部長に昇格)として入社した後は,g部長が原告の職制上の上司となった。 平成22年7月,g部長は運輸部部長として,原告は統括運行管理者兼運行課長として,それぞれB事件被告に転籍した。g部長は,原告が退職するまで一貫して原告の職制上の上司であった。 イ原告の勤務実態(ア) 運行管理者及び統括運行管理者運行管理者とは,事業者と一体となって旅客自動車運送事業法に規定する輸 長は,原告が退職するまで一貫して原告の職制上の上司であった。 イ原告の勤務実態(ア) 運行管理者及び統括運行管理者運行管理者とは,事業者と一体となって旅客自動車運送事業法に規定する輸送の安全の確保に関する業務を行う者であり,統括運行管理者とは,当該営業所において運行管理者が複数選任された場合に,それらの者の運行管理業務を統括するために置かなければならない者である。 運行管理者は,車両・車庫の配置,運転者への点呼の実施,運転者毎の乗務記録の作成及び乗務記録の保存,運行記録計の管理及び記録の保存,運行指示書による指示等の運行管理のほか,適切な要員の管理,乗務員の勤務態勢の確立,服務規律の作成等の労務管理を行うものとされている。(A事件甲12)(イ) 原告の業務a 原告は,A事件被告に在勤していた平成20年7月9日,a事業所における統括運行管理者として選任され(A事件乙1),以後,継続 してその地位にあって,乗務員の交番表の作成(他の運行管理者が作成した場合にはその確認),運行指示書の取りまとめ,運行管理者ミーティングの司会進行,点呼業務,乗務記録簿や安全運転日報等の保管等を行っていた(原告本人,証人h)。 なお,原告が運行管理者の人事考課を行っていたか否かは定かではない(証人h)。 b 運行管理者ミーティングには概ねg部長が出席しており,原告は,ミーティング前にg部長から伝えられた連絡事項等を話し,原告がいない場合には,g部長が司会を行った。 cA事件被告,B事件被告ともに,原告を含む運行管理者について,早朝から深夜までの運行に対処できるよう,事務所交番表において宿直を含む業務シフトを組んでおり,原告ら運行管理者は,原則として事務所交番表に沿って出勤していた。事務所交番表は,原告 管理者について,早朝から深夜までの運行に対処できるよう,事務所交番表において宿直を含む業務シフトを組んでおり,原告ら運行管理者は,原則として事務所交番表に沿って出勤していた。事務所交番表は,原告が作成していた時期があったが,作成後は,g部長が決裁を行っていた。 原告は,平成22年11月10日までの間,研修に出ていた同年7月11日ないし同年8月10日の1か月間を除き,宿直勤務に入っていたが,代々の所長及びg部長は,運行管理者の資格を保有しているものの,宿直勤務に従事することはなかった。宿直勤務中,原告は,出庫及び帰庫の点呼業務や出庫の際に渡す運行指示書の整理等を行っており,宿直の途中に自己の判断で帰宅することはできなかった。 原告は,乗務員が不足した際には,運転業務に入ることもあった。 (A事件甲5,B事件甲5,原告本人)。 d 被告らでは,乗務員の評価は,年に1回,少なくとも4人の運行管理者によって行うこととされており,原告も運行管理者の1人として関与していた(原告本人,証人h)。 e 原告は,乗務員の採用試験において,g部長と2人で面接官を務め たほか,実技試験の試験官を行っていた。f社長が乗務員の採否を決定する際,原告の意見は尊重されることが多かったが,原告の意見が通らずに候補者が不採用となったことが少なくとも1回はあった(原告本人,証人h,同g)。 f 原告は,グループ会社が集まって四半期毎の運行を決定する,通称ダイヤ会議に出席し,a事業所として何台のバスを動かすことができるか等について意見を述べていた(原告本人)。 また,原告は,グループ会社の定例会議に出席したこともあった(A事件乙2,原告本人)。 ウタイムカードによる勤怠管理と給与計算a事業所では,原告以外の営業所事務員は平成 ていた(原告本人)。 また,原告は,グループ会社の定例会議に出席したこともあった(A事件乙2,原告本人)。 ウタイムカードによる勤怠管理と給与計算a事業所では,原告以外の営業所事務員は平成20年12月から,原告は平成21年4月11日からタイムカードを使用していた。被告らにおける給与計算等の経理事務は,i株式会社(以下「i」という。)において行われているところ,a事業所の事務職員の給与について,iでは,a事業所から送付されたタイムカードに基づいて勤務表を作成して給与計算を行っており,被告らは,iの計算結果に基づいて給与を支払っていた(乙17,18)。 なお,本件請求の基準として提出されている原告の勤務表(A事件甲8,B事件甲8)は,iの経理担当者が作成したものである(乙18)。 エ給与額の比較B事件被告における平成23年度の賃金台帳(B事件乙4の1ないし6)によれば,6人の事務職員のうち基本給が最も高いのは原告であるが,残る5人のうち2人は,固定額の時間外手当及び通勤手当を除いた支給額が28万円から32万円であり(B事件乙4の2,3),他の1人は,基本給は15万円である一方で20万円前後の資格手当を支給されていて(B事件乙4の6),いずれも総支給額は原告と同程度かこれを上回る。 残る2人も,固定額の時間外手当及び通勤手当を除いた支給額が25万円弱から27万円弱であって(B事件乙4の4,5),原告との支給額の差は最大で月10万円程度である。 他方,g部長の給与額は,年俸で720万円,一月当たり60万円であり,原告の給与額とは月20万円以上の差がある(証人g)。 (3) 判断前提事実及び上記(2)の認定事実によれば,原告は,a事業所内に限っても,従業員の採否はおろか,運行管理者に対する人 円であり,原告の給与額とは月20万円以上の差がある(証人g)。 (3) 判断前提事実及び上記(2)の認定事実によれば,原告は,a事業所内に限っても,従業員の採否はおろか,運行管理者に対する人事権限も有していたとは認められないのであって,統括運行管理者として他の運行管理者の業務を束ねてはいたものの,通常の運行管理者以上の人事権限は有していなかったというほかない。 また,原告は,原則として,事前に作成された事務所交番表(A事件甲5,B事件甲5)に基づいて勤務することを求められ,(時に,指定されたシフトと異なる出勤や欠勤,最大で2時間程度の遅刻や早出が散見されるものの)概ね事務所交番表通りに勤務していること(A事件乙9),被告らも,a事業所で保管されている原告のタイムカード,又はiの経理担当者が作成した勤務表(A事件甲8,B事件甲8)によって原告の勤務時間を把握していたこと等からすれば,原告は,被告らによって労働時間を管理されていたというべきであり,自己の労働時間について裁量権を有していたとは認め難い。 さらに,原告と他の事務職員との給与額の差はわずかであって,管理監督者にふさわしい賃金上の処遇を与えられているとは到底いえない。 以上に加え,原告がダイヤ会議においてどの程度の権限を有していたのか判然としないこと,旅行会社との間の業務委託に関する交渉業務や,監督官庁との交渉業務一切を引き受けていたとも認めることができないこと,g部長と異なり,宿直業務や乗務など,一般の運行管理者と同様の業務にも従事 していたこと等の事実も合わせ考えれば,原告を労基法41条2号にいう「管理監督者」に該当するということはできない。この点に関する被告の主張は採用できない。 2 争点2(原告の労働時間)について(1) 割 と等の事実も合わせ考えれば,原告を労基法41条2号にいう「管理監督者」に該当するということはできない。この点に関する被告の主張は採用できない。 2 争点2(原告の労働時間)について(1) 割増賃金の規定及び法定休日A事件被告では,時間外等労働に対する割増賃金について,就業規則及び賃金規程上,労基法と同旨の規定を設けており(A事件甲4,7),これは,B事件被告においても同様であったものと認めることができる(弁論の全趣旨)。 そして,A事件被告では,営業所事務員の法定休日を1週間につき1日とし,法定外休日として,上記の他に1週間につき1日その他会社が指定する日と定めており(A事件甲4〔第76条2号〕),B事件被告においても同様に規定されていたものと認めることができる(弁論の全趣旨)。本件において,使用者である被告らは,法定休日を明示的に指定していないが,原告が,事前に作成された事務所交番表にしたがって休日を取得していることにかんがみれば,被告らは,事務所交番表において暦週(日曜日から土曜日まで)に1回休日がある場合には当該日を,2回以上休日がある場合には最後の休日を,それぞれ法定休日として黙示的に指定していたものと認めることが相当である。 なお,暦週に1回も休日がない期間(平成22年8月15日から同月21日まで,及び平成23年6月5日から同月11日まで。なお,有給休暇は,休日の他に毎年一定日数の休暇を有給で保障するという制度であるから,これを法定休日とみることはできない。)については,暦週の最終日である土曜日を法定休日とみることが相当である。 (2) 出退勤時刻ア労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間をいい, この労働時間に該当するか否かは,使用者の指揮命令下におか が相当である。 (2) 出退勤時刻ア労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間をいい, この労働時間に該当するか否かは,使用者の指揮命令下におかれているか否かにより客観的に定まるところ,使用者には,労働者の労働時間を適正に把握する義務が課されていると解されることからすれば,使用者がタイムカードによって労働時間を記録,管理していた場合には,特段の事情のない限り,タイムカードに記録された時刻(以下「タイムカード記載時刻」という。)を基準に出勤の有無及び実労働時間を推定することが相当である。 イこの点,被告らは,原告の労働時間はタイムカードによって管理されていなかった旨主張するが,前記1(2)イ(イ)c及び同ウに記載のとおり,原告の勤務時間は,事務所交番表(A事件甲5,B事件甲5)によって予め指定されていた上,本件請求に係る期間,被告らは,原告のタイムカードの記載内容をタイムカードにより定期的に確認し,それに基づいて手当(A事件被告は宿直手当〔その他手当〕,B事件被告は宿直手当〔その他手当〕及び深夜勤務手当)を支払っていたことに照らせば,原告の労働時間は,タイムカードによって管理されていたというべきである。 ウそして,原告の労働時間がタイムカードによって管理されていた以上,特段の事情のない限り,タイムカード記載時刻をもって実労働時間と事実上推定することが相当であるところ,被告らは,原告のタイムカード(A事件乙9)には手書きによる記載が散見されるとして,その信用性を争う。 確かに,原告が手書きした記載中には,単なる打ち損じを書き直したとするには疑問がある部分も存在する(例えば,平成22年2月8日の「入」の「10:50」を「10:00」に訂正している箇所など。〔A事件乙9〕)。 書きした記載中には,単なる打ち損じを書き直したとするには疑問がある部分も存在する(例えば,平成22年2月8日の「入」の「10:50」を「10:00」に訂正している箇所など。〔A事件乙9〕)。 しかし,原告のタイムカードは,打刻機のないαで勤務していた時期を除き,概ね打刻機によって時刻が記載されているといえること,手書き部分を含め,事務所交番表(A事件甲5,B事件甲5)と原告のタイムカー  ド記載時刻は概ね矛盾しないこと,手書き部分の多くは打刻忘れや出張により打刻できなかったか,日付をまたいだために打刻欄がずれたのを修正したことによるものであると認められること等からすれば,原告のタイムカードは,手書き部分も含め,実態に沿ったものと認めることができる。 他方,本件において,タイムカード記載時刻による事実上の推定を覆すに足りる特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 エ本件において原告が請求の基礎としている勤務表(A事件甲8,B事件甲8)は,前記のとおり,iの経理担当者が,a事業所から送付されたタイムカードに基づいて作成したものであり,被告らは,これによって原告の勤務時間を把握していたというべきであるから,原告の出退勤時刻は,原告主張のとおりと認めることが相当である。 (3) 休憩時間本件において,原告は,原則として日中に1時間の休憩があり,夜勤の日は,それ以外に3時間の休憩があったものとして主張しているところ,被告らは,単にこれを否認するのみであり,本件全記録を精査しても,原告の休憩時間を直接に示す客観的な証拠はない。したがって,原告が自認するとおり,宿直勤務の日は日中(概ね正午を挟む時間帯)に1時間(ただし,勤務時間が翌日の正午を超えて継続している場合は,さらに1時間),深夜労働時間に3時間の休憩 拠はない。したがって,原告が自認するとおり,宿直勤務の日は日中(概ね正午を挟む時間帯)に1時間(ただし,勤務時間が翌日の正午を超えて継続している場合は,さらに1時間),深夜労働時間に3時間の休憩があったものとし,日勤の日は,日中に1時間の休憩がそれぞれあったものとして,実労働時間を認めることが相当である。 (4) 小括ア以上によれば,原告の平成21年8月11日から平成23年7月10日までの実労働時間は,A事件被告につき別表3-1,B事件被告につき別表4-1のとおりとなる。 イそして,証拠(A事件甲6,B事件甲6)によれば,被告らは,原告の宿直勤務に応じて「その他手当」または「深夜勤務手当」を支払っていた ことが認められるところ,これらは,時間外勤務に対応する割増賃金の支払とみることが相当であるから,既払金として充当することとする。 ウなお,原告は,日曜日の労働について休日労働の割増率(1.35)を乗じて計算しているが(別表1及び2参照),本件における法定休日は,上記(1)に記載のとおりであり,日曜日に固定されているわけではない。 また,本件において,日曜日の労働について休日労働の割増率を支払う旨の就業規則等の規定,又は原告と被告らとの間の合意の存在を認めることもできない。この点に関する原告の主張(計算)は採用できない。 エまた,原告は,午後10時以降の勤務時間を全て深夜労働時間として集計しているが,労基法上の深夜労働は午後10時から午前5時までであるから(労基法37条4項),この点に関する原告の主張(計算)も採用できない。 オなお,法定休日の勤務が延長されて翌日に及んだ場合(具体的には,平成22年8月21日から同月22日にかけての宿直勤務がこれに該当する。),休日労働となるのは,法定休 (計算)も採用できない。 オなお,法定休日の勤務が延長されて翌日に及んだ場合(具体的には,平成22年8月21日から同月22日にかけての宿直勤務がこれに該当する。),休日労働となるのは,法定休日の午前0時から午後12時までの時間帯に労働した部分であるから,法定休日の前日の勤務が延長されて法定休日に及んだ場合であっても,法定休日の日の午前0時から午後12時までの時間帯に労働した部分が休日労働時間となり,それ以外の時間帯に労働した部分は,通常の時間外労働の規制に服することになる(平成6年5月31日基発第331号)。 そして,労働時間が2日にわたる勤務については,勤務の開始時間が属する日の勤務として取り扱われるから(同),翌日(平成22年8月22日)に及んだ部分は,1日及び1週間の労働時間の算定にあたっては,勤務の開始時間が属する日(同月21日)の労働として取り扱われることになる。翌日(同月22日)に及んだ労働時間は13時間30分であるから(労働時間23時間-同月21日の労働時間9時間30分〔5時間の休憩  のうち,1時間を同日の日中に取得したものとして計算〕=13時間30分),8時間を超える部分である5時間30分が通常の時間外労働として取り扱われることになる(別表4-1参照)。 カ以上によれば,被告らが原告に対して支払うべき割増賃金元金は,別表3-2及び4-2のとおり,A事件被告が合計180万5400円,B事件被告が合計129万1630円(別表4-2「認容額」「合計」欄記載の129万3630円から,後記3記載の基本給の一部未払分2000円を除いた額)となる。 3 平成23年3月25日支払分の給与からの控除B事件被告は,平成23年3月分給与において「その他手当」として2000円を控除しているところ の基本給の一部未払分2000円を除いた額)となる。 3 平成23年3月25日支払分の給与からの控除B事件被告は,平成23年3月分給与において「その他手当」として2000円を控除しているところ,これは,被告らが主張する宿直手当(1回あたり4000円)と,同年2月分給与において原告に支給された宿直手当(6000円)との差額を調整的に相殺したものと推察される。しかし,前記第2の2(2)イ(ウ)に記載のとおり,原告に対する宿直手当は,1回当たり6000円と認めることが相当であるから,上記控除の分だけ未払賃金が残されていることとなる。 4 付加金本件訴訟に表れた一切の事情を考慮すれば,A事件被告に対し180万円,B事件被告に対し129万円の付加金の支払いを命ずることが相当である。 第4 結論以上のとおり,原告の請求は主文の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求については理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第11部  裁判官篠原絵理

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