平成16(ワ)7007 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年3月16日 東京地方裁判所
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判決文本文42,784 文字)

平成19年3月16日判決言渡平成16年(ワ)第7007号損害賠償請求事件判決主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は、原告ら各自に対し、それぞれ金6797万8219円及びこれに対する平成14年12月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は、被告が設置・運営するA病院で分娩をした患者が、分娩後に大量出血とともに呼吸停止及び心停止を起こし、多臓器不全により死亡したことにつき、担当医師らには、帝王切開を行うべきであったのに経膣分娩を選択した過失、急変時に行うべき措置を怠った過失等があるとして、患者の遺族である原告らが、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償の請求をした事案である。 争点 (1)大量出血の原因(2)帝王切開を実施すべきであったか否か。 (3)医師の立会いの遅れによる治療及び救命行為の遅れの有無(4)輸血の実施時期が適切であったか否か。 (5)ヘパリンの投与時期が適切であったか否か。 (6)経膣分娩のリスクについての説明義務違反の有無 (7)損害額(判断の必要がなかった)。 争点についての当事者の主張争点についての当事者の主張は、別紙当事者の主張のとおりである。 第3当裁判所の判断 事実関係証拠によれば、次の事実が認められる(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す〈鑑定の結果については、鑑定人調書及び同添付の意見の要旨についての通しページ数を示す。時。〉刻のみの記載は、平成14年10月8日を示すものとする。以下同じ。 。)(1)当事者ア亡B(以下「B」という)は、昭和43年2月6日生まれの女性であ についての通しページ数を示す。時。〉刻のみの記載は、平成14年10月8日を示すものとする。以下同じ。 。)(1)当事者ア亡B(以下「B」という)は、昭和43年2月6日生まれの女性であ。 り、原告C(以下「原告C」という)が経営する歯科医院で歯科衛生士。 として勤務していた(甲B1、甲B4〔1。 〕)イ原告Cは、本件当時、Bの夫であった者であり、原告D(以下「原告D」という)は、Bと原告Cの長男である(争いのない事実、甲B4。 〔1、甲B2。 〕)ウ被告は、東京都渋谷区所在のA病院(以下「被告病院」という)を設。 置・運営している(争いのない事実。 )(2)被告病院入院までの経緯アBは、4回の配偶者間人工授精(以下「AIH」という)等の不妊治。 療を経た後、平成14年2月に妊娠と診断され、その後は、原告Cの出身校であるE大学病院産婦人科に通院していたが、その後、Fクリニックに通院した。B及び原告Cは、原告Cの立会いの下での分娩を希望していたことから、それが可能な被告病院での出産を希望し、当時通院していたFクリニックの医師の紹介により、同年7月31日に、被告病院を受診した(甲B4〔1、甲B16〔1、乙A1〔1、乙B6〔1、2、G〕〕〕〕 〔2。 〕)イBは、検査等のために被告病院に通院しH医師(以下「H医師」という)の診察を受けていたところ、妊娠34週6日である同年9月25日。 に、重症妊娠中毒症と診断され、同日に、被告病院に入院した(乙A1〕〕〕〕)。 〔5、乙A2〔1、3、9、12、619、甲B4〔1、G〔14(3)分娩までの経緯ア同月26日から、降圧剤であるトランデート及びアダラートLの投与等が開始され、同月27日午前10時の血圧は132/82であったが、同日午後11時20 甲B4〔1、G〔14(3)分娩までの経緯ア同月26日から、降圧剤であるトランデート及びアダラートLの投与等が開始され、同月27日午前10時の血圧は132/82であったが、同日午後11時20分には200/100となり、同月28日午前零時20分の血圧は200/100、同月29日の血圧は200/106である等、血圧が安定しない状態が継続していた(乙A2〔12、619ないし622、672-2。 〕)同月30日、血圧の変動が大きく安定しなかったことから、Bは、妊産婦のためのICUであるMFICUに移動した。同年10月1日頃からは、同月2日から4日にかけて、収縮期血圧が140を超えることがあったものの、正常値の範囲内にとどまることも多くなり、全体としては、血圧が比較的安定している状態であった(乙A1〔623ないし628、672-2、乙B6〔2、G〔2、3、19、20。 〕〕〕)イ同月6日、妊娠中毒症の増悪所見が見られたことから、診察に当たったG医師(以下「G医師」という)は、母体及び胎児の安全のために妊娠。 を終了させる時期であると判断し、翌日に分娩の誘発を行うこととした(乙A2〔13。 〕)G医師は、B及び原告Cに対し、その旨を説明するとともに、帝王切開になる可能性を説明し、B及び原告Cは、帝王切開を行うことについての同意書に署名、押印をした(乙A2〔13、124。 〕)ウ同月7日、G医師は、分娩誘発のため、頚管を拡張する目的で、ラミナ リア桿を合計17本挿入した(乙A2〔3、9、13、628、G〕〔3。 〕)(4)分娩当日の経過ア妊娠36週5日である同月8日の午前9時20分に、ラミナリア桿を抜去したところ、内診所見では、子宮口が5㎝であり、G医師は、頚管の成熟が認められると判断した。そこで、同医師は )分娩当日の経過ア妊娠36週5日である同月8日の午前9時20分に、ラミナリア桿を抜去したところ、内診所見では、子宮口が5㎝であり、G医師は、頚管の成熟が認められると判断した。そこで、同医師は、Bに陣痛促進剤を使用することについて確認し了承を得て、陣痛促進剤であるアトニンの点滴を開始し、午後零時30分に陣痛が発来した。陣痛促進開始時の血圧は、127/94であった(乙A2〔3、9、13、680、乙B6〔2、3。 〕〕)イ午後4時までの間の血圧は、132~158/94~100の範囲で変動しており、2名の助産師が経過を観察していた(乙A2〔9、13、680、乙B6〔3、G〔23。 〕〕〕)アトニンが入った5%ブドウ糖液の点滴は、子宮収縮発作の強さを確認しながら、徐々に速度が上げられ、午前10時52分に30ml/hで開始された後、午前11時25分に45ml/h、午後零時10分に60ml/h、午後2時5分に75ml/h、午後2時40分に90ml/h、午後3時25分に105ml/h、午後4時5分に120ml/h、午後4時50分に135ml/hとされた(乙A2〔677ないし680。 〕)ウ午後4時に胎児心拍数の変動があったため、その当時に分娩室を担当していたI医師が胎児心拍数を確認し、内診をした。午後4時20分のBの血圧は、160/120であり、午後4時45分の血圧は172/107と上昇したため、G医師は、降圧剤であるアダラートL10mgの内服投与を指示した。なお、分娩経過記録の午後4時45分の欄には「血性分泌+、羊水「高位破水様」との記載がある(乙A2〔9、13、677ないし」、679、乙B6〔3、G〔25。 〕〕〕)エ午後4時52分、原告Cは、出産の立会いのために、分娩室に入室した。 出産の経過を観察し 様」との記載がある(乙A2〔9、13、677ないし」、679、乙B6〔3、G〔25。 〕〕〕)エ午後4時52分、原告Cは、出産の立会いのために、分娩室に入室した。 出産の経過を観察していた助産師は、原告Cに対し「出産は順調に進ん、でいますがまだ産道には出てきていません」と説明した(甲B4〔3、。 〕乙A2〔677ないし679、C〔6。 〕〕)オ午後5時頃、G医師がBを診察したところ、内診により子宮口が全開大であり、卵膜を触知し、児頭は下降傾向にあったものの、いまだ児は下降していなかった。その際の血圧は、155/108であった。午後5時20分、胎児心拍数は60台となり、徐脈が認められたことから、Bへの酸素投与が開始された(乙A2〔9、13、630、679、乙B6〕〔3、C〔7。 〕〕)(5)Bの急変ア午後5時21分、児心音が低下したことから、経過観察に当たっていた助産師は、G医師に対し、分娩の立会いを要請した(乙A2〔9、13、630、乙B6〔3、G〔36。 〕〕〕)イ午後5時22分、原告Cは、Bの顔が陣痛に伴い赤くなり、その直後に大きな全身の痙攣を起こして嘔吐症状を呈し、次に同人の顔が青くなったのを確認した。原告Cは、Bに異変が生じたことを助産師に知らせたところ、助産師は強直性痙攣と意識消失を確認し、口腔内にバイトブロックを挿入した(甲B4〔3、4、乙A2〔9、13、630、632、乙B〕〕6〔3、C〔8。 〕〕)ウ午後5時23分、G医師が到着し、鎮静・鎮痙薬であるホリゾンを投与した。その後、J医師が到着した。G医師が内診を行ったところ、子宮口が全開しており、卵膜はなく、児頭が確認された。同医師は、吸引分娩を行い、午後5時24分、Bは、2320gの男児を出産した。このころか 。その後、J医師が到着した。G医師が内診を行ったところ、子宮口が全開しており、卵膜はなく、児頭が確認された。同医師は、吸引分娩を行い、午後5時24分、Bは、2320gの男児を出産した。このころから出血が開始した(甲B4〔4、乙A2〔9、13、630、632、〕〕乙B6〔4、C〔9、争いのない事実。 〕〕)上記出血は、後記(7)のとおり、ICUへの転室後も継続し、その量も 相当量に達したが、具体的な出血量については、当事者間に争いがあるので、後記6において認定判断する。 (6)急変後の経過ア午後5時27分、強直性痙攣が持続していたため、同医師は、ホリゾン10mg及び鎮痙剤であるマグネゾール0.2gを静脈投与し、マグネゾールの持続点滴を開始した(乙A2〔9、13、630、632。 〕)イ午後5時30分、H医師が到着し、午後5時34分にはK医師が到着した。呼名に対する反応がなく、呼吸抑制が認められた。マスクで酸素を投与し、気道の確保を行ったが、午後5時35分、酸素飽和度が80%台に低下し、呼吸停止が確認されたため、午後5時36分、アンビューバッグによる補助呼吸が開始された(乙A2〔9、13、630、632、G〕〔30。 〕)午後5時38分、L医師が到着した。心拍動が次第に徐脈になり停止したため、心臓マッサージが開始された(乙A2〔10、13、630、6 。 〕)午後5時40分、酸素飽和度が40ないし60%台に低下した。同時刻に麻酔科医師が到着し、午後5時43分、気管挿管を施行した(乙A2〔10、13、630、632、G〔4、31。 〕〕)ウ午後5時44分、強心薬であるボスミン1Aを気管内に注入し、その後、同45分に2A、同47分に1Aを注入したが、心拍動徐脈は継続し、心臓マッサージ及び補助呼吸は継続 、G〔4、31。 〕〕)ウ午後5時44分、強心薬であるボスミン1Aを気管内に注入し、その後、同45分に2A、同47分に1Aを注入したが、心拍動徐脈は継続し、心臓マッサージ及び補助呼吸は継続された。午後5時49分に動脈血ガスを測定したところ、pH7.110、BE-19.2であった。午後5時52分にメイロン20mlが静脈内投与され、午後5時55分には副腎皮質ステロイド製剤であるソルメドロール500mgが静脈内投与された(乙A2〔10、13、630、632。 〕)午後5時53分頃、被告病院血液部に対し、輸血がオーダーされた(争 いのない事実。 )エ午後5時57分、H医師及び麻酔科医師の判断により、ヘパリン500〕、0単位が静脈内投与された(乙A2〔10、630、632、G〔40 。 〕)オ午後5時58分、胎盤が用手剥離により娩出された。子宮内等からの出血は、児娩出後より継続していたが、胎盤娩出後も持続した(乙A2〔10、630、632。 〕)カ午後5時59分、血漿代用剤であるサリンヘス500mlの点滴静脈内投与が開始され、ボスミン1Aが静脈内投与された。午後6時6分には、サリンヘス500mlの点滴静脈内投与が開始され、ボスミン2Aが静脈内投与された(乙A2〔10、13、630、632。 〕)キ午後6時8分、心拍動が上昇し、心臓マッサージが停止された。強心薬であるイノバン2A及びドブトレックス2Aの持続点滴投与が開始され、午後6時13分、輸血が開始された(乙A2〔10、13、630、63 。 〕)ク午後6時28分、分娩台からストレッチャーに移動し、循環器内科医師により、心エコーが行われた。その結果、右心系には異常がなく、左室機能にも異常がないことが確認された(乙A2〔10、631。 〕)ケ午 時28分、分娩台からストレッチャーに移動し、循環器内科医師により、心エコーが行われた。その結果、右心系には異常がなく、左室機能にも異常がないことが確認された(乙A2〔10、631。 〕)ケ午後6時37分、Bは、分娩室からICUに転室した(乙A2〔10、14、631、635。 〕)(7)死亡に至るまでの経緯アICU入室後は、抗痙攣薬であるラボナールの持続点滴が開始され、呼吸補助管理、低体温療法、播種性血管内凝固症候群(以下「DIC」という)に対する治療、脳圧下降療法等の治療が継続された。ICU入室後。 も、会陰部及び膣からの出血が継続した(乙A2〔3、10、14、68 。 〕) ICU入室後の同日午後及び同月9日午前に採取した血清を検査したところ、亜鉛コプロポルフィリン(Zn‐CP1)及びムチン(STN)はいずれも正常値であった(乙A2〔683、684、乙A3、乙A4、〕G〔5、6。 〕)イ同年10月11日、脳CT検査の結果、脳浮腫が著明であることが確認された。また、DICの状態も持続していた(乙A2〔3、16。 〕)ウ同月23日の脳CTの結果、多発性出血及びくも膜下出血が見られた。 また、同日には、対光反射が消失した。同月24日頃には、自発呼吸がほぼ見られなくなり、同年11月下旬頃からは、血圧が低下し、尿量の減少が見られた(乙A2〔3、23、24、41ないし48、700。 〕)エ同年12月10日、Bは、死亡した。死亡診断書には、死因として、羊水塞栓症、多臓器不全と記載された(甲A1、乙A2〔3、48。 〕)(8)Bの死亡原因アBの死亡原因については、死体解剖が行われていないこともあり、現時点においては確定し難い状況にあり、この点は三鑑定人ともに認めるところである(M、N、O〔42。 〕) (8)Bの死亡原因アBの死亡原因については、死体解剖が行われていないこともあり、現時点においては確定し難い状況にあり、この点は三鑑定人ともに認めるところである(M、N、O〔42。 〕)もっとも、上記(5)及び(6)のとおりBに生じた意識消失と大量の出血に始まる一連の病態については、M鑑定人は、大量出血の原因が産道損傷のみであれば、その後にされた輸血により十分に回復するはずであり、現に生じた症状の経過の早さ及び強さが通常の経過では説明がつかないことから、血管の中での化学反応が生じたものと考えられ、羊水塞栓症の発症機序をアレルギー反応と考える近時の学説を前提とすると、Bの急変の原因については、羊水塞栓症と考えられる旨の意見を述べている(M〔11、12、58。また、N鑑定人は、羊水塞栓症の発症には羊膜の破綻が必〕)要であるところ、看護記録上午後4時45分に高位破水を疑わせる記載があることから、ここで羊膜の破綻があったと考えると、羊水塞栓症の発症 機序を胎児成分の塞栓と考えたとしても、Bの急変の原因につき、羊水塞栓症であると考えられるとした上、Bは、まず妊娠高血圧症候群から子癇を起こしたと考えられるが、子癇のみであれば、血圧が低下することはなく、現に血圧が低下したことは、子癇に羊水塞栓症を合併したものと考えられる旨の意見を述べている(N〔13ないし15。さらに、O鑑定人〕)も、本件の経過からして、子癇発作と同時かほぼ直後に羊水塞栓症を起こしたと考えられる旨の意見を述べている(O〔17、18。P医科大学〕)Q医師も、意見書において、Bの急変の原因は羊水塞栓症であるとして、結論において同旨の意見を述べている(乙B7。 )また、本件の経過は、後記2(5)イの臨床的羊水塞栓症の診断基準に合致するものである。 なお、上記( おいて、Bの急変の原因は羊水塞栓症であるとして、結論において同旨の意見を述べている(乙B7。 )また、本件の経過は、後記2(5)イの臨床的羊水塞栓症の診断基準に合致するものである。 なお、上記(7)アのとおり、血清検査の結果、Zn‐CP1及びSTNの値に異常は認められていないが、当該血清の採取が既に大量の輸血がされた後のものであることからすると、そのことによって羊水塞栓症の発症を否定することはできない。 以上の点からすれば、Bは羊水塞栓症を発症していた蓋然性が高く、これに後記2(4)及び(5)の医学的知見を総合すると、Bの死因は羊水塞栓症に引き続く、大量出血とDICによる蓋然性が高いと考えられる。 イなお、被告は、ヘパリンが羊水塞栓症の治療として有効であることを前提に、ヘパリンの投与後まもなくBの病態が改善したことはヘパリンの効果によるものであるから、本件の病態が羊水塞栓症であったと主張し、G医師も同旨の陳述をする(乙B6〔6。 〕)上記(6)エ及びキのとおり、本件では午後5時57分にヘパリンが投与され、その約10分後である午後6時8分には心拍動が確認されるに至っており、時間的経過からして、ヘパリンがBの病態の改善に効果を有したかにも見える。 しかしながら、まず、本件経過においてヘパリン投与後に心拍動が再開した点については、N鑑定人はヘパリン投与から症状の回復までの時間が短すぎるため、症状の回復がヘパリンの投与によるものであるとは考え難いとの意見を述べている(N〔1、2、72。また、M鑑定人は、心拍〕)動の再開以前に投与された抗ショック療法として用いられるステロイド剤であるソルメドロールが、症状の改善に大きく寄与した可能性があり、さらに、午後5時58分に胎盤を剥離したことによって子宮が収縮し、母体内の循環血液量が増加 抗ショック療法として用いられるステロイド剤であるソルメドロールが、症状の改善に大きく寄与した可能性があり、さらに、午後5時58分に胎盤を剥離したことによって子宮が収縮し、母体内の循環血液量が増加することによって、症状が改善した可能性がある旨指摘し、ヘパリン投与後に見られた症状の改善がヘパリンの投与のみによるものとは考え難い旨の意見を述べ、N鑑定人及びO鑑定人も同旨の意見を述べている(M〔3ないし6、N〔6、O〔10。 〕〕〕)これらの意見からすれば、Bの病態の改善は必ずしもヘパリンの効果のみによるものとは認め難く、ヘパリン投与後のBの症状の改善は、Bの急変の原因が羊水塞栓症であることの根拠とはならないというべきである。 医学的知見(1)妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)ア妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)妊娠中毒症とは、妊娠に高血圧、蛋白尿及び浮腫の1つ若しくは2つ以上の症状がみられ、かつこれらの症状が単なる妊娠偶発合併症によるものではないものをいう(甲B3〔156、157。 〕)なお、現在では、妊娠中毒症という概念を用いず、高血圧症を重要な兆候ととらえ、妊娠高血圧症候群と呼称している(N〔16、O〔42、〕〕弁論の全趣旨。 )イ重症度高血圧、蛋白尿及び浮腫のうち、1つ以上の症状が重症の範囲内にあるものが重症妊娠中毒症とされる。高血圧については、収縮期血圧160mm Hg以上又は拡張期血圧110mmHg以上の場合が重症とされる(甲B3〔157、甲B6〔4。 〕〕)ウ妊娠の中断の適応あらゆる治療を行ったにも関わらず、母体の諸臓器に不可逆的な変化が起こると判断される場合、あるいは子宮内環境の悪化によって妊娠を継続することが胎児にとって不利な場合、妊娠の中断(ターミネーション)の適応となる。 1990年 わらず、母体の諸臓器に不可逆的な変化が起こると判断される場合、あるいは子宮内環境の悪化によって妊娠を継続することが胎児にとって不利な場合、妊娠の中断(ターミネーション)の適応となる。 1990年日本産婦人科学会作成の妊娠中毒症のターミネーション適応基準によれば、母体側要因として、①入院、安静、薬物療法に抵抗して症状が不変あるいは増悪をみる場合、ことに重症高血圧(160/110mmHg以上)が2週間以上持続する場合やGI値が上昇する場合、②子癇、重症の早剥、新規の眼底出血、胸・腹水の貯留の増加、肺水腫、頭蓋内出血、HELLP症候群を認める場合、③所定の所見を総合的に判断して腎機能障害が認められる場合及び④血行動態の障害や血液凝固異常のある場合、例えば、血液濃縮症状やDICを認める場合が妊娠中断の適応となるとされている(甲B3〔161。 〕)また「一度重症妊娠中毒症となり、脳や眼症状、肺水腫、心窩部痛、、石季肋部痛、肝機能障害、血小板減少、IUGR、Fetaldistressが出現したら、妊娠週数や胎児の成熟度と関係なく妊娠継続を中止し、児の娩出方針とすべきです」との専門医の指摘もある(甲B6〔5。 。 〕)エ分娩方式妊娠を中断する場合、緊急例では帝王切開が選択され、緊急でない場合、母児ともに安全かつ速やかに分娩が進行すると予測されれば経膣誘発分娩が試みられるとされる。血圧上昇及び分娩子癇などの母体への対策、胎児仮死の発症などに十分注意を払う必要があるとされている(甲B3〔16 。 〕) 、、また「経膣分娩か、帝王切開かの分娩様式の選択が問題になりますが母児のリスクを考慮し、帝切を選択することが多くなっています。また分娩を遂行する例では、いつでも帝王切開ができる準備をしてのぞみ、胎児心拍数の変化、母体の血圧、 かの分娩様式の選択が問題になりますが母児のリスクを考慮し、帝切を選択することが多くなっています。また分娩を遂行する例では、いつでも帝王切開ができる準備をしてのぞみ、胎児心拍数の変化、母体の血圧、全身状態に留意すべきです」との専門医の。 指摘もある(甲B6〔5。 〕)オ分娩時の母体管理及び胎児管理分娩時には、収縮期及び拡張期の血圧がともに上昇するので、母体血圧のコントロールが管理の主体となるとされる。また、陣痛発来から子宮口全開大までは、降圧剤、鎮痛剤及び硬膜外麻酔によって血圧のコントロールを行うとされる。さらに、子宮口全開大後は怒責を禁じ、急速遂娩を選択するとされる(甲B3〔160。 〕)また、妊娠中毒症では、母児ともに周産期死亡率が高く、また、子宮内胎児発育遅延(IUGR)の頻度も高いので、慎重な胎児管理が必要であるとされる(甲B3〔160。 〕)(2)産科ショックアショックとは、急性末梢循環不全の状態を意味し、産科ショックとは、広義には偶発合併症によるものを含め、妊産婦がショック状態に陥った場合すべてをいうが、一般的には妊娠若しくは分娩に伴って発生した病的状態に起因するショックをいう。 ショックは、その原因から、循環血液減少性ショック、心原性ショック、神経原性ショック、敗血症性ショックに分類される。産科ショックのうち90%は出血による循環血液減少性ショックであり、その半数は弛緩出血が原因であると報告されている(甲B5〔776、乙B2〔178。 〕〕)イショックの治療方針としては、救急処置のABCが必要とされている。 ABCとは、気道確保(Airway 、呼吸管理(Breath 、循環の管理(Circ))ulate 、薬物治療(Drugs 、心電図(ECG 、除細動(Fibrillationtreat 。 ABCとは、気道確保(Airway 、呼吸管理(Breath 、循環の管理(Circ))ulate 、薬物治療(Drugs 、心電図(ECG 、除細動(Fibrillationtreat))) ment 、評価(Gauge 、低体温療法(Hypothermia 、集中管理(ICU)であ)))り、以上の順に救急措置を行うことが原則とされている(乙B2〔182、O〔76、77。 〕〕)ウ産科ショックの場合の輸液及び輸血については、出血量の2ないし3倍のリンゲル液投与を念頭におき、出血量が500mlないし1000mlとなれば代用血漿(低分子デキストランなど)を使用し、1500ml以上となれば輸血を考えるのが妥当であるとする文献がある(乙B2〔182。 〕)また、分娩時出血が500ml以内のときは基本の輸液500mlで終了するが、出血が500ml以上になったときはさらに細胞外液と子宮収縮剤を投与する、1000mlを超えたときはバイタルサインや尿量に注意しつつ安静を保つ、一般には出血量が1000mlを超えると輸血を考慮するが、妊産婦においては循環血漿量が増加しているため1000mlの出血では血圧低下や尿量減少が起こることはほとんどない、出血が1500ml以上となるときは輸血を考慮して検査を開始する、とする文献がある(乙B4〔675。 〕)(3)子癇ア子癇とは、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)によって起こる意識障害を伴う突然的痙攣発作をいう。妊娠、分娩及び産褥期に突発する強直性及び間代性の痙攣を主徴とする急性症で、多くは、昏睡、浮腫、蛋白尿、高血圧を合併している(甲B3〔162。 〕)イ子癇発作直後の管理としては、ショックの治療に準じた救急処置が必要となるとされる。また、子癇発作自体が帝王切開の適応 、多くは、昏睡、浮腫、蛋白尿、高血圧を合併している(甲B3〔162。 〕)イ子癇発作直後の管理としては、ショックの治療に準じた救急処置が必要となるとされる。また、子癇発作自体が帝王切開の適応にはならず、経膣急速遂娩を行うとされる(甲B3〔163。 〕)(4)播種性血管内凝固症候群(DIC)ア播種性血管内凝固症候群とは、本来凝固が起こらないはずの血管内においてさまざまな原因により凝固機能の亢進が起こり、全身の微小血管に血 栓を生じる症候群をいう。常位胎盤早期剥離、出血性ショック、重症感染症、羊水塞栓症、子癇発作等の基礎疾患があり、止血困難な出血等の臨床症状がある場合には、DICと診断される(甲B9〔1621。 〕)イDICの治療DICの治療としては、基礎疾患の除去、ショックへの対策及びATⅢ、FOY等による酵素阻害療法が必要であるとされる(甲B9〔162 。 〕)(5)羊水塞栓症ア羊水塞栓症とは、羊水が母体血中に流入することによって引き起こされる極めて急激で重篤な経過を辿る疾患である。その原因については、明らかではなく、胎児成分による肺循環内閉塞によるとする説、羊水の液性成分による肺血管攣縮によるとする説、アナフィラキシーショックによるとする説等がある(甲B7〔56、乙B8〔192、193。 。 〕〕)初発症状は、嘔気、嘔吐、悪寒、性器出血、胸部痛、痙攣、昏睡など多様であるが、典型的な例は分娩中及び分娩後の呼吸困難と血圧低下であり、重篤な症例では引き続き呼吸停止、心停止になるとされる。急性期の心肺障害を乗り越えたとしても、DICと弛緩出血のために大量出血が起こることもあるとされる(甲B7〔56、乙B7〔1、M〔3、4。 〕〕〕)経産婦、誘発分娩にその発生が多い傾向があるとする文献もある。また り越えたとしても、DICと弛緩出血のために大量出血が起こることもあるとされる(甲B7〔56、乙B7〔1、M〔3、4。 〕〕〕)経産婦、誘発分娩にその発生が多い傾向があるとする文献もある。また、2万ないし3万例の妊娠に1例の頻度で生じ、致死率は90%程度であり、全母体死亡の5ないし10%は、羊水塞栓症によるものと言われるとする文献もある(乙B5〔1538、乙B8〔190。 〕〕)男児出産例に多く、発症時期については、70%が分娩中、11%が経膣分娩後、19%が帝王切開中で児の娩出後であったとする報告もある(甲B7〔55。 〕)また、妊娠中毒症は、羊水塞栓症のリスク要因になるとされている(乙 B5〔1538、N〔16。 〕〕)イ診断羊水塞栓症の確定診断には、肺病理で羊水成分が証明されることが必要であるが、以下の場合には、臨床的羊水塞栓症とされる。 妊娠中又は分娩後12時間以内の発症 下記に示した症状・疾患(1つ又はそれ以上でも可)に対して集中的な医学治療が行われた場合①心停止②分娩後2時間以内の大量出血③播種性血管内凝固症候群④呼吸不全 観察された所見や症状が他の疾患で説明できない場合臨床的羊水塞栓症の診断を補完するものとして血清診断法があり、亜鉛コプロポルフィリン(Zn‐CP1)とSialylTn(STN)が羊水塞栓症の補助血清学的診断として有用であるとされている(乙B1〔1、3、乙B5〕〔1535、1536。 〕)ウ治療発症直後におけるショックに対する対策としては、ショックに対する救急蘇生術が必要であるとされる。薬物学的治療については、従来の報告によりヘパリンの投与が有効であるとして、羊水塞栓症が疑われた場合は、呼吸困難が発生してから10分以内、若しくは初発症状発来後のま 救急蘇生術が必要であるとされる。薬物学的治療については、従来の報告によりヘパリンの投与が有効であるとして、羊水塞栓症が疑われた場合は、呼吸困難が発生してから10分以内、若しくは初発症状発来後のまだ出血傾向が出ないうちに、ヘパリン5000から1万単位を皮下注又は静脈注入することを勧める文献がある(乙B5〔1537、乙B8〔195、〕〕乙B10〔689。 〕)一方で、ヘパリンの投与について、DICによる出血傾向がすでに認められる時点においては、出血への対処を難しくする可能性があるため、ま ずは血液と凝固因子の補充を優先すべきとの指摘もある(甲B7〔5 。 〕) 争点(1)(大量出血の原因)について、(1)原告らは、Bに生じた意識消失と大量出血に始まる一連の病態について羊水塞栓症は発症しておらず、産道損傷及び弛緩出血による大量出血からDICを発症したものと主張している。 しかし、前記1(8)で認定したとおり、確定的な診断はできないものの、Bには羊水塞栓症が発症していた蓋然性が高く、大量出血の原因もこれによるものである蓋然性が高い。 したがって、大量出血の原因が羊水塞栓症によるものではないとする原告らの主張は採用できない。 (2)原告らの過失に関する主張は、医師の立会の遅れ及びヘパリンの投与時期に関する点を除き、いずれも上記の大量出血の原因に関する主張を前提とするものであるから、その原因が羊水塞栓症による蓋然性が高い以上、その前提を欠くこととなるが、論理的には必ずしも大量出血の原因如何にかかわらず成り立つ主張であるから、以下において、大量出血が羊水塞栓症に引き続くものである蓋然性が高いことを念頭におきつつ、順次これらについて検討することとする。 争点(2)(帝王切開を実施すべきであったか否か)について(1)ア において、大量出血が羊水塞栓症に引き続くものである蓋然性が高いことを念頭におきつつ、順次これらについて検討することとする。 争点(2)(帝王切開を実施すべきであったか否か)について(1)ア原告らは、Bが、重症妊娠中毒症であったこと、AIH(配偶者間人工授精)を4回行って妊娠したこと、高齢初産であること、出産前の血圧のコントロールができない状態であったことからすれば、複数のリスクが重なったハイリスクな状況であり、帝王切開の同意書を取得している本件では、予め帝王切開を実施すべきであったと主張する。 イ(ア)そこで検討するに、まず、AIHを4回行って妊娠したことが、帝王切開の適応の要素となることを認めるに足りる証拠はない。 なお、O鑑定人は、不妊治療を行った場合には帝王切開となる場合が多いとするが、それは患者の希望によるものであるとの意見を述べており(O〔42、43、この意見は、医学的な側面から帝王切開の適応〕)について述べたものではないと理解すべきである。 (イ)次に、高齢初産であることについては、高年妊娠とは、35歳以上の妊婦を指すところ(甲B3〔160、Bは、分娩当時34歳であっ〕)たのであるから、35歳に近い年齢であったものの、この基準には当てはまらない。O鑑定人も、Bの年齢についてはリスクと考えない旨の意見を述べている(O〔42。 〕)(ウ)さらに、出産前の血圧のコントロールについては、上記1(3)アのとおり、同年10月1日頃からは血圧が安定した状態にあったものであり、原告らの主張はその前提を欠くものである。 ウ(ア)これに対し、上記1(2)イのとおり、同年9月25日に、Bは、被告病院において重症妊娠中毒症と診断され、即日、被告病院に入院しており、入院後においても、同月29日までは、収縮期血圧が200 ウ(ア)これに対し、上記1(2)イのとおり、同年9月25日に、Bは、被告病院において重症妊娠中毒症と診断され、即日、被告病院に入院しており、入院後においても、同月29日までは、収縮期血圧が200を超えており、上記2(1)イの基準からしても、重症妊娠中毒症の状態が継続していたことが認められる。そうすると、帝王切開の適応を考えるに当たっては、重症妊娠中毒症である点を考慮すべきことになる。 しかしながら、重症妊娠中毒症であることを根拠にして、本件において帝王切開を行うべき義務を認めるに足りる的確な証拠はない。 かえって、上記2(1)ウのとおり、1990年日本産婦人科学会作成の妊娠中毒症のターミネーション適応基準によれば、母体側要因として、重症高血圧(160/110mmHg以上)が2週間以上持続する場合に妊娠中断の適応となるとしており、数日間にわたり高血圧が続いたとしても、直ちに帝王切開実施の前提としての妊娠中断の適応となるわけではない。 また、上記2(1)エのとおり、妊娠中断の際の分娩方式についても、文献上、緊急例では帝王切開が選択され、若しくは、帝王切開が選択される場合が多いとされるが、必ずしも、帝王切開を行うべきとするものではなく、母児の状況に配慮が必要となるが、経膣分娩が行われる場合もあるとされている。 さらに、O鑑定人は、重症妊娠中毒症だからといって、必ずしも帝王切開になるわけではないとの意見を述べている(O〔42、43。 〕)これらの点からすれば、本件の経過において、予め帝王切開を選択すべき義務は認められない。 (イ)なお、鑑定人らは、鑑定人らの施設であれば同年9月27日ないし29日の段階において帝王切開を選択したとの意見を述べている(N〔35、O〔37、M〔41。しかしながら、いずれの鑑定人も、〕〕〕)同時 定人らは、鑑定人らの施設であれば同年9月27日ないし29日の段階において帝王切開を選択したとの意見を述べている(N〔35、O〔37、M〔41。しかしながら、いずれの鑑定人も、〕〕〕)同時期において経膣分娩の適応に欠ける旨の意見は述べておらず、鑑定人らの意見は、事後的に振り返っての感想、若しくは、分娩の方式については様々な意見があり得るとの前提の下での1つの考え方を提示したものと理解すべきであり、これらの意見から、予め帝王切開を行うべき法的義務があるとはいえない。 (2)また、原告らは、経膣分娩での分娩を開始したとしても、同年10月8日午後5時までに帝王切開に切り替えるべきであったと主張する。 上記1(4)ウ及びオのとおり、午後4時20分の血圧は、160/120であり、午後4時45分の血圧は、172/107であり、降圧剤投与後の午後5時においても155/108であった。 G医師は、この時点における分娩様式の判断は、血圧の状態と経膣分娩に要する今後の時間の見通しによって決定され、午後5時に子宮口全開大が確認され、30分前後で分娩に至る見通しであったことから経膣分娩と判断した旨陳述するところ(乙B6〔15、この判断が不適切であったと認める〕) に足りる的確な証拠はない。 かえって、N鑑定人及びO鑑定人は、午後5時の段階で子宮口全開となれば、経膣分娩が可能と判断する、当日の帝王切開への変更は母体適応よりも胎児適応で判断するとして(O〔39、N〔39、G医師の陳述に沿う〕〕)意見を述べている。 したがって、午後5時の時点までに帝王切開に切り替えるべき義務は認められず、原告らの主張には理由がない。 争点(3)(医師の立会いの遅れによる治療及び救命行為の遅れの有無)について(1)原告らは、Bの血圧が上昇していたことから 切開に切り替えるべき義務は認められず、原告らの主張には理由がない。 争点(3)(医師の立会いの遅れによる治療及び救命行為の遅れの有無)について(1)原告らは、Bの血圧が上昇していたことから、G医師が平成14年10月8日午後5時00分に分娩室に来室後、そのまま同所に留まるべきであったと主張する。 そこで検討するに、上記1(4)ウ及びオのとおり、Bの血圧は午後4時20分には160/120であり、午後4時45分の血圧は172/107と上昇したことは認められるが、午後5時においては、155/108と改善が見られていた。上記1(4)イのとおり、Bの分娩経過については、2名の助産師が観察していたものであり、上記のような血圧の下で、助産師による経過観察では不十分であると認めるに足りる証拠はない。 また、上記1(4)オのとおり、同時刻にG医師が内診した際には、子宮口が全開大であり、児頭が下降傾向にあったものの、いまだ児は下降していなかったことが認められ、このような状況から、G医師は、分娩まではあと少し時間がかかると判断している(乙B11〔1。このG医師の判断が不適〕)切であるとするべき事情は見当たらず、この点からしても、同医師がそのまま分娩室に留まるべき義務があったとは認められない。 (2)また、原告らは、午後5時21分に医師立会いの連絡がされた際に、直ちに2名以上の医師が駆けつけ、1名以上の医師が直ちにBの救命行為を行 うべきであったと主張する。 しかしながら、上記1(5)アのとおり、同時刻に医師立会いの要請がされたのは、児心音が低下したためであり、この時点では、Bに急変は生じていなかったものである。この点について、G医師は、児心音の低下の際にはまずは医師1名が訪床し、その観察結果によってさらに応援を要請することになると陳述すると めであり、この時点では、Bに急変は生じていなかったものである。この点について、G医師は、児心音の低下の際にはまずは医師1名が訪床し、その観察結果によってさらに応援を要請することになると陳述するところ(乙B11〔2、このような対応では不十分である〕)と認めるべき事情は見当たらない。そして、上記1(6)イのとおり、G医師訪室後は、午後5時30分にH医師、午後5時34分にK医師、午後5時38分にL医師、午後5時40分には麻酔科医師が訪室して、治療に加わっており、緊急時には応援を要請し得る状況にあったのであるから、被告病院における人的体制に不足があったとも認められない。 したがって、同時刻に2名以上の医師が駆けつけるべき義務があるとは認められない。 (3)さらに、原告らは、呼吸停止が確認された午後5時35分の時点で、麻酔科医師の立会の下で気管挿管を行うべきであったと主張する。 本件では、上記1(6)イのとおり、午後5時36分にアンビューバッグによる人工換気が行われ、麻酔科医師到着後の午後5時43分には気管挿管が行われている。G医師は、マスクアンドバッグによる呼吸管理でも、酸素飽和度低下の原因が気道閉塞にある場合などの例外を除き、気管挿管と同様の効果が期待できると陳述及び証言し(乙B11〔2、G〔31、O鑑定〕〕)人もアンビューバッグの実施で足りるとして(O〔50、51、G医師の〕)陳述及び証言に沿う意見を述べている。これに対し、マスクアンドバッグによる人工換気では足りず、気管挿管の実施が特に必要であるとする事情は認められない。また、上記1(6)イのとおり、午後5時40分には麻酔科医師が到着していることからすると、それより以前に麻酔科医師への連絡がされていたと推認され、人工換気の必要性が生じ、マスクアンドバッグを実施す る 記1(6)イのとおり、午後5時40分には麻酔科医師が到着していることからすると、それより以前に麻酔科医師への連絡がされていたと推認され、人工換気の必要性が生じ、マスクアンドバッグを実施す るのと同時期に気管挿管の実施を念頭においた措置が講じられていたといえるのであるから、可能な限りの迅速な対応がされていたと評価できる。 したがって、同時刻に気管挿管を実施すべき義務があるとは認められない。 以上より、原告らの主張にはいずれも理由がない。 争点(4)(輸血の実施時期が適切であったか否か)について(1)原告らは、本件においては午後5時24分からICU入室の午後6時37分までの間に3390mlの出血があったことを前提に、被告病院医師らは、午後5時36分までに輸血を準備し、午後5時56分までに輸血を実施すべきであったと主張する。 まず、輸血を開始すべき時期について検討するに、上記2(2)ウのとおりの文献上の記載からすると、分娩時においては1500mlの出血の時点において輸血を考慮すべきであるとされており、他にこれと異なる基準が存在するとする的確な証拠はない。 なお、原告らの上記主張は甲B第12号証の記載に依拠するものであるところ、同記載は、従来の裁判例について検討した結果について言及したものにすぎず、一定の医学的知見について言及したものではないから、本件において輸血を開始すべき時期を検討するに当たっての根拠となり得るものではない。 (2)次に、本件における出血量について検討するに、分娩記録においては、出血量についての記載として「2640+750→ナート中「総出血量3」、390ml」との記載がある(乙A2〔676。これは、分娩時の出血量に〕)ついては、マットを下に敷いて計測するところ、ICU入室時にマットを取り替えたときに計測し →ナート中「総出血量3」、390ml」との記載がある(乙A2〔676。これは、分娩時の出血量に〕)ついては、マットを下に敷いて計測するところ、ICU入室時にマットを取り替えたときに計測した結果が2640gであり、ICU入室後分娩後2時間までの出血が750gであったという意味と理解できる(G〔38、3 。この分娩経過の記載に基づき、事後的に記載されたカルテ及び経過要〕)約等において出血量3390mlとの記載がされたものと解される(乙A2 〔13、550、551、G〔29。 〕〕)そうすると、分娩後2時間までの出血量が3390mlであると認めるべきである。 (3)上記1(6)ウのとおり、午後5時53分には輸血がオーダーされているところ、その時点までの出血量を計算すると、上記1(5)ウのとおり、出血が開始したのは午後5時24分頃であり、ICUに転出したのは午後6時28分であるから、その間は64分間である。その間に、2640gの出血があったのであるから、1分間当たりの出血は、約41mlとなる。そうすると、出血開始時である午後5時24分から輸血オーダー時点である午後5時53分までの29分間の出血量は、約1189mlであると推認される。 そうすると、出血量が1500mlに達する以前に輸血のオーダーを開始しており、その後の輸血措置も特に遅れはなく実施しているのであるから、被告病院における輸血の開始時期に遅れがあったとは認められない。 (4)なお、原告らは、ICU転出時までの出血量が3390mlであったと主張する。上記(2)のとおり、3390mlとは分娩後2時間までの出血量と理解すべきであるが、仮に、ICU転出時までの出血量を原告ら主張のとおり3390mlであると考えるとすると、64分間に3390mlの出血があったことになる 3390mlとは分娩後2時間までの出血量と理解すべきであるが、仮に、ICU転出時までの出血量を原告ら主張のとおり3390mlであると考えるとすると、64分間に3390mlの出血があったことになるから、1分間当たりの出血量は約53mlとなる。そうすると、出血開始時である午後5時24分から輸血オーダー時点である午後5時53分までの29分間の出血量は、約1537mlであると推認され、出血1500mlとなった時点で輸血の準備を開始すべしとする上記基準におおよそ沿う時点において輸血のオーダーがされたことになる。そのほか、上記1(4)イ及び1(6)カのとおり、輸血のオーダーの前後において、相当量の輸液がされたことも考え合わせると、この時点での輸血のオーダーが遅きに失するとは認め難い。 したがって、出血量につきいずれの前提に立つにせよ、輸血の遅れがあっ たとする原告らの主張には理由がない。 争点(5)(ヘパリンの投与時期が適切であったか否か)について(1)ア原告らは、仮に、本件の病態が羊水塞栓症であったとすると、被告病院担当医師らには、羊水塞栓症の基本的な治療であるヘパリンの投与が遅れた過失があると主張する。 上記1(6)エのとおり、本件では、午後5時57分にヘパリンが投与されている。上記1(8)アのとおり、Bの急変の原因は、羊水塞栓症である蓋然性が高いといい得るところ、羊水塞栓症に対するヘパリンの投与については、上記2(5)ウのとおり、羊水塞栓症が疑われた場合は、症状の発来から10分以内にヘパリン5000から1万単位を皮下注又は静脈注入することを勧める文献がある。鑑定人らも、その作用機序は不明であり、対症療法にすぎないと考えられるとしつつも、ヘパリン投与が羊水塞栓症に対する治療とされていること自体は認めている(N〔2、O〔2、M〕 とを勧める文献がある。鑑定人らも、その作用機序は不明であり、対症療法にすぎないと考えられるとしつつも、ヘパリン投与が羊水塞栓症に対する治療とされていること自体は認めている(N〔2、O〔2、M〕〕〔3、4、25。 〕)したがって、羊水塞栓症に対してヘパリンが有効であることは認められる。 イなお、上記1(8)イのとおり、ヘパリン投与後に心拍動の再開が見られたことについては、必ずしもヘパリンの効果のみによるものであるとはいえないから、このような時間的経過を根拠に、ヘパリンの有効性を根拠付けることはできない。 (2)アこのように、ヘパリンが羊水塞栓症に対して有効であるとしても、被告は、本件の経過からして産道からの出血に子癇発作や頭蓋内出血が合併している可能性が強く疑われたところ、ヘパリンは抗凝固剤であり、出血時に使用するのは禁忌であるから、ヘパリンの投与は第1選択とはならず、まずは各種の蘇生法を行って、それらが効を奏しない場合に初めてヘパリンを投与すべきことになるため、本件では投与時期に遅れはないと主張し、 G医師も同旨の意見を証言している(G〔5、41、44、45。 〕)イそこで検討するに、N鑑定人は、本件の経過の最中においては、まず子癇発作を疑い、蘇生措置開始後に頭蓋内出血ないし羊水塞栓症を疑うことになるところ、子癇発作には頭蓋内出血を合併することが多いことからしても、頭蓋内出血の可能性がある場合にヘパリンを使用することには躊躇を覚える旨の意見を述べている(N〔15、21、22。O鑑定人も、〕)本件の経過の最中においては子癇発作ないし頭蓋内出血を疑うことを前提に、出血との関係でヘパリンの投与は難しいとの意見を述べ(O〔19、 、M鑑定人も鑑定事項に対する意見の要旨において両鑑定人と同旨〕)の意見を述べてい 子癇発作ないし頭蓋内出血を疑うことを前提に、出血との関係でヘパリンの投与は難しいとの意見を述べ(O〔19、 、M鑑定人も鑑定事項に対する意見の要旨において両鑑定人と同旨〕)の意見を述べている(M〔57。 〕)また、上記2(5)ウのとおり、文献においても、出血との関係でヘパリンの投与に疑問を呈する記載がある。 ウまた、患者の急変時に行うべき措置は、急変の原因如何にかかわらず、上記2(2)イの救命措置のABCであるとされる(O〔19、76、7 。 〕)本件では、上記1(6)アないしエのとおり、午後5時27分、強直性痙攣に対し、ホリゾン及びマグネゾールが投与され、午後5時30分に呼吸抑制が見られたことから、マスクで酸素を投与し、気道の確保を行い、午後5時36分、アンビューバッグによる補助呼吸が開始されている。さらに、午後5時38分には心臓マッサージが開始され、午後5時43分、気管挿管が施行されている。さらに、強心薬であるボスミンが午後5時44分に1A、同45分に2A、同47分に1A注入されている。午後5時55分には副腎皮質ステロイド製剤であるソルメドロール500mgが投与され、午後5時57分、ヘパリン5000単位が静脈内投与されている。 このように、本件では、第1に気道確保や酸素投与、心臓マッサージが行われているところ、これは、上記の救命措置のABCの順序に沿うもの である。その後の薬剤の投与については、まずは心停止に対する措置が必要とされることから、強心薬であるボスミンが投与され、ショック状態からの離脱のためにソルメドロールが投与されたものと理解できる(O〔28、29)ところ、急変時においては、原因の如何を問わず、まずは心〕肺の蘇生を図るべきであり、ヘパリンの投与はそれらの措置を行ってもなお病態の改善が見られない場 投与されたものと理解できる(O〔28、29)ところ、急変時においては、原因の如何を問わず、まずは心〕肺の蘇生を図るべきであり、ヘパリンの投与はそれらの措置を行ってもなお病態の改善が見られない場合に行うべきものであることについては、三〕、鑑定人が一致した意見を述べている(M〔26、30、N〔26、2730、O〔27ないし29。この点をふまえて、O鑑定人は、10分〕〕)以内にヘパリンを投与すべきとする文献は、臨床の現実からかけ離れたものであり、コンセンサスが得られた治療方法ではないとしている(O〔2 。 〕)さらに、M鑑定人は、ヘパリンの投与はあくまで対症療法にすぎず、羊水塞栓症に対する本質的な治療ではないことからしても、ヘパリンの投与は各種蘇生措置の後にまわることになる旨の意見を述べている(M〔2 。 〕)(3)本件では、被告病院担当医師らは、ヘパリンの投与に先立ち、薬剤の投与を含めた各種の蘇生措置を行って、それを経てもなお症状の改善が見られない段階に至った後にヘパリンを投与しており、上記のように、出血を助長することとの関係でヘパリンの投与は難しい判断となること及びまずは救急の蘇生措置を行うべきであることを考え合わせると、午後5時57分にヘパリンを投与した担当医師らの措置は、不適切であったとは認められない。 したがって、原告らの主張には理由がない。 争点(6)(経膣分娩のリスクについての説明義務違反の有無)について娩方法の決定及び帝(1)ア原告らは、被告病院担当医師らは、Bに対し、分王切開術の同意に際し、重症妊娠中毒症であること、AIHを4回行って 妊娠していること、高齢初産であること、出産前の血圧のコントロールができない状態で経膣分娩を行うことの危険性等について、具体的な説明を行う義務があったと主 中毒症であること、AIHを4回行って 妊娠していること、高齢初産であること、出産前の血圧のコントロールができない状態で経膣分娩を行うことの危険性等について、具体的な説明を行う義務があったと主張する。 イ上記4(1)イ(ア)ないし(ウ)のとおり、AIHを行ったことは分娩方式の選択とは医学的に無関係であり、分娩を行うに当たってのリスクということはできず、また、Bが高齢出産であったということはできない。さらに、出産前に血圧のコントロールができない状態であったと認めることはできない。 したがって、AIHを4回行って妊娠していること、高齢初産であること、出産前の血圧のコントロールができない状態で経膣分娩を行うことの危険性について説明すべき義務は認められない。 ウこれに対し、上記1(2)イ及び4(1)ウ(ア)のとおり、Bは重症妊娠中毒症であったところ、重症妊娠中毒症の妊婦につき経膣分娩を行うに当たっては、血圧上昇及び分娩子癇などの危険性や胎児仮死の発症などの可能性があり、これに対する注意が必要とされているのであるから、被告病院担当医師らは、これらの危険性について説明すべき義務があると認められる。 (2)ア次に、被告病院担当医師らが行った説明について検討するに、原告らは、被告病院においては、帝王切開術の同意書への署名に際して「単に、お守りのようなものです」と言ったのみであると主張し、原告Cは重症。 妊娠中毒症であることについて説明を受けたことはなく、帝王切開術の同意書への署名に当たっても詳しい説明がなかったとして、同旨の供述をする(C〔3ないし5。 〕)これに対し、G医師は、妊娠中毒症の状態とリスクについては、入院を勧める説明をしたとき、産科病室からMFICUに移るとき、妊娠36週で妊娠を終了させる方針を説明したとき、十分に説明をし 。 〕)これに対し、G医師は、妊娠中毒症の状態とリスクについては、入院を勧める説明をしたとき、産科病室からMFICUに移るとき、妊娠36週で妊娠を終了させる方針を説明したとき、十分に説明をしており納得を得ている旨の陳述をし、帝王切開の同意書に署名を求めるに当たっても、重 症妊娠中毒症には母体の血圧上昇や胎児の状況が悪くなる危険性があることを説明したと証言する(乙B6〔17、G〔10、16、34、3〕 。 〕)イ上記1(2)イのとおり、同年9月25日にBは重症妊娠中毒症と診断され入院をしているが、入院に当たって担当医師が妊婦の現在の状況と入院が必要となる根拠について説明をしないことは考え難い。 また、上記1(3)アのとおり、Bは、血圧が安定しなかったことから、同月30日にMFICUに移動しているところ、移動に当たって、担当医師らがMFICUでの集中管理が必要となる理由について説明をしないとは考え難い。 さらに、上記1(3)イのとおり、同年10月6日に、妊娠中毒症の増悪所見が見られたことから、G医師は翌日の分娩の誘発を決定し、その旨及び帝王切開になる可能性を原告Cに対して説明をし、その際に、B及び原告Cは、帝王切開を行うことについての同意書に署名押印をしている。 この同意書には「病気について」との欄に「重症妊娠中毒症「目的、」、・必要性について」との欄に「母児の安全のため」との記載があり、これらの内容は原告Cが署名押印する際に既に記載されていたものである(乙A2〔124、C〔14。 〕〕)これらの同意書の記載からすると、この同意書を徴したG医師は、B及び原告Cに対し、Bが重症妊娠中毒症であること、重症妊娠中毒症の妊婦の経膣分娩に当たっては、母児に対する危険があるため、その危険を回避するために帝王切開になる可能 、この同意書を徴したG医師は、B及び原告Cに対し、Bが重症妊娠中毒症であること、重症妊娠中毒症の妊婦の経膣分娩に当たっては、母児に対する危険があるため、その危険を回避するために帝王切開になる可能性がある旨の説明をしたと理解できる。 また、Bは、夫である原告Cの立会いの下での分娩を強く希望しており(乙A2〔545、547、549、原告Cも、帝王切開の同意書への〕)署名に際し、できれば帝王切開を避けたい旨の希望があったと供述するところ、経膣分娩に伴う危険性についての説明なしに、B及び原告Cが帝王 切開の実施に同意するとは考え難い。 さらに、被告病院看護記録には、同年10月2日の欄に「C/S(帝王切開)の可能性は否定しきれないため、また本人よりC/Sについての質問が出ているため、実母を混じえてC/S前オリエンテーションす。本人経膣に対する希望強いため、C/Sの流れにはあまり興味もてず。どういう様になったらC/Sになるのかということに意識が集中している様子」。 との記載がある(乙A2〔625。この記載からすれば、Bは、帝王切〕)開についてのオリエンテーションを受け、その際に看護師から、帝王切開を選択する基準、すなわち、経膣分娩に伴うリスクが発生した場合にはそれを避けるために帝王切開を行うことになることについて説明を受けたと理解でき、そうすると、帝王切開の適応について説明する中で、経膣分娩を行うに当たっての危険性についての説明が行われたと認められる。 ウ以上からすると、重症妊娠中毒症であることについて説明を受けたことはなく、帝王切開術の同意書への署名に当たっても詳しい説明がなかったとする原告Cの供述は採用できず、被告病院担当医師ら及び看護師は、B及び原告Cに対し、Bが重症妊娠中毒症であること及び重症妊娠中毒症の妊婦が経膣分娩を行 意書への署名に当たっても詳しい説明がなかったとする原告Cの供述は採用できず、被告病院担当医師ら及び看護師は、B及び原告Cに対し、Bが重症妊娠中毒症であること及び重症妊娠中毒症の妊婦が経膣分娩を行うに当たっての危険性について、説明をしたと認められる。 したがって、説明義務違反をいう原告らの主張には理由がない。 第4結語以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの請求は理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官大嶋洋志裁判官岡田安世 別紙・当事者の主張争点1大量出血の原因(原告らの主張) 産道損傷の存在(1)本件におけるBの分娩方法として、被告病院の担当医師は、当初より帝王切開術を選択すべきであったのに、経膣分娩にてこれを行ったために、産道損傷(膣・会陰裂傷、頸管裂傷、子宮破裂)による大量出血に起因してDICを発症させ、多臓器不全によりBを死亡させた。 。 (2)Bについては、産道の腸に近い部分に、かなり大きな産道損傷があった産道損傷があったことは「膣壁血腫があり、感染源となり得るため取り除、くが、腸に近いこと、かなり大きいことから腸の損傷のリスクを考え、そのままとなっている。創部を拡大し、排膿促しているが、血腫が残存しており、菌も検出されていることから感染源となり、全身状態に影響、DIC等に移行する恐れがある「もともと膣壁に血腫あり、それがはがれたのか、新。」、たに出血したのか「・・・膣内の血腫除去に時間を要し、ようやく除去し」、ている「・・・右膣壁血腫あり・・・「かなり上方に4×5cmの血腫。」、」、あるが上方であり、直腸に近いためそのままとする」等とカルテ上明確に。 血腫除去に時間を要し、ようやく除去し」、ている「・・・右膣壁血腫あり・・・「かなり上方に4×5cmの血腫。」、」、あるが上方であり、直腸に近いためそのままとする」等とカルテ上明確に。 記載されている。 弛緩出血の存在Bの分娩が経膣分娩により行われたことから、弛緩性出血による大量出血に起因してDICを発症し、多臓器不全によりBは死亡した。 弛緩出血があったことは「子癇発作後、弛緩性出血に伴う循環動態の変、調」とカルテ上明確に記載されている。 羊水塞栓症が原因ではないこと羊水塞栓症に基づく心停止であれば、右心不全さらに左心室機能異常を引き起こすはずであるのに、本件では午後6時28分に行われた心エコーで右心 系に異常なく、左室機能にも異常のないことが確認されているのであるから、本件は羊水塞栓症に基づく心停止ではない。 「分娩後2時間以内の大量出血」については、分娩時又は分娩後に大量の性器出血を起こす疾患として、羊水塞栓症以外にも、子宮破裂、産道損傷、弛緩出血、遺残胎盤、癒着胎盤、DICなどがある。また、DICについては、その基礎疾患として、羊水塞栓症以外にも、出血性ショックとして弛緩出血、前置胎盤、子宮破裂、癒着胎盤、軟産道損傷(頸管裂傷、膣壁裂傷、傍結合織内出血など、子癇発作、重症妊娠中毒症などがある。 )「呼吸不全」については、確かに午後5時23分頃「SaO80台とな、 り心肺停止」となっているが、その直前に、Bに対し、ホリゾンとマグネゾールが投与されており、これら薬剤の副作用として呼吸抑制や心機能抑制、呼吸麻痺の発現が掲げられており、またBが大量出血しているにもかかわらず輸血が遅れたため、呼吸不全が発現したとも考えられる。 「観察された所見や症状が他の疾患で説明できない場合」については、経膣分娩に伴う 痺の発現が掲げられており、またBが大量出血しているにもかかわらず輸血が遅れたため、呼吸不全が発現したとも考えられる。 「観察された所見や症状が他の疾患で説明できない場合」については、経膣分娩に伴う産道損傷(膣・会陰裂傷、頸管裂傷、子宮破裂)又は弛緩性出血により大量出血したにもかかわらず輸血が遅れたため、DICを発症したという経過で、Bの症状や疾患の説明が十分可能である。 また、Zn-CP1は正常値であり、かつ、STNも正常値なのであるから、羊水塞栓症は明確に否定されている。 以上の事実から、本件において、Bが羊水塞栓症を発症していないことは明白である。 (被告の主張) 産道損傷の不存在被告病院医師らは、胎盤用手剥離時において、用手にて子宮破裂がないことを確認し、また、直視下にて、少なくとも目視できるような産道損傷がないことを確認している。 すなわち、本件では、会陰切開創とそれが延長した腟裂傷があるにすぎないことが確認されているのであって、大量出血の原因となるような産道の損傷がないことは明らかである。 なお、このような方法によっても、産道損傷のうち深部頚管裂傷については確認できないが、深部頚管裂傷における出血では、このような短時間に急激なショックに至ることはない(羊水塞栓症を発症していることなどからすると、深部頚管裂傷自体は存在したものと推測される。 。) 弛緩出血の不存在弛緩出血とは、子宮収縮が悪いために胎盤剥離部からの出血が止まらない状態を指すが、本件では、大量出血は胎盤娩出前から発症しており、弛緩出血でないことは明らかである。 輸液量について急変の原因が出血によるならば、出血量と輸液量との差が大きく、少なくとも循環血液量の半分量(1500~2000ml)以上の差がないと、心拍動が停止するようなことはない。 本件 。 輸液量について急変の原因が出血によるならば、出血量と輸液量との差が大きく、少なくとも循環血液量の半分量(1500~2000ml)以上の差がないと、心拍動が停止するようなことはない。 本件では、出血量の2640gに対し、それと同等ないし同等以上の輸液(輸血を含む)がされているので、出血と輸液の関係からみても本件の急変は大量出血ではない。 羊水塞栓症が原因であること(1)臨床的羊水塞栓症の診断基準についてア本件は、死亡に至った病因を解明するために死体解剖の申出をしたものの原告Cが承諾しなかったのものであるが、臨床的にみて羊水塞栓症を発症しているというべきである。 イまた、原告らが、大量出血により呼吸抑制が生じたとする点については、出血が開始したのは、午後5時24分ころに児を娩出した後である。そして、出血が開始してからICUに転出した午後6時28分ころまでの64 分の出血量は2640mlである。 これに対し、呼吸抑制が出現したのは、午後5時30分ないし33分頃であり、出血が開始したのは午後5時24分以降であるから、出血開始から呼吸抑制出現までの時間は5分ないし10分程度にすぎず、呼吸抑制出現までの出血量は200ないし400mlがあったにすぎない。この程度の出血で呼吸抑制が起きるとは考えられない。 ウさらに、呼吸不全の原因が、ホリゾン、マグネゾールの副作用であると主張する点については、ホリゾンやマグネゾールによるものにすぎないのであれば、心肺蘇生に対して反応があってしかるべきであるが、本件では、午後5時35分頃に呼吸停止に至った直後より心肺蘇生を行っているにもかかわらず、ヘパリン投与までの間、反応がみられていない。 (2)補助的血清学的検査について補助的血清学的検査の結果は、検体が大量輸血後に採取された血清であっ った直後より心肺蘇生を行っているにもかかわらず、ヘパリン投与までの間、反応がみられていない。 (2)補助的血清学的検査について補助的血清学的検査の結果は、検体が大量輸血後に採取された血清であったためであると考えられ、羊水塞栓症を否定するものではない。 (3)ヘパリンの投与についてヘパリンの投与は、羊水塞栓症の治療になるが、本件では午後5時23分ころから心肺蘇生が続けられているにもかかわらず、それには容易に反応しなかったものが、午後5時57分にヘパリンを投与したところ、午後6時8分には心臓マッサージを要しない程度にまで回復している。 このように、羊水塞栓症に対する治療に反応していることは、大量出血の原因が羊水塞栓症であることを裏づけるものである。 (4)心エコー所見について午後6時28分の心エコーにおいて、右心不全さらに左心室機能異常がないことが確認されているが、羊水塞栓症の場合には初期には右心不全を呈するものの、出血により循環血液量が減少して虚血状態になれば右心不全の所見は得られない。実際、臨床的羊水塞栓症の診断基準においても、心エコー 検査の所見は挙げられていない。 争点2帝王切開を実施すべきであったか否か(原告らの主張) 予定的帝王切開術(1)分娩前のBの状態等アBは、平成14年9月25日(妊娠34週6日)の時点で、妊娠中毒症と診断され被告病院に入院し、その後、重症妊娠中毒症と診断されている。 イBは、平成13年より不妊治療をスタートし、AIHを4回行って、今回初めて妊娠している。 ウBは、出産当時34歳であったから、高齢初産である。 仮に、初産婦に関する被告病院産婦人科データが正しいとしても、34歳は年齢的にリスクが低く、35歳からは高齢妊娠であるためリスクが高いなどとは言えないはずであり、Bは2月6日生 ら、高齢初産である。 仮に、初産婦に関する被告病院産婦人科データが正しいとしても、34歳は年齢的にリスクが低く、35歳からは高齢妊娠であるためリスクが高いなどとは言えないはずであり、Bは2月6日生まれで、分娩日が10月8日であるから残り4ヶ月で35歳に達するのである。 エBの血圧は「入院後、トランデート、アダラートL内服にて褥棟にて、経過みるが、BPコントロール困難、BP200~110/70~110」、と変動激しく、9/30(35週4日)より、MF-ICU管理となる「初産、AIH4回目での妊娠、予定日は10/3であったが、妊娠中毒症にての血圧コントロール不良もあり、10/8にのぞむ「34w後半」、よりTOX症状みられ管理入院するもBPコントロール安定せず、トランデート、アダラートL(屯用)にて様子みるが、BP上昇傾向となり9/30MF-ICU管理となりトランデート、アダラートL内服す。内服後BP低下傾向であり、また、NST上acceraion(ママ)乏しめとなる。 現在、自然陣発まち自然分娩の方針であるが、BPコントロール不良、FHRの状態によってはC/S(帝王切開)となる可能性もある、と記載さ」れているように、降圧剤を投与しても血圧をコントロールできない状態に あった。 、、オ被告は「10月1日より血圧は140/80程度にコントロールされまた、10月8日にはラミナリア桿抜去後も、血圧は120~140/90台で安定していた」と主張するが、これは降圧剤であるトランデート及びアダラートLを頻回に投与して、かろうじて血圧を維持していただけであり、以下具体的に指摘するように吸引分娩を行った午後5時24分の約5時間半前である午前11時50分以降は、降圧剤を投与しても血圧をコントロールできない状態であった。 (ア)午前11 ていただけであり、以下具体的に指摘するように吸引分娩を行った午後5時24分の約5時間半前である午前11時50分以降は、降圧剤を投与しても血圧をコントロールできない状態であった。 (ア)午前11時50分の血圧は152/106、午後零時10分の血圧は142/100、午後零時45分の血圧は152/98であり、午後1時05分には降圧剤トランデートを投与して一旦血圧が132/94に下がったが、午後2時25分には再び血圧が158/100に上昇している。 (イ)さらに問題なのは、午後2時25分以降午後4時20分までの約2時間もの間、血圧測定が一度もされていないということである。 すなわち、この重要な時期に、助産師たちは、医師不在のため血圧測定を怠るという重大なミスを犯しているのである。 (ウ)その後、血圧測定を開始した午後4時20分には血圧が160/120に上昇し、さらに午後4時45分には172/107及び168/102と上昇し、午後4時55分に降圧剤アダラートLを投与しても、午後5時00分の血圧は155/108までしか下がっていない。 カ現に、同年10月6日、G医師は、患者であるB及び夫である原告Cから、腹式帝王切開術実施の同意を取っている。 (2)経膣分娩の適応が認められないこと前記(1)アないしカのハイリスク下での分娩方法としては帝王切開術を選択すべきであった。 すなわち、Bが、①重症妊娠中毒症であったこと、②AIHを4回行って妊娠したこと、③高齢初産であること、④出産前の血圧のコントロールができない状態であったこと、⑤帝王切開術の同意をとっていることのそれぞれが、単独に帝王切開術適応であると主張しているのではなく、①ないし④のリスクが重なってハイリスクとなり⑤の同意を取得している本件Bの分娩方法としては、帝王切開術適応である をとっていることのそれぞれが、単独に帝王切開術適応であると主張しているのではなく、①ないし④のリスクが重なってハイリスクとなり⑤の同意を取得している本件Bの分娩方法としては、帝王切開術適応であると主張しているのである。 帝王切開への切替え(1)午後5時00分までのBの状態等ア前記のとおり、午後4時20分には血圧が160/120に上昇し、さらに午後4時45分には172/107及び168/102と上昇し、午後4時55分に降圧剤アダラートLを投与しても、午後5時00分の血圧が155/108にまでしか下がらないという状態であった。 イ本件においては、Bの分娩遂行を助産師2名のみに委ねて、産婦人科医や麻酔科医は分娩に立ち会っておらず、唯一、午後5時00分頃、G医師が子宮口全開を確認に来たのみである。 (2)帝王切開への切替えを行う義務があることア重症妊娠中毒症の場合、医療水準上「経膣分娩か、帝王切開かの分娩様式の選択が問題になりますが、母児のリスクを考慮し、帝切を選択することが多くなっています。また分娩を遂行する例では、いつでも帝王切開ができる準備をしてのぞみ、胎児心拍数の変化、母体の血圧、全身状態に留意すべきです」とされている。 。 イさらにBは、前記のように①重症妊娠中毒症であったこと、②AIHを4回行って妊娠したこと、③高齢初産であること、④出産前の血圧のコントロールができない状態であったこと、のリスクが重なってハイリスクとなっており、被告病院は⑤帝王切開術の同意を取得していたのであるから、遅くとも、午後5時00分の時点までに帝王切開術に切り替えるべきであ った。 ウ助産師や看護師達が、Bの血圧コントロールが困難であったことや、帝王切開に切り替える必要性を感じていたことは、以下の医療記録上も明白である。 (ア) 王切開術に切り替えるべきであ った。 ウ助産師や看護師達が、Bの血圧コントロールが困難であったことや、帝王切開に切り替える必要性を感じていたことは、以下の医療記録上も明白である。 (ア)「初産、AIH4回目での妊娠、予定日は10/3であったが、妊娠中毒症にての血圧コントロール不良もあり、10/8にのぞむ。 」(イ)「現在、自然陣発まち自然分娩の方針であるが、BPコントロール不良、FHRの状態によってはC/S(帝王切開)となる可能性もある。 」エしたがって、午後5時以前から、Bの出産に産婦人科医が立ち会っていれば、血圧コントロール不良が確認できた時点で、帝王切開術に分娩方法を変更できたはずであり、そうすべきであった。 (被告の主張) Bには経膣分娩の適応が認められること(1)重症妊娠中毒症についてア重症妊娠中毒症の妊婦の場合には、妊娠を終了させるかどうかについて、十分に考察を加え、場合によっては帝王切開も念頭におかねばならないが、重症妊娠中毒症=帝王切開ではない。 すなわち、分娩方法として、陣痛を誘発して経膣分娩を行うか、帝王切開術を行うかは、病態の重症度のほかに、子宮頚管の熟化度などの症例ごとの要因を考慮して決定する。 この点、本件では、午前9時20分にラミナリア桿を抜去した時点の子宮頚管硬度は軟であり、十分に熟化していたものである。このことを確認した上で、アトニンOが投与されているのである。 したがって、本件において、重症妊娠中毒症があるからといって、帝王切開を行うべきであるとはいえない。 このことは、立会分娩のために被告病院における出産を望んだというB及び原告Cの希望にも沿うものであった。 イちなみに、被告病院は年間出生児数という点からみても、わが国有数の医療施設であるが、平成11年から平成15年の5 ために被告病院における出産を望んだというB及び原告Cの希望にも沿うものであった。 イちなみに、被告病院は年間出生児数という点からみても、わが国有数の医療施設であるが、平成11年から平成15年の5年間の妊娠22週以後の総分娩数は9021例、単胎頭位分娩は8183例でこのうち重症妊娠中毒症は113例、経腟分娩43例(38%)、帝王切開70例(62%)であった(月2例の重症妊娠中毒症が管理されている。このデータからも、)重症妊娠中毒症=帝王切開ではないことが分かる。 (2)AIHで妊娠したことAIHで妊娠したからといって、帝王切開の適応ではない。 (3)「高齢初産」についてア原告らは、34歳初産を「高齢初産」であると主張している。 しかし、高年初産婦の定義は35歳以上である。このことは、甲B第3号証も、160頁表Ⅲ-Ⅰ-5の3項において「高年妊婦…;35歳以、上の妊婦、特に初産婦」としていることからもうかがわれる。 イちなみに、被告病院のデータでは、平成11年から平成15年までの5年間の初産婦は5530人であり、24歳以下6%、25~29歳31%、30~34歳39%、35~39歳20%、40歳以上4%であった。 このデータからしても、34歳は年齢的にリスクが高いわけではないことが容易に判明する。 (4)血圧のコントロールについてア原告らは、降圧剤を投与しても血圧がコントロールできない状態であったなどと主張しているが、平成14年10月1日より血圧は安定していたものである。 イ原告らは、分娩当日の血圧は不安定であったと主張しているが、そもそも分娩当日のことを理由に、予定的帝王切開術の実施を根拠付けることは できないはずである。 (5)同意書について原告らは、帝王切開術の承諾書を予めとっていたことが帝王切開術の根拠になる もそも分娩当日のことを理由に、予定的帝王切開術の実施を根拠付けることは できないはずである。 (5)同意書について原告らは、帝王切開術の承諾書を予めとっていたことが帝王切開術の根拠になるかのような主張をしている。 しかし、帝王切開術の承諾書は、予定的帝王切開術の事前に徴する場合と、分娩経過の途中で帝王切開術となるリスクがあり、緊急時に説明する時間的余裕がないことが予測される例において、予め帝王切開術になり得る状態を説明し承諾書に同意署名を徴する場合があり、本件は後者であったものである。 (6)原告らは、単一のリスクではなく、リスクが重なっているため、予定的帝王切開術の適応に該当すると主張している。 しかし、上記のとおり、リスクが重なっているということはできない。 帝王切開への切替えを行う義務はないこと以上のとおり、子宮頚管が十分に熟化し、かつ血圧も安定していたことからして、帝王切開術への切替えを行うべき理由はない。 これに対して、原告らは、午後4時55分までに降圧剤アダラートLを投与しても、午後5時の血圧が155/108までにしか下がらないという状態だったのであるから、遅くとも午後5時までには分娩方法を帝王切開に切り替えるべきであったと主張している。 しかし、この時点における分娩様式の判断は、血圧の状態と経膣分娩に要する今後の時間の見通しによって決定される。 そして、午後5時に子宮口全開大が確認され、30分前後で出産に至る見通しであったことから、経膣分娩と判断され、午後5時24分に出産に至っているのである。 実際、午後5時の時点で帝王切開に切り替えたからといって、急変の原因が羊水塞栓症であるにせよ、そうでないにせよ、急変を回避できたとはいえない。 争点3医師・麻酔科医立会いの遅れによる治療・救命行為の遅れの有無(原告 王切開に切り替えたからといって、急変の原因が羊水塞栓症であるにせよ、そうでないにせよ、急変を回避できたとはいえない。 争点3医師・麻酔科医立会いの遅れによる治療・救命行為の遅れの有無(原告らの主張) 深部頚間裂傷の存在については、被告もこれを認めているところ、仮に被告主張の如く大量出血の原因が羊水塞栓症であったとしても、医師立会いの遅れと、立会医師の不足により、Bに対する治療・救命行為が遅れ、さらに、麻酔科医師の来室と気管挿管措置が著しく遅れた結果、Bを重度の低酸素症による致死的状況に陥らせてしまい、死亡させた。 (1)本件では、助産師の判断でも明白に緊急事態が発現したと思われる、午後5時21分頃に至ってようやく医師立会要請の連絡が行われたのであるが、その直後の午後5時22分にはBが子癇発作を起こし、強直性痙攣と意識消失が確認されているのであるから、午後5時23分にG医師が来室したのでは遅すぎる。 そもそも、それより少し前の午後5時00分にG医師が来室した時点では、Bの血圧が、午後4時20分に160/120、午後4時45分に172/107と急激に上昇していたのであるから、退室せずに、そのまま立ち会っていれば以後の緊急事態にも直ちに対処でき、Bを救命できた。 (2)また、助産師の要請により、午後5時23分頃に到着したのは産婦人科のG医師1名のみであったから、その処置も、当初は吸引分娩による胎児の出産行為が中心となり、Bに対する他の医師の治療・救命行為がさらに遅れてしまったことにより、Bを重篤な状態に陥らせてしまった。 (3)さらに、一般にパルスオキシメーターで測定される酸素飽和度であるSpO(動脈血酸素飽和度)を95%以下にしないあらゆるサポートが患者 において必要であり、SpOが90%以下になると、PaO(動脈血酸 、一般にパルスオキシメーターで測定される酸素飽和度であるSpO(動脈血酸素飽和度)を95%以下にしないあらゆるサポートが患者 において必要であり、SpOが90%以下になると、PaO(動脈血酸 、素分圧)が60mmHg以下の、いわゆる低酸素血症(ハイポキシア)となり重篤な危機状態となる。SpOが急激に75%以下に低下した場合はPa Oが40mmHg以下の極めて危険な状態であり、もともとチアノーゼ性心疾 患患者でなければ、致死的状況に陥ったことを意味している、すなわちSpOが90%以下になってから5ないし6分以内に気管挿管をしてSpO を改善させないと患者を重度の低酸素症により致死的状況に陥らせてしま うということは、麻酔科医でなくとも医師であれば当然に知っているべき事実である。麻酔科医でなくとも医師であれば当然知っているべき事実である。 本件で麻酔科医師が来室したのは午後5時40分、気管挿管がされたのは午後5時43分であるのに対し、午後5時35分にはBの酸素飽和度が80%に低下して呼吸停止が確認されており、さらに午後5時38分には酸素飽和度が40ないし60%に低下し、重度の低酸素症による致死的状況に陥らせてしまっている。 すなわち、Bの酸素飽和度が80%に低下して呼吸停止が確認された午後5時35分の時点で、麻酔科医の立会いのもと気管挿管がされるべきであったのに被告病院担当医師らはこれを怠った。 そして、麻酔科医師の来室と気管挿管の遅れにより、この後約8分間も低酸素状態が継続したことにより、Bを重度の低酸素症に陥らせ、かつ、致死的状況に陥らせてしまったのである。 その2日後の同月10日の時点では「脳波ほぼflatに近い状態、脳CT脳浮腫著名であり、植物状態にかぎりなく近い状態であった」になり、3日。 後の同月11 、致死的状況に陥らせてしまったのである。 その2日後の同月10日の時点では「脳波ほぼflatに近い状態、脳CT脳浮腫著名であり、植物状態にかぎりなく近い状態であった」になり、3日。 後の同月11日の時点では「現在、無酸素脳症の状況であり、厳しい状況である」にあり、15日後の同月23日には「脳CT:多発性出血、クモ膜。 下出血あり、植物状態から脳死に近づく、18日後の同月26日からは」「対光反射消失」という重篤な状態が継続し、その状態が回復しないまま、同年12月10日にBは死亡した。 まとめ(1)G医師は午後5時00分に分娩室に来室後、そのまま分娩室に留まるべ きであったのに、これを怠った。 (2)助産師より、午後5時21分頃に至ってようやく医師立会要請の連絡が行われたが、この時、直ちに2名以上の医師が駆けつけて、1名以上の医師は直ちにBの救命行為を行うべきであったのに、これを怠った。 (3)Bの酸素飽和度が80%に低下して呼吸停止が確認された午後5時35分の時点で、麻酔科医立会いのもと気管挿管がされるべきであったのに、これを怠った。 (被告の主張) 分娩室に留まることについて(1)原告らは、G医師は午後5時00分に分娩室に来室後、そのまま分娩室に留まるべきであったのにこれを怠ったと主張する。 しかし、午後4時20分に血圧が160/120、午後4時45分に172/107と上昇したとの連絡があったため、降圧剤内服指示を行い、午後5時に訪室したところ、訪室時には155/108と改善していたものである。 また、内診を行ったところ、子宮口全開大ではあるものの、児は下降しておらず、怒責をかけないよう指示していたこともあり、分娩まで少し時間がかかると考えられたものである(1から2分で訪室できると思われる病棟に移動。 )そも 、子宮口全開大ではあるものの、児は下降しておらず、怒責をかけないよう指示していたこともあり、分娩まで少し時間がかかると考えられたものである(1から2分で訪室できると思われる病棟に移動。 )そもそも、この時点で羊水塞栓症を発症することを具体的に予見することは不可能である。 したがって、分娩室にそのまま留まるべき注意義務はない。 (2)原告らは、G医師がそのまま立ち会っていれば以後の緊急事態にも直ちに対処でき、Bを救命できたと主張する。 しかし、児心音低下のためにG医師がコールされた午後5時21分の時点ではまだ強直性痙攣などの母体の症状は認められていなかったのである。そ して、コールから1ないし2分後に同医師が駆けつける少し前から強直性痙)。 攣、意識レベル低下が出現したのである(午後5時22ないし23分ころしたがって、分娩室に留まっていた場合に比べて、とくに処置が遅くなったなどという事実はなく、本件結果との間の因果関係も否定される。 医師立会いについて(1)原告らは、午後5時21分頃に医師立会いの要請連絡が行われたが、このとき直ちに2名以上の医師が駆けつけて、1名以上の医師は直ちにBの救命行為を行うべきであったと主張する。 しかし、児心音の低下の場合には、まずは医師1名が訪床し、その観察結果次第で応援を要請することになるのであって、児心音が低下したからといって直ちに複数名の医師が駆けつけるべきであるとはいえない。 (2)原告らは、医師2名が駆けつけなかったことで、治療・救命行為がさらに遅れてしまい、Bを重篤な状態に陥らせてしまったと主張する。 しかし、G医師が訪床した時点では強直性痙攣が出現していたため、他の医師にもコールするよう指示しつつ、助産師4名とともに、胎児の吸引分娩と並行して、気道確保(舌根沈下を防ぐための下顎挙上 主張する。 しかし、G医師が訪床した時点では強直性痙攣が出現していたため、他の医師にもコールするよう指示しつつ、助産師4名とともに、胎児の吸引分娩と並行して、気道確保(舌根沈下を防ぐための下顎挙上)やバイトブロック挿入、ホリゾンの投与などを行っている。そして、午後5時25分には他の医師も訪室して、救命処置に加わっている。 したがって、医師2名が駆けつけた場合と結果に差異が生じたとは考えられず、因果関係は否定される。 挿管について(1)原告らは、Bの酸素飽和度が80%に低下して呼吸停止が確認された午後5時35分の時点で麻酔科医立会いのもと気管挿管がされるべきであったのに、これを怠ったと主張する。 しかし、バッグアンドマスクによる呼吸管理でも、酸素飽和度低下の原因が気道閉塞にある場合などの例外を除き、気管挿管と同様の効果を期待 できる。 また、麻酔科医が気管挿管を行う場合にも、必ずバッグアンドマスクによる呼吸管理を行ってから気管挿管に取り掛かるのである。 。 本件においても、午後5時35分にはバッグアンドマスクを行っているしたがって、呼吸管理の方法として何ら問題はない。 (2)原告らは、気管挿管を行っていれば酸素飽和度が低下することはなく、致死的状況にはならなかったと主張する。 しかし、本件ではバッグアンドマスクによる呼吸管理にもかかわらず、酸素飽和度が低下しているのである。そうであれば、循環系にも問題が生じているというべきである。本件に即していえば、羊水塞栓症により肺の血流が不足している状態であったものである。 したがって、気管挿管の時期が早ければ、酸素飽和度が低下しなかったとか、致死的状況に陥らなかったなどということはできない。 争点4輸血の実施時期が適切であったか否か(原告らの主張) 分娩後異常出血に対し輸血を準備・実 期が早ければ、酸素飽和度が低下しなかったとか、致死的状況に陥らなかったなどということはできない。 争点4輸血の実施時期が適切であったか否か(原告らの主張) 分娩後異常出血に対し輸血を準備・実施する基準分娩時異常出血に対する輸血開始・手配義務に関しては、一般に、分娩時の異常出血に対しては、500~1000ml程度までの出血では早めに血管確保を行って輸液を行い、1000mlを超えれば適切に輸血を開始し、特別の事情がない限り、遅くとも1500mlを超えるまでには輸血を開始しなければならない。なお、帝王切開に際しては不慮の出血に備えて輸血の準備をしておかなければならない。判例には、出血量が1500mlを超えた時点から、当該医療機関が血液を手配してから実際に輸血を開始できる時間を遡り、その時点で血液を手配すべき義務があったとし、医師の過失を認めた事案が極めて多い。一般に、①多量の出血を認め弛緩性出血と診断した場合、又は②出血量が500mlを超えて持続性の出血が続いている場合には輸血を手配する義務が生じると いえる。 本件におけるBの出血量等と輸血を準備・実施すべき時期(1)本件におけるBの出血量午後5時24分からICU入室の午後6時37分までの間に3390ml、輸血が開始された午後6時13分までに約2274ml又は約2021mlもの大量出血があったことは、以下のカルテ上の記載等より明白である。 アアセスメント用紙には「分娩時膣より出血:3390mlICU入室、後:2098ml」と明確に記載されている。 イ同じアセスメント用紙にも「児娩出後より出血止まらず総出血量3、390㏄・・・ICUへ入室する・・・朝までに2700㏄の出血あり」と明確に記載されている。 ウG医師記載のカルテにも午後5時23分からICU入室までの も「児娩出後より出血止まらず総出血量3、390㏄・・・ICUへ入室する・・・朝までに2700㏄の出血あり」と明確に記載されている。 ウG医師記載のカルテにも午後5時23分からICU入室までの欄に「膣出血3390mlありMAP8単位」すなわち「膣出血3390mlがあ、り輸血を開始した」と記載されている。 エ分娩記録の中段に「初発収縮10月8日7時30分から分娩10月8日17時24分までの所要時間9時間56分、さらに胎盤娩出10月8日17時57分までの所要時間33分、その合計の所要時間10時間29分、この間の出血量2640+750、総出血量3390ml」と記載されており、被告主張の如くナート中までの出血量として加えられた750mlを除いたとしても、カルテ上は午後5時57分までの出血量が2640mlであったことになる。 オICU観察記録の記載は、19時(午後7時)の欄に「出血506g・・・会陰部・膣にヨードホルムガーゼ挿入し、縫合する」と記載されており、看護記録上も750mlの記載など何処にも見当たらないのであるから、「ICU転出後から会陰部縫合までの出血量が750mlである」という被告の主張は虚偽である。 カすると、ICU入室時間が午後6時38分であることは被告が自認しているので、出血開始の午後5時24分から午後6時38分までの73分間に3390mlすなわち毎分約46.4mlの出血量があったことになる。 そして、輸血開始時間が午後6時13分であることも被告が自認するところであるから、輸血開始までの49分間に約2274mlの大量出血があったことになる。 キ仮に、被告主張の如く、出血開始の午後5時24分から午後6時28分までの64分間の出血量が2640ml、毎分約41.25mlであったとしても、輸血開始時間の午後6時1 出血があったことになる。 キ仮に、被告主張の如く、出血開始の午後5時24分から午後6時28分までの64分間の出血量が2640ml、毎分約41.25mlであったとしても、輸血開始時間の午後6時13分までの49分間に約2021mlの大量出血があったことになる。 (2)輸血を準備・実施すべき時期前記のとおり、遅くとも1500mlを超えるまでには輸血を開始しなければならず、出血量が1500mlを超えた時点から、当該医療機関が血液を手配してから実際に輸血を開始できる時間を遡り、その時点で血液を手配すべき義務があるのであるから、仮に、被告主張の如く輸血のオーダーから輸血開始まで約20分かかるとしても、出血量が1500mlを超えた午後5時56分には輸血を実施し、午後5時36分には輸血を準備すべきであったことになる。 百歩譲って、被告主張の如く、出血開始の午後5時24分から午後6時28分までの64分間の出血量が2640ml、毎分約41.25mlであったとしても、出血量が1500mlを超えた午後6時00分には輸血を実施し、午後5時40分には輸血を準備すべきであったことになる。 被告病院が現に行った輸血の準備・実施措置は不適切であったこと本件における輸血開始時間は、午後6時13分であり、輸血の準備がされたのは午後5時53分である。 まとめ 被告病院医師らが、Bの出血量が1500mlを超えた午後5時56分までに輸血を実施し、そのために午後5時36分までに輸血を準備しなかったため、大量出血に起因してDICを発症させ、多臓器不全によりBを死亡させた。 (被告の主張) 分娩後異常出血に対し輸血を準備・実施する基準輸血の準備について重要なことは、妊娠時には循環血液量が増えるので、産科ショックにおける輸血のタイミングは、他の場合におけるものとは (被告の主張) 分娩後異常出血に対し輸血を準備・実施する基準輸血の準備について重要なことは、妊娠時には循環血液量が増えるので、産科ショックにおける輸血のタイミングは、他の場合におけるものとは全く違うということである。 すなわち、産科ショックにおいては、1500ml以上であれば輸血を考えるとされているのであり、1500ml以上というのは、輸血を実施する目安ではなく、輸血に向けた準備を開始する目安であることは明らかである。 本件におけるBの出血量等と被告病院が現に行った輸血の準備・実施、(1)被告病院では輸血のオーダーから輸血開始まで約20分かかる。この点本件では、輸血が開始されたのが午後6時13分であるから、午後5時53分ころ、輸血がオーダーされたことになる。 (2)先に述べたとおり、出血が開始したのは午後5時24分ころであり、出血が開始してからICUに転出した午後6時28分ころまでの64分の出血量は2640mlである。 してみると、約40ml/分で出血があったことになる。 (3)そうすると、輸血をオーダーした午後5時53分ころまでの出血量は1160mlである。 被告病院の輸血の準備・実施措置は適切であったこと(1)帝王切開術と輸血の準備について原告らは、帝王切開術の同意をとっているのであるから、分娩開始時より輸血の手配をすべきであると主張している。 しかし、前置胎盤など大量出血のリスクが高い場合は輸血を準備するが、 帝王切開術では大量出血のリスクが高いとはいえず、輸血の準備をすべきであるとはいえない。 (2)出血量と輸血の準備について先に述べたとおり、出血量についての前提自体が誤りである。 また、通常の産科ショックの場合よりも、むしろ早めに輸血をオーダーしていたものであり、輸血手配についても注意義務違反はない 輸血の準備について先に述べたとおり、出血量についての前提自体が誤りである。 また、通常の産科ショックの場合よりも、むしろ早めに輸血をオーダーしていたものであり、輸血手配についても注意義務違反はない。 因果関係輸血は出血そのものに対する対症療法にすぎず、羊水塞栓症そのものに対する治療ではないこと、羊水塞栓症の予後は極めて厳しいことからすると、Bの死亡と輸血の準備や実施時間との間に因果関係はない。 争点5ヘパリンの投与時期が適切であったか否か(原告らの主張) 仮に、大量出血の原因が羊水塞栓症であったとしても、羊水塞栓症に対しては、ヘパリン療法が基本的な治療法とされている。すなわち、文献上、ヘパリン5000単位を、呼吸困難が発生してから10分以内に静脈注射すべき、若しくは、初発症状出現後のまだ出血傾向の出てこない時期に、ヘパリン3000~5000単位を10分かけて静注するとされている。 本件では、Bの呼吸困難が発生したのは、午後5時30分であるが、ヘパリン5000単位が静脈内投与されたのは、午後5時57分であり、呼吸困難発生より27分も経過した後である。そして、現実にヘパリン投与直後より、酸素飽和度が上昇し、心拍動も回復している。 被告病院担当医師らには、医師立会いの遅れと、立会医師の不足により、羊水塞栓症の基本的な治療法であるヘパリン療法の実施が遅れた過失がある。 (被告の主張) 本件では、膣から出血があったことから、妊娠の合併症として時に見られる産道からの裂傷による出血が考慮されるが、そのような出血のみではこれほど 突発的に高度の意識障害が生ずるとは考えにくい。そのため、産道からの出血以外の疾患も合併しているものと考えざるを得ない。 そのような疾患としては、①心停止の一般的な原因であるアシドーシス、肺塞栓症、低酸素血症 度の意識障害が生ずるとは考えにくい。そのため、産道からの出血以外の疾患も合併しているものと考えざるを得ない。 そのような疾患としては、①心停止の一般的な原因であるアシドーシス、肺塞栓症、低酸素血症、心筋梗塞、また、②妊娠に合併した心停止の原因である頭蓋内出血、子癇発作、羊水塞栓症、硫酸マグネシウム中毒、肺塞栓症などが考え得る。 特に、本件では、痙攣ならびに意識消失により発症しており、産道からの出血に子癇発作や頭蓋内出血が合併している可能性が強く疑われる。羊水塞栓症)、は極めて稀な疾患であり(子癇発作、頭蓋内出血よりもずっと頻度が少ないこの時点で第一に疑うことはできない。 そして、ヘパリンは抗凝固剤であり、出血時に使用するのは禁忌であるが(出血が助長され、止まらなくなる、特に頭蓋内出血がある場合には、頭蓋)内出血が助長され、あまりにも危険である。 したがって、このような状況下ではヘパリンの投与は心肺蘇生法の第一選択とはならない。まず、大切なのは絶え間ない心臓マッサージ、エピネフリンの反復投与、人工呼吸である。そして、それらに対する反応や動脈血液ガス分析結果を検討して、原因の検索を行い、その上でヘパリンを投与するのが妥当である。 この点、被告病院医師らの対応は、午後5時22分のG医師の立会いに始まり、呼吸停止の前にはJ医師、H医師が到着し、直ちにバッグアンドマスクによる用手的人工呼吸を開始している(午後5時34分。心臓マッサージは自)己循環が回復するまで絶え間なく継続している(午後6時8分。気管挿管)(午後5時43分、動脈血液ガス分析も行われている(午後5時49分。更))には、ボスミン(エピネフィリン)の気管内投与(午後5時44分1A、午後5時45分2A、午後5時47分1A)が行われ、メイロン20mg静注(午後5時52分、 行われている(午後5時49分。更))には、ボスミン(エピネフィリン)の気管内投与(午後5時44分1A、午後5時45分2A、午後5時47分1A)が行われ、メイロン20mg静注(午後5時52分、ソルメドロール500mg静注(午後5時55分)が行われてい) る。 しかし、通常ボスミンの気管内投与は1、2分で状態の改善が図れるにもかかわらず、本件ではこれらの治療行為に対しても反応はなく、心肺停止状態は継続したのである。そこで、考えられる原因のうち、極めて稀でまさかとは思われたが、羊水塞栓症であるならば、ヘパリンを投与するという治療手段が残されており、やむを得ず、ヘパリン5000単位を投与したのである。 このように治療を行いながら、反応をみた上で、ヘパリンを投与しており、ヘパリンの投与時期としては極めて適切であったものである。このことをもって過失であるなどということはできない。 争点6経膣分娩のリスクについての説明義務違反の有無(原告らの主張) Bに対し説明すべき内容被告病院産婦人科医師は、Bに対し、分娩方法の決定及び帝王切開術の同意に際し、①重症妊娠中毒症であること、②AIHを4回行って妊娠していること、③高齢初産であることのリスクについての具体的説明や、④出産前の血圧のコントロールができない状態で経膣分娩を行うことの危険性等について、具体的な説明を行う義務があった。 Bが被告病院から実際に受けた説明内容及び1の説明を受けていれば経膣分娩に同意しなかったこと被告病院産婦人科医師は、Bに対し、前記各リスクに関する具体的説明を何ら行わず、帝王切開術の同意書への署名同意に際して、Bや原告Cに対し、「これは単にお守りのようなものです」と言ったのみである。 被告病院産婦人科医師が、分娩方法としての経膣分娩と帝王切開術に関し、胎児と わず、帝王切開術の同意書への署名同意に際して、Bや原告Cに対し、「これは単にお守りのようなものです」と言ったのみである。 被告病院産婦人科医師が、分娩方法としての経膣分娩と帝王切開術に関し、胎児と母体に対する危険性(安全性、副作用等について説明(インフォーム)ド・コンセント)を行っていれば、B及び原告Cは、分娩方法として帝王切開術を選択していた。 (被告の主張)原告らが説明すべきであると主張する事項のうち、妊娠中毒症の状態とリスクについては、入院を勧める説明をしたとき、産科病室から母体胎児集中治療室(MFICU)に移るとき、妊娠36週で妊娠を終了させる方針を説明したとき、十分に説明がされ了解され納得されている。 また、先に述べたとおり、その他原告らがリスクと指摘する点については認めることができない。 そもそも、経腟分娩の経過でリスクが生じる可能性を説明したからこそ、B及び原告Cは予め帝王切開の承諾書に署名をしたのである。すなわち、説明は十分にされ、本人が納得した上で医療処置は行われたものである。 いずれにせよ、立会い分娩の希望を持っていたという事実からしても、説明内容いかんによって、帝王切開術を選択したということはできない。 争点7損害額(原告らの主張) Bの逸失利益:7661万9970円Bは昭和43年2月6日生である。死亡時の平成14年12月10日、Bは満34歳であった。 (1)基礎とすべき収入:684万円本件において基礎とすべきBの平成12年度及び平成13年度の収入は、各々684万円であり、学歴計男女平均賃金(大卒の年収)を下回るものではない。 (2)逸失就労年数Bは、死亡時34歳であり、33年間の就労が出来たはずである。また、生活費控除率は30%といえる。 (3)以上のとおりであるから、Bの逸失利益は(68 下回るものではない。 (2)逸失就労年数Bは、死亡時34歳であり、33年間の就労が出来たはずである。また、生活費控除率は30%といえる。 (3)以上のとおりであるから、Bの逸失利益は(684万円×(-30%)×16.0025(33年のライプニッツ) 係数)=7661万9970円である。 Bの慰謝料:3000万円 原告ら固有の慰謝料:各自500万円 葬儀費用:525万8650円 入院・治療関係費:107万7819円(1)平成14年10月8日~同年12月10日の施設使用料・7万7200円(2)上記期間治療費・42万8619円(被告病院請求額278万0515円)-(世田谷区高額医療費支給額140万7495円+83万8315円+10万6086円)=42万8619円(3)医師謝礼・20万円(4)付添看護費・37万2000円本件死亡前にBに付添看護したための費用は、次のとおりである。 6000円(日額)×62日×=37万2000円 弁護士費用:1300万円したがって、原告C及び原告Dの損害として、各自6797万8219円ずつ、合計1億3595万6438円となる。 (被告の主張)争う。 以上

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