主文 1 1審被告らの各控訴に基づき,原判決中1審被告ら敗訴部分を取り消す。 2 上記敗訴部分に係る1審原告の請求をいずれも棄却する。 3 1審原告の控訴を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,1審原告の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 1審原告 原判決を次のとおり変更する。 1審被告らは,1審原告に対し,連帯して330万円及びこれに対する1審被告愛知県については平成28年8月7日から,1審被告Aについては同月20日から各支払済みまで,年5分の割合による金員を支払え。 2 1審被告A主文第1項及び第2項と同旨 3 1審被告愛知県主文第1項及び第2項と同旨第2 事案の概要 1 1審原告は,平成18年9月21日に1審被告Aと婚姻し,両者の間には,平成19年に長女であるB(以下「B」という。)が出生したが,1審被告Aは,平成24年12月27日にBを連れて1審原告肩書住所地を出て別居を開始し,平成30年9月25日に1審原告と裁判離婚し,同裁判においてBの親権者と定められた。 本件は,1審原告が,元妻である1審被告Aと,1審被告愛知県に対して,次のとおり330万円及び遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1審被告Aに対する請求 1審被告Aに対する請求は,1審被告Aが,Bに係る確定した面会交流審判に基づいて,1審原告に対してBの学校行事への参加や,Bに対する手紙や贈り物の送付を許す義務を負っていたにもかかわらず,これを免れるために虚偽の事実を申告して,住民基本台帳事務における支援措置(以下「支援措置」という。)の申出(以下「本件支援措置申出 に対する手紙や贈り物の送付を許す義務を負っていたにもかかわらず,これを免れるために虚偽の事実を申告して,住民基本台帳事務における支援措置(以下「支援措置」という。)の申出(以下「本件支援措置申出」という。)を行い,1審原告に住民票等の閲覧等を困難にさせた上で転居し,1審原告とBの面会交流を妨害するとともに,1審原告の職場(愛知県C市役所)における名誉・信用を毀損し,これらが1審原告に対する不法行為及び債務不履行に当たると主張して,1審原告が,1審被告Aに対し,不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償として330万円(慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の合計)及びこれに対する不法行為の後であり催告の後の日である平成28年8月20日(1審被告Aに対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の1審被告愛知県との連帯支払を求めるものである。 1審被告愛知県に対する請求1審被告愛知県に対する請求は,1審被告Aによる本件支援措置申出について,愛知県D警察署長(以下「D署長」という。)が,支援措置の要件を満たしていないことを認識し得たにもかかわらず,1審被告Aが支援措置の要件を満たす旨の「相談機関等の意見」(以下「本件意見」という。)を付し,その後もこれを撤回しないことが,国家賠償法上違法であると主張して,1審原告が,1審被告愛知県に対し,国家賠償法1条1項に基づいて,上記と同様の330万円及びこれに対する違法行為の後の日である同月7日(1審被告愛知県に対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで同割合による遅延損害金の1審被告Aとの連帯支払を求めるものである。 2 原審の判断 1審被告Aに対する請求について,1審被告Aが,本件支援措置申出を行 うに当たり,支援措置の要件のうち 合による遅延損害金の1審被告Aとの連帯支払を求めるものである。 2 原審の判断 1審被告Aに対する請求について,1審被告Aが,本件支援措置申出を行 うに当たり,支援措置の要件のうち,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下「DV防止法」という。)1条2項に規定された被害者であることの要件(以下「被害者要件」という。)を欠いていたとはいえないが,暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあることの要件(以下「危険性要件」という。)を欠いており,1審被告Aにおいてそのことを認識していたにもかかわらず,専ら1審原告との面会交流を阻止する目的で本件支援措置申出を行うという目的外利用をしたと認められるから,1審被告Aが本件支援措置申出を行ったことは不法行為に当たるとして,1審被告Aに対し,1審原告の職場における信用低下等についての慰謝料50万円,弁護士費用5万円の合計55万円及びこれに対する平成28年8月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を,1審被告愛知県と連帯して1審原告に支払うよう命じた。 1審被告愛知県に対する請求について,愛知県D警察署員(以下「D署員」という。)は,本件支援措置申出が危険性要件を満たしているかどうかについて,目的外利用の可能性を疑うべき端緒も十分にあり,更なる事実確認が必要な状態であったにもかかわらず,これを行わず,確認をしていれば支援措置の要件があるとの心証を得られないことは明白であったから,D署長には,D署員の上記調査義務懈怠を看過して本件意見を付記した注意義務違反があるとして,1審被告愛知県に対し,1審原告の勤務先における信用低下等についての慰謝料及び弁護士費用として,上記と同額及びこれに対する平成28年8月7日から支払済みまで年5分の割合による 務違反があるとして,1審被告愛知県に対し,1審原告の勤務先における信用低下等についての慰謝料及び弁護士費用として,上記と同額及びこれに対する平成28年8月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を,1審被告Aと連帯して1審原告に支払うよう命じた。 そこで,1審原告及び1審被告らが各別に控訴した。 3 関係法令の定め等,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正し,4のとおり1審原告の当審における補充主張を,5のとおり1審被告Aの当審における補充主張を,6のとおり1審被告愛知県の当審におけ る補充主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要等」の2ないし5に記載するとおりであるから,これを引用する。 原判決3頁23行目の「配偶者からの暴力」の後に「(ただし,同章においては,身体に対する暴力に限る。6条1項)」を加える。 同4頁24行目の「暴力により」を「更なる暴力により」と改める。 同5頁7行目の「児童相談所等(以下「相談機関等」という。)」から9行目末尾までを「児童相談所等(以下「警察署等」という。)の相談先の意見を聴取する。相談先が警察署等である場合の確認方法は,次のとおりである。」と改める。 同5頁14行目の「警察等」を「警察署等」と改める。 同6頁7行目冒頭から18行目末尾までを,次のとおり改める。 「ア支援措置の対象とされている配偶者からの暴力とは,DV防止法1条1項に規定する配偶者からの暴力(配偶者からの身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動)をいう。(丙10)警察は,市町村に支援措置申出がされると,これを受け付けた市町村長から相談機関等の一つとして意見聴取を受けることがある。警察は,意見聴 ずる心身に有害な影響を及ぼす言動)をいう。(丙10)警察は,市町村に支援措置申出がされると,これを受け付けた市町村長から相談機関等の一つとして意見聴取を受けることがある。警察は,意見聴取に対して,支援措置申出者が上記の配偶者からの暴力を受けた被害者であるか否か,更なる暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるかについて,当該市町村長に意見を述べる。なお,更なる被害を受けるおそれの認定については,平成27年3月11日付け警察庁丙生企発第45号の通達「配偶者からの暴力,ストーカー行為等,児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者に関する個人情報保護のための支援措置の運用について」(丙10。以下「本件通達」という。)において,相談を受けてから相当の期間が経過しているため現在の状況を把握していない場合を除き,配偶者からの暴力等の被害者であると認められることをもって認定して差し支えないとされている。 イなお,支援措置申出が,配偶者からの暴力のうち,身体に対する暴力の被害者による場合には(DV防止法6条1項参照),警察の上記対応は,DV防止法8条の2が定める援助措置の一環としても行われることとなる。」 同7頁3行目及び5行目の「被告」をいずれも「1審被告愛知県」と改める。 同7頁21行目の「このため」から25行目末尾までを,次のとおり改める。 「1審原告は,同年7月2日に本件面会交流審判を債務名義として間接強制を申し立て,執行抗告を経て,平成27年5月28日,原判決別紙2記載の第1項ないし第4項に係る部分に関し,平成26年10月16日までの不履行及び同年12月26日以降の不履行について,1回につき4万円の支払を1審被告Aに命じる旨の名古屋高等裁判所の決定を得た。(甲2,3)」 同10頁 部分に関し,平成26年10月16日までの不履行及び同年12月26日以降の不履行について,1回につき4万円の支払を1審被告Aに命じる旨の名古屋高等裁判所の決定を得た。(甲2,3)」 同10頁2行目の「警察署長等が」を「警察署等の長(以下「警察署長等」という。)が」と改める。 同10頁14行目の「関わらず」を「かかわらず」と改める。 4 1審原告の当審における補充主張 1審原告は,本件支援措置決定がされる前には,親権者として,Bの通学する小学校や教育委員会から,Bの学校での状況など様々な情報提供を受けていたが,本件支援措置決定がされた後には,Bが通学する学校がどこであるのかさえ情報提供を受けられなくなってしまった。 これは,明らかに,1審原告に本件面会交流審判に基づく学校行事への参加を認めるための当然の前提である,通学先の学校を把握する権利を侵害するものであり,親権者が子に関する情報を個人情報として取得する権利を侵害するものである。1審原告は,本件支援措置決定がされたことにより,親権者として当然知り得るべき個人情報や,本件面会交流審判に基づいて当然 得られるべき情報に接することができず,不利益を受け権利を侵害されていることは明らかであるから,これに対する慰謝料が認められるべきである。 また,本件面会交流審判は,1審原告が手紙を送付することを認めているから,1審被告Aは,上記手紙がBに到達するのを妨げてはならない義務を負っている。しかし,1審被告Aは,本件支援措置申出を行ってこれを妨害しているほか,1審被告Aの代理人弁護士も,1審被告Aの誤った対応を正させる対応を取らないから,本件支援措置決定がされた後にも,1審被告Aに代理人弁護士がいることによって,1審原告がBに手紙を送付することが可能であった Aの代理人弁護士も,1審被告Aの誤った対応を正させる対応を取らないから,本件支援措置決定がされた後にも,1審被告Aに代理人弁護士がいることによって,1審原告がBに手紙を送付することが可能であったとはいえない。 支援措置は,それがなされると,住民票等を取り扱う住民課だけでなく,関係部局に情報提供されることを当然の前提としている。C市の「住民基本台帳事務における支援措置受付等マニュアル」によれば,支援措置の受付後,市民課,税3課で情報共有がされることとなっており,その他,関係分野であるこども部(こども育成課,家庭児童課,保育課),国保年金課,医療助成室でも,支援措置の情報共有がされるとのことである。 したがって,本件支援措置決定がされたとの情報は,C市役所内の多くの職員が,既に供覧し合議して広まっているのであり,関係部署では,1審原告,1審被告A又はBのいずれかの情報を検索すると,自動的に家族全員の情報が端末に表示され,加害者とされる者が分かるようになっているから,本件支援措置決定による1審原告の名誉・信用毀損の被害は甚大である。 1審被告Aは,D市に住民票を残したままにして現住所地に転居しているのであるから,本件支援措置決定は,住所秘匿の目的には全く無意味であり,このように無意味な本件支援措置申出が行われたことにより,1審原告が名誉侵害の被害を受けることになった。 D署員も,1審被告Aの相談内容に照らし,1審被告Aの現住所地が住民票から1審原告に知れる可能性はないため,そもそも本件支援措置申出を行 う必要がなかったことを相談の時点で把握することができた。D署員の対応は,被害者保護の建前の下,過度に1審原告の権利侵害をしたことになり,その過失は重大である。 1審原告は,原判決がなされた後,本件支援措 ことを相談の時点で把握することができた。D署員の対応は,被害者保護の建前の下,過度に1審原告の権利侵害をしたことになり,その過失は重大である。 1審原告は,原判決がなされた後,本件支援措置申出を受け付けたD市長に対し,本件支援措置申出の必要性がなかったことを報告するとともに,住民票の職権消除の方法による支援措置の終了を求め,その上で,他の市町村長への対応連絡をするよう要請したが,D市長はこれを拒否している。したがって,原判決がなされた後にも,1審原告の信用は容易には回復困難な状況にあり,1審原告が受けた被害は,1審被告Aの害意や1審被告愛知県の明らかな落ち度から生じたものであるから,50万円の慰謝料は低額に過ぎる。 5 1審被告Aの当審における補充主張 平成27年1月23日のBの授業参観における1審原告の言動は,1審被告A及びBの心身に有害な影響を及ぼすものであるから,別居後,1審原告において,いわゆるDV防止法1条1項が定義する暴力(身体的暴力だけでなく,心身に有害な影響を及ぼす言動を含むもの)を振るったことがないとはいえず,暴力を振るおうとしたことがないともいえない。 すなわち,1審原告は,同日の学校行事等の際,Bの心情を無視し,その心情を慮ることなく,嫌がるBを動画で撮影し続けるなどの行動をしたところ,これが子に著しい心理的外傷を与える言動(児童虐待の防止等に関する法律2条4号)であることは,主治医の意見書(乙1)から明らかである。 また,1審原告は,本件支援措置申出の時点で,面会交流,子の監護者指定,子の引渡し,間接強制の申立てなどの多数の法的手続を取り,これらの法的手続の中で,1審被告Aを連れ去り,嘘つき等々と非難した。 したがって,本件支援措置申出をした平成28年3月31日時点において, し,間接強制の申立てなどの多数の法的手続を取り,これらの法的手続の中で,1審被告Aを連れ去り,嘘つき等々と非難した。 したがって,本件支援措置申出をした平成28年3月31日時点において,1審被告Aにつき,1審原告の「暴力によりその生命又は身体に危害を受け るおそれ」は存在していた。 1審被告Aは,平成27年6月23日にD署を訪れた際,本件面会交流審判がされており,学校行事への参加が認められていることも伝えた上で,Bの体調が良くなくなったので,1審被告Aの判断で今は面会交流をさせていないこと,1審原告が学校に来てしまうことでBが困っていることから,それを何とかする手立てはないかと相談した。1審被告Aの住所は,遅くとも平成26年7月26日には1審原告に知られていたから,それから1年近くも過ぎた時点で,D署まで避難先を知られたことを相談に行くことはない。 Bは,平成28年1月28日,1審原告が授業参観に参加した後に錯乱状態となり,以後,些細なことでも怒りを爆発させて錯乱に陥るようになり,ほとんど小学校に通うことができなくなった。1審被告Aは,1審原告との紛争が延々と続き,1審原告からの非難にさらされることや,学校行事での1審原告の不適切な言動とそれによるBの不安定な状態への対処について,不安感や危機感を覚え,Bとの間で,1審原告に住所も学校も知られていることが不安の源泉であると確認した。1審原告の言動で精神的に苦しめられるのではないかとの不安は,1審原告の知らない場所に転居することでしか解消できないものであったから,1審被告Aは,同年4月の転居を決意したのであり,1審原告がBの学校行事に参加する状況を打開するといった小さな理由から転居を決意したのではない。 1審原告の言動によって,1審被告AもBも精神的に追い詰めら ,同年4月の転居を決意したのであり,1審原告がBの学校行事に参加する状況を打開するといった小さな理由から転居を決意したのではない。 1審原告の言動によって,1審被告AもBも精神的に追い詰められ,Bは錯乱状態に,1審被告Aは突発性難聴になり,過呼吸発作も起こした。1審原告の言動は,1審被告AやBの心身に有害な影響を及ぼしており,この環境から離れる行動は,1審原告の暴力からの退避である。 1審被告Aは,平成28年3月31日,行方不明届の不受理届を提出するため,D署を訪れたが,その際,本件申出書の用紙は持参していない。1審被告Aから上記不受理届の申出を受けたE警察官は,1審被告Aの過去の相 談記録等を確認の上,1審被告Aに対し,加えて支援措置の手続を取るよう助言し,D署内に保管されていた本件申出書を1審被告Aに手渡した。1審被告Aは,E警察官の助言に従って本件申出書に署名し,必要事項を記入し,E警察官は,警察の意見を付した本件申出書を1審被告Aに渡した。 このように,1審被告Aは,D署員の勧めに応じて本件支援措置申出をしたものであり,面会交流を妨害する目的で,本件支援措置申出を行ったのではない。1審被告Aは,本件面会交流審判で定められた内容を間接的なものに変更を求める調停(以下「本件面会交流変更調停」という。)の申立ても行っていたし,主治医の意見書から,本件面会交流審判の条項が変更される見通しも持っていた。また,1審原告の参加が予定される学校行事をBに欠席させることで,面会交流を避けることは可能であった。 1審被告Aが,本件支援措置申出について,専ら,1審原告がBと面会することを阻止する目的であったのならば,慣れ親しんだD市内から転居する必要もなければ,住民票を移さない状態で本件支援措置申出をする必要もなかった。 件支援措置申出について,専ら,1審原告がBと面会することを阻止する目的であったのならば,慣れ親しんだD市内から転居する必要もなければ,住民票を移さない状態で本件支援措置申出をする必要もなかった。 1審原告が,1審被告Aの住所や,Bが通う小学校も知っていた状況下で,1審被告Aに接触及び攻撃をしていなかったとしても,1審被告A及びBが1審原告の知る住所から移動しようとした場合に,1審被告Aの居所を探索し,接触し,危害を加えるおそれまで否定することは困難である。 また,1審被告Aは,1審原告と同居中,1審原告から暴力を振るわれ,暴言を吐かれるなど心身に有害な影響を及ぼす言動をされてきたのであり,別居後は1審原告との間で多数の法的紛争が裁判所に係属し,その手続の中で1審原告からの非難にさらされてきたし,学校行事などでの1審原告の問題ある言動で,Bともども苦しめられてきた。1審被告Aは,1審原告の言動に対して不安感や圧迫感を覚えており,D署の危険性ありとの判断を受けて,自らの危険性の認識を再確認したことは何ら不自然ではない。 支援措置の要件のうち,危険性要件の有無の判断は,おそれの有無,危険性の有無といった評価を伴うものであるから,強い不安を抱く当事者が,その時点の警察の判断を信じて,警察から勧められた支援措置を行ったことが違法となり,法的責任を負わされるのは,到底理解できない結果である。 支援措置は,支援措置を申し出た者の世帯の住民票等を,加害者とされた者に取得されないようにし,被害者の安全を図る制度である。支援措置がされた事実は公表されるわけでもなく,住民票等の交付申請をした際に,不交付とされた当事者及び窓口職員が知るのみであるから,社会的評価の低下等の影響など生じない。 また,市役所の職員は,職務上知り得 た事実は公表されるわけでもなく,住民票等の交付申請をした際に,不交付とされた当事者及び窓口職員が知るのみであるから,社会的評価の低下等の影響など生じない。 また,市役所の職員は,職務上知り得た事柄につき守秘義務を負っており,支援措置の制度は,公務員が守秘義務を守り,その情報が伝播しないことを当然の前提として成り立っている。したがって,1審被告A及びBが支援措置対象世帯であり,1審原告が加害者とされる者であるとの情報が,仮に関係部署の職員にまで広がり,1審原告の信用低下等をもたらすに至っているならば,情報管理の不徹底により,C市が法的責任を負うべきものである。 1審被告Aは,本件支援措置決定がC市役所に伝わることは認識していたものの,その情報がC市役所内でどのように取り扱われるのか,どの範囲で共有されるのか等については全く分からないし,1審原告が,あえてC市役所にて1審被告A又はBの住民票の写しを取ろうとすることも予測できない。 職場での信用低下等が生じたことも非常に疑わしいが,仮にそのような事実が生じたとしても,これを1審被告Aが予見するのは無理である。 1審原告が提出したC市役所職員の掲示板(甲22)によっても,支援措置を受けている世帯である場合(本件であれば,1審被告A及びBの世帯)には,住民記録の照会画面で検索すると,画面上でその旨が表示されるにとどまり,その内容から,関係部署の職員に1審原告がDV加害者と認定され得る状況となった事実を認定することはできない。 6 1審被告愛知県の当審における補充主張 仮に,D署員において,1審原告が1審被告Aの住所を把握した時期,本件援助申出までに1審被告Aに接近したことがあったか,面会交流に関してどのような争いや審判等があるか等を調査したとしても,その結果からは ,D署員において,1審原告が1審被告Aの住所を把握した時期,本件援助申出までに1審被告Aに接近したことがあったか,面会交流に関してどのような争いや審判等があるか等を調査したとしても,その結果からは,1審被告Aについての危険性要件が低減したと判断することはできない。 すなわち,①1審被告Aが,D市のアパートの住所を1審原告に対し自発的に伝えていないにもかかわらず,1審原告にその住所を探知された事実があること,②面会交流をめぐる紛争が解決に向かうことなく,長期にわたり継続していること,③1審原告がBの学校行事に参加した際に,1審被告Aとの間で現にトラブルが発生していることからすれば,1審原告と1審被告Aの関係は,期間の経過により紛争が沈静化しているわけでもなく,むしろ,面会交流が果たされないことにより,1審原告が1審被告Aに対して憤怒の感情を増幅させていることが推認される。 そうすると,D署員が1審原告と1審被告Aの現状を調査して把握したとしても,1審被告Aの危険性要件が低減しているとは判断できない。 配偶者からの暴力的事案を含む,恋愛感情のもつれに起因する暴力的事案の特徴は,事態が急展開して重大事件に発展するおそれが大きく,また,加害者の被害者に対する執着心や支配意識が非常に強いから,D署が1審被告Aからの相談を受理してから一定の期間が経過したとしても,1審被告Aに対する危険性要件が完全に払拭されたとは判断できない。また,警察実務の現場においては,配偶者からの暴力等事案を含む恋愛感情等のもつれに起因する事案として,被害者が加害者から危害を加えられ,殺人にまで至る事案も複数発生しているとの社会情勢を踏まえ,被害者の安全確保の観点から,危険性要件を積極的に認定することが社会的にも要請されている。 警察組織としては,平成 危害を加えられ,殺人にまで至る事案も複数発生しているとの社会情勢を踏まえ,被害者の安全確保の観点から,危険性要件を積極的に認定することが社会的にも要請されている。 警察組織としては,平成25年12月6日付け警察庁丙生企発第132号の通達「人身安全関連事案に対処するための体制の確立について」において, 「危険性・切迫性が極めて高いとは認められない場合であっても,被害者等に危害が加えられる危険性・切迫性が否定できず,又は判断できないときは,危険性等について積極的に判断して,同様に対処すること。」とされているように,被害者の安全確保を至上命題として対応しなければならない。したがって,D署が1審被告Aに係る被害者要件を認定したこと,本件において危険性要件を払拭する材料が何ら存しないことに照らせば,D署長が本件意見付記を行ったことは,妥当な取扱いである。 DV防止法第三章の規定の趣旨は,配偶者又は配偶者であった者からの身体に対する暴力を受けた被害者について関係機関の連携のもとに必要な措置を講じ,又は援助を行い,もって被害者を迅速に保護することにあり,その趣旨に照らせば,上記第三章の規定は,専ら,被害者に対する関係での関係機関の行為規範ないし努力義務を定めたものであり,加害者とされる他方配偶者に対して関係機関が職務上の法的義務を負うことを想定していないものである(東京高等裁判所平成26年8月21日判決)。 DV防止法14条1項は,同法の第四章(保護命令)の定めに係るものであるところ,その要件や効果は,同法8条の2による警察署長の援助とは全く異なるものである。同法8条の2が置かれた第三章(被害者の保護)の条項においては,加害者側とされる者の保護法益を考慮した規定は存在しておらず,第四章(保護命令)に上記を考慮し 警察署長の援助とは全く異なるものである。同法8条の2が置かれた第三章(被害者の保護)の条項においては,加害者側とされる者の保護法益を考慮した規定は存在しておらず,第四章(保護命令)に上記を考慮した規定が存在することをもって,警察署長が,同法8条の2に基づき援助を行うに当たり,加害者との関係でも職務上の注意義務を負っているとはいえない。現行法の第三章において,加害者の権利保障に係る明文規定が存在しない限り,D署が1審原告に対してそもそも法律上の注意義務を負うことはないことはもとより,仮に注意義務違反を問われ得るような場合があるとしても,本件においては,注意義務違反があったとはいえない。 D署長は,本件意見を付すことにより,C市役所の住民基本台帳事務を担 当する特定かつ少数の担当職員が,本件支援措置決定に係る情報に接するであろうことを認識し得たとしても,それを超えて,同担当職員が,職務上知り得た本件支援措置決定に係る情報を他の職員に知らしめ,これにより1審原告の信用低下が発生するなどということは,公務員(市役所職員)に課せられた守秘義務の観点に照らし,到底想起し得ない。したがって,D署長には,1審原告の信用低下という損害についての予見可能性が存在しない。 また,1審原告の供述によれば,C市役所では,支援措置の対象者についてシステム上の抽出が行えるようであるが,その抽出を行うことができるのは,特定かつ少数の職員に限られている。仮にC市役所における1審原告の信用低下が発生したのであれば,それはC市役所の情報管理がずさんであったことによるものであり,1審被告愛知県が責任を負うものではない。 さらに,支援措置の決定は,あくまでも各自治体の判断においてなされるものであり,D署長による本件意見の付記は,そのための資 ったことによるものであり,1審被告愛知県が責任を負うものではない。 さらに,支援措置の決定は,あくまでも各自治体の判断においてなされるものであり,D署長による本件意見の付記は,そのための資料に過ぎないから,仮に本件意見の付記に関してD署長に職務上の注意義務違反が認められるとしても,そのことと1審原告の信用低下等の損害との間には,相当因果関係も存在しない。 なお,実務上,DV加害者とされる者が自治体職員であるがために,支援措置決定に係る情報が当該DV加害者に伝わり,当該DV加害者の信用低下等が発生する懸念があるといった事情を理由として,警察署長等がDV防止法上の援助措置の適否につき忖度するようなことがあってはならないのであり,当該情報については,公務員に課された守秘義務に配慮して取り扱われるべきものである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,原審と異なり,1審被告Aの行った本件支援措置申出が,違法なものとは認められず,1審被告愛知県が,本件支援措置申出について本件意見を付したことも,国家賠償法上違法なものとは認められないから,1審原告 の請求は,いずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 2 認定事実前記前提事実(補正後)に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。なお,証拠については,断りのない限り枝番号を含み,尋問結果については,いずれも原審におけるものを指す。 別居までの状況1審原告と1審被告Aは,婚姻後,1審原告肩書住所地に居住していたところ,平成23年頃,1審原告が1審被告Aの態度に立腹し,1審被告Aの尻を足の裏で押したことがあった。また,1審原告と1審被告Aは,平成24年10月23日,口論となり,1審被告Aが閉めたドアを1審原告 ろ,平成23年頃,1審原告が1審被告Aの態度に立腹し,1審被告Aの尻を足の裏で押したことがあった。また,1審原告と1審被告Aは,平成24年10月23日,口論となり,1審被告Aが閉めたドアを1審原告が開けた際,1審被告Aの腕がドアと壁の間に挟まれて皮がめくれたことがあった。 1審被告Aは,同年12月27日,Bを連れて1審原告方を出て,実家に身を寄せ,1審原告との別居を開始した。1審被告Aは,別居を決断するに際し,愛知県女性相談センターなどに対して,1審原告から暴力を受けている旨の相談をし,同センターから助言を受けていた。 (以上につき,甲18,31,乙15,30,丙2ないし4,1審原告本人,1審被告A本人)1審原告と1審被告Aの紛争の経過及びBの状況等ア平成25年の出来事1審原告は,平成25年2月7日,名古屋家庭裁判所D支部に対し,1審被告Aを相手方とした面会交流調停事件を申し立て,同年4月4日,子の監護者の指定及び子の引渡し調停事件(1回目)を申し立てた。同年5月10日,同支部内で1審原告とBの試行的面会交流が実施された。 (甲2の1,26)上記面会交流調停事件の調停期日は,その後,同年6月25日に上記 支部において開かれた。1審原告は,上記調停期日終了後,D署に赴き,1審被告Aとは別居中で離婚調停の準備中であること,1審被告AがBに心理的な虐待を加えているかもしれないこと,自分は1審被告AからDVをしていると言われているが身に覚えがないことを,D署員に対して伝えた。 上記申出を受けたD署は,同日,1審被告Aを呼び出し,1審被告Aから事情聴取をした。1審被告Aは,1審原告とは離婚に向けて調停中であること,自分がBを虐待している事実はないこと,同居中に自分は1審原告からDVを受けてい ,同日,1審被告Aを呼び出し,1審被告Aから事情聴取をした。1審被告Aは,1審原告とは離婚に向けて調停中であること,自分がBを虐待している事実はないこと,同居中に自分は1審原告からDVを受けていたこと等を述べた。なお,1審被告Aは,同月26日,1審原告がD署に相談したことを不服として,代理人弁護士を通じて,同年7月の1審原告とBの面会交流を拒絶する旨の連絡文書を送った。 (以上につき,甲23,24,31,乙31,丙1,2,1審原告本人,1審被告A本人) 1審被告Aは,同年7月4日,D署を訪れて,F警察官に対し,C市で同居していたときの1審原告のDVが原因で別居し,同年3月1日からはD市に避難していること,D市の詳細住所は1審原告に知られていないこと,愛知県女性相談センター等に相談していることを伝えた。D署は,愛知県女性相談センターに対して,平成24年12月に1審被告Aから相談があった旨を確認し,1審被告Aの申出をDV案件として処理することにした。 この際,1審被告Aは,1審原告からのDVの被害状況として,被害歴は3年くらい前から,被害頻度は2日に1回(身体的暴力だけでなく脅迫被害を含む。)である旨を申告し,①最もひどかった身体に対する暴力被害は,平成23年春頃に1審原告から右大腿部を力いっぱい蹴られ,痣が1か月くらい残ったことである旨を,②最もひどかった脅迫被 害は,同年夏頃,銀行駐車場において,1審原告から「今すぐ俺の言った金額をおろしてこい。早くしろ。」と怒鳴り散らされたことである旨を,③直近の被害状態は,平成24年10月,1審原告方において,1審原告が1審被告Aの部屋のドアを無理やり開けたため,1審被告Aの腕がドアと壁に挟まって腕の皮がめくれ,赤く腫れたことである旨を,①と③について医師の診察は受け 24年10月,1審原告方において,1審原告が1審被告Aの部屋のドアを無理やり開けたため,1審被告Aの腕がドアと壁に挟まって腕の皮がめくれ,赤く腫れたことである旨を,①と③について医師の診察は受けていない旨を説明した。そして,警察の対応に関しては,離婚手続中なので警察には何もしないで欲しいし,警察からの定期的な連絡も希望しないと述べた。 F警察官は,1審被告Aから,親権問題でもめており,将来的にBと1審原告を会わせるかもしれないと聞いたことから,対応票の「加害者の子に対する面接交渉権」の欄について「あり」をチェックし,1審被告Aに対し,何かあったときにはすぐに警察に通報することなどを教示した。 (以上につき,乙31,丙3,4,12,証人F警察官,1審被告A本人)他方で,1審原告は,平成25年7月16日,再度D署を訪れて,1審被告AはBが1審原告になつくことを恐れており,Bの親権を1審原告に渡したくないようであることや,同月にBとの面会が予定されていたが,1審被告Aの代理人弁護士から書面が届いて面会を拒絶されていること,面会は月1回・3時間となっていることなどを伝えた。(甲24,25,31,丙14,1審原告本人)1審原告とBの面会交流は,同年8月25日及び同年9月16日に,裁判所外において行われた。また,上記アの面会交流調停事件の期日では,同年10月15日,面会交流についての中間合意が成立し,以後,これに基づいて月1回の面会交流が行われた。しかし,同年12月3日,上記調停事件は不成立となり,子の監護者の指定及び子の引渡し調停事 件(1回目)もいずれも不成立となり,全ての調停事件が審判手続に移行した。(甲2の1,27,28,31,乙19)イ平成26年の出来事1審被告Aは,平成26年,名古屋家庭裁判所C 件(1回目)もいずれも不成立となり,全ての調停事件が審判手続に移行した。(甲2の1,27,28,31,乙19)イ平成26年の出来事1審被告Aは,平成26年,名古屋家庭裁判所C支部に,1審原告を被告として離婚等請求訴訟を提起し,1審原告は,同訴訟において,離婚等請求反訴を提起した(同支部平成26年(家ホ)第7号,第34号)。(乙29,弁論の全趣旨)名古屋家庭裁判所D支部は,同年3月28日,上記アの面会交流調停事件から移行した審判事件において,1審被告Aに対し,原判決別紙2面会要領記載の条件で1審原告がBと面会交流することを許さなければならない旨の審判(本件面会交流審判)をし,本件面会交流審判は,同年5月27日に確定した。本件面会交流審判においては,1審原告とBの関係は良好であり,Bは1審原告との面会交流を心待ちにしているとの認定がされる一方,1審原告と1審被告Aの対立関係は非常に先鋭化していると指摘された。 他方で,上記アのとおり調停不成立となり審判に移行した子の監護者の指定及び子の引渡し事件(1回目)と,これらを本案として1審原告が同年1月14日に申し立てた保全事件は,同年3月28日に,いずれも1審原告の申立てを却下する旨の審判がされ,その後確定した。 (甲2,乙29)Bは,同年4月にG小学校に入学し,1審原告は,本件面会交流審判に基づいて,Bの小学校の行事(入学式,運動会等)に参加していた。 1審原告は,遅くとも同年7月26日までには,1審被告AとBがD市のアパートに住んでいることを把握し,B宛ての郵便物の送付を始めた。 このため,1審被告Aも,遅くとも同年8月頃には,1審原告が1審被告Aの現住所を知っていることを認識していた。(甲4,17,31, 1審被告A本人)本件面会交流 郵便物の送付を始めた。 このため,1審被告Aも,遅くとも同年8月頃には,1審原告が1審被告Aの現住所を知っていることを認識していた。(甲4,17,31, 1審被告A本人)本件面会交流審判において定められた面会交流のうち,Bを1審原告に引き渡す方法による面会交流は,同年6月7日から同月8日に宿泊を伴う方法で行われたが,その他には実施されなかった。 1審原告は,同年7月2日,1審被告Aを債務者とし,本件面会交流審判に基づく義務(ただし,原判決別紙2の第1項ないし第4項に係る部分に限る。間接強制に関しては以下同じ。)不履行に対する間接強制を求める申立てを行った。同申立てを受けた名古屋家庭裁判所D支部は,同年9月29日,面会交流の義務不履行1回につき1万円の支払を命ずる間接強制決定をした。これに対し,1審原告は,間接強制金が不当に低額であるとして即時抗告をした。(甲3,乙12)1審原告は,上記間接強制を求める申立てに加え,同年7月7日,子の監護者の指定及び子の引渡し申立事件(2回目)を申し立て,これらを本案とする保全事件も申し立てた。(以上につき乙2,3) Bは,同年5月末頃から,小学校への登校を渋り始めた。Bは,同年6月4日及び同月6日,Hを受診し,同月7日の1審原告との宿泊を伴う面会交流(上記)の後,同年7月3日,Iを受診した。 Bは,Iにおいて,性的な刺激を受けた疑いが強いとされ,J相談センター(以下「児童相談所」という。)に,同年10月17日付けで一時保護され,同月17日から同年12月25日まで,Iに入院した。一時保護は,同日に解除された。(以上につき乙1,12,19,27)ウ平成27年の出来事 1審原告は,本件面会交流審判に基づき,平成27年1月23日に実施されたBの授業 院した。一時保護は,同日に解除された。(以上につき乙1,12,19,27)ウ平成27年の出来事 1審原告は,本件面会交流審判に基づき,平成27年1月23日に実施されたBの授業参観に参加した。 1審原告は,3時限目の休み時間の廊下や,4時限目の保健室で,泣きながら1審被告Aに抱かれている状態のBに話しかけながら,質問し て返答を迫り,執拗にその様子をスマートフォンで録音録画するなどの行動を取った。(甲67,乙19,27) 前記イの即時抗告審は,平成27年5月28日,原決定を変更して,間接強制金を1回につき4万円とすることを内容とする決定をし,同決定は確定したが,1審被告Aは,その後もBを1審原告に引き渡す方法での面会交流を実施しなかった。(甲3の2,乙20)Bは,上記の授業参観の後,1審原告に対して不安感や忌避感を抱くようになり,1審原告が学校に来ないでほしいとか,来ると嫌だと1審被告Aに伝えるようになった。また,Bは,同年3月15日,1審原告に対し,撮影をしないでほしい,約束を守れない人は学校に来ないでほしいとの趣旨の手紙を出すなどしたが,1審原告は,同年4月の授業参観に参加した。Bは,同年5月2日,1審原告に対し,学校に来ないでほしいとの手紙を出したが,1審原告は,同月11日頃,「ひとのわるぐちをかいたりいうのはやめようね!」等と記載した手紙を小学校のBの下足箱に残したほか,同年6月には,学校に個人的に授業参観を申し込んで,Bの様子を見に来るなどした。Bは,2年生に進級した同年4月以降も,登校を渋ることが続いた。(乙1,12,19,27,31,54から56)1審被告Aは,上記の状況を踏まえ,1審原告を学校に来させない方法がないか,Iの主治医,小学校,児童 た同年4月以降も,登校を渋ることが続いた。(乙1,12,19,27,31,54から56)1審被告Aは,上記の状況を踏まえ,1審原告を学校に来させない方法がないか,Iの主治医,小学校,児童相談所等に相談したが,離婚が成立しておらず,本件面会交流審判がされている以上は難しいと言われた。1審被告Aは,カウンセラーから,警察に相談するよう助言され,同年6月23日,D署を訪れた。 1審被告Aから相談を受けたF警察官は,「警察安全相談等・苦情取扱票」(丙5)において,1審被告Aの申出内容として「夫に避難先がバレました。そして,夫が娘の小学校の父兄参観に参加してました。ど うしたらいいですか。」と記載し,措置として「申出者に対して保護命令制度の説明をしたところ納得した。」と記載した。(乙31,丙5,12,証人F警察官,1審被告A本人)1審被告Aは,1審原告を相手方とし,同年7月6日,名古屋家庭裁判所C支部に,本件面会交流審判を間接的な面会交流に変更することを求める本件面会交流変更調停を申し立て,同調停は,同年8月17日,名古屋家庭裁判所D支部に回付された。しかし,上記イのとおり1審原告が平成26年に申し立てた子の監護者の指定,子の引渡し申立事件(2回目)の審理が先行したため,本件面会交流変更調停の第1回調停期日が開かれたのは,平成28年7月1日であった。(以上につき乙19) 本件支援措置申出ア 1審原告は,平成28年1月28日,Bが通うG小学校を訪れ,授業参観に参加したが,Bは,1審原告が帰った後,学校内で錯乱状態となった。 Bは,同日以降,ほとんど小学校に通うことができなくなった。1審被告Aは,このままの状況は,Bにも自らにも良くないと思うようになり,Bと話し合って,1審原告に住所も で錯乱状態となった。 Bは,同日以降,ほとんど小学校に通うことができなくなった。1審被告Aは,このままの状況は,Bにも自らにも良くないと思うようになり,Bと話し合って,1審原告に住所も学校も知られていることが,不安の源泉であると確認し,1審原告の知らない場所に転居することを決意し,転居先の学校や家をBとともに見て回るなどして,転居先を決めた。(乙10,12,25,31,1審被告A本人)イ 1審被告Aは,女性相談センターの相談員から,転居すると1審原告が捜索願を出すだろうから,それを警察に不受理にしてもらう手続を取っておいた方がいいと言われ,同年3月31日,D署を訪れた。 D署のE警察官は,1審被告Aの相談を受けて,1審被告Aに対し,援助申出書(丙7)と,本件申出書(丙8)に,必要事項を記載させた。1審被告Aは,援助申出書の「受けたい援助の内容」欄に,住所又は居所を 知られないようにするための措置と,行方不明届の不受理であることを記載してE警察官に交付し,これにより,本件援助申出を行った。また,1審被告Aは,本件申出書の「支援措置を求めるもの」欄に,「住民基本台帳の閲覧,住民票の写し等の交付(現住所地)」であることを記載して,これにより本件申出書を作成してE警察官に交付した。 E警察官は,本件援助申出に関し,D市役所子育て支援課に問い合わせて,1審被告Aによる相談の事実があることを確認したほか,D署が平成25年7月4日に1審被告Aから,1審原告の暴力に関する相談を受けている事実や,平成27年6月23日にも相談を受けている事実を確認した。 E警察官は,D署生活安全課で検討し,D署長に報告した結果,本件援助申出を相当と認めてこれを受理した。 また,E警察官は,本件申出書に関しても,上記同様の相談の事実を確認し ている事実を確認した。 E警察官は,D署生活安全課で検討し,D署長に報告した結果,本件援助申出を相当と認めてこれを受理した。 また,E警察官は,本件申出書に関しても,上記同様の相談の事実を確認し,「相談先」欄の相談先の名称を記載し,D署長の了解を経て,「相談機関等の意見」の欄に,D署長名で「上記申出者の状況に相違ないものと認める。」旨の本件意見を記載し,D署長印を押印して,本件申出書を1審被告Aに交付した。また,E警察官は,D市役所子育て支援課に対し,D署が1審被告Aから相談を受けた旨を情報提供した。(乙31,丙6ないし8,13,証人E警察官,1審被告A本人)」ウ 1審被告Aは,D市役所に対し,本件意見が付された本件申出書を提出し,本件支援措置申出をした。また,本件申出書の転送を受けたC市長は,平成28年4月4日,支援措置を実施することを決定した。1審被告Aは,Bを連れてD市のアパートから転居し,Bは,G小学校から転校した。 (甲8,1審被告A本人)本件支援措置決定後ア 1審原告は,平成28年4月11日,本件支援措置決定を知り,同年5月18日,C市長に対して同決定について審査請求をした。しかし,審査 庁であるC市長は,審査請求の対象となるのは行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為であるところ,本件支援措置決定はこれに当たらないから,1審原告の審査請求は不適法であるとして却下する旨の裁決をした。 (甲9)イ 1審原告は,同年4月19日,Bの転校先を調査するために,代理人弁護士とともに,Bが通っていたG小学校を所轄するD市教育委員会を訪れたが,1審被告Aに対して支援措置が行われていることから,仮に情報公開請求がされたとしても,Bに関する情報を伝えることはできない旨伝えられた。このため,1審原告は,Bの転 轄するD市教育委員会を訪れたが,1審被告Aに対して支援措置が行われていることから,仮に情報公開請求がされたとしても,Bに関する情報を伝えることはできない旨伝えられた。このため,1審原告は,Bの転校先を知ることができず,学校行事に参加することができなくなった。(甲6,1審原告本人)ウ 1審原告は,同年5月,D署を訪れてE警察官らと面談し,本件面会交流審判の存在などを伝えて本件意見の撤回を求めた。また,1審原告は,同年6月,代理人弁護士を通じて,D署に本件面会交流審判の写し及び間接強制決定の写しを送付するとともに,本件意見の撤回を求めたが,D署は,適正に対応したものと判断している旨の回答を行った。(甲11,12,36)エ上記イの子の監護者の指定,子の引渡し申立事件(2回目)では,同年3月25日,1審原告の申立てを却下する審判がされ,同年5月19日に1審原告の即時抗告を棄却する決定がされた。 その後,上記ウの本件面会交流変更調停が不成立となり,名古屋家庭裁判所D支部は,同年12月22日,Bが父母の紛争に強い忌避感を抱いていることから,一時的に直接交流を停止することがBの福祉にかなうとして,本件面会交流審判で定められた面会交流の内容を,平成29年1月以降,1審被告Aに対し,1審原告へ4か月に1回程度,Bの近況を撮影した写真の送付を命ずる内容に変更する内容の審判をした。同審判に対する即時抗告は,同年4月28日に棄却され,同年5月2日に確定した。 (乙19,27,28)オ C市役所においては,支援措置を受けている世帯は,住民記録の照会画面で検索をすると「本人がDV・ストーカー支援対象者です。」等のポップアップ画面が表示され,世帯情報の項目内にも「DV・ストーカー等支援該当者有」と朱書きで表示される ている世帯は,住民記録の照会画面で検索をすると「本人がDV・ストーカー支援対象者です。」等のポップアップ画面が表示され,世帯情報の項目内にも「DV・ストーカー等支援該当者有」と朱書きで表示される。そして,同市役所においては,そのような世帯につき市民や外部機関と協議・対応する場合には,必ず事前に市民課証明窓口係支援担当まで連絡すること,当該世帯に関する情報の取扱いについては,十分に注意することとされている。(甲22)カ 1審被告Aは,その後,支援措置の延長手続を行った。(1審被告A本人)キ名古屋家庭裁判所C支部は,平成29年8月8日,前記イの離婚訴訟について,1審原告と1審被告Aとを離婚し,Bの親権者を1審被告Aと定めること等を内容とする判決を言い渡した。1審原告は,上記判決に対して控訴したが,名古屋高等裁判所は,平成30年3月27日に,1審原告の控訴を棄却する判決をし,1審原告は同判決に対して上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成30年9月25日に上告を受理しない旨の決定をし,同判決が確定した。(乙29,59,62) 3 1審被告Aに対する請求関係 争点 ア(1審被告Aは,被害者要件を満たしていなかったか)について支援措置の対象とされている配偶者からの暴力とは,DV防止法1条1項に規定する配偶者からの暴力(身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動)であり,支援措置の被害者要件とは,DV防止法1条2項に規定する被害者(同条1項にいう配偶者からの暴力を受けた者)であることである(原判決第2の2(補正後))。 そして,前記2認定事実アによれば,1審被告Aは,平成25年7月 4日にD署を訪問した際,被害歴は3年くらい前から,被害頻度は2日に1回である る(原判決第2の2(補正後))。 そして,前記2認定事実アによれば,1審被告Aは,平成25年7月 4日にD署を訪問した際,被害歴は3年くらい前から,被害頻度は2日に1回であると申告したほか,平成23年春頃に1審原告から右大腿部を蹴られたこと,同年夏頃,銀行の駐車場において金銭を引き出すよう怒鳴り散らされたこと,直近の被害は,平成24年10月に1審原告が無理やり開けたドアに腕を挟まれて怪我をしたこと等を申告し,原審においても同月の怪我の写真を提出しており(乙15),他方で,1審原告も,平成23年頃に1審被告Aの態度に立腹し,1審被告Aの尻を足で押したとして有形力を行使したことを認めている。 その他,1審被告Aが,別居時である平成24年12月に愛知県女性センターに相談していること等に照らせば,1審被告Aが,DV防止法1条1項にいう暴力(身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動)を受けた者であると一応認めることができ,本件支援措置申出の当時,1審被告Aが被害者要件を欠くものであったとは認められない。 争点 ア(1審被告Aは,危険性要件を満たしていなかったか)についてア上記のとおり,支援措置の対象とされている配偶者からの暴力とは,DV防止法1条1項に規定する配偶者からの暴力(身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動)であり,支援措置の被害者要件も,DV防止法1条2項に規定する被害者(同条1項にいう配偶者からの暴力を受けた者)に該当することを意味すると解されることに照らせば,支援措置の危険性要件とは,身体的な暴力を受けるおそれがあることに限られるのではなく,身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動により,その生命又は身体に危害を受けるお ることに照らせば,支援措置の危険性要件とは,身体的な暴力を受けるおそれがあることに限られるのではなく,身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動により,その生命又は身体に危害を受けるおそれがあることを意味するものと解することが相当である。 イこの点,本件においては,1審被告A及びBが別居した後,本件支援措置申出がなされるまでの約3年3か月の間,1審原告は,1審被告Aに対 して身体的な暴力に及んだり,身体的な暴力を振るおうとしたことはなく,D市内の1審被告A及びBの別居先を具体的に把握した後も,その別居先を直接訪問したりすることはなかったことが認められる。そうすると,本件支援措置申出の当時,1審被告Aにおいて,1審原告からの身体に対する暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれはなかったといえる。 ウしかし,前記2認定事実によれば,1審原告と1審被告Aの間には,本件支援措置申出の当時,離婚訴訟のほか,Bについての面会交流,面会交流の不履行に関する間接強制の申立て,子の監護者の指定,子の引渡し等の多数の法的手続が係属しており,紛争が長期にわたり継続した状態にあったことが認められる。このうち,面会交流に関しては,平成26年3月28日に本件面会交流審判がされているが,同年6月7日を最後にBを1審原告に引き渡す方法での面会交流が行われなくなり,Bが同年10月から12月までIに入院するなどし,1審原告の申立てにより間接強制決定がされたが,1審被告Aは,制裁金を支払っても上記方法での面会交流を実施せず(乙35),平成27年7月6日には本件面会交流変更調停を申し立て,上記方法での面会交流が長期にわたり実現されない状態にあり,そのような中で,1審原告は,本件面会交流審判に基づいて,Bの学校行事等に参加してい 平成27年7月6日には本件面会交流変更調停を申し立て,上記方法での面会交流が長期にわたり実現されない状態にあり,そのような中で,1審原告は,本件面会交流審判に基づいて,Bの学校行事等に参加していたものである。 そして,1審原告が平成27年1月23日に,授業参観でBの小学校を訪れた後に,Bは,1審原告が学校に来ないか心配するようになり,1審原告に対して直接手紙で学校に来ないよう訴えても,依然として1審原告が小学校を訪れるなどしたことから,1審原告が学校に来る不安を抱くようになり,平成28年1月28日に1審原告が授業参観に参加した後には錯乱状態となり,以後,学校にほとんど通うことができなくなったことが認められる。 エこのような一連の事実経過に鑑みれば,1審原告と1審被告Aは,平成 28年3月31日にされた本件支援措置申出の当時,Bの監護権及び面会交流を巡って激しい紛争状態にあったというべきであり,その結果として,1審原告の行動により,Bの当時の心身の状況は不安定となり,入院を要する等心身に有害な影響を及ぼしていたということができる(乙1,10)。Bがこのような状況であったことにより,監護していた1審被告Aも心労が重なり,心身が不調で,このままでは限界であると感じていたことが認められる(乙12)。 加えて,上記のとおり,同居中,1審被告Aが1審原告から暴力(DV防止法1条1項にいう暴力)を受けた旨のD署等への申告が根拠のないものとは認めるに足りないことに鑑みれば,本件支援措置申出の当時において,1審原告からの身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動により,1審被告Aがその生命又は身体に危害を受けるおそれがなかったとまで認めることはできない。したがって,本件支援措置申出の当時,1審被告Aが危険性要件を欠 力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動により,1審被告Aがその生命又は身体に危害を受けるおそれがなかったとまで認めることはできない。したがって,本件支援措置申出の当時,1審被告Aが危険性要件を欠くものであったとは認められない。 争点 アのその余の点について1審原告は,本件において,1審被告Aが,支援措置の要件を満たしていなかったにもかかわらず,1審原告とBの面会交流を妨害する目的で,本件支援措置申出をした旨主張する。 アしかし,1審被告Aにおいて,支援措置の要件を満たしていなかったとは認められないことは,上記及びのとおりであって,本件支援措置申出の当時,1審被告Aにおいて,支援措置の危険性要件がないことを認識していたにもかかわらず,あえて本件支援措置申出をしたと認めることはできない。 なお,「警察安全相談等・苦情取扱票」(丙5)においては,1審被告Aが平成27年6月23日にD署を訪れた際の相談内容として,「夫に避難先がバレました。」とF警察官によって記載されているが,1審被告A は,平成25年7月4日にF警察官に対し,D市のアパートの住所は1審原告に知られていないと伝えていたから,その事情に変更があった旨を話すことは自然かつ合理的である。そして,1審被告Aが,平成27年6月23日にD署を訪れたのは,同年1月23日以降,Bは1審原告が学校に来ないか心配するようになり,1審原告に対し学校に来ないでほしい旨の手紙を出したものの,1審原告は同年5月11日頃にこれに応じない旨の返信を出し,同年6月には学校に授業参観を申し込むなどしたことを考慮すると,1審被告Aが原審で述べるように,1審原告をBの学校に来させない方法がないか相談するためであったと認めるのが相当である。そうすると, ,同年6月には学校に授業参観を申し込むなどしたことを考慮すると,1審被告Aが原審で述べるように,1審原告をBの学校に来させない方法がないか相談するためであったと認めるのが相当である。そうすると,1審原告がその約1年前から1審被告Aの住所を把握していたことは,同相談において重要な事柄とはいえず,1審被告Aが,F警察官に対し,1審原告が1審被告Aの住所を把握した時期について説明しなかったことが不自然,不合理ということはできない。したがって,F警察官による上記記載から,1審被告Aにおいて,1審原告がその約1年前から1審被告Aの住所を把握していたことを秘して,D署にことさらに虚偽の内容の相談を持ち掛けに行ったものと認めることはできない。 イまた,そもそも面会交流は,子の利益を最も優先して考慮して定められなければならないものであるから(民法766条参照),監護親において,面会交流が子の福祉を害すると考えて,その実現を妨げる行為を行った場合,当該行為が直ちに不当なものになると認めることはできない。 この点,本件において1審被告Aが本件支援措置申出を行った動機は,1審原告がBの学校を訪れることでBが錯乱状態となって,学校に通うことができなくなり,それにより1審被告Aも心労が重なっていたため,1審原告に学校を知られていることが,1審被告A及びBの不安の源泉であると考えたことから,1審原告の知らない場所に転居して,1審原告の知らない学校に転校することにあったものと認められる(前記2認定事実 )。その結果として,1審原告がBの通学する学校を訪れることが不可能になったことは事実である。しかし,上記判断のとおり,本件支援措置申出が要件を欠くものとは認められないこと,1審被告Aは,平成27年7月6日,本件面会交流変更調停を申し立てていたが(乙1 とが不可能になったことは事実である。しかし,上記判断のとおり,本件支援措置申出が要件を欠くものとは認められないこと,1審被告Aは,平成27年7月6日,本件面会交流変更調停を申し立てていたが(乙19),それから約8か月が経過した本件支援措置申出の時点でも,第1回調停期日が開かれていなかったこと,B及び1審被告Aの心身の状態の悪化を防ぐことが動機であることを考慮すれば,1審被告Aが,1審原告とBの面会交流を妨害する目的で,本件支援措置申出をしたものと認めることはできない。 1審原告の当審における補充主張に対する判断1審原告は,本件支援措置決定がされたことにより,本件面会交流審判に基づく学校行事への参加を認めるための当然の前提である,Bの通学先の学校を把握する権利を侵害され,親権者として当然知り得るべき個人情報や,本件面会交流審判に基づいて当然得られるべき情報に接することができず,不利益を受けたものであるから,これに対する慰謝料が認められるべきである旨主張する。 しかし,面会交流は,子の利益を最も優先して行われなければならないものであるところ,Iの医師の意見書(乙1)によれば,平成27年1月23日以後,1審原告が学校行事に参加して,Bと交流することによって,Bの不安が強まり,不安定になっていったとされており,本件支援措置申出の前に申し立てられた本件面会交流変更調停について,本件支援措置申出後ではあるものの,上記調停から移行した審判において,本件面会交流審判を間接交流のみを認めるものに変更していること(乙19)にも照らせば,本件支援措置申出の当時,1審原告について,本件面会交流審判に基づいて通学先の学校を把握する権利があったと認めることはできず,そのような権利が侵害されたことを理由として,1審原告が慰謝料 照らせば,本件支援措置申出の当時,1審原告について,本件面会交流審判に基づいて通学先の学校を把握する権利があったと認めることはできず,そのような権利が侵害されたことを理由として,1審原告が慰謝料を請求できると認めることはできない。 1審原告の上記主張は,採用することができない。 小括そうすると,争点のその余の点について判断するまでもなく,1審原告の1審被告Aに対する請求は,理由がないものというべきである。 4 1審被告愛知県に対する請求関係 争点 ア(警察署長等が,住民基本台帳事務における支援措置申出書の「相談機関等の意見」欄に意見を付するに当たり,加害者とされる者に対して職務上の法的義務を負担するか)について1審原告は,本件支援措置申出に対し,D署長が本件意見を付したことが違法であるとして,1審被告愛知県に対し,国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償請求をするものである。 アところで,国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである(最高裁判所昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照)。したがって,D署長が本件意見を付したことが同条項の適用上違法であるというためには,D署長が,本件意見を付するに当たり,1審原告に対して負担する職務上の法的義務に違背したというのでなければならない。 この点について,1審原告は,D署長は,本件意見を付するに当たり,1審被告Aの申告内容について,加害者とされる1審原告やその関係者から事情聴取を行い,司法判断の有無等の事実確認を行う職務上の注意義務 この点について,1審原告は,D署長は,本件意見を付するに当たり,1審被告Aの申告内容について,加害者とされる1審原告やその関係者から事情聴取を行い,司法判断の有無等の事実確認を行う職務上の注意義務を負うと主張する。 しかし,D署長が本件意見を付するに当たり,1審原告に対して,1審原告主張のような職務上の法的義務を負担していたということはできない。 その理由は,以下のとおりである。 イ DV防止法は,配偶者からの暴力に係る通報,相談,保護,自立支援等の体制を整備することにより,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的として(前文)おり,国及び地方公共団体は,配偶者からの暴力を防止するとともに,被害者の自立を支援することを含め,その適切な保護を図る責務を有する(2条)と規定している。 ウ被害者に係る住民基本台帳の閲覧等に係る支援措置は,いずれも住民基本台帳法及び住民基本台帳事務処理要領に基づいて実施されているところ(丙10),同事務処理要領は,DV防止法1条1項に規定する配偶者からの暴力及びこれに準ずる行為の被害者の保護のため,加害者が,住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付並びに戸籍の附票の写しの交付(以下「住民基本台帳の閲覧等」という。)の制度を不当に利用してそれらの行為の被害者の住所を探索することを防止し,もって被害者の保護を図ることを目的として,同支援措置を講ずるものとしている。 そして,同事務処理要領は,DV防止法1条2項に規定する被害者であり,かつ,暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるもの(支援措置の要件に該当するもの)から,支援措置の申出を受け付けるとされており,支援措置の内容としては,①住民基本台帳の一部の写しの閲覧の申出に係るものとして 又は身体に危害を受けるおそれがあるもの(支援措置の要件に該当するもの)から,支援措置の申出を受け付けるとされており,支援措置の内容としては,①住民基本台帳の一部の写しの閲覧の申出に係るものとして,加害者から申出がなされた場合には,住民基本台帳法11条の2第1項各号に掲げる活動に該当しないとして申出を拒否し,②住民票の写し等及び戸籍の附票の写しの交付の請求又は申出に係るものとして,加害者から請求又は申出がなされた場合には,不当な目的がある,又は同法12条の3第1項各号に掲げる者に該当しないとして,請求又は申出を拒否することとされている。(丙10)また,同事務処理要領は,当初受付市町村の長において,支援の必要 性の確認として,申出者が支援措置の要件を満たす者に該当し,かつ,加害者が,当該申出者の住所を探索する目的で,住民基本台帳の閲覧等の申出を行うおそれがあると認められるかどうかについて,警察署等の意見を聴取し,又は保護命令決定書若しくはストーカー規制法に基づく警告等実施書面等の提出を求めることにより確認するが,この場合において,当初受付市町村の長は,上記以外の適切な方法がある場合には,その方法により確認することとしても差し支えないとされている。 そして,同事務処理要領には,支援措置の申出を受理するに当たり,当初受付市町村において加害者の言い分を聴取するための規定や,加害者に関する調査をするための規定が設けられておらず,警察署等に対して,加害者の言い分を聴取することを求める規定等も何ら設けられていない。また,同事務処理要領を受けて発出された警察庁の本件通達においても,支援措置申出書等を受領した場合には,警察署等において,申出者が支援措置の対象者としての要件を満たしていること及び加害者が当該申出者の住所を探索する目的 受けて発出された警察庁の本件通達においても,支援措置申出書等を受領した場合には,警察署等において,申出者が支援措置の対象者としての要件を満たしていること及び加害者が当該申出者の住所を探索する目的で,制度を不当に利用するおそれがあると認められることについての意見を付すこととされているが,加害者の言い分を聴取することや加害者側の調査をすること等を求めるものではなく,かえって,更なる被害を受けるおそれの認定については,相談を受けてから相当の期間が経過しているため現在の状況を把握していない場合を除き,配偶者からの暴力等の被害者であると認められることをもって認定して差し支えない等としている。 同事務処理要領や本件通達が,上記のような内容とされているのは,DV防止法の趣旨が被害者保護にあることや,1審被告愛知県が主張するように,配偶者暴力事案の加害者が被害者に対し強い執着心を抱いていることが通常であり,被害者の住所等の個人情報が漏えいすることは被害者の生命・身体の危険に直結するおそれがあることから(丙10), 被害者の安全確保を優先するためと解される。 エそうすると,支援措置を定めた住民基本台帳法及び住民基本台帳事務処理要領の趣旨は,DV防止法1条1項に規定する配偶者からの暴力及びこれに準ずる行為の被害者の保護のため,加害者が,住民基本台帳の閲覧等の制度を不当に利用してそれらの行為の被害者の住所を探索することを防止し,もって被害者の保護を図ることにあり,専ら,被害者に対する関係での関係機関や警察署等の行為規範を定めたものであり,加害者とされる他方配偶者に対して,関係機関や警察署等が職務上の法的義務を負うことは想定していないというべきである。当該申出者が支援措置の要件に該当するとの警察署等の意見についても,その意見が付さ 加害者とされる他方配偶者に対して,関係機関や警察署等が職務上の法的義務を負うことは想定していないというべきである。当該申出者が支援措置の要件に該当するとの警察署等の意見についても,その意見が付されたからといって,直ちに加害者とされる他方配偶者の権利又は法的利益を侵害することになるものではなく,支援措置の必要性の判断は,当初受付市町村の長が行うものであるから(同事務処理要領),警察署等が,支援措置の意見を付するに当たり,加害者とされる他方配偶者に対して,何らかの職務上の法的義務を負担することは考え難いというべきである。 オもっとも,支援措置決定は加害者とされる他方配偶者に一定の不利益な結果を与えるものであるから,警察署等が支援措置の要件に該当するとの意見を付するに際して,被害者である配偶者の主張に明らかに不自然で疑問を持つべき点があったなどの事情がある場合には,これに気付かなかったことについて何らかの法的責任が生じる余地は残るかもしれない。 しかし,本件において,D署員は,本件申出書に本件意見を付するに当たり,①少なくとも平成25年7月4日に1審被告Aから相談を受けており,その際に,1審被告Aから具体的な暴力(DV防止法1条1項にいうもの)の内容を聴取し,1審被告Aが平成24年12月に愛知県女性センターに相談したことを確認していたほか,②平成27年6月23日にも,1審被告Aから相談を受けていたことを確認し,さらに,③D市役所子育 て支援課に問い合わせて,1審被告Aによる相談の事実があることを確認していたものである。そして,上記イ及びウのDV防止法第一章の趣旨や,住民基本台帳事務処理要領の趣旨及び内容に鑑みれば,D署長が本件意見を付するに当たり,支援措置の目的外利用を疑って1審原告の言い分や本件面会交流審判等を確認 上記イ及びウのDV防止法第一章の趣旨や,住民基本台帳事務処理要領の趣旨及び内容に鑑みれば,D署長が本件意見を付するに当たり,支援措置の目的外利用を疑って1審原告の言い分や本件面会交流審判等を確認することなく,上記①ないし③の各事実を確認した上で,本件意見を付したことについて,違法な点は見当たらないというべきである。 カ以上によれば,警察署長等が,住民基本台帳事務における支援措置申出書の「相談機関等の意見」欄に意見を付するに当たり,加害者とされる者に対して職務上の法的義務を負担するとは認められず,D署長が本件申出書に本件意見を付したことが,違法であるとは認められない。 1審原告の主張及び補充主張に対する判断1審原告は,DV防止法に基づく権限行使が適正に行われない場合,加害者とされる者と実子との面会交流が妨げられるなど,本来DV防止法が許容していない不利益が生じるから,警察署長等が,DV防止法8条の2に基づく援助申請を受け,「その申出を相当と認め」て本件意見を付するに当たっては,1審原告に対して負う職務上の注意義務として,加害者とされる1審原告やその関係者から事情聴取を行い,司法判断の有無等の事実確認を行う義務を負う旨主張する。 しかし,警察署等が行う支援措置に対する意見は,原判決第2の2(補正後)のとおり,直接的にはDV防止法8条の2に基づいて行われるものではなく,住民基本台帳法及び住民基本台帳事務処理要領に基づいて行われるものであり,上記ウのとおり,そもそも同法及び同事務処理要領において,加害者側の事情の調査等を行うことが求められていないことに照らせば,警察署長等において,1審原告の主張するような職務上の注意義務を1審原告に対して負担するものとは認められないというべきである。 者側の事情の調査等を行うことが求められていないことに照らせば,警察署長等において,1審原告の主張するような職務上の注意義務を1審原告に対して負担するものとは認められないというべきである。 この点に関して,1審原告は,1審被告AがD市に住民票を残したままにして現住所地に転居する意思であったから,本件支援措置決定は,住所秘匿の目的には全く無意味であり,D署員において,本件支援措置申出を行う必要がなかったことは相談の時点で把握することができた旨主張する。しかし,1審被告Aは,D市に住民票を残したままにして現住所地に転居する意思であったものの,将来的には住民票を移動することが想定されなかったわけではなく,本件支援措置申出の時点で,住民票を移動しないからといって,本件支援措置申出について明らかに必要性がないとはいえない。 また,本件において,DV防止法8条の2に基づく援助としてもD署長が本件意見を付したと考える余地があるとしても,同条が置かれている同法第三章の各規定の趣旨が,配偶者からの身体に対する暴力(同法6条参照)を受けた被害者について,関係機関の連携のもとに必要な措置を講じ,又は援助を行い,もって被害者を迅速に保護することにあることに鑑みれば,同法8条の2についても,被害者に対する関係での関係機関の行為規範ないし努力義務を定めたものであり,警察が同条にいう援助を行うに当たり,加害者とされる他方配偶者に対して,何らかの職務上の法的義務を負担するものとは認めるに足りない。 1審原告の上記主張は,採用することができない。 小括そうすると,争点のその余の点について判断するまでもなく,1審原告の1審被告愛知県に対する請求は,理由がないといわざるを得ない。 5 結論よって,これと 小括 そうすると,争点のその余の点について判断するまでもなく,1審原告の1審被告愛知県に対する請求は,理由がないといわざるを得ない。 結論 よって,これと異なる原判決中1審被告ら敗訴部分を取り消して,1審原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部 裁判長裁判官 永野圧彦 裁判官 田邊浩典 裁判官 大久保香織
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