主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して、311万7863円及びこれに対する平成31年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを9分し、その2を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求⑴ 被告らは、原告に対し、連帯して、1357万7149円及びこれに対する平成30年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告医療法人Dは、原告に対し、110万円及び令和4年3月6日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告医療法人Dは、原告に対し、1467万7149円及びこれに対する令和4年3月6日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 ⑴ 主位的請求被告医療法人D(以下「被告医療法人」という。)が運営するE病院(以下、便宜上「被告病院」という。)に医療保護入院をした原告が、医療保護入院に始まる被告病院で受けた措置は、原告の身体の自由等の権利利益を侵害する不法行為であると主張し、いずれも被告病院の医師である被告A、被告B及び被 告C(以下被告A、被告Bと併せて「被告医師ら」という。)に対しては、民 法709条及び同法719条1項前段に基づき、被告医療法人に対しては、同法715条1項に基づき、損害賠償金及びこれに対する不法行為の日(上記医療保護入院の日)から支払済みまで平成29年法律44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の 法人に対しては、同法715条1項に基づき、損害賠償金及びこれに対する不法行為の日(上記医療保護入院の日)から支払済みまで平成29年法律44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるもの(請求⑴)。 原告が、被告医療法人の職員が、正当な理由なく医療保護入院に係る診療録の開示を拒絶したと主張し、被告医療法人に対し、民法709条及び同法715条1 項に基づき、損害賠償金及びこれに対する不法行為後の日である訴状送達日の翌日から支払済みまで改正前民法所定の範囲内の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるもの(請求⑵)。 ⑵ 予備的請求原告が、医療保護入院に始まる被告病院で受けた一連の措置は診療契約上の適切な医療を提供する義務に違反する上、診療録の開示を拒絶したことは診療契約の付随義務に違反すると主張し、被告医療法人に対し、改正前民法415条に基づき、前記⑴の合計額の損害賠償金及びこれに対する請求日の後である 訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるもの。 2 医療保護入院に関する令和元年法律第37号による改正前の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の規定別紙1に記載のとおり 3 前提となる事実(特に証拠等を掲記しない限り、当事者間に争いがない。)⑴ 当事者ア原告(昭和16年10月8日生(平成30年12月当時77歳))は、昭和47年3月31日、Fと婚姻し、長男であるG、二男であるH、長女であるI及び二女をもうけた(乙36、弁論の全趣旨)。 イ被告医療法人は、医療法人であり、精神保健福祉法19条の8所定の指定 日、Fと婚姻し、長男であるG、二男であるH、長女であるI及び二女をもうけた(乙36、弁論の全趣旨)。 イ被告医療法人は、医療法人であり、精神保健福祉法19条の8所定の指定 病院である被告病院(宇都宮市ab丁目c番d号所在)を経営している(弁論の全趣旨)。 被告Aは、被告病院の創設者であり、平成30年12月当時、被告病院の医師であった。 被告Bは、平成30年12月当時、被告病院の医師であり、指定医であっ た。 被告Cは、平成30年12月当時、被告病院の院長兼精神科病院の管理者であった。なお、被告Cが被告医療法人の理事長に就任したのは、令和4年6月1日のことである(乙34、弁論の全趣旨)。 ⑵ 原告の医療保護入院について ア平成30年12月12日より前、被告病院のソーシャルワーカーは、Gから原告の入院に関する相談を受け、原告の日常の症状について聴取した内容を記録していた(甲13)。 イ平成30年12月12日当時、原告は、富山市内に在住していたところ、民間救急サービスを営む株式会社Jの民間救急車に搬送されて、被告病院に 来院した。(甲1、11、13、17の1)ウ被告病院に来院後、被告Aが原告を診察した後、被告Bが原告を診察した。 被告Bは、原告について、老年期認知症妄想型であり、医療保護入院の必要があるとの診断をした。被告Bの診察後、被告病院に来院していたGが、原告の医療保護入院の同意書に署名した。(甲13、17の1、17の2) エそして、原告は、平成30年12月12日、被告病院に医療保護入院をすることとなった(以下「本件医療保護入院」という。)。 オ被告Cが栃木県知事に提出した、原告に関する医療保護入院者の入院届(平成30年12月14日付け)(以下「入院届」と 病院に医療保護入院をすることとなった(以下「本件医療保護入院」という。)。 オ被告Cが栃木県知事に提出した、原告に関する医療保護入院者の入院届(平成30年12月14日付け)(以下「入院届」という。)には、以下のような記載がある(甲17の1)。 (ア)入院形態:医療保護入院 (イ)病名(主たる精神障害):老年期認知症妄想型(ウ)現在の精神症状:記銘障害、妄想、感情失禁、焦燥・激越、易怒性・被刺激性亢進、衝動行動、行為心迫、興奮(エ)問題行動等:暴言、その他(暴力行為)(オ)現在の状態像:幻覚妄想状態、精神運動興奮状態、認知症状態 (カ)医療保護入院の必要性:認知症が進行して、記銘力や判断力の低下から詐欺に引っかかりそうになったりして物事が上手くいかなくなった。その頃より、被害妄想が活発となり他者や家族に対して暴言や暴力行為がしばしばみられ、早急な入院が必要な状態になった。しかし本人は現実検討能力の低下から、入院治療を拒否して同意が得られず、このままでは必要な 治療が行えないため長男の同意のもと医療保護入院とした。 ⑶ 被告病院での入院の継続ア本件医療保護入院が開始されてから平成30年12月13日午後2時40分頃までの間、原告は、閉鎖病棟の個室3号室において、一人で起居することとなった(甲14)。 イ平成30年12月13日午後2時40分頃、原告は、3号室から閉鎖病棟の7号室(4人部屋)に移り、同月22日までの間、同室において起居した。 そして、同日午後4時頃、本件医療保護入院が終了したため、原告は、閉鎖病棟から普通病棟へと転棟して、普通病棟において入院を継続した。(甲13、14、17の3) ⑷ 原告に対する向精神薬の処方平成3 本件医療保護入院が終了したため、原告は、閉鎖病棟から普通病棟へと転棟して、普通病棟において入院を継続した。(甲13、14、17の3) ⑷ 原告に対する向精神薬の処方平成30年12月12日、被告Aは、原告に対し、向精神薬であるリボトリール及びロナセンを処方し、同日から平成31年1月16日までの間、原告は各薬剤を服用し続けた。 ⑸ 被告病院の退院 原告は、平成31年1月17日、被告病院を退院した。 ⑹ 診療記録の開示請求とその回答平成31年1月24日、原告は、被告医療法人に対し、診療録の開示を申し込んだところ、同年4月11日頃、被告医療法人は、被告病院としては、診療録の開示によって原告の親族間での争いに発展することを危惧しており、被告病院が親族間の争いに関与することも避けなければならないため、親族間で開 示の可否について意見をまとめて欲しい、もし親族間での意見の統一が難しい場合には、被告病院の顧問弁護士と原告側の弁護士との間で、開示の協議を行いたいなどと回答した(甲34の1、34の2)。 ⑺ 本件訴えの提起原告は、令和4年2月8日、本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 ⑻ 被告らの消滅時効の援用被告らは、原告に対し、本件弁論準備手続期日(令和5年6月8日)において、主位的請求の請求⑴に係る債権について消滅時効を援用するとの意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。 4 争点及びこれに関する当事者の主張 本件の争点は、以下のとおりであり、これに関する当事者の主張は、別紙2「当事者の主張」に記載のとおりである。 ⑴ 本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Aの故意・過失の有無⑵ 本件医療保護入院をさせたこと りであり、これに関する当事者の主張は、別紙2「当事者の主張」に記載のとおりである。 ⑴ 本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Aの故意・過失の有無⑵ 本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Bの故意・過失の有無⑶ 本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Cの故意・過失の有無 ⑷ 被告医師らの行為につき関連共同性の有無⑸ 被告病院における措置に係る損害及び損害額⑹ 被告医療法人が診療録の開示を拒絶したことが原告の権利を侵害する不法行為又は債務不履行に当たるか否か⑺ 診療録の開示の拒絶に係る損害及び損害額 ⑻ 主位的請求の請求⑴に係る債権の消滅時効の成否 第3 当裁判所の判断 1 医学的知見⑴ 認知症に関する医学的知見(甲35、乙20)ア診断基準代表的な認知症の診断基準としては、ICD-10、NIA-AA及びD SM-5が存在する。各診断基準の要旨は以下のとおりである。 (ア)ICD-10(平成5年発行)ICD-10は、認知症の診断基準について、「G1:記憶力の低下か認知能力の低下を示す証拠が存在し、これらの低下によって、日常生活動作や遂行機能に支障をきたすこと。」、「G2:周囲に対する認識が、G1 の症例をはっきりと証明するのに十分な期間保たれていること。」、「G3:①情緒易変性、②易刺激性、③無感情、④社会的高度の粗雑化のうち1項目以上が認められること。」、「G4:G1の症状が明らかに6か月以上存在していれば確定診断される。」としている。 (イ)NIA-AA(平成23年発行) NIA-AAは、認知症の診断基準について、「1.仕事や日常生活の障害。」、「2.以前の水準より遂行機 確定診断される。」としている。 (イ)NIA-AA(平成23年発行) NIA-AAは、認知症の診断基準について、「1.仕事や日常生活の障害。」、「2.以前の水準より遂行機能が低下。」、「3.せん妄や精神疾患ではない。」、「4.病歴(患者又は情報提供者からの聴取)と検査(精神機能評価又は精神心理検査)による認知機能障害の存在。」、「5.①記銘記憶障害、②論理的思考、遂行機能、判断力の低下、③視空間認知障害、 ④言語機能障害、⑤人格、行動、態度の変化の5領域のうち、2領域以上の認知機能や行動の障害。」としている。 (ウ)DSM-5(平成25年発行)DSM-5は、認知症の診断基準について、「A:①本人、本人をよく知る情報提供者又は臨床家による有意な認知機能の低下があったという 懸念及び②標準化された神経心理学的検査(それがなければ他の定量化さ れた臨床的評価)によって記録された実質的な認知行為の障害に基づき、一つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習・記憶、言語、知覚・運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下が認められる。」、「B: 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段 的日常生活動作に援助を必要とする。)。」、「C:認知欠損が、せん妄の状況でのみ起こるものではない。」、「D:認知欠損が、他の精神疾患例(うつ病、統合失調症)によってうまく説明されない。」としている。 イ診断方法認知症の診断の最初のステップでは、まず、認知症であるか否か、すな わち、後天的かつ慢性の認知機能障害により日常生活機能が阻害されているかを包括的に確認する。この過程では問診( 認知症の診断の最初のステップでは、まず、認知症であるか否か、すな わち、後天的かつ慢性の認知機能障害により日常生活機能が阻害されているかを包括的に確認する。この過程では問診(患者本人と家族・介護者に対してそれぞれ行い、患者本人に対する問診から認知機能等を推察し、家族等に対する問診から日常生活で何が問題になっているかを明らかにする。)と認知機能検査を行う。日本では、認知機能検査として、長谷川式 簡易知能評価スケール(以下「HDS-R」という。)等が一般的に使われており、HDS-Rでは、20点以下が認知症の疑いありとされる。 次のステップでは、認知症の基礎疾患を見極めることとなり、身体所見や神経学的診察等の各種検査を必要に応じて行う。 ウ認知症の治療 認知症の治療の標的症状には中核症状と呼ばれる認知機能障害とBPSD(妄想、易怒性等)があり、薬物療法と非薬物療法を組み合わせてこれらを治療する。 (ア)BPSDの治療薬物療法は非薬物療法によってBPSDを減少させる十分な努力を 行った後にのみ行われるべきである。向精神薬の投与が必要と判断した 場合は、薬物の効果と、転倒や死亡リスク上昇等の不利益及び適応外使用であることを十分に説明する。向精神薬の投与を開始した場合は、継続的に効果と副作用を評価し、不利益が利益を上回ると考えられる場合は、薬物中止で精神症状が再燃する可能性に注意しつつ、薬物の減量中止を検討する。 (イ)焦燥性興奮の治療非薬物療法で十分な効果が得られない場合は薬物療法を検討するが、本人と家族に十分説明して、有害事象に留意しながら使用する必要がある。また有効性が認められても漫然と服用させず、症状の改善 興奮の治療非薬物療法で十分な効果が得られない場合は薬物療法を検討するが、本人と家族に十分説明して、有害事象に留意しながら使用する必要がある。また有効性が認められても漫然と服用させず、症状の改善に合わせて適宜減薬又は休薬するなど副作用の低減を心掛けるべきである。 (ウ)幻覚・妄想の治療非薬物療法だけでは対処できず介護者の負担が重い場合や、本人の苦痛が強い場合、早期に治療する必要がある場合等には、薬物療法を行う。 有効性が認められても漫然と服用させず、症状の改善に合わせて適宜減薬又は休薬するなど副作用の低減を心がけるべきである。 エ高齢者に対する薬物治療の注意点高齢者の症状や薬物反応性は個人差が大きく、多剤の併用が長期化しやすい。高齢者の薬物療法では以下の点に注意する。 (ア)高齢者は生理的に肝機能、腎機能の低下があるため、薬剤によっては若年成人投与量の2分の1~4分の1の少量から投与することを検討 する。増量は少量ずつとし、増量の間隔を長くすることも考慮する。高齢者では過剰量投与となりやすいため、最終的な投与量は肝機能や腎機能障害の有無や程度を勘案して決める。 (イ)薬効は短期間で評価する。投薬前に効果判定の所見や検査データを定めておき、効果の乏しい場合は短期間で変更する。 (ウ)多剤併用を避け、処方はシンプルにする。高齢者は様々な合併症があ るので、可能な限り多剤投与は避ける。 ⑵ 精神科救急ガイドラインについて(甲41)一般社団法人日本精神科救急学会が平成27年に刊行した精神科救急ガイドラインは、非自発入院の判断基準について、①精神保健福祉法が定める精神障害と診断されること、②上記の精神障害のために判断能力が著しく低下した 病態に 急学会が平成27年に刊行した精神科救急ガイドラインは、非自発入院の判断基準について、①精神保健福祉法が定める精神障害と診断されること、②上記の精神障害のために判断能力が著しく低下した 病態にあること、③病態のために、社会生活上、自他に不利益となる事態が生じていること、④医学的な介入なしには、事態が遷延ないし悪化する可能性が高いこと、⑤医学的介入によって、事態の改善が期待されること、⑥入院治療以外に医学的な介入の手段がないこと、⑦入院治療についてインフォームドコンセントが成立しないこととしている。 また、上記ガイドラインは、医療保護入院の判断基準について、①非自発入院の診断基準の全てを満たすこと、②措置入院又は緊急措置入院に該当しないこと、③判断能力のある家族等の同意があること、④判断能力のある家族等がいない場合には、市区町村長の同意があることとしている。 ⑶ 薬剤に関する医学的知見 アリボトリール(クロナゼパム)(甲27、乙4)リボトリールは、小型発作、精神運動発作及び自律神経発作の治療に用いられるベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬の一種である。同薬剤は、適応外使用であるが、気分安定等に用いられることもある。 また、リボトリールの添付文書には、以下のような記載がある。 (ア)初回投与量は、1日0.5〜1mgであり、通常の維持量は1 日2〜6mgである。ただし、投与初期に眠気、ふらつき等の症状があらわれることがあるので、慎重に維持量まで漸増する。 (イ)副作用として、眠気、ふらつき、意識障害、運動失調等があらわれることもある。 (ウ)高齢者へ投与する場合、運動失調等の副作用があらわれやすいので、少 量から投与を開始するなど患者の状態を確認しながら、慎重に投与 識障害、運動失調等があらわれることもある。 (ウ)高齢者へ投与する場合、運動失調等の副作用があらわれやすいので、少 量から投与を開始するなど患者の状態を確認しながら、慎重に投与する。 (エ)連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、てんかん重責状態や離脱症状(痙攣発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚等)があらわれることがあるので、投与を中止する場合は、徐々に減量するなどして慎重に行う。 イロナセン(プロナンセリン)(甲30、乙5)ロナセンは、統合失調症の治療に用いられる第二世代抗精神病薬の一種である。同薬剤は、適応外使用であるが、攻撃性、焦燥、興奮、不機嫌等の症状の治療に用いられることもある。 また、ロナセンの添付文書には、以下のような記載がある。 (ア)初回投与量は1日8mgであり、通常の維持量は、1 日8〜16mgである。ただし、投与量が必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら調節する。 (イ)副作用として、眠気、不安・焦燥感、易刺激性、めまい・ふらつき、興奮等があらわれることもある。 (ウ)高齢者へ投与する場合は、椎体外路症状等の副作用があらわれやすいので、患者の状態を観察しながら、慎重に投与する。 ウプレドニン(プレドニゾロン)(甲61)プレドニンは、リウマチ疾患(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、リウマチ熱、リウマチ性多発筋痛)やうっ血性心不全等の治療に用いられる合成 副腎皮質ホルモン剤の一種である。 また、プレドニンの添付文書には、以下のような記載がある。 (ア)通常の維持量は1日5~60mgである。 (イ)連用後に投与を急に中止すると、離脱症状(発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋肉痛、関節 、プレドニンの添付文書には、以下のような記載がある。 (ア)通常の維持量は1日5~60mgである。 (イ)連用後に投与を急に中止すると、離脱症状(発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋肉痛、関節痛、ショック等)があらわれることがあるため、投与 を中止する場合は、徐々に減量するなどして慎重に行う。 2 認定事実⑴ 原告の家族関係、仕事関係平成30年当時、原告夫婦は富山市内で同居しており、HとIはいずれも富山県内に在住し、同夫婦の二女とGはいずれも東京都内に在住していた。原告は、昭和40年に警察官となり、平成14年に定年退職するまで勤務した。原 告は、平成30年当時、デイサービス業等を行う株式会社を経営していた。(甲1、6、7の1、7の2、甲13、乙36)。 ⑵ 原告の既往症等原告は、平成22年8月9日から、リウマチ性多発筋痛症の治療のため、かかりつけ医であるK医師のいるS病院に通院して、プレドニンの処方を受ける などしていた。なお、K医師は、原告の診断書(令和5年11月24日付け)において、本件医療保護入院の開始前、同病院の診察室で、原告に易怒性、興奮、多弁、幻聴、妄想及び幻覚等の症状を認めたことはなかったとしている。 (甲74、乙35)⑶ 被告病院における精神科の外来患者の診療体制 被告病院においては、平成30年12月当時、皮膚科と精神科を兼務する被告B、いずれも精神科のL医師とM医師が指定医であったところ、被告Aが精神科の外来患者について医療保護入院が必要であると診断した場合に、上記3名のうち、誰が指定医として当該患者を診察するかを割り当てるシフト表が作成されており、かかるシフト表に基づいて、被告Aから診察の引継ぎがされて いた(甲37、4 であると診断した場合に、上記3名のうち、誰が指定医として当該患者を診察するかを割り当てるシフト表が作成されており、かかるシフト表に基づいて、被告Aから診察の引継ぎがされて いた(甲37、46、被告B本人)。 また、被告Bは、精神科の医師として、被告Aから引き継がれた精神科の外来患者や医療保護入院中の患者の診察を行っていた一方で、精神科の外来患者を最初に診察することはしていなかった(被告B本人)。 ⑷ 原告とG夫婦との金銭トラブル 原告が経営していた株式会社名義で平成27年に株式会社Nから受けた融 資の使途をめぐって、平成29年頃から、原告とG夫婦との間で度々諍いが生じるようになった(甲6、42、79、80、F証人、原告本人)。 ⑸ 本件医療保護入院に先立つ被告病院の職員とGとの面談平成30年10月22日から同年12月12日にかけて、被告病院のソーシャルワーカーであるOは、Gと数回面談を行い、同人から、原告の症状に係る エピソードとして、①平成27年頃から易怒的になって、原告が経営するデイサービスの従業員に暴言を吐いたり、拳を振り上げて追いかけたりしていること、②被害妄想があること、③海老の養殖に200万円を投資すれば、何億円も儲かるという内容の詐欺に騙されそうになったこと、④空を見てぶつぶつ言ったり、空中に向かって手を伸ばしたりしていること、⑤家族に暴言を吐いた り、物を壊したりすることもあること等を聴取した(甲13)。 ただし、本件医療保護入院に先立ち、GがOに原告の症状を裏付ける資料を提出することや、OがG以外の者から、原告に関する話を聴取することはなく、被告医師らがGから直接事実の確認をすることもなかった(弁論の全趣旨)。 ⑹ 本件医療保護入院に至る一連の診察等 提出することや、OがG以外の者から、原告に関する話を聴取することはなく、被告医師らがGから直接事実の確認をすることもなかった(弁論の全趣旨)。 ⑹ 本件医療保護入院に至る一連の診察等 ア平成30年12月12日午前6時30分頃、原告は、株式会社Jの職員によって富山市内の職場から無理やり連れ出され、同社の民間救急車に監禁されて被告病院に来院した(甲1、2、原告本人、F証人)。 イ被告病院に来院後、被告Aは、原告を診察し、原告について、老年期認知症妄想型を有する「精神障害者」であり、医療保護入院の必要があると診断 した。この際に作成された診療録には、「al 20g(判決注:飲酒歴が20年との意味。)、1合、1升。キン(-)(判決注:禁断症状がないとの意味。)」、「Police(判決注:過去の職歴を尋ねる質問への原告の回答を記載したもの。)」、「Ref(+)(判決注:内省現象があるとの意味。)」、「医療保ゴ」、「Zelle(500円)」、「任意× 医保」などの記載があ る一方で、原告が興奮していたことや不穏な言動をしていたことを窺わせる 記載は特に見当たらない。(甲13、被告A本人、被告B本人)ウ被告Aは、認定事実⑶記載のシフト表に基づき、被告Bに原告の診察を引き継いだ。被告Bは、原告を診察し、原告について、老年期認知症妄想型を有する「精神障害者」であり、医療保護入院の必要があると診断し、原告を医療保護入院とすることとして、被告病院の職員に対し、原告の医療保護入 院について、Gの同意を得るよう指示した。この際に作成された診療録には、原告について、①Gが依頼した民間タクシーに乗って、富山から被告病院まで連れて来られたこと、②被告Aの診察に怒って診察室を出て行ったが、ソーシャルワ 得るよう指示した。この際に作成された診療録には、原告について、①Gが依頼した民間タクシーに乗って、富山から被告病院まで連れて来られたこと、②被告Aの診察に怒って診察室を出て行ったが、ソーシャルワーカーが診察室に戻るように話したところ、素直に診察室に戻ったこと、③挨拶はできるが、Gの妻に迷惑を掛けられているなどと一方的に 話すこと、④家族や周りの人々が困っていないかと質問すると、言葉を遮るように、これを即座に否定したこと、⑤入院の必要があると説明しても「自分は大丈夫だから入院しない。」と回答したこと等が記載されている。(甲13、被告B本人)エ被告Bの診察後、Gの同意が得られたことで、平成30年12月12日午 後0時55分、原告は被告病院において医療保護入院となった(本件医療保護入院)。被告Cは、同月13日になって初めて、本件医療保護入院の存在を把握し、Gの同意書や被告Bの診療録等を確認して、同月14日、栃木県知事に対し、入院届をGの同意書を添えて提出した。(甲13、17の1、17の2、17の8、被告B本人、被告C本人) ⑺ 原告の治療に関して作成された計画書等ア原告に関するチーム医療実施計画書(平成30年12月12日付け)には、病名について、「老年期認知症妄想型」、現症について、「被害妄想・暴力・認知力低下」と記載されており、精神症状のうち、幻覚・妄想と興奮については「中等度」(判決注:1~2日ごとの変動又は日常生活への支障がある。)、 暴力行為については「軽度」(判決注:3~7日は安定している、又は日常 生活への支障がほとんどない。)などと記載されている。上記チーム医療実施計画書には、主治医として被告Aが記載されているが、被告Bと被告Cの記載はない。(乙27) ている、又は日常 生活への支障がほとんどない。)などと記載されている。上記チーム医療実施計画書には、主治医として被告Aが記載されているが、被告Bと被告Cの記載はない。(乙27)イ本件医療保護入院に関する入院診療計画書(平成30年12月12日付け)には、病名について、「老年期認知症妄想型」、症状について、「幻覚妄想状 態、精神運動興奮状態、認知症状態」と記載されている。また、上記入院診療計画書には、主治医として被告Aが、内科主治医としてP医師が、主治医以外の担当者として被告B及びQ准看護師が、退院後生活環境指導員としてOが記載されている。(甲17の5)ウ本件医療保護入院に際して、Q准看護師が作成した入院時看護記録には、 以下のような記載がある(甲14)。 (ア)入院に関する希望:家庭での対応困難のため、病院・施設での対応希望。 (イ)聴取時の第一印象:被害妄想が強く、医師・看護師の説明の理解が難しい様子がある。 (ウ)現在起こり得る問題点:職員の説明を理解しないことにより、治療の拒 否やトラブルを起こす可能性がある。 ⑻ 保護室の利用状況に関する記録被告病院においては、日報集計表に保護室の入室者名を記載することになっていたところ、平成30年12月12日の日報集計表には、保護室の入室者として4名の記載があるが、この中に原告の記載はない(乙10)。 ⑼ Fによる被告病院への診療明細書の送付Fは、被告病院の主治医に宛てて、平成30年12月12日午後4時31分頃、原告が服用中の薬を明らかにするものとして、原告の診療明細書(同年11月30日付け)をファックス送信した。上記診療明細書には、処方薬の一つとしてプレドニン錠(5mg・2錠)が記載されている。(乙35、F証人) ⑽ るものとして、原告の診療明細書(同年11月30日付け)をファックス送信した。上記診療明細書には、処方薬の一つとしてプレドニン錠(5mg・2錠)が記載されている。(乙35、F証人) ⑽ 被告病院における診療経過 ア平成30年12月12日午後0時40分頃、原告は、被告病院の看護職員に対し、「長男は部屋に入れないでください。嘘ばっかりついて、私のことを陥れようとしてるんですよ。私のやっているデイサービスを乗っ取ろうとしているんですよ。」などと述べた。この時の原告の様子について、看護経過記録には、Gに対して強い敵意がみられ、本件医療保護入院にも拒否的な 様子であるなどと記録されている。また、同日午後6時30分頃、処方薬の服用に際して、原告は、被告病院の看護職員に対し、「これはなんのお薬ですか?ビタミン剤ですか。こっちは?落ち着く薬。落ち着いていますけどね。 とりあえず飲んでみます。嫁がね、私を認知症に仕立て上げようとしているんですよ。」などと述べた。この時の原告の様子について、看護経過記録に は、多弁であるが、表情は険しくなく、被害的言動も認められないなどと記録されている。(甲14)イ平成30年12月12日、被告Aは、原告に対し、リボトリール錠(1日2mg)、ロナセン錠(1日4mg)を処方し、平成31年1月16日までの間、原告は、各薬剤を服用し続けた。なお、被告病院において、原告に対 し、同薬剤の副作用等に関する説明が行われることはなかった。(甲14、乙3、弁論の全趣旨)ウ平成30年12月13日午前9時頃、原告は、被告病院の看護職員に対し、「ここ(判決注:個室3号室)じゃなくて大部屋に行ってもいいですかね。」などと述べた。この時の原告の様子について、看護経過記録には、表情 0年12月13日午前9時頃、原告は、被告病院の看護職員に対し、「ここ(判決注:個室3号室)じゃなくて大部屋に行ってもいいですかね。」などと述べた。この時の原告の様子について、看護経過記録には、表情穏や かで多訴になることもないなどと記録されている。同日午後2時40分頃、原告は3号室から7号室に転室した。(甲14)エ平成30年12月14日午前9時30分頃、原告は、被告病院の看護職員に対し、「ぐっすり眠れましたよ。こんなに寝たのはしばらくぶり。最近仕事してたんだけど・・・。俺の兄弟がね、財産売り払って・・・。」などと 述べた。この時の原告の様子について、看護経過記録には、挨拶には穏やか に返答するが、話が変わると被害妄想発言も出ており、トラブルはないが、注意が必要などと記録されている。(甲14)オ平成30年12月15日午後0時20分頃、原告は、被告病院の看護職員に対し、「足が痛いから昨日言ったんですけど。ここに来る時、何人かの男に引きずられてね、身体引きずられて。」などと述べた(甲14)。 また、同日、原告の頭部顔面のMRI検査等が実施されたところ、同月18日、被告病院のR医師は、上記検査結果について、MRI画像上、側脳室周囲白質病変にT2高信号が散見され、加齢性変化等の非特異的変化が疑われるほか、大脳半球に萎縮もみられるが、年齢を考慮すると有意なものではない、MRA画像上、海馬に軽度萎縮が存在する可能性はあるが視覚的には っきりしない、DTI画像上は明らかな異常は認められないとした(甲15)。 カ平成30年12月16日午前9時頃、原告は、被告病院の看護職員に対し、「足が痛いかな。俺は、何もしていないのに、いきなりここに羽交い絞めにされて連れてこられたんだよ。」などと述べた(甲14)。 キ 平成30年12月16日午前9時頃、原告は、被告病院の看護職員に対し、「足が痛いかな。俺は、何もしていないのに、いきなりここに羽交い絞めにされて連れてこられたんだよ。」などと述べた(甲14)。 キ平成30年12月18日、被告病院の整形外科医が、原告を診察し、右足 疼痛は痛風の可能性があるとして、原告の血液検査の実施を指示するとともに、原告にロキソニンテープを処方した(甲13)。 同月19日、原告の血液検査が実施されたところ、尿酸が7.8mg/dL(基準値は3.8~7mg/dL)、CRP定量が1.06mg/dL(基準値は1.0mg/dL以下)であり、整形外科での診断では痛風の可能性 は低いとされた(甲13、乙11)。 ク平成30年12月19日午前9時15分頃、被告病院の看護職員が、原告に対し、被告Aから個室への転室の打診があった旨伝えたところ、原告は、「遠慮しときます。独房のようで。あそこ行ったら逃げ出します。周りのことは気にならないので、大部屋のままでいいです。」などと返答した。この 時の原告の様子について、看護経過記録には、穏やかに返答している、理解 力、判断力は保持されていて意思決定に支障はない、攻撃性は特定の人物に関してのみか、などと記録されている。(甲14)また、同日、被告Cが回診したところ、原告が足の痛みを訴えたので、原告についてレントゲン検査が実施され、鎮痛薬が処方された(甲13、14、乙34)。 ケ平成30年12月19日までの間、原告の歩行能力に特に問題はみられなかったが、同月20日からは、原告に歩行時のふらつき等の症状がみられるようになり、以降、同様の症状が継続した(甲14)。 コ平成30年12月21日、被告病院の職員が、被告Bの指示を受け、原告に対してHDS- 月20日からは、原告に歩行時のふらつき等の症状がみられるようになり、以降、同様の症状が継続した(甲14)。 コ平成30年12月21日、被告病院の職員が、被告Bの指示を受け、原告に対してHDS-Rを実施したところ、その結果は21点であった(甲13、 15、乙7)。 サ平成30年12月22日、本件医療保護入院が終了し、原告は、被告病院の閉鎖病棟から普通病棟に転棟した(争いなし)。 シ平成30年12月30日、被告病院の看護職員が、原告に対し、無断で被告病院を離院することはないようにして欲しい、勝手に離院等の行為がある と、精神科の閉鎖病棟に戻ることになるかもしれないなどと伝えた(甲14)。 ス平成31年1月5日、原告の血液検査が実施されたところ、リウマチ因子定量は、13iu/dL(基準値は15iu/dL)であった(甲13、乙12)。 セ平成31年1月7 日、被告Bは、原告を非認知症であると診断した(甲1 3、15)。 ソ平成31年1月11日午後8時頃、原告は、トイレに行くのが間に合わずに失禁してしまった。また、その頃、原告は、被告病院の看護職員に対し、足が痛くて歩くのが大変であるなどと述べた。(甲14)タ平成31年1月12日、P医師が、原告を診察した上、プレドニン錠(1 日2.5mg)等を処方し、原告は、同月13日から被告病院を退院する同 月17日までの間、同薬剤を服用し続けた(甲13、14、乙3)。 チ被告病院に入院中、原告が、他の患者や職員に対して攻撃的になったり、同人らとの間でトラブルを起こしたりすることはなかった。 (甲13、14)⑾ 本件医療保護入院中の原告の家族と被告病院とのやり取り等ア平成30年12月19日午前11時20分頃、Hから被告病院宛に電話が ルを起こしたりすることはなかった。 (甲13、14)⑾ 本件医療保護入院中の原告の家族と被告病院とのやり取り等ア平成30年12月19日午前11時20分頃、Hから被告病院宛に電話が あり、Hは、看護主任に対し、「今回、父(原告)の入院ですが、兄(G)とその嫁が決めたことであり、私たち兄弟は今回の入院を納得していません。 父をゆくゆくは退院させ兄からかくまってあげたいと考えています。兄と父がお金のことで揉め、父が訴えを起こすと言い関係性が悪化しました。その兼ね合いで精神科病院に入院させられてしまったようです。過去に父が職員 に暴力を振るい肋骨を骨折させた話があったと思いますが、あれは兄の方から派遣された職員で、そもそも元から肋骨を骨折している状態で来たんです。 父はその職員に「高いところの物は取るから無理するな」と声を掛けていたそうです。母に尋ねても父の認知的異常は強くなく歳相応だと思います。兄夫婦が今度は母を精神病院に入院させてやると言っています。ソーシャルワ ーカーにも相談しています。この電話があったことは兄には内緒でお願いします。」と述べた。これを受けて、同日午前11時45分頃、同主任が、原告に対し、原告の家族構成を尋ねたところ、原告は、「長男は歯科医、二男は精神科の看護職員、長女、次女も看護職員ですよ。長男の話ばかり聞いてたら嘘ばかりですよ。ペテン師夫婦です。とくに嫁が。」などとG夫婦の不 満を繰り返し述べた。以上のやり取りについて、同主任は、看護記録に「二男の電話の話と、家族構成・職種ともに一致している。二男と原告の話の内容も一致している」旨記載した。(甲14)イ前記アのHの話を受けて、被告Aは、平成30年12月19日、被告病院の職員に対し、退院後の帰住先と監督者が決まれば、原告は退院可能であ 男と原告の話の内容も一致している」旨記載した。(甲14)イ前記アのHの話を受けて、被告Aは、平成30年12月19日、被告病院の職員に対し、退院後の帰住先と監督者が決まれば、原告は退院可能である などと指示した(甲13、乙1、6)。 ウそして、Oは、平成30年12月19日、原告との面会に訪れたFに対し、被告Aからの指示により、被告病院が原告の家族間のトラブルに介入することはできないため、家族間で原告の治療方針について決めて欲しいなどと伝えた。さらに、Oは、同月20日、Hに対し、帰住先の確保と家族の責任での引取りをして欲しいと被告病院としての意向を伝えたところ、Hは、アパ ートを借り、Gには居場所を教えずに、原告とFで暮らしてもらおうと考えているなどと返答した。Oは、Hに対し、被告病院としては、家族問題に介入することができないので、家族間で話し合って決めて欲しい、Hが原告を迎えに来ることをGが知らなかったということはないようにして欲しいなどと伝えた。(乙1、2) エ平成30年12月22日、Gが、被告病院の職員に対し、原告が脱走を考えているような動きがあるので、精神科に戻すなどの対応をして欲しいなどと伝えた(甲14)。 オ平成30年12月30日、Iが、被告病院に来院して、原告と面会した。 被告病院の職員が、Iに対し、原告の入院についてどのような認識かを確認 したところ、Iは、最強の親子喧嘩だと思っているなどと回答した。また、同日、Gは、被告病院の職員に対し、内科での治療が終わったら精神科に戻るのか、原告が被告病院から脱走を企てているとしか思えないなどと述べた。 (甲14)⑿ 原告の被告病院の退院 原告は、被告医療法人に対し、平成30年12月分の治療費として11万0 、原告が被告病院から脱走を企てているとしか思えないなどと述べた。 (甲14)⑿ 原告の被告病院の退院 原告は、被告医療法人に対し、平成30年12月分の治療費として11万0660円を、平成31年1月分の治療費として10万3590円をそれぞれ支払った上で、平成31年1月17日、被告病院を退院した(争いなし、甲16、43の1、43の2)。 被告病院の退院に際して、P医師は、原告に対し、内服薬の飲み忘れに注意 するよう伝えた一方で、被告病院において処方していた向精神薬の内容等は特 に伝えなかった(甲13、17の9、甲52)。 ⒀ 被告病院の退院後に作成された診療情報提供書の記載P医師がS病院宛てに作成した、原告に関する診療情報提供書(平成31年1月16日付け)には、「入院後、数日して入院時に精神科でプレドニンを中止してしまったこと気づきました。」、「精神科に入院しましたが、精神的には 問題なく、家庭内の問題で、ほとんど強制的に当院に入院させられてしまったようです。」などと記載されている(甲13)。 ⒁ 被告病院の退院後の原告と被告らのやり取りア原告は、令和3年8月3日、宇都宮地方裁判所に対し、被告医療法人を相手方とする証拠保全の申立て(令和3年(モ)第10080号)をし、同年 9月1日、被告病院において証拠保全手続が行われた(当裁判所に顕著な事実)。 原告は、令和3年9月13日、上記証拠保全手続の際に利用したカメラマンに対し、保全に係る費用として12万7633円を支払い、同年10月19日、上記証拠保全手続の検証調書を裁判所に返却するための送料として、 980円を支払った(甲44、45)。 イ原告は、被告らに対し、令和4年1月13日又は 7633円を支払い、同年10月19日、上記証拠保全手続の検証調書を裁判所に返却するための送料として、 980円を支払った(甲44、45)。 イ原告は、被告らに対し、令和4年1月13日又は同月14日、本件医療保護入院に端を発する一連の不法行為につき、損害賠償金として1468万4545円を支払うよう催告した(甲65の1ないし65の5)。 ⒂ 被告病院における被告Aの立場 被告A(大正14年10月2日生)は、昭和25年から医師の資格を有する被告病院の創設者(昭和36年創設)であり、平成30年当時も週5日間程度精神科の外来診療を担当するなど被告病院の精神科における中心的役割を担っていた。もっとも、被告Aは、同年当時指定医の資格を有していなかった。 被告病院の指定医であるL医師及びM医師は、いずれも被告Aの息子であるほ か、被告病院では、被告Aの子が、複数名勤務している。(前提となる事実⑴ イ、甲25、38、46、乙6、34、弁論の全趣旨) 3 争点に対する判断⑴ 争点⑴(本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Aの故意・過失の有無)ア本件医療保護入院について (ア)原告は、被告Aが、医療保護入院の要件が満たされていないことを知りながら、又は医療保護入院の要件が満たされていると誤った診断を行い、本件医療保護入院を決定した旨主張する。 前記認定事実によれば、K医師は、本件医療保護入院の開始前に、原告に易怒性、興奮、多弁、幻聴、妄想及び幻覚等の症状を認めたことはなか ったとしていること(認定事実⑵)、平成30年12月15日の原告の頭部顔面の画像診断によっても非特異的変化が疑われるのみで、脳の萎縮等の異常も認められず(認定事実⑽オ)、被告Bの指示により行 ったとしていること(認定事実⑵)、平成30年12月15日の原告の頭部顔面の画像診断によっても非特異的変化が疑われるのみで、脳の萎縮等の異常も認められず(認定事実⑽オ)、被告Bの指示により行われた同月21日のHDS-Rの結果も21点であり(認定事実⑽コ)、平成31年1月7日の時点で、被告Bは原告が非認知症であると診断していたもので ある(認定事実⑽セ)から、本件医療保護入院の時点で、原告が、精神障害者であり、かつ医療及び保護のために入院の必要がある者であったというには相当な疑問が残る。 (イ)これに対し、被告Aは、原告について老年期認知症妄想型を有する「精神障害者」であって、医療保護入院の必要があると診断したことの根拠の 一つとして、Gからの相談内容を挙げるものの、当時、Gと原告は互いに遠方で生活していたこと(認定事実⑴)や、Gの相談内容を裏付ける資料は特になかったこと(認定事実⑸)からすれば、その真偽については、原告のかかりつけ医や同居していたF等からの聴き取り等を踏まえ、慎重に検討しなくてはならなかったというべきである。まして、被告Aが直接G から聴き取りをしていたわけでもない以上(認定事実⑸)、猶更である。 この点について、被告A本人は、診察時の原告の様子について、独り言や空中で物を掴むような仕草を繰り返すなどの症状がみられたなどと供述するものの、被告Aと被告Bが作成した診療録(認定事実⑹イ、ウ)にも、被告病院への入院中に作成された看護経過記録(認定事実⑽)にも、被告A本人の上記供述に沿う記載はないことからすれば、被告A本人の上 記供述は直ちに信用することができない。 また、被告A本人は、診察時の原告の様子について、病的な興奮状態にあったなどとも供述するところ、被告Bの診療録の記載( いことからすれば、被告A本人の上 記供述は直ちに信用することができない。 また、被告A本人は、診察時の原告の様子について、病的な興奮状態にあったなどとも供述するところ、被告Bの診療録の記載(認定事実⑹ウ)等から、被告Aの診察において、原告が一定の混乱状態にあったことが窺われる。しかし、原告は、当日、車に乗せられて無理やり富山県内の職場 から栃木県内の被告病院に連れて来られたのであって(認定事実⑹ア)、原告が想定外の事態に驚愕していたことは想像に難くなく、このような原告の置かれた状況に鑑みれば、原告が一定の混乱状態にあったとしても、その理由は了解可能であるといえる。そして、ソーシャルワーカーの説得に応じて、素直に診察室に戻る(認定事実⑹ウ)、被告病院の看護職員に 対し、薬剤の効能を落ち着いた言葉で確認する(認定事実⑽ア)など、本件医療保護入院当日の向精神薬を服用する前の時点においても、原告が落ち着いた態度を示していることも併せて考慮すれば、被告Aの診察時の原告の状態として、Gの相談内容を裏付けるような病的な興奮状態にあったとは認められない。 (ウ)結局のところ、診察時の原告の様子から、Gの相談内容が真実であると判断し得るだけの合理的根拠は見出し難く、Gの相談内容や、これを即座に否定する原告の態度のみをもって、認知機能の低下、情緒易変性、易刺激性等が認められるとするのは、代表的な認知症の診断基準(前記1⑴ア)及び精神科救急ガイドラインの定め(前記1⑵)に照らしても、不適切な 判断というほかない。原告について、他に老年期認知症妄想型を窺わせる 症状も特に見当たらないのに、一般的に必要とされる認知機能検査(前記1⑴イ)も実施しないまました被告Aによる前記診断やこれに基づく本件医療措置入院の決定は に老年期認知症妄想型を窺わせる 症状も特に見当たらないのに、一般的に必要とされる認知機能検査(前記1⑴イ)も実施しないまました被告Aによる前記診断やこれに基づく本件医療措置入院の決定は、原告が、精神障害者であり、かつ医療及び保護のために入院の必要がある者であったとの判断として誤りがあり、被告Aにはその判断をするについて過失があったというべきである。 (エ)ところで、被告Aは、指定医でも、被告病院の管理者でもなく(前提となる事実⑴イ、認定事実⒂)、医療保護入院に関する形式的権限は何ら有しておらず、本件においても、被告Aの診察後に指定医である被告Bの診察を経て本件医療保護入院が始まっている(認定事実⑹ウ、エ)のであるから、被告Aが原告に対する不法行為責任を負う根拠について疑問がない とはいえない。 しかしながら、被告病院においては、被告Aが精神科の外来患者について医療保護入院が必要であると診断した場合に、当該患者を診察する指定医のシフト表が作成され、これに基づいて被告Aから診察の引継ぎがされる態勢が整備されていたこと(認定事実⑶)、本件医療保護入院の当日、 最初に原告を診察したのは被告Aであり、被告Aの診療録には、原告について、「医療保ゴ」、「Zelle(500円)」、「任意× 医保」と医療保護入院を決定すべきと読める記載があること(認定事実⑹イ)、指定医である被告Bですら一般的に必要とされる認知機能検査(前記1⑴イ)を実施しないまま、原告の問診のみで本件医療保護入院を決定していること等 の事実に加え、認定事実⒂記載の被告病院における被告Aの立場を踏まえれば、本件医療保護入院に関する限りにおいて、被告Aは指定医と同視することができるというべきから、本件医療保護入院を実質的に決定したのは、被告 、認定事実⒂記載の被告病院における被告Aの立場を踏まえれば、本件医療保護入院に関する限りにおいて、被告Aは指定医と同視することができるというべきから、本件医療保護入院を実質的に決定したのは、被告Aであったと評価するのが相当である。 イ原告を3号室で起居させた措置について 原告は、被告Aが、遅くとも平成30年12月12日の午後0時40分頃 から同月13日午後2時40分頃までの間、原告を3号室に「隔離」し、身体の自由等を侵害した旨主張するものの、被告Aの診療録の「Zelle」という記載は多義的に解釈することができるものであり、かかる記載のみをもって、3号室が施錠されていたと認めるに足りない。むしろ、被告病院の内部資料においても、原告が保護室の入室者として扱われていないこと(認 定事実⑻)を踏まえると、原告が3号室で起居していた間、3号室は施錠されていなかったと考えるのが自然である。また、被告Aが主張する3号室の構造(乙33、弁論の全趣旨)に照らし、原告を3号室で起居させたことのみをもって、閉鎖病棟への入院とは別に、原告の身体の自由等が侵害されたとも、閉鎖病棟への入院による原告の身体の自由等の侵害の程度が強まった ともみることはできないから、原告の上記主張を採用することはできない。 ウ向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与について前記アに説示のとおり、本件医療保護入院が違法である以上、違法な入院状態を前提として行われた向精神薬の投与を始めとする治療も、同意なく原告の身体の自由等を侵害するものといわざるを得ないから、本件医療保護入 院の決定に関与し、これらを処方した被告Aには、少なくとも過失が認められる。 エ原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応について(ア)右足の打撲 るを得ないから、本件医療保護入 院の決定に関与し、これらを処方した被告Aには、少なくとも過失が認められる。 エ原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応について(ア)右足の打撲傷への対応について原告は、平成30年12月18日までの間、被告病院の看護職員に訴え ていた足の痛みに関する診療がされなかったことについて、被告Aは、入院させるに当たり必要な情報を問診・検査によって得る注意義務や、医療水準に従った診療をする注意義務を怠った旨主張する。 しかしながら、原告が被告Aに身体の痛みを特に訴えていない状況下で、本件医療保護入院を実質的に決定したことをもって、被告Aが原告に対し、 問診・検査を行うなどして怪我の有無を確認する注意義務を負っていたと はいい難い。また、被告病院の看護職員が、被告Aに対し、原告が足の痛みを訴えていることをいつ頃共有したかについても証拠上定かでないことからすれば、同日までの間、原告の足の痛みに関する診療がされなかったことについて、被告Aに診療上の過失があったとはいえないというべきであるから、原告の上記主張を採用することはできない。 (イ)リウマチ性多発筋痛症への対応について本件医療保護入院が開始されてから平成31年1月12日までの間、原告にプレドニンが処方されなかったため、原告は同薬剤を服用できなかったとの事実が認められる(認定事実⑵、⑽タ)ところ、かかる対応によって、この間、原告の適切な医療を受ける権利利益が侵害されたといえる。 平成30年12月12日、Fは、被告病院の主治医宛てに、プレドニンについて記載されている原告の診療明細書をファックス送信している事実が認められるから(認定事実⑼)、同日の時点で、主治医である被告Aは、原告がプレド 12日、Fは、被告病院の主治医宛てに、プレドニンについて記載されている原告の診療明細書をファックス送信している事実が認められるから(認定事実⑼)、同日の時点で、主治医である被告Aは、原告がプレドニンを服用していたことを認識できたと考えるのが自然である。そうであるとすると、被告Aが、原告に対し、プレドニンを処方 しなかったのは医療水準に反するものといわざるを得ず、この点について被告Aには過失が認められる。 なお、被告病院での血液検査において、原告の尿酸値、CRP定量及びリウマチ因子量は基準値以下か、基準値を僅かに超える程度であったものの(認定事実⑽キ、ス)、平成31年1月12日以降、プレドニンの処方 が再開されていること(認定事実⑽タ)からも明らかのとおり、上記検査結果はプレドニンの処方を中止すべきことを示すものとはいえず、上記判断を左右するものではない。 オ被告病院における検査や治療について前記アに説示のとおり、本件医療保護入院が違法である以上、違法な入院 状態を前提として行われた各種検査や向精神薬の処方以外の治療について も、同意なく原告の身体の自由等を侵害するものと評価できるから、本件医療保護入院を実質的に決定した被告Aには、少なくとも過失が認められる。 カ原告への治療の説明について(ア)向精神薬の副作用等について被告Aが、原告に対し、向精神薬の処方に際して、その副作用について 説明しなかったとの事実が認められるところ(認定事実⑽ア)、前記⑴ア記載のとおり、本件医療保護入院の開始時に、原告を「精神障害者」であると診断することは誤りであったと認められる以上、被告Aが、原告に対し、向精神薬の副作用について説明しなかったことは、原告の自己決定権等をも侵害するものであり、この点につい 原告を「精神障害者」であると診断することは誤りであったと認められる以上、被告Aが、原告に対し、向精神薬の副作用について説明しなかったことは、原告の自己決定権等をも侵害するものであり、この点について、少なくとも被告Aには過失 が認められる。 (イ)向精神薬の減薬指導について原告が退院するに際し、原告に対して向精神薬の減薬指導は特に行われなかったとの事実が認められる(認定事実⑽イ、⑿)ところ、リボトリールの添付文書には、連用中に服用を中止すると離脱症状等があらわれるお それがあるため、投与を中止する場合は、徐々に減量するなどしなくてはならないと記載されていること(前記1⑶ア(エ))からすると、向精神薬の減薬指導が行われなかったことは原告の自己決定権等を侵害するものといえる。そして、原告に向精神薬を処方した被告Aは、少なくともリボトリールについては、自ら適切な減薬指導を行う、又はP医師に対して 適切な減薬指導を行うよう指示すべき注意義務を負っていたというべきであるところ、上記のとおり、P医師が減薬指導をしていないことを踏まえると、被告Aは、P医師に対し、リボトリールの減薬指導を行うよう指示していなかったと考えるのが自然であり、被告Aにはこの点について過失が認められる。 キ被告病院での入院が継続したことについて 本件医療保護入院の必要性がないことが明らかとなった平成30年12月19日以降は、特別の事情がない限り、直ちに本件医療保護入院を終了させ、原告を退院させるべきであったことは自明であり、そうであるにもかかわらず、同日以降も被告Aが被告病院での入院を継続させたことは違法に原告の身体の自由等を侵害するものというべきである。この点について、本件 医療保護入院を実質的に決定した被告Aには あるにもかかわらず、同日以降も被告Aが被告病院での入院を継続させたことは違法に原告の身体の自由等を侵害するものというべきである。この点について、本件 医療保護入院を実質的に決定した被告Aには過失が認められる。 これに対し、被告Aは、原告の家族間での調整ができなかったため、原告を退院させることができなかった旨主張するものの、本件医療保護入院が適法に行われたのであればともかく、本件医療保護入院が要件を欠く違法なものであったことが明らかとなった以上、原告の意向に従い、原告を直ちに被 告病院から退院させるほかないのであるから、被告の上記主張を採用することはできない。 なお、同月22日に本件医療保護入院は終了し、同日のうちに原告が普通病棟に転棟したとの事情(前提となる事実⑶イ)は、同日以降も向精神薬の処方や原告の意思だけでは退院が事実上不可能であるという原告を取り巻 く状況は特に変わっておらず(認定事実⑽イ、シ)、原告の身体の自由等に対する侵害の程度が特に軽減されたわけでもないことに照らし、上記判断を左右するものではない。 ク小括以上によれば、被告Aについては、原告に対し、本件医療保護入院を実質 的に決定したこと、向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与をしたこと、リウマチ性多発筋痛症への対応をしなかったこと、被告病院における検査や治療をしたこと、治療の説明(向精神薬の副作用等の説明及び減薬指導)をしなかったこと及び被告病院での入院が継続したことについて不法行為を構成し、また、これらについては、被告医療法人も使用者責任を免れない。 なお、原告は、被告Aは上記各行為の一部について、医療保護入院の要件 を満たしていないことを認識した上でしたものであるから、被告Aには故意 療法人も使用者責任を免れない。 なお、原告は、被告Aは上記各行為の一部について、医療保護入院の要件 を満たしていないことを認識した上でしたものであるから、被告Aには故意が認められる旨主張する。しかし、被告Aの上記各行為は、Oが事前にGから聴取した事実関係を基に判断されたものであったと認められ(認定事実⑸)、そのほか本件全証拠に照らしても、原告の主張を裏付ける具体的事情は見当たらないことからすれば、被告Aに故意があったとまでは認められな いから、原告の上記主張を採用することはできない。 ⑵ 争点⑵(本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Bの故意・過失の有無)ア本件医療保護入院について原告は、被告Bは一方的に原告を認知症と決めつけて医学上の診察とは言 い難い面談を行ったのみで、原告を「老年期認知症妄想型」とする診療録を作成し、入院届に署名するなど、被告Aによる「老年期認知症妄想型」との診断と医療保護入院の決定に漫然と追従したものであるから、過失がある旨主張する。 この点について、本件医療保護入院決定前後の原告の言動や、原告に対す る一般的な認知機能検査の結果等の客観的資料からみて、本件医療保護入院の当時、原告が病的な興奮状態にあったとは認められず、原告が、精神障害者であり、かつ医療及び保護のために入院の必要がある者であったという判断に誤りがあったというべきことは、前記⑴アに説示したとおりである。 これに対し、被告B本人は、被告Bによる診察の際、原告は、暴言を吐い たり、暴力を振るったりこそしなかったものの、病的な興奮状態にあった旨供述するものの、原告が興奮状態に陥るのには一定の理由があったことや、本件医療保護入院当日の向精神薬の服用前の時点においても たり、暴力を振るったりこそしなかったものの、病的な興奮状態にあった旨供述するものの、原告が興奮状態に陥るのには一定の理由があったことや、本件医療保護入院当日の向精神薬の服用前の時点においても、原告が落ち着いた態度を示していることは、前記⑴ア(イ)記載のとおりであり、診察当時、原告についてGの相談内容を裏付けるような病的な興奮状態にあったと は認められず、被告B本人の上記供述を直ちに信用することはできない。 そうすると、被告Aと同様に、原告について、他に老年期認知症妄想型を窺わせる症状も特に見当たらないのに、一般的に必要とされる認知機能検査(前記1⑴イ)も実施しないまま、原告を「老年期認知症妄想型」とした診断やこれに基づく本件医療措置入院の決定をした(認定事実⑹ウ)被告Bの判断には、少なくとも過失があり、本件医療保護入院の決定は、違法に原告 の身体の自由等を侵害するものであったといわざるを得ない。 イ原告を3号室で起居させた措置について原告を3号室で起居させたことにより、本件医療保護入院と異なる権利利益が侵害されたり、本件医療保護入院による身体の自由等の侵害の程度が強まったりしたわけではないことは、前記⑴イに説示したとおりであるから、 この点について、被告Bは不法行為責任を負わない。 ウ向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与について前記⑴ウに説示のとおり、被告Aが、原告に対し、向精神薬を投与したことは、違法に原告の身体の自由等を侵害するものであり、この点について、被告Aに過失が認められる。 この点について、被告Bは、原告に対して向精神薬(リボトリール及びロナセン)を処方したものではないが、前記アのとおり、被告Bは、指定医として原告を診察し、本件医療保 失が認められる。 この点について、被告Bは、原告に対して向精神薬(リボトリール及びロナセン)を処方したものではないが、前記アのとおり、被告Bは、指定医として原告を診察し、本件医療保護入院を決定した者であることからすれば、被告Aが、原告に対する精神科治療を適切に行っているかどうかについて監視監督する注意義務を負っていたというべきであり、被告Aの違法な投薬治 療を追認ないし看過した被告Bには少なくとも過失がある。 エ原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応について(ア)右足の打撲傷への対応について原告は、被告Bが、本件医療保護入院に関与した医師として、原告を入院させるに当たり、必要な情報を問診・検査によって得る注意義務や、チ ーム医療の担当医として、医療水準に従った診療をする注意義務を怠った ため、右足の打撲傷の治療が平成30年12月18日まで行われなかったなどと主張する。しかし、原告が身体の痛みを特に訴えていない状況下で、原告に対し、問診・検査を行うなどして怪我の有無を確認する注意義務まで被告Bが負っていたとはいい難いほか、本件全証拠に照らしても、被告病院の看護職員が、被告Bに対し、原告が足の痛みを訴えていることをい つ頃共有したのかも定かでないことからすれば、同日までの間、足の痛みに関する診療がされなかったことについて、被告Bに過失があったとは認められないというべきから、原告の上記主張を採用することはできない。 (イ)リウマチ性多発筋痛症への対応について前記⑴エ(イ)記載のとおり、原告のリウマチ性多発筋痛症への対応は、 原告の適切な医療を受ける権利等を侵害するものであり、この点について、被告Aには過失が認められるところ、原告は、被告Bが、本件医療保護入院に関与 おり、原告のリウマチ性多発筋痛症への対応は、 原告の適切な医療を受ける権利等を侵害するものであり、この点について、被告Aには過失が認められるところ、原告は、被告Bが、本件医療保護入院に関与した医師として、原告を入院させるに当たり、必要な情報を問診・検査によって得る注意義務を怠ったことで、原告がプレドニンを服用していたとの事情が発覚するのが遅れたほか、チーム医療の担当医として、 医療水準に従った診療をする注意義務を怠ったことで、プレドニンが処方されなかった旨主張する。 しかしながら、本件医療保護入院に当たって、主治医でない被告Bが、原告に対し、医療保護入院の要件を満たすか否かを判断する診察とは別に、問診を行うなどして、従前の処方薬の有無を確認する注意義務まで負って いたということはできない。そして、被告Bは、本件医療保護入院中は主治医以外の担当者とされており(認定事実⑺イ)、HDS-Rの実施を指示するなどしている(認定事実⑽コ)ものの、このことから直ちに、自らが担当する精神科以外の分野の対応の適否まで確認する注意義務を負っていたということもできない。いずれにしても、この点に関する被告Bに 過失は認められず、原告の上記主張を採用することはできない。 オ被告病院における検査や治療について前記アに説示のとおり、本件医療保護入院が違法である以上、違法な入院状態を前提として行われた各種検査や向精神薬の処方以外の治療についても、同意なく原告の身体の自由等を侵害するものと評価できるから、本件医療保護入院の決定に関与した被告Bには、少なくとも過失が認められる。 カ原告への治療の説明について前記⑴カに説示のとおり、被告Aが向精神薬の副作用等についての説明や向精神薬の減薬指導をしなかったこ に関与した被告Bには、少なくとも過失が認められる。 カ原告への治療の説明について前記⑴カに説示のとおり、被告Aが向精神薬の副作用等についての説明や向精神薬の減薬指導をしなかったことは、原告の自己決定権等を侵害するものであった。 そして、前記アのとおり、被告Bは、指定医として原告を診察し、本件医 療保護入院を決定した者であることからすれば、被告Aが、原告に対する精神科治療を適切に行っているかどうかについて監視監督する注意義務を負っていたというべきことは、前記ウにおける場合と同様であり、原告の主治医が適切な説明等をしていない場合には、治療内容や処方する薬剤について、自ら説明し又は他者(医師、薬剤師、ケースワーカー等)をして適切な説明 をさせる注意義務を負っていたというべきである。 そうすると、これを怠った被告Bの不作為については、少なくとも過失がある。 キ被告病院での入院が継続したことについて本件医療保護入院の必要性がないことが明らかとなった平成30年12 月19日以降は、特別の事情がない限り、直ちに本件医療保護入院を終了させ、原告を退院させるべきであったことは自明であり、そうであるにもかかわらず、同日以降も被告Bが被告病院での入院を継続させたことは違法に原告の身体の自由等を侵害するものというべきであって、本件医療保護入院を決定した指定医である被告Bには過失が認められる。 ク小括 以上によれば、被告Bについては、原告に対し、本件医療保護入院を決定したこと、向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与をしたこと、被告病院における検査や治療をしたこと、治療の説明(向精神薬の副作用等の説明及び減薬指導)をしなかったこと及び被告病院での入院が継続したことに 向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与をしたこと、被告病院における検査や治療をしたこと、治療の説明(向精神薬の副作用等の説明及び減薬指導)をしなかったこと及び被告病院での入院が継続したことについて不法行為を構成し、また、これらについては、被告医療法人も使用者 責任を免れない。 なお、原告は、上記各行為について、被告Bは医療保護入院の要件を満たしていないことを認識した上でしたものであるから、被告Bには故意が認められる旨主張する。しかし、被告Bの上記各行為は、Oが事前にGから聴取した事実関係を基に判断されたものであったと認められ(認定事実⑸)、そ のほか本件全証拠に照らしても、原告の主張を裏付ける具体的事情は見当たらないことからすれば、被告Bに故意があったとまでは認められないというべきであるから、原告の上記主張を採用することはできない。 ⑶ 争点⑶(本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Cの故意・過失の有無) ア本件医療保護入院について被告Cは、医療保護入院の権限を有する精神科病院の管理者として、医療保護入院の要件が充足されているかについて、自ら判断する注意義務を負うというべきである。そして、被告Cは、前記⑴ア及び⑵アに説示した被告Aと被告Bの診断及び本件医療保護入院の決定を追認しており、とりわけ、本 件医療保護入院があった事実を被告Cが知ったのは、本件医療保護入院がされた日の翌日であったというのであるから(認定事実⑹エ)、被告Cには精神科病院の管理者としての過失が認められる。 イ原告を3号室で起居させた措置について原告を3号室で起居させたことにより、本件医療保護入院と異なる権利利 益が侵害されたり、本件医療保護入院による身体の自由等の侵害の程度が強 原告を3号室で起居させた措置について原告を3号室で起居させたことにより、本件医療保護入院と異なる権利利 益が侵害されたり、本件医療保護入院による身体の自由等の侵害の程度が強 まったりしたわけではないことは、前記⑴イに説示したとおりであるから、この点について、被告Cは不法行為責任を負わない。 ウ向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与について前記⑴ウに説示のとおり、被告Aが、原告に対し、向精神薬を投与したことは、違法に原告の身体の自由等を侵害するものであり、この点について、 被告Aに過失が認められる。 この点について、被告Cは、原告に対して向精神薬(リボトリール及びロナセン)を処方したものではないが、被告Cが医療保護入院及び退院の決定権限を有する精神科病院の管理者であることからすれば、医療保護入院の対象者である患者の動静について常に気を払い、患者に対する精神科治療が適 切に行われているかどうかについて監視監督する注意義務を負っていたというべきであり、被告Aの違法な投薬治療を追認ないし看過した被告Cには少なくとも過失がある。 エ原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応について(ア)右足の打撲傷への対応について 原告は、被告Cが、本件医療保護入院に関与した医師として、原告入院させるに当たり必要な情報を問診・検査によって得る注意義務を、チーム医療の担当医として、医療水準に従った診療をする注意義務を、管理者として、被告病院での安全管理体制を確保し、職員が不当な行為を行わないように監督する注意義務を負っていたにもかかわらず、これを怠った旨主 張する。 しかし、被告Cの本件医療保護入院の関与の程度等に照らし、被告Cが、原告に対し、本件医療保護入院後直ちに自 ないように監督する注意義務を負っていたにもかかわらず、これを怠った旨主 張する。 しかし、被告Cの本件医療保護入院の関与の程度等に照らし、被告Cが、原告に対し、本件医療保護入院後直ちに自ら診察をした上で、怪我の有無等を確認する注意義務まで負っていたということはできず、本件全証拠に照らしても、原告が足の痛みを訴えていたことが平成30年12月18日 までの間に被告Cに共有されていたかどうかも定かでない以上、被告Cが 対応をしなかったことが管理者又は被告病院の院長としての義務に違反するものであったともいうことはできず、被告Cに過失は認められない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 (イ)リウマチ性多発筋痛症への対応について前記⑴エ(イ)記載のとおり、原告のリウマチ性多発筋痛症への対応は、 原告の適切な医療を受ける権利等を侵害するものであり、この点について被告Aには過失が認められるところ、原告は、入院させるに当たり、本件医療保護入院に関与した医師として、被告Cが必要な情報を問診・検査によって得る注意義務を怠ったことで、原告がプレドニンを服用していたとの事情が発覚するのが遅れたほか、チーム医療の担当医として、医療水準 に従った診療をする注意義務を怠ったことで、プレドニンが処方されなかった旨主張する。 しかしながら、被告Cの本件医療保護入院の関与の程度等に照らし、被告Cが、処方薬の有無を確認するために原告を問診する注意義務を負っていたということはできない。被告Cは、本件医療保護入院中、原告に対す る入院治療に直接関与しているものの(甲13、乙34)、被告病院の医師や管理者であることのみをもって、直ちに精神科以外の分野の対応の適否まで直接確認すべき注意義務を負っていたということは す る入院治療に直接関与しているものの(甲13、乙34)、被告病院の医師や管理者であることのみをもって、直ちに精神科以外の分野の対応の適否まで直接確認すべき注意義務を負っていたということはできない。この点について被告Cに過失は認められず、原告の上記主張を採用することはできない。 オ被告病院における検査や治療について前記⑴アに説示のとおり、本件医療保護入院が違法である以上、違法な入院状態を前提として行われた各種検査や向精神薬の処方以外の治療についても、同意なく原告の身体の自由等を侵害するものと評価できるから、本件医療保護入院の決定を追認した被告Cには、少なくとも過失がある。 カ原告への治療の説明について 前記⑴カに説示のとおり、被告Aが向精神薬の副作用等について説明や向精神薬の減薬指導をしなかったことは、原告の自己決定権等を侵害するものであった。 そして、前記アのとおり、被告Cは、管理者として医療保護入院の決定権限を有し、被告A及び被告Bの本件医療保護入院の決定を追認した者である ことからすれば、主治医である被告Aが、原告に対する精神科治療を適切に行っているかどうかについて監視監督する注意義務を負っていたというべきである。そうすると、原告の主治医が適切な説明等をしていない場合には、治療内容や処方する薬剤について、自ら説明し又は他者(医師、薬剤師、ケースワーカー等)をして適切な説明をさせる注意義務を負っていたというべ きである。 そうすると、これを怠った被告Cの不作為については、少なくとも過失がある。 キ被告病院での入院が継続したことについて本件医療保護入院の必要性がないことが明らかとなった平成30年12 月19日以降は、特別の事情がない限り、直ち ては、少なくとも過失がある。 キ被告病院での入院が継続したことについて本件医療保護入院の必要性がないことが明らかとなった平成30年12 月19日以降は、特別の事情がない限り、直ちに本件医療保護入院を終了させ、原告を退院させるべきであったことは自明であり、そうであるにもかかわらず、同日以降も被告Cが被告病院での入院を継続させたことは違法に原告の身体の自由等を侵害するものというべきであって、本件医療保護入院の決定を追認した管理者である被告Cにも過失が認められる。 ク小括以上によれば、被告Cについては、原告に対し、本件医療保護入院を決定したこと、向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与をしたこと、被告病院における検査や治療をしたこと、治療の説明(向精神薬の副作用等の説明及び減薬指導)をしなかったこと及び被告病院での入院が継続したことに ついて不法行為を構成し、また、これらについては、被告医療法人も使用者 責任を免れない。 なお、原告は、上記各行為について、被告Cには故意が認められる旨主張するが、本件全証拠に照らしても、原告の主張を裏付ける具体的事情は見当たらないことからすれば、被告Cに故意があったとまでは認められず、原告の上記主張を採用することはできない。 ⑷ 争点⑷(被告医師らの行為につき関連共同性の有無)前記⑴ないし⑶記載の被告医師らの各行為は、原告を被告病院に入院させ、老年期認知症妄想型の治療を行うという共通した目的のために、それぞれの役割を果たしたものであり、社会通念上一体のものとみることができるから、被告病院における措置について、被告医師らには関連共同性が認められる。 ⑸ 争点⑸(被告病院における措置に係る損害及び損害額 たしたものであり、社会通念上一体のものとみることができるから、被告病院における措置について、被告医師らには関連共同性が認められる。 ⑸ 争点⑸(被告病院における措置に係る損害及び損害額)被告病院における措置によって、原告が被った損害は以下のとおりである。 ア診療費用被告病院での入院について、原告が支払った診療費用は、合計21万4250円(=11万0660円+10万3590円)と認められるところ(認 定事実⑿)、このうち、原告が訴えた足の痛みへの対応に関する部分以外の部分は、被告医師らの不法行為がなければ、原告が支払うことはなかったものといえる。そして、原告の診療経過(認定事実⑽)や診療報酬明細書等の記載内容(甲16、43の1、43の2)に照らし、原告が訴えた足の痛みへの対応に関する診療費用が5000円を上回ることはないと認められる から、被告医師らの不法行為による診療費用の損害額は、20万9250円(=21万4250円-5000円)であると認める。 イ慰謝料原告は、平成30年12月12日から平成31年1月17日まで、その意に反して被告病院への入院を強いられ、とりわけ、本件医療保護入院時にお いては閉鎖病棟で外部との自由な連絡も遮断された状態であったと認めら れる。さらに、被告病院への入院中、副作用を有する向精神薬を、その副作用について説明を受けられないまま、処方され続けた。そして、被告病院に入院中、原告の歩行能力は低下していたと認められるところ(認定事実⑽ケ)、その原因については、向精神薬の副作用と考えて矛盾はない(前記1⑶ア(イ)、イ(イ)、甲73、75)。加えて、原告にとって本件医療保護入院 をさせられたことはいわば晴天の霹靂であり、原告は、これに の原因については、向精神薬の副作用と考えて矛盾はない(前記1⑶ア(イ)、イ(イ)、甲73、75)。加えて、原告にとって本件医療保護入院 をさせられたことはいわば晴天の霹靂であり、原告は、これにより経営していた会社事業の中断を余儀なくされたばかりでなく、最終的に自身による事業の継続を断念せざる得なくなるなど筆舌に尽くし難い精神的苦痛を被ったものと認められる(甲1、6)。そこで、これら被告病院で受けた措置に加え、本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、原告が被った精神的苦痛 を慰謝するに足りる慰謝料の額は、250万円と認めるのが相当である(なお、前記⑴、⑵及び⑶の各エ(イ)に説示したとおり、リウマチ性多発筋痛症への対応について過失が認められるのは被告Aのみであるが、この点に関する被告Aの不法行為は、本件医療保護入院に関する被告医師らの不法行為に比して原告の権利利益に対する侵害の程度は軽微であり、被告Aのリウマ チ性多発筋痛症への対応によって原告の症状が大きく増悪したとの事情も認められないことからすれば、被告Aによるリウマチ性多発筋痛症への対応について、原告の慰謝料額を独立して評価する(増額する)ことはしない。)。 これに対し、原告は、本件医療保護入院中の向精神薬の服用によって、約1年半の間、歩行困難に陥ったなどと主張し、原告本人もこれに沿う供述を するが、被告病院を退院後、原告が歩行困難の治療のため、通院していたこと等を裏付ける証拠はなく、他に原告本人の上記供述を裏付ける具体的事実も認めるに足りないことからすれば、原告本人の上記供述を直ちに信用することはできず、原告の上記主張を採用することはできない。 ウ証拠保全費用 原告が、証拠保全手続の際に依頼したカメラマンに対し、12万 、原告本人の上記供述を直ちに信用することはできず、原告の上記主張を採用することはできない。 ウ証拠保全費用 原告が、証拠保全手続の際に依頼したカメラマンに対し、12万7633 円を支払ったほか、証拠保全手続の検証調書の返却費用として980円を支払ったとの事実が認められ(認定事実⒁ア)、これらは、いずれも被告医師らの不法行為と相当因果関係がある損害と認めるのが相当である。 エ弁護士費用原告が本件訴訟の提起・追行を同訴訟代理人弁護士らに委任したことは当 裁判所に顕著であるところ、本件訴訟の内容や経過その他諸般の事情を踏まえると、被告医師らの不法行為と相当因果関係がある弁護士費用は、28万円と認めるのが相当である。 オ合計311万7863円 ⑹ 争点⑹(被告医療法人が診療録の開示を拒絶したことが原告の権利を侵害する不法行為又は債務不履行に当たるか否か)原告は、被告医療法人が診療録の開示を拒絶したことは、原告の知る権利等の権利利益を侵害する不法行為又は原告と被告医療法人との間の診療契約の債務不履行に当たる旨主張する。 しかし、原告による診療記録等の開示の申込みに対する被告医療法人の返答の内容が、弁護士間での協議による解決を提案するものであること(前提となる事実⑹)からして、被告医療法人の返答をもって、被告医療法人が診療録の開示自体を拒絶したものとみることはできない。一件記録に照らしても、被告医療法人の返答から証拠保全手続までの間、原告と被告医療法人との間の診療 録の開示に関する交渉経過は定かでないことからすれば、被告医療法人が原告の知る権利等の権利利益を侵害するような対応をしたとは認められないから、原告の上記主張を採用す 被告医療法人との間の診療 録の開示に関する交渉経過は定かでないことからすれば、被告医療法人が原告の知る権利等の権利利益を侵害するような対応をしたとは認められないから、原告の上記主張を採用することはできない。 したがって、争点⑺について判断するまでもなく、診療録の開示の拒絶に関する原告の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がない。 ⑺ 争点⑻(主位的請求の請求⑴に係る債権の消滅時効の成否) 原告は、被告らに対し、令和4年1月13日又は同月14日、本件医療保護入院に始まる一連の不法行為に基づく損害賠償債務の履行を催告した上で(認定事実⒁イ)、同年2月8日、本件訴えを提起しており(前提となる事実⑻)、仮に、被告が主張するとおり、平成31年1月24日を消滅時効の起算点としても、主位的請求の請求⑴に係る債権に関する消滅時効の完成は猶予されてい るから、消滅時効の完成は認められず、消滅時効の主張を採用することはできない。 4 まとめ本件医療保護入院を含む被告病院での一連の措置に関する被告医師らの不法行為と相当因果関係がある原告の損害は、合計311万7863円と認められる。 原告は、本件医療保護入院に始まる被告病院で受けた措置を一連の不法行為として損害賠償を請求しているものと解されるから、その主張を踏まえると、不法行為に基づく損害賠償請求における遅延損害金の起算日は、原告が被告病院を退院した平成31年1月17日と解するのが相当である。したがって、被告らは、原告に対し、主位的請求に係る損害賠償金として311万7863円及びこれに 対する平成31年1月17日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 なお、原告が予備的に請求する債務不履行に基づく損害賠償請 賠償金として311万7863円及びこれに 対する平成31年1月17日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 なお、原告が予備的に請求する債務不履行に基づく損害賠償請求の認容額は、上記不法行為に基づく損害賠償請求の認容額を上回ることはないと認められる。 第4 結論 よって、原告の主位的請求は、被告らに対し、311万7863円及びこれに対する平成31年1月17日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこの限度で認容し、その余の主位的請求及び上記認容額を超える部分の予備的請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官本多哲哉 裁判官岡田真生 裁判官加藤潤也 (別紙1)第5条(定義)この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。 第18条(精神保健指定医)① 厚生労働大臣は、その申請に基づき、次に該当する医師のうち第19条の4に規定する職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を、精神保健指定医(以下「指定医」という。)に指定する。 一 5年以上診断又は治療に従事した経験を有すること。 二 3年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること。 三厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること。 四厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生 神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること。 三厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること。 四厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修(申請前1年以内に行われたものに限る。)の課程を修了していること。 〔以下略〕 第19条の4(職務)① 指定医は、〔中略〕第33条第1項及び第33条の7第1項の規定による入院を必要とするかどうか及び第20条の規定による入院が行われる状態にないかどうか の判定、第36条第3項に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定〔中略〕の職務を行う。 〔以下略〕 第20条(任意入院) 精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基 づいて入院が行われるように努めなければならない。 第33条(医療保護入院)① 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。 一指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であって当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの二第34条第1項の規定により移送された者② 前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及 び後見人又は保佐人をいう。〔以下略〕〔中略〕⑦ 精神科病院の管理者は、第1 項、第3項又は第4項後段の規定による措置を採ったときは、10日以内に、その者の症状その他厚生労働省令で定める事項を当該入院について同意をした者の同意書を添え、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に 項、第3項又は第4項後段の規定による措置を採ったときは、10日以内に、その者の症状その他厚生労働省令で定める事項を当該入院について同意をした者の同意書を添え、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け 出なければならない。 以上 (別紙2)当事者の主張 1 本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Aの故意・過失の有無(原告の主張)⑴ 本件医療保護入院について ア以下のとおり、本件医療保護入院はいかなる要件も満たさず、原告の身体の自由を違法に侵害するものである。 (ア)精神保健福祉法33条1項1 号は、医療保護入院について、①指定医による診察を受けたこと、②精神障害者であること、③医療及び保護のため入院の必要があること、④精神障害のため任意入院が行われる状態にない と判定されたこと、⑤家族等の同意があることを要件としている。 (イ)本件医療保護入院を決定したのは、指定医でない被告Aである上、被告Aは、医療保護入院の決定に際して、医学上の診察とはいい難い面談しか行っておらず、本件医療保護入院は、①指定医による診察を受けたこととの要件を欠く。 (ウ)被告Aと被告Bの面談の際、原告は、冷静かつ理路整然とした行動を採っており、本件医療保護入院は、②原告が精神障害者であること、③医療及び保護のため入院の必要があること及び④任意入院が行われる状態にないことといった要件を欠く。仮に、被告A、被告Bと面談した際に、原告が多少の興奮状態であったとしても、株式会社Jにより自宅から拉致さ れ、富山県から栃木県まで連れて来られたという被告病院の来院の経緯に照らすと、多少の興奮状態にあることは当然であり、これを原告が精神障害者であることを基礎付ける事情とみることはできない。 れ、富山県から栃木県まで連れて来られたという被告病院の来院の経緯に照らすと、多少の興奮状態にあることは当然であり、これを原告が精神障害者であることを基礎付ける事情とみることはできない。 (エ)精神保健福祉法33条2項2号は、医療保護入院の同意を与えることができる家族等から除外される者につき、「当該精神障害者に対して訴訟を している者又はした者並びにその配偶者及び直系血族」と規定していると ころ、その趣旨に照らし、患者本人が、医療保護入院に同意している家族との紛争を主張している場合には、医療機関としては、かかる紛争の有無について事実確認を行わなければならず、これを怠った場合には、家族等の同意があるとの要件を欠くと解される。 これを本件についてみるに、原告は、被告Aと被告Bに対し、Gとの紛 争を主張していたから、被告医師らは、Fに確認するなどして、原告とGとの紛争の有無を確認しなくてはならなかった。にもかかわらず、被告医師らは、原告とGの紛争の有無の調査をすることもなく、Gの同意しか得ていないから、本件医療保護入院においては、⑤家族等の同意があるとの要件を欠く。 イ被告Aは、医療保護入院の要件を満たしていないことを認識した上で(故意)、本件医療保護入院を決定したものである。 ウ仮に被告Aに故意が認められないとしても、被告Aは、原告の主治医として、医療水準に従って、患者である原告を診療する注意義務を負うところ、認知症と決めつけて一方的に怒鳴りつけるなど、医学上の診察とは認 め難い面談のみを行い、面談の中で精神障害を窺わせるような言動も見られなかったにもかかわらず、原告を「老年期認知症妄想型」と診断し、前記ア記載のとおり、医療保護入院の要件が満たされていなかったにもかかわらず、本 を行い、面談の中で精神障害を窺わせるような言動も見られなかったにもかかわらず、原告を「老年期認知症妄想型」と診断し、前記ア記載のとおり、医療保護入院の要件が満たされていなかったにもかかわらず、本件医療保護入院を決定したものであるから、少なくとも過失がある。 ⑵ 原告を3号室で起居させた措置についてア以下のとおり、遅くとも平成30年12月12日の午後0時40分頃から同月13日午後2時40分頃までの間、原告を3号室で起居させた措置は、要件を満たさない違法な「隔離」に当たり、原告の身体の自由等を違法に侵害するものである。 (ア)「隔離」とは、内側から患者本人の意思によっては出ることのできない 部屋の中へ一人だけ入室させることにより当該患者を他の患者から遮断する行動の制限をいい、12時間を超えるものであるところ(告示第129号参照)、「隔離」の要件は、本人又は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、「隔離」以外の方法ではその危険を回避することが著しく困難であると判断される場合と定められている。 (イ)原告は、本件医療保護入院の開始後、遅くとも平成30年12月12日の午後0時40分頃から同月13日午後2時40分頃までの間、被告病院の閉鎖病棟の3号室に一人閉じ込められたものであるところ、3号室には、簡易ベッドとトイレしかなく、閉塞感・圧迫感・不快感等が漂う空間であったこと及び保護室の扉には内側に取手がついておらず、室内から開閉す ることができない仕組みであり、外側から鍵をかけられた部屋であったことからすれば、原告が受けた措置は「隔離」に他ならない。そして、前記⑴記載のとおり、当時、原告は落ち着いて理路整然とした行動を採っており、「隔離」の要件が満たされていなかったことは明らかであり、原告が受けた ば、原告が受けた措置は「隔離」に他ならない。そして、前記⑴記載のとおり、当時、原告は落ち着いて理路整然とした行動を採っており、「隔離」の要件が満たされていなかったことは明らかであり、原告が受けた「隔離」の措置が、原告の身体の自由を侵害する違法なものであっ たことも明らかである。 イ被告Aは、「隔離」の要件を満たしていないことを認識した上で(故意)、原告を3号室に「隔離」したものである。 ウ仮に被告Aに故意が認められないとしても、被告Aは、医療水準にしたがって適切な診療をする注意義務を負うものである。しかしながら、被告Aは、 前記⑴記載のとおり、面談のみを行い、原告の落ち着いた対応等に照らし、「隔離」の要件が欠けていることが明らかな状況であったにもかかわらず、原告を「隔離」する決定をしており、過失がある。 ⑶ 向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与についてア原告は、向精神薬であるリボトリール及びロナセンを投与されているとこ ろ、前記⑴記載のとおり、原告に「興奮」、「易刺激性」、「易怒性」といった 精神障害の症状は全く存在しなかったものである上、そもそも、両薬剤はかかる症状に効能を有しておらず、原告に両薬剤を投与する必要性はなかった。 心肥大や胆石の治療歴のある原告にとって、両薬剤の副作用は深刻であったことも併せて考慮すれば、原告に両薬剤の適応がなかったことは明らかであり、両薬剤の投与は原告の身体の自由を違法に侵害するものである。 イ被告Aは、原告にリボトリール及びロナセンの適応がないことを認識した上で(故意)、原告への両薬剤の投与を指示したものである。 ウ仮に被告Aに故意が認められないとしても、被告Aは、原告の主治医として、適切な診療を行う注意義務を負うところ、前記ア記載のとおり、 した上で(故意)、原告への両薬剤の投与を指示したものである。 ウ仮に被告Aに故意が認められないとしても、被告Aは、原告の主治医として、適切な診療を行う注意義務を負うところ、前記ア記載のとおり、適応のないリボトリール及びロナセンの投与を指示し続けたものであるから、過失 がある。 ⑷ 原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応についてア原告は、被告病院に連れて来られる際、右足に打撲傷を負っていたにもかかわらず、被告病院において、平成30年12月18日まで、上記打撲傷の診療が行われなかったことは、原告の適切な医療を受ける権利を侵害するも のである。 そして、原告は、リウマチ性多発筋痛症を患っており、その治療として(プレドニンの投与が必要であったにもかかわらず、被告病院において、平成31年1月12日までの間、プレドニンが処方されなかったことは、原告の適切な医療を受ける権利を侵害するものである。 イ被告Aは、本件医療保護入院に関与した医師として、入院させるに当たり必要な情報を問診・検査によって得る注意義務を負っていたほか、原告の主治医として、医療水準に従った診療をする注意義務を負っていたものであり、以下のとおり、過失がある。 (ア)原告は、被告病院に連れて来られる際、右足に打撲傷を負っていたとこ ろ、被告Aは、足の痛みについて適切な問診を行わなかったばかりか、平 成30年12月14日には、打撲のため腫れて痛む右足の診療を原告が要求していたにもかかわらず、同月18日まで、漫然と原告の右足の診療を放置しているから、過失がある。 (イ)そして、原告は、リウマチ性多発筋痛症を患っていたため、その治療として、プレドニンが処方されていたにもかかわらず、被告Aは、医療保護 入院に際 足の診療を放置しているから、過失がある。 (イ)そして、原告は、リウマチ性多発筋痛症を患っていたため、その治療として、プレドニンが処方されていたにもかかわらず、被告Aは、医療保護 入院に際して、必要な情報収集を怠ったために、プレドニンの処方が必要であることを認識できなかったばかりか、本件医療保護入院当日に、Fが、被告病院に対し、原告がプレドニンの処方を受けていることを示す診療明細書を送ったために、プレドニンの処方が必要であることが明らかになってからも、平成31年1月12日まで、プレドニンの処方を怠っており、 過失がある。 ⑸ 被告病院における検査・治療についてア前記⑴記載のとおり、本件医療保護入院の決定時から、原告は精神障害者でなかった以上、被告病院において、原告が受けた多数の検査や治療は適応のない不適切なものであった。このように、原告に対して不適切な検査や治 療をしたことは、原告の身体の自由、行動の自由及び適切な医療を受ける権利を侵害するものである。 イ被告Aは、原告が精神障害者ではなく、検査や治療の必要性はないことを認識した上で(故意)、多数の検査や治療の指示をしたものである。 ウ仮に被告Aに故意が認められないとしても、被告Aは、原告の主治医とし て、患者に対して適切な医療を提供する注意義務を負っていたものである(保険医療機関及び保健医療担当規則20条参照)ところ、原告を「老年期認知症妄想型」とする不適切な診断結果を診療録に記載することなどにより、被告病院のスタッフをして、平成31年1月17日まで、不必要な検査・治療をさせ続けたものであるから、被告Aが上記注意義務に違反したことは明 らかである。原告の妻であるFや二男であるHが、被告病院に対し、退院受 入れの申出をしている 、不必要な検査・治療をさせ続けたものであるから、被告Aが上記注意義務に違反したことは明 らかである。原告の妻であるFや二男であるHが、被告病院に対し、退院受 入れの申出をしているにもかかわらず、被告Aは、本件医療保護入院の終了後も、Gを含む親族間での協議が調わないことを理由として、任意での入院という名目で、原告を被告病院に入院させ続け、不必要な検査や治療を行い続けたものであるから、その過失の程度は重大といわざるを得ない。 ⑹ 原告への治療の説明について ア被告Aが、原告が納得するために必要な治療行為についての情報(入院や投薬その他の治療行為)について必要な説明を一切しなかったことは、原告の知る権利及び自己決定権を侵害するものである。 イ被告Aは、原告の自己決定権を保護するために、原告が納得するために必要な治療行為についての情報(入院や投薬その他の治療行為)について 説明が必要であることを認識した上で(故意)、説明を怠ったものである。 ウ仮に被告Aに故意が認められないとしても、被告Aは、原告の主治医として、原告に対し、自己決定権として原告が納得するために必要な治療行為についての情報(入院や投薬その他の治療行為)を提供し、説明する注意義務を負っていたものである。 (ア)被告Aと初めて面談を行った際、原告は落ち着いており、原告の精神状態を理由として、上記事項につき説明を行わないといったことは考えられないにもかかわらず、被告Aは、原告に何の説明も行っていない。 本件医療保護入院が開始してからも、被告Aは、必要な説明を一切行わないばかりか、平成31年1 月10日、適切な説明をしたことを装うた め、原告に入院診療計画書に署名させるなど、必要な説明を一切行っておらず、過失がある。 、被告Aは、必要な説明を一切行わないばかりか、平成31年1 月10日、適切な説明をしたことを装うた め、原告に入院診療計画書に署名させるなど、必要な説明を一切行っておらず、過失がある。 (イ)また、リボトリールをはじめとするベンゾ系向精神薬は離脱症状が存在し、退院に際しては、適切な減断薬を実施する必要があることから、被告Aは、原告の主治医として、原告が退院する際に、適切な減断薬方 法を実施するための方策を説明する注意義務を負っていたものである ところ、一切かかる説明を行っておらず、過失がある。 ⑺ 被告病院での入院が継続したことについてア遅くとも平成30年12月19日の時点で、医療保護入院の要件は欠けており、被告病院での入院を継続させる必要はなかったにもかかわらず、同日以降も原告を被告病院に入院させ続けたことは、原告の身体の自由及び行動 の自由を違法に侵害するものである。 イ被告Aは、平成30年12月19日の時点で、医療保護入院の要件が欠けており、被告病院での入院を継続させる必要がなく、原告を直ちに被告病院から退院させなくてはならないことを認識していた上で(故意)、F及びHによる退院の要求が繰り返される状況下にあったにもかかわらず、平成31 年1月16日まで、原告の退院を認めなかったものである。 ウ仮に被告Aに故意が認められないとしても、被告Aは、原告の主治医として、医療保護入院の要件が欠けていることが判明し、原告及びその家族が退院を希望している場合には、直ちに、本件医療保護入院を解除して、原告を退院させる注意義務を負っていたものである。 (ア)平成30年12月19日、F及びHが原告の退院受入れを申し出ているところ、被告A自身も、原告について退院可能と診断していたことから明 告を退院させる注意義務を負っていたものである。 (ア)平成30年12月19日、F及びHが原告の退院受入れを申し出ているところ、被告A自身も、原告について退院可能と診断していたことから明らかのとおり、遅くとも同日の時点で、医療保護入院の要件が欠けていることは明らかであった。にもかかわらず、被告Aは、原告を被告病院に入院させ続けており、過失がある。 (イ)平成30年12月21日、原告は被告Bにより「非認知症」と診断されており、遅くとも同日の時点で、原告が精神障害者ではなく、医療保護入院の要件が欠けていることは明らかであった。にもかかわらず、被告Aは、原告を被告病院に入院させ続けており、過失がある。 (ウ)平成30年12月22日、本件医療保護入院が解除された以上、被告A は、原告を直ちに被告病院から退院させなくてはならなかった。にもかか わらず、被告Aは、原告を被告病院に入院させ続けており、過失がある。 (被告A及び被告医療法人の主張)⑴ 本件医療保護入院について本件医療保護入院の存在は認め、その余は否認ないし争う。 ア以下のとおり、本件医療保護入院は要件を満たす適切なものである。 (ア)本件医療保護入院は、指定医である被告Bの適切な診察・診断に基づくものである。なお、被告Bが、認知機能障害の評価尺度を実施しなかったのは、原告の興奮状態により実施不可能であったためであり、認知症疾患ガイドライン(乙13)には評価尺度を用いないことも容認されており、被告Bの診察に問題はない。 (イ)原告は「老年期認知症妄想型」であり、精神障害者であったことa 前提ICD-10は、認知症の診断について、概要、「G1:記憶力の低下か認知能力の低下を示す証拠が存在し、これらの低下によって、日常 は「老年期認知症妄想型」であり、精神障害者であったことa 前提ICD-10は、認知症の診断について、概要、「G1:記憶力の低下か認知能力の低下を示す証拠が存在し、これらの低下によって、日常生活動作や遂行機能に支障をきたすこと」、「G2:周囲に対する認識が、 G1の症例をはっきりと証明するのに十分な期間保たれていること」、「G3:情緒易変性、易刺激性、無感情、社会的高度の粗雑性のうち1項目以上が認められること」、「G4:G1の症状が明らかに6カ月以上存在していれば確定診断される」と定めている。 bG1、G2について 被告Bが診察した際、原告には、Gからの相談内容を前提とした被告Bの質問に対して、記憶を呼び覚まそうとすることなく、即座に全否定するなど、記憶力の低下や認知機能の低下を窺わせる所見が認められた上、この際に意識の混濁があったわけでもなかった。 cG3、G4について Gの相談内容には、原告の情緒易変性、易刺激性を示すエピソードが 多く見られた上、エピソード自体は平成27年頃のものであることからすれば、原告の情緒易変性、易刺激性の状態が6カ月以上続いていたことも明らかである。 d 小括以上からすれば、ICD-10に照らして、原告は「老年期認知症妄 想型」であり、精神障害者であったことは明らかである。 (ウ)入院の必要がある状態かつ任意入院が期待できない状態であったこと被告Bが診察した際、被告Bは、原告に入院治療を促したが、原告はこれを拒絶し、昂奮状態に陥っていたほか、不穏な発言がみられるなど自傷他害のおそれも認められる状況であったことからすれば、原告に入院の必 要があり、かつ任意入院も期待できなかったことは明らかである。 (エ)家族等の同意があったこと な発言がみられるなど自傷他害のおそれも認められる状況であったことからすれば、原告に入院の必 要があり、かつ任意入院も期待できなかったことは明らかである。 (エ)家族等の同意があったこと本件医療保護入院についてはGの同意があるところ、同人の同意が医療保護入院の要件である「家族等の同意」に当たることは、精神保健福祉法の規定に照らして明らかである。 イ被告Aが、医療保護入院の要件を満たしていないことを認識していたということはない。 ウ被告Aが、原告を一方的に怒鳴りつけるなどの不適切な診察をしたことはない上、被告Aが、本件医療保護入院を決定したわけではなく、被告Aの対応に医療水準に反する点も存在しないから、被告Aに過失はない。 被告Aは、診察時の原告の言動(独り言や空中の何かを掴もうとしていたなど)や信用できるGからの相談内容(原告が、自らが経営するデイサービスの従業員に対し、暴言や暴力等の粗暴な言動に及んだ、海老の養殖に係る詐欺被害に遭いそうになったなど)を踏まえ、「老年期認知症妄想型」の疑いがあるとして、入院治療を勧め、原告が拒絶したために、被告Bに診察を 引き継いだものである。 ⑵ 原告を3号室で起居させた措置について否認ないし争う。 ア本件医療保護入院の開始後、原告は、3号室を個室として使用していたに過ぎない。3号室の内側に取手はないものの、施錠がされていない状態では、内側から扉を押すことによって開閉させることができ、原告は、3号室を自 由に出入りすることができたものであり、3号室に入室させたことが「隔離」に当たらないことは明らかである。そして、原告を3号室に入院させたのは、前記⑴記載のとおり、診察時に、原告が易怒性を抱えていたためであり、上記措置は診療行為 であり、3号室に入室させたことが「隔離」に当たらないことは明らかである。そして、原告を3号室に入院させたのは、前記⑴記載のとおり、診察時に、原告が易怒性を抱えていたためであり、上記措置は診療行為として適切なものである。 イ前記ア記載のとおり、原告を3号室で起居させた措置が適切である以上、 被告Aに故意はなく、過失もない。 ⑶ 向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与について被告Aが、主治医として、リボトリール及びロナセンを処方したという限度で認め、その余は否認ないし争う。 アリボトリールは気分安定薬としても使用されているものであり、他の安定 剤に比して筋弛緩作用が弱いため、易怒性患者に使用されている。被告A及び被告Bの診察の際の言動や被告病院に入院中の言動に照らして、原告には易怒性等が認められたから、原告にリボトリールの適応があったことは明らかである。ロナセンも「攻撃/暴力」、「焦燥/興奮」、「不眠」、「不機嫌」等の症状に使用されているから、原告に適応があったことは明らかである。 イ前記ア記載のとおり、原告にリボトリールとロナセンを投与したことが適切である以上、被告Aに故意はなく、過失もない。 ⑷ 原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応について原告がリウマチ性多発筋痛症を患っており、被告病院において、平成31年1月12日まで、原告にプレドニンが処方されなかったという限度で認め、そ の余は否認ないし争う。 ア被告病院においては、原告からの下肢の痛みの愁訴にしたがって、レントゲン撮影や血液検査を実施したほか、痛み止めを処方するなどして適切に対応しており、右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症の診療に関して不適切な点は存在しない。プレドニンを処方しなかったのは、原告が通院歴、 ン撮影や血液検査を実施したほか、痛み止めを処方するなどして適切に対応しており、右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症の診療に関して不適切な点は存在しない。プレドニンを処方しなかったのは、原告が通院歴、病名及び処方薬の有無について、被告病院に対して伝えなかったため、被告病院に おいて、原告がリウマチ性多発筋痛症であるかどうかを診断できなかったためである。 イ前記ア記載のとおり、原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応が適切である以上、被告Aに過失はない。 ⑸ 被告病院における検査・治療について いずれも否認ないし争う。 ア前記⑴記載のとおり、原告は、被告Bの適切な診察(問診)により精神障害者と診断されたものであり、被告Aは、その疾患の詳細な内容を確定するために、本件医療保護入院中に必要な各種臨床検査を実施したほか、必要な治療を実施したものである。リボトリール及びロナセンの治療効果によって、 原告の精神が安定するようになったため、平成30年12月22日、本件医療保護入院が終了し、同日から平成31年1月17日までの間は、本件医療保護入院中に判明した「うっ血性心不全の疑い」の精査及び治療のため、被告病院の内科病棟に任意で入院していたところ、かかる期間の検査・治療にも不適切なものは存在しない。 イ前記ア記載のとおり、被告病院における検査・治療が適切である以上、被告Aに故意はなく、過失もない。 ⑹ 原告への治療の説明についていずれも否認ないし争う。 ア診療録から明らかのとおり、本件医療保護入院及び退院時に際して、被告 B及びP医師は、原告に対し、入院や投薬その他の治療行為について適切な 説明を行っている。 イ前記ア記載のとおり、原告に対する説明が適切である以上、被告Aに故 院時に際して、被告 B及びP医師は、原告に対し、入院や投薬その他の治療行為について適切な 説明を行っている。 イ前記ア記載のとおり、原告に対する説明が適切である以上、被告Aに故意はなく、過失もない。 ⑺ 被告病院での入院が継続したことについていずれも否認ないし争う。 ア被告病院において、退院の判断は、内部規程に基づき、主治医が、診療ガイドラインに則った上で、患者の生活環境の確保の有無等退院後の環境調整も考慮するなどして、総合的に判断する。本件では、平成30年12月19日の時点で、被告Aは、退院後の環境の調整ができれば退院可能と判断した上で、Hにその旨伝えており、平成31年1月17日までの間、原告が被告 病院に入院していたのは、退院後の環境の調整がまとまらずに、HやF、GやIらが、来院しながらも退院の申出をしなかったためである。 イ前記ア記載のとおり、被告Aの対応は適切である以上、被告Aに故意はなく、過失もない。 2 本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Bの故意・過失の有無 (原告の主張)⑴ 本件医療保護入院についてア本件医療保護入院が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑴ア記載のとおりである。 イ被告Bは、医療保護入院の要件を満たしていないことを認識した上で(故 意)、本件医療保護入院を決定した被告Aの判断に追従したものである。 ウ仮に被告Bに故意が認められなかったとしても、被告Bは、指定医として、医療水準に従って患者を診療する注意義務を負い、原告のチーム医療の担当医として、メンバー(担当医や医療スタッフ)が医療水準に反する診療をしていないか監督する注意義務を負っていた。被告Bは、一方的に原告を認知 患者を診療する注意義務を負い、原告のチーム医療の担当医として、メンバー(担当医や医療スタッフ)が医療水準に反する診療をしていないか監督する注意義務を負っていた。被告Bは、一方的に原告を認知 症と決めつけるなど、医学上の診察とは言い難い面談を行ったのみで、原告 を「老年期認知症妄想型」とする診療録を作成し、入院届に署名するなど、被告Aによる「老年期認知症妄想型」との診断と医療保護入院の決定に漫然と追従したものであるから、過失がある。 ⑵ 原告を3号室で起居させた措置についてア遅くとも平成30年12月12日の午後0時40分頃から同月13日午 後2時40分頃までの間、原告を3号室で起居させた措置が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑵ア記載のとおりである。 イ被告Bは、「隔離」の要件を満たしていないことを認識した上で(故意)、被告Aの決定に追従したものである。 ウ仮に被告Bに故意が認められなかったとしても、被告Bは、担当医として医療水準に従い診療する義務及び指定医として精神疾患者の人権に配慮する注意義務を負うものであるところ、前記⑴ウ記載のとおり、面談のみを行い、「隔離」の要件が欠けていることも明らかであったにもかかわらず、漫然と被告Aの決定に追従したものであるから、過失がある。 ⑶ 向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与についてア向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑶ア記載のとおりである。 イ被告Bは、原告にリボトリール及びロナセンの適応がないことを認識した 上で(故意)、被告Aによる向精神薬の投与を放置したものである。 ウ仮に被告Bに故意が認められなかった りである。 イ被告Bは、原告にリボトリール及びロナセンの適応がないことを認識した 上で(故意)、被告Aによる向精神薬の投与を放置したものである。 ウ仮に被告Bに故意が認められなかったとしても、被告Bは、チーム医療の担当医として、メンバーが医療水準に反する診療をしていないかを監督する注意義務を負うところ、被告Aによるリボトリール及びロナセンの投与を漫然と放置したものであるから、過失がある。 ⑷ 原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応について ア原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑷ア記載のとおりである。 イ被告Bは、本件医療保護入院に関与した医師として、入院させるに当たり必要な情報を問診・検査によって得る注意義務を負っていたほか、チーム医 療の担当医として、医療水準に従った診療をする注意義務を負っていたものであり、以下のとおり、過失がある。 (ア)原告は、被告病院に連れて来られる際、右足に打撲傷を負っており、平成30年12月14日には、打撲のため腫れて痛む右足の診療を要求していたにもかかわらず、同月18日まで、被告Bは、漫然と原告の右足の診 療を放置しており、過失がある。 (イ)そして、原告は、リウマチ性多発筋痛症を患っていたため、その治療として、プレドニンが処方されていたにもかかわらず、被告Bは、医療保護入院に際して、必要な情報収集を怠ったために、プレドニンの処方が必要であることを認識し得なかったばかりか、プレドニンの処方が必要である ことが判明してからも、平成31年1月12日まで、プレドニンの処方を怠っており、過失がある。 ⑸ 被告病院における検査・治療についてア被告 ったばかりか、プレドニンの処方が必要である ことが判明してからも、平成31年1月12日まで、プレドニンの処方を怠っており、過失がある。 ⑸ 被告病院における検査・治療についてア被告病院における検査・治療が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑸ア記載のとおりである。 イ被告Bは、原告が精神障害者ではなく、検査や治療の必要性はないことを認識した上で(故意)、多数の検査・治療をさせ続けたものである。 ウ仮に被告Bに故意が認められなかったとしても、被告Bは、指定医及びチーム医療の担当医として、患者に対して適切な医療を提供する注意義務を負っていたものであるところ、被告Aによる「老年期認知症妄想型」との診断 を補強する診断結果を記載することで、被告病院のスタッフをして、不必要 な検査・治療をさせ続けたものであるから、過失がある。 ⑹ 原告への治療の説明についてア原告への治療の説明が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑹ア記載のとおりである。 イ被告Bは、原告の自己決定権を保護するために、原告が納得するために必 要な治療行為についての情報(入院や投薬その他の治療行為)について説明が必要であるにもかかわらず、被告Aが適切な説明をしていないことを認識した上で(故意)、被告Aに代わって説明することを怠ったものである。 ウ仮に被告Bに故意が認められなかったとしても、被告Bは、指定医及びチーム医療の担当医として、原告に対し、入院・治療について、適切な説明を する注意義務を負っていたものであるから、主治医である被告Aが原告に適切な説明を行っていない場合には、自ら、入院・治療について適切な説明をする義務を負う。しかし ・治療について、適切な説明を する注意義務を負っていたものであるから、主治医である被告Aが原告に適切な説明を行っていない場合には、自ら、入院・治療について適切な説明をする義務を負う。しかしながら、被告Bは、診療録の記載からして、適切な説明がされていないことが明らかであったにもかかわらず、入院・治療について何ら説明を行っておらず、過失がある。 ⑺ 被告病院での入院が継続したことについてア被告病院での入院が継続したことが、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑺ア記載のとおりである。 イ被告Bは、原告が精神障害者ではなく、医療保護入院の要件が欠けており、直ちに原告を被告病院から退院させなくてはならないことを認識した上で (故意)、敢えて原告を退院させるための措置を採らず、被告Aの判断に従ったものである。 ウ仮に被告Bに故意が認められなかったとしても、被告Bは、指定医として、原告の入院の必要性を適切に判断して、医療保護入院の要件が欠けていることが判明した場合には、直ちに、本件医療保護入院を解除して、被告病院か ら退院させる注意義務を負っていたものである。 しかしながら、平成30年12月19日、同月21日及び同月22日の各時点で、医療保護入院の要件が欠け、原告を被告病院に入院させる必要がないことは明らかであったにもかかわらず、被告Bは、原告を退院させるための措置を何ら採っておらず、被告Aの判断に漫然と従っており、過失がある。 (被告B及び被告医療法人の主張) ⑴ 本件医療保護入院についていずれも否認ないし争う。本件医療保護入院が被告Bの適切な診察・診断に基づくものであり、要件が満たされていることは、前記1の被告の主張欄⑴ア記載のとおりであるから、 ⑴ 本件医療保護入院についていずれも否認ないし争う。本件医療保護入院が被告Bの適切な診察・診断に基づくものであり、要件が満たされていることは、前記1の被告の主張欄⑴ア記載のとおりであるから、被告Bに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑵ 原告を3号室で起居させた措置について いずれも否認ないし争う。被告Aによる原告を3号室に入院させる判断が適切であることは、前記1の被告の主張欄⑵ア記載のとおりであるから、被告Bに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑶ 向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与についていずれも否認ないし争う。被告Aによる向精神薬(リボトリール及びロナセ ン)の投与の指示が適切であることは、前記1の被告の主張欄⑶ア記載のとおりであるから、被告Bに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑷ 原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応についていずれも否認ないし争う。原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応が適切であることは、前記1の被告の主張欄⑷ア記載のとおりであるから、 被告Bに過失が認められる余地はない。 ⑸ 被告病院における検査・治療についていずれも否認ないし争う。被告病院における検査・治療が適切であることは、前記1被告の主張欄⑸ア記載のとおりであるから、被告Bに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑹ 原告への治療の説明について いずれも否認ないし争う。被告病院における原告への治療の説明が適切であることは、前記1の被告の主張欄⑹ア記載のとおりであるから、被告Bに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑺ 被告病院での入院が継続したことについていずれも否認ないし争う。平成31年1月17日までの間、原告が被告病院 記載のとおりであるから、被告Bに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑺ 被告病院での入院が継続したことについていずれも否認ないし争う。平成31年1月17日までの間、原告が被告病院 に入院していた理由は、退院後の環境調整がまとまらなかったためであり、被告病院側が適切に対応していたことは、前記1の被告の主張欄⑺ア記載のとおりであるから、被告Bに故意又は過失が認められる余地はない。 3 本件医療保護入院をさせたこと等についての被告Cの故意・過失の有無(原告の主張) ⑴ 本件医療保護入院についてア本件医療保護入院が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑴ア記載のとおりである。 イ被告Cは、医療保護入院の要件を満たしていないことを認識した上で(故意)、本件医療保護入院を決定した被告Aの判断に追従したものである。 ウ仮に被告Cに故意が認められなかったとしても、被告Cは、原告のチーム医療の担当医として、メンバーが医療水準に反する診療をしていないか監督する注意義務を負っていた。また、被告Cは、被告病院の管理者として、被告病院の安全管理体制を確保し、職員が不当な行為を行わないように監督する注意義務を負っていたほか、医療保護入院の場面においては、決定権者と して、自らその必要性を適切に判断する注意義務を負っていた。前記ア記載のとおり、本件医療保護入院は、いかなる要件も満たさないものであったから、被告Cは、チーム医療に携わる医師として、あるいは、管理者として、医療保護入院にかかる手続を中止するべきであった。にもかかわらず、被告Cは、漫然と被告Aの診断と決定に追従し、Gに原告の医療保護入院の同意 書を書かせた上で、入院届を提出したものであるから、過失がある。 院にかかる手続を中止するべきであった。にもかかわらず、被告Cは、漫然と被告Aの診断と決定に追従し、Gに原告の医療保護入院の同意 書を書かせた上で、入院届を提出したものであるから、過失がある。 ⑵ 原告を3号室で起居させた措置についてア遅くとも平成30年12月12日の午後0時40分頃から同月13日午後2時40分頃までの間、原告を3号室で起居させた措置が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑵ア記載のとおりである。 イ被告Cは、原告が被告病院に来院する前から、原告を医療保護入院によって被告病院に強制的に入院させ、保険診療報酬を得ることを企図しており、「隔離」の要件を満たしていないことを認識した上で(故意)、被告Aの決定に追従したものである。 ウ仮に被告Cに故意が認められなかったとしても、被告Cは、被告病院の管 理者として、被告病院での安全管理体制を確保し、職員が不当な行為を行わないように監督する注意義務を負うほか、「隔離」においては、その必要性について自ら適切に判断する注意義務を負うところ(精神保健福祉法37条、告示130号)、診療録の内容等からして、「隔離」の要件が欠けていることが明らかであったにもかかわらず、「隔離」の手続を中止することなく、漫 然と被告Aの決定に追従したものであるから、過失がある。 ⑶ 向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与についてア向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑶ア記載のとおりである。 イ被告Cは、原告にリボトリール及びロナセンの適応がないことを認識した上で(故意)、被告Aによる向精神薬の投与を放置したものである。 ウ仮に被告C 告の主張欄⑶ア記載のとおりである。 イ被告Cは、原告にリボトリール及びロナセンの適応がないことを認識した上で(故意)、被告Aによる向精神薬の投与を放置したものである。 ウ仮に被告Cに故意が認められなかったとしても、被告Cは、チーム医療の担当医として、メンバーが医療水準に反する診療をしていないかを監督する注意義務を負うほか、被告病院の管理者として、被告病院での安全管理体制 を確保し、職員が不当な行為を行わないように監督する注意義務を負うとこ ろ、被告Aによるリボトリール及びロナセンの投与を漫然と放置したものであるから、過失がある。 ⑷ 原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応についてア原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑷ア記載のとお りである。 イ被告Cは、本件医療保護入院に関与した医師として、入院させるに当たり必要な情報を問診・検査によって得る注意義務を負っていたほか、チーム医療の担当医として、医療水準に従った診療をする注意義務を負っていたものである。また、被告Cは、管理者として、被告病院での安全管理体制を確保 し、職員が不当な行為を行わないように監督する注意義務も負っていたものである。しかしながら、被告Cは、上記のとおり不適切な被告Aと被告Bの診療を看過しており、過失がある。 ⑸ 被告病院における検査・治療についてア被告病院における検査・治療が、原告の権利利益を違法に侵害するもので あることは、前記1の原告の主張欄⑸ア記載のとおりである。 イ被告Cは、原告が精神障害者ではなく、検査や治療の必要性はないことを認識した上で(故意)、多数の検査・治療をさせ続けたものである。 あることは、前記1の原告の主張欄⑸ア記載のとおりである。 イ被告Cは、原告が精神障害者ではなく、検査や治療の必要性はないことを認識した上で(故意)、多数の検査・治療をさせ続けたものである。 ウ仮に被告Cに故意が認められなかったとしても、被告Cは、チーム医療の担当医として、患者に対して適切な医療を提供する注意義務を負っていたほ か、管理者として、被告病院での安全管理体制を確保し、職員が不当な行為を行わないように監督する注意義務を負っていたものである。しかしながら、被告Cは、被告A及び被告Bの不適切な診断に基づき、漫然と、原告を医療保護入院とする書類を作成・提出し、これにより、被告病院のスタッフをして、不必要な検査・治療をさせ続けたものであるから、過失がある。 ⑹ 原告への治療の説明について ア原告への治療の説明が、原告の権利利益を違法に侵害するものであることは、前記1の原告の主張欄⑹ア記載のとおりである。 イ被告Cは、原告の自己決定権を保護するために、原告が納得するために必要な治療行為についての情報(入院や投薬その他の治療行為)について説明が必要であるにもかかわらず、被告A及び被告Bが適切な説明をしていない ことを認識した上で(故意)、両名に対して適切な説明をするように指示することも、両名の代わりに自ら説明することもしなかった。 ウ仮に被告Cに故意が認められなかったとしても、被告Cは、チーム医療の担当医として、原告に対し、入院・治療について、適切な説明をする注意義務を負うほか、管理者として、被告病院の安全管理体制を確保し、職員を監 督する注意義務を負う(医療法15条、6条の10)ほか、患者が入院する際には、患者に対して適切な説明をさせる(医療法6条の4)旨の注意義務を として、被告病院の安全管理体制を確保し、職員を監 督する注意義務を負う(医療法15条、6条の10)ほか、患者が入院する際には、患者に対して適切な説明をさせる(医療法6条の4)旨の注意義務を負っているため、被告Aや被告Bが原告に適切な説明を行っていない場合には、被告Aや被告Bに説明させる、あるいは、自ら入院・治療について説明する義務を負っていたものである。しかしながら、被告Cは、診療録の記 載からして、原告への適切な説明がされていないことが明らかであったにもかかわらず、被告Aや被告Bの監督を怠った上、入院・治療について自ら説明を行うこともなかったから、過失がある。 ⑺ 被告病院での入院が継続したことについてア被告病院での入院が継続したことが、原告の権利利益を違法に侵害するも のであることは、前記1の原告の主張欄⑺ア記載のとおりである。 イ被告Cは、原告が精神障害者ではなく、医療保護入院の要件が欠けており、直ちに原告を被告病院から退院させなくてはならないことを認識した上で(故意)、敢えて原告を退院させるための措置を採らず、被告Aの判断に従ったものである。 ウ仮に被告Cに故意が認められなかったとしても、被告Cは、チーム医療の 担当医として、メンバーが医療水準に反する診療をしていないかを監督する注意義務を負うほか、被告病院の管理者として、被告病院での安全管理体制を確保し、職員が不当な行為を行わないように監督する注意義務と医療保護入院の継続の必要性を判断する注意義務を負っていたものである。 平成30年12月19日、同月21日及び同月22日の各時点で、医療保 護入院の要件が欠け、原告を被告病院に入院させる必要がないことは明らかであったにもかかわらず、被告Cは、原告を退院させるための措置を何 年12月19日、同月21日及び同月22日の各時点で、医療保 護入院の要件が欠け、原告を被告病院に入院させる必要がないことは明らかであったにもかかわらず、被告Cは、原告を退院させるための措置を何ら採らず、被告Aの判断に漫然と従っており、過失がある。 (被告C及び被告医療法人の主張)⑴ 本件医療保護入院について いずれも否認ないし争う。本件医療保護入院が適切な被告Bの診察・診断に基づくものであり、要件が満たされていることは、前記1被告の主張欄⑴ア記載のとおりであるから、被告Cに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑵ 原告を3号室で起居させた措置についていずれも否認ないし争う。被告Aによる原告を3号室に入院させる判断に問 題がないことは、前記1被告の主張欄⑵ア記載のとおりであるから、被告Cに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑶ 向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与についていずれも否認ないし争う。被告Aによる向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与の指示が適切であることは、前記1被告の主張欄⑶ア記載のとおり であるから、被告Cに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑷ 原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応についていずれも否認ないし争う。原告の右足の打撲傷とリウマチ性多発筋痛症への対応が適切であることは、前記1被告の主張欄⑷ア記載のとおりであるから、被告Cに過失が認められる余地はない。 ⑸ 被告病院における検査・治療について いずれも否認ないし争う。被告病院における検査・治療が適切であることは、前記1被告の主張欄⑸ア記載のとおりであるから、被告Cに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑹ 原告への治療の説明についていずれも否認ないし 被告病院における検査・治療が適切であることは、前記1被告の主張欄⑸ア記載のとおりであるから、被告Cに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑹ 原告への治療の説明についていずれも否認ないし争う。被告病院における原告への治療の説明が適切であ ることは、前記1被告の主張欄⑹ア記載のとおりであるから、被告Cに故意又は過失が認められる余地はない。 ⑺ 被告病院での入院が継続したことについていずれも否認ないし争う。平成31年1月17日までの間、原告が被告病院に入院していた理由は、退院後の環境調整がまとまらなかったためであり、被 告病院側が適切に対応していたことは、前記1被告の主張欄⑺ア記載のとおりであるから、被告Cに故意又は過失が認められる余地はない。 4 被告医師らの行為につき関連共同性の有無(原告の主張)被告病院においてはチーム医療体制が採られており、チーム医療のメンバーで ある被告医師らは、相互の医療行為を互いに確認し、補完し合って、本件医療保護入院を行っていたものといえ、各行為について主観的関連共同性が認められる。 そして、本件医療保護入院において、被告医師らは、順次、自らの役割を果たしていたものであり、客観的関連共同性も認められることからすれば、前記1ないし3記載の被告医師らの行為につき共同不法行為が成立する。 (被告らの主張)争う。 5 被告病院における措置(主位的請求の請求⑴)に係る損害及び損害額(原告の主張)被告医師らが、精神疾患を患っていない原告を医療保護入院させ、必要のない 検査・治療をしたことによって、原告は、視覚障害等の副作用の発症や歩行困難 に陥るなど様々な身体的苦痛を被ったほか、甚大な精神的苦痛を被ることとなった。かかる損害の額は以下のとおり 検査・治療をしたことによって、原告は、視覚障害等の副作用の発症や歩行困難 に陥るなど様々な身体的苦痛を被ったほか、甚大な精神的苦痛を被ることとなった。かかる損害の額は以下のとおりであり、総額で1357万7149円となる。 ⑴ 治療費・・・21万4250円⑵ 慰謝料・・・1200万円なお、慰謝料の内訳は、以下のとおりである。 ア 37日間、被告病院に監禁され、身体の自由等を侵害されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料・・・300万円イ適切な医療を受ける権利が侵害されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料・・・150万円ウ自己決定権を侵害されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料・・・20 0万円エリボトリール及びロナセンの投与によって、身体の自由を侵害され、被告病院に入院中、思考能力の低下や視覚障害等の副作用を発症したことによる精神的苦痛に対する慰謝料・・・350万円オリボトリール及びロナセンの投与によって、身体の自由を侵害され、被告 病院を退院してから約一年半の間、歩行困難であったことによる精神的苦痛に対する慰謝料・・・200万円⑶ 証拠保全費用・・・12万8613円⑷ 弁護士費用・・・123万4286円(被告らの主張) 否認ないし争う。本件医療保護入院中に原告に生じた失禁、歩行困難といった症状は、原告のリウマチ性多発筋痛症による下肢疼痛によって生じたものであり、リボトリール及びロナセンの処方とは無関係である。 6 被告医療法人が診療録の開示を拒絶したことが原告の権利を侵害する不法行為又は債務不履行に当たるか否か (原告の主張) 医師は準委任契約に基づく顛末報告義務違反として、患者に対し、診療記録の開示義務を負っ たことが原告の権利を侵害する不法行為又は債務不履行に当たるか否か (原告の主張) 医師は準委任契約に基づく顛末報告義務違反として、患者に対し、診療記録の開示義務を負っているほか(民法645条)、個人情報取扱事業者に被告医療法人は当たるという観点からも(令和2年6月12日法律第44号による改正前の個人情報の保護に関する法律28条2項参照)、被告病院は、原告から診療録の開示請求があった場合には、直ちにこれに応じる義務を負っていたといえる。し かしながら、被告医療法人は、原告の診療録の開示の請求を拒絶し、原告の「知る権利」を侵害したものであるから、かかる被告医療法人の対応は不法行為に当たるし、債務不履行に当たる。この点について、被告医療法人は、開示を拒絶する理由として、親族間の紛争への発展を挙げるものの、被告医療法人は、親族間の紛争があることを承知の上で、本件医療保護入院を行ったものであるから、か かる理由が開示を拒絶する正当な事由として認められる余地はない。 (被告医療法人の主張)否認ないし争う。被告医療法人は、診療録の開示について、代理人間で協議することを求める旨回答したのであって、診療録の開示を拒絶したものではない。 7 診療録の開示の拒絶(主位的請求の請求⑵)に係る損害及び損害額 (原告の主張)⑴ 診療録の開示の拒絶による精神的苦痛に対する慰謝料・・・100万円⑵ 弁護士費用・・・10万円(被告らの主張)いずれも否認ないし争う。 8 主位的請求の請求⑴に係る債権の消滅時効の成否(被告らの主張)本件医療保護入院中に原告が被った損害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権については、本件訴えの提起時点において、加害者を知った時である平成31年1月24 の消滅時効の成否(被告らの主張)本件医療保護入院中に原告が被った損害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権については、本件訴えの提起時点において、加害者を知った時である平成31年1月24日(診療録の開示請求をした日)から3年が経過しており、消滅時 効が完成している。 (原告の主張)争う。時効の起算点である「損害及び加害者を知った日」は、証拠保全によって実際にカルテ等を入手し、入院の経緯等を知ることができるようなった令和3年9月1日である。 仮にそうでないとしても、原告は、被告らに対し、令和4年1月14日までの 間に、不法行為に基づく損害の賠償を催告しており、時効中断の効果が生じている。 以上
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