平成25年3月13日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(ワ)第10734号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成25年2月13日判決横浜市都筑区<以下略>原告クオード株式会社上記訴訟代理人弁護士弘中徹同三好重臣同仙田正一同別所司同野村亮輔同高橋知久同植村理栄子同小屋敷雄二東京都江東区<以下略>被告株式会社エヌ・ティ・ティ・データ東京都港区<以下略>被告株式会社コンストラクション・イーシー・ドットコム上記2名訴訟代理人弁護士升永英俊同補佐人弁理士佐藤睦 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,原告に対し,それぞれ7000万円及びこれに対する平成24年5月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要 1 争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。以下,証拠番号の枝番を省略することがある。)(1) 当事者原告は,コンピュータシステム 仮執行宣言第2 事案の概要 1 争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。以下,証拠番号の枝番を省略することがある。)(1) 当事者原告は,コンピュータシステムの企画,開発,改善等を目的とする株式会社であり,被告株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下「被告NTTデータ」という。)は,電気通信事業等を目的とする株式会社であり,被告株式会社コンストラクション・イーシー・ドットコム(以下「被告コンストラクション」という。)は,情報処理及び情報提供サービス等を目的とする株式会社である。〔弁論の全趣旨〕(2) 原告の有する特許権ア原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)。 発明の名称内容証明を行う通信システムおよび内容証明サイト装置特許番号第3796528号出願日平成11年12月28日登録日平成18年4月28日イ本件特許の特許請求の範囲,明細書及び図面の内容は,別紙特許公報記載のとおりである(以下,上記明細書及び図面を「本件明細書等」という。)ウ本件特許の特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲における請求項の数は14であるが,そのうち請求項8の記載は,別紙特許公報の特許請求の範囲【請求項8】記載のとおりである(以下,同請求項記載の発明を「本件発明」という。)。 - 3 -(3) 構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると次のとおりである。 1 発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する内容証明サイト装置であって, 2 前記発信者装置から,該発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確 信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する内容証明サイト装置であって, 2 前記発信者装置から,該発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該発信者が電子署名した発信者署名データを受け取る第1の受信手段と, 3 前記受信者装置から,該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該受信者が電子署名した受信者署名データを受け取る第2の受信手段と, 4 前記発信者装置から受け取った前記発信者署名データと前記受信者装置から受け取った前記受信者署名データとを内容証明を行うために保管する保管手段と, 5 前記内容証明の一環として,前記発信者署名データのうち,前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータと,前記受信者署名データのうち,前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータとを照合する手段と,を備え, 6 前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該発信者装置が送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られ, 7 前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られている,ことを特徴とする内容証明サイト装置。 - 4 -(4) 被告装置及び被告らの行為被告NTTデータは,顧客に対し,「CECTRUST」と称する電子契約サービス(以下「CECサービス」という。)を行うに当たり,原本性証明装置(以下「CECサーバ」という。)を使用して,内容証明の一環として原本 タは,顧客に対し,「CECTRUST」と称する電子契約サービス(以下「CECサービス」という。)を行うに当たり,原本性証明装置(以下「CECサーバ」という。)を使用して,内容証明の一環として原本性証明を行っており,被告コンストラクションは,被告NTTデータとの業務委託契約等に基づき,被告NTTデータを代行してCECサーバを使用して,顧客に対して,内容証明の一環として原本性証明を行っている。 〔甲3,弁論の全趣旨〕 2 本件は,本件特許権を有する原告が,被告らに対し,被告らが顧客と契約して実施している内容証明の一環としての原本性証明に係る装置であるCECサーバは,本件発明の技術的範囲に属し本件特許権を侵害するとして,民法709条に基づき,不法行為による損害賠償請求として,それぞれ7000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 3 本件の争点(1) CECサーバは,本件発明の技術的範囲に属するかア構成要件5の充足性イ構成要件6及び7の充足性(2) 損害の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(構成要件5の充足性)〔原告の主張〕(1) 本件発明における「照合する手段」本件明細書等の【図1】のとおり,本件発明において,証明サイト1は,発信者側サイトA及び受信者側サイトBとインターネット4を介して通信している。また,内容証明サイト1の内容証明サーバCは,通信の内容証明 - 5 -(発信者名,受信者名,伝達情報の内容などの確認)を行う機能を有している(本件明細書等の段落【0018】)。 そして,本件発明は,内容証明サーバCにおいて内容証明の一環として,発信者署名データのうち,発信者装置 名,伝達情報の内容などの確認)を行う機能を有している(本件明細書等の段落【0018】)。 そして,本件発明は,内容証明サーバCにおいて内容証明の一環として,発信者署名データのうち,発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータと,受信者署名データのうち,受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータを照合している。 (2) CECサーバにおける「照合する手段」原本性証明は,原本性登録をしてタイムスタンプを施した発信者A及び受信者Bの各署名値のうち,契約書の内容の同一性を確認できる各データを原本性の照合値として用いて,原本性を証明する契約書から照合値と照合することによって行われるものである。この点に関し,CECサーバにおいては,原本性登録をしてタイムスタンプを施してある発信者A及び受信者Bの各署名値の照合値(εとζ)を用いることによって,A及びBが同一の契約書データDに電子署名しているか否かが判明することとなり,その結果,A及びBの原本性を証明する契約書データDの非改ざん性を証明することができる。 すなわち,原本性を検証する契約書データDから算出してある照合値をδとすると,CECサーバにおいては,発信者署名データのうち,発信者Aが送信した契約書Dの内容の同一性を確認できるデータ(照合値ε)をもって,上記照合値δと照合し,受信者署名データのうち,受信者Bが受け取って復号化した契約書Dの内容の同一性を確認できるデータ(照合値ζ)をもって,上記照合値δと照合しているのであるから,結局,CECサーバにおいては,照合値εをもって照合値ζと照合していることになる。 したがって,CECサービスの発信者Aが「発信者装置」に,原本性登録してタイムスタンプを施した発信者Aの署名値のうちの契約書Dの内容の ては,照合値εをもって照合値ζと照合していることになる。 したがって,CECサービスの発信者Aが「発信者装置」に,原本性登録してタイムスタンプを施した発信者Aの署名値のうちの契約書Dの内容の同一性を確認できるデータが「発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に,受信者Bが「受信者装置」に,原本性登録してタ - 6 -イムスタンプを施した受信者Bの署名値のうちの契約書Dの内容の同一性を確認できるデータが「受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ」に,それぞれ該当し,CECサーバは,両データを照合して,「発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明」している。 以上のとおり,CECサーバは,構成要件5を充足する。 (3) 被告らの主張に対する反論ア被告らは,CECサービスは,文書につき,当該文書の内容が,タイムスタンプを登録した日時以降原本性検証を行った日時まで改ざんされていないことを証明するサービスであって,照合するサービスを一切提供していない旨主張する。 しかし,被告らは,CECサービスについて,自ら公開している「電子契約サービスCECTRUSTの特徴」(甲3の6)において,上記の特徴のほかに,「NTTデータのセキュリティ技術/インフラを結集した信頼性の高いサービス」との特徴を挙げ,「特に電子文書の原本性を長期にわたり証明するための電子署名,セキュア配送,原本性証明,電子文書保管のサービスを提供します。インターネット上でセキュアな環境の中で電子契約文書の交換と原本性証明を実現したASP電子契約サービス」と説明しており,また,「発注者及び受注者が同一の契約書に電子署名す 管のサービスを提供します。インターネット上でセキュアな環境の中で電子契約文書の交換と原本性証明を実現したASP電子契約サービス」と説明しており,また,「発注者及び受注者が同一の契約書に電子署名する場合,受注者が,発注者が電子署名した契約書上に電子署名することを想定したサービスです・・・」(甲10)と説明している。これらは,電子署名が,電子文書の原本性を長期にわたり証明するために用いられるものであることを説明した上で,電子署名をして交換(通信)された電子契約文書の原本性(非改ざん性)を証明(検証)する電子契約サービスを提供していることを意味するものである。 - 7 -イ被告らは,CECサーバにおける原本性証明の処理態様は,別紙「図1CECTRUST処理ステップ抜粋」(甲7。以下「本件処理ステップ」という。)のとおりであるとして,本件処理ステップのうち,「⑥照合」から得た照合結果と「⑬照合」から得た照合結果は,相互に無関係であって,相互に独立した照合結果であるから,CECサーバでは構成要件5の「照合する手段」を備えていない旨主張する。 しかし,被告らは,(D)aと(D)cの照合(下記「本件照合2」)を「⑥照合」にすり替え,本件照合1と本件照合2は無関係とする前提をおいた主張をしているにすぎない。 すなわち,被告らの主張する本件処理ステップによると,(D’)bと(D’)cの照合(以下「本件照合1」という。)の(D’)c及び(D)aと(D)cの照合(以下「本件照合2」という。)の(D)cには,原本性を証明する同一の電子契約文書「D」(照合値δ)から算出した照合値が存在するから,本件照合1と本件照合2は,原本性を検証する電子契約書(照合値δ)を同一とする関係がある。 また,長期にわたり原本性を検証(証明)する際は 「D」(照合値δ)から算出した照合値が存在するから,本件照合1と本件照合2は,原本性を検証する電子契約書(照合値δ)を同一とする関係がある。 また,長期にわたり原本性を検証(証明)する際は,本件照合1と本件照合2は,原本性を証明する電子契約文書から作成される同一の照合値δとの照合,すなわち,発信者が電子署名した電子契約文書から算出されている照合値であるε及び,受信者が電子署名した電子契約文書から算出されている照合値であるζとの照合であるから,両照合は,同一の照合値δを介した関係にある。 したがって,「⑥照合」から得た照合結果と「⑬照合」から得た照合結果は相互に無関係であるとの被告らの上記主張は失当である。 〔被告らの主張〕CECサーバの処理態様は,本件処理ステップのとおりである。CECサーバでは,「写真報告書1」と題する書面(甲10,乙2)のとおり,当該文書 - 8 -にタイムスタンプを登録し,案件完了時以降10年間当該文書を保管し,発注者又は受注者の求めに応じて,「案件完了時以降,保管中の当該文書が非改ざんであること」の「原本性検証」をするというサービスを提供するだけである。 つまり,CECサービスは,ある文書の内容が,タイムスタンプを登録した日時以降原本性検証を行った日時まで改ざんされていないことを証明するサービスであって,内容証明についての手法として,CECサーバは発注者の電子署名した文書と受注者の電子署名した文書が同一であるか否かを照合するサービスを一切提供していないから,構成要件5の「照合する手段」を備えていない。 これを本件処理ステップにおいて見ると,送信者AはCECサーバに文書(D)とそのダイジェスト((D)a)を送信し,CECサーバは受信した文書(D)から(D)cを生成し,この(D)cを受信し ない。 これを本件処理ステップにおいて見ると,送信者AはCECサーバに文書(D)とそのダイジェスト((D)a)を送信し,CECサーバは受信した文書(D)から(D)cを生成し,この(D)cを受信した(D)aと比較すること(⑥照合),また,受信者BはCECサーバに文書(D’)とそのダイジェスト((D’)b)を送信し,CECサーバは受信した文書(D’)から(D’)cを生成し,この(D’)cを受信した(D’)bと比較すること(⑬照合)が記載されるのみであって,送信者Aから送信されたデータと受信者Bから送信されたデータを比較する処理はなされていない。つまり,「⑥照合」から得た照合結果と「⑬照合」から得た照合結果は,相互に無関係であって,CECサーバで原本性検証の対象となる文書は,あくまで,案件が完了した後の文書であり,CECは,案件が完了する前に対象たる文書に改ざんがあったかどうかについては,発注者が自らの判断で確認することを前提としたサービスである。 以上のとおり,CECサーバは,構成要件5を充足しない。 2 争点(1)イ(構成要件6及び7の充足性)〔原告の主張〕(1) 構成要件6及び7における「同一性を確認できるデータ」の意義ア本件発明において,内容証明サーバCが受け取るAの「署名値」には, - 9 -Aが送信した伝達情報の内容の同一性を確認できる照合値が含まれており,この照合値は,Aが送信した伝達情報のダイジェスト又はその伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストである。 イまた,本件発明において,内容証明サーバCが受け取るBの「署名値」にはBが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できる照合値が含まれており,この照合値は,Bが受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又はその伝達情報を サーバCが受け取るBの「署名値」にはBが受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できる照合値が含まれており,この照合値は,Bが受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又はその伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストである。 (2) CECサーバにおける「同一性を確認できるデータ」の内容CECサーバにおいて,原本性登録をしてタイムスタンプを施してある発信者Aの「署名値」中に存する,発信者Aが送信した契約書の内容の同一性を確認できるデータは,発信者Aが送信した契約書のダイジェストであり,また,原本性登録をしてタイムスタンプを施してある受信者Bの「署名値」中に存する,受信者Bが受け取って復号化した契約書の内容の同一性を確認できるデータは,受信者Bが受け取って復号化した契約書のダイジェストである。 したがって,CECは,構成要件6及び7を充足する。 (3) 被告らの主張に対する反論被告らは,本件発明の審査経過で提出された平成17年12月16日付け手続補正書(方式)(乙1。以下「本件手続補正書」という。)において,「伝達情報」が,「発信者装置」又は「受信者装置」から「内容証明サイト装置」に送られることを明確に除外していると主張する。 しかし,被告らは,本件手続補正書において,「伝達(通信された)情報(電子契約文書)の内容の同一性を確認できるデータに関して」との限定で記述されている部分を,伝達情報そのもののことであると曲解し,請求項の文言を否定しているにすぎない。 - 10 -また,本件発明の従属項である,本件特許の特許請求の範囲請求項10は,「該内容証明サイト装置は,該発信者装置または該受信者装置の何れかから該伝達情報を,該受信者装置に受け渡すためではなく内容証明の処理のために必要なデータとして受け取るように 請求の範囲請求項10は,「該内容証明サイト装置は,該発信者装置または該受信者装置の何れかから該伝達情報を,該受信者装置に受け渡すためではなく内容証明の処理のために必要なデータとして受け取るように構成した請求項8~9のいずれかに記載の内容証明サイト装置」というものであり,内容証明サイト装置が内容証明を行うために伝達情報を受け取れることが明記されているから,上記請求項10の前提となる本件発明で,内容証明サイト装置が内容証明のために伝達情報を受け取れることを排除していないことは明らかである。 さらに,被告らが,原本性証明のサービスの他に,伝達情報そのものを送受信し保管サービス等に利用しているとしても,それは,構成要件6及び7とは無関係である。 〔被告らの主張〕原告は,本件特許の審査経過において提出された本件手続補正書において,「伝達情報」が,「発信者装置」又は「受信者装置」から「内容証明サイト装置」に送られることを明確に除外している。そうすると,構成要件6及び7の「伝達情報」は,「発信者装置」又は「受信者装置」から「内容証明サイト装置」に送られるものではないと解するのが相当であるところ,CECサービスでは,本件処理ステップのとおり,伝達情報である契約書をCECサーバ(サーバC)に送信しているから,構成要件6及び7を充足しない。 3 争点(2)(損害の有無及びその額)〔原告の主張〕被告ら各自においての,平成20年3月から平成23年3月までの,それぞれの累積実施件数,契約者数等からすると,それぞれ2億円の売上げがあり,経費率30パーセントとして,それぞれ1億4000万円の利益を得ているというべきである。 したがって,原告は,上記の一部請求として,被告ら各自に対し,それぞれ - 11 -7000万円及び訴状送達の日の ーセントとして,それぞれ1億4000万円の利益を得ているというべきである。 したがって,原告は,上記の一部請求として,被告ら各自に対し,それぞれ - 11 -7000万円及び訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分による遅延損害金の支払を求める。 〔被告らの主張〕上記原告の主張は否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の意義本件明細書等の【発明の詳細な説明】の段落【0001】,【0002】,【0003】,【0004】,【0005】,【0006】,【0021】及び図1ないし図5によれば,本件発明は,インターネット等のネットワークを用いて送受信する伝達情報の内容証明を行う通信システムと内容証明サイト装置に関するものであり,従来,インターネット等のネットワークでは,通信を行っている者の本人確認をパスワードや公開鍵暗号などにより行う電子認証(デジタル認証)や,送る伝達情報に公開鍵暗号などにより署名を入れる電子署名(デジタル署名)などがよく知られていたが,ネットワーク上における伝達情報の内容証明,すなわち,ある発信者から送られたある伝達情報がある受信者に渡されたことを第三者が内容証明する技術はなかったため,本件特許は,かかるネットワーク上における伝達情報の内容証明を行うことを目的とし,特に,本件発明では,特許請求の範囲請求項8記載の構成を採用することにより,保管手段に保管されている発信者署名データと受信者署名データとに基づいて,発信者と受信者の本人確認と発信者が送った伝達情報と受信者が受け取って復号化した伝達情報の同一性確認を行うことができ,それにより伝達情報に関する内容証明を第三者の立場で行うことができるようにした発明であると認められる。 2 争点(1)ア(構成要件5の充足性)について た伝達情報の同一性確認を行うことができ,それにより伝達情報に関する内容証明を第三者の立場で行うことができるようにした発明であると認められる。 2 争点(1)ア(構成要件5の充足性)について(1) 本件発明における「照合する手段」の意義ア本件明細書等には,次の記載がある。 - 12 -・「以下、図2に示すシーケンス図と、図3~図5に示すフローチャートを参照してこの実施例システムの動作概要を説明する。この図2のシーケンス図では、左側から順に発信側端末A、内容証明サーバC、認証サーバN、受信側端末Bが配置され、それらの間でネットワークを介して受け渡されるデータの種類が図中に書き込まれている。これらのデータ中、〔α〕βの表記は、データαが鍵βで暗号化されていることを表す。 また、〔α,ε〕βの表記は、データαとデータεがそれぞれ鍵βで暗号化されていることを表し、〔α〕βと〔ε〕βとが各々独立してあることと等価であるものとする。さらに、(γ)x という表記は、サイトXでデータγをダイジェスト化(後述する)した値であることを表している。」(段落【0021】)・「また、図3~図5は発信側端末A、受信側端末B、内容証明サーバCにおいて各々実行される処理手順をフローチャートの形で示したものである。これらの図では、発信者たる発信側端末Aが伝達情報Dを受信者たる受信側端末Bに内容証明サイト1の内容証明サーバC経由で送り、内容証明サイト1ではその伝達情報Dを受け渡すにあたりその内容証明を行うものとする。」(段落【0022】)・「まず、発信側端末Aが内容証明サーバCに内容証明付の通信を行うことを要求する。この際、発信側端末Aは、以下の処理を行う(ステップA1)。すなわち、送りたい伝達情報Dを用意するとともに、 ・「まず、発信側端末Aが内容証明サーバCに内容証明付の通信を行うことを要求する。この際、発信側端末Aは、以下の処理を行う(ステップA1)。すなわち、送りたい伝達情報Dを用意するとともに、この伝達情報Dを暗号化するための共通鍵暗号方式の共通鍵(秘密鍵とも称する)Rを生成する。この共通鍵Rとしては例えば乱数などが利用できる。 この共通鍵Rを用いて伝達情報Dを暗号化して暗号文〔D〕Rを作成する。この共通鍵Rの生成は、発信側端末Aがこの内容証明通信を行う毎に新たなものに変更して生成しており、それにより通信機密性の高いセキュリティを確保している。」(段落【0024】) - 13 -・「さらに、この暗号文〔D〕Rと伝達情報Dとをそれぞれハッシュ関数などで変換演算を行って圧縮してダイジェスト値(〔D〕R)a とダイジェスト値(D)a を得る。」(段落【0026】)・「この暗号化された伝達情報のダイジェスト値(〔D〕R)a と伝達情報のダイジェスト値(D)a とを発信側端末Aの秘密鍵(プライベート鍵)SKa で暗号化した暗号文〔(〔D〕R)a ,(D)a 〕SKa を作成する。この暗号文〔(〔D〕R)a ,(D)a 〕SKa は、それを受け取った側にて、発信側端末Aの公開鍵(パブリック鍵)PKa を用いて暗号解読できることで、その発信者が発信側端末Aであると本人確認でき、また、ダイジェスト値(〔D〕R)a とダイジェスト値(D)a は発信側端末Aが送った伝達情報Dの内容を一意的に特定して内容の完全性(変更されていないこと)を確認できるデータであるので、本発明における発信者の本人確認と伝達情報の内容特定とを行う電子署名データとして用いることができる。」(段落【0028】)・「そして、発信側端末Aは送信データと 確認できるデータであるので、本発明における発信者の本人確認と伝達情報の内容特定とを行う電子署名データとして用いることができる。」(段落【0028】)・「そして、発信側端末Aは送信データとして以下のものを揃えて、インターネット4を介して内容証明サイト1の内容証明サーバCに送る(図3のステップA2)。 マル1アドレスAA:発信元としての発信側端末Aのネットワーク上のアドレスマル2アドレスBB:受信先としての受信側端末Bのネットワーク上のアドレスマル3暗号文〔〔(〔D〕R)a ,(D)a 〕SKa 〕PKc :暗号化された伝達情報のダイジェスト値(〔D〕R)a と伝達情報のダイジェスト値(D)a とを発信側端末Aが秘密鍵SKa で電子署名した暗号文〔(〔D〕R)a ,(D)a 〕SKa を、内容証明サーバCの公開鍵PKc で暗号化した暗号文 - 14 -マル4暗号文〔D〕R:伝達情報Dを共通鍵Rで暗号化した暗号文マル5暗号文〔〔R,(R)a 〕SKa 〕PKc :共通鍵Rとそのダイジェスト値(R)a を発信側端末Aが秘密鍵SKa で電子署名した暗号文〔R,(R)a 〕SKa を、内容証明サーバCの公開鍵PKc で暗号化した暗号文」(段落【0031】)・「そして、内容証明サーバCは、自己の秘密鍵SKc を用いて暗号文〔〔(〔D〕R)a ,(D)a 〕SKa 〕PKc と暗号文〔〔R,(R)a 〕SKa 〕PKc を暗号解読して、伝達情報に関するダイジェスト値の暗号文〔(〔D〕R)a,(D)a 〕SKa と共通鍵に関する暗号文〔〔R,(R)a 〕SKa を得る。この暗号解読をできるのは内容証明サーバCだけであるので、通信の高い秘匿性が確保できる。」(段落【0033】)・「受信先の受信側端末 通鍵に関する暗号文〔〔R,(R)a 〕SKa を得る。この暗号解読をできるのは内容証明サーバCだけであるので、通信の高い秘匿性が確保できる。」(段落【0033】)・「受信先の受信側端末Bは、内容証明サーバCからデータを受信すると、そのうちの発信元アドレスCCに基づいて、内容証明サーバCからの通信であることを認識する。」(段落【0039】)・「さらに、内容証明サーバCから受信した伝達情報の暗号文〔D〕Rを発信側端末A側と同じハッシュ関数を用いてダイジェスト化してダイジェスト値(〔D〕R)b を作成する(図4のステップB1)。」(段落【0042】)・「受信側端末Bは、内容証明サーバCから受け取った発信日時Ta と自局算出のダイジェスト値(〔D〕R)b とに自局の秘密鍵SKb で電子署名して暗号文〔(〔D〕R)b ,Ta 〕SKb を作成し、この暗号文〔(〔D〕R)b ,Ta 〕SKb を受取証とする。この受取証〔(〔D〕R)b ,Ta 〕SKb は、これを受け取った側で受信側端末Bの公開鍵PKb を用いて暗号解読できることで、発信元が受信側端末Bであることを確認でき、また受信側端末Bが受け取った伝達情報の暗 - 15 -号文〔D〕Rの内容を一意的に特定して内容の完全性(変更されていないこと)を確認できるデータであるので、本発明における受信者の本人確認と伝達情報の内容特定とを行う電子署名データとして用いることができる。」(段落【0044】)・「受信側端末Bは、この受取証〔(〔D〕R)b ,Ta 〕SKb を内容証明サーバCの公開鍵PKc で暗号化した暗号文〔〔(〔D〕R)b ,Ta 〕SKb 〕PKc を作成して、内容証明サーバCに送る(ステップB3)。」(段落【0045】)・「この を内容証明サーバCの公開鍵PKc で暗号化した暗号文〔〔(〔D〕R)b ,Ta 〕SKb 〕PKc を作成して、内容証明サーバCに送る(ステップB3)。」(段落【0045】)・「この受取証〔(〔D〕R)b ,Ta 〕SKb を受け取った内容証明サーバCは、受信側端末Bの公開鍵PKb を用いて暗号解読して、受信側端末Bで算出したダイジェスト値(〔D〕R)b を得る。この暗号解読により、この受取証〔(〔D〕R)b ,Ta 〕SKb が受信側端末Bから発信されたものであることを本人確認できる。」(段落【0046】)・「受信側端末Bは、この受け取った暗号文〔〔〔R,(R)a ,Tb 〕SKc 〕PKb を、自己の秘密鍵SKb と内容証明サーバCの公開鍵PKc を用いて暗号解読して、共通鍵Rとそのダイジェスト値(R)a 、さらに受取日時Tb を取得する。そして、この共通鍵Rを用いて、先に内容証明サーバCから受け取った伝達情報の暗号文〔D〕Rを暗号解読して伝達情報Dを得る。そして、この伝達情報Dを、ハッシュ関数を用いてダイジェスト化して伝達情報のダイジェスト値(D)b を作成する(図4のステップB4)。」(段落【0049】)・「この伝達情報のダイジェスト値(D)b と受取日時Tb に自己の秘密鍵SKbで電子署名した暗号文〔(D)b ,Tb 〕SKb を作成し、これを暗号解読済証(受取証)とする。この暗号解読済証〔(D)b ,Tb 〕SKb を更に内容証明サーバCの公開鍵PKc で暗号化することで、 - 16 -通信の秘匿化を図った上で内容証明サーバCに送る(図5のステップB5)。」(段落【0050】)・「内容証明サーバCは、受信した暗号文を自己の秘密鍵SKc で暗号解読して暗号文〔(D)b ,Tb の秘匿化を図った上で内容証明サーバCに送る(図5のステップB5)。」(段落【0050】)・「内容証明サーバCは、受信した暗号文を自己の秘密鍵SKc で暗号解読して暗号文〔(D)b ,Tb 〕SKb を得て、この暗号文〔(D)b ,Tb 〕SKb を受信側端末Bの電子署名入の暗号解読済証(受取証)とする。さらに、この暗号解読済証〔(D)b ,Tb 〕SKb を受信側端末Bの公開鍵PKb で暗号解読してダイジェスト値(D)b と受取日時Tb を得る。この受信側端末B側作成のダイジェスト値(D)b と発信側端末A側から受信した発信側端末A側作成のダイジェスト値(D)aとを照合し、内容が一致していれば、発信側端末A側から送信された伝達情報の暗号文〔D〕Rは間違いなく受信側端末B側に受け取られて、そして伝達情報Dとして正しく暗号解読されたことが確認できる(図5のステップC9)。」(段落【0051】)イ以上の記載によれば,本件発明では,内容証明の一環として,前記発信者署名データ(実施例の[(D)a,([D]R)a]SKa)のうち,前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ(実施例の(D)a,([D]R)a)と,前記受信者署名データ(実施例の[(D)b,([D]R)b]SKb)のうち,前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータ(実施例の(D)b,([D]R)b)とを「照合」することによって,発信側端末A側から送信された伝達情報の暗号文〔D〕Rが間違いなく受信側端末B側に受け取られて、伝達情報Dとして正しく暗号解読されたことを確認するものであると認められる。 (2) CECサーバにおける原本性証明の処理態様ア証拠(甲3,9,10,乙2,4,5)及び弁論の全趣旨によ 、伝達情報Dとして正しく暗号解読されたことを確認するものであると認められる。 (2) CECサーバにおける原本性証明の処理態様ア証拠(甲3,9,10,乙2,4,5)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 - 17 -(ア) 電子契約内容証明装置説明書(甲3の6)には,次の内容が記載されている。 「【電子契約サービスの業務フロー】1.NTTデータより,電子署名された契約書を送信(案件登録)。 2.取引先企業は,受領契約書の内容を確認後,電子署名を行い返信。 3.電子契約書を受領・完了,保管(10年間)。 4.保管された契約書は,電子原本性証明センタにより,自動的に登録(時刻証明)。 5.保管契約書は常に検索・閲覧でき,原本性が確保されていることの確認が可能」「【電子契約サービスCECTRUSTの特徴】・パソコン1台から導入可能な,簡単低コストの電子契約ASPサービス(途中省略)・NTTデータのセキュリティ技術/インフラを集結した信頼性の高いサービス1.電子文書流通プラットホームSecurePod(R)(セキュアポッド)をインフラに採用し,電子文書の生成から流通,保管までのライフサイクルをトータルにサポート。特に電子文書の原本性を長期にわたり証明するための電子署名,セキュア配送,原本性証明,電子文書保管のサービスを提供します。インターネット上でセキュアな環境の中で電子契約文書の交換と原本性証明を実現したASP電子契約サービス。 (途中省略)・タイムスタンプ機能により,長期間の原本性を証明いつの時点でどのような電子文書が存在したかを,NTTデータ - 18 -のSecureSeal(R)(セキュアシール)が証明。電子文書が万が一改ざん,あるいは により,長期間の原本性を証明いつの時点でどのような電子文書が存在したかを,NTTデータ - 18 -のSecureSeal(R)(セキュアシール)が証明。電子文書が万が一改ざん,あるいは作成時刻の真偽性が争点となった場合,タイムスタンプがその証拠となり,電子文書の原本性と作成時刻を長期間にわたり証明。」(イ) 「写真報告書1」と題する書面(甲10,乙2,5)及びCECサービスの「原本性検証」の表示画面(乙4)には,CECサービスの処理手順につき,大要,次の内容が記載されている。 a 発注者(送信者)が電子署名付き契約書(パターン4-1署名済)を作成する。 b 発注者がCECサーバにログインし,発注者の電子署名付き契約書(パターン4-1署名済)を送信する。 c 受注者(受信者)はサーバにログインし発注者の電子署名付き契約書(パターン4-1署名済)を受注者端末に表示し,この発注者の電子署名付き契約書(パターン4-1署名済)に基づき修正したと思われる受注者のみの電子署名付き契約書(パターン4-2署名済)を作成するが,このとき受注者のみの電子署名付き契約書(パターン4-2署名済)には受注者の電子署名が2つ埋め込まれているものの,発注者の電子署名はない。 d 受注者がサーバに受注者のみの電子署名付き契約書(パターン4-2署名済)を送信する。 e 発注者がサーバにログインし受注者のみの電子署名付き契約書(パターン4-2署名済)を発注者端末に表示すると,「案件内容に問題がない場合は,完了処理を行ってください」と表示され,内容を確認し「完了の確認」ボタンを押すと,契約処理を完了し,CECサーバは受注者のみの電子署名付き契約書を保管する。 f 発注者は契約が完了した案件を検索し,電子署名付き契約書(パタ - 19 -ーン 「完了の確認」ボタンを押すと,契約処理を完了し,CECサーバは受注者のみの電子署名付き契約書を保管する。 f 発注者は契約が完了した案件を検索し,電子署名付き契約書(パタ - 19 -ーン4-2署名済)を発注者端末に表示することができる。 g 発注者が発注者端末に「原本性検証」画面を表示すると,同画面には,検証日,案件番号,ファイル名,タイムスタンプ検証結果(案件完了時以降,改ざんされていません。)が表示される(乙4)。 イ上記事実によれば,CECサービスにおいては,発信者が,契約書等の文書データ(伝達情報)に電子署名して受信者に送信し,受信者が,同伝達情報に電子署名して発信者に送信した後,発信者が,同伝達情報に問題がないか確認し完了処理を行うこと,同完了処理が行われたときは,同伝達情報がCECサーバに送信されて保管され,「SecureSeal(R)センタ」がタイムスタンプを発行し,同タイムスタンプがCECサーバに存置されること,CECサーバにおいては,同タイムスタンプの情報を検証した結果として,同タイムスタンプの情報に変更がないことで同伝達情報の改ざんがないことを証明するものであることが認められる。 また,本件全証拠を精査しても,CECサーバが,タイムスタンプを取得するためにどこから取得したダイジェストを使用するかを説明するものは見当たらず,CECが,発信者及び受信者の双方の伝達情報を突き合わせるような形式で原本性を証明することを具体的に裏付けるに足りる証拠はない。 (3) 「照合する手段」の充足性上記(2)によれば,CECサービスは,あくまで,完了処理が行われ伝達情報がCECサーバに保管された後に,保管時に発行されて存置されているタイムスタンプの情報を検証することによって,同完了処理後の伝達情報の改ざん ば,CECサービスは,あくまで,完了処理が行われ伝達情報がCECサーバに保管された後に,保管時に発行されて存置されているタイムスタンプの情報を検証することによって,同完了処理後の伝達情報の改ざんがないことを証明するものであるにすぎず,発信者署名データ,受信者署名データを用いたデータを照合することにより伝達情報の改ざんがないことを証明するものではないから,構成要件5の「前記発信者署名データのうち,前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデー - 20 -タと,前記受信者署名データのうち,前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータとを照合する手段」を有していると認めることはできない。 したがって,CECサーバは,構成要件5を充足しないというべきである。 (4) 原告の主張についてア原告は,原本性を検証する契約書データDから算出してある照合値をδとすると,CECサーバにおいては,発信者署名データのうち,発信者Aが送信した契約書Dの内容の同一性を確認できる照合値εをもって,上記δと照合し,受信者署名データのうち,受信者Bが受け取って復号化した契約書Dの内容の同一性を確認できる照合値ζをもって,上記δと照合しているから,構成要件5の「照合する手段」を充足すると主張する。 しかし,前記(2)のとおり,本件全証拠を精査しても,CECサーバが,タイムスタンプを取得するためにどこから取得したダイジェストを使用するかを説明するものは見当たらず,CECサーバの動作については,上記(2)のとおりであって,CECサーバが,発信者及び受信者の双方の伝達情報を突き合わせるような形式で原本性を証明することを具体的に裏付けるに足りる証拠はない。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない あって,CECサーバが,発信者及び受信者の双方の伝達情報を突き合わせるような形式で原本性を証明することを具体的に裏付けるに足りる証拠はない。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,被告らは,CECサービスについて,「特に電子文書の原本性を長期にわたり証明するための電子署名,セキュア配送,原本性証明,電子文書保管のサービスを提供します。・・・」,「発注者及び受注者が同一の契約書に電子署名する場合,受注者が,発注者が電子署名した契約書上に電子署名することを想定したサービスです・・・」としており,CECサーバにおいて原本性を証明するのは電子署名である旨を自認している,と主張する。 しかし,上記の記載の通常の読み方からすれば,上記の記載からは,C - 21 -ECサービスが,電子文書の原本性を証明するためのサービスであり,同サービスの内容が,電子署名,セキュア配送,原本性証明,電子文書保管から成っていること,受信者が,発信者が電子署名した契約書上に電子署名することを想定していることが読み取れるに止まり,それを超えて,CECサービスにおいて,発信者と受信者の電子署名が原本性証明のために用いられていることを読み取ることはできないというべきである。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,本件処理ステップについて,本件照合1の(D’)c及び本件照合2の(D)cには,原本性を証明する同一の電子契約文書「D」(照合値δ)から算出した照合値が存在するから,本件照合1と本件照合2は,原本性を検証する電子契約書(照合値δ)を同一とする関係があり,被告らは,本件照合2を「⑥照合」にすり替え,本件照合1と本件照合2は無関係とする前提をおいている,と主張する。 しかし,たとえ本件照合1と本 検証する電子契約書(照合値δ)を同一とする関係があり,被告らは,本件照合2を「⑥照合」にすり替え,本件照合1と本件照合2は無関係とする前提をおいている,と主張する。 しかし,たとえ本件照合1と本件照合2において,原本性を証明する同一の電子契約文書「D」(照合値δ)から算出した照合値が存在し,原本性を検証する電子契約書(照合値δ)を同一とする関係があったとしても,そのことは,発信者と受信者とが同一の電子契約書「D」を取り扱った結果として,照合値がδという同一の値となっていることを意味するにすぎず,また,原告の主張においても,厳密に見れば,本件照合1において(D’)cを,本件照合2において(D)cを取り上げており,照合値ε,照合値ζと照合する照合値δが,それぞれ異なる値をとることは明らかであるから,上記のことが,CECサーバにおいて,データの値が同一であることを照合する手段を備えていることを直ちに意味するものではない。そして,前記のとおり,CECサーバが,発信者及び受信者の双方の伝達情報を突き合わせるような形式で原本性を証明することを具体的に裏付けるに足りる証拠はない。 - 22 -以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は,長期にわたり原本性を検証(証明)する際は,本件照合1と本件照合2は,原本性を証明する電子契約文書から作成される同一の照合値δとの照合,すなわち,発信者が電子署名した電子契約文書から算出されている照合値であるε及び,受信者が電子署名した電子契約文書から算出されている照合値であるζとの照合であるから,両照合は,同一の照合値δを介した関係にある,と主張する。 しかし,長期にわたり原本性を検証(証明)する際においても,前記のとおり,CECサービスは,完了処理が行われ契約書DがCECサ であるから,両照合は,同一の照合値δを介した関係にある,と主張する。 しかし,長期にわたり原本性を検証(証明)する際においても,前記のとおり,CECサービスは,完了処理が行われ契約書DがCECサーバに保管された際に発行されたタイムスタンプを検証するにすぎず,それを超えて,CECサーバが,発信者Aと受信者Bの各署名データの中の照合値(εとζ)との照合を行っていたり,同照合手段を備えていることを認めるに足りる具体的な証拠はない。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 3 争点(1)イ(構成要件6及び7の充足性)について(1) 本件特許の出願経過証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件特許の拒絶査定不服審判請求書の理由補充書である本件手続補正書(9頁~10頁)において,下記のとおり記載し,その結果,平成18年3月7日付けで特許査定がなされ,平成18年4月28日付けで本件特許権が設定登録をされている(甲1)ことが認められる。 記・ 「原査定の拒絶理由は,本願・・・発明が,引用文献1(「暗号を用いた内容証明・配達証明サービス」,電子情報通信学会論文誌,1987年2月25日,VOl.J70-DNo.2, p.423-432)と特開平10-187836号公報とに基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第 - 23 -29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。」・「3-1)…本願発明が,発信者装置A及び受信者装置Bから内容証明サイト装置Cにそれぞれ送るデータを,伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに関して,伝達情報等のダイジェストだけとしているのに対して,引用文献1及び特開平10-187836号公報は,伝 内容証明サイト装置Cにそれぞれ送るデータを,伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに関して,伝達情報等のダイジェストだけとしているのに対して,引用文献1及び特開平10-187836号公報は,伝達情報等に相当するものをも送っている。・・・引用文献1及び特開平10-187836号公報においては,内容証明サイト装置に相当する調停者(取引証明装置1)に送信する通信量(情報量)は,ダイジェストに比べて格段に多くならざるを得ず,内容証明サイト装置(調停者,取引証明装置1)への通信量の点で,引用文献1及び特開平10-187836号公報は,本願発明に比べて劣らざるを得ない。」・「3-2)本願発明が,内容証明サイト装置Cにおいて,伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに関して,・・・伝達情報等のダイジェストだけを保管対象としているのに対して,特開平10-187836号公報は,取引証明装置1(公証人,公証装置11)において,伝達情報等に相当する取り引き文書Mも保管対象としている。このため,特開平10-187836号公報においては,取引証明装置1(公証人,公証装置11)は,本願発明に比して,多くの情報量を保管する構成とならざるを得ないと共に,公証人等による取り引き文書Mへの不正関与の可能性が高まることになり,特開平10-187836号公報は,保管量,秘密保持性の点で,本願発明に比べて劣らざるを得ない。また,引用文献1については,・・・調停者が保管しない構成をとっており,この引用文献1が本願発明と基本的に異なることは明らかなことである。」(2) 以上によれば,原告は,本件特許の拒絶査定不服審判において,拒絶査定の理由(進歩性欠如)における引用文献1及び特開平10-18783 - 24 -6号公報(以下「引用文献等」という。)との相違点を によれば,原告は,本件特許の拒絶査定不服審判において,拒絶査定の理由(進歩性欠如)における引用文献1及び特開平10-18783 - 24 -6号公報(以下「引用文献等」という。)との相違点を,本件発明は「伝達情報」等を発信者装置A及び受信者装置Bから内容証明サイト装置Cに送信せず,「伝達情報」を内容証明サイト装置Cが保管しないこと,としているのであって,そのことにより,本件発明は,引用文献等記載の発明と異なり,通信量(情報量)が多くならず,多くの情報量を保管する構成でもなく,公証人等による伝達情報への不正関与の可能性を高くしないという効果(特開平10-187836号公報)を奏すると陳述しており,本件発明は,原告のこのような陳述を踏まえた上で,特許査定がされたものであると認められる。 したがって,本件発明の構成要件6及び7の意義は,契約当事者双方が契約書の「原本」を管理し,内容証明サイト装置は原本が改ざんされていないことを伝達情報のダイジェスト又は伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストのみに基づいて検証することで証明するサービスであると解するのが相当であるところ,証拠(甲3,7,9,10,乙2,4~6)及び弁論の全趣旨によれば,CECサーバは,伝達情報である原本そのものをセンタに送り保管する構成を有するものであるから,CECサーバは,構成要件6及び7を充足しないというべきである。 (3) 原告の主張についてア原告は,本件手続補正書において,「伝達(通信された)情報(電子契約文書)の内容の同一性を確認できるデータに関して」との限定で記述されている部分を,被告らは「伝達情報」そのもののことであると曲解し,請求項の文言を否定しているにすぎないと主張する。 しかし,本件手続補正書の記載は前記(1)のとおりであって,原告は, 限定で記述されている部分を,被告らは「伝達情報」そのもののことであると曲解し,請求項の文言を否定しているにすぎないと主張する。 しかし,本件手続補正書の記載は前記(1)のとおりであって,原告は,本件発明は「伝達情報」等を発信者装置A及び受信者装置Bから内容証明サイト装置Cに送信せず,「伝達情報」を内容証明サイト装置Cが保管しないことを引用文献等との相違点と主張していることが明らかであるから, - 25 -原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,本件発明の従属項である,本件特許の特許請求の範囲請求項10には,内容証明サイト装置が内容証明を行うために伝達情報を受け取れることが明記されているから,上記請求項10の前提となる本件発明で,内容証明サイト装置が内容証明のために伝達情報を受け取れることを排除していないことは明らかであると主張する。 しかし,たとえ従属項であったとしても,本件発明と異なる請求項である上記請求項10の文言によって,前記(1)の説示が左右されるものではないから,原告の上記主張は採用の限りでない。 ウ原告は,被告らが,原本性証明のサービスの他に,伝達情報そのものを送受信し保管サービス等に利用しているとしても,それは,構成要件6及び7とは無関係であると主張する。 しかし,前記(1)の説示に照らせば,本件発明は,原本をセンタに送り保管する構成が排除されるとの原告の陳述を踏まえて特許査定をされたのであるから,同構成を有するCECサービスが,構成要件6及び7と無関係ということはできない。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 4 結論以上によれば,CECサーバは,本件発明の構成要件5,6及び7を充足するとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求 上記主張は採用することができない。 主文 結論以上によれば,CECサーバは,本件発明の構成要件5,6及び7を充足するとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 田中孝一 裁判官 寺田利彦
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