平成24(行ケ)10225 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年2月21日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
ファイル
hanrei-pdf-83015.txt

キーワード

判決文本文18,885 文字)

平成25年2月21日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成24年(行ケ)第10225号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年2月7日判決原告三栄源エフ・エフ・アイ株式会社同訴訟代理人弁護士田中千博溝内伸治郎小林幸夫坂田洋一同弁理士三枝英二中野睦子宮川直之被告ツルヤ化成工業株式会社同訴訟代理人弁護士村林 隆 一井上裕史同訴訟復代理人弁護士佐合俊彦主文原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。事実及び理由第1 請求特許庁が無効2011-800215号事件について平成24年5月17日にした審決を取り消す。第2 事案の概要本件は,後記1のとおりの手続において,原告の後記2の本件発明に係る特許に対する被告の特許無効審判の請求について,特許庁により当該特許につき訂正を認めた上でこれを無効とする別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)がされたところ,原告が,本件審決には,後記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成7年2月8日,発明の名称を「高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法」とする特許出願をし,平成16年5月28日,設定の登録(特許第3558399号。請求項の数4)を受けた(乙1)。以下,この特許を「本件特許」という。 被告は,平成23年10月25日,本件特許について特許無効審判を請求し 5月28日,設定の登録(特許第3558399号。請求項の数4)を受けた(乙1)。以下,この特許を「本件特許」という。 被告は,平成23年10月25日,本件特許について特許無効審判を請求し(乙2),無効2011-800215号事件として係属した。これに対して,被告は,平成24年1月10日,訂正請求をした(甲20。これにより請求項の数は,3となった。)。 特許庁は,平成24年5月17日,前記訂正を認めた上で本件特許を無効とする旨の本件審決をし,その謄本は,同月25日,原告に対して送達された。 2 特許請求の範囲の記載本件審決が判断の対象とした前記訂正後の特許請求の範囲請求項1ないし3の記載は,次のとおりである。以下,請求項1ないし3に係る発明を請求項の番号に応じて「本件発明1」ないし「本件発明3」といい,これらを併せて「本件発明」というほか,本件発明に係る明細書(甲20)を「本件明細書」という。【請求項1】レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌により高温加熱殺菌される飲料に,予めシュクラロースを添加して甘味を付与した後,前記高温加熱殺菌することを特徴とする高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法【請求項2】シュクラロースを,0.001重量%から0.5重量%で添加する請求項1記載の高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法【請求項3】高温加熱殺菌される飲料のpHの範囲が6.8以上である請求項1記載の高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法 3 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,要するに,①本件発明1及び2は,引用例(甲1,19。 “                  (甲1,19。 “                  !"#"$%&'()*"$% +, )*-"./.0(「新たな高甘味度甘味料であるシュクラロースの開発及び適用」1994年(平成6年)刊行))に記載の発明と同一の発明である,②本件発明は,上記引用例に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができた,というものである。 本件審決が認定した引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)並びに本件発明1と引用発明との一致点及び相違点(以下「本件相違点」という。)は,以下のとおりである。ア引用発明:高温加熱殺菌される飲料に,予め最大で0.025重量%のシュクラロースを添加して甘味を付与した後,高温加熱殺菌することを特徴とする,高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法 イ一致点:高温加熱殺菌される飲料に,予めシュクラロースを添加して甘味を付与した後,高温加熱殺菌することを特徴とする,高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法ウ本件相違点:本件発明1では高温加熱殺菌の手法が「レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌」と限定されているのに対し,引用発明ではそのような手法が明記されていない点 4 取消事由 新規性に係る認定判断の誤り(取消事由1) 容易想到性に係る判断の誤り(取消事由2)第3 当事者の主張 1 取消事由1(新規性に係る認定判断の誤り)について〔原告の主張〕 本件審決は,「レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌」が高温加熱殺菌の手法としては常套手段であり,引用例における「高温加熱殺 に係る認定判断の誤り)について〔原告の主張〕 本件審決は,「レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌」が高温加熱殺菌の手法としては常套手段であり,引用例における「高温加熱殺菌」.との概念に接した当業者が認識できるものといえるから,実質的には選択肢として記載されているに等しいということもできるのであって,本件相違点が実質的な相違点とはいえないとする。 しかしながら,飲料の高温加熱殺菌方法としては,レトルト殺菌,オートクレーブ殺菌,高温短時間殺菌,超高温殺菌(UHT殺菌。インジェクション法,インフュージョン法,プレート式,チューブ式及び表面かき取り式を含む。),熱水浸漬式,熱水噴霧式及びジャケット式等の種々の方法があり,果肉入り飲料等の固液混合食品については,さらに,ジュピターシステム,オーミック滅菌及びマイクロ波加熱方式がある。このように,本件発明が採用する「レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌」は,従来飲料に対して使用されている各種の高温加熱殺菌方法の一部にすぎず,常套手段ではない。 したがって,本件相違点は,実質的な相違点であり,これに反する本件審決の判断は,誤りである。〔被告の主張〕プレート及びチューブ式殺菌は,甘味料を添加した脱脂粉乳を殺菌する方法として公知であり,プレート式熱交換器は,飲料工業に広く利用されているから,少なくともプレート及びチューブ式殺菌は,飲料に対して高温加熱殺菌するために採用される常套手段であることが明らかである。また,引用発明は,実際の工業的生産設備で行われたものであり,上記のとおりプレート式熱交換器は,飲料工業で広く利用されているから,引用例の「実際の工業的(生産)設備」との記載から,当業者は,当然に,その高温加熱殺菌が「プレー 的生産設備で行われたものであり,上記のとおりプレート式熱交換器は,飲料工業で広く利用されているから,引用例の「実際の工業的(生産)設備」との記載から,当業者は,当然に,その高温加熱殺菌が「プレート式殺菌等」によるものであることを認識できる。よって,引用例にはプレート式殺菌等についての開示があるということができ,これに反する原告の主張には理由がない。 2 取消事由2(容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕/ 本件審決は,①レトルト及びオートクレーブ殺菌は,高温加熱殺菌方法として一般的なものであるから,引用発明の加熱殺菌方法としてこれらを採用することには動機付けがあり,シュクラロースについては高温でもぬきんでた安定性を有することが知られている(引用例)から,本件発明は,引用発明から予測される以上の格別の作用効果を奏するものともいえない,②プレート及びチューブ式殺菌は,飲料におけるUHT殺菌等の高温加熱殺菌方法として本件出願日前における周知技術の一つであるから,引用発明における高温加熱殺菌方法としてこれらを採用することに阻害要因はない,として当業者が本件相違点を容易に想到し得るとする。 しかしながら,引用例には,141℃で3.5秒間高温殺菌することが開示されているが,シュクラロースではレトルト又はオートクレーブ殺菌などの過酷な高温加熱処理をした場合にも甘味度が低下せず,また,褐変するなどの外観上の不都合が生じないことは,開示されておらず,また,引用例からは予測ができないことである。アスパルテーム,ステビア抽出物,ネオテーム,果糖又はぶどう糖など,安定性が高いことが知られている甘味料を添加した飲料は,引用例に記載のUHT殺菌に対して安定であるものの,レトルト殺菌をすると甘味度が低下し,褐変するとい ア抽出物,ネオテーム,果糖又はぶどう糖など,安定性が高いことが知られている甘味料を添加した飲料は,引用例に記載のUHT殺菌に対して安定であるものの,レトルト殺菌をすると甘味度が低下し,褐変するといった外観上の不都合が生じる。したがって,UHT殺菌に対して安定であるからといって,レトルト又はオートクレーブ殺菌に供した場合にも安定であるとはいえず,このことは,予測ができない。 プレート及びチューブ式殺菌は,当業者においてUHT殺菌処理の中でもとりわけ焦げ付きを生じやすい殺菌方法であることが知られているところ,引用例には,シュクラロースを含む飲料をプレート又はチューブ式殺菌に供した場合に焦げ付きを生ぜずに所望の効果が得られることは,開示されておらず,また,引用例からは予測ができないことである。また,砂糖を添加した飲料は,UHT殺菌の一つであるインジェクション式殺菌(直接加熱方式)に対して安定であるものの,プレート式殺菌(間接加熱方式)で は焦げ付き又は凝集が発生して,外観及び風味に不都合が生じる。このように,同じUHT殺菌であっても,殺菌方法によって安定であるとはいえず,プレート又はチューブ式殺菌に供した場合の安定性は,予測ができない。. 引用例にいう安定性とは,甘味度のことであって,引用例には,飲料の風味や外観の安定性については開示も示唆もない。むしろ,本件発明は,単に高温加熱殺菌後の甘味の安定だけではなく,飲料の褐変などの色調変化を防止し,かつ,品質が劣化しないことを目的とした発明であるところ,シュクラロース以外の高甘味度甘味料は,高温加熱殺菌により甘味度の低下だけではなく褐変するといった外観上の不都合を生じるし,砂糖は,焦げ付きや凝集といった外観及び風味の劣化が生じているのに対し,シュクラロースは,こうした問 度甘味料は,高温加熱殺菌により甘味度の低下だけではなく褐変するといった外観上の不都合を生じるし,砂糖は,焦げ付きや凝集といった外観及び風味の劣化が生じているのに対し,シュクラロースは,こうした問題を生じておらず,本件審決は,本件発明の有するこのような顕著な作用効果を看過している。/ なお,引用例には,シュクラロースに安定性がある一方で,極端な条件下では分解が起きる可能性がある旨の記載があるから,シュクラロースに安定性があるとしても,それは,引用例に記載の高温加熱殺菌を前提とするものであり,更に過酷なレトルト,プレート及びチューブ式殺菌の条件でも安定とはいえない。また,本件発明の作用効果は,シュクラロースの安定性ではなく,シュクラロースを配合した飲料をレトルト,プレート又はチューブ式殺菌のような過酷な条件で加熱しても,褐変や風味を損なわないなど高温加熱殺菌の影響を受けないこと,すなわち飲料そのものの安定性である。1 したがって,本件発明は,引用例及び周知技術から当業者が容易に想到できたものではなく,これに反する本件審決の判断は,誤りである。〔被告の主張〕引用例には,シュクラロースを添加したバニラミルクを141℃で3.5秒間高温殺菌する発明が開示されているが,プレート式殺菌は,例えば72℃ないし75℃で15秒間保持するというものであり,引用例に記載の殺菌方法よりも加熱条件が緩やかである。また,チューブ式殺菌は,焦げ付きやすいミカン濃縮果汁,あんこ-及びとんかつソースなどを殺菌対象としている。したがって,当業者が,引用発明からプレート式及びチューブ式殺菌をあえて除外する理由はない。また,引用例は,シュクラロースを用いたバニラミルクという具体的な飲料について安定性を評価しているのであって,甘味度のみならず, 用発明からプレート式及びチューブ式殺菌をあえて除外する理由はない。また,引用例は,シュクラロースを用いたバニラミルクという具体的な飲料について安定性を評価しているのであって,甘味度のみならず,風味及び外観も併せて評価の対象としているのは当然である。よって,当業者は,引用発明に基づき本件発明を容易に想到することができたのであって,これに反する原告の主張には理由がない。第4 当裁判所の判断 1 本件発明及び引用発明について 本件明細書の記載について本件発明は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本件明細書(甲20)には,本件発明についておおむね次の記載がある。ア本件発明は,高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法に関し,より詳細には,長期保存のために,レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌により高温加熱殺菌を行う高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法に関する(【0001】)。イ従来から,pH4.6以上の弱酸性からpH8付近の中性の領域において流通,販売する飲料を製造する場合には,85℃で30分以上の加熱殺菌,120℃で4分以上の加熱殺菌又はこれらと同等以上の加熱処理をすることが必要であり,現実には,例えばレトルト殺菌の場合,126℃で30分の殺菌が行われている(【0002】)。上記のような飲料に甘味を付与するものとしては,しょ糖,ぶどう糖,果糖等の糖類,ソルビトール,マルチトール等の糖アルコール類があり,これらの飲料に使用できる可能性のある高甘味度甘味料には,アスパルテーム,グリチルリチン,ステビア,サッカリン,アセサルファムカリウム等の高甘味度甘味料がある(【0003】)。しかし,上記のような甘味料を用いて高温加熱処理を経た飲料においては,飲料 の色調が変化して褐色になったり,pHがかなり低下し セサルファムカリウム等の高甘味度甘味料がある(【0003】)。しかし,上記のような甘味料を用いて高温加熱処理を経た飲料においては,飲料 の色調が変化して褐色になったり,pHがかなり低下して腐敗,酸敗等を起こさせたり,あるいはガスの発生や配合した素材の性質により製品の品質を著しく劣化させる等の問題を生じている。また,飲料の低カロリー化の目的のため,糖アルコールや高甘味度甘味料が使用される例があるが,糖アルコールは,甘味の質がしょ糖と異なり,多量摂取により下痢を引き起こすことがあり,飲料に多量に使用できないことが問題になっている。既存の高甘味度甘味料については甘味質に満足できるものはなく,苦みや後引きを持ち,嗜好性を著しく低下させる。例えば,アスパルテームは,熱に対して非常に不安定で,高温処理により甘味を消失するため,高温加熱殺菌処理を伴う飲料に使用しても商品化ができない。また,ステビアは,弱酸性から中性付近の飲料に使用したときに,味がとても苦くなり,アスパルテームと同様,商品化ができないのが実情である(【0004】)。上記の理由から,特に高い嗜好性と室温90日間以上,あるいは常温2年近くの長期安定性が要求される高温加熱殺菌飲料については,しょ糖を使用したものが一般的であるが,しょ糖においても高い温度処理によるカラメル化での褐変の問題は,完全には解決できていない。 本件発明は,上記課題に鑑みてされたものであり,しょ糖と同質の甘味質を与え,レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌による高温加熱殺菌に対して安定な高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法を提供することを目的としている(【0005】)。ウ本件発明の発明者らは,高温加熱殺菌飲料の甘味質や熱安定性に関し鋭意研究を重ねた結果,レトルト,オートクレーブ,プレート又はチュー 甘味付与方法を提供することを目的としている(【0005】)。ウ本件発明の発明者らは,高温加熱殺菌飲料の甘味質や熱安定性に関し鋭意研究を重ねた結果,レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌により高温加熱殺菌される飲料に,あらかじめシュクラロースを添加して甘味を付与した後,上記高温加熱殺菌することにより,しょ糖と同等の甘味質を持ち,かつ,熱に安定な高温加熱殺菌飲料を得ることができた(【0006】)。エ本件発明における高温加熱殺菌される飲料とは,レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌により高温加熱殺菌処理される飲料であり,具体的な種類は,コーヒー,紅茶,ココア,乳飲料及びこれらの清涼飲料類,緑茶,抹茶, ウーロン茶,汁粉,甘酒,飴湯等の嗜好性飲料や健康飲料類がある(【0007】)。本件発明におけるシュクラロースは,「4,1′,6′-トリクロロ-4,1′,6′-トリデオキシ-ガラクトスクロース」又は「1′6′-ジクロロ-1′,6′-ジデオキシ-β-D-フラクトフラノシル4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド」として知られており,しょ糖より約650倍甘く,非代謝性のノンカロリー高甘味度甘味料である(【0008】)。オ本件発明の飲料中に添加するシュクラロースの添加量は,その飲料に求められる甘味度,カロリー等により任意に調整されるが,0.001から0.5重量%が好ましく,他の甘味料等と併用してもよい(【0009】)。また,シュクラロースを高温加熱殺菌飲料に添加する方法は,その飲料の製造方法によって任意に選択することができる(【0010】)。カ甘味料としてしょ糖,シュクラロース,アスパルテーム又はレバゥディオサイドを含むpH4.6,pH5.5及びpH7の各水溶液を,85℃,100℃, て任意に選択することができる(【0010】)。カ甘味料としてしょ糖,シュクラロース,アスパルテーム又はレバゥディオサイドを含むpH4.6,pH5.5及びpH7の各水溶液を,85℃,100℃,120℃又は140℃で30分間加熱した場合の各甘味料の耐熱性の試験において,シュクラロース及びしょ糖の各水溶液は,いずれの条件でも甘味が減少しなかったが,しょ糖の各水溶液を140℃で加熱した場合にはやや褐色となったほか,アスパルテームの各水溶液は,pH7で甘味が著しく減少し,pH4.6で少し苦くなり,レバゥディオサイドの各水溶液は,加熱によってあまり甘味の減少が観察されないが,後味が苦く,飲料にならないものであった(【0011】~【0016】)。各種甘味料が添加されたフルーツ牛乳を140℃で18秒プレート式殺菌機に供したところ,しょ糖及び果糖ブドウ糖液糖が添加されたもの並びにシュクラロースが添加されたものは,良好な味をしていたが,アスパルテームが添加されたものは,明らかに甘味が減少していた(実施例1。【0016】【0017】)。ステビア又はシュクラロースを添加したココア飲料缶を125℃で40分レトルト殺菌機に供したところ,ステビアを添加したもののみが苦みを発現した(実施例2。【0017】【0018】)。シュクラロース又はアスパルテームを添加した紅茶飲料を121℃3で20分レトルト殺菌機に供したところ,シュクラロースを添加したものは,殺菌前と変わらず風味のよい甘味を有していたが,アスパルテームを添加したものは,全く甘味が感じられなかった(実施例3。【0018】)。シュクラロースを添加した缶コーヒーを125℃で30分レトルト殺菌機に供したところ,褐変がなく,コクのある甘味を有していた(実施例4。【0018】【0019】)。サッカリンナト 例3。【0018】)。シュクラロースを添加した缶コーヒーを125℃で30分レトルト殺菌機に供したところ,褐変がなく,コクのある甘味を有していた(実施例4。【0018】【0019】)。サッカリンナトリウム又はシュクラロースを添加した飴湯を121℃で24分レトルト殺菌機に供したところ,サッカリンナトリウムを添加したものは,苦み及び後引きを有していたが,シュクラロースを添加したものは,コクのある甘味を有していた(実施例5。 【0019】【0020】)。砂糖又はシュクラロースを添加した甘酒を121℃で30分レトルト殺菌機に供したところ,シュクラロースを添加したものは,砂糖を添加したものよりも明らかに褐変が少なかった(実施例6。 【0020】【0021】)。 シュクラロースを添加した汁粉を121℃で30分レトルト殺菌機に供したところ,甘味に変化はなく,汁粉特有の香りを呈し,良好な味の汁粉が得られた(実施例7。 【0021】【0022】)。シュクラロースが添加されたコーヒー濃縮液を125℃で30分レトルト殺菌機に供して10倍に稀釈して飲用に供したところ,明らかに褐変がなく,コクのある甘味を有していた(実施例8。【0022】【0023】)。キ本件発明の方法によれば,しょ糖と同等の甘味質を持ち,レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌による高温加熱殺菌に対しても安定な飲料を提供することができる(【0024】)。 本件発明の技術的思想について以上の本件明細書の記載によれば,本件発明1は,高温加熱処理が必要とされる飲料に甘味を付与するためにしょ糖等の既存の甘味料を用いると,高温加熱処理のために飲料の色調が変化したり,腐敗等が生じたり,品質を劣化させたり,嗜好性を低下させるという課題を解決するため,レトルト,オートクレーブ,プレート にしょ糖等の既存の甘味料を用いると,高温加熱処理のために飲料の色調が変化したり,腐敗等が生じたり,品質を劣化させたり,嗜好性を低下させるという課題を解決するため,レトルト,オートクレーブ,プレート又はチューブ式殺菌により高温加熱殺菌される飲料にあらかじめ高甘味度甘味料であるシュクラロースを添加するという方法を採用したものであり,これにより,しょ糖と同等の甘味質を持ち,上記の高温加熱殺菌に対しても安定な飲料を提供することができるという作用効果を奏するものであるということができる。そして,本件発明2は,本件発明1における高温加熱殺菌飲料へのシュクラロースの添加量を特定するものであり,本件発明3は,当該高温加熱殺菌飲料のpHの範囲を特定するものである。 引用例の記載について引用例は,「新たな高甘味度甘味料であるシュクラロースの開発及び適用」という表題の学術論文(甲1,19)であるところ,そこには,おおむね次の記載がある。ア 要約シュクラロースは,極めて強い(600倍)砂糖類似の甘味並びに高温及び低pHで非常に優れた安定性を有する。イシュクラロースの開発甘味料の開発において,一群の中で最も有望なものは,一般にシュクラロースの名称で知られる「4,1′,6′-トリクロロ誘導体」である。それは,高温及び低pHのいずれにおいてもぬきんでた安定性と砂糖に近い甘味特性を有している。 シュクラロースは,その後,広く利用されるようになり,カナダでは,SPLENDAの商標で一般的に利用されている。ウ特性及び適用シュクラロースは,極めて安定であるが,極度な条件下ではいくらかの分解が起こる可能性があり,このメカニズムも,明らかになっている。シュクラロースは,高い安定性を有するが,飲食料品の流通システムの性質により,極 ースは,極めて安定であるが,極度な条件下ではいくらかの分解が起こる可能性があり,このメカニズムも,明らかになっている。シュクラロースは,高い安定性を有するが,飲食料品の流通システムの性質により,極端な貯蔵条件期間中,いくらか少量の分解産物が生成することを認識する必要がある。特定の製品群に添加したときのシュクラロースの分解性を評価するために,通常の製造及び加工段階での安定性研究が行われたが,高温及び酸性域の両方の条件下の水系において,シュクラロースは,抜群の安定性を有することが確認された。次に,焼成,低温殺菌,滅菌(高温殺菌),超高温加工及び射出のような加工段階の安定性定量化が行われた。最も一般的な食品系のpHである4.0ないし7.5並びに炭酸清涼飲料及びジュース飲料製品のpHである3.0という2つの広いpH範囲を対象とした保存時の分解の程度を定量化する研究によれば,pH4ないし7.5の範囲での1年間の分解は,HPLCで測定不能なほど小さい。ケーキ,ビスケット及びグラハムクラッカーの3つのミックスに14Cを用いて調製した,砂糖と等しい甘味のシュクラロースを混ぜ込んだところ,ベーキングプロセス後に回収された全ての放射性標識物質は,未変化のシュクラロースであったことから,シュクラロースは,ベーキングプロセスに難なく耐えることができることが実証された(表3)。保存のために高温処理に頼る食品・飲料における安定性調査の目的で,実際の食品処方を用いて多くの研究が実施された(表4。トロピカル飲料を93℃で24秒低温殺菌したものや,バニラミルクを141℃で3.5秒超高温処理したもの,ベークドビーンズを121℃で80分滅菌処理したものなど)。製品としては,過酷なpH範囲と温度条件の代表的なものが選ばれた。加工処理は,本来の目的に忠実 ミルクを141℃で3.5秒超高温処理したもの,ベークドビーンズを121℃で80分滅菌処理したものなど)。製品としては,過酷なpH範囲と温度条件の代表的なものが選ばれた。加工処理は,本来の目的に忠実であるために実際の工業的(生産)設備で行われた。加工処理は,シュクラロースの添加による影響がほとんどなかった(図5)。これらすべてのデータは,この製品の評価の助力となるようにカナダ健康福祉庁に提出された。エ承認カナダ総督は,1991年(平成3年)9月5日,13個のカテゴリーの飲食料品におけるシュクラロースの使用を許可する規則に署名した(表5。飲料については,最大0.025重量%添加することが認可された。)。. 引用例に記載されたシュクラロースの性質について以上の引用例の記載によれば,シュクラロースは,しょ糖の600倍でしょ糖に類似する甘味を有する高甘味度甘味料であって,高温条件下の水系で抜群の安定性を有し,ケーキ等に添加しても焼成の前後で変化せず,ベーキングプロセスでも安定性を有し,シュクラロースが添加されたトロピカル飲料を93℃で24秒低温殺菌し,また,同じくバニラミルクを141℃で3.5秒超高温処理してもシュクラロースの添加による影響がほとんどなく,カナダでは高温で殺菌される可能性を有する飲料に対して最大0.025%添加することが認可されたものであることが,本件出願日当時までに公知であったものと認められる。また,引用例の記載から,そこには,「高温加熱殺菌される飲料に,予め最大で0. 025重量%のシュクラロースを添加して甘味を付与した後,高温加熱殺菌することを特徴とする,高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法」(引用発明)が記載されており,本件発明1と引用発明とでは,「高温加熱殺菌される飲料に,予めシュクラロースを して甘味を付与した後,高温加熱殺菌することを特徴とする,高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法」(引用発明)が記載されており,本件発明1と引用発明とでは,「高温加熱殺菌される飲料に,予めシュクラロースを添加して甘味を付与した後,高温加熱殺菌することを特徴とする,高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法」である点で一致する(一致点)ものと認められる。他方,引用例には,シュクラロースを添加した食品に対する高温加熱殺菌の手法が明記されていない(本件相違点)。 2 取消事由1(新規性に係る認定判断の誤り)について 本件出願日当時の刊行物の記載についてア甲4は,「殺菌脱脂乳飲料の製造方法」という名称の発明に関する公開特許公報(特開平7-8167号公報。平成7年1月13日公開)であるが,そこには,UHT殺菌を公知の方法で行うことができ,殺菌装置として間接プレート状,コイル式チューブ状又はスクレープ状等の表面熱交換器等を用いることができる旨の記載がある。イ甲7は,今堀和友ほか監修「生化学辞典第2版」(平成2年11月22日発行)という文献であるが,そこには,「高圧滅菌器」との用語の説明として,「オートクレーブともいう。水を入れた密閉容器で,100℃以上に熱して水蒸気加圧し,水溶液や器具類を滅菌するのに用いる釜。」との記載がある。ウ甲8は,社団法人全国清涼飲料工業会及び財団法人日本炭酸飲料検査協会監修「改訂新版ソフト・ドリンクス」(平成元年12月25日発行)という文献であ.るが,そこには,次の記載がある。ア 飲料工業で初めに利用された殺菌機は,バッチ方式によるものであり,1950年代にチューブ式殺菌機が利用されるようになったが,1952年にはプレート式熱交換器が導入され,殺菌機の主流は,HTST法(高温短時間殺菌法)へと れた殺菌機は,バッチ方式によるものであり,1950年代にチューブ式殺菌機が利用されるようになったが,1952年にはプレート式熱交換器が導入され,殺菌機の主流は,HTST法(高温短時間殺菌法)へと移行した。プレート式に関しては,その後UHT法(超高温瞬間加熱処理法)が導入され,まず乳業において急速に普及し,殺菌効率の改善に寄与した。さらに,近年,ロングライフミルクの要求から,滅菌及び無菌充填の技術が確立され,UHT滅菌機の利用は,各種の飲料に拡大されつつある。イ HTST法は,71℃ないし75℃で15秒間以上保持する殺菌方法であり,UHT法は,130℃ないし150℃で0.5秒ないし4秒間の高温で滅菌する方法である。これらの方法は,全て牛乳の殺菌及び滅菌を目的として開発され規定されたもので,その他の各種飲料に関しては,その物性,病原微生物及び一般微生物などの存在状況,製品の保存性及び品質の保持などあらゆる条件をもとにして,殺菌温度と保持時間がそれぞれ規定されている。ウ チューブ式殺菌機は,プレート式殺菌機では処理不可能なミカンパルプ,ミカン濃縮果汁などや,固形物を破壊しないで殺菌を行う砂のう入りミカンジュース,固形分混合ミックス(汁粉,甘酒など)に用いられる。プレート式熱交換機は,従来の多管式熱交換機に比べ,その構造を全く異にするもので,性能の優秀さ,利用の融通性,取扱いの便利さなど多くの特徴を有し,飲料工業に広く利用されている。エ UHT滅菌装置には,間接加熱方式であるプレート式及びチューブ式並びに直接加熱方式であるインジェクションヒーター及びインフュージョンヒーターなどがある。エ甲9は,株式会社ビジネスセンター社編集部編集「食品保存便覧」(平成4年6月15日発行)という文献であるが,そこには,次の記載がある ェクションヒーター及びインフュージョンヒーターなどがある。エ甲9は,株式会社ビジネスセンター社編集部編集「食品保存便覧」(平成4年6月15日発行)という文献であるが,そこには,次の記載がある。ア 従来の缶詰及びレトルト食品における加熱殺菌条件は,温度領域が11/0℃から125℃の範囲で,殺菌時間は,容器サイズや内容物の物性等に依存するが,多くは数十分から2時間以内である。これに対して,UHT殺菌にあっては,温度領域が130℃ないし150℃で,殺菌時間は,何秒からせいぜい数分以内である。イ UHTのための熱処理システムであるプレート式熱交換器は,熱効率がよい,価格が安い,分解検査しやすい,装置がフレキシブルなので拡大・縮小が簡単にできるなどの特徴があるが,パッキングの取替え費用が高い,低粘性食品に限られる,食品によっては焦げ付きやすいなどの欠点がある。ウ UHTのための熱処理システムであるチューブ式熱交換器は,装置がコンパクトである,パッキングがほとんど不要で保守費が少なくて済む,駆動する部分がないなどの特徴があるが,圧力損失が非常に大きい,内部を開けて伝熱面を検査することができない,熱効率がプレート式よりも低い,高粘度食品が焦げ付きやすいなどの欠点がある。 飲料を高温加熱殺菌する方法に関する本件出願日当時の技術常識について前記1イに記載のとおり,本件明細書には,飲料を高温加熱殺菌する従来から現実に行われている方法として126℃で30分の殺菌が行われるレトルト殺菌が例示されているほか,前記エに記載のとおり,本件出願日前の一般的な文献にも飲食料の殺菌方法に関する従来技術として紹介されていることに照らすと,飲料をレトルト殺菌により高温加熱殺菌することは,本件出願日当時の当業者の技術常 エに記載のとおり,本件出願日前の一般的な文献にも飲食料の殺菌方法に関する従来技術として紹介されていることに照らすと,飲料をレトルト殺菌により高温加熱殺菌することは,本件出願日当時の当業者の技術常識であったものと認められる。また,前記ア,ウ及びエに記載のとおり,プレート式及びチューブ式の高温加熱殺菌方法は,いずれも,本件出願日前の複数の一般的な文献に詳細かつ具体的な記載があり,その歴史も短いものではないばかりか,前記ウウに記載のとおり,特にプレート式熱交換機は,性能の優秀さ,利用の融通性,取扱いの便利さなど多くの特徴を有し,飲料工業に広く利用されているものである。したがって,飲料をプレート式及びチューブ式の高温加熱殺菌方法により殺菌することは,いずれも本1件出願日当時の当業者の技術常識であり,特にプレート式の高温加熱殺菌方法は,飲料の殺菌方法における代表的な技術であると認められる。 本件発明1及び2の新規性について前記1.に説示のとおり,本件発明1と引用発明とでは,「高温加熱殺菌される飲料に,予めシュクラロースを添加して甘味を付与した後,高温加熱殺菌することを特徴とする,高温加熱殺菌飲料の甘味付与方法」である点で一致するが,引用例には高温加熱殺菌の手法が明記されていない(本件相違点)。しかるところ,前記に説示のとおり,飲料をレトルト,プレート又はチューブ式の高温加熱殺菌方法により殺菌することは,いずれも本件出願日当時の当業者の技術常識であり,特にプレート式の高温加熱殺菌方法は,飲料の殺菌方法における代表的な技術であると認められるから,引用例に接した当業者は,飲料の高温加熱殺菌方法として上記の各方法を当然に想起するものというべきである。したがって,本件相違点は,実質的な相違点というこ おける代表的な技術であると認められるから,引用例に接した当業者は,飲料の高温加熱殺菌方法として上記の各方法を当然に想起するものというべきである。したがって,本件相違点は,実質的な相違点ということはできず,引用発明は,本件発明1の高温加熱殺菌方法を一部包含するものであって,本件発明1と実質的に同一の発明であるといえる。また,本件発明2は,本件発明1において飲料に対するシュクラロースの添加量を0.001重量%から0.5重量%として特定するものであるが,引用例には,前記1エに記載のとおり,シュクラロースを飲料に対して最大0.025重量%添加することが記載されており,両者の数値は,一部が重複している。したがって,引用発明は,シュクラロースの添加量において本件発明2と同一の範囲を包含するものであって,本件発明2と実質的に同一の発明であるといえる。. 原告の主張について原告は,本件発明が採用する高温加熱殺菌方法が従来使用されている各種の方法の一部にすぎず,常套手段ではないから,本件相違点が実質的な相違点であると主張する。しかしながら,前記に説示のとおり,飲料をレトルト,プレート又はチューブ-式の高温加熱殺菌方法により殺菌することは,いずれも本件出願日当時の当業者の技術常識であり,特にプレート式の高温加熱殺菌方法は,飲料の殺菌方法における代表的な技術であると認められるから,引用例に接した当業者は,飲料の高温加熱殺菌方法として上記の各方法を当然に想起するものというべきである。したがって,原告の上記主張は,採用できない。/ 小括以上のとおり,引用発明は,本件発明1及び2と実質的に同一の発明であるといえるから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由2(容易想到性に係る判断の誤り)につ い。/ 小括以上のとおり,引用発明は,本件発明1及び2と実質的に同一の発明であるといえるから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由2(容易想到性に係る判断の誤り)について 本件発明1について前記2に説示のとおり,本件発明1は,引用発明と実質的に同一の発明であるが,仮に本件相違点が実質的な相違点であると考えたとしても,前記2に説示のとおり,飲料をレトルト,プレート又はチューブ式の高温加熱殺菌方法により殺菌することは,いずれも本件出願日当時の当業者の技術常識であり,特にプレート式の高温加熱殺菌方法は,飲料の殺菌方法における代表的な技術であると認められるから,引用例に接した当業者は,飲料の高温加熱殺菌方法として上記の各方法を当然に想起するものというべきである。そして,本件の全証拠によっても,シュクラロースを添加した飲料を高温加熱殺菌するに当たり,上記の各方法を採用することについて阻害事由は見当たらず,また,これらを採用することにより当業者に予測不可能な顕著な作用効果が得られるものとも認められない。よって,引用例に接した本件出願日当時の当業者は,シュクラロースが添加された飲料を高温加熱殺菌するに当たり,本件発明1の本件相違点に係る構成であるレトルト,プレート又はチューブ式殺菌方法を採用することを容易に想到することができたものというべきである。 本件発明2について前記2に説示のとおり,本件発明2は,引用発明と実質的に同一の発明である2が,仮にシュクラロースの添加量の相違が実質的な相違点であると考えたとしても,本件発明2と引用発明とで当該添加量が重複することは,前記2に説示のとおりである。また,本件明細書には,前記1オに記載のとおり,シュクラロースの添 実質的な相違点であると考えたとしても,本件発明2と引用発明とで当該添加量が重複することは,前記2に説示のとおりである。また,本件明細書には,前記1オに記載のとおり,シュクラロースの添加量がその飲料に求められる甘味度,カロリー等により任意に調整されるとの記載があることから,本件発明2のシュクラロースの添加量の特定には,特段の臨界的意義が認められない。したがって,引用例に接した本件出願日当時の当業者は,本件発明1における高温加熱殺菌飲料に対するシュクラロースの添加量について,本件発明2における特定方法を採用することを容易に想到することができたものというべきである。 本件発明3について前記1に説示のとおり,本件発明3は,本件発明1における高温加熱殺菌飲料のpHの範囲を特定するものである。しかるところ,前記1ウに記載のとおり,引用例には,pH4ないし7.5の範囲でのシュクラロースの1年間の分解が測定不能なほど小さい旨の記載があるところ,当該数値は,本件発明3によるpHの範囲の特定(6.8以上)と一部重複するばかりか,本件明細書の記載によっても,本件発明3のpHの範囲に関する特定に特段の臨界的意義を認めることができず,また,本件の全証拠によっても,本件発明1における高温加熱殺菌飲料のpHの範囲を本件発明3の数値で特定することについて阻害事由は見当たらない。したがって,引用例に接した本件出願日当時の当業者は,本件発明1における高温加熱殺菌飲料のpHの範囲について,本件発明3における特定方法を採用することを容易に想到することができたものというべきである。. 原告の主張についてア原告は,シュクラロースを添加した飲料についてレトルト等の高温加熱殺菌をした場合には甘味度が低下せず,褐変するなどの外 に想到することができたものというべきである。. 原告の主張についてア原告は,シュクラロースを添加した飲料についてレトルト等の高温加熱殺菌をした場合には甘味度が低下せず,褐変するなどの外観上の不都合が生じず,また,焦げ付きを生じないという,引用例からは予測できない作用効果があると主張する。0しかしながら,引用例には,前記1ウに説示のとおり,高温条件下の水系で抜群の安定性を有し,ケーキ等に添加しても焼成の前後で変化しないというベーキングプロセスでの安定性を有する旨の記載もあるところ,この記載は,シュクラロースを含む食品を高温に加熱した場合であってもシュクラロースが変化しないことを意味するものと解される。したがって,引用例に接した当業者は,シュクラロースを添加した飲料を高温加熱殺菌した場合にも甘味度の低下や褐変がないという作用効果を予測することが可能であると認められる。また,シュクラロースを添加した飲料を高温加熱殺菌した場合に焦げ付きが生じないことについて,本件明細書にはかかる記載がないから,このことを本件発明の作用効果として考慮することはできないし,上記のとおり,引用例に接した当業者は,シュクラロースを添加した飲料を高温加熱殺菌した場合にも褐変がないという作用効果を予測することが可能であると認められる以上,焦げ付きが生じないことも当然予測することが可能であるというべきである。よって,原告の上記主張は,採用できない。イ原告は,アスパルテーム等の甘味料又はしょ糖を添加した飲料についてUHT殺菌処理をすると甘味度が低下し,褐変することから,UHT殺菌に対して安定であるからといってレトルト殺菌等に供した場合にも安定であるとはいえず,このことは予測ができないと主張する。しかしながら,前記アに説示のとおり,引用 下し,褐変することから,UHT殺菌に対して安定であるからといってレトルト殺菌等に供した場合にも安定であるとはいえず,このことは予測ができないと主張する。しかしながら,前記アに説示のとおり,引用例に接した当業者は,シュクラロースを添加した飲料を高温加熱殺菌した場合にも甘味度の低下や褐変がないという作用効果を予測することが可能であると認められるところ,他に当該作用効果に疑義を抱かせるような証拠はない。したがって,アスパルテームやしょ糖等についてUHT殺菌処理をした場合の安定性が予測できないからといって,シュクラロースについてUHT殺菌処理した場合の安定性が予測できなくなるものではない。よって,原告の上記主張は,採用できない。ウ原告は,引用例にいう安定性とは甘味度のことであって,引用例には飲料の3風味や外観の安定性については開示も示唆もないと主張する。しかしながら,引用例には,そこに記載された安定性との用語を甘味度が変わらないことに限定して使用しているとみるべき記載がない。むしろ,引用例は,シュクラロースを添加した飲食料品に高温加熱処理をしてもシュクラロースに変化がない旨を記載している以上,当業者は,この記載から,シュクラロースが食品の風味や外観にも影響を与えないことを認識するものというべきである。よって,原告の主張は,採用できない。エ原告は,引用例には極端な条件下ではシュクラロースが分解する旨の記載があるから,さらに過酷なレトルト殺菌等の条件ではシュクラロースが安定とはいえないと主張する。しかしながら,引用例には,前記1ウに記載のとおり,そこに記載の実験例の中で最も過酷なものとしてベークドビーンズを121℃で80分滅菌処理した例が記載されているが,当該実験例においても処理の前後でシュクラロースの量に変 前記1ウに記載のとおり,そこに記載の実験例の中で最も過酷なものとしてベークドビーンズを121℃で80分滅菌処理した例が記載されているが,当該実験例においても処理の前後でシュクラロースの量に変化がない旨も記載されている。他方,本件明細書には,上記実験例よりも過酷な殺菌条件を採用する旨の記載はないし,また,本件全証拠によっても,このような条件が飲料の高温加熱殺菌条件として通常採用される条件であるということもできない。よって,原告の上記主張は,採用できない。/ 小括以上のとおり,引用例に接した当業者は,引用発明及び本件出願日当時の技術常識に基づき,本件発明を容易に想到することができたものと認められ,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 4 結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官土肥章大裁判官井上泰人裁判官荒井章光

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る