平成16(ワ)11608 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成18年6月23日 東京地方裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-33278.txt

判決文本文30,964 文字)

平成18年6月23日判決言渡平成16年第11608号損害賠償請求事件( )ワ判決主文 被告Aは、原告Bに対し、1645万3672円及びこれに対する平成13年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Cは、原告Bに対し、1645万3672円及びこれに対する平成13年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告Bのその余の請求及び原告Dの請求をいずれも棄却する。 、 訴訟費用は、原告Bに生じた費用の2分の1を被告らの負担とし被告らに生じた費用の各5分の1を原告Dの負担とし、その余は各自の負担とする。 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告Aは、原告Bに対し、金2476万9159円、原告Dに対し、金250万円及びこれらに対する平成13年11月7日から各支払済みまで、年5分の割合による金員を支払え。 被告Cは、原告Bに対し、金2476万9159円、原告Dに対し、金250万円及びこれらに対する平成13年11月7日から各支払済みまで、年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は、被告Aが設置・運営するE病院において、乳頭腺管癌との診断を受けて、左乳房摘出手術を受けた原告B及びその夫である原告Dが、被告病院において病理診断を担当した被告Cには、原告Bの病変が実際には癌ではなかったにもかかわらず、誤って癌であると診断した過失があるとして、被告らに対し、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を請求した事案である。 前提となる事実(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。以下同じ)。 当事者( )ア原告B(以下「原告B」とい 賠償を請求した事案である。 前提となる事実(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。以下同じ)。 当事者( )ア原告B(以下「原告B」という)は、昭和31年1月10日生まれの。 女性であり、原告D(以下「原告D」という)は、原告Bの夫である。 (乙A1〔1、弁論の全趣旨。 〕)イ被告A(以下「被告A」という)は、静岡県三島市所在のE病院(以。 下「被告病院」という)を設置・運営する社団法人であり、被告C(以。 下「被告C」という)は、本件当時、被告病院に勤務し、原告Bの細胞。 診検査を担当した医師である(乙A1〔18、弁論の全趣旨。 〕) 主な診療経過等( )ア原告Bは、平成13年10月、三島市の乳がん検診を受診し、左乳腺腫瘤を指摘された(甲A7〔1、乙A1〔3。 〕〕)さらに、原告Bは、同月13日、訴外F病院を受診したところ、触診によって腫瘤様のものが触知され、エコー検査によって、触診部と一致して、腫瘤が確認された(乙A1〔12、13。 〕)イ原告Bは、同月23日、被告病院を受診し、訴外G医師(以下「G医師」という)の診察を受けた。G医師は、触診、エコー、マンモグラフ。 ィー、吸引細胞診等の検査を行った(甲A7〔1、乙A1〔3。 〕〕)ウ被告Cは、G医師からの依頼により、上記吸引細胞診によって採取され た検体を観察し、細胞診検査報告書に「血性で汚い背景です。クロマチ、ン増量、核小体腫大、核大小不同を示す不規則重積性の見られるatypicalcell(異型細胞)が見られます。papilotubularCa(乳頭腺管癌)を考えます。診断PAPClassⅤ(パパニコロウ分類Ⅴ)」等と記載してG医師に報告した(乙A1〔18。 〕)エ同月 (異型細胞)が見られます。papilotubularCa(乳頭腺管癌)を考えます。診断PAPClassⅤ(パパニコロウ分類Ⅴ)」等と記載してG医師に報告した(乙A1〔18。 〕)エ同月31日、G医師は、原告Bに対し、検査の結果、原告Bの左乳腺腫瘤はがんであったと報告し、同年11月7日に手術を行うことが決定された(甲A7〔1、乙A1〔3。 〕〕)オ原告Bは、同月6日、被告病院に入院し、同月7日、左乳房の非定型乳房切除術(以下「本件切除手術」という)を受け、同月26日に退院し。 た(乙A1〔3、乙A2〔1、5、14ないし16、19、23。 〕〕)カ本件切除手術後に、組織及び細胞について組織診及び細胞診が行われた。 被告病院病理部内で検討した結果、報告書において「全体像を総合的に、検討すると、病変は、増殖が強く、典型的とはいえないが、乳管内乳頭腫である可能性を第一に考える」と判断され、同月30日、G医師は、原。 告Bの左乳腺腫瘤はがんではなかったことを告げた(乙A1〔3、1 。 〕)キ原告Bは、平成15年10月7日及び平成16年5月1日に、東京都港区所在のH医院で、左乳房の再建術を受けた(甲A7〔12、13。 〕) 争点 (1)原告Bの左乳房の病変につき、乳がんと誤診した過失の有無(2)被告らの行為と乳房切除との因果関係(3)原告Bの後遺症の存否及び被告らの過失との因果関係(4)損害額 争点についての当事者の主張 争点(1)(原告Bの左乳房の病変につき、乳がんと誤診した過失の有無)( ) について(原告らの主張)ア本件で、原告Bが罹患していた管内性乳頭腫(乳管内乳頭腫)は、比較的太い乳管上皮から発生し、乳管内にて乳頭状に発育し、漿液の分泌又は出血をきたし、異常乳頭分泌の原因となる いて(原告らの主張)ア本件で、原告Bが罹患していた管内性乳頭腫(乳管内乳頭腫)は、比較的太い乳管上皮から発生し、乳管内にて乳頭状に発育し、漿液の分泌又は出血をきたし、異常乳頭分泌の原因となる良性腫瘍である。組織学的に乳頭状癌との区別が困難なことがあるが、上皮に異なった2種(分泌上皮と筋上皮の二層構造)が区別されるなどの鑑別点が挙げられる。 乳管は、内側に位置する乳管上皮細胞と基底側の筋上皮細胞との二細胞性構造(二相性あるいは二層性)をとるため、細胞診において筋上皮細胞の存在は、良性の大きな指標となる。 イ被告病院は、原告Bの細胞はクラスⅡの良性である細胞であったにもかかわらず、細胞診でクラスⅤ(悪性)であるとの診断をした。 すなわち、被告Cは、吸引細胞診所見を「血性で汚い背景です。クロ、マチン増量、核小体腫大、核大小不同を示す不規則重積性の見られるatypicalcell(異型細胞)が見られます。papilotubularCa(乳頭腺管癌)を考えます。診断PAPClassⅤ(パパニコロウ分類Ⅴ)」であるとして、乳がんすなわちクラスⅤと判定している。 しかし、本細胞診所見は、血性もなく、背景はきれいで、クロマチン増量はさほどなく、核異型は乏しく、全体的に細胞の形は整っており、最も悪性が疑われる細胞集塊においても筋上皮細胞が存在し、到底悪性と判断できないものである。 すなわち、集塊を構成する細胞は筋上皮との二相性を保持しており、上記の乳がんと乳管内乳頭腫との鑑別点に照らしても、良性と判断すべき所見である。 被告Cの診断は、明らかな誤診であり、鑑別義務違反である。 ウ仮に、本件が、クラスⅣと判定すべきものであったとしても、乳がん診 断の検査手順からして、クラスⅣと診断されていたら、生検が行われていたはずであり、もし生検が行 診であり、鑑別義務違反である。 ウ仮に、本件が、クラスⅣと判定すべきものであったとしても、乳がん診 断の検査手順からして、クラスⅣと診断されていたら、生検が行われていたはずであり、もし生検が行われていたら、本件が良性腫瘍であることが判明したことは明らかである。 したがって、本件がクラスⅣと診断すべきものであったとしても、正しい診断がされていれば本件結果は回避できたのであり、被告らの過失は明らかである。 (被告Aの主張)被告病院の病理診断の具体的所見には間違いはない。 本件細胞診の検体には血液も認められ、クロマチン増量もあり、核小体腫大、核大小不同を示す不規則重積性の見られる異型細胞があることに間違いはない。 また二相性が保たれていない部分や不明瞭な部分もある。さらに他にも悪性所見であるところの細胞の結合性の低下(樹枝状の所見)も複数箇所認められる。 癌と乳管内乳頭腫との区別は臨床的にも病理学的にも難しいところがあるのは事実である。それを考慮して悪性を示唆する所見は確かにあるが認定としてはクラスをⅣにすべきであったのではないかという点は議論はあり得るとしても、所見自体としては間違いはない。 (被告Cの主張)ア筋上皮細胞の存在は、非浸潤性乳管癌の場合には、良性と悪性を判別する指標とならない。二相性の所見、特に筋上皮細胞の存在は、その量的割合と形態学的特徴及び出現性が、良・悪性診断の重要な指標となるのであり、単に筋上皮細胞が一つでも存在すれば、当該病変部分が良性と断定できることなどない。 イ被告側は、細胞診のプレパラートを観察し「血性で汚い背景です。ク、ロマチン増量、核小体腫大、核大小不同を示す不規則重積性の見られる異型細胞が見られます」との所見を得「乳頭腺管癌を考えます」との判。 、。 定に至ったものである。 被告Cらが後日 です。ク、ロマチン増量、核小体腫大、核大小不同を示す不規則重積性の見られる異型細胞が見られます」との所見を得「乳頭腺管癌を考えます」との判。 、。 定に至ったものである。 被告Cらが後日プレパラートを観察した所見として「焦点をずらして、も二相性は不明瞭である」との記載しているが、これは、採取された細。 胞塊には厚みがあるため、顕微鏡の焦点をずらすことにより位置の異なる細胞を観察したところ、筋上皮細胞と解される細胞も存在したが、その量的割合は少ないと認めたとの趣旨である。また、同所見として「二相性、は不明瞭である」との記載があるが、これも同様の趣旨であり「筋上皮。 、細胞は不明瞭である」との記載は、筋上皮細胞の存在そのものが不明瞭。 であるとの趣旨である。 よって、被告側が、細胞診のプレパラートを観察し、上記の判定に至ったことには、いずれも過失はない。 各種の報告例を見ても、細胞診においては一定範囲の偽陽性の発生は避けられないものであり、被告Cに過失は認められず、債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償の責任はない。 (2)争点(2)(被告らの行為と乳房切除との因果関係)について(原告らの主張)被告病院は、細胞診の誤診により、原告Bの乳房をリンパも含めて切除した。 (被告Aの主張)乳管内乳頭腫であると診断がつけば、治療は不要である。しかし、実際には乳管内乳頭腫と癌とは極めて区別がつきにくいので、原則切除する。その方法としては、乳管内視鏡下切除は一般的ではなく、切開切除が普通である。 したがって、本件では、切開切除は避けられなかった。 (被告Cの主張)被告Cの細胞診の判断が1つの診断要素となって乳癌の手術が行われたとしても、以下の理由により、因果関係において、原告Bの損害と直結するわけではない。 癌(悪性腫瘍)との診 た。 (被告Cの主張)被告Cの細胞診の判断が1つの診断要素となって乳癌の手術が行われたとしても、以下の理由により、因果関係において、原告Bの損害と直結するわけではない。 癌(悪性腫瘍)との診断は、触診、マンモグラフィーといった他の検査結果との総合評価でおこなわれるもので、この総合判断は臨床医が行うものである。 また、仮に乳癌との判断となっても、そもそも乳房切除の手術を行うか否かの判断も臨床医が行うものである。 乳房切除術を行うとしても、本件の児玉法のほかにも、いくつかの手術類型があり、本件手術時においても乳房の相当部分を残す乳房温存療法も、既に一般化し相当程度実施されており、児玉法を選択したのは臨床医の専権であって、被告Cの意思が介在する余地はない(乳房温存療法であれば、肩の可動域軽減がおきる可能性はない。 。)以上から、児玉法による乳房切除術により算出される損害に関して、被告Cが負うべき部分は、ごく限られた範囲に止まることが明らかといえる。 (3)争点(3)(原告Bの後遺症の存否及び被告らの過失との因果関係)について(原告らの主張)ア原告Bの後遺症について原告Bは、女性としての象徴的な器官である左乳房を喪失した。 また、左胸部の手術痕は約12センチメートルの醜状痕を残している。 さらに、原告Bは、左腕の浮腫、左肩の拘縮があり、左肩関節の可動域が制限されている。 イ後遺症と被告らの行為との因果関係について(ア)腋窩リンパ節を郭清する場合は、皮膚全体も合わせて郭清してしまうので、郭清後は、腋全体がえぐれている状態になる。 乳がん術後の主な肩関節可動域制限は、瘢痕や創部の癒着によるものであるとされており、肩関節の可動域制限は、リンパ節郭清による合併症として約17パーセント生じることが科学的に証明されている。 したがって 術後の主な肩関節可動域制限は、瘢痕や創部の癒着によるものであるとされており、肩関節の可動域制限は、リンパ節郭清による合併症として約17パーセント生じることが科学的に証明されている。 したがって、原告Bの肩関節の可動域制限も、本件切除手術におけるリンパ節郭清による合併症である。 (イ)リンパ浮腫は、リンパを郭清することにより生じるが、上肢リンパ浮腫は、少なくとも10ないし20パーセントの患者に生じる。 なお、腋窩リンパ節郭清は、小胸筋の外側から内側にかけてレベル1から3に分類されているところ、レベル3の郭清は浮腫を起こす危険性が高い。 原告Bは、腋窩リンパ節をレベル3まで郭清したのであるから、この手術自体によって、リンパ浮腫の後遺症が生じたといえる。 (ウ)被告病院では、リハビリが形式的には実施されていたが、肩関節可動域を医学的に測定した上で実施したり、その到達度を測定もしておらず、また患者の状態に即して実施されることもないずさんなものであった。 また、被告病院では、原告Bの肩関節可動域を、退院当時も測定することはなく、肩関節の可動域を回復させるためのリハビリを実施するようにとの指示もなかった。 原告Bの肩関節の可動域制限は、被告病院が、リハビリの指示をしなかったことにより増幅されたものである。 (被告Aの主張)ア原告Bの後遺症について今回の手術の術式では、原告ら主張のような後遺症は起きない。実際に、被告病院退院時には、原告Bの左肩に、可動域制限はなかった。 イ後遺症と被告らの行為との因果関係について本件手術は、平成13年11月7日に行われており、それから51日後である同年12月28日の診察において関節の可動域検査を行っているが、完全に動いており、機能的に関節が動かないということはなかった。 また、平成15年5月15日に作 行われており、それから51日後である同年12月28日の診察において関節の可動域検査を行っているが、完全に動いており、機能的に関節が動かないということはなかった。 また、平成15年5月15日に作成された診断書よりも、それより後に作成された診断書のほうが、症状が悪化していることになっている。手術が原因とすれば、手術から1年8ヶ月もたった段階にきてさらに症状が悪化するということはあり得ない。 仮に、可動域の制限が生じたとすれば、それは手術によるものではなく、加齢その他の原因によるものである。また、原告Bが被告病院の指導にもかかわらず、頑なに自発的リハビリをしなかったことによるものである。 したがって、原告Bの障害と被告らの行為には、因果関係はない。 (被告Cの主張)ア原告Bの後遺症について本件の手術により、後遺症は生じないのが一般である。 原告Bの生活状況からすれば、職場復帰(平成14年1月)後一定の時期に、後遺症と評価され得るような症状は解消されていると考えられる。 イ後遺症と被告らの行為との因果関係仮に、原告Bに、何らかの症状が残っているとしても、原告Bがリハビリの知識を有し、かつ職場でのリハビリも可能な上記状況にありながら、自らの意思でこれを怠った結果に関しては、被告らに責任はない。 (4)争点(4)(損害額)について(原告らの主張)原告らの被った損害は以下の通りであり、原告Bの損害の合計金額は、2476万9159円であり、原告Dの損害は、250万円である。 ア治療費21万5090円(入院費17万6660円、通院費3万8430円)イ入院雑費3万1500円(入院21日×1500円)ウ器具購入費3万3075円 エ休業損害71万4130円(平成13年賃金センサス女子・学歴計・全年齢352万2400円÷3 イ入院雑費3万1500円(入院21日×1500円)ウ器具購入費3万3075円 エ休業損害71万4130円(平成13年賃金センサス女子・学歴計・全年齢352万2400円÷365×就労不可能期間74日)オ逸失利益927万3070円(平成13年賃金センサス女子・学歴計・全年齢352万2400円×労働能力喪失期間22年間のライプニッツ係数13.163×労働能力喪失率11級相当0.2)(ア)原告Bは、女性としての象徴的な器官である左乳房を喪失した。また、左胸部の手術痕は、約12センチメートルの醜状痕を残している。 さらに、原告Bは、左腕の浮腫、左肩の拘縮があり、また、左肩関節の可動域が制限されている。 原告Bの左腕の可動域は、主要運動である屈曲、外転のいずれも健側の可動域の4分の3以下に制限されており、内旋にも70度とかなりの可動域制限がある。したがって、関節の機能に障害を残すものであり、後遺症の12級6号に該当する。 また、肩関節の拘縮や、左腕の浮腫という後遺症がある。これは、むくみや痛みが生じることにより、仕事に直接影響する後遺症であるといえる。 乳房は、胸腹部臓器ではないが、胸部臓器に匹敵する器官であり、原告Bは、それをリンパも含めて喪失するという障害を被った。これは、11級に匹敵する。 さらに、手術痕として、左胸部に約12センチメートルの醜状痕を残し、著しい醜状として、12級に該当する。 以上を総合すると、原告Bの後遺症は、少なくとも11級に該当する。 (イ)原告Bは介護福祉の仕事を続けているが、原告Bに生じた可動域制限や浮腫は、原告Bのヘルパーという仕事に直接的に関わる障害であり、 現実に、原告Bは老人を一人で持ち上げられなくなるなど、仕事に大きな差支えが出ている。にもかかわらず、原告Bが介護福祉の 域制限や浮腫は、原告Bのヘルパーという仕事に直接的に関わる障害であり、 現実に、原告Bは老人を一人で持ち上げられなくなるなど、仕事に大きな差支えが出ている。にもかかわらず、原告Bが介護福祉の仕事を続けているのは、本人の格別の努力によるものである。 このように、減収が生じていないのが本人の格別の努力による場合、後遺症による逸失利益を認めるべきである。 カ乳房再建手術費用307万2987円(ア)治療費合計108万6635円(イ)交通費合計13万1130円(ウ)宿泊費2万1000円(エ)休業損害15万4222円(平成14年賃金センサス女子・学歴計・全年齢351万8200円÷365×通院日数16日)(オ)入通院慰謝料168万円キ慰謝料1200万円(ア)原告Bの精神的苦痛についての慰謝料1000万円原告Bの慰謝料としては、後遺症11級として420万円、入通院慰謝料として187万円(但し、入院一ヶ月、通院13ヶ月)に加え以下の増額事由がある。 まず、通常、病理検査の結果は、入院中に患者に知らされるが、病理検査結果は原告Bの入院中である平成13年11月19日には出ていたにもかかわらず、入院中には検査結果は知らされず、原告Bは不安な日々を過ごした。 次に、同月30日、原告Bは、被告病院を受診し、G医師より乳がんではないとの報告を受けたが、その際に、G医師は「がんではないの、でやることはない。3ヶ月後に来てください」と述べた。原告Bは、。 病院内の知人に相談し、再度G医師に面会したが、その際に、同医師は、 初めてメモ程度のものを渡した。また、原告Bが精神的苦痛を被っていることについて、訴外医師から、G医師に対し、フォローを求める忠告があったにもかかわらず、G医師からは優しい言葉のひとこともなく、原 初めてメモ程度のものを渡した。また、原告Bが精神的苦痛を被っていることについて、訴外医師から、G医師に対し、フォローを求める忠告があったにもかかわらず、G医師からは優しい言葉のひとこともなく、原告Bは、リハビリを被告病院以外で受けざるを得なかった。 また、原告Bは、左乳房喪失により、夫との関係も悪化し、また、日常の生活を心から楽しむことが出来なくなった。原告Bの精神的苦痛は大きく、現在は、静岡県内の病院で、精神面の治療を受けている。 さらに、原告Bは、乳房の再建手術を受けたが、それは、再び手術による痛み・苦痛を伴った。 加えて、本件誤診は、どの病理医師が見ても、クラスⅤとは判断し得ない事例であり、被告らの行為の過失は大きいといえる。また、被告Cは、病理分野の重鎮であり、学会内でも指導的立場を果たす者であり、違法性の程度は高度であるといえる。 以上の事由に鑑みると、本件では、慰謝料の増額事由があり、これを慰謝するに必要な額は、1000万円を下らない。 (イ)原告Dの慰謝料200万円原告Dは、妻が重大な傷害に比肩する損害を被ったため、D自身も精神的苦痛を被った。これを慰謝するに必要な額は、200万円を下らない。 ク損害賠償関係費用10万5197円(ア)診断書作成費用5250円(イ)証拠保全費用9万6797円a予納金2318円b交通費1万8680円cコピー代1400円dカメラ代1449円 eカメラ費用7万2950円(ウ)セカンドオピニオンにかかる診察費3150円ケ弁護士費用200万円(原告B分150万円、原告D分50万円)コ健康保険傷病手当原告Bは、健康保険傷病手当として、平成14年2月22日、合計17万5890円の支給を受けたため、損害額から17万5890円を減額する。 (被告 150万円、原告D分50万円)コ健康保険傷病手当原告Bは、健康保険傷病手当として、平成14年2月22日、合計17万5890円の支給を受けたため、損害額から17万5890円を減額する。 (被告Aの主張)争う。 (被告Cの主張)争う。 第3当裁判所の判断 事実関係証拠によれば、次の事実が認められる。 (1)原告Bは、平成13年10月、三島市の乳がん検診を受診し、左乳腺腫瘤を指摘された(甲A7〔1、乙A1〔3。 〕〕)さらに、原告Bは、同月13日、F病院のI医師(以下「I医師」という)の診察を受けたところ、触診によって腫瘤様のものが触知され、エコ。 ー検査によって、触診部と一致して、腫瘤が確認された(乙A1〔12、1 。 〕)(2)原告Bは、同月23日、I医師の紹介により被告病院を受診し、G医師の診察を受けた。G医師は、触診、エコー、マンモグラフィー、吸引細胞診等の検査を行った。超音波検査の結果は、癌を疑うとするものであったが、マンモグラフィーによっては、癌は描出されなかった(甲A1、乙A1。 〔3、15、18。 〕)被告Cは、G医師の依頼により、吸引細胞診によって得られた検体を観察 し「血性で汚い背景です。クロマチン増量、核小体腫大、核大小不同を示、す不規則重積性の見られるatypicalcell(異型細胞)が見られます。papilotubularCa(乳頭腺管癌)を考えます。診断PAPClassⅤ(パパニコロウ分類Ⅴ)」等と記載した細胞診検査報告書を作成し、G医師に報告した(乙A1〔18。 〕)(3)同月31日、G医師は、原告Bに対し、検査の結果、原告Bの左乳腺腫瘤はがんであったと報告し、同年11月7日に手術を行うことが決定された(甲A7〔1、乙A1〔3。 〕〕)原告Bは、原告Dに 3)同月31日、G医師は、原告Bに対し、検査の結果、原告Bの左乳腺腫瘤はがんであったと報告し、同年11月7日に手術を行うことが決定された(甲A7〔1、乙A1〔3。 〕〕)原告Bは、原告Dに、G医師から癌と告知されたこと、11月7日に手術を行う予定であることを告げたところ、原告Dは、原告Bに対し、他の病院でも見てもらうようにとアドバイスをしたが、原告Bは、癌への恐怖心から、一刻も早く手術をしようと考え、他の病院を受診しなかった(甲A7〔2。 〕)(4)原告Bは、同月6日、被告病院に入院し、同月26日に退院した(乙A1〔3、乙A2〔1、5、19、23。 〕〕)同月7日、G医師の執刀により、原告Bの左乳房について、本件切除手術が行われた。本件切除手術は、非定型的切除術(児玉法)の術式で行われ、小胸筋は切離されなかった。G医師は、リンパ節については、レベルⅢまで郭清し、レベルⅠには、腫大したリンパ節を確認した。肋間上腕神経は温存せず、十分に頭側まで郭清した(乙A2〔16。 〕)(5)本件切除術後に、組織及び細胞について組織診及び細胞診が行われた。 被告病院病理部内で検討した結果、報告書において「全体像を総合的に検、討すると、病変は、増殖が強く、典型的とはいえないが、乳管内乳頭腫である可能性を第一に考える」と診断された(乙A1〔17。 。 〕)また、原告Bは、平成14年1月、被告病院から組織及び細胞診標本を借り出し、訴外J大学K医師の意見を求めたところ、同医師も、乳管内乳頭腫 との診断であった(甲A7〔7、乙A1〔7。 〕〕)さらに、原告Bは、平成15年、被告病院から術前の細胞診プレパラート及び術後の組織及び細胞診標本のプレパラートを借り出し、訴外癌研究会付属病院の医師の意見を求めたところ、前者については「核 〕〕)さらに、原告Bは、平成15年、被告病院から術前の細胞診プレパラート及び術後の組織及び細胞診標本のプレパラートを借り出し、訴外癌研究会付属病院の医師の意見を求めたところ、前者については「核異型の乏しいduc、tcells(乳管細胞)が血管間質茎を中心として増生しています。集塊を構成する細胞は筋上皮との二相性を保持していることから、Benignpapillary、lesion(良性乳頭病変)と考えます」との所見で、クラスⅡの判定とされ後者については、悪性腫瘍はないとの所見で乳管内乳頭腫との診断であった(甲A3、甲A4、甲A7〔9、10。 〕)(6)手術から4日後の平成13年11月11日、原告Bは、リハビリテーションプログラムと題するパンフレット(乙B2)を受け取り、リハビリについての指導を受けた(乙A2〔40、L〔1。 〕〕)また、原告Bは、被告病院入院中に、いわゆる壁はい運動を行った。その左右差は、11月12日には50センチメートル、同月13日には35センチメートル、同月14日には35センチメートル、同月15日には32センチメートル、同月16日には24センチメートル、同月20日には26センチメートルであった(乙A2〔21、40、乙B2、L〔9、10。し〕〕)かし、入院中には、正確な肩関節の可動域の計測は行われなかった(原告B〔14。 〕)なお、被告病院において行われていた壁はい運動は、患者が壁のすぐ間近に立ち、壁に対して正面又は横を向き、患肢以外の腕はまっすぐ下に下げ、患肢は肘を曲げた状態で指を壁にはわせながらできる範囲で挙上するという内容であった(L〔12、原告B〔4、5。原告Bが壁はい運動を行う〕〕)様子及び数値については、看護師が、入院中は一日一回確認しており、それ以外の機会にも、各自 がらできる範囲で挙上するという内容であった(L〔12、原告B〔4、5。原告Bが壁はい運動を行う〕〕)様子及び数値については、看護師が、入院中は一日一回確認しており、それ以外の機会にも、各自が自主的に壁はい運動を行うものとされていた(原告B〔5、30。 〕) (7)原告Bは、同月26日に被告病院を退院したが、退院の際には、退院後のリハビリについての説明はされなかった(乙A2〔1、23、原告B〕〔8。 〕)原告Bは、同月30日、被告病院を受診し、G医師は、原告Bの左乳腺腫瘤はがんではなかったこと、念のため経過観察をすること、増殖傾向が強く、細胞異型はあったため、切除は妥当であったをことを説明した。また、G医師は、原告Bに対し、がんではないのでやることはないから、3ヶ月後に来てくださいと告げた(甲A7〔4、5、乙A1〔3。 〕〕)原告Bが、リハビリについて、G医師に尋ねたところ、G医師は、普通の家事仕事をすることがリハビリである旨を告げた。また、同日の診察においては、原告Bの左肩の可動域についての検査はされなかった(原告B〔1 。 〕)(8)原告Bは、F病院のI医師に本件切除術の結果等について相談し、同医師は、G医師宛に、原告Bが詳しい説明を求めていること、乳房喪失についての心のケアや、リハビリ面でのフォローについて不満を感じていること等〕、について記載した診療情報提供書を作成した(乙A1〔8、原告B〔11 。 〕)同年12月4日、原告Bは、上記の診療情報提供書を持参して、原告D及び同人の母とともに、被告病院を訪れ、G医師に説明を求めた。G医師は、原告Bらに対し、細胞診や超音波検査等の結果から、乳がんという術前診断に基づいて手術を行った、最終的な病理診断は良性腫瘍であるが典型的なものではない、非 病院を訪れ、G医師に説明を求めた。G医師は、原告Bらに対し、細胞診や超音波検査等の結果から、乳がんという術前診断に基づいて手術を行った、最終的な病理診断は良性腫瘍であるが典型的なものではない、非典型例では術前診断と最終診断が一致しないことがある等の説明を行ったが、I医師が求めた心のケアに資するような語りかけはなく、原告Bの左腕の可動域の検査も行わなかった(甲A7〔6、乙A1〔4、〕9、原告B〔11、12、23。 〕〕)(9)同月28日、原告Bは、腕が十分に上がらず、本件切除術の創部に違和 感を感じたことから、被告病院を受診した。原告Bは、G医師の指示により、上肢を上下に動かしたところ、G医師は、その角度等を計測することもなく、カルテ上に「ROM(関節可動域)full(完全」と記載した(甲A7)〔7、乙A1〔4、乙A6〔2、原告B〔12。 〕〕〕〕)(10)平成14年2月8日、原告Bは、被告病院を受診し、G医師の診察を受けた。G医師は、カルテ上に「ROM(関節可動域)improved(改善」と、)記載した(乙A1〔5、乙A6〔2。 〕〕)(11)同年9月30日、原告Bは、M病院(以下「M病院」という)の乳腺、。 外科において、右乳房のがん検診を受診した。その際に、むくみや左肩が上がらないことを相談し、同病院のリハビリ科の浮腫外来を紹介された(甲A7〔8、9。 〕)同年10月18日、原告Bは、M病院のリハビリ科を受診し、N医師の診察を受け、可動域の検査を行った。原告Bは、N医師と相談の上、その後は、自己の勤務先であるF病院で、理学療法士のもとリハビリを行った(甲A7〔9、原告B〔14、15、24。 〕〕)(12)原告Bは、平成15年5月15日、M病院を受診し、N医師が診察したところ、左上 の勤務先であるF病院で、理学療法士のもとリハビリを行った(甲A7〔9、原告B〔14、15、24。 〕〕)(12)原告Bは、平成15年5月15日、M病院を受診し、N医師が診察したところ、左上腕は右上腕に比べて、周計が1ないし1.5センチメートル太く、軽度のリンパ浮腫が認められた。また、左肩関節の可動域は、屈曲が140度、外転が140度であり、制限が認められた。このとき健側である右肩の可動域は測定されていない。さらに、上肢に負担がかかると、浮腫の増悪、肩甲周囲の痛みが増悪するため、家事動作や職業上の制限があり、日常生活に障害をきたしているとの主訴があった。診察にあたったN医師は、上記内容の診断書を作成した(甲C1。 )また、原告Bは、同年7月1日、同病院を受診し、N医師が診察したところ、左上腕は右上腕に比べて、周計が1センチメートル太く、リンパ浮腫が認められた。また、左肩の拘縮が認められた。また、左肩関節の可動域は、 他動運動で、屈曲が135度、外転が120度、内旋が70度、健側である右肩関節の可動域は屈曲及び外転が180度、内旋が90度であり、左肩の可動域には制限が認められた。診察に当たったN医師は、原告Bの症状は固定したものと認め、上記内容の診断書を作成した(甲C3。 )(13)原告Bは、M病院に、リハビリや精神的治療のために、合計18日間通院した(甲A7〔8、9、弁論の全趣旨。 〕)(14)原告Bは、平成15年10月7日、乳房再建術を受けるため、東京都港区所在のH医院を受診した。同院のO医師は、同日、原告Bに、組織拡張器を挿入する手術を行った。原告Bは、同院に入院はしなかったものの、痛みが強かったことから、同日は、東京都所在のホテルに宿泊した(甲A7〔12、甲C4。 〕)平成16年5月1日、原告Bは、左乳房 を挿入する手術を行った。原告Bは、同院に入院はしなかったものの、痛みが強かったことから、同日は、東京都所在のホテルに宿泊した(甲A7〔12、甲C4。 〕)平成16年5月1日、原告Bは、左乳房にシリコンを挿入する手術を受け、その後、平成17年1月22日まで、同医院に合計16日間通院した(甲A7〔12、甲C4、甲C8、9の1ないし10、15の1ないし7、16〕の1ないし2。 )(15)原告Bの左腋は、陥凹の状態となっており、左胸部の約12センチメートルの醜状痕が存在する。また、原告Bは、重量のある物を持つと痛みやむくみを感じ、左腕を上げると創部が突っ張る感じがするため、右腕と同じ高さまでは腕を上げられない状態にある(甲A7〔14、甲C14。 〕) 争点(1)(原告Bの左乳房の病変につき、乳がんと誤診した過失の有無)について。 (1)細胞診の判定としては、従来より、パパニコロウ分類が用いられているこのパパニコロウ分類においては、細胞診所見において異型細胞をみないものがクラスⅠ、異型細胞はあるが悪性細胞をみないものがクラスⅡ、悪性を疑わせる細胞を見るが確診できないものがクラスⅢ、悪性の疑いが極めて濃厚な異型細胞を認める場合がクラスⅣ、悪性と診断可能な異型細胞を認める 場合がクラスⅤとされている(甲B5〔240、甲B6。 〕)このように、クラスⅤとの診断は、疑いを超えて確診に至ったものであるから、クラスⅤというためには、診断時の所見に照らし、悪性と診断できる確実な根拠があることが必要であるというべきである。 (2)上記1(5)のとおり、本件では、術前の細胞診の結果、クラスⅤと診断されているにもかかわらず、術後の組織検査においては、被告病院を含む三つの医療機関において、いずれも良性である乳管内乳頭腫との診断がされてお )のとおり、本件では、術前の細胞診の結果、クラスⅤと診断されているにもかかわらず、術後の組織検査においては、被告病院を含む三つの医療機関において、いずれも良性である乳管内乳頭腫との診断がされており、術前の細胞診のプレパラートについても、他院において、クラスⅡとの判定がされている(甲A4、乙A1〔7、17。 〕)その上、本件当時被告病院に勤務していた細胞検査技師は、他施設の検査技師も悪性を疑うという意見であったこと及び被告病院で再度検討した結果としても癌の可能性がないとは言い切れないとの判断であったことを陳述しているところ(乙B3、これらの判断を上記分類に当てはめた結果につい)ては何ら言及されていないが、悪性を確診するとか、これを強く疑うとの記載がないことからすると、せいぜいクラスⅢに分類すべきとの判断と理解でき、この陳述からしても、被告Cの判定は誤りであったとうかがわれるところである。 (3)他方、被告Aは、乙A3号証を提出し、被告CがクラスⅤと判断した根拠について明らかにしているが、同号証からは、被告Aの指摘する所見が存在することは認められるものの、それによって良性を疑う余地がないとか、又は悪性をこそ強く疑うべきか否かについては明らかにならず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 その上、被告らは、被告Cの過失の有無について、これを争って上記書証等を提出したものの、自ら鑑定や人証申請をしないばかりか、原告らにもこの点の主張を強く求めないまま、争点(2)以降の審理に入ることに同意しており、その点の審理が終了したのちも特段の立証をしなかった。 (4)上記(2)で認定説示した事実と弁論の全趣旨によると、被告Cには、細胞診の検体からは良性の可能性も否定できず、さらに生検等によってこの点を精査すべきであったにもかかわらず(この った。 (4)上記(2)で認定説示した事実と弁論の全趣旨によると、被告Cには、細胞診の検体からは良性の可能性も否定できず、さらに生検等によってこの点を精査すべきであったにもかかわらず(この点は、仮に、判定がクラスⅣであっても同様である。甲B1〔649、良性の可能性を疑う余地がないかの〕)ような判定をした点において、細胞診の診断を誤った過失があると認められる。 争点(2)(被告らの行為と乳房切除手術との因果関係)について(1)G医師は、後記(3)のとおり、被告Cが作成した細胞診検査の結果を基に、乳癌であるという診断をして、それに基づき、乳癌の治療として、原告Bの左乳房切除手術を行ったのであるから、被告らの過失と原告Bの左乳房切除との間には、因果関係があるというべきである。 (2)被告Aは、仮に、被告病院の術前診断の誤りに過失があったとしても、乳管内乳頭腫では、切開手術自体はいずれにせよ必要であったと主張するところ、これは、被告らの過失と手術自体との因果関係はないと主張するものと解される。 しかしながら、一般的に、乳管内乳頭腫については、乳頭状病変は癌との確定診断が難しく切除を推奨するとされていることは認められるものの(甲B2〔1、本件において、原告Bに生じた乳管内乳頭腫について、切開手〕)術の適応があったことを認めるに足りる証拠はなく、本件においていずれにせよ切開手術自体が必要であったと認めることはできない。 また、仮に手術が必要であったとしても、乳管内乳頭腫の治療としての手術と、乳癌の治療としての手術は、その内容が大きく異なるところ、本件乳管内乳頭腫の手術としてどの程度の手術が必要であったのかを認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告Aの上記主張は、その前提事実を認めることができず、採用できない。 、 異なるところ、本件乳管内乳頭腫の手術としてどの程度の手術が必要であったのかを認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告Aの上記主張は、その前提事実を認めることができず、採用できない。 、(3)被告Cは、癌との診断は、他の検査結果との総合評価で行われるものでこの総合判断は臨床医が行うものであるから、細胞診の評価を誤った被告Cの行為と、乳房切除との間には、因果関係がないと主張する。 しかしながら、乳癌の診断のための検査手順としては、次のとおりとされていることが認められる。すなわち、まず、問診、視診、触診を行い、次に必ずマンモグラフィー、超音波などの画像診断のいずれかを併用する。マンモグラフィーで異常所見がなければ経過観察とし、異常があれば、超音波、吸引細胞診、生検を行う。視診・触診で異常が見つかった者は、マンモグラフィーに引き続いて超音波を行う。良性であれば経過観察とするが、必要であれば生検を行う。癌の疑いのある者に限って吸引細胞診を行い、吸引細胞診の結果がクラスⅠ、Ⅱであれば経過観察とし、クラスⅢ、Ⅳのみ生検を行う。クラスⅤ又は画像診断で明らかに乳癌と診断されれば手術を行う(甲B1〔649。 〕)以上のように、細胞診が癌の疑いのある者に限ってなされるものであるという検査手順からすると、細胞診は、病変の性質をより正確に判断するために行うものであり、細胞診の結果は、癌であるとの最終診断をなすにあたって、極めて重要な意味を有するものであるといえる。特に、細胞診の結果がクラスⅤであるとされれば、さらなる検査を経ずに切除手術の適応があるとされるのであるから、細胞診の結果が、乳癌であるとの最終診断に決定的な影響を与えるものであることは明らかである。 このことからすると、本件において細胞診の結果が異なるものであったら、最終的なG医師 されるのであるから、細胞診の結果が、乳癌であるとの最終診断に決定的な影響を与えるものであることは明らかである。 このことからすると、本件において細胞診の結果が異なるものであったら、最終的なG医師の判断としても、更なる検査なしには乳房切除手術は行わなかったと認めることができるから、細胞診の結果についての判断が、乳房切除手術の実施と因果関係を有することは明らかである。 また、被告Cは、手術をするにしても、乳房温存療法等の方法があったと主張するが、原告Bの手術前の所見からして、乳房切除術よりも温存療法を こそ選択すべきであったと認めるに足りる証拠はなく、本件において乳房切除術を選択することもまた通常の医師に与えられた選択肢の範囲内の行為であったと認められるから、被告C作成の細胞診の結果に基づき、乳房切除手術を選択した臨床医であるG医師の判断が、通常の因果の経過からはずれた判断であったと認めることはできない。 したがって、被告Cの上記主張には理由がない。 争点(3)(原告Bの左肩の後遺症の存否及び被告らの過失との因果関係)について(1)後遺症の存否についてア上記1(15)のとおり、原告Bは、左腋が陥凹の状態となっていることが認められる。また、原告Bは、現在の症状につき、重量のある物を持つと痛みやむくみを感じ、左腕を上げると突っ張る感じがするため、右腕と同じ高さまでは腕を上げられない状態にある旨を陳述し、供述する(甲A7〔14、15、原告B〔17、18。 〕〕)原告Bの上記陳述及び供述の信用性につき検討するに、一般的に、乳房切除手術後には、肩関節可動域制限やリンパ浮腫が生じ、腋窩リンパ節郭清が施行された患者では、腋窩部の痛みやひきつれ感による肩の挙上困難が特に強く生じるとされていることが認められる(甲B11〔492、4 後には、肩関節可動域制限やリンパ浮腫が生じ、腋窩リンパ節郭清が施行された患者では、腋窩部の痛みやひきつれ感による肩の挙上困難が特に強く生じるとされていることが認められる(甲B11〔492、497、甲B13〔845。 〕〕)また、上記1(12)のとおり、本件切除手術から、約1年8ヶ月経過した平成15年7月1日のM病院受診時に、原告Bには、左上肢のリンパ浮腫及び左肩の可動域制限が生じており、その症状は、症状固定されたものと診断されたことが認められる。 さらに、腋窩リンパ節は、小胸筋の外側から内側にかけてレベル1から3に分類されるが、レベル1及び2の郭清で重傷のリンパ浮腫を起こすことはまれで、レベル3の郭清は、浮腫を起こす危険性が高いとされている ことが認められるところ(甲B12〔2、3、上記1(4)のとおり、原〕)告Bに対しては、リンパ節はレベル3まで郭清されている。 上記のように、リンパ浮腫や肩関節可動域制限が、乳房切除手術の合併症として認められること、原告Bの主張する現在の症状が、乳房切除手術の合併症としてのそれに合致すること、実際に、リハビリの専門医によって左肩の可動域制限及びリンパ節浮腫が存在すると診断されていることからすれば、原告Bの上記の陳述、供述は信用することができ、原告Bには上記の症状が存在すると認められる。 イこれに対し、被告Aは、被告病院入院時及び退院時において原告Bに可動域制限が生じていなかったと主張した上、それを根拠として、現在の原告Bの左肩の後遺症の存在を否定する。 そこで、被告病院入院時及び退院時における原告Bの左肩の可動域制限の有無につき検討するに、上記認定事実のとおり、被告病院入院中及び退院時には、左肩の可動域についての検査はなされていない。また、退院の6日前の平成13年11月20日の看護記 原告Bの左肩の可動域制限の有無につき検討するに、上記認定事実のとおり、被告病院入院中及び退院時には、左肩の可動域についての検査はなされていない。また、退院の6日前の平成13年11月20日の看護記録には「壁はいあまりすすま、ず」との記載があることからすれば(乙A2〔23、この時点で、原告〕)Bの左肩の可動域に何らかの異常があったものと推認できる。 また、さらに、原告Bは退院直後の同年12月3日に、F病院のI医師を訪れ、被告病院におけるリハビリ面でのフォローが不十分であることを訴えたことが認められる。この事実からすれば、原告Bは、当時、リハビリの必要性を感じるほどに、何らかの身体の不都合を感じていたことが認められ、間近い時期の被告病院退院時においても同様であったことが認められる。 これらの点からすれば、被告病院入院時及び退院時において既に原告Bに可動域制限が生じていたと認めるのが相当であり、被告Aの上記主張はその前提を欠くものである。 ウなお、被告病院の診療録においては、同年12月28日の欄には「ROM(関節可動域)full(完全」との記載がなされている一方、平成14)年2月8日の欄には「ROM(関節可動域)improved(改善」との記載、)があり、両者は矛盾するようである。この点について、被告Aは、前者は他動運動であるのに対し、後者は自動運動であって、後者の趣旨は自分で腕を動かす際の違和感が改善してきたということであるから、被告病院入院時及び退院時に、正確な意味での可動域制限はなかったものであると主張する。 しかしながら、仮に、被告Aの主張するように解釈したとしても、後者の記載からすれば、この時期において、少なくとも自動運動に制限が生じる程度に、左肩の動きについて異常が生じていたということができる。また、前記1 、仮に、被告Aの主張するように解釈したとしても、後者の記載からすれば、この時期において、少なくとも自動運動に制限が生じる程度に、左肩の動きについて異常が生じていたということができる。また、前記1(9)で認定したとおり、上記12月28日の記載は角度等を計測することなく行われたものであるから、その正確性にも疑問がある。 したがって、この点の診療録上の記載を根拠に、可動域制限がなかったとは認められず、この点についての被告Aの主張には理由がない。 エさらに、被告Aは、可動域についての数値が、後遺症の認定基準と合致することは不自然である等として、同診断書の記載内容の信用性に疑問を呈している。しかしながら、可動域の計測が患者の訴えを考慮してなされるものであるとしても、原告Bが、計測の際に虚偽の申告をしたと認めるに足りる事情はない。また、同診断書は、リハビリテーション科の医師が、検査結果に基づき記載したものであり、作成者たる医師が、ことさらに原告側に有利な記載をする動機も窺われない。これらの点からすれば、この点についての被告Aの主張には理由がないというべきである。 オ以上のとおり、原告Bには後遺症の存在が認められる。 (2)原告Bの後遺症と被告らの過失との因果関係ア次に、原告Bの上記症状と、被告らの行為との因果関係につき検討する に、一般的に、肩関節可動域やリンパ浮腫の発生が、乳房切除手術後の合併症として認められており、原告Bには実際にそれに合致する症状が生じていることからすれば、その症状は、乳房を切除したこと、すなわち、被告らの過失を直接の原因として生じたと推認できる。 イこれについては、被告らは、被告病院において適切にリハビリの指導がなされたにもかかわらず、原告Bがリハビリを怠ったために、後遺症が生じたと主張する。そこで、まず、被告 として生じたと推認できる。 イこれについては、被告らは、被告病院において適切にリハビリの指導がなされたにもかかわらず、原告Bがリハビリを怠ったために、後遺症が生じたと主張する。そこで、まず、被告病院において、術後に、リハビリについていかなる内容の指導が行われたかにつき検討する。 上記1(6)のとおり、原告Bは、平成13年11月11日に、リハビリテーションプログラムと題するパンフレットに基づき、リハビリについての指導を受けたことが認められる。また、その際には、両手の手のひらを胸の前で合わせ、軽く力を入れる等の、パンフレット記載の軽度の運動の方法につき指導されたと認められる(L〔2。 〕)この点について、原告らは、被告病院において、上記書面を受け取ったことはなく、壁はい運動以外の運動を指導されたことはないと主張し、原告Bもそれに沿う供述をする(原告B〔5、20、21。しかしながら、〕)看護記録上に「リハビリパンフレットスミ」との記載があること、同記録の別頁の同日の欄には「リハビリ指導」との記載があり、両者の記載、が合致すること、さらに、これらの記載の信用性を疑うに足りる事情もないことからすれば、これと矛盾する限度で原告Bの供述はにわかには信用できないというべきである。 もっとも、指導されたリハビリの具体的な内容については、看護記録上、11月12日以降は、リハビリに関する記載は「壁はい運動」との記載のみであること、証人Lも壁はい運動以外は、その内容について具体的に証言していないことからすれば、被告病院で行われたのは、パンフレットを渡した際に、その内容について簡潔に説明したことにとどまり、壁はい運 動以外の内容について、実際に原告Bに行わせることはなかったと認めるべきである。 次に、被告病院退院時において、被告病院においてい た際に、その内容について簡潔に説明したことにとどまり、壁はい運 動以外の内容について、実際に原告Bに行わせることはなかったと認めるべきである。 次に、被告病院退院時において、被告病院においていかなる内容の退院、後のリハビリ指導がなされたかについて検討するに、上記1(7)のとおり退院時には、被告病院においては、リハビリについては何らの指導がなされなかった。また、同じく上記1(7)のとおり、G医師は、同年11月30日に、原告Bが、被告病院を受診し、リハビリについて質問した際に、普通の家事仕事をしていればよく、それがリハビリとなると述べたことが認められる。この発言の趣旨は、特に患部をかばったりせず、通常の生活をしていればよい、とするものであると解される。 ウ以上のような被告病院におけるリハビリ指導の内容を前提とすると、原告Bは、入院中に被告病院から指導を受けた壁はい運動を毎日行っていたほか、手の運動を自主的に行っていたことが認められるから(原告B〔7、 、入院中に、原告Bが、指導された内容のリハビリを怠ったというこ〕)とはできない。 また、退院後についても、原告Bの供述によれば、同人は、退院後には、G医師の指示通り、不十分ながらも家事を行い、翌月の12月10日からは、ボランティアとして、職場に復帰していたと認められるから、やはり指導されたリハビリを怠ったということはできない(原告B〔25、3 。 〕)これらのことからすると、原告Bは、G医師の指導のとおりに、家事仕事を行った上、ボランティアとしての活動も行っていたにもかかかわらず上記の後遺症が生じたのであるから、原告Bが被告病院において指示されたリハビリを行わなかったことにより、原告Bの損害が生じたということは到底できない。 エなお、原告Bは、退院後においては壁はい運動を 記の後遺症が生じたのであるから、原告Bが被告病院において指示されたリハビリを行わなかったことにより、原告Bの損害が生じたということは到底できない。 エなお、原告Bは、退院後においては壁はい運動を行っていなかったこと が認められる(原告B〔22)ものの、上記のとおり、被告病院におい〕ては、退院時や、原告Bがリハビリ指導の必要性を述べた同年11月30日の診察時においても、壁はい運動を継続すべきことについて指導していないのであるから、原告Bが被告病院において指示されたリハビリを行わなかったと見ることはできない。 オしたがって、原告Bの後遺症が、同人が被告病院の指導にもかかわらず、頑なに自発的リハビリをしなかったことによって生じたということはできず、この点についての被告Aの主張には理由がなく、原告Bの後遺症と被告らの行為との因果関係は認められる。 (3)その余の主張についてア原告らは、被告病院においてリハビリ指導が適切に行われなかったために、後遺症の程度が増幅したと主張する。 しかし、上記1(6)で認定したとおり、被告病院においては、リハビリテーションについてのパンフレットに基づいて一応の説明は行っており、看護師が、壁はい運動の進捗状況について毎日確認していた。さらに、原告Bからは、入院中に肩の痛みや違和感について特段の訴えがなかったのであるから、それ以上の高度のリハビリテーションを行うべき事情は認められず、被告病院で行われた入院中のリハビリの内容が不十分であったとまではいえない。 また、被告病院は、上記のように退院時には何らの指導をなさず、原告Bがリハビリ指導を求めた同年11月30日の診察時においても、特段の指導を行っていないのであるから、退院時または退院後における被告病院のリハビリ指導が十分なものであったかについては、疑問 さず、原告Bがリハビリ指導を求めた同年11月30日の診察時においても、特段の指導を行っていないのであるから、退院時または退院後における被告病院のリハビリ指導が十分なものであったかについては、疑問がないとはいえないものの、被告病院のリハビリ指導が不十分であったとしても、そのことが原告Bの症状にいかなる影響を与えたかについては明らかではない。 以上からすれば、被告病院においてリハビリ指導が適切に行われなかっ たために、後遺症の程度が増幅したと認めることはできない。 イ被告Cは、被告病院におけるリハビリ指導を原因として生じた後遺症については、被告Cが責任を負う余地がない旨主張するが、上記のように被告病院におけるリハビリ指導が原告Bの後遺症を増幅したという関係にないことからすれば、この点についての被告Cの主張は、その前提を欠くものである。 (4)以上より、原告Bの左肩の後遺症の存在及び被告らの過失との因果関係は認められる。 争点(4)(損害額)について(1)治療費について上記1(4)のとおり、原告Bは、平成13年11月6日から同月26日まで入院し、左乳房摘出手術を受け、その費用として、17万6660円を支払ったことが認められる(甲C6の1・2。これに対し、原告Bの主張す)る通院治療費3万8430円については、被告らの行為との因果関係が明らかではなく、また、これを認めるに足りる証拠もない。 したがって、本件の治療費としては、17万6660円を認めるのが相当である。 (2)入院雑費上記認定事実のとおり、原告Bの入院期間は21日間である。また、入院雑費としては、1日あたり1500円と認めるのが相当である。 以上によると、21日×1500円=3万1500円となるから、本件における入院雑費としては、3万1500円を認めるのが相当 。また、入院雑費としては、1日あたり1500円と認めるのが相当である。 以上によると、21日×1500円=3万1500円となるから、本件における入院雑費としては、3万1500円を認めるのが相当である。 (3)器具購入費乳房切除後には、切除した部分の外観やバランスを整えるとともに、不意 の衝撃等から切除部分を保護するために、特殊のシリコンや専用の下着が必要であることが認められる(甲C7、乙B5〔4、5、原告B〔29。 〕〕)これらの購入費である3万3075円は、本件と相当因果関係がある損害である。 (4)休業損害ア上記1(4)、(7)、(8)、(9)及び(10)のとおり、原告Bは、被告病院に平成13年11月6日から同月26日までの21日間入院し、手術後は、同月30日から平成14年2月8日まで被告病院に4回通院している。 また、原告Bは、乳房切除手術後、平成13年12月29日まで、就労が不能であると診断されたことが認められる(乙A1〔26。実際に、〕)原告Bは、同年12月10日から職場にボランティアとして復帰したものの、十分に働くことができずに、早退せざるを得ない状態であり、完全に復帰できたのは、翌年の1月に入ってからであると認められる(原告B〔15、25、26。 〕)これらの事実からすれば、原告Bは、平成13年11月6日から同年12月29日までの期間及びその後に被告病院に通院した平成14年2月8日の、合計55日間について、就労が不能であったと認められる。 さらに、上記1(13)のとおり、原告Bは、M病院に、リハビリや精神的治療のために、合計18日間通院しているところ、上記のとおり、被告病院退院直後から、原告Bには左肩の可動域制限や、リンパ浮腫が生じていたことが認められ、原告Bが医療機関において、専門的なリハビリ 的治療のために、合計18日間通院しているところ、上記のとおり、被告病院退院直後から、原告Bには左肩の可動域制限や、リンパ浮腫が生じていたことが認められ、原告Bが医療機関において、専門的なリハビリを受けることが必要であったと認められる。また、原告Bは、乳房の切除により、大きな精神的打撃を受けたことが認められ、これに対する医師の治療が必要であったといえる(甲A7〔4、5、9〕原告〔20、弁論の全趣〕旨。したがって、これらの通院による損害も、本件と因果関係のある損)害であり、M病院への通院期間についても、就労不能期間に含めるべきで ある。 以上より、本件による就労不能期間は73日である。 イ原告Bは、本件当時、家事労働を行いつつ、病院でヘルパーとして稼働し(原告B〔1、2、月額12万円程度を得ていたことが認められる〕)(甲A7〔16。他方で、賃金センサス平成13年第1巻第1表によれ〕)ば、学歴計全年齢女子労働者平均収入は、352万2400円であることが認められる(顕著な事実。 )原告Bが、パートタイマーとして稼働していたのみならず、家事労働にも従事していたことにも鑑みると、休業損害の計算の基礎とする収入は、上記賃金センサスの平均収入を用いるべきである。 ウ以上によると、73日×352万2400円÷365日=70万4480円となるから、本件における休業損害としては、70万4480円を認めるのが相当である。 (5)逸失利益ア後遺症の程度について原告Bの左肩の可動域は、主要運動である屈曲が135度、外転については自動運動で110度、他動運動で120度であるのに対し、健側である右上肢の可動域は、屈曲については180度、外転についても180度であって、左上肢の可動域は、4分の3以下に制限されていることが認められる(な 110度、他動運動で120度であるのに対し、健側である右上肢の可動域は、屈曲については180度、外転についても180度であって、左上肢の可動域は、4分の3以下に制限されていることが認められる(なお、前記1(12)のとおり、平成15年5月15日に左肩の屈曲及び外転がともに140度との検査結果があるが、その際には健側の測定がされていないなど測定の正確性に疑問があり、症状固定の状況を測定した上記の検査結果の信用性を左右するものではない。また、内旋につい。)ても、健側が90度であるのに対し、左については70度であって、可動域の制限が認められる。 原告Bは、平成15年7月1日、M病院において、左肩の拘縮及びリンパ浮腫について、症状固定したと診断された(甲C3。 )以上からすれば、原告Bに生じた後遺症は、一上肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すものであると認められ、その労働能力喪失率は14、パーセントであると認められる。 また、原告らは、リンパ節の喪失と乳房の喪失は、胸腹部臓器の障害に相当すると主張するが、胸腹部臓器の障害について労働能力喪失を認めるためには、胸腹部臓器の障害によって労働に支障が生じていることが必要であるところ、乳房やリンパ節の喪失それ自体は、労働に支障を生じさせるものとは認め難く、別途精神的損害として考慮するとともに、これらの喪失によって生じた肩関節の拘縮やリンパ浮腫を後遺症として評価するにとどめざるを得ない。 したがって、リンパ節の喪失と乳房の喪失それ自体によって、労働能力の喪失が生じたと認めることはできない。 さらに、原告Bは、左胸部の約12センチメートルの醜状痕を後遺症として主張するが、後遺症と認めるべき醜状痕は、特段の事情がない限り日常露出する部分の醜状に限られるとみるべきであって、別途に精神的損害とし 、原告Bは、左胸部の約12センチメートルの醜状痕を後遺症として主張するが、後遺症と認めるべき醜状痕は、特段の事情がない限り日常露出する部分の醜状に限られるとみるべきであって、別途に精神的損害として評価するのはともかく、これを後遺症と認めることはできない。 イこれに対し、被告らは、原告Bには、現実に収入の減少が生じていないのであるから、本件において逸失利益は認められないと主張する。 しかしながら、一般に、減収が生じないことが本人の格別の努力に負う場合には、逸失利益を認めるべきである。 原告Bは、老人デイサービス施設で介護の仕事をしているところ、職務の性質上、老人を抱え上げて移動させる等の腕の力を要する仕事を多く行っていること、このように腕の力を要する作業を多く行うと腋や背中に痛みが出ること、手術後は、これらの仕事を行うことが困難になったため、 同僚の助けを借りつつ仕事を行っていることが認められる(甲A7〔15、16、原告B〔18。 〕〕)これらのことからすれば、原告Bに収入の減少が生じていないとしても、それは、原告Bの格別の努力に負うものと認めることができる。 したがって、逸失利益の存在は認められる。 ウ次に、逸失利益の算定の基礎とすべき収入については、上記(4)イと同様に、学歴計全年齢女子労働者平均収入を用いるべきである。 そして、原告Bは、昭和31年1月10日生まれであり、症状固定日である平成15年7月1日からの労働能力喪失期間は、20年と算定すべきである。また、20年のライプニッツ係数は、12.462である。 以上からすれば、352万2400円×12.462×0.14=614万5460円(1円未満切捨て)となるから、原告Bの逸失利益としては、614万5460円を認めるのが相当である。 (6)乳房再建費ア原告Bは、本 2万2400円×12.462×0.14=614万5460円(1円未満切捨て)となるから、原告Bの逸失利益としては、614万5460円を認めるのが相当である。 (6)乳房再建費ア原告Bは、本件手術によって、左乳房を喪失しているところ、生命維持の観点からすれば、乳房は身体の重要な器官であるとは言い難いものの、一面においては、乳房は女性の母性を象徴する存在であるとも見ることができ、その喪失が、女性に与える心理的影響は小さくないと考えられる。 原告B自身も、夫である原告Dとの関係が悪化する等、大きな心理的な影響を受けたことが認められる(甲A7〔11、原告B〔20。 〕〕)乳房再建をすることによって、外見上は喪失前と類似の状態となり、上記のような乳房喪失による心理的な影響がある程度は軽減されると解されるのであるから、乳房再建手術は、本件において必要であったということができる。したがって、乳房再建手術は、被告らの過失と相当因果関係が 認められる。 イ(ア)治療費本件乳房再建にかかる治療費として、原告Bは、108万6635円を支払ったことが認められる(甲C8、甲C9の1ないし10、甲C10、甲C15の1ないし7。 )なお、被告らは、乳房再建の費用は、通常は50万円程度であるため、これを超える部分については損害とはならない旨主張するが、本件手術費用が不相当であると認めるに足りる証拠はなく、かかる主張は認められない。 (イ)交通費原告Bは、乳房再建術のために医院へ通院するための交通費として、13万1130円を支払ったことが認められる(甲C16の1・2、顕著な事実、弁論の全趣旨。 )上記のように、乳房再建術が、必要であった以上、その通院のために要した費用も、相当因果関係のある損害と見るべきである。 なお、被告Aは、原告らが居住す C16の1・2、顕著な事実、弁論の全趣旨。 )上記のように、乳房再建術が、必要であった以上、その通院のために要した費用も、相当因果関係のある損害と見るべきである。 なお、被告Aは、原告らが居住する静岡県内においても乳房再建術が可能であったのであるから、東京までの交通費については相当因果関係を有しないと主張するが、同県内で、現に原告Bが受けたのと同様の結果が得られる手術を行うことができる医療機関が存在すると認めるに足りる証拠はなく、上記主張は、認められない。 したがって、交通費として、13万1130円を認めるべきである。 (ウ)宿泊費原告Bは、平成15年10月7日の組織拡張器を入れる手術の後、東京都内のホテルに泊まったことが認められ、術後の痛みが強かったこと及び手術を施行した病院には入院設備がないことからすれば、同日の宿泊は必要であったと認められる(甲A7〔12。これに対し、原告B〕) が、他の日についてもホテルに宿泊したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、1泊分の平均的宿泊費用である8000円が、相当因果関係のある損害であると認められる。 (エ)休業損害上記認定事実のとおり、原告Bは、乳房再建手術に関連して、H医院に合計16日通院したことが認められ、同日数は就労不能であったと認められる。 また、休業損害の算定の基礎とする収入は、上記(4)イと同様の理由。 から、賃金センサス学歴計全年齢女子労働者平均収入とすべきである賃金センサス平成14年第1巻第1表によれば、学歴計全年齢女子労働者平均収入は、351万8200円であることが認められる(顕著な事実。 )以上によると、16日×351万8200円÷365日=15万4222円(1円未満切捨て)となるから、乳房再建に伴う休業損害としては、15万4222円を認めるのが相 認められる(顕著な事実。 )以上によると、16日×351万8200円÷365日=15万4222円(1円未満切捨て)となるから、乳房再建に伴う休業損害としては、15万4222円を認めるのが相当である。 (オ)通院慰謝料上記のように、乳房再建手術と被告らの過失行為に相当因果関係を認める以上、乳房再建手術による入通院慰謝料も、本件と相当因果関係がある損害と認めるべきである。 上記認定事実のとおり、原告Bは、平成15年10月から平成17年1月まで、合計16回にわたり、H医院に通院しているが、その通院間隔は不定期であって、その期間全てを慰謝料の算定の基礎となる通院期間と認めることは公平に反するため、実通院日数を基準に考えるべきである。 以上より、乳房再建に伴う通院慰謝料としては、60万円を認めるのが相当である。 ウ以上より、乳房再建にかかる損害としては、197万9987円を認めるのが相当である。 (7)慰謝料ア原告Bには、上記のような後遺症が生じており、その障害の程度や、日常生活に与える影響等を考慮すると、その慰謝料としては、290万円を認めるのが相当である。 イまた、上記1(13)認定事実のとおり、原告Bは、被告病院に平成13年11月6日から同月26日までの21日間入院し、手術後は、同年11月30日から平成14年2月8日まで被告病院に通院している。また、原告Bは、M病院に、リハビリや精神的治療のために、同年10月18日から症状固定と診断された平成15年7月1日まで合計18日間通院している。 この入通院についての慰謝料としては、115万円を認めるのが相当である。 ウさらに、原告Bは、G医師より癌であるとの告知を受け、相当な精神的な衝撃を受けたことが認められる。また、その後は一転して、癌ではなかった旨告げられており、原 115万円を認めるのが相当である。 ウさらに、原告Bは、G医師より癌であるとの告知を受け、相当な精神的な衝撃を受けたことが認められる。また、その後は一転して、癌ではなかった旨告げられており、原告Bが大きな戸惑いや落胆を感じたことが認められる。さらに、上記認定事実のとおり、G医師は、術後に、原告Bが他院の医師が記載した診療情報提供書を持参して、リハビリや精神的な援助を求めたにもかかわらず、特段の措置を講じておらず、被告病院の事後の対応としても不適切な点があったと認められる(なお、被告Cは、前記のとおり、本件について最も責任を自覚すべき者であって、原告らから求められることがなくても、自ら進んで原告Bに自己の判定の経緯等を説明して、その理解を得、かつ、その精神的苦痛を慰謝するように努力すべき立場にあったのに、これをしていないことからすると、被告病院において本 件の事後対応を担当すべき地位を有していないとしても、その不適切な点において、責任を免れることはできない。 。)加えて、先に述べたように乳房は女性の母性を象徴するものであって、それを失ったことによる精神的喪失感は非常に大きいものであると認められる。この点について、原告Bは、乳房再建術を受けており、これにより、その精神的苦痛の一部を慰謝されたといえるが、人工物を挿入した乳房は、元来の乳房に代替し得るものではなく、その再建によって、原告Bの精神的苦痛の全てを慰謝し得るものではないというべきである。 以上の事情を総合すると、本件においては、上記の後遺症慰謝料、入通院慰謝料に加えて、さらに慰謝料として200万円を認めるのが相当である。 エ以上を総合すると、原告Bが被った損害に対する慰謝料としては、605万円を認めるのが相当である。 オこれに対し、原告Dは、妻である原告Bが、重大な 謝料として200万円を認めるのが相当である。 エ以上を総合すると、原告Bが被った損害に対する慰謝料としては、605万円を認めるのが相当である。 オこれに対し、原告Dは、妻である原告Bが、重大な障害に比肩する損害を被ったためにD自身も精神的苦痛を被ったとして、固有の慰謝料を請求している。 しかしながら、本件に関連して原告Dと原告Bの夫婦間の関係が、一時期は悪化したことがあることは認められるものの(甲A7〔11、原告〕B〔13、14、これによって原告Dが被った精神的苦痛が、原告Bの〕)損害と別個独立に損害額を算定すべきほどのものか否かは疑問があるし、仮に、これが可能であるとしても、その程度は低く、本判決により原告Bの主張が是認されることによって、原告Dの受けた精神的損害もまた慰謝されるものと認められる。 したがって、原告Dの慰謝料は認められない。 (8)損害賠償関係費用ア診断書作成費用等 原告Bは、診断書作成ための費用として、5250円を支払ったことが認められる(甲C11。 )また、原告Bは、他の医師に細胞診の結果につき意見を求めるための費)。 用として、3150円を支払ったことが認められる(甲C13の1・2G医師は、組織診の結果判明後に、原告Bに対し、同検査の結果は乳管内乳頭腫との診断であったと告げているが、その際には、細胞の増殖傾向が強く、細胞異型はあったため、切除は妥当であったと説明しており、同医師はもとより被告らは、自らの過失を認めていない。そのため、他の機関にさらなる検査を求める必要があったと認められるから、上記費用は、本件と相当因果関係のある損害である。 したがって、診断書作成費用等として、8400円を認めるのが相当である。 イ証拠保全費用原告Bは証拠保全費用を請求するが、これを損害と認めるには、具体 用は、本件と相当因果関係のある損害である。 したがって、診断書作成費用等として、8400円を認めるのが相当である。 イ証拠保全費用原告Bは証拠保全費用を請求するが、これを損害と認めるには、具体的な証拠の隠滅や改ざんのおそれがあったことが認められることが必要であるところ、本件について、これらの事情を認めるに足りる証拠はない。 かえって、被告病院は、原告Bが退院した直後に病理診断結果報告書を同原告に渡しており、同原告の求めに応じてプレパラートを貸し出していることが認められる(乙A1〔7、甲A7〔4、7、9、10。これ〕〕)らのことからすれば、同原告がカルテの開示を請求したとすれば、被告病院は、任意にカルテの開示に応じたと認められ、証拠保全の費用が、被告らの過失と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。 (9)弁護士費用弁論の全趣旨によれば、原告Bと同訴訟代理人間の本件訴訟に関する委任契約の存在を認めることができるところ、本件事案の内容、審理経過、認容額、その他の事情からすると、被告らの過失と相当因果関係にある原告Bの 弁護士費用は、150万円と認めるのが相当である。 なお、原告Dの弁護士費用については、上記のとおり、同原告の慰謝料請求が認められないことから、これを認める理由はない。 (10)以上に対し、原告Bは、健康保険傷病手当金として、合計17万5890円の支給を受けたことが認められる(甲C17、18。この健康保険傷)病手当金は、患者が被った損害を填補するために支給されるものであるから、損害額から控除するのが相当である。 以上によれば、不法行為に基づく原告Bの請求は、被告らに対し(両者は不真正連帯債務を負うと解すべきである、それぞれ1645万3672円及び。)平成13年11月7日からから支払済みまで ある。 以上によれば、不法行為に基づく原告Bの請求は、被告らに対し(両者は不真正連帯債務を負うと解すべきである、それぞれ1645万3672円及び。)平成13年11月7日からから支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容し、原告Bのその余の請求及び原告Dの請求は理由がないから、それらを棄却し、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官大嶋洋志 裁判官岡田安世

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る