主文 1 被告は,原告に対し,2億6410万円及びこれに対する平成17年5月13日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主文1項同旨 2 被告は,原告に対し,2億5410万円及びこれに対する平成21年11月13日から支払済みまで年8.25パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,普通地方公共団体である原告が,し尿処理施設を含む各種プラントの設計等を業とする株式会社である被告との間で新し尿処理場整備工事(以下「本件工事」という。)に係る請負契約(以下「本件契約」という。)を締結したところ,平成15年6月2日に実施された本件工事に係る指名競争入札(以下「本件入札」という。)の際,被告を含む入札業者が被告を受注予定者とする談合(以下「本件談合」という。)を行い,原告に損害を与えたと主張して,被告に対し,選択的に,①民法709条に基づき,公正な競争入札が行われていた場合に形成されていたであろう契約金額と本件契約における工事代金(以下「本件代金」という。)との差額とする本件代金の10パーセント相当額2億5410万円及び弁護士費用1000万円の合計2億6410万円の損害賠償金並びにこれに対する不法行為の後である平成17年5月13日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金,又は,②本件契約における違約金条項(以下「本件特約」という。)に基づく本件代金の10パーセント相当額2億5410万円の損害賠償金及びこれに対する催告による支払期限の翌日である平成21年11月13日から支払済 契約における違約金条項(以下「本件特約」という。)に基づく本件代金の10パーセント相当額2億5410万円の損害賠償金及びこれに対する催告による支払期限の翌日である平成21年11月13日から支払済みまで約定の年8.2 5パーセントの割合による遅延損害金のいずれかの支払を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等。なお,以下において,証拠番号は特記なき限り枝番を含む。)(1) 当事者等ア原告は,普通地方公共団体である。 イ被告は,し尿処理施設を含む各種プラントの設計,製作,監理,施工及び請負等を業とする株式会社である。 (2) 本件契約の締結及び本件代金の支払ア原告は,平成15年6月2日,新し尿処理場整備工事(本件工事)に係る指名競争入札(本件入札)を実施したところ,被告のほか,A株式会社(当時。平成18年10月1日付け商号変更により現商号はB株式会社。 以下,商号変更の前後を通じて「A」という。),株式会社C(以下「C」という。),D株式会社(以下「D」という。),E株式会社(以下「E」という。),F株式会社(以下「F」という。)及びG株式会社(以下「G」という。)(これらの各業者を併せて,以下「本件各入札業者」という。)が入札に参加し,被告が24億2000万円(消費税別)で落札した。なお,本件入札における予定価格は,26億5280万円(消費税別)であり,被告の上記落札価格はこの約91.22パーセントに相当する。また,本件入札では,最低制限価格は設定されなかった。(甲1,64)イ原告は,平成15年6月3日,被告との間で,本件工事に係る請負契約(本件契約)につき請負代金25億4100万円(消費税込)(本 本件入札では,最低制限価格は設定されなかった。(甲1,64)イ原告は,平成15年6月3日,被告との間で,本件工事に係る請負契約(本件契約)につき請負代金25億4100万円(消費税込)(本件代金)で仮契約を締結し,同月20日付けの市議会の議決により本件契約が成立した。本件契約の48条では,被告が本件契約に基づく賠償金,損害金又は違約金を原告の指定する期間内に支払わないときにおいて,原告が被告に対して支払うべき請負代金額とこれらの賠償金等を相殺した後の不足額 の徴収をする場合には,原告は被告から遅延日数につき年8.25パーセントの割合で計算した延滞金を徴収することとされている。また,本件契約に付帯する「特定の違法行為に関する特約条項」(本件特約)では,その4項において,被告又は被告が代理人,支配人その他使用人若しくは入札代理人として使用していた者が本件契約の入札に関して同項各号のいずれかに該当したときは,被告は請負代金額の10分の1に相当する額を賠償金として原告が指定する期間内に原告に支払わなければならない旨を定めているところ,同項1号は刑法96条の3による刑が確定したときを,同項2号は刑法198条による刑が確定したときを,同項3号は公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)の規定による審決を行い,当該審決が確定したときを,同項4号は公正取引委員会が独占禁止法に基づく課徴金納付命令を行い,同命令が確定判決とみなされたときを,同項5号は公正取引委員会が行った審決の取消しの訴えを提起し,その訴えについて請求棄却又は訴え却下の判決が確定したときをそれぞれ定めている。(甲2)ウ原告は,被告に対し,本件契約に基づき,本件代金全額を支払った。 (3) し尿処理施設の入 し,その訴えについて請求棄却又は訴え却下の判決が確定したときをそれぞれ定めている。(甲2)ウ原告は,被告に対し,本件契約に基づき,本件代金全額を支払った。 (3) し尿処理施設の入札談合に関する刑事事件の経緯等ア公正取引委員会は,平成18年5月23日,検事総長に対し,平成16年12月上旬頃から平成17年7月中旬頃までの間,市町村等が競争入札により発注するし尿処理施設の新設及び更新工事について,受注予定者を決定するとともに,受注予定者が受注できるような価格等で入札を行う旨合意した上,同合意に従って受注予定者を決定していたとして,被告,A,D,C,E,F,株式会社H(以下「H」という。),I株式会社(以下「I」という。),G,J株式会社(以下「J」という。)及び株式会社K(以下「K」という。)の計11社(以下「本件各会社」という。)を告発した(甲14)。 イ公正取引委員会は,平成18年6月12日,検事総長に対し,上記アと同様の事実に基づき,本件各会社においてし尿処理施設建設工事の受注業務に従事していた担当者11名(各社1名ずつ。以下「本件各担当者」という。)を追加告発した(甲15)。 ウ大阪地方検察庁検察官は,平成18年6月12日,大阪地方裁判所に対し,本件各会社及び本件各担当者を被告人として,平成16年12月上旬頃から平成17年7月頃までの間,市町村等が競争入札の方法により発注するし尿処理施設の新設及び更新工事につき,発注仕様書の作成に対する関与の度合いなどを勘案して受注希望者間の話し合いにより受注予定会社を決定するとともに当該受注予定会社が受注できるような価格で入札を行うなどする旨を合意した上,同合意に従って同工事について受注予定会社を決定したことにより,公共の利益に反して同工事の受注に係る取引分 を決定するとともに当該受注予定会社が受注できるような価格で入札を行うなどする旨を合意した上,同合意に従って同工事について受注予定会社を決定したことにより,公共の利益に反して同工事の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限したことを公訴事実とする独占禁止法違反の罪により起訴した(以下「本件刑事事件」という。)(甲18)。 エ被告,A,D,C,E及びH並びにその各受注担当者は,平成18年12月4日,大阪地方裁判所で行われた本件刑事事件の第1回公判期日において,いずれも公訴事実はそのとおり間違いがない旨陳述した(甲C8,甲D4)。 オ公正取引委員会は,平成19年1月16日,本件各会社が平成16年8月10日(ただし,Kについては同年12月7日)から平成17年8月2日までの間において独占禁止法違反の行為を行っていたとして,本件各会社のうち市町村等が発注するし尿処理施設建設工事に係る事業を取りやめている事業者を除く4社(A,H,K及びJ)に対し,排除措置命令を発するとともに,本件各会社のうち7社(A,H,被告,D,F,C及びE)に対し課徴金納付命令を行った(甲D5,乙1)。 カ大阪地方裁判所は,被告,E,H,C,D及びA並びにその各受注担当 者につき,上記ウの公訴事実とほぼ同様の罪となるべき事実を認め,いずれも有罪に処する旨の判決を言い渡し,これらの判決はいずれも確定した。 なお,被告については罰金2億2000万円に処する旨の,被告の受注担当者であったL(以下「L」という。)については懲役1年6月に処し,3年間その刑の執行を猶予する旨の判決がそれぞれ平成19年4月23日に言い渡された。(甲C2ないし7)(4) 住民訴訟の提起及び義務付け判決ア原告の住民2名は,平成18年12月27日,洲本市長に対し,被告が本件工事の受 の判決がそれぞれ平成19年4月23日に言い渡された。(甲C2ないし7)(4) 住民訴訟の提起及び義務付け判決ア原告の住民2名は,平成18年12月27日,洲本市長に対し,被告が本件工事の受注に関し談合を行い(本件談合),また,株式会社M(以下「M」という。)は基本設計の業務委託を安価に落札することによってこれに加担して,原告に本件代金のうち消費税額を控除した24億2000万円の20パーセントに相当する4億8400万円の損害を与えたところ,洲本市長は被告及びMに対する損害賠償請求を違法に怠っているとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,被告及びMに対して同額の損害賠償請求をすることの義務付けを求める住民訴訟を神戸地方裁判所に提起した(同裁判所平成18年(行ウ)第86号損害賠償請求住民訴訟事件。以下「本件住民訴訟」という。)(甲36)。 イ洲本市長は,平成19年2月9日に行われた本件住民訴訟の第1回口頭弁論期日において,被告が本件談合をした事実及びMが本件談合に加担した事実をいずれも否認した(甲35の1,甲36,37)。 ウ洲本市長は,平成19年2月6日,神戸地方裁判所に対し,被告及びMに対する本件住民訴訟に係る訴訟告知書を提出し,同月9日,被告に対する訴訟告知がされた(甲7,弁論の全趣旨)。 エ洲本市長は,平成19年12月21日に行われた本件住民訴訟の第3回口頭弁論期日において,本件住民訴訟の原告らから提出された書証を検討した結果として,従前の主張を撤回し,本件談合の結果,被告が落札者と なったこと,及び,Mが業務委託契約の入札において非常に安価な金額で落札し,本件談合に加担したことにつきいずれも認めること,並びに,請求額としては本件代金の10パーセントである2億5410万円が相当であることを陳述した 業務委託契約の入札において非常に安価な金額で落札し,本件談合に加担したことにつきいずれも認めること,並びに,請求額としては本件代金の10パーセントである2億5410万円が相当であることを陳述した(甲35の3,甲38)。 オ本件住民訴訟の原告らは,平成20年1月28日,本件住民訴訟における請求を被告及びMに対して2億5410万円の損害賠償請求をすることの義務付けを求めるものに減縮した(甲40)。 カ洲本市長は,平成21年3月25日に行われた本件住民訴訟の第4回弁論準備手続期日において,本件住民訴訟に補助参加したMの主張立証を検討した結果,Mが本件談合に加担したとは必ずしもいえないと判断したとして,Mが本件談合に加担した事実に関する自白を撤回する旨陳述した(甲35の8,甲50)。 キ神戸地方裁判所は,平成21年9月16日,本件住民訴訟につき,被告に対する2億5410万円の損害賠償請求の義務付け請求を認容し,Mに対する同額の損害賠償請求の義務付け請求を棄却する旨の判決(以下「本件住民訴訟判決」という。)をし,同判決は同年10月1日の経過により確定した。なお,本件住民訴訟判決においては,被告が本件談合を行ったこと及び本件談合により原告が被った損害額につき,弁論終結時においても洲本市長による自白が維持されていたため,争いのない事実として摘示されている。(甲3,4)(5) 洲本市長の被告に対する請求及び本件訴えの提起ア洲本市長は,平成21年10月14日,被告に対し,本件入札において刑法96条の3及び独占禁止法に反する不法行為が認められることを理由に,民法709条及び本件特約4項の適用ないし準用に基づき,同年11月12日までに損害賠償金(違約金)として2億5410万円を支払うこと及び同日までに支払がないときは同月13 が認められることを理由に,民法709条及び本件特約4項の適用ないし準用に基づき,同年11月12日までに損害賠償金(違約金)として2億5410万円を支払うこと及び同日までに支払がないときは同月13日から支払済みまで本件契約 48条に基づく年8.25パーセントの割合による遅延損害金を支払うよう請求した(甲8)。 イ被告は,平成21年11月11日付けで,洲本市長に対し,上記アの請求には応じられない旨通知した(甲9)。 ウ原告は,平成22年2月24日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 2 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 被告に本件住民訴訟判決の参加的効力が及ぶか(原告の主張)ア被告は,本件住民訴訟において,地方自治法242条の2第7項による訴訟告知を受けているから,本件住民訴訟判決の主文に包含される訴訟物たる権利関係の存否並びに判決理由中の事実認定及び先決的権利関係の存否の判断,すなわち,被告が本件談合を行って原告に違法に損害を与えたこと及びその損害額が2億5410万円であることにつき同法242条の3第4項,民事訴訟法(以下「民訴法」という。)53条,46条により参加的効力を受ける。したがって,被告は本件訴訟において,本件住民訴訟に補助参加してすることができた主張をすることはできない。 イ洲本市長は,本件住民訴訟において本件談合の事実につき不知ないし争うとの答弁をしていたところ,本件住民訴訟の原告らから提出された書証を検討した結果,本件談合が行われたとの心証を得たことに加え,訴訟告知を受けたにもかかわらず被告からは10か月余り何らの問い合わせもなかったため被告は談合の事実を自認しているものと考えたことから,本件談合の事実を自白するに至ったものである。洲本市長は,本件住民訴 知を受けたにもかかわらず被告からは10か月余り何らの問い合わせもなかったため被告は談合の事実を自認しているものと考えたことから,本件談合の事実を自白するに至ったものである。洲本市長は,本件住民訴訟において自白に転じた後も被告及びMに訴訟参加を促しており,自白の撤回をする余地を残していたところ,現にMの関係では補助参加後に自白を撤回している。しかし,被告は洲本市長からの参加の促しに取り合わず本件住民訴訟に参加しなかったため,被告の関係では自白の撤回がされなかっ た。このような本件住民訴訟の経過によれば,被告が訴訟参加をして本件談合の事実を否認するとともに損害額を争った場合に,洲本市長がかかる被告の訴訟行為に反する訴訟行為を行ったであろうとは認められないから,民訴法46条各号の事由に該当する事実があったとはいえない。これに加え,被告は本件住民訴訟に詐害防止のために独立当事者参加をすることも可能であり,かつ,参加することに支障がなかったにもかかわらず,参加した上で自身の保有する資料等に基づく積極的な主張立証をしなかったのであるから,被告が参加的効力を免れるとすることは妥当ではなく,訴訟不経済を招き訴訟告知制度の趣旨を没却する結果となることからすれば,洲本市長が最終的には本件談合が行われた事実及び損害額につき自白をしていることを踏まえても,被告には本件住民訴訟判決によって本件談合が行われた事実及び原告に対し2億5410万円の賠償義務を負うことについての参加的効力が及び,本件訴訟においてこれと反する主張をすることはできないと解すべきである。 (被告の主張)ア地方自治法242条の2第1項4号所定の義務付け請求に係る住民訴訟においては,地方自治体が敗訴した場合には後に相手方に対する損害賠償請求をすることが予定されているから (被告の主張)ア地方自治法242条の2第1項4号所定の義務付け請求に係る住民訴訟においては,地方自治体が敗訴した場合には後に相手方に対する損害賠償請求をすることが予定されているから,告知人である地方自治体と被告知人である相手方との間に協同して攻撃防御を尽くすに足る利害の一致を認めることはできない。そして,参加的効力の趣旨は補助参加人と被参加人との間で被参加人の敗訴責任につき分担を図ることにあるから,被告知人が告知人と協同して相手方に対し攻撃防御を尽くすことにつき利害の一致があり,そうすることが期待できる場合に限って被告知人に参加的効力を及ぼすことが認められるというべきである。 しかるに,義務付け請求の相手方に住民訴訟における裁判の効力が及ぶとすれば,相手方は自らが法律関係の主体となっている損害賠償請求権の 存否及び内容について,訴訟当事者として攻撃防御を尽くす機会を与えられないままに裁判所の判断を受忍せざるを得ない立場に置かれることとなるところ,訴訟告知がされることによって訴訟当事者として攻撃防御を尽くす機会の保障が代替され得るものでないことは明らかである。また,訴訟告知を受けて参加しなかった被告知者についても補助参加人に対するものと同一の裁判の効力が及ぶとすれば,訴訟告知に基づいて参加の義務を課するのと実質的に変わりがない結果となるから,参加の有無にかかわらず被告知者に同一の効力が及ぶと解すべきではない。このような地方自治法242条の2第1項4号に基づく義務付け請求に関する訴訟構造に鑑みれば,同法242条の3第4項の参加的効力の範囲については,相手方の裁判を受ける権利を踏まえた合理的範囲に限定されるべきである。 イ民訴法46条各号は例示であって,被告知人が補助参加をしたとしても被参加人が被告知人の主張と の参加的効力の範囲については,相手方の裁判を受ける権利を踏まえた合理的範囲に限定されるべきである。 イ民訴法46条各号は例示であって,被告知人が補助参加をしたとしても被参加人が被告知人の主張と抵触する主張をしていたであろうと認められる場合には,前訴の判決の参加的効力は及ばないものと解される。しかるに,洲本市長は本件住民訴訟の実質第2回目の弁論期日において本件談合の事実及び本件代金の10パーセント相当額の限度で損害の発生に係る事実を自白し,本件住民訴訟における原告らの請求を一部認諾したものと評価し得るのであって,本件住民訴訟の判決も洲本市長の自白を前提に損害額を認定しているところ,被告が本件住民訴訟に補助参加していれば洲本市長の上記自白に抵触する主張をしていたことは確実であるから,本件住民訴訟判決の参加的効力は本件訴訟には及ばないというべきである。 (2) 本件談合の有無(原告の主張)公正取引委員会の平成18年5月26日付け調査報告書において本件工事が取り上げられていること,被告の受注調整担当者であったLは,平成8年春頃から平成17年8月までの間受注調整担当者として受注調整を行ってお り,本件工事においても談合破りがされていない旨供述していること,被告の代表取締役が平成18年3月末日をもってし尿処理施設の新設及び更新工事から撤退する旨供述し,本件工事において談合があったことを暗に認めていること,被告がし尿処理施設の工事を受注した鹿嶋市の案件においても談合が問題となっていること,Lが本件刑事事件で有罪判決を受けたことなどからすれば,被告が本件入札において本件談合を行っていたことは明らかである。 (被告の主張)ア公正取引委員会は,被告による独占禁止法違反行為の実行の始期を平成16年8月12日と どからすれば,被告が本件入札において本件談合を行っていたことは明らかである。 (被告の主張)ア公正取引委員会は,被告による独占禁止法違反行為の実行の始期を平成16年8月12日と判断していること,談合組織の構成員間で受注調整を行いその結果どおりに落札していたとするLの供述は極めて抽象的であり,本件工事に関する具体的な供述は一切ないこと,本件刑事事件においては本件入札は起訴の対象とされていないことからすると,本件入札に関し本件談合が行われたとの事実を認めることはできない。 イ原告は,被告がその対象に含まれる,公正取引委員会のし尿処理施設建設工事の入札談合事件に係る告発に関する書証や,本件刑事事件に関する記録を根拠に,本件談合の事実が認められる旨主張するが,これらの書証においても本件談合が行われた事実を明示したものはなく,また,本件談合が行われた事実を推認させるものでもない。 (3) 本件談合によって原告に発生した損害の数額(原告の主張)ア本件特約4項の準用(ア) 被告は,本件談合を行い,原告に損害を与えたものであるところ,かかる行為は実体法上刑法96条の3に該当するものであって,原告に対する債務不履行又は不法行為を構成するから,同条による刑が確定した場合の違約金の支払を規定する本件特約4項1号に文言上当たらずと も,同号が準用されると解するのが相当であり,原告に対し本件代金の10パーセント相当額である2億5410万円の損害賠償義務を負う。 そして,洲本市長は,平成21年10月14日,同年11月12日までに当該賠償金を支払うよう請求したが,被告はその支払を怠っているから,被告は,原告に対し,上記損害賠償金2億5410万円に対する同月13日から支払済みまで本件契約に基づく 4日,同年11月12日までに当該賠償金を支払うよう請求したが,被告はその支払を怠っているから,被告は,原告に対し,上記損害賠償金2億5410万円に対する同月13日から支払済みまで本件契約に基づく年8.25パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負う。 (イ) 被告は,原告が本件特約4項の準用を主張することは信義則上問題がある旨主張するが,原告は本件住民訴訟において本件特約4項の準用により損害額を断定することに合理的な根拠を有しない旨を請求の即時性の有無に関連して主張していたにすぎず,準用に合理的な根拠がないことを認めていたものではないから,被告の主張は失当である。 イ民訴法248条による損害認定被告は,本件談合を行ったという不法行為によって,談合がなければ形成されていたと推定される落札価格(想定価格)と現実に落札の結果締結された契約金額との差額分の損害を原告に与えているところ,当該損害の額を原告において具体的に立証することは極めて困難であるから,民訴法248条による裁量認定がされるべきである。そして,以下の諸点を考慮すれば,本件談合によって原告には少なくとも本件代金の10パーセント相当額である2億5410万円の損害が生じており,また,本件住民訴訟判決の参加的効力が及ばない場合には請求原因につき主張立証を要することからすれば,本件訴えの提起に要した弁護士費用のうち少なくとも1000万円は本件談合と相当因果関係があるといえる。 よって,被告は,原告に対し,上記の合計額2億6410万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成17年5月13日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負う。 (ア) 本件工事と類似する工事に関する裁判例の認定額本件工事と同等,同規模のし尿処理施 ある平成17年5月13日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負う。 (ア) 本件工事と類似する工事に関する裁判例の認定額本件工事と同等,同規模のし尿処理施設工事に関する入札談合が行われ,入札日が近接しており,落札者が被告であって落札率も近似している鹿嶋市の事案に関する水戸地方裁判所平成20年5月13日判決(以下「水戸地裁判決」という。)においては,大阪地方検察庁検察官作成の平成18年6月12日付け捜査報告書(以下「本件捜査報告書」という。)における平均損害額を基にした平均損害率の考え方を考慮要素として契約金額の10パーセントが損害として認定されている。 (イ) 本件捜査報告書における一般管理費の比率本件捜査報告書における「標準工事価格」は,工事原価に対し,工事原価に「11.5パーセントを乗じて得た範囲内で適正な利益を加算したもの」である一般管理費を加算したものであるところ,実在しない想定落札価格と実際の契約金額との差額のような,損害の性質上その額を立証することが極めて困難である場合には,実態調査を踏まえて環境省が定める廃棄物処理施設整備費国庫補助金交付要綱(以下「本件要綱」という。)において定められた客観性のある一般管理費の比率を用いて標準工事価格を算定することがあながち不合理なものであるとはいえないし,被告が原告に提出した本件工事についての内訳書においても,一般管理費は10.80パーセントとされていることからすれば,一般管理費を11.5パーセントとして標準工事価格を算定することが不当とはいえない。 また,一般管理費の比率は経済情勢に変動があっても事業内容のやり方に大きな変化がなければさほど変わらないと考えられるから,本件要綱における一般管理費の比率が昭和55年から変更されて はいえない。 また,一般管理費の比率は経済情勢に変動があっても事業内容のやり方に大きな変化がなければさほど変わらないと考えられるから,本件要綱における一般管理費の比率が昭和55年から変更されていないとしても不合理とはいえない。 さらに,被告は,被告を含むし尿処理施設に係る工事の受注業者であ る各社における販売費及び一般管理費の比率を基に,一般管理費を工事原価の11.5パーセントとすることは不合理である旨主張するが,請負施工の場合,工事費の中の本工事費,付帯工事費,解体費,用地費,調査費,さらにはその細目費用等には,下請業者への発注,製造のための材料発注等の中に利益を含めて計上されるのが通常であり,これらの利益のトータルの中で営業部門や管理部門における経費も一部賄われているといえるから,被告の主張は理由がない。被告は,被告における平成13年ないし平成16年の一般管理費率平均21.2パーセントには利益は一切含まれていないと主張するが,し尿処理事業を展開するのは全国的にも20社程度であることからすれば営業に多額の経費を要するかは疑問であるし,ここに利益が含まれていないとすればいかなる費目に利益を含ませているか極めて不可解である。 (ウ) 立入調査後の平均落札率公正取引委員会の平成18年6月2日付け調査報告書では,平成17年8月2日の公正取引委員会による立入検査後に市町村等が発注したくみ取りし尿及び浄化槽汚泥等を処理するし尿処理施設の新設及び更新工事の平均落札率が76.88パーセントに下落したとされている。 (エ) 違約金条項本件特約においては,違約金が本件代金の10パーセントと定められているところ,本件談合は原告に対する不法行為を構成するとともに債務不履行にも該当するものであるから,本件特約の定めも参照 違約金条項本件特約においては,違約金が本件代金の10パーセントと定められているところ,本件談合は原告に対する不法行為を構成するとともに債務不履行にも該当するものであるから,本件特約の定めも参照されるべきである。また,国土交通省が制定した平成15年6月1日以降に入札手続を開始する工事に適用されるものとして定めた違約金に関する特約条項においても,独占禁止法違反を犯した業者に対する違約金の額は請負代金の10分の1に相当する額としている。 (オ) 見積額自体が談合によりつり上げられたものであること 原告は,本件入札において最低制限価格を設定していないから,自由競争による入札がされた場合の下限を考慮する必要はない。また,本件入札において事前公表した予定価格は,工事施工業者10社から見積書を提出させ,各費目につき算出した上位及び下位それぞれ2社の見積額を除く6社の見積額の平均額の合計によっているところ,これらの工事施工業者らは上記見積書を提出する段階から見積調整を行い,見積額において15パーセントないし20パーセント程度の利益が見込まれるようにして予定価格のつり上げを行っていたものであるから,本件代金の10パーセントをもって損害額とすることが根拠のない不当なものではないことは明らかである。 (カ) 工事の品質確保の観点について被告は,予定価格に対する落札率が85パーセント以下となれば工事の品質確保の面から問題が生じ,低価格入札調査の対象となることが損害率の算定においても斟酌されるべき旨主張するが,公共工事の品質確保の促進に関する法律(以下「品質確保法」という。)やそれに関する要綱等が制定され,原告において低入札価格調査制度が導入されたのは本件工事に係る入札が行われた後であるから,これらの点を本件入札におけ の促進に関する法律(以下「品質確保法」という。)やそれに関する要綱等が制定され,原告において低入札価格調査制度が導入されたのは本件工事に係る入札が行われた後であるから,これらの点を本件入札における想定落札価格の算定において考慮すべきとする被告の主張は失当である。 (キ) 近時の裁判例との関係について被告は,本件工事とは異なるごみ焼却炉工事や下水道工事に係る談合事案についての裁判例を引用し,そこで認定されている損害率が契約金額の5パーセント未満ないし5パーセントである旨主張するが,本件入札が行われた当時は,し尿処理施設が新たに補助金の交付対象となったため全国の自治体がその整備計画を打ち出し,し尿処理施設の設置に実績を有する限られた業者が公共工事への入札を争っていた状況であった のに対し,ごみ焼却施設や下水道の工事はそれ以前から補助金の交付対象として恒常的に事業展開がされていたものであり,し尿処理施設に係る工事とは専門業者数,受注規模において著しい差異があり,その利益率も異なるから,これらを同列に論じることはできない。 また,被告は,O広域行政組合発注のし尿処理施設工事における談合に係る損害賠償請求事件についての津地方裁判所の和解案を根拠に本件談合によって生じた損害額は本件代金の3パーセント程度であると主張するが,同事件と本件とでは落札者が被告か他の業者かという点や訴訟に至る経過が異なる上,当事者の主張や情報収集量にも著しい相違があって,和解の事情も個々的に差異があることからすれば,同事件に係る津地方裁判所の和解案が本件の参考となるものではない。 (ク) 工場固定費に関する主張について被告が主張する工場の間接部門,工事管理部門及び購買部門等に係る経費(以下「工場固定費」という。)は,その具 の参考となるものではない。 (ク) 工場固定費に関する主張について被告が主張する工場の間接部門,工事管理部門及び購買部門等に係る経費(以下「工場固定費」という。)は,その具体的な内訳明細も不明であるし,本件刑事事件の対象工事を受注した他社では販売費及び一般管理費に計上されている費用がその中に計上されていることからすれば,一般管理費とは別個に計上されるべきものであるかは疑問である。 また,被告は,工事原価に固定費を加え,一般管理費の比率を補正した上で本件捜査報告書における算定方法によって算出した標準工事価格を基に平均損害率を算定すると2.95パーセントとなる旨主張するが,被告における工場固定費及び一般管理費の比率をし尿処理事業におけるプラント事業と管理運営事業を峻別することなく一体として作成された損益明細書に基づいて算定していること,被告の一事業部のみの損益明細書と他社の全社的な損益計算書を基にして一般管理費の比率を算出していること,被告の内部資料を見ても変動費と一般管理費の割り振りにつき不一致が見受けられることなどからすれば,被告の主張する損害額 に合理性があるものとは認められない。 なお,被告は,有価証券報告書に係る損益計算書は財務会計の観点から,事業部の損益計算書は管理会計の観点からそれぞれ作成されるものであり,管理会計に基づく損益計算書から財務会計に基づく損益計算書を作成する際には科目の一部について組み替えを行う必要がある旨主張するが,管理会計については作成方法に関する規則,規定等は存在せず,財務会計への組み替えが作為的にされる可能性も否定できないから,失当である。 (被告の主張)ア本件特約4項の準用について被告が本件特約4項各号の事由に該当する事実は認められな 計への組み替えが作為的にされる可能性も否定できないから,失当である。 (被告の主張)ア本件特約4項の準用について被告が本件特約4項各号の事由に該当する事実は認められない上,公正取引委員会は,被告に対する課徴金納付命令において,カルテルの開始時期を本件入札の後である平成16年8月12日と判断しており,課徴金算定対象物件に本件工事は含まれていないから,本件契約につき本件特約4項を準用する余地はない。 また,原告は,本件住民訴訟において本件契約に本件特約4項が準用されることに何ら合理的な根拠はないことを認めているから,本件訴訟において本件特約4項の準用を主張することには信義則上重大な問題がある。 イ民訴法248条による損害認定について談合が行われた場合の発注者の損害額は,健全な競争が行われていた場合に形成されたであろう想定落札価格と,談合に基づく実際の契約金額との差額分とするのが相当であるが,一般に,指名競争入札における落札価格は,当該工事の内容,当時の経済状況その他多種多様な要因が複雑に絡み合って形成されるものであり,健全な競争に基づく想定落札価格を証拠に基づき具体的に認定することは困難であるから,損害額は民訴法248条に基づき相当な金額を認めることとせざるを得ない。そして,受注調整 を行い,公正な競争を害したことに対する懲罰的な効果や違反行為の防止といった行政目的を達成する上での効果を勘案して賠償額を算定するのは相当ではなく,損害額の認定が困難な中において被告に損害賠償義務を負わせる以上,当該賠償額の算定に当たってはある程度謙抑的に認定すべきであるところ,以下の諸点を考慮すれば,仮に本件談合が行われた事実が認められ,それにより原告に損害が生じていたとしても,その額は本件代 る以上,当該賠償額の算定に当たってはある程度謙抑的に認定すべきであるところ,以下の諸点を考慮すれば,仮に本件談合が行われた事実が認められ,それにより原告に損害が生じていたとしても,その額は本件代金の3パーセント程度にとどまるものというべきである。 (ア) 近時の裁判例との比較近時の談合事件に係る損害賠償に関する裁判例においては,損害額を落札価格の3パーセントないし5パーセントとするものが数多く見受けられる。また,平成16年5月に行われた本件工事と同様の処理方式によるし尿処理施設の工事に係る入札談合が問題となったものの,本件刑事事件及び課徴金納付命令のいずれの対象にもなっていないという本件と類似するO広域行政組合発注工事に係る津地方裁判所の和解案でも,契約金額の5パーセントを損害とする考えが示されているところ,本件工事に係る落札率は91.22パーセントにとどまり,津地方裁判所の事案よりも低く,他のし尿処理施設建設工事の落札率と比較しても低位に属している。 (イ) 公正取引委員会の立入調査後の平均落札率について公正取引委員会の平成18年6月2日付け調査報告書では,平成17年8月2日の公正取引委員会による立入検査後において市町村等が発注したくみ取りし尿及び浄化槽汚泥等を処理するし尿処理施設の新設及び更新工事の平均落札率が76.88パーセントに下落した旨の記載があるが,その調査の対象とされた工事の予定価格,落札価格はもとより,工事の内容すら明らかではないから,同数値は本件工事に係る損害額の算定根拠にはなり得ない。 また,上記の平均落札率76.88パーセントを適正落札率として用いることは,かかる落札率によって行われた工事では工事品質に重大な問題が生じる疑いが極めて強いため許されるべきではない。そして,平成1 また,上記の平均落札率76.88パーセントを適正落札率として用いることは,かかる落札率によって行われた工事では工事品質に重大な問題が生じる疑いが極めて強いため許されるべきではない。そして,平成17年4月1日施行の品質確保法によって公共工事の品質確保の実施が義務付けられていること,国土交通省においても原則として落札率が予定価格の85パーセント以下の公共工事を低価格入札の調査対象としていることからすれば,本件入札に係る想定落札価格についても予定価格の85パーセント以下と算定されるべきではない。 (ウ) 水戸地裁判決について原告が本件における損害額算定の根拠として挙げる水戸地裁判決は,被告による反論がないままされたものであるから,同判決を参考とすることは相当ではないし,同判決において問題とされた工事は,本件工事とは処理方式が全く異なるものであり,同工事においてされた談合における損害額が本件の参考となるものではない。 また,水戸地裁判決が採用する平均損害率の考え方は,当該工事の現実の落札価格がいかようなものであれ,常に11.23パーセントの損害が発生したものとみなすものであるから,不合理な算定方法である。 さらに,本件刑事事件の対象とされた工事8件について本件捜査報告書の計算方法により算定した想定落札価格の予定価格に対する平均落札率は85.22パーセントであり,これを前提としても本件工事に係る落札率91.22パーセントとの差は6パーセントにとどまるから,本件工事に係る損害額につき平均損害率11.23パーセントを基準に算定することは不当である。なお,本件刑事事件の対象とされた各工事から被告の受注した2件の工事を除けば,上記の平均落札率はさらに高い数字となる。 (エ) 本件捜査報告書における一般管理費の比率が不合理であること なお,本件刑事事件の対象とされた各工事から被告の受注した2件の工事を除けば,上記の平均落札率はさらに高い数字となる。 (エ) 本件捜査報告書における一般管理費の比率が不合理であること 水戸地裁判決が損害額算定の根拠の一つとして挙げる本件捜査報告書は,工事原価に本件要綱に基づき工事原価に11.5パーセントを乗じて算出した一般管理費を加えて標準工事価格を算定している。しかしながら,ここで用いられている11.5パーセントという比率は,あくまで補助金算定のための基準として本件要綱で定められたものであって,廃棄物処理施設建設工事とは要求される技術水準や業者の規模,発注方式等が異なる簡易水道等施設の建設工事に関する補助金交付要綱における一般管理費の比率と同率に定められていること,昭和55年以降本件工事当時までその比率については何らの見直しもされておらず,実態調査を踏まえて定められたとはいえないこと,被告における一般管理費(利益を除く。)は対売上原価比で23.7パーセント,本件捜査報告書に記載された被告以外の4社の販売費及び一般管理費の売上原価に占める割合はそれぞれ17パーセント,28.4パーセント,10.7パーセント,13.1パーセントであって,被告を含めた5社の平均は18. 6パーセントであることからすれば,し尿処理施設における一般管理費の比率として合理性を有する数値ではなく,少なくとも上記18.6パーセントが用いられるべきである。 また,本件捜査報告書は,本件刑事事件における情状立証のために作成されたものであるから,これを本件刑事事件の対象にすらなっていない本件工事に関する損害額認定の根拠として用いることは相当ではない。 さらに,本件捜査報告書では損害額の推計に当たって検討対象とされている8件の工事の内容等は一切不明であるから の対象にすらなっていない本件工事に関する損害額認定の根拠として用いることは相当ではない。 さらに,本件捜査報告書では損害額の推計に当たって検討対象とされている8件の工事の内容等は一切不明であるから,具体的根拠に乏しく到底本件工事の損害額算定の資料に供し得るものではない。 原告は,被告が原告に提出した内訳書において一般管理費の額を10. 8パーセントとしていたことを指摘するが,業者が発注者に工事内訳書を提出する際には一般管理費の額を本件要綱の範囲内とすることは当然 の前提であって,被告以外の4社においても本件工事に係る見積書提出の際には実際の一般管理費より低い数字を記載しているから,この点をもって現実に要する一般管理費が11.5パーセントであることの根拠とすることはできない。 (オ) 本件捜査報告書における工事原価算定には誤りがあること被告においては,売上高について,変動費,工場固定費(購買部門や工務部門等の販売費及び一般管理費に含まれない製造関係の共通経費),販売費及び一般管理費並びに営業利益の合計額として管理していたところ,本件捜査報告書における標準工事価格算出に際して用いられた工事原価のうち被告受注工事に関するものには,検察官の誤解によって工場固定費が一切含まれておらず,また,被告以外の一社についても固定費が計上されていないから,本件捜査報告書における工事原価は過小に算定されているのであって,そもそもこれを基に平均損害率を算定することはできない。 なお,本件捜査報告書における8件の工事のうち,被告落札案件2件につき,工事原価に工場固定費を加えるとともに一般管理費を適正な比率(18.6パーセント)に補正した上で,本件捜査報告書の算定方法に従って標準工事価格を算出した場合,8件の工事全体での平均落札率は88. ,工事原価に工場固定費を加えるとともに一般管理費を適正な比率(18.6パーセント)に補正した上で,本件捜査報告書の算定方法に従って標準工事価格を算出した場合,8件の工事全体での平均落札率は88.27パーセントとなり,本件工事の落札率との差は2.95パーセントとなるから,本件における損害額は本件代金の2.95パーセントにとどまる。 原告は,被告における費用の割り振りが不統一である旨主張するが,これは有価証券報告書に係る損益計算書は財務会計の観点から,事業部の損益計算書は管理会計の観点からそれぞれ作成され,管理会計に基づく損益計算書から財務会計に基づく損益計算書を作成する際には科目の一部について組み替えを行っていることから生じるものにすぎない。 (カ) し尿処理施設建設工事の特殊性し尿処理施設建設工事は,公共工事の中でもとりわけ品質の確保が要求されることから,通常の公共工事とは異なり図面仕様ではなく性能仕様での発注がされる。そして,し尿処理施設においても多種多様な処理方式があり,それぞれの処理方式によってその建設工事に要する費用は異なるところ,し尿処理施設の建設を行い得る各プラントメーカーによってそれぞれ得意分野も異なることから,発注者から示された性能に見合う施設の建設を行うことが困難である業者が入札業者の中に存在することが通常であって,最低価額落札方式による入札を実施することにより,指名業者間において当然に競争的な応札価格が形成されるとは考え難く,本件工事に係る損害額の算定においてもかかる事情が斟酌される必要がある。 (キ) 違約金条項について原告は,本件特約や国土交通省が制定した違約金に関する特約条項において請負代金額の10分の1に相当する額を違約金としていることを指摘するが,これらの条項は専ら談合等の違反行 ) 違約金条項について原告は,本件特約や国土交通省が制定した違約金に関する特約条項において請負代金額の10分の1に相当する額を違約金としていることを指摘するが,これらの条項は専ら談合等の違反行為を抑止する目的で規定されるものであって,談合行為により実際に発生する具体的損害とは全く無関係に規定されたものであることからすれば,原告の主張は失当である。 (ク) 弁護士費用について原告は,弁護士費用のうち1000万円が相当因果関係のある損害であると主張しているが,原告訴訟代理人が本件訴訟で提出した証拠の大半は本件住民訴訟を通じて入手した本件刑事事件の確定記録中の書証及び水戸地裁判決に係る事件記録の一部であって,原告訴訟代理人が本件訴訟活動に要した労力が大きいとは到底認められないことからすれば,上記弁護士費用は過大である。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(被告に本件住民訴訟判決の参加的効力が及ぶか)について(1) 地方自治法242条の3第4項は,同法242条の2第1項4号本文の規定による訴訟の裁判が同条7項の訴訟告知を受けた者に対してもその効力を有するときは,当該訴訟の裁判は当該普通地方公共団体と当該訴訟告知を受けた者との間においてもその効力を有するとして,住民訴訟において訴訟告知を受けた怠る事実の相手方に対して民訴法46条所定のいわゆる参加的効力を及ぼすことを定めている。 そして,訴訟告知の被告知人に参加的効力が及ぶためには,被告知人が補助参加をなし得ることが必要であるから(民訴法53条1項及び4項),被告知人が民訴法42条にいう訴訟の結果について利害関係を有する者に当たることを要するところ,被告は本件住民訴訟において洲本市長が敗訴した場合には,地方自治法242条の3に基づき洲本市長から損害賠 被告知人が民訴法42条にいう訴訟の結果について利害関係を有する者に当たることを要するところ,被告は本件住民訴訟において洲本市長が敗訴した場合には,地方自治法242条の3に基づき洲本市長から損害賠償請求を受ける関係にあり,本件住民訴訟の結果について利害関係を有していたといえる。 また,参加的効力は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断のみならず,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断にも及ぶところ(最高裁昭和45年(オ)第166号同年10月22日第一小法廷判決・民集24巻11号1583頁,最高裁平成10年(オ)第512号同14年1月22日第三小法廷判決・裁判集民事205号93頁参照),被告が本件談合を行って原告に対し違法に損害を与えたこと及び被告が賠償すべき損害額は,いずれも本件住民訴訟において判決主文を導き出すために必要な主要事実であるといえる。 したがって,本件住民訴訟において訴訟告知を受けた被告は(前記前提事実(4)ウ),実際に本件住民訴訟に参加していなくとも,参加することができたときに補助参加したものとみなされ,本件住民訴訟におけるこれらの主要事実に係る判断につき参加的効力を受けるのが原則である(民訴法53条4 項)。 (2) しかしながら,洲本市長は,本件住民訴訟において,当初は被告が本件談合をした事実を否認していたものの,平成19年12月21日に行われた第3回口頭弁論期日において,本件住民訴訟の原告らから提出された書証を検討した結果として,従前の主張を撤回し,本件談合の結果,被告が落札者となったことを自白するとともに,被告に対する請求額としては本件代金の10パーセントである2億5410万円が相当である旨主張し,これに基づいて本件住民訴訟判決では本件談合の存在及 結果,被告が落札者となったことを自白するとともに,被告に対する請求額としては本件代金の10パーセントである2億5410万円が相当である旨主張し,これに基づいて本件住民訴訟判決では本件談合の存在及び本件談合の結果原告が2億5410万円の損害を被った事実について争いのない事実として摘示されていること(前記前提事実(4)イ,エ,キ)からすれば,被告が本件住民訴訟において補助参加し,本件談合の事実及び損害額について争ったとしても,洲本市長の主張と抵触するものとして効力を生じなかった可能性が存するものといわざるを得ず,民訴法53条4項,46条2号類推適用によって被告は本件住民訴訟の判決につき参加的効力を受けないというべきである。 原告は,洲本市長は本件住民訴訟において当初は本件談合の事実を否認していたところ,被告に訴訟告知をしたにもかかわらず被告が参加しなかったことから被告が本件談合の事実を認めているものと考え自白に至ったものであって,実際に補助参加したMの関係では自白の撤回をしていることからすれば,被告が補助参加をした上で本件談合の事実や損害額を争った場合にもこれと抵触する主張をしたとは認められない旨主張する。しかしながら,洲本市長が自白に至った理由の一つとして訴訟告知をしたのにもかかわらず被告が補助参加をしなかったことがあるとしても,実際に自白が維持され,当該自白に基づいて本件住民訴訟判決がされている以上,仮に被告が補助参加をして自白と抵触する主張をした場合に洲本市長が自白の撤回を主張したかや自白の撤回が認められたかは不明であるといわざるを得ないことからすれば,原告の主張は採用することができない。また,被告が訴訟告知を受けた のは同年2月9日であるから,被告が本件住民訴訟に参加したものとみなされる時点(同日から必要な準 るを得ないことからすれば,原告の主張は採用することができない。また,被告が訴訟告知を受けた のは同年2月9日であるから,被告が本件住民訴訟に参加したものとみなされる時点(同日から必要な準備期間を経た日に参加することができたと解される。)では,洲本市長は自白していなかったこととなるが,最終的に自白に至っている以上,この点は上記認定を左右しない。 (3) よって,被告は本件住民訴訟判決の参加的効力を受けないから,本件訴訟において本件談合の事実及び損害額を争う主張をすることができる。 2 認定事実前記前提事実に加え,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) し尿処理施設の新設及び更新工事に係る契約締結状況市町村は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律等に基づく自治事務としてその区域内におけるし尿及び浄化槽汚泥の処分を行っているところ,平成11年頃,し尿等の海洋投棄に対する規制が将来的に強化される見通しとなったことから,市町村にとって規制に見合ったし尿処理施設の建設が課題となった。市町村が発注するし尿処理施設の新設及び更新工事についての工事請負契約の締結は,通常,発注の前々年度までに基本計画を策定し,事業着手年度の前年度に整備事業計画策定業務を行うとともに,概算事業費決定の資料とするため,施工能力を有しかつ工事実績のある業者に対し見積設計図書提出依頼を行い,提出された見積書の金額等を参考にして工事の予定価格を決定し,事業着手年度には,これらを踏まえた発注仕様書を作成し,指名業者を選定して,一般競争入札,条件付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札等の方法による入札を行い,落札業者と工事請負契約を締結するという方法で行われていた。(甲C9)(2) し尿処理施設工事業者による談合 札,条件付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札等の方法による入札を行い,落札業者と工事請負契約を締結するという方法で行われていた。(甲C9)(2) し尿処理施設工事業者による談合被告を含むし尿処理施設工事の業者は,遅くとも平成8年頃から,市町村や一部事務組合・広域連合などが競争入札の方法によって発注するくみ取り し尿及び浄化槽汚泥等を処理するし尿処理施設の新設及び更新工事について,談合組織(以下「本件談合組織」という。)を形成していた。本件談合組織においては,時期に応じて構成員の変動はあったものの,各業者が発注者側に対して営業を行い,その結果,最も発注者側の意向を得たと構成員が認めた業者がその工事の受注予定者になるという「汗かきルール」に従って,各社の受注調整担当者による受注調整会議などで受注予定者を決定し,受注予定者が自社の入札額を決定した上,入札に参加する他社の入札額についても決定し,入札日の前日までに他社の受注調整担当者に対して入札価格を連絡するという方法によって談合を行っていた。本件談合組織内部においては,受注を希望する業者が複数あり,受注調整会議においてそれぞれが自社の営業努力を主張し合うような場合であっても,最終的には話し合いで解決することとされ,受注予定者を決定せずに自由競争に委ねることは談合組織の破綻につながりかねないとして認められていなかった。なお,本件各入札業者は,本件入札時点において,いずれも本件談合組織の構成員であった。(甲24,27,28,甲A16,24,38,45,甲B20,21,35,36,49,65,81)(3) 見積調整本件談合組織においては,業者から得た見積金額の平均額を基に決定される予定価格を高く設定させるために,各業者が市町村等の発注者から見積を依頼された場 36,49,65,81)(3) 見積調整本件談合組織においては,業者から得た見積金額の平均額を基に決定される予定価格を高く設定させるために,各業者が市町村等の発注者から見積を依頼された場合,速やかに幹事会社に見積依頼がきたことを告げ,幹事会社から連絡を受けた期限内に参考見積金額の案を送付し,幹事会社において全ての業者から伝達を受けた参考見積金額案を基に各社の見積額を決定し,これを各社に割り振るという方法で見積段階から発注者に提出する参考見積金額を高額に調整するという見積調整を行っていた。なお,参考見積金額については,発注者の設定する予定価格が参考見積金額よりも10パーセント程度低い額とされる傾向にあることから,各社において見積書を作成する際に 最終的な受注金額を想定して逆算し,そこで一定の利益を得られるように適正な見積額にさらに上乗せした金額を幹事会社に提出していた。また,平成15年頃からは,幹事会社において各社から得られた見積額の平均額(この際,著しく高額な金額及び低額な金額は除外した上で平均額を算出する。)にさらに10パーセント程度を上乗せして得られた数値を基準にその上下5パーセント程度の範囲内で数字を割り振ることによって各社の参考見積金額を決定し,各社において当該金額に合わせて見積書の内訳を調整して発注者に提出する作業が行われており,各社は幹事会社から指示を受けた見積額以上の金額で発注者に提出することとされ,指示された額よりも低額で提出することは認められていなかった。さらに,平成14年4月から平成15年9月にかけては,当時本件談合組織に加入していなかったJやKも,発注者が設定する予定価格を高額にし,極端な金額を見積もったことにより指名から外されることを防止する目的で見積調整に協力しており,幹事会社から示され ,当時本件談合組織に加入していなかったJやKも,発注者が設定する予定価格を高額にし,極端な金額を見積もったことにより指名から外されることを防止する目的で見積調整に協力しており,幹事会社から示された見積金額の平均額等を基準に自社の見積金額を決定していた。 (甲32,甲A21,30,37,43,48,甲B28,55,70,85)(4) 談合対象工事に係る関係者の供述等ア公正取引委員会事務総局審査局犯則審査部内閣府事務官が作成した平成18年5月26日付け調査報告書では,市町村等が平成14年度以降平成17年7月までの間に発注したし尿処理施設に係る新設及び更新工事合計47件(番号35,39及び41については,同一の工事に係る入札である。)の入札状況が新設・更新物件入札状況一覧(以下「本件一覧表」という。)としてまとめられているところ,本件一覧表では本件工事は12番の工事として記載されている。なお,本件一覧表のうち,落札率が90パーセントを下回る入札は9件あり,その番号及び落札率は,9番(84. 01パーセント),14番(67.03パーセント),20番(85.23パーセント),23番(59.45パーセント),25番(88.96 パーセント),26番(47.62パーセント),27番(70パーセント),31番(88.13パーセント),41番(51.11パーセント)である。(甲5)イ被告の受注調整担当者であったLは,大阪地方検察庁検察官による取調べにおいて,本件一覧表の案件につき,全て本件談合組織が受注調整の予定としていたし尿処理施設の新設・更新案件に間違いないこと,受注調整がうまく働かなかった案件として9番,14番,20番,23番,26番,27番,41番を挙げ,この7件以外の全ての案件については本件談合組織の構成員で受注調整を 設・更新案件に間違いないこと,受注調整がうまく働かなかった案件として9番,14番,20番,23番,26番,27番,41番を挙げ,この7件以外の全ての案件については本件談合組織の構成員で受注調整を行い,その結果どおりに受注予定者が落札したことを供述した(甲6)。 また,本件入札に参加したF,G,A,D,Cに加え,E,I,Hの各受注調整担当者も,大阪地方検察庁検察官の取調べにおいて,同様の供述をした(甲23,24,30,31,33,34,甲A28,甲B84)。 (5) 本件入札における予定価格の決定過程原告は,本件工事につき,A,C,被告,D,E,K,F(当時の商号はN株式会社),G,J及びIから見積書の提出を受けた上,各費目につき高額及び低額のそれぞれ2順位目までを除いた額の平均値を採用金額とした上,各費目の採用金額を積算するという方法で予定価格26億5280万円(消費税別)を決定した。なお,上記の各業者が提出した見積金額の平均額は,27億2860万円(消費税別)であり,当時本件談合組織に属していなかったK及びJの見積金額を除いた平均額は,27億6075万円(消費税別)である。(甲65ないし75)(6) 公正取引委員会による立入検査後の落札率下落について公正取引委員会事務総局審査局犯則審査部内閣府事務官作成に係る平成18年6月2日付け調査報告書では,市町村等が平成14年度以降平成18年5月31日までの間に発注したし尿処理施設の新設及び更新工事の落札状況 につき,平成14年4月から平成17年8月2日に実施された公正取引委員会による立入検査までの合計48物件についての平均落札率は91.2パーセント((90.42パーセント×40件+95.10パーセント×8件)÷48件)であったのに対し,上記立入検査後の平均落札率は7 会による立入検査までの合計48物件についての平均落札率は91.2パーセント((90.42パーセント×40件+95.10パーセント×8件)÷48件)であったのに対し,上記立入検査後の平均落札率は76.88パーセントに下落した旨が記載されている。なお,同調査報告書では,Iを除き本件談合組織の構成員が入札業者としての指名を受けなかった入札案件は除外されている。(甲21)(7) 被告が原告に提出した資料等における一般管理費の比率ア被告が原告に提出した本件工事に係る平成15年度分の出来高内訳書に記載されている一般管理費の工事原価に対する比率は,約10.9パーセントである(甲58)。 イ被告が原告に提出した本件工事に係る平成16年度分の出来高内訳書に記載されている一般管理費の工事原価に対する比率は,約10.8パーセントである(甲59)。 ウ被告が原告に代わって作成した平成16年度廃棄物処理施設整備費国庫補助金実績報告書(し尿・浄化槽汚泥高度処理施設)では,一般管理費の工事原価に対する比率は,約10.9パーセント又は10.8パーセントとして記載されているところ,一般管理費の「積算根拠」欄には「11. 5%以下」と記載されている(甲60,弁論の全趣旨)。 (8) 国土交通省による違約金に関する特約条項の定め国土交通省が制定した,平成15年6月1日以降に入札手続を開始する工事の請負契約に適用される「違約金に関する特約条項」では,請負者が独占禁止法違反を犯した場合における違約金の額を請負代金額の10分の1に相当する額としている(甲62の1)。 3 争点(2)(本件談合の有無)について前記認定事実(1)ないし(5)によれば,し尿処理施設の新設及び更新工事に関 しては,遅くとも平成8年頃から全国的な規模で談合組織が形成され,本 3 争点(2)(本件談合の有無)について前記認定事実(1)ないし(5)によれば,し尿処理施設の新設及び更新工事に関 しては,遅くとも平成8年頃から全国的な規模で談合組織が形成され,本件談合組織に加入している各社の受注調整担当者が受注調整会議を開いて受注予定者を決定しこれに基づいて各社が入札を行っていたこと,本件工事における予定価格の決定も各業者に提出させた見積書に基づき決定する方法によっており,本件入札に参加した7社(本件各入札業者)はいずれも本件談合組織に加わっていたこと,本件入札においても談合が成立したことを被告の受注調整担当者であったLを含む本件各担当者のうち8名が認めていること,本件一覧表において受注調整に基づく談合が行われた工事については番号25及び31の2件を除いていずれも90パーセントを超える落札率となっており,本件入札における落札率も91.22パーセントであったことがそれぞれ認められるところ,これらによれば,本件各入札業者の受注調整担当者の間で,本件談合組織の取り決めに従って,被告を受注予定者とすること及び被告以外の本件各入札業者は被告の入札額よりも高い金額で入札することが合意されていたものと認められ,これに基づいて本件各入札業者が入札した結果,被告が本件工事を落札したものと認めるのが相当である。 被告は,本件入札は公正取引委員会の認定した談合行為の開始時期である平成16年8月10日より前に行われたものであり,本件刑事事件においても本件入札は起訴の対象とされていないことや,本件入札に関しても受注調整が行われていたとするLの供述は極めて抽象的であることから,本件談合の事実は認められないと主張する。しかしながら,同日以前にもし尿処理施設の新設及び更新工事に関する談合が行われていたこと及び本件入札においても いたとするLの供述は極めて抽象的であることから,本件談合の事実は認められないと主張する。しかしながら,同日以前にもし尿処理施設の新設及び更新工事に関する談合が行われていたこと及び本件入札においても談合が行われたと認定できることは上記のとおりであるし,Lは大阪地方検察庁検察官から本件一覧表を示された上で,受注調整が機能しなかった案件について具体的に供述しており,かかる供述は本件談合組織の他の受注調整担当者7名の供述とも一致していることからすれば,本件入札においても受注調整に基づき受注予定者が決定されたとのLの供述は信用できるから,被告の主張は理由がな い。 よって,被告は,原告に対し,本件談合を行い,これに基づき本件工事を落札し本件契約を締結したという不法行為によって生じた損害を賠償する責めを負う。 4 争点(3)(本件談合によって原告に発生した損害の数額)について(1) 本件特約4項準用の可否について原告は,本件談合は実体法上刑法96条の3に該当する行為であることから,本件特約4項1号が準用されるべきであると主張する。しかしながら,本件特約4項は,被告又は被告が使用人として使用していた者が本件契約の入札に関して同項各号のいずれかに該当したときは,被告は請負代金額の10分の1に相当する額を賠償金として支払うこととし,同項1号では刑法96条の3による刑が確定したときと定めているところ,本件入札は本件刑事事件の対象に含まれておらず,被告が本件入札に関し同条による刑に処されたとの事実はないから,本件特約4項が適用される余地はない。また,本件特約4項は,刑事事件における判決や公正取引委員会による審決又は課徴金納付命令が確定したときを賠償金の発生事由としており,入札に関し談合行為がされたこと自体を発生事由としていないことに照 また,本件特約4項は,刑事事件における判決や公正取引委員会による審決又は課徴金納付命令が確定したときを賠償金の発生事由としており,入札に関し談合行為がされたこと自体を発生事由としていないことに照らせば,本件入札が実体法上刑法96条の3に該当する行為であるとしても,そのことをもって本件特約4項が準用されると解することはできないというべきである。 したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。 (2) 民訴法248条による損害額の認定ア被告は,本件入札に関し本件談合を行い,本件談合で合意された価格に基づき本件契約を締結したことによって,原告に対して,公正な競争の下に形成されたであろう想定落札価格に基づく契約金額と現実に締結された本件契約の契約金額(本件代金)との差額相当額の損害を与えたものといえる。 もっとも,談合がなければ公正な自由競争の下に形成されたであろう想定落札価格は,談合の結果,現実には形成されなかった価格であり,しかもこの想定落札価格は,当該工事の種類,規模及び特殊性,地域の特性,入札参加者の数,各業者の受注意欲及び財政状況,入札当時の経済情勢等の多種多様な要因が複雑に絡み合って形成されるため,証拠に基づいて具体的に認定することは極めて困難である。そうすると,本件においては,原告に損害が生じたことは認められるものの,損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときに該当するといえるから,民訴法248条を適用して,相当な損害額を認定するのが相当である。 イ以上を前提に,本件における相当な損害額について検討するに,本件談合組織では,受注調整会議なる会合を開催して「汗かきルール」に基づき受注予定者を決定し,受注を希望する業者が複数おり当該ルールによっては明確に受注予定者が決まらないような場 ついて検討するに,本件談合組織では,受注調整会議なる会合を開催して「汗かきルール」に基づき受注予定者を決定し,受注を希望する業者が複数おり当該ルールによっては明確に受注予定者が決まらないような場合にも最終的には話し合いによって受注予定者を決定しており,公正な競争を排除してほぼ予定価格の90パーセントを超える落札率による落札を繰り返していたこと(前記認定事実(2)(4))に加え,発注者である市町村等から予定価格を決定するための参考となる見積書の提出を求められた際,各業者において適正な原価及び利潤に一定額の利益を上乗せして作成した見積書を提出し,これを受け取った幹事会社が各見積書の平均値にさらに10パーセント程度の上乗せをした額を基準として発注者に提出する見積書の金額を決定し,各社に当該金額以上での見積書の提出を指示するという見積調整を行っており,各社には幹事会社の指示よりも低い金額による見積書の提出は認められていなかったこと(前記認定事実(3))が認められるところ,これらの事実によれば,本件談合組織による受注調整に基づいて落札された工事については,予定価格の決定及び入札の二段階において公正な競争による価格形成が阻害されていたということができる。次に,本件入札についてこれをみるに, 本件入札における予定価格は,本件談合組織の構成員のほか当時は本件談合組織に属していなかったK及びJから提出された見積書の金額に基づき決定されているところ(前記認定事実(5)),当時は本件談合組織に属していなかったK及びJも当時から見積調整には協力していたこと(前記認定事実(3))によれば,本件入札による予定価格も本件談合組織による見積調整の影響下に決定されたものと認めることができる。そして,本件入札における予定価格26億5280万円(消費税別)は と(前記認定事実(3))によれば,本件入札による予定価格も本件談合組織による見積調整の影響下に決定されたものと認めることができる。そして,本件入札における予定価格26億5280万円(消費税別)は,各業者が提出した見積金額の平均額27億2860万円(消費税別)の約97パーセント,K及びJの見積金額を除いた平均額27億6075万円(消費税別)の約96パーセントにそれぞれ相当し,見積調整において見積金額決定の基準とされた金額を4パーセント程度下回るにすぎず,本件談合組織に属する各業者が適正な見積額に一定の利益を上乗せして(なお,幹事会社に提出する見積書における金額については,原価につき実際よりも20パーセントないし25パーセント高額に積算することが多かったとか,工事費用として算定した金額に10パーセントないし15パーセントの利益を上乗せして算出していたとか,工事原価に相当の粗利を乗せて算出した金額よりもさらに3割程度高くしていたなどの供述がされている(甲A30,37,48)。)作成した見積金額にさらに一定の金額を上乗せした額に相当するものということができるところ,本件入札における落札価格は予定価格の約91.22パーセントに相当する金額となっている(前記前提事実(2)ア)。 このほか,正常な自由競争の下では入札業者が落札を目指して可能な範囲で低く抑えた金額による入札を行うことにより,落札価格は予定価格を相当程度下回る額となるのが自然であるところ,本件談合組織は遅くとも平成8年頃から談合を繰り返し行っており,時期によって差異はあるものの,し尿処理施設の新設及び更新工事に関する受注は本件談合組織の構成 員でほぼ独占される状況にあり,平成14年4月以降平成17年7月までの間に全国の市町村等で実施されたし尿処理施設の新設及び更新工 尿処理施設の新設及び更新工事に関する受注は本件談合組織の構成 員でほぼ独占される状況にあり,平成14年4月以降平成17年7月までの間に全国の市町村等で実施されたし尿処理施設の新設及び更新工事47件のうち40件は受注調整に基づき本件談合組織の構成員が受注している(前記認定事実(2)(4))ように,し尿処理施設の新設及び更新工事に関しては長期間にわたって自由競争の原理が働いておらず,正常な価格形成が行われていなかったと考えられること,同期間において談合破りや叩き合いがされたこと等によって受注調整が働かなかった案件(本件一覧表の9番,14番,20番,23番,26番,27番及び41番)の平均落札率は66.35パーセントであり,中には落札率が50パーセントを下回った案件も存在すること(前記認定事実(4)),平成17年8月2日に実施された公正取引委員会による立入検査の前後で,し尿処理施設の新設及び更新工事に関する平均落札率は91.2パーセントから76.88パーセントに下落したと報告されていること(前記認定事実(6))からすれば,本件入札につき自由競争に基づく公正な価格形成がされた場合の落札価格は,本件談合に基づく現実の落札価格よりも10パーセント以上低いものであったと推認することには合理性があるといえる。これに加え,本件特約4項では刑法96条の3や198条による刑事判決が確定した場合や独占禁止法違反の審決又は課徴金納付命令が確定した場合の賠償額の予定として請負代金額の10パーセントに相当する金額と定められていること(前記前提事実(2)イ。なお,かかる定めは,国土交通省が制定した平成15年6月1日以降に入札手続を開始する工事の請負契約に適用される「違約金に関する特約条項」の定めとも合致している(前記認定事実(8))。)等,本件に現れた ,かかる定めは,国土交通省が制定した平成15年6月1日以降に入札手続を開始する工事の請負契約に適用される「違約金に関する特約条項」の定めとも合致している(前記認定事実(8))。)等,本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,想定落札価格については現実に存在する価格ではなく,あくまでも想定に基づくものであってある程度謙抑的に判断すべき面があることを踏まえても,想定落札価格に基づく契約金額と本件談合により現実に締結された本件契約の契約金額(本件代金) との差額として原告が被った損害は,本件代金の10パーセント相当額である2億5410万円と認定するのが相当である。 ウ被告は,品質確保法で公共工事の品質確保の実施が義務付けられていることや,国土交通省が予定価格の85パーセントを下回る落札率の公共工事を低価格入札の調査対象としていること等を指摘し,本件入札に係る想定落札価格についても予定価格の85パーセント以下と算定されるべきではない旨主張する。 しかしながら,本件入札に係る想定落札価格はあくまでも本件入札当時の状況に照らして判断されるものであるところ,品質確保法が施行されたのは平成17年4月1日であり,また,原告において予定価格の制限の範囲内で調査基準価格を下回る最低の価格をもって申込みをした者を落札者とせず予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした他の者のうち調査基準価格以上の最低の価格をもって申込みをした者を落札者とする低入札価格調査制度が導入されたのは平成18年2月11日であって(乙11),いずれも本件入札が行われた当時には制定されていなかったものであるから,この点に関する被告の主張は前提を欠き失当である。この点を措くとしても,上記イで認定した諸点に鑑みれば,本件工事において予定価格の91.22パーセントから本 には制定されていなかったものであるから,この点に関する被告の主張は前提を欠き失当である。この点を措くとしても,上記イで認定した諸点に鑑みれば,本件工事において予定価格の91.22パーセントから本件代金の10パーセント相当額を下回る価格が適切な工事原価を下回り,工事品質に重大な問題を生じさせるような価格であるとは認められない。 また,被告は,し尿処理施設の新設及び更新工事においては,発注者から示された性能に見合う施設の建設を行うことが困難である業者が入札業者の中に存在することが通常であって,最低価額落札方式を採用することにより指名業者間において当然に競争的な応札価格が形成されるとは考え難い旨主張する。しかしながら,実際に工事を受注する意欲や能力を有する業者が限られているとしても,複数の業者が存在する場合には受注を巡 って業者間で競争が行われ,その中で公正な価格が形成されるのが通常であるところ,し尿処理施設の新設及び更新工事に関しては,本件入札が行われた平成15年6月当時において,その規模や能力に差異はあるとしても,本件談合組織に属していた業者やそのほかの業者を併せて15社程度の受注能力を有する業者が存在したものと認められるから(甲28,甲A24,33,甲B21,36,66,82),本件談合が行われていなければ公正な競争によって本件入札における落札金額も実際の落札金額よりも相当程度下落したものと考えられる上,実際に受注調整が働かなかった事案では価格競争が行われて落札業者が決定されていること(前記認定事実(4))からすれば,この点に関する被告の主張は理由がない。 エそのほか,被告は,原告に対して提出した平成15年度及び平成16年度の出来高内訳書や平成16年度廃棄物処理施設整備費国庫補助金実績報告書(し尿・浄化槽汚泥高度 に関する被告の主張は理由がない。 エそのほか,被告は,原告に対して提出した平成15年度及び平成16年度の出来高内訳書や平成16年度廃棄物処理施設整備費国庫補助金実績報告書(し尿・浄化槽汚泥高度処理施設)において一般管理費の比率を約10.8パーセント又は約10.9パーセントとして記載しているところ(前記認定事実(7)),被告における利益を除いた一般管理費の実際の比率は売上原価比で23.7パーセントであり,他社を含めた5社における販売費及び一般管理費の売上原価に対する比率の平均値も18.6パーセントであるから,上記の出来高内訳書や実績報告書に記載された一般管理費の比率は実際の数値とは乖離している旨主張する。 しかしながら,そもそも被告が一般管理費比率の算定根拠として挙げる平成13年度ないし平成17年度における各損益計算書は,被告全社の業績に基づいて作成されたものであるし(乙23),し尿処理事業に関するものとして提出した報告書(乙24)については,その基礎資料が明らかではない。また,仮にこれらの数値が正確なものであるとしても,上記認定のとおり,被告はこれらの計算書類等の対象年度において本件談合組織に所属し,し尿処理施設の新設及び更新工事に係る談合を繰り返していた のであって,決算書類における数値も談合の存在を前提として算定されたものということができるから,そこに記載された数値が公正な競争が行われていた場合にも妥当するものとは認められない。 さらに,被告は,被告においては売上高を変動費,工場固定費,販売費及び一般管理費並びに営業利益の合計額として管理していたなどと主張するが,本件入札においてはこれらの個別の費目を含めた全体の落札価格につき見積調整及び受注調整の二段階における価格の水増しが行われており,総額として想定落 業利益の合計額として管理していたなどと主張するが,本件入札においてはこれらの個別の費目を含めた全体の落札価格につき見積調整及び受注調整の二段階における価格の水増しが行われており,総額として想定落札価格よりも10パーセント以上の高額で落札されたものと認めるのが相当であることは上記イで認定説示したとおりである。 よって,これらの点に関する被告の主張は上記認定を左右しない。 (3) 弁護士費用について本件事案の内容,認容額,審理の経過,その他本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,被告の不法行為(本件談合並びにこれに基づく落札及び本件契約の締結)と相当因果関係のある弁護士費用として1000万円を認めるのが相当である。 被告は,原告訴訟代理人が本件訴訟において提出した書証の大半は本件住民訴訟を通じて入手した本件刑事事件に関するものや水戸地裁判決に係る事件記録の一部であることから,原告訴訟代理人が本件訴訟活動に要した労力が大きいとはいえない旨主張するが,上記(2)で認定した損害額2億5410万円の約4パーセントにとどまる1000万円が被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用として過大であるとはいえない。 (4) 小括よって,本件入札について原告が被った損害額は2億6410万円であり,被告は原告に対し,不法行為に基づき同額の損害賠償義務を負うというべきである。 5 結論 以上によれば,原告の請求のうち,被告に対して2億6410万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成17年5月13日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由があるからこれを認容することとし(したがって,選択的請求に係る第1請求の2については判断を要しない。),訴訟費用の 払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由があるからこれを認容することとし(したがって,選択的請求に係る第1請求の2については判断を要しない。),訴訟費用の負担について民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 裁判官尾河吉久 裁判官長橋正憲
▼ クリックして全文を表示