【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を横浜地方裁判所に差戻す。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人の控訴趣意書及び同補充書のとおりであり、これに対 する答
主 文 原判決を破棄する。 本件を横浜地方裁判所に差戻す。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人の控訴趣意書及び同補充書のとおりであり、これに対 する答弁は、検察官の答弁書のとおりである。 控訴趣意中、訴訟手続の法令違反、法令解釈適用の誤りの主張について 論旨は、原審は結審直前の第六回公判において、公訴事実中、被告人が原審相被 告人Aと共謀の上、同女の両親であるB、C夫妻を殺害して金品を強取しょうと企 て、とあった部分を、右両名を殺害し、同人ら所有の金品を強取するとともに、右 両名に帰属する全財産につき、ともこへの相続を開始させて財産上不法の利益を得 ようと企て、と改める訴因変更を許した上、右変更後の訴因につき有罪を認定して いるが、この訴因変更は時機に遅れ、被告人の防禦権を不当に奪う違法があるばか りでなく、相続による財産の承継を刑法二三六条二項にいう財産上不法の利益に当 たるとし、付加された訴因を含む本件所為に強盗殺人未遂の法条を適用した原判決 には、法令の解釈適用の誤りがある、というのである。 記録により明らかな審理の経過に徴すると、所論訴因変更が被告人の防禦権を不 当に奪うものとはいえないが、原判決が、相続による財産の承継を右条項にいう財 産上の利益に当たると解して訴因変更の上、その点を含めて事実を認定判示し、そ の全体を強盗殺人未遂罪として処断しているのは是認できない。 <要旨>刑法二三六条二項の強盗は、暴行、脅迫によって被害者の反抗を抑圧した 上、その意に反して不法に財産上</要旨>の利益を得ることを、同条一項所定の財物 の強取に匹敵すると評価し、これと同様に処罰しようとするものであるから、その 対象となる財産上の利益は、財物の場合と同様、反抗を抑圧されていない状態にお いて被害者が任意に処分できるものであ 所定の財物 の強取に匹敵すると評価し、これと同様に処罰しようとするものであるから、その 対象となる財産上の利益は、財物の場合と同様、反抗を抑圧されていない状態にお いて被害者が任意に処分できるものであることを要すると解すべきところ、現行法 上、相続の開始による財産の承継は、生前の意志に基づく遺贈あるいは死因贈与等 とも異なり、人の死亡を唯一の原因として発生するもので、その間任意の処分の観 念を容れる余地がないから、同条二項にいう財産上の利益には当たらない。それ 故、相続人となるべき者が自己のため相続を開始させる意図のもとに被相続人を殺 害した場合であっても、強盗殺人罪に問擬するのではなく、単純な殺人罪をもって 論ずべきであり、右の意図は極めて悪質な動機として情状の上で考慮すれば足りる ものである。 原審は、相続により財産権が移転する面のみを重く見すぎた結果、刑法二三六条 二項の解釈を誤り、そのため、動機に過ぎない事実を同条項の犯罪構成要件を充足 する事実として訴因に付加することを許可した上、この点を含めて事実を認定判示 し、その全部につき強盗殺人未遂の法条を適用処断したのであって、付加された訴 因の重大性に鑑み、右の各違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。 論旨は理由があり、この点において原判決は破棄を免れない。 よって、刑訴法三九七条一項、三七九条、三八〇条により原判決を破棄し、同法 四〇〇条本文により本件を横浜地方裁判所に差戻すこととして、主文のとおり判決 する。 (裁判長裁判官 石田穰一 裁判官 田尾勇 裁判官 阿蘇成人)
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