主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙の小選挙区選出議員選挙につき、青森県第1区から第3区まで、岩手県第1区から第3区まで、宮城県第1区から第5区まで、山形県第1区から第3区まで及び福島県第1区から第4区までにおける選挙をいずれも無効とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について、別紙1(原告目録)のとおり、青森県第1区から第3区まで、岩手県第1区から第3区まで、宮城県第1区から第5区まで、山形県第1区から第3区まで及び福島県第1区から第4区まで(以下、併せて「本件各 選挙区」という。)の選挙人である原告らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」といい、本件選挙における小選挙区選挙を「本件小選挙区選挙」という。)の選挙区割りを定める公職選挙法13条1項、別表第1は、選挙権(投票価値)の平等を保障する憲法に違反し無効であるから、これに基づき行われた本件選挙の本件各選挙区における選挙も無効であるなどと主 張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実等(1) 令和6年10月27日、本件選挙が行われた。 原告らは、それぞれ、別紙1(原告目録)の原告名下に記載した各選挙区の選挙人である。 (2)ア本件選挙当時、衆議院議員の定数は465人であり、そのうち289人 が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員である(公職選挙法4条1項)。小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1 が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員である(公職選挙法4条1項)。小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、後記の改正の前後を通じて、これらの規定を併せて「区割規定」という。)、比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。) については、全国に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされている(同条2項、別表第2)。総選挙においては、小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い、投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条、36条)。 イ衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下、後記の改正の前後を通じて 「区画審設置法」という。)2条は、衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案(以下、単に「改定案」という。)を作成して内閣総理大臣に勧告するものと規定している。 また、平成28年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。) による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、①1項において、平成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査(統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査をいう。以下同じ。)の結果による人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。以下、特 に記載のない限り同じ。)が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる簡易国 に記載のない限り同じ。)が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる簡易国勢調査(同法5条2項ただし書の規定により大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査をいう。以下同じ。)の結果による各 選挙区の日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除 して得た数が2以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを行うものと規定する。 そして、新区画審設置法3条は、改定案の作成の基準(以下「区割基準」という。)について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないも ので除して得た数が2以上とならないようにすることとし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、②2項において、同法4条1項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県の人口を小選挙区基準除数(その除数で各都道府県の人口を除して得 た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)の合計数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)とすると規定し(アダムズ方式)、③3項において、同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、 各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しないものと規定する(以下、この区割基準を含む上記各規定による選挙区の て、同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、 各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しないものと規定する(以下、この区割基準を含む上記各規定による選挙区の改定の仕組みを「新区割制度」という。)。 ウなお、新区画審設置法8条は、区画審は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、行政機関及び地方公共団体の長に対して、資 料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる旨規定する。 また、平成28年改正法の附則2条は、①区画審は、新区画審設置法4条の規定にかかわらず、平成27年の国勢調査の結果に基づく同法2条の規定による改定案の作成及び勧告を行うものとし(1項。以下、各文末尾 に括弧内で記載した項番号等は、同附則2条のものである。)、②同改定 案の作成に当たっては、同法3条の規定にかかわらず、各都道府県の区域内の選挙区の数は、次の各号に掲げる都道府県の区分に応じ、当該各号に定める数とし(2項)、(a)289人を選挙区選出議員の定数とみなし、平成27年の国勢調査を同法4条1項の国勢調査とみなして同法3条2項の規定の例により得られる選挙区の数(以下「新方式小選挙区数」という。) が、平成28年改正法2条の規定による改正前の公職選挙法別表第1における都道府県の区域内の選挙区の数(以下「改正前小選挙区定数」という。)より少ない都道府県のうち、当該都道府県の平成27年国勢調査人口(平成27年の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。以下同じ。)を新方式小選挙区定数で除して得た数が最も少ない都道府県から順次その順 位を付した場合における第1順位から第6順位までに該当する都道府県は、新方式小選挙区定数(アダムズ方式)とし(同項1号)、(b)それ以 挙区定数で除して得た数が最も少ない都道府県から順次その順 位を付した場合における第1順位から第6順位までに該当する都道府県は、新方式小選挙区定数(アダムズ方式)とし(同項1号)、(b)それ以外の都道府県は、改正前小選挙区定数とし(同項2号)、③上記改定案の作成は、新区画審設置法3条の規定にかかわらず、次に掲げる基準によって行わなければならないとし(3項)、その基準として、(a)各小選挙区 の人口に関し、(i)各選挙区の平成27年国勢調査人口が、同国勢調査人口の最も少ない都道府県の区域内における同国勢調査人口の最も少ない選挙区の同国勢調査人口以上であって、かつ、当該平成27年国勢調査人口の2倍未満であること、(ii)各選挙区の平成32年見込人口(平成27年国勢調査人口に、同国勢調査人口を平成22年国勢調査人口(平成 22年の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。)で除して得た数を乗じて得た数をいう。以下同じ。)が、平成32年見込人口の最も少ない都道府県の区域内における同見込人口の最も少ない小選挙区の同見込人口以上であって、かつ、当該平成32年見込人口の2倍未満であることを基本とすることとし(以上、同項1号イ、ロ)、④上記改定案の作成は、 平成28年改正法による改正前の公職選挙法別表第1に掲げる選挙区のう ち、次に掲げるものについて行うことを基本とし、この場合において、当該都道府県の区域内の各選挙区の平成27年国勢調査人口及び平成32年見込人口の均衡を図り(イに掲げる小選挙区の改定案の作成の場合に限る。)、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととし(同項2号柱書)、改定案を作成する選挙区として、(a)前号イ及びロ の都道府県の区域内の小選挙区(同号イ)、(b)前項第1号に 行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととし(同項2号柱書)、改定案を作成する選挙区として、(a)前号イ及びロ の都道府県の区域内の小選挙区(同号イ)、(b)前項第1号に掲げる都道府県の区域内の小選挙区(同号ロ)、(c)前号の基準に適合しない小選挙区(同号ハ)、(d)ハに掲げる小選挙区を前号の基準に適合させるために必要な範囲で行う改定に伴い改定すべきこととなる小選挙区(同号ニ)とする旨規定する。 (3)ア本件小選挙区選挙は、公職選挙法の一部を改正する法律(令和4年法律第89号。以下「令和4年改正法」という。)による改正後の公職選挙法13条1項及び別表第1の定める選挙区割り(以下、上記改正後の同法13条1項及び別表第1を併せて「本件区割規定」といい、本件区割規定の定める選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)に従って行われた。 イ本件選挙区割りの下では、令和2年10月1日を調査時とする大規模国勢調査(以下「令和2年大規模国勢調査」という。)による日本国民の人口を基準とした場合の各都道府県間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対1.697(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)、選挙区間の人口の最大較差は人口の最も少ない選挙区(鳥取県第2区)と最も 多い選挙区(福岡県第2区)との間の1対1.999であり、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区はなかった。 また、本件選挙当日において、選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数が最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(北海道第3区)との間の1対2.059であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較 差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区であった。 なお、本件選挙当日において、本件各選挙区における 第3区)との間の1対2.059であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較 差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区であった。 なお、本件選挙当日において、本件各選挙区における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数が最も少ない選挙区を1とした場合、青森県第1区ないし第3区については、順に1.466(第1区)、1.679(第2区)、1.485(第3区)、岩手県第1区ないし第3区については、順に1.285(第1区)、1.561(第2区)、1.627(第3区)、 宮城県第1区ないし第5区については、順に1.998(第1区)、2. 028(第2区)、1.242(第3区)、1.707(第4区)、1. 509(第5区)、山形県第1区ないし第3区については、順に1.322(第1区)、1.345(第2区)、1.227(第3区)、福島県第1区ないし第4区については、順に1.697(第1区)、1.890(第 2区)、1.447(第3区)、1.772(第4区)であった。(乙2、3、28の2、同29の1・2) 3 争点(1) 本件選挙区割りが違憲状態に至っているか否か(争点1)(2) 本件区割規定は憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったとし て憲法の規定に違反するに至っているか否か(争点2) 4 当事者の主張(1) 争点1(本件選挙区割りが違憲状態に至っているか否か)について(原告らの主張)ア憲法56条2項、1条及び前文第1項第1文後段、前文第1項第1文前 段並びに43条1項は、できる限りの人口比例選挙を要求するものである。 人口比例選挙は、実務上、合理的に実施可能な限りでの人口比例選挙であれば足りるとされているが、本件選挙当時において、選挙区間の選挙人数の較差は、最も多い北海道第3区の 例選挙を要求するものである。 人口比例選挙は、実務上、合理的に実施可能な限りでの人口比例選挙であれば足りるとされているが、本件選挙当時において、選挙区間の選挙人数の較差は、最も多い北海道第3区の46万1457人と最も少ない鳥取県第1区の22万4060人との間で23万7397人に上り、諸外国と 比較しても桁違いに多く、合理性があるとはいえない。 イ本件選挙区割り及びこれに基づく本件選挙は、新区画審設置法3条1項、4条2項に違反する。 新区画審設置法3条1項及び4条2項によれば、区画審の作成した令和4年6月16日付けの改定案(以下「本件区割改定案」という。)は、その作成日から、令和7年に行われる簡易国勢調査までの期間を通じ、選挙 区間の選挙人数ないし人口の最大較差が2倍未満となるようにすることが求められているというべきである(平成28年改正法附則2条3項1号ロ参照)。 国立社会保障・人口問題研究所が公表した日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年統計)によれば、令和2年から令和22年にかけて東 京都を除く46道府県で人口が一貫して減少するなどとされている。本件選挙区割りによる選挙区間の人口の最大較差は、令和2年大規模国勢調査の結果によると1対1.999(鳥取県第2区と福岡県第2区)であるが、上記の統計を踏まえれば、以後、令和22年までの間、選挙区間の選挙人数の最大較差は2倍以上であり続けることが合理的に推察される。現に、 区画審が本件区割改定案を作成して内閣総理大臣に勧告した日に近接する令和4年1月時点において、住民基本台帳上の人口によると、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.034であって、これは上記のような新区画審設置法3条1項、4条2項の規範に違反するものであり、本件区割改定案と同 時点において、住民基本台帳上の人口によると、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.034であって、これは上記のような新区画審設置法3条1項、4条2項の規範に違反するものであり、本件区割改定案と同内容の本件区割規定も上記各規定に違反する。 ウ本件選挙区割りは、最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)及び最高裁令和4年(行ツ)第130号同5年1月25日大法廷判決・民集77巻1号1頁(以下「令和5年大法廷判決」という。)等の示す判断基準に照らし、違憲状態にある。 平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決は、平成29年10月2 2日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)又は令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)について、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができると評価して、上記各選挙当時の選挙区割りは違憲状態ではない旨判示した。これは、平 成29年選挙当時における選挙区間の選挙人数の最大較差が2倍未満の1対1.979であったことを踏まえたものであって、上記各大法廷判決は、選挙当時における選挙区間の選挙人数の最大較差を2倍未満とすることが新区画審設置法3条1項の趣旨であると判断したものと解される。しかし、前記イのとおり、本件選挙当時、選挙区間の選挙人数の最大較差は2倍以 上となっており、このことからすると、平成29年選挙当時、同項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていなかったということになる。したがって、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決等の判示に照らし、本件選挙区割りは違憲状態にあるとい 29年選挙当時、同項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていなかったということになる。したがって、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決等の判示に照らし、本件選挙区割りは違憲状態にあるといえる。 (被告らの主張) ア新区割制度は、選挙制度の安定性も踏まえ、選挙区割りの改定は、原則10年単位、必要に応じて5年単位で行い、較差が拡大したとしても、改定の際に2倍未満に是正がされることになるものであって、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において、投票価値の平等の要請を調和的に実現するとともに、これを安定的に継続すること のできる制度として合理性を有するものといえる。 新区割制度に基づき、令和4年改正法による改正後の公職選挙法において定められた本件選挙区割りの下では、本件選挙当時の選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.059となり、較差が2倍以上となっていた選挙区が10選挙区存在したという事情はあるものの、かかる較差の拡大は、 自然的な人口異動のほかにその要因となる事由は見当たらず、これが憲法 の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情も認められない。 したがって、本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできない。 イ原告らは、新区画審設置法3条1項、4条2項が、本件区割改定案につ いて、令和7年に行われる簡易国勢調査までの期間を通じ、選挙区間の選挙人数ないし人口の最大較差が2倍以上とならないようにすることを求めていると主張する。 しかし、上記各条項は将来の人口動態について考慮しなければならないことについて何ら規定していない。平成28年改正法附則2条3項1号ロ は、新区割制度による することを求めていると主張する。 しかし、上記各条項は将来の人口動態について考慮しなければならないことについて何ら規定していない。平成28年改正法附則2条3項1号ロ は、新区割制度による選挙区割りの改定案の作成が令和2年大規模国勢調査の結果に基づくものからとされ、平成27年に行われた簡易国勢調査(以下「平成27年簡易国勢調査」という。)の結果に基づく選挙区割りの改定案の作成が、選挙区間の較差拡大の要因とされたいわゆる1人別枠方式が完全に解消されることとなる新区割制度導入前の緊急是正措置として行 われることとなることも考慮し、選挙区間の較差について特に配慮し、これを補完する趣旨で規定されたものである。したがって、原告らの上記主張は理由がない。 (2) 争点2(本件区割規定は憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったとして憲法の規定に違反するに至っているか否か)について (原告らの主張)令和5年1月1日時点における住民基本台帳上の人口によると、本件選挙区割りによる選挙区間の選挙人数の最大較差は、1対2.054である。しかし、国会は、令和4年改正法の施行後、本件選挙の施行日まで、新区画審設置法3条1項、4条2項の要求する選挙区間の選挙人数の最大較差を2倍 未満とするための取り組みを具体的に行っていない。したがって、本件では、 憲法上要求される合理的期間は既に徒過しているというべきである。 (被告らの主張)本件選挙は、令和4年改正法による改正前の区割規定の定める選挙区割りについて、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものとはいえないと判示した令和5年大法廷判決の後に初めて行われた衆議院議員総選挙 である。しかも、令和5年大法廷判決において合理性が認められた新区割制度に基 値の平等の要求に反する状態に至ったものとはいえないと判示した令和5年大法廷判決の後に初めて行われた衆議院議員総選挙 である。しかも、令和5年大法廷判決において合理性が認められた新区割制度に基づき、令和4年改正法による改正により本件区割規定が定められた。 これらのことを踏まえれば、仮に、本件区割規定の定める本件選挙区割りが違憲状態に至っているとしても、本件選挙区割りについて憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 (1) 衆議院議員の選挙制度は、平成6年の公職選挙法の一部を改正する法律(平 成6年法律第2号)並びに同法律の一部を改正する平成6年法律第10号及び同第104号により、従来の中選挙区単記投票制に代えて小選挙区比例代表並立制が導入された。 (2) 平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法(以下「旧区画審設置法」という。)4条は、改定案の 勧告について、①1項において、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは、これを行うことができると規定していた。そして、旧区画審設置法3条は、区割基準について、①1項におい て、改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、 その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して 選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、 その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、②2項において、改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下、このことを「1人別枠方式」とい う。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると規定していた(以下、この区割基準を「旧区割基準」という。)。 平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)は、平成24年改正法による改正前の区割規定(以下「旧区割規 定」という。)の定める選挙区割りの下で行われたものであるところ、同日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった。 平成21年選挙につき、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3 月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、旧区画審設置法3条1項は投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方、同選挙当時において、選挙区間の投票価値の較差が拡大していたのは、1人別枠方式がその主要な要因となっていたことは明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定 数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は、既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び同基準 少ない地方における定 数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は、既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び同基準に従って改定された旧区割規定の定める選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。そして、平成23年大法廷判決は、この状態につき憲法上要求される 合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割基準を定めた 規定及び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に、できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し、旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 (3) 平成23年大法廷判決を受けて、平成24年11月16日、旧区画審設置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減の措置(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の選挙区数を1ずつ減ずる措置をいう。)を内容とする平成24年改正法が成立したが、同日に衆議院が解散されたため、同年12月16日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成 24年選挙」という。)は平成21年選挙と同じく旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は、同選挙当時において旧区割規定 の定める選挙区割りは平成21年選挙当時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、憲法 8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は、同選挙当時において旧区割規定 の定める選挙区割りは平成21年選挙当時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会においては今後も平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条(旧区画審設置法3条1項と 同内容の規定)の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 (4) 平成24年改正法の附則の規定に基づく区画審の勧告を受けて、平成25年6月24日、0増5減の措置を前提に、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改定することを内容と する平成25年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)が成立 した。平成25年改正法による改正後の平成24年改正法によって区割規定が改正され、平成22年に行われた大規模国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.998となるものとされたが、平成26年12月14日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」という。)の当日においては、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり、選 挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった。 平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は、0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外 の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経てお ・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は、0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外 の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあり、このような投票価値の較差が生じたことは、全体とし て平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであるとして、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして、平成27年大法廷判決は、同条の趣旨に沿 った選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとし、上記の選挙区割りの改定後も国会において引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は、 立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上 要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 (5) 平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするための制度の見直し等について検討が続けられ、平成26年9月以降、有 識者に 立の前後を通じて、国会においては、今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするための制度の見直し等について検討が続けられ、平成26年9月以降、有 識者により構成される衆議院議長の諮問機関として設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」において調査、検討等が行われた。 上記調査会は、平成28年1月14日、衆議院議長に対し、答申を提出した。同答申は、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減 して176人)とする案が考えられるとした上、投票価値の較差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式が満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選挙区間の投票価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度 将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを挙げ、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分をアダムズ方式により行うものとした。そして、同答申は、各都道府県への議席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その中間年に行われる国勢調査の結果、 選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは、区画審において、各都道府県への議席配分の変更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。 (6) 前記(5)の答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、 に関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。 (6) 前記(5)の答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、 比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とするとともに、各都 道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用すること等を内容とする平成28年改正法が成立した。 平成28年改正法による改正後の区画審設置法(新区画審設置法)4条は、区画審による改定案の勧告について、令和2年以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき、及び大規模国勢調査が行われた年から5年目 に当たる年に行われる簡易国勢調査の結果による各選挙区の人口の最大較差が2以上となったときは当該国勢調査の結果に基づき、これを行う旨を規定し、同法3条は、区割基準について、各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行い、かつ、選挙区間の人口の最大較差が2以上とならないようにする旨、及び簡易国勢調査の結果に基づき行われる勧告に係る改定案の作成 に当たっては、各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しない旨を規定する(新区割制度)。 なお、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則2条1項において、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提に、新区画審 設置法4条の規定にかかわらず、区画審において平成27年簡易国勢調査の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うこととした。そして、同附則2条2項及び3項は、上記改定案の作成について、新区画審設置法3条の規定にかかわらず、各都道府県の選挙区数につき、いわゆる0増6減の措置(平成27年の国勢調査の結果に基づき ととした。そして、同附則2条2項及び3項は、上記改定案の作成について、新区画審設置法3条の規定にかかわらず、各都道府県の選挙区数につき、いわゆる0増6減の措置(平成27年の国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により得られる選挙区数が 改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持する措置をいう。)を講じた上で、平成27年の国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし、かつ、次回の大規模国勢調査が実施さ れる平成32年(令和2年)の見込人口(平成32年見込人口)に基づく選 挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とするとともに、各選挙区の平成27年国勢調査人口及び平成32年見込人口の均衡を図り、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした。 区画審は、平成29年4月19日、内閣総理大臣に対し、0増6減の措置を講ずること(同措置の対象となった県は、青森県、岩手県、三重県、奈良 県、熊本県及び鹿児島県)を前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。これを受けて、同年6月9日、同年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)が成立し、同法による改正後の平成28年改正法によって区割規定が改正された(以下、同改正後(令和4年改正法による改正前)の区割規定を「前区割規定」 といい、前区割規定の定める選挙区割りを「前選挙区割り」という。)。 (7) 平成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、前選挙区割りの下で平成29年選挙が行われた。平成29年選挙当日 いい、前区割規定の定める選挙区割りを「前選挙区割り」という。)。 (7) 平成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、前選挙区割りの下で平成29年選挙が行われた。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対1.979であり、選挙人数 が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。 平成30年大法廷判決は、平成29年選挙当時の前選挙区割りについて、各都道府県への定数配分を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させその状 態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で、同方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置として0増6減の措置や選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の選挙人数等の最大較差を縮小させたものであり、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした。そ して、平成30年大法廷判決は、平成29年改正法までの立法措置の内容や その結果縮小した較差の状況を考慮すると、平成29年選挙において、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更がなくこれとアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって前選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時に は新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるから、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙 求に反するということはできず、平成29年選挙当時に は新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるから、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法に よる改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとし、平成29年選挙当時において前選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判示した。 (8) 令和3年10月14日に衆議院が解散され、同月31日、前選挙区割りの下で令和3年選挙が行われた。前選挙区割りの下では、令和2年大規模国勢 調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対2.096となり、令和3年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対2.079であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は29選挙区であった。 令和5年大法廷判決は、平成29年選挙の後、更なる較差是正の措置は講じられず、令和3年選挙当時、選挙区間の選挙人数等の較差が拡大したことについて、新区割制度は、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式 により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、新区割 制度と一体的な関係にある前選挙区割りの下で拡大した較差 して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式 により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、新区割 制度と一体的な関係にある前選挙区割りの下で拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができ、このような制度に合理性が認められることは平成30年大法廷判決が判示するとおりであるとした。そして、令和5年大法廷判決は、上記のような前選挙区割りの下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求 と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできないとした上で、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわ れないし、その程度も著しいものとはいえないから、上記の較差の拡大をもって、前選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできないと判示した。 (9)ア区画審は、令和3年6月25日に令和2年大規模国勢調査の結果(速報値)が官報で公示されたことを受け、同年7月2日から改定案に係る審議 を開始し、本件区割改定案を取りまとめ、令和4年6月16日、内閣総理大臣に対し同改定案の勧告をした。本件区割改定案は、初めて各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行ったものである。また、本件区割改定案の作成に当たっては、過去の区割改定の経緯やその作成方針のほか、区画審設置法8条に基づく都道府県知事に対する意見照会の結果を参考に して区割改定案の作成方針が取りま ある。また、本件区割改定案の作成に当たっては、過去の区割改定の経緯やその作成方針のほか、区画審設置法8条に基づく都道府県知事に対する意見照会の結果を参考に して区割改定案の作成方針が取りまとめられた。同作成方針において、選挙区割りの基準につき、議員1人当たりの人口の最も少ない県である鳥取県内の最少選挙区(鳥取県第2区)を基準として、令和2年大規模国勢調査の結果による選挙区間の人口の較差を2倍未満とすること、選挙区は飛び地にしないこと、市区町村の区域は原則として分割しないこととし、市 区の人口が人口基準の上限人口を超える場合等、やむを得ない一定の場合 に限り分割すること、地勢、交通その他の自然的、社会的条件を総合的に考慮することなど過去の区割りの基準が踏襲されたほか、本件区割改定案の作成においては、特に、市区町村の分割基準について、分割解消により県内の最大較差が拡大する場合には分割を維持することとすること、選挙区の改定に当たっては、地勢、交通等を総合的に考慮することとし、令和 3年選挙当時の選挙人数の最大較差が2倍以上となっている状況も考慮することとされた。 以上のようなアダムズ方式による各都道府県への定数配分及び上記作成方針に基づく選挙区割りの結果、本件区割改定案においては、都道府県の定数について、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県及び愛知県で定数を合 計10増加(東京都は5増、神奈川県は2増、埼玉県、千葉県及び愛知県は各1増)させ、宮城県、福島県、新潟県、滋賀県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県及び長崎県で定数を合計10減少(各1減)させた上で(以下「10増10減の措置」という。)、上記の都県を含む25都道府県の合計140の選挙区において区割りが改められた。 本件区割改定案の勧告 び長崎県で定数を合計10減少(各1減)させた上で(以下「10増10減の措置」という。)、上記の都県を含む25都道府県の合計140の選挙区において区割りが改められた。 本件区割改定案の勧告を受けて、令和4年11月18日、令和4年改正法が成立し、同法による改正によって区割規定が改正された(本件区割規定及び本件選挙区割り)。(乙2、7、25、26の1・2、同27の1)イ令和6年10月9日、衆議院が解散され、同月27日、本件選挙区割りの下で本件選挙が行われた。本件選挙区割りの下では、令和2年大規模国 勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.999であり、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(北海道第3区)との間で1対2.059であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区であった。(乙3、28の2、同29 の1・2) 2 判断(1) 憲法は、選挙権の内容の平等(投票価値の平等)を要求しているものと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の 議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定す るに際して、憲法上、議員1人当たりの められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定す るに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを 基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行 使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第7 5号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和 56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最高裁平成11年(行ツ 、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平 成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決参照)。 原告らは、憲法56条2項、1条及び前文第1項第1文後段、前文第1項第1文前段並びに43条1項は、できる限りの人口比例選挙を要求するものである旨主張するが、以上に反する限度において採用することができない。 (2) 以上の見地に立って、本件選挙当時の本件選挙区割りが違憲状態に至っているか否かについて検討する。 本件選挙区割りは、新区画審設置法に基づく本件区割改定案の勧告を受けて定められたものであるところ、新区画審設置法においては、衆議院選挙制度に関する調査会の答申を受け、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式につき、人口との比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選挙区間の投票価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較 差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることなどの諸条件に照らし最も望ましいものとして、いわゆるアダムズ方式が採用され、また、同方式による各都道府県への定数配分を10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて行うこととし、その5年後に行わ の諸条件に照らし最も望ましいものとして、いわゆるアダムズ方式が採用され、また、同方式による各都道府県への定数配分を10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて行うこととし、その5年後に行われる簡易国勢調 査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍以上となったときは、同較差 が2倍未満となるように各都道府県内の選挙区割りの改定を行うこととされた(前提事実(2)イ、認定事実(5)、(6))。新区画審設置法の規定する上記のような新区割制度は、選挙区間の投票価値の較差の縮小のためアダムズ方式を採用するとともに、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、他方で、選挙 制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしたものであって合理性が認められ、このような新区割制度に基づいて定められた選挙区割りの下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制 度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできない(平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決)。 本件選挙区割りは、新区画審設置法に基づく本件区割改定案の勧告を受けて定められたものであり、各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行 い、10増10減の措置をとった上で、選挙区割りを行ったものである。認定事実(9)アのとおり、本件区割改定案は、区画審において、選挙区を飛び地にしないこと、市区町村の区域は原則として分割しないことなどのほか、特に、市区町村の分割基 、選挙区割りを行ったものである。認定事実(9)アのとおり、本件区割改定案は、区画審において、選挙区を飛び地にしないこと、市区町村の区域は原則として分割しないことなどのほか、特に、市区町村の分割基準においては、分割解消により県内の最大較差が拡大する場合には分割を維持することとすること、選挙区の改定にあたっては、 地勢、交通等を総合的に考慮することなどとする作成方針に従って作成されたものであるが、前記(1)のとおり、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮することが求められているというべきであって、上記のような事情は、い ずれも国会が正当に考慮することができる事情である。このような点からす ると、本件選挙区割りは、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有すると考えることができる。 本件選挙区割りの下で、令和2年大規模国勢調査の結果による選挙区間の人口の最大較差は1対1.999であったのに対し、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.059であったが、このような投 票価値の較差の拡大は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれず、その程度も新区割制度の合理性を失わせるほど著しいものということはできない。したがって、このような較差の拡大をもって、本件選挙区割りが本件選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできない。 (3) 原告らの主張についてア原告らは、新区画審設置法3条1項及び4条2項によれば、令和7年に簡易国勢調査が行われるまでの期間を通じ、一貫して選挙区間の選挙人数 いうことはできない。 (3) 原告らの主張についてア原告らは、新区画審設置法3条1項及び4条2項によれば、令和7年に簡易国勢調査が行われるまでの期間を通じ、一貫して選挙区間の選挙人数ないし人口の最大較差が2倍未満となるよう改定案の作成をすることが求められている旨主張する。 しかし、新区画審設置法3条1項は、区割基準に関し、最近の国勢調査の結果に基づく日本国民の人口を基準として、選挙区間の最大較差が2以上にならないようにすること等を定め、同法4条2項は、簡易国勢調査の結果による選挙区間の人口の最大較差が2倍以上となったときにも改定案の勧告を行うことを定める。これは、前記(2)のとおり、新区割制度は、選 挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、各都道府県への定数配分を10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて行うこと等によって是正することを予定し、そのような是正措置の一環として、同項は、大規模国勢調査の5年後に行われる簡易国勢調査の結果に よる選挙区間の人口の最大較差が2倍以上となったときは、同較差が2倍 未満となるように各都道府県内の選挙区割りの改定を行うことを定めるものであると解される。このように、これらの規定は、選挙区割りの改定後の人口異動により選挙区間の選挙人数ないし人口の最大較差が2倍以上となり得ることを前提とした上でその是正措置を定めたものと解され、選挙区間の選挙人数ないし人口の最大較差が次回の改定案の作成まで一貫して 2倍未満となるような改定案の作成を当然に予定したものと解することは困難である。そして、前記(1)のとおり、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に 定案の作成まで一貫して 2倍未満となるような改定案の作成を当然に予定したものと解することは困難である。そして、前記(1)のとおり、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準としつつ、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されることにも照らせば、上記各条項が、 形式的な数値基準として、選挙区間の選挙人数ないし人口の最大較差が一貫して2倍未満となるようにすることを求めていると解することはできない。 この点に関し、平成28年改正法附則2条3項1号ロは、平成27年の国勢調査の結果に基づく改定案の作成について、新区画審設置法3条の規 定にかかわらず、各小選挙区の平成32年見込人口が、同見込人口の最も少ない都道府県の区域内における同見込人口の最も少ない小選挙区のそれの2倍未満であることを基本とすることを定めている。しかし、同附則の定めは、平成28年改正法が、令和2年の国勢調査の結果に基づき新区割制度による選挙区割りの改定案を勧告するものとする一方で、上記改定案 の勧告がされるまでの間においても1人別枠方式が主要な要因となって較差が拡大している状況が実質的に是正されるよう、それまでの措置として、一部の都道府県についてはアダムズ方式に基づいて算定した新方式小選挙区定数によるものとしたこと(同附則2条2項1号)を踏まえ、連続性を確保する観点から、各小選挙区の平成27年国勢調査人口が、同国勢調査 人口の最も少ない都道府県の区域内における同国勢調査人口の最も少ない 小選挙区の同国勢調査人口以上であって、かつ、当該平成27年国勢調査人口の2倍未満であることに加え、各選挙区の平成32年見込人口についても同様の基準に適 おける同国勢調査人口の最も少ない 小選挙区の同国勢調査人口以上であって、かつ、当該平成27年国勢調査人口の2倍未満であることに加え、各選挙区の平成32年見込人口についても同様の基準に適合することを求めたものであると解され、同附則の定めを考慮しても、見込人口を考慮することが恒常的な措置として求められると解することはできない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは、本件選挙区割りの下で、令和2年大規模国勢調査の結果による選挙区間の人口の最大較差が1対1.999であることについて、日本の地域別将来推計人口に係る統計によれば、東京都を除く46道府県で人口が一貫して減少するなどとされているから、実際に総選挙が行われる時 点までに、選挙区間の選挙人数の最大較差が2倍以上となることが合理的に推察される旨主張する。 しかし、令和2年大規模国勢調査の結果による選挙区間の人口の最大較差は1対1.999であり、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.059と拡大したが、前者は人口の最も少ない鳥取県 第2区と最も多い福岡県第2区との間で生じたものであり、後者は選挙人数の最も少ない鳥取県第2区と最も多い北海道第3区との間で生じたものであって、東京都と他の道府県との間で生じたものではない。そうすると、原告らが上記のとおり指摘する統計の推移から、直ちに、令和2年大規模国勢調査の結果によれば1対1.999であった最大較差が、将来的に2 倍を超えることを合理的に推察することができるとはいえない。 また、前記(1)のとおり、憲法は投票価値の平等を要求していると解されるが、投票価値の平等は選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的等 えない。 また、前記(1)のとおり、憲法は投票価値の平等を要求していると解されるが、投票価値の平等は選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的等との関連において調和的に実現されるべきものである。そして、認定事実(9)アのとおり、本件 区割改定案は、区画審において、選挙区を飛び地にしないこと、市区町村 の区域は原則として分割しないことなどのほか、特に、市区町村の分割基準については、分割解消により県内の最大較差が拡大する場合には分割を維持することとすること、選挙区の改定にあたっては、地勢、交通等を総合的に考慮することなどとする作成方針に従って作成され、本件選挙区割りはこれを受けて定められた本件区割規定に基づくものであるところ、前 記(1)のとおり、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮することが求められているというべきであって、上記のような事情は、いずれも国会が正当に考慮することができる事情である。そうすると、仮に令和2年大 規模国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差が1対1.999であることから、実際に総選挙が行われる時点までに、選挙区間の選挙人数の最大較差が2倍以上になることが推察されるとしても、それは、上記のような国会が正当に考慮することができる諸事情を考慮したことによるものであって、その結果として生じた上記のような投票価値の不均衡が直 ちに合理性を欠くものということはできない。そして、原告らが上記のとおり主張する点は、将来的には、新区割制度の下で令和7年に行われる簡易国勢調査の結果を踏まえて選挙区間の人 価値の不均衡が直 ちに合理性を欠くものということはできない。そして、原告らが上記のとおり主張する点は、将来的には、新区割制度の下で令和7年に行われる簡易国勢調査の結果を踏まえて選挙区間の人口の最大較差が2倍未満となるよう是正されることが予定されていることも踏まえれば、原告らが上記のとおり主張する点を前提としても、本件選挙区割りについて、憲法の投票 価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできない。 第4 結論以上のとおり、本件区割規定の定める本件選挙区割は、本件小選挙区選挙当時において、投票価値の平等を要求する憲法に違反する状態に至っていたものとは認められないから、本件小選挙区選挙の本件各選挙区の各選挙が違憲であ るとは認められず、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求は いずれも理由がない。 よって、原告らの請求をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官倉澤守春 裁判官櫛橋直幸 裁判官栗原志保 別紙及び別表は掲載省略
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