平成13(行ウ)19 別府コンベンションビューロー補助金返還請求事件,別府市損害賠償請求権不行使違法確認請求住民訴訟

裁判年月日・裁判所
平成15年12月22日 大分地方裁判所
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判決文本文38,476 文字)

平成13年(行ウ)第19号別府コンベンションビューロー補助金返還等請求事件(以下「甲事件」という。),同第24号別府市損害賠償請求権不行使違法確認請求住民訴訟(以下「乙事件」という。)判決 主文 1 本件訴えのうち,甲乙事件被告別府市長が甲事件被告財団法人別府コンベンションビューローに対して行った平成9年5月21日,平成10年5月11日,平成11年4月30日及び平成12年5月2日付けの各補助金交付決定について,その一部取消決定を怠ることの違法確認を求める訴えをいずれも却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(甲事件)(1) 甲乙事件被告別府市長(以下「被告市長」という。)が,甲事件被告財団法人別府コンベンションビューロー(以下「被告財団法人」という。)に対して交付した平成12年度のコンベンション推進団体補助金(以下,年度を特定する場合は「平成12年度補助金」などといい,年度を特定しない場合は「本件補助金」という。)のうち933万9500円について,被告財団法人に対し,損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠ることが違法であることを確認する。(以下「請求1」という。)(2) 被告市長が,平成12年5月2日付けで行った被告財団法人に対する補助金交付決定(以下「平成12年度補助金交付決定」という。)について,933万9500円の一部取消決定を怠ることが違法であることを確認する。(以下「請求2」という。)(3) 被告財団法人は,別府市に対し,933万9500円及びこれに対する平成13年7月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済み 消決定を怠ることが違法であることを確認する。(以下「請求2」という。)(3) 被告財団法人は,別府市に対し,933万9500円及びこれに対する平成13年7月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(以下「請求3」という。)(4) 甲事件被告Aは,別府市に対し,933万9500円及びこれに対する平成13年7月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(以下「請求4」という。)(5) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (乙事件)(1) 被告市長が,被告財団法人に対して交付した平成11年度の本件補助金のうち933万9500円について,被告財団法人に対し,損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠ることが違法であることを確認する。(以下「請求5」という。)(2) 被告市長が,平成9年5月21日付けで行った被告財団法人に対する補助金交付決定(以下「平成9年度補助金交付決定」という。)について,129万3000円の一部取消決定を怠ることが違法であることを確認する。(以下「請求6」という。)(3) 被告市長が,平成10年5月11日付けで行った被告財団法人に対する補助金交付決定(以下「平成10年度補助金交付決定」という。)について,154万6500円の一部取消決定を怠ることが違法であることを確認する。(以下「請求7」という。)(4) 被告市長が,平成11年4月30日付けで行った被告財団法人に対する補助金交付決定(以下「平成11年度補助金交付決定」という。)について,650万円の一部取消決定を怠ることが違法であることを確認する。 (以下「請求8」という。)(5) 訴訟費用は被告市長の負担とする。 2 被告ら(1) 本案前の答弁ア本件訴えのうち,請求1,2及び5ないし8に係 取消決定を怠ることが違法であることを確認する。 (以下「請求8」という。)(5) 訴訟費用は被告市長の負担とする。 2 被告ら(1) 本案前の答弁ア本件訴えのうち,請求1,2及び5ないし8に係る訴えをいずれも却下する。 イ請求1,2及び5ないし8に係る訴訟費用は原告の負担とする。 (2) 本案の答弁ア原告の請求をいずれも棄却する。 イ訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要被告市長は,被告財団法人に対し,別府市から本件補助金を交付していたところ,原告は,被告財団法人が,当時被告市長で被告財団法人の理事であった被告Aの縁戚にあたるBを業務嘱託員として雇用して異例の昇進及び昇給をさせ,Bに対して高額の給与等を支払ったことや,Bから申し立てられた地位保全等仮処分申立事件において,Bとの間で和解を成立させ,Bに対して650万円の解決金(以下「本件解決金」という。)を支払ったことが,いずれも,情実人事等による不正な支出であって,上記補助金の一部を違法又は目的外に使用したものであり,当該部分について①補助金交付決定を取り消し,②損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使すべきであるなどと主張している。 そして,原告は,被告市長が被告財団法人に対して交付した平成12年度補助金のうち,Bに対して支給した給与のうち昇給分に相当する支給額及び管理職手当の支給額(以下「昇給分の給与等」という。)並びに本件解決金の合計金額933万9500円について,被告市長が被告財団法人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠ることの違法確認(請求1)及び被告市長が平成12年度補助金交付決定のうち上記933万9500円に相当する額の取消決定を怠ることの違法確認(請求2)を求めた上,平成12年度補助金交付決定が違法であるとして,別府市に代位し )及び被告市長が平成12年度補助金交付決定のうち上記933万9500円に相当する額の取消決定を怠ることの違法確認(請求2)を求めた上,平成12年度補助金交付決定が違法であるとして,別府市に代位して,被告財団法人及び被告Aに対し,損害賠償請求権又は不当利得返還請求権に基づき,上記933万9500円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求3及び4)を求め(以上,甲事件),また,平成11年度補助金のうち上記933万9500円について,被告市長が被告財団法人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠ることの違法確認(請求5),平成9年度から平成11年度までの補助金交付決定のうち上記昇給分の給与等に相当する金額について,補助金交付決定の一部取消決定を怠ることの違法確認(請求6ないし8)を求めた(以上,乙事件)。 以上が本件事案の概要である。 1 前提事実(認定事実の末尾に証拠等を掲記する。なお,証拠を掲記する際にその枝番号を省略して摘示した場合は,省略した枝番号に係る証拠すべてを引用する趣旨である。)(1) 当事者ア原告は,大分県別府市の住民である(争いがない。)。 イ被告Aは,平成7年4月30日から平成15年4月29日まで別府市の市長の地位に,また,平成7年6月26日から平成15年7月13日まで被告財団法人の理事長の地位にあった者である(甲12の17の38,弁論の全趣旨)。 ウ被告財団法人は,肩書住所地に主たる事務所を置いた財団法人であり,別府市及び大分県の有する文化的,社会的,経済的特性を活かし,コンベンションの誘致,支援等を行うことにより,別府市及び大分県におけるコンベンションの振興を図り,もって,国際的な相互理解の増進並びに地域経済の活性化及び文化の向上 ,社会的,経済的特性を活かし,コンベンションの誘致,支援等を行うことにより,別府市及び大分県におけるコンベンションの振興を図り,もって,国際的な相互理解の増進並びに地域経済の活性化及び文化の向上に資することを目的として,平成4年12月24日に設立された(甲11,13の33の3,弁論の全趣旨)。 (2) 被告市長による補助金の交付ア被告財団法人は,被告市長に対し,平成9年から平成12年までの間,毎年4月1日付けで,補助金交付申請をし,被告市長は,下記のとおり,被告財団法人に対する補助金交付決定をし,その年度中に当該補助金を交付した(甲1の1ないし10,2の1及び2,15の1,乙イ3ないし6,12,13)。 (ア) 平成9年5月21日,3億円(イ) 平成10年5月11日,2億7000万円(ウ) 平成11年4月30日,2億7000万円(エ) 平成12年5月2日,2億7000万円イ被告市長は,平成9年度ないし平成12年度補助金交付決定に係る補助指令書において,本件補助金の各交付決定につき,次の内容の条件を付した(甲1の1,2の1,乙イ12,13)。 「(1) この補助金は目的以外に使用してはならない。 (2) この補助金は目的以外に使用し,又は申請の事業を遂行しなかったとき等補助の目的に違反した場合は,補助の一部又は全部を返納させる事がある。 (3) この補助金を受けたものは,市長又は市監査委員の監査及び関係職員の調査が行われるので,関係書類を整備しておくこと。」(3) 被告財団法人によるBの雇用と給与等の支払ア被告財団法人は,Bとの間で,平成8年4月22日,雇用期間を平成9年3月31日までとして,雇用契約を締結し,その後,1年ごとに平成11年3月31日まで雇用契約を更新した。 被告財団法人は,当初は業務部業務課の嘱託員 との間で,平成8年4月22日,雇用期間を平成9年3月31日までとして,雇用契約を締結し,その後,1年ごとに平成11年3月31日まで雇用契約を更新した。 被告財団法人は,当初は業務部業務課の嘱託員として,Bを採用したが,平成9年4月1日の雇用契約の更新時には業務部施設管理課長とし,同年10月1日には業務部長兼施設管理課長事務取扱,平成10年4月1日には業務部長兼施設管理課長とした。 イ被告財団法人は,Bに対し,平成8年度から平成10年度までの間,別紙1給料欄記載のとおりの給与及び賞与並びに同管理職手当欄記載のとおりの管理職手当を支給した。月給(基本給)は,平成8年度が25万円,平成9年4月から同年9月分までが30万円,同年10月以降退職までが35万円である。 Bが被告財団法人に雇用されてから後記雇止めにより退職するまでの間の昇給分の給与等の額は,別紙1記載のとおり①と②の合計額283万9500円である(なお,原告は昇給に伴う賞与の増額については問題としていないため,以後この点は検討しない。)。 (以上(3)全体につき,甲12の16の2ないし6,12の17の1及び2の各1ないし3,乙ロ4,弁論の全趣旨)(4) Bの雇止めと本件解決金の支払被告財団法人は,Bについて,雇用期間を平成11年3月31日までとした雇用契約について,再々度の更新を行わず,雇止めとしたため,Bは同日付けで退職することとなった(甲12の17の29,弁論の全趣旨)。 これに対し,Bは,平成11年4月3日,被告財団法人を相手方として,大分地方裁判所に対し,地位保全等仮処分(平成11年(ヨ)第47号事件。以下「本件仮処分」という。)を申し立てた(甲12の4)。 本件仮処分は,同年10月19日,被告財団法人とBとの間で,上記両名間の労働契約が同年3月31日に任用期 分(平成11年(ヨ)第47号事件。以下「本件仮処分」という。)を申し立てた(甲12の4)。 本件仮処分は,同年10月19日,被告財団法人とBとの間で,上記両名間の労働契約が同年3月31日に任用期間の満了により終了したことを相互に確認する,被告財団法人がBに対し650万円の解決金(本件解決金)を支払う,Bは本件仮処分の申立てを取り下げる旨の内容で和解が成立し,本件解決金は,同年10月22日,被告財団法人からBに対して支払われた(甲13の32の8,乙ロ8)。 (5) 別府市補助金等交付規則の定め別府市補助金等交付規則(平成2年10月1日規則第50号。以下「補助金交付規則」という。)には,次のような規定がある(甲8)。 「第4条補助金等の交付の申請をしようとする者は,補助金等交付申請書に次の各号に掲げる書類を添えて市長に提出しなければならない。 (1) 事業計画書(2) 収支予算書(3) その他市長が必要と認める書類第5条市長は,補助金等の交付の申請があったときは,当該申請に係る書類の審査その他必要に応じた調査を行った後,適当であると認めたときは,交付の決定をするものとする。この場合において,市長は,必要な条件を付することができる。 第9条事業者は,決算終了後1ヶ月以内(一時的なものにあっては事業終了後1ヶ月以内)に事業実績報告書に次に掲げる書類を添えて,市長に提出しなければならない。 (1) 収支決算書(2) その他市長が必要と認める書類第10条市長は,前条の規定による報告書等を受理したときは,その内容を審査し,その報告に係る事業の成果が補助金等の交付の決定の内容及びこれに付した条件に適合すると認めたときは,交付すべき額を確定し,補助金等を交付する。 2 市長は,事業の性質上必要と認めたときは,前項の規定にかかわらず,補 の成果が補助金等の交付の決定の内容及びこれに付した条件に適合すると認めたときは,交付すべき額を確定し,補助金等を交付する。 2 市長は,事業の性質上必要と認めたときは,前項の規定にかかわらず,補助金等の交付の決定時から当該事業の終了時までの間に,補助金等を交付することができる。 第11条市長は,事業者が次の各号の一に該当するときは,補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。この場合において,その取消しに係る部分に関し,既に補助金等を交付しているときは,期限を定めてその返還を命ずるものとする。 (1) 補助金等を他の用途に使用したとき。 (2) 補助金等の交付の決定の内容又はこれに付した条件に違反したとき。 (3) 法令又はこの規則及び市長の指示に違反したとき。 (4) 偽り,その他不正の手段により補助金等の交付を受けたとき。 (5) 事業の変更若しくは中止又は事業の遂行の見込みがないとき。」(6) 住民監査請求原告は,平成13年3月30日,別府市監査委員に対し,平成12年度補助金交付決定について,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)242条に基づく住民監査請求(以下「第1回監査請求」という。)をしたところ,別府市監査委員は,平成13年5月28日,上記請求を棄却するとの決定をした(甲10,11)。 また,原告は,同年11月26日,別府市監査委員に対し,被告市長が被告財団法人に対して行った平成8年度から平成11年度までの補助金交付決定について,地方自治法242条に基づく住民監査請求(以下「第2回監査請求」という。)をしたところ,別府市監査委員は,平成13年12月18日付けで,上記請求を却下するとの決定をした(甲21,22)。 2 争点本件の争点及び争点に対する当事者の主張は次のとおりであ 請求」という。)をしたところ,別府市監査委員は,平成13年12月18日付けで,上記請求を却下するとの決定をした(甲21,22)。 2 争点本件の争点及び争点に対する当事者の主張は次のとおりである。(なお,(1)ないし(4)は本案前の争点,(5)以下は本案の争点である。)(1) 怠る事実の違法確認訴訟につき,怠る事実の対象の適格性(請求1,2及び5ないし8に係る訴えの適法性ー争点1)(被告ら)ア請求2及び6ないし8に係る訴えについて地方自治法242条の2第1項3号に基づく請求(以下「3号請求」という。)の怠る事実の対象となる「財産」とは,同法237条1項の「公有財産,物品及び債権並びに基金」であるところ,このうちの債権は,同法240条1項において「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利」と定義されている。補助金交付決定の取消権そのものは上記債権には該当しないため,上記取消権の行使を怠る事実の対象とした訴えは,同法242条の2第1項3号の予定する訴訟に該当せず,不適法である。 イ請求1及び5に係る訴えについて3号請求の怠る事実の対象となる「財産」の中には,公金はもちろんのこと,支払われた公金の変形たる債権は含まれないと解するのが相当であり,また,将来,損害賠償請求権に転ずる可能性があるだけでは,同法237条1項の「債権」には当たらないというべきである。本件では,平成11年度及び平成12年度補助金交付決定は,未だ取り消されていないから,別府市は,上記各交付決定に基づいて支出した公金に関し,被告財団法人に対して損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得していない。したがって,上記損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実の対象とした訴えは,同法242条の2第1項3号の予定する訴訟に該当せず,不適法である。 又は不当利得返還請求権を取得していない。したがって,上記損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実の対象とした訴えは,同法242条の2第1項3号の予定する訴訟に該当せず,不適法である。 (原告)ア請求2及び6ないし8に係る訴えについて地方自治法242条の2第1項3号の「財産」を同法237条1項と同様に解する根拠は存在しない。同法242条1項及び242条の2は,普通地方公共団体の長や職員等の違法・不当な行為によって普通地方公共団体に損害が発生した場合又は発生するおそれがある場合に,住民がその損害を回復又は防止するための措置を請求することができるという住民参政の重要な制度として定められたものであるから,そのような重要な住民の権能を不当に制約する解釈をすることは許されない。したがって,「財産」の意義についても,「非財産的行為」を排除する趣旨にとどまると解するのが相当である。 また,同法242条の2第1項3号は,普通地方公共団体の機関,職員が法律上当然に行わなければならない行為を,その任務に反して行わないでいる場合に,裁判所がその任務違反行為を違法であると確認することによって,普通地方公共団体が怠る事実を解消させ,適正な財務運営行為をする義務を負わせて,公益を保護する趣旨の規定であるところ,補助金返還請求権という債権を発生させる行為を普通地方公共団体の機関又は職員が違法に怠っている場合には,その違法確認をすることが根本的な解決につながる。したがって,そのような請求も許されると解すべきである。 イ請求1及び5に係る訴えについて今日では,公金の支出によって生じた不当利得返還請求権についても,怠る事実の違法確認を認めた判例がある。 また,被告らは,将来損害賠償請求権に転ずる可能性があるだけでは「債権」に当たらない旨主張 今日では,公金の支出によって生じた不当利得返還請求権についても,怠る事実の違法確認を認めた判例がある。 また,被告らは,将来損害賠償請求権に転ずる可能性があるだけでは「債権」に当たらない旨主張するが,本件では,既に損害賠償請求権が発生している事案であるから,被告らの主張は当たらない。 (2) 監査請求前置の有無(請求1,2及び5ないし8に係る訴えの適法性ー争点2)(被告ら)ア請求1及び2に係る訴えについて甲事件の訴えの前にされた第1回監査請求は,損害賠償請求又は不当利得の返還請求を求める措置要求であり,原告は,市長の「怠る事実の違法確認」については措置請求をしていない。したがって,甲事件のうち,怠る事実の違法確認を求めた請求1及び2に係る訴えとの関係では監査請求を前置していないことになるから,上記訴えはいずれも不適法である。 イ請求5ないし8に係る訴えについて乙事件の訴えの前にされた第2回監査請求は,被告市長が,被告A個人に対し,損害賠償請求をしないことの違法確認を求めるものであるが,請求5は,被告市長が被告財団法人に対して損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠ることの違法確認を求めたものであり,請求6ないし8は,被告市長が補助金交付決定の取消決定を怠ることの違法確認を求めたものである。したがって,請求5ないし8に係る訴え(乙事件の訴え)は,いずれも第2回監査請求との間には同一性がなく,上記訴えについてはいずれも監査請求を前置していないことになる。よって,上記訴えはいずれも不適法である。 (原告)ア請求1及び2に係る訴えについて財務会計上の行為を違法・不当であるとしてその是正を求める監査請求をした場合,同監査請求は当該行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権を行使しないという怠る事 係る訴えについて財務会計上の行為を違法・不当であるとしてその是正を求める監査請求をした場合,同監査請求は当該行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権を行使しないという怠る事実についての監査請求をもその対象として含むものであるから,監査請求を前置している。 イ請求5ないし8に係る訴えについて住民監査請求は,監査委員に対し監査の端緒を与えるものであり,問題とする財務会計上の行為又は怠る事実が社会的事実として同一である限り,監査請求前置の要件を判断するにあたっては,監査請求書に記載された具体的な措置の内容及び相手方を問題にする必要はないというべきである。 原告は,第2回監査請求で,被告Aに対する損害賠償請求を求めないことが怠る事実に当たるという主張に続けて,「別府市に対して右怠る事実の違法・不当性を改めるために必要な措置を講じるように求めるものである。」と主張しており,監査委員に対し,上記損害賠償請求に限らず,適切な違法・不当確認の措置を求めていることは明らかである。 また,第2回監査請求では,「損害賠償」とのみ記載しており,不当利得についての記載がないが,監査請求段階では法的構成について十分に検討する余裕がなかったからにすぎず,住民訴訟において不当利得返還請求を追加することは請求の同一性を害するものではない。 したがって,乙事件の訴えとの関係でも監査請求を前置している。 (3)地方自治法242条の2第1項4号に基づき代位請求(以下「4号請求」という。)をするとともに,3号請求をすることの適法性(請求1及び2に係る訴えの適法性ー争点3)(被告ら)原告は,被告A及び被告財団法人に対して4号請求を求めているから,3号請求で違法確認判決が出たとしても,被告市長は,被告A及び被告財団法人に対し,その債権 係る訴えの適法性ー争点3)(被告ら)原告は,被告A及び被告財団法人に対して4号請求を求めているから,3号請求で違法確認判決が出たとしても,被告市長は,被告A及び被告財団法人に対し,その債権の履行を求める訴えを提起することはできない。 また,4号請求訴訟で原告が勝訴すれば,その勝訴判決の効力は別府市に及ぶので,これによって被告市長が損害賠償請求権を行使しない違法状態は抜本的かつ直接に是正される。このような場合に,4号請求のほかに同一の請求権について3号請求訴訟を行う実益はないので,3号請求(請求1及び2)については訴えの利益がない。 (原告)4号請求と3号請求は,最終的には同じ目的に立つものであるが,それぞれ独自の存在意義を有し,いずれの手段を取るかは住民の自由な選択に委ねられている。そして,住民の立場でいずれの請求を選択する方が良いかを一概に決めることは困難であるから,財産の管理を怠る事実が存在する場合には,両方併せて請求することも可能と解すべきである。 (4)監査請求期間徒過の有無(請求5ないし8に係る訴えの適法性ー争点4)(被告ら)原告は,平成9年度ないし平成11年度の各補助金交付決定の日又は各補助金の交付の日から,いずれも1年以上を経過した平成13年11月26日に第2回監査請求をしているから,第2回監査請求は監査請求期間を徒過した後に行ったものであり,不適法である。したがって,請求5ないし8に係る訴え(乙事件の訴え)は,適法な監査請求を経ておらず不適法である。 (原告)請求5ないし8の判断にあたっては,各年度の補助金交付決定自体の違法性を判断しなければ,当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にない。したがって,上記訴えに係る監査請求には1年の期間制限が及ばないというべきであり,第2回監査請求は 金交付決定自体の違法性を判断しなければ,当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にない。したがって,上記訴えに係る監査請求には1年の期間制限が及ばないというべきであり,第2回監査請求は適法である。 (5) 被告財団法人のBに対する金銭支払の違法性の有無(全請求についてー争点5)(原告)被告財団法人がBにつき情実人事で異例の昇進をさせ,その昇給分の給与等を支払ったことは違法である。昇給分の給与等の支払は,そのまま被告財団法人の負担の増加につながっているから,損害の発生も認められる。 また,被告財団法人が,平成11年3月末をもってBを雇止めにしたことは正当であるから,同人からの地位保全等仮処分申立てに対して解決金を支払う必要はなかったので,これを支払ったことは違法である。 これらは,別府市からほぼ毎年2億7000万円もの補助金の交付を受ける極めて公益性の高い財団法人としては,到底容認することのできない,裁量権を著しく逸脱した違法かつ不当な運営であり,補助金の目的外の使用に当たる。 (被告ら)被告財団法人の職員に対する給与等の支給日は毎月21日であり,Bに対する4月分と5月分の給与等は,各年度の第1回の補助金支給日より早く支払われている。よって,各年度の補助金の交付とBに対する給与等の支払との間に関連性はなく,被告財団法人のBに対する給与等金銭の支払には何ら違法はない。 Bを昇進させた施設管理課長,業務部長のポストは既存のものであり,Bのために創設したものではない。既存のポストに同人を充てていったのであるから,被告財団法人全体として何ら損害は被っていない。 被告財団法人は,本件仮処分の審理の推移,法人の運営等を総合的に検討して和解したものであり,何ら裁量権を逸脱していない。被告財団法人のBに対する解決金(650万 全体として何ら損害は被っていない。 被告財団法人は,本件仮処分の審理の推移,法人の運営等を総合的に検討して和解したものであり,何ら裁量権を逸脱していない。被告財団法人のBに対する解決金(650万円)の支払は,裁判上の和解に基づいて行ったものであり,本件解決金の支払に何ら違法はない。 (6) 被告財団法人の別府市に対する不法行為責任の有無(請求1,3及び5についてー争点6)(原告)争点5の原告の主張のとおり,被告財団法人によるBに対する昇給分の給与等及び本件解決金の支払は,補助金の違法かつ目的外の使用に当たるところ,被告財団法人は,別府市に対し,同違法支出分に見合う補助金の申請をし,これを受領することにより,同違法支出分相当額の損害を別府市に被らせた。別府市は,被告財団法人が補助金を違法かつ目的外に使用していることが分かれば,同違法支出相当額分の補助金を新たに交付することはなかったと認められるのであり,別府市には損害が発生している。 そして,争点10の原告の主張のとおり,被告財団法人の代表者である被告Aには故意・過失があるので,被告財団法人は,民法44条1項により,損害賠償責任を負う。 (被告ら)被告財団法人のBに対する昇給分の給与等及び本件解決金の支払と,別府市の被告財団法人に対する本件補助金交付との間には直接の関連性がない。被告財団法人がBに対し昇給分の給与等及び本件解決金を支払ったからといって別府市には何ら損害は発生していない。 したがって,被告財団法人に不法行為責任が成立する余地はない。 (7) 被告財団法人の別府市に対する不当利得の有無(請求1,3及び5についてー争点7)(原告)争点5の原告の主張のとおり,被告財団法人によるBに対する昇給分の給与等及び本件解決金の支払は,補助金の違法かつ目的外の使用に当たるか 当利得の有無(請求1,3及び5についてー争点7)(原告)争点5の原告の主張のとおり,被告財団法人によるBに対する昇給分の給与等及び本件解決金の支払は,補助金の違法かつ目的外の使用に当たるから,補助金からこれらを支出したことは法律上の原因がないことになる。そして,Bに対する上記支払によって別府市は同額分の損失を被り,被告財団法人は同額分の利得を得た。 (被告ら)Bに対する昇給分の給与等と本件解決金は,別府市からの補助金から支払ったものではなく,別府市の補助金交付とは直接の関連性がない。また,被告財団法人が昇給分と解決金を支払ったからといって,別府市に損失はないし,被告財団法人に利得もない。 したがって,不当利得が成立する余地はない。 (8) 本件補助金交付決定の一部取消決定をしないことの違法性の有無(請求2及び6ないし8についてー争点8)(原告)ア平成9年度ないし平成11年度補助金交付決定について被告財団法人が,平成9年度ないし平成11年度補助金から,Bに対し昇給分の給与等及び本件解決金を支払ったことは,「目的以外に使用してはならない」という補助金の交付決定の条件に違反しているから,被告市長は,補助金交付規則11条2号に基づき,平成9年度ないし平成11年度補助金交付決定のうち,上記支出に係る部分について取消決定をすべきである。 イ平成12年度補助金交付決定について被告財団法人は,平成9年度ないし平成11年度補助金から,Bに対し,前記のように違法な支出をしたのであるから,これについてBに返還を求めるなど適切な対応をすべきところ,これをせずに不適正な財務処理を行った。にもかかわらず,被告市長は,被告財団法人に対し,平成12年度補助金交付決定をしているから,この決定は公益に反するというべきであり,被告市長は,補助金交 ころ,これをせずに不適正な財務処理を行った。にもかかわらず,被告市長は,被告財団法人に対し,平成12年度補助金交付決定をしているから,この決定は公益に反するというべきであり,被告市長は,補助金交付規則11条3号により,上記交付決定のうち,上記違法な支出に相当する部分について取消決定すべきである。 (被告ら)補助金交付決定の取消権の行使については,補助事業者の業務違反があるというだけで直ちにこれを行い得ると解すべきではない。 補助目的達成の可否について補助関係の全過程を通じて総合的に判定すべきであり,かつ補助金交付の初期の目的を達成することが困難となった時点において初めてその取消権を行使すべきものである。 被告財団法人は,本件補助金交付の目的に従った事業活動を継続しており,本件補助金交付決定を取り消さなければならない理由はない。 (9) 平成12年度補助金交付決定の違法性の有無(請求3及び4についてー争点9)(原告)ア補助金交付規則9条によれば,被告財団法人の事業実績報告書及び収支決算書は決算終了後1か月以内に提出されなければならず,同規則10条1項によれば,被告市長は,上記報告書等の内容を審査し,その報告に係る事業の成果が補助金等の交付の決定の内容及びこれに付した条件に適合すると認められるときに,交付すべき額を確定し,補助金等を交付することになっており,同規則5条によれば,被告市長は,必要に応じた調査を行った後,適当であると認めたときに,交付決定をすることになっていて,地方自治法232条の2によれば,公益上必要がある場合に補助をすることができる。したがって,被告市長は,補助金の交付決定に当たっては,上記報告書等の内容を審査して,交付先において違法な金銭費消がなされ,損害賠償請求又は不当利得返還請求によって回収できるもの することができる。したがって,被告市長は,補助金の交付決定に当たっては,上記報告書等の内容を審査して,交付先において違法な金銭費消がなされ,損害賠償請求又は不当利得返還請求によって回収できるものがあるならば,その金額を減額した上で補助金を交付すべきであった。しかしながら,平成12年度補助金については,上記報告書等は決算終了後1か月以上経過した同年7月7日付けで提出されており,同年度補助金交付決定は上記報告書等の内容が審査されることなく,同年5月2日付けでなされているので,同交付決定は,同規則5条,9条,10条1項及び地方自治法232条の2に違反した違法がある。 イ平成12年度補助金交付決定は,違法な昇給分の給与等及び本件解決金の支払という濫費をしている公益法人に対して,業務改善・財務健全化を促すことなく事業運営資金の不足を補う補助金交付決定をしたという点において,同法232条の2の公益性を欠く違法がある。 (被告ら)ア被告市長は,被告財団法人による平成12年度補助金の交付申請に対し,被告財団法人の「平成12年度事業計画書収支予算書」並びに役員名簿及び評議員名簿を提出させ,事業運営方針,事業計画などについて検討した上で交付決定を行ったものであり,補助金交付規則5条違反の事実はなく,同規則等の財務会計法規上の義務を遵守して交付決定したものである。 イ被告財団法人は,別府市にとって文化・福祉・教育等の活動に重要な地位を占めており,被告市長は,被告財団法人の事業活動の「公益上の必要性」を認定して補助金を交付したものであり,補助金の交付に違法はない。 なお,平成12年度補助金の交付については,同年3月22日に別府市議会の承認を得ている。 (10) 被告Aの別府市に対する不法行為責任の有無(請求4についてー争点10)(原告)被 はない。 なお,平成12年度補助金の交付については,同年3月22日に別府市議会の承認を得ている。 (10) 被告Aの別府市に対する不法行為責任の有無(請求4についてー争点10)(原告)被告Aは,被告財団法人の理事でもあり,自らBの情実人事や本件仮処分における和解の申し出を行ったのであるから,昇給分の給与等及び本件解決金が本件補助金からの違法な支出であることは当然に認識していたか,又は認識し得たはずである。したがって,被告Aには,故意又は過失があったというべきであり,別府市にその損害を賠償する責任がある。 (被告ら)争点5及び6の被告らの主張のとおり,被告財団法人のBに対する上記支出が別府市に対する不法行為になるはずがない。 第3 当裁判所の判断 1 3号請求訴訟につき,怠る事実の対象の適格性(請求1,2及び5ないし8に係る訴えの適法性ー争点1)について(1) 原告は,被告財団法人が本件補助金の一部を目的外に使用したのであるから,被告市長は被告財団法人に対し,上記目的外の使用に相当する額について,①補助金交付決定を取り消し,②損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使すべきところ,これらを怠っているとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,上記各怠る事実の違法確認を求めているところ,被告らは,原告が主張する上記各怠る事実は,3号請求訴訟の対象となる「財産」の管理を怠る事実に該当しない旨主張する。 3号請求は,普通地方公共団体の執行機関又は職員につき,違法に公金の賦課若しくは徴収又は財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)がある場合に,当該怠る事実を対象としてその違法確認を求めるものである(地方自治法242条1項,242条の2第1項3号)。そして,上記怠る事実の違法確認の対象となるべき「財産」とは,公有財産, う。)がある場合に,当該怠る事実を対象としてその違法確認を求めるものである(地方自治法242条1項,242条の2第1項3号)。そして,上記怠る事実の違法確認の対象となるべき「財産」とは,公有財産,物品及び債権並びに基金をいい(同法237条1項),普通地方公共団体が有するであろう一般的,抽象的な財産ではなく,普通地方公共団体に具体的に帰属する個別的な財産を意味すると解すべきである。 そこで,以下,標記各請求について,原告が主張する怠る事実の対象が上記「財産」に該当するか否かを検討する。 (2) 請求2及び6ないし8についてア補助金や助成金の支給関係は,支給申請者の申込みに対する行政庁の承諾により成立する契約関係で,金銭の贈与の性質を有する非権力的行為であるのが原則である。また,本件の補助金交付規則は,条例等の委任に基づき制定されたものではなく,補助金等の交付手続が適正に行われるように事務執行上の手続を定めた内部的な規則にすぎないというべきである(甲8,弁論の全趣旨)。したがって,本件の補助金交付決定は行政処分であるとはいえない。 前提事実(2)イ及び(5)のとおり,本件の補助金交付規則には,補助事業者が補助金交付決定の内容又はこれに付した条件に違反したときには,市長は,補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる旨の規定があり,平成9年度ないし平成12年度の補助金交付決定の際には,補助金を目的以外に使用してはならない旨の条件が付されていたことが認められる。本件補助金の交付決定は,上記のように行政処分ではないから,その取消しは,贈与契約の約定解除と同様の法的性質をもつ私法上の行為であるということができる。 そして,被告市長が本件の補助金交付決定をし,これを交付した後にその取消しをした場合には,別府市は当該取消しに係る ,贈与契約の約定解除と同様の法的性質をもつ私法上の行為であるということができる。 そして,被告市長が本件の補助金交付決定をし,これを交付した後にその取消しをした場合には,別府市は当該取消しに係る補助金相当額の返還請求権を取得することになるため,当該債権の管理は財務管理上の問題になるということができるが,補助金交付決定の取消権の行使自体は,新たに債権を発生させる行為ではあるが,存在する債権の管理行為ではなく,財務管理上の問題にはならない。 そうすると,補助金交付決定の取消権そのものは,「財産」に該当しないといわざるを得ない。したがって,本件補助金の交付決定について,被告市長がその一部について取消権を行使しなかったことをもって,財産の管理を怠る事実に当たるということはできない。 イこの点について,原告は,同法242条1項の「財産」は,同法237条1項が規定する財産に限定されるものではなく,同条項は非財産的行為を排除する趣旨にとどまると解すべきであり,補助金交付決定の取消しを違法に怠っている場合には,その違法確認をすることが根本的な解決につながるから,そのような請求も許される旨主張する。 しかしながら,同法242条の2が規定する住民訴訟の制度は,住民参政の一環として住民に対し,普通地方公共団体の長若しくは執行機関又は職員の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものであって,地方自治法が特に創設した客観訴訟(民衆訴訟)であり,法律に定める場合において,法律に定める者に限りこれを提起することができるものである。したがって,同法242条1項の財産の意義についても,これをみだりに拡張解釈して,同法における定義規定が適用されないことを認めることは て,法律に定める者に限りこれを提起することができるものである。したがって,同法242条1項の財産の意義についても,これをみだりに拡張解釈して,同法における定義規定が適用されないことを認めることは相当ではない。 また,普通地方公共団体が補助金交付決定の取消権を行使しない段階でその是非を住民訴訟の対象とすることは,普通地方公共団体の財務会計上の違法な行為及び怠る事実の防止是正にとどまらず,補助金の交付を受けた補助事業者における補助金の使用方法の是非を直接住民訴訟の対象にすることに等しいが,そのようなことは,前記住民訴訟の制度趣旨に照らして,同制度の予定しないところであるといわざるを得ない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 (3) 請求1及び5についてア被告らは,支払われた公金の変形たる債権は3号請求の対象たる「財産」に該当しないと主張する。 しかしながら,前記(2)のとおり,怠る事実の確認対象となるべき「財産」には債権も含まれると解すべきところ,地方自治法はその債権の発生原因事実について何も限定していないのであるから,公金の返還を求める場合であってもそれが具体的に発生している債権であれば,上記「財産」に該当し,3号請求の怠る事実の対象となるというべきである。被告らの上記主張は独自のものであって採用することができない。 イまた,被告らは,本件の補助金交付決定は,未だ取り消されていないため損害賠償請求権又は不当利得返還請求権は発生していないと主張し,債権が存在しないのであるから,その行使の怠る事実の違法確認を求めた訴えは不適法である旨主張する。 しかしながら,原告は,補助金交付決定の取消しの有無にかかわらず,損害賠償請求権等が発生していると主張しているものであるから,原告主張の損害賠償請求権等が認められるか は不適法である旨主張する。 しかしながら,原告は,補助金交付決定の取消しの有無にかかわらず,損害賠償請求権等が発生していると主張しているものであるから,原告主張の損害賠償請求権等が認められるか否か,すなわち債権の存否は,本案で検討すべきであって,本案前の問題ではない。 したがって,本案で検討すべき問題である債権の不存在を理由として,請求1及び5に係る訴えが不適法であるということはできず,被告らの上記主張は採用できない。 (4) まとめ前記(2)のとおり,被告市長が本件補助金の各交付決定について取消権を行使しないことは,3号請求の対象である「怠る事実」に該当しない。 したがって,請求2及び6ないし8に係る訴えは,同法242条の2第1項3号の予定する訴訟に該当せず,いずれも不適法であるといわざるを得ない。 2 監査請求前置の有無(争点2。ただし,請求1及び5に係る訴えについてのみ検討する。)(1) 請求1に係る訴えについてア被告らは,原告が,甲事件の訴え提起前にした第1回監査請求においては,損害賠償請求又は不当利得の返還請求を求める措置要求のみで被告市長の怠る事実の違法確認を求めておらず,請求1に係る訴えとの関係では,監査請求を前置していない旨主張する。 イそこで検討するに,住民訴訟について監査請求が前置されているというためには,原則として,監査請求の対象となった財務会計上の行為又は怠る事実と住民訴訟において審理の対象となる行為又は怠る事実との間に同一性があることが必要である。 本件についてこれをみるに,請求1に係る訴えは,被告市長が,被告財団法人に対し,平成12年度補助金のうち,平成11年度までに被告財団法人がBに対して支払った昇給分の給与等及び本件解決金に相当する額である933万9500円について,損害賠償請求権又は不 が,被告財団法人に対し,平成12年度補助金のうち,平成11年度までに被告財団法人がBに対して支払った昇給分の給与等及び本件解決金に相当する額である933万9500円について,損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使しないことの違法確認を求めるものであるところ,証拠(甲10,11)によれば,原告は,第1回監査請求において,被告財団法人がBを採用して異例の昇進・昇給をさせ,退職後には無用の本件解決金を支払ったにもかかわらず,被告市長が被告財団法人に対し平成12年度補助金を交付したことは違法・不当であると主張し,上記給与等のうち少なくとも945万5000円は違法・不当であるから,別府市監査委員に対し,被告A,被告財団法人及びBに対して損害賠償等の請求をするように求めたことが認められる。 そうすると,第1回監査請求において,原告は,財務会計行為として,平成12年度補助金交付の違法を指摘し,被告Aに対してその一部について填補賠償を求めているだけでなく,被告財団法人に対しても損害賠償等を求めているのであって,後者の監査請求に対応する住民訴訟は,地方自治法242条の2第1項4号に規定された財務会計上の行為又は怠る事実の相手方に対する損害賠償請求又は不当利得返還請求である。 普通地方公共団体の住民が,当該普通地方公共団体に対し,一定の実体法上の請求権の行使を求める監査請求をした場合には,特段の事情が認められない限り,当該実体法上の請求権を当該普通地方公共団体において行使しないことが違法,不当であるという財産の管理を怠る事実についての監査請求をもその対象として含むものと解するのが相当である。(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)前記事実関係に鑑みれば,本件において特段の事情は認められず,原告は,第 の対象として含むものと解するのが相当である。(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)前記事実関係に鑑みれば,本件において特段の事情は認められず,原告は,第1回監査請求において,被告財団法人に対する損害賠償請求権等の行使を求める監査請求をしたのであるから,その請求権を行使しないことが違法,不当であるという本件請求1に係る訴えの審理の対象となる財産管理を怠る事実についても,第1回監査請求の対象として含まれていたと解するのが相当である。 ウ以上のとおり,監査請求の対象と訴えの対象との間に同一性があると認めることができるから,請求1に係る訴えは,監査請求を前置した適法なものであり,この点に関する被告らの主張は採用できない。 (2) 請求5に係る訴えについてア被告らは,請求5に係る訴えは,被告市長が被告財団法人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実を対象としているところ,第2回監査請求では,被告Aに対する損害賠償請求権の行使を怠る事実の違法確認が求められているにとどまるから,請求5に係る訴えとの関係で監査請求を前置していない旨主張する。 イそこで検討するに,前記のとおり,住民訴訟を提起する場合において,住民監査請求を前置しているというためには,原則として,住民訴訟の対象とした財務会計行為又は怠る事実と,住民監査請求の対象とした財務会計行為又は怠る事実との間に同一性が認められる必要がある。 しかしながら,住民監査請求は,住民訴訟の前置手続として,まず,当該普通地方公共団体の監査委員に,住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え,当該行為又は怠る事実の違法,不当を当該普通地方公共団体の自治的,内部的処理によって予防,是正させることを目的とするものであると解されるとこ 民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え,当該行為又は怠る事実の違法,不当を当該普通地方公共団体の自治的,内部的処理によって予防,是正させることを目的とするものであると解されるところ(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照),監査請求をするにあたっては時間的な制約も大きく,請求人がすることのできる主張・立証にも限界があること,監査委員が執ることができる措置は,請求人が求めた是正措置に限定されないこと等に鑑みれば,その請求内容としては当該行為又は怠る事実の是正のために必要な措置を広く含むというべきであって,住民訴訟において要求されるものと同程度に,厳密に請求内容を特定することは要求されていないというべきである。上記のような監査請求の役割に鑑みると,住民訴訟の対象となる財務会計上の行為又は怠る事実は,監査請求に係る同行為又は事実と完全に一致している必要はなく,住民訴訟の対象と監査請求の対象との間に事件の同一性が認められ,住民訴訟の請求内容として主張された事実又は行為が,形式上,監査請求書に記載されていなくても,実質的には監査請求の対象としているとみることができるような場合には,監査請求前置の要件を充足しているというべきである。 ウこれを本件についてみるに,請求5に係る訴えは,原告が,被告市長に対し,平成11年度補助金のうち,被告財団法人がBに対して支払った昇給分の給与等及び本件解決金に相当する額である933万9500円について,いずれも情実人事等による不正な支出であって上記補助金の一部を違法又は目的外に使用したものであるとして,被告市長が被告財団法人に対し損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使しないことの違法確認を求めるものであるところ,証拠(甲21,22)によれば,原告は,第 又は目的外に使用したものであるとして,被告市長が被告財団法人に対し損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使しないことの違法確認を求めるものであるところ,証拠(甲21,22)によれば,原告は,第2回監査請求において,被告財団法人がBを採用して異例の昇進・昇給をさせ,退職後には無用の本件解決金を支払ったことは,被告Aが被告財団法人の理事長としての権限を濫用して,別府市及び被告財団法人に対し多大の損害を与えたという不法行為に該当し,別府市が被告財団法人に対して,平成8年度から平成11年度までに交付した本件補助金のうち,昇給分の給与等及び本件解決金合計933万9500円の損害賠償を被告市長である被告Aに対して求めないことは,違法・不当に財産の管理を怠る事実であるから,別府市に対し,怠る事実の違法・不当性を改めるために必要な措置を講じるよう求めたことが認められる。 以上のとおり,請求5に係る訴えと第2回監査請求は,いずれも,被告財団法人がBに対し昇給分の給与等及び本件解決金を支払ったことが違法又は不当であるとして,別府市が上記給与等に相当する損害を被ったことを理由とするものであり,この点においては実質的に同一の事実関係に基づく申立てないし請求であるといえる。損害賠償請求権は,その責任原因が大筋において同一であるときでも,関与の態様,程度や主観的要件等については,相手方ごとに検討を要するものであるから,住民訴訟において損害賠償請求権の不行使を問題とする場合には,損害賠償を求める相手方ごとにそれぞれ監査を前置すべきものとも解されるが,本件においては,被告Aは被告財団法人の代表権を有する理事長でもあって,原告は,第2回監査請求において,被告Aが被告財団法人の代表権のある理事長として権限を濫用してこれを行ったとしてその不法行為を問題として指 は,被告Aは被告財団法人の代表権を有する理事長でもあって,原告は,第2回監査請求において,被告Aが被告財団法人の代表権のある理事長として権限を濫用してこれを行ったとしてその不法行為を問題として指摘するだけではなく,上記のように,被告財団法人がBに対して支払った昇給分の給与等及び本件解決金が違法・不当であると主張して,監査委員に対し,必要な措置を講じるよう求めていること,前記2(1)のとおり,原告は,第1回監査請求において,平成12年度の補助金についてほぼ同一の事実関係を主張して,被告財団法人に対する損害賠償又は不当利得返還の請求を求めていたこと等に鑑みれば,第2回監査請求は,被告Aに対する請求権の行使を怠る事実のみではなく,実質的には,被告財団法人に対する請求権の行使を怠る事実についても,監査請求の対象としていたとみることができる。 したがって,請求5に係る訴えは,住民監査請求前置の要件を満たすというべきであり,この点に関する被告らの主張は採用できない。 3 4号請求とともに3号請求をすることの適法性(争点3。ただし,請求1に係る訴えについてのみ検討する。)(1) 別府市の住民である原告は,平成12年度補助金交付決定が違法であると主張し,別府市に代位して平成12年度補助金交付決定を行った被告Aに対して損害賠償を求め(請求4),さらに,同補助金交付決定の相手方である被告財団法人に対する損害賠償及び不当利得返還を求める(請求3)とともに,同一の損害賠償請求権及び不当利得返還請求権について,被告市長に対し,その行使を怠る事実の違法確認を求めている(請求1)ところ,被告らは,同一の請求権について4号請求をする場合には3号請求する実益がないとして,3号請求訴訟(請求1に係る訴え)については訴えの利益はなく,不適法である旨主張する。 (2) る(請求1)ところ,被告らは,同一の請求権について4号請求をする場合には3号請求する実益がないとして,3号請求訴訟(請求1に係る訴え)については訴えの利益はなく,不適法である旨主張する。 (2) しかしながら,地方自治法は,同一の条項で住民訴訟の一類型として3号請求及び4号請求を規定しているところ,両請求の間に優先順位を定めた規定はなく,両請求を同時に求めることを許さないと定めた規定も存在しない。また,3号請求と4号請求との間には,被告とされるべき当事者や同請求が認容された場合の判決の効力が及ぶ範囲等に相違点が存在することに鑑みると,4号請求との関係において3号請求を補充的なものと解する根拠は存在しない。したがって,同一の請求権について,4号請求とともに3号請求を併合して提起することが不適法であると解する理由はなく(最高裁判所平成13年12月13日第一小法廷判決・民集55巻7号1500頁参照),請求1に係る訴えを提起する利益はないとする上記被告らの主張は採用できない。 4 監査請求期間徒過の有無(争点4。ただし,請求5に係る訴えについてのみ検討する。)(1) 被告らは,請求5に係る訴えについて,財務会計上の行為である補助金交付決定を行った日又は交付の日から,1年以上を経過した平成13年11月26日に監査請求(第2回監査請求)をしていることから,適法な監査請求を経ておらず,請求5に係る訴えは不適法である旨主張する。 (2)確かに,前提事実(6)のとおり,原告は,平成13年11月26日に第2回監査請求をしているところ,証拠(甲1の1ないし10,15の1,乙イ5)によれば,請求5において原告が問題とする平成11年度補助金(合計2億7000万円)は,同年4月30日に補助金交付決定がされ,被告財団法人に対し,同年5月26日に1億円,同年 0,15の1,乙イ5)によれば,請求5において原告が問題とする平成11年度補助金(合計2億7000万円)は,同年4月30日に補助金交付決定がされ,被告財団法人に対し,同年5月26日に1億円,同年8月25日に5000万円,同年10月29日に5000万円,平成12年1月31日に7000万円,それぞれ交付されたことが認められる。したがって,第2回監査請求は,平成11年度補助金交付決定及びその交付のときから,1年以上経過した後に申し立てられたことが認められる。 (3) 地方自治法242条2項本文は,同条1項が定める監査請求の対象事項のうち財務会計上の行為については,当該行為があった日又は終わった日から1年を経過したときは監査請求をすることができないものと規定しているが,上記の対象事項のうち怠る事実については,このような期間制限は規定されておらず,住民は怠る事実が現に存する限りいつでも監査請求をすることができるものと解される。 しかしながら,怠る事実を対象としてされた監査請求であっても,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とするものである場合には,当該行為が違法とされて初めて当該請求権が発生するのであるから,監査委員は当該行為が違法であるか否かを判断しなければ当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にあり,これを客観的,実質的にみれば,当該行為を対象とする監査を求める趣旨を含むものとみざるを得ないから,上記の期間制限が及ばないとすれば,同条2項本文の趣旨を没却することとなる。したがって,当該行為のあった日又は終わった日を基準として期間制限に関する本件規定を適用すべきである。 もっとも,怠る事実については監査請求期間の制限 れば,同条2項本文の趣旨を没却することとなる。したがって,当該行為のあった日又は終わった日を基準として期間制限に関する本件規定を適用すべきである。 もっとも,怠る事実については監査請求期間の制限がないのが原則であることに鑑みれば,監査委員が怠る事実の監査を遂げるために特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にない場合には,当該怠る事実を対象としてされた監査請求に上記の期間制限が及ばないものとすべきであり,そのように解しても,上記規定の趣旨を没却することにはならない(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決民集41巻1号122頁,最高裁判所平成14年7月2日第三小法廷判決・民集56巻6号1049頁参照)。 (4)これを本件についてみるに,前記2(2)ウのとおり,原告は,第2回監査請求において,別府市が被告Aに対して有する損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法・不当であるとして,監査委員に対し,これを是正するために必要な措置を講じるよう求めているところ,上記損害賠償請求権は,別府市が被告財団法人に対し平成8年度から平成11年度にかけて交付した本件補助金につき,当時被告財団法人の理事長であった被告Aが,その権限を濫用して,自己と姻戚関係にあるBを被告財団法人で雇用し,異例の昇進及び昇給をさせ,昇給分の給与等及び本件解決金という不当・不正な支払をし,市に損害を与えたことにより発生したというものであり,同監査請求の対象としては,実質的には被告財団法人がBに対して支払った昇給分の給与等及び本件解決金が違法・不当であるとして別府市が有するとされる被告財団法人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実について 質的には被告財団法人がBに対して支払った昇給分の給与等及び本件解決金が違法・不当であるとして別府市が有するとされる被告財団法人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実についても,含まれているとみることが相当である。 以上のとおり,第2回監査請求の監査事項は,別府市が,被告財団法人の理事長であった被告Aに対する損害賠償請求権の行使を怠る事実,被告財団法人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実であって,監査委員は,これら怠る事実の監査を遂げるためには,被告A及び被告財団法人の行為が別府市に対する関係で不法行為に該当するか,これにより別府市に損害が発生したか,被告財団法人の利得に法律上の原因があるか等を確定すれば足り,そのためには,平成8年度から平成11年度にかけて,別府市が被告財団法人に対し本件補助金を交付したこと,その内容,被告財団法人がBに対して昇給分の給与等及び本件解決金を支払ったこと,その支払分と本件補助金との対応関係等について,それぞれ事実を調査し,その違法性・不当性を判断する必要はあるが,本件補助金の交付決定又は交付が財務会計法規に違反する違法なものであったとされて初めて別府市の被告Aに対する損害賠償請求権や,被告財団法人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権が発生するものではないから,補助金交付決定や補助金の交付が違法であるか否かについて判断する必要はない。 そうすると,本件において第2回監査請求には,同法242条2項本文の適用がないとしても,同規定の趣旨が没却されるものではなく,監査請求期間の制限が及ばないものと解するのが相当である。 したがって,第2回監査請求は適法であり,この点に関する被告らの主張は採用できない。 5 本案の争点に対する判断(1) 判断の順序 ,監査請求期間の制限が及ばないものと解するのが相当である。 したがって,第2回監査請求は適法であり,この点に関する被告らの主張は採用できない。 5 本案の争点に対する判断(1) 判断の順序原告は,4号請求である請求3及び4との関係では,平成12年度補助金交付決定が違法であると主張するが(争点9参照),3号請求である請求1及び5との関係では,平成11年度及び平成12年度補助金交付決定の違法性を請求原因としては主張せず,被告財団法人が,既に交付を受けた補助金を,その条件に違反して支出したこと,又は,条件に違反する支出をしたにもかかわらずその支出分に相当する額の補助金を新たに別府市に申請しこれを受領したことが,別府市との関係で不法行為又は不当利得になると主張している(争点6及び7参照)。 そこで,上記各請求の成否を判断する前提として,まず,被告財団法人の事業内容,財務内容,並びに被告財団法人がBに対して支払った給与等及び本件解決金の内容等を検討し,その後に,上記各請求に関する争点について判断することとする。 (2) 被告財団法人の事業及び財務の内容等前提事実並びに証拠(甲9,12の7,12の17の12・26,13の32の9,13の33の3,15の2・3,乙イ1,2,7ないし11,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告財団法人の設立とその事業内容(ア) 被告財団法人は,平成4年12月24日,別府市及び大分県と他の私企業・団体が共同で出資し,基本財産2億6510万円で設立した公益法人である。平成12年4月当時の被告財団法人の基本財産は12億0237万3000円であり,その出資の内訳は,大分県と別府市が各5億円,企業・団体が2億0237万3000円である。 平成12年4月1日当時,被告財団法人では,当時被 告財団法人の基本財産は12億0237万3000円であり,その出資の内訳は,大分県と別府市が各5億円,企業・団体が2億0237万3000円である。 平成12年4月1日当時,被告財団法人では,当時被告市長であった被告Aがその理事長を務めていたほか,大分県商工労働観光部長及び別府商工会議所顧問であった者がその副理事長を務め,さらに,大分県又は別府市を代表する民間企業,大学,団体の代表者又は役員等が,その理事の役職に就いていた。 また,被告財団法人の職員は,平成11年1月当時,被告財団法人の常務理事が事務局長を兼務するほか,大分県から1名,別府市から8名,民間企業から2名の出向者,嘱託職員8名,臨時職員2名の合計22名で構成されていた。 (イ) 被告財団法人は,国際観光温泉文化都市である別府市に,コンベンションを誘致し,これを支援することによって,別府市及び大分県の国際相互理解の増進,地域経済の活性化,文化の向上に資すること等を目的とし,①コンベンションの誘致及び主催者に対する支援,②コンベンション都市別府の広報及び宣伝等の事業,③コンベンションの調査及び企画,④コンベンションに関する情報の収集及び提供,⑤コンベンションに係る人材育成及び啓発,⑥大分県立別府コンベンションセンター(以下「県立センター」という。)及び別府市市民ホール(以下「市民ホール」という。)の管理及び運営等の事業を行っている。 被告財団法人の活動拠点は,平成7年3月に開館した県立センター及び市民ホールの複合施設であるコンベンション施設(通称「ビーコンプラザ」と呼称されているため,以下通称名を使用する。)に置かれており,被告財団法人は,大分県立別府コンベンションセンターの設置及び管理に関する条例(乙イ1)10条に基づいて,大分県知事から県立センターの管理を受託する るため,以下通称名を使用する。)に置かれており,被告財団法人は,大分県立別府コンベンションセンターの設置及び管理に関する条例(乙イ1)10条に基づいて,大分県知事から県立センターの管理を受託するとともに,別府市市民ホールの設置及び管理に関する条例(乙イ2)10条に基づいて,被告市長から市民ホールの管理を受託している。 (ウ) ビーコンプラザは,被告財団法人の拠点として,①国際交流促進のための拠点,②地域活性化への寄与,③地域文化芸術水準の向上等の使命,役割を担ってきている。平成7年3月の開館以来,全国知事会議,日韓シンポジウム,西暦2000年世界地熱会議等の全国又は国際的規模の大会・集会や学会,世界的ピアニストであるマルタ・アルゲリッチのコンサート支援・開催を初めとする文化事業,九州規模又は地域的な大会・集会,後援会,研修会,コンサート等の会場として使用されるなど,別府市及び大分県の国際交流促進,文化・福祉向上のための拠点として事業活動が行われている。 平成13年度末において,ビーコンプラザの利用者数の累計は,239万6183人を数えており,年間20万人から40万人程度がビーコンプラザを利用している。 イ被告財団法人の財務内容(ア) 平成4年度以降,大分県及び別府市が被告財団法人に対して交付した補助金額(平成15年度については予算金額)の推移は,別紙2のとおりである。 大分県及び別府市は,平成4年5月ころ,ビーコンプラザの上記事業を支援するために,被告財団法人に対して,継続的に補助金を交付することを協議して検討した結果,ビーコンプラザの人件費,光熱水費,業務委託料等の支出を約6億1000万円,使用料収入を1億7200万円と見込み,その差額4億3800万円の財源措置を大分県及び別府市で講じる必要があるとの判断に至り,平成8年 ザの人件費,光熱水費,業務委託料等の支出を約6億1000万円,使用料収入を1億7200万円と見込み,その差額4億3800万円の財源措置を大分県及び別府市で講じる必要があるとの判断に至り,平成8年度以降,被告財団法人が行う前記事業の支援を目的として,大分県が年1億円,別府市が年3億円の補助金を交付することと決定した。なお,本件補助金の交付決定の際には前提事実(2)イのとおりの条件が付されたが,本件補助金の使途につき具体的な条件が付されたことを認めるに足りる証拠はない。 その後,別府市は,平成10年度には,被告財団法人の経費削減等の努力を期待して,別府市が交付する補助金を前年比3000万円減額して2億7000万円にすることを決定し,同年度から平成13年度まで,同額の補助金を交付した。 (イ) なお,平成11年度補助金の交付申請に際して,被告財団法人は,同年度の毎月の支出を各3600万円,事業収入を1200万円(4月を除く。)と見込み,被告財団法人の事業運営のために不足する財源として,大分県に対し1億円,別府市に対し2億7000万円の合計3億7000万円の補助金を請求している。上記支出の内訳は,人件費が500万円,光熱水費が800万円,委託料(ビーコンプラザの清掃,設備運転,警備等に係る費用)が1700万円,一般管理費が400万円,その他200万円として算出されており,ビーコンプラザの運営経費等として,毎月ほぼ一定額の費用を要することが推認される。 (ウ) 被告財団法人における平成11年度の収支決算によれば,同年度の収入合計は6億9471万4126円であり,その内訳は,補助金が3億8000万円(ただし,このうち1000万円は,別府アルゲリッチ音楽祭に関する別府市教育委員会の負担金である。),事業収入が1億5834万2704円,繰入 4126円であり,その内訳は,補助金が3億8000万円(ただし,このうち1000万円は,別府アルゲリッチ音楽祭に関する別府市教育委員会の負担金である。),事業収入が1億5834万2704円,繰入金収入(ただし,同特別会計から一般会計への繰入金)が1億1475万6000円,基本財産運用収入が2417万6633円,基金積立取崩収入が1000万円,その他会費収入等が743万8789円である。他方,支出合計は7億0324万2933円であるため,同年度は852万8807円の赤字決算となったが,前期からの繰越金が6301万0686円存在したため,次期繰越金としては5448万1879円が計上された。 また,同被告の平成12年度の収支決算によれば,同年度の収入合計は8億1050万0159円であり,その内訳は,補助金が3億7000万円,繰入金収入(一般会計から施設管理事業特別会計への繰入金)が2億5726万8000円,事業収入が1億7015万8517円,基本財産運用収入・会費収入等が1307万3642円である。他方,支出合計は7億9158万1653円であるため,同年度は1891万8506円の黒字決算となった。 (3) 被告財団法人のBに対する支出ア被告財団法人によるBの雇用と雇止めに至る経緯証拠(甲12の1,12の16の2ないし7・13・15・16・22・26・27,12の17の1ないし3・14・16・23・29ないし32・34・35・38・39,13の25の1,13の32の34,13の33の15・18ないし20,乙イ6,乙ロ1,4,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実(前提事実を含む。)が認められる。 (ア) 前提事実(3)アのとおり,Bは,被告財団法人から,平成8年4月22日に,雇用期間平成9年3月31日までとして,業務部業務課 論の全趣旨によれば,次の事実(前提事実を含む。)が認められる。 (ア) 前提事実(3)アのとおり,Bは,被告財団法人から,平成8年4月22日に,雇用期間平成9年3月31日までとして,業務部業務課の嘱託員として雇用され,その後,二度の雇用期間の更新がなされ,平成11年3月31日まで雇用された。また,前提事実(3)イのとおり,被告財団法人が,Bに対して支払った給与,賞与及び手当は,別紙1記載のとおりである。 (イ) Bは,被告AとはBの従姉妹が被告Aの義兄の妻であるという遠い縁戚であるところ,被告Aが市議会議員であったころ,Bが被告Aの選挙を応援したことから知り合い,それ以降,交友関係を有していた。平成8年2月下旬ころ,Bは,当時被告市長兼被告財団法人の理事長であった被告Aに対し就職口の紹介を頼んだところ,同年4月ころ,被告Aから被告財団法人の人員に空きがあるから面接を受けてみないかと電話で誘われ,同月10日ころ,被告財団法人の当時のD常務理事及び総務部長の面接を受けた。そして,同月17日ころ,同常務理事がBに対し,電話で採用の旨を伝え,22日から出勤するように伝えた。 なお,Bは,平成8年2月2日に大分地方裁判所杵築支部から破産宣告を受けていたが,被告財団法人に採用される際に提出した履歴書(甲12の17の16)にはそのことを記載せず,「平成7年2月経営内容悪化のため破産」と同人が経営する会社の破産の事実のみ記載し,また,学歴については「大分県立大分工業高校中退」と記載した。 (ウ) 平成10年3月5日及び同月12日,「ビーコン(被告財団法人の通称名である。)の将来と市政を憂う一市民」と名乗る者から,被告財団法人理事会宛てに,Bが被告Aの親戚であるが,破産宣告を受けており,暴力団とのつきあいもあるらしい旨が記載され,「一日も早く 人の通称名である。)の将来と市政を憂う一市民」と名乗る者から,被告財団法人理事会宛てに,Bが被告Aの親戚であるが,破産宣告を受けており,暴力団とのつきあいもあるらしい旨が記載され,「一日も早く辞めていただいたほうがよろしいかと存じます。」と記載された投書(甲12の16の26・27)がなされた。 その後,同年10月27日,別府市市議会決算特別委員会において,E市議会議員からBの採用や昇任・昇給についての質問が出され,その中で同議員は,Bが破産宣告を受けているにもかかわらず採用されたこと,昇任・昇給が早いこと,Bが職場内で「おれはA市長と毎日会っているんだ」などと話していること等を指摘し,Bの採用等は被告Aの情実人事ではないかと質問した(甲12の17の23)。上記特別委員会における審議については,同日の今日新聞夕刊に「「ビーコン」で情実人事」との見出しで報道され(甲12の16の13),さらに翌日の毎日新聞で「「情実人事」?17カ月で部長」との見出しで報道されるに至った。 (エ) 被告財団法人の内部では,上記市議会議員の質問や新聞報道を受けて,同年11月から12月にかけて,Bの経歴や職場内での言動,その他非違行為の有無について調査を行ったところ,前記(イ)のとおり破産宣告を受けていたこと,学歴詐称があったことが判明し,そのほかにも,業務部に所属する部下の女子臨時職員に対し自己の知り合いのスナックで稼働するように強要し,さらに同職員から3回にわたって借金をしたこと,職場放棄や上司の命令無視等の職務上の問題行為を行ったこと,組織内外で被告Aと姻戚関係があることを吹聴したこと等の事実が浮かび上がってきた。 Bは,前記新聞報道等を受けて,同年10月30日,被告財団法人に対し,同年12月31日をもって退職する旨の辞職願(甲12の16の15 戚関係があることを吹聴したこと等の事実が浮かび上がってきた。 Bは,前記新聞報道等を受けて,同年10月30日,被告財団法人に対し,同年12月31日をもって退職する旨の辞職願(甲12の16の15)を提出した。しかし,同人は,同月4日に,上記辞職願の撤回を申し入れ(甲12の16の16),職場内部における上記非違行為の聞き取り調査に対しては,その大半を否認した。その後,被告財団法人内でBの処遇を検討した結果,同年12月28日,Bに対し,①平成11年3月31日の期間満了により退職扱いとして,再雇用を行わないこと,②平成10年12月31日付けで業務部長兼施設管理課長の職を免じ,翌平成11年1月1日付けで施設維持管理担当を命ずる(給与は月額35万円で維持する。)ことを決定し,その旨を伝えた。 その結果,Bは,同年3月末日をもって,被告財団法人を退職扱いとなった。 イ本件解決金の支払に至る経緯(ア) 前提事実(4)のとおり,Bは,平成11年3月末日をもって,被告財団法人から雇止めとされたことを不服として,同年4月3日,被告財団法人を相手方として,被告財団法人の従業員の地位にあることの確認,1か月50万2450円の給与等の仮払いを求め,大分地方裁判所に対し,本件仮処分を申し立てた。同仮処分事件の中で,Bは,1年ごとの嘱託契約は,更新を前提とした継続的な雇用契約であったと主張し,また,雇止めの理由とされた前記非違行為についてもその多くを争った。 同事件は,審尋期日が重ねられた後,同年10月19日,被告財団法人とBとの間で,上記両名間の労働契約が同年3月31日に任用期間の満了により終了したことを相互に確認する,被告財団法人がBに対し650万円の解決金(本件解決金)を支払う,Bは本件仮処分の申立てを取り下げる旨の内容で和解が成立した。(甲1 年3月31日に任用期間の満了により終了したことを相互に確認する,被告財団法人がBに対し650万円の解決金(本件解決金)を支払う,Bは本件仮処分の申立てを取り下げる旨の内容で和解が成立した。(甲12の3ないし13,12の16の19・22,13の32の8)(イ) 被告財団法人は,本件仮処分事件で成立した上記和解を受け,本件解決金の支出につき,同年10月19日に理事長決裁を受け,同年10月21日に開催した同年度の第1回臨時理事会に報告した上,理事会の了承を得た。被告財団法人の同年度当初予算に計上されていなかった本件解決金を計上するに当たっては,同年度一般補正予算(第1号)を編成し,上記臨時理事会で承認を得た上で支出した。 その後,同年10月22日に,支出伺書が決裁され,同年度一般会計から,Bに対する本件解決金650万円が支払われた。 なお,同年度の事業報告書・収支決算書にも,和解金支払として650万円が計上されており,同決算書は,平成12年6月29日,同年度第1回理事会で承認された。(甲9,乙イ10,弁論の全趣旨)ウ被告財団法人及び別府市における関係者の処分等別府市及び被告Aは,前記和解が成立したことを受けて,平成11年11月16日,その責任の所在を明らかにするために,被告A,当時の市の助役(2名)及び収入役に加え,事件当時観光課に所属していた市の職員等3名の合計7名の関係者を処分した。そのうち,被告A,助役2名,収入役,元観光課参事(元被告財団法人総務部長)の5名については,給与月額10分の1の1か月間の減給処分(被告Aについては9万7000円の減給),元観光経済部長については文書訓告,元観光課長については口頭訓告とされた。 また,被告財団法人事務局内部の管理運営上の責任を取るため,C常務理事兼事務局長が同年6月30日付け 万7000円の減給),元観光経済部長については文書訓告,元観光課長については口頭訓告とされた。 また,被告財団法人事務局内部の管理運営上の責任を取るため,C常務理事兼事務局長が同年6月30日付けで事務局長を辞任し,同年9月30日付けで常務理事を辞任した。また,別府市から被告財団法人に派遣され,当時総務部長の地位にあったFは,派遣職員の職を解かれ,別府市役所勤務に復帰した。 (甲13の32の12,18ないし20,証人C,弁論の全趣旨)(4) 平成12年度補助金交付決定の違法性の有無(争点9)原告は,請求3及び4の関係で,平成12年度補助金交付決定の違法事由として,補助金交付規則違反と地方自治法232条の2違反を指摘するので,前記認定事実を前提として,これらの点について検討する。 ア補助金交付規則違反の有無(ア) 平成12年度補助金の交付証拠(甲2の1・2,乙イ6,9)及び弁論の全趣旨によれば,被告財団法人は,別府市に対し,平成12年4月1日付けで,申請額を2億7000万円とした補助金交付申請を行ったこと,その際,被告市長は,被告財団法人から同年度事業計画書収支予算書並びに役員名簿及び評議員名簿の提出を受け,同年5月2日付けで,金額を申請どおり2億7000万円として補助金交付決定を行ったこと,被告市長は,同月31日に1億円,同年8月31日に5000万円,同年10月31日に5000万円,平成13年1月31日に7000万円を交付したことが認められる。 (イ) 補助金交付規則5条違反の有無補助金等の交付を申請する者は,補助金等交付申請書に事業計画書及び収支予算書を添えて市長に提出しなければならず(補助金交付規則4条),市長は,補助金等交付申請に係る上記各書類を審査し,その他必要に応じた調査を行った後に,補助金等の交付決定をする( 事業計画書及び収支予算書を添えて市長に提出しなければならず(補助金交付規則4条),市長は,補助金等交付申請に係る上記各書類を審査し,その他必要に応じた調査を行った後に,補助金等の交付決定をする(同規則5条)。 前記(ア)のとおり,平成12年度補助金交付決定をするに際しては,被告市長は,被告財団法人から上記各書類の提出を受けており,その審査がなされなかったことを窺わせる事情も見当たらず,これを審査した上で,補助金交付決定をしたことが推認されるから,この点について,同規則5条に違反する事実を認めることはできない。 (ウ) 同規則9条,10条1項違反の有無補助事業者である被告財団法人は,事業実績報告書及び収支決算書を決算終了後1か月以内に提出しなければならず(同規則9条),被告市長は,上記報告書等の内容を審査し,その報告に係る事業の成果が補助金の交付の決定の内容及びこれに付した条件に適合すると認められるときに交付すべき額を確定し,補助金を交付する(同規則10条1項)。 被告財団法人は,被告市長に対し,平成11年度の事業実績報告書及び収支決算書を同年度決算終了後1か月を徒過した平成12年7月7日付けで提出しており(甲9),原告は,平成12年度補助金交付決定が同年5月2付けでされていることから,補助金交付決定に先立って上記報告書等の内容が審査されていない旨指摘し,同規則9条及び10条1項に違反した違法がある旨主張する。 しかしながら,同規則10条1項は,補助金等の交付決定の後に行う補助金等の交付額の確定及び補助金等の交付のために,原則として,市長が事業実績報告書等を受理してその審査を行う必要があることを定めた規定であって,補助金等の交付決定に先立ち,上記報告書等を審査することを義務づけた規定ではない。したがって,仮に,平成12年 て,市長が事業実績報告書等を受理してその審査を行う必要があることを定めた規定であって,補助金等の交付決定に先立ち,上記報告書等を審査することを義務づけた規定ではない。したがって,仮に,平成12年度補助金の交付について同規則10条1項に抵触することがあるとしても,そのことは,平成12年度補助金交付決定の違法事由とは無関係である。 なお,同年度の補助金交付については,前記(ア)のとおり,同年5月31日に1億円,同年8月31日に5000万円,同年10月31日に5000万円,平成13年1月31日7000万円が交付されているところ,前記のとおり被告財団法人の平成11年度事業実績報告書及び収支報告書は平成12年7月7日付けで別府市に提出されていることから,被告市長は,同年5月31日付けの補助金1億円については上記各報告書を審査せずに交付をしたことが明らかである。しかしながら,同規則10条2項によれば,事業の性質上必要と認めたときは,上記各報告書の審査を待たず,補助金等交付決定時からこれを交付することができると定められており,前記被告財団法人の業務内容やその財務状況(特に前記(2)イ(イ)参照)に鑑みると,補助金を早期に交付しなければ被告財団法人の事業遂行に支障を来すおそれがあるといわざるを得ず,被告市長は,そのような状況に鑑みて,事業の性質上必要と認めて,同規則10条2項に基づき,上記各報告書の提出前に,補助金を交付したものと推認することも可能であるから,このことから,上記補助金の交付が違法になるとはいえない。 以上のとおりであって,この点に関する原告の主張は採用できない。 イ地方自治法232条の2違反の有無(ア) 地方自治法232条の2は,補助金を交付することができるのは,公益上の必要性がある場合に限っており,この公益上の必要性の る原告の主張は採用できない。 イ地方自治法232条の2違反の有無(ア) 地方自治法232条の2は,補助金を交付することができるのは,公益上の必要性がある場合に限っており,この公益上の必要性の有無の判断については,当該地方公共団体の議会や首長に一定の裁量権が認められると解すべきであり,その裁量の逸脱又は濫用があったと認められる場合に限り,当該補助金の交付は,同条に違反し,司法上違法と判断されるものと解するのが相当である。 そして,補助金交付の際に行った公益上の必要性があるとの判断に裁量権の逸脱又は濫用があるか否かは,当該補助金交付の目的・趣旨,効果及び経緯,補助の対象となる事業の目的,性質,活動状況等,当該普通地方公共団体の財政規模及び状況等の諸般の事情を総合的に考慮した上で検討することが必要であると解される。 (イ) 本件についてこれをみるに,平成12年度補助金は被告財団法人が行う事業を支援する目的で交付されたものであるが,前記(2)アによれば,被告財団法人の事業の目的,性質,活動状況等には公益性が認められ,前記(2)イによれば,被告財団法人の事業を継続するためには,平成12年度補助金の交付が必要であったと認められるから,平成12年度補助金交付決定を行ったこと自体について,公益上の必要性が存在しないということはできない。この点,原告も被告財団法人の事業自体に公益上の必要性が存在しない旨主張するものではなく,その主張は,補助金交付規則及び地方自治法232条の2の趣旨に鑑みれば,既に補助金を交付した補助事業者においてその補助金交付の目的に反する違法な金銭費消がなされた場合には,①公金の返還を求めるか,又は,違法な金銭費消分に相当する額を減額した上で補助金交付決定し,②事業者に対して業務改善や財務健全化を促すなどの措置を執った上 に反する違法な金銭費消がなされた場合には,①公金の返還を求めるか,又は,違法な金銭費消分に相当する額を減額した上で補助金交付決定し,②事業者に対して業務改善や財務健全化を促すなどの措置を執った上で補助金交付決定をすべきであるのに,このような措置を執らずに,前年度までと同額の平成12年度補助金交付決定をしたことが,同法232条の2の公益性を欠くというものと理解することができ,それは,第一次的には,被告財団法人における補助金の使用方法の違法を主張するものである。 そこで,上記原告の主張について検討するに,前記1(2)イのとおり,地方自治法242条の2が規定する住民訴訟は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え,もって,地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものであり,その対象は,財務会計上の行為又は怠る事実に限られているところ,財務会計上の行為を捉えて上記規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは,当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られる(最高裁判所平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁)。 したがって,本件においても,平成12年度補助金交付決定が違法との評価を受けるためには,同決定自体に固有の財務会計上の違法が存することが必要であり,被告財団法人における補助金の使用方法の違法を主張することは原則として許されない。 被告財団法人は,前記のとおり,遅くとも平成9年ころから,継続的に補助金の交付を受けてきた,いわゆる第三セクターであるが,仮に,被告財団法人において補助金の目的外の使用があったとしても,それは,別府市との関係で補助金交付決定に付された条件に 年ころから,継続的に補助金の交付を受けてきた,いわゆる第三セクターであるが,仮に,被告財団法人において補助金の目的外の使用があったとしても,それは,別府市との関係で補助金交付決定に付された条件に違反したことを意味するにすぎない。したがって,そのような場合,被告市長において,原告が主張するような措置を執らないことが直ちに財務会計上違法になるということはできず,そのような措置を執らずに前年度と同額の補助金を交付することが,著しく合理性を欠き,予算執行の適正確保の見地から看過し得ない裁量権の逸脱・濫用がある場合に限って,当該補助金交付決定が財務会計上違法の瑕疵を帯びるというべきである。 (ウ) そこで,(イ)の基準に従って検討する。 a 前記(3)アで認定した事実によれば,被告財団法人におけるBの採用及びその後の昇任・昇給は,極めて不自然であって,それには被告AとBとの関係が影響したのではないかと推認することができ,少なくとも,被告財団法人内部の人事権の行使の問題としては,その妥当性に疑問があるといわざるを得ない。 しかしながら,被告財団法人内部の人事権行使上の妥当性の問題は,第一次的に,その人事権者の責任としての問題である。 b また,本件解決金の支払は,裁判上の和解という手続きを経てなされているところ,証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば,被告財団法人は,当該事件が,被告財団法人の運営及び活動に影響を与えるおそれがあること等を考慮した上で,内部的手続を踏んで意思決定をしたと認められるから,その判断の当否は被告財団法人内部の意思決定権者の責任としての問題である。 なお,原告は,この点に関連して,被告財団法人は当初和解に応じない方針であったにもかかわらず,被告Aの強い意向のもとで和解が成立するに至った旨主張しており,証人Cも同趣旨 責任としての問題である。 なお,原告は,この点に関連して,被告財団法人は当初和解に応じない方針であったにもかかわらず,被告Aの強い意向のもとで和解が成立するに至った旨主張しており,証人Cも同趣旨の証言をする部分がある。しかしながら,証人Cは,同人の証言によれば本件仮処分の和解については直接関与していないことが認められるから,この部分に関する同人の証言は直ちに採用することはできず,他に原告の主張を認めるに足りる証拠はない。 c 以上a及びbの認定事実に照らせば,被告財団法人がBに対し,昇任及び昇給をし,本件解決金を支払ったことについては,被告財団法人内部の人事権者及び意思決定権者の責任の問題を生じさせる可能性はあるものの,前記(3)ウのとおり,この点の責任については,被告Aや関係職員に対する一応の処分がされており,別府市においては,第三セクターに係る財政・人事管理を見直すため,平成11年9月1日から第三セクター等検討委員会を発足させたこと(乙ロ7),前記(2)イのとおり,本件補助金は被告財団法人が行う事業の支援を目的として交付されたものであるが,具体的な使途を定めて交付されたものではなく,補助金の使用方法については,被告財団法人の広範な裁量に委ねられていたというべきものであること等の事実を併せて検討した場合,上記額について公金の返還を求め,又は上記相当額を減額した上で補助金交付決定をしなかったことが,別府市の被告財団法人に対する補助金交付について著しく合理性を欠き,予算執行の適正確保の見地から看過し得ない裁量権の逸脱・濫用があるということはできない。 (エ) したがって,平成12年度補助金交付決定について,地方自治法232条の2に違反する事実を認めることはできず,この点に関する原告の主張は理由がない。 ウまとめ以上によれば とはできない。 (エ) したがって,平成12年度補助金交付決定について,地方自治法232条の2に違反する事実を認めることはできず,この点に関する原告の主張は理由がない。 ウまとめ以上によれば,平成12年度補助金交付決定について,原告が主張する違法は存しないといわざるを得ず,このことを理由として,被告財団法人及び被告Aに対し,損害賠償責任を問うことはできない。 (5) 被告財団法人の別府市に対する不法行為責任の有無(争点6)被告財団法人の収入は,その多くを別府市の補助金に頼っていることは確かであるが,前記(2)イのとおり,それ以外にも被告財団法人の事業収入や大分県の補助金,基本財産の運用資金等による収入があることが認められる。したがって,被告財団法人が,給与等及び本件解決金をBに支払ったことによって,被告財団法人が別府市に申請する補助金額が増額し,また,別府市が被告財団法人に交付すべき補助金額が増額するという直接的な関係にあるとは言い難い。実際にも,別府市が被告財団法人に交付した補助金は,平成10年度から平成12年度まで,各2億7000万円であり,被告財団法人がBに対し給与等及び本件解決金を支払ったことによって,補助金額が増額したことはない。 したがって,被告財団法人がBに対し上記支払をしたこと,及び上記支払にかかわらず本件補助金の交付を申請したことが,別府市との関係で違法となり,別府市に同額の損害を生じさせたということはできない。 (6) 被告財団法人の別府市に対する不当利得の有無(争点7)本件補助金の交付については,被告市長においてその交付決定の取消しをしていないことは,当事者間に争いがない。前記1(2)アで検討したように,補助金交付決定について,被告市長が取り消した場合には,別府市は当該取消しに係る補助金交付額について てその交付決定の取消しをしていないことは,当事者間に争いがない。前記1(2)アで検討したように,補助金交付決定について,被告市長が取り消した場合には,別府市は当該取消しに係る補助金交付額についてその返還請求権を取得することになるが,仮に,補助事業者において補助金交付の条件に違反した使用があった場合においても,そのことから直ちに法律上の原因が失われるという関係にはなく,取り消すまでは,被告財団法人の補助金の受領につき,法律上の原因が存続するといわざるを得ない。したがって,別府市は,被告財団法人に対し,補助金交付決定の取消しをしないで,不当利得返還請求権を行使することはできず,本件において取り消していない以上,不当利得返還請求権は発生していないといわざるを得ない。 6 結論以上によれば,本件訴えのうち,被告市長に対する請求2及び6ないし8に係る訴えはいずれも不適法であるからこれを却下することとし,その余の請求はそのほかの争点について検討するまでもなく理由がないことに帰するからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日平成15年9月24日)大分地方裁判所民事第2部裁判長裁判官  関美都子裁判官  西村英樹裁判官家原尚秀

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