平成22(行ウ)67等 不作為違法確認等請求事件(甲事件),地位確認請求事件(乙事件)

裁判年月日・裁判所
平成23年6月24日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文13,984 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 (甲事件)大阪市α区長が平成21年12月1日付けで原告に対してした転入届不受理処分を取り消す。 2 (乙事件)原告が大阪市の敬老優待乗車証の交付申請を行ったときは,被告は原告に対し敬老優待乗車証を交付しなければならないことを確認する。 第2 事案の概要本件は,大阪市α区と八尾市との境界線上に所在する別紙物件目録記載の建物(以下「原告居宅」といい,原告居宅のある一棟の建物を「B棟」と,B棟を含むマンション全体を「本件マンション」という。)に居住し,八尾市において住民登録を有していた原告が,大阪市α区長に対して転入届(以下「本件転入届」という。)を提出したところ,同区長の補助機関である同区職員がその受理を拒否した(以下「本件不受理処分」という。)ため,本件不受理処分が違法であるとしてその取消しを求めるとともに(甲事件),大阪市内に居住する高齢者で交付要件を満たす者が交付申請すればその申請者に対して交付される大阪市発行の敬老優待乗車証(以下,単に「敬老優待乗車証」という。)について,原告が交付申請を行ったときは被告において敬老優待乗車証を交付しなければならない義務があることの確認を求めた(乙事件)事案である。 1 法令等の定め(1) 転入届等の取扱い住民基本台帳法(以下「住基法」という。)22条1項は,転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい,出生による場合を除く。)をした者は,転入をした日から14日以内に,同項所定の事項を市町村長に届け 出なければならない旨規定している。 住民基本台帳法施行令(以下「住基法施行令」という。)7条においては,市町村長は,新たに市町村の区域内に住 14日以内に,同項所定の事項を市町村長に届け 出なければならない旨規定している。 住民基本台帳法施行令(以下「住基法施行令」という。)7条においては,市町村長は,新たに市町村の区域内に住所を定めた者その他新たにその市町村の住民基本台帳に記録されるべき者があるときは,一定の場合を除き、その者の住民票を作成しなければならない旨規定しており,住基法施行令11条は,市町村長は,住基法の規定による届出があつたときは,当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して,住民票の記載等を行なわなければならない旨規定している。 なお,大阪市は地方自治法252条の19第1項に規定する指定都市(以下,単に「指定都市」という。)であるところ,上記各規定は,大阪市の区であるα区の区長に適用されることとなる(住基法38条1項,住基法施行令31条1項)。 (2) 審査請求前置住基法31条の4は,同法の規定により市町村長がした処分に不服がある者は,都道府県知事に審査請求をすることができる旨規定しており,指定都市においては,同条の「市町村長」は「市長又は区長」に,「都道府県知事」は「市長がした処分に不服がある者にあっては都道府県知事に,区長がした処分に不服がある者にあっては市長」とそれぞれ読み替えられる(住基法施行令31条2項)。また,同法32条は,同法31条の4に規定する処分の取消しの訴えは,当該処分についての審査請求の裁決を経た後でなければ提起することができない旨規定している。 (3) 住基法における行政手続法の適用除外住基法31条の2は,同法の規定により市町村長がする処分については,行政手続法第2章(申請に対する処分)及び第3章(不利益処分)の規定は適用しない旨規定している。 (4) 敬老優待乗車証について 被告が定める敬老 定により市町村長がする処分については,行政手続法第2章(申請に対する処分)及び第3章(不利益処分)の規定は適用しない旨規定している。 (4) 敬老優待乗車証について 被告が定める敬老優待乗車証交付事業実施要綱(以下「実施要綱」という。 甲6)は,「高齢者に敬意を表するとともに社会参加を促進し,いつまでも元気で健やかに活動していただくため」(実施要綱1条),大阪市内に居住する70歳以上の高齢者で,かつ,同市が指定する窓口で乗車証の交付申請ができる者を交付対象者として(実施要綱2条1項),大阪市営の地下鉄,バス及びニュートラムを利用できる敬老優待乗車証を交付する(実施要綱3条1項)旨規定している。 実施要綱4条1項は,交付申請の受付は,70歳に到達するものは到達月の3月前の16日から,大阪市外からの転入者で交付対象者となる者は転入日から,すでに交付対象者となっている者で未申請の者は申し出のあった日から行う旨規定しており,同条3項は,敬老優待乗車証の交付申請があったときは,受給資格の確認及び書類の点検を行い,資格要件を有する者には,敬老優待乗車証を交付する旨規定している。 2 前提事実(争いのない事実及び証拠(証拠番号は特記しない限り枝番を含む。 以下同じ。)により容易に認定できる事実)(1) 原告原告は,昭和▲年▲月▲日生まれで,平成2年9月に原告居宅を売買により取得して同所に居住し,肩書地において住民登録を有する者である(甲1から3まで,13,弁論の全趣旨)。 (2) 本件マンション及び原告居宅の位置本件マンションは,住宅棟2棟,駐車場棟2棟の建物からなる分譲マンションであり,その配置は別紙配置図のとおりである(甲5,8,14)。 原告居宅があるB棟は,別紙配置図のとおり,大阪市α区と八尾市との境界線上 は,住宅棟2棟,駐車場棟2棟の建物からなる分譲マンションであり,その配置は別紙配置図のとおりである(甲5,8,14)。 原告居宅があるB棟は,別紙配置図のとおり,大阪市α区と八尾市との境界線上にまたがって建築されており,登記上の所在地としては「八尾市β×番地1」及び「大阪市α区γ×番地1」が併記されている。B棟全体の集合エントランスは大阪市α区側に位置するが,B棟各階居室の配置は別紙配置 図のとおりであり,原告居宅の×号室(同配置図「I」に相当し,1階は×号室,2階は×号室のように部屋番号がそれぞれ付されている。)は,大阪市α区と八尾市との境界線上に位置し,玄関及び居宅面積の大部分が八尾市側に存在している(甲3,4の2,5,8,9)。 (3) 原告居宅原告居宅は,玄関,キッチン,ダイニング・リビング,居室,トイレ,浴室,電気・ガス・水道設備等を備え,独立して所有権の対象となる区分所有建物であり,八尾市における住居表示でも独立した住居番号が付されていた(甲1,3,8)。 (4) 本件マンションに関する住所の付定大阪市α区の担当者及び八尾市の担当者は,平成2年1月から4月にかけて,本件マンションの住居表示の取扱いについて協議し,別紙配置図「J」及び「H」に位置する各部屋(B棟各階×号室及び×号室)については大阪市α区において住居表示を行い,原告居宅を含むその余の各部屋については八尾市において住居表示を行うこととした(乙6,7,弁論の全趣旨)。 (5) 本件転入届の提出等原告は,平成21年12月1日,八尾市長に対して,大阪市α区δ×番2号に転出する旨の転出届を提出し,同日,転出証明書の交付を受けた(甲2)。 そして,原告は,同日,大阪市α区長に対して,「いままでの住所」欄に「大阪府八尾市ε×番地 ××-×」, 阪市α区δ×番2号に転出する旨の転出届を提出し,同日,転出証明書の交付を受けた(甲2)。 そして,原告は,同日,大阪市α区長に対して,「いままでの住所」欄に「大阪府八尾市ε×番地 ××-×」,「これからの住所」欄に「大阪府大阪市α区δ×番2号 ××-×」と記載した本件転入届を提出したが,大阪市α区長の補助機関である窓口担当職員らは,本件転入届を受理しなかった(本件不受理処分。甲1,争いのない事実)。その際,原告は,大阪市α区の担当職員らから,本件不受理処分に対して不服申立てができる旨の教示を受けていない(争いのない事実)。 (6) 固定資産税及び都市計画税の納付 B棟に対する固定資産税及び都市計画税については,八尾市及び大阪市が分割して課税しており(B棟居住部分について八尾市50%,大阪市50%,B棟管理棟について八尾市85%,大阪市15%の割合で課税標準が分割されている。),原告は,原告居宅に係る固定資産税及び都市計画税を八尾市及び大阪市に支払ってきた(甲4,7)。 (7) 本訴の提起及び審査請求等原告は,平成22年4月1日,本件転入届に関し,主位的に本件不受理処分が存在しないことを前提として,大阪市α区長が本件転入届に対し何らの処分をしない不作為の違法確認を,予備的に本件不受理処分の取消しを求めるとともに(甲事件),敬老優待乗車証の交付を受けられる地位にあることの確認を求め(乙事件),本訴を提起したところ,被告は,同年6月18日付け準備書面で,本件不受理処分が存在することを明らかにして,本件不受理処分取消訴訟について審査請求前置を満たさず不適法であると主張した(顕著な事実)。そこで原告は,同年7月2日,大阪市長に対し,本件不受理処分の取消しを求めて審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行ったところ,大 て審査請求前置を満たさず不適法であると主張した(顕著な事実)。そこで原告は,同年7月2日,大阪市長に対し,本件不受理処分の取消しを求めて審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行ったところ,大阪市長は,原告は本件不受理処分のあった日に本件不受理処分があったことを現実に知ったのであるから,本件審査請求は審査請求期間を徒過した不適法な審査請求であるとして,同年9月13日,本件審査請求を却下する旨の裁決を行った(乙1)。 なお,原告は,上記不作為の違法確認訴訟は取り下げている(顕著な事実)。 3 争点本件における争点は,甲事件(本件不受理処分取消訴訟)につき,①本件不受理処分取消訴訟が審査請求を前置しているかどうか,また,審査請求を前置していないことに正当な理由があるかどうか(本案前の争点),②本件不受理処分の適法性,乙事件(地位確認請求訴訟)につき,③原告が敬老優待乗車証の交付を受け得る地位にあるか否か,の3点である。 4 争点についての当事者の主張(1) 争点①(本件不受理処分取消訴訟が審査請求を前置しているかどうか,また,審査請求を前置していないことに正当な理由があるかどうか)について【原告の主張】原告は,平成22年6月18日頃,本件訴訟における被告の主張により,本件不受理処分がされたことを知ったことから,同日から60日以内である同年7月2日に本件審査請求を申し立てた。したがって,本件訴訟提起時に審査請求はされていないものの,その瑕疵は治癒されるというべきである。 仮にそうでないとしても,原告は,本件不受理処分の際,明示的に不受理処分がされた旨を告げられておらず,また,不受理処分の理由も告げられていないことから,本件不受理処分の存在を認識できなかったものであり(それ故に,原告は,当初本件転入届につい 分の際,明示的に不受理処分がされた旨を告げられておらず,また,不受理処分の理由も告げられていないことから,本件不受理処分の存在を認識できなかったものであり(それ故に,原告は,当初本件転入届について大阪市α区長の不作為違法確認の訴えを提起していた。),裁決を経ないことにつき正当な理由があったというべきである。 【被告の主張】大阪市α区長は,原告が平成22年7月2日に行った本件審査請求について,審査請求期間(行政不服審査法(以下「行審法」という。)14条)を経過した不適法なものであるとして,同年9月13日,これを却下する旨の裁決をした。そして,不服申立てを不適法として却下する裁決の場合には,審査請求前置の要件を満たしたことにはならないため(最判昭和30年1月28日・民集9巻1号60頁),不服申立ての不前置という瑕疵は治癒されない。 また,本件不受理処分の際,大阪市α区役所の窓口職員2名が,原告に対し,原告居宅が大阪市α区の区域内に属するものとは認められないため,同区への本件転入届を受理することができない旨口頭にて説明している。した がって,本件不受理処分は原告に対し明示されており,その理由も提示されている。本件不受理処分の際,原告に対し,本件不受理処分に係る審査請求の申立て及び取消訴訟の提起に係る教示は行っていないが,本件不受理処分は口頭でされたものであり,原告から教示を求める旨の申出もなかったのであるから,大阪市α区長において上記教示を行う義務はない(行審法57条1項ただし書,2項,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)46条1項ただし書,2項ただし書)。 なお,行政庁が申請に対する拒否処分や不利益処分を行う場合の処分理由の提示を定める行政手続法8条及び14条並びに不利益処分の際の意見陳述の手続を定める同法1 6条1項ただし書,2項ただし書)。 なお,行政庁が申請に対する拒否処分や不利益処分を行う場合の処分理由の提示を定める行政手続法8条及び14条並びに不利益処分の際の意見陳述の手続を定める同法13条の規定は,住基法の規定に基づく指定都市の区長がする処分についてはいずれも適用されないから(住基法38条,31条の2),大阪市α区長は,本件不受理処分を行うに当たり,原告に対してその理由を提示すべき法的な義務を負うものではない。 (2) 争点②(本件不受理処分の適法性)について【原告の主張】ア原告の住所認定を誤った違法住基法には「住所」についての格別の定義規定はないから,民法22条に従い,各人の生活の本拠地をもって住基法上の住所というべきである。 そして,本件マンションの登記事項においては,所在地として「大阪市α区γ×番地1」と「八尾市β×番地1」の双方が併記されており,原告居宅も大阪市α区と八尾市とにまたがって位置していることから,原告の生活の本拠は大阪市と八尾市の双方にある。このような場合,原告には,大阪市と八尾市のいずれかの住所を選択し,「大阪市α区δ×番2号」に住民登録をする権利があるにもかかわらず,大阪市α区長は,原告の住所が八尾市から大阪市α区へ移転した事実を無視し,本件転入届を受理しなかった違法がある。 被告が主張する住居表示方法は,マンションとは異なり,各戸独立とみなされ,住民相互間の規約もない長屋のものである。この点,被告作成の「住居表示維持管理事務処理要領」(甲15)によれば,マンションは棟割しないのに対して長屋は棟割するとされ,マンションと長屋は別扱いとなっているのであるから,本件マンションは棟割せずに同一の住居表示とすべきである。また,昭和34年11月6日付民事甲第2474号民事局長回答( 対して長屋は棟割するとされ,マンションと長屋は別扱いとなっているのであるから,本件マンションは棟割せずに同一の住居表示とすべきである。また,昭和34年11月6日付民事甲第2474号民事局長回答(乙4。以下「民事局長回答」という。)によれば,マンションの場合はエントランス,メールコーナー,エレベーターや廊下等の生活諸設備が共用部分となっているのであり,また,玄関扉や窓は共用部分と専有部分とで構成されていて個人の自由な処分が認められていないことからすれば,全体を1個の住宅とみなし,エントランスの位置等を基準にして統一した住所を定めるのが合理的である。 イ手続上の違法大阪市α区長は,本件不受理処分の際,原告に対し本件不受理処分をした旨を明示的に告げておらず,その処分理由も告げていない。処分理由は聴聞や弁明の手続の前提であるから,処分理由を告げないことは重大な瑕疵に当たるというべきである。また,原告には弁明の機会も与えられていない。 加えて,本件不受理処分の際,原告に対して行審法及び行訴法に定める教示が行われていないことは争いがないところ,国民の権利利益のより実効的な救済手段の整備という教示制度の目的に照らすと,口頭による処分の場合に,書面による教示は義務付けられていないとしても,口頭による教示まで不要とする趣旨ではないと解すべきである。また,原告は,本件不受理処分の際,大阪市α区役所の担当者に対して,八尾市役所への確認を求めるなどしており,このような原告の言動を総合的に判断すれば,同担当者に対して,不服申立てができる処分であるかどうか等についての教 示を明示又は黙示に求めていたと解することができる。 したがって,口頭による本件不受理処分の際,大阪市α区役所の担当者が口頭による教示を行わなかったことは,行政処分の瑕疵 か等についての教 示を明示又は黙示に求めていたと解することができる。 したがって,口頭による本件不受理処分の際,大阪市α区役所の担当者が口頭による教示を行わなかったことは,行政処分の瑕疵に当たる。 以上のように,本件不受理処分には手続上の瑕疵も存在する。 【被告の主張】ア原告居宅の住所認定本件マンションのように,複数の市区町村の境界線上に建築されている集合住宅で,各室が独立の住宅と認められるものについては,関係市区町村が協議を行った上で,各室がいずれの市区町村に属するかを決定し,各室毎に住所として認定される。 そして,大阪市α区長及び八尾市長は,協議を行った上で,大阪市α区と八尾市との境界線上にある原告居宅については,入り口の位置が八尾市であり,部屋の面積のうち大部分が八尾市であることから,八尾市の区域内にあるものと認定した。 このように,大阪市α区長は,八尾市長との協議の結果,適切に原告居宅の住所を定めたものであって,原告居宅の住所認定において何ら違法ないし不合理と評価されるべき点はない。 原告は,大阪市と八尾市のいずれかの住所を選択し,「大阪市α区δ×番2号」に住民登録をする権利がある旨主張するが,住所は客観的な居住実態の有無によって一義的に決定されるべきものであり,本人の主観的意思又は恣意によって定まるものではないから,失当である。 また,原告は,原告居宅の存在するB棟全体を1個の住宅としてみなすことが合理的である旨主張するが,民事局長回答にいう「生活の諸設備が居室を除き全員の共用に付されている場合」とは,居宅以外の便所,廊下,洗濯場,台所や風呂等,生活に直結した設備が共用となっている場合を指すと解するのが常識的であって,原告が主張するマンションのエントラン ス,メールコーナー,エ 」とは,居宅以外の便所,廊下,洗濯場,台所や風呂等,生活に直結した設備が共用となっている場合を指すと解するのが常識的であって,原告が主張するマンションのエントラン ス,メールコーナー,エレベーターや廊下等のいわゆる共有スペースはこれに該当せず,失当である。 イ本件不受理処分手続の適法性原告が本件転入届に記載した新住所である「大阪市α区δ×番2号××-×」は,原告の現住所である「大阪府八尾市ε×番地××-×」と同一の場所であり,本件転入届提出の前後で明らかに原告の生活の本拠に変更はない。そして,原告が新住所として記載した表記の住所は,そもそも大阪市の区域内に存在しないものであった。そこで,大阪市α区の担当職員は,原告の本件転入届が明らかに住基法上の要件を満たさないものであったため,その受付を拒否したものである。 原告は,本件不受理処分には手続上の瑕疵が存在すると主張するが,上記(1)【被告の主張】のとおり,担当職員は,本件不受理処分及びその理由を告知しており,不服申立てについては教示する義務もなかった以上,手続上違法と評価されるべき点はない。大阪市α区の担当職員は,原告からの申出により,八尾市の担当者に確認の上,八尾市発行の転出証明書の取扱いについて八尾市役所へ相談するように案内したものの,原告が本件転入届を受理すべきであると繰り返し主張したため,原告に対し,本件転入届に記載された住所はα区の区域内に属すると認められないので本件転入届は受理できないことを繰り返し伝えた。処分理由の提示がなかった,あるいは教示を求める明示又は黙示の意思表示があった旨の原告の主張は事実に反する。 (3) 争点③(原告が敬老優待乗車証の交付を受け得る地位にあるか否か)について【原告の主張】実施要綱は,大阪市内に居住する70歳 は黙示の意思表示があった旨の原告の主張は事実に反する。 (3) 争点③(原告が敬老優待乗車証の交付を受け得る地位にあるか否か)について【原告の主張】実施要綱は,大阪市内に居住する70歳以上の高齢者は敬老優待乗車証の交付申請ができる旨規定しているところ,ここでいう「大阪市内に居住する」 とは,大阪市民たる地位を有する者をいい,原告は,大阪市α区に住所があることから,大阪市民たる地位を有する者であって,敬老優待乗車証の交付を受けることができる。 また,仮に原告が大阪市民たる地位を有する者に該当しないとしても,原告は,固定資産税及び都市計画税を大阪市に納付しているのであるから,その対価サービスとしての敬老優待乗車証の交付を受けることができる地位にあり,「大阪市内に居住する」者と同視し得るというべきである。 したがって,原告は,実施要綱に基づき,敬老優待乗車証の交付を受けることができ,被告は,原告から敬老優待乗車証の交付申請があった場合にはこれを交付しなければならない。 【被告の主張】敬老優待乗車証の交付要件は「大阪市内に住所を有する者」であるところ,前記のとおり,原告は大阪市内に住所を有する者とは認められないため,敬老優待乗車証の交付を受けられる地位を有しない。 また,固定資産税及び都市計画税は,登記簿上の固定資産の所有者に対して課される税金であり,複数の市区町村にまたがる固定資産の所有者が,複数の市区町村に対してこれらを納付することがあるからといって,当該所有者が複数の市区町村から全ての行政サービスを受けられるわけではない。したがって,固定資産税及び都市計画税の納付と敬老優待乗車証の交付を受けることとの間に直接的な関係はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件不受理処分取消訴訟が審査請求を前置 わけではない。したがって,固定資産税及び都市計画税の納付と敬老優待乗車証の交付を受けることとの間に直接的な関係はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件不受理処分取消訴訟が審査請求を前置しているかどうか,また,審査請求を前置していないことに正当な理由があるかどうか)について(1) 本件不受理処分に対する審査請求は,処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならないところ(行審法14条),前記前提事実並びに証拠(甲1,13)及び弁論の全趣旨によれば,原告が, 平成21年12月1日,大阪市α区役所でα区への住民登録を求めて本件転入届を提出したところ,α区の担当職員からα区への住民登録はできない旨伝えられて,本件転入届を返還されたことが認められる。そして,原告が,予備的ではあるが本件不受理処分の取消しを求めて本訴を提起していることを考えれば,原告は,平成21年12月1日に不服申立てが可能な程度に本件不受理処分があったことを知ったものと認められる。したがって,本件審査請求は,審査請求期間を経過した後にされた不適法なものであり,本件不受理処分取消訴訟は適法な審査請求に対する裁決を経たものということはできない。 (2) しかしながら,前記のとおり,原告が本訴を提起した際,主位的に本件転入届に対する不作為の違法確認を求め,予備的に本件不受理処分の取消しを求めていたことからすると,原告は,本件転入届に対し,α区の担当職員が本件不受理処分をしたのか,それとも本件転入届を無視してこれを放置したものなのか,明確に認識していなかったということができる。そして,前記前提事実並びに証拠(甲1,13)及び弁論の全趣旨によれば,本件不受理処分は,原告に本件転入届を返還して口頭で行われたものであり,その際,α区の担 認識していなかったということができる。そして,前記前提事実並びに証拠(甲1,13)及び弁論の全趣旨によれば,本件不受理処分は,原告に本件転入届を返還して口頭で行われたものであり,その際,α区の担当職員は,原告に対し,α区に住民登録することができないことは伝えたものの,これが本件転入届の不受理処分に当たることは説明せず,本件不受理処分がされたことを明確に確認できる書面等も交付しなかったこと,原告は,本件不受理処分の際,本件不受理処分に対して不服申立てができることやその方法等について教示を受けていないことが認められるのであり,さらに,原告が70歳近い一人暮らしの格別法律の専門的知識がない一般人であること(甲1,2)を考慮すれば,原告が,本件不受理処分を受けて,不受理処分がされたのかそれとも本件転入届の提出がなかったものと扱われて返還されたものなのか明確に認識できず,本件不受理処分に対する審査請求をせずに,主位的に不作為の違法確認を,予備的に本件不受理処分 の取消しを求めて本訴を提起したこともやむを得ないものというべきである。したがって,本件では行訴法8条2項3号所定の正当な理由があると認められ,本件不受理処分取消訴訟は適法である。 (3) 被告は,本件不受理処分は原告に対し明示されており,また,α区の担当職員に本件不受理処分に対する不服申立手続について教示する義務はない旨主張するが,上記のとおり,本件不受理処分における告知態様は,転入届の不受理処分に当たることを明示したものとはいえず,また,不服申立手続の教示義務がないからといって,行訴法8条2項3号所定の正当な理由が否定されるものではなく,被告の上記主張は採用することができない。 2 争点②(本件不受理処分の適法性)について(1) 住所認定についての違法性の有無ア住 訴法8条2項3号所定の正当な理由が否定されるものではなく,被告の上記主張は採用することができない。 2 争点②(本件不受理処分の適法性)について(1) 住所認定についての違法性の有無ア住基法4条は,住民の住所に関する法令の規定は,地方自治法10条1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない旨規定し,地方自治法10条1項は,市町村の区域内に住所を有する者は,当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする旨規定する。さらに,住所とは各人の生活の本拠を指すところ(民法22条),原告の生活の本拠は原告居宅にある。 そして,前記前提事実のとおり,原告居宅は,生活のための諸設備を備えた独立の住宅で,その玄関が八尾市側にあり,その面積の大部分が八尾市側に存在していることが認められ,このような事実を基礎とすると,原告の住所は八尾市にあると認めるのが相当である。 イこの点,原告は,原告の生活の本拠は大阪市と八尾市の双方にあり,原告には,大阪市と八尾市のいずれかの住所を選択し,「大阪市α区δ×番2号」に住民登録をする権利がある旨主張するが,生活の本拠である地の住居表示は客観的に定められるものであって,原告居宅の主たる生活の本拠となる居室の大部分及び出入口が八尾市側に存在するという客観的事 実に照らせば,原告の生活の本拠が大阪市α区にあるということはできない。 ウまた,原告は,被告作成の「住居表示維持管理事務処理要領」(甲15)において,「④ 建物等の棟割を必要としない場合」として,「アビル,アパート,マンション等は棟割しない。」との記載があることをもって,上記要領に従えば,本件マンションの居室は同一の住居表示がされるべきである旨を主張する。しかしながら,上記要領の当該記載部分は,その前後 ト,マンション等は棟割しない。」との記載があることをもって,上記要領に従えば,本件マンションの居室は同一の住居表示がされるべきである旨を主張する。しかしながら,上記要領の当該記載部分は,その前後の文脈に照らし,住居表示台帳の図面上1棟の建物の中に分割線を記載して各住居を表示するかどうかという表示方法に関するものであると理解するのが合理的であって,一棟のマンションには同一の住居表示をすべきとの取扱いを定めたものと見ることはできない。一棟の集合住宅について,上記要領にいう「棟割」の処理をしないのは,住居が多数になるため分割線で表示せず建物内に部屋番号等を表示することにしたものであって,独立の居宅と認められる各部屋毎に住居番号を付定することとは別個の問題というべきであり,前記のとおり,住基法上の「住所」とは各人の生活の本拠をいうと解されることからすれば,一棟の集合住宅の中に複数の部屋がある場合であっても,それぞれの部屋が独立して排他的に使用されている場合には,各部屋ごとに個々の建物として取り扱い,異なる住所を定めるのが相当というべきである(甲15の1・1頁・14頁参照)。 エさらに,原告は,民事局長回答が「生活の諸設備が居室を除き全員の共用に付せられているような場合には,当該アパート全体を1個の住宅と見做し住所を定めるのが相当である」としていることをもって,本件マンションのうち原告居宅の存在するB棟についても1個の住宅とみなして統一した住所を定めるのが合理的である旨主張するが,民事局長回答は,生活の諸設備が共用に付されていることによって,当該アパートに住む各人の生活の本拠が共通であるといえるような場合の取扱いを定めたものと みるのが相当であり,前記のとおり,原告居宅は生活設備を備えた独立の住宅であって,B棟は上記回答のいう場 アパートに住む各人の生活の本拠が共通であるといえるような場合の取扱いを定めたものと みるのが相当であり,前記のとおり,原告居宅は生活設備を備えた独立の住宅であって,B棟は上記回答のいう場合に該当するものではないから,原告の上記主張は採用することができない。 以上のとおり,住所認定に関する原告の主張はいずれも理由がない。 (2) 手続的瑕疵の有無原告は,本件不受理処分の際,処分があったこと及び処分理由を告げられておらず,弁明の機会も与えられていないとか,α区の担当職員は原告に対して口頭による教示を行うべきであったのにこれを行わなかったとして,本件不受理処分には手続的瑕疵が存在する旨主張する。 しかしながら,本件不受理処分は,住基法に基づいて大阪市α区長が行う処分であって,行政手続法が定める処分理由の提示義務(行政手続法8条,14条)及び不利益処分における聴聞又は弁明の機会の付与(行政手続法13条)等の規定はその適用が除外される(住基法38条1項,31条の2)ことに鑑みれば,本件不受理処分に当たり,その取消事由となるべき重大な手続的瑕疵があるということはできない。 また,α区の担当職員が原告に対して不服申立手続の教示を行わなかった点については,本件不受理処分は口頭でされているため,教示義務の対象から除外される(行審法57条1項ただし書,行訴法46条1項ただし書)のであって,教示をしなかった点に手続上の違法はない(なお,仮に教示義務があるとしても,教示義務の懈怠は処分自体の取消事由となるものではないというべきである。)。 この点,原告は,α区の担当職員に対して八尾市役所への確認を求めていたという原告の言動を総合すれば,本件不受理処分の際に明示又は黙示に教示を求めていたと解される旨主張するが,八尾市への確認を求めるこ この点,原告は,α区の担当職員に対して八尾市役所への確認を求めていたという原告の言動を総合すれば,本件不受理処分の際に明示又は黙示に教示を求めていたと解される旨主張するが,八尾市への確認を求めることで原告が納得していない態度を示していたことは理解できるが,これを明示又は黙示に教示を求めたものと解することはできない上,上記のとおり,仮に教 示義務があるとしてもその懈怠は上記結論を左右するものではない。 したがって,本件不受理処分が取り消されるべき手続上の瑕疵があったということはできず,原告の上記主張はいずれも理由がない。 3 争点③(原告が敬老優待乗車証の交付を受け得る地位にあるか否か)について敬老優待乗車証は,高齢者の社会参加の促進等を目的として,大阪市が同市内に居住する70歳以上の高齢者である交付対象者に対して交付する乗車証である(実施要綱,甲6)。 前記のとおり,原告は,大阪市内に住所を有するとは認められないから,大阪市が実施要綱において定める交付要件に該当しない。 この点,原告は,大阪市に対して固定資産税及び都市計画税を納付していることから,原告は大阪市民たる地位を有するか,そうでないとしても,対価サービスとしての敬老優待乗車証の交付を受け得る地位にある旨主張する。しかしながら,固定資産税や都市計画税は,固定資産の所有者に対して課される税であって,大阪市民たる地位に基づいて課されるわけではないし,敬老優待乗車証は固定資産税及び都市計画税の納付の対価として交付されるものではなく,これらの税を納付しているからといって敬老優待乗車証の交付を受け得る地位にあるものということもできない。原告の上記主張には理由がない。 したがって,原告が敬老優待乗車証の交付を受け得る地位にあるとは認められない。 4 結論よっ 老優待乗車証の交付を受け得る地位にあるものということもできない。原告の上記主張には理由がない。したがって、原告が敬老優待乗車証の交付を受け得る地位にあるとは認められない。 4 結論 よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官山田明 裁判官徳地淳 裁判官内藤和道

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