平成29年10月11日判決言渡平成29年(行ウ)第440号苦情申出不採択無効確認等請求事件 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 法務大臣が平成29年9月8日付けで原告に対してした苦情の申出の不採択決定が無効であることを確認する。 2 法務大臣は原告がした平成29年7月19日付けの苦情の申出を採択せよ。 第2 事案の概要本件は,千葉刑務所に収容中の原告が,平成29年7月19日付けで,同刑務所の給食のパンのぱさつきが酷く異臭があること及び同刑務所が指定する業者から購入する菓子パンの消費期限の日持ちが2日から3日間であることを不服として,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容 施設法」という。)166条1項に基づき,法務大臣に対し苦情の申出をしたところ,同年9月8日付けで不採択決定を受けたとして,行政事件訴訟法3条4項に基づき上記決定が無効であることの確認を求めるとともに,同条6項に基づき上記申出に対する採択決定の義務付けを求める事案である。 第3 当裁判所の判断 1 行政事件訴訟法3条4項に規定する無効等確認の訴え及び同条6項に規定する義務付けの訴えは,いずれも同条2項に規定する「処分」又は同条3項に規定する「裁決」を対象とする抗告訴訟であり,ここでいう「処分」又は「裁決」とは,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」,すなわち,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為であって,その行為によって,直接国民の 権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものを いうと解される(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月2 が行う行為であって,その行為によって,直接国民の 権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものを いうと解される(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁等参照)。 2 そこで,本件における刑事収容施設法166条1項に基づく苦情の申出に対する法務大臣の採択又は不採択の決定が上記の「処分」又は「裁決」に該当するのか検討するに,同法は,同法166条から168条で,被収容者が広く 「自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇」について,申出期間の制限を受けることなく,法務大臣,監査官又は刑事施設の長に対し苦情の申出をすることができるとした上,苦情の申出を受けた法務大臣等においては,これを誠実に処理し,処理の結果を申出人に通知しなければならないとするがそれ以上の定めをおいていない。他方で,同法は,同法157条から16 2条で,刑事施設の長の同法157条1項各号の措置に限り,同法158条又は162条2項,3項の申請期間の制限の下で,矯正管区の長に対し審査の申請を,更に法務大臣に対し再審査の申請をすることができるとした上,これらの申請を受けた法務大臣等は,行政不服審査法の規定に準じて,その申請が適法で理由がある場合には裁決で措置の取消し等をする(同法161条2項,1 62条3項,行政不服審査法46条等)旨を定める。 以上からすれば,刑事収容施設法は,同法157条1項各号に規定する刑事施設の長の措置については,特に被収容者の重要な権利義務に関するものとして,これを保護すべく法務大臣等に対する審査又は再審査の申請権を認め,その申請が適法かつ理由があるときには,法務大臣等に対し,法律上,措置を取 り消すこと等を義務付けつつ,法的安定 るものとして,これを保護すべく法務大臣等に対する審査又は再審査の申請権を認め,その申請が適法かつ理由があるときには,法務大臣等に対し,法律上,措置を取 り消すこと等を義務付けつつ,法的安定性の観点から,一定の申請期間の制限を設けていると解される。他方で,同法は,同法166条から168条による苦情の申出については,上記の刑事施設の長の措置以外の「自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇」についても,申出期間の制限なく苦情を申し出ることを認め,これを契機として法務大臣等による被収容者の苦情 の把握とその問題解決を促進しようとするものではあるものの,それ以上に, 被収容者に法務大臣等に対する何らかの具体的な申請権を与え,法務大臣等に具体的な措置を講ずることを法律上義務付けているものとは解されないというべきである。 したがって,法務大臣が上記の苦情の申出に対してする採択又は不採択の決定は,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する ことが法律上認められているものではないというべきであるから,抗告訴訟の対象となる「処分」又は「裁決」に該当しないというべきである。 3 以上によれば,本件訴えは,抗告訴訟の対象となる「処分」又は「裁決」に当たらないものを対象とする訴えとして不適法であり,その不備を補正することができないことが明らかである。 4 よって,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法140条により,口頭弁論を経ないで本件訴えを却下することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官大畠崇史 裁判官古屋勇児 裁判長 裁判官古田孝夫 裁判官大畠崇史 裁判官古屋勇児
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