主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人らに対し,それぞれ4365万2506円及びこれに対する平成7年7月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,1,2審とも被控訴人の負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2 事案の概要事案の概要は,以下のとおり付加・訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第二事案の概要」欄(2頁末行から20頁7行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 6頁7行目の「五〇mmHgであった」の次に以下のとおり付加する。 「(Dがショック状態に陥った後,心肺蘇生措置は,E病院麻酔科医長が来院するまで採られなかったも同然であり,被控訴人病院の副院長が行った心マッサージは不適切である上,低血圧治療薬ソルコーテフ投与によっても昇圧できなかったから,ショックによって下がった血圧とみるべきである。)」(2) 同9行目の「全身痙攣」の次に以下のとおり付加する。 「(2,3分で一旦終息した。また,間代性のものでないという根拠はない。)」(3) 7頁5行目の「保たれている点」の次に以下のとおり付加する。 「,胎児の死亡後,2時間30分も生存していた点及び胎児の状態が急変したのは破水の5分前からである点」(4) 7頁9行目の「午後九時時」を「午後九時」に訂正する。 (5) 8頁2行目の「起こっていること」の次に「,そして,これが間歇性であるとは認められない 破水の5分前からである点」(4) 7頁9行目の「午後九時時」を「午後九時」に訂正する。 (5) 8頁2行目の「起こっていること」の次に「,そして,これが間歇性であるとは認められないこと」を,同3行目の「硬化が認められること」の次に「,同日午後10時過ぎころからローラーコースター状の子宮収縮が出現していること及び同日午後10時55分ころから胎児の状態は,遷延性徐脈に変化し,急激に悪化したこと」を,同4行目末尾に「胎児が,常位胎盤早期剥離発症から数10分で死に至るものはないという根拠もない。」をそれぞれ付加する。 (6) 9頁7行目及び8行目の「センチ」の次にそれぞれ「メートル」を付加する。 (7) 11頁3行目末尾に,以下のとおり付加する。 「なお,マスクとバッグでの陽圧呼吸は,気道が確保されていれば可能であるが,Dには,吸引器が装着されており,その上から酸素マスクを使用したから,実際には体内にほとんど酸素は送り込まれていないというべきである。」(8) 同9行目の「舌根沈下」の次に「(気道確保がされておれば,生じない。)」を付加する。 (9) 15頁末行の末尾に,改行の上,以下のとおり付加する。 「 Dがショック状態に陥った際,心肺蘇生処置を施行していたから,収縮期血圧が140mmHg(以下数次のみで表わす。)であったことの信頼性は高いとはいえず,また,ソルコーテフの投与により昇圧された結果であると考えられるから,ショック状態に陥る前にはそれ以上の血圧であったと推測することはできない。 したがって,Dが分娩子癇発作を起こしたという控訴人らの主張は,Dが高血圧であったとの前提を欠くものであり,また,間代性けいれんであったことも認められず,理由がない。 さらに したがって,Dが分娩子癇発作を起こしたという控訴人らの主張は,Dが高血圧であったとの前提を欠くものであり,また,間代性けいれんであったことも認められず,理由がない。 さらに,常位胎盤早期剥離の初期症状とされる症状は,Dにはみられなかったから,控訴人らの主張は,この点でも前提を欠くものである。また,胎児死亡が先行すること,破水前に胎児の容態が急変したこと,胎児死亡後,Dが2時間30分も生存したことは,いずれも羊水塞栓症を否定する理由とはならない。」第3 証拠証拠関係は,原審及び当審記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから,これを引用する。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所の判断は,以下のとおり付加・訂正・削除するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第三争点に対する判断」の「一ないし三」欄(20頁9行目から76頁4行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 20頁10行目の「甲四、」の次に「13の1及び2,」を,21頁3行目の「Dは、」の次に「平成6年11月22日」を,同行の「診断された後、」の次に「同年12月20日,平成7年」を,同4行目の「同月一九日、」の次に「6月2日,」を,同5行目の「貧血」の次に「及び妊娠後期に尿糖」を,同7行目末尾に「分娩予定日は,平成7年7月15日であった。」を,23頁2行目の「受診した際、」の次に「早期の分娩を希望し,」をそれぞれ付加する。 (2) 28頁末行から29頁1行目の「出現し、」を削除し,同2行目の「モニターから」の次に「胎」を付加する。 (3) 32頁8行目の「一五、」の次に「20,」を,34頁5行目の「③ 」の次に「昭和61年に」をそれぞれ付加し,35頁7行目の「退治」を「胎児」と訂正し,43頁5行目の「児心音」,同7 (3) 32頁8行目の「一五、」の次に「20,」を,34頁5行目の「③ 」の次に「昭和61年に」をそれぞれ付加し,35頁7行目の「退治」を「胎児」と訂正し,43頁5行目の「児心音」,同7行目の「児娩出」,同8行目の「児死亡」のそれぞれ前に「胎」を付加する。 (4) 45頁2行目の次に,改行して,次のとおり付加する。 「 また,近年では,羊水塞栓症は,抗原抗体反応によるアナフィラキシーショックがその発症原因であるという考え方が最も有力となってきている。」(5) 50頁10行目末尾に,次のとおり付加する。 「控訴人らは,ソルコーテフが強力な昇圧剤でなく,ホリゾンが血圧を降下させるものである上,Dは薬剤に反応しない状態であったから,収縮期血圧140は,ショック状態に陥って低下した結果であると主張するが,上記一3(当審で付加・訂正した部分も含め原判決26頁9行目から32頁3行目まで)の認定によれば,上記血圧がいつ測定されたものかは結局不明であること,Dがショック状態に陥った後,気管内挿管がされるまでは,マスクとバッグによる人工呼吸がされていたこと,また,破水前にDの高血圧が亢進していることを示す症状があったことはうかがえないこと,甲18及び原審におけるF証人の供述によれば,ソルコーテフは,副腎機能不全の補償作用があり,血圧を上げる作用がある一方,ホリゾンは,血圧には影響を与えない薬剤であること,これらを総合すると,収縮期血圧140がショック状態に陥り,低下した結果であるとはいえず,控訴人らの上記主張は理由がない。なお,甲16においては,収縮期血圧140が,午後11時30分に気管内挿管される直前に測定されたものとの前提で,Dに妊娠中毒症が急速に増悪したと記載されているが,この前提事実を認めることはできず,こ なお,甲16においては,収縮期血圧140が,午後11時30分に気管内挿管される直前に測定されたものとの前提で,Dに妊娠中毒症が急速に増悪したと記載されているが,この前提事実を認めることはできず,これを採用することはできない。」(6) 53頁3行目ないし7行目までを,次のとおり訂正する。 「 しかしながら,上記認定のとおり,Dが午後11時ころ,子癇の前駆病態である妊娠中毒症に罹患していたと認められないこと,Dは,破水後,嘔気とほぼ同時に呼吸困難を訴えており,その後に全身けいれんが起こったこと,子癇であれば,自覚前駆症状として高い頻度で頭痛がみられるところ,Dが破水前に頭痛を訴えていた形跡はないことを併せ考えれば,典型的な子癇の進行がみられるとはいえない。」(7) 55頁10行目の「生じておらず」の次に「(原審における証人Gの供述によれば,それまで同人が経験した子癇発作と明らかに異なった症状であったことが認められる。)」を付加する。 (8) 56頁9行目の「前記認定のとおり、」の次に「午後9時17分ころ,一過性徐脈が出現し,」を,「遅発一過性徐脈」の次に「を思わせる一過性徐脈」をそれぞれ付加し,同11行目,57頁1行目及び2行目の各「遅発」を削除し,同4行目の「徐脈が」の次に「出現し,これが遷延性徐脈に変化したことが」を付加する。 (9) 58頁5行目の「さざなみ線上」を「さざなみ線状」と,同6行目の「ことをもって」を「からといって,これだけで」とそれぞれ訂正する。 (10) 59頁4行目の「陣痛曲線」の次に「(乙2・16頁)」を付加し,同10行目の次に,改行して,次のとおり付加する。 「 控訴人らは,ローラーコースター状の子宮収縮パターンが午前10時40分過ぎには出現していたと主張 線」の次に「(乙2・16頁)」を付加し,同10行目の次に,改行して,次のとおり付加する。 「 控訴人らは,ローラーコースター状の子宮収縮パターンが午前10時40分過ぎには出現していたと主張する。なるほど午前10時41分ころ以降の曲線では,それ以前の曲線に比べて陣痛がおさまっている間の曲線が高位にあるが,すぐに上昇する状態であるとはいえず,甲16においても特段触れられていないことからみても,午前10時41分ころからの陣痛曲線がローラーコースター状であるとはいえない。」(11) 60頁2行目の「規則的」の前に「子宮が」を,同6行目の「訴えたこと、」の次に「午後1時ころも同様であったこと,」をそれぞれ付加し,同10行目の「認められる」を「認められ,午後1時以後も陣痛以外に下腹部痛が継続していたことはうかがえない」と,61頁1行目の「子宮収縮が」を「子宮収縮及び痛みが間欠期なしに」とそれぞれ訂正する。 (12) 61頁10行目の「しかしながら、」の次に「常位胎盤早期剥離の初発症状である『板状硬』の子宮壁硬化がみられた形跡がないこと,」を付加する。 (13) 62頁9行目から63頁9行目までを次のとおり訂正する。 「 しかし,前記認定のとおり,常位胎盤早期剥離の初発症状として多いのは,急激な下腹痛,子宮の硬化と痛み,子宮収縮及び外出血であるところ,Dには,破水時,出血がなかったこと,一般的に羊水塞栓症の初発症状として出血が,続発症状として出血傾向があげられていること,また,羊水塞栓症の場合においてもDICによる性器出血は生じ得ること,原審におけるH医師の供述によれば,Dの性器出血が子宮頸管部からのものであると認められることを併せ考慮すると,上記性器出血が常位胎盤早期剥離に由来するものであると断定することは 器出血は生じ得ること,原審におけるH医師の供述によれば,Dの性器出血が子宮頸管部からのものであると認められることを併せ考慮すると,上記性器出血が常位胎盤早期剥離に由来するものであると断定することはできない。 控訴人らは,羊水塞栓症自体が出血でないこと,DICに至るには一方で血液が凝固し,一方で血液が凝固しないという状態になって初めて出血に至るから,上記性器出血が,羊水塞栓症に続発するDICによる出血とするには早すぎる旨主張し,その根拠として甲16の記載を援用する。しかし,前記認定のとおり,DICは,ショック症状に続発する症状であるし,乙5によれば,羊水塞栓症の発症後1時間以内にショックから心停止へと急速に進行する症例が多いこと,発症から1時間以降の生存者の40パーセントに血液凝固異常,低フィブリノーゲン血症がみられたという報告があることなどを併せ考えると,上記性器出血が羊水塞栓症に続発するDICによる出血であるとみることに矛盾はないといえる。 また,控訴人らは,発症後数10分で胎児が死亡する常位早期胎盤剥離は珍しくなく,母体の急激な悪化を伴っていることがこれを否定する理由はないと主張する。しかし,上記認定のとおり,控訴人らが常位胎盤早期剥離の初発症状であると主張する症状が認められない上,後記(原判決71頁5行目から75頁6行目まで)のとおり,Dの蘇生措置において不適切な点は認められないから,控訴人らの上記主張は前提を欠くものであり,理由がない。」(14) 64頁2行目の「初発症状」の次に「として多くみられる経過」を,同7行目の「本件では、」の次に「前記認定のとおり,」を,同「破水と」の次に「ほぼ」を,同「Dは」の次に「,嘔気及び」をそれぞれ付加し,65頁2行目の「診断」を削除し,66頁1行目の「死亡」 」を,同7行目の「本件では、」の次に「前記認定のとおり,」を,同「破水と」の次に「ほぼ」を,同「Dは」の次に「,嘔気及び」をそれぞれ付加し,65頁2行目の「診断」を削除し,66頁1行目の「死亡」の次に「や胎児徐脈」を付加し,同6行目の次に,改行して,次のとおり付加する。 「 控訴人らは,胎児が母親より先に死亡し,しかも母親がその後2時間30分も生存していたという病態は,胎児側に原因が先行する以外考えられないと主張する。しかし,上記認定のとおり,破水前にも羊水塞栓症は発症していること,羊水塞栓症において,母体に臨床兆候が出現する以前に胎児に徐脈や死亡が確認されていた症例もあること,甲20によれば,妊娠中に羊水が母体血中に流入することも考えられていること,後記のとおり,Dに対して蘇生措置が次々と施行されていったことを併せ考えれば,控訴人らの上記主張は理由がない。」(15) 67頁9行目の「児心拍」の前に「胎」を,68頁2行目末尾に「間,」を,同6行目の「遅発一過性徐脈」の次に「を思わせる一過性徐脈」を,それぞれ付加する。 (16) 72頁3行目の「人工呼吸」の前に「マスクとバックによる」を,同5行目の次に,改行して,次のとおり付加する。 「 なお,控訴人らは,気道分泌物が多く,吸引器を入れたままの状況では,到底気道が確保されたとはいえず,このような状態で行ったマスクとバッグによる人工呼吸では,Dにほとんど酸素を送ることができなかった上,このような状況で心停止に至っていないDに心臓マッサージを施行したことにより,Dの状態を悪化させたと主張する。しかし,上記認定のとおり,咽頭鏡による気管の展開が継続してされており,その間は舌根沈下がないこと,吸引器が入ったままであっても,吸引をする一方,マスクとバッグによる人工 態を悪化させたと主張する。しかし,上記認定のとおり,咽頭鏡による気管の展開が継続してされており,その間は舌根沈下がないこと,吸引器が入ったままであっても,吸引をする一方,マスクとバッグによる人工呼吸が続けられていたこと,気管内挿管がされるまでの約30分間にDに自発呼吸がみられた形跡はないにもかかわらず,生存していたことを併せ考えると,Dに対して酸素が送られていたというべきであり,また,原審におけるF証人の供述によれば,完全な心停止に至らない段階でも,脈拍を触知できない場合に心臓マッサージを施行することはあり得るものであり,Dの意識消失,呼吸停止,瞳孔散大という状況で,心臓マッサージを施行したことに問題はないといえ,控訴人らの上記主張は理由がない。」(17) 74頁1行目及び6行目の各「舌根沈下が」の次にそれぞれ「継続的に」を,同8行目及び10行目の「バッグを」の前に「マスクと」をそれぞれ付加する。 (18) 75頁10行目の「いたのであって、」の次に「羊水塞栓症の臨床経過は急激かつ進行性で,発症後,ショックから心停止へと急速に進行する症例が多いこと,また,」を,同末行の「行って」の次に「,午後10時55分ころ生じた胎児の遅発一過性徐脈を発見して」をそれぞれ付加する。 2 以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの請求を棄却した原判決は相当である。 よって,本件控訴はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第11民事部裁判長裁判官見満正治 裁判長 裁判官見満正治 裁判官辻本利雄 裁判官下村眞美
▼ クリックして全文を表示