令和2(行ウ)66 特別地方交付税の額の決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年4月22日 大阪地方裁判所
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判決文本文21,902 文字)

主文 本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たる。 事実及び理由 第1 請求 1 処分行政庁が令和元年12月に原告に対してした,令和元年度の第1回目の特別交付税の額の決定を取り消す。 2 処分行政庁が令和2年3月に原告に対してした,令和元年度の第2回目の特別交付税の額の決定を取り消す。 第2 事案の概要地方団体である原告(泉佐野市)は,総務大臣から,令和元年12月,令和元年度の第1回目の特別交付税の額の決定(以下「本件12月分決定」という。)を受け,令和2年3月,令和元年度の第2回目の特別交付税の額の決定(以下「本件3月分決定」といい,本件12月分決定と併せて「本件各決定」という。)を受けた。 本件訴えは,原告が,令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例を定めた,特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの。以下同じ。)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの。以下同じ。以下「本件各特例規定」という。)は,いわゆるふるさと納税として多額の寄附金を集めたことをもって特別交付税の額を減額するものであって,地方交付税法の委任の範囲を超えるものであるから,本件各特例規定に基づいて原告に対する特別交付税の額を算定した本件各決定は違法であるなどと主張して,被告に対し,本件各決定の取消しを求める事案である。 被告は,本件訴えは裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないため却下されるべきものである旨主張するところ,本中間判決は,事案の内容及び審理の経過に鑑み,本件訴えが同項にいう「法律上の争訟」に当たるか否かに限 って判断するものである。 1 関係法令の定め(1) 裁判所法裁判所法3条1項は,裁 判決は,事案の内容及び審理の経過に鑑み,本件訴えが同項にいう「法律上の争訟」に当たるか否かに限 って判断するものである。 1 関係法令の定め(1) 裁判所法裁判所法3条1項は,裁判所は,日本国憲法に特別の定めのある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し,その他法律において特に定める権限を有する旨規定する。 (2) 地方交付税法ア地方交付税法の目的地方交付税法1条は,同法は,地方団体(都道府県及び市町村をいう。同法2条2号)が自主的にその財産を管理し,事務を処理し,及び行政を執行する権能を損なわずに,その財源の均衡化を図り,及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによって,地方自治の本旨の実現に資するとともに,地方団体の独立性を強化することを目的とする旨規定する。 イ地方交付税の意義地方交付税法2条1号は,同法において,地方交付税とは,同法6条の規定により算定した所得税,法人税,酒税及び消費税のそれぞれの一定割合の額並びに地方法人税の額で地方団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるように国が交付する税をいう旨規定する。 ウ運営の基本地方交付税法3条1項は,総務大臣は,常に各地方団体の財政状況の的確な把握に努め,地方交付税の総額を,同法の定めるところにより,財政需要額が財政収入額を超える地方団体に対し,衡平にその超過額を補塡することを目途として交付しなければならない旨規定する。 地方交付税法3条2項は,国は,地方交付税の交付に当たっては,地方自治の本旨を尊重し,条件を付け,又はその使途を制限してはならない旨 規定する。 地方交付税法3条3項は,地方団体は,その行政について,合理的かつ妥当な水準を維持するように努め,少なくとも法律又はこ 尊重し,条件を付け,又はその使途を制限してはならない旨 規定する。 地方交付税法3条3項は,地方団体は,その行政について,合理的かつ妥当な水準を維持するように努め,少なくとも法律又はこれに基づく政令により義務付けられた規模と内容とを備えるようにしなければならない旨規定する。 エ地方交付税の総額地方交付税法6条1項(平成28年法律第86号による改正前のもの。 以下同じ。)は,所得税及び法人税の収入額のそれぞれ100分の33. 1,酒税の収入額の100分の50,消費税の収入額の100分の20. 8並びに地方法人税の収入額をもって地方交付税とする旨規定する。 地方交付税法6条2項(平成28年法律第86号による改正前のもの。 以下同じ。)は,毎年度分として交付すべき地方交付税の総額は,当該年度における所得税及び法人税の収入見込額のそれぞれ100分の33. 1,酒税の収入見込額の100分の50,消費税の収入見込額の100分の20.8並びに地方法人税の収入見込額に相当する額の合算額に当該年度の前年度以前の年度における地方交付税で,まだ交付していない額を加算し,又は当該前年度以前の年度において交付すべきであった額を超えて交付した額を当該合算額から減額した額とする旨規定する。 オ地方交付税の種類等地方交付税法6条の2第1項は,地方交付税の種類は,普通交付税及び特別交付税とする旨規定する。 地方交付税法6条の2第2項は,毎年度分として交付すべき普通交付税の総額は,同法6条2項の額の100分の94に相当する額とする旨規定する。 地方交付税法6条の2第3項は,毎年度分として交付すべき特別交付税の総額は,同法6条2項の額の100分の6に相当する額とする旨規 定する。 カ特別交付税の額の算定地方交付税法15条1 方交付税法6条の2第3項は,毎年度分として交付すべき特別交付税の総額は,同法6条2項の額の100分の6に相当する額とする旨規 定する。 カ特別交付税の額の算定地方交付税法15条1項は,①特別交付税は,同法11条に規定する基準財政需要額(各地方団体の財政需要を合理的に測定するために,当該地方団体について同条の規定により算定した額をいう。同法2条3号)の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があること,②同法14条の規定により算定された基準財政収入額(各地方団体の財政力を合理的に測定するために,当該地方団体について同条の規定により算定した額をいう。同法2条4号)のうちに著しく過大に算定された財政収入があること,③地方交付税の額の算定期日後に生じた災害(その復旧に要する費用が国の負担によるものを除く。)等のため特別の財政需要があり,又は財政収入の減少があることその他特別の事情があること,により,基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮してもなお,普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して,総務省令で定めるところにより,当該事情を考慮して交付する旨規定する。 地方交付税法15条2項は,総務大臣は,総務省令で定めるところにより,前項の規定により各地方団体に交付すべき特別交付税の額を,毎年度,2回に分けて決定するものとし,その決定は,第1回目は12月中に,第2回目は3月中に行わなければならない旨,この場合において,第1回目の特別交付税の額の決定は,その総額が当該年度の特別交付税の総額のおおむね3分の1に相当する額以内の額となるように行うものとする旨規定する。 地方交付税法15条4項は,総務大臣は,同条 第1回目の特別交付税の額の決定は,その総額が当該年度の特別交付税の総額のおおむね3分の1に相当する額以内の額となるように行うものとする旨規定する。 地方交付税法15条4項は,総務大臣は,同条2項前段又は同条3項の規定により特別交付税の額を決定したときは,これを当該地方団体に通 知しなければならない旨規定する。 キ交付時期地方交付税法16条1項は,特別交付税は,毎年度,同法15条2項の規定により12月中に総務大臣が決定する額については12月に,同項の規定により3月中に総務大臣が決定する額については3月に交付する旨規定する。 ク地方交付税の額の算定方法に関する意見の申出地方交付税法17条の4第1項は,地方団体は,地方交付税の額の算定方法に関し,総務大臣に対し意見を申し出ることができ,この場合において,市町村にあっては,当該意見の申出は,都道府県知事を経由してしなければならない旨規定する。 地方交付税法17条の4第2項は,総務大臣は,前項の意見の申出を受けた場合においては,これを誠実に処理するとともに,その処理の結果を,地方財政審議会に,同法23条の規定により意見を聴くに際し,報告しなければならない旨規定する。 ケ地方交付税の額に関する審査の申立て地方交付税法18条1項は,地方団体は,同法10条4項又は同法15条4項の規定により地方交付税の額の決定又は変更の通知を受けた場合において,当該地方団体に対する地方交付税の額の算定の基礎について不服があるときは,通知を受けた日から30日以内に,総務大臣に対し審査を申し立てることができる旨,この場合において,市町村にあっては,当該審査の申立ては,都道府県知事を経由してしなければならない旨規定する。 コ交付税の額の算定に用いる数の錯誤等地方交付税法19条7 立てることができる旨,この場合において,市町村にあっては,当該審査の申立ては,都道府県知事を経由してしなければならない旨規定する。 コ交付税の額の算定に用いる数の錯誤等地方交付税法19条7項は,地方団体は,同条1項から5項までの場合においては,同条6項の文書を受け取った日から30日以内に,総務大臣に対し異議を申し出ることができる旨規定する。 サ交付税の額の減額等の意見の聴取地方交付税法20条2項は,総務大臣は,同法10条3項,同法15条2項及び3項,同法18条2項並びに同法19条1項から5項まで及び8項の規定による決定又は処分について関係地方団体が十分な証拠を添えて衡平又は公正を欠くものがある旨を申し出たときは,公開による意見の聴取を行わなければならない旨規定する。 シ地方財政審議会の意見の聴取地方交付税法23条は,総務大臣は,次に掲げる場合には,地方財政審議会の意見を聴かなければならない旨規定する。 1号地方交付税の交付に関する命令の制定又は改廃の立案をしようとするとき。 (2号以下略)(3) 特別交付税に関する省令ア市町村に係る12月分の算定方法特別交付税に関する省令3条1項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの。以下同じ。)は,各市町村に対して毎年度12月に交付すべき特別交付税の額は,同項1号の額及び6号の額の合算額に,同項3号の額から同項4号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。)と同項2号の額の合算額から同項5号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。)を加えた額とする旨規定する。 (各号略)イ市町村に係る3月分の算定方法特別交付税に関する省令5条1項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの。以下同じ。)は,各市町村に対して毎 。)を加えた額とする旨規定する。 (各号略)イ市町村に係る3月分の算定方法特別交付税に関する省令5条1項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの。以下同じ。)は,各市町村に対して毎年度3月に交付すべき特別交付税の額は,同項1号の額に同項3号の額から同項4号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。)と同項2号の額の合算額 から同項5号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。)を加えた額とする旨規定する。 (各号略)ウ本件各特例規定市町村に係る12月分の算定方法の特例特別交付税に関する省令附則5条21項は,令和元年度において,当該年度の基準財政需要額(普通交付税に関する省令48条の規定の適用を受ける場合にあっては,同条の規定を適用しないで算定した基準財政需要額。 以下この項において同じ。)が基準財政収入額(同条の規定の適用を受ける場合にあっては,同条の規定を適用しないで算定した基準財政収入額。 以下この項において同じ。)を超える各市町村に対して12月に交付すべき特別交付税の額は,特別交付税に関する省令3条1項の規定にかかわらず,同項1号の額及び同項6号の額の合算額に,同項3号の額から同項4号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。)並びに同項2号の額の合算額から当該年度の4月1日から9月30日までの間における地方税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第2号)1条の規定による改正前の地方税法37条の2第1項1号及び同法314条の7第1項1号に掲げる寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに地方税法37条の2第2項及び同法314条の7第2項に規定する特例控除対象寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに基準財政収入額の合算額が基準財政需要額に1.22 の2分の1に相当する額並びに地方税法37条の2第2項及び同法314条の7第2項に規定する特例控除対象寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに基準財政収入額の合算額が基準財政需要額に1.22を乗じて得た額又は基準財政需要額に28億6400万円を加えた額のいずれか大きい額を超える額として総務大臣が定める額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。)を加えた額とする旨規定する。 市町村に係る3月分の算定方法の特例特別交付税に関する省令附則7条15項は,令和元年度において,当該 年度の基準財政需要額(普通交付税に関する省令48条の規定の適用を受ける場合にあっては,同条の規定を適用しないで算定した基準財政需要額。 以下この項において同じ。)が基準財政収入額(同条の規定の適用を受ける場合にあっては,同条の規定を適用しないで算定した基準財政収入額。 以下この項において同じ。)を超える各市町村に対して3月に交付すべき特別交付税の額は,特別交付税に関する省令5条1項の規定にかかわらず,同項1号の額に同項3号の額から同項4号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。)並びに同項2号の額の合算額から,次の1号の額から2号の額を控除した額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。)を加えた額とする旨規定する。 1号当該年度における地方税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第2号)1条の規定による改正前の地方税法37条の2第1項1号及び同法314条の7第1項1号に掲げる寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに地方税法37条の2第2項及び同法314条の7第2項に規定する特例控除対象寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに基準財政収入額の合算額が基準財政需要額に1.22を乗じて得た額又は基準財政 に地方税法37条の2第2項及び同法314条の7第2項に規定する特例控除対象寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに基準財政収入額の合算額が基準財政需要額に1.22を乗じて得た額又は基準財政需要額に28億6400万円を加えた額のいずれか大きい額を超える額として総務大臣が定める額2号特別交付税に関する省令3条1項の規定によって算定した額から同省令附則5条21項の規定によって算定した額を控除した額 2 前提事実当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実は,次のとおりである。 (1) 本件各特例規定特別交付税に関する省令の一部を改正する省令(令和元年総務省令第61 号)が令和元年12月11日に制定・公布され,同日から施行された。これにより,令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例規定(本件各特例規定)として特別交付税に関する省令附則5条21項(上記1(3)ウ)及び同附則7条15項(上記1(3)エ)が設けられるなどの改正がされた。本件各特例規定は,令和元年度において,基準財政需要額が基準財政収入額を超える各市町村に対して12月及び3月に交付すべき特別交付税の額は,特別交付税に関する省令3条1項及び同省令5条1項の規定にかかわらず,当該地方団体の当該年度における地方税法37条の2第1項1号及び同法314条の7第1項1号に規定する寄附金並びに同法37条の2第2項及び同法314条の7第2項所定の特例控除対象寄附金(これらの寄附金は,いわゆるふるさと納税としての寄附金である。)の収入見込額の一定額等を減算項目として算定するというものであった。 (2) 本件12月分決定総務大臣は,令和元年12月,原告について,特別交付税に関する省令附則5条21項の規 寄附金である。)の収入見込額の一定額等を減算項目として算定するというものであった。 (2) 本件12月分決定総務大臣は,令和元年12月,原告について,特別交付税に関する省令附則5条21項の規定を適用した上,令和元年度の12月に原告に交付すべき特別交付税の額を710万2000円とする旨の決定(本件12月分決定)をし,大阪府知事を経由して,同月13日付けの通知書により,泉佐野市長に通知した(甲1の1・2)。 (3) 審査申立て原告は,令和元年12月25日,本件12月分決定の額の算定の基礎について不服があるなどとして,総務大臣に対し,地方交付税法18条1項に基づく審査申立てをした。これに対し,総務大臣は,令和2年1月23日,上記審査申立てを却下する旨の決定をした。(甲2の1~4,5の1・2)(4) 意見の申出原告は,令和2年2月26日,大阪府知事を経由して,総務大臣に対し,地方交付税法17条の4第1項に基づき,本件各特例規定の見直しについて,意 見の申出をした。 原告が申し出た意見の概要は,①「ふるさと納税を含め,個人が任意に支出する寄附金については,基準財政収入額に算入しないこととしている。」とする平成30年3月の交付税の算定方法に関する意見の処理方針,②有識者等によるふるさと納税研究会の報告書の「寄附を受領した地方団体の地方交付税が減少することのないようにすることが望ましい。」との意見,③会計年度独立の原則,に反して,ふるさと応援寄附収入の2分の1を基準財政収入額と同等とみなして特別交付税の交付算定額から控除することの見直しを要望する,というものであった。 これに対し,総務大臣は,令和2年3月27日,大阪府を通じて,原告に対し,原告の上記意見を採用しない旨の処理結果を送付した。(甲3,6の1・2)(5 の見直しを要望する,というものであった。 これに対し,総務大臣は,令和2年3月27日,大阪府を通じて,原告に対し,原告の上記意見を採用しない旨の処理結果を送付した。(甲3,6の1・2)(5) 本件3月分決定総務大臣は,令和2年3月,原告について,特別交付税に関する省令附則7条15項の規定を適用した上,令和元年度の3月に原告に交付すべき特別交付税の額を4616万7000円とする旨の決定(本件3月分決定)をし,大阪府知事を経由して,同月27日付けの通知書により,泉佐野市長に通知した(甲4の1・2)。 (6) 本件訴えの提起原告は,令和2年6月8日,本件各決定の取消しを求める本件訴えを提起した。 3 当事者の主張本件訴えが裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たるか否かについての当事者の主張は,次のとおりである。 (原告の主張)(1) 法律上の争訟とは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に 関する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られると解されている(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁〔以下「最高裁昭和56年判決」という。〕参照)。 これを本件についてみると,原告は,行政権限を行使することによって特別交付税の交付を受けるのではなく,自己の主観的な権利又は被告(国)との間の法律関係に基づいて,特別交付税の交付を受ける(減額されることなく受領する)ことができるというべきである。そして,本件訴えは,地方交付税法の適正な解釈と法の一般的な原理の適用により終局的に解決することができるものである。 したがって,本件訴えは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,法令の適 法の適正な解釈と法の一般的な原理の適用により終局的に解決することができるものである。 したがって,本件訴えは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,法令の適用により終局的に解決することができるものであるから,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たる。 (2) 被告は,最高裁平成10年(行ツ)第239号同14年7月9日第三小法廷判決・民集56巻6号1134頁(以下「最高裁平成14年判決」という。)の射程は,国又は地方公共団体の提起した訴訟についてその「法律上の争訟」性を判断する場合一般に及ぶ旨主張する。 しかし,①最高裁平成14年判決は,地方公共団体である宝塚市が条例に基づくパチンコ店建築中止命令の履行を求めた事案について,「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできない」から,当該訴訟は裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないと判示したものであって,同判決の射程は,国又は地方公共団体が国民(私人)に対して行政上の義務の履行を求める訴訟にのみ及ぶと解すべきである。そして,本件訴えは原告が国民(私人)に対して行政上の義務の履行を求める訴訟で はないから,最高裁平成14年判決の射程は本件訴えに及ばない。 また,②上記①のように解することができないとしても,最高裁平成14年判決の射程は,行政権限を行使した地方公共団体が原告となる訴訟にのみ及ぶと解すべきである。本件で,原告は,行政権限を行使して特別交付税を徴収したのではなく,国が徴収した税の配分として特別交付税の交付を受けたにすぎないから,最高裁平成14年判決 原告となる訴訟にのみ及ぶと解すべきである。本件で,原告は,行政権限を行使して特別交付税を徴収したのではなく,国が徴収した税の配分として特別交付税の交付を受けたにすぎないから,最高裁平成14年判決の射程は本件訴えに及ばない。 さらに,③上記②のように解することができないとしても,上記(1)のとおり,原告は,本件訴えにおいて,特別交付税の交付を受ける(減額されることなく受領することができる)権利利益が侵害されたと主張しているのであるから,本件訴えは,最高裁平成14年判決が「法律上の争訟」に当たるとする「自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるもの」に当たるというべきであって,最高裁平成14年判決の射程は本件訴えに及ばない。 以上のとおりであるから,いずれにしても最高裁平成14年判決の射程は本件訴えに及ばず,被告の上記主張は採用することができない。 (3) 被告は,本件訴えに係る訴訟は,機関訴訟の対象となる訴訟であって,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない旨主張する。 しかし,行政事件訴訟法6条は,機関訴訟とは「国又は公共団体の機関相互間における…紛争」と規定しており,国と公共団体との間における紛争と規定していないから,国と地方公共団体との間の紛争が直ちに機関訴訟に該当するものではない。また,地方公共団体は,憲法92条及び地方自治法により自治権が保障された独立の団体であり,国とは異なる自己の目的と事務を持つ公法人であって,広い意味においても国の機関には当たらないから,国と地方公共団体との間の争いが常に機関訴訟であるというのは正当ではない。そして,国と地方団体との関係は,少なくとも平成8年のいわゆる地方分権改革以降は,行政主体と一般私人との関係と同様に,法律の下で対等・独立なものとされている(地方自治法245条以下参照)。 はない。そして,国と地方団体との関係は,少なくとも平成8年のいわゆる地方分権改革以降は,行政主体と一般私人との関係と同様に,法律の下で対等・独立なものとされている(地方自治法245条以下参照)。 したがって,国と地方公共団体との間の争いである本件訴えは,異なる法主体間の争いであって,同一の統治団体内部の争いではないから,機関訴訟の対象となる訴訟には当たらず,被告の上記主張は採用することができない。 (4) 被告は,地方交付税法は,地方交付税の額の決定に対する抗告訴訟を予定しておらず,地方財政審議会及び公開による意見聴取を通じた行政内部の解決に委ねているものと解されるから,地方交付税の額の決定に対する訴訟は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には当たらない旨主張する。 しかし,地方交付税法が地方交付税の額の決定に対する抗告訴訟を予定していないと解釈すべき理由はなく,かえって,地方交付税法の定めを根拠として,憲法上の司法権や「法律上の争訟」の解釈・適用に影響を及ぼすとする解釈は,本末転倒であって,許されない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (5) 被告は,原告は地方交付税を受ける(減額されない)権利利益を有するものではないから,本件訴訟は,原告の上記権利利益の保護救済を目的とするものということはできない旨主張する。 しかし,上記(1)のとおり,原告は,行政権限を行使することによって特別交付税の交付を受けるのではなく,自己の主観的な権利又は被告(国)との間の法律関係に基づいて,特別交付税の交付を受ける(減額されることなく受領する)ことができるというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (被告の主張)(1) 憲法76条1項が定める司法権の本来的な 付を受ける(減額されることなく受領する)ことができるというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (被告の主張)(1) 憲法76条1項が定める司法権の本来的な機能は,憲法32条が保障する裁判を受ける権利,すなわち,国民個人の主観的な権利利益の侵害の救済を求める権利を保障することにあり,このような司法権の本来的な機能の対象として,裁判所法3条1項が規定されている。そして,地方公共団体を含む行政主体は,一般私人と異なり,専ら法律上付与された行政権限の主体とし て,法令に基づき行政権限を行使する立場にあるから,行政主体が他の法主体に対して主張する法的地位は,基本的に全て権限に基づく地位であって,人権的利益として保護されない。そうすると,行政主体が提起する訴訟は,原則として,「固有の資格」(すなわち,一般私人が立ち得ないような行政機関特有の立場)で提起する訴訟であって,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的として提起するものであるから,同項にいう「法律上の争訟」に当たらず,例外的に,一般私人と共通する法的根拠に基づく場合に限り,主観的な権利利益の保護救済を求めるものとして,同項にいう「法律上の争訟」に当たる(たとえ,公法上の法律関係を対象とし,形式的に抗告訴訟等の形態で提起された訴訟であっても,その訴えの実質において「法律上の争訟」に当たらないものは,同項にいう「法律上の争訟」に当たらない。)。 これを本件についてみると,地方交付税の額の決定は,地方団体のみを名宛人とするものであるから,当該決定を受け得る立場は,一般私人がおよそ立ち得ないものであるといえる。他方で,地方交付税の額の決定は,地方団体間における税の配分の問題であり,その性質上,一般私人と共通する法的根拠を見いだすことはでき を受け得る立場は,一般私人がおよそ立ち得ないものであるといえる。他方で,地方交付税の額の決定は,地方団体間における税の配分の問題であり,その性質上,一般私人と共通する法的根拠を見いだすことはできない。また,地方交付税の配分を受けることのできる地位は,地方団体が行政権を有し,所掌の行政事務を遂行すべき立場にあることに基づくものであって,そうでなければ付与されることのあり得ないものである。したがって,地方交付税の額の決定を受ける地方団体の地位は,「固有の資格」(一般私人が立ち得ないような行政機関に特有の立場)であって,一般私人と共通する法的根拠に基づく立場であるということはできない。 したがって,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない。 (2) 最高裁平成14年判決は,主観的な権利利益に関する訴訟の形態をとる訴えであっても,その実質が法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的と する場合には「法律上の争訟」性を欠き,司法権の対象外となるという法理を示したものであって,同判決の射程は,国又は地方公共団体の提起した訴訟についてその「法律上の争訟」性を判断する場合一般に及ぶというべきである。 そして,地方交付税法の仕組みに照らしても,ある地方団体に存在する財政需要と財政収入の内容から当然に,地方団体全体の共通財源であるその総額の中の一定額ないし一定割合を受領することが導かれるものではないから,法令上,その総額の中から一定額ないし一定割合を受領することができる具体的な権利利益が発生するものとはいえず,地方交付税の額の決定に関し,原告に国民同様の権利利益を観念することはできない。 そうすると,地方交付税の額の決定に対する不服をいう訴訟は,実質において法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするも 税の額の決定に関し,原告に国民同様の権利利益を観念することはできない。 そうすると,地方交付税の額の決定に対する不服をいう訴訟は,実質において法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものとはいえない。 したがって,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない。 (3) 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号。以下「地方分権一括法」という。)による地方自治法の改正により,国の関与については,国地方係争処理委員会に審査の申出をした場合に訴えを提起することができるとされたが(地方自治法251条の5),当該訴えに係る訴訟は,機関訴訟の対象となる訴訟であると位置付けられている。 そして,同法245条は,当該訴訟の対象となる国の関与を,「普通地方公共団体が固有の資格において当該行為の名あて人となるもの」に限定している。 このように,上記改正後の同法は,国と地方公共団体との間の「固有の資格」に基づく訴訟は機関訴訟の対象となる訴訟であると位置付けていることが明らかである。 そして,上記(1)のとおり,地方交付税の額の決定を受ける地方団体の地位 は,「固有の資格」である。 したがって,地方交付税の額の決定に対する訴訟は,機関訴訟の対象となる訴訟であって,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には当たらない。 (4) 地方交付税の額の決定に当たっては,国や地方団体の実際の歳入額や個別の地方団体の財政事情等が変動することを前提として,国と地方団体全体との調整,地方団体相互の調整を要するものであるし,これらの変動する諸事情に柔軟に対応しつつ,地方団体の歳入の不足額を補うという目的からして迅速に決定,交付すべきものである。 して,国と地方団体全体との調整,地方団体相互の調整を要するものであるし,これらの変動する諸事情に柔軟に対応しつつ,地方団体の歳入の不足額を補うという目的からして迅速に決定,交付すべきものである。このような性質を有する地方交付税の額の決定は,三審制の下,慎重な手続で判断に一定の時間を要する司法機関の判断になじむものとして設計されているものではなく,総務大臣の権限に委ねられている。 一方で,地方交付税法は,地方交付税の額の決定に関する総務大臣の権限行使に際して地方団体の意見を反映し,一定の是正手段を設けている。すなわち,同法は,行政内部の紛争処理手続として,①地方交付税の額の決定を受けた地方団体が,地方交付税の算定の基礎について不服があるときの審査申立手続(同法18条1項),②地方団体が,総務大臣により地方交付税の算定の基礎に用いた数に錯誤があったことを理由に交付税の減額がされた場合の異議申出の手続(同法19条7項)を設けるほか,意見申出制度の手続として,③地方団体が,地方交付税の額の算定方法についての意見を申し出ることができる意見申出制度(同法17条の4),④地方交付税の額の決定又は変更を受けた地方団体がした審査申立て又は異議申出について決定がされた場合における公開による意見聴取の制度(同法20条2項),⑤総務大臣が,地方交付税の交付に関する命令の制定又は改廃の立案をしようとするとき,地方交付税の額を決定するとき等における,地方団体の推薦による委員が過半数を占める地方財政審議会の意見聴取の制度(同法23条)を設けており,地方交付税の額の決定の目的や性質にふさわしい十分な手段を整備している。 そして,地方交付税法の立案担当者による解説によれば,地方交付税法は,地方交付税の額の決定について,数値の取り違え等の形式的な誤 の決定の目的や性質にふさわしい十分な手段を整備している。 そして,地方交付税法の立案担当者による解説によれば,地方交付税法は,地方交付税の額の決定について,数値の取り違え等の形式的な誤りである「算定の基礎」についての不服申立てのみを許すこととして,上記①の審査申立手続を設け,地方交付税の額の決定については抗告訴訟を予定していないことが明らかである。他方で,「算定の方法」については,地方分権推進計画及び地方分権一括法に基づき,上記③の意見申出制度が設けられたが,「算定方法」については,訴訟手続はもとより,審査申立手続も新設されず,「算定方法」についての適正は,上記⑤の地方財政審議会への意見聴取の制度により担保することとされた。 このような地方交付税法の改正の経緯や,地方交付税の額の決定の目的や性質にふさわしく設計された事前,事後の同決定に係る手続等の制度の内容を踏まえれば,地方交付税法は,地方交付税の額の決定に対する抗告訴訟を予定しておらず,地方財政審議会及び公開による意見聴取を通じた行政内部の解決に委ねているものと解される。 したがって,地方交付税の額の決定に対する訴訟は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には当たらない。 (5) 原告は,本件訴訟は,地方交付税を受ける(減額されない)権利利益の保護救済を目的とする旨主張する。 しかし,上記(1)のとおり,地方交付税の額の決定を受ける地方団体の地位は一般私人と共通する法的根拠に基づく地位ではないから,その取消しを求める訴訟は,自己の権利利益の保護救済を目的とするものではない。 また,地方交付税法の仕組みに照らしても,地方交付税は,国の歳入等から定まる各年度における地方交付税の総額や全ての地方団体の財政需要及び財政収入を踏まえて,各地方団体に対する交付額が同時に ない。 また,地方交付税法の仕組みに照らしても,地方交付税は,国の歳入等から定まる各年度における地方交付税の総額や全ての地方団体の財政需要及び財政収入を踏まえて,各地方団体に対する交付額が同時に決定されるものであり,1つの地方団体の財政需要と財政収入の内容から,当然に,各年度における地方交付税の総額に対する一定額あるいは一定割合を受領することができ る権利利益が発生するものということはできない。 したがって,原告は地方交付税を受ける(減額されない)権利利益を有するものではないから,本件訴訟は,原告の上記権利利益の保護救済を目的とするものということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 判断枠組み裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」,すなわち,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和56年判決参照)。 2 検討以上の見解に立って,本件訴えが,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たるか否かについて,以下検討する。 (1) 当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であるか否かについてア地方交付税は,地方交付税法6条の規定により算定した所得税等の一定割合の額及び地方法人税の額で地方団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるように国が地方団体に対して交付する税とされ(同法2条1号,3条1項),その種類は普通交付税及び特別交付税とされる(同法6条の2第1項)。また,地方交付税は,地方団体がその事務を行うための財源となるものであって,使途が制限されない一般財源である(同法3条2項)。 また,地方団体(都道府県及び 付税とされる(同法6条の2第1項)。また,地方交付税は,地方団体がその事務を行うための財源となるものであって,使途が制限されない一般財源である(同法3条2項)。 また,地方団体(都道府県及び市町村)は,地方自治法上は普通地方公共団体に当たり(同法1条の3第2項),地域における事務等を処理する法人とされ(同法2条1項,2項),国の事務を国に代わって処理するのではなく,地方団体自らの事務を処理するものとされている(同法2条1項,2項 参照)。 そうすると,地方交付税は,地方団体が自らの事務を行うために交付されるものであるといえる。 イ上記のとおり,地方交付税は,国が地方団体に対して交付するものと定められているところ(地方交付税法2条1号,3条1項),地方団体が自ら賦課・徴収するものではなく,国が賦課・徴収した所得税等の国税の一定割合が,地方交付税法に基づく総務大臣による具体的な交付額の算定・決定を経て,各地方団体に配分・交付されるものである。 そうすると,地方交付税は,国の地方団体に対する支出金の性質を持つものというべきである。 ウそして,地方交付税のうち,普通交付税については,毎年度,基準財政需要額が基準財政収入額を超える地方団体に対して交付するものとされた上,各地方団体に対して交付すべき普通交付税の額は,当該地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える額とするとされ(地方交付税法10条1項,同条2項),特別交付税については,同法11条に規定する基準財政需要額の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があること等により,基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮してもなお,普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認 ること等により,基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮してもなお,普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して,総務省令で定めるところにより,同項に定める事情を考慮して交付するものとされた上,総務大臣は,総務省令で定めるところにより,各地方団体に交付すべき特別交付税の額を,毎年度,2回に分けて決定するものとされている(同法15条1項,同条2項)。また,地方交付税は,毎年度,所定の時期にそれぞれ所定の額を交付するとされている(同法16条)。 このように,各地方団体に対して交付すべき地方交付税の額の算定方法, 交付時期等は,地方交付税法によって規定されているのであって,総務大臣は,各地方団体に対して交付すべき地方交付税の額の決定に際し,何らかの裁量が認められるわけではなく,地方交付税法の定めに従って決定し,各地方団体に交付しなければならないものである。 エ以上のとおり,地方交付税は,地方団体が自らの事務を処理するために交付されるものであって,国の地方団体に対する支出金の性質を持ち,また,その額の算定方法等が地方交付税法によって規定されているものであること等に照らせば,地方団体が国から法律の定めに従い地方交付税の分配を受けることができるか否かに関する紛争は,地方団体と国との間の具体的な権利ないし法律関係の存否に関するものであるということができる。 したがって,地方団体が国に対して特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは,地方団体と国との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であるといえる。 (2) 法令の適用により終局的に解決することができるものであるか否かについて上記(1)のとおり,地方交 ,地方団体と国との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であるといえる。 (2) 法令の適用により終局的に解決することができるものであるか否かについて上記(1)のとおり,地方交付税の額の算定方法及び交付の手続は法定されているところ(地方交付税法10条,15条,16条等),これらの規定に照らすと,特別交付税の額の決定が適法であるか否かは,同法その他の関係法令を適用することによって判断することが可能であるといえる。そうすると,地方団体が国に対して特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは,その性質上,法令の適用によって終局的に解決することができるものというべきである。 (3) 小括以上によれば,地方団体が国に対して特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは,地方団体と国との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,法令の適用により終局的に解決することができ るものに該当するから,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たるというべきである。 そして,本件訴えは,地方団体である原告が,被告に対し,令和元年度の特別交付税の額の決定(本件各決定)の取消しを求めるものである。 したがって,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たる。 3 被告の主張についてこれに対し,被告は,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない旨主張するので,以下検討する。 (1) 被告は,前記第2の3(被告の主張)(1)のとおり,①地方公共団体を含む行政主体は,一般私人と異なり,専ら法律上付与された行政権限の主体として,法令に基づき行政権限を行使する立場にあるから,行政主体が他の法主体に対して主張する法的地位は,基本的に全て権限に基づく地位であって,人権 般私人と異なり,専ら法律上付与された行政権限の主体として,法令に基づき行政権限を行使する立場にあるから,行政主体が他の法主体に対して主張する法的地位は,基本的に全て権限に基づく地位であって,人権的利益として保護されず,行政主体が提起する訴訟は,原則として,「固有の資格」(すなわち,一般私人が立ち得ないような行政機関に特有の立場)で提起する訴訟であって,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的として提起するものであるから,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらず,例外的に,一般私人と共通する法的根拠に基づく場合に限り,主観的な権利利益の保護救済を求めるものとして,同項にいう「法律上の争訟」に当たるとした上で,②本件訴えは,地方公共団体である原告が,「固有の資格」に基づいて提起した訴訟であって,一般私人と共通する法的根拠に基づく立場に基づいて提起した訴訟ではないから,主観的な権利利益の保護救済を目的とするものではなく,同項にいう「法律上の争訟」に当たらない旨主張する。 しかし,上記①の点については,行政主体が「固有の資格」において他の行政庁の行為の相手方となる場合であっても,そのことから直ちに司法による 保護の可能性が否定されることにはならないというべきである。すなわち,行政主体であっても,独立の法人格を有するものとして,具体的な権利ないし法律関係の存否を争い得る場面においては,それらの存否について裁判所による判断を求めることを否定される根拠は見当たらず,これは,一般私人と共通する法的根拠に基づく例外的な場合に限られないというべきである。 また,被告がいう「一般私人と共通する法的根拠に基づく場合」の具体的内容は必ずしも明確ではないから,行政主体が提起する訴訟が裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に該当するか否か というべきである。 また,被告がいう「一般私人と共通する法的根拠に基づく場合」の具体的内容は必ずしも明確ではないから,行政主体が提起する訴訟が裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に該当するか否かを,被告がいう「一般私人と共通する法的根拠に基づく場合」に当たるか否かによって判別することが適切であるとはいい難い(なお,「固有の資格」については,行政不服審査法〔7条2項〕,地方自治法〔245条〕等において用いられている概念ではあるが,行政事件訴訟についての一般法である行政事件訴訟法においては用いられていないことに照らせば,地方団体が「固有の資格」に基づいて提起した訴えは常に司法審査の対象とならないと解すべき根拠は見当たらない。)また,上記②については,上記2(1)で説示したとおり,地方団体が地方交付税の分配を受けることができるか否かは,地方団体と国との間の具体的な権利ないし法律関係の存否に関する紛争というべきであるから,特別交付税の額の決定の取消しを求める本件訴えは,原告がその具体的な権利ないし法律上の利益の保護救済を目的とする訴訟であるというべきであって,原告の権利利益の保護救済を目的とする訴訟であると解される(なお,「固有の資格」に関し,行政主体の財政に関する他の行政主体との間の調整等の問題は,本来的に行政主体間においてしか生じ得ないものではなく,私人相互間においても同様の問題は生じ得るものであって,行政主体間の場合に特別の財政法規があるのは,基本的にはその財源が住民の税金等を主としたものであるためその使途に一定の枠を設ける趣旨に出たものであると解される。)。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 被告は,前記第2の3(被告の主張)(2)のとおり,最高裁平成14年判決の射程は,国又は地方 ものであると解される。)。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 被告は,前記第2の3(被告の主張)(2)のとおり,最高裁平成14年判決の射程は,国又は地方公共団体の提起した訴訟の「法律上の争訟」性を判断する場合一般に及ぶところ,本件訴えは,実質において法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであるから,最高裁平成14年判決に照らして「法律上の争訟」性を欠く旨主張する。 しかし,最高裁平成14年判決は,国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は不適法であるとした上で,宝塚市が条例に基づき同市長が発した建築工事の中止命令の名宛人に対し同工事を続行してはならない旨の裁判を求める訴えは不適法であるとしたものであるところ,上記2で説示したとおり,本件訴えは,原告(地方団体)が被告(国)に対して特別交付税の額の決定の取消しを求めるものであって,原被告間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であり,専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求めるものではない。そうすると,最高裁平成14年判決は,事案を異にし,本件に適切でない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (3) 被告は,前記第2の3(被告の主張)(3)のとおり,地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(地方分権一括法)により改正された地方自治法は,国の関与について,「普通地方公共団体が固有の資格において当該行為の名あて人となるもの」と限定し,国の関与に関する訴えに係る訴訟を機関訴訟の対象となる訴訟と位置付けていることから,地方公共団体が「固有の資格」に基づいて提起した訴訟は機関訴訟の対象となる訴訟であるところ,本件訴えに係る訴訟 し,国の関与に関する訴えに係る訴訟を機関訴訟の対象となる訴訟と位置付けていることから,地方公共団体が「固有の資格」に基づいて提起した訴訟は機関訴訟の対象となる訴訟であるところ,本件訴えに係る訴訟は,地方公共団体である原告が「固有の資格」に基づいて提起したものであるから,機関訴訟の対象となる訴訟であって,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない旨主張する。 しかし,本件訴えは,行政事件訴訟法3条2項の「処分の取消しの訴え」 であって,地方自治法251条の5の「国の関与に関する訴え」ではないから,本件訴えに係る訴訟が直ちに機関訴訟の対象となる訴訟であって裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないということはできない。そして,上記1及び2で説示したとおり,同項にいう「法律上の争訟」とは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものと解されるところ,本件訴えは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,法令の適用により終局的に解決することができるから,同項にいう「法律上の争訟」に当たるというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (4) 被告は,前記第2の3(被告の主張)(4)のとおり,地方交付税法の改正の経緯や,地方交付税の額の決定の目的や性質にふさわしく設計された事前,事後の同決定に係る手続等の制度の内容を踏まえれば,地方交付税法は,地方交付税の額の決定に対する抗告訴訟を予定しておらず,地方財政審議会及び公開による意見聴取を通じた行政内部の解決に委ねているものと解されるから,地方交付税の額の決定に対する訴訟は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない を予定しておらず,地方財政審議会及び公開による意見聴取を通じた行政内部の解決に委ねているものと解されるから,地方交付税の額の決定に対する訴訟は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない旨主張する。 しかし,前記関係法令の定め(2)ク~シのとおり,地方交付税法は,地方交付税の額の決定に関して種々の調整の手続を設け,地方交付税の額の決定に関する不服の申立てとしては,その算定の基礎についての審査の申立てのみを定めているものの,地方交付税の額の決定について抗告訴訟の提起を認めないとする明確な規定は存在せず,これを許容しない趣旨を含むものと解することはできない。 また,仮に,被告の上記主張が,地方交付税法が,地方交付税の額の決定を受ける地方団体に権利ないし法律上の利益を与えない趣旨であるから,同決定の取消しを求める訴えは当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の 存否に関する紛争ではなく,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない旨主張するものであるとしても,上記2(1)で説示した地方交付税の目的・性質等に照らせば,地方団体は,地方交付税の額の決定を受けることにより,当該決定に係る地方交付税の額の交付を受ける具体的な権利ないし法律上の利益を取得するものと解されるところであって,地方交付税法が上記の趣旨であると解することはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (5) 被告は,前記第2の3(被告の主張)(5)のとおり,地方交付税法の仕組みに照らしても,1つの地方団体の財政需要と財政収入の内容から,当然に,各年度における地方交付税の総額に対する一定額あるいは一定割合を受領することができる権利利益が発生するものといえない旨主張する。 しかし,上記2(1)及び上記(4)で説示したとお 容から,当然に,各年度における地方交付税の総額に対する一定額あるいは一定割合を受領することができる権利利益が発生するものといえない旨主張する。 しかし,上記2(1)及び上記(4)で説示したとおり,地方交付税の目的・性質等に照らせば,地方団体が地方交付税の分配を受けることができるか否かに関する紛争は,地方団体の具体的な権利ないし法律関係の存否に関するものであり,地方団体は,地方交付税の額の決定を受けることにより,当該決定に係る地方交付税の額の交付を受ける具体的な権利ないし法律上の利益を取得するものと解される。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 4 まとめ以上によれば,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たる。 第4 結論よって,主文のとおり中間判決をする。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官山田慎悟 裁判官宮端謙一は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官山地修

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