平成20(行コ)5 泡瀬干潟埋立公金支出差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成21年10月15日 福岡高等裁判所 那覇支部 その他 那覇地方裁判所
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判決文本文23,636 文字)

- 1 -主文1(1)職権により,原判決中,別紙死亡当事者目録記載の被控訴人らに関する部分を取り消す。 (2)本件訴えのうち,上記の被控訴人らに関する部分は,同人らが別紙死亡当事者目録記載の死亡日に死亡したことにより終了した。 控訴人らの控訴及び職権に基づき,原判決主文第3項及び第4項を次のとおり変更する。 (甲事件関係)(1)甲事件の訴えのうち,平成20年4月24日から平成21年7月23日までに終了した中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業・臨海部土地造成事業に関する一切の公金の支出,契約の締結又は債務その他の義務の負担行為の差止めを求める部分を却下する。 (2)控訴人県知事は,中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業・臨海部土地造成事業に関して,本判決確定時までに支払義務が生じたもの並びに調査費及びこれに伴う人件費を除く一切の公金を支出し,契約を締結し,又は債務その他の義務を負担してはならない。 (3)甲事件被控訴人ら(別紙死亡当事者目録記載の甲事件被控訴人らを除く)。 のその余の差止請求を棄却する。 (乙事件関係)(4)乙事件の訴えのうち,平成21年7月23日までに終了した沖縄市東部海浜開発事業に関する一切の公金の支出,契約の締結又は債務その他の義務の負担行為の差止めを求める部分を却下する。 (5)控訴人市長は,沖縄市東部海浜開発事業に関し,本判決確定時までに支払義務が生じたもの並びに調査費及びこれに伴う人件費を除く一切の公金を支出し,契約を締結し,又は債務その他の義務を負担してはならない。 (6)乙事件被控訴人ら(別紙死亡当事者目録記載の乙事件被控訴人らを除く)。 - 2 -のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じ,甲事件被控訴人ら(別紙死亡当事者目録記載の甲事件被控訴人らを除く)と控訴人 死亡当事者目録記載の乙事件被控訴人らを除く)。 - 2 -のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じ,甲事件被控訴人ら(別紙死亡当事者目録記載の甲事件被控訴人らを除く)と控訴人県知事に生じた費用はこれを2分し,そ。 の1を甲事件被控訴人らの,その余を控訴人県知事の各負担とし,乙事件被控訴人ら(別紙死亡当事者目録記載の乙事件被控訴人らを除く)と控訴人市長に生。 じた費用はこれを10分し,その1を乙事件被控訴人らの,その余を控訴人市長の各負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 甲事件(1)原判決中,控訴人県知事の敗訴部分を取り消す。 (2)前項の部分につき,甲事件被控訴人らの請求を棄却する。 (3)訴訟費用は,第1,2審を通じ,控訴人県知事に生じた費用と甲事件被控訴人らに生じた費用はすべて甲事件被控訴人らの負担とする。 乙事件(1)原判決中,控訴人市長に関する部分を取り消す。 (2)前項の部分につき,乙事件被控訴人らの請求を棄却する。 (3)訴訟費用は,第1,2審を通じ,控訴人市長に生じた費用と乙事件被控訴人らに生じた費用はすべて乙事件被控訴人らの負担とする。 第2審理の経過等 請求の骨子本件は,沖縄県の住民である甲事件被控訴人ら及び沖縄市の住民である乙事件被控訴人らが,泡瀬干潟を埋め立ててマリーナ・リゾートを建設する後記事業につき控訴人らが行う財務会計行為について,後記の理由により違法であるとして,地方自治法242条の2第1項1号及び4号本文に基づき,財務会計行為を差し止めること並びに沖縄県知事の地位にあった者及び国に対して損害賠償を請求することを- 3 -求めた事案であるが,その骨子は以下のとおりである。 (1)泡瀬地区の概要後記事業により埋立て等の対象となる泡瀬地区は,沖縄本島中南部 位にあった者及び国に対して損害賠償を請求することを- 3 -求めた事案であるが,その骨子は以下のとおりである。 (1)泡瀬地区の概要後記事業により埋立て等の対象となる泡瀬地区は,沖縄本島中南部の東海岸に位,。 置する中城湾港の北部に存し沖縄県第2の都市である沖縄市の東部に接している,()後記事業に係る埋立地及びその周辺海域は約265ヘクタールの干潟泡瀬干潟,,及び約353ヘクタールの藻場が大規模に存在する浅海域となっており海藻草類底生生物及びトカゲハゼ等の生息・生育の場となっているとともに,干潮時には多くのシギ・チドリ類,サギ類等が飛来し,良好な採餌,休憩の場ともなっている。 (2)公有水面の埋立事業及びその環境影響評価ア事業の骨子中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業・臨海部土地造成事業(以下「本件埋立事業」という)は,国の機関である内閣府沖縄総合事務局(以下「総合事務局」。 という)及び沖縄県が事業者となり,泡瀬干潟とその周辺海域の公有水面合計約。 187ヘクタール(以下「本件埋立計画地」という。内訳は,総合事務局が約178ヘクタール,沖縄県が約9.2ヘクタールである)を出島方式で埋め立てるも。 のである。 沖縄県は,上記埋立てが完了した後,総合事務局からその施行部分の一部(約55ヘクタール)につき管理の委託を受け,その残部を買い受けた上で地盤改良し,約90ヘクタールを沖縄市に,その残部を基盤整備して民間に売却することなどを計画している(以下,上記埋立てによる埋立地を「本件埋立地」という。なお,。)埋立地の早期利用等のため,原判決別紙「区域分割図」記載のとおり,埋立区域は第Ⅰ区域(沖縄県施行区域を含む。約96ヘクタール)と第Ⅱ区域(約91ヘクタール)に区分され,第Ⅰ区域が先行して施行されている。 沖縄市東部海 のため,原判決別紙「区域分割図」記載のとおり,埋立区域は第Ⅰ区域(沖縄県施行区域を含む。約96ヘクタール)と第Ⅱ区域(約91ヘクタール)に区分され,第Ⅰ区域が先行して施行されている。 沖縄市東部海浜開発事業(以下「本件海浜開発事業」といい,本件埋立事業と,併せて「本件埋立事業等」という)は,沖縄市が,本件埋立事業によって埋め立。 てられた土地のうち,約90ヘクタールを沖縄県から購入し,その基盤整備を行う- 4 -などして,沖縄県とともに「マリンシティ泡瀬」というマリーナ・リゾートを建,設しようとするものである。 イ事業の目的沖縄県及び沖縄市による本件埋立事業等の目的は,上記のとおり,本件埋立計画地に上記マリーナ・リゾートを建設することにあるが,総合事務局による本件埋立事業等の目的は,本件埋立計画地の北東に隣接する中城湾港新港地区の整備ための航路等浚渫工事(以下「新港地区航路等浚渫工事」という)に伴って発生する浚。 渫土砂を処理することにある。 ウ環境影響評価並びに公有水面埋立免許及び承認総合事務局は,本件埋立事業の事業者として,環境影響評価法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下同じ)及び「公有水面の埋立て又は干拓の。 事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査,予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針,環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令(平成10年農林水産省・運輸省・建設省令第1号。平成15年農」林水産省・国土交通省令第1号による改正前のもの。以下「本件省令」という)。 に基づき,本件埋立事業の環境影響評価(以下「本件環境影響評価」という)を。 行い,平成12年3月22日,沖縄県に対し「中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋,立事業に係る環境影響評価書(甲8。以下「本件評価書 き,本件埋立事業の環境影響評価(以下「本件環境影響評価」という)を。 行い,平成12年3月22日,沖縄県に対し「中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋,立事業に係る環境影響評価書(甲8。以下「本件評価書」という)を提出した。 」。 沖縄県(中城湾港港湾管理者)は,平成12年12月19日,沖縄県(本件埋立事業の事業者)に対し,本件埋立事業について免許を付与し(甲1,総合事務局)(本件埋立事業の事業者)に対し,本件埋立事業について承認した(甲4。以下,併せて「本件埋立免許及び承認」という。 。)(3)被控訴人らの主張する違法事由ア被控訴人らの主張する問題点被控訴人らは,本件環境影響評価が,調査,予測,評価(影響の回避,低減)及び環境保全措置(代償措置)のいずれにおいても杜撰であり,法が要求する環境影- 5 -響評価がされたと評価できるものではないなどと主張した。 また,被控訴人らは,本件埋立事業等は新港地区航路等浚渫工事と不可分一体であり,かつ,新港地区航路等浚渫工事は実施する必要性がないとして,本件埋立事業において新港地区航路等浚渫工事によって生じる土砂を処理する必要性や合理性はない旨主張し,さらに,同じくその目的の一つであるマリーナ・リゾートの建設も,収支の見通しが甘く,沖縄市の財政に過大な負担を掛けるものであるから,経済的合理性がないなどと主張した。 イ被控訴人らの主張する上記問題点と財務会計行為の違法性との関係(ア)地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項違反被控訴人らは,本件埋立事業等が経済的合理性を欠いているから,本件埋立事業に関して控訴人県知事が行う一切の公金の支出,契約の締結又は債務その他の義務の負担(以下「甲事件財務会計行為」という,及び本件海浜開発事業に関して。)控訴人市長が行う一切の公金の支出,契約の 業に関して控訴人県知事が行う一切の公金の支出,契約の締結又は債務その他の義務の負担(以下「甲事件財務会計行為」という,及び本件海浜開発事業に関して。)控訴人市長が行う一切の公金の支出,契約の締結又は債務その他の義務の負担(以下「乙事件財務会計行為」といい,甲事件財務会計行為と併せて「本件各財務会,計行為」という)は,必要最少限度を超える予算支出を禁じた地方自治法2条1。 4項及び地方財政法4条1項に違反するなどと主張した。 (イ)公有水面埋立法違反a公有水面埋立法4条1項1号「国土利用上適正且合理的ナルコト」被控訴人らは,本件埋立事業が,新港地区航路等浚渫工事によって発生する浚渫土砂の処理を目的の一つとしていることから,合理性を有するものとはいえず,また,同じくその目的の一つであるマリーナ・リゾートの建設も,収支の見通しが甘く,沖縄市の財政に過大な負担を掛けるものであるから,経済的合理性がないなどと主張した。 また,被控訴人らは,本件埋立事業等につき,重要な自然環境である泡瀬干潟の埋立てを伴うから,生物多様性の確保等を目指す国内政策に違反するものであるなどと主張した。 - 6 -b公有水面埋立法4条1項2号「其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」被控訴人らは,本件環境影響評価が杜撰であるから,これを前提とした本件埋立事業等は,環境の保全に十分な配慮をしたものとはいえないなどと主張した。 c公有水面埋立法4条1項3号「埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」被控訴人らは,泡瀬干潟が環境省指定に係る重要湿地500選に指定されていることなどを根拠に,本件埋立事業等は環境保全に関する国又は地方公共団体の法律に基づく計画に違背してい ク計画ニ違背セザルコト」被控訴人らは,泡瀬干潟が環境省指定に係る重要湿地500選に指定されていることなどを根拠に,本件埋立事業等は環境保全に関する国又は地方公共団体の法律に基づく計画に違背しているなどと主張した。 (ウ)財務会計行為の違法被控訴人らは,本件埋立免許及び承認が,上記のとおり,公有水面埋立法4条1項1号ないし3号の各要件(同法42条3項により,国の埋立施行に関する承認の各要件として準用されている。以下,同項の摘示を省略することがある)を充足。 しない重大かつ明白な違法があるから無効であるとして,これを前提とする財務会計行為も違法となると主張した。 (4)請求ア甲事件甲事件被控訴人らは,甲事件財務会計行為が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき,平成12年度から平成16年度にかけて合計約20億円の支出負担行為及び支出命令(以下「本件支出負担行為等」という)を。 させたA(当時沖縄県知事の職にあった者。以下「A」という)に対し,20億。 円の損害賠償請求をするよう,控訴人県知事に請求した。 また,甲事件被控訴人らは,国(総合事務局)が,杜撰な環境影響評価(本件環境影響評価)を行い,沖縄県の判断を誤らせ,沖縄県に本件埋立免許及び承認という違法な処分をさせたとして,同号本文に基づき,国に対し,本件埋立免許及び承認を前提としてされた本件支出負担行為等に係る上記20億円の損害賠償請求をす- 7 -るよう,控訴人県知事に請求した。 さらに,甲事件被控訴人らは,本件埋立免許及び承認が違法,無効である以上,これを前提とする甲事件財務会計行為がすべて違法であるとして,同項1号に基づき,甲事件財務会計行為を差し止めるよう,控訴人県知事に請求した。 イ乙事件乙事件被控訴人らは,乙事件財務会計行為がすべて違法であ 提とする甲事件財務会計行為がすべて違法であるとして,同項1号に基づき,甲事件財務会計行為を差し止めるよう,控訴人県知事に請求した。 イ乙事件乙事件被控訴人らは,乙事件財務会計行為がすべて違法であるとして,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,乙事件財務会計行為を差し止めるよう,控訴人市長に請求した。 原判決の判断の要旨(1)本案前の判断について原判決は,甲事件の訴えのうち,控訴人県知事に対しAに対する損害賠償請求を求める部分中,住民監査請求(平成17年3月23日)から1年以上前にされた財務会計行為に係る部分(原判決別紙「中城湾港(泡瀬地区)臨海部土地造成事業特別会計支出内容一覧」記載中の平成12年度ないし平成14年度の支出負担行為及び支出命令に係る部分並びに平成15年度の中城湾港(泡瀬地区)企業用地周辺環境資料作成業務委託費中の支出負担行為に係る部分)については,適法な住民監査請求を経ていないから,不適法であるとして訴えを却下した(原判決主文第2項。 )また,原判決は,甲事件の甲事件財務会計行為の差止めを求める訴えのうち,原審口頭弁論終結日(平成20年4月23日)までに終了した甲事件財務会計行為に係る部分については,訴えの利益がないとして,訴えを却下した(原判決主文第1項。 )さらに,原判決は,控訴人市長が本件海浜開発事業の見直しを表明しつつも,その具体的な見直しの内容について何らの主張,立証をしないことにかんがみ,本件埋立事業等がこのまま推進されるおそれが否定できず,乙事件財務会計行為がされることが相当の確実さをもって予測されるとして,乙事件財務会計行為の差止めを- 8 -求める訴えは不適法とはいえないとした(地方自治法242条1項参照。 )(2)被控訴人らの主張する問題点についてア本件環境影響評価につい 測されるとして,乙事件財務会計行為の差止めを- 8 -求める訴えは不適法とはいえないとした(地方自治法242条1項参照。 )(2)被控訴人らの主張する問題点についてア本件環境影響評価について原判決は,本件環境影響評価には不十分な点が散見されるが,これが環境影響評価法及び本件省令に違反する違法なものであるとまではいえないとした。 イ本件埋立事業等の合理性について原判決は,本件埋立事業が,浚渫土砂の処分を目的の一つとしているからといって直ちに合理性を欠くものではないし,収支の見通しも,当時の統計データや調査報告書等,一応の根拠を有する資料を基礎としていたから,本件埋立事業等は,本件埋立免許及び承認の時点(平成12年12月19日)において,経済的合理性を欠くものであったとはいえないとした。 しかし,原判決は,控訴人市長が,平成19年12月にした市長表明において,第Ⅰ区域は,工事の進捗状況からみて推進せざるを得ないが,土地利用計画は見直しが必要であり,第Ⅱ区域は,第Ⅰ区域へのアクセス等の点についての検討は必要であるものの,計画全体の見直し(すなわち,計画の撤回)が必要であるとの方針を表明したにもかかわらず(以下,この方針表明を「本件方針表明」という,。)第Ⅰ区域及び第Ⅱ区域とも,本件方針表明を踏まえた土地利用計画等を明らかにしていないから,現時点においては,沖縄市が行う本件海浜開発事業は,経済的合理性を欠くものと解するのが相当であるとした。また,沖縄県の本件埋立事業は,沖縄市の本件海浜開発事業を前提とするものであるから,現時点においては,本件埋立事業についても経済的合理性を認めることができないとした。 (3)本案の判断について原判決は,本件環境影響評価が違法ではなく,かつ,本件埋立免許及び承認の時点において本件埋立事業等が合理 本件埋立事業についても経済的合理性を認めることができないとした。 (3)本案の判断について原判決は,本件環境影響評価が違法ではなく,かつ,本件埋立免許及び承認の時点において本件埋立事業等が合理性を欠くものであったとはいえないから,本件埋立免許及び承認が,公有水面埋立法4条1項各号の要件を欠く違法なものであったとはいえないとした。 - 9 -そして,原判決は,Aがその在任中に本件埋立事業に関して甲事件財務会計行為をさせたことは違法ではなく,国が本件環境影響評価をしたことに沖縄県の判断を誤らせた違法があったともいえないから,Aに対して損害賠償(ただし,監査請求期間を遵守したと判断された甲事件財務会計行為に係るものに限る)を請求する。 よう控訴人県知事に求める請求,及び国に対して損害賠償を請求するよう控訴人県知事に求める請求は,いずれも理由がないとした(原判決主文第6項。 )他方,原判決は,上記のとおり,控訴人市長によって本件方針表明がされたにもかかわらず,これを踏まえた土地利用計画等が明らかにされていないから,沖縄市による本件海浜開発事業及びこれを前提とした沖縄県による本件埋立事業には経済的合理性を認めることはできないとして,乙事件財務会計行為の全部(原判決主文)(。 第4項及び甲事件財務会計行為の一部につき差止めを命じた原判決主文第3項ただし,本判決確定時までに支払義務が生じた部分について支出をすることまでが違法になるものではないとして,その部分については請求に理由がないとした。原判決主文第5項。 ) 不服申立て控訴人県知事は,甲事件財務会計行為のうち,原審口頭弁論終結時までに終了したもの及び本判決確定時までに支払義務が生じたものを除く部分につき差止めを命ぜられた部分(原判決主文第3項)を不服として,本件控訴を提起した。 事件財務会計行為のうち,原審口頭弁論終結時までに終了したもの及び本判決確定時までに支払義務が生じたものを除く部分につき差止めを命ぜられた部分(原判決主文第3項)を不服として,本件控訴を提起した。 また,控訴人市長は,乙事件財務会計行為の差止めを命ぜられた部分(原判決主文第4項)を不服として,本件控訴を提起した。 第3事案の概要事案の概要は,次項以下において,原判決に付加,訂正し,当審における主 張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 付加,訂正部分原判決5頁20行目の文末に行を改め,次のとおり付加する。 - 10 -「別紙死亡当事者目録記載の被控訴人らは,同目録記載の死亡日に死亡した」。 当審における控訴人県知事の主張(1)本件埋立事業が地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反しないことについて本件埋立事業は,地域の活力の低下が著しい中部圏東海岸地域の中核を担う沖縄市の泡瀬地区において,集客性の高い観光,リゾートや商業などの土地機能が集積した拠点地区を形成し,新たな雇用の場を確保し,地域の活性化を図り,県土の均衡ある発展に資することを目的とするものである。 また,本件埋立事業は,既存海岸線から沖合約200メートルに展開する出島方式を採用することによって,全体計画で82パーセントの干潟が残る計画内容となっており,干潟の保全を図るとともに,埋立区域における動植物にも適正な配慮を示していることから,事業執行の方法も相当なものである。 さらに,本件埋立事業は,原判決も認めるとおり,経済的合理性を欠くとはいえないものである。 ,,,そうすると本件埋立事業及びこれを前提とする甲事件財務会計行為は社会的政策的又は経済的見地から総合的に判断して,行政機関の 判決も認めるとおり,経済的合理性を欠くとはいえないものである。 ,,,そうすると本件埋立事業及びこれを前提とする甲事件財務会計行為は社会的政策的又は経済的見地から総合的に判断して,行政機関の裁量権を逸脱し,あるいは,これを濫用したものとはいえないから,地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反するものではない。 (2)本件方針表明及び計画の見直しについて控訴人市長は,平成19年12月,本件海浜開発事業の見直しを必要とするかのような意見表明(本件方針表明)を行ったが,これはあくまで控訴人市長の政治的意見の表明にすぎず,本件埋立事業そのものは何ら変更されてない。 本件埋立事業の完成までは数年を要するのであるから,その間,本件埋立事業を推進しつつ,地域住民や有識者と意見交換しながら土地利用計画に更なる検討を加えることは,行政の裁量の範囲内である。 (3)本件埋立免許及び承認を変更すべき義務について- 11 -被控訴人らは,本件方針表明によって本件埋立地の利用計画が白紙に戻り,社会的,経済的条件が本件埋立免許及び承認の時点から著しく変化した以上,現時点では,沖縄県には本件埋立免許及び承認を変更すべき義務があると主張する。 しかしながら,本件方針表明は控訴人市長の政治的意見の表明にすぎず,本件埋立事業等そのものは何ら変更されていない。また,公有水面埋立免許の前提となった埋立地の用途を変更することは,変更許可を得れば可能であるけれども(公有水面埋立法13条ノ2,そのような変更許可を得る必要があるか否かは,現在,沖)縄市において進められている土地利用計画の見直しの結果を踏まえて,今後検討すべきものである。したがって,本件埋立地の用途を変更する予定があるからといって,直ちに本件埋立免許及び承認の効力が消滅したり,その変更許可の義務が生 る土地利用計画の見直しの結果を踏まえて,今後検討すべきものである。したがって,本件埋立地の用途を変更する予定があるからといって,直ちに本件埋立免許及び承認の効力が消滅したり,その変更許可の義務が生ずるものではない。 (4)本件環境影響評価について本件環境影響評価が適正にされたことは,原審において主張したとおりである。 被控訴人らは,砂州の消滅や海藻の一種であるヒトエグサ(アーサ)の収穫量の減少を指摘するが,これは自然現象によるものであって,本件埋立事業の影響によるものではない。 当審における控訴人市長の主張(1)本件海浜開発事業が地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反しないことについてそもそも,行政事務は多種多様に及び,将来に向けてのある程度の予測を前提とせざるを得ない性質を有するから,予算執行権には一定程度の裁量が認められるべきであり,そのような裁量を逸脱した場合に限って,当該支出が地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反することとなる。 原審において主張したとおり,本件海浜開発事業には経済的合理性があるから,その支出を行うことが予算執行権の裁量を逸脱したことにはならない。 さらに,乙事件財務会計行為を差し止めることにより,本件海浜開発事業が推進- 12 -されないこととなるが,これによって,沖縄市民の公共の福祉が著しく阻害されるおそれがある(地方自治法242条の2第6項。 )(2)本件方針表明及び計画の見直しについてア本件方針表明は,第Ⅰ区域については計画を推進し,第Ⅱ区域については計,。 画の見直しをするというものであり第Ⅱ区域につき計画を撤回する趣旨ではないそもそも,一度計画した事業について,時間の経過とともに見直しが必要になることはまれではないから,第Ⅱ区域について計画の見直しをすることは, るというものであり第Ⅱ区域につき計画を撤回する趣旨ではないそもそも,一度計画した事業について,時間の経過とともに見直しが必要になることはまれではないから,第Ⅱ区域について計画の見直しをすることは,何ら問題がない。また,公有水面埋立免許の前提となった埋立地の用途を変更することは,変更許可を得れば可能であるけれども(公有水面埋立法13条ノ2,そのような)変更許可を得る必要があるか否かは,現在,沖縄市において進められている土地利用計画の見直しの結果を踏まえて,今後検討すべきものである。 イ沖縄市は,本件方針表明を受けて,本件海浜開発事業を検証するとともに,社会経済情勢の変化に対応し,より経済的合理性を高めるための見直し作業に取り組んでいる。 沖縄市は,本件海浜開発事業の見直しのため,平成20年度及び平成21年度の2年間の調査費として約3000万円を予算化するとともに,平成20年8月,履,。 行期間を平成22年3月までとして調査作業等をコンサルタントに委託発注したまた,沖縄市は,本件海浜開発事業の見直しに当たり,多くの市民の意見を収集するため,東部海浜開発土地利用計画策定100人ワークショップ(以下「100人WS」という)を設置した。100人WSは,平成20年11月から平成21。 年2月まで合計3回,会議を開催し,9つのグループごとにキャッチフレーズやメインとなる機能,土地利用のイメージなどを集約した。 さらに,沖縄市は,100人WSの意見を踏まえ,より具体的な土地利用計画案を策定することを目的に,同年4月,沖縄市活性化100人委員会東部海浜開発土地利用計画見直し部会(以下「100人委員会」という)を設置した。100人。 委員会は,現在,同年11月の最終報告へ向けて議論を重ねている。 - 13 -,,,そして沖縄市は本件海浜開発事業 地利用計画見直し部会(以下「100人委員会」という)を設置した。100人。 委員会は,現在,同年11月の最終報告へ向けて議論を重ねている。 - 13 -,,,そして沖縄市は本件海浜開発事業の土地利用計画の見直し案を策定するため,(「」。)同年5月東部海浜開発土地利用計画検討調査委員会以下検討委員会というを設置した。検討委員会は,平成22年2月までに土地利用計画案を策定する予定である。 その上で,沖縄市は,検討委員会から提出された土地利用計画案を踏まえ,同年3月末までに,沖縄市としての土地利用計画を策定する予定である。 (3)差止めの対象について原判決は,乙事件財務会計行為のすべてを違法として差止めを命じたが,仮に本件海浜開発事業の経済的合理性に疑問があったとしても,その見直しを行うためには所要の調査等が必要である。したがって,今後,本件海浜開発事業についてどのような見直しを行うにしても,調査費及び人件費を支出することが避けられない。 また,沖縄市が,本件埋立事業に基づく埋立地を購入するのは,第Ⅰ区域については平成28年ないし平成29年ころであり,第Ⅱ区域については10年以上も先になる見込みである。このように,遠い将来の財務会計行為を差し止めるのは,行政の裁量を否定するものであり,許されるものではない。 当審における被控訴人らの主張(1)本件方針表明及び計画の見直しについてア本件方針表明は,控訴人市長が,本件埋立事業等のうち,第Ⅰ区域については計画の見直しを,第Ⅱ区域については計画の撤回を表明したものであるから,本件埋立事業等は大幅な変更が避けられないこととなった。 控訴人らは,本件方針表明が控訴人市長の政治的意見の表明にすぎず,本件埋立事業等は何ら変更されていないと主張する。 しかし,沖縄市が行っている本件 件埋立事業等は大幅な変更が避けられないこととなった。 控訴人らは,本件方針表明が控訴人市長の政治的意見の表明にすぎず,本件埋立事業等は何ら変更されていないと主張する。 しかし,沖縄市が行っている本件海浜開発事業の土地利用計画案の見直し作業においては,第Ⅰ区域のみを埋め立て,第Ⅱ区域を埋め立てない土地利用計画案が議題とされており(丙78参照,本件方針表明が単なる政治的意見の表明にとどま)らないことは明らかである。 - 14 -このように,本件海浜開発事業は根本的に見直される見込みであるから,これを前提とする本件埋立事業も大幅な変更を余儀なくされる。そうすると,公有水面埋立免許及び承認を行う権限を有する者(以下「免許権者」という)としては,本。 件埋立免許及び承認を変更する法的義務を負うというべきである。 控訴人らは,このような事態に直面しながら,本件埋立事業等に漫然と公金を支出し続けているが,このことが地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反することは明らかである。 イ沖縄市は,本件海浜開発事業の経済的合理性を検証した結果,平成30年度においても同事業は妥当性を有するとの結論を出している(丙72。 )しかし,本件海浜開発事業は,少なくとも第Ⅱ区域については計画が撤回されているから,第Ⅰ区域のみならず第Ⅱ区域を含む当初の案をそのまま検証することには意味がない。また,仮にその点を措くとしても,宿泊需要の試算が楽観的にすぎるし,観光商業施設用地等の実施主体,進出計画も具体的に定まっていないから,本件海浜開発事業が平成30年度においても妥当性を有するとの上記結論は不当である。 (2)本件環境影響評価について本件環境影響評価が杜撰であることは,原審において主張したとおりであるが,本件環境影響評価の後,藻場が減少するとともに海藻の一種で 有するとの上記結論は不当である。 (2)本件環境影響評価について本件環境影響評価が杜撰であることは,原審において主張したとおりであるが,本件環境影響評価の後,藻場が減少するとともに海藻の一種であるヒトエグサ(アーサ)の収穫量も減少し,砂州が消滅している。本件環境影響評価は,これらについて触れていないから,その調査及び予測が杜撰であったことが明らかである。 第4当裁判所の判断 判断の対象について控訴人県知事は,甲事件財務会計行為のうち,原審口頭弁論終結時までに終了したもの及び本判決確定時までに支払義務が生じたものを除いて差止めを命ぜられた部分(原判決主文第3項)を不服として本件控訴を提起し,控訴人市長は,乙事件財務会計行為の差止めを命ぜられた部分(同第4項)を不服として本件控訴を提起- 15 -したから,当該不服申立てに係る部分が当審における判断の対象となる。 本案前の判断について(1)死亡当事者に係る部分について(職権判断)住民訴訟を定めた地方自治法242条の2は,普通地方公共団体の財務行政の適正な運営を確保して住民全体の利益を守るために,当該普通地方公共団体の構成員である住民に対し,いわば公益の代表者として同条1項各号所定の訴えを提起する権能を与えたものであるから,住民訴訟の原告たる地位は,財産権のように相続の対象となるものではないというべきである。したがって,住民訴訟の原告が訴訟継続中に死亡した場合には,その訴訟は,承継する余地がなく,当然に終了することとなる。 一件記録によれば,別紙死亡当事者目録記載の被控訴人ら(第1審原告ら)は,同別紙記載の死亡日に死亡したことが明らかである。 本件においては,原審において被控訴人らの請求が一部認容された部分に対して控訴人ら(第1審被告ら)が控訴をしているにとどまり,原審におい 原告ら)は,同別紙記載の死亡日に死亡したことが明らかである。 本件においては,原審において被控訴人らの請求が一部認容された部分に対して控訴人ら(第1審被告ら)が控訴をしているにとどまり,原審において被控訴人らの訴えが一部却下され又は請求が一部棄却された部分については被控訴人ら第,,(1審原告ら)から控訴がされていない。しかし,本件訴訟は全体として当審に移審しているから,当事者の死亡及び訴訟承継の可否という職権調査事項については,上記のように不服申立てのされていない部分も含め,当審において改めて判断する必要があると解される。 そうすると,別紙死亡当事者目録記載の被控訴人ら(第1審原告ら)に関する部分は,当審において,上記のように不服申立てのされていない部分も含めて職権で原判決を取り消し,訴訟終了宣言をすべきものである。 (2)既に終了した財務会計行為に係る部分について(職権判断)弁論の全趣旨によれば,控訴人県知事は,原審口頭弁論終結日の翌日(平成20年4月24日)以降も,本件埋立事業を継続していることが認められるから,同日から当審口頭弁論終結日(平成21年7月23日)まで,これに関する支出(甲事- 16 -件財務会計行為)を行ったものと推認される。 また,証拠(丙51ないし56,67ないし78)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人市長は,本件方針表明の後,本件海浜開発事業の見直し作業を進めるため,平成20年度及び平成21年度の2年間の調査費として約3000万円を予算化しするとともに,平成20年8月,履行期間を平成22年3月までとして調査作業等を進めさせ,100人WS,100人委員会及び検討委員会を設置するなど,調査費やこれに携わる職員の人件費などの支出(乙事件財務会計行為)をしていることが認められる。 そうすると,本件訴えのうち,甲 を進めさせ,100人WS,100人委員会及び検討委員会を設置するなど,調査費やこれに携わる職員の人件費などの支出(乙事件財務会計行為)をしていることが認められる。 そうすると,本件訴えのうち,甲事件財務会計行為に関し原審口頭弁論終結日の翌日から当審口頭弁論終結日までに終了したもの,及び乙事件財務会計行為に関し当審口頭弁論終結日までに終了したものの差止めを求める部分は,既に終了した財務会計行為についてその差止めを求めるものであるから,もはや訴えの利益がないというべきである。 (3)乙事件財務会計行為がされるおそれについてア当裁判所は,控訴人市長が,本件海浜開発事業の見直しを表明しつつも,その撤回を否定していることにかんがみ,乙事件財務会計行為がされることが相当の確実さをもって予測されると判断する(地方自治法242条1項参照。その理由)は,下記イのとおり,当審における控訴人市長の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由「第4当裁判所の判断「1本訴各請求の適法性」」(本案前の争点等「(2)乙事件関係「ウ財務会計行為がなされることが相)」」当の確実さをもって予測されるか否かについて」に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ当審における控訴人市長の主張について控訴人市長は,沖縄市が本件埋立事業に基づく本件埋立地を購入するのは,第Ⅰ区域については平成28年ないし平成29年ころであり,第Ⅱ区域については10年以上も先になる見込みであるが,このように遠い将来の財務会計行為を差し止め- 17 -るのは,行政の裁量を否定するものであって許されないと主張する。 しかし,地方公共団体の長その他の行政機関には,違法な財務会計行為をする裁量は与えられていないのであるから,そのような違法な財務会計行為がされることが 量を否定するものであって許されないと主張する。 しかし,地方公共団体の長その他の行政機関には,違法な財務会計行為をする裁量は与えられていないのであるから,そのような違法な財務会計行為がされることが相当の確実さをもって予測される場合には,その差止めが許容されるのは当然のことである。 控訴人市長の上記主張は,採用することができない。 本件埋立免許及び承認の適法性について(1)本件環境影響評価の適法性についてア当裁判所も,本件環境影響評価には,不十分な点が散見されるにしても,これが環境影響評価法及び本件省令に違反する違法なものであるとまではいえないと判断する。その理由は,下記イのとおり,当審における被控訴人らの主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由「第4当裁判所の判断「2」」本件環境影響評価における環境影響評価法及び本件省令違反の有無」に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ当審における被控訴人らの主張について被控訴人らは,本件環境影響評価の後,藻場が減少するとともに海藻の一種であるヒトエグサ(アーサ)の収穫量も減少し,砂州が消滅しているが,本件環境影響評価は,これらについて触れていないから,その調査及び予測が杜撰であったことが明らかであると主張する。 しかし,環境影響評価とは,一定の事業の実施が環境に及ぼす影響について,環境の構成要素(環境要素)に係る項目ごとに標準的な手法をもって調査,予測及び評価を行うとともに,環境の保全のための措置(環境保全措置)の検討を行うものであって,その予測には一定程度の不確実性を伴うことが避けられない。そうすると,当初の環境影響評価では予測されていなかった結果が後に発生したからといって,直ちに当該環境影響評価が違法であったということにはならない。そして,被控訴人らにおいて うことが避けられない。そうすると,当初の環境影響評価では予測されていなかった結果が後に発生したからといって,直ちに当該環境影響評価が違法であったということにはならない。そして,被控訴人らにおいても,藻場が減少するとともに海藻の一種であるヒトエグサ(アー- 18 -サ)の収穫量も減少し,砂州が消滅している点に関連して,本件環境影響評価のうち具体的にどの点(項目の選定,調査・予測・評価の手法の選定)にどのような問題点があるのかを明らかにしていない。 被控訴人らの上記主張は,採用することができない。 (2)本件埋立事業等の合理性について当裁判所も,本件埋立事業が,新港地区航路等浚渫工事によって発生する浚渫土砂の処分を目的の一つとしているからといって,直ちに合理性を欠くことになるものではないし,マリーナ・リゾート建設に関しても,収支の見通しが,当時の統計データや調査報告書等,一応の根拠を有する資料を基礎としていたことから,本件埋立事業等は,本件埋立免許及び承認の時点(平成12年12月19日)においては,経済的合理性を欠くものであったとまではいえないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由「第4当裁判所の判断「3本件埋立事業等の合理性」」の有無」(1)ないし(2)イ(エ)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (3)公有水面埋立法違反の有無について当裁判所も,本件環境影響評価が違法であるとまではいえず,かつ,本件埋立事業等が経済的合理性を欠くものであったとまではいえない以上,本件埋立免許及び承認が,公有水面埋立法4条1項各号の要件を欠く違法なものであったとはいえないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由「第4当裁判所の判断「4」」本件各請求について「(1)甲事件各請求について「ア被告県知事に対する」」損 欠く違法なものであったとはいえないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由「第4当裁判所の判断「4」」本件各請求について「(1)甲事件各請求について「ア被告県知事に対する」」損害賠償請求の義務付け請求(4号請求「(ア)前沖縄県知事Aに対する損害賠)」償請求について」cに記載のとおりであるから,これを引用する。 本件方針表明の後の本件各財務会計行為の適法性について(1)本件方針表明及び計画の見直しについてア後掲各証拠(特記しない限り枝番を含む)及び弁論の全趣旨によれば,本。 件方針表明及び計画の見直しについて,以下の事実が認められる。 ,,①本件埋立事業等については平成12年に本件埋立免許及び承認がされた後- 19 -その基礎となった経済的事情等に大きな変化が生じ,その全面的な見直しを迫られる事態となった。 ②そこで,控訴人市長は,平成19年12月,本件埋立事業等のうち第Ⅰ区域については,環境などへの影響も指摘されているが,工事の進捗状況からみて,今はむしろ沖縄市の経済活性化へつなげるため,今後の社会経済状況を見据えた土地利用計画の見直しを前提に推進せざるを得ないこと,第Ⅱ区域については,その約3分の1が保安水域にかかることから新たな基地の提供になり得るとともに土地利,,,用に制約が生じることやクビレミドロが当該保安水域に生息していることまた残余の部分は大半が干潟にかかる中で,環境への更なる配慮が求められることなどから,推進は困難であって,具体的な計画の見直しが必要であり,市民参画により現在の土地利用計画を見直すとともに,国及び沖縄県と事務協議を重ね,必要な法,(。 )。 的手続等を執る予定であることとの見解を表明した本件方針表明甲130③沖縄市は,本件海浜開発事業の見直しのため 用計画を見直すとともに,国及び沖縄県と事務協議を重ね,必要な法,(。 )。 的手続等を執る予定であることとの見解を表明した本件方針表明甲130③沖縄市は,本件海浜開発事業の見直しのため,平成20年度及び平成21年,,度の2年間の調査費として約3000万円を予算化するとともに平成20年8月履行期間を平成22年3月までとして,調査作業等をコンサルタントに委託発注した(丙51ないし53。 )④沖縄市は,本件海浜開発事業の見直しに当たり,多くの市民の意見を収集するため100人WSを設置した。100人WSは,平成20年11月27日,平成21年1月28日,同年2月19日の合計3回,会議を開催し,9のグループごとにキャッチフレーズやメインとなる機能,土地利用のイメージなどを集約した(丙55。 )⑤また,沖縄市は,100人WSの意見を踏まえ,より具体的な土地利用計画案を策定することを目的として100人委員会を設置した。100人委員会は,同年4月から活動を始め,同年11月末の最終報告の提示に向けて議論を重ねている(丙56,78。 )⑥さらに,沖縄市は,本件海浜開発事業の土地利用計画の見直し案を策定する- 20 -,,()。 ため同年5月学識経験者等によって構成される検討委員会を設置した丙67検討委員会は,100人委員会の最終報告やパブリックコメントを踏まえ,同月から平成22年2月までの間に5回の会合を開き,同月に土地利用計画案を策定する予定である(丙67ないし78。 )検討委員会は,現在,4つの土地利用計画ゾーニング案を前提として議論を重ねているが,提出された4案とも,第Ⅰ区域に相当する部分にのみゾーニングがされており,第Ⅱ区域に相当する部分は空白とされている(ゾーニング案上は「アク,セスゾーン」と表示されている。 して議論を重ねているが,提出された4案とも,第Ⅰ区域に相当する部分にのみゾーニングがされており,第Ⅱ区域に相当する部分は空白とされている(ゾーニング案上は「アク,セスゾーン」と表示されている。丙78,98。 )検討委員会には,平成21年5月,第Ⅰ区域及び第Ⅱ区域の埋立てを前提とした従前の土地利用計画が平成30年度においても妥当性を有する旨の資料が提出されている(丙72。 )⑦しかし,沖縄市においては,第Ⅰ区域のみの埋立てを前提とした新たな土地利用計画案について,その経済的合理性を裏付ける調査・検討はいまだ行われていない(弁論の全趣旨。 )⑧沖縄市は,検討委員会の土地利用計画案を踏まえ,平成22年3月末までに()。 従前の土地利用計画に代わる新たな土地利用計画を策定する予定である丙78イ以上のとおり,本件埋立事業等について平成12年に本件埋立免許及び承認がされた後,その基礎となった経済的事情等に大きな変化が生じたことから,本件埋立事業等は全面的な見直しを迫られる事態となり,控訴人市長から本件方針表明がされるとともに,沖縄市において,本件海浜開発事業の見直し作業が進められるに至っている(したがって,本件方針表明は,控訴人らの主張するような一市長による政治的意見の表明にすぎないものではなく,このような事情の変化を背景に,本件埋立事業等が全面的な見直しを余儀なくされるに至ったことの現れとみるべきものである。そして,現在,当初の本件海浜開発事業における土地利用計画と。),。 は全く異なった内容で土地利用計画の根本的な見直しが行われている状況にあるウこれを具体的にみると,控訴人市長は,本件方針表明において,本件埋立事- 21 -業等のうち第Ⅰ区域については土地利用計画の見直しを前提に推進することとし,第Ⅱ区域については ている状況にあるウこれを具体的にみると,控訴人市長は,本件方針表明において,本件埋立事- 21 -業等のうち第Ⅰ区域については土地利用計画の見直しを前提に推進することとし,第Ⅱ区域については推進が困難であると表明しており,現に,沖縄市における土地利用計画の検討過程においても,第Ⅱ区域に相当する部分は空白とし,第Ⅰ区域のみを利用することを前提とした素案が提出されている。そうすると,沖縄市としては,本件海浜開発事業の対象区域のうち,第Ⅱ区域については当初の計画の撤回もやむを得ないものとし,第Ⅰ区域についてのみ,土地利用計画を変更した上で事業を推進する意向であると解される。 (2)公有水面埋立免許等の変更許可についてアところで,公有水面埋立法に基づき公有水面埋立免許又は承認を得るためには,埋立区域及び工事の施行区域のほか,埋立地の用途を記載した願書を免許権者に提出するものとされているが,公有水面埋立免許又は承認を受けた後,その基礎となった事情が変化したこと等により,埋立区域の範囲や埋立地の用途を変更する必要が生ずることがある。 そのような場合,事業者が改めて公有水面埋立免許又は承認を得なければならないものとするのは煩瑣であることから,事業者は,免許権者からその旨の変更許可を受けて,事業を続行することができるものとされている(公有水面埋立法13条ノ2。この変更許可は,当初の公有水面埋立免許の内容を一部変更するものであ)るから,変更後の埋立区域の範囲や埋立地の用途を前提として,当該事業が国土利用上適正かつ合理的であること,環境保全及び災害防止につき十分配慮されたものであることなどの免許基準を満たしていることが要件となる(同条2項,4条1項。したがって,上記変更許可を受けるに当たっては,当該事業が,当該変更後)においても,経済的合理 につき十分配慮されたものであることなどの免許基準を満たしていることが要件となる(同条2項,4条1項。したがって,上記変更許可を受けるに当たっては,当該事業が,当該変更後)においても,経済的合理性を有するものであることが必要となる。 イ一方,上記変更許可を受けるに当たっては,新たな埋立区域の範囲や埋立地の用途を踏まえた土地利用計画の策定や,これが国土利用上適正かつ合理的であることなどの免許基準を満たしていることを裏付ける資料を提出する必要があり,免許権者においても,これらを検討した上で要件審査を行うこととなるから,埋立地- 22 -の用途等の変更を発案してから上記変更許可を得るまでに一定期間を要することは避けられない。しかし,公有水面埋立法上,その間,当該公有水面埋立免許及び承認の効力を停止したり,これに基づく埋立工事を禁止する旨の規定はないから,公有水面埋立法は,事業者において,公有水面埋立免許又は承認を得た後,埋立地の用途等を変更する必要が生じた場合であっても,埋立工事を続行することを直ちに禁止しているものではないと解される。 そうすると,事業者が,公有水面埋立免許又は承認を得た後,埋立地の用途等を変更する必要が生じたが,いまだ免許権者からその旨の変更許可を得ていない場合であっても,当該変更許可を得られる見込みがある限りは,暫定的に埋立工事を継続することは,予算執行における裁量権を逸脱するものではなく,地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反する違法なものとはいえない。 ウこの点について,被控訴人らは,本件埋立事業等が根本的に見直される見込みであるから,本件埋立免許及び承認も変更することが免許権者の法的義務である旨を主張する。しかし,前記のとおり,沖縄市は,第Ⅰ区域及び第Ⅱ区域の土地利用計画について,いまだ最終的な意思 直される見込みであるから,本件埋立免許及び承認も変更することが免許権者の法的義務である旨を主張する。しかし,前記のとおり,沖縄市は,第Ⅰ区域及び第Ⅱ区域の土地利用計画について,いまだ最終的な意思決定をしているわけではなく,沖縄県及び総合事務局も本件埋立免許及び承認の変更許可の出願もしていないのであるから,この段階で,免許権者が本件埋立免許及び承認を変更する義務があるとはいえない。 被控訴人らの上記主張は,採用することができない。 エ以上のとおり,従前の土地利用計画につき根本的な見直しが行われている現,,段階において本件埋立事業等に基づく埋立工事を継続することができるか否かは法的には,第Ⅰ区域及び第Ⅱ区域について,公有水面埋立法13条ノ2に基づく本件埋立免許及び承認の変更許可を得られる見込みがあるかどうかにかかることになり,これを,より実質的にみれば,現在沖縄市において策定中の新たな土地利用計画に経済的合理性が認められるかどうかにかかることになる。そして,新たな土地利用計画に経済的合理性が認められないにもかかわらず,漫然と,従前の土地利用計画に基づいて埋立工事が継続されているとすれば,これに係る公金の支出等の財- 23 -務会計行為は,違法と評価されることになる。 そこで,以下,この観点から検討する。 (3)本件埋立免許及び承認の変更許可の見込み(経済的合理性の有無)についてア第Ⅰ区域について前記認定のとおり,沖縄市は,本件海浜開発事業を見直し,第Ⅰ区域に係る部分の土地利用計画を平成22年3月末までに策定する予定であるが,この第Ⅰ区域のみの埋立てを前提とした新たな土地利用計画に経済的合理性があるか否かについては,いまだ調査・検討に至っていない。 この点,沖縄市で検討中の上記土地利用計画は,従前の土地利用計画を前提とするものでは みの埋立てを前提とした新たな土地利用計画に経済的合理性があるか否かについては,いまだ調査・検討に至っていない。 この点,沖縄市で検討中の上記土地利用計画は,従前の土地利用計画を前提とするものではあるが,原判決が適切に説示するとおり,従前の土地利用計画自体,経済的合理性を欠くとはいえないまでも,その実現の見込み等について疑問点も多々存在することからすると,これを前提とする上記土地利用計画に経済的合理性があると直ちに推認することはできない。また,従前の土地利用計画は,平成12年当時に定められたものであり,現時点まで約9年が経過していること,この間,その基礎となった経済的事情等に大きな変化が生じていることからすると,なお一層,上記推認を働かせることは困難といわざるを得ない。これに対し,控訴人市長は,従前の土地利用計画が平成30年度においても妥当性を有することの検証がされたとして,その旨の報告書(丙72)を提出する。しかし,同報告書によっても,観光商業施設用地や海洋研究施設用地,栽培漁業施設用地については,具体的な進出計画等が明らかになっておらず,従前の土地利用計画が平成30年度においても妥当性を有することが実証されているとはいい難い。 さらに,上記土地利用計画は,従前の土地利用計画と異なり第Ⅰ区域のみを対象としたものであるから,その対象面積は約半分となる上,アクセス道路も限定されたものとなり,従前であれば発揮できたかもしれないスケールメリットさえ放棄せざるを得なくなる懸念も拭い去ることができない。 そうすると,上記土地利用計画に経済的合理性があるか否かについては,従前の- 24 -土地利用計画に対して加えられた批判を踏まえて,相当程度に手堅い検証を必要とするといわざるを得ないのであり,そもそも上記土地利用計画の全容が明らかとなっていない現 かについては,従前の- 24 -土地利用計画に対して加えられた批判を踏まえて,相当程度に手堅い検証を必要とするといわざるを得ないのであり,そもそも上記土地利用計画の全容が明らかとなっていない現段階においては,これに経済的合理性があると認めることはできないといわざるを得ない。 ,,,結局第Ⅰ区域について沖縄市が検討中である上記土地利用計画を前提として本件埋立免許及び承認の変更許可がされる見込みがあると判断することは,現時点では困難であるというほかない。 イ第Ⅱ区域について前記認定のとおり,沖縄市は,本件海浜開発事業を根本的に見直し,第Ⅱ区域の,,,土地利用計画を事実上白紙に戻しているから現時点において第Ⅱ区域について新たな土地利用計画に基づき本件埋立免許及び承認の変更許可がされる見込みはないといわざるを得ない。 (4)本件埋立事業等の差止めの可否についてア以上のとおり,現時点においては,第Ⅱ区域についてはもとより,第Ⅰ区域についても,経済的合理性の調査・検討がされていない以上,今後策定される予定の土地利用計画を前提として,本件埋立免許及び承認の変更許可が得られる見込みがあると判断することは困難である。 そうすると,控訴人らは,裏付けとなる法律上の根拠(本件埋立免許及び承認の変更許可)が得られる見込みが立っていないのに,本件埋立事業等を推進しようとしていると評価せざるを得ないから,本件埋立事業等に係る財務会計行為(本件各財務会計行為)は,予算執行の裁量権を逸脱するものとして,地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反する違法なものというべきである。 イただし,本件海浜開発事業の土地利用計画を見直し,本件埋立免許及び承認の変更許可を求めるためには,所要の調査が必要となるから,そのための調査費及びこれに伴う人件費に 違法なものというべきである。 イただし,本件海浜開発事業の土地利用計画を見直し,本件埋立免許及び承認の変更許可を求めるためには,所要の調査が必要となるから,そのための調査費及びこれに伴う人件費に係る財務会計行為をすることは,違法とはいえない。また,本判決確定時までに,公金支出の前提となる契約の締結等の支出負担行為がされた- 25 -ものについては,沖縄県及び沖縄市は支払義務を負うと解されるから,その部分についての財務会計行為をすることも,違法とはいえない。 ウそのほか,本件全証拠をもってしても,本件各財務会計行為を差し止めることによって,人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがある(地方自治法242条の2第6項)とはいえない。 第5 結論 職権判断部分について(1)死亡当事者に係る部分について本件各訴えのうち,別紙死亡当事者目録記載の被控訴人ら(第1審原告ら)に関する部分は,すべて当然に終了したから,その旨の宣言をすべきである。 (2)既に終了した財務会計行為に係る部分について甲事件の訴えのうち原審口頭弁論終結日の翌日(平成20年4月24日)から当審口頭弁論終結日(平成21年7月23日)までに終了した甲事件財務会計行為の差止めを求める部分,乙事件の訴えのうち当審口頭弁論終結日までに終了した乙事件財務会計行為の差止めを求める部分は,もはや訴えの利益がないから不適法であるので却下すべきである。 控訴人らの控訴に係る部分について(1)甲事件について甲事件財務会計行為(既に終了した財務会計行為に係る部分,本判決確定時までに支払義務が生じた部分を除く)のうち,調査費及びこれに伴う人件費に係る部。 分は,財務会計行為が違法とはいえないから,その差止めを求める請求は理由がないが,その 計行為に係る部分,本判決確定時までに支払義務が生じた部分を除く)のうち,調査費及びこれに伴う人件費に係る部。 分は,財務会計行為が違法とはいえないから,その差止めを求める請求は理由がないが,その余の財務会計行為は違法であるから,当該部分の差止めを求める請求は理由があるので,その限度で差止請求を認容すべきである。 (2)乙事件について乙事件財務会計行為(既に終了した財務会計行為に係る部分を除く)のうち,。 判決確定時までに支払義務が生じた部分並びに調査費及びこれに伴う人件費に係る- 26 -部分は,財務会計行為が違法とはいえないから,その差止めを求める請求は理由がないが,その余の財務会計行為は違法であるから,当該部分の差止めを求める請求は理由があるので,その限度で差止請求を認容すべきである。 まとめよって,以上と一部結論を異にする原判決を本判決の主文のとおり取り消し,又は変更することとし,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所那覇支部民事部裁判長裁判官河邉義典裁判官森鍵一﨑威裁判官山

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