令和4(ワ)18610 商標権に基づく差止請求権不存在確認請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月27日 東京地方裁判所
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令和5年3月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第18610号商標権に基づく差止請求権不存在確認請求事件口頭弁論終結日令和5年2月7日判決原告オンキヨーホームエンターテイメント株式会社破産管財人A同訴訟代理人弁護士川端さとみ藤野睦子大住洋原悠介中原明子千葉あすか被告パイオニア株式会社同訴訟代理人弁護士岡本健太郎寺内康介 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、別紙被告商標目録記載の商標に係る商標権に基づいて、原告が別紙動産目録記載の各動産を販売することを差し止める権利を有しないことを確認する。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、原告が、別紙被告商標目録記載の商標(以下「本件商標」という。)に係る商標権者である被告に対し、原告が別紙動産目録記載の各動産(以下「本件在庫商品」という。)に本件商標を付したものを販売することは、本件 が、別紙被告商標目録記載の商標(以下「本件商標」という。)に係る商標権者である被告に対し、原告が別紙動産目録記載の各動産(以下「本件在庫商品」という。)に本件商標を付したものを販売することは、本件商標に係る被告の商標権(以下「本件商標権」という。)を侵害するものではないと主張して、被告が原告に対して本件商標権に基づき本件在庫商品の販売 を差し止める権利を有しないことの確認を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は、オンキヨーホームエンターテイメント株式会社(平成26年1 1月7日当時の商号は「オンキヨー株式会社」。以下、商号変更の前後を問わず「破産会社」という。)の破産管財人である。 破産会社は、令和4年5月13日、破産手続開始の申立て(大阪地方裁判所令和4年(フ)第1640号)を行い、同日、破産手続を開始して原告を破産管財人に選任する旨の決定がされた(甲1)。 イ被告は、本件商標の商標権者である。 (2) 商標権使用許諾契約破産会社及び被告は、平成26年11月7日、被告が、破産会社に対し、以下の各商品並びにこれらに関連する付属品、ソフトウェア、アプリケーション及びサービス(以下「許諾商品等」という。)につき本件商標権の通常 使用権を許諾する旨の契約(以下「本件使用許諾契約」という。)を締結した。本件使用許諾契約には、製品やサービス、取扱説明書等に本件商標を使用するに当たり、事前に被告の承諾を得なければならないことや、被告がブランド監査の観点から報告、対応、改善等を求めた場合は、これに応じなければならないことなど、破産会社が遵守すべき事項が定められていた。 るに当たり、事前に被告の承諾を得なければならないことや、被告がブランド監査の観点から報告、対応、改善等を求めた場合は、これに応じなければならないことなど、破産会社が遵守すべき事項が定められていた。(甲 3) ① ホームシアターシステム② 家庭用ブルーレイ、DVDプレーヤー③ 家庭用オーディオシステム④ 家庭用単品コーポネント(スピーカー、AVアンプ、2chオーディオコンポーネント、ネットワークオーディオプレーヤー、USBDAC、 マイクロホン、HDMIケーブル⑤ ヘッドホン及びイヤホン(DJ用は除く。)⑥ シーリングサウンドシステム、シーリングシアターシステム⑦ ダンサー用オーディオシステム⑧ 店舗及び商業空間向けスピーカー ⑨ 家庭用電話関連機器、デジタルフォトフレーム⑩ ボイスモニタリングレシーバー(補聴器については、破産会社及び被告の間で別途協議するものとする。)、ワイヤレスステレオスピーカーシステム(3) 本件使用許諾契約の合意解約 破産会社及び被告は、令和3年6月21日、許諾商品等のうち前記(2)の①ないし④及び⑥ないし⑧に係るものについては同年9月8日をもって、その余の許諾商品等については同年11月3日をもって、本件使用許諾契約を解約し(以下、両解約日を併せて「本件各解約日」という。)、破産会社は、本件各解約日以降、許諾商品等に本件商標を使用しないが、本件各解約日か ら6か月間、本件各解約日時点において現存する在庫を販売するために合理的な範囲内において、本件使用許諾契約に基づき本件商標の使用を継続することができる旨の合意(以下「本件解約合意」という。)をした(甲5)。 (4) 時点において現存する在庫を販売するために合理的な範囲内において、本件使用許諾契約に基づき本件商標の使用を継続することができる旨の合意(以下「本件解約合意」という。)をした(甲5)。 (4) 本件在庫商品破産会社は、本件各解約日時点において、本件商標を付した本件在庫商品 を保有していた(弁論の全趣旨)。 原告は、現在、NX香港株式会社の香港倉庫に、本件商標を付したままの本件在庫商品を保有している。 3 争点原告が本件在庫商品を販売することについて実質的違法性が欠如するか 4 争点に関する当事者の主張 (原告の主張)(1) 最高裁平成14年(受)第1100号同15年2月27日第一小法廷判決・民集57巻2号125頁(以下「平成15年最判」という。)は、いわゆる並行輸入の事案において、外形的に商標権侵害に該当する行為であったとしても、① 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を 受けた者により適法に付されたものであり、② 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって、③ 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国 の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には、商標の機能(出所表示機能及び品質保証機能)を害するものではなく、商標権侵害としての実質的違法性を欠くとした。 そして、上記①の要件は、当該商標を付された商品が適法に流通に置かれ たことまでは要件としていな び品質保証機能)を害するものではなく、商標権侵害としての実質的違法性を欠くとした。 そして、上記①の要件は、当該商標を付された商品が適法に流通に置かれ たことまでは要件としていないから、商標が商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されていれば、当該商品は商標法上の真正品であるというべきである。このような理解は、知財高裁令和2年(ネ)第10062号同3年5月19日判決、東京地裁平成30年(ワ)第35053号令和2年10月22日判決及び大阪高裁平成29年(ネ)第245号同年9月21日判決にお いても示されている。 本件は、並行輸入の事案とは異なるが、国内における真正品の転々流通と実質的違法性阻却という点において、平成15年最判の射程が及ぶというべきである。 (2) 本件在庫商品は、商標権者である被告から使用許諾を受けた破産会社が本件商標を適法に付したものであるから、商標法上の真正品である。 実質的に見ても、本件商標は、世界的に周知されている被告の商標であり、破産会社が、被告から中国を除く全世界でこれを使用する許諾を得て、本件使用許諾契約の有効期間中に適法に付したものであるから、世界的に同一の出所を示すものであり、本件商標の出所表示機能が害されることはない。 また、破産会社は、本件使用許諾契約の有効期間中に、同契約の定めに従 って、本件商標を付した本件在庫商品を製造したものである。本件在庫商品の販売自体は本件使用許諾契約終了後であったとしても、サンプル品や不良品、廃棄予定品として流通に置くことは想定されていないから、本件商標の品質保証機能が害されることはない。 (3) したがって、本件商標を付した本件在庫商品を販売する行為は実質的違法 性が欠如するか 定品として流通に置くことは想定されていないから、本件商標の品質保証機能が害されることはない。 (3) したがって、本件商標を付した本件在庫商品を販売する行為は実質的違法 性が欠如するから、被告の本件商標権を侵害するものではない。 (被告の主張)(1) 破産会社は、本件各解約日をもって、本件商標を使用する権限を失っており、例外的に本件各解約日から6か月間に限り、在庫を販売するのに必要な限度で本件商標を使用することが許諾されていたものの、その期間は既に経 過している。 (2) この点、商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者が適法に商標を付した商品が流通した際に、商標を使用する権限を有しない第三者がこれを転売することは、外形的には商標権侵害に該当するが、保護される商標の機能を害しない場合には実質的違法性を欠くとする考え方がある。 しかし、このような考え方が適用されるのは、商標権者や当該商標権者か ら使用許諾を受けた者が商品に適法に商標を付して流通させる場合に限られ、商標権者の意思に基づかずに商標が付されたり、商品が流通に置かれたりした場合に、実質的違法性を欠くことはない。 前記(1)のとおり、本件においては、破産会社は、本件解約合意により、本件商標を使用する権限を失っているから、商標権者や当該商標権者から使用 許諾を受けた者が商品に適法に商標を付して流通させる場合に該当せず、原告による本件在庫商品の販売が適法となるものではない。 (3) 原告は、平成15年最判の射程が本件に及び、本件商標を付した本件在庫商品を販売しても、本件商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されることはないと主張する。 しかし、本件は、日本企業である被告が同じく日本企業であ 件に及び、本件商標を付した本件在庫商品を販売しても、本件商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されることはないと主張する。 しかし、本件は、日本企業である被告が同じく日本企業である破産会社に対して商標の使用許諾を行ったという事案であるのに対し、平成15年最判は並行輸入の事案であるから、全く関係がない。原告が指摘するその他の裁判例についても、いずれも並行輸入に関するものであり、同様である。 また、商標権は禁止権であり、使用許諾がなければ他人の登録商標を使用 することはできないのが原則である。登録商標の使用許諾を受けていた契約当事者であっても、使用許諾期間経過後は、商標権の使用権限を喪失し、当該登録商標を使用することはできないから、出所表示機能を害することになることは明らかである。 さらに、破産会社は、本件解約合意により、本件商標を使用しないことを 約束しており、本件在庫商品は、これに付された本件商標が変更又は消去されない限り、実質的には廃棄するほかない商品であるから、品質保証機能も害するといえる。 (4) したがって、原告が本件商標を付した本件在庫商品を販売することにつき、実質的違法性を欠くとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提事実(2)ないし(4)のとおり、破産会社は、商標権者である被告との間で、本件商標権の通常使用権を許諾する旨の本件使用許諾契約を締結し、本件在庫商品に本件商標を付したが、その後、被告との間で、本件使用許諾契約を解約し、本件各解約日から6か月間、本件各解約日時点に現存する在庫を販売する限りにおいて、引き続き本件商標を使用することができる旨の本件解約 合意を締結し、上記6か月間は既に経過した。 したがって、原告が、今後、本件 間、本件各解約日時点に現存する在庫を販売する限りにおいて、引き続き本件商標を使用することができる旨の本件解約 合意を締結し、上記6か月間は既に経過した。 したがって、原告が、今後、本件商標を付した本件在庫商品を販売すれば、本件商標を使用することにつき被告の許諾がないから、被告の本件商標権を侵害すると認められる(商標法25条、2条3項2号)。 2 これに対して、原告は、本件には平成15年最判の射程が及び、原告が本件 在庫商品を販売することは、本件商標の出所表示機能及び品質保証機能を害するものではなく、商標権侵害の実質的違法性を欠くと主張する。 しかし、商標法31条2項は、「通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有する。」と規定しており、通常使用権の範囲、期間、条件等は使用許諾契約によ り定められることになるが、前記1のとおり、本件使用許諾契約は既に効力を失っており、在庫商品について例外的に本件商標の使用が許諾された期間も既に経過しているから、本件使用許諾契約が有効である間に本件商標が付された商品であっても、今後、これを販売することは、本件使用許諾契約及び本件解約合意に違反するものである。そうすると、現時点において、通常使用権者で あった破産会社の地位を承継した原告が、商標権者である被告に対し、本件商標を付した本件在庫商品を販売することは実質的違法性を欠くなどと主張し得ないことは明らかである。 また、商標法は、商標を使用する者の業務上の信用及び需要者の利益を確保することを目的とするところ(商標法1条参照)、需要者である一般消費者は、 登録商標が付された商品を商標権者から直接購入する場合ではなくとも、商標 権者の許諾に基 用及び需要者の利益を確保することを目的とするところ(商標法1条参照)、需要者である一般消費者は、 登録商標が付された商品を商標権者から直接購入する場合ではなくとも、商標 権者の許諾に基づいて登録商標が付された商品を購入しようとする際には、商標権者による技術指導や品質検査等を前提とする商品であると理解し、商標権者が登録商標を付して流通に置いた正規の流通経路によった商品と出所及び品質が同一の商品を購入することができる旨信頼するのが通常であり、その信頼を裏切らないことにより、商標権者の業務上の信用が確保されるというべきで ある。ところが、前記1のとおり、本件商標を付した本件在庫商品が市場に出回ることは、商標権者である被告の許諾がないことから、正規の流通経路によらないものであるといえるし、本件商標を使用するに当たっての遵守事項を定めた本件使用許諾契約が解約されたことにより、破産会社又は原告がこれに従う法的根拠が失われ、被告は本件在庫商品の品質管理を行い得る立場にないこ とになる。そうすると、原告が本件商標を付した本件在庫商品を販売することは、本件商標の出所表示機能及び品質保証機能を害するものといえる。 さらに、平成15年最判は、商標権者から商標の使用を許諾された者が使用許諾契約で定める条件に違反して当該商標を付した商品を製造したところ、別の業者が当該商品を海外で仕入れて日本に輸入する行為、いわゆる並行輸入の 違法性が争われた事件に関する判断であるのに対して、本件は、かつて商標の使用を許諾されていた者自身の行為の違法性が問われているから、事案を異にする。原告が指摘する他の裁判例についても、同様である。 したがって、原告が本件商標を付した本件在庫商品を販売することについて、商標権侵害の実質的違法性を欠くと が問われているから、事案を異にする。原告が指摘する他の裁判例についても、同様である。したがって、原告が本件商標を付した本件在庫商品を販売することについて、商標権侵害の実質的違法性を欠くとはいえない。 3 以上によれば、被告は、原告に対し、本件商標権に基づき、原告が本件在庫商品を販売することを差し止める権利(商標法36条1項)を有するというべきである。 第4 結論以上によれば、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 バヒスバラン薫 (別紙) 被告商標目録 以上 (別紙) 動産目録 1 品名 スピーカー 型番 SBX-301(B)CUAPPP 数量 2 2 品名 スピーカー 型番 SBX-301(B)CUBPP 数量 2 3 品名 イヤホン 型番 SE-CL502-L/XZCEL5 SE-CL502T- 301(B)CUBPP数量 2 3 品名イヤホン型番 SE-CL502-L/XZCEL5SE-CL502T-L/XZCEL5数量計300 4 品名イヤホン(マイク付)型番 SE-CL502-M/XZCEL5数量 200 5 品名イヤホン(マイク付)型番 SE-CL502T-P/XZCEL5数量 100 6 品名ステレオヘッドホン(ワイヤレス)型番 SE-CL5BT(H)CC数量 4174 7 品名イヤホン型番 SE-CL5BT(H)CP数量 84 8 品名ステレオヘッドホン(ワイヤレス)型番 SE-CL5BT(R)CC数量 2652 9 品名イヤホン型番 SE-CL751-K/XZCEW5数量 14 10 品名イヤホン型番 SE-CL751-R/XZCEW5数量 50 11 品名イヤホン型番 SE-E6BT(B)CZU数量 320 12 品名イヤホン型番 SE-E6BT(Y)CZU数量 560 13 品名ワイヤレスイヤホン型番 SE-E9TW(H)CZU 型番 SE-E6BT(Y)CZU数量 560 13 品名ワイヤレスイヤホン型番 SE-E9TW(H)CZU数量 40 14 品名ワイヤレスイヤホン型番 SE-E9TW(Y)CZU数量 40 15 品名ヘッドホン型番 SE-MJ503-L/XZCEL5数量 100 16 品名ヘッドホン型番 SE-MJ503-R/XZCEL5 数量 200 17 品名ステレオヘッドホン(Bluetooth)型番 SE-MJ771BT-WXZWL数量 290 18 品名ステレオヘッドホン(ワイヤレス)型番 SE-MS9BN(B)CZU数量 50 19 品名イヤホン型番 SE-QL7BT(G)CZU数量 960 20 品名デジタルオーディオプレイヤー(ハイレゾ対応)型番 XDP-02U(W)CZP数量 60以上1ないし20につき、【所在】ChinaResourceresInt'lLogisticsCentre,2 TaiMeiRoad, KwaiChung,NewTerritories, HongKong【保管場所の名称】NX香港株式会社(NIPPONEXPRESS(H.K.)Co.,Ltd.)香港倉庫以上 NewTerritories, HongKong【保管場所の名称】NX香港株式会社(NIPPONEXPRESS(H.K.)Co.,Ltd.)香港倉庫以上

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