平成12(ワ)859 たくみ運輸配車差別

裁判年月日・裁判所
平成13年12月3日 神戸地方裁判所
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判決文本文14,940 文字)

判決平成13年12月3日神戸地方裁判所平成12年(ワ)第859号賃金支払等請求事件 主文 1 被告は,原告Aに対し,626万5247円並びに内金437万6934円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金188万8313円に対する平成13年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,686万4279円並びに内金482万4076円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金204万0203円に対する平成13年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,717万9693円並びに内金502万2300円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金215万7393円に対する平成13年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Dに対し,834万7646円並びに内金587万3791円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金247万3855円に対する平成13年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告らと被告のそれぞれに生じた費用の各10分の1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 7 この判決は,第1ないし第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,709万5247円並びに内金520万6934円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金188万8 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,709万5247円並びに内金520万6934円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金188万8313円に対する平成13年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,764万4289円並びに内金560万4086円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金204万0203円に対する平成13年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,792万9693円並びに内金577万2300円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金215万7393円に対する平成13年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Dに対し,898万7646円並びに内金651万3791円に対する平成12年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金247万3855円に対する平成13年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の従業員である原告らが配車差別によって賃金が減少するなどの損害を被ったとして,不法行為に基づき,損害賠償を求める事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者ア原告ら原告らは,いずれも被告に勤務する運転手であり,かつ,G労働組合兵庫合同支部H分会の組合員である。 イ被告被告は,海上コンテナー・トレーラーによる一般区域貨物運送事業を営む有限会社であり,肩書地に本社事務所及び営業所を置いている。 (2) 労働組合の結成 イ被告被告は,海上コンテナー・トレーラーによる一般区域貨物運送事業を営む有限会社であり,肩書地に本社事務所及び営業所を置いている。 (2) 労働組合の結成被告においては,平成3年6月,海上コンテナー・トレーラー運転手らがJ(後に「G」に改称)兵庫支部(以下「組合」という。)に加入し,同H分会(以下「分会」という。)を結成した。 分会結成後の労使関係は,比較的円滑に推移していたが,阪神・淡路大震災後,被告の経営悪化を理由とする事業所閉鎖問題を契機として,労使関係は悪化していった。 かかる状況下で,平成7年7月,被告の海上コンテナー・トレーラー運転手16名全員が組合に加入した。 (3) 出資持分の譲渡訴外I株式会社(以下「I」という。)は,被告の出資持分のすべてを保有していたが,平成8年5月,これを訴外Eに譲渡した。 (4) その後の被告と組合の関係被告においては,平成8年度の賃上げ及び年末一時金に関する団体交渉が妥結しなかったため,組合は,兵庫県地方労働委員会に対し,平成9年2月3日,団体交渉の斡旋申請を行った。 被告は,組合に対し,平成9年2月25日,労働協約の一部破棄通告(甲21)を行った。 被告と組合は,同年7月9日,団体交渉を開催したが,実質的な交渉はされなかった。 (5) 賃金の引下げ被告は,平成9年8月12日,①基本給月額を14万円削減する,②歩合給を設定し,水揚高の10パーセントとするなどの賃金規定,就業規則の変更を行った。 (6) ストライキその後,被告と組合は,団体交渉を続けたが,組合は,平成9年12月2 給を設定し,水揚高の10パーセントとするなどの賃金規定,就業規則の変更を行った。 (6) ストライキその後,被告と組合は,団体交渉を続けたが,組合は,平成9年12月22日,ストライキを行った(以下「本件ストライキ」という。)。原告Dは,被告代表者Fに対し,本件ストライキの直前である同日午前3時30分ころ,本件ストライキの実施を通知した。 (7) 配車の格差被告は,平成10年ころから,分会員に対し,早出の配車をしなくなるなどし,分会員と非組合員との間の配車に格差が生じるようになった。 (8) 分会員の脱退分会員は,平成10年1月から同年2月にかけて,合計9名が組合を脱退し,残る分会員は,原告ら4名となった。 2 主要な争点分会員である原告らと非組合員との間の配車,賃金の格差は,合理的理由のない差別であるか否か。 3 当事者の主張(1) 原告らの主張ア配車差別前記争いのない事実(5)の賃金規定の改定により,賃金額は水揚高に大きく左右されることになったが,被告は,平成10年に入ると,水揚単価の大きい中・長距離運行や早出残業などはもっぱら非組合員に対して命じ,分会員に対しては,待機を命じたり,近距離運行を命ずるようになったし,運賃の高い荷主の業務に就かせなかった。 例えば,同年3月から5月の間は,残業手当の金額や水揚高に大きく影響する早出,中・長距離勤務及び現代商船の40フィート実車の配車は,分会員に対しては一切行われていない(甲39の1ないし3)。 その結果,分会員と非組合員との間で,水揚高には大きな格差が生じている。すなわち,同年4月分の水揚高(甲40)を比較すると, に対しては一切行われていない(甲39の1ないし3)。 その結果,分会員と非組合員との間で,水揚高には大きな格差が生じている。すなわち,同年4月分の水揚高(甲40)を比較すると,非組合員の平均は164万8735円であるのに対し,分会員の平均は66万2550円と約40パーセントにしかならないのである。 このように,同年1月以降,被告が分会員に対して配車差別を行うようになったことは明白である。 そして,同年2月12日に組合を脱退した6名の脱退前(同年2月分)と脱退後(同年3月分)の賃金支給総額を比較すると,その差は歴然としている。 すなわち,組合を脱退すれば,直ちに配車差別を解除して賃金を増額せしめていることからすると,組合員であることを理由に露骨に差別的取扱いをしていることは明らかである。 イ損害(ア) 賃金差額平成10年3月以降の非組合員の賃金支給総額は,ほぼ一律に40万2300円となっている(甲6)。これに対し,同月分の分会員4名の賃金支給総額の平均は23万4835円であり,非組合員の60パーセント弱でしかない。同年4月以降も一貫して同じ傾向は続いている。 原告らは,このようにして,別表1,2記載のとおり(ただし,原告Bは,平成10年10月分の賃金支給総額が26万2457円,賃金差額が13万9843円である旨主張するが,これらは,それぞれ26万2467円,13万9833円の誤記と認める。),非組合員と比較して,不当な賃金差別を受けている(甲6,44ないし47の各1ないし12,甲96ないし99の各1ないし13)。 なお,被告における賃金計算期間は前月16日から当月15日,賃金支払 不当な賃金差別を受けている(甲6,44ないし47の各1ないし12,甲96ないし99の各1ないし13)。 なお,被告における賃金計算期間は前月16日から当月15日,賃金支払日は当月25日である。そして,原告らが本件において請求の対象としているのは,平成10年3月分の賃金計算期間の始期である同年2月16日以後の被告の配車差別による損害((イ)の慰謝料を含む。)である。 (イ) 慰謝料(ア)のような露骨な差別は,原告らだけでなく,その家族の生活を危機に陥れるもので,原告らは,差別賃金の回復だけでは到底償えない甚大な精神的苦痛を被っている。 その慰謝料は,100万円が相当である(ただし,これは,平成12年3月15日までの被告の配車差別によるものである。)。 (ウ) 弁護士費用原告らは,本訴提起に際して,原告ら訴訟代理人らに対し,本件訴訟追行の報酬として,日弁連報酬基準に基づき,各自90万円を支払うことを約した。 ウ被告の主張に対する反論(ア) 抜打ちストライキ実施の可能性がないことa 本件ストライキの正当性本件ストライキは,組合や分会の要求する内容の団体交渉を拒否し,ひたすら自己の賃金・労働条件改定のみを議題とする団体交渉を押し付けようとし,あげくの果てには,一方的に賃金・労働条件改定を強行するなど被告の不誠実な態度に起因する深刻な労使対立と分会員らの経済的困窮状態を考えれば,組合と分会にとってやむにやまれぬギリギリの選択であった。 しかも,組合及び被告との間には争議手続を定める協定は締結されておらず,本件ストラ らの経済的困窮状態を考えれば,組合と分会にとってやむにやまれぬギリギリの選択であった。 しかも,組合及び被告との間には争議手続を定める協定は締結されておらず,本件ストライキ当日は,1,2名が午前3時半ないし4時の早出勤務が決まっていただけの勤務態勢であり,会社全体にそれほど大きな影響を与えない状況であったこと(甲92)からすれば,午前3時半にストライキ通告をして,その直後にストライキを実行したとしても,特に問題があるやり方ではない。むしろ,被告のそれまでの組合敵視・否認の強い姿勢と比較すれば,まさにやむを得ない方法であったというべきである。 そして,被告も,原告ら分会員が被告による組合潰しを目的とする一連の組合敵視・否認の攻撃にどこまで耐えられるかを試していたものであり,原告ら分会員が本件のようなストライキを行うことは十分予見・認識していたわけであるから,その意味では,本件ストライキは,本来の意味の抜打ちストライキとはいえないものであった。 b 本件ストライキ後の売上げの減少の原因平成10年1月,同年2月こそ,確かに平成9年12月より売上げが減少しているものの,原告らに対する配車差別を実施し始めた平成10年2月16日以降の売上げの指標といえる同年3月から5月の間は,逆に本件ストライキ前の平成9年11月分,同年12月分すら上回っており,さらに,平成10年6月分,同年7月分は反対に同年1月,同年2月並みに減少していること(乙13)からみて,被告の売上げの減少が本件ストライキと関係があるなどとは到底断定できないものであることは明らかである。 むしろ,同年1月,同年2月の売上げの減少は,原告ら分会員に早出・残業の配 売上げの減少が本件ストライキと関係があるなどとは到底断定できないものであることは明らかである。 むしろ,同年1月,同年2月の売上げの減少は,原告ら分会員に早出・残業の配車をしない差別をするための業務・受注調整であるとみるのが至当である。だからこそ,被告による組合員の脱退工作が効を奏して次々と脱退者(非組合員)が増えるに従って,売上げも再び増加を始めたものである(甲38)。 実際に,被告への発注の大半はIを経由するものであり,被告が発注が激減したと主張する現代商船,ケイヒンコンテナー,トレーディアなどの特定企業については,まさに実質的にはIが荷受元ともいえるのであり,容易に被告への発注量を調整できる関係にあったものということができるのである。 c 被告の対抗措置の違法性ストライキ中もしくはストライキ直後の混乱を収拾するための使用者の対抗行為は,いわゆるロックアウトとして正当化される場合もあるが,それが例外的に許されるのは,当該ストライキが収束しても,続いて第2波,第3波の違法なストライキが予定されている場合やその現実的・具体的おそれがある場合に限られるのであり,使用者側からの予防的・先制的なそれは許されない違法なものである。まして,本件のようにストライキから2か月近くも経過し,しかも被告の戦術が奏功して分会が著しく弱体化し,もはや被告にダメージを与える有効な争議行為を行うことができなくなってしまったことは明らかであるにもかかわらず,その後も企業防衛と称して対抗行為を取り続けることは,到底許されない。 分会員が少数になっても,他の組合員を動員するから,事態は変わらず,被告のいう抜打ちストライキのおそれは具体的に存在 衛と称して対抗行為を取り続けることは,到底許されない。 分会員が少数になっても,他の組合員を動員するから,事態は変わらず,被告のいう抜打ちストライキのおそれは具体的に存在するというのが事実なら,被告の主張によれば,そのおそれがある限り被告と取引をしている発注元が警戒してそこからの注文や売上げはいつまでも減り続けなければならないはずであるのに,現実には全くそうはなっていないのである(乙26)。 (イ) 36協定の締結を拒否した事実がないこと原告ら分会員は,被告との間の36協定の締結を拒否した事実は全くなく,むしろ従前からの36協定の継続を求めてきたのである。本件における労使紛争は,被告による一方的な賃金改定(賃金引下げ)及び変形労働時間制とその強行に原告らが反対していたにすぎず,原告らは36協定の締結そのものには全く反対していない(変形労働時間制には当然には36協定は含まれない。)。現に被告は,この賃金改定後も,また,本件ストライキ後の平成10年1月6日までは,原告ら分会員に対しても早出・残業の配車をしており,原告らもこれに異議なく応じてきていたのである。 したがって,被告による原告らに対する配車差別が36協定の存否などと全く関係ないことは明白である。 なお,被告は,前記賃金規定の改定を踏まえて,原告ら分会員を含む当時の全従業員についての36協定締結を前提とする時間外労働・休日労働に関する協定届(平成9年8月9日から1年間)を神戸東労働基準監督署に提出する準備をしていた(甲95)。 また,原告らが時間外労働を拒否した事実はない。原告らは,本件の配車差別開始後,早出・残業を被告から命じられていないのである。 基準監督署に提出する準備をしていた(甲95)。 また,原告らが時間外労働を拒否した事実はない。原告らは,本件の配車差別開始後,早出・残業を被告から命じられていないのである。 (ウ) 兼用シャーシの牽引を拒否したことがないこと組合は,被告に対し,平成9年8月14日,違法シャーシを使用しないように要求したが(甲70),原告らが現に発生する配車を拒否したことはなく,また,他の当時の分会員も一度も拒否したことはない(甲94,原告D本人)。 (2) 被告の主張ア抜打ちストライキ実施の可能性(ア) 本件ストライキの違法性まず,本件ストライキの前には,何らの団体交渉も行われておらず,争議権行使の前提要件を欠いている。 また,本件ストライキは,その予告がなかったことはもちろん,当日の午前3時すぎに分会書記長である原告DからFの携帯電話にストライキの通知があったもので,ストライキの回避措置を講ずる暇もないものであったから,信義則に反する。 そして,組合は,朝一着で得意先へ届けるべき貨物(宵積み貨物)が存することを知って,あえて夜中にストライキの通知を行ったものであり,被告に打撃を与えることを目的とするものであったことは明らかである。 したがって,本件ストライキは,信義則に反する違法性の高いものといわざるを得ない。 (イ) 本件ストライキ後の売上げの減少被告においては,本件ストライキにより,荷主からの発注が減少した。とくに,本件ストライキにより宵積み貨物を出せなかった現代商船,ケイヒンコンテナー,トレーディアからは発注が激 被告においては,本件ストライキにより,荷主からの発注が減少した。とくに,本件ストライキにより宵積み貨物を出せなかった現代商船,ケイヒンコンテナー,トレーディアからは発注が激減し,重大な経営危機となった(乙26)。 原告らは,被告への発注の大半はIを経由するものであり,容易に被告への発注量を調整できるなどと主張するが,被告は,独自に営業活動を行って荷主から受注するのであり,発注量の調整などできるものではない。 (ウ) 被告の対抗措置の正当性本件において,組合は,本件ストライキ後も前記(ア)のような抜打ちストライキを実施しないとは言っておらず,今後も被告に打撃を与えることのみを目的とする抜打ちストライキを実施する可能性は高い。 抜打ちストライキが実施されると,宵積み貨物について,代替の傭車の手配が困難となり,以後,荷主より発注を打ち切られるおそれが高くなる。 したがって,被告としては,企業としての存続自体を危機に陥れる危険性が高い宵積み貨物が運行されない事態を回避するために,分会員には宵積み貨物を対象とする早出を命ぜられない状況にある。 仮に分会が少数であっても,ストライキの指令権を有する支部から組合員を動員してピケットなどを張り,会社の全体を対象として業務を妨害することになり,分会が少数となっても,事態は変わらない。 イ 36協定締結の拒否被告は,平成9年8月16日より賃金規定を改定し,新賃金体系を制定した(甲4)。 この改定により,往復300キロメートル以上の「朝着指定運行」(深夜に出発して朝目的地に到着する便)についての時間外,深夜 日より賃金規定を改定し,新賃金体系を制定した(甲4)。 この改定により,往復300キロメートル以上の「朝着指定運行」(深夜に出発して朝目的地に到着する便)についての時間外,深夜の労働手当に対する特則(実時間外労働時間,実深夜労働時間にかかわらず,目的地ごとに時間外労働,深夜労働に対する一定額の各手当を支給する特則,旧賃金規定(甲2)第4条(5)(6))を廃止し,実労働時間に基づいて時間外手当,深夜労働手当を支払うことになった(新賃金規定(甲4)第4条(3)(4))。 ところが,組合は,かかる合理的な賃金規定の改定を拒否し,従前の時間外,深夜労働に関する規定に基づく各手当の支払を要求した。 被告は,組合に対し,同年12月18日の団体交渉において,新賃金規定に従って就労するよう求めた(乙12,第1項「中・長距離のやりじまいは廃止し通常通り運行する。」)。 ところが,組合は,これを拒否し,36協定の締結を拒否した(乙22)。 したがって,本件において,被告が原告らに残業を命じないことは違法ではない。 ウ兼用シャーシの牽引拒否原告らは,現代商船の便については,兼用シャーシ(20フィート,40フィート両サイズ対応)は違法シャーシだとして,これを牽引することを拒否しているので,現代商船の便については,配車を命ぜられない状況にある。 第3 当裁判所の判断 1 分会員である原告らと非組合員との間の配車,賃金の格差は,合理的理由のない差別であるか否かについて(1) 配車,賃金の格差前記争いのない事実によれば,平成10年ころから,分会員と非組合員との間の配車に格差が生じるようになったというのであるとこ い差別であるか否かについて(1) 配車,賃金の格差前記争いのない事実によれば,平成10年ころから,分会員と非組合員との間の配車に格差が生じるようになったというのであるところ,証拠(甲39の1ないし3,甲40,証人E,原告D本人)及び弁論の全趣旨によれば,その格差は,分会員に対して早出の配車をしないことのみならず,中長距離の配車や運賃収入の良い現代商船の便の40フィートコンテナの実車の配車をしないことなどにも及んでいることが認められる。 また,証拠(甲6,44ないし47の各1ないし12,甲96ないし99の各1ないし13,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,同年3月以降,非組合員の賃金支給総額はほぼ一律に月額40万2300円であるのに対し,分会員である原告らのそれは,別表1,2の支給総額欄記載のとおりであって,おおむね月額20万円台で推移していることが認められる。 そして,前記争いのない事実(5)によると,被告における賃金算定には歩合給が導入されていることからすると,前記賃金の格差は,前記配車の格差によるものと認められる。 そうすると,前記賃金の格差をもたらした前記配車の格差が合理的理由のない差別であるとすれば,被告に故意又は過失が認められる限り,違法な配車差別として不法行為を構成するものというべきであるから,前記配車の格差に合理的理由があるか否かを検討する。 (2) 抜打ちストライキ実施の可能性ア被告は,本件において,組合は,本件ストライキ後も抜打ちストライキを実施しないとは言っておらず,今後も被告に打撃を与えることのみを目的とする抜打ちストライキを実施する可能性は高いから,抜打ちストライキにより宵積み貨物が運行されない事態を回避するために,分会 イキを実施しないとは言っておらず,今後も被告に打撃を与えることのみを目的とする抜打ちストライキを実施する可能性は高いから,抜打ちストライキにより宵積み貨物が運行されない事態を回避するために,分会員には宵積み貨物を対象とする早出を命ぜられない状況にあると主張する。 前記争いのない事実によれば,本件ストライキは,その直前である当日の午前3時30分ころ,その実施が通知されたというのであるところ,証拠(乙13,23,25,26,40,41,48,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,本件ストライキにより出発予定の車(午前8時以前の早出の車は6台であり,午前8時に出る予定の車もあった。)が出発することができず,運送の日にちを変更してもらったり,同業他社の車を傭車して貨物を運送したりしたが,傭車できなかった分の仕事は断らざるを得なかったこと(本件ストライキの通知がその直前であったため,被告は,あらかじめ代替措置を講ずることができなかった。),その結果,被告の得意先である現代商船,ケイヒンコンテナー,トレーディア等の荷主からの発注が減少し,平成10年1月と同年2月の売上げが対前年度同月比で約800万円ないし約850万円,平成9年12月と比較しても約500万円ないし約700万円程度減少したことが認められる(原告は,前記売上げの減少は,原告ら分会員に早出・残業の配車をしない差別をするための業務・受注調整であると主張するが,企業が組合員に対して配車差別をするためにあえて大幅に売上げを減少させるというのは,およそ考え難い事態であるといわざるを得ない。)。 そうすると,本件ストライキは,被告における事業運営を混乱させ,被告に少なからず損害をもたらしたものというべきであり,組合が本件ストライキの直前ではなく,相当な時間的間隔 。)。 そうすると,本件ストライキは,被告における事業運営を混乱させ,被告に少なからず損害をもたらしたものというべきであり,組合が本件ストライキの直前ではなく,相当な時間的間隔をおいてその実施を予告していれば,被告があらかじめ代替措置を講ずることにより前記の混乱や損害発生を回避することができたと考えられるから,本件ストライキは,その直前までその実施を通知しなかった点において,信義則に反し,違法である疑いがある(被告が不誠実な態度を取ったからといって,ストライキの実施を予告しなくてよいとはいえない。)。そして,これと同様の態様でストライキが再び実施されるおそれが明白であれば,それによる混乱を回避するための対抗措置として,早出の配車を命じないことが正当化される余地があるものというべきである。 しかしながら,本件審判の対象は平成10年2月16日以降の違法な配車差別の存否であるところ,同日の時点で本件ストライキが行われた日からすでに2か月弱が経過していたこと,前記争いのない事実及び証拠(甲38)並びに弁論の全趣旨によれば,本件ストライキが行われた日から同月12日までに合計9名の分会員が組合を脱退し,残る分会員が原告ら4名となって,分会が弱体化していたと認められること(支部から組合員を動員する可能性は抽象的なものにすぎない。)からすると,同月16日の時点においては,組合が抜打ちストライキを実施しないとは言っていなかったという一事をもって,本件ストライキと同様の態様でストライキが再び実施されるおそれが明白であったと認めるのは困難である。したがって,本件において,被告が原告らに対し,同日以降,早出の配車を命じなかったことを正当化することはできない。 以上によれば,抜打ちストライキ実施の可能性 めるのは困難である。したがって,本件において,被告が原告らに対し,同日以降,早出の配車を命じなかったことを正当化することはできない。 以上によれば,抜打ちストライキ実施の可能性は,早出の配車をしないことの合理的理由とはなり得ないものというべきである。 (3) 36協定締結の拒否ア被告は,組合に対し,平成9年12月18日の団体交渉において,新賃金規定(甲4)に従って就労するよう求めた(乙12)が,組合は,これを拒否し,36協定の締結を拒否した(乙22)から,被告が原告らに残業を命じないことは違法ではないと主張する。 イしかし,被告が問題とする36協定は,組合と被告間のものであって,それが当然個々の労働者である原告らの時間外労働意思と一致するとはいえないから,36協定の締結が組合に拒否されたとしても,所属組合員である個々の労働者の時間外労働拒否の意思が明確であるとか,残業命令を出すことが事実上不可能であるといった事情のない限り,36協定締結の拒否を理由に残業命令を出さないことは違法と解される。 現に,平成9年8月からの36協定が締結されていない時期も,被告従業員は等しく残業に従事しており,組合員も36協定の不存在を理由に時間外労働を拒否したことはなかったこと(原告D本人),証人E自身,36協定がなくとも,会社としては残業をやってほしいときもあると証言し,36協定の有無にかかわらず残業命令を出している被告の実態を認めていること,平成10年8月1日,被告と過半数従業員代表者Gとの間で36協定が締結され(甲48,弁論の全趣旨),この協定が組合員を含む全従業員に適用され,被告が原告らに対し残業命令を出す法的基盤が整ったことからすると,組合が被告の提案した条件を踏まえた3 の間で36協定が締結され(甲48,弁論の全趣旨),この協定が組合員を含む全従業員に適用され,被告が原告らに対し残業命令を出す法的基盤が整ったことからすると,組合が被告の提案した条件を踏まえた36協定の締結を拒んだことによって,その所属組合員である原告らの時間外労働拒否の意思が明確であるとか,原告らに残業命令を出すことが事実上不可能であるとかはいえず,36協定締結の拒否を理由に被告が原告らに残業を命じないことは違法であるから,被告の主張は理由がない。 ウもっとも,証拠(乙42,43,44ないし46の各1,2,乙48,52,証人E,原告D本人)によれば,原告Aは,平成12年7月から平成13年1月にかけて,混んでいるため午後4時までに帰れなくなるという理由で4回仕事を途中で断ったことがあったこと,原告Cは,平成12年7月19日,混んでいるため午後4時30分までに帰れなくなるという理由で仕事を途中で断ったことが認められるけれども,原告らに対しては時間外の配車はほとんどなく,午後4時以前に帰るような配車の指示がほとんどであったこと(原告D本人)からすると,上記のような平成12年7月以降の断片的な残業拒否の事実のみでは,原告らが平成10年2月16日以降,残業の指示を一切拒否するという態度を取っていたとまで認めることはできない。 したがって,被告が分会員に対して残業を命じない真の理由が残業の拒否にあるものかは疑わしいものというべきである。 エ以上によれば,36協定締結の拒否,36協定の不存在,残業の拒否は,いずれも残業を命じないことの合理的理由とはなり得ないものというべきである。 (4) 兼用シャーシの牽引拒否被告は,原告らは,現代商船の便については,兼用シャーシ(20フィート れも残業を命じないことの合理的理由とはなり得ないものというべきである。 (4) 兼用シャーシの牽引拒否被告は,原告らは,現代商船の便については,兼用シャーシ(20フィート,40フィート両サイズ対応)は違法シャーシだとして,これを牽引することを拒否しているので,現代商船の便については,配車を命ぜられない状況にあると主張する。 しかしながら,証拠(甲70)によれば,分会が被告に対し,平成9年8月14日,違法シャーシを使用しないように申し入れたことが認められるものの,そのことによって,当然原告らがその乗車を拒否した事実や組合が組織的にその乗車を拒否した事実は推認できず,かえって,分会が分会員に対して兼用シャーシの牽引を拒否するように指示したことはなく,分会員は違法シャーシだからといって配車の指示に対して兼用シャーシを牽引することを拒否したことはないこと(原告D本人),分会員が兼用シャーシを牽引していたこと(甲94)が認められることからすると,原告らが兼用シャーシを牽引することを拒否しているという被告の主張は理由がない。 したがって,兼用シャーシの牽引拒否は,現代商船の便について配車を命じないことの合理的理由とはなり得ないものというべきである。 (5) 結論以上によれば,前記配車の格差は,その合理的理由を見出すことができないから,違法な配車差別であり,これにより,前記賃金の格差をもたらしたものと認められる。 そして,被告が分会員である原告らに対して非組合員と同様に配車の指示をしていないことを認識していることは明らかである上,証人Eが前記賃金の格差の理由は平成10年2月から非組合員と原告ら分会員との間で賃金体系が異なることにある旨証言していることを併 同様に配車の指示をしていないことを認識していることは明らかである上,証人Eが前記賃金の格差の理由は平成10年2月から非組合員と原告ら分会員との間で賃金体系が異なることにある旨証言していることを併せ考えると,被告は,故意に前記の違法な配車差別をすることによって,前記賃金の格差をもたらしたことが認められる。 したがって,前記の違法な配車差別は,不法行為を構成するものというべきである。 2 損害について(1) 賃金差額前記のとおり,前記賃金の格差は前記の違法な配車差別によるものであると認められるところ,原告らは,前記の違法な配車差別がなければ,ほとんどの非組合員と同様に,平成10年3月分から平成13年4月分まで月額40万2300円の割合による賃金(合計1528万7400円)の支払を受けることができたものというべきであるから,前記の違法な配車差別と相当因果関係のある原告らの損害は,前示賃金と別表1,2の各支給総額欄記載の金額の合計額との差額(原告Aが合計519万5247円,原告Bが合計574万4279円,原告Cが合計602万9693円,原告Dが合計708万7646円である。)であると認めるのが相当である。 この点,被告は,前記賃金の格差の原因として,原告らが始業,終業時の点検に各30分をかけ,実労働時間が非組合員より1時間少ないことを挙げるが,車の安全な運行のためには始業,終業時の点検が必要不可欠であって,これに必要な相当時間を要すること,被告が組合と分会に対し,始業,終業時の点検時間を各10分間に短縮するように申し入れたこと(甲25,乙9)からすると,非組合員も始業,終業時の点検には,これに必要な相当時間をかけていることを推認することができるから,原告らの実労働時間が非組合員より 10分間に短縮するように申し入れたこと(甲25,乙9)からすると,非組合員も始業,終業時の点検には,これに必要な相当時間をかけていることを推認することができるから,原告らの実労働時間が非組合員より1時間も少ないとはいえない。また,始業,終業時の点検等の時間は各10分間で足りるとしても(10分間が点検等に必要かつ相当な時間であるかについてはともかく),これを超えてさらに各20分程度を要したからといって,このため,原告らの取得し得る賃金が当然に減額され,前示月額40万2300万円を下回るとするのは相当でない。 (2) 慰謝料原告らは,平成12年3月15日までの前記の違法な配車差別により,別表1記載のとおり賃金の格差が生じてその生活に支障を来したと推認することができ,また,非組合員と比べて不利益な取扱いを受けたことによる屈辱感を受けたことも推認することができるから,原告らは,同日までの前記の違法な配車差別により,精神的苦痛を被ったと認められる(なお,同月16日以降の違法な配車差別による精神的苦痛は,本件審判の対象となっていない。)。 そして,原告らの精神的苦痛を慰謝するために要する金額は,前記の違法な配車差別の態様,別表1記載の各賃金差額の程度,その他本件における一切の事情を考慮すると,それぞれ50万円と認めるのが相当であり,これを前記の違法な配車差別と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 (3) 弁護士費用前記(1)(2)の各損害額及び本件訴訟の経過等に照らすと,本件訴訟の弁護士費用は,原告Aが57万円,原告Bが62万円,原告Cが65万円,原告Dが76万円と認めるのが相当であり,これを前記の違法な配車差別と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 第4 結語 士費用は,原告Aが57万円,原告Bが62万円,原告Cが65万円,原告Dが76万円と認めるのが相当であり,これを前記の違法な配車差別と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 第4 結語よって,原告らの本訴請求は,前記第3,2(1)ないし(3)記載の各金額の合計額の損害金の支払,平成10年3月分から平成12年3月分までの賃金差額,前記第3,2(2)の慰謝料及び同(3)の弁護士費用に対する同月15日までの不法行為が終了した後であり,かつ,訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな同年4月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに同年4月分から平成13年4月分までの賃金差額に対する同月15日までの不法行為が終了した後であり,かつ,訴変更(請求の拡張)申立書送達の日の翌日であることが記録上明らかな同年5月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれらを認容することとし,原告らのその余の請求は理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第六民事部裁判長裁判官松村雅司裁判官水野有子裁判官増田純平 純平

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