昭和26(あ)5023 収賄、贈賄

裁判年月日・裁判所
昭和32年2月14日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 福岡高等裁判所 宮崎支部
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【DRY-RUN】主    文      原判決及び第一審判決中被告人等に対する有罪部分を破棄する。      本件公訴事実中第一審判決認定の判示第一事実につき被告人Aは無罪、 同第二の(一)の事実につき被告人Bは無罪

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判決文本文3,541 文字)

主文 原判決及び第一審判決中被告人等に対する有罪部分を破棄する。 本件公訴事実中第一審判決認定の判示第一事実につき被告人Aは無罪、同第二の(一)の事実につき被告人Bは無罪。 被告人Bを罰金五千円に処する。 右罰金を完納することができないときは、金二百円を一日に換算した期間被告人Bを労役場に留置する。 訴訟費用中証人C、同Dに支給した分は被告人Bの負担とする。 理由 被告人両名の弁護人藤本久一並びに被告人Aの各上告趣意について。 弁護人の上告趣意は、第一審判決の判示に副わない事実関係を前提とする判例違反の主張に帰し、被告人Aの上告趣意は、事実誤認の主張であつて、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。 しかし、職権を以て調査すると、本件第一審判決の認定した犯罪事実は、第一、被告人Aは、昭和二四年三月中旬頃宮崎市a町b番地小料理店H事I方において被告人Bから同人がその頃機船船引網の企業を許可されたことについて職務上便宜を受けたお礼として供与するものであるという事情を知りながら酒食一人前約六百円相当の饗応を受け以て、その職務に関して賄賂を収受し、第二、被告人Bは、昭和二四年三月初頃、機船船引網の企業を許可されたことについて被告人Aから職務上便宜を受けたお礼として同被告人に対し(一)同月中旬頃右第一掲記のHにおいて同掲記の如き酒食の饗応をし、(二)その帰途宮崎市c町d丁目の道路上において同被告人の子弟に対する手土産名下に現金九千八百円を提供し、以て同被告人の職務に関し賄賂を供与したものである。というのである。 - 1 -そして、同判決は、右事実認定の証拠として、一、被告人両名の当公判廷における判示第一及び第二の(一)記載の日時、場所において判示価格の飲 関し賄賂を供与したものである。というのである。 - 1 -そして、同判決は、右事実認定の証拠として、一、被告人両名の当公判廷における判示第一及び第二の(一)記載の日時、場所において判示価格の飲食がなされた点につき同旨の各供述を挙げている。しかし、同公判において、被告人B並びに同Aは、、判示日時、判示場所に偶然会合したことを主張し(記録四六一丁並びに五〇六丁)、後に述べる同判決引用の証拠において明らかなように、被告人Aは、従来「私は、余り酒をのまない方なので、ビールに一寸口をつけた位でありました」(記録二一七丁)、又は、「三畳位の座敷で焼酎や刺身の肴が出されましたが私は元来焼酎は飲めないので杯で一、二はい戴き料理は頂きました」(記録二四〇丁裏二四一丁)と供述しており、(被告人Bは、司法警察員に対して、この晩食堂に支払つた代金は、焼酎を四合か五合位、ビール一本、身が一皿づつ、スガキが一皿づつで一千四、五百円位でありました(記録二九九丁裏三〇〇丁表)と供述し、検察事務官に対して、其の店の女中部屋でビール一本、焼酎四本、刺身一皿、酢がき二皿の肴で全部で一千二、三百円だつたと思います(記録三一八丁裏三一九丁表)と供述している。)、同公判において少くとも被告人Aは、判示価格の飲食をしたことを供述したと認むべき証跡は認められないのである。従つて、第一審判決は、被告人Aの受けた酒食の価格の点において虚無の証拠を事実認定の資料に供したものといわざるを得ない。 次に、第一審判決が証拠として引用している一、被告人Aに対する司法警察員作成の第三回供述調書第八項(記録二一四丁乃至二一八丁表)及び検察事務官作成の第三回供述調書(記録二三五丁乃至二四三丁)、一、被告人Bに対する司法警察員作成の第一回供述調書第十八乃至第二十一項(記録二九五丁乃至二〇一丁)、検 (記録二一四丁乃至二一八丁表)及び検察事務官作成の第三回供述調書(記録二三五丁乃至二四三丁)、一、被告人Bに対する司法警察員作成の第一回供述調書第十八乃至第二十一項(記録二九五丁乃至二〇一丁)、検察事務官作成の第一回供述調書第五乃至第八項、第十項(記録三一七丁裏乃至三一九丁及び三二〇丁)、によれば、被告人Aは、第一審判決の判示第一の昭和二四年三月中旬頃判示H事I方なるおでん屋の三畳乃至四畳半位の女中部屋において被告人- 2 -Bより前述のごとき程度の饗応を受け、その帰途同判示第二の(二)の道路上において被告人Bは、子弟に対する手土産名下に現金九千八百円在中の紙包を被告人Aのポケツト訓に押込み、被告人Aは、その翌日これが紙包を取り出し見たところ現金が百円紙幣で九千八百円入つていたので受取つては悪いと思い四、五日乃至一週間位経つてA乾物店においてEの面前で被告人Bを慰撫して返還し被告人Bもこれを受領した事実を窺知することができる。そして、第一審判決が証拠とした右被告人Aに対する検察事務官作成の第三回供述調書の末項には、「右申上げました私がHでお馳走になつたのは前申上げた様な事情で私が昭和二一年以来懸案になつていた漁業の許可についてそのお礼の意味で馳走してくれたものと思つて居りますその時深く考えておらなかつたのが間違いでした。」との供述記載があり、また、第一審判決は、被告人Bに対する検察事務官作成の第一回供述調書第九項(すなわち、私がAに馳走したり金をやつたりしたのは、船引網の許可の事について色々尽力して下されそのお礼の意味でやつたのでありましたが公務員の人とはいえ斯様な事はしても差支えないと思つていてまたやつては悪いという事は考えなかつたのですとの旨の供述記載)をば、特にこれを証拠としなかつたのであるが、その次の第十項を証拠としており が公務員の人とはいえ斯様な事はしても差支えないと思つていてまたやつては悪いという事は考えなかつたのですとの旨の供述記載)をば、特にこれを証拠としなかつたのであるが、その次の第十項を証拠としており、その第十項には、「私がAさんに金をやつてから二日位経つてからと思いますが午後四時半頃宮崎市旭通りのFという人の家でAさんがこの前の金はこんな事をして貰えば困るとお叱り受け私に返されました私は成程こんなことをしてはいけないのだなと思い直に受取りましたこの時Eも居りました」なる供述記載があつて、この第十項の供述記載は、第九項の供述記載とは不可分のものであつて、同項の供述記載なくしてはその趣旨明瞭を欠くものである。 以上述べたところにより、また、以上の証拠並びに証拠によつて認め得られる前示事実を綜合して考えて見ると、第一審判決は、判示第一並びに判示第二の(一)の認定事実中被告人Aが被告人Bから受けた饗応の価格の点及びその饗応をし又は- 3 -これを受けた趣旨並びに知情の点についての認定に、証拠上の違法乃至事実誤認あるものというべく、従つて、刑訴四一一条一号又は三号により第一審判決並びにこれを是認した原判決を破棄しなければ、著しく正義に反するものといわざるを得ない。そして、当裁判所は、訴訟記録並びに第一審裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができると認めるから、同四一三条但書により更に判決をするものとする。 よつて、記録を精査すると、本件公訴事実中第一審判決認定の判示第一並びに判示第二の(一)の事実は、被告人Bにおいて職務上便宜を受けたお礼として被告人Aに対し饗応をした点及び同被告人においてその情を知つた点につきその証拠充分でないから、刑訴四一四条、四〇四条、三三六条により被告人等に対し主文二項のとおり無罪を言渡さなければ けたお礼として被告人Aに対し饗応をした点及び同被告人においてその情を知つた点につきその証拠充分でないから、刑訴四一四条、四〇四条、三三六条により被告人等に対し主文二項のとおり無罪を言渡さなければならない。また、被告人Bに対する第一審判決判示第二の(二)の事実は、第一審判決挙示の証拠(但し同被告人に対する検察事務官作成の第一回供述調書中第十項の供述記載を除く。)で、これを肯認できるから、刑法一九八条前段(罰金等臨時措置法二条、三条)を適用し、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で同被告人を主文三項の罰金刑に処し、罰金不完納の場合は、刑法一八条により主文四項の期間同被告人を労役場に留置すべく、訴訟費用については刑訴一八一条により主文五項のとおり負担せしむべきものとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 検察官市島成一公判出席。 昭和三二年二月一四日最高裁判所第一小法廷裁判官真野毅裁判官斎藤悠輔裁判官入江俊郎- 4 -裁判長裁判官岩松三郎は退官につき署名押印することができない。 裁判官真野毅- 5 -

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