主文 被告人を懲役4年に処する。 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 氏名不詳者らと共謀の上 1 警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードを窃取しようと考え,令和元年9月10日,警察官になりすました被告人が,川崎市(住所省略)A方を訪れ,同所において,同人(当時76歳)が目を離した隙に,同人名義のキャッシュカード2枚が入った封筒をあらかじめ用意していた別の封筒とすり替え,同人管理の同キャッシュカード2枚を持ち去ってこれを窃取した。 2 別表1記載のとおり,被告人が,同日午前10時54分頃から同月11日午前零時13分頃までの間,10回にわたり,同区(住所省略)B店ほか2か所において,各所に設置されていた現金自動預払機に前記第1の1のとおり窃取した前記A名義のキャッシュカード2枚をそれぞれ挿入して同機を作動させ,株式会社C銀行お客さまサービス部長Dほか1名管理の現金合計150万円を引き出して窃取した。 3 警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードを窃取しようと考え,同月12日,警察官になりすました被告人が,同市(住所省略)E方を訪れ,同所において,同人(当時76歳)が目を離した隙に,同人名義のキャッシュカード1枚が入った封筒をあらかじめ用意していた別の封筒とすり替え,同人管理の同キャッシュカード1枚を持ち去ってこれを窃取した。 4 別表2記載のとおり,被告人が,同日午後6時46分頃から同日午後6時52分頃までの間,2回にわたり,同区(住所省略)F店において,同所に 設置されていた現金自動預払機に前記第1の3のとおり窃取した前記E名義のキャッシュカード1枚を挿入して同機を作動させ,前記D管理の現金合計30万円を 区(住所省略)F店において,同所に 設置されていた現金自動預払機に前記第1の3のとおり窃取した前記E名義のキャッシュカード1枚を挿入して同機を作動させ,前記D管理の現金合計30万円を引き出して窃取した。 第2 Gと共謀の上 1 警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードを窃取しようと考え,同月17日,警察官になりすました被告人が,名古屋市(住所省略)H方を訪れ,同所において,同人(当時73歳)が目を離した隙に,同人名義のキャッシュカード1枚が入った封筒をあらかじめ用意していた別の封筒とすり替え,同人管理の同キャッシュカード1枚を持ち去ってこれを窃取した。 2 別表3記載のとおり,被告人が,同日午後4時24分頃から同日午後4時25分頃までの間,3回にわたり,同区(住所省略)I店において,同所に設置されていた現金自動預払機に前記第2の1のとおり窃取した前記H名義のキャッシュカード1枚を挿入して同機を作動させ,株式会社J銀行執行役員ATM事業統括K管理の現金合計49万9000円を引き出して窃取した。 3 警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードを窃取しようと考え,同月18日,警察官になりすました被告人が,同市(住所省略)L方を訪れ,同所において,同人(当時73歳)が目を離した隙に,同人名義のキャッシュカード2枚が入った封筒をあらかじめ用意していた別の封筒とすり替え,同人管理の同キャッシュカード2枚を持ち去ってこれを窃取した。 4 別表4記載のとおり,被告人が,同日午後4時17分頃から同月19日午前零時18分頃までの間,13回にわたり,同区(住所省略)M店ほか3か所において,同所に設置されていた現金自動預払機に前記第2の3のとおり窃取した前記L名義のキャッシュカード2枚をそれぞれ挿入して同機を作動させ,株式会社N 3回にわたり,同区(住所省略)M店ほか3か所において,同所に設置されていた現金自動預払機に前記第2の3のとおり窃取した前記L名義のキャッシュカード2枚をそれぞれ挿入して同機を作動させ,株式会社N銀行O支店支店長Pほか3名管理の現金合計200万円を引き出して窃取した。 5 警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードを窃取しようと考え, 同月27日,警察官になりすました被告人が,愛知県春日井市(住所省略)Q方を訪れ,同所において,同人(当時82歳)が目を離した隙に,同人名義のキャッシュカード1枚が入った封筒をあらかじめ用意していた別の封筒とすり替え,同人管理の同キャッシュカード1枚を持ち去ってこれを窃取した。 (量刑の理由)本件の経緯は以下のとおり認められる。被告人は,氏名不詳者に,警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードを盗めば報酬を支払う旨誘われ,報酬が欲しいという思いと,もしこの誘いを断ればヤクザが自宅に来るかもしれないといった懸念から,氏名不詳者の誘いに応じ,判示第1の1ないし4の各犯行に及んだ。しかし,被告人は,実行役としてのリスクに比して分け前が少ないと感じ,被害者となる者の情報さえ得られれば,単独で類似の犯行を行い,引き出した現金の大部分を自分のものにすることができると考えた。そこで被告人は,テレビ放送の受信料の契約収納業務を行っている共犯者Gから顧客の情報を得ようと考え,共犯者Gに報酬を支払う旨持ち掛けて,市営住宅等に居住する高齢女性と思われる者の氏名,電話番号,口座情報等の個人情報を教わり,判示第2の1ないし5の各犯行に及んだ。 本件各犯行はいずれも計画性が認められるところ,あらかじめ情報を得た高齢者を狙い,警察官になりすまして訪問して高齢者の油断を誘い,隙に乗じてキャッシュカードを窃取 の1ないし5の各犯行に及んだ。 本件各犯行はいずれも計画性が認められるところ,あらかじめ情報を得た高齢者を狙い,警察官になりすまして訪問して高齢者の油断を誘い,隙に乗じてキャッシュカードを窃取し,現金を引き出すといった行為は極めて悪質である。被告人は,氏名不詳の共犯者の手足として判示第1の各犯行に加担したものであるが,高齢の被害者を目の当たりにしながらもさしたる良心の呵責を感じることなく,より多くの利益を得たいと考えて判示第2の各犯行を計画し,共犯者Gを犯罪に引き入れて同犯行に及んだ。とりわけ判示第2の各犯行の動機は,極めて利欲的かつ身勝手というほかなく,テレビ放送の受信料契約情報を利用するなど,卑劣かつ巧妙な犯行であって,首謀者である被告人の刑事責任は重く,強い非難に値する。 以上に照らすと,判示第1の各犯行についての被告人の立場が従属的なものにとどまること,被告人による被害弁償等によって判示第1の1の被害者を除く実質的被害は全て回復しており,判示第1の3,判示第2の1及び3の各被害者が被告人を宥恕したこと,被告人が本件を認めて反省の言葉を述べていること,父が出廷して今後の被告人の監督を約していること,若年で前科がないことなど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,被告人の刑事責任は相当に重く,本件につき,被告人は主文掲記の実刑を免れないものと判断した。 (求刑懲役5年)令和2年4月15日名古屋地方裁判所刑事第4部 裁判官西澤恵理
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