平成16(行ウ)11 行政情報非公開決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年11月30日 高知地方裁判所 情報公開
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判決文本文13,891 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告が,原告に対し,平成15年7月16日付け15環保第1141号行政情報一部公開決定通知書によって別紙1記載の行政情報を非公開とした処分を取り消す。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,原告が,高知市行政情報公開条例(平成12年条例第68号。以下「本件条例」という。)に基づき,被告に対し,平成11年6月19日付け高知新聞紙面の墓地経営許可申請不許可処分取消請求事件(当庁平成11年(行ウ)第6号。以下「別件訴訟」という。)に関する行政情報(訴訟記録)の公開(写しの交付)を求めたところ(以下「本件請求」という。),平成15年7月16日付けで別紙1記載の行政情報(以下「本件行政情報」という。)を非公開とし,その余を公開する一部公開決定(以下「本件処分」という。)がされたので,原告が,被告に対し,本件処分の取消しを求める事案である。 2 争いのない事実等以下の各事実は,当事者間に争いのない事実,証拠(甲1,2,乙1ないし3),及び弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実である。 (1) 当事者等原告は,高知県高知市に在住する住民であり,被告は,高知市長であり,本件条例2条1項の実施機関である。 (2) 本件行政情報の記載内容等本件行政情報は,訴外宗教法人と被告との間で争われた別件訴訟にかかる訴訟記録の一部であり,被告が訴訟当事者として取得し,保有している。なお,別件訴訟は,本件請求の時点で既に確定している 本件行政情報は,訴外宗教法人と被告との間で争われた別件訴訟にかかる訴訟記録の一部であり,被告が訴訟当事者として取得し,保有している。なお,別件訴訟は,本件請求の時点で既に確定している。 そして,本件行政情報には,別紙1のとおり,以下の4点の記載がある。 ① まず,本件行政情報には,別件訴訟の訴状の請求原因の中の,墓地経営許可申請の要件である墓地の設置場所から100メートル以内にある人家に居住する者の同意の状況についての記載があり(別紙1番号1),個人の居住状況,墓地設置場所における土地の権利関係,宗教法人と人家に居住する個人との同意に係る交渉の内容,宗教法人と人家に居住する個人との民事上の紛争関係について,それぞれ個人の氏名を挙げて記載されている。 ② また,本件行政情報には,同じく別件訴訟の訴状の請求原因の中の,墓地経営許可申請の要件である墓地の設置場所から100メートル以内にある人家に居住する者の同意の状況についての記載があり(別紙1番号2),個人の居住状況,宗教法人と人家に居住する個人との民事上の紛争関係について,それぞれ個人の氏名を挙げて記載されている。 ③ さらに,本件行政情報には,同じく別件訴訟の訴状の請求原因の中の,宗教法人の墓地経営許可の申請に係る墓地となる土地の一部について所有権又は相続権を有する申請者以外の個人の氏名,及び当該個人を特定し得る土地の地番の記載がある(別紙1番号3)。 ④ 加えて,本件行政情報には,別件訴訟の書証である墓地の経営許可申請書(2通)の中の管理者欄に,責任役員の氏名の記載がある(別紙1番号4)。 (3) 前訴の経緯等① 原告は,平成12年9月4日,平成12年改正前の高知市行政情報公開条例(昭和62年 (2通)の中の管理者欄に,責任役員の氏名の記載がある(別紙1番号4)。 (3) 前訴の経緯等① 原告は,平成12年9月4日,平成12年改正前の高知市行政情報公開条例(昭和62年条例第18号。以下「旧条例」という。)7条1項(本件条例6条1項と同様,「行政情報の公開を請求しようとするものは,次の各号に掲げる事項を記載した請求書を実施機関に提出しなければならない。」と規定されていた。)に基づき,被告に対し,平成11年6月19日付け高知新聞紙面の別件訴訟に関する行政情報(前記(2)①ないし④に加え,別の行政情報が含まれていた。以下「旧行政情報」という。)の閲覧を請求した(以下「旧請求」という。)。 ② 被告は,原告に対し,平成12年9月20日付け12環保第1153号行政情報一部公開決定通知書により,旧条例6条1項1号(個人識別情報。「個人に関する情報であって特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」)又は2号(法人情報)に該当するとして,旧行政情報の一部を非公開とし,その余を公開する決定(以下「旧処分」という。)をし,原告は,そのころ,通知書の交付を受けた。 ③ 原告は,平成12年11月20日,旧処分を不服として,被告に対し,異議申立てを行った。 ④ 被告は,平成13年6月4日,旧行政情報の一部である本件行政情報について,旧条例6条1項1号本文の個人識別情報に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定(以下「旧異議決定」という。)をし,同決定を同月9日以降に,原告に送達した。なお,被告は,旧異議決定において,旧処分のうち,本件行政情報以外を非公開とした部分については取り消し,平成13年6月4日付け13重環保第1017号によってした決定(以下「1017号決定」という。)により,旧行政情 議決定において,旧処分のうち,本件行政情報以外を非公開とした部分については取り消し,平成13年6月4日付け13重環保第1017号によってした決定(以下「1017号決定」という。)により,旧行政情報のうち本件行政情報以外の部分を,原告に対して公開した。 ⑤ 原告は,平成13年ころ,旧処分の取消し等を求めて訴訟(当庁平成13年(行ウ)第13号行政情報非公開決定処分取消請求事件。以下「前訴」という。)を提起したところ,平成14年7月5日,口頭弁論が終結し,同年11月22日,旧行政情報のうち本件行政情報にかかる部分について請求を棄却し,その他の部分について訴えを却下し,1017号決定の無効確認を求める部分について訴えを却下する旨の判決がされ,同判決は確定している。 (4) 本件訴訟に至る経緯等① 原告は,平成15年7月4日,本件条例6条に基づき,被告に対し,本件請求を行った。 ② 被告は,原告に対し,平成15年7月16日付け15環保第1141号行政情報一部公開決定通知書により,本件行政情報が本件条例9条2号に該当するとして,本件処分をし,原告は,そのころ,通知書の交付を受けた。 ③ 原告は,平成15年9月9日,本件処分を不服として,被告に対し,異議申立てを行った。 ④ 被告は,平成16年3月25日,本件行政情報は,いずれも本件条例9条2号本文の個人識別情報に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をし,同決定を同年4月1日に,原告に送達した。 ⑤ 原告は,平成16年6月29日,本件処分の取消しを求めて,被告に対し,本件訴訟を提起した。 (5) 関係規定,旧条例から本件条例への改正の経緯等本件条例の関係規定,及び平成13年10月に高知市が発行し 日,本件処分の取消しを求めて,被告に対し,本件訴訟を提起した。 (5) 関係規定,旧条例から本件条例への改正の経緯等本件条例の関係規定,及び平成13年10月に高知市が発行した情報公開の手引(乙1)における高知市行政情報公開条例解釈運用基準(以下「解釈運用基準」という。)の記載については,別紙2及び3のとおりである。 なお,旧条例は,昭和62年4月1日に公布され,同年10月1日から施行されたが,旧条例制定後の情報公開制度をめぐる社会情勢の変化や運用実績を踏まえ,対象情報や非公開条項等のあり方を見直す必要があったこと,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)では,自治体の条例にはない新しい考え方が示され,高知市においてもそれを採り入れることが望ましい部分があったこと,などの理由から,平成11年に見直すこととされ,改正案が,平成12年12月に,高知市議会定例会において可決され,本件条例は,平成13年7月1日から施行されている。 3 争点本件の争点は,(1) 原告の主張が前訴の既判力により遮断されるか否か(争点1),(2) 本件行政情報が,本件条例9条2号ただし書ア(「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」)に該当するか否か(争点2)であり,各争点についての当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 争点1(原告の主張が前訴の既判力により遮断されるか否か)について① 被告の主張原告が,被告に対し,別件訴訟の訴訟記録の一部である本件行政情報について公開請求をするのは,本件請求が2度目であるところ,旧請求の際にも,被告は,本件行政情報と同じ部分を,同じ理由で非公開とし,原告は,これに対し,処分の 訴訟の訴訟記録の一部である本件行政情報について公開請求をするのは,本件請求が2度目であるところ,旧請求の際にも,被告は,本件行政情報と同じ部分を,同じ理由で非公開とし,原告は,これに対し,処分の取消しを求める前訴を提起し,請求棄却判決が確定している。 そうすると,前訴と本件訴訟は,申立て及び事実関係が共通で,同一の目標を追及するものであって,訴訟物が実質的に同一であるから,本件訴訟における原告の主張は,前訴の既判力に触れ,主張自体失当であり,請求棄却の判決をすべきである。 ② 原告の主張この点についての原告の主張は明らかではないが,争うものと解される。 (2) 争点2(本件行政情報が本件条例9条2号ただし書アに該当するか否か)について① 原告の主張ア憲法82条は,公開法廷における裁判の対審及び判決について定め,その精神を徹底する趣旨から,民事訴訟法91条1項は,全ての人に対して,訴訟記録を原則として公開することを規定しているところ,本件行政情報は,被告が訴訟当事者となった別件訴訟の訴訟記録の一部であるから,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アに該当する。 そして,同法91条2項(公開を禁止した口頭弁論)及び同法92条(秘密保護のための閲覧等の制限)の措置がとられるのは,あくまでも例外であるから,右規定をもって,本件行政情報が,本件条例9条2号ただし書アに該当しないと解することは実態にそぐわない。 なお,被告は,本件請求は,閲覧の方法ではなく,写しの交付の方法による公開請求であるところ,民事訴訟法91条3項は,訴訟記録の謄写・謄本等の交付請求は,閲覧と異なり,当事者及び利害関係を疎明した第三者の ,被告は,本件請求は,閲覧の方法ではなく,写しの交付の方法による公開請求であるところ,民事訴訟法91条3項は,訴訟記録の謄写・謄本等の交付請求は,閲覧と異なり,当事者及び利害関係を疎明した第三者のみがこれを請求できると定め,請求主体が制限されているから,この点からも,訴訟記録は,本件条例9条2号ただし書アには該当しない旨主張する。しかし,同法91条3項と本件条例との公開方法の違いをもって,本件行政情報が,本件条例9条2号ただし書アに該当しないと解することはできない。 イ仮に,一般的には訴訟記録が公開されないことがあるとしても,別件訴訟においては,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において,訴訟記録が陳述,あるいは提出されたことにより,既に公にされており,何人でも閲覧できる状態にあり,被告は,そのことを当然に了知していた。 よって,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アに該当する。 ② 被告の主張ア本件条例9条2号ただし書アにいう「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とは,商業登記簿のように,法令等の規定により何人でも閲覧等をすることができると定められている情報をいい,閲覧等が利害関係人に限り認められているもの,あるいは戸籍法による戸籍の謄本・抄本の請求のように,法令等の規定では何人でも閲覧できるとされていても,請求の目的が当該法令等の規定又は運用等により制限され,実質的に何人にも認める趣旨ではない場合には,これに該当しないものであるというのが,本件条例の立法者の解釈である。そして,訴訟記録は,民事訴訟法上,その内容,閲覧請求の主体等について,何らの制限もなく閲覧が可能なものであるとはいえない。 これに該当しないものであるというのが,本件条例の立法者の解釈である。そして,訴訟記録は,民事訴訟法上,その内容,閲覧請求の主体等について,何らの制限もなく閲覧が可能なものであるとはいえない。 なお,本件請求は,閲覧の方法ではなく,写しの交付の方法による公開請求であるところ,民事訴訟法91条3項は,訴訟記録の謄写・謄本等の交付請求は,閲覧と異なり,当事者及び利害関係を疎明した第三者のみがこれを請求できると定め,請求主体が制限されている。 よって,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アには該当しない。 イ原告は,別件訴訟の訴訟記録は,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において陳述,あるいは提出されたことにより,既に公にされており,何人でも閲覧できる状態にある旨主張する。しかし,本件条例9条2号本文及び3条2項の趣旨からして,本件条例9条2号ただし書アの規定については,厳格に解釈するのが相当であるところ,実施機関のみでは明確に判断ができず,裁判所に照会等しなければ,その該当性の判断が直ちに可能でないような情報は,個人情報の非公開原則に照らし,これを公開してはならないものとされているというべきであり,訴訟記録は右のような情報にあたる。 よって,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アには該当しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告の主張が前訴の既判力により遮断されるか否か)についてこの点,被告は,前訴と本件訴訟は,申立て及び事実関係が共通で,同一の目標を追及するものであって,訴訟物が実質的に同一であるから,本件訴訟における原告の主張は,前訴の既判力に触れ,主張自体失当である旨主張する。 件訴訟は,申立て及び事実関係が共通で,同一の目標を追及するものであって,訴訟物が実質的に同一であるから,本件訴訟における原告の主張は,前訴の既判力に触れ,主張自体失当である旨主張する。 たしかに,前記第2の2の(3)及び(4)に認定のとおり,原告は,本件行政情報について,旧請求をした上,異議申立てを経て,旧処分に対し前訴を提起していることが認められる。しかし,取消訴訟の訴訟物は,行政処分の違法一般と解されるところ,平成12年9月20日付け12環保第1153号行政情報一部公開決定通知書による旧処分と,平成15年7月16日付け15環保第1141号行政情報一部公開決定通知書による本件処分とでは,取消し対象となる処分が異なっていること,原告が求めている本件行政情報の公開方法も,旧請求が閲覧であるのに対し,本件請求が写しの交付である点で異なっていること,前訴の口頭弁論終結日である平成14年7月5日から,本件訴訟提起時である平成16年6月29日までに,約2年が経過しており,その間には,前記第2の2(5)に認定のとおり,情報公開制度を取り巻く社会情勢が変わり,高知市においても対象情報や非公開条項等のあり方を見直して,旧条例から本件条例に改正されるなど一定程度事情の変化が認められること,などにかんがみると,今後も原告により本件行政情報についての公開請求や訴え提起が繰り返された場合に訴権の濫用になり得ることは別として,本件訴訟の訴訟物が,前訴の訴訟物と実質的に同一であるとはいえず,本件訴訟における原告の主張が,前訴の既判力に触れ,主張自体失当になるということはできない。 よって,被告の主張には理由がない。 2 争点2(本件行政情報が本件条例9条2号ただし書アに該当するか否か)について(1) 本件条例9条2号本文の該当 ということはできない。 よって,被告の主張には理由がない。 2 争点2(本件行政情報が本件条例9条2号ただし書アに該当するか否か)について(1) 本件条例9条2号本文の該当性について本件行政情報には,前記第2の2(2)に認定のとおりの各記載が認められるところ,本件行政情報が,本件条例9条2号本文にいう「個人に関する情報」であり,かつ,「特定の個人を識別することができるもの」に該当することは明らかであり,この点につき当事者間に争いはない。そこで,本件行政情報が,「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」(同条2号ただし書ア)に該当するか否かにつき検討する。 (2) 同条2号ただし書アの該当性について① この点,原告は,憲法82条及び民事訴訟法91条1項を根拠として,本件行政情報は,別件訴訟の訴訟記録の一部であるから,本件条例9条2号ただし書アに該当する旨主張する。 しかしながら,民事訴訟法は,91条1項において,憲法82条の裁判の公開を徹底する趣旨から,原則として訴訟記録を公開し,すべての人に閲覧請求権を認めているものの,同法91条2項において,一定の場合に閲覧請求の主体を制限し,同法91条3項において,閲覧以外の方法について主体を当事者及び利害関係を疎明した第三者に制限している。また,同法92条は,一定の場合には,裁判所は,当事者の申立てにより,第三者の訴訟記録の閲覧等を制限することができる旨定め,明確な要件と手続のもと,個人のプライバシーや企業秘密など当事者の秘密保持の利益と第三者の記録閲覧等の請求権との調整を図っている。 このように,訴訟記録については,民事訴訟法上,閲覧等の請求主体や請求対象に のプライバシーや企業秘密など当事者の秘密保持の利益と第三者の記録閲覧等の請求権との調整を図っている。 このように,訴訟記録については,民事訴訟法上,閲覧等の請求主体や請求対象に限定が付されていることから,同法91条1項のみを根拠として,訴訟記録の一部であることをもって,本件条例9条ただし書アに該当するとはいえない。この点については,前記第2の2(5)に認定のとおり,解釈運用基準においても,閲覧等が利害関係人に限り認められているもの,あるいは,法令等の規定では何人にも閲覧等が認められるとされていても,請求の目的が当該法令等の規定又は運用等により制限され,実質的に何人にも認める趣旨ではない場合には,「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」には該当しないとされていることも同趣旨であると解される。 原告は,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられるのは,あくまでも例外であるから,右規定をもって,本件行政情報が,本件条例9条2号ただし書アに該当しないと解することは実態にそぐわない旨主張するが,訴訟記録の公開に法律により限定が付されており,その趣旨が,前記のとおり,個人のプライバシーや企業秘密など当事者の秘密保持の利益と第三者の記録閲覧等の請求権との調整を図るものであることに照らせば,同法91条2項及び同法92条の規定が,形式的には同法91条1項の例外規定に該当するからといって,そのことによって訴訟記録が「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」になるものではなく,原告の主張には理由がない。 ② また,原告は,別件訴訟において,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において,訴訟記録が陳述,あるいは提出され ではなく,原告の主張には理由がない。 ② また,原告は,別件訴訟において,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において,訴訟記録が陳述,あるいは提出されたことにより,既に公にされており,何人でも閲覧できる状態にあり,被告は,そのことを当然に了知していたから,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アに該当する旨主張する。 ところで,前記第2の2(5)に認定のような本件条例の解釈運用指針(前文),目的(1条)及び実施機関の責務(3条)に関する諸規定,並びに,解釈運用基準の内容によれば,本件条例9条2号本文は,個人のプライバシーを最大限に保護しつつも,プライバシーの具体的内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではないため,原則として個人識別情報を一律に非開示とする一方,ただし書アにおいて,公にしても,個人のプライバシーを侵害しないか,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内のものについては,非公開とする理由がないから,これを除外することとしたものと解される。 そして,本件条例3条2項及び同項についての解釈運用基準によれば,本件条例9条2号ただし書アの該当性判断にあたっては,個人のプライバシー保護に最大限配慮することが要請されることから,個人情報を公開しても,個人のプライバシーを侵害しないか,あるいは,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまることが明確な場合に限定して,本件条例9条2号ただし書アの該当性が認められると解すべきである。 そうすると,訴訟記録について,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置が取られたか否かなどは,本件条例2条1項の実施機関に必ずしも明らかとはいえず,実施機関としては,本件条例9条2号ただし書アの そうすると,訴訟記録について,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置が取られたか否かなどは,本件条例2条1項の実施機関に必ずしも明らかとはいえず,実施機関としては,本件条例9条2号ただし書アの該当性を判断する際には,裁判所に照会する等の必要があることになるから,結局,訴訟記録というだけでは,それを公にした場合に,個人のプライバシーを侵害しないか,あるいは,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまることが明確な場合とはいえない。特に,原告は,本件請求において,写しの交付による公開を求めているところ,前述のとおり,民事訴訟法91条3項は,訴訟記録の正本,謄本若しくは抄本の交付については,閲覧の場合とは異なり,請求主体を当事者及び利害関係を疎明した第三者に制限していることからすれば,本件行政情報を写しの交付という方法で公開することが,個人のプライバシーを侵害しないか,あるいは,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまることが明確であるということはできない。 とすれば,原告が主張するとおり,仮に,別件訴訟において,民事訴訟法91条2項や同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において,訴訟記録が陳述あるいは提出されたことにより,既に公にされ,何人でも閲覧できる状態にあったとしても,実施機関のみでは,当該訴訟記録の公開によって,個人のプライバシーを侵害しないか,あるいは,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまることが明確であると判断できない以上,当該訴訟記録の一部である本件行政情報が,「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当するということはできず,原告の主張には理由がない。 ③ なお,上記①及び②の説示に照らせば,訴訟記録が,本件条例9 法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当するということはできず,原告の主張には理由がない。 ③ なお,上記①及び②の説示に照らせば,訴訟記録が,本件条例9条2号ただし書アにいう「慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」にも該当しないことは明らかである。 ④ 以上によれば,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アに該当しない。 3 結論よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 高知地方裁判所民事部裁判長裁判官新谷晋司裁判官徳増誠一裁判官野中高広別紙2 高知市行政情報公開条例(一部抜粋)前文日本国憲法の定める地方自治の本旨を実現し,地方分権をより一層推進するには,住民参加による透明で開かれた市政が必要である。このため,高知市は,市の保有する情報を住民と共有するとともに,より広く情報発信する自治の在り方を目指して,情報公開制度の一層の充実を図ることにした。この条例では,市が保有する情報の公開を原則として,個人のプライバシーを含め市民の権利に最大限の配慮を払い,市民から信託された行政についての説明義務を果たすために必要な事項を定めている。高知市は,このような精神にのっとり,条例の解釈運用に努めなければならない。 第1条この条例は,行政情報の公開等に関し必要な事項を定めることにより,市民の知る権利を具体的に保障するとともに,公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的とする。 。 第1条この条例は,行政情報の公開等に関し必要な事項を定めることにより,市民の知る権利を具体的に保障するとともに,公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的とする。 第2条この条例において「実施機関」とは,市長,水道事業管理者,消防長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会及び固定資産評価審査委員会をいう。 2 (省略) 第3条実施機関は,この条例の目的を達成するため,請求に基づき行政情報を公開するとともに,情報提供その他の施策を充実し,総合的な情報公開の推進を図ることにより,市の有するその諸活動を説明する責務を全うするよう努めなければならない。 2 実施機関は,行政情報の公開を請求する権利が十分尊重されるよう,公開を原則としてこの条例を解釈し,運用するものとする。この場合において,実施機関は,個人に関する情報が十分保護されるよう最大限の配慮をしなければならない。 第6条行政情報の公開の請求(以下「公開請求」という。)をしようとするものは,次に掲げる事項を記載した請求書(以下「公開請求書」という。)を実施機関に提出しなければならない。 (1) 公開請求をしようとするものの氏名又は名称及び住所又は事務所若しくは事業所の所在地並びに法人その他の団体にあってはその代表者の氏名(2) 公開請求をしようとする行政情報の件名その他の公開請求に係る行政情報を特定するに足りる事項(3) その他実施機関が別に定める事項 2 (省略) 第9条実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る行政情報に次の各号に掲げる情報(以下 (3) その他実施機関が別に定める事項 2 (省略) 第9条実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る行政情報に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,公開請求者に対し当該行政情報を公開しなければならない。 (1) (省略)(2) 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報イ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公開することがやむを得ないと認めるに足りる合理的な理由があるものウ次に掲げる者の職務の遂行に係る情報に含まれる当該者の職名,氏名及び当該職務の内容に係る部分であって,公開しても当該者の権利利益を著しく害しないと認めるに足りる合理的な理由があるもの(ア)ないし(ウ)(省略)以上別紙3 高知市行政情報公開条例解釈運用基準(一部抜粋)第3条【趣旨】本条は,この条例の目的を達成するために,実施機関が 以上別紙3 高知市行政情報公開条例解釈運用基準(一部抜粋)第3条【趣旨】本条は,この条例の目的を達成するために,実施機関がこの条例の解釈と運用に当たってとるべき姿勢と果たすべき責務について定めたものである。 【解釈】 1 第1項関係 (省略) 2 第2項関係(1) 前段は,実施機関は,条例に定める要件を満たした公開請求に係る行政情報については,市民の公開請求権を尊重し,非公開情報が記録されている場合を除き公開しなければならないという「原則公開」の観点から,本条例全体を解釈し,運用しなければならないとする趣旨を明らかにしたものである。 (2) 後段は,原則公開を基本とする情報公開制度にあっても,思想,心身の状況,病歴,学歴,職歴,成績,親族関係,所得,財産の状況その他個人に関する一切の情報(以下「個人情報」という。)は最大限に保護されるべきであり,正当な理由なく公にされてはならないことを明らかにしたものである。 本来,保護されるべき個人情報の内容については,「個人の秘密,個人の私生活その他の他人に知られたくない個人に関する情報」であるところの,いわゆる「プライバシー」に関する情報であるが,何が保護されるべきプライバシーかということについても種々の考え方がある。従って,情報公開とプライバシーの保護の調和を図り,基本的人権に関わるプライバシーの保護を徹底するため,本条例では,プライバシーに当たるかどうかが不明確なものを含めて,個人情報は原則として非公開とするものである。 個人情報の原則非公開は,条例第9条第2号において定めるところであり,個人情報の公開・非公開の具体的判断は,も 不明確なものを含めて,個人情報は原則として非公開とするものである。 個人情報の原則非公開は,条例第9条第2号において定めるところであり,個人情報の公開・非公開の具体的判断は,もっぱら同号に規定するところによるが,特に,同号ただし書の規定により公開することとなる個人情報の解釈及び運用に当たっては,プライバシー保護の趣旨に則して行わなければならない。(以下省略) 第9条第2号【趣旨】 1 本号は,個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から,個人のプライバシーを最大限に保護するため,特定の個人を識別することができるような情報が記録されている行政情報は非公開とすることを定めたものである。 2 プライバシーの具体的内容は,法的にも社会通念上も必ずしも明確ではないため,本号では,個人のプライバシーに関する情報であると明らかに判別できる場合はもとより,個人のプライバシーに関する情報であると推認できる場合も含めて(プライバシーであるかどうか不明確であるものを含めて),個人に関する一切の情報は原則として非公開とした。その一方で,個人の利益保護の観点から非公開とする必要のないものや公益上公開する必要性の認められるものについて,本号ただし書により例外的に非公開情報から除くこととした。 【解釈】1ないし6 (省略) 7 「ただし書ア」について「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」は,公にしても,個人の権利利益を侵害しないことが明らかであるか,場合により個人のプライバシーを侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまると考えられるため,これを非公開の個人情報から除外することを定めたものである。 ないことが明らかであるか,場合により個人のプライバシーを侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまると考えられるため,これを非公開の個人情報から除外することを定めたものである。 (1) 「公にされている情報」とは,現在,何人も知り得る状態に置かれている情報をいう。したがって,過去に広く報道された事実であったとしても,現在は,限られた少数の者しか知り得る状態にはない場合には,当該情報は,「公にされている情報」とはいえない。また,「公にすることが予定されている情報」には,公にされることが時間的に予定されているもののみならず,当該情報の性質上通例公にされるものも含まれる。 (2) 「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とは,商業登記簿のように,法令等の規定により何人でも閲覧等をすることができると定められている情報をいい,閲覧等が利害関係人に限り認められているもの,あるいは戸籍法による戸籍の謄本・抄本の請求のように,法令等の規定では何人でもとされていても,請求の目的が当該法令等の規定又は運用等により制限され,実質的に何人にも認めるという趣旨ではないような場合には,これに該当しないものである。 (3) 「慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とは,次のような情報をいう。 ア実施機関が公にすることを目的として作成した情報イ個人が公にされることを了承し,又は公にされることを前提として提供した情報(例:選挙広報に登載するために候補者から提供された経歴,政見等の情報)ウ個人が自主的に公表した資料等から何人でも知り得る情報(例:出版物に記載された著者の氏名,経歴等) 報に登載するために候補者から提供された経歴,政見等の情報)ウ個人が自主的に公表した資料等から何人でも知り得る情報(例:出版物に記載された著者の氏名,経歴等)エ従来から公にすることが慣行になっていて,今後公にしても社会通念上個人のプライバシーを侵害するおそれがないと認められる情報(例:被表彰者名簿,発令後の人事異動名簿,職員録等) 以上

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