平成22(行ウ)200等 遺族厚生年金不支給取消裁決取消請求事件(甲事件),遺族厚生年金支給決定取消処分取消請求事件(乙事件)

裁判年月日・裁判所
平成26年1月16日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文35,284 文字)

- 1 -平成26年1月16日判決言渡平成22年(行ウ)第200号遺族厚生年金不支給取消裁決取消請求事件(甲事件)平成23年(行ウ)第185号遺族厚生年金支給決定取消処分取消請求事件(乙事件) 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用も含む。)は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 甲事件社会保険審査会が,平成22年4月30日付けで被告補助参加人に対してした,社会保険庁長官による被告補助参加人に対する平成21年1月24日付けの遺族厚生年金不支給処分を取り消す旨の裁決を取り消す。 2 乙事件厚生労働大臣が,平成22年6月22日付けで原告に対してした遺族厚生年金の支給決定を取り消す旨の処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の概要本件は,厚生年金保険の被保険者であったA(平成20年▲月▲日に死亡。 以下「亡A」という。)の生前,亡Aと内縁関係にあったと主張する被告補助参加人(以下「参加人」という。)が遺族厚生年金の裁定を請求したところ,社会保険庁長官が不支給処分をし,これに対する審査請求も棄却されたが,同棄却決定に係る再審査請求において,社会保険審査会が上記不支給処分を取り消す旨の裁決をしたため(以下「本件裁決」という。),亡Aの戸籍上の配偶者として遺族厚生年金を受給していた原告が,本件裁決の取消しを求めるとと - 2 -もに(甲事件),厚生労働大臣が本件裁決の効力に従って原告に対してした,遺族厚生年金の支給決定を取り消す旨の処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める事案(乙事件)である。 2 関係法令等の定め(1) 厚生年金保険法(以 効力に従って原告に対してした,遺族厚生年金の支給決定を取り消す旨の処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める事案(乙事件)である。 2 関係法令等の定め(1) 厚生年金保険法(以下「法」という。)58条1項は,遺族厚生年金は,被保険者又は被保険者であった者(以下「被保険者等」という。)が死亡した場合等に,その者の遺族に支給すると定めている。 (2) 法59条1項は,遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被保険者等の配偶者等であって,被保険者等の死亡の当時,その者によって生計を維持したものとすると定め,同条4項は,同条1項の適用上,被保険者等によって生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は,政令で定めると定めている。 (3) 法3条2項は,法において,配偶者には,婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者(以下「事実婚関係にある者」という。)を含むものとすると定めている。 (4) 厚生年金保険法施行令(以下「法施行令」という。)3条の10は,法59条1項に規定する被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維持していた配偶者等は,当該被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とすると定めている。 (5) 社会保険庁の通知等についてア法の保険給付等を受ける権利に関して,事実婚関係にある者の認定について定めた「事実婚関係の認定について」(平成23年3月23日年発0323第1号による廃止前の昭和55年5月16日付け庁保発第15号通知(以下「15号通知」という。))は,重婚的内縁関係の取扱 - 3 -いについて,届出による婚姻関係にある 3月23日年発0323第1号による廃止前の昭和55年5月16日付け庁保発第15号通知(以下「15号通知」という。))は,重婚的内縁関係の取扱 - 3 -いについて,届出による婚姻関係にある者が重ねて他の者と内縁関係にある場合の取扱いについては,婚姻の成立が届出により法律上の効力を生ずることとされていることからして,届出による婚姻関係を優先すべきことは当然であり,従って,届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているときに限り,内縁関係にある者を事実婚関係にある者として認定するものとすることと定めている(甲20)。 イ事実婚関係の認定に関し,届出による婚姻関係と内縁関係が重複しているいわゆる重婚的内縁関係に係る事務について定めた「事実婚関係の認定事務について」(平成23年3月23日年発0323第1号による廃止前の昭和55年5月16日付け庁保険発第13号通知(以下「13号通知」という。))は,重婚的内縁関係に関し,上記15号通知にいう届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているときには,① 当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるが戸籍上離婚の届出をしていないときや,② 一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって,その状態が長期間(おおむね10年程度以上)継続し,当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるとき等が該当するものとして取扱うこととすることと定めており,夫婦としての共同生活の状態にないといい得るためには,(ア) 当事者が住居を異にすること,(イ) 当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと,(ウ) 当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在しないことのすべての要件に該当することを要す 異にすること,(イ) 当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと,(ウ) 当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在しないことのすべての要件に該当することを要するものとすることと定めている(甲20)。 ウ亡A死亡時である平成20年9月7日に適用のあった平成6年11月9日付け庁文発第3235号社会保険庁運営部年金指導課長通知は,法59条4項及び法施行令3条の10の規定にいう「死亡した者によって - 4 -生計を維持していた配偶者」とは,死亡した者と生計を同じくしていた配偶者であって年額850万円以上の収入又は年額655万5000円以上の所得を将来にわたって有すると認められる者以外のものとしている(甲1)。 3 前提事実(争いのない事実のほか,各項掲記の証拠(枝番号の存するものは特に断らない限り全枝番号を含む。以下同じ。)により認めることのできる事実等)(1) 原告(昭和29年▲月▲日生)は,昭和54年▲月▲日,亡A(昭和28年▲月▲日生)と婚姻した。 (2) 原告と亡Aとの間には,長女B(昭和55年▲月生。平成17年▲月▲日婚姻により「○○」と改姓。),次女C(平成元年▲月生。長女Bとあわせて「子ら」という。)がいる(乙1)。 (3) 亡Aは,厚生年金保険の被保険者(被保険者期間376月)であったところ,平成20年▲月▲日,死亡した(甲4)。 (4) 社会保険庁長官は,平成21年1月8日,法58条に基づき,原告に対し,遺族厚生年金を支給する旨の裁定(以下「原告に係る支給裁定」という。)をした。原告は,同裁定に基づき,平成20年10月分から平成22年5月分まで,遺族厚生年金合計242万6660円の支給を受けた。 (5)ア参加人は,平成20年10月31日,自己が亡Aの内縁 う。)をした。原告は,同裁定に基づき,平成20年10月分から平成22年5月分まで,遺族厚生年金合計242万6660円の支給を受けた。 (5)ア参加人は,平成20年10月31日,自己が亡Aの内縁の妻であり,亡Aの遺族厚生年金を受けることができる配偶者であるとして,社会保険庁長官に対し,遺族厚生年金の裁定を請求した。しかし,社会保険庁長官は,平成21年1月24日,原告と亡Aの婚姻関係が形骸化しているとは認められないことを理由に,参加人には遺族厚生年金を支給しない旨の処分をした。 イ参加人は,平成21年3月17日,上記アの処分を不服として大阪社会保険事務局社会保険審査官に対して審査請求をしたが,同審査官は,同年 - 5 -5月29日,同審査請求を棄却する旨の決定をした。 ウ参加人は,上記イの決定を不服として,社会保険審査会に対し再審査請求をしたところ,社会保険審査会は,平成22年4月30日,亡Aの死亡時において,原告と亡Aの婚姻関係が形骸化しており,かつ,その状態は固定化していたことを理由に,上記アの処分を取り消す旨の裁決をした(本件裁決)。上記イの審査請求及び上記再審査請求の各手続において利害関係人として参加していた原告は,同年5月6日,本件裁決の通知を受けた。 (6)ア厚生労働大臣は,平成22年6月22日,本件裁決の効力に従い,原告に対して,原告に係る支給裁定を取り消すとともに(本件処分),同月29日付けで,すでに遺族厚生年金として原告に支給されていた金額(242万6660円)を返還するよう原告に求めた(甲3の2)。 イ原告は,平成22年8月24日,本件処分を不服として,近畿厚生局社会保険審査官に対して審査請求をしたが,同審査官は,平成23年2月15日,同審査請求を棄却する旨の決定をした。 ウ原告は イ原告は,平成22年8月24日,本件処分を不服として,近畿厚生局社会保険審査官に対して審査請求をしたが,同審査官は,平成23年2月15日,同審査請求を棄却する旨の決定をした。 ウ原告は,平成23年4月14日,上記イの決定を不服として,社会保険審査会に対して再審査請求をした(甲7)。社会保険審査会は,同年7月29日,同再審査請求を棄却する旨の裁決をし,原告は,同年8月1日,同裁決に係る通知を受領した。 (7)ア原告は,平成22年11月5日,① 本件裁決の取消し,及び② 原告が被保険者亡Aに係る遺族厚生年金の受給権を有することの確認をそれぞれ求める訴えを当裁判所に提起した(甲事件)(顕著な事実)。 イ原告は,平成24年3月16日付け訴えの一部取下書により上記ア②の訴えを取り下げた(顕著な事実)。 (8)ア原告は,平成23年11月2日,行政事件訴訟法19条1項に基づく甲事件の関連請求に係る訴えとして,上記(6)ウの社会保険審査会の裁決 - 6 -の取消しを求める訴えを当裁判所に提起した(乙事件)(顕著な事実)。 イ原告は,平成23年11月15日,乙事件の請求の趣旨について,本件処分の取消しを求めるものに交換的に変更した(顕著な事実)。 4 争点及び当事者等の主張遺族厚生年金の支給を受けるためには,法59条1項所定の「配偶者」に該当することが必要であるところ,本件においては,当初は原告が亡Aの「配偶者」に該当するとして遺族厚生年金の支給裁定がされたものの(前記前提事実(4)),その後,本件裁決において,内縁の妻であると主張する参加人が「配偶者」に該当する旨の判断がされ(同(5)ウ),本件裁決を受けて,原告に係る支給裁定が取り消されたものである(同(6)ア。本件処分)。 したがって,本件の争点は,原告と参加人 と主張する参加人が「配偶者」に該当する旨の判断がされ(同(5)ウ),本件裁決を受けて,原告に係る支給裁定が取り消されたものである(同(6)ア。本件処分)。 したがって,本件の争点は,原告と参加人のいずれが遺族厚生年金の受給権者である「配偶者」に該当するかである。 (原告の主張)(1) 法59条1項所定の「配偶者」該当性についてア重婚的内縁関係が存在する場合の「配偶者」該当性については,15号通知及び13号通知に従い判断すべきである。したがって,原則として法律上の配偶者を優先すべきであり,① 当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるが戸籍上離婚の届出をしていないときや,② 一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって,その状態が長期間(おおむね10年程度以上)継続し,当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められる等,届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっていない限り,法律上の配偶者が法59条1項にいう「配偶者」にあたるというべきである。 イそして,共同生活の状態にないといい得るためには,(ア) 当事者が住居を異にすること,(イ) 当事者間に経済的な依存関係が反復して存在し - 7 -ていないこと,(ウ) 当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在しないことの3要件をすべて満たす必要があり,経済的依存関係がないことは不可欠の要件である。 (2) ①離婚の合意がないことア原告と亡Aは,平成8年3月18日から別居を開始しているものの,その理由は専ら原告が亡Aの母であるDとの軋轢から避難することにあり,離婚の合意に基づくものではなかった。これは,原告が同日に奈良県 β市の自宅(以下「 β 市の自 から別居を開始しているものの,その理由は専ら原告が亡Aの母であるDとの軋轢から避難することにあり,離婚の合意に基づくものではなかった。これは,原告が同日に奈良県 β市の自宅(以下「 β 市の自宅」という。)を出る際に亡Aに対して残した置き手紙には離婚について何ら記載されていなかったこと,別居開始後も亡Aが原告及び子ら(以下「原告ら」という。)の体調を気遣う手紙を送ったり,海外出張のお土産を渡したりしていたこと,原告が平成9年1月になっても β 市の自宅の鍵を持っていたこと等から明らかである。 イ亡Aは,平成12年8月になって初めて,離婚したいとの意思を示したものの,原告はその申出に応じていないし,亡Aも離婚に向けてさらに具体的な法的手続をとることもなかったのであるから,亡Aが死亡するまでの間においても,原告及び亡Aの間に,離婚の合意が成立したことは一切ない。 (3) ②悪意の遺棄がないことア原告及び亡Aの別居開始の理由が,原告がDとの軋轢から避難することにあったことは上記(2)アのとおりであるが,原告及び亡Aは,別居開始前,亡Aも原告と一緒に β 市の自宅を出ることを相談していた。しかし,亡Aは一人息子であるため,両親とともに β 市の自宅に残ることになったのであり,亡Aも原告が子らを連れて出て行くことを了解していた。したがって,別居が原告の悪意の遺棄によるものではないことは明らかである。 なお,亡Aは,平成7年12月頃から原告らが生活をしていた2階ではなく,亡Aの両親が生活をしていた1階で寝るようになったが,これは亡 - 8 -Aが1階で寝るとDが安心するという理由からであり,原告及び亡Aの不和によるものではない。 イ原告の悪意の遺棄によって別居が開始したものではないことは,別 ったが,これは亡 - 8 -Aが1階で寝るとDが安心するという理由からであり,原告及び亡Aの不和によるものではない。 イ原告の悪意の遺棄によって別居が開始したものではないことは,別居開始直後の亡Aからの手紙には原告が β 市の自宅を出た理由を問う内容が記載されていないことや,別居開始後に原告が亡Aの父であるEのお見舞いに出向いたこと,別居開始後も原告及び亡Aは,子らと一緒に遊園地へ出かけたり,子らの運動会等の行事に一緒に参加していたことからも明らかである。なお,原告はEの葬儀に参列しなかったが,これは原告が肺気胸を再発していたという事情によるものである。 (4) 「共同生活の状態にない」ことがないことア 「(ア)当事者が住居を異にすること」との要件について原告と亡Aは,平成8年3月18日から亡Aが死亡した平成20年▲月▲日までの間,別居をしていたから,同要件は充たしている。 イ 「(イ)当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと」との要件について(ア) 経済的給付の状況a 亡Aは,原告に対し,平成8年から平成12年までの間は,月18万6000円ないし月24万円,ボーナス月には月30万円の送金をした。亡Aは,平成13年5月から一方的に送金額を月10万円に減額したが,その後,平成14年2月に婚姻費用分担調停(以下「本件調停」という。)が成立し,同年3月から平成19年までの間は,同調停に基づき,月15万円の送金をしていた。その他にも亡Aは平成9年3月4日に原告に対して500万円を送金した。 b 原告の総収入に占める亡Aからの送金割合は,平成13年及び平成20年を除き,50%以上であり,かつ,原告の総支出に占める亡Aの送金割合は,平成13年及び 対して500万円を送金した。 b 原告の総収入に占める亡Aからの送金割合は,平成13年及び平成20年を除き,50%以上であり,かつ,原告の総支出に占める亡Aの送金割合は,平成13年及び平成20年を除き,47%から161% - 9 -であったことから明らかなように,原告は亡Aからの経済的給付により生計を維持しており,亡Aとの間に経済的依存関係があった。 (イ) 経済的給付の目的a 上記(ア)bのような原告の総収入及び総支出に対する亡Aからの送金割合や,送金が継続的であったことに加え,亡Aの原告に対する送金額が,亡A及び原告の収入を基準に算出した子らの養育費を上回っていたことからすると,亡Aの送金は子らの養育費に止まるものではなく,原告らの生活を支える目的で行われていたものであり,また,離婚給付でないことは明らかである。 b 原告及び亡Aの間で,平成9年3月4日の500万円の送金の前後に離婚の話がされたことは一切なく,同送金が離婚を前提とした財産分与であるとは到底認められない。 ウ 「(ウ)当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在しないこと」との要件について原告及び亡Aは別居開始後も手紙や電話で連絡を取り合っていたこと,亡Aは手紙で原告の体調を気遣ったり,Eの墓参りを連絡することもあったこと,原告及び亡Aは子らとともに遊園地へ出かけたり,運動会やピアノの発表会等の子らの行事に参加していたこと,亡Aは平成20年1月に原告に対して肝臓癌が発覚し治療を受けていることを手紙で連絡していることから,原告及び亡Aは,別居開始後も直接会ったり,手紙及び電話で連絡をしていた。 (5) 小括以上からすれば,原告及び亡Aが夫婦としての共同生活の状態にないと 手紙で連絡していることから,原告及び亡Aは,別居開始後も直接会ったり,手紙及び電話で連絡をしていた。 (5) 小括以上からすれば,原告及び亡Aが夫婦としての共同生活の状態にないとはいえず,ひいては,原告及び亡Aの婚姻関係が実体を全く失ったものとなっているともいえないから,法律上の配偶者である原告が,亡Aの遺族厚生年金を受給できる法59条1項所定の「配偶者」である。 - 10 -なお,原告と亡Aとの間に,①離婚の合意も②悪意の遺棄もなかったことは既述のとおりであり,この点からも原告及び亡Aの間の婚姻関係が実体を全く失ったものとなっていないといえる。 (6) 参加人が亡Aと内縁関係にあったとはいえないことア参加人が亡Aの住居地である大阪府 ○ 市に住民票を移転したのは平成16年3月であること,Dが手紙の中で,亡A及びDが参加人と同居していることをうかがわせるようになった時期は同年11月以降であったことから,参加人が亡Aとの同居を開始したのは平成16年頃であり,そうすると,参加人及び亡Aの同居期間はわずか4年間にすぎない。 イ参加人は,すでに子及び孫を有する女性であり,亡Aと同居するに至った意思,目的が不明である。亡Aも参加人と婚姻関係を結ぶという意思,目的を有していることを明らかにしておらず,亡Aと参加人の間には単なる同居の事実しかない。 ウ参加人は,亡Aの死から8か月後には,Dとの同居を解消して,亡Aの住居地から転出し,さらにその1年後には別の男性と ○ で同居生活を開始している。参加人はDとの同居を解消したのはDの意向である旨主張するが,一人息子を失い,「誰も自分をみてくれる人がいない」等と原告の子らに訴えているDが積極的に参加人との同居を解消したとは考え難い。 いる。参加人はDとの同居を解消したのはDの意向である旨主張するが,一人息子を失い,「誰も自分をみてくれる人がいない」等と原告の子らに訴えているDが積極的に参加人との同居を解消したとは考え難い。 エ Dの証言として提出された乙8号証には,参加人が亡Aと平成12年3月から同居し,嫁又は内妻として共同生活を送っている旨の記載があるが,乙8号証は,亡Aの入院中である平成20年3月19日に作成されており,参加人に遺族厚生年金を受けるための作為を疑わせるものである。 (被告の主張)(1) 重婚的内縁関係が存在する場合の法59条1項所定の「配偶者」の認定について法59条1項に規定された「配偶者」には被保険者等と事実上婚姻関係と - 11 -同様の事情にある者も含まれるところ(法3条2項),重婚的内縁関係が存在する場合の遺族厚生年金を受給できる「配偶者」の認定については,法律上の婚姻関係が形骸化して事実上の離婚状態に至り,他方内縁関係にある者との関係が事実上の婚姻関係にある場合には,事実上の婚姻関係にある者を「配偶者」として扱うべきである。また,法律婚関係が事実上の離婚状態にあるか否かの判断は,重婚的内縁関係にある者の生活実態と相対的に判断するのではなく,法律上の配偶者の生活実態に即して判断すべきであるから,まず,法律上の配偶者が被保険者等と事実上の離婚関係にあるか否かを判断するのが相当である。 そして,被保険者等の収入によって生計を維持していた遺族の生活保障を目的とする遺族厚生年金の制度趣旨に鑑みれば,法律上の配偶者と被保険者等との間で,経済的な依存関係が反復して存在しない場合には,他の要素を考慮するまでもなく,法律上の配偶者が,被保険者等と夫婦としての共同生活の状態にないといい得るため,事実上の離婚状態 者と被保険者等との間で,経済的な依存関係が反復して存在しない場合には,他の要素を考慮するまでもなく,法律上の配偶者が,被保険者等と夫婦としての共同生活の状態にないといい得るため,事実上の離婚状態にあることが強く推認される。他方,経済的な依存関係が反復して存在するとしても,その趣旨及び金額,依存の程度等は様々であるから,別居後における経済的依存の状況のみならず,別居の経緯,別居期間,婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無,別居後における婚姻当事者間の音信・訪問の状況,重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮して判断すべきである。 (2) 本件の具体的事情ア原告が亡Aからの経済的給付に依存していたとはいえないこと(ア) 平成13年3月までの経済的給付亡Aが平成8年から平成13年3月までの間,定期的に月21万円及び賞与から年間20万円程度の金額を原告に送金していたのは,同月まで短期大学に進学していた長女Bの生活費及び学費並びに中学校に通学していた次女Cの生活費を援助するという,子らの養育費の趣旨であっ - 12 -た。これは,亡Aが同年2月頃に原告に宛てた手紙の内容や,亡Aが同年頃に平成12年3月までの原告との関係をまとめたメモ(丙12),亡Aが本件調停に当たり作成した「特に主張したいポイント」と題するメモ(丙8)の記載内容,長女Bが短期大学を卒業した平成13年3月より後の原告に対する送金額が月額10万円に減額していることに如実に表れている。 (イ) 平成13年4月以降の経済的給付上記(ア)の各メモ(丙8,12)の記載内容からすると,平成13年4月以降の亡Aから原告に対する経済的給付の趣旨は,少なくとも13万円については次女Cの養育費であったといえる。 上記(ア)の各メモ(丙8,12)の記載内容からすると,平成13年4月以降の亡Aから原告に対する経済的給付の趣旨は,少なくとも13万円については次女Cの養育費であったといえる。 (ウ) 当時の原告及び亡Aの婚姻関係の状態上記(ア)の各メモ(丙8,12)には,原告が亡Aと別居した後,亡Aは,子らと面会交流していたものの,原告のマンションの入り口すら入れない状態であった旨,亡Aが原告と夫婦であった印象もほぼ失っている旨の記載があり,本件調停時には亡Aに原告との別居を解消して婚姻の実体を復活させる意思はなかったことがうかがわれる。 (エ) まとめ以上の事実からすれば,亡Aが原告に対して別居後に送金していたことは,名目的には婚姻費用の支払であったものの,実質的には専ら養育費の支払のためのものであり,それに付加して,離婚給付又は離婚慰謝料に類する支払であったといえる。また,本件調停後の経済的給付については上記(イ)のとおり,少なくとも月額13万円は次女Cの養育費であったことから,原告の生活を支えることを目的とした送金とは到底いえない。 したがって,仮に原告が亡Aから受けた経済的給付によって,養育費の程度を超えて,一定程度の生計を維持していたとしても,それは原告 - 13 -が養育費を自己のために費消していたにすぎず,かかる場合についてまで,原告が亡Aからの経済的給付に依存していたとはいえない。 イ原告と亡Aとは約12年6か月もの長期間にわたって別居していたこと原告と亡Aは,原告が平成8年3月に子らを連れて突然 β 市の自宅を出たため別居状態となり,亡Aが死亡するまでの約12年6か月間,別居が解消されることはなかった。 原告は,亡Aと事前に相談し合意のもと と亡Aは,原告が平成8年3月に子らを連れて突然 β 市の自宅を出たため別居状態となり,亡Aが死亡するまでの約12年6か月間,別居が解消されることはなかった。 原告は,亡Aと事前に相談し合意のもとに別居を開始した旨主張するが,原告が,平成8年3月18日付けで亡A宛てに書いた手紙の内容に照らすと,原告が別居することについて亡Aに事前に何も告げていなかったことがうかがわれる。さらに,原告が別居開始から9か月間,亡Aに対して転居先を伝えていないことや,亡Aが,平成9年1月頃に原告に対し,別居を解消し再び同居することを提案したところ原告がこれを断ったことからも原告主張のような合意がなかったことは明らかである。 ウ婚姻関係を前提とする意思疎通ないし交流が継続していたとはいえないこと原告が提出した亡Aとの交流を示す写真はいずれも平成11年頃までの間に撮影されたものであること,原告は平成12年8月17日付けの手紙等で亡Aから好きな女性ができた旨を告げられた後は亡Aと原告らで出かけることはなくなった旨述べていること,原告本人が亡Aと最後に会ったのは原告の父親であるFの葬儀が行われた平成14年▲月▲日であることからすれば,原告が平成12年8月以降,亡Aと十分な意思疎通を図っていたとは考え難い。また,亡Aが平成16年2月頃に作成した原告宛ての手紙には,亡Aが本件調停後に原告らとの思い出の品を処分したことや子らとも一生会えないと自分に言い聞かせている旨が記載されていること,亡Aが平成17年▲月に入籍した長女Bの結婚式に参加させてもらえなかったこと等からすれば,平成16年以降は,亡Aは子らとも十分な意思 - 14 -疎通を図っていなかったことがうかがわれる。 さらに,原告は,亡Aが肝腫瘍のため入院している旨の連絡を受 ったこと等からすれば,平成16年以降は,亡Aは子らとも十分な意思 - 14 -疎通を図っていなかったことがうかがわれる。 さらに,原告は,亡Aが肝腫瘍のため入院している旨の連絡を受けたにもかかわらず,一度も見舞いをすることもなく,病に倒れた亡Aの給料の差押えをする旨の申入書を送付したことからも,原告及び亡Aの間に,婚姻関係を前提とする意思疎通ないし交流が継続してきたとはいえない。 エ婚姻関係の維持・修復に向けられた努力がなされていないこと別居開始後,原告と亡Aの間で別居解消に向けた真摯な話し合いが行われた形跡は認められない。むしろ,亡Aは本件調停時には原告との別居を解消して婚姻共同体としての実体を復活させる意思はなかった。 オ参加人と亡Aとの内縁関係が固定していたこと参加人は,平成12年4月1日から亡Aとの同居を開始し,亡Aが入院してから平成20年▲月▲日に死亡するまでの間,病院での看病に従事していた。また,参加人は,亡Aの葬儀において「G」と名乗って喪主を務め,葬儀費用の領収書の名宛人となっており,同葬儀を取り仕切った上,亡Aの退職金の支払も受けていることなどからしても,亡Aと事実上の婚姻関係にあったことは明らかであり,その関係は固定していたといえる。 カ小括以上の事実に照らせば,原告と亡Aとの婚姻関係は,亡Aの死亡時において,その実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない状態,すなわち事実上の離婚状態にあったものというべきであり,原告は法59条1項が定める「配偶者」には該当しない。 他方,参加人と亡Aは事実上の婚姻関係と同様の状態にあり,かつ,参加人は亡Aによって生計を維持していたのであるから,法59条1項にいう遺 であり,原告は法59条1項が定める「配偶者」には該当しない。 他方,参加人と亡Aは事実上の婚姻関係と同様の状態にあり,かつ,参加人は亡Aによって生計を維持していたのであるから,法59条1項にいう遺族厚生年金を受給できる「配偶者」に該当する。 (参加人の主張)(1) 法59条1項が定める「配偶者」の意義について - 15 -重婚的内縁関係が存在する場合に遺族厚生年金を受給できる「配偶者」の認定については,法律上の婚姻関係が形骸化し事実上の離婚状態に至り,他方内縁関係にある者との関係が事実上の婚姻関係にある場合には,事実上の婚姻関係にある者を「配偶者」として扱うべきである。 そして,事実上の離婚状態の判断は,諸要素を総合考慮して行うべきであって,原告がその判断基準の根拠として示す13号通知が示す考え方は最終的な公権的解釈となるべきものではない。したがって,経済的依存関係がある限り,事実上の離婚状態にあるとの判断がなされ得ないという判断基準はとるべきでない。 (2) 原告と亡Aとの婚姻関係ア別居後の生活について原告は,平成8年3月に突如,亡Aと別居し,別居開始から半年ないし1年程度,住んでいる場所を亡Aに対して告げていなかった。このような原告の行為は,亡Aに対する悪意の遺棄に当たる。 そして,原告と亡Aは,別居後,どのように婚姻関係を回復するかについて話し合いを行った形跡はなく,別居の期間は約12年6か月と長期にわたっている。この間,離婚届が提出されていなかったとしても,夫婦関係は破綻し,回復もあり得ない状態であったというべきである。亡Aと子らとの関係についても,亡Aは原告の許可がなければ子らと遊園地に遊びに行くことすらできない状況であったこと等に照らすと,原告ら及び亡Aの間の関 回復もあり得ない状態であったというべきである。亡Aと子らとの関係についても,亡Aは原告の許可がなければ子らと遊園地に遊びに行くことすらできない状況であったこと等に照らすと,原告ら及び亡Aの間の関係は,共同生活とはほど遠い関係であったというべきである。 原告は亡Aとは別居後も電話をするなどして連絡をとっていた旨主張するが,具体的な内容については明らかにできておらず,具体性に乏しい。 イ亡Aの離婚の意思亡Aは,平成12年8月頃,原告に対して,離婚を求める内容の手紙を書き,平成13年4月頃にも,離婚の意思を示した手紙を書いている。ま - 16 -た,亡Aは,本件調停において,原告と家族関係を継続することが困難であるとの内容を記載した書面を書いたり,肝腫瘍によって入院した後も,原告に対して離婚を求める手紙を書いている。このように,亡Aは離婚を望んでいたものの,原告がこれを承諾しなかったために離婚に至らなかったものであり,原告及び亡Aの間の婚姻関係は完全に破綻し,双方とも修復に向けた努力をせず,客観的にも修復の余地がないことは明らかである。 ウ経済的依存関係について亡Aが原告に対して経済的給付をしてきたことは確かであるが,これは原告との正式な離婚手続を目指す一心からなされた行為であり,夫婦としての関係から行ってきたものではない。 むしろ,亡Aが不治の病に倒れ,休職のため送金はできない旨を原告に対して伝えたにもかかわらず,原告は,看病や見舞いに訪れないばかりか,婚姻費用を確保するため,亡Aの給料を差し押さえたことからすれば,およそ夫婦の姿とはかけ離れたものである。 エ以上の事実からすれば,原告及び亡Aの間に社会通念上夫婦の共同生活と認められる関係を見出すことはできない。 (3) 参加人と亡Aの内縁関 ,およそ夫婦の姿とはかけ離れたものである。 エ以上の事実からすれば,原告及び亡Aの間に社会通念上夫婦の共同生活と認められる関係を見出すことはできない。 (3) 参加人と亡Aの内縁関係ア参加人と亡Aは,平成12年3月頃から同居を始め,それ以降,夫婦として過ごしてきた。 参加人と亡Aは,同年6月には新婚旅行に行き,平成14年2月中旬にはサイパンへ旅行に行き,Dも交えての旅行も複数回行っている。同年7月に行われたEの7回忌では,亡Aが親族に対し,参加人を内縁の妻として紹介した。 イ亡Aが入院した後,参加人は亡Aを看病していた。亡Aが亡くなると,参加人がH姓で,喪主として葬儀を執り行った。亡Aの入院費用や,クレジットカードの残利用代金を支払ったのも参加人である。 - 17 -ウ原告は,参加人の住民票の移動時期,帰化の際の本籍地や名字等について指摘するが,参加人が住民票を平成16年3月8日まで移していなかったのは,亡Aの離婚手続が済んでいなかったことによる躊躇や,参加人が働いていたことから後回しになっていたためであるし,本籍地を ○ 市としたのは,婚姻等によって戸籍の移動がある場合,外国人であったことや帰化手続をしたことが戸籍上わかりにくくなることを期待したからであり,帰化時の姓をIとしたのは,父や兄弟がI姓を名乗っていたからである。 エ以上より,参加人は亡Aの死亡当時,同人の内縁の配偶者であった。 第3 当裁判所の判断 1 判断枠組み(1) 法58条以下が定める遺族厚生年金は,被保険者等が死亡した場合等において,その遺族の生活を保障することを目的として支給される公的給付である。そうすると,遺族厚生年金の支給を受けるべき「遺族」に該当するか否かは,被保険者等の生活実態に即し,現実的な観点から判断 において,その遺族の生活を保障することを目的として支給される公的給付である。そうすると,遺族厚生年金の支給を受けるべき「遺族」に該当するか否かは,被保険者等の生活実態に即し,現実的な観点から判断すべきであって,法59条1項所定の「配偶者」とは,被保険者等との関係において,互いに協力して社会通念上夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者をいうものと解するのが相当である。したがって,戸籍上の配偶者を有する被保険者等が重ねて他の者と内縁関係にあるという,いわゆる重婚的内縁関係にある場合においては,我が国が婚姻について法律婚主義を採用していることなどに照らし,原則として,戸籍上の配偶者が「配偶者」に当たるというべきであるが,戸籍上の配偶者を有する場合であっても,その婚姻関係が実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないとき,すなわち,事実上の離婚状態にある場合には,もはや遺族厚生年金を受けるべき「配偶者」には該当せず,重婚的内縁関係にある者が「配偶者」に当たるというべきである。 そして,被保険者等とその戸籍上の配偶者とが上記のような事実上の離婚 - 18 -状態にあるか否かについては,重婚的内縁関係にある者の生活実態と相対的に判断するのではなく,戸籍上の配偶者の生活実態に即して判断すべきであり,具体的には,別居の経緯,別居期間,婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無,別居後における経済的依存の状況,別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状況,重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮すべきである。 (2) なお,13号通知は,重婚的内縁関係にある場合において,届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているか否かに関し,夫婦としての共同生活の状態にないといい得るためには,前記第 (2) なお,13号通知は,重婚的内縁関係にある場合において,届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているか否かに関し,夫婦としての共同生活の状態にないといい得るためには,前記第2の2(5)イ(ア)ないし(ウ)の全要件に該当することを必要不可欠とするが,上記(1)のとおり,事実上の離婚状態にあるか否かの判断は,婚姻関係が実体を失って形骸化し,その状態が固定化して近い将来解消される見込みがないかを被保険者等の生活実態に即して,様々な要素を総合的に考慮して判断すべきであることからすれば,前記第2の2(5)イ(ア)ないし(ウ)を重要性を有する考慮要素の一つとする限りでは合理性が認められるものの,それを超えてこれら3要素を絶対的要件とすることは妥当でない。そもそもかかる通知は行政機関内部において行政がよるべき一つの解釈を明らかにしたものにすぎず,法59条1項の「配偶者」に関する裁判所による法の解釈を何ら拘束するものではない。 また,原告は,事実上の離婚状態と認定するためには経済的依存関係が反復して存在しないことが必要不可欠であり,経済的依存関係さえあれば事実上の離婚状態にない旨主張し,他方,被告は,遺族厚生年金が被保険者等の収入によって生計を維持していた遺族の生活保障を制度趣旨としていることに鑑みれば,経済的依存関係が反復して存在しない場合には,他の諸要素を考慮するまでもなく,事実上の離婚状態にあることが強く推認される旨主張する。しかし,遺族が被保険者等の収入によって生計を維持していたか否かは,法59条1項所定の「被保険者等の死亡の当時,その者によって生計を - 19 -維持したもの」(生計維持要件)において考慮することが予定されていることをも勘案すると,事実上の離婚状態の認定において,他の諸要素を考慮する 等の死亡の当時,その者によって生計を - 19 -維持したもの」(生計維持要件)において考慮することが予定されていることをも勘案すると,事実上の離婚状態の認定において,他の諸要素を考慮するまでもなく,経済的依存関係の有無のみをその絶対的要件とすべきとまでいうことはできない。 経済的依存関係といっても,その内容や程度は多様であるといえることに加え,上記(1)で述べたとおり,事実上の離婚状態の判断は被保険者等との関係において社会通念上夫婦としての生活実体があったかという観点から行うべきものであることからすると,事実上の離婚状態の認定を経済的依存関係の有無のみで決することは妥当でない。したがって,経済的依存関係は,重要な要素ではあるものの,上記(1)で掲げた総合考慮要素の一つにすぎず,それを超えて絶対的要件とすべきではない。 2 認定事実以上を前提に本件を検討するに,前記前提事実のほか,争いのない事実及び各項掲記の証拠等によれば,以下の事実が認められる。 (1) 別居に至る経緯等ア原告と亡Aは,昭和54年▲月▲日に婚姻し,昭和55年▲月には長女B,平成元年▲月には次女Cが出生した。 イ原告と亡Aは,昭和61年頃,亡Aの両親と同居することを前提に,Eからの援助を受けて,β市の自宅を購入し,同自宅へ転居した。亡Aの両親も平成4年3月頃に同自宅へ転居し,原告ら及び亡Aとの同居を開始した。(甲30,丙12,原告本人)ウ原告と亡Aは,亡Aの両親との同居を開始したものの,原告とDとの折り合いが悪く,また,Dの希望もあったことから,亡Aは,平成5年頃,β市の自宅の2階を改装し,既存の1階のリビング,台所及び洗面所のほかに,2階にもリビング,台所及び洗面所を設置し,以降,原告らと亡Aは1階の玄関及び風呂を利用する たことから,亡Aは,平成5年頃,β市の自宅の2階を改装し,既存の1階のリビング,台所及び洗面所のほかに,2階にもリビング,台所及び洗面所を設置し,以降,原告らと亡Aは1階の玄関及び風呂を利用する以外は,主に2階で生活し,亡Aの両 - 20 -親は1階で生活をするようになった(甲30,丙12,原告本人)。 エ亡Aは,平成7年11月頃,金銭問題や原告とDとの関係悪化等を理由とする口論が原告との間で絶えなかったことから, β 市の自宅の1階で生活をすることにし,原告と亡Aは家庭内別居を開始した。この際,原告と亡Aは預金約350万円等を分けている。(乙3の1,丙5,8,12)オ原告は,平成8年3月18日頃の朝方に,子らを連れて β 市の自宅を突然出て行き,亡Aとの別居を開始した。その後亡Aが死亡する平成20年▲月▲日までの間別居が解消されることはなかった。原告は,別居を開始するにあたり,事前に亡Aに相談等することなく,また,転居先も告げていない。(丙2,7,12)(2) 別居開始後の原告と亡Aの関係についてア平成12年頃まで(ア) 亡Aは,原告らが β 市の自宅を出て行った後,平成8年12月までは,月に一回程度原告らに対して,原告らの体調を気遣う旨の手紙や,Eの見舞いに来てくれたことへの感謝を述べる手紙,出張先で原告らにお土産を買ってくることを約束する手紙等を送付していた。もっとも,少なくとも別居後約9か月間は,原告が亡Aに対して転居先を告げていなかったため,これらの手紙は亡Aが一旦原告の母のもとへ送付した後,同人から原告に渡されていた。(甲16,25,26,丙12,原告本人)(イ) 平成8年▲月にEが死亡したが,その通夜及び葬儀には原告は参列せず,子らのみが参列した(甲26の2, した後,同人から原告に渡されていた。(甲16,25,26,丙12,原告本人)(イ) 平成8年▲月にEが死亡したが,その通夜及び葬儀には原告は参列せず,子らのみが参列した(甲26の2,丙12,原告本人)。 (ウ) 亡Aは,平成9年1月頃,Eの入院に係る出費があったことからβ市の自宅を売り,マンションに引っ越したい旨Dより相談があったのを受けて,原告に対し,同じマンションで階違いの部屋を2部屋購入し,一つはDが,もう一つは亡Aと原告らで住むことにして原告との同居を - 21 -再開しようと提案したところ,原告はこれを断った(甲30,丙12,原告本人)。 (エ) 亡Aは, β 市の自宅を売却し,大阪府 ○ 市αのマンション(以下「αのマンション」という。)を購入し,Dとともに同マンションへ転居し,平成9年3月4日頃, β 市の自宅の売却代金から同マンションの購入代金等を差し引いた残額1650万円の中から500万円を原告へ送金した(甲30,乙2,丙3,12)。 (オ) 亡Aは,平成9年に入ってからは年に複数回,原告らに対し,原告らの体調を気遣ったり,αのマンションの住所等を伝えたり,原告らからのお土産や父の日のプレゼントへの感謝を述べる旨の手紙を送付したが,平成10年に入ってからは手紙を送ることも少なくなった。なお,これらの手紙は原告ら宛てで送付されている。(甲16,25,26,丙12,弁論の全趣旨)(カ) 原告と亡Aは,平成8年10月,平成10年7月及び平成11年7月には次女Cの運動会やピアノの発表会で顔を合わせ,また,平成8年10月及び平成11年には次女Cと3人でJへ出かけた(甲18)。 (キ) 亡Aは,原告に対して,平成8年から平成9年7月までの間は毎月約20万円ない アノの発表会で顔を合わせ,また,平成8年10月及び平成11年には次女Cと3人でJへ出かけた(甲18)。 (キ) 亡Aは,原告に対して,平成8年から平成9年7月までの間は毎月約20万円ないし24万円,その他,賞与から30万円を送金し,同年8月から平成13年3月頃までの間は,ほぼ毎月原則として21万円を送金し,その他,賞与から12万円を送金した(甲25,26,30,48,59,丙11,13,17)。 イ平成12年頃以降(ア) 亡Aは,平成12年2月頃以降,原告に対し,上記ア(ア),(オ)のような趣旨の手紙を原告に一切送っていない(弁論の全趣旨)。 (イ) 亡Aは,平成12年3月,原告に対し,交際を開始した女性(参加人と認められる。)と同月よりαのマンションにて同居することを電話 - 22 -で伝えた(丙12,38,42,参加人)。 (ウ) 亡Aは,平成12年8月,原告に対し,弁護士に相談した結果,離婚調停をすることを考えており,平成13年3月を目指して原告にも離婚を考えてほしいこと,亡AにはDを大切にしてくれる女性(参加人と認められる。)がいることを伝える手紙を送付した(甲16の12,25の15,30,乙4,丙4,原告本人)。 (エ) 亡Aは,平成13年2月にも原告に対して,今後のことについて話し合う時間を作ってほしいこと,本来であれば裁判や調停で原告との関係に決着をつけたいが生活にゆとりや時間がないことからそれができないこと,子らに対しては今後も成人するまでは面倒を見ていくつもりでいるが,原告に対しては許せない気持ちもあり,もうすることはないと思っていることを伝える手紙を送付した(甲16の13,25の16)。 (オ) 長女Bは,平成13年3月,通っていた短期大学を卒 いるが,原告に対しては許せない気持ちもあり,もうすることはないと思っていることを伝える手紙を送付した(甲16の13,25の16)。 (オ) 長女Bは,平成13年3月,通っていた短期大学を卒業した(甲16の14,25の17,乙2,丙9)。 (カ) 亡Aは,平成13年4月,原告からの連絡を待っていたが,何ら連絡がなく,原告には話し合う気持ちがないと判断し,以後は子らへの責任を全うしようと思っていること,そのため同年4月以降は次女Cの生活費8万円と次女Cの学費5万円の合計13万円を送金すること,もっとも平成9年3月に β 市の自宅の売却代金から原告に送金した500万円を平成13年4月以降送金予定の月13万円に充てることとし,実際に亡Aが送金をするのは平成16年6月から平成22年3月までの間とすることを伝える手紙を送付し,平成13年4月分の送金をしなかった(甲16の14,25の17,59,乙2,丙9,11)。 (キ) 原告は,平成13年5月,弁護士を通じて,亡Aに対し,婚姻費用として最低でも月20万円を今後も送金するよう求め,送金をしない場合には調停を申し立てるとともに,亡Aの給料の仮差押えの手続をする - 23 -ことになる旨通知した(丙10,11)。亡Aは,平成13年5月から原告への送金を再開し,平成14年2月までの間,毎月10万円を送金した(甲59,67)。 (ク) 上記(キ)の通知後,原告は亡Aを相手方として婚姻費用分担の調停を大阪家庭裁判所○支部に申し立てた(同支部平成13年(家イ)第○号婚姻費用分担調停事件。本件調停)。 (ケ) 亡Aが本件調停の申立てを受け,依頼していた弁護士に対して送ったメモや手紙には,「K氏は私の足を引っ張る要素であっても協力,扶助の義務を持つ配偶者とは思 分担調停事件。本件調停)。 (ケ) 亡Aが本件調停の申立てを受け,依頼していた弁護士に対して送ったメモや手紙には,「K氏は私の足を引っ張る要素であっても協力,扶助の義務を持つ配偶者とは思えません」,「離婚しないのならなんとしても送金したくないと言う今の気持ち」,「次女の養育費は出す。しかしK氏は当方の条件(気持ち)をけった。調停では世間並み最低条件で進めたい。」,「今の心境としては1円もはらいたくない気持ちです。 ただ,子供の事もあるので世間なみの養育費のみの支払いが希望です。」,「離婚は絶対しないと言うのであれば,500万円は分割でもよいから返してもらわないとこまる。」,「離婚に応じると言う事であれば,500万円はそのままさしあげようと思います。」,「離婚しないなら月額10万円。K氏が不服で審判でと言うのならそれで結構です。いかなる審判が下されようと,それ以上,支払う気持ちはありません。」,「離婚に合意してくれるのなら15万円/月額まで出します。」等の記載がある(乙3の1,丙7,8,11,13,14)。 (コ) 原告と亡Aとの間には,平成14年2月25日,本件調停において,亡Aが原告に対して,同年3月から当事者双方が同居又は婚姻解消する日の属する月までの間,別居期間中の婚姻費用として月額15万円を支払うとともに,過去の婚姻費用として40万円を支払う旨の調停が成立した(乙3の2,丙15の1)。 (サ) 亡Aは,上記(コ)に基づき,平成14年3月から平成20年1月の - 24 -間,原告に対して,毎月15万円を送金した(甲19,67,70,79,81,乙6)。 (シ) 原告の父Fは平成14年▲月に死亡したが,亡Aはその通夜及び葬儀に一般参列者として出席した。原告と亡Aが平成12年8月以降に顔 送金した(甲19,67,70,79,81,乙6)。 (シ) 原告の父Fは平成14年▲月に死亡したが,亡Aはその通夜及び葬儀に一般参列者として出席した。原告と亡Aが平成12年8月以降に顔を合わせたのはこのときだけである。(甲24,丙22,24,原告本人)(ス) 長女Bは,平成17年▲月▲日に婚姻し,同月に結婚式が行われたものの,亡Aは,長女Bの結婚式に招待されず,出席しなかった(甲16の16,25の19,乙1,参加人,原告本人)。 (セ) 亡Aは,平成19年12月3日,腹部の激痛により緊急入院し,精密検査を受けたところ,12cm大の肝腫瘍が発見され,以後,平成20年1月19日までは有給休暇を取得し,同月21日より休職をして,通院,入退院をしながら治療を受けるようになった(甲25の20,26の16,26の17,乙5,丙17,18,42)。 (ソ) 亡Aは,平成20年1月,原告に対して,平成19年12月に入院をしたこと,12cm大の肝腫瘍が発見されたこと,同月3日から平成20年1月19日まで有給休暇をとり,同月21日より勤務先を休職すること,休職以降は健康保険からの傷病手当金により生活費等を賄う予定であること,平成19年12月の時点で100万円程度の預金があるが,同月の治療だけで27万円の支出があり,今後の生活の目途が立っていないこと,これらの事情から,本件調停で定められた婚姻費用15万円の支払が以後はできないこと,病院への問合せや見舞い,葬儀への参列を断ること,あと1,2年の寿命と体感していること,経済的・精神的重責を取り除き治療に専念し,残りの時間を安楽に過ごしたいので離婚してほしいこと等を電話及び手紙で伝え,また,傷病名として肝細胞癌との記載がある「検査・処置に関する説明と同意書」や,肝右葉 ・精神的重責を取り除き治療に専念し,残りの時間を安楽に過ごしたいので離婚してほしいこと等を電話及び手紙で伝え,また,傷病名として肝細胞癌との記載がある「検査・処置に関する説明と同意書」や,肝右葉に - 25 -約12cm大の凹凸不整な腫瘤性病変を認める旨の記載がある「CT検査レポート」を送るなどした(甲25の20,26の16,26の17,乙5,丙17,18)。 (タ) 原告は,亡Aに対し,平成20年2月1日付けの手紙で,亡Aの上記(ソ)の要望には応えられないことを伝えるとともに,弁護士を通じて,同月7日付け内容証明郵便で,亡Aが婚姻費用を支払わないことに正当な理由はないこと,そのため支払を遅滞した場合には強制執行をせざるを得ないこと,離婚を望むのであれば条件を提示すべきこと,原告としては次女Cが大学を卒業するまでの4年間720万円の支払及び年金の分割が離婚の最低条件と考えていることを通知し,さらにその後,強制執行を申し立てた(乙5,丙19,20,42,参加人)。 (チ) 亡Aは,原告の上記(タ)の対応を受け,原告の提示する金額を支払えないため離婚を諦めた(甲26の17,乙5,丙21)。 (ツ) 亡Aは,参加人については平成12年3月よりαのマンションにおいて内縁の妻として亡A及びDと同居していること,原告とは平成7年11月より家庭内別居,平成8年3月より別居をしたこと,平成12年以降はFの葬儀に亡Aが一般参列者として参列した際に顔を合わせたのみであり,婚姻関係のある妻としての関係,連絡等は一切ないことが記載されている平成20年2月20日付けの遺言書を作成した(丙24,42,参加人)。 (テ) 亡Aは,平成19年分給与所得者の配偶者特別控除申告書及び平成20年分の給与所得者の扶養控除等(異 載されている平成20年2月20日付けの遺言書を作成した(丙24,42,参加人)。 (テ) 亡Aは,平成19年分給与所得者の配偶者特別控除申告書及び平成20年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書において,原告を配偶者として申告していた(甲22)。 (ト) 亡Aは,平成20年7月28日,L病院へ入院し,同年▲月▲日,肝細胞癌により死亡した(丙23,42)。 (ナ) 原告は,亡Aの見舞いに訪れることはなく,平成20年▲月▲日 - 26 -に行われた亡Aの葬儀にも参列せず,母M,次女Cと連名で御供え花を送った(甲23の1,原告本人)。 (3) 原告の収入について(甲34,43,47,48,53,58,63,66,69,75,78,83)原告は,亡Aと別居した後,パート社員として稼働を始めた。その収入状況は以下のとおりである。 ア平成8年月額平均約8万2000円(同年7月から12月のみ稼働。)イ平成9年月額平均約8万3000円ウ平成10年月額平均約13万円(なお,同年11月16日に送付を受けた原告の母からの援助金85万円を含む。)エ平成11年月額平均約6万6000円オ平成12年月額平均約12万1000円カ平成13年月額平均約19万8000円キ平成14年月額平均約15万円(同年1月から4月のみ稼働。)ク平成15年月額平均約9万5000円ケ平成16年月額平均約12万7000円コ平成17年月額平均約11万5000円サ平成18年月額平均約11万4000円シ平成19年月額平均約11万3000円ス平成20年月額平 0円コ平成17年月額平均約11万5000円サ平成18年月額平均約11万4000円シ平成19年月額平均約11万3000円ス平成20年月額平均約11万2000円(4) 亡Aと参加人との関係についてア亡Aと参加人は,平成8年頃,参加人の営むスナック店に亡Aが訪れたのをきっかけとして知り合い,互いの身の上を話すようになり,平成11年4月頃から交際するようになった。なお,当時,参加人は別の男性と婚姻していた。(丙12,42,参加人) - 27 -イ参加人は,平成12年▲月,上記アの男性と離婚した(丙42)。 ウ参加人は,平成12年3月ないし4月頃より亡A及びDとαのマンションで同居を開始し,以後,亡Aが死亡するまでの間,亡Aと共同生活を送っていた(乙8,丙12,22,38,42,参加人)。 エ参加人と亡Aは,平成12年6月には瀞峡へ,平成14年2月にはサイパンへ旅行をしたり,Dを含め3人でN寺等へ旅行をしたりした(丙22,33ないし36,42,参加人)。 オ参加人は,平成14年▲月に行われたEの7回忌に出席し,亡Aは,親族に対し,自身の内妻として参加人を紹介した(丙22,37,42,参加人)。 カ参加人は,平成16年3月8日,住民票を亡Aの住居地であるαのマンションに移した(甲11,乙7,丙42,参加人)。 キ亡Aが肝腫瘍に罹患していることが判明した後は,参加人が亡Aの看病を行い,亡Aが平成20年7月に入院した後は,参加人は自身の仕事を休み,一日中看病に当たっていた(丙22,42,参加人)。 ク亡Aが死亡した後は,参加人が亡Aの葬儀を喪主(参加人は喪主となるにあたり,「H」姓を名乗っており,会葬御礼状では,亡Aを「故夫 事を休み,一日中看病に当たっていた(丙22,42,参加人)。 ク亡Aが死亡した後は,参加人が亡Aの葬儀を喪主(参加人は喪主となるにあたり,「H」姓を名乗っており,会葬御礼状では,亡Aを「故夫」と記載している。)として執り行い,葬儀代を支出し,また,亡Aの入院費用,クレジットカードの残利用料金を支払った(乙9,丙22,26,27,30,31,40ないし42,参加人)。 ケ参加人は,平成21年5月18日,αのマンションから大阪府 ○ 市内へと住民票を移し,平成22年6月12日,○市内から○市内へと住民票を移した(甲11,12)。 3 事実認定の補足説明(1) 別居に至る経緯原告は,亡Aが平成7年頃から β 市の自宅の1階で寝るようになったの - 28 -は,原告及び亡Aの間の不和によるものではなく,Dを安心させるためであり,平成8年3月に原告らが β 市の自宅を出て行くことについても,原告は事前に亡Aに相談しており,亡Aもこれを了解し,両親とすぐには離れることはできないが,いずれは必ず原告らを迎えるようにする旨約束した旨主張し,これに沿う供述をする(甲30,原告本人)。 しかしながら,原告が平成8年3月18日付けで亡A宛てに書いた手紙には「何も言わずに家を出た方が良いと思いました。近所の方にも,誰にも話していません。」,「本当に16年9ヶ月有難うございました。子供達の事は忘れないでやって下さい。」と記載されていること(丙2の3),原告が少なくとも別居後約9か月間は亡Aに転居先を知らせなかったこと(前記認定事実(2)ア(ア)),別居開始後,亡Aが平成9年に原告に対して別居を解消し,再び同居することを提案したにもかかわらず,原告がこれを拒絶したこと(前記認定事実(2)ア(ウ)),その後,原告な 記認定事実(2)ア(ア)),別居開始後,亡Aが平成9年に原告に対して別居を解消し,再び同居することを提案したにもかかわらず,原告がこれを拒絶したこと(前記認定事実(2)ア(ウ)),その後,原告ないし亡Aから別居を解消し,同居を再開することについて話し合いがなされた形跡が一切ないこと(弁論の全趣旨)等からすれば,原告が事前に亡Aに別居をすることを相談し,将来的に再び同居することを約束していたとは認め難い。また,これらに加え,亡Aが本件調停に当たり作成したメモには,亡Aが平成8年3月8日午前4時ないし5時頃に, β 市の自宅の2階で物音がするので泥棒かと思い,2階に上がると,原告が家を出るための準備をしており,口論となったが,子の泣く声に,これ以上の口論はしてはいけないと考え,家を出るのをだまって見る形になった,転居先を聞こうとしたが,亡Aが訪ねてきたら困るとのことで教えてもらえなかった,青天の霹靂でどうしたらよいのかわからなかった旨の記載があること(丙12)からも,原告が亡Aに対して別居をすることを一切相談せず,行き先も告げずに,突然子らを連れて別居を開始したものとみるのが相当である。 そして,家庭内別居の経緯についても,亡Aが本件調停に当たり作成した - 29 -メモには,平成7年11月,亡Aが従前からの口論や子らの前で侮辱されたことが原因で原告を殴り,その後も亡Aの金銭問題や嫁姑問題が原因で口論が絶えなかったため家庭内別居を始め,その際に原告及び亡Aの間で預金等を分け生活を別にするようになったことが記載されているところ(丙12),かかる記載内容には何ら不自然な点もなく,また,亡Aの金銭問題や亡Aが原告に暴力をふるったこと等,亡Aにとって不利益な事実も記載されていることからすれば十分に信用できるものである。これに加 12),かかる記載内容には何ら不自然な点もなく,また,亡Aの金銭問題や亡Aが原告に暴力をふるったこと等,亡Aにとって不利益な事実も記載されていることからすれば十分に信用できるものである。これに加え,上記平成8年の別居の経緯からしても,それに近接する平成7年11月頃に開始された家庭内別居も,原告とDとの関係悪化等を原因とする原告と亡Aとの不和が原因であったということが強く推認され,家庭内別居の原因は原告と亡Aとの間の不和ではなく,Dを安心させるためであったとする原告の主張は採り得ない。 (2) 同居開始の時期原告は亡Aが参加人と同居を開始したのは平成16年頃からであると主張する。 しかしながら,亡Aが平成20年2月20日に作成した遺言書及び同年7月18日に作成した書面並びにDが同年3月19日に作成した「証言」と題する書面には,参加人が亡Aと同居を開始した時期は平成12年3月である旨記載されており(乙8,丙22,24),その他,亡Aが平成12年3月頃に,原告に対して,参加人と思われる女性と同月からαのマンションにて同居を開始する旨を電話で伝えていること(前記認定事実(2)イ(イ)),亡Aが同年8月にも,原告に対して,参加人と思われる女性がいることや,平成13年3月頃を目指して離婚を考えてほしい旨伝えていること(前記認定事実(2)イ(ウ)),参加人の平成12年の手帳には4月1日に亡Aが参加人の荷物を運ぶ等の引越作業をした旨を記したものと思われる記載があること(丙38)からすれば,参加人は,平成12年3月ないし4月頃から,亡A及び - 30 -Dとともにαのマンションで同居を開始したと認めるのが相当であり,これに沿う参加人の供述(丙42,参加人)には信用性が認められる。 なお,原告は,参加人が住民 ,亡A及び - 30 -Dとともにαのマンションで同居を開始したと認めるのが相当であり,これに沿う参加人の供述(丙42,参加人)には信用性が認められる。 なお,原告は,参加人が住民票を移したのは平成16年3月8日であること等の点を指摘するが,亡Aの離婚手続が済んでいなかったことによる躊躇や,参加人が働いていたことから後回しになっていたためである旨の参加人の説明に特段不自然な点はなく,原告の指摘する事実は,上記認定を左右するものではない。 4 以上の事実を前提に,原告と亡Aの婚姻関係が事実上の離婚状態にあったか否かを検討する。 (1) 別居の経緯及び別居期間原告と亡Aは,原告とDとの間の関係悪化等を原因とする原告と亡Aとの不和が原因で,平成7年11月頃より家庭内別居を開始し,平成8年3月18日頃には,原告が子らを連れて β 市の自宅を去り,その後亡Aが亡くなる平成20年▲月▲日までの約12年6か月の間,別居生活は一度も解消されることがなかった。そして,平成8年の別居を開始するにあたり,原告が主張するような亡Aとの事前の相談や将来的には同居を開始することを合意していたとの事情はなく,原告は亡Aに事前に相談することなく,突然転居先も告げずに別居を開始したものである。(前記認定事実(1)エ,オ)(2) 婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無ア亡Aは,平成9年1月頃,Dから β 市の自宅を売却してマンションに引っ越したいとの申し入れがあったことを契機に,原告に対して,マンションで階違いの部屋を2部屋購入し,一つはDが,もう一つは亡Aと原告らで住むことにして原告との同居を再開しようと提案しており,この提案は原告に拒絶されたためその実現はかなわなかったものの,亡Aは原告との同居を再開するための努力を行っ つはDが,もう一つは亡Aと原告らで住むことにして原告との同居を再開しようと提案しており,この提案は原告に拒絶されたためその実現はかなわなかったものの,亡Aは原告との同居を再開するための努力を行っていたものである(前記認定事実(2)ア(ウ))。その他,後述(4)のとおり,亡Aは,平成8年ないし平成9年頃 - 31 -は,原告らに対して月に1回程度手紙を送る等もしていたことから,亡Aが平成9年頃までは原告との婚姻関係を維持ないし修復するための行動をとっていたことが認められる。 しかしながら,亡Aが参加人との同居を開始した平成12年頃以降については,亡Aが原告との婚姻関係を維持ないし修復するための努力を行った様子は認められず,むしろ原告との離婚調停を起こすことにつき弁護士に相談をしたり,原告に対して,参加人と思われる女性と交際及び同居をしていることを伝えた上で,離婚をしてほしいことや,亡Aには原告を許せない気持ちがあり,原告に対してもうすることはないと思っている旨を伝える内容の手紙を複数回にわたり送っている(前記認定事実(2)イ(イ)ないし(エ))。また,本件調停に当たり亡Aが弁護士に対して送ったメモや手紙における「K氏は私の足を引っ張る要素であっても協力,扶助の義務を持つ配偶者とは思えません」,「離婚しないのならなんとしても送金したくないと言う気持ち」等の記載(前記認定事実(2)イ(ケ))も併せ考えると,平成12年以降の亡Aの意思としては,原告との離婚を強く望んでおり,原告との婚姻関係を維持ないし修復する意思を有していなかったと認めるのが相当である。 そして,亡Aが肝腫瘍に罹患していることが判明した後に,原告に対して,再び離婚を求めるとともに,原告が亡Aの病院へ問合せをしたり,見舞いに来ることを辞退し,亡Aの葬儀 認めるのが相当である。 そして,亡Aが肝腫瘍に罹患していることが判明した後に,原告に対して,再び離婚を求めるとともに,原告が亡Aの病院へ問合せをしたり,見舞いに来ることを辞退し,亡Aの葬儀に参列することを固辞していることからも(前記認定事実(2)イ(ソ)),亡Aは,平成12年以降の別居期間を通じ一貫して,原告との婚姻関係を維持ないし修復する意思を有していなかったことが明らかである。 なお,原告は,亡Aが原告との離婚に向けて具体的な法的手続を執らなかったことを指摘するが,亡Aが平成13年及び平成20年に原告ないし原告側の弁護士に宛てて送付した手紙には,経済的な余裕がないために亡 - 32 -Aは離婚の調停や訴訟等の法的手続を執ることを諦めた旨の記載があり(前記認定事実(2)イ(エ),(チ)),その他,亡Aが本件調停に際し作成したメモには,原告が別居開始以前に亡Aに対して1000万円を支払えば離婚すると言っていた旨の記載があること(丙8),平成20年2月27日の時点においても,原告は,次女が大学を卒業するまでの4年間720万円の支払及び年金分割を離婚の最低条件として提示していたこと(前記認定事実(2)イ(タ)),亡Aにこれらの金銭給付をできる資力があったことをうかがわせる事情がないこと(弁論の全趣旨)等からも,亡Aが原告の提示する離婚条件としての金銭給付を行うだけの資力がない等の経済的理由から,原告との離婚に向けた法的手続を執らなかったにとどまると認めるのが相当である。かかる事情からすれば,亡Aが離婚調停等の法的手続を執らなかったことは,亡Aが平成12年以降原告との婚姻関係を維持ないし修復する意思を有していなかったとの上記認定を左右するものではない。 なお,亡Aは,平成19年分給与所得者の配偶者特別控除申告書及び なかったことは,亡Aが平成12年以降原告との婚姻関係を維持ないし修復する意思を有していなかったとの上記認定を左右するものではない。 なお,亡Aは,平成19年分給与所得者の配偶者特別控除申告書及び平成20年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書において,原告を配偶者として申告していたものであるが(前記認定事実(2)イ(テ)),勤務先との関係や亡A自身にも一定の利益があること等からすれば,婚姻関係の実体が失われていても,このような申告をすること自体はあり得るところである。 イまた,原告についても,平成8年から平成20年までの全別居期間を通じ,亡Aとの婚姻関係を維持ないし修復するための努力を試みた形跡は何らうかがわれず,平成12年3月頃に亡Aから参加人と思われる女性と交際しており,同月から同居をする旨の連絡を受けた後も,亡Aと参加人との間の関係を解消させ,亡Aと原告との間の婚姻関係を修復させるための何らかの手段を講じる等の行為に一切出ていない(原告本人)。 - 33 -原告は,原告は一貫して亡Aの離婚の申出を拒否しており,亡Aとの共同生活を再開する意思を有していた旨主張するとともに,これに沿う供述をする(甲30,原告本人)。しかしながら,原告が亡Aからの離婚の申し出を拒否していたという一事情をもってして直ちに原告に亡Aとの婚姻関係を維持ないし修復する意思があったとは認めることはできず,むしろ,原告が平成8年3月18日頃に亡Aに宛てて書いた手紙には「本当に16年9ヶ月有難うございました。子供達の事は忘れないでやって下さい。」との記載があること(丙2),原告は平成9年1月頃に亡Aから同居を再開することの提案を受けたがこれを拒絶していること(前記認定事実(2)ア(ウ)),その他後記(4)の亡Aと原告との交流状況等に照ら との記載があること(丙2),原告は平成9年1月頃に亡Aから同居を再開することの提案を受けたがこれを拒絶していること(前記認定事実(2)ア(ウ)),その他後記(4)の亡Aと原告との交流状況等に照らせば,原告がβ市の自宅を去った後,亡Aとの共同生活を再開する意思を有していたとは認め難い。 さらに,原告は,平成20年1月,亡Aから,平成19年12月に入院し,12cm大の肝腫瘍が発見されたことや,平成20年1月21日より勤務先を休職するため,今後の生活の目途が立っていないこと等の事情とともに,これらの事情から以後は本件調停で定められた婚姻費用15万円を支払えないことを伝えられたにもかかわらず,同年2月7日,弁護士を通じ,上記亡Aの事情は婚姻費用15万円を支払わないことの正当な理由にはならないこと,婚姻費用15万円を支払わない場合には強制執行をせざるを得ないことを通知し,その後,強制執行を申し立てている(前記認定事実(2)イ(ソ),(タ))。別居の夫婦間で,婚姻費用の分担を求める権利を有する者がその義務を負う者に対して婚姻費用分担義務の履行のため,強制執行の申立てをすることはしばしばあることであり,原告が亡Aの財産に対して強制執行を申し立てたことのみをもって,直ちに原告に婚姻関係の修復の意思がなかったとはいえないものの,上記のとおり,亡Aが仕事も続けられないほどの深刻な病状であり(亡Aは,あと1,2年の寿命 - 34 -と体感している旨の記載もしている。),治療費もかかるため今後の生活の目途も立たない状態である旨伝えていたという本件の事情に照らせば,そのような事情を亡Aから伝えられていたにもかかわらず,かかる状況にあることに何ら配慮することなく,亡Aが婚姻費用の支払を遅滞した場合には強制執行を執らざるを得ない旨通知するととも 事情に照らせば,そのような事情を亡Aから伝えられていたにもかかわらず,かかる状況にあることに何ら配慮することなく,亡Aが婚姻費用の支払を遅滞した場合には強制執行を執らざるを得ない旨通知するとともに実際に強制執行の申立てをした本件の原告の行為は,亡Aと将来的に婚姻関係を復活させたいと思っていたという原告の供述とは相容れないものと評価せざるを得ず,原告が亡Aとの婚姻関係を維持ないし修復する意思を有していたとは到底認められない。 (3) 別居後の経済的依存の状況ア(ア) 亡Aは,原告に対して,平成8年から平成9年7月までの間は,毎月約20万円ないし24万円,その他,賞与から30万円を,同年8月から平成13年3月頃までの間は,ほぼ毎月原則として21万円を,その他,賞与から12万円を送金し,同年5月から平成14年2月までは毎月10万円を,同年3月から平成20年1月までは,本件調停で定められた15万円を毎月送金しており,亡Aと原告との間には継続的な経済的給付があったものである(前記認定事実(2)ア(キ),イ(キ),(サ))。 (イ) そこで,上記(ア)の送金の趣旨についてみてみるに,平成13年2月頃までの上記送金については,その金額や後記(4)のとおり原告と亡Aとの間で平成8年ないし平成9年頃までは少なからず手紙等の交流があったこと,亡Aから原告に対して離婚を申し出ることもなく,むしろ平成9年1月頃には原告に対して同居を再開することを提案したこと等に鑑みると,亡Aが原告に対して送金を継続して行っていた趣旨は,少なくともその当初においては,原告との間の婚姻関係に基づいて原告や子らの生活を支えていこうとする意図に出たものと認めるのが相当であり,その後平成10年頃以降においても子らの養育費に限定しようとの意思 - 35 -までは 原告との間の婚姻関係に基づいて原告や子らの生活を支えていこうとする意図に出たものと認めるのが相当であり,その後平成10年頃以降においても子らの養育費に限定しようとの意思 - 35 -までは認められず,専ら養育費の趣旨であったとする被告の主張は失当である。 (ウ) もっとも,平成13年5月から平成20年1月までの送金については,上記(2)アのとおり,平成12年頃以降,亡Aは原告との離婚を強く望んでおり,原告や自身の弁護士に対して,「原告に対しては許せない気持ちもあり,もうすることはないと思っている」,「K氏は私の足を引っ張る要素であっても協力,扶助の義務を持つ配偶者とは思えません」等と原告に対する気持ちを述べており,亡Aには原告との婚姻関係を維持ないし修復する意思がなかったこと,また,平成13年2月以降本件調停までの間に亡Aが原告に対して送った手紙や本件調停に当たり亡Aが弁護士に対して送ったメモ等には,原告に対してはもうすることはないと思っているが,子らに対しては成人するまでは責任を全うするつもりでいることや,次女Cの養育費として13万円(生活費8万円及び学費5万円の合計)は出すつもりであること,養育費のみの支払を希望すること等の記載があること(前記認定事実(2)イ(エ),(カ),(ケ)),その他後記(4)のとおり亡Aと原告との間で平成12年以降はそれ以前のような交流が全くなされていなかったことに鑑みると,亡Aが送金を継続していたのは,原告との婚姻関係の継続を経済面から支えるためというよりは,むしろ次女Cに対する父親としての責任を果たすことに主眼があったと認めるのが相当である。 また,原告の平成13年以降の収入状況(前記認定事実(3))に加え,次女Cが平成14年4月からは私立中学校へ,平成17年4月からは私立 を果たすことに主眼があったと認めるのが相当である。 また,原告の平成13年以降の収入状況(前記認定事実(3))に加え,次女Cが平成14年4月からは私立中学校へ,平成17年4月からは私立高校へ,平成20年4月からは私立大学へそれぞれ進学していたことやその学費等(甲59,63,67,71,82,84,85)に鑑みると,原告自身も亡Aからの送金を次女Cの養育費に相当程度用いていたものと認められる。もっとも,とりわけ平成14年2月の本件調停成 - 36 -立後は,原告に対する婚姻費用として定められた,それ以前の月額10万円よりも多い月額15万円が亡Aから原告に送金されていることに照らせば,上記のような亡Aの主観的な意図は別として,同送金額は次女Cの養育費にとどまらず,原告の生活費としての性格をも有していたものと認めるのが相当である。 イなお,亡Aは平成7年11月頃に家庭内別居をした際に預金約350万円等を原告と分け,また,平成9年1月頃には β 市の自宅の売却代金から500万円を原告に対して送金しているところ(前記認定事実(1)エ,(2)ア(エ)),この当時,亡Aは原告との婚姻関係を維持ないし修復する意思を有していたことは上記(2)アのとおりであるから,これらの送金等を財産分与等の事実上の離婚給付とみることはできない。 (4) 音信及び訪問の状況ア平成12年頃までについて亡Aは,別居開始後も平成8年ないし平成9年頃は,原告らに対して,原告らの体調を気遣う手紙やEの見舞いに来てくれたことを感謝する手紙等を送ったり,出張先のお土産を原告らに購入したりしており,原告らも亡Aに対してお土産や父の日のプレゼントを渡す等していた(前記認定事実(2)ア(ア),(オ))。また,亡A及び原告は,平成8年から平成11年までの間 先のお土産を原告らに購入したりしており,原告らも亡Aに対してお土産や父の日のプレゼントを渡す等していた(前記認定事実(2)ア(ア),(オ))。また,亡A及び原告は,平成8年から平成11年までの間は,次女Cを交えて遊園地へ行ったり,次女Cの運動会やピアノの発表会で顔を合わせていたことから,亡A及び原告の間には一定程度の交流があったことが認められる(前記認定事実(2)ア(カ))。 もっとも,原告は,別居を開始するにあたり,亡Aに対して転居先を告げておらず,亡Aは別居開始から少なくとも約9か月間は原告らの転居先を知らなかったため,平成8年12月頃までに原告宛てに送付された手紙は,いずれも亡Aが一旦原告の母のもとへ送付し,同人から原告に渡されていたこと(前記認定事実(1)オ,(2)ア(ア)),原告から亡Aに対して, - 37 -亡Aの体調を気遣う等亡Aとの婚姻関係に実体が存したことをうかがわせるような内容の手紙を送った事実が認められないこと(弁論の全趣旨),亡Aが本件調停に当たり作成したメモには,亡Aが原告のマンションへ子らを迎えに行く際にも,マンション近くの駐車場で待つよう原告から依頼され,亡Aはマンションの入り口すらくぐっていなかった旨記載されていること(丙8,12)からすると,この当時の原告と亡Aとの間の訪問は皆無といえ,その交流も相当程度希薄なものであったと認められる。 なお,原告は,亡Aをマンションに何度か招き入れ,お茶を飲んだり,話をするなどしていた旨を供述するが(原告本人),上記亡A作成のメモの記載内容に加え,上記のとおり,亡Aは少なくとも約9か月間原告の転居先を知らされていなかったこと等の当時の原告と亡Aの状況等に照らせば,上記原告の供述は採用できない。 イ平成12年頃以降について亡Aが参加人と同居を Aは少なくとも約9か月間原告の転居先を知らされていなかったこと等の当時の原告と亡Aの状況等に照らせば,上記原告の供述は採用できない。 イ平成12年頃以降について亡Aが参加人と同居を開始した平成12年3月頃以降については,離婚の申し入れや亡Aが肝腫瘍に罹患した後のやりとりがあった以外に,亡Aが原告に対して上記アのような手紙を送付した事実は認められず,その他,亡Aと原告との間の交流をうかがわせる事情は,平成14年▲月頃に行われたFの葬儀に亡Aが参列した事実以外に認められない。なお,亡Aは,Fの葬儀にも親族としてではなく一般参列者として参列しているにすぎない。(前記認定事実(2)イ(ア),(シ))これらに加え,亡Aは,平成17年 ▲ 月に行われた長女の結婚式にも招待されず,出席していないこと(前記認定事実(2)イ(ス)),亡Aと子らが平成12年以降は従前のように会っていないこと(甲26の15,28の3,28の8),亡Aが肝腫瘍に罹患した際,亡Aは原告に対し,見舞いや看病,葬儀への参列は辞退するよう伝え,原告らは亡Aの見舞いに一度も訪れず,亡Aの葬儀にも参列していないこと(前記認定事実(2)イ(ソ), - 38 -(ナ))等からすれば,平成12年頃以降亡Aが死亡する平成20年▲月までの間,亡Aと原告の交流はほぼ皆無であったと評価するほかない。 なお,原告は,亡Aとの電話での連絡は3日に1度は行っており,それは平成20年頃まで続いていた旨供述する(原告本人)が,これを基礎付ける客観的証拠は一切なく,また,亡Aは後記(5)のとおり,平成12年以降参加人と同居を開始し安定した内縁関係を長期にわたって築いていたことや,上記(2)のとおり,平成12年以降は原告に対して離婚を申し込む等,原告との婚姻関係を維持ないし (5)のとおり,平成12年以降参加人と同居を開始し安定した内縁関係を長期にわたって築いていたことや,上記(2)のとおり,平成12年以降は原告に対して離婚を申し込む等,原告との婚姻関係を維持ないし修復する意思を有していなかったことからすると,かかる状況において,原告と亡Aが継続して頻繁に電話で連絡をとっていたとは考え難く,原告の供述は信用できない。 (5) 重婚的内縁関係の固定性参加人と亡Aは,平成11年4月頃より交際を開始し,平成12年3月頃から亡Aが亡くなった平成20年までの約8年間同居し,その間一度も別居することがなかったものである(前記認定事実(4)ア,ウ)。そして,参加人は,平成14年▲月に行われたEの7回忌にも出席し,亡Aの親族らに亡Aの内妻として亡Aから紹介されている(前記認定事実(4)オ)。また,亡Aが肝腫瘍に罹患した後は,仕事を休んで亡Aの看病を行い,亡Aが死亡した際には,亡Aの母親であるDがいるにもかかわらず,参加人が「G」として亡Aの葬儀の喪主を務め,葬儀代を支出し,その他,亡Aの入院費用やクレジットカードの残利用代金も支払っている(前記認定事実(4)キ,ク)。 以上の事実を総合すると,同居期間が8年間と比較的長く,亡Aは参加人を自身の配偶者のように遇し,亡Aだけでなく,Dをはじめとする親族等まわりの者からも参加人は亡Aの配偶者として受け入れられていたことが明らかであり,また,参加人自身も亡Aの配偶者として亡Aを扶助していたのであるから,参加人と亡Aは事実上夫婦としての共同生活を送っていたと認めるのが相当である。そうすると,亡Aの死亡当時,参加人と亡Aとの関係は - 39 -相当程度安定かつ固定していたといえる。 なお,原告は,参加人が亡Aの死亡から8か月後にはαのマンションを出たことや ある。そうすると,亡Aの死亡当時,参加人と亡Aとの関係は - 39 -相当程度安定かつ固定していたといえる。 なお,原告は,参加人が亡Aの死亡から8か月後にはαのマンションを出たことや,さらにその1年後には別の男性と北九州市で同居生活を開始していることを指摘するが,亡A死亡後のかかる事情のみをもって,前記認定を覆すことはできない。 (6) 小括以上のとおり,原告と亡Aとの間の別居は,原告とDとの関係悪化等を原因とする原告と亡Aの不和が原因であり,原告が亡Aに事前に相談することなく別居が開始されたという経緯,その別居期間も約12年6月と比較的長期間であり,その間一度も別居を解消していないこと,原告は別居開始当時から亡A死亡までの間,一貫して婚姻関係を維持ないし修復する努力を何ら行っておらず,また,亡Aも平成12年頃以降からは一貫して同様の努力を行っておらず,むしろ,原告との離婚を望んでいたこと,同じく平成12年頃以降からは亡Aと原告との間において婚姻関係の実体を基礎付けるような音信,訪問等があったことを認めることはできず,他方において,平成12年以降から同居を開始した亡Aと参加人との内縁関係は,亡A死亡時には相当程度安定かつ固定化していたことなど,前記認定に係る諸事情を総合勘案すると,原告と亡Aとの間には一定程度の経済的依存関係があったことが認められ,かかる経済的依存関係の存在は重要な一考慮要素とはいえることをしんしゃくしても,亡Aが亡くなった当時,原告と亡Aとの間の婚姻関係は実体を失って形骸化し,その状態が固定して近い将来解消される見込みのない事実上の離婚状態にあったと認めるのが相当である。 5 以上のとおり,原告と亡Aとの間の婚姻関係は事実上の離婚状態にあったものであるから,原告は法59条1項所定の「配偶者 来解消される見込みのない事実上の離婚状態にあったと認めるのが相当である。 5 以上のとおり,原告と亡Aとの間の婚姻関係は事実上の離婚状態にあったものであるから,原告は法59条1項所定の「配偶者」にはあたらず,他方,前記4(5)のとおり,参加人と亡Aとの間の内縁関係は,亡Aの死亡当時,相当程度安定かつ固定化していたのであるから,参加人は,法3条2項所定の「婚姻 - 40 -の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者」,すなわち法59条1項所定の「配偶者」にあたると認めるのが相当である。そして,参加人の平成19年中の総所得金額は158万9600円であったこと(乙10)からすれば,参加人は亡Aによって生計を維持したものに該当し,その他,本件裁決及び本件処分を違法とすべき事情はうかがわれない。 6 結論よって,本件裁決及び本件処分は適法であり,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,66条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 裁判官尾河吉久 裁判官木村朱子

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