主文 1 控訴人23、24の各控訴をいずれも棄却する。 2 原判決中前項の控訴人2名を除く控訴人らに関する部分を次のとおり変更する。 ⑴ 別紙処分等一覧表の「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が「処分日」欄記 載の日付で「控訴人」欄記載の上記控訴人らに対してした各保護変更決定処分を取り消す。 ⑵ 上記控訴人らのそのほかの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、別紙訴訟費用目録のとおりとする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人らに関する部分を取り消す。 2 別紙処分等一覧表の「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が「処分日」欄記載の日付で「控訴人」欄記載の控訴人らに対してした各保護変更決定処分を取り消す。 3 被控訴人国は、別紙処分等一覧表の「控訴人」欄記載の控訴人それぞれに対し、「請求額」欄記載の金員及びこれに対する「起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 控訴人らは、福岡県内で生活保護法による保護を受けてきた。厚生労働大臣 は、同法による保護の基準のうち生活扶助に関する基準(以下「生活扶助基準」という。)を順次改定した。各処分行政庁は、これらの改定に従い、控訴人らの生活扶助費を減額する旨の保護変更決定を行った。 本件は、控訴人らが、上記の改定及び決定は違憲又は違法であるとして、被控訴人福岡県らに対し、決定処分の取消しを求め、被控訴人国に対し、国家賠 償法1条1項に基づく慰謝料及びこれに対する処分又は処分後の日から支払済 みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決(原告84名)が控訴人23、24ほか2名の訴えのう 後の日から支払済 みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決(原告84名)が控訴人23、24ほか2名の訴えのうち決定処分取消請求に係る部分をいずれも却下し、上記4名のそのほかの請求及び控訴人37名ほか43名の請求をいずれも棄却したところ、これを不服とする控訴人3 9名が控訴をした。 2 前提事実(争いのない事実)⑴ 控訴人らは、平成25年以前から、福岡県遠賀郡、福岡市、古賀市、福津市、北九州市又は飯塚市において、生活扶助等の生活保護法による保護を受けていた。 ⑵ 厚生労働大臣は、平成25年5月16日、平成26年3月31日及び平成27年3月31日、生活扶助基準につき、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に見た消費実態との較差を調整したもの(以下「ゆがみ調整」という。)、また、下落傾向にあった物価動向との較差を調整したもの(以下「デフレ調整」という。)へと段階的に改定する旨の告示を発し(以下「本件各改定」 という。)、その頃、適用を開始した。 ⑶ 別紙処分等一覧表の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁は、「処分日」欄記載の日付で、本件各改定に従い、「控訴人」欄記載の控訴人に対し、その生活扶助費を減額する旨の保護変更決定を行った(以下「本件各決定」という。)。 ⑷ 控訴人らが別紙処分等一覧表の「審査請求日」欄記載の日に福岡県知事に対してした本件各決定についての審査請求は、「裁決日」欄記載の日にいずれも棄却された。控訴人らは、「提訴日」欄記載の日に福岡地方裁判所に対し、本件各訴えを提起した。 3 争点 本件の争点は、決定処分取消請求について、①訴えの適法性の有無、②違法 性の有無であり 人らは、「提訴日」欄記載の日に福岡地方裁判所に対し、本件各訴えを提起した。 3 争点 本件の争点は、決定処分取消請求について、①訴えの適法性の有無、②違法 性の有無であり、国家賠償請求について、③国家賠償責任の有無等である。 4 争点①(訴えの適法性の有無)についての当事者の主張(被控訴人北九州市の主張)控訴人23、24は、審査請求期限後に審査請求をしたので、同人らの決定処分取消請求に係る訴えは不適法である。 (控訴人23、24の主張)控訴人23、24が審査請求をしたのは、期限のわずか2日後にすぎず、保護変更決定の効力発生日よりも前であった。福岡県知事はこれを受理して審理し、棄却裁決をした。したがって、上記訴えは瑕疵が治癒され、審査請求を前置したといえるから、適法である。 5 争点②(違法性の有無)についての当事者の主張⑴ 判断枠組み(控訴人らの主張)ア憲法25条や経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)2条、9条、11条、12条、社会権規約委員 会一般的意見19第42項は、社会保障制度の後退を原則として禁じている。そうでなくても、上記各規定や生活保護法1条、3条、8条の各規定の趣旨に加え、最低限度の生活は客観的な調査や資料に基づき一応決定し得ること、生活保護制度は各種社会保障制度と連動していることを考慮すれば、厚生労働大臣が生活扶助基準を引き下げる旨改定する場合の裁量権 の範囲は極めて狭い。 また、生活保護法8条、9条は、保護の考慮事項として生活的要素だけを挙げているので、財政事情、国民感情、選挙公約等の生活外的要素を考慮することは許されない。 イそうすると、厚生労働大 また、生活保護法8条、9条は、保護の考慮事項として生活的要素だけを挙げているので、財政事情、国民感情、選挙公約等の生活外的要素を考慮することは許されない。 イそうすると、厚生労働大臣は、生活扶助基準を引き下げる旨の改定に当 たり、生活外的要素を考慮し、又は統計や専門的知見等に基づかずに行う ことは、裁量権を逸脱又は濫用したものとして、憲法25条や生活保護法1条、3条、8条に反し、違法である(最高裁平成24年2月28日判決、同年4月2日判決)。 (被控訴人福岡県らの主張)ア憲法25条や社会権規約、同委員会一般的意見は、国民に具体的な権利 を付与しておらず、厚生労働大臣の裁量権を制約していないので、社会保障制度の後退を禁じていない。また、健康で文化的な最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であり、具体化には専門技術的な考察と政策的な判断を要すること、生活保護制度と各種社会保障制度の連動は義務付けられていないことを考慮すれば、厚生労働大臣が生活扶助基準を引き下げる 旨改定する場合の裁量権の範囲は広い。 また、生活保護法8条、9条は、保護の基準の内容について定めていないので、財政事情や国民感情、選挙公約等の生活外的要素を考慮することを禁じていない。 イこのため、厚生労働大臣は、生活扶助基準を引き下げる旨の改定をする に当たり、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなど憲法及び生活保護法の趣旨、目的に反し、裁量権を逸脱又は濫用しない限り適法である(最高裁昭和42年5月24日判決、同57年7月7日判決)。 ⑵ ゆがみ調整の違法性(控訴人らの主張) ゆがみ調整は、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に見た生活扶助基準と年収階級第1 2年5月24日判決、同57年7月7日判決)。 ⑵ ゆがみ調整の違法性(控訴人らの主張) ゆがみ調整は、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に見た生活扶助基準と年収階級第1十分位層(世帯を年収が低い順に並べて十等分し、1番目の層をいう。以下「第1十分位層」などという。)の消費実態との較差を調整する考えの下、平成21年全国消費実態調査の結果を基に、上記較差を測定した上で、激変緩和措置として調整比率を2分の1にしたものとされる。 しかし、以下のとおり、厚生労働大臣がゆがみ調整を採用した判断は、生 活外的要素を考慮した点、統計や専門的知見等にも基づかない点において、裁量権を逸脱又は濫用しており、違法である。 ア第1十分位層を比較の対象としたことは不合理である。 厚生大臣ないし厚生労働大臣は、昭和59年以来、一般国民の消費実態との較差を調整する水準均衡方式という考えの下、生活扶助基準を改定し てきた。実際、厚生労働省の専門家機関である生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)は、第1十分位層との比較に消極的であった。 また、低所得層に属する第1十分位層は、中所得層に属する第3五分位層と比べて各種支出、特に文化や教養、社会生活に関する支出が乏しく、大部分が相対的貧困層に属するので、第1十分位層と比較すること自体が 不適切である。生活保護を受けるべきであるのに受けていない漏給層が1000万人ほどいる現状でこれを許すと、生活扶助基準の引下げの際限がなくなるおそれがある。 イゆがみ調整の基礎数値は信頼することができない。 この数値は、平成21年全国消費実態調査の結果と整合しない。また、 抽出過程が開示されておらず検証不能であり、回帰分析の イゆがみ調整の基礎数値は信頼することができない。 この数値は、平成21年全国消費実態調査の結果と整合しない。また、 抽出過程が開示されておらず検証不能であり、回帰分析の精度も低い。 ウ調整比率を2分の1にした措置は財政削減目的のみでされたものであり、不合理である。 厚生労働省はこの措置を基準部会に諮らず、被控訴人らも平成28年に発覚するまで国民に秘匿していた。被控訴人らは、発覚後、この措置につ いて、被保護者への影響を抑えることを目的としており、総支給額を増減させるものでなかった旨弁解したが、実際は、被保護者の半数以上を占める単身高齢者等の増額幅を減らしただけで、約90億円の財政削減効果を得ている。 (被控訴人福岡県らの主張) 以下の事情によれば、厚生労働大臣がゆがみ調整を採用した判断は、憲法 や生活保護法の趣旨、目的に反していないし、生活外的要素を考慮せず、統計や専門的知見等にも基づくので、裁量権を逸脱又は濫用しておらず、適法である。 ア基準部会は、従前の専門家機関が被保護者間に給付の実質的な不公平が生じている旨の指摘をしていたことを踏まえ、平成25年1月、水準均衡 方式の中で被保護者間の実質的な公平を図るには、消費実態の近い第1十分位層と比較して調整するのが現実的であること、第1十分位層は、平均消費水準が中所得層の約6割に達するとともに、必需的な耐久消費財を概ね有しており、その消費実態を生活扶助基準と比較しても不適切でないこと等から、第1十分位層との比較を相当とする報告書(以下「平成25年 報告書」という。)を公表した。厚生労働省は、同報告書に基づき、生活扶助基準と第1十分位層の消費実態との較差を調整するゆがみ調整の方針を公表 位層との比較を相当とする報告書(以下「平成25年 報告書」という。)を公表した。厚生労働省は、同報告書に基づき、生活扶助基準と第1十分位層の消費実態との較差を調整するゆがみ調整の方針を公表したのである。 イゆがみ調整の基礎数値は、平成21年全国消費実態調査の結果とほぼ整合し、回帰分析の精度もクロスセクションデータ(複数の項目について調 査したデータ)を分析する中では低くないので、信頼することができる。 ウゆがみ調整は、初めての改定方法であり、目的に照らして唯一の改定方法でなく、サンプル世帯数も少なかったので、方法・精度に限界があったこと、実際、今後の検証を予定していたこと、子のいる被保護世帯の減額率が高く、貧困の世代間連鎖を防ぐ必要があったことから、調整比率を2 分の1にした措置が採られた。 調整比率を減額だけでなく増額の場合も2分の1にしたのは、被保護者間の公平を図る必要があったからである。また、財政削減効果が生じたのは、被保護世帯の構成割合が第1十分位層のサンプル世帯の構成割合と異なっていたからであり、上記措置を財政削減目的でしたものではない。 ⑶ デフレ調整の違法性 (控訴人らの主張)デフレ調整は、生活扶助基準と平成20年から平成23年にかけて下落傾向にあった物価動向との較差を調整する考えの下、総務省が公表した上記両年における消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)の数値を基に、平成22年を基準年とし、上記両年において被保護世帯が生活扶助で支出し 得る品目(以下「生活扶助相当品目」という。)の各物価指数に対し基準年におけるウエイト(各品目の家計に占める割合)を乗じることにより、被保護世帯が生活扶助で支出する品目の消費者物価指数(以下「 得る品目(以下「生活扶助相当品目」という。)の各物価指数に対し基準年におけるウエイト(各品目の家計に占める割合)を乗じることにより、被保護世帯が生活扶助で支出する品目の消費者物価指数(以下「生活扶助相当CPI」という。)を算出し、上記較差を-4.78%と測定した上で、-4. 8%を調整率にしたものとされる。 しかし、以下のとおり、厚生労働大臣がデフレ調整を採用した判断は、生活外的要素を考慮した点、統計や専門的知見等にも基づかない点において、裁量権を逸脱又は濫用しており、違法である。 ア物価動向との比較について、被保護世帯がテレビやパソコン等のデジタル家電製品を購入することは妨げられないが、物価が下落しても、生活に 余裕のない中、実際に購入することはほとんどない。このように、被保護世帯の需要は、その消費実態から測定することはできても、物価から直ちに測定することはできない。 厚生大臣ないし厚生労働大臣は、昭和59年以来、消費実態との較差を調整することを基調として、専門家機関の意見を聴きながら生活扶助基準 を改定しており、平成20年から平成23年にかけては改定しない旨判断した。ところが、平成25年、当時の厚生労働大臣は、物価動向との較差を調整するという考えを導入し、基準部会の意見を聴くことなく判断を翻し、改定に踏み切った。 厚生労働省の専門家機関は、物価動向との比較に消極的であった。また、 平成20年から平成23年にかけて消費水準の下落幅が物価動向の下落幅 より大きかった事実はない。 これらによれば、物価動向を比較の対象としたことは不合理である。 イ物価動向との調整期間について、厚生労働省が本件各改定の方針を公表した平成25年1月当時、生活扶助 事実はない。 これらによれば、物価動向を比較の対象としたことは不合理である。 イ物価動向との調整期間について、厚生労働省が本件各改定の方針を公表した平成25年1月当時、生活扶助基準の最終改定は平成16年であったこと、厚生労働省の専門家機関が前回改定の要否を検討した際に用いた統 計は平成16年全国消費実態調査であったこと、上記専門家機関がその検討をしたのは平成19年であったことを踏まえると、始期を平成16年又は平成19年とすべきであった。それにもかかわらず、始期を平成20年としたことは、同年に原油や穀物の価格が高騰して10大費目の物価が約1.4%上昇し、前後10年間で物価が最も高くなったこともあり、恣意 的で、不合理である。 また、平成25年1月に平成24年の総務省CPIが公表されたことから、終期を平成24年とすべきであった。それにもかかわらず、終期を平成23年としたことは、平成24年に食費や光熱水費が上昇したこともあり、恣意的で、不合理である。 ウ生活扶助相当品目の物価指数は、始期か終期に欠品がある場合、CPIの国際規準や総務省CPIの作成基準によれば、同類品目の平均値とすべきであった。それにもかかわらず、デフレ調整では、全品目の平均値としており、不合理である。 エ基準年は、CPIの国際規準や総務省CPIの作成基準によれば、平成 20年か平成17年及び平成22年とすべきであった。それにもかかわらず、基準年を平成22年のみとしたことは、これによって平成20年から平成22年にかけての計算方法が変わった上、その間にデジタル家電製品の地デジ特需による購入増加や性能向上による実質的な価格低下が生じたことで、CPIの下落率が基準年を平成20年や平成17年及び平成22 年にかけての計算方法が変わった上、その間にデジタル家電製品の地デジ特需による購入増加や性能向上による実質的な価格低下が生じたことで、CPIの下落率が基準年を平成20年や平成17年及び平成22 年とする場合の約2倍となったこともあり、恣意的で、不合理である。 オウエイトについて、被保護世帯は、教養や娯楽に関する支出が一般世帯の半分ほどであること、地デジ特需の際もチューナー(デジタル放送受信機)が無料配布され、デジタル家電製品を購入することはほとんどなかったことから、厚生労働省が被保護世帯に対して実施している社会保障生計調査に基づくウエイトなど、被保護世帯の消費実態に近いものを用いるべ きであった。それにもかかわらず、デフレ調整では、総務省が一般世帯に対して実施した家計調査に基づくウエイトを用いているところ、デジタル家電製品の特需や性能向上、非生活扶助相当品目の除外によってCPIの下落率が増幅されたこともあり、恣意的で、不合理である。 カ平成20年から平成23年にかけての物価下落率について、社会保障生 計調査に基づくウエイトを用いた生活扶助相当CPIから算出すると0. 64%にしかならないこと、家計調査に基づくウエイトを用いた総務省CPIから算出しても2.35%にしかならないこと、基準部会が平成29年に本件各改定を検証した結果は生活扶助基準を引き下げ過ぎたことを示唆する内容であったこと等に照らせば、デフレ調整の4.78%はあり得 ない数値であり、不合理である。 (被控訴人福岡県らの主張)以下の事情によれば、厚生労働大臣がデフレ調整を採用した判断は、憲法や生活保護法の趣旨、目的に反していないし、生活外的要素を考慮せず、統計や専門的知見等にも基づくので、裁量権を逸脱又は濫用してお 以下の事情によれば、厚生労働大臣がデフレ調整を採用した判断は、憲法や生活保護法の趣旨、目的に反していないし、生活外的要素を考慮せず、統計や専門的知見等にも基づくので、裁量権を逸脱又は濫用しておらず、適法 である。 ア物価動向との比較について、被保護世帯も、テレビやパソコン等のデジタル家電製品を購入している。被保護世帯の需要は、消費実態の構成要素である物価からも測定することができる。 厚生大臣ないし厚生労働大臣は、昭和59年以来、基本的には消費実態 との較差を調整する考えの下に生活扶助基準を改定してきたが、その場合 でも物価動向を考慮し、専門家機関から総務省CPIを指標とする旨の提案を受けることがあった。そのような中、厚生労働省は、平成20年にリーマンショックが生じ、一般国民の消費水準や物価等が下落する一方、生活扶助基準の検討自体を据え置いていたところ、平成16年から平成21年にかけて第1十分位層の夫婦子1人世帯における生活扶助相当品目の支 出額が約12%下落し、生活扶助基準額を約13%下回ることが判明するなど、平成20年から平成23年にかけて消費水準の下落幅が物価動向の下落幅より大きいことがうかがわれたことから、平成25年1月、物価動向を比較の対象とするデフレ調整の方針を公表した。 厚生大臣ないし厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定に当たり、専門家 の意見を聴くことを義務付けられていないし、関係職員を通じて専門的知見を得ているので、聴いたこともない。専門家機関は生活扶助基準を検証していただけであるし、基準部会はゆがみ調整に関する平成25年報告書を公表するにとどまった。 これらの事情によれば、物価動向を比較の対象としたことは合理的であ る。 イ していただけであるし、基準部会はゆがみ調整に関する平成25年報告書を公表するにとどまった。 これらの事情によれば、物価動向を比較の対象としたことは合理的であ る。 イ物価動向との調整期間について、厚生労働大臣は、平成17年から平成20年にかけては検討を経た上で生活扶助基準を据え置いたが、平成20年にはリーマンショックが生じ、一般国民の消費水準との不均衡が生じたことから、始期を同年とした。同年に物価が1%超上昇したが、平成19 年頃から生活扶助基準額が第1十分位層の生活扶助相当品目の支出額を1%超上回っていたことから、始期を平成20年としたことは合理的である。 また、厚生労働省が本件各改定の方針を公表した平成25年1月当時、最新の総務省CPIは平成23年のものであったことから、終期を同年とした。このため、終期を平成23年としたことは合理的である。 ウ生活扶助相当品目の物価指数は、始期の平成20年の方が32品目不足 したので、全品目の平均値とした。この処理方法は、CPIの国際規準に許容される旨の記載があること、上記物価指数を同類品目の平均値とすると、非生活扶助相当品目の物価指数も考慮することになること、上記32品目のウエイトは平成23年における全ウエイトの約3%にすぎないこと等に照らせば、合理的である。 エ基準年は、調整期間が3年と短い上、その間の消費実態をできるだけ反映させるため、総務省CPIが設けた基準年のうち調整期間に最も近接している平成22年のみとしただけである。これにより、CPIの下落率は、基準年を平成20年や平成17年及び平成22年とする場合よりも大きくなるが、このような計算方法はCPIの国際規準で中間年指数として紹介 されている上、 けである。これにより、CPIの下落率は、基準年を平成20年や平成17年及び平成22年とする場合よりも大きくなるが、このような計算方法はCPIの国際規準で中間年指数として紹介 されている上、調整期間中におけるデジタル家電製品の特需や性能向上を考慮すると恣意的な算定になるので、基準年を平成22年のみとしたことは合理的である。 オウエイトについて、一般世帯に対して実施された家計調査は、基幹統計の一つであり、品目が詳細で、調査対象世帯数も約9000世帯と多いな ど、精度が高く客観的で、他に信頼できるものもなかったので、ウエイトの算定に用いた。他方、社会保障生計調査は、一般統計の一つにすぎず、品目が概括的で、調査対象世帯数も約1100世帯と少ないなど、ウエイトの算定に適していなかった。上記家計調査に基づくウエイトを用いたことは、厚生大臣ないし厚生労働大臣が昭和59年から一般国民の消費実態 との較差を調整することを基調として生活扶助基準を改定してきたこと、被保護世帯もデジタル家電製品を購入していることに照らせば、合理的である。 カ平成20年から平成23年にかけての物価下落率について、デフレ調整の4.78%は、その間に消費や賃金等の各経済指標が悪化し、消費水準 の下落率より控え目な数値であったこと、基準部会は平成29年にデフレ 調整を妥当なものと評価したことを考慮すれば、合理的である。 ⑷ 本件各改定及び本件各決定の違法性(控訴人らの主張)厚生労働大臣が本件各改定をした判断は、生活外的要素を考慮し、統計や専門的知見等にも基づいていないので、裁量権を逸脱又は濫用したものとし て、憲法25条や生活保護法1条、3条、8条に反し、違法であり、各処分行政庁が本件各改定に従って本 外的要素を考慮し、統計や専門的知見等にも基づいていないので、裁量権を逸脱又は濫用したものとし て、憲法25条や生活保護法1条、3条、8条に反し、違法であり、各処分行政庁が本件各改定に従って本件各決定をした判断も違法である。 ア本件各改定は、平成23年には被保護者が200万人を超えたこと、平成24年には生活保護バッシングが生じ、自由民主党が総選挙で生活保護の給付水準を10%引き下げる旨の公約を掲げて政権政党に復帰したこと など、生活外的要素を考慮しており、不合理である。 イゆがみ調整も、給付水準を引き下げる絶対的な調整であって、消費実態と物価動向は相互に影響し合う関係にあるので、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行う本件各改定は、物価を二重に評価した不合理なものである。 ウ控訴人らは、本件各改定と本件各決定により、食費や光熱水費すら切り 詰めることを余儀なくされ、健康で文化的な最低限度の生活を営むことができなくなった。本件各改定は、激変緩和措置を含んでいたが、わずか1年8か月の間に実施されたことを考慮すれば、激変緩和といえず、不合理である。 (被控訴人福岡県らの主張) 厚生労働大臣が本件各改定をした判断は、憲法や生活保護法の趣旨、目的に反していないし、生活外的要素を考慮せず、統計や専門的知見等にも基づいているので、裁量権を逸脱又は濫用しないものとして、適法であるし、各処分行政庁が本件各改定に従って本件各決定をした判断も適法である。 ア本件各改定は、財政事情や国民感情、選挙公約といった生活外的要素を 考慮したものでなく、合理的である。 イゆがみ調整は、理論上は給付水準を引き下げない相対的な調整であったので、本件各改定は、物価を二重に評価するもの といった生活外的要素を 考慮したものでなく、合理的である。 イゆがみ調整は、理論上は給付水準を引き下げない相対的な調整であったので、本件各改定は、物価を二重に評価するものでなく、合理的である。 ウ本件各改定は、ゆがみ調整の反映比率を2分の1にするとともに、デフレ調整と合わせた減額率の上限を10%とし、これらの調整を3年間にわたって段階的に行う旨の激変緩和措置を含んでいることもあり、被保護者 らの健康で文化的な最低限度の生活を損なうものでなく、合理的である。 6 争点③(国家賠償責任の有無等)についての当事者の主張(控訴人らの主張)⑴ 本件各改定は、違法であり、本件各決定を通じて控訴人らに精神的な苦痛を被らせるものであったので、控訴人らに対する加害行為を構成する。厚生 労働大臣は、本件各改定が違法であることを認識し、又は認識し得たといえるので、上記加害行為について故意又は過失がある。 したがって、被控訴人国は、国家賠償責任を負う。 ⑵ 控訴人らは、本件各改定により、約10年にわたって健康で文化的な最低限度の生活を下回る生活を強いられ、甚大な精神的苦痛を被った。この精神 的損害は、本件各決定の取消しによって回復できるものではない。 控訴人らの精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は、本件各決定1人1回当たり10万円を下回らない。 (被控訴人国の主張)否認又は争う。 第3 当裁判所の判断の要旨当裁判所は、控訴人23、24の訴えのうち決定処分取消請求に係る部分は不適法であり、同人らを除く控訴人らの決定処分取消請求は理由があり、控訴人らのそのほかの請求は理由がないと判断する。その理由は以下のとおりである(以下、書証の枝番の表記を省 処分取消請求に係る部分は不適法であり、同人らを除く控訴人らの決定処分取消請求は理由があり、控訴人らのそのほかの請求は理由がないと判断する。その理由は以下のとおりである(以下、書証の枝番の表記を省略することがある。)。 第4 争点①(訴えの適法性の有無)についての判断 1 証拠(甲G個61、62、乙G個62)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 北九州市小倉南福祉事務所長は、平成25年7月22日、控訴人23、24(同一世帯)に対し、本件各決定のうち同年8月1日に適用を開始するものを行い、同人らは、同年7月25日、上記決定が行われたことを知った。 ⑵ 控訴人24は、平成25年9月26日、世帯を代表して福岡県知事に対し、審査請求書を窓口で提出する方法により、上記決定についての審査請求をし、同県知事はこれを受理して審理し、平成26年9月16日に審査請求を棄却する旨の裁決をした。 2 上記事実によれば、控訴人23、24の審査請求期限は平成25年9月24 日であり(平成26年法律第68号による改正前の行政不服審査法14条1項、行政機関の休日に関する法律2条)、上記審査請求は期限を徒過しており不適法であったから、決定処分取消請求に係る訴えは審査請求を前置しないものとして不適法である(最高裁昭和28年(オ)第251号同30年1月28日第二小法廷判決・民集9巻1号60頁参照)。審査請求の期限の徒過に関し、天災 その他審査請求をしなかったことについてのやむをえない理由は認められない(上記行政不服審査法14条1項ただし書)。 控訴人23、24は、福岡県知事が審査請求を受理して審理し、棄却裁決をしたことをもって、審査請求の瑕疵が治癒されたと主張する。しかし、上記審査請求は本来却下を 服審査法14条1項ただし書)。 控訴人23、24は、福岡県知事が審査請求を受理して審理し、棄却裁決をしたことをもって、審査請求の瑕疵が治癒されたと主張する。しかし、上記審査請求は本来却下を免れないものであったから、棄却裁決がされたとしてもそ の瑕疵は治癒されない(最高裁昭和46年(行ツ)第86号同48年6月21日第一小法廷判決・裁判集民事109号403頁参照、この判旨は恩給裁決の事案に限られるものとは解されない。)。この判断に反する上記主張は失当である。 3 したがって、控訴人23、24の訴えのうち決定処分取消請求に係る部分は、いずれも不適法である。 第5 争点②(違法性の有無)についての判断 1 後記証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 昭和25年に現行の生活保護法が施行された後、被控訴人国は、厚生省において各種統計を分析し、学識経験者等で構成された専門家機関の意見具申等を受けるなどしながら、次のとおりの生活扶助費を各地方自治体に給付させていた。(甲A19、87、88、97~100、161、324、乙A 7~10、34、128、旧社会福祉事業法第2章も参照)ア昭和35年まで、生活扶助基準についてマーケットバスケット方式(被保護世帯が最低限支出する品目の合計価額を最低限度の基準生活費とする考え)を採用し、180万人前後の被保護者に対し、一般消費支出の約40%に相当する生活扶助費 イ所得倍増計画が提唱された昭和36年から昭和39年まで、生活扶助基準についてエンゲル方式(被保護世帯が支出すべき食費について同等の低所得世帯におけるエンゲル係数(食費の家計に占める割合)で除した額を最低限度の基準生活費とする考え)を採用し、160万人前後の被保護者に対し、 ンゲル方式(被保護世帯が支出すべき食費について同等の低所得世帯におけるエンゲル係数(食費の家計に占める割合)で除した額を最低限度の基準生活費とする考え)を採用し、160万人前後の被保護者に対し、一般消費支出の約45%に相当する生活扶助費 ウ高度経済成長期を含む昭和40年から昭和58年まで、生活扶助基準について格差縮小方式(前年の生活扶助基準額について一般消費支出の増加率を上回る率を乗じた額を最低限度の基準生活費とする考え)を採用し、150万人前後の被保護者に対し、一般消費支出の約55%に相当する生活扶助費 エ 2度のオイルショックを経た昭和59年から、生活扶助基準について水準均衡方式(前年の生活扶助基準額について一般消費支出である民間最終消費支出の増減率に準じる率を乗じた額を最低限度の基準生活費とする考え)を採用し、120万人前後の被保護者に対し、一般消費支出の約65%に相当する生活扶助費 ⑵ 平成7年当時、約88万人の被保護者に対し、一般消費支出の約68%に 相当する生活扶助費が給付されていた。 しかし、バブル崩壊に伴う不況の影響で、平成8年に被保護者数が増加に転じ、平成12年には一般消費支出も減少に転じた。被控訴人国は、同年、約107万人の被保護者に対して一般消費支出の約69%に相当する計約0. 6兆円の生活扶助費を各地方自治体に給付させる必要が生じたことから、生 活保護の見直しに係る検討を開始した。厚生労働大臣は、生活扶助基準につき、平成13年と平成14年は改定をせず、平成15年に初めて0.9%の減額改定をし、更に平成16年には0.2%の減額改定をした。 平成16年に一般消費支出が増加に転じ、厚生労働省の専門家機関は、生活扶助基準の水準は基本的に妥当とする報告書を公 めて0.9%の減額改定をし、更に平成16年には0.2%の減額改定をした。 平成16年に一般消費支出が増加に転じ、厚生労働省の専門家機関は、生活扶助基準の水準は基本的に妥当とする報告書を公表した。平成19年、上 記専門家機関が生活扶助基準の引下げには慎重であるべきとする意見書を公表し、平成20年には原油・穀物価格が高騰するとともにリーマンショックが生じた。このため、厚生労働大臣は、平成17年以降、生活扶助基準の水準を改定しなかった。 (甲A6、8、19、50、64、72、101、107、215~220、 乙A4、7、12、15、74~81、128)⑶ 平成21年以降、リーマンショックに伴う世界金融危機の影響で、被保護者数が急増するとともに、一般消費支出が減少し、総務省CPIが下落するデフレも生じていた。被控訴人国は、平成24年、約214万人の被保護者に対して計約1.2兆円の生活扶助費を各地方自治体に給付させる必要が生 じ、国民の間で被保護者の受給水準等について非難する生活保護バッシングも生じたため、生活保護の見直しに係る検討を加速させた。 そのような中、平成24年4月、野党であった自由民主党は、デフレを理由として生活保護の給付水準を10%引き下げる政策を公表し、同年12月の総選挙で上記政策を公約に掲げ、民主党に代わって政権政党に復帰した。 また、当時厚生労働省の専門家機関であった基準部会は、平成25年1月1 8日、平成25年報告書を公表し、生活扶助基準について年齢階級別、世帯人員別及び級地別の消費実態との較差を調整する旨提言した。 そこで、厚生労働省は、平成25年1月27日、生活扶助基準をゆがみ調整とデフレ調整により増減10%の範囲内(平均6.5%の減額)で3年程度をかけて段階的に改 消費実態との較差を調整する旨提言した。 そこで、厚生労働省は、平成25年1月27日、生活扶助基準をゆがみ調整とデフレ調整により増減10%の範囲内(平均6.5%の減額)で3年程度をかけて段階的に改定し、ゆがみ調整によって約90億円、デフレ調整に よって約580億円の計約670億円の財政削減効果を得るという本件各改定の方針を公表するとともに、同月29日には、上記方針を反映させた同年度の政府予算案について閣議決定を得、同年5月15日には、上記政府予算案どおりの同年度予算が成立した。 (甲A3、15、19、63、64、107、125、133、152、2 15、232、233、237、285、323、乙A6、49、52、128、129) 2 判断枠組み⑴ 日本国憲法25条、生活保護法1条、3条、8条の各規定にいう「健康で文化的な最低限度の生活」や「最低限度の生活」は、抽象的かつ相対的な概 念であって、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護の基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。このため、厚生労働大臣は、生活扶助基準について改定の要否や内容、方法等を判断するに当たり、専門技術的かつ政策 的な見地からの裁量権を有しており、財政事情や国民感情、選挙公約等の生活外的要素を考慮することも許されるというべきである。 ただし、厚生労働大臣は、上記各規定の趣旨・目的を尊重すべきであり、これに反して裁量権を逸脱又は濫用した場合、その判断は違憲又は違法になる。そして、生活扶助基準が被保護者の生活を左右する重要なものであり、 これまで各種統計や専門家機関の意見等を踏まえながら これに反して裁量権を逸脱又は濫用した場合、その判断は違憲又は違法になる。そして、生活扶助基準が被保護者の生活を左右する重要なものであり、 これまで各種統計や専門家機関の意見等を踏まえながら改定されてきたこと、 本件各改定が控訴人らにとって生活扶助基準を引き下げる不利益なものであったことを考慮すると、本件各改定をした厚生労働大臣の判断の過程ないし手続に、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性、被保護者の生活への影響の有無・程度等の観点から、憲法や生活保護法の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったといえる場合には、裁量権を逸脱又は 濫用したものと認めるのが相当である。 (最高裁昭和39年(行ツ)第14号同42年5月24日大法廷判決・民集21巻5号1043頁、最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁、最高裁平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集 66巻3号1240頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)⑵ 控訴人らは、憲法25条や社会権規約2条、9条、11条、12条、社会権規約委員会一般的意見19第42項は、社会保障制度の後退を原則として禁じている旨主張する。 しかし、「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条1項)は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、上記規定を具体化するに当たり、被控訴人国の財政事情を無視することができない(前記最高裁昭和57年7月7日判決参照)。また、同条2項は、被控訴人国に対して社会保障 等の向 ものであるとともに、上記規定を具体化するに当たり、被控訴人国の財政事情を無視することができない(前記最高裁昭和57年7月7日判決参照)。また、同条2項は、被控訴人国に対して社会保障 等の向上及び増進についての努力義務を課した規定であり、立法によって具体化された社会保障制度が経済情勢等によって後退することを禁ずるものとは解されない。 昭和54年に我が国で発効した社会権規約2条1項は「この規約の各締約国は…この規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するた め…行動をとることを約束する。」と規定し、9条で社会保障についての権 利を、11条で相当な生活水準等についての権利を、12条で健康を享受する権利を、それぞれ規定する。しかし、これらの規定は、締約国において、上記各権利が社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、その実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものにすぎない(最高裁昭和60年(行ツ)第92号平成元年3 月2日第一小法廷判決・裁判集民事156号271頁参照)。 平成19年に採択された、社会保障についての権利に関連して後退的な措置が採られた場合、社会権規約によって禁じられているとの強い推定が働く旨の社会権規約委員会一般的意見19第42項が法的拘束力を有するものとはいえない(甲A54)。 控訴人らの上記主張は、採用することができない。 ⑶ 一方、被控訴人福岡県らは、厚生労働大臣が生活扶助基準を引き下げる旨の改定をするに当たっては現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなどしない限り適法である旨主張する。 しかし、厚生労働大臣の判断に憲法や生活保護法の趣旨・目的に反する過 誤、欠落があっ に当たっては現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなどしない限り適法である旨主張する。 しかし、厚生労働大臣の判断に憲法や生活保護法の趣旨・目的に反する過 誤、欠落があったといえる場合でも、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなどしない限り適法とするのは、相当でないことが明らかである。前記最高裁昭和42年5月24日判決は、「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によつて与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した 場合には、違法な行為として司法審査の対象となる」と判示したが、ここにいう「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等」とは、違法な行為の例示であり、これに限定されるものではないというべきである。 被控訴人福岡県らの上記主張は、採用することができない。 3 ゆがみ調整の違法性について 以下のとおり、厚生労働大臣がゆがみ調整を採用した判断は、その過程ない し手続に憲法や生活保護法の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったとはいえず、裁量権を逸脱又は濫用したものといえないから、違法性が認められない。 この判断に反する控訴人らの主張は、採用することができない。 ⑴ ゆがみ調整の概要後記証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア生活扶助基準は、遅くとも平成19年以降、生活扶助費から各種加算等を除いた基準生活費につき、被保護世帯が居住する市町村を生活水準に対応した1~3級地-各1・2の6区分に、被保護者の年齢を栄養所要量に対応した0~2歳、3~5歳、6~11歳、12~19歳、20~40歳、41~59歳、60~69歳及び70歳以上の8階級に、それぞれ 応した1~3級地-各1・2の6区分に、被保護者の年齢を栄養所要量に対応した0~2歳、3~5歳、6~11歳、12~19歳、20~40歳、41~59歳、60~69歳及び70歳以上の8階級に、それぞれ分けた 上で、級地別・年齢階級別に定めた個人単位の費用である第1類費(食費等)と級地別・世帯人員別に定めた世帯単位の費用である第2類費(光熱水費等)の合計額としてきた。(甲A7、101、乙A1、10、21)イ平成23年2月に生活保護の基準を評価・検証する目的で設置された基準部会は、従前の専門家機関が年齢階級別、世帯人員別及び級地別に見る と生活扶助基準と低所得層の消費実態との間で均衡が図られていない旨報告していたので、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に見た生活扶助基準と第1十分位層の消費実態との較差を測定することとした。 平成21年全国消費実態調査の結果を基に、第1十分位層の平均消費支出額を第1十分位層が生活保護を受給した場合の平均受給額と同額になる ようにした上で上記較差が測定された結果、年齢階級別と世帯人員別に見た場合で大きな較差が認められ、上記較差を全て調整した場合、生活扶助費が、平均して、60歳以上の単身世帯で4.5%、60歳以上の夫婦世帯で1.6%の増額となる一方、母親と児童1人の母子世帯で5.2%、夫婦と児童1人の3人世帯で8.5%、夫婦と児童2人の4人世帯で14. 2%の減額となること等が判明した。基準部会は、平成25年1月18日、 上記較差の調整を提言しながらも配慮を求める平成25年報告書を公表した。 (甲A3、6~8、50、78、85、乙A4~6、22)ウ厚生労働省は、同月27日に本件各改定を行う方針を公表したが、その際、前記較差の調整比率を2分の1 年報告書を公表した。 (甲A3、6~8、50、78、85、乙A4~6、22)ウ厚生労働省は、同月27日に本件各改定を行う方針を公表したが、その際、前記較差の調整比率を2分の1にすることは公表しなかった。(甲A 63)⑵ 第1十分位層との比較についてア基準部会は、従前の専門家機関がしてきた検証に倣い、被保護世帯と隣接した第1十分位層の消費実態と比較するのが現実的であること、第1十分位層は、平均消費水準が中所得層の約6割に達し、必需的な耐久消費財 を概ね有していること等から、第1十分位層を比較の対象とし、同旨の平成25年報告書を公表した。これを受け、厚生労働大臣は、ゆがみ調整を含む本件各改定に当たり、同様に判断した。(甲A3、9、47、63、乙A6、16、17)上記判断等は、根拠とする事実が統計や検証の経緯と整合し(甲A6、 7の1、43、73の3・4、101の2、乙A4、5、7の2、37)、専門家の判断を経たものとして不合理でなく、要保護者の需要を基として保護を行うよう求める生活保護法8条1項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったともいえない。 イ生活保護法8条1項は、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測 定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」と規定し、要保護者の需要を基として保護を行うよう求めている。被控訴人国も、これまで、一般国民の消費実態は考慮しながらも要保護者の需要を基として保護を行い、一般国民の需要を基として保護を行ったことはないから、被 保護世帯と隣接する第1十分位層を比較の対象としたことが不合理とはい えない。また、基準部会は、第1十 要を基として保護を行い、一般国民の需要を基として保護を行ったことはないから、被 保護世帯と隣接する第1十分位層を比較の対象としたことが不合理とはい えない。また、基準部会は、第1十分位層の平均消費支出額を第1十分位層が生活保護を受給した場合の平均受給額と同額になるようにした上で、生活扶助基準と第1十分位層の消費実態との較差を測定したから、被保護者間の実質的な公平を図っていたものということができ、基準の引下げを図っていたものではない。実際、基準部会では、平成25年1月16日に 部会長代理が、今回の良さは徹底して相対比較に持ち込んだということだと思う旨述べて評価し、同月18日に平成25年報告書が異議なく了承された(甲A70の1、80、乙A25、45。なお、第1十分位層には2%弱の被保護世帯が含まれていたが(甲A89)、上記判示に照らせば、問題はないといえる。)。 ウしたがって、第1十分位層を比較の対象としたことは不合理でない。 ⑶ ゆがみ調整の基礎数値についてアゆがみ調整の基礎数値が誤っていたことを認めるに足りる証拠はない。 イゆがみ調整の基礎数値に含まれる世帯別第1十分位層3125世帯や世帯員別第1十分位層6697世帯は、これを10倍にしても、平成21年 全国消費実態調査の調査世帯数5万6806世帯や集計世帯数5万5089世帯と一致しない(甲A3、150、乙A6)。また、上記調査の結果から上記基礎数値を算出したデータは、既に破棄されて検証することができない(弁論の全趣旨(被控訴人ら原審求釈明に対する回答⑷))。さらに、回帰分析は、精度を示す決定係数R2(0~1)が0.14~0.37に とどまり、変数に有意性がないことを示すp値も多くの級地について有意水準である5 人ら原審求釈明に対する回答⑷))。さらに、回帰分析は、精度を示す決定係数R2(0~1)が0.14~0.37に とどまり、変数に有意性がないことを示すp値も多くの級地について有意水準である5%未満となっていない(甲A3、150、乙A6)。 しかし、大学教授等8名で構成された基準部会が上記基礎数値を踏まえた平成25年報告書を異議なく了承したこと(甲A3、80、乙A6)に照らせば、上記基礎数値は、特段の事情がない限り、信頼し得るというべ きである。世帯数の不一致は、単身世帯の調査が困難であることによる調 整がされた結果であること(乙A58、弁論の全趣旨(被控訴人ら原審第13準備書面))、決定係数は、上記調査のデータが住宅資産や貯蓄の状況等も含むクロスセクションデータであり、その場合は0.1以上でも足りること(甲A3、80、乙A6、62、63)、有意性が認められない変数を除かなかったからといって、回帰分析が誤りになるわけではないこと を考慮すれば(乙A56、64、弁論の全趣旨(被控訴人ら原審第13準備書面))、上記特段の事情があるとはいえない。 ウしたがって、ゆがみ調整の基礎数値は信頼することができる。 ⑷ 調整比率を2分の1にした措置についてア証拠(甲A3、63、233、237の3、323、乙A6、116) 及び弁論の全趣旨(控訴人ら原審第37準備書面、被控訴人ら原審第1準備書面(45頁))によれば、厚生労働省は、①平成25年1月上旬頃、生活保護の給付水準を見直す必要が高まる中で、平成25年報告書案に基づく較差の調整だけであれば、財政削減効果を見込み難いが、調整比率を2分の1にすれば、約90億円の財政削減効果を見込める旨認識していた こと、②平成25年報告書には「全て 成25年報告書案に基づく較差の調整だけであれば、財政削減効果を見込み難いが、調整比率を2分の1にすれば、約90億円の財政削減効果を見込める旨認識していた こと、②平成25年報告書には「全ての要素については分析・説明に至らなかった」「これが唯一の手法ということでもない」「現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」などと留意事項が記載されていたことから、財政削減の必要性やゆがみ調整の誤び ゅう性、児童のいる被保護世帯への影響緩和、被保護者間の公平等を考慮し、ゆがみ調整の調整比率を2分の1にしたことが認められる。 上記判断は、根拠とする事実が上記証拠等によって認められ、政策的な判断として不合理ではない。また、当時の被保護者が一般消費支出の65%を下回らない生活扶助費を受給していたことに照らせば、最低限度の生 活を保障するよう求める憲法25条1項や生活保護法1条、3条、8条2 項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったともいえない。 イ調整比率を2分の1にした措置が真に財政削減目的のみでされたものであれば、増額分については較差の調整がなく、減額分については較差が全て調整されたはずであるが、そうではなかった。確かに、厚生労働省は、平成25年1月に本件各改定を行う方針を公表した際、上記措置を公表せ ず、被控訴人らも、平成28年6月に上記措置の存在が報道されるまでこれに言及しなかった(甲A234、弁論の全趣旨(被控訴人ら原審第1準備書面))。その背景には上記措置によって不利益を受ける高齢者世帯等からの反発を懸念して公表を控えたことがうかがわれるが、このことをもって財政削減目的のみでされたとまでは認め (被控訴人ら原審第1準備書面))。その背景には上記措置によって不利益を受ける高齢者世帯等からの反発を懸念して公表を控えたことがうかがわれるが、このことをもって財政削減目的のみでされたとまでは認められない。 また、上記措置は、生活扶助基準の改定内容に関するものであるから、厚生労働大臣は、上記措置を採るか否かについて政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。厚生大臣ないし厚生労働大臣は、これまで専門家機関の意見具申等を受けるなどしながら生活扶助基準を改定してきたが、専門家機関に諮ることは法律上義務付けられていない。また、 上記措置が増額幅を減らすだけでなく減額幅も同様に減らすものであったことは、証拠上明らかである(甲A234、235、237の3、乙A116)。これらの事情を総合すれば、上記措置が不合理であるとはいえない。 ウしたがって、調整比率を2分の1にした措置は不合理でない。 4 デフレ調整の違法性について以下のとおり、厚生労働大臣がデフレ調整を採用した判断は、生活扶助相当CPIの算出に当たり家計調査に基づくウエイトを用いた点において、その過程に生活保護法8条1項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったということができ、裁量権を逸脱又は濫用したものといえるから、違法性が認められる。 ⑴ デフレ調整の概要 後記証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア厚生労働省は、平成24年、生活扶助基準と平成20年から平成23年にかけて下落傾向にあった物価動向との較差を調整することとした。 厚生労働省は、総務省CPIの数値を基に、平成22年を基準年とし、平成20年と平成23年における生活扶助相当品目の各物価指数に対し基 傾向にあった物価動向との較差を調整することとした。 厚生労働省は、総務省CPIの数値を基に、平成22年を基準年とし、平成20年と平成23年における生活扶助相当品目の各物価指数に対し基 準年におけるウエイトを乗じて生活扶助相当CPIを算出し、上記較差を測定すると、-4.78%の較差が認められた。 (甲A232、285、乙A29、30、52、116、117、128、129)イ厚生労働省は、前記較差の調整率を-4.78%にしたデフレ調整を含 む本件各改定をすることとし、平成25年1月27日に本件各改定の方針を公表したが、実際の本件各改定では上記調整率を-4.8%とする基準生活費を定めた。(甲A63、被控訴人ら原審求釈明に対する回答⑶)⑵ 物価動向との比較についてア証拠(甲A3、6、9、15、47、63、64、70の1・3、10 7、152、215、216、232、233、323、乙A4、6、16、18、25、45、48、77、128)及び弁論の全趣旨によれば、①平成24年には、自由民主党がデフレを理由として生活保護の給付水準を10%引き下げる政策を公表するなど、当該給付水準を相当に引き下げる必要が生じる中で、5年に一度生活扶助基準を検証して調整する平成2 5年を迎えようとしていたところ、前回その調整をした平成20年から最新の総務省CPIがある平成23年までの間では、民間最終消費支出で約0.58%減(1-286兆4294億円/288兆1054億円≒0.00582)となったのに対し、総務省CPIで約2.35%減(1-99.7/102.1≒0.02351)となり、物価動向を比較の対象とする方が減額率を政策目標に近づけられる旨 見込まれたこと、②厚生労働省は、平成24年1 、総務省CPIで約2.35%減(1-99.7/102.1≒0.02351)となり、物価動向を比較の対象とする方が減額率を政策目標に近づけられる旨 見込まれたこと、②厚生労働省は、平成24年10月、財務省から、生活 扶助基準が高止まりしているとして4.9%の減額改定を求められるとともに、改定方法についても、生活との関係が弱い民間最終消費支出でなく、上記関係が強い物価水準等を比較の対象とするよう提案を受けたこと、③厚生労働省は、平成25年1月16日、基準部会に対し「他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定 されたい」などと記載した平成25年報告書案を提示した上で、経済指標にはCPI等を想定している旨説明したところ、議論してないなどと慎重な意見が相次ぎ、「改定されたい」の文言を削除するなどの修正を余儀なくされたことから、物価動向を比較の対象とすれば、減額率を政策目標に近づけられる上、生活との関係が強く、実質的な購買力も維持できるなど と判断し、基準部会にこれ以上意見を聴くことなく、物価動向を比較の対象としたことが認められる。 上記判断は、根拠とする事実が証拠等によって認められ、専門技術的かつ政策的な判断として不合理でない。また、上記判断は、需要が物価によって金銭的に具体化され、物価動向が需要に影響し得ることにも照らせば、 要保護者の需要を基として保護を行う旨の生活保護法8条1項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったともいえない。 イ被控訴人福岡県らは、平成16年から平成21年にかけて第1十分位層の夫婦子1人世帯における生活扶助相当品目の支出額が約12%下落し、生活扶助基準額を約13%下回ることが判明するなど、平成20年から平 成23年にかけて 6年から平成21年にかけて第1十分位層の夫婦子1人世帯における生活扶助相当品目の支出額が約12%下落し、生活扶助基準額を約13%下回ることが判明するなど、平成20年から平 成23年にかけて消費水準の下落幅が物価動向の下落幅より大きいことがうかがわれたので、物価動向を比較の対象とした旨主張する。 この点、証拠(甲A7、84、乙A5、111)によれば、第1十分位層の夫婦子1人世帯では、生活扶助相当品目の支出額が平成16年で14万8781円、平成21年で13万1500円(いずれも各年の全国消費 実態調査による。)、生活扶助基準額が同年で15万0408円であったこ と、厚生労働省は、遅くとも平成24年11月までに上記各金額を把握したことが認められる。上記各金額によれば、平成16年から平成21年にかけて上記世帯における生活扶助相当品目の支出額が約12%(1-13万1500円/14万8781円≒0.116)下落し、生活扶助基準額を約13%(1-13万1500円/15万0408円≒0.126)下回っていたことになる。そして、上記各 金額によれば平成20年から平成23年にかけて消費水準の下落幅が物価動向の下落幅より大きいことがうかがわれたので、物価動向を比較の対象とした旨の厚生労働省で本件各改定に携わった職員の陳述がある(甲A285、乙A116、117の1)。 しかし、被控訴人国は、昭和59年以来、民間最終消費支出の増減率を 基に生活扶助基準を改定してきたところ、当該数値によれば平成20年から平成23年にかけては物価動向の下落幅が消費水準の下落幅より大きく、この事実を厚生労働省が認識していなかったとは考えられない。また、厚生労働省や被控訴人らは、物価動向を比較の対象とした主な理由につき、平成25 かけては物価動向の下落幅が消費水準の下落幅より大きく、この事実を厚生労働省が認識していなかったとは考えられない。また、厚生労働省や被控訴人らは、物価動向を比較の対象とした主な理由につき、平成25年から令和4年までは、デフレ傾向が続いていたからと説明して いたのに、令和5年からは、収入階級別や世帯人員別に見た消費水準の下落幅が物価動向の下落幅より大きいことがうかがわれたからと説明するようになったが(甲A9、47、63、323、乙A16、18、弁論の全趣旨)、このような説明の変遷に合理的な理由は認められない。これらの事情に照らせば、上記職員の陳述を信用することはできない。 被控訴人福岡県らの上記主張は、採用することができない。 ウ控訴人らは、①要保護世帯の需要を物価から直ちに測定することはできないこと、②厚生大臣ないし厚生労働大臣も、昭和59年以来、消費実態との較差を調整することを基調として、専門家機関の意見を聴きながら生活扶助基準を改定し、平成20年から平成23年にかけては改定しない旨 判断したのに、平成25年、物価動向との較差を調整するという考えを導 入し、基準部会の意見を聴くことなく、上記判断を翻したこと、③厚生労働省の専門家機関は、物価動向との比較に消極的であったことを理由に、物価動向を比較の対象としたことは不合理である旨主張する。 しかし、物価動向を比較の対象とした判断は、生活扶助基準の改定の要否・程度の判定方法に関するものであるから、厚生労働大臣は、上記判断 を採るか否かについて専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 ①について、需要は、支出する品目の合計額によって最終的に具体化されるから、物価だけで測定することはできない について専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 ①について、需要は、支出する品目の合計額によって最終的に具体化されるから、物価だけで測定することはできないが、支出する品目や数量も特定すれば測定することができる。マーケットバスケット方式から水準均 衡方式までの各測定方式は、需要を個別的な物価で測定するか全体的な消費で測定するか、両方で測定するかの違いにすぎないともいえる。 ②について、消費実態との較差を調整する水準均衡方式は、法律上定められておらず、厚生大臣ないし厚生労働大臣は、専門家機関に諮ることを法律上義務付けられていない。また、本件各改定は、水準均衡方式の下、 民間最終消費支出の増減率を基に上記較差を毎年調整する本来的な改定ではなく、なお残る上記較差を5年に一度調整する補充的な改定であり、総務省CPIの数値を基に当該較差を調整しようとしたと見ることもできるから(甲A102、乙A13)、水準均衡方式に反するとはいえない。 ③について、基準部会を含む厚生労働省の専門家機関は、物価動向との 比較につき、平成15年12月に「消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」と、平成25年1月に「他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」(平成25年報告書)と、それぞれ表明しており(甲A3、102、乙A6、13)、消極的であったともいえな い。いずれにせよ、厚生労働大臣は、専門家機関の意見に従うことを法律 上義務付けられていない。 これらの事情によれば、物価動向を比較の対象としたことが不合理であるとはいえない。 控訴人らの上記主張は、採用す 機関の意見に従うことを法律 上義務付けられていない。 これらの事情によれば、物価動向を比較の対象としたことが不合理であるとはいえない。 控訴人らの上記主張は、採用することができない。 エしたがって、物価動向を比較の対象としたことは不合理でない。 ⑶ 物価動向との調整期間についてア前記認定の事実によれば、厚生労働省は、平成25年1月当時、前回5年に一度の調整をしたのは平成20年であること、デフレの端緒となったリーマンショックが生じたのも同年であること、従前平成23年までの総務省CPIを基に物価動向との調整を検討してきたことから、平成20年 から平成23年までを物価動向との調整期間としたことが認められる。 上記判断は、根拠とする事実が証拠等によって認められ、政策的な判断として不合理でない。上記判断は、最終測定時点の需要に対して当該時点から直近の時点までの間に支出した品目の物価変動率を乗じることにより現時点の需要を推定し得ることに照らせば、現時点の需要を基として保護 を行うよう求める生活保護法8条1項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったともいえない。 イ控訴人らは、①平成25年1月当時、生活扶助基準の最終改定は平成16年であったこと、厚生労働省の専門家機関が前回改定の要否を検討した際に用いた統計は平成16年全国消費実態調査であったこと、上記専門家 機関がその検討をしたのは平成19年であったことを踏まえると、始期を平成16年又は平成19年とすべきであった、②始期を平成20年としたことは、同年に原油や穀物の価格が高騰して10大費目の物価が約1.4%上昇し、前後10年間で物価が最も高くなったこともあり、恣意的で、不合理である、③平成25年1月に った、②始期を平成20年としたことは、同年に原油や穀物の価格が高騰して10大費目の物価が約1.4%上昇し、前後10年間で物価が最も高くなったこともあり、恣意的で、不合理である、③平成25年1月に平成24年の総務省CPIが公表され たことから、終期を平成24年とすべきであった、④終期を平成23年と したことは、平成24年に食費や光熱水費が上昇したこともあり、恣意的で、不合理である旨主張する。 しかし、物価動向との調整期間を平成20年から平成23年までとした判断は、生活扶助基準の改定の要否・程度の判定方法に関するものであるから、厚生労働大臣は、上記判断を採るか否かについて政策的な見地から の裁量権を有しているというべきである。 ①について、生活扶助基準は、最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならないところ(生活保護法8条2項)、証拠(甲A7の1、63、107、216、323、乙A5、77)及び弁論の全趣旨によれば、厚生労働省は、平成19年1 1月、5年に一度の検証をしていた専門家機関から、平成16年全国消費実態調査の結果によれば、生活扶助基準額が第1十分位世帯の生活扶助相当品目の支出額より夫婦子1人世帯で約1.1%(15万0408円/14万8781円-1≒0.0109)、60歳以上の単身世帯で約13.3%(7万1209円/6万2831円-1≒0.1333)、それぞれ高くなっている旨の報告を受けたが、平成 19年に原油価格が高騰し始めたことを受け、平成20年初め頃、同年度の生活扶助基準を据え置く旨公表したこと、厚生労働省は、平成25年1月に本件各改定の方針を公表した際、平成20年に生活扶助基準を据え置いたことにつき、「前回見直し(平成20 平成20年初め頃、同年度の生活扶助基準を据え置く旨公表したこと、厚生労働省は、平成25年1月に本件各改定の方針を公表した際、平成20年に生活扶助基準を据え置いたことにつき、「前回見直し(平成20年)」「前回の検証(平成19年)結果を踏まえた上で、平成20年度の基準額が定められ」などと説明した ことが認められる。これらの事情によれば、厚生労働省は、平成20年、5年に一度の調整として、平成20年度の需要が平成19年度の生活扶助基準と同水準まで上がるものと認めた上で、平成20年度の生活扶助基準を平成19年度のそれと同水準にする旨の判断をしたものと認められる。 このため、5年に一度の調整としての需要の最終測定年は平成20年であ り、始期を平成16年や平成19年とすべきであったとはいえない。 ②について、平成20年は、原油や穀物の価格が高騰して10大費目の総務省CPIが約1.4%(102.1/100.7-1≒0.0139)上昇し、平成13年から平成24年までの間で最も高くなっているが(甲A64、107、125)、これを考慮して平成20年を物価動向との調整期間から除くなどすれば、恣意的な調整になる。また、平成25年当時、被保護者が一般 消費支出の65%は下らない生活扶助費を受給していたことに照らせば、上記のような状況下で始期を平成20年としたことが恣意的で不合理であるとはいえない。 ③について、平成24年の総務省CPIが公表されたのは平成25年1月25日であるが(乙A50)、厚生労働省が本件各改定の方針を公表す る2日前、当該方針を反映させた同年度の政府予算案について閣議決定を得る4日前であり、上記CPIの数値を本件各改定に反映させることは事実上不可能であったといえる。 ④につい 表す る2日前、当該方針を反映させた同年度の政府予算案について閣議決定を得る4日前であり、上記CPIの数値を本件各改定に反映させることは事実上不可能であったといえる。 ④について、平成24年は、総務省CPIが食費で約0.1%(99.7/99.6-1≒0.0010)、光熱水費で約3.9%(107.3/103.3-1≒ 0.0387)、それぞれ上昇しているが、10大費目合計では増減していない(甲A64、125)。また、②同様、平成25年当時、被保護者が一般消費支出の65%を下回らない生活扶助費を受給していたことに照らせば、上記のような状況下で終期を平成23年としたことが恣意的で不合理であるとはいえない。 控訴人らの上記主張は、採用することができない。 ウしたがって、平成20年から平成23年までを物価動向との調整期間としたことは不合理でない。 ⑷ 生活扶助相当品目の物価指数についてア証拠(甲A109、乙A29、30、85)及び弁論の全趣旨によれば、 厚生労働省は、デフレ調整を検討していた際、生活扶助相当品目につき、 平成20年は485品目、平成23年は517品目となり、平成20年が32品目不足する旨判明したところ、32品目の物価指数を同類品目の平均値とすると、非生活扶助相当品目の物価指数も考慮することになること等から、平成20年は485品目だけで生活扶助相当CPIを算出し、事実上、32品目の物価指数を全品目(485品目)の平均値としたことが 認められる。 上記判断は、根拠とする事実や知見が上記証拠等や文献(甲A257、乙A86、118(いずれも283頁))によって認められ、専門技術的かつ政策的な判断として不合理でない。また、上記判断は、現時点 上記判断は、根拠とする事実や知見が上記証拠等や文献(甲A257、乙A86、118(いずれも283頁))によって認められ、専門技術的かつ政策的な判断として不合理でない。また、上記判断は、現時点の需要を推定するための物価変動率を物価指数によって算出する場合において、 始期又は終期に欠品があっても、当該品目の物価指数を全品目の平均値とすれば、物価変動率を一応算出することができ、現時点の需要も推定し得ることに照らせば、現時点の需要を基として保護を行うよう求める生活保護法8条1項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったともいえない。 イ控訴人らは、始期か終期に欠品がある場合、CPIの国際規準や総務省 CPIの作成基準によれば、同類品目の平均値とすべきであり、全品目の平均値としたことは不合理である旨主張する。 しかし、不足する物価指数を全品目の平均値とした判断は、生活扶助基準の改定の要否・程度の判定方法に関するものであるから、厚生労働大臣は、上記判断を採るか否かについて専門技術的かつ政策的な見地からの裁 量権を有しているというべきである。総務省CPIの作成基準は、同類品目の平均値としているが(甲A252、乙A28(いずれも27頁))、生活扶助相当CPIも同類品目の平均値とすることは、法律上定められていない。かえって、CPIの国際規準は、「価格欠落の品目を除外し、たとえ標本が枯渇しても、標本符合が維持されるようにする」などと、全品目 の平均値とすることを除外していない(甲A257、乙A86、118 (いずれも283頁))。また、総務省CPIで欠品を含む類には、洋服や保健医療用品・器具・サービス、鉄道運賃(JR以外)といった生活扶助相当品目と非生活扶助相当品目が混在しているものがあり(乙A30 (いずれも283頁))。また、総務省CPIで欠品を含む類には、洋服や保健医療用品・器具・サービス、鉄道運賃(JR以外)といった生活扶助相当品目と非生活扶助相当品目が混在しているものがあり(乙A30)、同類品目の平均値とすれば、非生活扶助相当品目の物価指数も考慮することになる上、混在している場合と混在していない場合で扱いを異にすれば、 恣意的な算定になるから、欠品の物価指数を一律に全品目の平均値とした判断が不合理であるとはいえない。 控訴人らの上記主張は、採用することができない。 ウしたがって、不足する物価指数を全品目の平均値としたことは不合理でない。 ⑸ 基準年についてア証拠(甲A109、117、123、126、148の1、202、242、243、244、263、乙A27、28、30、128)及び弁論の全趣旨によれば、厚生労働省は、平成24年10月に財務省から生活扶助基準について4.9%の減額改定を求められる中で、平成20年と平 成23年における生活扶助相当品目の各総務省CPIにつき、総務省が採用しているとおり、平成20年のウエイトについては基準年を平成17年とし、平成23年のウエイトについては基準年を平成22年とすると、物価変動率が約2.26%減(1-99.5/101.8≒0.02259)となるのに対し、平成20年のウエイトについても基準年を平成22年とすると、物価変動 率が約4.78%減(1-99.5/104.5≒0.04784)となり、基準年を平成22年のみとする方が減額率を政策目標に近づけられる旨見込めたことから、基準年を平成22年のみとしたことが認められる。 上記判断は、根拠とする事実や知見が上記証拠等や文献(甲A129(4頁)、190、257(4・4 政策目標に近づけられる旨見込めたことから、基準年を平成22年のみとしたことが認められる。 上記判断は、根拠とする事実や知見が上記証拠等や文献(甲A129(4頁)、190、257(4・459頁)、乙A55(4・459頁)、 114、118(4・459頁))によって認められ、専門技術的かつ政 策的な判断として不合理でない。また、上記判断は、現時点の需要を推定するための物価変動率を物価指数によって算出する場合において、ウエイトの基準年を途中の年としても、物価変動率を算出することができ、現時点の需要も推定し得ることに照らせば、現時点の需要を基として保護を行うよう求める生活保護法8条1項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があっ たともいえない。 イ被控訴人福岡県らは、調整期間が3年と短い上、その間の消費実態をできるだけ反映させるため、総務省CPIが設けた基準年のうち調整期間に最も近接している平成22年のみとしただけである旨主張し、これと同旨の陳述もある(甲A285、乙A116、117の1)。 しかし、厚生労働省は、平成24年10月、財務省から生活扶助基準について4.9%の減額改定を求められたこと(乙A128)、デフレ調整の検討に当たり、総務省CPIの採用しているウエイトの基準年を始期側とする方法(ラスパイレス方式)で算出しなかったとは考えられないこと(甲A117、123、202、242、263、乙A26~28)、こ の頃、基準年を平成22年のみとして算出することが総務省CPIの採用していないウエイトの基準年を終期側と始期側とする方法(パーシェ方式とラスパイレス方式)である旨認識していたこと(甲A243、244)に照らせば、被控訴人福岡県らの上記主張は、採用することができない。 ウエイトの基準年を終期側と始期側とする方法(パーシェ方式とラスパイレス方式)である旨認識していたこと(甲A243、244)に照らせば、被控訴人福岡県らの上記主張は、採用することができない。 ウ控訴人らは、①CPIの国際規準や総務省CPIの作成基準によれば、 基準年を平成20年か平成17年及び平成22年とすべきであった(いずれもラスパイレス方式)、②基準年を平成22年のみとしたことにより、平成20年から平成22年にかけての計算方法が変わった上(パーシェ方式)、その間にデジタル家電製品の地デジ特需による購入増加や性能向上による実質的な価格低下が生じ、CPIの下落率が基準年を平成20年や 平成17年及び平成22年とする場合の約2倍となったので、恣意的で、 不合理である旨主張する。 しかし、ウエイトの基準年を平成22年のみとした判断は、生活扶助基準の改定の要否・程度の判定方法に関するものであるから、厚生労働大臣は、上記判断を採るか否かについて専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 ①について、CPIの国際規準は、ウエイトの基準年につき、始期側とするラスパイレス方式や終期側とするパーシェ方式、途中の年など任意の時期とするロウ方式があることを紹介した上で、「物価指数は、典型的には、ある参照時点において1又は100の値が指定され、他の時点についての指数の値は、この価格参照時点以降の価格の平均的な変化…を示そう とするものである。」として、ラスパイレス方式が典型的であるとし(甲A129、257、乙A55、118(いずれも1・4・5頁))、総務省CPIもラスパイレス方式を採用しているが、生活扶助相当CPIもラスパイレス方式を採用することは、法律上定められてい あるとし(甲A129、257、乙A55、118(いずれも1・4・5頁))、総務省CPIもラスパイレス方式を採用しているが、生活扶助相当CPIもラスパイレス方式を採用することは、法律上定められていない。かえって、CPIの国際規準は、パーシェ方式も紹介している上、「もしb年が0月と t月の間にあるならば、ロウ指数は中間年指数となる。」「基準年を0月とt月の中間に選べば、パーシェ指数とラスパイレス指数のほぼ中間に来るロウ指数が得られるに違いない。従って、それは0月とt月の間の理想的な目標指数に非常に近いだろう。」などと、ウエイトの基準年を途中の年とするロウ方式が理想的であるとしている(b年は基準年、0月は始期、 t月は終期を意味する。甲A129(4頁)、257(4・460・461頁)、乙A55(4・460頁)、114(460・461頁)、118(4・460・461頁))。確かに生活扶助相当品目は、平成20年の方が32品目不足していたが、不足する物価指数を全品目の平均値としたことにより、品目数が等しくなったものといえるから、厚生労働省が基準年 を平成22年のみとして物価変動率を算出した方法は、基準年を途中の年 とするロウ方式と同義であったといえる。また、厚生労働省は、実際に平成20年の生活扶助相当CPIを算出するに当たり、不足した32品目の物価指数を算入していないが(乙A30)、物価変動率が小さくなる点で被保護者に有利な計算方法であるから、政策的な裁量権の範囲内の処理というべきである。このため、基準年を平成20年か平成17年及び平成2 2年とすべきであったとはいえない。 ②について、平成20年におけるウエイトの基準年を平成17年から平成22年に変えることで生じた物価変動率の更なる2.52%(4.7 7年及び平成2 2年とすべきであったとはいえない。 ②について、平成20年におけるウエイトの基準年を平成17年から平成22年に変えることで生じた物価変動率の更なる2.52%(4.78-2.26)の減少の内訳は、テレビで1.45%(1.59-0.14)、ノートパソコンで0.49%(0.56-0.07)、デスクトップパソコンで0.15% (0.21-0.06)、ビデオレコーダーで0.14%(0.18-0.04)、カメラで0.10%(0.13-0.03)、電気冷蔵庫で0.07%(0.12-0.05)、冷暖房用器具で0.04%(0.10-0.06)と、上記7種類の家電製品で約97%(計2.44÷2.52≒0.968)を占めているところ、これは、平成22年に生じた地デジ特需におけるテレビを中心とした家電製品の購入増加による ものと認められる(甲A135、148の1(23・37頁)、243、260、269、270、284(94・97頁))。しかし、基準年を平成22年のみとして物価変動率を算出した方法は、理論上は理想的な方法であったといえる上、平成25年当時の被保護者が一般消費支出の65%は下らない生活扶助費を受給していたことに照らせば、上記のような状況 下で基準年を平成22年のみとしたことが恣意的で不合理であるとはいえない。 控訴人らの上記主張は、採用することができない。 エしたがって、基準年を平成22年のみとしたことは不合理でない。 ⑹ ウエイトについて ア証拠(甲A117、202、242、263、乙A27~29)及び弁 論の全趣旨によれば、厚生労働省は、デフレ調整を検討していた際、ウエイトにつき、総務省CPIが家計調査に基づく品目ごとのウエイトで算出されてい 02、242、263、乙A27~29)及び弁 論の全趣旨によれば、厚生労働省は、デフレ調整を検討していた際、ウエイトにつき、総務省CPIが家計調査に基づく品目ごとのウエイトで算出されていたことから、生活扶助相当CPIの算出においても家計調査に基づくウエイトを用いたことが認められる。 上記判断は、根拠とする事実が上記証拠等によって認められるが、上記 家計調査が一般世帯に対して実施されたものであることに照らせば(甲A242、乙A27(いずれも9頁))、要保護者の需要を基として保護を行う旨の生活保護法8条1項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったということができるのであり、不合理である。 イ被控訴人福岡県らは、①厚生大臣ないし厚生労働大臣が昭和59年から 一般国民の消費実態との較差を調整することを基調として生活扶助基準を改定してきた、②被保護世帯も家電製品を購入している、③一般世帯に対して実施された家計調査は精度が高く、ウエイトの算定に適しているのに対し、被保護世帯に対して実施された社会保障生計調査は精度が低く、ウエイトの算定に適していない旨主張する。 確かに、家計調査に基づくウエイトを用いた判断は、生活扶助基準の改定の要否・程度の判定方法に関するものであるから、厚生労働大臣は、上記判断を採るか否かについて専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているが、生活保護法の趣旨・目的に反する過誤、欠落があるものであってはならないというべきである。 ①について、被控訴人国は、一般国民の消費実態は考慮しながらも、一般国民の需要を基として保護を行ったことはないものといえる。被保護世帯の需要は、被保護世帯が支出する品目の合計額によって最終的に具体化されるから、物価指数を用 一般国民の消費実態は考慮しながらも、一般国民の需要を基として保護を行ったことはないものといえる。被保護世帯の需要は、被保護世帯が支出する品目の合計額によって最終的に具体化されるから、物価指数を用いた物価変動率によって被保護世帯の現時点における需要を推定する場合も、被保護世帯が支出する品目の物価指数に対 して被保護世帯での支出割合を示したウエイトを乗じる必要がある。そう すると、ウエイトに一般世帯での支出割合を示したものを用いれば、一般世帯の需要を推定し、一般世帯の需要を基として保護を行うことになりかねないというべきである。一般世帯のウエイトと被保護世帯のウエイトでは、エンゲル係数等、違いがあることは顕著な事実であり、実際、平成22年当時、一般世帯では、不可欠といえる食費・住居費・光熱水費に計約 39%を、不可欠といえない教養娯楽費・その他に計約31%を、それぞれ支出していたのに対し、被保護世帯では、不可欠といえる食費・住居費・光熱水費に計約58%を、不可欠といえない教養娯楽費・その他に計約17%を、それぞれ支出しており(甲A115、287)、ウエイトに明確な違いがある。このため、家計調査に基づくウエイトを用いたことは不 合理といえる。 ②について、被保護世帯は、テレビ等の家電製品を購入することが妨げられないものの(弁論の全趣旨)、一般世帯ほどに購入することができないことは前記のとおりであるし、平成22年の地デジ特需の際は、チューナーを無料配布され(甲A111)、テレビを買い換える必要がなかった ことも考慮すると、被保護世帯も家電製品を購入している事実をもって、一般世帯のウエイトと被保護世帯のウエイトを同視することは相当でない。 ③について、家計調査は、品目が詳細で、調査対象世帯数 とも考慮すると、被保護世帯も家電製品を購入している事実をもって、一般世帯のウエイトと被保護世帯のウエイトを同視することは相当でない。 ③について、家計調査は、品目が詳細で、調査対象世帯数も約9000世帯に及ぶ調査であるが(甲A82の2、112、乙A29、88、89)、最下層の年収階級である200万円未満の世帯を約3%しか含んで いないから(甲A148の1(50頁)、284(37頁))、被保護世帯のウエイトの算定には適していない。 厚生労働省は、被保護世帯又はこれに準じた世帯の消費構造を調査した結果に基づいて被保護世帯のウエイトを算定すべきであったというべきである。上記調査には、被保護世帯の消費構造を調査する社会保障生計調査 があるところ(甲A108、113、乙A53)、確かに、当該調査は、 家計を食費など10項目に大別しているだけで、調査対象世帯数も1110世帯に限られた調査であるが(甲A134、209~212、289、乙A90、115)、平成22年当時の抽出率は、家計調査が約0.02%(9000世帯/4864万世帯≒0.00018)であったのに対し、社会保障生計調査が約0.08%(1110世帯/141万世帯≒0.00078)であったこと(甲A 19、23)、社会保障生計調査は基準改定等の基礎資料を得る目的でされていることに照らせば(甲A289)、社会保障生計調査の精度が低かったとはいえない。このため、生活扶助相当品目の各物価指数を上記10項目にまとめた上で、社会保障生計調査に基づくウエイトを乗じて生活扶助相当CPIを算出することは可能かつ相当であったといえる。このよう な方法でウエイトだけを社会保障生計調査に基づくものに変えて物価変動率を算定すると、単身世帯で1.48%減、複数人 て生活扶助相当CPIを算出することは可能かつ相当であったといえる。このよう な方法でウエイトだけを社会保障生計調査に基づくものに変えて物価変動率を算定すると、単身世帯で1.48%減、複数人世帯で2.12%減となり(甲A276)、単純平均しても約1.8%減((1.48+2.12)÷2)にとどまったことがうかがわれる。 被控訴人福岡県らの上記主張は、採用することができない。 ウしたがって、家計調査に基づくウエイトを用いたことは不合理である。 5 本件各改定及び本件各決定の違法性について⑴ 本件各改定において、財政事情、国民感情、選挙公約等の生活外的要素を考慮することは許されるのであり、不合理ではない。また、被控訴人国は、ゆがみ調整で約90億円、デフレ調整で約580億円の各財政削減効果を得 ており、その範囲ではいずれの調整にも給付水準を引き下げる効果があったといえるが、ゆがみ調整による財政削減効果は消費実態との較差の調整比率を2分の1にしたことによるのに対し、デフレ調整による財政削減効果は物価動向との較差の調節比率を約4.8%にしたことによるものであり、その理由が異なるから、本件各改定は、同じ理由でした二重の調整に当たらず、 その点において不合理ではない。 ⑵ しかし、原審各原告本人尋問の結果等に顕れるとおり、控訴人らを含む被保護者らは、本件各改定と本件各決定を受け、食費や光熱水費も抑えた生活を余儀なくされた。そのような事態に至る過程の中、前記のとおり、厚生労働大臣がデフレ調整をした判断には違法性が認められる。そして、本件各改定は、その内容がゆがみ調整とデフレ調整を反映させた後の第1類費と第2 類費の額を示すだけであり(甲A1、乙A1、3、31、95)、適法なゆが をした判断には違法性が認められる。そして、本件各改定は、その内容がゆがみ調整とデフレ調整を反映させた後の第1類費と第2 類費の額を示すだけであり(甲A1、乙A1、3、31、95)、適法なゆがみ調整と違法なデフレ調整に分離することができないから、その点において不合理である。 ⑶ したがって、厚生労働大臣が本件各改定をした判断は、デフレ調整を採用した判断と同様、生活保護法8条1項に反し、違法であり、各処分行政庁が 本件各決定をした判断も、同様に違法である。 第6 争点③(国家賠償責任の有無等)についての判断 1 控訴人らは、違法な本件各決定によって精神的苦痛を被ったと主張する。しかし、控訴人らが本件各決定によって被る損害は、同各決定の取消しないし取消判決の拘束力により回復されるものというべきである。 2 したがって、被控訴人国に対し国家賠償を求める控訴人らの主張は採用できない。 第7 結論よって、控訴人23、24の各控訴は理由がないから棄却し、同人らを除く控訴人らに関する部分は原判決を一部変更して、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官松田典浩 裁判官志賀勝 裁判官穗苅学 (別紙)訴訟費用目録 1 控訴人23、24に関する控訴費用は同控訴人らの負担とする。 2 控訴人6と被控訴人国及び同福岡県との関係では、第一、二審を通じて同控訴人に生じた費用、第一審において被控訴人国に生じた費用の84分の1、第 二審におい 訴費用は同控訴人らの負担とする。 2 控訴人6と被控訴人国及び同福岡県との関係では、第一、二審を通じて同控訴人に生じた費用、第一審において被控訴人国に生じた費用の84分の1、第 二審において同被控訴人に生じた費用の39分の1、第一審において被控訴人福岡県に生じた費用の8分の1及び第二審において同被控訴人に生じた費用を同被控訴人らの連帯負担とする。 3 控訴人1~3と被控訴人国及び同福岡市との関係では、第一、二審を通じて同控訴人らに生じた費用、第一審において被控訴人国に生じた費用の84分の 3、第二審において同被控訴人に生じた費用の39分の3、第一審において被控訴人福岡市に生じた費用の9分の3及び第二審において同被控訴人に生じた費用を同被控訴人らの連帯負担とする。 4 控訴人7~11、40、41と被控訴人国及び同古賀市との関係では、第一、二審を通じて同控訴人らに生じた費用、第一審において被控訴人国に生じた費 用の84分の7、第二審において同被控訴人に生じた費用の39分の7、第一審において被控訴人古賀市に生じた費用の8分の7、第二審において同被控訴人に生じた費用を同被控訴人らの連帯負担とする。 5 控訴人12~15と被控訴人国及び同福津市との関係では、第一、二審を通じて同控訴人らに生じた費用、第一審において被控訴人国に生じた費用の84 分の4、第二審において同被控訴人に生じた費用の39分の4、第一審において被控訴人福津市に生じた費用の5分の4、第二審において同被控訴人に生じた費用を同被控訴人らの連帯負担とする。 6 控訴人17~22、25~28、30~33、35、39、43~45と被控訴人国及び同北九州市との関係では、第一、二審を通じて同控訴人らに生じ た費用、第一審において被控訴人国に生じた費 6 控訴人17~22、25~28、30~33、35、39、43~45と被控訴人国及び同北九州市との関係では、第一、二審を通じて同控訴人らに生じ た費用、第一審において被控訴人国に生じた費用の84分の19、第二審にお いて同被控訴人に生じた費用の39分の19、第一審において被控訴人北九州市に生じた費用の48分の19、第二審において同被控訴人に生じた費用の21分の19を同被控訴人らの連帯負担とする。 7 控訴人36~38と被控訴人国及び同飯塚市との関係では、第一、二審を通じて同控訴人らに生じた費用、第一審において被控訴人国に生じた費用の84 分の3、第二審において同被控訴人に生じた費用の39分の3、第一審において被控訴人飯塚市に生じた費用の6分の3、第二審において同被控訴人に生じた費用を同被控訴人らの連帯負担とする。 以上 番号控訴人処分行政庁処分日請求額起算日審査請求日裁決日提訴日 A1福岡市南福祉事務所長H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.23H27.3.16 A2H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.3.3H27.3.16 A3H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.3.3H27.3.16 A4福岡県宗像・遠賀保健福祉環境事務所長H25.8.110万円H25.8.1H25.9.26H27.2.23H27.3.16 A5H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.23H27.3.16 A6H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27 H27.3.16 A5H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.23H27.3.16 A6H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.23H27.3.16 A7H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.23H27.3.16 A8H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.23H27.3.16 A9H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.23H27.3.16 A10H25.7.2510万円H25.8.1H25.9.10H27.2.20H27.3.16 A11H25.7.2510万円H25.8.1H25.9.10H27.2.20H27.3.16 A12H25.7.2510万円H25.8.1H25.9.10H27.2.20H27.3.16 A13H25.7.2510万円H25.8.1H25.9.10H27.2.20H27.3.16 A14H25.8.110万円H25.8.1H25.8.1H26.12.12H27.3.16 A15H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.12.12H27.3.16 A16H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.9.19H27.3.16 A17H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.9.19H27.3.16 A18H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.9.19H27.3.16 A19H25.8.110万円H25. H26.9.19H27.3.16 A18H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.9.19H27.3.16 A19H25.8.110万円H25.8.1H25.8.6H26.9.19H27.3.16 A20H25.8.110万円H25.8.1H25.9.26H26.9.16H27.3.16H25.8.110万円H25.8.1H25.9.26H26.9.16H27.3.16H27.3.1810万円H27.4.1H27.5.15H29.6.7H29.12.6 A22H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.9.16H27.3.16 A23H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.9.16H27.3.16 A24H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.10.6H27.3.16 A25H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.10.6H27.3.16 A26H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.10.6H27.3.16 A27H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.10.6H27.3.16 A28H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.10.6H27.3.16 A29北九州市八幡西福祉事務所長H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.10.1H27.3.16 A30北九州市戸畑福祉事務所長H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.9.26H27.3. H25.8.1H25.9.10H26.10.1H27.3.16 A30北九州市戸畑福祉事務所長H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H26.9.26H27.3.16 A31H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.26H27.3.16 A32H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.26H27.3.16 A33H25.8.110万円H25.8.1H25.9.10H27.2.26H27.3.16 A34北九州市小倉北福祉事務所長H26.3.1310万円H26.4.1H26.5.9H28.6.13H28.12.9 A35H26.4.110万円H26.4.1H26.5.9H28.8.8H28.12.9 A36H26.4.110万円H26.4.1H26.5.9H28.8.8H28.12.9 A37北九州市小倉北福祉事務所長H27.3.2010万円H27.4.1H27.5.15H29.6.30H29.12.6 A38北九州市八幡東福祉事務所長H27.3.1110万円H27.4.1H27.5.15H29.6.21H29.12.6 A39北九州市八幡西福祉事務所長H27.3.1310万円H27.4.1H27.5.30H29.6.20H29.12.6北九州市門司福祉事務所長(別紙)処分等一覧表福岡市東福祉事務所長古賀市福祉事務所長福津市福祉事務所長飯塚市福祉事務所長古賀市福祉事務所長北九州市小倉北福祉事務所長 A21北九州市小倉南福祉事務所長北九州市八幡東福祉事務所長 津市福祉事務所長飯塚市福祉事務所長古賀市福祉事務所長北九州市小倉北福祉事務所長 A21北九州市小倉南福祉事務所長北九州市八幡東福祉事務所長
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