- 1 -判決言渡平成21年1月29日平成20年(ネ)第10079号損害賠償・損害賠償反訴請求控訴事件(原審・東京地裁平成20年(ワ)第7416号,同第11277号)口頭弁論終結日平成20年12月22日判決控訴人株式会社イー・ピー・ルーム(一審本訴原告・一審反訴被告)被控訴人住石マテリアルズ株式会社(旧商号住友石炭鉱業株式会社)(一審本訴被告・一審反訴原告)訴訟代理人弁護士冨永敏文同尾原央典主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人は控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成20年5月2日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 被控訴人の反訴請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。 第2事案の概要【以下,略称は原判決の例による】。 控訴人は,名称を「放電燒結装置」とする発明について特許権(特許第2640694号〔本件特許権。平成2年9月18日出願,平成4年1月14日〕公開〔特開平4-9405号,平成9年5月2日設定登録,請求項の数3。 〕- 2 -特許公報は〔甲1)を有していたが,被控訴人が平成10年2月13日付け〕で特許異議の申立てをなし,特許庁は平成13年7月4日付けで上記特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すとの決定をした(本件特許取消決定。甲2。そこで控訴人は,上記取消決定の取消しを求めて訴訟を提起したが,こ)れを受けて審理した東京高等裁判所は,平成15年4月9日,請求棄却の判決を言い渡し(平成13年(行ケ)第369号,甲3,同判決は,平成15年)10月9日最高裁判所の上告不受理決定等により確定し,上記特許登録 審理した東京高等裁判所は,平成15年4月9日,請求棄却の判決を言い渡し(平成13年(行ケ)第369号,甲3,同判決は,平成15年)10月9日最高裁判所の上告不受理決定等により確定し,上記特許登録は平成15年10月22日抹消された(甲4。 ) 本件訴訟は,本訴請求と反訴請求とから成る。 本訴請求は,控訴人が被控訴人に対し,本件特許異議立ては権利の濫用であって不法行為に当たると主張して,損害賠償として10万円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成20年2月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 反訴請求は,被控訴人が控訴人に対し,①上記本訴請求(東京地裁平成20年(ワ)第7416号事件,②東京地裁平成20年(ワ)8836号事件(20)-8836号事件,③東京地裁平成19年(ワ)第23460号事件(19-)23460号事件,④東京地裁平成19年(ワ)第23951号事件(19-)23951号事件)に係る各訴えの提起は,被控訴人に対する不法行為に当たるとして,弁護士費用の合計額105万円及びこれに対する反訴状送達の翌日である平成20年5月2日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 平成20年9月30日に言い渡された原判決は,本訴請求に係る訴えは信義則に反する不適法なものであるとして却下し,一方,反訴請求は理由があるとしてその全部を認容したものである。そこで,上記判決に不服の控訴人が,本件控訴を提起した。 第3当事者双方の主張- 3 - 当事者双方の主張は,次に付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第2「事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。 控訴人の主張詳細は,別紙「控訴理由書」記載のとおりであるが,これを整理すると次のとおりである。 加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第2「事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。 控訴人の主張詳細は,別紙「控訴理由書」記載のとおりであるが,これを整理すると次のとおりである。 (1)本訴請求についてア本件特許取消決定は,取消理由を有するところ,原判決がこの点についての証拠である甲6(実公昭46-5289号公報)を排斥し,審理判断しなかったのは違法である。 原判決は「そもそも,甲6公報の存在が,前訴事件①及び前訴事件②,における裁判所の判断を左右するに足る事情であるとは認められないのであって,この点が,前記特段の事情に該当するものであるとはいえない(25頁16行~18行)と判断し,前記甲6(実公昭46-528。」9号公報,考案の名称「直接通電式加圧焼結炉,出願人株式会社島津製」作所,出願日昭和41年8月30日,公告日昭和46年2月24日)を証拠から排斥し,判断しなかった。 しかし,本件特許取消決定は,本件特許出願につき平成7年3月14日になされた手続補正が要旨変更補正に当たることを取消理由の前提とするものであるが,その手続補正の内容は,特許請求の範囲の記載を「放電焼結装置において,電極に嵌合したチャンバーフランジにチャンバーの一端部を支持する構造」とするものである。そして,本件補正に係る技術内容は,甲6公報に記載された内容であり,その公告日である昭和46年2月24日に既に公知となった技術内容である。 そうすると,上記手続補正は要旨変更には当たらず,これは控訴人が証拠として提出した甲6から明らかであり,前訴事件①,前訴事件②はいずれもこの点について判断していないから,甲6公報を証拠から排斥した原- 4 -判決は,甲16の最高裁判例(最高裁昭和30年(オ)第507号昭和32年10月31日第一小法廷判決・ ,前訴事件②はいずれもこの点について判断していないから,甲6公報を証拠から排斥した原- 4 -判決は,甲16の最高裁判例(最高裁昭和30年(オ)第507号昭和32年10月31日第一小法廷判決・民集11巻10号1779頁,書証を排斥するについて理由不備の違法があるとされた一事例)に照らし違法である。 イ原判決は,本訴は前訴事件①,前訴事件②とは訴訟物は別であるとしながら,同一の不法行為に基づく損害賠償請求であるとした。しかし,本訴事件は甲6公報の公告日(昭和46年2月24日)を請求原因とするものであるが,前訴事件①,前訴事件②は,甲6の公告日を請求原因とするものではないから,この点から訴訟物は別なのであり,その主張を蒸し返すものでもない。原判決は誤りである。 ウそもそも,本訴請求は,前訴事件①,前訴事件②が判断しなかった甲6公報記載の公知技術及びその公告日を請求の原因とした損害賠償事件であり,これを不適法な訴えとするのは,既判力を規定した民訴法114条,二重起訴を禁止した民訴法142条に反しない本訴請求について,事実誤認及び法判断の誤りをし,公平を欠き,憲法76条2項に反する。 甲29(石原豊昭ほか「訴訟は本人で出来る」自由国民社,12頁)にも「…権利主張の合理的な方法としてのビジネスが訴訟である。税金を,払っている国民として大いに裁判所を利用して,訴訟ビジネスをやるべきであろう」とも記載されている。この記載からしても,原判決の「裁判。 制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというべきであり,被告に対する不法行為を構成するものと解するのが相当である(27頁。」12行~14行)とした判断は誤りである。 エ本件は継続して発生する本件放電焼結機に対する事件であり,一個の不動産に関する最高裁判所の判例(最高裁平成9年(オ と解するのが相当である(27頁。」12行~14行)とした判断は誤りである。 エ本件は継続して発生する本件放電焼結機に対する事件であり,一個の不動産に関する最高裁判所の判例(最高裁平成9年(オ)第849号平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1147頁,金銭債権の数量的一部請求訴訟で原告が残部請求の訴えを提起することの許否)を適用- 5 -するのは誤りである。 (2)反訴請求に対し甲30(当事者」と題する書面,平成20年11月25日控訴人代表者「A作成のもの)のとおり,前記②の20-8836号事件は控訴人の放電焼結機の図面原紙を横領したことに対する事件,前記③の19-23460号事件は控訴人の放電焼結機の図面の控訴人名称を被控訴人が改変した私文書偽造事件,前記④の19-23951号事件は被控訴人の債務不履行に関する事件であって,これらを理由とする反訴請求は,いずれも本訴請求と関連せず,民訴法146条に規定する反訴要件を欠くものであるから,原判決は取り消されるべきである。また,被控訴人の反訴請求に係る弁護士費用は,弁護士会の報酬規定を超え,相当でない。 被控訴人の主張(1)本訴請求に対し控訴人の主張はいずれも否認する。 原判決が認定したとおりであり,本訴請求は前訴の蒸し返しであり,信義則に反する。 (2)反訴請求について原判決認定のとおりで誤りはない。弁護士報酬に関し,現在弁護士会規定は存在しない。 第4当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人の被控訴人に対する本訴請求に係る訴えは,不適法な訴えであり,被控訴人の控訴人に対する反訴請求は理由があると判断する。その理由は,以下のとおり付加するほか,原判決記載のとおりであるから,これを引用する。 本訴請求について(1)控訴人は,原判決が控訴人が証拠と の控訴人に対する反訴請求は理由があると判断する。その理由は,以下のとおり付加するほか,原判決記載のとおりであるから,これを引用する。 本訴請求について(1)控訴人は,原判決が控訴人が証拠として提出した甲6(実公昭46-5- 6 -289号公報)を排斥し,本件特許取消決定に対する甲6に基づく取消理由について審理判断しなかったのは違法である旨主張する。 しかし,原判決24頁19行~25頁1行において説示するとおり,本訴請求は前訴事件①及び前訴事件②における請求と同一の不法行為(被控訴人が本件特許異議申立てを行ったこと)による損害賠償請求権に基づく請求であり,実質的に前訴事件①及び前訴事件②を蒸し返すものであって,信義則に反するものである。そして,原判決も指摘するように「甲6公報の存在が,前訴事件①及び前訴事件②における裁判所の判断を左右するに足る事情である」とも認められないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 (2)次に控訴人は,本訴請求は継続して発生する放電焼結機に対する事件であり,一個の不動産に関する最高裁判所の判例(最高裁平成9年(オ)第849号平成10年6月12日第二小法廷判決)を適用するのは誤りである旨主張する。 しかし上記判例は,確かに不動産である用地の買収に係る報酬金等の支払請求に関する事案であるものの,その判決要旨は「金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは,特段の事情がない限り,信義則に反して許されない」というもので,本件と同じく金銭債権に関する判例であって,原判決も説示するように本件事案に適切であるから,控訴人の上記主張は採用することができない。 反訴請求について(1)控訴人は,被控訴人がなした反訴請求について,関連性がなく反訴の要件を欠くと主張する。 し るように本件事案に適切であるから,控訴人の上記主張は採用することができない。 反訴請求について(1)控訴人は,被控訴人がなした反訴請求について,関連性がなく反訴の要件を欠くと主張する。 しかし,控訴人は,平成20年8月26日の原審第4回口頭弁論期日において「被告(反訴原告)の反訴提起について,関連性がなく反訴の要件を,欠くとの主張を撤回する(口頭弁論調書参照)と陳述しているから,訴訟」手続に関する異議権の喪失を定めた民訴法90条に照らし,以後,一審原告- 7 -たる控訴人は,反訴要件を欠くとの主張はできなくなったというべきである。 のみならず,念のため反訴要件の存否を検討すると,原判決が26頁8行~31頁14行で説示するとおり,本訴請求は過去に訴えを提起し敗訴した事件(前訴事件①及び前訴事件②)と同一の不法行為に基づく損害賠償請求の残部請求に係る訴えであり,②20-8836号事件は控訴人が所有権を有し被控訴人が占有する図面及び部品図面を横領したことが不法行為に該当するとすることに係る訴え,③19-23460号事件は放電プラズマ焼結機の部品図から控訴人代表者名の署名部分を削除する等の行為が私文書偽造の不法行為に該当するとすることに係る訴え,④19-23951号事件は控訴人代表者設計の放電焼結機を納入する旨の契約が締結されていたにもかかわらず設計図を詐取するなどしたことが同契約の債務不履行に当たるとすることに係る訴えであり,これらの訴えの提起が不法行為に当たるかどうかに関する主張立証は,本訴請求の防御方法と関連すると認めるのが相当であるから,上記反訴請求が民訴法146条にいう反訴要件に欠けることはなく,控訴人の上記主張は採用することができない。 (2)次に控訴人は,被控訴人の請求する弁護士費用は弁護士会の報酬規定を超え,相 るから,上記反訴請求が民訴法146条にいう反訴要件に欠けることはなく,控訴人の上記主張は採用することができない。 (2)次に控訴人は,被控訴人の請求する弁護士費用は弁護士会の報酬規定を超え,相当でない旨主張する。 しかし,原判決が31頁18行~32頁10行で説示するとおり,被控訴人が本訴請求及び上記各事件の応訴のために要した弁護士費用の合計額は控訴人の上記不法行為と相当因果関係のある損害であり金額的にも相当と認められるから,控訴人の上記主張は採用することができない。 結語以上のとおりであるから,控訴人の被控訴人に対する本訴請求に係る訴えは信義則に反する不適法なものとして却下すべきであり,被控訴人の控訴人に対する反訴請求は認容すべきである。 よって,これと結論を同じくする原判決は相当であって,控訴人の本件控訴- 8 -は理由がないからこれを棄却して,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官中野哲弘裁判官今井弘晃裁判官清水知恵子以下別紙省略
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