令和7年11月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第12771号損害賠償請求事件令和6年(ワ)第70610号損害賠償請求反訴事件口頭弁論終結日令和7年7月29日判決 本訴原告兼反訴被告株式会社M4U(以下「原告」という。)同訴訟代理人弁護士森田太三酒井桃子 本訴被告兼反訴原告株式会社LOTOSCORPORATION (以下「被告」という。)同訴訟代理人弁護士中村信雄松谷真之介 主文 1 被告は、原告に対し、471万円及びこれに対する令和4年3月23日から 支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告の反訴請求を棄却する。 3 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴主文第1項と同旨 2 反訴原告は、被告に対し、2429万8255円及びこれに対する令和5年1月 1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨⑴ 本訴本訴事件は、原告が、被告による原告名義の預金債権に対する債権仮差押命令申立て(東京地方裁判所令和4年(ヨ)第534号)が不法行為に該当 すると主張して、被告に対し、民法709条に基づき、損害賠償金471万円(上記仮差押命令申立て の預金債権に対する債権仮差押命令申立て(東京地方裁判所令和4年(ヨ)第534号)が不法行為に該当 すると主張して、被告に対し、民法709条に基づき、損害賠償金471万円(上記仮差押命令申立てに係る仮差押決定に対する保全異議事件の弁護士費用相当額429万円及び本訴弁護士費用相当額42万円)及びこれに対する上記仮差押決定の日の翌日である令和4年3月23日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 ⑵ 反訴反訴事件は、被告が、①原告が、後述する被告の営業秘密を不正に取得し、又は悪意で開示を受け、これを利用して取引先を奪ったことが不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項8号の不正競争行為に該当する、②不正競争行為に該当しないとしても、上記①の行為は、原告の代表者又は従 業員により行われ、被告の営業秘密を侵害する不法行為に該当する、③原告代表者であるAi(以下「Ai」という。)が被告の顧客を奪ったことは、被告との間の秘密保持義務に違反するなどと主張して、上記①につき不競法4条、上記②につき民法709条、715条、上記③につき会社法350条に各基づき(選択的併合)、損害賠償金2429万8255円(逸失利益及 び弁護士費用相当額)及びこれに対する不正競争行為ないし不法行為の後の日である令和5年1月1日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 被告が原告に不正取得されたと主張する営業秘密は、①被告が顧客である株式会社DONGSHINSEA&AIR(以下「ドンシン社」という。) に対して支払う外注費等の営業戦略及び事業運営に関する情報(以下「本件 情報1」という。)及び②被告の国内輸入業者に対する基本報酬単価等の営業戦略及 AIR(以下「ドンシン社」という。) に対して支払う外注費等の営業戦略及び事業運営に関する情報(以下「本件 情報1」という。)及び②被告の国内輸入業者に対する基本報酬単価等の営業戦略及び事業運営に関する情報(以下「本件情報2」といい、本件情報1と併せて「本件各情報」という。)である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者等ア原告は、Aiが、令和3年8月26日に設立した陸海空複合運送業及びあっせん業等を目的とする株式会社である。(甲1、7)イ被告は、Aiと被告代表者Bi(以下「Bi」という。)が、平成21年10月7日に設立した海上貨物運送事業等を目的とする株式会社である。 (甲2、7)ウ原告及び被告は、いずれも主に日本と大韓民国(以下「韓国」という。)間の貨物の輸出入について、日本側で、実際の輸出者と輸入者の間で貨物の輸出入に関する業務を代行する代理人(以下「フォワーダー」という。)業務を業としている。(甲1、2) エ Aiは、被告の取締役であったところ、令和3年8月20日、被告の取締役を辞任し、同月26日、原告の代表取締役に就任した。(甲1、2、7)オドンシン社は、韓国側のフォワーダー業務を業とする株式会社であり、原告及び被告と取引をしている。 ⑵ 原告及び被告が行っている業務内容(甲8)原告及び被告が行っているフォワーダー業務の概要は以下のとおりである。 ア輸出者側フォワーダーは、船会社の予約の確保、船に荷物を載せる手配、輸入者側フォワーダーの選定をする。 イ船会社は、荷送人を輸出者側フォワーダー、荷受人 要は以下のとおりである。 ア輸出者側フォワーダーは、船会社の予約の確保、船に荷物を載せる手配、輸入者側フォワーダーの選定をする。 イ船会社は、荷送人を輸出者側フォワーダー、荷受人を輸入者側フォワー ダーとする船荷証券(MasterB/L。以下「MBL」という。)を 発行し、輸出者側フォワーダーは船会社に海上運賃を支払う。 ウ輸出者側フォワーダーは、MBLに基づき、荷送人として輸出者、荷受人として輸入者、輸入者側フォワーダーの名称等が記載された船荷証券(HouseB/L。以下「HBL」という。)を発行し、輸入者側フォワーダーに対し、MBLとHBLのデータを送付する。 エ輸出者は、輸入者に前記HBLのデータを送る。これにより、輸入者は輸入者側フォワーダーの名称を把握する。 オ船会社は、輸入者側フォワーダーからMBLの提示を受け、同社に対し、荷渡し指図書(以下「D/O」という。)と、船会社が荷受人に請求する諸費用が記載された到着案内(ArrivalNotice。以下「A N」という。)を送付する。 カ輸入者側フォワーダーは、船会社からANを受け取り、HBL上の荷受人である輸入者宛てのANを作成し、D/Oとともに輸入者に交付する。 その際、輸入者側フォワーダーは、船会社から請求された諸費用に、輸入者側フォワーダーの手数料を追加した金額を記載したANを作成し、同A N記載の金額を輸入者に請求する。 キ輸入者側フォワーダーは、上記アないしカの業務に加えて、輸入者からの依頼がある場合は、通関・配送業務を輸入者の負担で行う。 ⑶ 民事保全手続の経緯ア被告は、令和4年2月25日付けで、東京地方裁判所に対し、下記の請 求債権(同年3月18日付 からの依頼がある場合は、通関・配送業務を輸入者の負担で行う。 ⑶ 民事保全手続の経緯ア被告は、令和4年2月25日付けで、東京地方裁判所に対し、下記の請 求債権(同年3月18日付け訂正申立書⑵により訂正後のもの。以下「本件被保全債権」という。)を保全するため、原告名義の預金債権を仮に差し押さえる旨の申立て(以下「本件仮差押命令申立て」という。)をした。 (甲3)記 金2429万8255円 ただし、原告代表者であるAiの指示に基づいて、被告の従業員であるCi(以下「Ci」という。)が令和3年9月以降被告機密情報を持ち出し、Di(Di。以下「Di」という。)等の原告担当者がこれを利用して、ドンシン社等の被告取引先を乗っ取ったことにより、被告が原告に対して有する不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、被告がドンシン社と の契約関係の維持によって得べかりし利益を失ったことによる損害金として金2209万8255円及び上記不法行為に関連する弁護士報酬相当額として金220万円の合計金2429万8255円以上イ東京地方裁判所は、令和4年3月22日、本件仮差押命令申立てを認容 する決定(以下「本件仮差押決定」という。)をした。(甲4)ウ原告は、本件仮差押決定を不服として、東京地方裁判所に対し、保全異議を申し立てた(東京地方裁判所令和4年(モ)第52162号。以下、同申立てに係る事件を「本件保全異議申立事件」という。)。 エ東京地方裁判所は、令和5年2月28日、原告が被告主張の情報を持ち 出して利用したことによってドンシン社と取引を開始しこれを継続することができたとは認めることができず、被保全権利の疎明がないとして、本件仮差押決定を取り消し、本件仮差押命令申立て 情報を持ち 出して利用したことによってドンシン社と取引を開始しこれを継続することができたとは認めることができず、被保全権利の疎明がないとして、本件仮差押決定を取り消し、本件仮差押命令申立てを却下した(以下「本件保全異議決定」という。)。本件保全異議決定は同年3月16日の経過により確定した。(甲6) 3 争点⑴ 反訴事件ア不正競争行為を理由とする損害賠償請求の可否(争点1)(ア) 本件各情報の営業秘密該当性(争点1-1)(イ) Ai及びCiの不競法2条1項7号所定の不正競争行為該当性及び原 告の不競法2条1項8号所定の不正競争行為該当性(争点1-2) イ不法行為を理由とする損害賠償請求の可否(争点2)ウ会社法350条に基づく損害賠償請求の可否(争点3)エ被告の損害の有無及びその額(争点4)⑵ 本訴事件ア本件仮差押命令申立てに係る不法行為の成否(争点5) イ原告の損害の有無及びその額(争点6)ウ過失相殺の有無(争点7) 4 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1-1(本件各情報の営業秘密該当性)について(被告の主張) ア本件情報1について(ア) 秘密管理性本件情報1は、被告がドンシン社に対して1案件につき3000円の外注費(輸出一案件につきパートナーとなるフォワーダー間で支払われることがあるもので、パートナーフィーとも呼ばれる。以下、被告とド ンシン社間の上記外注費を「本件パートナーフィー」という。)を支払っていることを含むドンシン社に対する外注費支払等の営業戦略及び事業運営に関する情報の総称である。 被告は、本件情報1を含む複数の外注先に支払っているパートナーフィーの金額 ィー」という。)を支払っていることを含むドンシン社に対する外注費支払等の営業戦略及び事業運営に関する情報の総称である。 被告は、本件情報1を含む複数の外注先に支払っているパートナーフィーの金額や取引先の名称、特異事項(具体的な運用)に係る情報をエ クセルファイルに記載して整理している(以下、当該情報を「本件パートナーフィー一覧」という。)ところ、本件パートナーフィー一覧は、被告の共有サーバー内にある「社外秘」との名称が付されたフォルダ内に保存されていた。被告は、従業員の業務内容に応じて、サーバー内のフォルダごとに閲覧権限を付与しており、被告の従業員以外がサーバー 内にあるフォルダを閲覧することはできず、また、被告は、就業規則に おいて、職務上知り得た機密事項(個人情報を含む)を外部へ漏洩することを禁止していた。 以上によれば、本件情報1は、秘密管理性が認められる。 (イ) 有用性本件情報1は、ドンシン社に対する本件パートナーフィーの支払を円 滑に処理して同社との取引を維持するために必要なもので、被告のドンシン社に対する営業戦略及び被告の事業運営に関する情報であるから、有用性が認められる。 (ウ) 非公知性本件情報1は、上記(ア)記載のとおり、被告の共有サーバーにあるフォ ルダ内に格納されるなどして管理され、就業規則においても外部への漏洩が禁止されるなどしており、一般には知られていないことから、非公知性が認められる。 イ本件情報2について(ア) 秘密管理性 本件情報2は、被告における基本報酬単価を踏まえた国内輸入業者に対する具体的な請求に係る営業戦略及び事業運営に関する情報の総称である。被告は、被告の業務システムで 秘密管理性 本件情報2は、被告における基本報酬単価を踏まえた国内輸入業者に対する具体的な請求に係る営業戦略及び事業運営に関する情報の総称である。被告は、被告の業務システムであるWIN-SABIS(以下「本件システム」という。)内において、本件情報2を具体的な個別の取引情報という形で管理しているところ、本件システムは、被告本店所 在地に設置された閉鎖型サーバーなどの事前に承認したネットワークからしかログインできず、かつ、ログインをするためには被告から付与されたIDとパスワードを入力する必要がある。そして、被告は、国際運送部門、国内運送・通関部門、営業部門、経営支援部門に所属する従業員に対してのみIDとパスワードを付与している。 以上によれば、本件営業秘密2は、秘密管理性が認められる。 (イ) 有用性本件情報2は、ドンシン社関連の国内輸入業者に対する報酬請求をトラブルなく処理してドンシン社との取引を維持するために必要なもので、被告の国内事業者に対する営業戦略及び同社の事業活動に関する情報であるから、有用性が認められる。 (ウ) 非公知性本件情報2は、上記(ア)のとおり、本件システムにアクセスしないと入手できず、就業規則においても外部への漏洩が禁止されるなどしており、一般に知られていないことから、非公知性が認められる。 (原告の主張) ア本件情報1について(ア) 秘密管理性Aiは、被告に在籍していた当時、本件パートナーフィー一覧も、「社外秘」との名称が付されたフォルダも見たことがない。 また、本件情報1は、随時メールで社内共有され、営業のみならず、 事務担当の従業員の多くが確認できる状態にあったこ トナーフィー一覧も、「社外秘」との名称が付されたフォルダも見たことがない。 また、本件情報1は、随時メールで社内共有され、営業のみならず、 事務担当の従業員の多くが確認できる状態にあったこと、メールで共有する際、情報漏洩を防ぐための措置は講じられていなかったこと、本件パートナーフィーに関する情報は本件システムに記録されているところ、被告のほとんどの従業員が本件システムにログインして、本件パートナーフィーに関する情報を確認することができたこと、本件システムから の情報漏洩を防ぐための保護手段が講じられていなかったこと、本件システム内において、本件パートナーフィーに関する情報は、営業秘密に該当しないことが明らかな一般情報と区別されておらず、当該情報が営業秘密に当たることについての注意喚起もされていなかったことに鑑みれば、被告の従業員が、当該情報が外部に漏らすことの許されない営業 秘密として保護された情報であると認識することができる状況にあった とはいえず、秘密管理性を欠く。 (イ) 有用性韓国側フォワーダーにパートナーフィーを支払う必要があるかどうかは、当該フォワーダーとの取引件数や両社の関係性によるのであり、パートナーフィーの金額も取引件数や両社の関係性によって決まる。そし て、本件パートナーフィーに関する情報は、被告とドンシン社との合意によって定められた取引条件にすぎず、当然に他社にも適用されるわけではない。 原告は独自にドンシン社との間でパートナーフィーについて交渉し、その合意に基づき取引を開始したものであり、本件情報1が取引の維持 に有用な情報というわけではない。 したがって、本件情報1は、取引上、社会通念上保護に値するものではなく、客観的に有用であるとはいえない。 き取引を開始したものであり、本件情報1が取引の維持 に有用な情報というわけではない。 したがって、本件情報1は、取引上、社会通念上保護に値するものではなく、客観的に有用であるとはいえない。 (ウ) 非公知性Aiは、被告の営業担当者として本件情報1の内容を熟知していたと ころ、同人は被告の取締役だったため就業規則の適用を受けないし、退職に当たっても、本件情報1について、被告との間で秘密保持契約を締結しておらず、守秘義務を課されていない。 また、本件情報1は、ドンシン社も当事者として当然に当該情報を保有しているが、ドンシン社に守秘義務は課されていない。したがって、 原告は、ドンシン社から本件情報1を入手することができる。 さらに、ドンシン社の他のパートナーも、ドンシン社がパートナーフィーの支払を要求することは知っている。パートナーフィーの金額を決めるのはドンシン社側であり、ドンシン社のEi社長(以下「Ei社長」という。)やドンシン社との関係性によって金額は変動するものである ところ、ドンシン社は、パートナーに対し、他社のパートナーフィーの 金額を伝えて金額を提示することもある。 上記に述べたことからすれば、本件情報1は、保有者である被告の管理下以外では入手できない状態にあったとはいえず、非公知性が認められない。 イ本件情報2について (ア) 秘密管理性本件情報2は、被告のほとんどの従業員がIDとパスワードを使って本件システムにログインして、国内輸入業者に対する請求金額等を確認することができたこと、本件システム内において、当該情報が営業秘密に該当しないことが明らかな一般情報と区別されておらず、当該情報が 営業秘密に当たるこ て、国内輸入業者に対する請求金額等を確認することができたこと、本件システム内において、当該情報が営業秘密に該当しないことが明らかな一般情報と区別されておらず、当該情報が 営業秘密に当たることについての注意喚起もされていなかったこと、本件情報2が船会社発行のANや被告発行のANや請求書に記載されている情報であるところ、ANはFAXで送受信され、受信した資料はその場にいる者なら誰でも見られる状態にあったこと、請求書はパスワードのないPDFファイルをメール添付する方法でやり取りされていたこと、 取引先リストは被告の全従業員がアクセス可能な共有フォルダに保存されていたこと、情報漏洩を防ぐための保護手段が講じられていなかったことからすれば、被告の従業員が、当該情報が外部に漏らすことの許されない営業秘密として保護された情報であると認識することができる状況にあったとはいえず、秘密管理性を欠く。 (イ) 有用性国内の通関・配送業務はドンシン社とは無関係であり、その報酬は、日本側フォワーダーと国内輸入業者との自由な取引交渉によって、取引の都度、個別に決まるものである。そのため、国内の通関・配送業務の報酬に関する過去の情報について有用性はない。 (ウ) 非公知性 Aiは、被告の営業担当者として本件情報2の内容を熟知していたところ、同人は被告の取締役であったため就業規則の適用を受けないし、退職に当たっても、本件情報2について、被告との間で秘密保持契約を締結しておらず、守秘義務を課されていない。 また、本件情報2については、国内輸入業者も個別の取引の当事者と して、具体的な請求金額の情報を保有しているが、当該情報につき何ら守秘義務を課されていない。つまり、 されていない。 また、本件情報2については、国内輸入業者も個別の取引の当事者と して、具体的な請求金額の情報を保有しているが、当該情報につき何ら守秘義務を課されていない。つまり、国内輸入業者に確認すれば無理なく入手可能な情報である。 以上によれば、本件情報2は、保有者である被告の管理下以外では入手することができない状態にあったとはいえず、非公知性が認められな い。 ⑵ 争点1-2(Ai及びCiの不競法2条1項7号所定の不正競争行為該当性及び原告の不競法2条1項8号所定の不正競争行為該当性)について(被告の主張)ア Ai及びCiの行為の不競法2条1項7号所定の不正競争行為該当性 (ア) Ciの行為原告に転職予定であったCiは、Aiと共謀し、又はAiから指示を受けるなどして、本件システムにアクセスし本件情報2を含むエクセルファイルの作成を行い、これを、令和3年11月15日頃又は同日以降、Aiに送信するなどの方法で本件情報2を開示したほか、Ai及びDi と共謀し、又はAiから指示を受けるなどして、①同年10月27日には、ドンシン社との取引1件につき同社に対して外注費3000円を支払うのが基本であること、金額調整案件はドンシン社に対して上記外注費を支払う必要はないことなどの本件情報1を開示し、②同月29日には、中国案件に係る国内輸入業者に対する具体的な請求の運用という本 件情報2を開示し、③同年11月5日には、国内輸入業者に対する具体 的な請求の運用という本件情報2を開示した。 Ciは、上記の本件各情報の開示につき、被告からドンシン社などの取引先を奪うなどして不正の利益を原告に得させる目的又は被告に損害を与える目的があった。 以上によれば、上記Ciの行為は 開示した。 Ciは、上記の本件各情報の開示につき、被告からドンシン社などの取引先を奪うなどして不正の利益を原告に得させる目的又は被告に損害を与える目的があった。 以上によれば、上記Ciの行為は、不競法2条1項7号所定の不正競 争行為に該当する。 (イ) Aiの行為Aiは、遅くとも原告が設立された令和3年8月26日以降、ドンシン社との取引開始及び同取引維持のために、本件各情報を原告に開示し、また、使用した。Aiの、上記本件各情報の開示及び使用は、被告から ドンシン社等の取引先を奪うなど不正の利益を得る目的又は被告に損害を与える目的があった。 以上によれば、上記Aiの行為は、不競法2条1項7号所定の不正競争行為に該当する。 イ原告の不競法2条1項8号所定の不正競争行為該当性 上記アのとおり、被告の従業員であったCiの行為は、不競法2条1項7号所定の不正競争行為であるところ、原告代表者であるAiは、上記ア(ア)のとおり、被告の従業員であったCiと共謀し、又はCiに指示するなどして、本件各情報の開示を行わせていることから、原告は、Ciをして取得した本件各情報が不競法2条1項7号該当行為によるものであること を知ってこれを取得し、また、遅くとも原告が設立された令和3年8月26日以降、これをドンシン社との取引開始及び同取引の維持のため使用した。 以上によれば、原告が本件各情報を使用したことは、不競法2条1項8号所定の不正競争行為に該当する。 (原告の主張) ア Ai及びCiの各行為の不競法2条1項7号所定の不正競争行為該当性(ア) Ciの行為Ciは、Aiが被告に在籍していた当時、Aiの部下としてドンシン社関連の取引の事務的なサポートをしていたため、 Ciの各行為の不競法2条1項7号所定の不正競争行為該当性(ア) Ciの行為Ciは、Aiが被告に在籍していた当時、Aiの部下としてドンシン社関連の取引の事務的なサポートをしていたため、原告がドンシン社との取引を開始することを知り、個人的にシステム入力の方法や請求手続 といった事務処理手順を助言したり、原告の従業員としてドンシン社の取引事務を担当することになったDiから事務的な助言を求められて、これに応じたりしたことがあるものの、Aiから、本件各情報の開示等を指示されたことはない。 本件各情報は、いずれもCiの助言がなくともドンシン社の従業員に 確認することで入手可能な情報であり、原告とドンシン社との取引開始及び取引の維持とは無関係であって、被告の取引先を奪うとか、被告に損害を与える目的で、Ciに本件各情報の開示を求め、Ciがこれに応じたという事実はないから、Ciには図利加害目的がない。 以上によれば、Ciが、原告に対し、システム入力の方法や請求手続 といった事務処理手順を助言するなどしたことは、不競法2条1項7号所定の不正競争行為に該当しない。 (イ) Aiの行為Aiは、本件各情報の開示等をCiに指示等したことはない。Aiは被告の営業担当者だったため、本件各情報を熟知していたが、その情報 を利用して原告とドンシン社との取引を開始したわけでもない。 また、原告が、被告からドンシン社等の取引先を奪うなど不正の利益を得る目的ないし被告に損害を与える目的で本件営業秘密の情報を使用したという事実もない。 以上によれば、Aiは、不競法2条1項7号所定の不正競争行為をし ていない。 イ原告について原告がドンシン社との取引を開始した経緯は、令和3年9月上旬頃、被告からの 。 以上によれば、Aiは、不競法2条1項7号所定の不正競争行為をし ていない。 イ原告について原告がドンシン社との取引を開始した経緯は、令和3年9月上旬頃、被告からの連絡で、Aiが被告の役員を辞任して原告を設立したことを知ったドンシン社のEi社長が、Aiに対する個人的な信頼関係から、Aiが設立した原告との取引を希望し、ドンシン社内での検討の結果、正式に、 原告をドンシン社のパートナーとすることが決定したことによるものであり、本件各情報は無関係である。原告は、本件各情報について営業秘密不正開示行為があったことの認識はない。 以上によれば、原告は、不競法2条1項8号所定の不正競争行為をしていない。 ⑶ 争点2(不法行為を理由とする損害賠償請求の可否)について(被告の主張)上記⑴で主張した原告による本件各情報の使用行為が不競法2条1項8号所定の不正競争行為に該当しないとしても、当該行為は、被告の営業秘密(不競法上の営業秘密に限らない。)を侵害する不法行為であるから、原告 は、民法上の不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 また、DiがCiから本件各情報を取得した行為について、Aiとの共謀又はAiによる指示がなかったとしても、原告従業員であるDiは、被告からドンシン社等の取引先を奪うなど、不正の利益を得る目的又は被告に損害を与える目的で、被告の従業員であったCiをして、被告の就業規則上も漏 洩が禁止されている本件各情報を開示させて原告での業務に使用したばかりか、本件各情報を原告内で共有して、ドンシン社との取引開始及び同取引の維持のために原告に本件各情報を使用させるなどしたから、上記Diの行為は被告に対する不法行為に当たるところ、原告は、Diの使用者であるか 件各情報を原告内で共有して、ドンシン社との取引開始及び同取引の維持のために原告に本件各情報を使用させるなどしたから、上記Diの行為は被告に対する不法行為に当たるところ、原告は、Diの使用者であるから、民法715条所定の使用者責任に基づく損害賠償責任を負う。 (原告の主張) 上記⑴のとおり、本件各情報は、不競法上の営業秘密に該当しない情報であり、民法上も秘密としての法的保護に値しないものであるから、原告の行為はいかなる意味でも不法行為には該当しない。 また、本件各情報は、Ciの助言がなくともドンシン社の従業員に確認することで入手可能な情報であり、原告とドンシン社との取引開始及び取引の 維持とは無関係であって、Diが被告の取引先を奪うとか、被告に損害を与える目的で、Ciに本件各情報の開示を求めた事実はない。 ⑷ 争点3(会社法350条に基づく損害賠償請求の可否)について(被告の主張)Aiは、被告の取締役として営業業務等を遂行する上で本件各情報を被告 から開示され、又は取得していること、被告の退職時に1800万円もの高額の役員報酬を受領していたことなどからすれば、信義則上又は黙示の合意により、被告の取締役を退任した後も、不正の競合その他の不正の利益を得る目的若しくは被告に損害を加える目的で、本件各情報を使用、開示しないという秘密保持義務を負担していたというべきである。 それにもかかわらず、Aiは、被告から被告の最大の取引先であったドンシン社を奪うという不正の利益を得る目的又は被告に損害を与える目的で、本件各情報をドンシン社との取引開始及び同取引維持のために使用するなど、上記秘密保持義務に故意に違反するという不法行為を行った。 Aiによる上記不法 を得る目的又は被告に損害を与える目的で、本件各情報をドンシン社との取引開始及び同取引維持のために使用するなど、上記秘密保持義務に故意に違反するという不法行為を行った。 Aiによる上記不法行為は、原告の業務執行として行われたものであるこ とから、原告は、会社法350条に基づき損害賠償責任を負う。 (原告の主張)上記⑴のとおり、本件各情報は、いずれも不競法上の営業秘密に該当しない情報であり、民法上も秘密としての法的保護に値しないものであるから、信義則上の秘密保持義務の対象にもなり得ないし、秘密保持に関する黙示の 合意もない。 そもそも、Aiに、被告とドンシン社との取引を奪う意図や目的はなく、原告が被告の機密情報を利用して取引先を奪ったわけではない。 ⑸ 争点4(被告の損害の有無及びその額)について(被告の主張)被告には、ドンシン社との取引により得られるべき利益相当額2209万 8255円の損害及び弁護士費用相当額220万円の損害が生じている。 (原告の主張)否認する。 ⑹ 争点5(本件仮差押命令申立てに係る不法行為の成否)について(原告の主張) ア本件仮差押命令申立ての違法性上記⑵から⑷までで述べたとおり、原告は、ドンシン社との取引開始及び同取引維持のため、本件各情報を使用したことはないから、本件仮差押命令申立ての被保全権利である不法行為に基づく損害賠償請求権は存在しないところ、本件仮差押決定は、保全異議審において、被保全権利が存在 しないために取り消されたものであるから、被告は、被保全権利の不存在について故意又は過失のあったときは、民法709条により、本件仮差押決定の執行によって受けた損害を賠償す 、被保全権利が存在 しないために取り消されたものであるから、被告は、被保全権利の不存在について故意又は過失のあったときは、民法709条により、本件仮差押決定の執行によって受けた損害を賠償すべき義務がある。 イ過失について上記⑴で述べたとおり、本件各情報は明らかに秘密管理性、有用性及び 非公知性を欠いており、その判断が困難である事情は認められないのであるから、被告は、本件被保全債権が存在しないことを容易に認識することができた。 そもそも、被告とドンシン社との取引は、Ei社長の信頼を得ていたAiが全面的に担当していたのであるから、Aiの退職を知ったEi社長が、 Aiが設立した原告に取引を依頼することは自然な流れであり、原告がド ンシン社との取引を開始するために、本件各情報を不正に入手する必要などないことも、被告は容易に理解することができたはずである。 それにもかかわらず、被告は、原告が被告の内部情報を不正に入手してドンシン社との取引を乗っ取る不法行為をしたと決め付け、それを裏付ける客観的な証拠が存在しないにもかかわらず、本件被保全債権を被保全権 利として、本件仮差押命令申立てを行い、その執行に及んだのであるから、被告には、本件仮差押命令申立てについて、過失があったことは明らかである。 (被告の主張)ア本件仮差押命令申立ての被保全権利が存在すること 上記⑵から⑷までで述べたとおり、被告は原告に対し、本件被保全債権を有しているのであるから、原告の主張はその前提を欠く。 イ過失について本件では、営業秘密該当性に関する判断が必ずしも容易でないこと、被告の元従業員が被告の内部情報を使用したり、原告の従業員が被告の営業 活動の内 その前提を欠く。 イ過失について本件では、営業秘密該当性に関する判断が必ずしも容易でないこと、被告の元従業員が被告の内部情報を使用したり、原告の従業員が被告の営業 活動の内容を聞き出そうとしてきたこと、原告の従業員が被告の内部情報を自慢げに取引先などに話をしていた等の情報を得ていたこと、Ciが被告社内において原告に合流することが既に決定している旨の発言をしていたところ、同人が、AiやDiに対して本件各情報を開示していたこと、Aiは被告取締役を退任してから僅か6日後に原告を設立しており、被告 取締役在職中から、原告設立のため、被告従業員の引き抜きを含む社員の採用活動等をしていたり、被告の従業員に対して被告の内部情報を提供するよう要請していたこと、被告が、原告に対し、原告による船会社のウェブブッキングサイトへの不正アクセスを指摘する等したが、原告からは十分な回答を得られず、不正アクセスも否定されたこと、原告が被告の見積 書の書式を用い、同見積書の連絡先に被告の連絡先が記載されていたこと、 被告のドンシン社との取引が令和3年10月以降に急激かつ不自然に減少したことといった事情を踏まえれば、被告が原告に対して損害賠償請求権を有すると信じたことつき相当の理由があり、本件仮差押命令申立てに過失がないことは明らかである。 ⑺ 争点6(原告の損害の有無及びその額)について (原告の主張)本件仮差押決定を排除するためには保全異議を申し立てる必要があったから、本件保全異議申立事件の手続を遂行するために要した弁護士費用は、違法な本件仮差押命令申立てによって通常生ずべき損害である。 原告は、令和4年5月12日、原告代理人に対し、本件保全異議申立事件 に係る法律事務の遂行を委任し、 に要した弁護士費用は、違法な本件仮差押命令申立てによって通常生ずべき損害である。 原告は、令和4年5月12日、原告代理人に対し、本件保全異議申立事件 に係る法律事務の遂行を委任し、その報酬として、着手金143万円及び報酬286万円(いずれも消費税込み)を支払うとの契約を締結し、同年6月7日に着手金143万円を、令和5年5月9日に報酬286万円を支払った。 なお、上記報酬は、本案訴訟が提起された場合の報酬も含む趣旨である。 以上によれば、上記弁護士費用合計金429万円及び本件訴訟提起に係る 弁護士費用相当額42万円は、本件仮差押命令申立てに係る被告の不法行為と相当因果関係のある損害である。 (被告の主張)本件仮差押命令申立てにより原告が本件訴訟提起を余儀なくされたというような事実はなく、本件仮差押命令申立てと本件本訴提起との間に相当因果 関係は認められないから、本件訴訟提起に係る弁護士費用は原告の損害とは認められない。 また、本件保全異議申立事件を遂行するために要した弁護士費用については、旧日本弁護士連合会報酬等基準(以下「旧報酬基準」という。)に照らしても相当とはいえないから、原告主張の損害発生の事実は認められないと いうべきである。 旧報酬基準に照らした場合の着手金及び成功報酬は、最大でもそれぞれ86万9941円である。 ⑻ 争点7(過失相殺の有無)について(被告の主張)上記⑹(被告の主張)イ記載のとおり、本件仮差押命令申立て当時、原告 が元被告従業員を利用して本件各情報を不正に取得したことを基礎付けるに足りる十分な事情が存在した一方で、原告はこれらの事情に基づく被告の疑念に対して十分な説明や回答を尽くさず、かえって被告の疑念を強める結果を招いた。 して本件各情報を不正に取得したことを基礎付けるに足りる十分な事情が存在した一方で、原告はこれらの事情に基づく被告の疑念に対して十分な説明や回答を尽くさず、かえって被告の疑念を強める結果を招いた。そのため、被告としては緊急やむを得ず本件仮差押命令申立てをせざるを得なかった。 上記事情に鑑みれば、本件仮差押命令申立てに基づき原告に何らかの損害が生じたとしても、原告に生じた損害については原告側の過失の寄与する割合が相当程度に高いといわざるを得ず、相当程度の過失相殺がされるべきである。 (原告の主張) 原告は、被告の疑念に対し誠実に必要十分な回答をしているのであるから、同回答に基づき調査をすれば事実は明らかになるにもかかわらず、被告は、まともな調査もせず、一方的に原告が元被告従業員を利用して本件各情報を不正に取得したと決め付け、本件仮差押命令申立てをしたものである。 このような事実経過からすれば、原告には何らの落ち度もなく、過失相殺 は認められない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 被告におけるドンシン社との取引状況等 ア被告は、平成21年10月、別の会社でフォワーダー業務を行っていた BiとAiが独立する形で設立され、日本側のフォワーダー業務を開始した。平成24年頃には、韓国側のフォワーダーであるドンシン社との間で海上輸送に関する取引を開始した。 Aiは、被告の取締役として、貨物運送事業の営業や取引先の管理業務を担当しており、ドンシン社との取引に関する営業や取引先の管理業務を 担当していた。 被告は、ドンシン社との取引開始後、取引規模を拡大し、令和3年9月には、海上輸入の月間取 や取引先の管理業務を担当しており、ドンシン社との取引に関する営業や取引先の管理業務を 担当していた。 被告は、ドンシン社との取引開始後、取引規模を拡大し、令和3年9月には、海上輸入の月間取引件数が140ないし150件となり、ドンシン社が被告の最大の取引先となっていた。(甲2、7、乙15、16、23、42、原告代表者) イドンシン社を含む韓国のフォワーダーは、輸出者となる荷主に対して、海上運賃相当額を返金しているところ、ドンシン社は、複数の日本側フォワーダーをパートナーとして選定し、パートナーごとに設定したパートナーフィーを請求していた。 被告もドンシン社に対して本件パートナーフィーを支払っていたものの、 被告の営業によりドンシン社を輸出者側フォワーダーとして選定した場合や、被告の国内輸入業者に対する報酬請求額を減額する場合には本件パートナーフィーの支払が免除されていた。(乙42)⑵ 本件各情報の管理状況等ア被告は、就業規則において、職務上知り得た機密事項(個人情報を含む) は他に漏らしてはならないことを定めていた。 本件システムは、原則として被告の社内ネットワークからしかログインすることができず、外部からログインするためには被告の経営支援チームから個別にVPN設定を受ける必要があった。もっとも、被告は、被告の従業員のうちトラックの運転手等の現業社員以外の約8割の従業員に対し、 本件システムのIDとパスワードを付与しており、これらの従業員は、各 自のIDとパスワードを用いて本件システムを利用していた。(乙21、42、証人Fi)イ本件情報1被告は、前記⑴イに基づき、月ごとに、ドンシン社に対する本件パートナーフィーを集計し、支払っていたところ、被告の大阪支店に所属してい ムを利用していた。(乙21、42、証人Fi)イ本件情報1被告は、前記⑴イに基づき、月ごとに、ドンシン社に対する本件パートナーフィーを集計し、支払っていたところ、被告の大阪支店に所属してい たCiは、本件システムに記録されているドンシン社との取引総数や、本件パートナーフィーの支払が免除される取引の件数を踏まえて各月の支払額を算定し、これを被告代表者やCiの前任者、被告の航空業務の事務長、業務・海上輸入チーム長、経営支援チームの従業員、営業チームの従業員等にメールで共有していた。 上記メールや本件パートナーフィーの支払に係る業務稟議書には、本件パートナーフィーに係る情報が営業秘密等の機密情報である旨の表示はされていなかった。(乙17、23、証人Fi)ウ本件情報2被告は、ドンシン社から受注した案件について国内輸入業者に対して請 求する報酬を、通関業務や国内配送業務などに分け、本件システムに入力する方法で管理していた。本件システムには、本件情報2に含まれる個々の国内輸入業者に対する具体的な請求額のほか、BLナンバーや取引の出庫日等の情報が記録されていたが、国内輸入業者に対する具体的な請求額は、国内輸入業業者ごとに、BLナンバー等の情報と区別されずに記載さ れていた。 個々の国内輸入業者に対する具体的な請求額は、本件システムにログインした従業員であれば閲覧可能であった。(甲16、17、乙5、42、証人Fi)⑶ 原告とドンシン社との取引開始の経緯 ア Aiは、令和3年8月26日に原告を設立し、日本側フォワーダー業務 を開始したところ、同年9月上旬、Aiが被告を退社したことを知ったドンシン社のEi社長から取引打診(セールスリード)の連絡を受け、Aiは、同月13日、ドンシン社に対して 本側フォワーダー業務 を開始したところ、同年9月上旬、Aiが被告を退社したことを知ったドンシン社のEi社長から取引打診(セールスリード)の連絡を受け、Aiは、同月13日、ドンシン社に対して原告の住所や連絡先をメールで通知した。 その後、ドンシン社は、原告に対し、SHIPBACK(一度出荷され た貨物を積み地に戻すこと。)案件の取引を打診した。その際、ドンシン社は、原告に対し、運賃が他社の水準と同様になることを希望するとともに、参考資料として被告がドンシン社宛てに提出した見積書を送付した。 (甲7、9、10、原告代表者)イ原告は、令和3年9月23日、ドンシン社から、同年10月1日以降の 輸出入船積案件について、原告と仕事を進めることとした旨の連絡を受け、ドンシン社のパートナーとして、従前、被告が受注していた日本側フォワーダー業務を行うようになった。(甲7、11、12、原告代表者)⑷ 原告による情報の取得等Diは、令和3年3月に被告を退社し、同年9月頃には、原告の従業員と して、ドンシン社の案件を担当するようになった。Ai及びDiは、Ciを含む被告の従業員に対し、以下の内容のやり取りをし、情報提供を受けるなどした。 ア Ciは、Aiの依頼を受け、令和3年9月21日頃、原告に対し、被告の顧客である国内輸入業者のHBLナンバーや取引日等が記載されたリス トを送付した。(甲16、乙5、6)イ被告従業員であったGiは、令和3年9月28日、Aiに対し、Aiから依頼を受けた荷主情報について、情報漏洩の際に摘発されたら問題となるなどとして対応できない旨のメッセージを送付した。(乙31、43)ウ Ciは、令和3年9月29日、Ai及びDiをカカオトークのチャット ルームに招待し、AN送付の共有 摘発されたら問題となるなどとして対応できない旨のメッセージを送付した。(乙31、43)ウ Ciは、令和3年9月29日、Ai及びDiをカカオトークのチャット ルームに招待し、AN送付の共有は、当該チャットルームで行うよう求め るとともに、原告の案件にかかるANを作成し、共有した。(乙7)エ Ciは、令和3年9月30日、Diに対してドンシン社の案件にかかるAN作成方法を伝えるとともに、Aiに対して日本国内の通関に関する原告への問合せについて自身で対応しておく旨伝達した。(甲18、乙8)オ Ciは、令和3年10月10日、Aiに対し、DO案件(デリバリーオ ーダー案件といい、輸入者へ貨物を引き渡すための手数料を受領する案件のこと。)に関する記録の入力方法を指示した。(乙9、15)カ Ciは、令和3年10月12日、Diに対し、ドンシン社に対するパートナーフィーの精算方法を説明した。(甲19、乙10、15)キ Ciは、令和3年10月13日、原告のドンシン社の案件について、本 件パートナーフィーの処理と同様の処理方法でパートナーフィーを入力し、その内容を確認して、確認結果をDiに送付した。(甲22、乙11)ク Ciは、令和3年10月27日、Diからドンシン社に対するパートナーフィーの支払免除対象について照会を受け、被告における本件パートナーフィーの支払が免除される場合について回答をした。(甲23、乙5) ケ Ciは、令和3年10月29日、Diからドンシン社の案件のうち、中国からの輸入案件に対する輸入業者への報酬請求額やパートナーフィーの額について照会を受け、被告における取扱いを回答した。(甲20、乙12)コ Ciは、令和3年11月5日、Diからドンシン社の案件のうち、千葉 港に関する輸入業者 請求額やパートナーフィーの額について照会を受け、被告における取扱いを回答した。(甲20、乙12)コ Ciは、令和3年11月5日、Diからドンシン社の案件のうち、千葉 港に関する輸入業者への報酬請求額やパートナーフィーの額について照会を受け、被告における取扱いを回答した。(乙13)⑸ 本件仮差押命令申立ての経緯ア原告は、令和3年10月6日、被告の顧客であった国内輸入業者に対し、被告において使用している見積書と書式が酷似する見積書を送付した。同 見積書において、原告の電話番号及びFAX番号とされる番号は被告のも のとなっていた。(乙27、28)イ被告は、令和3年10月頃、取引先である株式会社日本電機サービス(以下「日本電機サービス」という。)から、同社が通関業務で利用するリアルタイム口座を原告が把握している旨の連絡を受け、同月19日、原告に対し、日本電機サービスのリアルタイム口座等の通関情報の入手経路 についての説明及び被告が通関業務を実施できなかったことによる逸失利益の補填を要求した。 原告は、令和3年10月22日、被告に対し、日本電機サービスと交わしたメール等の内容を知らせる義務はなく、また、通関情報は全て日本電機サービスから提供を受けたものであって、原告と日本電機サービスとの 取引に何ら問題はなく、被告の主張は言いがかりである旨回答した。(乙24、32の2、42)ウ被告の従業員であったHiは、令和3年10月26日付けで被告を退社し、同月27日に原告に就職した。また、被告の営業部長であったIi(以下「Ii」という。)は、同年11月1日付けで被告を退社し、同月 2日に原告に就職した。(甲42、43、58の1、乙42、証人Ii)エ被告は、令和3年11月頃、船会社のウェブブッ Ii(以下「Ii」という。)は、同年11月1日付けで被告を退社し、同月 2日に原告に就職した。(甲42、43、58の1、乙42、証人Ii)エ被告は、令和3年11月頃、船会社のウェブブッキングサイトが不正アクセスされている可能性があるとして、同ウェブサイトのID及びパスワードを変更したところ、Diは同月12日に同内容をCiから告げられた際、「だからパスワードが変わっていたのですね。」、「Ji、Ki私が 確認採っていたのですが、アクセスできなくなっていました。」と回答した。 被告は、令和4年2月8日、原告に対し、原告が被告のID及びパスワードを使用して船会社のウェブブッキングサイトに不正アクセスし、被告の取引情報を閲覧していたことを確認したとして、同ウェブサイトへのア クセスの中止及び取得した情報の開示を要求した。 原告は、令和4年2月10日、被告に対し、上記の被告の請求について、何のことか分かりかねること、不正アクセスを確認したということであれば、その証拠を開示するよう回答した。(甲40、乙32の1及び3)オ被告とドンシン社との月間取引件数は、月平均140件ないし150件であったところ、Aiによる原告設立後の令和3年10月には26件、同 年11月には6件となるなど、大幅に減少した。(乙42)カ被告は上記の経緯を踏まえ、原告による営業秘密の奪取等があり、また、原告が営業秘密の持ち出し等の事実を否認していることから保全の必要があるとして、本件仮差押命令申立てをした。(甲3、乙42)⑹ 本件保全異議事件の経緯 ア東京地方裁判所は、令和4年3月22日、本件仮差押決定を行い、原告は、原告名義の普通預金口座に存在する2429万8255円の仮差押えを受けた。(甲5)イ原告は、 全異議事件の経緯 ア東京地方裁判所は、令和4年3月22日、本件仮差押決定を行い、原告は、原告名義の普通預金口座に存在する2429万8255円の仮差押えを受けた。(甲5)イ原告は、令和4年5月12日、原告代理人との間で、委任者を原告、受任者を原告代理人、受任範囲を本件決定に対する保全異議申立事件の第一 審、報酬を着手金143万円(税込)、諸費用6万円、成功報酬286万円(税込)とする委任契約(以下「本件委任契約」という。)を締結し、同年6月7日、原告代理人に対し、着手金143万円及び諸費用6万円を支払った。(甲48、49)ウ原告は、本件保全異議決定が令和5年3月16日の経過をもって確定し たことから、同年5月9日、原告代理人に対し、本件委任契約に基づき成功報酬286万円を支払った。(甲50)エ原告と原告代理人は、令和7年2月25日、本件委任契約について、本件仮差押命令申立てに係る本案訴訟が提起された場合の弁護士費用を含むものであり、本件反訴請求について別途弁護士費用を請求しないことを確 認する旨の確認書を取り交わした。(甲57) 2 争点1-1(本件各情報の営業秘密該当性)について⑴ 本件情報1についてア被告は、本件パートナーフィーを含むパートナーフィーについて、本件パートナーフィー一覧として整理し、被告のサーバー内の社外秘との名称が付されたフォルダに格納しており、また、従業員の業務内容に応じて、 サーバー内のフォルダごとに閲覧権限を付与し、就業規則において職務上知り得た機密事項(個人情報を含む)の外部への漏洩を禁止していたことから、本件情報1には秘密管理性が認められる旨主張し、証人Fi及び被告代表者も同旨を供述ないし陳述する。 しかしながら、証拠(乙18) 得た機密事項(個人情報を含む)の外部への漏洩を禁止していたことから、本件情報1には秘密管理性が認められる旨主張し、証人Fi及び被告代表者も同旨を供述ないし陳述する。 しかしながら、証拠(乙18)によれば、本件パートナーフィー一覧は 右肩に「2023.2.14 UPDATE」と記載されており、令和5年2月14日時点で存在していたことは認められるものの、令和3年時点においても存在していたと認めるに足りる証拠はなく、また、被告がサーバー内のフォルダに閲覧権限を付与していたこと及び社外秘との名称が付されたフォルダが存在していたことを認めるに足りる証拠もない(この点 に関する証人Fi及び被告代表者の供述ないし陳述は、具体的な裏付けを欠くものであって、信用することができない。)。 かえって、前記認定事実⑵イのとおり、本件パートナーフィーは、Ciにより毎月集計され、被告の営業チームの従業員等に共有されており、共有する際のメールや支払に係る業務稟議書に営業秘密である旨の表示がさ れていなかったこと、本件パートナーフィーの月ごとの算定は、Ciが本件システムの情報を前提として算定しているところ、前記認定事実⑵アのとおり、本件システムには、被告従業員のうち現業社員以外の約8割の従業員がアクセス可能であったことが認められる。 さらに、本件システム内において本件パートナーフィーに関する情報が 他の情報と区別して営業秘密であると表示されていたことを認めるに足り る証拠はなく、その他、本件情報1について具体的な管理方法を認めるに足りる証拠はない。 そうすると、たとえ就業規則において職務上知り得た機密事項(個人情報を含む)の外部への漏洩が禁止されていたとしても、営業秘密であると明示されていない本件情報1について、秘密管理して 拠はない。 そうすると、たとえ就業規則において職務上知り得た機密事項(個人情報を含む)の外部への漏洩が禁止されていたとしても、営業秘密であると明示されていない本件情報1について、秘密管理していたとは認められない。 イしたがって、本件情報1は、客観的に見て、これにアクセスした者において当該情報が秘密情報であることを認識し得る程度に管理されていたと認めることはできない。 ⑵ 本件情報2について前記認定事実⑵ウのとおり、本件情報2は、本件システムに個別に記録さ れているところ、本件システムには、国内輸入業者ごとに本件情報2となる具体的な請求額とBLナンバーや出庫日等が区別されずに記載され、本件システムにログインした従業員であれば閲覧可能であったことが認められ、また、前記認定事実⑵アのとおり、本件システムには、被告従業員のうち現業社員以外の約8割の従業員がアクセス可能であったことを併せ考慮すると、 本件情報2が他の情報と区別して営業秘密であると表示されていたとは認められず、その他、本件情報2について具体的な管理方法を認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件情報2は、客観的に見て、これにアクセスした者において当該情報が秘密情報であることを認識し得る程度に管理されていたと認め ることはできない。 ⑶ そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件各情報が不競法2条6項所定の営業秘密に当たるということはできないから、被告の不競法4条に基づく請求は理由がない。 3 争点2(不法行為を理由とする損害賠償請求の可否)について 被告は、本件各情報が不競法2条6項所定の営業秘密に該当しないとしても、 原告による取得行為や当該情報の利用行為は不法行為に該当し、また、Diは、Aiとの共 求の可否)について 被告は、本件各情報が不競法2条6項所定の営業秘密に該当しないとしても、 原告による取得行為や当該情報の利用行為は不法行為に該当し、また、Diは、Aiとの共謀の有無にかかわらず、被告からドンシン社等の取引先を奪うなど、不正の利益を得る目的又は被告に損害を与える目的で、本件各情報を取得し、使用したことから、Diの使用者である原告は、使用者責任に基づく損害賠償義務を負う旨主張する。 確かに、前記認定事実⑷によれば、原告代表者であるAiや原告の従業員であるDiは、同⑷ア、カないしコのように、Ciから一部本件各情報に相当する情報を取得しているとみる余地があるものの、上記2のとおり、本件各情報が不競法2条6項所定の営業秘密に該当しない以上、それらの情報の取得及び使用それ自体が直ちに不法行為に該当するものとは認められない。 また、ドンシン社の案件に関するものについては、前記認定事実⑶で認定したとおり、原告がドンシン社との取引を開始したのは、ドンシン社のEi社長からの打診を受けたことによるものであることからすれば、原告及びその従業員が被告からドンシン社の取引先を奪うなど、不正の利益を得る目的又は被告に損害を与える目的でこれらの情報を取得したものであると認めることはでき ない。 その余のやり取りについても、単に原告の業務のうち、輸入者側のフォワーダー業務に関する処理方法を照会するものや、具体的な内容が不明のものであって、これにより原告にいかなる損害が生じ得るのか不明といわざるを得ず、これらの情報の取得をもって、原告において殊更に不正の利益を得る目的又は 被告に損害を与える目的があったことを認めるに足りるものともいえない。 そうである以上、原告及びDiの行為が違法なものというこ の情報の取得をもって、原告において殊更に不正の利益を得る目的又は 被告に損害を与える目的があったことを認めるに足りるものともいえない。 そうである以上、原告及びDiの行為が違法なものということはできないから、不法行為を理由とする被告の請求は理由がない。 4 争点3(会社法350条に基づく損害賠償請求の可否)について被告は、Aiが、信義則上又は黙示の合意により、被告の取締役を退任した 後も、不正の競合その他の不正の利益を得る目的又は被告に損害を加える目的 で本件各情報を使用、開示しないという秘密保持義務を負担していたにもかかわらず、被告から被告の最大の取引先であったドンシン社を奪うという不正の利益を得る目的若しくは被告に損害を与える目的で、本件各情報をドンシン社との取引開始及び同取引維持のために使用するなど、上記秘密保持義務に故意に違反したことから、原告は会社法350条に基づき損害賠償責任を負う旨主 張する。 しかしながら、上記3で説示したところに照らせば、原告において、被告からドンシン社等の取引先を奪うなど、不正の利益を得る目的又は被告に損害を与える目的を有していたとは認められないから、Aiの行為が違法なものとして不法行為が成立するということはできず、その余の点について判断するまで もなく、会社法350条に基づく被告の請求は理由がない。 5 争点5(本件仮差押命令申立てに係る不法行為の成否)について⑴ 仮差押命令が、その被保全権利が存在しないために当初から不当であるとして取り消された場合において、同命令を得てこれを執行した仮差押債権者が権利の不存在について故意又は過失のあったときは、同債権者は、民法7 09条により、同命令の債務者がその執行によって受けた損害を賠償すべき義務があるものとい を得てこれを執行した仮差押債権者が権利の不存在について故意又は過失のあったときは、同債権者は、民法7 09条により、同命令の債務者がその執行によって受けた損害を賠償すべき義務があるものというべきであり、一般に、仮差押命令が異議若しくは上訴手続において取り消され、又は本案訴訟において債権者(原告)敗訴の判決が言い渡され、その決定又は判決が確定した場合には、他に特段の事情のない限り、同債権者において過失があったものと推定するのが相当である(最 高裁昭和43年(オ)第260号同年12月24日第三小法廷判決・民集22巻13号3428頁参照)。 ⑵ これを本件についてみると、前記前提事実⑶イないしエのとおり、本件仮差押決定は、本件保全異議申立事件において、原告が被告主張の情報を持ち出して利用したことによってドンシン社と取引を開始し、これを継続するこ とができたとは認められず、本件被保全債権である不法行為に基づく損害賠 償請求権があるとの疎明がないとして取り消され、その後、即時抗告期間の満了により確定したものであるから、被告は、本件仮差押命令申立て当時、本件被保全債権が存在すると認識していたことに過失があったものと推定される。 ⑶ これに対し、被告は、①営業秘密該当性に関する判断が必ずしも容易では ないこと、②被告の元従業員が被告の内部情報を使用したり、原告の従業員が被告の営業活動の内容を聞き出そうとしてきたこと、③原告の従業員が被告の内部情報を自慢げに取引先などに話をしていた等の情報を得ていたこと、④Ciが被告社内において原告に合流することが既に決定している旨の発言をしていたところ、同人が、AiやDiに対して本件各情報を開示していた こと、⑤Aiは被告取締役を退任してから僅か6日後に原告を設立しており、 いて原告に合流することが既に決定している旨の発言をしていたところ、同人が、AiやDiに対して本件各情報を開示していた こと、⑤Aiは被告取締役を退任してから僅か6日後に原告を設立しており、被告取締役在職中から、原告設立のため、被告従業員の引き抜きを含む社員の採用活動等をしていたり、被告の従業員に対して被告の内部情報を提供するよう要請していたこと、⑥被告が、原告に対し、原告によるウェブブッキングサイトへの不正アクセスを指摘する等したが、原告からは十分な回答を 得られず、不正アクセスも否定されたこと、⑦原告が被告の見積書の書式を用い、同見積書の連絡先に被告の連絡先が記載されていたこと、⑧被告のドンシン社との取引が令和3年10月以降に急激かつ不自然に減少したことからすれば、本件仮差押命令申立てに過失はないとして、これらの事情をもって上記過失の推定を覆す特段の事情がある旨主張する。 しかしながら、上記①については、前記2のとおり、本件各情報が営業秘密であると認めることができない理由は、被告内部において秘密として管理されていなかったことに起因するものであり、これらは被告の支配下において管理されていた情報である以上、その営業秘密該当性の判断が困難であるということはできない。 また、上記②ないし⑤及び⑦については、原告が被告の内部情報を取得し、 使用したことを問題視するものであり、前記認定事実⑷のとおり、AiやDiがCiから一部本件各情報に相当する情報を取得していると認める余地はあるものの、前記2で説示したとおり、本件各情報は不競法2条6項所定の営業秘密に該当せず、上記②ないし⑤及び⑦に係る情報の取得及び使用それ自体が直ちに不法行為に該当するものと認められるものではないし、それら が不法行為として本件被保 各情報は不競法2条6項所定の営業秘密に該当せず、上記②ないし⑤及び⑦に係る情報の取得及び使用それ自体が直ちに不法行為に該当するものと認められるものではないし、それら が不法行為として本件被保全債権に係る損害を発生させるようなものであったことを客観的に裏付ける的確な証拠も見当たらないから、これらの事情が本件仮差押命令申立てを正当化し得るものではない。 また、上記⑥については、確かに、前記認定事実⑸エの認定事実によれば、Diは不正アクセスを疑わせるような発言をしていると認められるものの、 同発言は、カカオトークに記載された断片的な情報でしかなく、Diが実際に不正アクセスをしたことや、それにより情報が取得され、それが不法行為として本件被保全債権に係る損害を発生させるようなものであったことを客観的に裏付ける的確な証拠は見当たらない。さらに、前記認定事実⑸イ及びエで認定したとおり、被告の不正アクセスなどに係る照会に対する原告の対 応は、個別の取引内容について、第三者である被告に通知することはできない旨回答したり、不正アクセスに係る証拠開示を要求するといったものであり、このような対応が一概に不適切であるとはいえないし、原告の違法行為を推認させるものともいえない。 さらに、上記⑧については、前記認定事実⑴ア及び⑶で認定したとおり、 原告がドンシン社と取引するようになったのは、被告におけるドンシン社の担当者であったAiが原告を設立したことを知り、原告に取引を打診したという経緯によるものであり、このような経緯に照らせば、原告とドンシン社との取引の減少が原告の不法行為によるものということはできない。 以上に加え、被告が上記諸事情に基づき原告の不法行為を疑ったとしても、 証拠(証人Fi)及び弁論の全趣旨によれば、上記断片的 社との取引の減少が原告の不法行為によるものということはできない。 以上に加え、被告が上記諸事情に基づき原告の不法行為を疑ったとしても、 証拠(証人Fi)及び弁論の全趣旨によれば、上記断片的な情報以上に、被 告において最大の取引先であるドンシン社に対して取引の減少に関して照会をするなど、疑問を裏付けるために所要の事実調査を行った形跡は見当たらない。 以上を踏まえると、被告が、本件被保全債権があると認識したことに合理性があるとはいえず、その他、本件全証拠によっても、被告が本件仮差押命 令申立て当時、本件被保全債権が存在すると認識したことに係る過失の推定を覆すに足りる特段の事情を認めることはできない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 小括以上によれば、本件仮差押命令申立ては不法行為に該当するから、被告は、 原告に対し、民法709条に基づき原告が本件仮差押決定の執行によって受けた損害を賠償する義務がある。 6 争点6(原告の損害の有無及びその額)について⑴ 本件保全異議申立事件に係る弁護士費用相当額についてア前記認定事実⑹イ及びウで認定したとおり、原告は、本件保全異議申立 事件に係る弁護士費用として着手金143万円及び成功報酬286万円の合計429万円を支払っているところ、原告の受けた経済的利益が仮差押えを受けた2429万8255円であること(同ア)、本件保全異議決定に至るまでに相当程度の審理期間を要していること(前提事実⑶)、前記認定事実⑹エのとおり、原告が原告代理人に支払った報酬は、本件仮差押 命令申立てに係る本案訴訟が提起された場合の弁護士費用を含むものであるが、本件の反訴請求は、本件仮差押命令申立てに係る本案訴訟として位置付けることができるもので に支払った報酬は、本件仮差押 命令申立てに係る本案訴訟が提起された場合の弁護士費用を含むものであるが、本件の反訴請求は、本件仮差押命令申立てに係る本案訴訟として位置付けることができるものであること(同認定のとおり、原告と原告代理人との間では、本件反訴請求について別途弁護士費用を請求しないことを確認する旨の確認書が取り交わされている。)からすると、原告が原告代 理人に支払った報酬合計429万円については、本件仮差押命令申立てと 相当因果関係のある損害であると認められる。 イこれに対し、被告は、原告の主張する損害が旧報酬基準に照らして相当とはいえない旨主張する。 しかしながら、弁護士費用相当額の算定に際し、旧報酬基準に拘束されるべき根拠はないし、前記アで説示したところに照らせば、同認定に係る 報酬額が著しく不相当であると認めるべき事情も見当たらないから、被告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 本件訴訟に係る弁護士費用相当額について原告は本件訴訟の追行を原告代理人らに委任しているところ、被告の不法行為と相当因果関係のある本件訴訟の弁護士費用は42万円と認めるのが相 当である。 ⑶ 小括したがって、本件仮差押命令申立てと相当因果関係がある原告の損害は、471万円と認められる。 7 争点7(過失相殺の有無)について 被告は、原告が被告の疑念に対して十分な説明や回答を尽くさず、かえって被告の疑念を強める結果を招いたことをもって、過失相殺が認められるべきと主張する。 しかしながら、原告による被告の照会への対応が不適切であると認められないことは前記5⑶のとおりであり、被告の上記主張は採用することができない。 第4 結論よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを による被告の照会への対応が不適切であると認められないことは前記5⑶のとおりであり、被告の上記主張は採用することができない。 第4 結論 よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、被告の反訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 澁谷勝海 裁判官 塚田久美子 裁判官 浅川浩輝
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