平成19年2月15日判決言渡平成18年(ワ)第2187号損害賠償請求事件主文 原告の主位的請求を棄却する。 被告は,原告に対し,12万1059円及びこれに対する平成18年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の予備的請求を棄却する。 訴訟費用はこれを5分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求(主位的請求) 被告は,原告に対し,28万0660円及びこれに対する平成18年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 仮執行宣言(予備的請求) 被告は,原告に対し,23万0660円及びこれに対する平成18年5月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 仮執行宣言第2事案の概要 本件は,被告との間で外国語会話レッスン(特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)41条2項の「特定継続的役務」に該当することについては争いがない。)の受講契約(以下「本件受講契約」という。)を締結し,被告の経営する外国語会話教室で外国語会話レッスンを受講していた原告が, 被告に対し,①主位的に,被告が原告の通学していた校舎(スクール)を一方的に廃止したのは本件受講契約の債務不履行に当たるとして,債務不履行に基づき,損害賠償金残額28万0660円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成18年5月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,②予備的に,不当利得に基づき,本件受講契約の中途解約に伴い発生した清算金残額23万0660円及びこれに対する①と同様の遅延損害金の支払を求 済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,②予備的に,不当利得に基づき,本件受講契約の中途解約に伴い発生した清算金残額23万0660円及びこれに対する①と同様の遅延損害金の支払を求めている事案である。 前提事実(当事者間に争いがないか,以下の各項に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1)当事者被告は,外国語教室の経営等を目的とする株式会社であり,「甲」の名称で外国語会話教室を全国各地で営んでいる。(乙8)(2)甲のレッスンシステムア甲においては,受講生が予めレッスンポイントを一括購入し,これに応じて,原則として1ポイント当たり1回のレッスンを受講生の予約した日時に提供するという,いわゆるポイント制のレッスンシステムが採用されている。(乙8,42)イ甲におけるレギュラーコースのスタンダード登録(10時~21時の時間帯内のレッスンの受講が可能)のレッスン料(本件受講契約締結当時のもの)は,以下の区分に応じた登録ポイント数にポイント単価を掛けたものと定められている。(乙8,50)登録ポイント1ポイント当り単価(税込)600ポイント1390円510ポイント1560円420ポイント1760円330ポイント1940円 270ポイント2050円210ポイント2180円150ポイント2330円100ポイント2390円60ポイント2840円25ポイント3260円(3)本件受講契約ア原告は,平成16年5月31日,甲A校(以下,同様の箇所においては,校舎名のみを摘示する。)において,レギュラーコース(スタンダード登録)のレッスンポイント600ポイントを79万2300円(600ポイント×1390円(税込レッスンポイント単価)×95%(キャンペーン割引 みを摘示する。)において,レギュラーコース(スタンダード登録)のレッスンポイント600ポイントを79万2300円(600ポイント×1390円(税込レッスンポイント単価)×95%(キャンペーン割引5%))で購入し,本件受講契約を締結した。 イ本件受講契約締結の際に原告に交付されたApplicationFormと題する書面(特商法42条2項所定の契約書面を兼ねる。)(以下「本件契約書」という。)には,以下の事項の記載がある。(乙7の1・2)(ア)レッスンポイント・VOICEチケットの有効期限レッスンはポイント登録制です。各登録ポイント数には,有効期限が定められています。有効期限は,登録ポイント数のうち最初の3分の1が契約日より1年,次の3分の1が契約日より2年,最後の3分の1が契約日より1年です。(中略)有効期限を徒過した登録ポイント,VOICEチケットは無効となりますのでご注意ください。但しレッスン,VOICEチケット共に有効期限を徒過した場合においても,契約の最長の有効期限の範囲内で当社の基準に基づきその使用を認める場合があります。 (イ)レッスンの時間 1レッスン原則40分。(一部45分/レッスン時間は予告なく変更することがあります)(ウ)清算の発生特定商取引に関する法律第四十二条第二項の書面を受領した日から起算して8日を経過した後は将来に向かって特定継続的役務提供契約の解除を行うことが出来ます(エ)当該契約の解除があった場合におけるレッスン料その他の既に提供を受けた役務の対価その他金銭の清算方法特定継続的役務提供開始後の契約解除の場合は,当該契約の受領済総額から次の①②③④⑤の税込み金額(④は非課税)を差引いた残金を返還①レッスン料レギュラーコースの特定継続的役務提供契約の解除の申出があった場合, 開始後の契約解除の場合は,当該契約の受領済総額から次の①②③④⑤の税込み金額(④は非課税)を差引いた残金を返還①レッスン料レギュラーコースの特定継続的役務提供契約の解除の申出があった場合,役務提供済ポイント数(有効期限を徒過したポイントがある場合にはこれを加えることとする)に対応する規定のポイント単価を掛けた金額をレッスン料とする。(規定のポイント単価/役務提供済ポイント数以下で最も近いコースの契約時のポイント単価。(中略)レッスン料は役務提供済ポイント数以上の最も近いコースのポイント総額を上限とする。役務提供済ポイント数が60ポイント未満は3,260円をポイント単価とする。)(以下「本件清算規定」という。)②VOICE利用料(内容は省略)③マルチメディア施設利用料(通信料含)(内容は省略)④中途登録解除手数料(レッスン料・VOICE利用料・マルチメディア施設利用料(通信料含)の契約総額-①-②-③)×20%(但し50,000円を上限とする) ⑤教材費(内容は省略)ウ本件契約書の「登録コースの明細」欄には,レギュラーコースの購入ポイント数の記載に引き続いて,「有効期限開始日」として「2004年6月2日」,「有効期限終了日」として3分の1ずつの購入ポイントが記載された各欄にそれぞれ「05年6月1日」,「06年6月1日」,「07年6月1日」との記載がある。(乙7の1)(4)原告の受講履歴原告は,平成16年5月31日から平成18年2月10日までの間に,所属校であるA校において外国語会話レッスンを受講し,「有効期限開始日」とされる平成16年6月2日から最初の「有効期限終了日」とされる平成17年6月1日までの間に163ポイント,同月2日から平成18年2月10日(最終受講日)までの間に73ポイントのレッスンポイン 日」とされる平成16年6月2日から最初の「有効期限終了日」とされる平成17年6月1日までの間に163ポイント,同月2日から平成18年2月10日(最終受講日)までの間に73ポイントのレッスンポイントを消化した。 (乙1)(5)レッスン時間の短縮とレッスンポイントの無償付与被告は,平成17年4月ころ,一部のレッスンのレッスン時間を45分から40分に短縮するとともに,受講生に対し,未消化レッスンポイント数の10%に相当するポイント数を無料で付与する措置を講じ,これにより,46ポイントのレッスンポイントが原告に無償で付与された。(乙9)(6)A校のB校への統合被告は,平成18年2月,A校の受講生に対し,同年3月12日限りでA校をB校に統合することを告知し,同日,同統合が行われた(以下「本件統合」という。)。(乙2)(7)A校,B校及び原告の職場の位置関係アA校とB校との間の距離は約772m,所要時間は徒歩約10分である。 (甲12,乙54)イ原告がA校でレッスンを受講当時勤めていた原告の職場とA校との間の 距離は約500m,所要時間は徒歩約6分,同職場とB校との間の距離は約1.1km,所要時間は徒歩約14分である。(甲11,乙53の1・2)(8)本件受講契約の中途解約の申入れと被告による清算金の提示ア原告は,被告に対し,平成18年2月10日ころ,本件受講契約の中途解約の意向を伝え,被告は,原告に対し,平成18年2月15日付け解約清算書(甲1)をもって,中途解約の場合には被告が原告に返金すべき26万0745円の清算金が発生する旨通知した。(甲1,13)イ原告は,被告に対し,同月22日付け書面をもって,本件統合は被告の原告に対する債務不履行であるとして,債務不履行に基づく損害賠償請求を行った後,同年3月27日付け書面 旨通知した。(甲1,13)イ原告は,被告に対し,同月22日付け書面をもって,本件統合は被告の原告に対する債務不履行であるとして,債務不履行に基づく損害賠償請求を行った後,同年3月27日付け書面をもって,予備的に本件受講契約の中途解約の意思表示を行い(以下「本件中途解約」という。),同日ころ,同書面は被告に到達した。(甲2,4,5)ウその後,被告は,原告に対し,本件中途解約により発生した清算金として26万0745円を支払い,原告は,これを損害賠償金ないし中途解約清算金の内金として受領するとした。 争点 (1)債務不履行の成否(主位的請求)(原告の主張)ア原告は,職場に至近のA校であれば,昼休みに通学することができると考え,同校担当者(D)にもその旨を告げて,同校でレッスンを受講することにつき合意した上で,平成16年5月31日,被告との間で本件受講契約を締結した。 ところが,被告は,平成18年3月12日をもって同校を廃して,B校に統合することを一方的に決定し,これにより,原告は,職場から遠くなる同校には通えないと考え,本件中途解約を行わざるを得なくなった。 イ被告において,原告がA校の所属であることが書類上明記されていること,受講生が所属校以外でのレッスンを当然には受講できないこと等に照らすと,被告の原告に対するレッスン提供の債務の履行場所はA校に限定されていたのであって,同校を一方的に廃校して債務の履行を怠った被告の行為は債務不履行となる。 ウ被告の債務不履行により,被告は,原告に対し,410ポイントの未消化レッスンポイント(後記(4)のレッスンポイントを含み,後記(3)のレッスンポイントは未消化とする。)に相当する損害金54万1405円(1390円×410ポイント×95%)のうち,既払金26万0745円を除い ント(後記(4)のレッスンポイントを含み,後記(3)のレッスンポイントは未消化とする。)に相当する損害金54万1405円(1390円×410ポイント×95%)のうち,既払金26万0745円を除いた残額である28万0660円を賠償すべきである。 (被告の主張)ア被告において,契約書面上,債務の履行場所を特定する記載がないことや,継続的に役務を提供する間に,受講生の所属校が変わることが一般的に想定されていること等に照らすと,受講契約上,被告が受講生に対して特定の校舎でレッスンを提供することは契約の内容とはなっていない。 また,原告との間において,被告がA校でのみレッスンの提供を行うとの特段の合意がなされた事情も存在しない。 被告と受講生との間の受講契約の合理的意思解釈としては,被告の債務の履行場所は,当初の履行場所(当初の所属校)に限られず,当初の所属校の所在地及びその近隣と解するのが当然であり,そうすると,本件で被告が原告に対しA校の近隣校であるB校で履行の提供を行うとしたことは,債務の本旨に従った履行の提供であり,本件受講契約の債務不履行とはならない。 イ仮に,債務の履行場所がA校に特定されるとしても,同校の移転統合先であるB校がA校からわずか772mほどしか離れていないこと(原告の職場からは,徒歩でA校まで6分,B校まで14分であり,所要時間の差 は8分にすぎない。),B校において提供されるレッスンの質がA校と比較して低下していないこと,同校の受講生に対しては,「お茶の間留学」(テレビ電話を通じて24時間レッスンが受講可能なシステム)に必要な機器を無料で貸与することで,校舎の移転統合に伴い受講生に生じ得る不利益を填補するための代替措置を講じていること,同校の受講生の大多数が本件統合後も被告において受講を継続していること等に照 に必要な機器を無料で貸与することで,校舎の移転統合に伴い受講生に生じ得る不利益を填補するための代替措置を講じていること,同校の受講生の大多数が本件統合後も被告において受講を継続していること等に照らせば,被告が同校以外の場所でレッスンを提供するとしたことによって,原告には被告の債務不履行責任を肯定すべき格別の不利益は生じていないから,被告は債務不履行責任を負わない。 (2)本件清算規定の有効性(予備的請求)(原告の主張)ア原告は,被告に対し,予備的に本件受講契約の中途解約を申し入れており,中途解約清算金を請求できるところ,被告が清算金の算定の根拠とする本件清算規定は特商法に反するもので,無効である。 イこれにより,被告は,原告に対し,レッスンポイントの購入代金79万2300円から,消化済みレッスンポイント相当額25万0895円(1390円(契約時単価)×190ポイント(消化済みレッスンポイント236ポイントから,後記(4)の46ポイントを引いたもの。後記(3)の37ポイントは含まない。)×95%),中途登録解除手数料5万円(特商法上の上限額),既払金26万0745円を控除した残額である23万0660円の清算金を支払うべきである。 (被告の主張)ア本件清算規定は,後記イ以下に述べるとおり,特商法に反するものではなく,有効である。 これによれば,原告の消化済みレッスンポイント(273ポイント。後記(3)のレッスンポイントを含み,後記(4)のレッスンポイントは含まな い。)の清算時単価は1952円(税抜価格)となり,原告に支払うべき清算金は26万0745円(79万2300円-1952円×1.05×273×95%(なお,上記清算金額には,その他の清算項目で生じた端数金額も含まれている。))と計算され,被告はこれを全額支払っている 算金は26万0745円(79万2300円-1952円×1.05×273×95%(なお,上記清算金額には,その他の清算項目で生じた端数金額も含まれている。))と計算され,被告はこれを全額支払っているから,被告が原告に対して更に清算金を支払うべき理由はない。 イ特商法49条2項は,中途解約の際に役務提供事業者が既提供役務について収受できる対価に相当する額の計算方法について定めたものではなく,これは契約法の原則どおり契約当事者間の合意ないし当事者の合理的意思に従い決せられるべきものである。 同項の立法趣旨は,事業者が役務受領者に対して多額の違約金の支払を迫ったり,既に支払った前払代金のうち未履行の役務提供部分に相当するものを損害賠償金に充当するとして返還しない等により,中途解約した役務受領者から中途解約に対する懲罰的な意味合いを有する金員を取得することを防止し,また,そうした懲罰的な経済的負担の威嚇効果によって,同条1項の中途解約権の行使を実質的に妨害することの防止を意図したものであって,上記対価の計算方法について当事者が予め合意を行うこと自体は禁じられていないし,仮に,当該合意が無効となる場合があるとしても,それは当該合意内容が公序良俗や上記立法趣旨に反する場合に限られる。 本件清算規定は,社会一般で広く用いられている数量割引制度(購入する役務の数量に応じて,それが多いほど役務の単価を割り引く料金制度)を採用する被告において,中途解約時の既提供役務の対価を被告の多数の受講生が現に利用する他のコースの単価とする旨規定したものであって,当該合意内容が上記立法趣旨等に反しないことは明らかであり,同規定が無効とされる余地はない。 ウ同種事件の裁判例は,中途解約時の既提供役務の対価の計算において, 合理的理由なく契約時の単価と異なる単価を 容が上記立法趣旨等に反しないことは明らかであり,同規定が無効とされる余地はない。 ウ同種事件の裁判例は,中途解約時の既提供役務の対価の計算において, 合理的理由なく契約時の単価と異なる単価を用いることは許されない旨判示するが,特商法49条2項1号イの解釈としてかかる要件が導出されるものではないし,同項の上記立法趣旨を超えて契約自由の原則に過大な制約を課す不当なものである。 仮に,合理的理由の存在が要求されるとしても,受講生が希望する日時・場所において希望のレッスンを実施し,幅広い受講生の利便に適うポイント制を採用する被告においては,これを適正に維持するために中長期的な経営予測を可能にする数量割引制度を用いることに特に合理的な理由があり,同制度を適正に維持するためには,中途解約時の既提供役務の対価につき契約時単価とは異なる合意をすることは不可欠である。かかる合意は日常社会生活上も広く行われているし,また,同制度の役務受領者である受講生全体の利益につながるものであるところ,仮に,かかる合意が許されないとすると,当初から短期又は少量の役務を購入するつもりの役務受領者が,とりあえず割引率の高い長期又は多数量の役務の提供を受けるコースで契約を締結し,当初から予定していた役務の提供を受けるとすぐに中途解約することで,常に最大の割引率によって計算された対価により役務の提供を受けることが可能となって,かかる事態が多数発生すると事業経営が成り立たなくなり,役務受領者間の公平も害するという不合理な事態が生じることとなる。 そして,本件清算規定は,役務提供済ポイント数以下の最も近いコースの契約時ポイント単価を基準に既提供役務の対価を計算するものであり,かつ,被告の設定するコース(料金体系)は現に受講生が満遍なく利用しているものであるから,中途解約 済ポイント数以下の最も近いコースの契約時ポイント単価を基準に既提供役務の対価を計算するものであり,かつ,被告の設定するコース(料金体系)は現に受講生が満遍なく利用しているものであるから,中途解約権の行使を必要以上に制限するものではなく,被告が中途解約時の既提供役務の対価を契約時単価と異なるものと定めることには合理的理由がある。 エ同種事件の裁判例は,本件清算規定を特商法49条7項の「不利なも の」に該当すると判示するが,この該当性の判断に当たっては,本件清算規定のみならず,契約当事者の実質的な目的をも考慮すべきである。 被告の採用する数量割引制度によって,受講生は,多様なポイント数や価格帯のコースの中から自分に合ったものを適切に選択し,質の高いレッスンの提供を廉価で受けることができるという利益を得ているところ,受講生があるポイント数及び価格帯のコースを選択した時点で,既に同制度の適用による恩恵を受けており,同制度は被告との間の契約内容となっていること,本件清算規定は同制度の維持を実質的な目的としており,同制度の維持のためには必要不可欠なものであることに照らせば,同規定が「不利なもの」に該当するか否かの判断に当たっては,同制度により受講生が総体的に享受する利益も当然考慮すべきである。 そして,かかる受講生の享受する利益と比較すれば,既提供役務の対価を計算するに際し,消化済みポイント数に応じて,契約締結時ないし前払金受領時に適用された単価ではなく,消化済みポイント数以下で最も近いコースの契約時のポイント単価が適用されるというにすぎない受講生が被る不利益は僅少であり,同規定が「不利なもの」に該当しないことは明らかである。 (3)1年の有効期限を経過したレッスンポイントを清算対象とすることの可否(原告の主張)原告は,A校担当者( が被る不利益は僅少であり,同規定が「不利なもの」に該当しないことは明らかである。 (3)1年の有効期限を経過したレッスンポイントを清算対象とすることの可否(原告の主張)原告は,A校担当者(D)からレッスンポイントの有効期限は3年との説明を受けており,1年で失効した分があることを聞いたことはなかった。パンフレット(乙6)にも,「但しレッスン,VOICEチケット共に有効期限を徒過した場合においても,契約の最長の有効期限の範囲内で当社の基準に基づきその使用を認める場合があります。」との記載があり,被告は,この記載に基づいてか,受講生が最長の有効期限内で全てのレッスンポイント を使用することを認めていた。 また,有効期限の長短に応じてレッスンポイントの経済的価値は異なるにもかかわらず,被告は全てのレッスンポイントを同一単価として取り扱っている。 したがって,レッスンポイントの有効期限は全て3年と見るべきであり,被告が失効したと主張する37ポイントも未消化レッスンポイントとして清算対象(損害賠償金ないし清算金の増額要素との意味。以下同じ。)となる。 (被告の主張)原告の場合,平成17年6月1日の経過により,1年の有効期限を経過した37ポイントのレッスンポイントが失効しており,これについては清算対象とはならない。有効期限についての記載は,本件契約書にも契約前に受講生に交付される書面(PriceList)にも明記されている。 (4)レッスン時間短縮に伴い付与されたレッスンポイントを清算対象とすることの可否(原告の主張)被告は,原告に対し,平成17年4月ころ,従前の45分のレッスン時間を40分に短縮したことの代償として,46ポイントのレッスンポイントを付与した。45分のレッスンの提供は契約の内容を構成し,上記レッスン時間の短縮は被 平成17年4月ころ,従前の45分のレッスン時間を40分に短縮したことの代償として,46ポイントのレッスンポイントを付与した。45分のレッスンの提供は契約の内容を構成し,上記レッスン時間の短縮は被告が一方的に契約内容を変更したものであるから,その補償措置である上記46ポイントも清算対象となる。 (被告の主張)被告においては,レッスン時間は原則40分とされており,一時期提供されていた45分のレッスンは,飽くまでサービスとしてレッスンを5分延長していたものにすぎない。 したがって,被告がレッスン時間を原則である40分に統一したことによって,受講生に対して何らかの補償を講じる義務が生じるわけではないから, 原告にサービスとして付与したにすぎない46ポイントのレッスンポイントは清算対象とはならない。 第3当裁判所の判断 争点(1)(債務不履行の成否)(1)被告と受講生との間の外国語会話レッスン受講契約においては,被告の債務の履行方法は,後記「お茶の間留学」を除き,被告が設置した校舎(スクール)においてレッスンを提供することとされているところ(乙50),本件契約書において,被告の原告に対するレッスン提供の債務を履行すべき具体的な校舎は特段明記されておらず,契約条項や生徒規約を見ても,被告の設置した校舎でレッスンを提供するという以上に,被告の受講生に対するレッスン提供の債務を履行すべき校舎を具体的に特定する手掛かりを見出すことはできない(乙7の1・2,50)。そうすると,少なくとも書面上は,被告の原告に対するレッスン提供の債務の履行場所が当初からA校に限定されていたのか否かは明らかでない。 (2)そこで,まず初めに,原被告間において,被告のレッスン提供の債務の履行場所をA校に限定するとの特段の合意がなされたか否かにつき検討する。 ア からA校に限定されていたのか否かは明らかでない。 (2)そこで,まず初めに,原被告間において,被告のレッスン提供の債務の履行場所をA校に限定するとの特段の合意がなされたか否かにつき検討する。 ア原告は,本件受講契約締結の際に,A校の担当者であるDに対し,原告の職場に近いA校に昼休みを利用して通学することを考えている旨を説明しており,Dは,原告にとってA校が立地が好都合であったからこそ同契約を締結したことを明確に認識していたと主張し,原告の陳述書(甲13)中にはこれに沿う記述部分がある。 しかし,原告が来校時に応対したDが,自身が接客した来校者の受講希望等の情報を逐一記録したVISノート(乙49,52)においては,原告から上記趣旨の説明がなされたことを窺わせる記載は全く存在しないし,むしろ,同ノートにおいて,別の来校者の接客記録として,「土,日レッスンAで希望」との記載があることからすると,原告から上記趣旨の具体 的な受講希望の話が出たのであれば,後日勧誘を行う際の便宜上も,同ノートに当然その旨が記録されていてしかるべきものと考えられる。 そうすると,同ノートの記載とは整合しない原告の陳述書における記述部分をそのまま信用することはできない。 イまた,原告は,原告の所属校がA校と登録されており,受講生が所属校以外の校舎でのレッスンの受講を自由に受けられるわけではないことからすれば,被告の原告に対する債務の履行場所は当然にA校に限定されていたと主張する。 しかし,被告における所属校の意義は,受講生が所属校以外の校舎でのレッスンの提供を当然には請求できないという意味を有するにとどまり(各校舎における受講生の需要を把握し,これに応じた計画を立てて適正な規模の校舎を設営する上で,被告がこのようなシステムを採用することにも必要性・合理性が は請求できないという意味を有するにとどまり(各校舎における受講生の需要を把握し,これに応じた計画を立てて適正な規模の校舎を設営する上で,被告がこのようなシステムを採用することにも必要性・合理性がある。),被告が特定の所属校に所属する受講生に対し,受講生の承諾がない限り,当該所属校以外の校舎(具体的には当該所属校の近隣校)で同一の内容・水準のレッスンの提供を一切行い得ないことまで意味するものではないと解することも可能であるから,原告の所属校がA校と登録されていたとの一事をもって,被告との間でレッスン提供の債務の履行場所をA校に限定するとの明示・黙示の合意がなされたことの根拠とすることはできないというべきである。 ウしたがって,本件受講契約において,被告の原告に対するレッスン提供の債務の履行場所をA校に限定する旨の特段の合意がなされた事実を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。 (3)次に,契約当事者の合理的意思の観点から,被告がA校に代えてB校でレッスンの提供を行うとしたことが本件受講契約における債務の本旨に従った債務の履行提供といえるのか否かにつき検討する。 ア被告においては,各受講生毎に「所属校」が定められており(乙52), 受講生が通学の利便等を考慮して自らの所属校を決定するのが通常と考えられることからすれば,受講生としては,所属校として選択した校舎において被告によるレッスンを受けられると考えるのが一般的であろう。しかし,他方で,被告が全国各地に校舎を設置し,各所で同一のレッスンシステムの下に外国語会話レッスンを提供していること(乙8,42,50)からすると,被告においては,校舎がどこであっても,受講生に提供されるレッスンの内容・水準は基本的に同一と考えられ,受講生においても,従前の所属校と通学の利便上大差ない別 ること(乙8,42,50)からすると,被告においては,校舎がどこであっても,受講生に提供されるレッスンの内容・水準は基本的に同一と考えられ,受講生においても,従前の所属校と通学の利便上大差ない別の校舎で従前と同一の内容・水準のレッスン提供が継続される限りは,被告で外国語会話レッスンを受講することとした合理的意思に反するところはないとも考え得る(この点に関し,被告においても,当初の所属校の近隣と評価し得る場所的範囲を超えた校舎での債務の履行提供が債務の本旨に従った債務の履行提供とはならないことまでは否定していない。)。 そうすると,被告がA校に代えてB校でレッスンの提供を行うとしたことが本件受講契約における債務の本旨に従った債務の履行提供といえるのか否かは,レッスン提供校の変更に伴って原告に生じる不利益の有無・程度に照らして実質的に判断すべきこととなり,この判断に当たっては,原被告間において上記特段の合意を認め得ない以上は,外国語レッスン受講契約の根幹的内容は他のA校の受講生一般と同一であることに照らし,基本的にはA校の受講生一般を基準として判断すべきものと解するのが相当である。 イA校及びB校間の位置関係前記前提事実(7)アのとおり,A校とB校との間の距離は約772mで,徒歩での所要時間は約10分であるところ,このような位置関係に照らせば,被告がA校の受講生に対し,本件統合後はB校での債務の履行提供を行うとしたことは(なお,被告は,B校よりもC校の方が便利な受講生に 対しては,C校でレッスンを提供する等の受講生の希望を反映する措置も講じている。乙2,54),受講生に過度の負担を強いない合理的な場所的範囲内にとどまる近傍の代替校舎での債務の履行提供といえるから,これによってA校の受講生一般に格別の不利益が生じたものとは評価し 講じている。乙2,54),受講生に過度の負担を強いない合理的な場所的範囲内にとどまる近傍の代替校舎での債務の履行提供といえるから,これによってA校の受講生一般に格別の不利益が生じたものとは評価し難い。 これに対し,原告は,原告の職場から遠くなるB校では,職場の昼休みに通学するという当初の目的が達成し得なくなったと主張する。 しかし,前記前提事実(7)イによれば,原告が職場からB校に通学するとした場合において,職場からA校に通学する場合と比較して増加する所要時間は徒歩で約8分程度にとどまること,原告の通算105回(最初のレベルチェックを除く。)のレッスン受講履歴中,昼間以外の時間帯(受講時間が17時50分以降と記録されているもの)にレッスンを受講した回数が39回に上り(乙1),原告が3回に1回以上の割合で昼休み以外の時間帯にもレッスンを受講していたこと,これらの受講日がいずれも平日であり(乙1,公知の事実),原告が仕事帰りにA校に立ち寄ってレッスンを受講していたものと考えられることに照らすと,原告において,本件統合により事実上昼休みの時間帯にレッスンを受講できなくなることによって,本件受講契約の意義が失われるに等しい特段の不利益が生じたものとは認め難く,この点をもって被告の原告に対する債務不履行の根拠とすることはできないというべきである。 ウB校で提供可能なサービスの水準証拠(乙3,54)によれば,B校においては,A校と比較して,レッスンの開講時間帯が長く,日曜日にも開校し,レッスンの対応レベルも格段に上級レベルまで対応可能である(乙1によれば,レベルの数字が小さい方が上級レベルであると認められる。)など,大半の点において,より広範囲に及ぶレッスン内容と利便なレッスン環境を提供していることが認められる。そうすると,A校の受講生にと れば,レベルの数字が小さい方が上級レベルであると認められる。)など,大半の点において,より広範囲に及ぶレッスン内容と利便なレッスン環境を提供していることが認められる。そうすると,A校の受講生にとっては,本件統合後はB校でレ ッスンの提供を受けるものとしても,一般的に見てレッスンの質やレッスン環境が低下するなどの不利益を被るとはいえない。 これに対し,原告は,本件統合により,B校の受講生が純増することからすれば,被告の提供するサービスの質の低下は避けられないと主張するが,B校一校を基準とすれば,そのような関係にあることは一般的に考え得るとしても,本件統合後のB校におけるサービスの水準がA校のサービスの水準よりも低下したことを認めるに足りる証拠はないから,採用できない。 なお,原告が次のレベル(レベル4)にレベルアップした場合には,A校ではこれに対応するレッスンの提供は不可能であったのであるから(乙1,3,54),この点に照らしても,原告にとって,本件統合により被告の提供するサービスの質の面で実質的に不利益を被るものとは評価し難い。 エ受講生の個別的な不利益に配慮した代替措置証拠(甲3,乙54)によれば,本件統合に伴い,A校の受講生に対しては,希望に応じて「お茶の間留学」(テレビ電話を通じて自宅等で24時間レッスンを受講可能なシステム)を利用するために必要な機器を無料でレンタルする措置を講じていたことが認められ,本件統合により通学に何らかの支障が生じる受講生に対しても,被告が個別的な不利益を相当程度緩和するための合理的な代替措置を講じたものと評価し得る。 オ以上の点を総合すれば,被告が本件統合後はA校に代えてB校でのレッスンの提供を行うとしたことが,本件受講契約において,被告の原告に対する債務の本旨に従った債務の履行提供でない ものと評価し得る。 オ以上の点を総合すれば,被告が本件統合後はA校に代えてB校でのレッスンの提供を行うとしたことが,本件受講契約において,被告の原告に対する債務の本旨に従った債務の履行提供でないとは評価し得ないというべきである。 (4)以上によれば,被告の原告に対する本件受講契約上の債務不履行責任は発生しないから,原告の主位的請求は理由がない。 争点(2)(本件清算規定の有効性)(1)本件清算規定が特商法に反するか否かの判断に当たり,まず初めに特商法における特定継続的役務提供契約に関する規制の趣旨等につき検討する。 特定継続的役務提供契約に関する規制は,元々は平成11年法律第34号により追加された訪問販売等に関する法律(当時)17条の2以下(同年10月22日施行)において導入されたものであり,平成12年法律第120号により題名が特定商取引に関する法律に改められた(平成13年6月1日施行)後も,41条以下に基本的に同趣旨の規制が設けられている。 このような規制が新たに設けられるに至った背景には,エステティックサロン,外国語会話教室等の継続的役務提供取引においては,消費者が継続的に役務提供を受けることにより一定の効果等が生じることをもって誘引され,長期間の役務提供とこれに見合う対価の支払いをあらかじめ約定する(対価を一括前払いするケースも少なくない。)ことになるため,不適切な勧誘,不十分な情報提供によって生じるトラブルや,契約期間中の消費者の転居等の事情変更が生じた場合にも中途解約が認められないこと,認められる場合においても清算ルールが不明確又は事業者に不当に有利に定められていることによるトラブルが増加していたという事情があり,この種の取引の特殊性に対応した有効なトラブル解決を図る目的の下に,契約締結及び契約解除の適正化等 ルが不明確又は事業者に不当に有利に定められていることによるトラブルが増加していたという事情があり,この種の取引の特殊性に対応した有効なトラブル解決を図る目的の下に,契約締結及び契約解除の適正化等に関する上記法改正が行われることとなったものである。 これにより,特定継続的役務提供取引において,中途解約権の法定と,中途解約の場合に役務提供事業者が請求できる損害賠償等に上限が設けられることとなったが,その趣旨は,特定継続的役務提供取引では,契約期間が長期間にわたるため,契約期間中に役務受領者に事情変更が生じたり,提供される役務の内容,性質,効果を役務受領者が事前に正確かつ客観的に認識,評価することは困難で,ある程度の期間が経過した後になってから役務の内容等についての認識,評価に齟齬が生じたりすることが少なくないという特 性があるにもかかわらず,役務提供事業者との契約上,中途解約ができないことが明示されていたり,解約が可能であっても,高額の違約金,損害賠償金,解約手数料等を徴収する約定となっていて,実質上,役務受領者からの中途解約が困難であるケースが多々見られ,役務受領者に上記事情が生じた場合にも契約条項を根拠に契約を継続させることは,役務受領者に過大な負担を強いるもので適当でないことから,中途解約の要件と中途解約に伴い役務提供事業者が請求できる金額の上限を明確化したことにあるものと解される。 具体的には,特商法49条2項1号が,特定継続的役務提供契約が中途解約された場合に役務提供事業者が役務受領者に対して請求できる金額として,「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」(同号イ),「当該特定的継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害の額として第41条2項の政令で定める役務ごとに政令で定める額」(同号ロ)をそれぞれ定めていると 継続的役務の対価に相当する額」(同号イ),「当該特定的継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害の額として第41条2項の政令で定める役務ごとに政令で定める額」(同号ロ)をそれぞれ定めているところ,前者の規定は,中途解約の効果が遡及しないことから(同法49条1項),中途解約の時点で既に提供済みの役務の対価については役務提供事業者が正当に受領できることを確認的に定めたもの,後者の規定は,役務受領者が自由に中途解約権を行使し得ることとの均衡上,役務提供事業者に一定額を限度とした損害賠償請求を認めることで,役務受領者との間の利益調整を図ったものと解される。また,同条7項は,「前各項の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは,無効とする。」として,中途解約権に関する特商法の規定が役務提供事業者に対する片面的強行法規であることを明らかにしている。 (2)以上の特商法における特定継続的役務提供契約に関する規制の趣旨等を前提に,本件清算規定が定める清算時単価に従って計算されたレッスン料が特商法49条2項1号イの「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」に該当するか否かにつき検討する。 上記(1)に判示の規制の趣旨等,特に,同号イの規定が,継続的役務提供契約の中途解約の場合に,同号ロの規定と相まって,役務提供事業者が役務受領者に対して請求し得る提供済みの役務の対価と中途解約により役務提供事業者が被る損害賠償額の予定又は違約金の性質を帯びる金額の上限を明確な枠組みの下に具体的に特定する趣旨に出たものであることが,その条文の体裁からも明らかであること,同号ロの規定が通常生じる損害の額の上限を具体的数値を示して規制する厳格な規定であることに照らすと,同号イの「提供された特定継続的役務の対価」は,当該特定継続的役務提供契約の からも明らかであること,同号ロの規定が通常生じる損害の額の上限を具体的数値を示して規制する厳格な規定であることに照らすと,同号イの「提供された特定継続的役務の対価」は,当該特定継続的役務提供契約の締結時に当事者が合意した本来の対価を指すものであり,同号ロの規定する「通常生ずる損害」のための損害賠償額の予定又は違約金の性質を帯びたものが混入されてはならないと解するのが相当である。 一般に,特定継続的役務提供契約において,中途解約を前提としない対価の外に,わざわざ中途解約を前提とする二重対価を設定するのは,後者の対価なるものを清算の用具として使用することを予定しているからにほかならないところ,後者の対価は,事柄の性質上,中途解約の場合における役務提供事業者に通常生じる損害ないし不利益のための損害賠償額の予定又は違約金としての要素を含むことは避けられず,中途解約時までに提供済みの役務に対し,中途解約時から中途解約を前提とする対価を遡及的に適用すれば,役務提供事業者が受領する金額を中途解約しない場合と比べて増額できるものであるから,実質的には対価の名において損害賠償又は違約金を徴収するものといわざるを得ず,それはもはや特定継続的役務提供契約における本来の対価とはいい難いものである。また,中途解約を前提として設定された二重対価をして同号イの「提供された特定継続的役務の対価」と解することが許されるとすると,役務提供事業者としては,当該二重対価を自由に設定して前記規制の趣旨を潜脱することも可能となり,あるいは当該二重対価の設定やその解釈をめぐる役務受領者との紛争の多発を招きかねないという弊害 も予想されるところである。したがって,中途解約を前提とするかしないかの観点からすると,同号イの「提供された特定継続的役務の対価」は,中途解約を前提とし との紛争の多発を招きかねないという弊害 も予想されるところである。したがって,中途解約を前提とするかしないかの観点からすると,同号イの「提供された特定継続的役務の対価」は,中途解約を前提としない対価,即ち中途解約時まで適用されていた対価を指すものと解するのが相当であり,中途解約を前提とする対価は,同号イの「提供された特定継続的役務の対価」に該当するものとはいえない。 前記前提事実(2)イの料金体系と相まった本件清算規定は,中途解約時から契約時に遡って発生レッスン料を中途解約を前提としない約定レッスン料から大幅に増額するものであることが明らかであり,その増額分は,原被告間においては,実質的には受講料の名において中途解約に伴い被告に生じる損害又は不利益のための損害賠償若しくは違約金を徴収するものといわざるを得ず,特定継続的役務提供契約における本来の対価とはいい難いものであるから,本件清算規定に定める清算時単価に従って計算されたレッスン料が同号イの「提供された特定継続的役務の対価」に該当するものと認めることはできないというべきである。 (3)これに対し,被告は,特商法49条2項は中途解約時に役務提供事業者が収受できる提供済み役務の対価の額や計算方法につき定めたものではなく,同事項は契約自由の原則により当事者の合意に委ねられたものであって,その合意内容が公序良俗や中途解約権の行使が実質的に妨害されることの防止を目的とした特商法の立法趣旨に反する懲罰的な意味合いを有するものでない限り,特商法の規制の対象とはならない旨主張し,本件清算規定が上記の意味における懲罰的な意味合いを含むものでないことは明らかであるから,本件清算規定に定める清算時単価に従って計算されたレッスン料が同項1号イの「提供された特定継続的役務の対価」に該当すると主張する。 意味における懲罰的な意味合いを含むものでないことは明らかであるから,本件清算規定に定める清算時単価に従って計算されたレッスン料が同項1号イの「提供された特定継続的役務の対価」に該当すると主張する。 しかし,前記(1)に判示の同法における特定継続的役務提供契約に関する規制の趣旨等,特に,中途解約時におけるトラブルの防止,役務受領者の保護,解約要件及び役務提供事業者が請求し得る金額の上限の明確化等の趣旨 並びに前述の同号イ,ロの各規定の趣旨体裁等に照らすと,同法は,契約締結時における対価の設定それ自体を規制対象とするのではなく,中途解約の場合において実質的に役務提供事業者に通常生じる損害や不利益のための損害賠償額の予定又は違約金の性質を帯びる金額を規制の対象そのものとすることは明らかであり,これを契約自由の原則に任せず,規制の対象に取り込んだことこそが同法の立法趣旨と解されるのであって,規制対象となる金銭が「対価」と銘打たれているかどうかや,対価に関する合意の体裁をとっているかどうか等によって同項の規制対象となるか否かが左右されるものではないというべきである。 したがって,本件清算規定が定める清算時単価に従って計算されたレッスン料は,前述のとおり,それが中途解約を前提とし,実質的に対価の名において損害賠償又は違約金を徴収するものである以上,特定継続的役務提供契約における本来の対価とはいえないものであり,同号イの「提供された特定継続的役務の対価」に該当するものとは認められない。 (4)そのほか,被告は,被告の採用する数量割引制度の有用性・合理性につき詳細に述べて,本件清算規定は特商法49条2項及び7項に反しない旨縷々主張するが,上記に判示したところによれば,同制度の有用性・合理性如何が厳格な特商法の規制の適用を左右するものとは到底解さ につき詳細に述べて,本件清算規定は特商法49条2項及び7項に反しない旨縷々主張するが,上記に判示したところによれば,同制度の有用性・合理性如何が厳格な特商法の規制の適用を左右するものとは到底解されず,中途解約に伴う清算の際に中途解約を前提とする対価が適用できないことによって被る被告の不利益は,同条2項1号ロの「当該特定継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害」に当然のごとく含まれていると解すべきであるし,かつ,現に中途解約権を行使しようとする役務受領者にとって,本件清算規定が同条7項の「不利なもの」に該当することは明らかであるから,被告の主張は採用できない。 (5)以上によれば,本件清算規定は特商法49条2項及び7項に反して無効であるから,本件における提供済み特定継続的役務の対価相当額は,原告が レッスンポイントを購入した際の契約時単価である1390円(税込)×95%(契約時のキャンペーン割引5%)を用いて計算すべきである。 争点(3)(1年の有効期限を経過したレッスンポイントを清算対象とすることの可否)(1)前記前提事実(3)イ(ア)のとおり,本件契約書には,一括購入したレッスンポイントには3分の1ずつそれぞれ1年,2年,3年の有効期限が設けられていることが明記されており,また,前記前提事実(3)ウのとおり,原告が本件受講契約の締結時に購入したレッスンポイントについて,3分の1のポイント群毎に,それぞれのポイント数と有効期限の末日が本件契約書に明確に表示されている。 したがって,原告は,本件受講契約の締結に際し,上記有効期限の定めと具体的な有効期限を明確に認識していたものというべきである。 (2)そして,レッスンポイントの有効期限は,特商法42条1項,特商法施行規則32条1項1号ヘ,特商法42条2項4号が特定継 期限の定めと具体的な有効期限を明確に認識していたものというべきである。 (2)そして,レッスンポイントの有効期限は,特商法42条1項,特商法施行規則32条1項1号ヘ,特商法42条2項4号が特定継続的役務提供契約の締結前後にそれぞれ役務提供事業者が交付すべき書面(本件の場合,パンフレットである「PriceList」(乙8)が前者の概要書面に相当する。)の必要的記載事項として規定する「役務の提供期間」に該当するものと解されるところ,一般に,当該役務提供期間が経過した場合には,役務提供事業者は役務提供義務を免れ,役務受領者においても当該期間の約定に係る役務の提供を請求できなくなるのであるから,これに関して役務提供事業者の役務受領者に対する清算の問題が生じないことは当然である。 そうすると,本件清算規定において,有効期限を経過したレッスンポイントについて,当該ポイントについてはそもそも清算対象とはならないことを前提に,計算の便宜上,清算時に当該ポイントを役務提供済ポイント数に加算した上で清算金額を算出するとしていることも,前記2に判示の清算方法に従う限り,何ら問題はないというべきである。 (3)これに対し,原告は,被告は受講生が最長の有効期限内で全てのレッスンポイントを使用することを認めていたのが実態であり,3年が経過していないレッスンポイントは全て清算対象とすべきであると主張する。 しかし,本件契約書には「但しレッスン,VOICEチケット共に有効期限を徒過した場合においても,契約の最長の有効期限の範囲内で当社の基準に基づきその使用を認める場合があります。」と規定されているにすぎず,被告が最長の有効期限内で全てのレッスンポイントを使用することを認めていたのが実態であったとまで認めるに足りる証拠はないから,3年を経過しないレッスンポ 場合があります。」と規定されているにすぎず,被告が最長の有効期限内で全てのレッスンポイントを使用することを認めていたのが実態であったとまで認めるに足りる証拠はないから,3年を経過しないレッスンポイントは全て清算対象とすべきとの原告の主張は採用できない。 また,原告は,有効期限の長短がレッスンポイントの単価に反映されていないのは不合理であるとも主張するが,有効期限の長短にかかわらず,購入したレッスンポイントに応じて提供される特定継続的役務の役務としての客観的価値に差異はないと解されるから,この点をもって3年を経過していないレッスンポイントを全て清算対象とすべきとする根拠とすることはできない。 (4)したがって,原告の購入した有効期限が平成17年6月1日と定められた200ポイントのレッスンポイントのうち,同日までに消化できなかった37ポイントのレッスンポイントについては,本件の清算対象とはならない。 争点(4)(レッスン時間短縮に伴い付与されたレッスンポイントを清算対象とすることの可否)(1)前記前提事実(5)のレッスンポイント(46ポイント)が清算対象となるか否かは,同レッスンポイントの付与の性質をレッスン時間の短縮に伴う補償措置(レッスン時間の短縮により低下した個々のレッスンポイントの経済的価値を填補するもの)と解すべきか否かにかかわるので,この点につき検討する。 (2)証拠(乙9)によれば,前記前提事実(5)の措置を講じるに当たって,被告が受講生に対し,「一部のスクールでは,平日昼間の時間帯のレッスンを,サービスで5分間延長し,45分とさせて頂いておりますが,このたび,レッスンのタイムテーブルを時差のないグローバルなものに統合するため,本年6月より40分に統一させて戴きます。」,「現在レッスンを受講いただいている 長し,45分とさせて頂いておりますが,このたび,レッスンのタイムテーブルを時差のないグローバルなものに統合するため,本年6月より40分に統一させて戴きます。」,「現在レッスンを受講いただいている方には,レッスン時間変更日の前日時点(5月末日予定)での「未受講レッスンポイント数の10%に相当するポイント数」をサービスポイントとして,無料で追加いたします。」との告知を行ったことが認められる。 前記前提事実(3)イ(イ)のとおり,本件受講契約上,1レッスンの時間は原則として40分とされており,45分のレッスンは飽くまで例外的なものとして位置付けられ,現に,45分のレッスンは一部の校舎の平日昼間の時間帯のレッスンに限定されたものであったところ(乙9),レギュラーコースのスタンダード登録の受講生が当該平日昼間の45分のレッスンを受講するか否かや,これを何回受講するのかは全て受講生の自由な選択に委ねられている一方で(所属校によっては,そもそも45分のレッスンが開催されていなかった所もあったものと考えられる。),受講生が支払うべきレッスン料(レッスンポイント単価)は,受講生が当該平日昼間の45分のレッスンを受講するか否かやその受講回数にかかわらず,一律の料金体系として定められていること(乙8)に照らすと,被告におけるレギュラーコースのスタンダード登録のレッスン料(レッスンポイント単価)は,1レッスン当たり40分のレッスン時間を提供することを基準として設定されているものと解される。 そうすると,レギュラーコースのスタンダード登録においては,上記告知のとおり,45分のレッスンは40分が原則であるレッスン時間をサービスとして5分間延長したものと解するのが相当であり,被告において45分のレッスンの提供をすべきことが本件受講契約の内容を構成していたものとい ,45分のレッスンは40分が原則であるレッスン時間をサービスとして5分間延長したものと解するのが相当であり,被告において45分のレッスンの提供をすべきことが本件受講契約の内容を構成していたものとい うことはできないし,サービスとして提供されていた45分のレッスンのレッスン時間を5分間短縮し,これを原則どおりのレッスン時間に統一したことをもって,原告の保有する個々のレッスンポイントの経済的価値が低下したものとは解されない。 したがって,このことに伴って,被告が原告に対して何らかの補償措置を講じなければならない義務が発生するわけではないから,被告が原告に付与したレッスンポイント(46ポイント)は,被告がサービスとして付与したものであって,本来の債務の履行の提供に代わるものではなく,当該レッスンポイントは,原告において対価を提供することなくサービスとして得たものであるから,本件受講契約が中途解約されたからといって,当該レッスンポイント相当額を金銭をもって清算しなければならないものではないというべきである。 (3)これに対し,原告は,上記証拠(甲9)において,「レッスン時間の統一による5分を補償するため」とあることに照らせば,これによって付与されたレッスンポイントも当然清算対象となるべきであると主張するが,「補償」との文言以外にこれを裏付ける根拠はなく,同証拠中にある「サービスポイント」との表現とも相容れないものであるから,採用できない。 (4)以上によれば,原告にサービスとして付与された46ポイントのレッスンポイントは,本件の清算対象とはならない。 本件の予備的請求に係る請求認容額以上を前提に,本件の予備的請求に係る請求認容額の計算を行う(なお,原告は,レッスンポイント購入(79万2300円)以外の追加支出額から,前記前提事実 らない。 本件の予備的請求に係る請求認容額以上を前提に,本件の予備的請求に係る請求認容額の計算を行う(なお,原告は,レッスンポイント購入(79万2300円)以外の追加支出額から,前記前提事実(3)イ(エ)②③⑤所定の額が控除されて返還されないこと(甲1)に関しては争っていないので,上記レッスンポイント購入額を被告の受領済み総額として,同①④所定の額につき控除額を検討すれば足りる。)。 前記2に判示のとおり,本件の清算において用いるべきレッスンポイントの 単価は1390円(税込)×95%となり,前記前提事実(4)並びに前記3及び4の判示によれば,本件の役務提供済ポイント数は273ポイント(実際に消化したポイント236ポイント+有効期限を経過したポイント37ポイント)となるから,特商法49条2項1号イの「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」は,36万0496円(1390円×95%×273ポイント)と計算される。 また,原告は,同号ロの通常損害額(上記④所定の額)として,上限額である5万円が清算金から控除されることを自ら前提としている。 したがって,上記レッスンポイント購入額からこれらの額と被告の既払額(26万0745円)を控除すると,本件の予備的請求に係る請求認容額は12万1059円となる。 第4 結論 よって,原告の主位的請求は理由がないので棄却し,予備的請求は12万1059円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成18年5月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があり,その余は理由がないので,主文第2項記載のとおり一部を認容して,その余の予備的請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する 2項記載のとおり一部を認容して,その余の予備的請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第5部裁判長裁判官清水研一裁判官西村康夫 裁判官篠原敦
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